説明

イオンビームの平行化装置、イオン照射装置及びイオン散乱分光装置

【課題】短い距離でイオンビームを平行化できるイオンビームの平行化装置を提供する。
【解決手段】第1ベース層と、その上に形成された第1導電層と、これらの層を貫通する複数の第1貫通孔とを有する第1基板50aと、第2ベース層と、その上に形成された第2導電層と、これらの層を貫通し、複数の第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔とを有する第2基板50bとを備え、複数の第1貫通孔および第2貫通孔はそれぞれベース層内の壁面部分が電気絶縁性を有し、第1基板50a及び第2基板50bは、第1導電層及び第2導電層を同じ方向に向け且つ複数の第1貫通孔それぞれが対応する第2貫通孔と対向するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームの平行化装置、イオン照射装置及びイオン散乱分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラザフォード後方散乱分光(RBS)法、又はイオン散乱分光法と呼ばれるイオンビームを用いた試料の分析が用いられている。この分析法では、例えば、数百keVに加速されたHeイオンを試料に照射し、分析試料を形成する元素との相互作用により散乱したHeイオンのエネルギーを分析して、試料中の元素組成等を計測する。
【0003】
このような分析法において磁場偏向型のエネルギー分析器を用い、分析試料に照射されて散乱されたイオンのエネルギーを数百eVの分解能で測定できる位置敏感型検出器を備えた高エネルギー分解能型の装置が開発されている。そして、この高エネルギー分解能型の装置を用いて、原子層厚レベルでの組成分析が可能となってきている。
【0004】
試料に入射したイオンは、分析試料を形成する原子核又は電子と剛体衝突又はクーロン相互作用により、弾性散乱又は非弾性散乱を行ってエネルギーを損失する。例えば、RBS法では、分析試料により散乱されたイオンのエネルギーを入射エネルギーと比較して散乱によるエネルギー損失を調べ、分析試料中に含まれる元素又は元素の深さプロファイル等が分析される。そのため、高い精度の分析を行うためには、入射イオンビームに対して、入射エネルギーの高い均一性と共に、入射方向の高い均一性、即ち入射イオンビームの高い平行度が求められる。
【0005】
そして、入射イオンビームの高い平行度を得るために、中心部に開口を有する2つのスリットを、イオン源と分析試料との間に配置することが行われている。この方法では、イオン源から出射するイオンビームの内、各スリットの中心部を通過するイオンビームのみを分析試料に照射する。
【0006】
しかし、RBS法で用いるイオンビームの入射エネルギーが高いので、2つのスリットを用いる方法では、入射イオンビームの高い平行度を得るためには、2つのスリットの間隔が数メートル以上になる場合がある。従って、この方法では、長いビームラインのために装置が大きくなるので、装置の設置に広い場所が必要となる問題があった。
【0007】
また、入射イオンビームの高い平行度を得るために、一つのスリットと磁気レンズとを組み合わせることにより、短いビームラインで平行度の高いビームを得ることが提案されている。しかし、この方法では、イオンビームを収束させるための磁気レンズとして四重極レンズ等を用いるので、装置の構造が複雑になる問題があった。
【0008】
更に、入射イオンビームの高い平行度を得るために、複数の貫通孔を有し、各貫通孔の入り口にはイオンビームに電場を印加して軌道を制御するための電極が配置された基板を用いることが提案されている。しかし、この方法も、複数の貫通孔それぞれに配置する電極と、各電極に電場を印加する制御部とを用いるので、装置の構造及び制御が複雑になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−32691号公報
【特許文献2】特開2003−21609号公報
【特許文献3】特公平7−118288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書では、短い距離でイオンビームを平行化できるイオンビームの平行化装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本明細書では、短い距離でイオンビームを平行化できるイオン照射装置を提供することを目的とする。
【0012】
更に、本明細書では、短い距離でイオンビームを平行化できるイオン散乱分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に開示するイオンビームの平行化装置によれば、第1ベース層と、上記第1ベース層上に形成された第1導電層と、上記第1導電層及び上記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有する第1基板と、第2ベース層と、上記第2ベース層上に形成された第2導電層と、上記第2導電層及び上記第2ベース層を貫通し、複数の上記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、を備え、複数の上記第1貫通孔は、上記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の上記第2貫通孔は、上記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、上記第1基板及び上記第2基板は、上記第1導電層及び上記第2導電層を同じ方向に向け、且つ複数の上記第1貫通孔それぞれが対応する上記第2貫通孔と対向するように配置される。
【0014】
