説明

イオントラップ、質量分析計、イオンモビリティ分析計

【課題】 従来の質量分析法で必須とされた高真空を必要としない低真空での動作が可能であり、小型で電極点数が少なく形状が加工が容易であること、さらに電子増倍管など増幅を必要としないイオン電流を検知するイオン検出方法を適用可能な、小型、安価、簡便な質量分析手段の提供を課題とする。この真空領域では従来よりイオンモビリティー分析手段が用いられていたが、本方式により真の質量分析手段を提供することが可能となり、種種のアプリケーションに対し分析精度を格段に向上することが可能となる。
【解決手段】 本発明で開示する1次元イオントラップを用いる。1次元イオントラップによる質量分析手段は多量のイオンをトラップ可能であること、低真空にて動作可能な質量分析方式を提供できることから高真空を用いない質量分析手段が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
質量・電荷を同定することにより試料中に含まれる分子種を同定する質量分析技術に関する。本方式は、環境分析、合成化合物の分析、医用分析、不正薬物・危険物の分析などでの簡便かつ安価な手段を供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
質量分析とは電磁場内部を運動する荷電粒子の軌跡を解析して、その荷電粒子の質量と価数の比(電荷質量比)を計測することにより、その荷電粒子を同定する物理的手法による物質同定手段である。質量という基本的な物理量を測定する物質同定方法のため、その応用範囲はきわめて広く、現代科学・工業を支えているといっても過言ではない。材料組成の評価、真空組成の評価、表面物質の評価などの原子組成の評価から、分子生物学・生化学でのタンパク質の同定といった生体分子の同定など、その応用範囲は限りない。
【0003】
一口に質量分析といっても、これらの幅広い応用範囲に対して最適な質量分析の手段が多数実現されて利用されている。現在広く利用されている代表的なものに、高周波イオントラップ、高周波四重極質量フィルター、飛行時間型質量分析、静電磁場を組み合わせた収束型質量分析方式、静電磁場もしくは静電場を用いたフーリエ変換型質量分析方式などがある。それぞれ、質量分解能、質量精度、分析速度、価格、装置サイズなどが異なり、応用先に応じて最適な手段が選択されている。
【0004】
従来の質量分析方法としては高周波イオントラップ型の質量分析手段がある。高周波イオントラップ質量分析は、1956年にW. Paulらによって開示されて以来(特許文献1)、多大なる発展をみて、現在、もっとも広く利用されている質量分析手段の1つとして完成された(非特許文献1、非特許文献2)。歴史的にはじめに提案された手段はいわゆるPaul Trapである(特許文献1)。1つのドーナッツ形電極(ring 電極とよばれる)を2つのお椀方の電極(end cap 電極とよばれる)ではさんだ形状であり、リング電極に高周波電圧を印加することにより、その中心部の1点にイオンを集束する。空間的に3次元的に高周波電場で集束されていることから、3次元トラップとも呼ばれる。
【0005】
また、別のイオントラップの方式として、線形イオントラップがある。4本のロッド電極を四重極的に平行に並べた構成であり、合対面する2つの電極ペアのあいだに高周波電圧を印加して4本のロッド電極がつくる中心領域にイオンを捕捉する。高周波により2つの方向が集束されることから2次元イオントラップとも呼ばれている。
【0006】
両者とも電極群が作る空間には四重極高周波電場が発生し、これにより時間平均的に調和ポテンシャルが形成される。質量分析の原理は、イオンがこの調和ポテンシャル内部で単振動する周波数を計測することに基づく。調和振動数とイオンの電荷質量比には線形関係がある。そのため、代表的には、イオンに交流電場を印加し、この電場によりイオントラップから共鳴排出させる。排出させたときの振動数と、排出されたイオンを検出したイオン量から、そのイオンの電荷質量比と量を計測するものである。共鳴幅はガスとの衝突によるダンピング効果によって広げられるので、高い分解能を得るためには高い真空度(典型的に10mTorr以下)を必要としている。
【0007】
【特許文献1】USP2,939,952
【非特許文献1】Quadrupole Storage Mass Spectrometry: R.E. March and R. J. Hughes, John Wiley and Sons ISBN 0-471-85794-7
【非特許文献2】Quadrupole Ion Trap Mass Spectrometry: Raymond E. March and John F. Todd, Wiley-Interscience ISBN 0-471-488887
