説明

イオントラップ型質量分析装置

【課題】質量プロファイルを積算するための質量分析の繰り返し回数を減らすことで測定時間の短縮化を図りつつ、信号強度を増加させる。
【解決手段】イオントラップ4内に形成した高周波電場によりイオンを捕捉している状態で、主電圧発生部10からリング電極41に印加する矩形波状の高周波電圧を一時的に停止し、イオントラップ4内に静電場のみが存在する状態で次のイオンをイオン入射口44からイオントラップ4内に導入する。それまでに捕捉していたイオンの少なくとも一部がイオントラップ4内に留まっている間に高周波電圧の印加を再開することで、それまでのイオンに加えて新たに導入したイオンを捕捉し、蓄積するイオンの量を増やして質量分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電場の作用によってイオンを閉じ込めるイオントラップを備えるイオントラップ型質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高感度の質量分析装置として、3次元四重極型イオントラップを利用したイオントラップ型質量分析装置が広く用いられている。3次元四重極型イオントラップは一般に、内面が回転1葉双曲面形状を有する1個のリング電極と、このリング電極を挟んで配置された、内面が回転2葉双曲面形状の一対のエンドキャップ電極とから構成される。
【0003】
イオントラップ型質量分析装置の基本的な構成は、上記のようなイオントラップのほかに、被測定物質をイオン化するイオン源、イオン源で生成されたイオンを輸送してイオントラップ内に導入するイオン輸送光学系、イオンを検出するイオン検出器を含み、イオン源で生成されたイオンをイオン輸送光学系により輸送してイオントラップ内に導入して捕捉し、その後にイオンを質量に応じて分離するべく、特定の質量を有するイオンのみを順次励起してイオントラップから排出してイオン検出器に導入することで検出する。また、このようにイオントラップにより質量分離を行うのではなく、イオントラップはイオンを一時的に蓄積する(又は場合によってはイオンを開裂させる)ために使用し、イオントラップから一斉に排出した各種イオンを飛行時間型質量分析装置に導入して、そこで質量分離を行った後に検出する構成とすることもできる。なお、この構成は一般にイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)と呼ばれるが、本明細書ではこれもイオントラップ型質量分析装置に含めることとする。
【0004】
なお、上記のようなイオントラップ型質量分析装置において、イオン源が真空雰囲気に設置されている場合には、アインツェル(Einzel)レンズのような静電イオン輸送光学系を用いてイオンを後段の質量分離・検出部へと輸送する。一方、イオン源が大気圧雰囲気中や低真空雰囲気中に設置されている場合、質量分離・検出部は一般に高真空雰囲気中に設置されているため、差動排気系の構成を採用するとともに高周波イオンレンズなどの高周波電場を使用したイオン輸送光学系を用いて、質量分離・検出部までイオンを輸送するようにしている。
【0005】
従来一般的なイオントラップでは、リング電極に正弦波状の高周波電圧を印加することで、電極で囲まれる空間に捕捉用の高周波電場を形成し、この高周波電場によりイオンを振動させつつ閉じ込めるようにしている。これに対し、最近、正弦波電圧の代わりに矩形波電圧をリング電極に印加することでイオンの閉じ込めを行うデジタルイオントラップ(Digital Ion Trap:DIT)が開発されている(特許文献1、非特許文献1など参照)。
【0006】
前者のような従来のアナログ方式のイオントラップでは、正弦波状の高周波電圧を発生するためにLC共振器を用いており、その振幅を変化させることで捕捉可能なイオンの質量範囲を制御している。一方、後者のデジタル方式のイオントラップでは、直流電圧を高速でスイッチングすることで矩形波状の高周波電圧を発生しており、高周波電圧の振幅を一定に維持したまま周波数を変化させることで捕捉可能なイオンの質量範囲を制御する。従って、デジタル方式ではアナログ方式に比べてリング電極に印加する高電圧の振幅が小さくて済むので、電源回路が低コストで構成できるとともに、不所望な放電の発生も回避できるという利点がある。そのため、アナログ方式では放電により生じる捕捉可能なイオンの質量範囲の制約が、デジタル方式では原理的にない。
【0007】
ところで、試料が生体由来の試料であるような場合、上記のようなイオントラップに捕捉されるイオンを生成するイオン源としてはマトリクス支援レーザ脱離イオン源(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)などのレーザ脱離イオン源(Laser Desorption Ionization:LDI)がよく用いられる。
【0008】