本明細書に開示するイオン照射装置によれば、イオン源と、第1ベース層と、上記第1ベース層上に形成された第1導電層と、上記第1導電層及び上記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有し、上記イオン源から照射されたイオンビームが入射する第1基板と、第2ベース層と、上記第2ベース層上に形成された第2導電層と、上記第2導電層及び上記第2ベース層を貫通し、複数の上記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、を備え、複数の上記第1貫通孔は、上記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の上記第2貫通孔は、上記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、上記第1基板及び上記第2基板は、上記第1導電層及び上記第2導電層側の面を上記イオン源に向け、且つ複数の上記第1貫通孔それぞれが対応する上記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化部と、を備える。
【0015】
本明細書に開示するイオン散乱分光装置によれば、イオン源と、第1ベース層と、上記第1ベース層上に形成された第1導電層と、上記第1導電層及び上記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有し、上記イオン源から照射されたイオンビームが入射する第1基板と、第2ベース層と、上記第2ベース層上に形成された第2導電層と、上記第2導電層及び上記第2ベース層を貫通し、複数の上記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、を備え、複数の上記第1貫通孔は、上記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の上記第2貫通孔は、上記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、上記第1基板及び上記第2基板は、上記第1導電層及び上記第2導電層側の面を上記イオン源に向け、且つ複数の上記第1貫通孔それぞれが対応する上記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化部と、イオンビームのエネルギーを分析するエネルギー分析部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
上述した本明細書に開示するイオンビームの平行化装置によれば、短い距離でイオンビームを平行化できる。
【0017】
上述した本明細書に開示するイオン照射装置によれば、短い距離でイオンビームを平行化できる。
【0018】
上述した本明細書に開示するイオン散乱分光装置によれば、短い距離でイオンビームを平行化できる。
【0019】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。
【0020】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本明細書に開示するイオン散乱分光装置の一実施形態を示す図である。
【図2】(A)は、図1のイオンビームの平行化部を形成する基板の平面図であり、(B)は、(A)のX−X線端面図である。
【図3】第1貫通孔と第2貫通孔との位置関係を説明する図である。
【図4】第1拡がり角と第2拡がり角との関係を説明する図である。
【図5】イオンビームの入射拡がり角と第1貫通孔の長さとの関係を説明する図である。
【図6】(A)及び(B)は、本明細書に開示する平行化部の製造方法の一例を示す図(その1)である。
【図7】(A)及び(B)は、本明細書に開示する平行化部の製造方法の一例を示す図(その2)である。
【図8】(A)及び(B)は、本明細書に開示する平行化部の製造方法の一例を示す図(その3)である。
【図9】(A)及び(B)は、本明細書に開示する平行化部の製造方法の一例を示す図(その4)である。
【図10】第1貫通孔の変形例を示す図である。
【図11】イオン散乱分光装置の変形例を示す図である。
【図12】イオン散乱分光装置の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書で開示するイオン散乱分光装置の好ましい一実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0023】
図1は、本明細書に開示するイオン散乱分光装置の一実施形態を示す図である。図2(A)は、図1のイオンビームの平行化部を形成する基板の平面図であり、図2(B)は、図2(A)のX−X線端面図である。図3は、第1貫通孔と第2貫通孔との位置関係を説明する図である。
【0024】
本実施形態のイオン散乱分光装置1は、イオン照射部10と、分析試料21を収容する分析チャンバ20と、を備える。また、イオン散乱分光装置1は、分析チャンバ20から入射してきた散乱イオンに対して並進方向に垂直な磁場を印加するマグネット31及び分析管32を有する磁場偏向型エネルギー分析器30を備えており、高エネルギー分解能を有する。更に、イオン散乱分光装置1は、位置敏感型検出器41を有する検出部40を備える。イオン散乱分光装置1は、磁場偏向型エネルギー分析器30及び検出部40を用いて、イオンビームのエネルギーを分析する。
【0025】
イオン照射部10は、He等のイオンを発生するイオン源11と、発生したイオンを加速する加速管12と、加速されたイオン流を所定のビームサイズに絞るスリット13と、を有する。加速管12では、例えば、300kV〜500kVの加速電圧を用いて、イオンを加速する。
【0026】
また、イオン照射部10は、所定のエネルギーのイオンのみを通過させて単色化するエネルギーフィルタ15と、スリット13を通過したイオンビームの方向の均一性を揃えて、ビームの平行度を高める平行化部14と、を有する。
【0027】