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の質量分析手段ではすべて、10−3Torr(10−1Pa)より高真空を必要としている。すなわち電磁場中でのイオンの正確な軌跡を確保するためにイオンとガスとの衝突は避けるべきものであり、そのために高真空、場合によっては超高真空を要求する。これらの真空を実現するためには、排気量の大きいターボ分子ポンプの利用が必須であり(歴史的には油拡散ポンプが利用されているが、現代ではターボ分子ポンプに置き換えられている)、排気量を確保するために大型のポンプが利用されてきた。これが、質量分析装置の高価格化、大型化、頻繁のメインテナンス要求を招き、利用シーンが限られる原因となってきた。たとえば、爆発物などの危険物探知手段として汎用的に社会インフラとして導入しようにも、ターボポンプ利用ということにより敬遠されるのが実情である。
【0009】
また、質量分析装置の小型化は、本装置をより汎用的に幅広く利用していく上で大きな課題として認識されている。その目的を実現する1つの方針は、ターボ分子ポンプ類を使用しない低真空で動作する質量分析方式が必要であり、また、低真空では従来から利用されてきたイオンの増幅機能をもつイオン検出器(電子増倍管など)が動作しないことから、この課題を克服する手段が必要となる。たとえば、電子増倍管をもちいなくとも検出可能なほど試料イオンを利用可能にすることが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、新規の1次元方式のイオントラップ方式を開示する。それは、直流電圧によるポテンシャルと交流電圧によるポテンシャルにより形成された1次元ポテンシャルに荷電粒子を捕捉するものである。具体的には、直流電圧に接続した第1の電極と、交流電圧に接続した第2の電極とを用い、第1の電極と第2の電極との間に1次元ポテンシャルを形成するのである。その1次元ポテンシャルにより荷電粒子を捕捉して分析するためには、第1の電極と第2の電極との間で荷電粒子にかかかる力の密度が素から密の分布をなすように、第1の電極と第2の電極の形状が形成されていればよい。例えば、本1次元イオントラップの構造としては、略円柱電極と、略円筒電極からなるものが挙げられる。両者は軸を共通して円柱電極を円筒電極が囲むように配置される。基本形は円柱と円筒からなるが、中心軸に対して垂直な面で切断した場合、その断面が2つの電極が同心円を形成するような形式であれば適用可能である。両電極の間で荷電粒子に係る力の密度が素から密の分布をとればよい。他には、円柱電極として球電極、円筒電極として中空球電極の組み合わせや、円柱電極と円筒電極の長手方向の中心が膨らんだ樽型などでも実施可能である。以下では、これらいろいろな形状が考えられるが、これからの説明上、内側の電極を円柱電極、外側の電極を円筒電極として説明する。また、以下の説明や実施例では、円柱電極に交流電圧を印加し、円筒電極に直流電圧(静電圧)をかけた場合を用いるが、交流電圧と直流電圧は、円柱電極と円筒電極のそれぞれどちらかにかければよい。
【0011】
円筒電極と円柱電極のあいだに交流電圧と直流電圧を印加することにより荷電粒子をトラップすることが可能となる。その中でも、荷電粒子がイオンのような場合は、交流電圧として数100kHz〜10MHzの高周波電圧を用いる。また、荷電粒子によっては(例えばほこりのような場合)には、それより低い低周波電圧を用いることができる。交流電場によりイオンには外向き(円柱電極から円筒電極へ向かう方向)の力を発生させる。力の方向にはイオンの極性(正イオンか負イオンか)は依存しない。この外向きの力とは反対に内向きの力(円筒電極から円柱電極へ向かう方向)を直流電圧により発生させる。正イオンをトラップするときは円柱電極に対し円筒電極には正の電位を印加する。負イオンをトラップするときには円柱電極に対し円筒電極には負の電位を印加する。以上2つの力は中心軸からの距離に依存するものであり、イオンの質量電荷比(M/Z)に依存してつりあいの位置が決定される。この位置にイオンがトラップされることとなり、電極の構造上、中心軸からの一定の距離をもつ円筒上にイオンが位置することになる。この安定位置はイオンの電荷質量比に依存するので、異なるM/Zのイオンを捕捉した場合、同心円筒状に各M/Zをもつイオンが配列される。
【0012】
従来のイオントラップ方式は、イオンは1点もしくは直線上に捕捉されるため、多数のイオンをトラップしたときにはイオン間相互のクーロン力によりイオンの運動が影響しあい、質量分解能が悪化することから、イオンを捕捉できる量には限りがある。これに対し、本方式ではイオンは面上である同心円筒状に位置することから従来法よりも多量のイオンを、クーロン相互作用を回避しながら捕捉できる。
【0013】
本発明のイオントラップは、従来のイオントラップ方式に比べて電極構造が簡単であることも特徴であり、このために安価な質量分析手段を提供することが可能となっている。従来のイオントラップでは電極の個数が多く、複雑な式で与えられる電極形状であり、さらに高い加工精度を要求していた。これに対し、本方式では電極は2つ、さらにもっとも加工が簡単である円筒形状となっている。このために安価な質量分析手段である。その大きさも、約10センチメートル立法以下と小型に製作することが可能である。
【0014】