MALDIとDITとを組み合わせたイオントラップ型質量分析装置では、レーザ光をパルス的にサンプルに1回照射し、それによりサンプルから発生したイオンをイオントラップに導入する。そして導入したイオンを安定的にイオントラップの内部に捕捉した後に、特定の質量電荷比を有するイオンを励振させてイオントラップから排出し、これをイオン検出器で検出する。励振するイオンの質量電荷比を走査することで質量走査を行い、これにより得られる検出信号に基づいて質量スペクトルを作成する。
【0009】
しかしながら、一般的にMALDIでは、1回のレーザ光照射によっては十分な量のイオンが発生しないことが多く、上記のような1回の質量分析により得られる質量スペクトルのS/Nは低い。そこで、レーザ光照射によるイオンの生成→イオントラップへのイオンの導入→イオンの捕捉(クーリング)→質量分離・検出、というサイクルを繰り返し、それぞれ得られた質量プロファイルを積算処理することによりS/Nを向上させるようにしている。上記サイクルの繰り返し回数を増やすほど質量スペクトルのS/Nは改善されるものの、測定結果つまり最終的な質量スペクトルを取得できるまでの測定時間が長くなってしまい、スループットが低いという問題がある。
【0010】
特に、レーザ光の照射位置を試料上で走査することで2次元的な質量分析を行う質量分析イメージングでは、多数の測定点の質量分析を繰り返す必要があるため、上記のような手法でS/Nを改善しようとすると膨大な測定時間が必要となる。
【0011】
また、大気圧下でMALDIなどによりイオン化を行う構成では、上述したように、高周波電場を用いたイオン輸送光学系を通してイオントラップ内にイオンを導入し、その場合には、イオン輸送光学系内でイオンを一旦蓄積した上でイオントラップに導入することができる。しかしながら、こうしたイオン輸送光学系ではイオン輸送効率が質量依存性を有するため、イオントラップに導入できるイオンの質量範囲が限定されてしまうという問題もある。
【0012】
【特許文献1】特表2003−512702号公報
【非特許文献1】古橋、竹下、小河、岩本、「デジタルイオントラップ質量分析装置の開発」、島津評論、島津評論編集部、2006年年3月31日、第62巻、第3・4号、pp.141−151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、質量分析のS/Nを向上させることができるイオントラップ型質量分析装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、従来と同等の品質(例えばS/N)の測定データを取得するために測定時間を短縮することができ、分析のスループットの向上、コストの削減に寄与するイオントラップ型質量分析装置を提供することにある。さらにまた、本発明の他の目的は、1回の質量分析で分析可能なイオンの質量範囲を広げることができるイオントラップ型質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明は、イオンを生成するイオン源と、複数の電極で囲まれる空間に形成される電場によりイオンを捕捉するイオントラップと、を具備し、前記イオン源で生成されたイオンを前記イオントラップ内に導入して捕捉した後に、該イオントラップによりイオンを質量分離して又は該イオントラップから排出した後に質量分離して検出するイオントラップ型質量分析装置において、
a)前記イオントラップ内にイオンを捕捉するための高周波電場を形成するべく、前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つの電極に矩形波状の高周波電圧を印加する電圧印加手段と、
b)複数の電極の1つに矩形波状の高周波電圧を印加することにより前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で、一時的に該高周波電圧の印加を停止することにより前記イオントラップ内に静電場を形成して外部からイオンを導入し、所定時間経過後に該高周波電圧の印加を再開して新たに導入されたイオンをそれ以前に捕捉していたイオンと併せて捕捉するように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0015】
本発明の典型的な一態様として、上記イオントラップは、リング電極と一対のエンドキャップ電極とを有する3次元四重極イオントラップである構成とすることができる。この場合、リング電極に矩形波状の高周波電圧を印加することで、イオンを捕捉するための高周波電場をイオントラップ内に形成することができる。
【0016】
本発明に係るイオントラップ型質量分析装置において、電圧印加手段では、特許文献1、非特許文献1などに開示されているように、例えば、直流電源による所定の直流電圧をパワーMOSFETなどの高速動作可能なスイッチング素子により切り替えることにより、矩形波状の高周波電圧を発生させる。こうした構成では、高周波電圧の発生の停止やその再開もきわめて高速に行うことができる。
【0017】
