イオンビーム処理の間サンプルを冷却するための装置
【課題】冷却される処理プロセスを自動的に、かつ長時間操作することを可能にする冷媒装置を実現する。
【解決手段】サンプルを配置するためのサンプルステージ102を有し、冷媒が入っている冷媒容器を有し、及び少なくとも1つの、サンプルステージ102を当該冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素106a、106bを有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置101であって、当該熱伝導要素106a、106bに熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材105を有し、当該冷却フィンガ状部材105は、冷媒が通って流れることが出来、かつ当該冷媒容器に接続可能な導管を含む。
【解決手段】サンプルを配置するためのサンプルステージ102を有し、冷媒が入っている冷媒容器を有し、及び少なくとも1つの、サンプルステージ102を当該冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素106a、106bを有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置101であって、当該熱伝導要素106a、106bに熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材105を有し、当該冷却フィンガ状部材105は、冷媒が通って流れることが出来、かつ当該冷媒容器に接続可能な導管を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを配置するためのサンプルステージを有し、冷媒が入っている冷媒容器を有し、及び、サンプルステージを冷媒に熱伝達可能に接続する少なくともひとつの熱伝導要素を有する、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオンビームエッチングは、典型的には、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)に関連して検査される構造のサンプルを作製するためにしばしば利用されるプロセスである。この技術は特に、研究、材料研究、及び半導体、金属、セラミック、プラスチックなどの多くの材料のための品質管理に使用される。プロセスを行うために、サンプルは、イオンビームエッチングユニットのサンプルステージに取り付けられ、そして1以上の電子ビームのビーム路内に位置決めされる。イオンビームエッチングユニットは典型的に、10−6mbarの基準圧で稼動する高真空ユニットである。最も一般的に使用されるイオンはアルゴンイオンであり、通常1から10kVの加速電圧で使用される。電子顕微鏡における画像解像度の質は、この場合、サンプルの質に大いに依存する。既知のイオンビームエッチングプロセスの中には、実際特に、イオンビームスロープエッチング、SEMサンプルのイオン研磨、ワイヤカッティング法(Drahtabschattungsverfahren)及び、標準TEMサンプルのイオンビーム処理による作製がある。最後の2つの方法はTEMサンプル用に使用されるのに対し、イオンビームスロープ(斜め)エッチングは、断面SEMサンプルを作製するのに使用される。スロープエッチングにおいて、サンプルのプロファイルは、イオンビームを用いて露出され、サンプルの領域は、サンプルの表面上に配置され又はサンプルの表面に対して位置決めされたマスクによって、イオンビームによる材料除去から保護される。高品質SEMサンプルを作製するのにとりわけ効果的であることが分かっているイオンビームスロープエッチングプロセスは、少なくとも2つのイオンビーム、好ましくは3つのイオンビームが、お互い予め規定されるアングルで、サンプル表面の上に案内されるものである。この方法は、国際公開WO 2008/106815 A2号に記載される。なお本特許文献の全開示内容はその引用をもって本書に繰込み記載する。
【0004】
全てのイオンエッチング方法及び、特に国際公開WO 2008/106815 A2号からの方法の場合において、サンプルがイオンエッチング操作の間冷却されると有利である。サンプルの冷却は、より高いビーム照射レベルを可能にし、(とても繊細なサンプルの場合でさえも)より高いエッチング速度を可能にし、かくて、同時に高い信頼性及び良好なサンプル品質を与えて高い経済性(コストパフォーマンス)を可能にする。
【0005】
冷却操作は、多数のイオンビームエッチングユニットで使用され、SEM及びTEM用標本の処理に利用され、そして前述のイオンビームスロープエッチング方法のような特別な作製技術に利用される。サンプルは通常室温で作製され、そして結果として室温で安定である。それ故、冷却操作の主要な目的は、例えば、拡散プロセス及び構造変化の抑制のため、サンプルがイオンビームエッチングの間に加熱されるのを妨げることである。十分な冷却は、例えばプラスチックといった有機材料で作られる熱感受性サンプルのためにとりわけ重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO 2008/106815 A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際には、本質的に、2つの冷却方法が確立されている。第一の方法は、ペルティエ素子を使用し、これは小型に、そして空間の節約となるように構成されるが、多くの応用にとっては、冷却能力が小さすぎる。第二の冷却方法は、冷媒を使用する冷却を含み、特に液体窒素で冷却するものである。これは、高冷却能力のために注目に値するが、冷媒に関して安全規定が遵守されなければならないという不利な点を有する。今日の大部分のイオンビームエッチングユニットは、第二の冷却方法で作動し、冷却は、冒頭に引用された種類の冷却装置で行われる。市販の多くのイオンビームエッチングユニットは、操作によるアーチファクト(変質)が生じるのを防ぐために、サンプルを運動(回転、振動)させなければならず、これは冷媒及びサンプル間の不十分な熱接触の問題を有し、そして、サンプルの温度測定の制限という問題を有する。
【0008】
更なる問題が制限された冷媒の貯蔵によって生じる。既知のイオンビームエッチングユニットのいくつかにおいて、サンプルは気密蓋装置を介して真空チャンバに装填される。点検修理の場合又は、サンプルステージからの不慮の分離によって、サンプルを真空チャンバの外にもはや取り出すことができない場合、真空チャンバは通気が不可欠となる。このために、冷媒リザーバ容器は、冷媒を完全に蒸発させるために、加熱されなければならない。この結果、既知のユニットでは冷媒の制限された容器(貯留)のみが、使用される。更に、充填レベルの指標がなく、又は冷媒貯量の監視がないので、充填レベルを常に監視しなければならず、そして冷媒を必要に応じて、補充しなければならない。より長時間の間(例えば終夜)の、無人のサンプル処理のためには、冷媒貯蔵は十分でないだろう。冷媒の持続的な手動の補充は、保護服の着用のような複雑な安全規定を余儀なくされる。
【0009】
それ故、本発明の目的は、上述の従来技術に知られる不利な点を除くことである。本発明は、特に、冷却される処理プロセスを自動的に、かつ長時間作動することを可能にする冷却装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一視点において、冷却装置は、好ましくは直接に、熱伝達要素に熱伝達可能に接続されている冷却フィンガ状部材を含み、当該冷却フィンガ状部材が、冷媒が通って流れることが出来かつ冷媒容器に接続可能である導管を含むことを特徴とする。
【0011】
より詳しくは第一の視点において、サンプルを配置するためのサンプルステージを有し、冷媒が入っている冷媒容器を有し、及び少なくとも1つの、サンプルステージを冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素を有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置であって、
当該熱伝導要素に熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材を有し、当該冷却フィンガ状部材は、冷媒が通って流れることが出来かつ冷媒容器に接続可能な導管を含む冷却装置が提供される。
【0012】
第二の視点において、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御(調節)するための方法が提供される。当該方法は、以下の各ステップを含む:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージにサンプルを位置決めして取り付けること;
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管に導かれる冷媒により当該サンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のために所望される温度が確立されること。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各視点によれば、サンプルステージの冷却は、冷却フィンガ状部材を通過する冷媒の流れを簡単に始動及び停止することにより自動的に行うことができる。真空チャンバの通気の前に冷媒の面倒な蒸発を行う必要がないので、結果としてより容量の大きいより大きな冷媒容器もまた、使用され得る。従来技術と比較して、より長時間(例えば終夜)をかけての標本作製がそれ故可能である。冷却のすばやい始動及び停止ができることは、イオンビームエッチングプロセスをその上更に短くし、そして、そのイオンビームエッチングプロセスを効率的なものとすることに貢献する。ユーザーによる処理は更に本質的に、より簡単にそしてより信頼性のあるものになり、より大きな容量を選択し得ることにより更に、常時の充填レベルの監視及び、常時の冷媒の補充が必要でなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による一実施例における冷却装置を有するサンプルステージフランジの、サンプルステージに向って眺めた透視図(斜視図)である。
【図2】図2は、冷却装置のエバポレータブロックに向って眺めた図1のサンプルステージフランジを表示する。
【図3】図3は、本発明による冷却装置の構成要素の透視図(斜視図)である。
【図4】図4は、当該冷却装置を通る冷媒の流路(系)を図示する。
【図5】図5は、配置位置において、開放状態のイオンビームエッチングユニットの側面図であり、当該イオンビームエッチングユニットは、その中に取り付けられる図1のサンプルステージを有する。
【図6】図6は、図5のイオンビームエッチングユニットを表示し、当該サンプルステージフランジは、閉鎖位置に旋回される。
【図7】図7は、図5及び図6のイオンビームエッチングユニットの閉鎖真空チャンバを通る断面であり、当該サンプルステージフランジは操作位置にある。
【図8】図8は、当該サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第一の変形形態を表示する。
【図9】図9は、当該サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第二の変形形態を表示する。
【図10】図10は、当該エバポレータブロックの温度を制御するための制御ループのブロック図である。
【図11】図11は、冷却のための制御系統を図示するブロック図である。
【図12】図12は、イオンビームエッチング操作の完了後の加熱の際の温度を制御するための制御ループのブロック図である。
【図13】図13は、加熱のための制御系統を図示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付された図面に図示される、制限せずに例示する実施形態ないし実施例を参照して、更なる有利な点と共に本発明は以下に説明されるであろう。
まずは本発明の実施形態の概要について説明する。
【0016】
冷却可能なサンプルステージは、イオンビームエッチングユニットの真空チャンバにフランジ結合される真空フランジとして構成される。サンプルステージは、少なくとも一つの熱伝導要素を介して冷却フィンガ状部材に接続され、当該冷却フィンガ状部材は、好ましくは真空チャンバ内に突出する。冷却フィンガ状部材は、熱輸送のために働くだけでなく、冷却装置の真空気密通過部としても働く。冷却フィンガ状部材は、サンプルステージにたった一つの熱伝導要素で接続され得るが、いくつかの、例えば2又は3の熱伝導要素で接続されても良い。
【0017】
用語「熱伝達可能に(waermeschluessig)」は、冷却フィンガ状部材及び少なくとも一つの熱要素を介して媒介される、冷媒とサンプルステージの間の熱的接触を意味し、それは良好な熱輸送を可能にするのに十分なものであり、かくて、サンプルの良好な冷却を可能にするのに十分なものである。
【0018】
冷媒容器は、典型的に、ジュワー瓶であり、そして従来技術において知られる冷媒容器と比較して、より十分に大きい容量を有し得る。選択される容量は、好ましくは、冷媒の補充及びオペレータによる監視(例えば終夜)無しにサンプル処理操作が可能なほどに、少なくとも十分に大きいものとして選択される。実際に、20リットル以上の容量を有する冷媒容器が、このために適していることが分かった。
【0019】
冷却フィンガ状部材の導管を通る冷媒の流れの制御のために、冷却装置は、冷媒の流れを制御するための手段を含むことが有用である。
【0020】
とりわけ好ましくそして簡単に制御可能な実施形態において、冷媒の流れを制御するための手段は、冷媒ポンプとして構成される。冷媒ポンプの始動によりサンプルステージの冷却が開始され、そして冷媒ポンプの停止は、再びサンプルステージの冷却を終わらせる。冷媒ポンプにより、冷却フィンガ状部材の導管を通る(貫流する)冷媒の流量は、更に簡単にそして効率的に制御でき、そしてポンプ回転速度を介して制御できる。