実際に本イオントラップを作成する際には、中心軸に平行な方向にもイオンを捕捉する必要がある。さもないと、トラップしようとするイオンはこの方向から逃げてしまう。これを回避するために、2つの方法を開示する。
【0015】
1つは、外側にある円筒電極の両端部にキャップ上の電気的に導通させた蓋状の電極を設置することである。もちろん円筒電極には導通しないように電気的に絶縁する。この電場の変形によりイオンをイオン捕捉領域内にとどめておくことが出来る。その詳細は実施例1に記載している。
【0016】
第2の方法は、同じく蓋状電極を円筒電極の両端部に設置するがこれを円筒電極には導通させずに独立して静電圧を印加する方法である。正イオンを捕捉する場合は円筒および円柱電極に対して正電位を印加し、負イオンを捕捉する場合には円筒電極および円柱電極に負電位を印加すればよい。
【0017】
つづいて、以上の1次元イオントラップを質量分析手段として実施する方式を説明する。前記1次元イオントラップの原理で示したように、M/Zの異なるイオンはそれぞれ異なる半径位置の円筒上に位置し、その位置は高周波電圧および静電圧により制御することが可能である。そこで、この2つの電圧のうちの1つもしくは2つを変化させることによりイオンの位置を変更させていくと、イオンは円柱電極、もしくは円筒電極に衝突する。このとき円筒電極もしくは円柱電極に電流計を接続しておくと、衝突した電荷は電流として検知することが可能である。以上により、上記電流をモニターしながら高周波電圧もしくは静電圧を変化させると、設定された電圧値に応じたイオンが電極と衝突し電流として検出される。つまり、質量スペクトルを取得することが可能となる。
【0018】
さらに、本1次元イオントラップをイオンモビリティー手段として実施する方式を説明する。はじめに質量分析により同定されたあるM/Zを持つターゲットとなるイオンを単離する。これは、高周波および静電圧を変化させて、ターゲットとなるイオン以外のイオンを円柱および円筒電極に衝突させて、ターゲットイオンのみを残す。つづいて、イオンの存在位置を計算する。イオンモビリティーを測定するためには、1次元イオントラップの原理で説明したように、ターゲットイオンのM/Zは既知であるから、これを有するイオンのトラップされる位置は計算から求めることが出来る。以上の下準備ののち、高周波電圧を一瞬にしてゼロとする。すると、イオンには静電圧による内向きの力のみが印加されるので、イオンは円柱電極を目指して運動を開始する。このとき、イオンとガスとの衝突確率はイオンの大きさ(断面積)に依存するので、1次元イオントラップ内部のガスとの衝突により、電極への到達時間はイオンの大きさに対する依存性を持つ。この時間からM/Zは等しくともイオンの大きさの異なるイオン種を区別する。また、上記下準備の後、高周波電圧ではなく静電圧を一瞬にしてゼロとすることにより、イオンには高周波電圧による外向きの力のみが印加されるので、イオンは円筒電極を目指して運動を開始する。このとき、1次元イオントラップ内部のガスとの衝突により、電極への到達時間はイオンの大きさに対する依存性を持つので、M/Zは等しくともイオンの大きさの異なるイオン種を区別することができる。
【0019】
以上の質量分析方式およびイオンモビリティー方式はイオンの共鳴振動を伴わない静的な原理のため、低真空でも動作可能である。また、前記1次元イオントラップの原理で示したように、イオン量を従来法よりも多く溜め込むことができるために、電子増倍管などの高感度イオン検出手段を利用する必要はなく、単にイオン電流を検知することによりイオン量を測定可能である。
【0020】
以上の理由により、従来法で必要とされた高真空を必要としない、簡便な排気系による質量分析が可能となる。また、低真空で動作させることが可能なことから、大気圧化で生成させた試料イオンを本イオントラップに導入する際に、従来必要であった高真空域に接続するための差動排気系が不要となる。つまり、高い効率でのイオン導入が可能となるために、本発明の1次元イオントラップに対して高速にイオンを導入することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
従来必須とされた高真空を必要としない低真空での動作が可能であること、小型で電極点数が少なく形状が加工が容易であること、電子増倍管など増幅を必要としないイオン電流を検知するイオン検出方法であることから、小型、安価、簡便な質量分析手段となる。また、この圧力領域では従来よりイオンモビリティー分析手段が用いられていたが、本方式により真の質量分析手段を提供することが可能となり、種種のアプリケーションに対し分析精度を格段に向上することが可能となる。さらに同じイオントラップにおいて質量分析とイオンモビリティの測定が可能なため、より高精度の分析も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施例1には、本発明の1次元イオントラップについて原理的な事項を説明する。実施例2では、本発明の1次元イオントラップを質量分析手段として用いる操作形態について説明する。実施例3には、本発明の1次元イオントラップをイオンモビリティー手段として用いる操作形態について説明する。