例えば3次元四重極イオントラップを構成するリング電極に矩形波状の高周波電圧を印加することでイオンを捕捉している状態のときに、矩形波状の高周波電圧の印加を停止すると、例えばエンドキャップ電極に設けられたイオン入射口を通してイオントラップ内に入射しようとするイオンに対して高周波電場が作用しなくなるため、イオンはイオン入射口を通過し易くなる。即ち、イオンはイオントラップ内に導入され易くなる。高周波電場が存在しなくなることで、その直前にイオントラップに安定的に捕捉されているイオンに対する拘束力がなくなり、イオンは発散しようとするが、イオンが一気に消失するわけではない。従って、高周波電圧の印加停止時点から適宜の時間が経過するよりも前に高周波電圧の印加を再開することにより、先に捕捉されていたイオンの中の少なくとも一部のイオンを、新たに追加的に導入されたイオンとともに再び捕捉することができる。これにより、イオントラップ内に捕捉しているイオンの量を確実に増加させ、より多量のイオンを質量分析に供することができる。
【0018】
高周波電圧の印加を停止している時間が短ければ、その直前に捕捉されていたイオンが発散することによるイオン量の減少は少なくて済むが、新たに導入されるイオンの量も少なく、しかも質量範囲がかなり狭くなってしまう。そこで、一実施態様として、イオントラップへイオンを導入するために高周波電圧の印加を停止する時間を1μs〜50μsの範囲に設定するとよい。
【0019】
本願発明者の実験によれば、高周波電圧の印加停止時間を50μs以内とすれば、その直前に捕捉していたイオンの少なくとも一部を再び捕捉することが可能である。一方、高周波電圧の印加停止時間を1μs以上とすれば新たに導入されるイオンの質量範囲を或る程度満足できる範囲とすることができる。
【0020】
また本発明に係るイオントラップ型質量分析装置では、イオントラップへのイオンの導入と該イオントラップ内でのイオンの捕捉のサイクルを複数回繰り返し行った上で、該イオントラップ内に捕捉されているイオンの質量分離・検出を行う構成とすることが好ましい。
【0021】
前述したような質量分析の一連のサイクルの中で、イオントラップへのイオンの導入や捕捉に要する時間に比べて、イオンの質量分離及び検出や質量プロファイルの積算処理などに要する時間は相対的に長い。従って、イオントラップ内へのイオン導入・捕捉を複数回繰り返してイオントラップ内に蓄積するイオンの量を増やした後に質量分離・検出を行うことにより、1つの試料に対する測定時間をそれほど増加させることなく、得られる質量スペクトルのS/Nを改善することができる。
【0022】
但し、イオンがイオントラップに導入される際に導入・捕捉されるイオンの質量範囲は、イオンの導入条件によって相違する。そのため、常に同一のイオン導入条件で以てイオンの導入を繰り返すと、特定の質量範囲のイオンの信号強度は増大するが、質量範囲は広がらない。そこで、質量分析するイオンの質量範囲を広げたい場合には、イオントラップへの複数回のイオンの導入の繰り返しの際に、イオンの導入条件を少なくとも1回変えるようにするとよい。
【0023】
ここで、イオンの導入条件とは、例えばイオントラップへイオンを導入するために高周波電圧の印加を停止する時間である。この時間を長くすることで、イオントラップに導入されて捕捉されるイオンの質量範囲を質量軸方向にずらすことができる。
【0024】
また、それ以外のイオンの導入条件として、イオントラップへイオンを導入するときに該イオントラップ内に形成される静電場と該イオントラップまでイオンを輸送するイオン輸送光学系への印加電圧とで決まるイオンの加速電圧が挙げられる。この加速電圧を変えると同一質量のイオンに与えられる運動エネルギーが変化し、イオントラップのトラップ空間内にイオンが到達するまでの時間が変わる。従って、導入時間一定のまま加速電圧を変化させると、イオントラップに導入されて捕捉されるイオンの質量範囲を質量軸方向にずらすことができる。
【0025】
また本発明に係るイオントラップ型質量分析装置では、好ましくは、イオントラップ内へのイオン導入と同期して該イオントラップ内にクーリングガスを導入するガス導入手段をさらに備える構成とするとよい。
【0026】
イオントラップへのイオンの追加的な導入に先立ってクーリングガスをイオントラップ内に供給しておくと、イオントラップ内に先に捕捉されているイオンがクーリングガスと衝突するため、高周波電場が形成されていない中でもイオンが発散して電極に衝突したりそのままイオントラップから吐き出されてしまったりすることを軽減することができる。それによって、高周波電圧の印加が再開されたときに、イオンが捕捉される確率が高まり、効率良くイオンをイオントラップ内に蓄積することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るイオントラップ型質量分析装置によれば、イオントラップにイオンを捕捉した状態でさらに新たに生成したイオンをそのイオントラップ内に追加して導入することができる。そのため、イオントラップ内に捕捉するイオンの量を増加させた後に質量分離・検出を行うことができ、従来よりも、高い信号強度で目的イオンを検出し、質量スペクトルのS/Nも改善することができる。また、従来のように質量分析を繰り返してその結果を積算しなくても、或いはそうした質量分析の繰り返しと積算の回数を減らしても、十分に高いS/Nの質量スペクトルを作成することができるから、測定時間を従来よりも大幅に削減することができる。これにより、分析のスループットを向上させることができるとともに、1つの試料の分析に要するコストを削減することができる。