イオン源11で発生し、加速管12から照射されるイオンビームの照射角は、分析に用いるには大きいので、加速管12と平行化部14との間にスリット13を配置して、平行化部14に入射するビームを所定のビームサイズに絞っている。平行化部14の詳細については、更に後述する。
【0028】
分析チャンバ20内では、イオン照射部10から入射されたイオンが、分析試料21で散乱された後、磁場偏向型エネルギー分析器30に進む。分析チャンバ20内の分析試料21に対して、磁場偏向型エネルギー分析器30は、分析試料21で散乱したイオンのエネルギーを分析するように配置される。
【0029】
磁場偏向型エネルギー分析器30は、マグネット31を用いて、運動しているイオン等の荷電粒子に対してその並進方向に垂直な磁場を印加することで荷電粒子にローレンツ力を作用させる。つまり、イオン散乱分光装置1は、荷電粒子に作用するローレンツ力の大きさが荷電粒子の運動エネルギーに依存し、その結果、運動エネルギーによって決まる軌道を荷電粒子が辿ることを用いて荷電粒子の運動エネルギーを計測する。分析試料21上の散乱点で散乱された荷電粒子は、磁場が印加された分析管32を通してエネルギー毎に分光されて、検出部40に進む。
【0030】
検出部40は、荷電粒子が入射した位置敏感型検出器41上の位置及びその位置に入射した荷電粒子の数を計測する。検出部40は、磁場偏向型エネルギー分析器30における磁場強度で空間的に帯状にエネルギー分光された荷電粒子を、位置敏感型検出器41により一度に検出する。このようにして、測定時間の短時間化と分析試料にかかるダメージの回避が可能になる。
【0031】
イオン散乱分光装置1は、例えば、入射した軽イオンと分析試料21を形成する試料形成原子とがほぼ弾性散乱するものとし、弾性散乱で跳ね返された軽イオンのエネルギーが分析試料を形成する原子の原子核の質量の関数になること、及び、侵入中に軽イオンの失うエネルギーが侵入深さの関数になることを利用して、検出部40の測定結果を解析する。
【0032】
本実施形態のイオン散乱分光装置1は、平行化部14を用いることにより、分析試料21に照射されるイオンビームの平行度を高めている。次に、平行化部14について、以下に詳細に説明する。
【0033】
図1〜図3に示すように、平行化部14は、複数の第1貫通孔53aを有する第1基板50aと、複数の第1貫通孔53aと対応するように形成された複数の第2貫通孔53bを有する第2基板50bとを備える。第1基板50a及び第2基板50bは、円板形状で、同じ寸法を有する。
【0034】
第1基板50aは、第1ベース層51aと、第1ベース層51a上に形成された第1導電層52aとを有する。複数の第1貫通孔53aは、第1導電層52a及び第1ベース層51aを貫通する。第2基板50bも、第1基板50aと同様の構造を有しており、第2ベース層51bと、第2ベース層51b上に形成された第2導電層52bとを有する。複数の第2貫通孔53bは、第2導電層52b及び第2ベース層51bを貫通する。
【0035】
複数の第1貫通孔53aは、第1ベース層51a内の壁面の部分が電気絶縁性を有している。同様に、複数の第2貫通孔53bは、第2ベース層51b内の壁面の部分が電気絶縁性を有している。
【0036】
第1基板50a及び第2基板50bは、第1導電層52a及び第2導電層52bを同じ方向に向け、且つ複数の第1貫通孔53aそれぞれが対応する第2貫通孔53bと対向するように間隔を空けて配置される。具体的には、第1基板50aは、第1導電層52a側の面をイオン源11に向けており、イオン源11から照射されたイオンビームは、第1基板50aの第1導電層52a側の面に入射する。第2基板50bも、第2導電層52b側の面をイオン源11に向けており、イオン源11から照射されて第1基板20aの第1貫通孔53aを通過したイオンビームが、第2基板50bの第2導電層52b側の面に入射する。
【0037】
また、図1に示すように、第1導電層52a及び第2導電層52bは接地されている。
【0038】
第1ベース基板51aは、第1基板50aの機械的強度を提供する。第1ベース基板51は、円板形状を有する。第1ベース基板51は、第1貫通孔53aの部分のみが電気絶縁性を有していても良いし、又は、第1ベース基板51の全体が電気絶縁性を有していても良い。
【0039】
第1ベース基板51の形成材料としては、例えば、シリコン又は酸化シリコンを用いることができる。
【0040】
第1導電層52aは、第1貫通孔53aの部分を除いて、第1ベース基板51のイオン源11側の面に形成される。イオン源11で発生し、加速管12で加速された後スリット13を通過したイオンビームは、第1基板50aの第1導電層52a側の面に入射する。第1貫通孔53aに入射したイオンビームは、第1貫通孔53aを通過した後、第2基板50bの第2導電層52b側の面に入射する。そして、第2基板50bの第2貫通孔53bを通過したイオンビームは、エネルギーフィルタ15を通過した後、分析試料21によって散乱する。
【0041】
イオンが、第1導電層52aの第1貫通孔53a以外の部分に入射すると、イオンが持つ電荷は第1導電層52aに移動し、その後接地に流れる。従って、第1基板50aの第1導電層52a側の面が帯電することが防止される。
【0042】
仮に、第1基板50aに第1導電層52aが形成されておらず、第1基板50aの第1導電層52a側の面が帯電して、第1貫通孔53aの入り口の部分が電荷を持つと、第1貫通孔53aに入射するイオンが、第1基板50aに近づく過程でクーロン斥力によりイオンが減速されるため、エネルギーを失うことになる。そのため、イオンビームの入射エネルギーに対して管理できないエネルギーロスが生じるので、分析試料に入射するイオンのエネルギーが不均一になり、その値がわからなくなる。そこで、本実施形態では、第1基板50aのイオン源11側の面に第1導電層52aを配置すると共に、この第1導電層52aを接地し、管理できないエネルギーロスが生じることを防止して、上述した問題を回避している。
【0043】
