説明

イオンチャネル調節剤として有用なβ−ケト−アミド誘導体

本発明は、イオンチャネル、特にカリウムチャネル及び塩化物チャネルの強力な調節剤であることが見出され、それ自体、カリウムチャネルの調節に反応するもののように様々な疾患又は障害の治療のための有用な候補である新規なβ−ケト−アミド誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンチャネル、特にカリウムチャネル及び塩化物チャネルの強力な調節剤であることが見出され、それ自体、カリウムチャネルの調節に反応するもののように様々な疾患又は障害の治療のための有用な候補である新規なβ−ケト−アミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは、全ての細胞の細胞膜を通るイオンの流れを調節し、イオン(カリウム、塩化物、ナトリウム等)の違いに対するそれらの選択的透過性によって分類される細胞タンパク質である。イオンチャネルの最大で最も多様なサブグループを代表するカリウムチャネルは、カリウムイオンを選択的に通し、そうすることで、主として、細胞の静止膜電位を調節し、且つ/又はそれらの興奮のレベルを調節する。
【0003】
カリウムチャネル、及び他のイオンチャネルの機能不全は、細胞性制御の喪失を生じ、変化した生理機能及び疾患状態をもたらす。イオンチャネル遮断薬及び活性化薬は、後天性若しくは遺伝性チャネル病においてイオンチャネル機能を調節し、且つ/又はチャネル活性を回復するそれらの能力によって、広範囲の病理学的疾患の薬理学的治療に使用されており、さらにより多岐にわたる治療適応症を扱う可能性を有する。例えば、カリウムチャネル活性化薬についての主要な適応症は、糖尿病、動脈性高血圧、心臓血管病、尿失禁、心房細動、てんかん、疼痛、及び癌などの多様な状態を包含する。
【0004】
多数のカリウムチャネルタイプの中で、大コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルサブタイプは、新しいカリウムチャネル調節剤の薬理学的介入のため及び開発ための明らかなサイトである。それらの生理学的役割は、特に、神経系において研究されており、神経系では、それらは、神経細胞の興奮性、及び神経伝達物質放出の重要な調節剤であり、平滑筋において研究されており、平滑筋では、それらは、血管の、気管支気管の、尿道の、子宮の又は胃腸の筋肉組織の緊張の調節において非常に重要である。
【0005】
これらの意味を考慮すると、BK活性化特性を有するわずかな薬剤が、喘息、尿失禁及び膀胱痙攣、胃腸運動過剰、精神病、脳卒中後の神経保護、痙攣、不安及び疼痛などの、筋肉及び神経の興奮性亢進の多数の結果の調節及び制御において潜在的に強力な影響を有し得る。心臓血管系に関する限り、これらのイオンチャネルの生理機能は、基礎的定常状態機構、血管減極調節、血管収縮及び血管内圧の増加を示し、BKチャネルの選択的活性剤の開発は、高血圧症、勃起不全、冠状動脈疾患及び糖尿病又は高コレステロール血症に関連した血管合併症を含めた血管疾患の潜在的な薬物療法として思われる。
【0006】
塩化物チャネルは、多岐にわたる特定の細胞機能に役立ち、とりわけ、骨格及び平滑筋細胞の正常機能に寄与する。塩化物チャネルは、おそらく、細菌から哺乳動物まであらゆる細胞に見出される。それらの生理的課題は、細胞容積調節から膜電位の安定化、経上皮又は経細胞輸送及び細胞内顆粒の酸性化までに及ぶ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
イオンチャネル調節剤として有用な新規なβ−ケト−アミド誘導体を提供することが本発明の一目的である。本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式I
【化1】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩を特徴とすることができ、式中、
は、テトラゾリル又は5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル基を表し、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、Rは、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、或いは
は、水素を表し、Rは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はフェニルを表す。
【0008】
別の態様においては、本発明は、治療有効量の本発明のβ−ケト−アミド誘導体を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
第3の態様においては、本発明は、医薬組成物の製造のための本発明のβ−ケト−アミド誘導体の使用に関する。
【0010】
さらなる態様においては、本発明は、ヒトを含む動物生体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減の方法を提供し、この障害、疾患又は状態は、イオンチャネルの調節に反応し、この方法は、それを必要とするこのような動物生体に、治療有効量の本発明のβ−ケト−アミド誘導体を投与するステップを含む。
本発明のその他の目的は、以下の詳細な説明及び実施例から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】化合物4の非存在下(対照)及び0.01から31.6μMの化合物4の存在下のコンダクタンス(μS)対膜電位(mV)を示す図である。
【図1B】BKCa−活性化曲線、すなわちΔV(mV)対log[c](M)の左シフトについての濃度−応答関係を示す図である。化合物4についての算出されたEC50及びΔVmax値は、それぞれ1.8μM及び−123mVである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
その第1の態様においては、本発明は、式Iの新規なβ−ケト−アミド誘導体
【化2】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩を提供し、式中、
は、テトラゾリル又は5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル基を表し、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、Rは、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、或いは
は、水素を表し、Rは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はフェニルを表す。
【0013】
より好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式Iaの化合物
