説明

イオンチャンネル受容体の活性のモジュレーターを同定する新規な方法およびその応用

本発明は、GABA受容体などのイオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する方法に関し、この方法は、イオンチャンネル受容体とP2X受容体とを共発現する組換え細胞において、イオンチャンネル受容体に結合した場合のP2X受容体を介したカルシウム流入を、そのアゴニストATPの存在下で測定することによる。また、本発明は、本発明方法を実施するための必須の要素を含むキットまたは装置に関する。最後に、本発明は、前記選択された化合物を、前記イオンチャンネル受容体の機能不全に関連する疾患の予防または治療のために使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABA受容体などのイオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する方法に関し、この方法は、イオンチャンネル受容体とP2X受容体とを共発現する組換え細胞において、イオンチャンネル受容体に結合した場合のP2X受容体を介したカルシウム流入を、そのアゴニストATPの存在下で測定することによる。また、本発明は、本発明方法を実施するための必須の要素を含むキットまたは装置に関する。最後に、本発明は、前記選択された化合物を、前記イオンチャンネル受容体の機能不全に関連する疾患の予防または治療のために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
γ−アミノ酪酸(GABA)受容体は、受容体のリガンド依存性イオンチャンネル(本明細書では「イオンチャンネル受容体」と称する)のスーパーファミリーのメンバーである、哺乳動物ニューロン組織中の内在性の膜糖タンパク質である。GABA受容体は、GABA放出性およびGABA受容性ニューロンの広い分布により、中枢神経系(CNS)ニューロン活性の抑制において主要な役割を果たしている。
【0003】
GABA受容体は2つの主要なクラス:GABA−AおよびGABA−C受容体サブタイプ並びにGABA−B受容体タイプに分けられ、エフェクター作用機作および薬理学における違いにより区別される。GABA−AおよびGABA−C受容体は、GABAにより活性化され塩化物イオンチャンネルを開口させる、伝達物質作動(tramsmitter-operated)塩化物イオンチャンネルである。
【0004】
ニューロンの表面に存在するタンパク質であるGABA受容体チャンネルは、中枢神経系の主要な抑制的受容体であり、5個のサブユニットから構成され、これらのサブユニットは集合して、陰イオン、主として塩化物イオンに対して透過性のチャンネルを形成する。
【0005】
6種のαサブユニット、3種のβサブユニット、3種のγサブユニット、1種のεサブユニット、1種のδサブユニット、1種のπサブユニットおよび3種のρサブユニットが存在する。GABA−A受容体のほとんどは、2つのαサブユニット、2つのβサブユニットおよび1つのγサブユニットから形成されると考えられるが、その他の組み合わせも可能である。これらの全ての組み合わせは異なる性質をもつ受容体を生じる。これらのサブユニットはすべて、大きい細胞外ドメイン、4つの膜貫通ドメイン、およびM3とM4の膜貫通ドメインを結合する1つの主要な細胞内ドメインをもつ類似の立体配置を有する。
【0006】
イオンチャンネル受容体複合体を介するイオンの動きにより生じる電流は小さく、これらの塩化物イオンの細胞への流入を定量するための蛍光プローブの直接的使用はできない。これらの電流の電気生理学的記録を可能にする方法および装置は複雑である。例えば、一定の電圧をかけ、1つの細胞に作動させることも必要である。
【0007】
従って、電気生理学的記録を用いるこの方法は、かかる受容体チャンネルを調節しうる化合物、即ち医薬分野で非常に有用でありうる化合物を一次スクリーニングするのに用いることはできない。
【0008】
P2X受容体はリガンド依存性イオンチャンネルであるのに対し、別の「P2受容体」、P2Y受容体は一般的にGタンパク質結合系を介して作用する。複数のP2X受容体サブタイプ(P2X1−P2X7)がホモメリックおよびヘテロメリックチャンネルを形成し、これは、カルシウムを含む陽イオンに透過性であり、細胞外ATP、即ちアゴニストにより特異的に活性化される。この受容体は、比較的高いカルシウム透過性をもつリガンド依存性イオンチャンネルとして作用する(Egan et al., Neurosciences, 24(13):3413-3420, 2004) 。P2X受容体は、膜の脱分極およびCa++流入を媒介し、興奮シナプス伝達や痛み受容から血管収縮までの生理学的役割を有する。ATPはP2X受容体を通して、中枢および末梢神経系において興奮性神経伝達物質として作用する。
【0009】
電気生理学的記録法を用いて(即ち、開いたチャンネルを通したイオン輸送による電流を測定することにより)、GABA受容体とP2X受容体は、これらが異種発現系(両方の受容体ファミリーを発現するアフリカツメガエル卵母細胞、トランスフェクトされた哺乳動物細胞またはニューロン) において共発現される場合、機能的および物理的に関連することが既に示された (Boue-Grabot et al., Jounal of Biological Chemistry, 279:6967-6975, 2004; Boue-Grabot et al., Jounal of Biological Chemistry, 279:52519-52525, 2004) 。
【0010】