【0021】
更なる一実施形態において、冷媒の流れを制御する手段は、バルブ要素として構成され得る。しかしながら、バルブ要素は冷却フィンガ状部材の導管を通る冷媒の流れの開始及び停止のみを可能にする。この場合冷媒は、冷却フィンガ状部材に対し能動的に貫流するようには導かれないので、冷媒容器もまた、冷却フィンガ状部材より高い位置に配置されなければならない。これらの理由により、流量がその上更に制御され得る冷媒ポンプを有する実施形態が好まれる。
【0022】
更なる一実施形態において、冷媒の流量を制御するための手段は、冷媒ポンプ及びバルブ要素の組み合わせとして構成され得る。この場合に、ポンプ出力は一定に維持され、そして流量は、制御可能なバルブ、好ましくは流量レギュレーターの開口により制御することができる。
【0023】
好ましい一実施形態において、冷却フィンガ状部材は、二重壁(二重管)構造で構成され、当該冷却フィンガ状部材は、好ましくは、外管及び、外管の内に配置される内管を含む。冷媒は、好ましくは、内管を通って冷却フィンガ状部材内に流入し、そして外管を通って冷却フィンガ状部材から流出するように構成できる。
【0024】
さらに図4に、より詳細に図示されているように、熱伝導要素は、好ましくは、冷却フィンガ状部材の方向へ指向する端部において接触スリーブ内に圧嵌されており、そして冷却フィンガ状部材に固定される。固定は、例えば、接触スリーブを冷却フィンガ状部材にボルト締め又は締め付けることによりなされる。良好な熱伝達接続及びそれに伴うサンプルステージの強力な冷却は、接触スリーブと冷却フィンガ状部材の広い領域にわたる平面的な接触により、そして更にきついボルト締め又は締め付けにより、特に保障される。良好な熱伝達接続は、例えば、接触スリーブと冷却フィンガ状部材の間の10x10mmの接触領域で達成可能である。
【0025】
サンプルステージでの冷却により達成可能な最小の温度は、使用される冷媒に依存するのみならず、冷媒とサンプルステージの間の熱伝導にも非常に依存する。一つは、冷媒であり、これは冷却フィンガ状部材の導管を通って流れ、ある温度、例えば液体窒素の場合においては、−195.8℃未満の温度を有する。もう1つは、冷却されるべきサンプルステージであり、これは、完全に断熱されておらず、例えばイオン源によって、外側からサンプルステージに伝えられる熱を絶えず有し、そして絶えず「冷たさ」を失う。熱は、サンプルステージ及び冷却フィンガ状部材に接続される熱伝導要素の伝達点においてまた失われる。熱伝導要素と冷却フィンガ状部材の間の接続(すでに説明した)に加えて、熱伝導要素自身の実施形態もまた重要である。かくて、熱伝導要素は、高熱伝導材料、好ましくは銅から製造される。熱伝導要素は、好ましくは、ストリップ状(帯状)に構成される。より大きな断面は、より大きな熱輸送を可能にし、かくて、より低い温度を可能にするので、より大きな断面は、熱伝導ストリップ用に、好ましく選択される。実際には、例えば1x6mm2及び2x6mm2の断面が有利であることが分かっており、より大きな2x6mm2の断面で、より良い熱輸送が可能である。
【0026】
とりわけ有利な一実施形態において、冷却フィンガ状部材から、マスクのためのマスク保持装置に延在する、少なくとも1つの更なる熱伝導要素が設けられ、サンプルをマスクに対して相対的に位置付け可能である。典型的には、イオンビームエッチング操作の前に、サンプルは、マスクに対して相対的に位置付けられる。かくて、この実施形態では、サンプルステージに取り付けられるサンプルと共にサンプルステージが冷却されるだけではなく、マスクと共にマスク保持装置も冷却される。サンプルステージ及びマスク保持装置の同時の冷却は、サンプルに対して相対的に位置付けされるマスクエッジとマスクエッジに対して位置付けされるサンプルの間の、熱膨張に基づくドリフトを妨げる。マスク保持装置と冷却フィンガ状部材を接続する熱伝導要素の性質は、サンプルステージを冷却フィンガ状部材に接続する熱伝導要素の性質に相当する。冷却フィンガ状部材は、ただ1つの熱伝導要素を使用してマスク保持装置に接続され得るが、いくつかの、例えば2又は3の熱伝導要素も使用され得る。熱伝導要素の断面に関して、サンプルステージへ延在する熱伝導ストリップ用の2x6mm2の断面及びマスク保持具へ延在する熱伝導ストリップ用の1x6mm2の断面は、例えば、サンプルステージ及びマスクの均一な冷却のために実際に有利であることが分かっている。
【0027】
更に、冷却フィンガ状部材から流出する冷媒を蒸発させるために、冷却フィンガ状部材の導管をエバポレータブロック内に開口すると有利になることが分かっている。冷媒は、適切には液化ガスであり、特に、液体窒素又は液体空気である。冷媒は、かくて、冷媒容器から、冷却フィンガ状部材の導管の方向へ導かれ、そして、そこからエバポレータブロックの流路系に送られる。冷媒は、エバポレータブロック内で蒸発する。これは、エバポレータブロックの通過が完了した後に、小量の液体冷媒のみ、及び好ましくは気体冷媒のみが、流出するという利点を有する。冷却装置が冷媒ポンプを含む場合、気体冷媒のみがエバポレータブロックから現われるように、冷媒ポンプのポンプ回転速度によって、冷媒の流量は制御され得る。
【0028】
有利な一変形形態としては、エバポレータブロックの温度を測定するための温度測定手段及び/又は加熱要素が、エバポレータブロックに付設される。
【0029】
更に有利な一変形形態としては、サンプルステージの温度を測定するための温度測定手段及び/又は加熱要素が、サンプルステージに付設される。
【0030】
サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度が制御可能であると、この場合では有利である。適切には、冷却装置は、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度を制御するための温度制御装置を付設しており、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度に相当する信号が、当該温度制御装置に送られ、当該温度制御装置が、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度を所与の値に制御する。サンプルステージと同時に冷却が生じる場合、マスクの温度は、サンプルステージの温度挙動とほぼ一致する温度挙動を示す。すでに上述したように、これは熱伝導ストリップのそれぞれの断面に依存する。最適な断面は、所定の試験を基にして当業者によって確定できる。この実施形態において、マスク温度は、サンプルステージ温度の制御と連関され、特別な監視は必要ない。
【0031】
1つの改良形態において、マスク保持具及びマスクの温度を測定する目的で、マスク保持具は、それに付設される温度測定手段をまた有しており、この温度は、同様に、温度制御装置により制御される。しかしながら、簡略化の理由から、マスク保持具に、固有の温度測定手段を付設しないことが好ましいが、上述のように、代わりにマスク温度をサンプルステージ温度の制御に関連させることが好ましい。
【0032】
第一の有利な変形形態としては、温度制御装置は、冷媒ポンプのポンプ回転速度によって、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度を所与の値に制御する。
【0033】
第二の有利な変形形態としては、温度制御装置は、サンプルステージに付設される加熱要素によって、サンプルステージの温度を所与の値に制御する。
【0034】
多くの応用において、温度値は、出来るだけ低く選択されるであろうし、そして全てのイオンビームエッチング操作の間、一定水準に維持されるであろう。試験において、本発明による装置で、処理されるべきサンプルを、−150℃未満の温度に冷却できることが分かっている。
【0035】
第一の変形形態と比較して第二の変形形態の有利な点は、温度における所望の変化に、よりすばやく応答できる点である。それ故、第二の変形形態は、サンプルの温度が、冷却により達成可能な最小の温度よりも本質的に高い温度になるように意図される場合、又は、イオンビームエッチング操作の間のサンプル温度の変化(例えば、温度勾配)が望まれる場合に特に利用される。冷媒ポンプのポンプ回転速度によるサンプル温度の制御は、これらの場合において、遅すぎると分かるであろうし、かくて、第二の変形形態が好ましいだろう。特別な場合において、当業者は、装置パラメーターを基礎として及び、任意に簡単な所定の試験を基礎として、第一又は第二の変形形態が特別なイオンビームエッチング操作に、より良く適合されるかを決定できる。
【0036】
従来技術に関連する上記の大部分のイオンビームエッチングユニットは、イオンビームエッチング操作の後の制御された自動のサンプル加熱の如何なる可能性も提供しない。かくて、イオンビームエッチングユニットの通気によって、凝縮水(露)でサンプルを汚染するリスクが常に存在する。
【0037】
完成の後、サンプルステージフランジの通気及び開放の際、周囲空気から凝縮された水でサンプルが汚染されることを防ぐために、イオンビームエッチング操作の完了の後、温度制御装置が、サンプルステージの温度及びエバポレータブロックの温度を、エバポレータブロックに付設される加熱要素により、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度値に制御すると有利である。すでに上述したように、マスクは、サンプルステージの温度挙動とほぼ一致する温度挙動を示す。冷却フィンガ状部材を通る冷媒の流れは通常、加熱の前に停止される。温度は室温に制御されると有利である。
【0038】
本発明による冷却装置の使用により温度を制御するための方法を利用可能にすることは、本発明の更なる目的である。
【0039】
この目的は、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法に関する本発明によって達成される。当該方法は、次のステップ:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージにサンプルを位置決めして取り付けること;及び
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管に導かれる冷媒によりサンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のための所望の温度が確立されること
を含む。
【0040】
当該方法は、好ましくは、ステップ(b)に続き、イオンビームエッチング操作の終了の後にサンプルの冷却が終了されるステップ(c)を含む。このために、上記のような、冷媒ポンプ又はバルブを介して制御される冷媒の輸送は、停止される。
【0041】
当該方法は、好ましくは、当該サンプルを、ステップ(c)に続き、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度に加熱するステップ(d)を更に含む。当該サンプルは、好ましくは室温に加熱される。
【0042】
イオンビームエッチングプロセスにおいて、サンプルがマスクに対して相対的に位置決めされる場合、サンプルと同様に、マスクが冷却され又はさらに加熱されて室温に戻ると有利である。すでに述べたように、サンプルステージとマスク保持装置の同時冷却は、サンプルに対して相対的に位置付けされるマスクエッジとマスクエッジに対して位置付けされるサンプル領域の間の、熱膨張に基づくドリフトを妨げる。マスクの温度は、冷却と加熱がサンプルステージと同時に生じる場合、サンプルステージの温度挙動とほぼ一致する温度挙動を示す。かくて、マスク温度は、サンプルステージ温度と連関され、特別な監視は必要ない。
【0043】
大部分のイオンビームエッチングプロセスのために、サンプルの温度は、イオンビームエッチング操作の間、一定に維持される。
【0044】
すでに検討したように、冷媒は、適切には、液化ガス、好ましくは液体窒素又は液体空気である。液体窒素は通常、イオンビームエッチングプロセスで使用される。好ましい実施形態においては、エバポレータブロックを通って流れた後に、冷媒がそこから気体状態のみで現われるように、例えば冷媒ポンプのポンプ量を介して、冷媒の流量は制御される。これは、第一に、液化ガスに接するオペレータのリスクを減らし、そして第二には、過剰な冷媒の消費を妨げる。
【0045】
本発明において下記の形態が可能である。なおこれら形態に付記した図面参照符号は専ら理解を助けるための例示であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0046】
(形態1)
第一の視点のとおり、サンプルを配置するためのサンプルステージ(102)を有し、冷媒が入っている冷媒容器(120)を有し、及び少なくとも1つの、当該サンプルステージ(102)を当該冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素(106a、106b)を有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置(101)であって、
当該熱伝導要素(106a、106b)に熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材(105)を有し、当該冷却フィンガ状部材(105)は、冷媒が通って流れることが出来かつ当該冷媒容器(120)に接続可能な導管(130、131)を含むことを特徴とする冷却装置が提供される。
【0047】
(形態2)
第二の視点のとおり、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法であって、当該方法は、下記のステップ:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージ(102)にサンプルを位置決めして取り付けること;
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管(130、131)に導かれる冷媒により当該サンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のために所望される温度が確立されること