【化3】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、R、R、R、R及びRは、上記で定義された通りである。
【0014】
別のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式Ibの化合物
【化4】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、R、R、R、R及びRは、上記で定義された通りである。
【0015】
第3のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式Ibの化合物であり、式中、
、R及びRは、上記で定義された通りであり、
は、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシを表し、
は、ハロ、特にクロロを表す。
【0016】
さらにより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式Ibの化合物であり、式中、
、R及びRは、上記で定義された通りであり、
は、トリフルオロメチルを表し、
は、ハロ、特にクロロを表す。
【0017】
別のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式I、Ia又はIbの化合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、Rは、テトラゾリル又は5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル基を表す。
【0018】
より好ましい実施形態においては、Rは、テトラゾリル基を表す。
【0019】
別のより好ましい実施形態においては、Rは、5−オキソ−4,5−ジヒドロ[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル基を表す。
【0020】
第3のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式I、Ia又はIbの化合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、Rは、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、或いは
は、水素を表し、Rは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている。
【0021】
第4のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式I、Ia又はIbの化合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
は、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている。
【0022】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、ハロ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、特にクロロ、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで場合によって置換されている。
【0023】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、ハロ、特にブロモを表す。
【0024】
別のより好ましい実施形態においては、Rは、フェニルを表し、このフェニルは、ハロ、特にクロロ、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで場合によって置換されている。
【0025】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、ハロ、特にクロロ、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換されているフェニルを表す。
【0026】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、ハロ、特にクロロ、又はトリフルオロメトキシで置換されているフェニルを表す。
【0027】
別のさらにより好ましい実施形態においては、Rは、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている。
【0028】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、水素又はハロ、特にクロロを表す。
【0029】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、水素を表す。
【0030】
第3のさらにより好ましい実施形態においては、Rは、ハロ、特にクロロを表す。
【0031】
第5のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式I、Ia又はIbの化合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、
は、水素を表し、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トルフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている。
【0032】
さらにより好ましい実施形態においては、Rは、ハロ、特にクロロを表す。
【0033】
第6のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、式I、Ia又はIbの化合物、又はその薬学的に許容される付加塩であり、式中、R及びRは、互いに独立に、ハロ又はトリフルオロメチル又はトリフロロメトキシを表す。
【0034】
さらにより好ましい実施形態においては、R及びRは、ともに、ハロ、特にクロロ、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシを表す。
【0035】
さらにより好ましい実施形態においては、R及びRは、ともに、トリフルオロメチルを表す。
【0036】
別のさらにより好ましい実施形態においては、
は、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシを表し、
は、ハロ、特にクロロを表す。
【0037】
さらにより好ましい実施形態においては、
は、トリフルオロメチルを表し、
は、ハロ、特にクロロを表す。
【0038】
最も好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−N−[4−ブロモ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−オキソ−プロピオンアミド、