【0028】
また、本発明に係るイオントラップ型質量分析装置において、イオン導入と捕捉とのサイクルを繰り返す際にイオン導入条件を変化させることにより、イオントラップに蓄積するイオンの質量範囲を広げることができるため、1回の質量分析においてより広い質量範囲の質量スペクトルを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施例であるイオントラップ型質量分析装置について図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施例のイオントラップ型質量分析装置の要部の構成図である。
【0030】
このイオントラップ型質量分析装置は、イオン源1、イオン輸送光学系2、3次元四重極型のイオントラップ4、イオン検出器5を含む。ここでは、イオン源1は大気圧下で試料にレーザ光を照射して試料をイオン化する大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン源(AP−MALDI)であるが、それ以外の大気圧イオン源でもよく、さらには大気圧下でなく真空雰囲気の下でイオン化を行うイオン源でもよい。大気圧下でイオン源1において生成されたイオンは図示しない差動排気系の構成により真空雰囲気中に導入され、イオン輸送光学系2を通して輸送される。ここではイオン輸送光学系2は高周波電圧(実際には高周波電圧と直流電圧とが重畳された電圧)が印加されたイオンレンズであり、例えば多重極ロッド型の構成などを用いることができる。なお、イオン源1が真空雰囲気中に配設された構成では、イオン輸送光学系2としてアインツェルレンズのような静電レンズを用いることができる。
【0031】
イオントラップ4は、内面が回転1葉双曲面形状を有する1個の円環状のリング電極41と、それを挟むように対向して設けられた、内面が回転2葉双曲面形状を有する一対のエンドキャップ電極42、43とから成り、これら電極41、42、43で囲まれた空間が捕捉領域となる。リング電極41には主電圧発生部10が接続され、エンドキャップ電極42、43には補助電圧発生部9が接続されており、いずれの電圧発生部9、10も制御部8により制御される。入口側エンドキャップ電極42の中央にはイオン入射口44が穿設され、出口側エンドキャップ電極43にあってイオン入射口44とほぼ一直線上にはイオン出射口45が穿設されている。
【0032】
イオン輸送光学系2の出口でイオントラップ4のイオン入射口44の外側にはゲート電極3が配置されている。図示しないが、このゲート電極3に印加する電圧を制御することで、イオントラップ4内に導入する前にイオンを一時的にイオン輸送光学系2の内部に蓄積し、イオントラップ4内へパルス状にイオンを導入することができるようにしている。またイオントラップ4内にクーリングガス(一般的にはHeガス)を導入できるように、パルスバルブを含むクーリングガス供給部7が設けられている。
【0033】
ここでは、イオントラップ4は単にイオンを捕捉して蓄積するだけでなく、イオンを質量(厳密には質量電荷比m/z)に応じて分離する質量分析器としても機能する。このイオントラップ4のイオン出射口45の外側にイオン検出器5が配設されている。イオン検出器5は、イオンを電子に変換するコンバージョンダイノードと二次電子増倍管とから成り、入射したイオンの量に応じた検出信号をデータ処理部6に送る。
【0034】
本実施例のイオントラップ型質量分析装置では、イオントラップ4はいわゆるデジタルイオントラップ(DIT)であり、主電圧発生部10は、所定の電圧値である直流電圧をスイッチングすることで矩形波状の高周波電圧を発生する回路を備える。即ち、デジタル制御回路17は、所定周波数の基準クロック信号を生成する回路、基準クロック信号をカウントするカウンタ回路、カウンタ回路の出力に対して論理演算を行うゲート回路などを含み、制御部8の指令に基づいて、後述する3系統の制御パルスS1、S2、S3を生成して出力する。第1電圧源11により生成される直流電圧V1をオン・オフする第1スイッチ14は制御パルスS1により駆動され、第2電圧源12により生成される直流電圧V2をオン・オフする第2スイッチ15は制御パルスS2により駆動され、第3電圧源13により生成される直流電圧V3をオン・オフする第3スイッチ16は制御パルスS3により駆動される。
【0035】
第1乃至第3スイッチ14、15、16は例えばパワーMOSFET等の高速動作可能なスイッチング素子である。第1乃至第3スイッチ14、15、16はいずれか1つのみがオンされ、オン状態であるスイッチに対応した電圧が選択的に出力される。従って、3つの制御パルスS1、S2、S3の「1(Hレベル)」又は「0(Lレベル)」のパターンの組み合わせが、主電圧発生部10から出力される矩形状の高周波電圧の変化のパターンを決めることになる。