また、P2Xがニコチン性アセチルコリン受容体および5−HT3受容体とも相互作用することが示された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、高処理能力のスクリーニングにより、GABA受容体などのイオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択するために使用できる、低コストで容易に実施できる効率的方法を提供することが望まれる。これが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
予想外にも、本発明者等は、蛍光カルシウムプローブを用いて測定して、GABA−A受容体の活性化が、開口したP2X受容体を介するカルシウム流入を直接減少させることを実証した。
【0013】
本発明者等はまた、電気生理学的記録法により以下のことも見出した:
−ATPおよびGABAを共に作動させた場合、観察される電流は個々の電流の合計よりも少なく、これはそれらが共に活性化されると相互抑制を示すことを実証している。この機能的抑制は、それぞれの細胞内ドメインでの受容体の分子的結合に基づく。本発明者等は、各受容体の性質が他のタイプの受容体の存在によって変化しないことにも気付いた。このように、P2X受容体の存在は、GABA受容体の性質をそのアゴニスト(GABA)に関して変えない。GABA受容体の存在はP2X受容体の性質をそのアゴニスト(ATP)に関して変えない。各受容体の応答の大きさのみが、それらが同時に活性化された場合に減少する;
−全てのGABA受容体(その分子組成に関係なくGABA−AおよびGABA−C)は共活性化によりP2X2などのP2X受容体を抑制する;
−P2X2受容体のATPに対する応答は作動の間安定で(感度の低下なし)かつ時間経過後も安定(良好な回復)である。従って、これは単一の細胞を用いて迅速に多数の化合物を試験するのに使用できる;および
−ATP活性化P2X受容体は、静止電位に維持された細胞への顕著なカルシウム流入を媒介する。
【0014】
その結果、ある細胞モデルにおいてGABAおよびP2X受容体を共発現させることにより、GABA受容体の活性化の後に、ATPまたは他の周知の任意のP2Xアゴニストにより生じるP2X受容体の応答の蛍光強度の変化が生じるであろう。
【0015】
従って、本発明は第1の面において、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定するための方法に関し、この方法は以下の工程を含む:
a)該イオンチャンネル受容体およびP2X受容体を発現する組換え細胞を用意する工程、
b)該組換え細胞を、該P2X受容体のアゴニスト、好ましくはATPなどの存在下、または該P2X受容体のアゴニストおよび該イオンチャンネル受容体のアゴニストの存在下で、試験すべき化合物に接触させる工程、
c)P2X受容体を介したカルシウム流入を測定する工程、
【0016】
d)工程c)で得られた測定値を、工程b)において試験すべき化合物が存在しない第1の参照対照について同じ条件で得られた測定値と比較する工程、および
e)工程d)における比較により、該化合物の存在下で組換え細胞におけるカルシウム流入が有意に増加または減少することが示された場合、該化合物を、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物として選択または同定する工程。
【0017】
試験または選択した化合物の構造が最初は既知でなければ、その構造は、質量分析または紫外線分光測定、LC−MS、配列決定などの当業者に周知の構造決定方法により、上記の本発明の化合物選択または同定方法の工程e)の後に同定することができる。
【0018】
好ましい態様において、工程a)で使用する組換え細胞は、前記P2X受容体のアゴニスト、好ましくはATPなどにより、またはイオンチャンネル受容体がGABA受容体である場合はGABAなどの前記イオンチャンネル受容体のアゴニストにより調節されうる受容体を内在的に発現しない。
【0019】
より好ましい態様においては、工程a)で使用する組換え細胞は、GABA、または好ましくはATPなどの前記P2X受容体のアゴニストにより活性化される受容体を内在的に発現しない卵母細胞である。
【0020】
好ましくは、工程a)で使用する組換え細胞は哺乳動物細胞またはアフリカツメガエル卵母細胞である。細胞モデル(哺乳動物細胞またはアフリカツメガエル卵母細胞)は、関心あるGABA受容体およびP2X受容体を安定なまたは一過性の状態で共発現するのがより好ましい。
【0021】
好ましくは、上記哺乳動物細胞はヒト、ラットまたはマウス由来である。
本明細書においてP2X受容体とは、アミノ酸配列として哺乳動物P2X受容体の野生型のアミノ酸配列を有する天然のP2X受容体、または上記イオンチャンネル受容体と相互作用しうる変異型の哺乳動物P2X受容体を意味する。
【0022】
上記P2X受容体の中で、P2X 1、P2X 2、P2X3、P2X4、P2X5、P2X6およびP2X7受容体サブユニット、およびATP活性化チャンネル−受容体機能を果たしうるP2X受容体サブユニットの会合もしくは組み合わせにより得られる任意のP2X受容体からなる群より選ばれるP2X受容体が好ましい。
【0023】
P2X受容体は、受容体ポリペプチドの多量体からなると考えられ、これらの多量体は同じまたは異なるサブタイプからなるものでよい。従って、「P2X受容体」なる用語は、場合により、個々の受容体サブユニットや複数のサブユニット、およびそれより構成されるホモメリックもしくはヘテロメリック受容体も意味する。
【0024】
また、ある特定の面によれば、上記イオンチャンネル受容体またはP2X受容体はヒト、ラットまたはマウス由来である。