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0048】
(形態3)
本発明において、当該冷却装置が当該冷媒の流れを制御するための手段(121)を含むことが好ましい。
【0049】
(形態4)
本発明において、当該冷媒の流れを制御するための当該手段が冷媒ポンプ(121)として構成されることが好ましい。
【0050】
(形態5)
本発明において、当該冷却フィンガ状部材(105)が二重壁ないし二重管方式で構成されることが好ましい。
【0051】
(形態6)
本発明において、当該冷却フィンガ状部材(105)からマスク(104)のためのマスク保持装置(103)に延在する少なくとも1つの更なる熱伝導要素(106c)を有し、当該マスクに対して当該サンプルは相対的に位置付け可能であること、を特徴とすることが好ましい。
【0052】
(形態7)
本発明において、当該冷却フィンガ状部材(105)の当該導管(130、131)が、当該冷却フィンガ状部材(105)から流れ出る当該冷媒を蒸発させるためのエバポレータブロック(109)内に開口することが好ましい。
【0053】
(形態8)
本発明において、当該エバポレータブロックの温度を測定するための温度測定手段(118)、及び/又は加熱要素(119)、が当該エバポレータブロック(109)に付設されることが好ましい。
【0054】
(形態9)
本発明において、当該サンプルステージ(102)の温度を測定するための温度測定手段(122)、及び/又は当該加熱要素(119A)、が当該サンプルステージ(102)に付設されることが好ましい。
【0055】
(形態10)
本発明において、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を制御するための温度制御装置を付設しており、
当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度に相当する信号が、当該温度制御装置に送られ、
当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を所与の値に制御する
ことが好ましい。
【0056】
(形態11)
本発明において、温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を、冷媒ポンプ(121)のポンプ回転速度により所与の値に制御することが好ましい。
【0057】
(形態12)
本発明において、当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度を、当該サンプルステージ(102)に付設される加熱要素(119A)により、所与の値に制御することが好ましい。
【0058】
(形態13)
本発明において、イオンビームエッチング操作の完了の後、当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び当該エバポレータブロック(109)の温度を、当該エバポレータブロック(109)に付設される当該加熱要素(119)により、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度値に制御することが好ましい。
【0059】
(形態14)
本発明において、ステップ(b)に続き、イオンビームエッチング操作の終了後に当該サンプルの冷却が終了されるステップ(c)を有することが好ましい。
【0060】
(形態15)
本発明において、ステップ(c)に続き、当該サンプルを、周囲空気から当該サンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度、好ましくは室温に、加熱するステップ(d)を有することが好ましい。
【0061】
(形態16)
本発明において、当該サンプルが、マスク(104)に対して相対的に位置決めされ、当該マスク(104)は、当該サンプルと同様に、冷却され又は更に加熱されて、室温に戻ることが好ましい。
【0062】
(形態17)
本発明において、イオンビームエッチング操作の間、当該温度が一定に維持されることが好ましい。
【0063】
(形態18)
本発明において、当該冷媒が液化ガスであり、好ましくは液体窒素又は液体空気であることが好ましい。
【0064】
(形態19)
本発明において、当該冷媒の流量が、当該エバポレータブロック(109)を通って流れた後に、当該冷媒がそこから気体状態のみで現われるように制御されることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、イオンビームスロープエッチングプロセスのためにデザインされたサンプルステージフランジ100の一実施例を表示し、当該サンプルステージ100は、それに付設される本発明による冷却装置(ユニット)101を有する。サンプルステージフランジ100は、真空気密方式において、イオンビームエッチングユニット(イオンビームエッチングユニット200、図5から図7参照)に取り付け可能である。冷却装置101は、マスク104を有する冷却可能なマスク保持具103と共に、サンプル(図示せず)が取り付け可能な、冷却可能なサンプルステージ102を含む。冷却装置101は更に、冷却フィンガ状部材105を含む。マスク保持具103及びマスク104がサンプルステージ102及びサンプルと同時に冷却されるように、サンプルステージ102及びマスク保持具103は、熱伝達可能な形式において、熱伝導ストリップ(帯材)106a、106b、106cを介して冷却フィンガ状部材105に接続される。熱伝導ストリップ106a、106b、106cの断面は、サンプルステージ102及びマスク保持具103の均質な冷却が生じるように選択される。熱伝導ストリップ106a、106b、106cは、冷却フィンガ状部材105上の共通の起点106からサンプルステージ102に延在し(熱伝導ストリップ106a、106b)、そしてマスク保持具103(熱伝導ストリップ106c)に延在する。イオンビームエッチング操作が開始する前に、サンプルはマスク104に対して相対的に位置付けされる。サンプルステージ102及びマスク保持具103の同時冷却は、マスクエッジ107に対して相対的に位置付けられたサンプルとマスクエッジ107に対して位置付けされたサンプル領域の間の、熱膨張に基づくドリフトを妨げる。
【0066】
サンプルステージ102、マスク保持具103、熱伝導ストリップ106a、106b、106c及び、冷却フィンガ状部材105は、標本ステージフランジ100のハウジング108の内側に配置される。エバポレータ(蒸発)ブロック109は、サンプルステージフランジ100の外側に取り付けられる。冷却フィンガ状部材105(これはまた、エバポレータブロック109に接続される)は、サンプルステージフランジ100のハウジング108を通って延在し、そして最終的に、真空気密に構成される。冷却フィンガ状部材105は、二重壁(二重管)構造(図4の冷却フィンガ状部材を通る断面図を参照)であり、そして、そのほぼ全体を通って冷媒(この場合は液体窒素である)が貫流する。
【0067】
冷媒は、リザーバ容器120(ジュワー瓶)内に配置され、そしてそこから、冷媒ポンプ121(図4参照)(そのコネクタ110は、サンプルステージフランジ100のハウジング108に配置される)によって、被覆された冷媒ライン(冷媒ダクト)112を通って、エバポレータブロック109の入口115にポンプされる。図2は、エバポレータブロック109に向って眺めたサンプルステージフランジ100の背面図である。エバポレータブロック109の温度を監視及び制御するために、温度センサ118は、エバポレータブロック109の内側に配置される。イオンビームエッチング操作の完了後、サンプルステージフランジ100の全体を好ましくは室温に加熱する働きを担う加熱要素119は、また、エバポレータブロック109内に配置される(図12参照)。エバポレータブロック109の入口115から、冷媒は、冷却フィンガ状部材105内に導かれ、そして冷却フィンガ状部材105から流出する。好ましくは気体冷媒(気体窒素)のみが、エバポレータブロック109の出口117に現われるように、導かれて出た冷媒はエバポレータの内側にある流路系(ダクト系)111を通って流れ、そこで蒸発する。冷却装置を通る冷媒の流路は、後述の図4において詳細に再度記載される。
【0068】
図3は、サンプルステージフランジ100に組み込まれる、本発明の一実施例による冷却装置101の構成要素の透視図を表す。図示される構成要素は、サンプルステージ102、マスク保持具103に配置されるマスク104を有するマスク保持具103、エバポレータブロック109、冷却フィンガ状部材105、及び熱伝導ストリップ106a、106b、106cを含む。熱伝導ストリップ106a、106b、106cは、冷却フィンガ状部材105上の共通の起点106からサンプルステージ102に延在し(熱伝導ストリップ106a、106b)、そして、マスク保持具103に延在する(熱伝導ストリップ106c)。熱伝導ストリップ106a、106b、106cの起点106は、接触スリーブ123に圧嵌され、そして、締め付けネジ124によって冷却フィンガ状部材105に固定される。接触スリーブ123及び冷却フィンガ状部材105の間の接触領域は、良好な熱伝達接続が達成可能なように選択される。表示される例では、接触スリーブ123及び冷却フィンガ状部材105の間の接触領域は、およそ10x10mmに等しい。図3では図示されていない、冷媒ポンプ121と、冷媒のためのリザーバ容器120のような冷却装置101の更なる構成要素は、後述の図4において図示される。サンプルステージ102及びマスク保持具103は、熱損失を最小限にするために、近隣の低熱伝導要素113、114によって、サンプルステージフランジ100の他の構成要素に対して断熱される。サンプルステージ102の温度を監視し、そして制御するために、温度センサ122は、また、サンプルステージ102の内側に配置される。加えて、後述の(図9参照)サンプルステージ102の温度を制御するための各種制御ループの場合、加熱要素119Aは、また、サンプルステージ102の内側に配置される。
【0069】
図4は、冷却装置100を通る冷媒の流通経路(流路)を例示する。冷媒は、リザーバ容器120内に保存される。リザーバ容器120の容量は、好ましくは、少なくともサンプル処理が冷媒の補充及びオペレータによる監視(例えば終夜)無しで可能なほど十分に大きいものが選択される。実際に、20リットル以上の容量を有する冷媒容器が良いことが判明している。イオンビームエッチング操作が開始される前に、サンプルステージ102の冷却及びマスク保持具103の冷却は、冷媒ポンプ121のスイッチを入れることによって開始される。これに関して、冷媒は、リザーバ容器120からエバポレータブロック109の入口115に、冷媒ポンプ121によってポンプされ、そして冷却フィンガ状部材コネクタ116を通って二重壁冷却フィンガ状部材105の方向へポンプされる。冷却フィンガ状部材105は、外管130及び、外管130内に配置される内管131を含む。冷媒の流れる方向は、矢印132、133によって図示される。冷媒(液体窒素)は、内管を通って冷却フィンガ状部材105内に流れ(矢印132)、そして、内管131の管開口部134を通って外管130内に達する。そこから、冷媒は、冷却フィンガ状部材105から出る、反対方向(矢印133)に流れ、そしてそこから、エバポレータ109の流路系111内に達し、そこで蒸発する。流路系111を通った後に、気体冷媒(気体窒素)のみが、エバポレータブロック109の出口117に現われるように、冷媒の流量は、好ましくは冷媒ポンプ121のポンプ回転速度により制御される。後に、温度制御についてより詳細に説明がなされる。イオンビームエッチング操作の終了後、冷却は、冷媒ポンプ121を停止することにより停止され、そして全ての冷却されたサンプルステージフランジの構成要素は、エバポレータブロック109の加熱要素119により、好ましくは室温に加熱される。
【0070】
図5及び図6のそれぞれは、開放状態にされたイオンビームエッチングユニット200の側面図を表示し、当該イオンビームエッチングユニット200は、それに取り付けられるサンプルステージフランジ100を有する。イオンビームエッチングユニット200が作動する時、サンプルステージフランジ100は、イオン源が中に配置される真空チャンバ201(容器)に取り付けられる(サンプルステージフランジ100が取り付けられた閉鎖真空チャンバ201を通る断面を表示する図7を参照)。図5及び図6に戻って:サンプルステージフランジ100は、サンプル調節のために、90度傾動可能に取り付けられる。真空にされる前に、そしてイオンビームエッチング操作が開始する前に、サンプルは、サンプルステージ102に固定され、そしてマスクに対して相対的に手動で調節される。図5において、サンプルステージフランジ100は、90度傾けられた第一の調節位置にある。図6において、サンプルステージフランジ100は、その第二の調節位置にあり、この調節位置は、また、サンプルステージフランジ100が、支持レール204によって、真空チャンバ201の方向に水平に動かされ、そして当該真空チャンバ201に取り付けられる位置を表す。イオンビームエッチングユニット200は更に、サンプル調節のための双眼鏡202を含む。
【0071】
一旦、サンプルが導入(装填)され、そして位置決めされると、サンプルステージフランジ100は、イオンビームエッチングユニット200の容器に取り付けられ、そしてサンプルチャンバは、高真空(通常少なくとも10−6mbar)を形成するためにポンプ排気される。図7は、サンプルステージフランジ100が取り付けられた、閉鎖真空チャンバ201を通る断面の平面図である。エッチングプロセスは、従来技術における、前掲で引用された国際公開WO 2008/106815 A2号によるイオンビームスロープエッチング法に従って生じる。その結果、国際公開WO 2008/106815 A2号に記載されているように、イオン源203に組み込まれた3つのイオンビーム(1,2,3)は、お互いに規定されたアングルでサンプル表面上に案内される。
【0072】