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−N−[4’−クロロ−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−3−オキソ−プロピオンアミド、
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−N−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−4−イル]−プロピオンアミド、又は
N−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオンアミド、
或いはその薬学的に許容される付加塩である。
【0039】
本明細書に記載された2つ以上の実施形態の任意の組合せは、本発明の範囲内とみなされる。
【0040】
置換基の定義
本発明の文脈においては、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0041】
薬学的に許容される塩
本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、所望の投与に適した任意の形態で提供することができる。適切な形態には、本発明のβ−ケト−アミド誘導体の薬学的に(すなわち、生理学的に)許容される塩、及びプレ−又はプロドラッグ形態が含まれる。
【0042】
薬学的に許容される付加塩の例には、制限なく、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、誘導されたナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩などの無毒性の無機及び有機酸付加塩が含まれる。このような塩は、当技術分野で周知の記載された手順によって形成することができる。
【0043】
本発明のβ−ケト−アミド誘導体の薬学的に許容されるカチオン塩の例には、制限なく、アニオン基を含む本発明のβ−ケト−アミド誘導体のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、及びアンモニウム塩などが含まれる。このようなカチオン塩は、当技術分野で周知の記載された手順によって形成することができる。
【0044】
立体異性体
本発明の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、及び幾何異性体(シス−トランス異性体)を含めた様々な立体異性体で存在し得ることを当業者は理解されよう。本発明には、全てのこのような異性体及びラセミ混合物を含めたそれらの任意の混合物が含まれる。
【0045】
ラセミ体は、既知の方法及び技術によって光学的対掌体に分割することができる。ラセミ体を光学的対掌体に分割する一方法は、光学活性マトリックス上のクロマトグラフィーに基づく。したがって、本発明のラセミ化合物は、例えば、D−又はL−(酒石酸塩、マンデル酸塩、若しくはカンファースルホン酸塩)塩の例えば分別晶出によって、それらの光学的対掌体に分割することができる。
【0046】
光学異性体を分割するためのさらなる方法は、当技術分野で知られている。このような方法には、「鏡像異性体、ラセミ体、及び分割(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)」、John Wiley and Sons、New York(1981)においてJaques J、Collet A、及びWilen Sによって記載されているものが含まれる。
【0047】
光学活性化合物は、光学的に活性な出発原料又は中間体から調製することもできる。
【0048】
調製の方法
本発明による化合物は、化学合成のための通常の方法、例えば、実施例に記載されているものによって調製することができる。
【0049】
生物活性
本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、標準の電気生理学的方法により測定して、イオンチャネル調節活性、特にカリウムチャネル活性化活性及び塩化物チャネル遮断活性を所持することが見出されている。カリウムチャネル及び塩化物チャネルにおけるその活性のために、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、広範囲の疾患及び状態の治療のために有用であると考えられている。
【0050】
特別な実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、呼吸器疾患、てんかん、痙攣、発作、欠神発作、血管痙攣、冠動脈攣縮、運動ニューロン疾患、ミオキミア、腎機能障害、多発性嚢胞腎、膀胱興奮性亢進、膀胱痙攣、泌尿生殖器障害、尿失禁、膀胱流出路閉塞、勃起不全、胃腸障害、胃腸運動低下障害、胃腸運動機能不全、術後イレウス、便秘、胃食道逆流障害、分泌性下痢、閉塞性若しくは炎症性気道疾患、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠状動脈性心臓病、運動失調、外傷性脳損傷、脳卒中、パーキンソン病、双極性障害、精神病、統合失調症、自閉症、不安、気分障害、うつ病、躁うつ病、精神異常、認知症、学習欠損、加齢に関連した記憶障害、記憶及び注意欠陥、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化(ALS)、月経困難症、ナルコレプシー、睡眠障害、睡眠時無呼吸、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、口内乾燥、不整脈、心臓血管障害、高血圧、筋強直性ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー、痙縮、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早産、癌、脳腫瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、結腸炎、クローン結腸炎、免疫抑制、聴力損失、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、失明、鼻漏、高眼圧症(緑内障)、禿頭、心不整脈、心房性不整脈、心室性不整脈、心房細動、心室細動、頻脈性不整脈、心房性頻脈性不整脈、心室頻脈、徐脈性不整脈、又は、例えば、心筋虚血、心筋梗塞、心臓肥大若しくは心筋症により引き起こされる任意のその他の律動異常の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0051】
より好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、呼吸器疾患、尿失禁、勃起不全、不安、てんかん、精神病、統合失調症、双極性障害、うつ病、筋萎縮性側索硬化(ALS)、パーキンソン病又は疼痛の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0052】
別のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、精神病、統合失調症、双極性障害、うつ病、てんかん、パーキンソン病又は疼痛の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0053】
第3のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、疼痛、軽い又は穏やかな又は激しい痛み、急性の、慢性の又は再発性の痛み、片頭痛により引き起こされる痛み、術後疼痛、幻肢痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢痛、糖尿病性神経障害に、治療後神経痛に、又は末梢神経損傷に関連した痛みの治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0054】
第4のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、心不整脈、心房性不整脈、心室性不整脈、心房細動、心室細動、頻脈性不整脈、心房性頻脈性不整脈、心室頻脈、徐脈性不整脈、又は、例えば、心筋虚血、心筋梗塞、心臓肥大、心筋症若しくは遺伝的疾患により引き起こされる任意のその他の律動異常の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0055】
第5のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、心虚血、虚血性心疾患、肥大心、心筋症又は心不全の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0056】
第6の好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、心臓血管疾患の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。より好ましい実施形態においては、心臓血管疾患は、アテローム性動脈硬化、虚血/再かん流、高血圧、再狭窄、動脈炎、心筋虚血又は虚血性心疾患である。
【0057】
第7のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、心不整脈、心房細動及び/又は心室頻脈の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0058】
第8のより好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、心臓のプレコンディショニングを得るために有用であると考えられている。虚血プレコンディショニング及び心筋プレコンディショニングを含むプレコンディショニングは、長期の虚血の開始前の短期の虚血イベントを表す。本発明の化合物は、このような虚血イベントで得られるプレコンディショニングに類似の効果を有すると考えられている。プレコンディショニングは、長期の虚血イベントに起因する後の組織損傷を保護する。
【0059】
第9のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、統合失調症、うつ病又はパーキンソン病の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0060】
第10のより好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、閉塞性又は炎症性気道疾患の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。より好ましい実施形態においては、閉塞性又は炎症性気道疾患は、気道過敏性、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、ダチョウ塵肺症(ptilosis)、鉄沈着症、珪肺、タバコ症及び綿肺などの塵肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気道過敏性又は嚢胞性線維症の増悪である。
【0061】
その最も好ましい実施形態においては、閉塞性気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。
【0062】
第11のより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、男性の性的不全及び女性の性的不全を含み男性の勃起不全を含む性的不全の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。
【0063】
さらにより好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、ホスホジエステラーゼ阻害剤、特にホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤、例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル及びジピリダモールと同時投与、又は内皮由来の過分極因子により媒介される反応を強化する薬剤、特に、カルシウムドベシレート若しくは類似の2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホネート類似体と同時投与することができる。
【0064】
最も好ましい実施形態においては、本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル又はカルシウムドベシレートと一緒に併用療法に使用される。
【0065】
第12のより好ましい実施形態においては、本発明のアセトアミド誘導体は、滲出性黄斑変性、加齢に関連した黄斑変性(AMD)、網膜症、糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、虚血性網膜症(例えば、網膜静脈若しくは動脈閉塞)、未熟児網膜症、血管新生高眼圧症、緑内障及び角膜血管新生などの、眼の血管形成に関連した疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられている。本発明の文脈においては、「加齢に関連した黄斑変性」(AMD)には、乾性AMD(非滲出性AMD)及び湿潤性AMD(滲出性AMD)が含まれる。特別な実施形態においては、本発明は、湿潤性AMDの治療、予防又は軽減に関する。
【0066】
本発明のアセトアミド誘導体は、高眼圧症、開放隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障及び閉塞隅角緑内障に起因する毛様体充血などの眼圧の低下に反応する疾患、障害又は状態の治療に特に有用であると考えられている。
【0067】