P2X受容体(P2RXとも言う)のこれらのサブタイプのアミノ酸(またはmRNA)配列は当業者に周知であり、例えば以下の受託番号でGenbankなどのデータバンクにおいて見ることができる(表1参照)。
表1:ラット、マウスおよびヒト起源のP2X受容体サブタイプまたはそのスプライシング変異体の完全な配列を記載したGenBank受託番号の例
【0025】
【表1】

【0026】
本明細書において、P2X受容体のアゴニストとは、ATP、α, βmATP(アルファベータ−メチルATP)、ベンゾイルベンゾイックATP(2’および3’混合異性体または2’,3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATP(BzATP)など)、または2−メチルチオ−ATP(2−MeSATP)(Zao et al., J Pharmacol Exp Ther., 311(3):1211-7, 2004; Bianchi et al., Eur J Pharmacol. 2;376(1-2):127-38, 1999;Gendron et al. J Neurochem., 87(2):344-52, 2003)などの当業者に周知のP2X受容体アゴニストの1つを意味し、ATPがより好ましいP2X受容体アゴニストである。
【0027】
好ましい態様において、上記イオンチャンネル受容体は、GABA受容体、グリシン受容体、アセチルコリン受容体およびセロトニン受容体(5−HT3受容体)からなる群より選択され、GABA受容体が最も好ましい。
【0028】
イオンチャンネルGABA受容体とは、任意のGABA受容体サブユニット間のホモメリックまたはヘテロメリックな会合から生じるイオンチャンネルGABA受容体を意味し、このサブユニットはα1〜6、β1〜3、γ1〜3、ε、δ、π、θおよびρ1〜3サブユニットからなるGABA受容体サブユニットの群から選択され、このホモメリックまたはヘテロメリックな会合はGABAにより活性化され得るイオンチャンネル受容体を形成する。
【0029】
これらのGABA受容体サブユニットのアミノ酸(またはmRNA)配列は当業者に周知であり、例えば以下の受託番号でGenbankなどのデータバンクにおいて見ることができる(表2参照)。
表2:ラット、マウスおよびヒト起源のGABA受容体(「GABAR」)サブユニットまたはそのスプライシング変異体の完全な配列を記載したGenBank受託番号の例
【0030】
【表2】

【0031】
イオンチャンネル受容体がGABA受容体である場合、このイオンチャンネル受容体のアゴニストは、GABAまたは、ムシモールやイソガバシンなどの他の周知のGABA受容体アゴニストの任意のものである。
【0032】
本発明の方法において、工程c)で測定されるカルシウム流入は、カルシウムプローブ、好ましくはカルシウムグリーン、Fluo−3もしくはFluo−4プローブなどの蛍光カルシウムプローブにより測定される。
【0033】
好ましい態様において、上記試験すべき化合物は、上記P2X受容体と特異的に相互作用する能力について試験される。この特異的相互作用は、第2の参照対照について同じ条件でカルシウム流入の有意な増加または低下が得られるかどうかを測定することにより証明され、ここで工程a)において第2の参照対照に使用される組換え細胞は上記P2X受容体を発現し、上記イオンチャンネル受容体を発現しないものである。
【0034】
詳しくは、上記試験すべき化合物は、上記第2の参照対照について組換え細胞でカルシウム流入の有意な増加または低下が見られる場合、選択されないであろう。
第2の面において、本発明は、以下の工程を含む、イオンチャンネル受容体のアゴニストを選択または同定する方法に関する:
A)工程b)において上記組換え細胞をATPなどの上記P2X受容体のアゴニストの存在下のみで試験すべき化合物と接触させることを特徴とする、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定するための本発明方法により、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択する工程、および
B)本発明方法の工程d)において行われる比較により、第1の参照対照について得られる結果と比べて、該化合物の存在下で組換え細胞においてカルシウム流入の有意な減少が見られることが示された場合、アゴニストとして該化合物を選択する工程。
【0035】
以下の工程を含む、イオンチャンネル受容体の正のモジュレーターを選択または同定する方法もまた好ましい:
A)工程b)において上記組換え細胞をATPなどの上記P2X受容体のアゴニストおよび上記イオンチャンネル受容体のアゴニストの存在下で試験すべき化合物と接触させることを特徴とする、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定するための本発明方法により、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する工程、および
B)本発明方法の工程d)において行われる比較により、第1の参照対照について得られる結果と比べて、該化合物の存在下で組換え細胞においてカルシウム流入の有意な減少が見られることが示された場合、正のモジュレーターとして該化合物を選択する工程。
【0036】
より好ましい態様では、イオンチャンネル受容体の正のモジュレーターを選択または同定する本発明方法において、イオンチャンネル受容体のアゴニストを、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する本発明方法の工程b)において非飽和濃度で使用する。