第1導電層52aは、イオンビームの照射に曝されるが、入射エネルギーが500keV程度のHeイオンの入射であれば、第1導電層52aのイオンの衝突による損傷は小さいので、第1導電層52は耐久性を有する。
【0044】
第1貫通孔53aは、第1基板50aの全面に均一に配置されることが好ましい。また、第1貫通孔53aの断面形状を円形に換算した換算直径は、20μm以上250μm以下の範囲にあることが好ましい。
【0045】
第1貫通孔53aの換算直径が、20μm未満になると、試料分析のためのイオンビーム量を得ることが難しくなるおそれがある。一方、第1貫通孔53aの換算直径の上限値については、第1基板50aの機械的強度及び第1基板50aと第2基板50bとの間の距離等の観点から決定され得る。この観点から、第1貫通孔53aの換算直径の上限値を、250μmとすることができる。第1貫通孔53aの換算直径と、第1基板50aと第2基板50bとの間の距離との関係の説明については後述する。
【0046】
本実施形態では、複数の第1貫通孔53aは、円柱形状を有する。従って、上述した第1貫通孔53aの断面形状を円形に換算した換算直径は、円の直径となる。本実施形態では、複数の第1貫通孔53aは、同じ寸法を有する。
【0047】
第1基板50aの第1導電層52a側の面に露出している複数の第1貫通孔53aの開口部の面積を合わせた総面積は、試料分析のためのイオンビーム量を得る観点又は第1基板50aの機械的強度を確保する観点等から決定され得る。
【0048】
具体的には、本実施形態では、試料分析のためのイオンビーム量を得る観点から、一つの第1貫通孔53aの開口面積は上述した20μm以上250μm以下の範囲内にあることが好ましいが、多数の第1貫通孔53aを第1基板50aに配置することにより、試料の分析に必要なイオンビーム量を確保している。
【0049】
上述した第1基板50aの説明は、第2基板50bに対しても適宜適用される。
【0050】
次に、第1基板50aと第2基板50bとの関係について以下に説明する。
【0051】
第2基板50bには、第1基板50aの複数の第1貫通孔53aと対応するように、複数の第2貫通孔53bが配置される。第1基板50a上に第2基板50bを重ねた場合には、一の第1貫通孔53aと、この一の第1貫通孔53aと対応する第2貫通孔53bとが重なるようになっている。
【0052】
そして、本実施形態では、図3に示すように、円柱形状を有する第1貫通孔53aそれぞれの中心軸Cが対応する第2貫通孔53bの中心軸と一致するように、第1基板50aと第2基板50bとが配置される。図3は、図2(B)と同様に、第1基板50a及び第2基板50bの端面図を示している。
【0053】
次に、第1基板50a及び第2基板50bが、短い距離でイオンビームを平行化するメカニズムを、図4を参照して以下に説明する
【0054】
図4は、第1拡がり角と第2拡がり角との関係を説明する図である。
【0055】
図4には、第1基板50aの一の第1貫通孔53aと、この一の第1貫通孔53aと対応する第2基板50bの第2貫通孔53bとが、それぞれの中心を中心軸Cに一致させて配置された状態が示されている。第1基板50aと第2基板50bとの間の距離はL3である。なお、図4では、他の第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bは示されていない。
【0056】
図4に示すように、第1基板50aの第1導電層52a側の面にイオンビームが入射する。ここで、入射するイオンビームは、入射拡がり角βで第1貫通孔53aに入射し、第1貫通孔53aの直径をd1とする。入射拡がり角βは、第1基板50aに入射するイオンビームの最大の拡がり角を意味する。そして、第1貫通孔53aの長さL1が、入射拡がり角βで入射したイオンビームを有効に平行化する場合には、第1貫通孔53aにより限定される第1拡がり角α1は、第1貫通孔53aの両端の開口部の対角に位置するエッジ同士を結ぶ2本の線により作られる角度となり、α1=2d1/L1と表される。
【0057】
即ち、入射拡がり角βで第1貫通孔53aに入射したイオンビームは、第1貫通孔53aにより平行化されて、第1拡がり角α1=2d1/L1で第1貫通孔53aから出射される。入射拡がり角βで入射したイオンビームは、第1貫通孔53aにより有効に平行化されるので、α1<βである。第1貫通孔53aから出射したイオンビームは、対向する第2貫通孔53bに入射する。
【0058】
そして、第1貫通孔53aと対向する第2貫通孔53bの直径d2が、上記エッジ同士を結ぶ2本の線それぞれを第2貫通孔53bの方向に延長して第2導電層52bの表面と交差する点同士を結んだ線の長さd3よりも短いことが好ましい。これにより第2貫通孔53bによって、第1貫通孔53aを出射したイオンビームの平行度が高められる。
【0059】
また、第1貫通孔53aの内の一の第1貫通孔の直径d1及び長さL1により規定される第1拡がり角α1=2d1/L1と、第1貫通孔53aと対向する第2貫通孔の直径d2及び長さL2と、第1基板50aと第2基板50bとの間の距離L3とが、
第2拡がり角α2=(d1+d2)/(L1+L2+L3) < α1
なる関係を満たすことが好ましい。第2拡がり角α2=(d1+d2)/(L1+L2+L3の式は、上述した第1拡がり角α1と同様にして求められる。
【0060】
ここで、第2拡がり角α2を小さくするには、分母を形成するd1+d2を小さくするか、又は、L1+L2+L3を大きくすることになる。
【0061】
本実施形態では、上述したように、第1貫通孔53aの直径d1及び第2貫通孔53bの直径d2が、20μm以上250μm以下の範囲内にあるので、d1+d2を小さくすることにより第2最大拡がり角α2を小さくする。また、このようにd1+d2を小さくできるので、第1基板50aと第2基板50bとの間の距離L3を小さくすると共に、第2最大拡がり角α2を小さくできる。従って、平行化部14の寸法を小さくできる。一方、従来の開口部の径が数mm程度である2つのスリットを用いて、同じ大きさの拡がり角を得る場合には、開口部の径が大きい分、2つのスリット間の距離を大きくする必要がある。