一旦、真空チャンバ201内に真空が形成されたならば、サンプルは所望の温度に冷却され、そしてイオンビームで処理される。サンプルの処理の間、サンプル温度は、所望の温度値に、制御により一定に維持される。サンプル処理が完了された時に、サンプルステージフランジ100が通気及び開放時の凝縮水での汚染を避けるために、所望の温度値、好ましくは室温、に加熱される。
【0073】
イオンビームエッチング処理の間の温度を制御するための制御ループが、図8から図13に更に記載される。冷却装置101は、このために、冷却及び加熱の間、下記の制御ループを制御する役目を果たす中央温度制御装置(コントローラ)及びその変形形態を付設している。図8から図10及び図12における「熱(Waerme)」とラベルされるブロック枠は、サンプルステージ102ないしエバポレータ109に作用する外部からの熱的影響を示す。
【0074】
図8は、サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第一の変形形態を表示する。この変形形態において、サンプルステージ102は、サンプル温度の実際値を測定する温度センサ122を付設している。コントローラは、ポンプ回転速度(ポンプ速度)により、冷却されたサンプルステージの温度を、オペレータにより予規定可能な所望の温度目標値に制御する。かくて、サンプルステージ102の温度は、冷却フィンガ状部材105を通る液体窒素の流量によって制御される。
【0075】
図9は、サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第二の変形形態を表示する。同様に、この変形形態では、サンプルステージ102は、サンプル温度の実際値を測定する温度センサ122も付設している。その上更に、加熱要素119Aが、サンプルステージ102に更に付設される。コントローラは、加熱要素119Aを用いて、冷却されたサンプルステージ102の温度を、オペレータによって予規定可能な所望の温度目標値に制御する。すでに上述のとおり、第一の変形形態に対する第二の変形形態の有利な点は、温度における所望の変化に、よりすばやく応答できる点である。
【0076】
図10は、エバポレータブロック109の温度を制御するための制御ループのブロック図である。エバポレータブロック109は、エバポレータブロック温度の実際値を測定する温度センサ118を付設している。コントローラは、冷媒ポンプ121のポンプ回転速度(ポンプ速度)によって、冷却されたエバポレータブロック109の温度を、オペレータによって予規定可能な所望の温度目標値に制御する。かくて、エバポレータブロック109の温度は、冷却フィンガ状部材105を通る液体窒素の流量によって制御される。特に、エバポレータブロック109の温度は、冷媒ポンプのポンプ回転速度によって、(液体窒素の形の)冷媒の流体化温度(液状化温度、Fliesstemperatur)をわずかに下回って、即ち、約−190℃及び−195℃の間、に維持されるように制御され、それにより、冷媒が気体状態のみでエバポレータブロック109の出口117から流出する。
【0077】
図11は、冷却のための制御系統を図示したブロック図である。冷却操作の開始時に、冷媒ポンプは、始動される(冷媒ポンプ 開始)。図8及び図10に既述のように、サンプルステージ102の温度(サンプルステージ制御ループ;図8参照)及びエバポレータブロック109の温度(エバポレータ制御ループ;図10参照)は、冷媒ポンプ121のポンプ回転速度(冷媒ポンプ 制御)によって、オペレータにより予規定可能な所望の温度目標値に制御される。開始するために(処理プロセス 開始)、サンプルは所望の温度に冷却される。所望の温度に達した場合のみ、自動的起動指示がイオンビームエッチング処理プロセスに与えられる(処理プロセスの進行)。処理プロセスが完了次第(処理プロセス 停止)、冷却は、冷媒ポンプを停止すること(冷媒ポンプ 停止)により停止される。
【0078】
図12は、一旦イオンビームエッチング操作が終了してからの加熱の間、温度を制御(調整)するための制御ループのブロック図を表示し、そして図13は、図12において図示された制御ループによる加熱のための進行経過系統のブロック図を表示する。以下の記載は、図12及び図13に関連する。エバポレータブロックは、全てのサンプルステージフランジ100(例えば、サンプルステージ102、マスク保持具103、及びエバポレータブロック109を含む)をもっぱら加熱する働きをするが、イオンビームエッチング操作の間、温度を制御する働きをしない加熱要素119を付設している。図10に図示される制御ループは、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮を妨げる目的で、制御された加熱操作を監視及び制御する働きをする。加熱の前に、冷却は冷媒ポンプを停止することにより停止される(冷媒ポンプ 停止)。加熱は、加熱要素119のスイッチを入れることにより開始される(加熱 開始)。加熱要素119は、最大の加熱出力で、エバポレータブロック109を加熱し及び、冷却フィンガ状部材の接続を介して、サンプルと共にサンプルステージ102、及びマスク104と共にマスク保持具103をも加熱する。加熱要素119は、エバポレータブロック109内に直接配置されるので、後者は、遠くに配置されるサンプルステージ102及びマスク保持具103よりも、よりすばやく加熱される。一旦、エバポレータブロック109が、+50℃の温度(エバポレータブロック109の温度センサによって測定される)に達すると、当該温度は、コントローラによって制御される(加熱 制御)。この場合において、コントローラは、加熱要素119の加熱出力の絞り制御によりエバポレータブロック109の温度を一定に維持する。サンプルステージ102及びマスク保持具103は、それらの温度目標値、適切には室温(サンプルステージ102の温度センサによって測定される)に達するまで更に加熱される。一旦、サンプルステージ102及びマスク保持具103の温度目標値が達成されると、加熱は終了され(加熱 停止)、そしてサンプルステージフランジ100は、サンプル除去のために通気され開放される。
【0079】
マスク保持具103は、サンプルステージ102の冷却及び加熱の間の温度挙動とほぼ一致する、冷却及び加熱の間の温度挙動を示すので、マスク保持具103の温度は特別には制御されない。マスク保持具103の温度もまた、サンプルステージの温度の制御と連関され、かくて、特別には監視されない。
【0080】
加えて、リザーバ容器(ジュワー瓶)内の冷媒レベルが、監視される。もしそのレベルが低すぎる場合、オペレータに警告がもたらされる。この警告は、任意に及び/又は音響的に発生し得る。もし、充填レベルが、規定の限界値を下回る場合、冷却プロセスは中断され、又は開始され得ない。
【0081】
上述の本発明の実施形態ないし実施例は、数ある実施形態ないし実施例の中の単なる例示であり、従って、本発明の限定として理解されるべきではない。
【0082】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。即ち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
100 :サンプルステージフランジ
101 :冷却装置
102 :サンプルステージ
103 :マスク保持具
104 :マスク
105 :冷却フィンガ状部材(筒状冷却要素)
106 :共通の起点
106a、106b、106c:熱伝導ストリップ(帯材)
107 :マスクエッジ
108 :ハウジング
109 :エバポレータブロック
110 :コネクタ
111 :流路系
112 :冷媒ライン
113、114:低熱伝導要素
115 :入口
116 :冷却フィンガ状部材コネクタ
117 :出口
118 :温度センサ
119、119A:加熱要素
120 :リザーバ容器
121 :冷媒ポンプ
122 :温度センサ
123 :接触スリーブ
124 :締め付けネジ
130 :外管
131 :内管
132、133:矢印
134 :管開口部
200 :イオンビームエッチングユニット
201 :真空チャンバ
202 :双眼鏡
203 :イオン源
204 :支持レール
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを配置するためのサンプルステージを有し、冷媒が入っている冷媒容器を有し、及び、サンプルステージを冷媒に熱伝達可能に接続する少なくともひとつの熱伝導要素を有する、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオンビームエッチングは、典型的には、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)に関連して検査される構造のサンプルを作製するためにしばしば利用されるプロセスである。この技術は特に、研究、材料研究、及び半導体、金属、セラミック、プラスチックなどの多くの材料のための品質管理に使用される。プロセスを行うために、サンプルは、イオンビームエッチングユニットのサンプルステージに取り付けられ、そして1以上の電子ビームのビーム路内に位置決めされる。イオンビームエッチングユニットは典型的に、10−6mbarの基準圧で稼動する高真空ユニットである。最も一般的に使用されるイオンはアルゴンイオンであり、通常1から10kVの加速電圧で使用される。電子顕微鏡における画像解像度の質は、この場合、サンプルの質に大いに依存する。既知のイオンビームエッチングプロセスの中には、実際特に、イオンビームスロープエッチング、SEMサンプルのイオン研磨、ワイヤカッティング法(Drahtabschattungsverfahren)及び、標準TEMサンプルのイオンビーム処理による作製がある。最後の2つの方法はTEMサンプル用に使用されるのに対し、イオンビームスロープ(斜め)エッチングは、断面SEMサンプルを作製するのに使用される。スロープエッチングにおいて、サンプルのプロファイルは、イオンビームを用いて露出され、サンプルの領域は、サンプルの表面上に配置され又はサンプルの表面に対して位置決めされたマスクによって、イオンビームによる材料除去から保護される。高品質SEMサンプルを作製するのにとりわけ効果的であることが分かっているイオンビームスロープエッチングプロセスは、少なくとも2つのイオンビーム、好ましくは3つのイオンビームが、お互い予め規定されるアングルで、サンプル表面の上に案内されるものである。この方法は、国際公開WO 2008/106815 A2号に記載される。なお本特許文献の全開示内容はその引用をもって本書に繰込み記載する。
【0004】
全てのイオンエッチング方法及び、特に国際公開WO 2008/106815 A2号からの方法の場合において、サンプルがイオンエッチング操作の間冷却されると有利である。サンプルの冷却は、より高いビーム照射レベルを可能にし、(とても繊細なサンプルの場合でさえも)より高いエッチング速度を可能にし、かくて、同時に高い信頼性及び良好なサンプル品質を与えて高い経済性(コストパフォーマンス)を可能にする。
【0005】
冷却操作は、多数のイオンビームエッチングユニットで使用され、SEM及びTEM用標本の処理に利用され、そして前述のイオンビームスロープエッチング方法のような特別な作製技術に利用される。サンプルは通常室温で作製され、そして結果として室温で安定である。それ故、冷却操作の主要な目的は、例えば、拡散プロセス及び構造変化の抑制のため、サンプルがイオンビームエッチングの間に加熱されるのを妨げることである。十分な冷却は、例えばプラスチックといった有機材料で作られる熱感受性サンプルのためにとりわけ重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO 2008/106815 A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際には、本質的に、2つの冷却方法が確立されている。第一の方法は、ペルティエ素子を使用し、これは小型に、そして空間の節約となるように構成されるが、多くの応用にとっては、冷却能力が小さすぎる。第二の冷却方法は、冷媒を使用する冷却を含み、特に液体窒素で冷却するものである。これは、高冷却能力のために注目に値するが、冷媒に関して安全規定が遵守されなければならないという不利な点を有する。今日の大部分のイオンビームエッチングユニットは、第二の冷却方法で作動し、冷却は、冒頭に引用された種類の冷却装置で行われる。市販の多くのイオンビームエッチングユニットは、操作によるアーチファクト(変質)が生じるのを防ぐために、サンプルを運動(回転、振動)させなければならず、これは冷媒及びサンプル間の不十分な熱接触の問題を有し、そして、サンプルの温度測定の制限という問題を有する。
【0008】
更なる問題が制限された冷媒の貯蔵によって生じる。既知のイオンビームエッチングユニットのいくつかにおいて、サンプルは気密蓋装置を介して真空チャンバに装填される。点検修理の場合又は、サンプルステージからの不慮の分離によって、サンプルを真空チャンバの外にもはや取り出すことができない場合、真空チャンバは通気が不可欠となる。このために、冷媒リザーバ容器は、冷媒を完全に蒸発させるために、加熱されなければならない。この結果、既知のユニットでは冷媒の制限された容器(貯留)のみが、使用される。更に、充填レベルの指標がなく、又は冷媒貯量の監視がないので、充填レベルを常に監視しなければならず、そして冷媒を必要に応じて、補充しなければならない。より長時間の間(例えば終夜)の、無人のサンプル処理のためには、冷媒貯蔵は十分でないだろう。冷媒の持続的な手動の補充は、保護服の着用のような複雑な安全規定を余儀なくされる。
【0009】
それ故、本発明の目的は、上述の従来技術に知られる不利な点を除くことである。本発明は、特に、冷却される処理プロセスを自動的に、かつ長時間作動することを可能にする冷却装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一視点において、冷却装置は、好ましくは直接に、熱伝達要素に熱伝達可能に接続されている冷却フィンガ状部材を含み、当該冷却フィンガ状部材が、冷媒が通って流れることが出来かつ冷媒容器に接続可能である導管を含むことを特徴とする。