【0037】
第3の面において、本発明は、以下の工程を含む、イオンチャンネル受容体の負のモジュレーター、インヒビターまたはアンタゴニストを選択または同定する方法に関する:
A)工程b)において上記組換え細胞をATPなどの上記P2X受容体のアゴニストおよびイオンチャンネル受容体のアゴニストの存在下で試験すべき化合物と接触させることを特徴とする、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定するための本発明方法により、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する工程、および
B)本発明方法の工程d)において行われる比較により、第1の参照対照について得られる結果と比べて、該化合物の存在下で組換え細胞においてカルシウム流入の有意な増加が見られることが示された場合、正のモジュレーターとして該化合物を選択する工程。
【0038】
第4の面において、本発明は、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物、アゴニスト、正または負のモジュレーターを選択または同定する本発明方法に関し、第1の化合物を試験するために使用する同じ組換え細胞を、試験すべき少なくとも第2の化合物を試験するために使用できることを特徴とする方法に関する。実際、P2X2受容体のそのアゴニスト(例ATP)に対する応答は適用の間安定で(感度が低下しない)かつ時間経過後も安定(良好な回復)である。従って、この方法は1つの細胞を用いて多数の化合物を迅速に試験するのに使用できる。
【0039】
第5の面において本発明は、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物の選択のためのキットに関し、このキットは以下を含む:
−イオンチャンネル受容体およびP2X受容体を共発現しうる組換え細胞、または場合により組換え細胞を得るための材料;
−ATPまたは、α, βmATP(アルファベータ−メチルATP)、ベンゾイルベンゾイックATP(2’および3’混合異性体もしくは2’,3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATP(BzATP)など)もしくは2−メチルチオ−ATP(2−MeSATP)などの任意の他のP2XRアゴニスト;
【0040】
−場合により、GABAなどの上記イオンチャンネル受容体のアゴニスト;
−場合により、上記組換え細胞においてカルシウム流入を測定するためのマーカーとしてのカルシウムプローブ、好ましくは蛍光カルシウムプローブ;
−場合により、ビデオ顕微鏡や蛍光イメージプレートリコーダー(FCIPR)アッセイなどの蛍光を測定するシステム。
【0041】
本発明のキットにおいて、上記イオンチャンネル受容体、P2X受容体、組換え細胞およびカルシウムプローブは、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定するための本発明方法について上で明らかにしたものの中から独立に選択される。
【0042】
本発明はまた、装置または系に関し、かかる系は高処理量スクリーニング(HTS)によりイオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物の選択のために使用できる系であり、該装置はイオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物の選択のための本発明の方法またはキットに関して上で明らかにした必須の要素を含む装置である。
【0043】
本発明は、カルシウムの指標を、特にP2X受容体を介したカルシウム流入を測定しうる蛍光カルシウムプローブで測定することにより、P2X受容体と機能的に結合した、GABA受容体などのイオンチャンネル受容体を活性化、調節または抑制しうる化合物を選択するために使用できる。
【0044】
最後の面において、本発明は上記本発明の選択または同定方法により選択または同定された新規な化合物または既知化合物を含み、これらの新規化合物または既知化合物は、イオンチャンネル受容体の活性のモジュレーター、例えばアゴニスト、正または負のモジュレーターとして新たに同定され、該イオンチャンネル受容体は好ましくは、GABA、グリシン、セロトニンおよびアセチルコリン受容体などの、P2X受容体と機能的に相互作用しうる受容体である。
【0045】
ある特定の態様において、上記新規な化合物または既知の化合物は、GABA受容体、特にGABA−A受容体の活性の正のモジュレーターとして新たに同定される化合物であり、イオンチャンネル受容体がGABA受容体、特にGABA−A受容体である本発明の方法により選択または同定される。
【0046】
さらに本発明は、P2X受容体と機能的に相互作用しうるイオンチャンネル受容体に関連する、ヒトを含む哺乳動物の疾患や障害を診断、予防および治療するための、本発明化合物の使用にも関する。
【0047】
好ましくは本発明は、P2X受容体と機能的に相互作用しうるイオンチャンネル受容体に関連する、ヒトを含む哺乳動物の疾患、障害または症状の予防または治療への、あるいはそのための医薬の製造への、本発明化合物の使用も含む。より好ましくは、この疾患、障害または症状はGABA−A受容体の機能不全に関連する。
【0048】
上記疾患、障害または症状がGABA受容体の機能不全、特にGABA−A機能不全に関連する場合、喘息、急性心疾患、低血圧、尿閉、骨粗鬆症、高血圧、狭心症、心筋梗塞、潰瘍、アレルギー、良性前立腺肥大、前立腺がん、パーキンソン病、精神病性および神経学的障害、不安、分裂病、躁病、鬱病、運動異常、記憶障害、睡眠障害、痙攣疾患および癲癇からなる群より選択される疾患、障害または症状であるのが好ましい。