【0062】
このように、本実施形態では、第1基板50a及び第2基板50bを用いて、2重にイオンビームを絞ることにより、短い距離でイオンビームの平行度を高くすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bを、貫通孔内を飛行するイオンに対して静電レンズとして機能させることによって、上述した幾何学的関係により規定される拡がり角α1、α2よりも小さな拡がり角をイオンビームに持たせることができる。
【0064】
図5は、イオンビームの入射拡がり角と第1貫通孔の長さとの関係を説明する図である。
【0065】
図5に示すように、例えば、正電荷を有するイオンを第1貫通孔53a又は第2貫通孔53bに入射すると、入射したイオンの一部が貫通孔内の電気絶縁性の壁面に衝突して、壁面が正に帯電する。そして、正に帯電した円柱形状の貫通孔内では、貫通孔の中心軸Cを中心にした等電位線が形成される。そして、このような等電位場内を飛行する正イオンは、中心軸Cに近づくような静電力を受けるので、貫通孔内を通過するイオンビームの拡がり角が縮小する。即ち、イオンビームの平行度がより高められることになる。なお、負イオンを貫通孔に入射しても同様の静電レンズ効果が得られる。
【0066】
このように、第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bを静電レンズとして機能させる観点から、第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bは、中心軸Cに対して対称な形状を有していることが好ましい。そこで、本実施形態では、第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bは、円柱形状を有している。同様の観点から、第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bは、正多角形形状を有していても良い。
【0067】
そして、第1貫通孔53a内に入射したイオンの一部を貫通孔内の電気絶縁性の壁面に確実に衝突させる観点から、イオンビームの入射拡がり角と第1貫通孔の長さとの間の好ましい関係を以下に説明する。
【0068】
入射拡がり角βのイオンが、第1貫通孔53aの第1導電層52a側の開口部に、中心軸Cを通って入射して、第1導電層52a側の面から距離Sの位置で壁面に衝突したとする。
【0069】
ここで、距離S=d1/2/tan(β/2)と表される。第1貫通孔53a内に入射したイオンの一部を貫通孔内の電気絶縁性の壁面に確実に衝突させるためには、第1貫通孔53aの長さL1が、距離Sよりも長いことが必要である。
【0070】
従って、イオンビームの入射拡がり角βと、第1貫通孔53aの半径d1/2と、第1貫通孔53aの長さL1とが、S=d1/2/tan(β/2)<L1なる関係を満たすことが好ましい。
【0071】
即ち、上記関係を満足させることにより、イオンの衝突により第1貫通孔53a内の壁面を帯電させて、第1貫通孔53aを静電レンズとして確実に機能させることができる。
【0072】
上述した一の第1貫通孔53aに対する説明は、他の複数の第1貫通孔53aに対しても同様に適用される。また、上述した一の第1貫通孔53aに対する説明は、複数の第2貫通孔53bに対しても適宜適用される。
【0073】
また、上述したように、第1貫通孔53aと対向する第2貫通孔53bの直径d2が、上記エッジ同士を結ぶ2本の線それぞれを第2貫通孔53bの方向に延長して第2導電層52bの表面と交差する点同士を結んだ線の長さd3よりも短いので、第2貫通孔53b内に入射したイオンの一部が貫通孔内の電気絶縁性の壁面に衝突することが保証される。
【0074】
上述した平行化部14を用いて、イオンビームの拡がり角を低減して、平行度を高めることが、第1貫通孔53aの直径又は長さ、若しくは第2貫通孔53bの直径又は長さ、若しくは、第1基板50aと第2基板50bとの間の距離等を適宜設定することにより達成できる。
【0075】
そこで、第1基板50aと第2基板50bとの間の距離を500mm以下とする場合の例を以下に説明する。ここで、第1基板50aの第1導電層52a側の面に入射するイオンビームの入射拡がり角を1mradとする。この入射拡がり角は、スリットの位置を起点として表される。また、第1貫通孔53aに入射したイオンビーム強度に対して、この第1貫通孔53aと対向する第2貫通孔53bから出射するイオンビームの強度を1%以上とする。また、第1貫通孔53aの直径と第2貫通孔53bの直径とを同じ直径dとし、第1貫通孔53aの長さと第2貫通孔53bの長さを同じ長さLとし、第1基板50aと第2基板50bとの間を距離L3とする。更に、第1貫通孔53a及び第2貫通孔53bに入射するイオンビームの拡がり角は、イオンビームの一部が貫通孔内の壁面と衝突する角度を有するものとする。
【0076】
上述した前提条件の下、上述したイオンビームの拡がり角と貫通孔の直径及び長さとの関係を用いて、貫通孔の直径及び長さと、第1基板50a及び第2基板50bの間の距離との間に、以下の好ましい関係が導かれる。下記関係における長さの単位は、mmである。
【0077】
(条件1)
0<L<5/9、且つ、L/10<d<1/18、且つ、(2000d−L)<L3<9000d
【0078】
(条件2)
0<L<5/9、且つ、1/18<d<(500+L)/2000、且つ、(2000d−L)<L3<=500
【0079】
(条件3)
5/9<L<500/199、且つ、L/10<d<(500+L)/2000、且つ、(2000d−L)<L3<=500
【0080】
次に、上述した平行化部を形成する第1基板の好ましい製造方法の一例を、図面を参照して、以下に説明する。この第1基板の製造方法の説明は、第2基板の製造方法に対しても適宜適用される。