【0011】
より詳しくは第一の視点において、サンプルを配置するためのサンプルステージを有し、冷媒が入っている冷媒容器を有し、及び少なくとも1つの、サンプルステージを冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素を有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置であって、
当該熱伝導要素に熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材を有し、当該冷却フィンガ状部材は、冷媒が通って流れることが出来かつ冷媒容器に接続可能な導管を含む冷却装置が提供される。
【0012】
第二の視点において、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御(調節)するための方法が提供される。当該方法は、以下の各ステップを含む:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージにサンプルを位置決めして取り付けること;
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管に導かれる冷媒により当該サンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のために所望される温度が確立されること。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各視点によれば、サンプルステージの冷却は、冷却フィンガ状部材を通過する冷媒の流れを簡単に始動及び停止することにより自動的に行うことができる。真空チャンバの通気の前に冷媒の面倒な蒸発を行う必要がないので、結果としてより容量の大きいより大きな冷媒容器もまた、使用され得る。従来技術と比較して、より長時間(例えば終夜)をかけての標本作製がそれ故可能である。冷却のすばやい始動及び停止ができることは、イオンビームエッチングプロセスをその上更に短くし、そして、そのイオンビームエッチングプロセスを効率的なものとすることに貢献する。ユーザーによる処理は更に本質的に、より簡単にそしてより信頼性のあるものになり、より大きな容量を選択し得ることにより更に、常時の充填レベルの監視及び、常時の冷媒の補充が必要でなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による一実施例における冷却装置を有するサンプルステージフランジの、サンプルステージに向って眺めた透視図(斜視図)である。
【図2】図2は、冷却装置のエバポレータブロックに向って眺めた図1のサンプルステージフランジを表示する。
【図3】図3は、本発明による冷却装置の構成要素の透視図(斜視図)である。
【図4】図4は、当該冷却装置を通る冷媒の流路(系)を図示する。
【図5】図5は、配置位置において、開放状態のイオンビームエッチングユニットの側面図であり、当該イオンビームエッチングユニットは、その中に取り付けられる図1のサンプルステージを有する。
【図6】図6は、図5のイオンビームエッチングユニットを表示し、当該サンプルステージフランジは、閉鎖位置に旋回される。
【図7】図7は、図5及び図6のイオンビームエッチングユニットの閉鎖真空チャンバを通る断面であり、当該サンプルステージフランジは操作位置にある。
【図8】図8は、当該サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第一の変形形態を表示する。
【図9】図9は、当該サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第二の変形形態を表示する。
【図10】図10は、当該エバポレータブロックの温度を制御するための制御ループのブロック図である。
【図11】図11は、冷却のための制御系統を図示するブロック図である。
【図12】図12は、イオンビームエッチング操作の完了後の加熱の際の温度を制御するための制御ループのブロック図である。
【図13】図13は、加熱のための制御系統を図示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付された図面に図示される、制限せずに例示する実施形態ないし実施例を参照して、更なる有利な点と共に本発明は以下に説明されるであろう。
まずは本発明の実施形態の概要について説明する。
【0016】
冷却可能なサンプルステージは、イオンビームエッチングユニットの真空チャンバにフランジ結合される真空フランジとして構成される。サンプルステージは、少なくとも一つの熱伝導要素を介して冷却フィンガ状部材に接続され、当該冷却フィンガ状部材は、好ましくは真空チャンバ内に突出する。冷却フィンガ状部材は、熱輸送のために働くだけでなく、冷却装置の真空気密通過部としても働く。冷却フィンガ状部材は、サンプルステージにたった一つの熱伝導要素で接続され得るが、いくつかの、例えば2又は3の熱伝導要素で接続されても良い。
【0017】
用語「熱伝達可能に(waermeschluessig)」は、冷却フィンガ状部材及び少なくとも一つの熱要素を介して媒介される、冷媒とサンプルステージの間の熱的接触を意味し、それは良好な熱輸送を可能にするのに十分なものであり、かくて、サンプルの良好な冷却を可能にするのに十分なものである。
【0018】
冷媒容器は、典型的に、ジュワー瓶であり、そして従来技術において知られる冷媒容器と比較して、より十分に大きい容量を有し得る。選択される容量は、好ましくは、冷媒の補充及びオペレータによる監視(例えば終夜)無しにサンプル処理操作が可能なほどに、少なくとも十分に大きいものとして選択される。実際に、20リットル以上の容量を有する冷媒容器が、このために適していることが分かった。
【0019】
冷却フィンガ状部材の導管を通る冷媒の流れの制御のために、冷却装置は、冷媒の流れを制御するための手段を含むことが有用である。
【0020】
とりわけ好ましくそして簡単に制御可能な実施形態において、冷媒の流れを制御するための手段は、冷媒ポンプとして構成される。冷媒ポンプの始動によりサンプルステージの冷却が開始され、そして冷媒ポンプの停止は、再びサンプルステージの冷却を終わらせる。冷媒ポンプにより、冷却フィンガ状部材の導管を通る(貫流する)冷媒の流量は、更に簡単にそして効率的に制御でき、そしてポンプ回転速度を介して制御できる。
【0021】
更なる一実施形態において、冷媒の流れを制御する手段は、バルブ要素として構成され得る。しかしながら、バルブ要素は冷却フィンガ状部材の導管を通る冷媒の流れの開始及び停止のみを可能にする。この場合冷媒は、冷却フィンガ状部材に対し能動的に貫流するようには導かれないので、冷媒容器もまた、冷却フィンガ状部材より高い位置に配置されなければならない。これらの理由により、流量がその上更に制御され得る冷媒ポンプを有する実施形態が好まれる。
【0022】
更なる一実施形態において、冷媒の流量を制御するための手段は、冷媒ポンプ及びバルブ要素の組み合わせとして構成され得る。この場合に、ポンプ出力は一定に維持され、そして流量は、制御可能なバルブ、好ましくは流量レギュレーターの開口により制御することができる。
【0023】
好ましい一実施形態において、冷却フィンガ状部材は、二重壁(二重管)構造で構成され、当該冷却フィンガ状部材は、好ましくは、外管及び、外管の内に配置される内管を含む。冷媒は、好ましくは、内管を通って冷却フィンガ状部材内に流入し、そして外管を通って冷却フィンガ状部材から流出するように構成できる。
【0024】
さらに図4に、より詳細に図示されているように、熱伝導要素は、好ましくは、冷却フィンガ状部材の方向へ指向する端部において接触スリーブ内に圧嵌されており、そして冷却フィンガ状部材に固定される。固定は、例えば、接触スリーブを冷却フィンガ状部材にボルト締め又は締め付けることによりなされる。良好な熱伝達接続及びそれに伴うサンプルステージの強力な冷却は、接触スリーブと冷却フィンガ状部材の広い領域にわたる平面的な接触により、そして更にきついボルト締め又は締め付けにより、特に保障される。良好な熱伝達接続は、例えば、接触スリーブと冷却フィンガ状部材の間の10x10mmの接触領域で達成可能である。
【0025】
サンプルステージでの冷却により達成可能な最小の温度は、使用される冷媒に依存するのみならず、冷媒とサンプルステージの間の熱伝導にも非常に依存する。一つは、冷媒であり、これは冷却フィンガ状部材の導管を通って流れ、ある温度、例えば液体窒素の場合においては、−195.8℃未満の温度を有する。もう1つは、冷却されるべきサンプルステージであり、これは、完全に断熱されておらず、例えばイオン源によって、外側からサンプルステージに伝えられる熱を絶えず有し、そして絶えず「冷たさ」を失う。熱は、サンプルステージ及び冷却フィンガ状部材に接続される熱伝導要素の伝達点においてまた失われる。熱伝導要素と冷却フィンガ状部材の間の接続(すでに説明した)に加えて、熱伝導要素自身の実施形態もまた重要である。かくて、熱伝導要素は、高熱伝導材料、好ましくは銅から製造される。熱伝導要素は、好ましくは、ストリップ状(帯状)に構成される。より大きな断面は、より大きな熱輸送を可能にし、かくて、より低い温度を可能にするので、より大きな断面は、熱伝導ストリップ用に、好ましく選択される。実際には、例えば1x6mm2及び2x6mm2の断面が有利であることが分かっており、より大きな2x6mm2の断面で、より良い熱輸送が可能である。
【0026】
とりわけ有利な一実施形態において、冷却フィンガ状部材から、マスクのためのマスク保持装置に延在する、少なくとも1つの更なる熱伝導要素が設けられ、サンプルをマスクに対して相対的に位置付け可能である。典型的には、イオンビームエッチング操作の前に、サンプルは、マスクに対して相対的に位置付けられる。かくて、この実施形態では、サンプルステージに取り付けられるサンプルと共にサンプルステージが冷却されるだけではなく、マスクと共にマスク保持装置も冷却される。サンプルステージ及びマスク保持装置の同時の冷却は、サンプルに対して相対的に位置付けされるマスクエッジとマスクエッジに対して位置付けされるサンプルの間の、熱膨張に基づくドリフトを妨げる。マスク保持装置と冷却フィンガ状部材を接続する熱伝導要素の性質は、サンプルステージを冷却フィンガ状部材に接続する熱伝導要素の性質に相当する。冷却フィンガ状部材は、ただ1つの熱伝導要素を使用してマスク保持装置に接続され得るが、いくつかの、例えば2又は3の熱伝導要素も使用され得る。熱伝導要素の断面に関して、サンプルステージへ延在する熱伝導ストリップ用の2x6mm2の断面及びマスク保持具へ延在する熱伝導ストリップ用の1x6mm2の断面は、例えば、サンプルステージ及びマスクの均一な冷却のために実際に有利であることが分かっている。
【0027】
更に、冷却フィンガ状部材から流出する冷媒を蒸発させるために、冷却フィンガ状部材の導管をエバポレータブロック内に開口すると有利になることが分かっている。冷媒は、適切には液化ガスであり、特に、液体窒素又は液体空気である。冷媒は、かくて、冷媒容器から、冷却フィンガ状部材の導管の方向へ導かれ、そして、そこからエバポレータブロックの流路系に送られる。冷媒は、エバポレータブロック内で蒸発する。これは、エバポレータブロックの通過が完了した後に、小量の液体冷媒のみ、及び好ましくは気体冷媒のみが、流出するという利点を有する。冷却装置が冷媒ポンプを含む場合、気体冷媒のみがエバポレータブロックから現われるように、冷媒ポンプのポンプ回転速度によって、冷媒の流量は制御され得る。
【0028】
有利な一変形形態としては、エバポレータブロックの温度を測定するための温度測定手段及び/又は加熱要素が、エバポレータブロックに付設される。
【0029】
更に有利な一変形形態としては、サンプルステージの温度を測定するための温度測定手段及び/又は加熱要素が、サンプルステージに付設される。
【0030】
サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度が制御可能であると、この場合では有利である。適切には、冷却装置は、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度を制御するための温度制御装置を付設しており、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度に相当する信号が、当該温度制御装置に送られ、当該温度制御装置が、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度を所与の値に制御する。サンプルステージと同時に冷却が生じる場合、マスクの温度は、サンプルステージの温度挙動とほぼ一致する温度挙動を示す。すでに上述したように、これは熱伝導ストリップのそれぞれの断面に依存する。最適な断面は、所定の試験を基にして当業者によって確定できる。この実施形態において、マスク温度は、サンプルステージ温度の制御と連関され、特別な監視は必要ない。
【0031】
1つの改良形態において、マスク保持具及びマスクの温度を測定する目的で、マスク保持具は、それに付設される温度測定手段をまた有しており、この温度は、同様に、温度制御装置により制御される。しかしながら、簡略化の理由から、マスク保持具に、固有の温度測定手段を付設しないことが好ましいが、上述のように、代わりにマスク温度をサンプルステージ温度の制御に関連させることが好ましい。
【0032】
第一の有利な変形形態としては、温度制御装置は、冷媒ポンプのポンプ回転速度によって、サンプルステージの温度及び/又はエバポレータブロックの温度を所与の値に制御する。
【0033】
第二の有利な変形形態としては、温度制御装置は、サンプルステージに付設される加熱要素によって、サンプルステージの温度を所与の値に制御する。
【0034】
多くの応用において、温度値は、出来るだけ低く選択されるであろうし、そして全てのイオンビームエッチング操作の間、一定水準に維持されるであろう。試験において、本発明による装置で、処理されるべきサンプルを、−150℃未満の温度に冷却できることが分かっている。