【0049】
本発明を用いて同定した新規化合物は、ヒトを含む哺乳動物における疾患および障害の診断、予防および治療に有用であろう。特にGABA受容体に関しては、本発明を用いて同定したこれらの新規化合物は、喘息、低血圧、高血圧、尿閉、狭心症、心筋梗塞、潰瘍、アレルギー、パーキンソン病、神経学的障害、不安、分裂病、鬱病、運動異常、認識障害、睡眠障害、痙攣疾患および癲癇などの疾患、障害、機能不全の診断、予防および治療において有用であろう。
【0050】
本発明の方法を用いて同定した試験化合物またはその薬剤に許容される塩は、進行がGABA、グリシン、セロトニンおよびアセチルコリン受容体などの、P2X受容体と機能的に相互作用しうるイオンチャンネル受容体により形成されるイオンチャンネルの透過性の欠如または過多と関連する疾患に罹患している患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与される。ここで「治療」とはある疾患もしくは少なくとも1つのその識別しうる症状の改善、または必ずしも患者が識別しうるものではない少なくとも1つの測定可能な物理的パラメーターの改善、あるいは疾患の発症の遅れを言う。ここで「予防」とは、ある疾患にかかるリスクの減少をいう。この態様によれば、患者は疾患の家族歴などの疾患の遺伝的素因、または疾患の非遺伝的素因を有することがある。
【0051】
患者に投与される場合、試験化合物またはその薬剤に許容される塩は、場合により薬剤に許容される担体を含む組成物の成分として投与されるのが好ましい。組成物は経口的にまたは他の任意の都合よい経路により投与でき、そして別の生物学的に活性な薬剤とともに投与してもよい。投与は全身性でも局所性でもよい。各種の供給系が知られ、例えばリポソーム封入、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどがあり、本発明の選択された化合物またはその薬剤に許容される塩を投与するのに使用できる。
【0052】
投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、大脳内、膣内、経皮、直腸、吸収または局所があるが、これらに限定されない。投与の方法は実施者に任される。ほとんどの場合、投与は試験化合物またはその薬剤に許容される塩の血流への放出となるであろう。
【0053】
本発明の方法により選択された試験化合物、またはその薬剤に許容される塩を含む組成物−これも本発明の一部を形成する−は、患者に適切に投与するための形態となるよう適宜量の薬剤に許容される担体をさらに含みうる。「薬剤に許容される」とは管轄する機関により認可されたか、あるいは動物、哺乳動物、殊にヒトにおける使用のための国のまたは認可された薬局方に載っていることを意味する。「担体」とは、それと共に本発明化合物を投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、基剤を意味する。かかる薬剤担体は、水、または石油、動物、植物起源もしくは合成によるものを含むオイル、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの液体でありうる。医薬担体は食塩水、ゼラチン、デンプンなどであってもよい。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤を使用してもよい。食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた液体担体、特に注射可能な溶液として使用できる。適当な医薬担体にはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水などの賦形剤がある。所望により、試験化合物の組成物には少量の湿潤剤や乳化剤、またはpH緩衝剤を含有させてもよい。選択された化合物を含む本発明の組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、粉末剤、持効性処方、座薬、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、懸濁液の形態、または使用に適した任意の他の形態をとり得る。この組成物は一般的に、経口投与または静脈内投与用のヒトに適した薬剤組成物として常法に従い処方される。ある特定の疾患の治療に効果的であろう、選択された化合物またはその薬剤に許容される塩の量は、疾患の性質に依り異なり、標準的臨床技術により決定できる。さらに、場合によりin vitroまたはin vivo アッセイを、最適な用量範囲の決定の補助に使用してもよい。使用すべき正確な用量は、投与経路および疾患の重篤度にもより、実施者の判断および各患者の状況により決定されるべきである。しかし、経口、鼻腔内、皮内または静脈内投与に適した用量範囲は一般的に1日当たり体重1kgに対して約0.01mgから約75mg、より好ましくは1日当たり体重1kgに対して約0.5mgから5mgである。
【0054】
本発明の他の特徴および利点は、以下の実施例の記載および以下に説明する図面に示される。
【実施例1】
【0055】
(材料および方法)
自動ナノインジェクターを用いて、ラットP2X2受容体および/または例えばラットa2およびラットb3サブユニットからなるGABA受容体をコードするcDNAを、Boue-Grabot et al.,2004 (Jounal of Biological Chemistry, 279:52517-52525, 2004) に既報のアフリカツメガエル卵母細胞の核に注入した。
【0056】