【0081】
まず、図6(A)に示すように、ベース基板60が用意される。本実施形態では、ベース基板60として、シリコンウエハを用いた。ベース基板60の寸法は、直径が50mmであり、厚さが500μmであった。
【0082】
次に、図6(B)に示すように、ベース基板60の上に、レジスト層61が形成された後、レジスト層61が所定のパターンにパターニングされる。レジスト層61は、第1貫通孔が形成されるベース基板60の部分が露出するようにパターニングされる。本実施形態では、第1貫通孔の径が50μmとなるようにレジスト層61をパターニングした。
【0083】
次に、図7(A)に示すように、ベース基板61の露出している部分がエッチングされて、所定の深さを有する孔部62が形成される。エッチング方法としては、例えば、Reactive Ion Etching(RIE)法を用いることができる。エッチングガスとしては、例えば、六フッ化硫黄ガスを用いることができる。
【0084】
次に、図7(B)に示すように、孔部62上に保護膜63が形成される。保護膜63は、孔部62の底部及び側壁上に形成されると共に、レジスト層63上にも形成される。保護膜63の形成には、例えば、プラズマCVD法を用いることができる。CVDガスとしては、例えば、パーフルオロシクロブタンガスを用いることができる。
【0085】
そして、図7(A)及び図7(B)に示す工程を繰り返しながら、孔部62が掘り下げられて、図8(A)に示すように、ベース基板60を貫通する孔部62が形成される。このように、孔部62のエッチングと、孔部62の側壁上への保護膜63の形成とを繰り返すことにより、孔部62の側壁のエッチングを防止して、アスペクト比の高い孔部を形成することができる。なお、図8(A)には、保護膜63は示していない。
【0086】
次に、図8(B)に示すように、レジスト層61が除去される。レジスト層61が除去される。
【0087】
次に、図9(A)に示すように、複数の孔部62内の壁面と共に、ベース基板60の表面に絶縁層64が形成されて、第1ベース層51aとなる。本実施形態では、シリコンウエハであるベース基板60を水熱酸化して、絶縁層64として酸化珪素層を形成した。絶縁層64の厚さとしては、例えば、2μmとすることができる。
【0088】
そして、図9(B)に示すように、第1ベース層51aの上に導電層52aが形成されて、複数の第1貫通孔53aを有する第1基板50aとなる。導電層52aの形成方法として、例えば、スパッタリング法を用いることができる。導電層52としては、Ti層上にAu層を積層して形成することができる。Au層の厚さとしては、例えば、300nmとすることができる。
【0089】
このようにして、第1ベース層51aと、第1ベース層51a上に形成された第1導電層52aと、第1導電層52a及び第1ベース層51aを貫通する複数の第1貫通孔53aと、を有する第1基板50aが形成される。
【0090】
そして、上述したような第1基板50aを2つ製造して、一方を第2基板50bとして用いて、第1基板50a及び第2基板50bを有する平行化部14を形成した。そして、この平行化部14を、図1に示すイオン散乱装置1に取り付けた。第1基板50aと第2基板50bとの間の距離は150mmであった。第1基板50aとスリット13との間の距離を250mmとした。また、スリット13の中心部の開口部の径を1mmとした。スリット13と分析試料21との間の距離を2300mmとした。そして、イオン源11でHeイオンを発生し、加速管12で400keVの加速電圧でHeイオンを加速した所、分析試料21の位置におけるイオンビームの拡がり角は、0.58mradであった。この拡がり角は、第1基板の第1導電層側の面の位置を起点として表される。また、平行化部14をスリット13とエネルギーフィルタ15との間から取り除いた所、分析試料21の位置におけるイオンビームの拡がり角は、1.74mradであった。
【0091】
また、平行化部を用いる代わりに、第2のスリットをエネルギーフィルタ15と分析試料21との間に配置した状態で、分析試料21の位置におけるイオンビームの拡がり角を0.58mradにした場合を計算した所、第2のスリットをスリット13から3509mm離れた位置に配置しなければならないことが分かった。なお、第2のスリットの中心部の開口部の径は1mmとした。
【0092】
通常、イオンビームの平行度として、分析試料の位置におけるイオンビームの拡がり角が0.7mrad程度あれば十分に高いエネルギー分解能が得られる。本実施形態では、短い距離でこの拡がり角を上回る0.58mradという値を達成することができた。
【0093】
上述した本実施形態のイオン散乱分光装置によれば、短い距離でイオンビームの拡がり角を縮小させて、高い平行度のイオンビームを得ることができる。そのため、分析試料により散乱されたイオンのエネルギー損失を正確に測定することができるので、試料の分析精度が高い。
【0094】
本発明では、上述した実施形態のイオンビームの平行化装置、イオン照射装置及びイオン散乱分光装置は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0095】
例えば、上述した実施形態では、第1貫通孔及び第2貫通孔は、円柱形状であったが、図10に示すように、第1貫通孔及び第2貫通孔は、イオンビームの進行方向に向かって先細りのテーパ状の形状を有していても良い。第1貫通孔及び第2貫通孔が形成する空間は、ほぼ円錐台形状となる。なお、図10には、第一貫通孔のみが示されているが、第2貫通孔も同様の形状を有する。
【0096】
また、上述した実施形態では、平行化部14は、第1基板50aと第2基板50bとを有していたが、平行化部14は、第1基板50aのみを有していても良い。
【0097】
図11は、イオン散乱分光装置の変形例を示す図である。
【0098】