【0035】
第一の変形形態と比較して第二の変形形態の有利な点は、温度における所望の変化に、よりすばやく応答できる点である。それ故、第二の変形形態は、サンプルの温度が、冷却により達成可能な最小の温度よりも本質的に高い温度になるように意図される場合、又は、イオンビームエッチング操作の間のサンプル温度の変化(例えば、温度勾配)が望まれる場合に特に利用される。冷媒ポンプのポンプ回転速度によるサンプル温度の制御は、これらの場合において、遅すぎると分かるであろうし、かくて、第二の変形形態が好ましいだろう。特別な場合において、当業者は、装置パラメーターを基礎として及び、任意に簡単な所定の試験を基礎として、第一又は第二の変形形態が特別なイオンビームエッチング操作に、より良く適合されるかを決定できる。
【0036】
従来技術に関連する上記の大部分のイオンビームエッチングユニットは、イオンビームエッチング操作の後の制御された自動のサンプル加熱の如何なる可能性も提供しない。かくて、イオンビームエッチングユニットの通気によって、凝縮水(露)でサンプルを汚染するリスクが常に存在する。
【0037】
完成の後、サンプルステージフランジの通気及び開放の際、周囲空気から凝縮された水でサンプルが汚染されることを防ぐために、イオンビームエッチング操作の完了の後、温度制御装置が、サンプルステージの温度及びエバポレータブロックの温度を、エバポレータブロックに付設される加熱要素により、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度値に制御すると有利である。すでに上述したように、マスクは、サンプルステージの温度挙動とほぼ一致する温度挙動を示す。冷却フィンガ状部材を通る冷媒の流れは通常、加熱の前に停止される。温度は室温に制御されると有利である。
【0038】
本発明による冷却装置の使用により温度を制御するための方法を利用可能にすることは、本発明の更なる目的である。
【0039】
この目的は、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法に関する本発明によって達成される。当該方法は、次のステップ:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージにサンプルを位置決めして取り付けること;及び
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管に導かれる冷媒によりサンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のための所望の温度が確立されること
を含む。
【0040】
当該方法は、好ましくは、ステップ(b)に続き、イオンビームエッチング操作の終了の後にサンプルの冷却が終了されるステップ(c)を含む。このために、上記のような、冷媒ポンプ又はバルブを介して制御される冷媒の輸送は、停止される。
【0041】
当該方法は、好ましくは、当該サンプルを、ステップ(c)に続き、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度に加熱するステップ(d)を更に含む。当該サンプルは、好ましくは室温に加熱される。
【0042】
イオンビームエッチングプロセスにおいて、サンプルがマスクに対して相対的に位置決めされる場合、サンプルと同様に、マスクが冷却され又はさらに加熱されて室温に戻ると有利である。すでに述べたように、サンプルステージとマスク保持装置の同時冷却は、サンプルに対して相対的に位置付けされるマスクエッジとマスクエッジに対して位置付けされるサンプル領域の間の、熱膨張に基づくドリフトを妨げる。マスクの温度は、冷却と加熱がサンプルステージと同時に生じる場合、サンプルステージの温度挙動とほぼ一致する温度挙動を示す。かくて、マスク温度は、サンプルステージ温度と連関され、特別な監視は必要ない。
【0043】
大部分のイオンビームエッチングプロセスのために、サンプルの温度は、イオンビームエッチング操作の間、一定に維持される。
【0044】
すでに検討したように、冷媒は、適切には、液化ガス、好ましくは液体窒素又は液体空気である。液体窒素は通常、イオンビームエッチングプロセスで使用される。好ましい実施形態においては、エバポレータブロックを通って流れた後に、冷媒がそこから気体状態のみで現われるように、例えば冷媒ポンプのポンプ量を介して、冷媒の流量は制御される。これは、第一に、液化ガスに接するオペレータのリスクを減らし、そして第二には、過剰な冷媒の消費を妨げる。
【0045】
本発明において下記の形態が可能である。なおこれら形態に付記した図面参照符号は専ら理解を助けるための例示であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0046】
(形態1)
第一の視点のとおり、サンプルを配置するためのサンプルステージ(102)を有し、冷媒が入っている冷媒容器(120)を有し、及び少なくとも1つの、当該サンプルステージ(102)を当該冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素(106a、106b)を有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置(101)であって、
当該熱伝導要素(106a、106b)に熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材(105)を有し、当該冷却フィンガ状部材(105)は、冷媒が通って流れることが出来かつ当該冷媒容器(120)に接続可能な導管(130、131)を含むことを特徴とする冷却装置が提供される。
【0047】
(形態2)
第二の視点のとおり、イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法であって、当該方法は、下記のステップ:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージ(102)にサンプルを位置決めして取り付けること;
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管(130、131)に導かれる冷媒により当該サンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のために所望される温度が確立されること
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0048】
(形態3)
本発明において、当該冷却装置が当該冷媒の流れを制御するための手段(121)を含むことが好ましい。
【0049】
(形態4)
本発明において、当該冷媒の流れを制御するための当該手段が冷媒ポンプ(121)として構成されることが好ましい。
【0050】
(形態5)
本発明において、当該冷却フィンガ状部材(105)が二重壁ないし二重管方式で構成されることが好ましい。
【0051】
(形態6)
本発明において、当該冷却フィンガ状部材(105)からマスク(104)のためのマスク保持装置(103)に延在する少なくとも1つの更なる熱伝導要素(106c)を有し、当該マスクに対して当該サンプルは相対的に位置付け可能であること、を特徴とすることが好ましい。
【0052】
(形態7)
本発明において、当該冷却フィンガ状部材(105)の当該導管(130、131)が、当該冷却フィンガ状部材(105)から流れ出る当該冷媒を蒸発させるためのエバポレータブロック(109)内に開口することが好ましい。
【0053】
(形態8)
本発明において、当該エバポレータブロックの温度を測定するための温度測定手段(118)、及び/又は加熱要素(119)、が当該エバポレータブロック(109)に付設されることが好ましい。
【0054】
(形態9)
本発明において、当該サンプルステージ(102)の温度を測定するための温度測定手段(122)、及び/又は当該加熱要素(119A)、が当該サンプルステージ(102)に付設されることが好ましい。
【0055】
(形態10)
本発明において、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を制御するための温度制御装置を付設しており、
当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度に相当する信号が、当該温度制御装置に送られ、
当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を所与の値に制御する
ことが好ましい。
【0056】
(形態11)
本発明において、温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を、冷媒ポンプ(121)のポンプ回転速度により所与の値に制御することが好ましい。
【0057】
(形態12)
本発明において、当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度を、当該サンプルステージ(102)に付設される加熱要素(119A)により、所与の値に制御することが好ましい。
【0058】
(形態13)
本発明において、イオンビームエッチング操作の完了の後、当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び当該エバポレータブロック(109)の温度を、当該エバポレータブロック(109)に付設される当該加熱要素(119)により、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度値に制御することが好ましい。
【0059】
(形態14)
本発明において、ステップ(b)に続き、イオンビームエッチング操作の終了後に当該サンプルの冷却が終了されるステップ(c)を有することが好ましい。
【0060】
(形態15)
本発明において、ステップ(c)に続き、当該サンプルを、周囲空気から当該サンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度、好ましくは室温に、加熱するステップ(d)を有することが好ましい。
【0061】
(形態16)
本発明において、当該サンプルが、マスク(104)に対して相対的に位置決めされ、当該マスク(104)は、当該サンプルと同様に、冷却され又は更に加熱されて、室温に戻ることが好ましい。
【0062】
(形態17)
本発明において、イオンビームエッチング操作の間、当該温度が一定に維持されることが好ましい。
【0063】
(形態18)
本発明において、当該冷媒が液化ガスであり、好ましくは液体窒素又は液体空気であることが好ましい。
【0064】
(形態19)
本発明において、当該冷媒の流量が、当該エバポレータブロック(109)を通って流れた後に、当該冷媒がそこから気体状態のみで現われるように制御されることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、イオンビームスロープエッチングプロセスのためにデザインされたサンプルステージフランジ100の一実施例を表示し、当該サンプルステージ100は、それに付設される本発明による冷却装置(ユニット)101を有する。サンプルステージフランジ100は、真空気密方式において、イオンビームエッチングユニット(イオンビームエッチングユニット200、図5から図7参照)に取り付け可能である。冷却装置101は、マスク104を有する冷却可能なマスク保持具103と共に、サンプル(図示せず)が取り付け可能な、冷却可能なサンプルステージ102を含む。冷却装置101は更に、冷却フィンガ状部材105を含む。マスク保持具103及びマスク104がサンプルステージ102及びサンプルと同時に冷却されるように、サンプルステージ102及びマスク保持具103は、熱伝達可能な形式において、熱伝導ストリップ(帯材)106a、106b、106cを介して冷却フィンガ状部材105に接続される。熱伝導ストリップ106a、106b、106cの断面は、サンプルステージ102及びマスク保持具103の均質な冷却が生じるように選択される。熱伝導ストリップ106a、106b、106cは、冷却フィンガ状部材105上の共通の起点106からサンプルステージ102に延在し(熱伝導ストリップ106a、106b)、そしてマスク保持具103(熱伝導ストリップ106c)に延在する。イオンビームエッチング操作が開始する前に、サンプルはマスク104に対して相対的に位置付けされる。サンプルステージ102及びマスク保持具103の同時冷却は、マスクエッジ107に対して相対的に位置付けられたサンプルとマスクエッジ107に対して位置付けされたサンプル領域の間の、熱膨張に基づくドリフトを妨げる。
【0066】
サンプルステージ102、マスク保持具103、熱伝導ストリップ106a、106b、106c及び、冷却フィンガ状部材105は、標本ステージフランジ100のハウジング108の内側に配置される。エバポレータ(蒸発)ブロック109は、サンプルステージフランジ100の外側に取り付けられる。冷却フィンガ状部材105(これはまた、エバポレータブロック109に接続される)は、サンプルステージフランジ100のハウジング108を通って延在し、そして最終的に、真空気密に構成される。冷却フィンガ状部材105は、二重壁(二重管)構造(図4の冷却フィンガ状部材を通る断面図を参照)であり、そして、そのほぼ全体を通って冷媒(この場合は液体窒素である)が貫流する。
【0067】
冷媒は、リザーバ容器120(ジュワー瓶)内に配置され、そしてそこから、冷媒ポンプ121(図4参照)(そのコネクタ110は、サンプルステージフランジ100のハウジング108に配置される)によって、被覆された冷媒ライン(冷媒ダクト)112を通って、エバポレータブロック109の入口115にポンプされる。図2は、エバポレータブロック109に向って眺めたサンプルステージフランジ100の背面図である。エバポレータブロック109の温度を監視及び制御するために、温度センサ118は、エバポレータブロック109の内側に配置される。イオンビームエッチング操作の完了後、サンプルステージフランジ100の全体を好ましくは室温に加熱する働きを担う加熱要素119は、また、エバポレータブロック109内に配置される(図12参照)。エバポレータブロック109の入口115から、冷媒は、冷却フィンガ状部材105内に導かれ、そして冷却フィンガ状部材105から流出する。好ましくは気体冷媒(気体窒素)のみが、エバポレータブロック109の出口117に現われるように、導かれて出た冷媒はエバポレータの内側にある流路系(ダクト系)111を通って流れ、そこで蒸発する。冷却装置を通る冷媒の流路は、後述の図4において詳細に再度記載される。