注入の1〜3日後に、遊離の細胞内カルシウムの濃度に感受性のカルシウムグリーン蛍光プローブを、P2X2受容体のみ、もしくはP2XおよびGABA受容体を発現するか、または何ら受容体を発現しない(注入しない)卵母細胞に注入した。次いで、ビデオ顕微鏡(ニコン)を用いて、3ml/分で灌流させた標準溶液(1.8mM 塩化カルシウムを含むリンゲル液)に維持された卵母細胞から発生する蛍光を記録した。同じ緩衝液中に希釈した物質(ATP100mM 、GABA 100μM 、ATP+GABA各100 μM)をアプリケーションシステム (BPS8-AlaScientific) を用いて適用した。蛍光の変化をIpLab ソフトウェアを用いて解析した。
【実施例2】
【0057】
(受容体を発現しない卵母細胞)
P2XおよびGABA受容体を発現しない卵母細胞へのATPおよびGABAの適用では蛍光の変化は見られなかった(図1) 。これらの実験は、卵母細胞がATPまたはGABAに感受性のある内在性受容体は発現しないことを確認するものである。
【実施例3】
【0058】
(P2X2受容体のみを発現する卵母細胞からの記録)
ATPの適用は蛍光の一時的増加を誘導し、これはP2X2受容体チャンネルの開口によるカルシウムの流入を実証する。GABAは蛍光に関し何ら影響をもたず、このことはGABAがP2X2受容体を活性化しないことを示している。ATPとGABAを共に適用してもATP単独で得られたと同様の蛍光の増加となる。
【0059】
P2X2受容体のみを発現する卵母細胞に対するATPの適用により誘導される蛍光の増加はGABAによって変化することはない (図2) 。
【実施例4】
【0060】
(P2X2およびGABA−A受容体を共発現する卵母細胞での記録)
ATPの適用(100μM)はカルシウムプローブの蛍光の著しい一時的増加を誘導し、これはP2X受容体の活性化とそれに続くカルシウム流入を実証する(図2)。ATPの連続適用は同様の大きさの応答を誘導する。この蛍光における増加が細胞の静止電位で見られることに注意することは重要である。
【0061】
GABA単独の適用(100μM)は、蛍光強度を変化させない。これは、GABA受容体の活性化が塩化物イオンチャンネルを開口させるが、細胞内カルシウム濃度には何ら影響しないという事実により説明できる。
【0062】
ATPとGABA(各100μM)の溶液を共に適用すると、ATP単独の適用により得られるよりも低いカルシウム応答が得られ、従ってGABAチャンネルの開口はP2X受容体により媒介されるカルシウム流入を抑制することを示す。
【0063】
この蛍光の減少はGABA−A受容体の活性化を示す(図3)。
得られる抑制の割合(これらの実験では20〜25%)はP2XおよびGABA受容体の発現の比率を反映するものである。我々が電気生理学方法により示したように、P2X2受容体とGABA受容体の比が1:1の場合、ATPにより媒介される応答のGABAによる電流抑制は50%に達する。カルシウムイメージングでは、P2Xチャンネルの開口のみが測定される。従って、GABA−A受容体が、発現したP2X2受容体と相互作用するならば、GABA受容体の活性化はすべてのP2X受容体の閉口につながると仮定できる。
【実施例5】
【0064】
(P2X2およびGABA−A受容体を共発現する卵母細胞の、P2X受容体活性化の間のGABA受容体の活性化または抑制の記録)
P2X受容体の活性化の間の、GABA受容体の活性化または抑制を監視することもできる(図4参照)。
【0065】
ATP応答のピーク時にGABAを適用すると、蛍光強度における低下が観察され、これはGABA受容体が開口すると、既に開口しているP2X受容体の閉口をもたらすことを示す。同様に、ATPおよびGABAを共に適用している間、GABAの適用を停止すると、蛍光の増加が見られる。これは、GABA受容体の閉口がいくつかのP2X受容体の抑制を解除する、即ちP2X受容体を開口させることを示す(図4)。
【0066】
このことは、アゴニストが適用される順に関係なく、GABA−A受容体の開口または閉口が、ATPにより誘導されるP2Xチャンネルのカルシウムの流れ(カルシウム感受性プローブの蛍光により測定)を直接調節することを示す。従って、P2X受容体からのカルシウムの流入の測定は、GABA受容体の活性化を監視するための新規な方法となる。
【0067】
これらの実験は、GABA−Aα2β3とP2X2受容体の共発現を示すが、本発明は、P2X2受容体、またはGABA受容体と相互作用する能力を維持した他の任意の野生型もしくは変異型P2X受容体を用いてラット、マウスまたはヒトのGABA−A受容体をスクリーニングするのに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】P2XおよびGABA受容体を発現しない卵母細胞上にATPまたはGABAを適用した後に測定した蛍光強度を示す。
【図2】P2X2受容体を発現する卵母細胞上にATP+GABA、GABAまたはATPを適用した後に測定した蛍光強度を示す。
【図3】GABA−A受容体およびP2X2受容体を共発現する卵母細胞上にATP+GABA、ATPまたはGABAを適用した後に測定した蛍光強度を示す。
【図4】GABA−A受容体およびP2X2受容体を共発現する卵母細胞上にATP応答と異なる時間にGABAを適用した後に測定した蛍光強度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定するための方法:
a)該イオンチャンネル受容体およびP2X受容体を発現する組換え細胞を用意する工程、
b)該組換え細胞を、該P2X受容体のアゴニストの存在下、または該P2X受容体のアゴニストおよび該イオンチャンネル受容体のアゴニストの存在下で、試験すべき化合物に接触させる工程、
