説明

イオンビーム出射装置及びイオンビーム出射方法

【課題】厚みが回転方向において変化して通過するイオンビームのエネルギーを変える1つの回転体で治療できる患者数を増加する。
【解決手段】イオンビームを患者32に照射して治療を行うイオンビーム出射装置において、イオンビームを発生させるビーム発生装置1と、周回方向に所定の厚さ分布を備え、ビーム発生装置1から発生されたイオンビームの進路上で回転しイオンビームの飛程を制御するレンジモジュレーションホイール29を備えたビーム照射ノズル15と、レンジモジュレーションホイール29の回転位相に応じて、ビーム発生装置1のビーム発生加速動作を制御する照射制御装置38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽子及び炭素イオン等のイオンビームを発生及び出射して患部を治療するイオンビーム出射装置及びイオンビーム出射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの患者の患部に陽子及び炭素イオン等のイオンビームを照射する治療方法が知られている。この治療に用いるイオンビーム出射装置は、イオンビームを発生させ、必要なエネルギーまで加速させるイオンビーム発生装置、ビーム輸送系、及びビーム照射ノズルを備えている。イオンビーム発生装置で加速されたイオンビームは、第1ビーム輸送系及び回転ガントリーに設けられた第2ビーム輸送系を経て、回転ガントリーに設置され治療照射野をモニタして形作るビーム照射ノズルに達する。ビーム照射ノズルに達したイオンビームはビーム照射ノズルより出射されて患者の患部に照射される。ビーム発生装置としては、例えば、イオンビームを周回軌道から取り出す出射用デフレクターを備えたシンクロトロン(概略円形の加速器)が知られている(例えば、特許文献1;米国特許第5,363,008号)。
【0003】
例えば陽子ビームの照射線量を患部に与えるイオンビームを用いた放射線療法では、陽子ビームのエネルギーの大部分が、陽子が停止する直前に放出されること、すなわち陽子の停止直前にブラッグピークが形成されるという特性を利用し、陽子ビームのエネルギーの選択により陽子を患部で停止させてビームエネルギーの大部分を患部の細胞或いはその微小外延部に放出するようにする。
【0004】
通常、患部は、患者の体表面からの深さ方向、つまりイオンビームの進行方向(以下、単に深さ方向という)にある程度の厚みをもっている。その深さ方向における患部の厚み全域にわたってイオンビームを効果的に照射するためには、深さ方向においてブラッグピークの幅を拡大する必要がある。ブラックピークの拡大された幅を、ブラックピーク幅という。必要なブラックピーク幅を得るためには、イオンビームのエネルギーを調節しなければならない。
【0005】
このような観点から、従来、周方向に段階的に厚みが変化している複数の羽根部を回転軸の周囲に設置したレンジモジュレーション回転体(レンジモジュレーションホイール。以下、RMWという)が既に提唱されている(例えば、非特許文献1;REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS、Vol. 64, No. 8, 2074頁〜2084頁(図30及び図31)1993年8月発行)。複数の羽根部は回転軸に取り付けられる。RMWは、隣り合う羽根部の相互間に貫通する開口を形成している。例えば、開口をイオンビームの経路(ビーム経路という)に位置させてRMWを回転させる。開口及び羽根部が交互にビーム経路を横切る。イオンビームが開口を通過したときはビームエネルギーが減衰しないため、ブラッグピークが体内の最も深い位置に生じる。イオンビームが羽根部部を通過する際には、羽根部の厚みが厚い部分を通過するほど、このイオンビームのエネルギーの減衰度合いが大きくなり、患部の体表面に近い部分にブラックピークが形成される。RMWの回転によって、このようなブラッグピークが形成される深さ方向の位置が周期的に変動する結果、時間積分で見ると、患部の深さ方向において比較的広くフラットなブラッグピーク幅を得ることができる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,363,008号
【非特許文献1】REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS、Vol. 64, No. 8, 2074頁〜2084頁(図30及び図31)1993年8月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来手法では、以下のような課題が存在する。