現在、活性薬剤成分(API)の適切な用量は、1日当たり約0.1から約1000mgのAPIの範囲内であり、より好ましくは1日当たり約10から約500mgのAPIであり、最も好ましくは1日当たり約30から約100mgのAPIであるが、しかし、投与の正確な様式、それが投与される形態、考慮される指示、対象及び特に関係する対象の体重、及びさらに担当の医師又は獣医の選好及び経験に応じて決まると考えられている。
【0068】
本発明の好ましいβ−ケト−アミド誘導体は、サブミクロモル及びミクロモルの範囲、すなわち、1未満から約100μMの範囲において生物活性を示す。
【0069】
医薬組成物
別の態様においては、本発明は、治療有効量の本発明のβ−ケト−アミド誘導体を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0070】
治療における使用のための本発明のβ−ケト−アミド誘導体は、未加工の化合物の形態で投与することができるが、活性成分を、場合によって生理学的に許容される塩の形態で、医薬組成物に、1種又は複数のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又はその他の通例の製薬助剤と一緒に導入することが好ましい。
【0071】
好ましい一実施形態においては、本発明は、したがって、1種又は複数の薬学的に許容される担体、及び、場合によって、当技術分野で知られて使用されているその他の治療的及び/又は予防的成分と一緒に、本発明のβ−ケト−アミド誘導体を含む医薬組成物を提供する。上記担体(複数可)は、製剤の他の成分と相溶性であり、そのレシピエントに有害でないという意味において「許容」されなければならない。
【0072】
本発明の医薬組成物は、所望の治療に適合する任意の通常の経路により投与することができる。投与の好ましい経路には、特に、錠剤、カプセル、糖剤、粉末、又は液体形態での経口投与、及び、非経口投与、特に、皮膚、皮下、筋肉内、又は静脈注射が含まれる。本発明の医薬組成物は、任意の当業者によって、所望の製剤に適した標準の方法及び通常の技術の使用によって製造され得る。必要に応じて、活性成分の持続放出を提供するよう適合された組成物を用いることができる。
【0073】
製剤及び投与のための技術のさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版(Maack Publishing Co.,Easton,PA)に見出すことができる。
【0074】
実際の用量は、治療する疾患の性質及び重篤性によって決まり、医師の裁量の範囲内であり、所望の治療効果を生ずる本発明の特定の状況への用量の滴定によって変えることができる。しかし、現在、個別の用量あたり約0.1から約500mg、好ましくは約1から約100mg、最も好ましくは約1から約10mgの活性成分を含む医薬組成物が、治療上の処置に適すると考えられている。
【0075】
活性成分は、1日に1つ又はいくつかの用量で投与することができる。満足のいく結果が、場合によって、0.1μg/kg i.v.及び1μg/kg p.o.の低い用量で得られることがある。現在、用量範囲の上限は、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると考えられている。好ましい範囲は、約0.1μg/kgから約10mg/kg/日 i.v.及び約1μg/kgから約100mg/kg/日 p.o.である。
【0076】
薬剤のパーツのキット
本発明によれば、少なくとも2つの別々の単位剤形(A)及び(B):
(A)本発明のβ−ケト−アミド誘導体、及び
(B1)ホスホジエステラーゼ阻害剤、又は
(B2)内皮由来の過分極因子により媒介される反応を強化する薬剤、及び場合によって
(C)それを必要とする患者への、Aのβ−ケト−アミド誘導体、及びB1のホスホジエステラーゼ阻害剤、又はB2の内皮由来の過分極因子により媒介される反応を強化する薬剤の同時、逐次又は個別投与のための指示
を含むパーツのキットも提供される。
【0077】
より好まし実施形態においては、本発明による使用のためのホスホジエステラーゼ阻害剤(B1)は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤であり、さらにより好ましい実施形態においては、本発明による使用のためのホスホジエステラーゼ阻害剤は、シルデナフィル、タダラフィル又はバルデナフィルである。
【0078】
別のより好ましい実施形態においては、本発明による使用のための内皮由来の過分極因子により媒介される反応を強化する薬剤(B2)は、カルシウムドベシレートである。
【0079】
本発明による使用のための本発明のβ−ケト−アミド誘導体、及びホスホジエステラーゼ阻害剤、又は内皮由来の過分極因子により媒介される反応を強化する薬剤は、好ましくは、もう一方と併用しての投与に適する形態で提供することができる。これは、2つの製剤の一方又はもう一方が、もう一方の成分の投与の前、その後、及び/又はそれと同時に(場合により反復して)投与され得る場合を含むことを意図している。
【0080】
同様に、本発明による使用のための本発明のβ−ケト−アミド誘導体、及びホスホジエステラーゼ阻害剤、又は内皮由来の過分極因子により媒介される反応を強化する薬剤は、複合形態で、又は別々に若しくは別々且つ逐次的に投与することができ、ここで、逐次投与は、時間的に接近して又は時間的に離れている。これは、2つの製剤が、これらの2つの製剤のいずれかが、同じ治療の経過にわたって、もう一方の製剤の非存在下で、単独で(場合により反復して)投与される場合と比べて、該当する状態の治療の経過にわたって、より大きな、患者への有益な効果があるのに十分に時間的に接近して(場合により反復して)投与されることを特に含む。併用が、特定の状態に関して、特定の状態の治療の経過にわたってより大きな有益な効果を提供するかを決めることは、治療又は予防の対象の状態によるが、当業者により日常的に達成され得る。
【0081】
この文脈で使用される場合、用語「同時に投与される」及び「〜と同時に投与される」は、陽性アロステリックニコチン受容体調節剤及び向知性薬の個別の用量が、互いに、48時間以内、例えば、24時間に投与されることを含む。
【0082】
2つの成分を互いに一緒にすることは、成分(A)及び(B)が、別々の製剤として(すなわち、互いに独立に)提供され、これらは、次いで、併用療法における互いに併用しての使用のために一緒にされ、又は併用療法における互いに併用しての使用のために、「コンビネーションパック」の別々の成分として一緒に包装及び提供され得ることを含む。
【0083】
治療の方法
別の態様においては、本発明は、ヒトを含む動物生体の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減の方法を提供し、この障害、疾患又は状態は、イオンチャネル、特にカリウムチャネル又は塩化物チャネルの調節に反応し、この方法は、それを必要とするこのような動物生体に、カリウムチャネルを活性化することが可能な化合物、又はその薬学的に許容される付加塩の治療有効量を投与するステップを含む。