図11に示すように、平行化部14は、第1基板50aのみを有する。この場合、1枚の基板を用いて、短い距離でイオンビームを平行化する上で、アスペクト比(貫通孔の直径に対する長さの比)を大きくするように、貫通孔の寸法を適宜調整することが好ましい。
【0099】
また、平行化部14は、3枚以上の複数の貫通孔を有する基板を有してもいても良い。
【0100】
図12は、イオン散乱分光装置の他の変形例を示す図である。
【0101】
図12に示すイオン散乱分光装置の変形例では、平行化部14は、第1基板50a及び第2基板50bと、両基板間に配置される第3基板50cを有する。第3基板50cは、上述した実施形態の第1基板50a及び第2基板50bと同様の構造を有する。第3基板50cが有する複数の貫通孔それぞれは、対応する第1基板50aの第1貫通孔及び第2基板50bの第2貫通孔と対向するように配置される。
【0102】
このように、3重にイオンビームを絞ることにより、より短い距離でイオンビームの平行度を高くすることができる。
【0103】
また、上述した実施形態では、平行化部の第1基板を形成する際に、ベース基板であるシリコンウエハに貫通孔を形成するためにエッチングを用いていたが、ベース基板として酸化シリコン基板を用いても良い。
【0104】
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
【0105】
以上の上述した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0106】
(付記1)
第1ベース層と、前記第1ベース層上に形成された第1導電層と、前記第1導電層及び前記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有する第1基板と、
第2ベース層と、前記第2ベース層上に形成された第2導電層と、前記第2導電層及び前記第2ベース層を貫通し、複数の前記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、
を備え、
複数の前記第1貫通孔は、前記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の前記第2貫通孔は、前記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1導電層及び前記第2導電層を同じ方向に向け、且つ複数の前記第1貫通孔それぞれが対応する前記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化装置。
【0107】
(付記2)
複数の前記第1貫通孔及び複数の前記第2貫通孔の断面形状を円形に換算した換算直径は、20μm以上250μm以下の範囲にある付記1に記載の平行化装置。
【0108】
(付記3)
複数の前記第1貫通孔及び複数の前記第2貫通孔は、円柱形状を有する付記1又は2に記載の平行化装置。
【0109】
(付記4)
複数の前記第1貫通孔の内の一の第1貫通孔の両端の開口部の対角に位置するエッジ同士を結ぶ2本の線により作られる角度が、前記一の第1貫通孔の直径d1及び長さL1により規定される第1拡がり角α1=2d1/L1であり、
前記一の第1貫通孔と対向する前記第2貫通孔の直径が、前記エッジ同士を結ぶ2本の線それぞれを前記第2貫通孔の方向に延長して前記第2導電層の表面と交差する点同士を結んだ線の長さよりも短い付記3に記載の平行化装置。
【0110】
(付記5)
複数の前記第1貫通孔の内の一の第1貫通孔の直径d1及び長さL1により規定される第1拡がり角α1=2d1/L1と、
前記一の第1貫通孔と対向する第2貫通孔の直径d2及び長さL2と、
前記第1基板と前記第2基板との間の距離L3とが、
(d1+d2)/(L1+L2+L3) < α1
なる関係を満たす付記3に記載の平行化装置。
【0111】
(付記6)
複数の前記第1貫通孔の内の一の第1貫通孔の前記第1導電層側の開口部に入射するイオンビームの入射拡がり角βと、
前記一の第1貫通孔の半径d1/2と、
前記一の第1貫通孔の長さL1とが、
d1/2/tan(β/2)<L1
なる関係を満たす付記3に記載のイオンビームの平行化装置。
【0112】
(付記7)
ベース層と、前記ベース層上に形成された導電層と、前記導電層及び前記ベース層を貫通する複数の貫通孔と、を有する基板を備え、
複数の前記貫通孔は、前記ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有する、イオンビームの平行化装置。
【0113】
(付記8)
イオン源と、
第1ベース層と、前記第1ベース層上に形成された第1導電層と、前記第1導電層及び前記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有し、前記イオン源から照射されたイオンビームが入射する第1基板と、
第2ベース層と、前記第2ベース層上に形成された第2導電層と、前記第2導電層及び前記第2ベース層を貫通し、複数の前記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、
を備え、
複数の前記第1貫通孔は、前記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の前記第2貫通孔は、前記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1導電層及び前記第2導電層側の面を前記イオン源に向け、且つ複数の前記第1貫通孔それぞれが対応する前記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化部と、
を備えたイオン照射装置。
【0114】
(付記9)
イオン源と、
第1ベース層と、前記第1ベース層上に形成された第1導電層と、前記第1導電層及び前記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有し、前記イオン源から照射されたイオンビームが入射する第1基板と、