すなわち、患者によって体格の大きさはそれぞれ異なり、また患部の大きさもそれぞれ異なる。このため、各患者の患部を治療するのに最適なブラッグピーク幅もそれぞれ異なる。しかしながら、従来の方法では、一つのRMWに対しては一つの設定されたブラッグピーク幅が得られるだけである。このため、患者ごとに異なるRMWを作成して用意し、患者が変わるたびに取り替えて使用する必要があった。り、多数の患者を効率的に治療するのが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、厚みが回転方向において変化して通過するイオンビームのエネルギーを変える1つの回転体で治療できる患者数を増加できるイオンビーム出射装置およびイオンビーム出射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、厚みが回転方向において変化して通過するイオンビームのエネルギーを変える回転体の回転時に、ビーム発生装置で加速されたイオンビームの出射及び出射停止を制御することにある。回転体が回転しているときにビーム発生装置からのイオンビームの出射及び出射停止を制御することによって、回転方向において、その回転体内でイオンビームが通過する領域を変化させることができる。このため、1つの回転体で、体表面からの深さ方向で異なる幅を有する複数のブラッグピークの拡大幅(以下、SOBP幅という)を形成することができ、1つの回転体を複数の患者に使用することができる。すなわち、患部の厚さが異なる多数の患者を1つのレンジモジュレーション回転体で治療することが可能となる。
【0010】
好ましくは、イオンビーム発生装置としてシンクロトロンを用いるとよい。
【0011】
好ましくは、回転体は回転方向において厚みが変化している複数の羽根部を供えると良い。
【0012】
好ましくは、ビーム発生装置からのイオンビーム出射の開始と停止の制御は、通信ネットワークを介して治療計画ソフトから与えられるSOBP幅の情報に基づいて行われるのが良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、厚みが回転方向において変化して通過するイオンビームのエネルギーを変える1つのレンジモジュレーション回転体で治療できる患者数を増加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態のイオンビーム出射装置である陽子線出射装置7は、図1に示すように、ビーム発生装置1、ビーム発生装置1の下流側に接続されたビーム輸送系2及びビーム照射ノズル15を備えている。
【0016】
ビーム発生装置1は、イオン(陽子)源(図示せず)、前段加速器3及び主加速器であるシンクロトロン4を有する。シンクロトロン4は、一対の電極によって構成された高周波印加装置5及び高周波加速空胴6から構成されている。高周波印加装置5及び高周波加速空洞6はイオンビームの周回軌道上に設置されている。第1高周波電源8が開閉スイッチ9を介して高周波印加装置5の電極に接続される。高周波加速空胴6に高周波電力を印加する第2高周波電源(図示せず)が、別途設けられる。イオン源で発生したイオン(例えば、陽イオン(または炭素イオン))は前段加速器(例えば線形加速器)3で加速される。前段加速器3から出射されたイオンビームはシンクロトロン4に入射される。イオンビーム(粒子線)は、第2高周波電源からの高周波電力の印加によって高周波加速空胴6内に発生する電磁場に基づいて加速される。シンクロトロン4内を周回するイオンビームは、設定されたエネルギー(例えば70〜250MeV)まで加速された後、後述するように開閉スイッチ9を閉じることによってシンクロトロン4から出射される。すなわち、第1高周波電源8からの高周波が、閉じられた開閉スイッチ9を通して閉じることによって、高周波印加装置5より周回しているイオンビームに印加される。このため、安定限界内で周回しているイオンビームは、安定限界外に移行し、出射用デフレクタ10を通って出射される。イオンビームの出射の際には、シンクロトロン4に設置された四極電磁石11及び偏向電磁石12に導かれる電流が電流設定値に保持され、安定限界もほぼ一定に保持されている。開閉スイッチ9を開いて高周波印加装置5への高周波電力の印加を停止することによって、シンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止される。
【0017】
シンクロトロン4から出射されたイオンビームは、ビーム輸送系2の下流側に輸送される。ビーム輸送系2は、四極電磁石13及び偏向電磁石14と、ビーム照射ノズル15に接続されたビームダクト16とを備える。ビーム照射ノズル15及びビームダクト16は、治療室(図示せず)内に設置された回転ガントリー(図示せず)に取り付けられている。四極電磁石17、四極電磁石18、偏向電磁石19及び偏向電磁石20がこの順にビームダクト16に設置される。イオンビームはそれらの電磁石によってビームダクト16に沿ってビーム照射ノズル15へと輸送される。患者が、回転ガントリー内に形成された治療ケージ(図示せず)内で位置決めされた治療用ベッド34に横たわっている。ビーム照射ノズル15から出射されたイオンビームは、その患者32の癌の患部に照射される。四極電磁石17等の電磁石を備えたビームダクト16はビーム輸送系であるとも言える。
【0018】
ビーム照射ノズル装置15は、回転ガントリーに取り付けられたケーシング21(図2参照)を有する。ビーム照射ノズル15は、更に、図2に示す第1散乱体装置24、第2散乱体装置25、ブラッグピーク拡大装置であるRMW装置26及び線量モニタ23を有する。第1散乱体装置24、第2散乱体装置25、RMW装置26及び線量モニタ23は、上流側よりこの順でケーシング21内に設置され、ケーシング21に取り付けられる。患者毎に成形されたボーラス27及びコリメータ28もケーシング21に取り付けられる。
【0019】