【0084】
本発明により考えられる好ましい医療適用は、上記で記載されたものである。
【0085】
現在、活性薬剤成分(API)の適切な用量は、1日当たり約0.1から約1000mgのAPIの範囲内であり、より好ましくは1日当たり約1から約500mgのAPIであり、最も好ましくは1日当たり約1から約100mgのAPIであるが、しかし、投与の正確な様式、それが投与される形態、考慮される指示、対象及び特に関係する対象の体重、及びさらに担当の医師又は獣医の選好及び経験に応じて決まると考えられている。
【0086】
本発明が、添付の図面を参照することによってさらに説明され、ここで、図1A及び1Bは、アフリカツメガエル卵母細胞に発現されたBKCaチャネルの電圧依存への化合物4(すなわち、N−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオンアミド)の効果を示している。
【実施例】
【0087】
本発明が、以下の実施例を参照してさらに説明され、これらの実施例は、特許請求された本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0088】
(実施例1)
予備実施例
【0089】
本発明による化合物は、沸騰キシレン中の適切なβ−ケトンエステルの置換アニリンとの縮合を含む、例えば、Clayden J、Greeves N、Warren S及びWothers P:「カルボニル基における求核置換(Nucleophilic substitution at the carbonyl group)」;Organic Chemistry(2001)Oxford University pressに記載されているような通常の方法によって容易に調製することができる。
【化5】

【0090】
β−ケトンエステル(A)は、市販されているか、又は、例えば、Synthesis 2003 2405においてCeline Mordant、Cristina Cano de Andrade、Ridha Touati、Virginie Ratovelomanana−Vidal、Bechir Ben Hassine、Jean−Pierre Genetによって記載されているような、ケトン及びエステル間の周知のクライゼン縮合によって合成することができる。
【0091】
適切なアニリン(B)が市販されていなかった場合、それらを、例えば、Valgeirssonらの国際公開第98/47879号、Journal of Medicinal Chemistry 2004 47(27)6948−6957に記載されているように、又はハロゲン化アニリン及び適切に置換されたアリールボロン酸の間のパラジウムで触媒された鈴木クロスカップリング反応によってのいずれかで合成した。出発原料のハロゲン化アニリンがオルト位置においてシアノ基で置換されている場合、鈴木クロスカップリング反応に続いて、Journal of Medicinal Chemistry 2004 47(27)6948−6957においてValgeirssonらによって記載されているように、シアノ部分を、対応するテトラゾリル又は5−オキソ−4,5−ジヒドロ[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル誘導体に変換する。非市販のアニリン誘導体Bのための合成実験手順の一例として、中間体Dの合成を記載する。
【化6】

【0092】
4−アミノ−4’−クロロ−ビフェニル−3−カルボニトリル(中間化合物)(C)
2−アミノ−5−ブロモ−ベンゾニトリル(5.5g、1当量)、4−クロロベンゼンボロン酸(4.8g、1.1当量)、炭酸カリウム(12.7g、3.3当量)、ジメトキシエタン(80ml)及び水(40ml)の混合物に、ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)クロリド(0.2g)を添加する。得られる混合物を、24時間還流し、次いで蒸発して乾燥する。この残渣を、溶離液としてDCMを使用するフラッシュクロマトグラフィーで精製する(5.32g、83%収率)。
【0093】
4’−クロロ−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルアミン(中間化合物)(D)
4−アミノ−4’−クロロ−ビフェニル−3−カルボニトリル(5.3g、1当量)、アジ化ナトリウム(2.3g、1.5当量)、トリエチルアミン塩酸塩(4.9g、1.5当量)の混合物を、40mlのトルエンに懸濁し、終夜加熱(60℃)する。室温に冷却したこの反応混合物に、水及び4M HClを添加して、白色沈殿として標題化合物を得る。これを濾過により回収し(4.83g、77%収率)、さらに精製することなく次ステップに使用した。
【0094】
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−N−[4−ブロモ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−オキソプロピオンアミド(1)
m−キシレン(20ml)中の3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル(0.2g)及び4−ブロモ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニルアミン(0.146g、1当量)の懸濁液を、3時間環流する。得られる溶液を、蒸発して乾燥し、この残渣をエタノールからの結晶化によって精製する(0.25g、約80%収率)。[M−H]−のLC−ESI−HRMSは519.984Daを示す。計算値519.984381Da、偏差−0.7ppm。
【0095】
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−N−[4’−クロロ−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−3−オキソ−プロピオンアミド(2)
m−キシレン(20ml)中の3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル(0.2g)及び4’−クロロ−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルアミン(0.166g、1当量)の懸濁液を、3時間環流する。得られる溶液を蒸発して乾燥し、この残渣をアセトニトリルからの結晶化によって精製する(0.19g、約31%収率)。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは554.0814Daを示す。計算値554.081846Da、偏差。
【0096】
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−N−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメトキシビフェニル−4−イル]−プロピオンアミド(3)