第2ベース層と、前記第2ベース層上に形成された第2導電層と、前記第2導電層及び前記第2ベース層を貫通し、複数の前記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、
を備え、
複数の前記第1貫通孔は、前記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の前記第2貫通孔は、前記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1導電層及び前記第2導電層側の面を前記イオン源に向け、且つ複数の前記第1貫通孔それぞれが対応する前記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化部と、
イオンビームのエネルギーを分析するエネルギー分析部と、
を備えたイオン散乱分光装置。
【0115】
(付記10)
前記第1導電層及び前記第2導電層が接地される付記9に記載のイオン散乱分光装置。
【符号の説明】
【0116】
1 イオン散乱分光装置
10 イオン照射部
11 イオン源
12 加速管
13 スリット
14 平行化部
15 エネルギーフィルタ
20 分析チャンバ
21 分析試料
30 磁場偏向型エネルギー分析器
31 マグネット
32 分析管
40 検出部
41 位置敏感型検出器
50a 第1基板
51a 第1ベース層
52a 第1導電層
53a 第1貫通孔
50b 第2基板
51b 第2ベース層
52b 第2導電層
53b 第2貫通孔
60 ベース基板
61 レジスト層
62 孔部
63 保護膜
64 絶縁層
d1 第1貫通孔の直径
L1 第1貫通孔の長さ
α1 第1拡がり角
β イオンビームの入射拡がり角
d2 第2貫通孔の直径
L2 第2貫通孔の長さ
α2 第2拡がり角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベース層と、前記第1ベース層上に形成された第1導電層と、前記第1導電層及び前記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有する第1基板と、
第2ベース層と、前記第2ベース層上に形成された第2導電層と、前記第2導電層及び前記第2ベース層を貫通し、複数の前記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、
を備え、
複数の前記第1貫通孔は、前記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の前記第2貫通孔は、前記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1導電層及び前記第2導電層を同じ方向に向け、且つ複数の前記第1貫通孔それぞれが対応する前記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化装置。
【請求項2】
複数の前記第1貫通孔及び複数の前記第2貫通孔の断面形状を円形に換算した換算直径は、20μm以上250μm以下の範囲にある請求項1に記載の平行化装置。
【請求項3】
複数の前記第1貫通孔及び複数の前記第2貫通孔は、円柱形状を有する請求項1又は2に記載の平行化装置。
【請求項4】
イオン源と、
第1ベース層と、前記第1ベース層上に形成された第1導電層と、前記第1導電層及び前記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有し、前記イオン源から照射されたイオンビームが入射する第1基板と、
第2ベース層と、前記第2ベース層上に形成された第2導電層と、前記第2導電層及び前記第2ベース層を貫通し、複数の前記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、
を備え、
複数の前記第1貫通孔は、前記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の前記第2貫通孔は、前記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1導電層及び前記第2導電層側の面を前記イオン源に向け、且つ複数の前記第1貫通孔それぞれが対応する前記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化部と、
を備えたイオン照射装置。
【請求項5】
イオン源と、
第1ベース層と、前記第1ベース層上に形成された第1導電層と、前記第1導電層及び前記第1ベース層を貫通する複数の第1貫通孔と、を有し、前記イオン源から照射されたイオンビームが入射する第1基板と、
第2ベース層と、前記第2ベース層上に形成された第2導電層と、前記第2導電層及び前記第2ベース層を貫通し、複数の前記第1貫通孔と対応するように形成された複数の第2貫通孔と、を有する第2基板と、
を備え、
複数の前記第1貫通孔は、前記第1ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、且つ複数の前記第2貫通孔は、前記第2ベース層内の壁面の部分が電気絶縁性を有し、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1導電層及び前記第2導電層側の面を前記イオン源に向け、且つ複数の前記第1貫通孔それぞれが対応する前記第2貫通孔と対向するように配置される、イオンビームの平行化部と、
イオンビームのエネルギーを分析するエネルギー分析部と、
を備えたイオン散乱分光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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