c)P2X受容体を介したカルシウム流入を測定する工程、
d)工程c)で得られた測定値を、工程b)において試験すべき化合物が存在しない第1の参照対照について同じ条件で得られた測定値と比較する工程、および
e)工程d)における比較により、該化合物の存在下で組換え細胞におけるカルシウム流入が有意に増加または減少することが示された場合、該化合物を選択する工程。
【請求項2】
工程a)において前記組換え細胞が、前記P2X受容体のアゴニスト、または前記イオンチャンネル受容体のアゴニストにより調節されうる受容体を内在的に発現しない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)における前記組換え細胞が、哺乳動物細胞またはアフリカツメガエル卵母細胞である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記P2X受容体が天然のP2X受容体であるか、前記イオンチャンネル受容体と相互作用しうる変異型のP2X受容体である、請求項1〜3のいずれかの項記載の方法。
【請求項5】
前記P2X受容体が、P2X 1、P2X 2、P2X3、P2X4、P2X5、P2X6およびP2X7受容体、およびATP活性化チャンネル−受容体機能を果たしうるP2Xサブユニット受容体の会合もしくは組み合わせにより得られる任意のP2X受容体からなる群より選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記イオンチャンネル受容体またはP2X受容体がヒト、ラットまたはマウス由来である、請求項1〜5のいずれかの項記載の方法。
【請求項7】
前記P2X受容体のアゴニストが、ATP、α, βmATP(アルファベータ−メチルATP)、ベンゾイルベンゾイックATP(2’および3’混合異性体または2’,3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATP(BzATP)など)、および2−メチルチオ−ATP(2−MeSATP)からなる群より選ばれ、好ましくはATPである、請求項1〜6のいずれかの項記載の方法。
【請求項8】
工程c)においてカルシウム流入が、カルシウムプローブにより測定される、請求項1〜7のいずれかの項記載の方法。
【請求項9】
カルシウム流入が、カルシウムグリーン、Fluo−3もしくはFluo−4などの蛍光カルシウムプローブにより測定される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記試験すべき化合物が、前記P2X受容体と特異的に相互作用する能力について試験され、好ましくは該特異的相互作用が、第2の参照対照について同じ条件でカルシウム流入の有意な増加または低下が得られるかどうかを測定することにより証明され、ここで工程a)において該第2の参照対照に使用される組換え細胞は前記P2X受容体を発現し、前記イオンチャンネル受容体を発現しないものである、請求項1〜9のいずれかの項記載の方法。
【請求項11】
前記第2の参照対照について組換え細胞でカルシウム流入の有意な増加または低下が見られる場合、前記試験すべき化合物を選択しない、請求項10記載の方法。
【請求項12】
下記工程を含む、イオンチャンネル受容体のアゴニストを選択または同定する方法:
A)工程b)において前記組換え細胞を前記P2X受容体のアゴニストの存在下のみで試験すべき化合物と接触させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項記載の方法により、前記イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する工程、および
B)請求項1〜11のいずれかの項記載の方法の工程d)において行われる比較により、第1の参照対照について得られる結果と比べて、該化合物の存在下で組換え細胞においてカルシウム流入の有意な減少が見られることが示された場合、アゴニストとして該化合物を選択する工程。
【請求項13】
下記工程を含む、イオンチャンネル受容体の正のモジュレーターを選択する方法:
A)工程b)において前記組換え細胞を前記P2X受容体のアゴニストおよび前記イオンチャンネル受容体のアゴニストの存在下で試験すべき化合物と接触させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項記載の方法により、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択または同定する工程、および
B)請求項1〜11のいずれかの項記載の方法の工程d)において行われる比較により、第1の参照対照について得られる結果と比べて、該化合物の存在下で組換え細胞においてカルシウム流入の有意な減少が見られることが示された場合、正のモジュレーターとして該化合物を選択する工程。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかの項記載の方法の工程b)において、前記イオンチャンネル受容体のアゴニストを、非飽和濃度で使用する、請求項13記載のイオンチャンネル受容体の正のモジュレーターを選択する方法。
【請求項15】
下記工程を含む、イオンチャンネル受容体の負のモジュレーター、インヒビターまたはアンタゴニストを選択または同定する方法:
A)工程b)において前記組換え細胞を前記P2X受容体のアゴニストおよび前記イオンチャンネル受容体のアゴニストの存在下で試験すべき化合物と接触させることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの項記載の方法により、前記イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択する工程、および