【0036】
図2は、制御パルスS1、S2、S3とリング電極41及びエンドキャップ電極42、43に印加される電圧との関係を示す波形図である。
【0037】
イオントラップ4内にイオンを捕捉する際には、図2(a)、(b)、(c)において(I)期間で示すように制御パルスS1、S2、S3のパターンを設定する。これにより、リング電極41には図2(d)に示すような、ハイレベルがV1、ローレベルがV2である矩形状の高周波電圧が印加される。このとき、エンドキャップ電極42、43はともに接地状態としておくか、或いはともに適宜の直流電圧を印加しておく。上記のように印加される高周波電圧によってイオントラップ4内には高周波電場が形成され、イオントラップ4内のイオンは吸引と反発との力を交互に受けることで捕捉領域の中央付近に捕捉される。このようにイオントラップ4内にイオンを捕捉する際の電圧V1、V2は電圧源11、12により任意に設定が可能であるが、一例としてV1=+500[V]、V2=−500[V]とすることができる。また、矩形波の周波数fはデジタル制御回路17により任意に設定が可能であるが、一般的には数十kHz〜数MHz程度の範囲である。
【0038】
イオン入射口44を通してイオントラップ4内にイオンを導入する際に、イオントラップ4内に上記のようなイオン捕捉のための高周波電場が形成されていると、イオン入射口44を通して漏れ出す電場の影響でイオンが入射されにくい。そこで、イオンを導入する際には、図2中の(II)期間で示すように、制御パルスS1、S2、S3のパターンを(0、0、1)と設定する。これにより、主電圧発生部10からリング電極41に印加される電圧はV3の一定値、つまりは直流電圧となる。この電圧V3も電圧源13により任意に設定が可能であるが、一例としてV3=0[V]とすることができる。なお、イオンを導入する際には、エンドキャップ電極42、43には適宜の直流電圧が印加されるが、一般的には、出口側エンドキャップ電極43には0[V]又は導入しようとするイオンの極性と同極性の電圧が印加されるようにし、これによってイオントラップ4内に導入されて出口側エンドキャップ電極43に向かうイオンを捕捉領域に跳ね返す。
【0039】
イオンが捕捉されているときには、主としてリング電極41に印加される矩形状の高周波電圧によってイオントラップ4の内部に高周波電場が形成されているが、イオンが導入されるときにはその高周波電圧の印加が急峻に停止されるので、イオントラップ4の内部には静電場(直流電場)のみが形成された状態となる。従って、高周波電場とは異なり、外部からイオン入射口44を経てイオントラップ4内にイオンが入り易くなる。それにより、先行して導入されたイオンを高周波電場によりイオントラップ4内に捕捉している状態で、一時的に高周波電圧の印加を停止してイオントラップ4内を静電場の状態とすることにより、容易にイオンをイオントラップ4内に追加導入することができる。
【0040】
但し、イオントラップ4内に高周波電場が存在しなくなると、それまで捕捉されていたイオンに対する拘束力がなくなって該イオンは発散するから、そのままではイオンは電極41、42、43の内面に衝突して消滅しまったりイオン出射口45から排出されてしまったりして最終的にはなくなってしまう。そこで、イオン導入のために高周波電圧の印加を停止している時間、つまり、リング電極41への印加電圧をV1とV2の繰り返しからV3一定に切り替えた時点から再び高周波電圧の印加を開始するまでの所要時間tを適切に設定し、それ以前にイオントラップ4内に捕捉していたイオンの減少をできるだけ抑えつつ、新たにイオンを導入してそれを併せて捕捉することが必要である。
【0041】
図5は本願発明者が行った実験結果を示すグラフである。この実験では、イオントラップ4内にイオンを導入してから所定時間tだけ高周波電圧の印加停止を継続し(印加電圧をV3に維持し)、その後に再び高周波電圧を印加して高周波電場によりイオンを捕捉し、さらに質量分析を行ってイオン検出器5によりイオン強度を検出した。そして、所定時間tを変化させ、この所定時間tと検出イオン強度との関係を求めた。なお、この実験において、高周波電圧の条件は、V1=+500[V]、V2=−500[V]、V3=0[V]、f=585、478、414[kHz]であり、図2に示したように、矩形波状の高周波電圧の位相が(3 /2)πのタイミングで高周波電圧をオンからオフに切り替えている。もちろん、前述のように、この高周波電圧のオフ動作はきわめて高速に行うことができる。
【0042】
図5のグラフの縦軸は、t=0、即ち、高周波電圧を停止させないときの検出イオン強度で規格化した値である。また、qz=0.272、0.388,0.545は、被測定イオンがaz−qz平面で表現されるイオントラップの安定領域上のそれぞれ、点(az,qz)=(0,0.272)、(0,0.388)、(0,0.545)に位置するような条件でイオントラップを動作させたときを示している。ちなみに、デジタルイオントラップでは、(az,qz)=(0,0.7125)が安定領域の境界である。