第1散乱体装置24は、ケーシング21内のビーム経路であるビーム軸Aに直交する方向にイオンビームを拡大させる散乱体24Aを有する。散乱体24Aは支持部材24Bによってケーシング21に取り付けられる。散乱体24Aは、一般にイオンビームの散乱量に対するエネルギー損失の量が少ない原子番号の大きい物質(鉛やタングステン等)によって構成される。第1散乱体装置24は、散乱体24Aがビーム軸A上に配置されるように設置される。
【0020】
第2散乱体装置25は、第1散乱体装置24によって線量分布が正規分布状に広げられたイオンビームを、一様な線量分布にする機能を有し、散乱体25A及びこの散乱体25Aをケーシング21に取り付ける支持部材25Bを備えている。第2散乱体装置25は、散乱体25Aがビーム軸A上に配置されるように設けられる。
【0021】
RMW装置26は、RMW29、RMW29を回転させる回転装置(例えば、モータ)30、及びRMW29の回転位相(回転角度)を検出する角度センサ31を有している。図3に示すように、RMW29は、複数の羽根部(本実施例では3枚)29A、回転軸40、及び円筒部材39を有する。円筒部材39は回転軸40と同心円状に配置される。回転軸40に取り付けられた複数の羽根部37(本実施形態では羽根部37A,37B,37Cの3つ)がRMW29の半径方向に伸びている。これらの羽根部37の外側の端部は円筒部材39に取り付けられる。羽根部37の周方向における幅は、円筒部材39側の端部で回転軸40側の端部よりも広くなっている。RMW29の周方向における羽根部37の相互間には、それぞれ開口42が形成される。本実施形態のRMW29は開口42を有しているが、開口の代わりにある厚さを有する薄い羽根部を設けることができる。この場合、その最も薄い羽根部による少量のエネルギロスを考慮する必要がある。各羽根部37は、RMW29の周方向(回転方向)において階段状に配置された複数の平面領域(段部)43を有しており、回転軸40の軸方向(ビーム軸Aの方向)におけるRMW29の底面から各平面領域43までの各厚みが異なっている。1つの平面領域43に対するその厚みを、平面領域部分の厚みという。すなわち、羽根部29は、周方向で羽根部29の両側に位置する開口42にそれぞれ隣接する各平面領域43から、ビーム軸Aの方向において最も厚みの厚い頂部44に位置する平面領域43に向かって、各平面領域部分の厚みが階段状に増加している。各平面領域43は、回転軸40から円筒部材39に向かって延びている。1つのRMW29において、3枚の羽根部37の相互間に位置する開口42は3つ存在する。
【0022】
回転軸40は、ケーシング21に設けられた支持部材45に着脱自在に取り付けられる。回転軸40は軸方向に貫通する貫通孔41を形成している。支持部材45に取り付けられた回転装置30の回転軸30Aが、貫通孔41に噛み合わされる。角度センサ31も支持部材45に取り付けられる。
【0023】
なお、RMW29としては第1散乱体を一体的に取り付けたもの(例えばホイールのビームが当たる位置全体に散乱体を張り巡らしたもの等)を用いてもよい。また、厚さ分布の大きい部分と小さい部分の散乱量の違いを補償するための補償器を取り付けたものを用いてもよい。
【0024】
本実施形態の陽子線出射装置は、RMW29の回転角度に応じてビーム発生装置1からのイオンビームの出射ON/OFFを制御することにより、複数のSOBP幅を生成することができる。以下、この原理を、図4、図5及び図6を用いて説明する。
【0025】
イオンビームがRMW29の開口42を通過したときは、ビームエネルギーは減衰しないためブラッグピークが体表面から深い第1の位置に形成される。羽根部37のうち最も厚みが厚くなる頂部44に位置する平面領域43をイオンビームが通過したときは、ビームエネルギーが最も大きく減衰されてブラックピークが体表面近くの浅い第2の位置に形成される。イオンビームが開口42と頂部44の間に位置する平面領域43を通過したときは、その平面領域43が位置する部分の厚みに応じてビームエネルギーが減衰するため、ブラッグピークは第1位置と第2位置の間に存在する第3の位置に形成される。したがって、図4及び図5におけるケースaのように、RMW29の周方向において、360°の全回転角度領域において常にビームONである場合には、RMW29の回転によりブラッグピークは第1位置と第2位置との間で周期的に変動する。この結果、ケースaは、時間積分で見ると、図6に示す深さ方向の線量分布aのように体表面近くから深い位置に至る比較的広いSOBP幅というを得ることができる。「ビームON」は、イオンビームがシンクロトロン4から出射されてRMW29を通過しビーム照射ノズル15から出射される状態を意味する。これに対し、「ビームOFF」は、イオンビームがシンクロトロン4から出射されずビーム照射ノズル15から出射されない状態を意味する。
【0026】
図4及び図5におけるケースbは、RMW29の周方向において、各羽根部37の比較的厚い領域(頂部44付近)ではビームOFFとし、これ以外の回転角度領域ではビームONとする。ケースbは、体表面近くの浅い部分で生じるブラッグピークがなくなるため、図6に示す深さ方向の線量分布bのように線量分布aよりもフラット部分が狭くなったSOBP幅が形成される。
【0027】
図4及び図5におけるケースcは、RMW29の周方向において、開口42及び開口42付近の各羽根部24Aの厚みが比較的薄い領域にてビームONとし、これら以外の回転角度領域ではビームOFFとする。ケースcは、全体にビームエネルギーの減衰量が少ないため、体表面から深い位置にブラッグピークが形成される。このため、ケースcは、図6に示す深さ方向の線量分布cのように線量分布bよりもフラット部分が狭くなったSOBP幅が形成される。