【実施例1】
【0023】
本実施例は、円柱からなる円柱電極(内側の電極)、円筒からなる円筒電極(外側の電極)からなる1次元イオントラップの原理的事項を説明する。電極の構造は同軸に配置された円筒電極1(半径:r2)と、円柱電極2(半径:r1)からなる。円柱電極にはDC的に接地された高周波電圧(振幅Vrf、周波数:Ω/2π)を高周波電源3により印加し、円筒電極には高周波的に設置されたDC電圧(Udc)をDC電源4により印加する。以上の電圧配置を図1に示した。
【0024】
まず、本電極・電圧配置でのイオンの運動を理論的に記述する。
2つの電極間に形成されるポテンシャルは中心軸からの距離rに依存して、以下の式で与えられる。
(数1)

このポテンシャルが与えられた場合、イオンに時間平均として作用する力を与えるポテンシャルは以下の式で与えられる。
【0025】
(数2)

この式の計算には、高周波イオントラップの理論で一般的に用いられれる擬ポテンシャルの方法を用いた。この式は2つの部分からなり、右辺第1項が高周波による擬ポテンシャルであり、第2項が静電圧によるポテンシャルである。これを図示すると図2となる。すなわち、擬ポテンシャルは中心軸から外向きの力をイオンに与えるポテンシャルであり、イオンの極性には影響しない。静電圧はイオンを中心軸方向に向ける力をイオンに与えることが出来るポテンシャルであり、正イオンをトラップする場合にはUdcは正とし、負イオンをトラップする場合にはUdcは負とする。両者を足し合わせたポテンシャルつまり、(数2)で与えられるポテンシャルも図2に示した。これをみるとわかるように、本1次元イオントラップのポテンシャルは極小値をもち、(数2)よりその極小値を与える位置は以下の式3で与えられる。
(数3)

もちろん、極小値を得るためには、前記に示したようにイオンの極性に対してUdcの極性を決定しなければならない。
(数3)によると、大きいM/Zを持つイオンが中心軸に近い内側、小さいM/Zを持つイオンが外側に位置することがわかる。このように、本1次元イオントラップではM/Zの異なるイオンは異なる半径で円筒状にトラップされることがわかる。本方式を1次元トラップとよぶ所以である。
【0026】
トラップされるイオンには、高周波電圧および静電圧の値により、トラップ可能なM/Zの領域が与えられる。すなわちトラップ可能なイオンにはその安定領域が存在する。これは、「内外2つの電極間に(数3)で与えられるイオンの安定点が存在しなければならない。さもないとイオンが電極に衝突する」という条件から導き出される。すなわち
(数4)

円柱電極にイオンが衝突しない条件から、(数5)が導き出される。
(数5)

また、円筒電極にイオンが衝突しない条件から、(数6)が導き出される。
(数6)

この2つの値で与えられる領域内のイオンが実際にトラップされることになる。
【0027】
以上の原理を元に、実際の電極の大きさや電圧条件を与えてさらに詳細に説明を進めていく。代入する代表的なパラメータとして、以下の値を用いた。

高周波振幅:200V(2MHz)
DC電圧1V
r1=2mm
r2=20mm
長さ=90mm

これらの装置パラメータ値を用いた場合、(数5)および(数6)より、トラップ可能な質量レンジとしてm/z=13-1325が得られた。本イオントラップの応用例として、種種の環境汚染物質や不正薬物、危険物などが考えられるが、これらの応用例の場合、イオンの価数Zは1となる場合が多いので、分子量として、概ね13から1300くらいがトラップ可能となる。この領域はこれらの応用例で検出されるべき分子の分子量範囲を網羅している。
【0028】
中心軸方向のイオンの捕捉について説明する。課題を解決するための手段で示したように、本発明では中心軸方向のイオンの捕捉の手段として以下の2つを開示した。すなわち、
(1) 両端に円盤状の端電極を備えてDC電圧を印加してイオンの漏出を防ぐ (図3(A))。
(2) 円筒電極の両端が短絡した円筒電極と導通した端電極をつける。これにより、RF電圧が変形されて、擬ポテンシャルとしてイオン集束力が発生する(図3(B))。
(1)では、端電極に直流電圧によりDC電場をかけることにより、イオンをトラップする。また、(2)では、RFによる電磁波が電極外に漏れるのを防ぐことができ、また、(1)に比べて部品点数が減ることにより、より安価に実施できる方法として優れていると考えられる。
【0029】
図3(B)の電極形状で与えられるポテンシャルを数値的に計算し、(数2)と同様に擬ポテンシャルを計算して導出したポテンシャルを図4に示した。ポテンシャルの深さは色の濃淡で示しており、より濃い色が深いポテンシャル、より白い色が浅いポテンシャルを示している。計算には前記の代表的な装置パラメータを用いた。
【0030】