B)請求項1〜11のいずれかの項記載の方法の工程d)において行われる比較により、第1の参照対照について得られる結果と比べて、該化合物の存在下で組換え細胞においてカルシウム流入の有意な増加が見られることが示された場合、正のモジュレーターとして該化合物を選択する工程。
【請求項16】
第1の化合物を試験するために使用する同じ組換え細胞が、少なくとも第2の試験すべき化合物を試験するために使用できる、請求項1〜15のいずれかの項記載の方法。
【請求項17】
前記イオンチャンネル受容体が、GABA受容体、グリシン受容体、アセチルコリン受容体およびセロトニン受容体からなる群より選ばれる、請求項1〜16のいずれかの項記載の方法。
【請求項18】
前記イオンチャンネル受容体がGABA受容体である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記イオンチャンネル受容体が、任意のGABA受容体サブユニット間のホモメリックまたはヘテロメリックな会合から生じるイオンチャンネルGABA受容体であり、該サブユニットがα1〜6、β1〜3、γ1〜3、δ、ε、θ、πおよびρ1〜3サブユニットからなるGABA受容体サブユニットの群から選ばれ、該ホモメリックまたはヘテロメリックな会合がGABAにより活性化され得るイオンチャンネル受容体を形成する、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記イオンチャンネル受容体のアゴニストが、GABAまたは、ムシモールやイソガバシンなどの他の周知のGABA受容体アゴニストの任意のものである、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
以下を含む、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物の選択のためのキット:
−イオンチャンネル受容体およびP2X受容体を共発現しうる組換え細胞、または場合により該組換え細胞を得るための材料;
−ATP、α, βmATP(アルファベータ−メチルATP)、ベンゾイルベンゾイックATP(2’および3’混合異性体または2’,3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATP(BzATP)など)および2−メチルチオ−ATP(2−MeSATP)からなる群より選ばれるP2X受容体のアゴニスト、好ましくはATP;
−場合により、該イオンチャンネル受容体のアゴニスト、好ましくはGABA;および
−場合により、該組換え細胞においてカルシウム流入を測定するためのマーカーとしてのカルシウムプローブ、好ましくは蛍光カルシウムプローブ。
【請求項22】
前記イオンチャンネル受容体、P2X受容体、組換え細胞およびカルシウムプローブが、請求項1〜20に記載のものの中から独立に選択される、請求項20記載のキット。
【請求項23】
請求項1〜22に記載の必須の要素を含む、イオンチャンネル受容体の活性を調節しうる化合物を選択するための装置。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれかの項記載の方法により選択または同定された化合物。
【請求項25】
前記イオンチャンネル受容体がGABA受容体、特にGABA−A受容体である請求項1〜20のいずれかの項記載の方法により選択または同定された、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
P2X受容体と機能的に相互作用しうるイオンチャンネル受容体に関連する、ヒトを含む哺乳動物の疾患または障害を診断、予防または治療するための、請求項24または25記載の化合物の使用。
【請求項27】
P2X受容体と機能的に相互作用しうるイオンチャンネル受容体に関連する、ヒトを含む哺乳動物の疾患または障害の予防または治療への、あるいはそのための医薬の製造への、請求項24または25記載の化合物の使用。
【請求項28】
GABA−A受容体の機能不全に関連する、ヒトを含む哺乳動物の疾患、障害または症状を診断、治療または予防するための、請求項25記載の化合物の使用。
【請求項29】
喘息、急性心疾患、低血圧、尿閉、骨粗鬆症、高血圧、狭心症、心筋梗塞、潰瘍、アレルギー、良性前立腺肥大、前立腺がん、パーキンソン病、精神病性および神経学的障害、不安、分裂病、躁病、鬱病、運動異常、記憶障害、睡眠障害、痙攣疾患または癲癇の予防または治療への、あるいはそのための医薬の製造への、請求項25記載の化合物の使用、または請求項28記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−522608(P2008−522608A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545019(P2007−545019)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004020
【国際公開番号】WO2006/064372
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(505179971)サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (18)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【Fターム(参考)】