【0043】
図5により明らかなように、イオントラップ4内に捕捉されているイオンは、リング電極41への印加電圧がV3一定に設定された後、数十μs程度の間は少なくともその一部がイオントラップ4内に留まる。また、いま最も条件のよいqz=0.272で見た場合、十数μsまでは殆どのイオンがイオントラップ4内に留まり、30μs程度までは半分程度のイオンがイオントラップ4内に留まる。従って、高周波電圧の印加を停止している時間tをこの程度の範囲に抑えることにより、それ以前にイオントラップ4内に捕捉していたイオンのうちの少なくとも一部をイオントラップ4内に残し、これにさらに追加的に導入したイオンを加えて総合的にイオントラップ4内に蓄積されるイオンを増量することができる。
【0044】
本実施例のイオントラップ型質量分析装置では、制御部8の制御の下に、図3に示すように、リング電極41に矩形状の高周波電圧を印加してイオンをイオントラップ4内に捕捉する動作と、リング電極41に印加する電圧をV3一定にして、イオン輸送光学系2により搬送されてきた次のイオンを効率よくイオントラップ4内に追加的に導入する動作とを交互に繰り返し行う。こうして適宜の回数、イオン捕捉とイオン導入とのサイクルを繰り返すことにより、イオントラップ4内に蓄積されるイオンの量を十分に増加させた後に、従来と同様に、イオンの質量分離及び検出を実行する。これにより、質量分析に供するイオンの量が増えるため、イオン検出器5での信号強度が高くなり、良好なS/Nで以て質量分析を行うことが可能となる。なお、イオントラップ4内に繰り返しイオンを導入する際に、そのイオン導入のタイミングに合わせて、それまでイオン輸送光学系2に蓄積していたイオンをゲート電極3によりイオン入射口44に向けて送り出すようにするとよい。
【0045】
上記のように、イオン導入のために高周波電圧の印加を停止している時間tは上記説明のように決める必要があるが、一方、イオンを捕捉する期間についても、或る程度十分な時間を確保する必要がある。これは、リング電極41に高周波電圧の印加が開始されイオントラップ4内に高周波電場が形成されても、実際にイオンの挙動が安定するまでには少し時間が掛かり、その挙動が安定する前に次のイオン導入のために高周波電圧の印加が停止されてしまうと、イオントラップ4内でのイオンの発散がより短時間で行われてしまうためである。従って、イオン導入後のイオン捕捉期間は、通常、数ms〜数十ms程度確保するのが好ましい。
【0046】
また、上述のようにイオントラップ4へのイオンの追加導入動作とイオンの捕捉動作とを繰り返し行う際に、イオンの導入に同期して、例えばイオンを導入する直前にクーリングガス供給部7からパルス的にクーリングガスをイオントラップ4内に導入するとよい。このようにしてイオントラップ4内にクーリングガスが供給されると、イオントラップ4内に先に捕捉されていたイオンはクーリングガスに衝突してその運動エネルギーを奪われる。高周波電場が存在しなくなることでイオントラップ4に安定的に捕捉されているイオンに対する拘束力がなくなり、イオンがイオントラップ4内に留まらずに、例えばイオン出射口45から出てしまうおそれがあるが、上述のように運動エネルギーを奪うことで先に捕捉しているイオンをイオントラップ4内に留まり易くすることができる。
【0047】
図6はクーリングガスの導入の効果を検証するための実験結果を示す図である。実験条件は図5に結果を示した実験と同様であるが、ここでは、イオンをイオントラップ4内に導入する際にそれに同期してクーリングガスを導入した場合と導入しない場合との検出イオン強度を測定した。なお、被測定イオンがaz−qz平面で表現されるイオントラップの安定領域上の点(az,qz)=(0,0.388)に位置するような条件でイオントラップ4を動作させている。
【0048】
図6から分かるように、クーリングガスを導入することによってイオントラップ4内でのイオンの捕捉効率が向上する。特に、高周波電圧の印加を停止している時間が比較的短い(この実験では20μsまで)場合において、イオンの捕捉効率の向上の効果が顕著である。この結果から、上述したように繰り返しイオントラップ4内にイオンを追加導入する際には、その導入に同期してクーリングガスをイオントラップ4内に供給すると、質量分析のS/Nの向上の点で有効であると言える。
【0049】
また、イオントラップ4内で高周波電場によりイオンが捕捉されている状態から高周波電場が存在しなくなった後のイオンの挙動は、その高周波電場がなくなるタイミング、具体的には高周波電圧が停止されるときの該電圧波形の位相に依存する。高周波電場中でイオンの集まりであるイオン雲は捕捉領域の中心部近くに集中した状態と捕捉領域の周辺部に拡がった状態とを交互に繰り返すから、イオンが周辺部に拡がろうと移動しているときよりも中心部に向かって移動しているときに高周波電場をオフしたほうが、イオンの発散は遅くなると考えられる。本実施例のイオントラップ型質量分析装置では、高周波電圧の印加を停止する(電圧をV3に切り替える)タイミングは基本的には任意に決めることができるから、上記のようなイオンの挙動を考慮した高周波電圧の位相において印加を停止することで、より効率良くイオンをイオントラップ4内に蓄積することができる。