図4(A)に示したようにポテンシャルの底は端部から切り離されて、中心軸方向においてもイオンが捕捉されるポテンシャルが形成されている様子がわかる。ただし、図4(B)のように、M/Zが小さくなると、ポテンシャルの底が電極上に形成されてイオンが失われるポテンシャルとなることがわかった。これは、M/Zが小さくなると高周波による外向きのポテンシャルが大きくなるために、静電圧による内向きの力に勝って、イオンが失われてしまうことを示している。とくに、ポテンシャルの底となっている角の部分は電場が弱くなるためにこの影響が顕著となることを示している。結局、本方式により、イオンの中心軸方向の捕捉は可能ではあるが、低マス側でやや質量領域が狭くなることがわかった。ただしその量は小さいものであり、応用上影響はほとんどないと考えられる。
【0031】
以上をまとめると、本方式には以下の大きな特徴がある。
(1)イオンは(数3)で与えられる半径の円筒上に面上に集束される。一方、従来の3次元トラップ(いわゆるPaul trap)では1点上に集束される。また、従来の2次元トラップ(いわゆる線形イオントラップ)では1直線集束される。
(2)m/zの異なるイオンは異なる半径の円筒上に面上に集束される。これに対し、従来のPaul trapでは同一点上に異なるm/zを持つイオンが集束される。また、従来のlinear trapでは同一直線上に異なるm/zを持つイオンが集束される。
本発明による1次元イオントラップの2つの特徴により、実施例2に示すような質量分析に応用した場合において、従来法よりも、複数イオン間の相互作用、空間電荷効果を大きく低減できる。
【0032】
試料となるイオンは、円筒電極に開けた穴から導入する方法がもっとも簡便である。本イオントラップは、いわゆるあら引きポンプ(ロータリーポンプ、ダイアフラムポンプなどの低真空用ポンプ、高真空を実現するターボ分子ポンプ相当を用いないことを想定している)で容易に実現される1Torr(0.01Pa)の真空度に設置されていると想定する。この場合、真空度と粘性抵抗の関係として、典型的なイオンモビリティKの値は0.8-2.4cm^2/V/sec(for 14-500amu @ ambient pressure)である。
【0033】
【非特許文献1】“Ion Mobility Spectrometry” G.A.Eicemann & Z.Karpas CRC press. 2005この条件下で、円筒電極から導入したイオンの軌道を計算した結果を図5に示した。(1)はM/Z=20の場合、(2)はM/Z=200の場合、(3)はM/Z=1000の場合、(4)はM/Z=1500の場合を示す。イオンの軌道が平衡となったときのイオンの位置する半径は(数3)で与えられる値と等しい。ただし、(4)の場合は不安定条件となっているために、電極と衝突して失われている。本計算によるとイオンは1ミリ秒以下で導入される。すなわち本方式は約1ミリ秒でイオンが安定するために、高速なオペレーションが可能となる。なお、m/z=20の軌跡が太く見えるのは高周波による強制振動(いわゆるマイクロモーション)が原因である。このマイクロモーションが大きいと、イオンの存在位置がぼけてしまい、質量分析応用での質量分解能に影響を与える。マイクロモーションを小さくするには、高周波周波数を大きくすること、および、Udcを小さくすることが有効である。本実施例で与えたように、2MHz以上がその適正値として導出された。また、さらにイオン導入をさらに早くするには、イオンの安定位置は変えないように、VrfとUdcを大きくしてポテンシャルを深くすればよい。式3,5,6で与えたように、Vrf^2∝Udcの関係を保てばポテンシャルの形状は変わらない。
【0034】
なお、式3,4を応用すれば、本1次元イオントラップ内部にて、特定のM/Zを持つイオンを単離することも可能である。すなわち、ターゲットとなるイオンのM/Zに対し、高周波電圧もしくは静電圧を変化させて、2つの安定性境界m1(重い側)もしくは、m2(軽い側)に接近させていく。m1に接近させていくと、大きなM/Zが排除されていき、また、m2に接近させていくと小さなM/Zを持つイオンが排除されていく。2つの安定境界に同時に近づけることは出来ないが、2つの操作を組み合わせることにより、イオンが単離される。単離の分解能は、ターゲットとなるイオンのM/Zをどの程度安定境界に近づけるかにより決定される。
【実施例2】
【0035】
1次元イオントラップの分析手段としての応用例を開示する。その原理は、実施例1での安定領域を与える(数3)、(数4)が根拠となる。すなわち、質量分析の方式としてトラップ条件による不安定性を利用する。課題を解決するための手段でも示したように、安定にトラップされていたイオンを、制御しながら電圧条件を変化させて不安定としたとき(すなわち質量選択的に不安定にして)、電極に衝突して発生した電子電流を電流計にて計測することをもって、トラップされたイオンのM/Zと量を測定する。その特徴として、イオンの静的な安定条件を用いて質量分析するため、ガス圧に依存せず分析を行うことができる。すなわち、低真空でも動作可能である。ここで、低真空とは、一般的に1Torr〜10-6Torrを程度であり、また、高真空とは、10-6Torr〜10-8Torr程度である。なお、従来法の質量分析操作方法では、イオンの共鳴振動を利用するため、ガスとの衝突は分解能に大きく影響するため、低真空動作は不可能であり、高真空とすることが必要である。