【0028】
本実施形態の陽子線出射装置7は、以上のようにRMW29の回転角度に応じてイオンビームの出射ON/OFF制御を行うことにより、1つのRMWで複数の異なるSOBP幅を形成することができる。
【0029】
図2に戻り、線量モニタ23は、SOBP装置26等で形成した照射野内のイオンビームの線量分布を測定する。また、ボーラス27は、治療患者32の患部33(例えば癌や腫瘍の発生部位)の最大深さに合わせてイオンビームの到達深度を調整するものである。すなわち、ボーラス27は、ビーム照射ノズル15内のビーム経路(ビーム軸A)と直交する方向における各位置でのイオンビームの飛程を、照射目標である患部33の深さ形状に合わせて調整する。ボーラス27は、飛程補償装置、エネルギーコンペンセータ、コンペンセータ等とも称される。また、コリメータ28は、ビーム経路(ビーム軸A)と直交する方向において、患部33の形状に合わせてイオンビームを整形するものである。
【0030】
患者が横たわっている治療用ベッド34は、ビーム照射ノズル15からイオンビームを照射する前に、ベッド駆動装置(図示せず)によって移動され、前述の治療ゲージ内に挿入される。回転ガントリーはモータ(図示せず)の駆動によって回転され、ビーム照射ノズル15内のビーム経路が治療用ベッド34上の患者32の患部33を向くようになる。更に、患者の患部が照射装置15のビーム経路と精度良く一致するように、治療用ベッド34の、照射装置15に対する位置決めが行われる。その後、ビーム経路16を経てビーム照射ノズル15内へ導入されたイオンビームは、照射装置15内の第1散乱体装置24、第2散乱体装置25、RMW29が回転しているRMW装置26、ボーラス27及びコリメータ28を通って患部33に照射される。RMW29の回転は回転装置30の駆動により行われる。
【0031】
本実施形態におけるRMW29の回転時におけるイオンビームの出射ON/OFF制御について、具体的に説明する。「イオンビームの出射ON」はシンクロトロン4からイオンビームの出射を開始することであり、「イオンビームの出射OFF」はシンクロトロン4からのイオンビームの出射を停止することである。まず、X線CT装置(図示せず)で患者32の患部33付近の断層撮影を行う。医者は、得られた断層像を用いて診断を行い、患部33の位置及びサイズを把握すると共に、イオンビームの照射方向、最大照射深さ等を定めて治療計画装置35に入力する。治療計画装置35は、治療計画ソフトによって、入力されたイオンビームの照射方向、最大照射深さ等に基づき、治療に必要なSOBP幅、照射野サイズ及び患部33に対する目標線量等を算出する。さらに、治療計画装置35は、治療計画ソフトによって、各種運転パラメータ(イオンビームをシンクロトロン4から出射する時のエネルギー(出射エネルギー)、回転ガントリー角度、患者ベッド位置、及びイオンビームの出射ON/OFF時におけるRMW29の各回転角度)を算出すると共に、治療に適切な周方向の厚さ分布及び角度幅を有するRMW29を選定する。治療計画装置35によって算出された出射エネルギー、SOBP幅、照射野サイズ、回転角度、患者ベッド位置及び照射線量等の各種の治療計画情報が、陽子線出射装置7の中央制御装置36に入力され、中央制御装置36の記憶装置(図示せず)に記憶される。
【0032】
各種の治療計画情報は、治療計画装置35の表示装置及び陽子線出射装置7の制御室内に設置された表示装置に表示される。治療を受ける患者32に対するRMW29、ボーラス27及びコリメータ28が、作業員によって、ビーム照射ノズル15のケーシング21内に図2に示すように設置される。
【0033】
照射制御装置38は、中央制御装置36から、設定値となる治療計画情報であるRMW29の各回転角度(例えば、後述のα1〜α6)、目標線量及び回転ガントリー角度、患者ベッド位置等の必要な治療計画情報を入力し、照射制御装置38の記憶装置(図示せず)に記憶する。ガントリー制御装置(図示せず)は、照射制御装置38より回転ガントリー角度情報を入力し、前述したようにビーム照射ノズル15のビーム経路が患部33を向くように、回転ガントリー角度情報に基づいて回転ガントリーを回転させる。中央制御装置36は、患者32に対する出射エネルギー情報に基づいてビーム発生装置1及びビーム輸送系2の各電磁石に導く電流の制御指令(電流設定値)を設定する。電磁石電源制御装置(図示せず)は、それらの電流設定値に基づいて該当する電磁石電源を制御し、ビーム発生装置1及びビーム輸送系2の各電磁石に供給する励磁電流の電流値を調節する。これにより、ビーム発生装置1及びビーム輸送系2にイオンビームを導く準備が完了する。電磁石電源制御装置は中央制御装置36に接続されている。
【0034】
シンクロトロン4は、前段加速器3からのイオンビームの入射、イオンビームの加速、イオンビームの出射、及び減速(次の出射の準備)を繰り返して運転される。設定エネルギーである所望の出射エネルギーまでイオンビームが加速されると、イオンビームの加速が終了し、イオンビームがシンクロトロン4から出射可能な状態(イオンビームの出射可能な状態)になる。イオンビームの加速終了情報は、シンクロトロン4の電磁石等の状態をセンサ(図示)で監視している電磁石電源制御装置から中央制御装置36に伝えられる。