【0050】
一方、イオンを導入した後に高周波電圧の印加を再開するタイミングも重要であると考えられる。高周波電場が存在しない静電場だけの状態では、イオントラップ4内に入ったイオンはイオン入射口44とイオン出射口45とを結ぶ直線に沿う方向に細長く分布していると推定できる。そのため、高周波電圧の印加を開始する際にイオンが上記直線に沿って両側に拡がる方向に高周波電場を形成すると、イオンが適切に捕捉されずにイオン入射口44、イオン出射口45から排出されてしまったり、エンドキャップ電極42、43に衝突してしまったりし易くなる。従って、高周波電圧の印加を再開する際には上記直線に沿って存在するイオンが内方に収縮する方向に高周波電場を形成するとよいと考えられる。このように高周波電圧の印加再開の際にもイオンの挙動を考慮して、適切な位相において印加を開始することで、より効率良くイオンをイオントラップ4内に蓄積することができる。
【0051】
ところで、リング電極41への高周波電圧の印加を停止して静電場をイオントラップ4内に形成した上でイオントラップ4内へイオンを導入する手法では、一度にイオントラップ4内に導入できるイオンの質量範囲は、イオン導入時間、導入時のイオントラップ4内の静電場、イオン輸送光学系2のイオンレンズ電圧などのイオン導入条件に依存する。
【0052】
即ち、上記のようにゲート電極3によりイオン輸送光学系2からのイオンの放出を制御する場合には、イオントラップ4のイオン入射口44に様々な質量のイオンが全く同時に到達するのではなく、低質量のイオンほど早く到達することになる。そのため、イオン導入時間が短いほどイオントラップ4に導入されるイオンの質量範囲は低質量の範囲となる。また、イオン導入時にイオントラップ4の静電場とイオン輸送光学系2の静電場との差によりイオンは加速されるが、その加速エネルギーは質量に依らず一定であるため、イオンが持つ速度は質量依存性を有し、導入時間に対してその速度が大き過ぎるとイオントラップ4内に入っても、再度、高周波電場が形成されるよりも前に捕捉空間を通り抜けてしまう。そのため、上記のような加速電圧を決める条件によって、イオントラップ4内に捕捉されるイオンの質量範囲は相違する。
【0053】
上記理由のために、イオントラップ4内にイオンを繰り返し導入する場合でも、イオン導入時間が一定であり加速電圧等のイオン導入条件も同一であると、イオン導入の度に捕捉され得るイオンの質量範囲は同一となり、得られる質量スペクトルの質量範囲は比較的狭くなってしまう(もちろん、専ら信号強度を高めることが目的である場合には、このほうが望ましい)。そこで、質量分析可能なイオンの質量範囲を広げるためには、イオントラップ4内にイオンを繰り返し導入する際に、イオン導入時間tを変化させたり上記のようなイオンの加速電圧を決める条件を変化させたりするとよい。
【0054】
図4はイオン導入時にイオン導入時間tを変化させるようにしたときのリング電極41への印加電圧の波形の概略図である。ここでは、1回毎にイオン導入時間をt1、t2、t3、…と変化させている。イオン導入時間が長いとイオントラップ4に導入されるイオンの質量範囲が高質量の範囲となるから、短いイオン導入時間で先に導入し捕捉している低質量範囲のイオンに加えて、より広い質量範囲のイオンをイオントラップ4に蓄積し、これを質量分析に供することができる。
【0055】
また同様に、1回のイオン導入毎にイオントラップ4に導入されるイオンの加速電圧が変化するように、イオントラップ4内の静電場又はイオン輸送光学系2のイオンレンズ電圧のいずれか一方を変化させるようにしてもよい。この場合、イオントラップ4に導入されるイオンの質量範囲が質量軸方向にずれるから、結果的に、より広い質量範囲のイオンをイオントラップ4に蓄積し、これを質量分析に供することができる。
【0056】
なお、イオン源1としてMALDIを使用する場合、レーザ光の1回の照射により生成されるイオンを複数回分イオントラップ4内で蓄積し、一度に質量分析することができるため、従来のように複数回の質量分析結果を積算する必要がなく、測定時間の短縮化が可能となる。これにより、測定のスループットを向上させることができる。特に、試料上の異なる部位の質量分析を繰り返して該試料に含まれる分子の空間分布画像を作成する質量分析イメージングを行う場合に、上記のように測定時間を短縮する効果は大きい。もちろん、一度に測定できるイオンの質量範囲を広げることもできる。
【0057】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜に、変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。例えば上記実施例はイオントラップが1個のリング電極と2個のエンドキャップ電極とから成る3次元四重極型イオントラップであったが、多重極(例えば四重極)ロッドとこの両開放端面に設けられた一対のエンドキャップ電極とから成るイオントラップ(いわゆるリニアイオントラップ)にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例であるイオントラップ型質量分析装置の要部の構成図。