本1次元イオントラップを用いた質量分析の実施の方式として、イオンの検出方法には以下の2つの方式が考えられる。
(A)イオンを円柱電極に質量選択的に衝突させて、イオン電流を計測する。
(B)イオンを円筒電極に質量選択的に衝突させて、イオン電流を計測する。
本1次元イオントラップを用いた質量分析の実施の方式として、3つの質量選択的スキャン方式が考えられる。
(1) 高周波振幅をスキャンする。
(2) 静電圧をスキャンする。
(3) 高周波の周波数をスキャンする。
原理的には以上からなる6通りの組み合わせが可能であるが、質量分解能の良さを指標としたときに優劣があることを示す。本実施例では、(A)(B)−(1)(2)の組み合わせを下記に検討した。計算で使用したパラメータは前述のとおりである。(3)の場合は、振幅を一定にして、デジタル波の周波数をスキャンすることにより、質量選択的スキャンをすることができる。
【0036】
優劣の判断基準は、横軸を変化させるパラメータとし、縦軸を安定−不安定境界質量とした図を作成した場合、プロットされた結果が直線になる場合が、もっとも質量分解能を得やすい。そこで、直線関係に最も近い場合を選択することにした。計算の結果を図6に示した。
【0037】
図6(A)には、高周波振幅をスキャンしてイオンを検出する場合の計算結果を示した。A1で示したラインは円柱電極2においてイオンが衝突するM/Zの値、A2で示したラインは円筒電極1においてイオンが衝突するM/Zの値を示している。2つの線で囲まれた領域にあるイオンが安定に捕捉され、この安定領域以外の部分ではイオンは円柱電極もしくは円筒電極に衝突して安定にイオンはトラップされない。
【0038】
また図6(B)には、静電圧をスキャンしてイオンを検出する場合の計算結果を示した。B1で示したラインは円柱電極2においてイオンが衝突するM/Zの値、B2で示したラインは円筒電極1においてイオンが衝突するM/Zの値を示している。2つの線で囲まれた領域にあるイオンが安定に捕捉され、この安定領域以外の部分ではイオンは円柱電極もしくは円筒電極に衝突して安定にイオンはトラップされない。
【0039】
A1のラインが示すように、このラインを与える高周波振幅をスキャンしながら円柱電極(内側の電極)でイオン電流を検出する方式の計算結果が直線に近く、検出が容易であると考えられる。他の方式でも、原理的には質量分析操作が可能である。A2には、高周波振幅をスキャンし、円筒電極(外側電極)でイオンを検出する場合を示した。高周波振幅のスキャン量に対して、不安定となっていく質量範囲が狭いため、マスレンジが狭いが、利用可能である。B1はDC電圧をスキャンし、円柱電極でイオンを検出する場合を示している。高質量領域で少しの電圧の変化で大きく不安定域が変化するために、高質量で分解能が出にくいが、検出には利用可能である。さらに、B2にはDC電圧をスキャンし、円筒電極にてイオン電流を検出する場合を示した。この場合も、少しのパラメータ変化に対して不安定となる質量の変化が大きく、高分解能を得にくくいが、利用可能である。
【0040】
以上のように、原理的にはすべての操作方式で質量スペクトルを得られる可能性はあるが、分解能を得やすいということから、A1で示したような、高周波振幅をスキャンし、円柱電極(内側電極)でイオンを検出する方式が最良の実施形態として考えられる。また、B1で示したような静電圧をスキャンし、円柱電極(内側電極)でイオンを検出する方式が次善の実施形態として考えられる。
【0041】
以上の原理を実施するための装置構成を図7に示した。イオントラップ部分は、円筒電極1、円柱電極2、両者を絶縁し、かつ円柱電極を支える絶縁体7、8、これらのトラップ電極を収める真空槽9、真空ポンプ10、イオン源11、そして、イオン源で発生させたイオンを真空槽に導入するためのパイプ12からなる。図1での高周波電源3は以下の各要素からなる。発信器15、乗算器17、高周波増幅器18、ステップアップ高周波トランス19、RF振幅モニター回路20、コンデンサー21,22、そしてフィードバックアンプ16である。電流モニター回路は電流アンプ23からなる。以上の高周波振幅と静電圧の制御および電流値の読み出しは、コンピュータ13によって制御されるデジタル→アナログ/アナログ→デジタル変換器14によりおこなう。なお、真空ポンプ10はダイアフラムポンプを用いる。
【0042】
ここで、回路部分の説明をおこなう。コンピュータ13に指令により変換器14によって発生させた高周波振幅制御電圧は、フィードバックアンプ16を経て発信器15の信号と掛け合わされて、振幅制御された高周波信号が高周波アンプ18に入力される。電力増幅された高周波信号はさらにトランス19により増幅されて、円柱電極2に入力される。トランス19の出力端の電圧の振幅を低静電圧に変換して、フィードバックアンプ16に入力する。この回路は負のフィードバック回路となっており、トランス19の出力電圧が常に、変換器14が出力した制御電圧に比例するように制御される。なお、発信器15の出力信号は正弦波が好ましいが矩形波でもかまわない。なぜならば、トランス19とイオントラップ電極が構成する回路は共鳴回路であり、共鳴する正弦波成分のみが増幅されるので、実際にイオントラップに印加される電圧は正弦波となるためである。