【0068】
図3は、サンプルステージフランジ100に組み込まれる、本発明の一実施例による冷却装置101の構成要素の透視図を表す。図示される構成要素は、サンプルステージ102、マスク保持具103に配置されるマスク104を有するマスク保持具103、エバポレータブロック109、冷却フィンガ状部材105、及び熱伝導ストリップ106a、106b、106cを含む。熱伝導ストリップ106a、106b、106cは、冷却フィンガ状部材105上の共通の起点106からサンプルステージ102に延在し(熱伝導ストリップ106a、106b)、そして、マスク保持具103に延在する(熱伝導ストリップ106c)。熱伝導ストリップ106a、106b、106cの起点106は、接触スリーブ123に圧嵌され、そして、締め付けネジ124によって冷却フィンガ状部材105に固定される。接触スリーブ123及び冷却フィンガ状部材105の間の接触領域は、良好な熱伝達接続が達成可能なように選択される。表示される例では、接触スリーブ123及び冷却フィンガ状部材105の間の接触領域は、およそ10x10mmに等しい。図3では図示されていない、冷媒ポンプ121と、冷媒のためのリザーバ容器120のような冷却装置101の更なる構成要素は、後述の図4において図示される。サンプルステージ102及びマスク保持具103は、熱損失を最小限にするために、近隣の低熱伝導要素113、114によって、サンプルステージフランジ100の他の構成要素に対して断熱される。サンプルステージ102の温度を監視し、そして制御するために、温度センサ122は、また、サンプルステージ102の内側に配置される。加えて、後述の(図9参照)サンプルステージ102の温度を制御するための各種制御ループの場合、加熱要素119Aは、また、サンプルステージ102の内側に配置される。
【0069】
図4は、冷却装置100を通る冷媒の流通経路(流路)を例示する。冷媒は、リザーバ容器120内に保存される。リザーバ容器120の容量は、好ましくは、少なくともサンプル処理が冷媒の補充及びオペレータによる監視(例えば終夜)無しで可能なほど十分に大きいものが選択される。実際に、20リットル以上の容量を有する冷媒容器が良いことが判明している。イオンビームエッチング操作が開始される前に、サンプルステージ102の冷却及びマスク保持具103の冷却は、冷媒ポンプ121のスイッチを入れることによって開始される。これに関して、冷媒は、リザーバ容器120からエバポレータブロック109の入口115に、冷媒ポンプ121によってポンプされ、そして冷却フィンガ状部材コネクタ116を通って二重壁冷却フィンガ状部材105の方向へポンプされる。冷却フィンガ状部材105は、外管130及び、外管130内に配置される内管131を含む。冷媒の流れる方向は、矢印132、133によって図示される。冷媒(液体窒素)は、内管を通って冷却フィンガ状部材105内に流れ(矢印132)、そして、内管131の管開口部134を通って外管130内に達する。そこから、冷媒は、冷却フィンガ状部材105から出る、反対方向(矢印133)に流れ、そしてそこから、エバポレータ109の流路系111内に達し、そこで蒸発する。流路系111を通った後に、気体冷媒(気体窒素)のみが、エバポレータブロック109の出口117に現われるように、冷媒の流量は、好ましくは冷媒ポンプ121のポンプ回転速度により制御される。後に、温度制御についてより詳細に説明がなされる。イオンビームエッチング操作の終了後、冷却は、冷媒ポンプ121を停止することにより停止され、そして全ての冷却されたサンプルステージフランジの構成要素は、エバポレータブロック109の加熱要素119により、好ましくは室温に加熱される。
【0070】
図5及び図6のそれぞれは、開放状態にされたイオンビームエッチングユニット200の側面図を表示し、当該イオンビームエッチングユニット200は、それに取り付けられるサンプルステージフランジ100を有する。イオンビームエッチングユニット200が作動する時、サンプルステージフランジ100は、イオン源が中に配置される真空チャンバ201(容器)に取り付けられる(サンプルステージフランジ100が取り付けられた閉鎖真空チャンバ201を通る断面を表示する図7を参照)。図5及び図6に戻って:サンプルステージフランジ100は、サンプル調節のために、90度傾動可能に取り付けられる。真空にされる前に、そしてイオンビームエッチング操作が開始する前に、サンプルは、サンプルステージ102に固定され、そしてマスクに対して相対的に手動で調節される。図5において、サンプルステージフランジ100は、90度傾けられた第一の調節位置にある。図6において、サンプルステージフランジ100は、その第二の調節位置にあり、この調節位置は、また、サンプルステージフランジ100が、支持レール204によって、真空チャンバ201の方向に水平に動かされ、そして当該真空チャンバ201に取り付けられる位置を表す。イオンビームエッチングユニット200は更に、サンプル調節のための双眼鏡202を含む。
【0071】
一旦、サンプルが導入(装填)され、そして位置決めされると、サンプルステージフランジ100は、イオンビームエッチングユニット200の容器に取り付けられ、そしてサンプルチャンバは、高真空(通常少なくとも10−6mbar)を形成するためにポンプ排気される。図7は、サンプルステージフランジ100が取り付けられた、閉鎖真空チャンバ201を通る断面の平面図である。エッチングプロセスは、従来技術における、前掲で引用された国際公開WO 2008/106815 A2号によるイオンビームスロープエッチング法に従って生じる。その結果、国際公開WO 2008/106815 A2号に記載されているように、イオン源203に組み込まれた3つのイオンビーム(1,2,3)は、お互いに規定されたアングルでサンプル表面上に案内される。
【0072】
一旦、真空チャンバ201内に真空が形成されたならば、サンプルは所望の温度に冷却され、そしてイオンビームで処理される。サンプルの処理の間、サンプル温度は、所望の温度値に、制御により一定に維持される。サンプル処理が完了された時に、サンプルステージフランジ100が通気及び開放時の凝縮水での汚染を避けるために、所望の温度値、好ましくは室温、に加熱される。
【0073】
イオンビームエッチング処理の間の温度を制御するための制御ループが、図8から図13に更に記載される。冷却装置101は、このために、冷却及び加熱の間、下記の制御ループを制御する役目を果たす中央温度制御装置(コントローラ)及びその変形形態を付設している。図8から図10及び図12における「熱(Waerme)」とラベルされるブロック枠は、サンプルステージ102ないしエバポレータ109に作用する外部からの熱的影響を示す。
【0074】
図8は、サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第一の変形形態を表示する。この変形形態において、サンプルステージ102は、サンプル温度の実際値を測定する温度センサ122を付設している。コントローラは、ポンプ回転速度(ポンプ速度)により、冷却されたサンプルステージの温度を、オペレータにより予規定可能な所望の温度目標値に制御する。かくて、サンプルステージ102の温度は、冷却フィンガ状部材105を通る液体窒素の流量によって制御される。
【0075】
図9は、サンプルの温度を制御するための制御ループのブロック図の第二の変形形態を表示する。同様に、この変形形態では、サンプルステージ102は、サンプル温度の実際値を測定する温度センサ122も付設している。その上更に、加熱要素119Aが、サンプルステージ102に更に付設される。コントローラは、加熱要素119Aを用いて、冷却されたサンプルステージ102の温度を、オペレータによって予規定可能な所望の温度目標値に制御する。すでに上述のとおり、第一の変形形態に対する第二の変形形態の有利な点は、温度における所望の変化に、よりすばやく応答できる点である。
【0076】
図10は、エバポレータブロック109の温度を制御するための制御ループのブロック図である。エバポレータブロック109は、エバポレータブロック温度の実際値を測定する温度センサ118を付設している。コントローラは、冷媒ポンプ121のポンプ回転速度(ポンプ速度)によって、冷却されたエバポレータブロック109の温度を、オペレータによって予規定可能な所望の温度目標値に制御する。かくて、エバポレータブロック109の温度は、冷却フィンガ状部材105を通る液体窒素の流量によって制御される。特に、エバポレータブロック109の温度は、冷媒ポンプのポンプ回転速度によって、(液体窒素の形の)冷媒の流体化温度(液状化温度、Fliesstemperatur)をわずかに下回って、即ち、約−190℃及び−195℃の間、に維持されるように制御され、それにより、冷媒が気体状態のみでエバポレータブロック109の出口117から流出する。
【0077】
図11は、冷却のための制御系統を図示したブロック図である。冷却操作の開始時に、冷媒ポンプは、始動される(冷媒ポンプ 開始)。図8及び図10に既述のように、サンプルステージ102の温度(サンプルステージ制御ループ;図8参照)及びエバポレータブロック109の温度(エバポレータ制御ループ;図10参照)は、冷媒ポンプ121のポンプ回転速度(冷媒ポンプ 制御)によって、オペレータにより予規定可能な所望の温度目標値に制御される。開始するために(処理プロセス 開始)、サンプルは所望の温度に冷却される。所望の温度に達した場合のみ、自動的起動指示がイオンビームエッチング処理プロセスに与えられる(処理プロセスの進行)。処理プロセスが完了次第(処理プロセス 停止)、冷却は、冷媒ポンプを停止すること(冷媒ポンプ 停止)により停止される。
【0078】
図12は、一旦イオンビームエッチング操作が終了してからの加熱の間、温度を制御(調整)するための制御ループのブロック図を表示し、そして図13は、図12において図示された制御ループによる加熱のための進行経過系統のブロック図を表示する。以下の記載は、図12及び図13に関連する。エバポレータブロックは、全てのサンプルステージフランジ100(例えば、サンプルステージ102、マスク保持具103、及びエバポレータブロック109を含む)をもっぱら加熱する働きをするが、イオンビームエッチング操作の間、温度を制御する働きをしない加熱要素119を付設している。図10に図示される制御ループは、周囲空気からサンプルへの大気水分の凝縮を妨げる目的で、制御された加熱操作を監視及び制御する働きをする。加熱の前に、冷却は冷媒ポンプを停止することにより停止される(冷媒ポンプ 停止)。加熱は、加熱要素119のスイッチを入れることにより開始される(加熱 開始)。加熱要素119は、最大の加熱出力で、エバポレータブロック109を加熱し及び、冷却フィンガ状部材の接続を介して、サンプルと共にサンプルステージ102、及びマスク104と共にマスク保持具103をも加熱する。加熱要素119は、エバポレータブロック109内に直接配置されるので、後者は、遠くに配置されるサンプルステージ102及びマスク保持具103よりも、よりすばやく加熱される。一旦、エバポレータブロック109が、+50℃の温度(エバポレータブロック109の温度センサによって測定される)に達すると、当該温度は、コントローラによって制御される(加熱 制御)。この場合において、コントローラは、加熱要素119の加熱出力の絞り制御によりエバポレータブロック109の温度を一定に維持する。サンプルステージ102及びマスク保持具103は、それらの温度目標値、適切には室温(サンプルステージ102の温度センサによって測定される)に達するまで更に加熱される。一旦、サンプルステージ102及びマスク保持具103の温度目標値が達成されると、加熱は終了され(加熱 停止)、そしてサンプルステージフランジ100は、サンプル除去のために通気され開放される。
【0079】
マスク保持具103は、サンプルステージ102の冷却及び加熱の間の温度挙動とほぼ一致する、冷却及び加熱の間の温度挙動を示すので、マスク保持具103の温度は特別には制御されない。マスク保持具103の温度もまた、サンプルステージの温度の制御と連関され、かくて、特別には監視されない。
【0080】
加えて、リザーバ容器(ジュワー瓶)内の冷媒レベルが、監視される。もしそのレベルが低すぎる場合、オペレータに警告がもたらされる。この警告は、任意に及び/又は音響的に発生し得る。もし、充填レベルが、規定の限界値を下回る場合、冷却プロセスは中断され、又は開始され得ない。
【0081】
上述の本発明の実施形態ないし実施例は、数ある実施形態ないし実施例の中の単なる例示であり、従って、本発明の限定として理解されるべきではない。
【0082】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。即ち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
100 :サンプルステージフランジ
101 :冷却装置
102 :サンプルステージ
103 :マスク保持具
104 :マスク
105 :冷却フィンガ状部材(筒状冷却要素)
106 :共通の起点
106a、106b、106c:熱伝導ストリップ(帯材)
107 :マスクエッジ
108 :ハウジング
109 :エバポレータブロック
110 :コネクタ
111 :流路系
112 :冷媒ライン
113、114:低熱伝導要素
115 :入口
116 :冷却フィンガ状部材コネクタ
117 :出口
118 :温度センサ
119、119A:加熱要素
120 :リザーバ容器
121 :冷媒ポンプ
122 :温度センサ
123 :接触スリーブ
124 :締め付けネジ