【図2】駆動用の制御パルスとリング電極及びエンドキャップ電極に印加される電圧との関係を示す波形図。
【図3】一連の質量分析動作を行う際のリング電極への印加電圧の波形の概略図。
【図4】イオン導入時にイオン導入時間を変化させるようにしたときのリング電極への印加電圧の波形の概略図。
【図5】高周波電圧の印加停止時間と検出イオン強度との関係を実測した結果を示す図。
【図6】クーリングガスの有無について高周波電圧の印加停止時間と検出イオン強度との関係を実測した結果を示す図。
【符号の説明】
【0059】
1…イオン源
2…イオン輸送光学系
3…ゲート電極
4…イオントラップ
41…リング電極
42…入口側エンドキャップ電極
43…出口側エンドキャップ電極
44…イオン入射口
45…イオン出射口
5…イオン検出器
6…データ処理部
7…クーリングガス供給部
8…制御部
9…補助電圧発生部
10…主電圧発生部
11、12、13…電圧源
14、15、16…スイッチ
17…デジタル制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを生成するイオン源と、複数の電極で囲まれる空間に形成される電場によりイオンを捕捉するイオントラップと、を具備し、前記イオン源で生成されたイオンを前記イオントラップ内に導入して捕捉した後に、該イオントラップによりイオンを質量分離して又は該イオントラップから排出した後に質量分離して検出するイオントラップ型質量分析装置において、
a)前記イオントラップ内にイオンを捕捉するための高周波電場を形成するべく、前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つの電極に矩形波状の高周波電圧を印加する電圧印加手段と、
b)複数の電極の1つに矩形波状の高周波電圧を印加することにより前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で、一時的に該高周波電圧の印加を停止することにより前記イオントラップ内に静電場を形成して外部からイオンを導入し、所定時間経過後に該高周波電圧の印加を再開して新たに導入されたイオンをそれ以前に捕捉していたイオンと併せて捕捉するように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするイオントラップ型質量分析装置。
【請求項2】
前記イオントラップへイオンを導入するために前記高周波電圧の印加を停止する時間を1μs〜50μsの範囲に設定したことを特徴とする請求項1に記載のイオントラップ型質量分析装置。
【請求項3】
前記イオントラップへのイオンの導入と該イオントラップ内でのイオンの捕捉のサイクルを複数回繰り返し行った上で、該イオントラップ内に捕捉されているイオンの質量分離・検出を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のイオントラップ型質量分析装置。
【請求項4】
前記イオントラップへの複数回のイオンの導入の繰り返しの際に、イオンの導入条件を少なくとも1回変えることを特徴とする請求項3に記載のイオントラップ型質量分析装置。
【請求項5】
前記イオンの導入条件は前記イオントラップへイオンを導入するために前記高周波電圧の印加を停止する時間であることを特徴とする請求項4に記載のイオントラップ型質量分析装置。
【請求項6】
前記イオンの導入条件は前記イオントラップへイオンを導入するときに該イオントラップ内に形成される静電場と該イオントラップまでイオンを輸送するイオン輸送光学系への印加電圧とで決まるイオンの加速電圧であることを特徴とする請求項4に記載のイオントラップ型質量分析装置。
【請求項7】
前記イオントラップ内へのイオン導入と同期して該イオントラップ内にクーリングガスを導入するガス導入手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のイオントラップ型質量分析装置。
【請求項8】
前記イオントラップは、リング電極と一対のエンドキャップ電極とを有する3次元四重極イオントラップであり、該リング電極に前記矩形状の高周波電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のイオントラップ型質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−282594(P2008−282594A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124038(P2007−124038)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】