【0043】
静電圧は変換器14が発生した電圧を円筒電極1に入力する。このとき、高周波電力が変換器14を通過しないようにするために、コンデンサー21,22を用いてトランス19に接続するとともに、必要に応じて変換器14とのあいだに電気抵抗(1MΩ程度)を挿入する。これにより、高周波電力がトランスとトラップ電極のあいだに局在する。イオン電流は円柱電極2からトランスを経て電流アンプ23に入力される経路をたどる。電流アンプの出力は変換器14を経て、コンピュータにて解析される。
【0044】
解析の手順としては、上記のA1モードがもっとも好ましい。高周波振幅を200V程度と大きく設定しておき、イオン源で発生させたイオンをトラップする。約1ミリ秒後にはイオンは平衡状態に至るので、高周波振幅を小さくする方向にスキャンする。すると、高周波による外向きの力が小さくなるためにイオンは中心方向に移動していく。電極にイオンが衝突すると、イオン電流としてイオン量が検出される。以上のように、高周波振幅に対するイオン電流を測定すると、質量スペクトルを得ることが出来る。高周波振幅からイオンのM/Zに変換するときには、(数3)を用いる。
【実施例3】
【0045】
イオンモビリティ分析手段としての応用例を示す。装置構成としては実施例2と同様の構成を用いることができる。
【0046】
はじめに質量分析操作(実施例2)を実施して、ターゲットとなるイオンのM/Zを決定する。そして、このイオン種を単離する。単離の方法は実施例1に示した通りである。この単離したイオンをドリフト距離が長くなるようにイオントラップの外側近傍に位置するように、高周波振幅を高く設定する。そして、Vrfを瞬時に切る。そうすれば、イオンモビリティKの大きいイオンから先に円柱電極に衝突することになる。高周波を切った時間とイオン電流が計測される時間差がイオンモビリティーをあらわす。以上を用いれば、試料イオンに対する電荷質量比とイオンモビリティの2次元測定が可能となる。また、同様に静電圧を瞬間的にOFFにして円筒電極にて電流を検知することにより、イオンモビリティの測定が可能である。
図8には、イオンモビリティKの値が50%異なる場合の2つの計算結果を示した。イオンのM/Z値は200であり、1Vの静電圧を与えた場合を示した。(1)で示した軌跡が(2)で示した軌跡に対して50%イオンモビリティが大きい。このように、円柱電極表面(点線で示した)に到達する時刻がKの値により異なるので、同じM/Zにもかかわらずイオンモビリティ値の異なるイオンを区別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の1次元イオントラップの電極構造と基本回路を説明する図。
【図2】本発明の1次元イオントラップのイオントラップポテンシャルを説明する図。
【図3】本発明の1次元イオントラップの中心軸方向にイオンをトラップする電極構造を説明する図。
【図4】本発明の1次元イオントラップの中心軸方向にイオンをトラップするポテンシャルを説明する図。
【図5】イオンを導入する際のイオンの軌跡を計算した結果を示す図。
【図6】本発明の1次元イオントラップ内部でのイオンの安定領域を示す図。
【図7】本発明の1次元イオントラップの実施形態を説明する図。
【図8】本発明の1次元イオントラップでのイオンモビリティーの違いによるイオンの軌跡の差を示した図。
【符号の説明】
【0048】
1 円筒電極、2 円柱電極、3 高周波電源、4 静電圧電源、5−6 壁電極、7−8 絶縁体、9 真空槽、10 真空ポンプ、11 イオン源、12 イオン導入パイプ、13 コンピュータ、14 デジタル→アナログ・アナログ→デジタル変換器、15 発信器、16 フィードバックアンプ、17 乗算器、18 高周波パワーアンプ、19 ステップアップ高周波トランス、20 高周波モニター回路、21−22 コンデンサー、23 電流アンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧によるポテンシャルと交流電圧によるポテンシャルにより形成された1次元ポテンシャルに荷電粒子を捕捉することを特徴とするイオントラップ。
【請求項2】
請求項1に記載のイオントラップにおいて、直流電圧に接続した第1の電極と、交流電圧に接続した第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加する電源と、前記電源から印加する電圧を制御する制御部とを有し、前記1次元ポテンシャルは、前記第1の電極と前記第2の電極との間に形成されることを特徴とするイオントラップ。
【請求項3】
請求項2に記載のイオントラップにおいて、前記第1の電極と前記第2の電極との間で前記荷電粒子にかかる力の密度が素から密の分布をなすように、前記第1の電極と前記第2の電極の形状が形成されていることを特徴とするイオントラップ。
【請求項4】