130 :外管
131 :内管
132、133:矢印
134 :管開口部
200 :イオンビームエッチングユニット
201 :真空チャンバ
202 :双眼鏡
203 :イオン源
204 :支持レール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを配置するためのサンプルステージ(102)を有し、冷媒が入っている冷媒容器(120)を有し、及び少なくとも1つの、当該サンプルステージ(102)を当該冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素(106a、106b)を有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置(101)であって、
当該熱伝導要素(106a、106b)に熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材(105)を有し、当該冷却フィンガ状部材(105)は、冷媒が通って流れることが出来かつ当該冷媒容器(120)に接続可能な導管(130、131)を含むことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
当該冷却装置が当該冷媒の流れを制御するための手段(121)を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
当該冷媒の流れを制御するための当該手段が冷媒ポンプ(121)として構成されることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
当該冷却フィンガ状部材(105)が二重壁ないし二重管方式で構成されることを特徴とする請求項1から3の一に記載の冷却装置。
【請求項5】
当該冷却フィンガ状部材(105)からマスク(104)のためのマスク保持装置(103)に延在する少なくとも1つの更なる熱伝導要素(106c)を有し、当該マスクに対して当該サンプルは相対的に位置付け可能であること、を特徴とする請求項1から4の一に記載の冷却装置。
【請求項6】
当該冷却フィンガ状部材(105)の当該導管(130、131)が、当該冷却フィンガ状部材(105)から流れ出る当該冷媒を蒸発させるためのエバポレータブロック(109)内に開口することを特徴とする請求項1から5の一に記載の冷却装置。
【請求項7】
当該エバポレータブロックの温度を測定するための温度測定手段(118)、及び/又は加熱要素(119)、が当該エバポレータブロック(109)に付設されることを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
当該サンプルステージ(102)の温度を測定するための温度測定手段(122)、及び/又は加熱要素(119A)、が当該サンプルステージ(102)に付設されることを特徴とする請求項1から7の一に記載の冷却装置。
【請求項9】
当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を制御するための温度制御装置を付設しており、
当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度に相当する信号が、当該温度制御装置に送られ、
当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を所与の値に制御する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の冷却装置。
【請求項10】
温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を、冷媒ポンプ(121)のポンプ回転速度により所与の値に制御することを特徴とする請求項3から9の一に記載の冷却装置。
【請求項11】
当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度を、当該サンプルステージ(102)に付設される当該加熱要素(119A)により、所与の値に制御することを特徴とする請求項9又は10に記載の冷却装置。
【請求項12】
イオンビームエッチング操作の完了の後、当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び当該エバポレータブロック(109)の温度を、当該エバポレータブロック(109)に付設される当該加熱要素(119)により、周囲空気から当該サンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度値に制御することを特徴とする請求項9から11の一に記載の冷却装置。
【請求項13】
イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法であって、当該方法は、下記のステップ:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージ(102)にサンプルを位置決めして取り付けること;
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管(130、131)に導かれる冷媒により当該サンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のために所望される温度が確立されること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
当該冷却装置が、請求項1から12の一に記載の冷却装置であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)に続き、イオンビームエッチング操作の終了後に当該サンプルの冷却が終了されるステップ(c)を有することを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)に続き、当該サンプルを、周囲空気から当該サンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度に加熱するステップ(d)を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
当該サンプルが、マスク(104)に対して相対的に位置決めされ、当該マスク(104)は、当該サンプルと同様に、冷却され又は更に加熱されて、室温に戻ることを特徴とする請求項13から16の一に記載の方法。
【請求項18】
イオンビームエッチング操作の間、当該温度が一定に維持されることを特徴とする請求項13から17の一に記載の方法。
【請求項19】
当該冷媒が液化ガスであることを特徴とする、請求項13から18の一に記載の方法。
【請求項20】
当該冷媒の流量が、当該エバポレータブロック(109)を通って流れた後に、当該冷媒がそこから気体状態のみで現われるように制御されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項1】
サンプルを配置するためのサンプルステージ(102)を有し、冷媒が入っている冷媒容器(120)を有し、及び少なくとも1つの、当該サンプルステージ(102)を当該冷媒に熱伝達可能に接続する熱伝導要素(106a、106b)を有するイオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルのための冷却装置(101)であって、
当該熱伝導要素(106a、106b)に熱伝達可能に接続される冷却フィンガ状部材(105)を有し、当該冷却フィンガ状部材(105)は、冷媒が通って流れることが出来かつ当該冷媒容器(120)に接続可能な導管(130、131)を含むことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
当該冷却装置が当該冷媒の流れを制御するための手段(121)を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
当該冷媒の流れを制御するための当該手段が冷媒ポンプ(121)として構成されることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
当該冷却フィンガ状部材(105)が二重壁ないし二重管方式で構成されることを特徴とする請求項1から3の一に記載の冷却装置。
【請求項5】
当該冷却フィンガ状部材(105)からマスク(104)のためのマスク保持装置(103)に延在する少なくとも1つの更なる熱伝導要素(106c)を有し、当該マスクに対して当該サンプルは相対的に位置付け可能であること、を特徴とする請求項1から4の一に記載の冷却装置。
【請求項6】
当該冷却フィンガ状部材(105)の当該導管(130、131)が、当該冷却フィンガ状部材(105)から流れ出る当該冷媒を蒸発させるためのエバポレータブロック(109)内に開口することを特徴とする請求項1から5の一に記載の冷却装置。
【請求項7】
当該エバポレータブロックの温度を測定するための温度測定手段(118)、及び/又は加熱要素(119)、が当該エバポレータブロック(109)に付設されることを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
当該サンプルステージ(102)の温度を測定するための温度測定手段(122)、及び/又は加熱要素(119A)、が当該サンプルステージ(102)に付設されることを特徴とする請求項1から7の一に記載の冷却装置。
【請求項9】
当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を制御するための温度制御装置を付設しており、
当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度に相当する信号が、当該温度制御装置に送られ、
当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を所与の値に制御する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の冷却装置。
【請求項10】
温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び/又は当該エバポレータブロック(109)の温度を、冷媒ポンプ(121)のポンプ回転速度により所与の値に制御することを特徴とする請求項3から9の一に記載の冷却装置。
【請求項11】
当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度を、当該サンプルステージ(102)に付設される当該加熱要素(119A)により、所与の値に制御することを特徴とする請求項9又は10に記載の冷却装置。
【請求項12】
イオンビームエッチング操作の完了の後、当該温度制御装置が、当該サンプルステージ(102)の温度及び当該エバポレータブロック(109)の温度を、当該エバポレータブロック(109)に付設される当該加熱要素(119)により、周囲空気から当該サンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度値に制御することを特徴とする請求項9から11の一に記載の冷却装置。
【請求項13】
イオンビームエッチングプロセスにおけるサンプルの温度を制御するための方法であって、当該方法は、下記のステップ:
(a)イオンビームエッチング装置の冷却装置を介して冷却可能なサンプルステージ(102)にサンプルを位置決めして取り付けること;
(b)当該冷却装置に備えられた冷却フィンガ状部材の導管(130、131)に導かれる冷媒により当該サンプルを冷却し、イオンビームエッチング操作のために所望される温度が確立されること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
当該冷却装置が、請求項1から12の一に記載の冷却装置であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)に続き、イオンビームエッチング操作の終了後に当該サンプルの冷却が終了されるステップ(c)を有することを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)に続き、当該サンプルを、周囲空気から当該サンプルへの大気水分の凝縮が妨げられる温度に加熱するステップ(d)を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
当該サンプルが、マスク(104)に対して相対的に位置決めされ、当該マスク(104)は、当該サンプルと同様に、冷却され又は更に加熱されて、室温に戻ることを特徴とする請求項13から16の一に記載の方法。
【請求項18】
イオンビームエッチング操作の間、当該温度が一定に維持されることを特徴とする請求項13から17の一に記載の方法。
【請求項19】
当該冷媒が液化ガスであることを特徴とする、請求項13から18の一に記載の方法。
【請求項20】
当該冷媒の流量が、当該エバポレータブロック(109)を通って流れた後に、当該冷媒がそこから気体状態のみで現われるように制御されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−132921(P2012−132921A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283663(P2011−283663)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(501129941)ライカ ミクロジュステーメ ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(501129941)ライカ ミクロジュステーメ ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】
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