m−キシレン(20ml)中の3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル(0.2g)及び3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−4−イルアミン(0.196g、1当量)の懸濁液を、3時間環流する。得られる溶液を蒸発して乾燥し、この残渣をエタノールからの結晶化によって精製する(0.136g、約22%収率)。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは604.1049Daを示す。計算値604.103117Da、偏差3ppm。
【0097】
N−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソプロピオンアミド(4)
m−キシレン(10ml)中の3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル(0.1g)及び5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニルアミン(0.068g、1当量)の懸濁液を、3時間環流する。得られる溶液を蒸発して乾燥し、この残渣をメタノール/ジクロロメタンで溶離するフラッシュクロマトグラフィーによって精製する(0.41g、約26%収率)。融点207℃。[M−H]−のLC−ESI−HRMSは442.0092Daを示す。計算値442.00854Da、偏差1.5ppm。
【0098】
(実施例2)
BKチャネル活性化
本実施例においては、化合物4(すなわち、N−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソプロピオンアミド)のBKチャネル活性化活性を、アフリカツメガエル卵母細胞に異種発現されたBKチャネルを使用して求める。
【0099】
BKチャネルを通る電流を、通常の2電極電圧固定法を使用して測定する。BK電流を、ランププロトコルを繰り返すことによって活性化する。手短に言えば、膜電位を、2秒以内に−120mVから+120mVに連続的に変化させる。BK活性化のための閾値は、対照条件下で約+30mVである。化合物に、ランププロトコルが10秒間隔で10回繰り返される100秒を適用する。ランププロトコルの間において、膜電位を−80mVに固定する。最初の3種の化合物の適用は、電流レベルを安定化させる対照ブランクである。続いての8種の適用において、化合物の濃度(0.01〜31.6μM)を増加させることを適用し、脱分極電位における電流レベルの著しい増加が観測される。
【0100】
BK活性化曲線をより低い膜電位の方向にシフトさせる化合物の能力を評価するために、BK電流を、オームの法則 g=I/(Ememb−Erev)(ここで、gはコンダクタンスであり、Iは電流であり、Emembは膜電位であり、Erevは逆転電位である)を使用することによってコンダクタンスに変換した。これらの実験のための細胞外溶液は、2.5mMのKを含み、卵母細胞の細胞内のK濃度は、100mMであると推定される。それらの条件下で、ネルンスト式によりErev=−93.2mVの逆転電位が予想される。+100mVの膜電位における対照のコンダクタンスレベルを計算し、化合物の効果を、化合物の存在下で同一のコンダクタンスレベルが得られる膜電位に対する電位差、ΔVとして評価した。
【0101】
この電位差についての濃度反応曲線を、シグモイドロジスティック方程式:ΔV=ΔVmax/(1+(EC50/[化合物]))(ここで、ΔVmaxはBK活性化曲線の最大の左シフトを表し、EC50は半分の最大反応を引き起こす濃度であり、nは勾配係数である)に適合させた。
【0102】
化合物4についての計算されたEC50及びΔVmax値は、それぞれ1.8μM及び−123mVである。
【0103】
これらの結果は図1A及び1Bに示されている。
【0104】
(実施例3)
インビトロでのヒト赤血球塩化物コンダクタンス
本実施例において、本発明を代表するアセトアミド誘導体、すなわち、化合物3(3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−N−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−4−イル]−プロピオンアミド)の塩化物チャネル遮断活性を求めた。
【0105】
したがって、全ての用量−反応実験を、Bennekouらによって記載されているように(Bennekou P及びChristopherson P:「プロトノフォアCCCPの存在下におけるヒト赤血球膜を通したバリノマイシンにより媒介されるKフラックスのフラックスレシオ(Flux ratio of Valinomycin−Mediated K Fluxes across the Human Red Cell Membrane in the presence of the Protronophore CCCP)」;J.Membrane Biol.,1986 93 221−227)、赤血球の懸濁液中のCl(JCl)の伝導ネットフラックス及び膜電位(V)の同時測定によって実施した。
【0106】
膜のClコンダクタンス(GCl)を、次の方程式:
【数1】


(ここで、Fはファラデー定数であり、EClはClイオンについてのネルンスト電位である)を用いてHodgkinらに従って(Hodgkin AL及びHuxley AF:「ヤリイカ類の巨大軸索における膜コンダクタンスの成分(The components of membrane conductance in the giant axon of Loligo)」;J.Phvsiol.Lond.,1952 116 449−472)計算した。
【0107】
化合物3についてのK値は、0.21μMと計算された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのβ−ケト−アミド誘導体、
【化1】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩
[式中、
は、テトラゾリル又は5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル基を表し、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
は、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、或いは
は、水素を表し、
は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はフェニルを表す]。
【請求項2】
が、テトラゾリル又は5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル基を表す、請求項1に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩。