請求項2に記載のイオントラップにおいて、前記第1の電極と前記第2の電極のどちらか一方が円柱電極であり、他方が前記円柱電極と軸を共通し前記円柱電極を囲む円筒電極であることを特徴とするイオントラップ。
【請求項5】
請求項2に記載のイオントラップにおいて、前記第1の電極と前記第2の電極のどちらか一方が球状電極であり、他方が前記球状電極を囲む中空球電極であることを特徴とするイオントラップ。
【請求項6】
請求項1に記載のイオントラップにおいて、前記直流電圧が静電圧であり、前記交流電圧が高周波電圧であることを特徴とするイオントラップ。
【請求項7】
円柱電極と、前記円柱電極と軸を共通し前記円柱電極を囲む円筒電極とを備えた電極部と、
前記円柱電極と前記円筒電極のどちらか一方に交流電圧を印加し、他方に直流電圧を印加する電源とを有することを特徴とするイオントラップ。
【請求項8】
請求項2に記載のイオントラップにおいて、前記制御部によって前記電源から印加される交流電圧と直流電圧とを制御することにより、ポテンシャルの極小値を形成させ、前記第1の電極と前記第2の電極との間に荷電粒子を捕捉することを特徴とするイオントラップ。
【請求項9】
請求項4に記載のイオントラップにおいて、前記電極部の両端に端電極を設置し、前記電源は、さらに前記端電極に静電圧を印加することを特徴とするイオントラップ。
【請求項10】
請求項4に記載のイオントラップにおいて、前記円筒電極は、両端に短絡した端電極を備え、前記電源は、さらに前記端電極に静電圧を印加することを特徴とするイオントラップ。
【請求項11】
請求項1に記載のイオントラップにおいて、前記円柱電極と前記円筒電極は、半径が軸方向に一定であることを特徴とするイオントラップ。
【請求項12】
請求項1に記載のイオントラップにおいて、さらに前記真空排気手段として低真空用真空排気手段を備えたことを特徴とするイオントラップ。
【請求項13】
円柱電極と、前記円柱電極と軸を共通し前記円柱電極を囲む円筒電極とを備えた電極部と、前記円柱電極と前記円筒電極のどちらか一方に交流電圧を印加し、他方に直流電圧を印加する電源と、前記電源から印加する電圧を制御する制御部とを有するイオントラップと、
前記電極部の電流を検出する電流検出手段とを備え、
前記制御部により、前記電源から印加している電圧の大きさを変えてスキャンしながら前記電流検出手段により電流を計測することにより、前記電極部に捕捉されたイオンの質量スペクトルを取得することを特徴とする質量分析計。
【請求項14】
請求項13に記載の質量分析計において、前記制御部により、前記電源から印加している交流電圧を大きい側から小さい側にスキャンしながら前記電流検出手段により電流を計測することを特徴とする質量分析計。
【請求項15】
請求項6に記載の質量分析計において前記電源から印加している直流電圧を小さい側から大きい側にスキャンしながら前記電流検出手段により電流を計測することを特徴とする質量分析計。
【請求項16】
請求項13に記載の質量分析計において、前記制御部により交流電圧の周波振幅値を制御することにより、前記イオントラップに捕捉されたイオンのうち特定M/Zの範囲のイオンを単離することを特徴とする質量分析計。
【請求項17】
請求項13に記載の質量分析計において、前記制御部により直流電圧値を制御することにより、前記イオントラップに捕捉されたイオンのうち特定M/Zの範囲のイオンを単離することを特徴とする質量分析計。
【請求項18】
請求項6に記載の質量分析計において、前記制御部は、高周波振幅を2MHz以上に設定することを特徴とする質量分析計。
【請求項19】
円柱電極と、前記円柱電極と軸を共通し前記円柱電極を囲む円筒電極とを備えた電極部と、前記円柱電極と前記円筒電極のどちらか一方に交流電圧を印加し、他方に直流電圧を印加する電源と、前記電源から印加する電圧を制御する制御部とを有するイオントラップと、
前記電極部の電流を検出する電流検出手段と、
前記制御部により、特定のM/Zを持つイオンを単離し、単離されたイオンについて、前記電源から印加している電圧をON状態からOFFにして前記電流検出手段により電流を計測することにより、前記電極部に捕捉されたイオンのモビリティを計測することを特徴とするイオンモビリティ分析計。
【請求項20】
請求項19に記載のイオンモビリティ分析装置において、前記制御部により前記電源の直流電圧をON状態からOFFにし、前記電流検出手段は、前記円筒電極の電流を測定することを特徴とするイオンモビリティ分析計。
【請求項21】
請求項19に記載のイオンモビリティ分析装置において、前記制御部により前記電源の交流電圧をON状態からOFFにし、前記電流検出手段は、前記円柱電極の電流を測定することを特徴とするイオンモビリティ分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−9863(P2009−9863A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171378(P2007−171378)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】