【0035】
陽子線出射装置7における前述したSOBP幅形成のためのイオンビームの出射ON/OFFに係る制御を、図1、図2、図4及び図7を用いて説明する。以下におけるイオンビームの出射ON/OFFに係る制御は、図4におけるケースbの一例に基づいて説明する。このケースbの一例では、点45A、45B及び45Cがイオンビームの出射ON(出射開始)時点であり、点46A、46B及び46Cがイオンビームの出射OFF(出射停止)時点である。照射制御装置38は、ケースbの制御を行うに際して、回転角度の設定値である回転角度α1〜α6(α3〜α6は図示せず)を、予め中央制御装置36から入力している。回転角度α1は基準線22から点45Aまでの角度であり、回転角度α2は基準線22から点46Aまでの角度であり、回転角度α3は基準線22から点45Bまでの角度であり、回転角度α4は基準線22から点46Bまでの角度であり、回転角度α5は基準線22から点45Cまでの角度であり、回転角度α6は基準線22から点45Cまでの角度である。回転角度α1〜α6は、基準線22がビーム軸Aに位置するときを基準にした角度を示している。
【0036】
照射制御装置38は、図7に示す制御フローに基づいてイオンビームの出射ON/OFFに係る制御を実行する。まず、加速器(シンクロトロン4)の加速終了信号(イオンビームが出射可能な状態になったことを示す信号)を入力する(ステップ51)。この加速終了信号は中央制御装置36から入力される。回転装置30に回転開始信号を出力する(ステップ52)。回転装置30は、照射制御装置38から出力された駆動信号に基づいて回転される。回転装置30の回転力は回転軸30Aを介して回転軸40に伝えられ、RMW29が回転される。RMW29の回転数は1秒間当り10〜20回転の範囲内の回転数に設定される。回転角度の計測値が回転角度の第1設定値と一致するかが判定される(ステップ53)。角度センサ31で計測されたRMW29の回転角度の計測値は、照射制御装置38に入力される。この計測値が出射開始信号を出力するための回転角度の第1設定値(回転角度α1、α3及びα5のいずれか)と一致するかが判定される。回転角度の計測値が第1設定値と一致した場合は、出射開始信号が出力される(ステップ54)。この出射開始信号によって、開閉スイッチ9が閉じられる。高周波印加装置5より高周波が周回しているイオンビームに印加されるため、イオンビームがシンクロトロン4から出射される。このイオンビームは、ビーム照射ノズル15に輸送される。イオンビームは、照射装置15内で回転しているRMW29等を通過してビーム軸Aに沿ってビーム照射ノズル15より出射され、患部33に照射される。図4において、黒丸の位置がイオンビームの出射を開始する位置である。
【0037】
患部33に照射された線量が目標線量に到達したかが判定される(ステップ55)。また、回転角度の計測値が回転角度の第2設定値と一致するかが判定される(ステップ56)。線量モニタ23によって測定された患部33に照射される線量、及び回転角度の計測値は、常に照射制御装置38に入力されている。ステップ55においては、線量計測値の累積値が目標線量になったかが判定される。この判定結果が「YES」の場合には、ステップ56の処理に優先してステップ60の処理が実行され、出射停止信号が出力される。このビーム出射停止信号によって、開閉スイッチ9が開き、高周波印加装置5への高周波の供給が停止される。このため、シンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止される。治療用ベッド34上の患者32に対するイオンビームの照射が終了する。回転装置30に停止信号を出力する(ステップ61)。回転装置30の回転が停止し、RMW29の回転も停止する。
【0038】
ステップ55の判定が「NO」である場合には、ステップ56の処理が実行される。ステップ56において、回転角度の計測値が出射停止信号を出力するための回転角度の第2設定値(回転角度α2、α4及びα6のいずれか)と一致したと判定された場合には、出射停止信号が出力される(ステップ57)。出射停止信号の出力により、上記したように開閉スイッチ9が開き、シンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止される。図4において白丸の位置がイオンビームの出射を停止する位置である。ステップ54の出射開始信号の出力からステップ57の出射停止信号の出力までの期間は、例えば、羽根部37Aの平面領域43Aから羽根部37Bの平面領域43Bが、イオンビームが通るビーム軸Aを横切る期間であって、実質的にビームONの期間である。開閉スイッチ9が閉じてシンクロトロン4からイオンビームが出射されるまでに要する時間は1/1000秒以下であり、逆に開閉スイッチ9が開いてイオンビームの出射が停止されるまでに要する時間も1/1000秒以下である。
【0039】