【請求項3】
が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
が、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、或いは
が、水素を表し、
が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている、
請求項1又は2に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩。
【請求項4】
が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されており、
が、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている、
請求項3に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩。
【請求項5】
が、水素を表し、
が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ又はフェニルを表し、このフェニルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び/又はヒドロキシで場合によって1回又は複数回置換されている、
請求項3に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩。
【請求項6】
及びRが、互いに独立に、ハロ又はトリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシを表す、
請求項1から5までのいずれか一項に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩。
【請求項7】
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−N−[4−ブロモ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−オキソ−プロピオンアミド、
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−N−[4’−クロロ−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−3−オキソ−プロピオンアミド、
3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−N−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−4−イル]−プロピオンアミド、又は
N−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−オキソ−プロピオンアミド、
或いはその薬学的に許容される付加塩である、
請求項1に記載のβ−ケト−アミド誘導体。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩、又はそのプロドラッグの治療有効量を、1種又は複数のアジュバント、賦形剤、担体及び/又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項9】
ヒトを含む哺乳動物の疾患又は障害又は状態(この疾患、障害又は状態はイオンチャネルの調節に反応する)の治療、予防又は軽減のための医薬組成物/薬剤の製造のための、請求項1から7までのいずれか一項に記載のβ−ケト−アミド誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩の使用。
【請求項10】
疾患、障害又は状態が、呼吸器疾患、てんかん、痙攣、発作、欠神発作、血管痙攣、冠動脈攣縮、運動ニューロン疾患、ミオキミア、腎機能障害、多発性嚢胞腎、膀胱興奮性亢進、膀胱痙攣、泌尿生殖器障害、尿失禁、膀胱流出路閉塞、勃起不全、胃腸障害、胃腸運動低下障害、胃腸運動機能不全、術後イレウス、便秘、胃食道逆流障害、分泌性下痢、閉塞性若しくは炎症性気道疾患、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠状動脈性心臓病、運動失調、外傷性脳損傷、脳卒中、パーキンソン病、双極性障害、精神病、統合失調症、自閉症、不安、気分障害、うつ病、躁うつ病、精神異常、認知症、学習欠損、加齢に関連した記憶障害、記憶及び注意欠陥、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化(ALS)、月経困難症、ナルコレプシー、睡眠障害、睡眠時無呼吸、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、口内乾燥、不整脈、心臓血管障害、高血圧、筋強直性ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー、痙縮、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早産、癌、脳腫瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、結腸炎、クローン結腸炎、免疫抑制、聴力損失、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、失明、鼻漏、高眼圧症(緑内障)、禿頭、心不整脈、心房性不整脈、心室性不整脈、心房細動、心室細動、頻脈性不整脈、心房性頻脈性不整脈、心室頻脈、徐脈性不整脈、又は、例えば、心筋虚血、心筋梗塞、心臓肥大若しくは心筋症により引き起こされる任意のその他の律動異常である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ヒトを含む動物生体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減の方法であって、この障害、疾患又は状態は、イオンチャネルの調節に反応し、この方法は、それを必要とするこのような動物生体に、請求項1から7までのいずれか一項に記載のβ−ケト−アミド誘導体の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2010−526038(P2010−526038A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504731(P2010−504731)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055216
【国際公開番号】WO2008/135448
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】