ステップ58で、再度、患部33に照射された線量が目標線量に到達したかが判定される。この判定結果が「NO」の場合には、ステップ59の処理が実行される。すなわち、上記したビームONの期間が終了した後、シンクロトロン4内にイオンビームが十分に存在するかを判定する。このイオンビームの存在量(イオンビームの電流密度)は、電磁石電源制御装置がシンクロトロン4に設けられたセンサ(図示せず)の計測値を基に監視している。イオンビームの電流密度の計測値は、中央制御装置36を介して照射制御装置38に入力されている。ステップ59の判定は、電流密度の計測値を用いて行われる。判定結果が「YES」の場合には、ステップ53〜58の処理が実行される。この繰り返し処理における、ステップ54の出射開始信号の出力からステップ57の出射停止信号の出力までの期間は、例えば、羽根部37Bの平面領域43Cから羽根部37Cの平面領域43Dがビーム軸Aを横切る期間であって、実質的にビームONの期間である。次のステップ53〜58の繰り返し処理における、羽根部37Cの平面領域43Eから羽根部37Aの平面領域43Fがビーム軸Aを横切る期間も、実質的にビームONの期間である。2つのビームONの期間の間には、図5に示すようにビームOFFの期間が存在する。ステップ53〜58の繰り返し処理時に、ステップ55または58で、線量計測値の累積値が目標線量になったと判定されると、ステップ61の処理が行われて患者32へのイオンビームの照射は終了する。
【0040】
ステップ59の判定が「NO」の場合には、ステップ51からの処理が実行される。すなわち、シンクロトロン4内を周回しているイオンビームの電流密度が低下してイオンビームの出射が不可能な場合には、シンクロトロン4を減速させる。電磁石電源制御装置がシンクロトロン4及びビーム輸送系2等に設けられた電磁石に供給する電流値を低下させる。それらの電磁石に供給される電流値がイオンビームの入射状態に保持される。イオンビームが前段加速器3からシンクロトロン4に入射される。このイオンビームは前述のように出射エネルギーになるまで加速される。イオンビームの加速終了後にスッテップ51からの処理が、照射制御装置38で実行される。
【0041】
ステップ54とステップ56の間でステップ55の判定を行うため、イオンビームが回転しているRMW29を通過している間に、線量計測値の累積値が目標線量になったとき、イオンビームの出射を停止することができる。したがって、患部33にイオンビームが過大に照射されることを防止できる。例えば、図4において、羽根部37Aと羽根部37Bとの間に位置する開口42がビーム軸Aの位置に存在するときにステップ55で「YES」と判定された場合には、イオンビームの出射を停止できる。このため、その開口42がビーム軸Aに位置してから回転角度の第2設定値に対する点46Aがビーム軸Aに位置するまでの間におけるイオンビームの患部33への照射を停止できる。
【0042】
上記したケースbの一例においては、点45Aから点46Aまでの領域、点45Bから点46Bまでの領域及び点45Cから点46Cまでの領域はRMW29におけるイオンビーム通過領域である。点46Aから点45Bまでの領域、点46Bから点45Cまでの領域及び点46Cから点45Aまでの領域はRMW29におけるイオンビームの通過しない領域(イオンビーム非通過領域)である。ケースbの一例について説明したが、1つのRMW29に対して、出射開始信号を出力するための回転角度の第1設定値、及び出射停止信号を出力するための回転角度の第2設定値を変えることにより種々のSOBP幅を形成することができる。図5に示す各「ビームON」は開口42をイオンビームが通過しているが、イオンビームが開口42を通過せず頂部44を通過させるように制御することも可能である。照射制御装置38は、例えば、図4において、点46Cがビーム軸Aに到達したときに出射開始信号を出力し、点45Aがビーム軸Aに到達したときに出射停止信号を出力する。
【0043】
本実施形態の陽子線出射装置7によれば、RMW29を回転させた状態でイオンビームをON/OFF制御するため、回転方向において、RMW29内でイオンビームが通過する領域を、RMW29の回転方向において、変化させることができる。このため、1つのRMW29で、患者32の体表面からの深さ方向で異なる幅を有する複数のSOBP幅を形成することができ、1つのRMW29を複数の患者に使用することができる。すなわち、1つのRMW29を用いて治療できる患者数が増加する。また、1つのRMW29を用いて、複数のSOBP幅を形成することができるため、陽子線出射装置7を有するがん治療センタで準備するRMWの個数が低減できる。1つのRMW29で複数のSOBP幅を形成できることは、ビーム照射ノズル15に設置されたRMWの交換回数が減少する。これは、治療の準備に要する時間が短縮されることになり、陽子線出射装置7における患者の治療人数が増加できる。特に、本実施形態は、イオンビームのON/OFF制御をRMW29の回転角度(具体的には回転角度の計測値及び設定値)に基づいて行っているため、特定のSOBP幅を精度良く形成することができる。ビームのON/OFF制御を行うRMWの回転角度を変えることによって、種々のSOBP幅を形成することができる。
【0044】
シンクロトロン4では、加速されるイオンの数が同じであるため、ビームONの期間を短縮しても、第1高周波電源8から高周波印加装置5に供給する出射用の高周波のパワーを増加することによって、ビームONの期間中にシンクロトロン4から出射されるイオンビームの電流密度を増大できる。このため、ビームONの期間が短くても患者に照射される線量率(単位時間当りで単位体積当りに照射される放射線量)を増大できる。厚さの薄い患部33、または体積が小さい患部33を有する患者32に対しては、電流密度が増大されたイオンビームを照射することによってイオンビームの照射時間を短縮できる。この照射時間の短縮は、患者32への負担を軽減でき、1年間当りの治療人数を増加できる。ビームONの期間を短縮する場合でも、出射用の高周波のパワーを前述のように増大することによって、周回する全てのイオンビームを実質的にシンクロトロン4から出射させることができるため、シンクロトロン4等の機器の放射化の度合いが低下する。
【0045】
加速器としてシンクロトロンの代りにサイクロトロンを用い、サイクロトロンから出射されたイオンビームをビーム照射ノズル15に導くことが考えられる。しかしながら、サイクロトロンは、シンクロトロンのように減速工程がなく、イオンビームの入射、加速及び出射の各工程を連続して行うため、「ビームON」の期間を短くすると、単位時間当りにビーム照射ノズル15から出射されるイオンの数が減少する。しかしながら、患部33に対する線量率は変わらない。これは、SOBP幅を減少させる、つまり、照射体積を減らしていることと等価である。この結果、「ビームON」の期間を短くしても、厚さの薄い患部33、または体積が小さい患部33を有する患者32に対しては、イオンビームの照射時間が変わらない。サイクロトロンにおいて「ビームOFF」をイオンビームの加速過程または加速後に行えば、捨てられるイオンビーム量が多くなり、サイクロトロン等の機器の放射化が増加する。
【0046】
実施形態1において、RMW29の代りに図8に示す他のRMW62を用いた場合について説明する。RMW62は、3枚の羽根部63A,63B,63Cを有する。64A,64B,64Cは羽根部63A,63B,63Cのそれぞれの頂部である。羽根部63A,63B,63Cは羽根部の底面からそれぞれの頂部までの厚みが異なっている。この厚みは、図9に示すように、羽根部63Aが最も厚く、次に羽根部63Bが厚く、羽根部63Cが最も薄くなっている。いずれの羽根部もRMW29と同様に複数の平面領域を有する。RMW62の他の構成は、RMW29と同じである。RMW29は各羽根部の全ての頂部の高さが同じであるのに対して、RMW62は各羽根部の頂部の高さが全て異なっている。RMW62も、ビーム照射ノズル15内で支持部材45に着脱自在に取り付けられる。
【0047】
RMW62をビーム照射ノズル15に設置した際におけるイオンビームの出射ON/OFF制御には、以下に述べる3つのケースがある。まず、ケースdは、点65Aの位置の回転角度で出射開始信号が出力されて点66Aの位置の回転角度で出射停止信号が出力され、羽根部63Aの領域で「ビームON」となる。ケースeは、点65Bの位置の回転角度で出射開始信号が出力されて点66Bの位置の回転角度で出射停止信号が出力され、羽根部63Bの領域で「ビームON」となる。ケースfは、点65Cの位置の回転角度で出射開始信号が出力されて点66Cの位置の回転角度で出射停止信号が出力され、羽根部63Cの領域で「ビームON」となる。点65A〜65C及び66A〜66Cは全ていずれかの開口42に位置している。いずれのケースも、「ビームON」以外の領域では、「ビームOFF」となる。
【0048】
ケースd〜fにおけるイオンビームの出射ON/OFF制御は、照射装置38が図7に示すフローチャートに基づいた処理により行われる。RMW62を用いた場合にも、実施形態1で述べた効果を得ることができる。RMW62によれば、1つのRMWにおいて羽根部40A,40B,40Cに対応した3種類の異なるSOBP幅を得ることができる。
【0049】
なお、RMW62は高さの異なる3種類の羽根部を設けているが、高さの異なる2種類或いは4種類以上の羽根部を設けてもよい。また、RMW62では1種類の羽根部の領域でのみ「ビームON」の領域を設定したが、隣り合う、高さの異なる2種類以上の羽根部に跨って「ビームON」の領域を形成してもよい。この場合、例えば羽根部63A及び羽根部63Bに跨って「ビームON」の量言いを形成した場合には、得られる線量分布は、これらの羽根部にそれぞれ単独にイオンビームを照射して得られるそれぞれの線量分布を重ね合わせたものとなる。必ずしも各羽根部の全体を「ビームON」の対象領域としなくても、RMW29の場合と同様に各羽根部を部分的に含む「ビームON」の領域を形成してもよい。
【0050】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態である実施形態2の陽子線出射装置を以下に説明する。本実施形態の陽子線出射装置は、実施形態1の陽子線出射装置7におけるビーム照射ノズル15に設置されるRMW29を、図10に示すRMW67に代えた構成を有している。本実施形態の陽子線出射装置の他の構成は陽子線出射装置7と同じである。本実施形態の陽子線出射装置は、図11に示すように、ビーム出射のON/OFFをRMW67の各段部(平面領域)ごとに行うようにしたものである。
【0051】
RMW67は、軸方向における厚さが0である開口42から最大の厚さになる頂部70にかけてRMWの回転方向と反対向きに階段状に厚みが増すように複数の平面領域43を有する1枚の羽根部68を備える。RMW67の他の構成はRMW29と同じであるため説明を省略する。
【0052】
本実施形態において、照射制御装置38により実行されるイオンビームの出射ON/OFF制御を、図12に示す制御フローを用いて説明する。なお、図12に示す制御フローのうち、図7に示す制御フローと同じ部分については説明を省略する。
【0053】
照射制御装置38は、治療計画情報であるビームONの領域Ri(i=1,2,…,n)の情報を予め中央制御装置36から入力している。nは整数である。ちなみに、後述の回転角度の設定値Ai(i=1,2,…,n)および目標線量値Di(i=1,2,…,n)の各情報も、治療計画情報であり、中央制御装置36から照射制御装置38に予め入力される。今回の治療例では、領域Riは、例えば、図10に示す領域R1〜領域11の11領域である。回転角度の設定値Aiおよび目標線量値Diも含めて、nは11である。領域R1は開口42の位置である。領域R2〜領域R11は、羽根部68において、最も厚みの薄い位置69に位置する平面領域43から、三番目に厚い位置71に位置する平面領域43までの各平面領域43が該当する。また、例えば、回転角度の設定値である回転角度A1からA11は、回転角度が基準線22から点72Aまでの角度、回転角度A2が基準線22から点72Bまでの角度、回転角度A11が基準線22から点72Kまでの角度のように、基準線22から各黒丸の位置までの角度である。なお、ビームONの領域Ri(i=1,2,…,n)は、患者32の患部33の大きさおよび体表面からの位置によって、図10において、領域R4から頂部70、および領域R3から領域R9等に設定しても良い。
【0054】
加速器(シンクロトロン4)の加速終了信号を入力する(ステップ51)。回転装置30に回転開始信号を出力する(ステップ52)。回転装置30の駆動により、RMW67は1秒間当り例えば6回転の回転数で回転する。回転角度の計測値GAi(i=1,2,…,n)が回転角度の設定値Ai(i=1,2,…,n)と一致するかが判定される(ステップ73)。例えば、角度センサ31で計測されたRMW29の回転角度の計測値GAiが回転角度の設定値Aiと一致したとき、出射開始信号が出力される(ステップ54)。例えば、計測値GA1が設定値A1と一致したとき、出射開始信号が出力される。開閉スイッチ9が閉じられ、イオンビームがシンクロトロン4から出射される。このイオンビームはRMW67の領域Ri(例えば、開口42である領域1)を通過して患部33に照射される。
【0055】
領域Riに対する線量計測値RDi(i=1,2,…,n)がその領域Riに対する目標線量Di(i=1,2,…,n)と一致するかが判定される(ステップ74)。線量モニタ23によって測定された患部33に照射されるイオンビームの線量計測値RDiは照射制御装置38に入力される。線量計測値RDiが目標線量Diに一致したとき、出射停止信号が出力される(ステップ57)。例えば、領域R1に対する線量計測値RD1が領域R1に対する目標線量D1と一致したとき、出射停止信号が出力される。開閉スイッチ9が開き、シンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止される。ステップ73,54,74,57の処理によって、イオンビームが、黒丸の点72Aから白丸の点77Aまでの回転角度の範囲で領域R1を通過して、患部33に照射される。領域Ri(開口42)を通過したイオンビームはRMW67によってエネルギーが減衰しないため、患部33の最も深い位置に対して照射される。ステップ75の判定が「NO」(領域Rnでない)のときには、ステップ73,54,74,57,75の処理が、領域R2,R3,…,Rnに対して、順次、実行される。ここで述べている具体例では、領域R11になるまでそれらの処理が繰り返される。ステップ73,54,74,57の処理が繰り返されることによって、イオンビームは、黒丸の点72Bから白丸の点77Bまでの回転角度の範囲で領域R2を、黒丸の点72Cから白丸の点77Cまでの回転角度の範囲で領域R3を、……、黒丸の点72Kから白丸の点77Kまでの回転角度の範囲で領域R11を、それぞれ通過する。本例では、RMW67における頂部70の平面領域43Zおよび一段下の平面領域43Yに対しては、ビームOFFされるためイオンビームが通過しない。
【0056】
ステップ75の判定が「YES」(領域Rnである)となった場合には、ステップ76の処理、すなわち、領域Riにおける線量計測値の累積値TRDi(i=1,2,…n)がその領域Riに対する線量の設定値TDi(i=1,2,…n)に到達したかを判定する。ステップ76の判定が「NO」であるときは、ステップ59の判定がなされる。ステップ59の判定が「YES」の場合は、ステップ73,54,74,57,75,76の処理が繰り返される。ステップ59の判定が「NO」の場合は、図12に示すステップ51〜ステップ76の処理が繰り返される。ステップ76の判定が「YES」になったとき、回転装置30に停止信号が出力され(ステップ61)、患者32に対するイオンビームの照射が終了する。
【0057】
各領域Ri(i=1,2,…n)に対するそれぞれの目標線量Di(i=1,2,…n)および線量の設定値TDi(i=1,2,…n)を、図13を用いて説明する。患者32の体表面からの深さ方向において総線量の分布が一様になる領域であるSOBP幅が、患部(標的領域)33の深さ方向の幅を含むように設定される。総線量は、イオンビームによって患部33に照射されるトータルの線量である。RMW67の領域R1(開口42)を通過したイオンビームは、図13に示すように、患部3の最も深い位置にブラッグピーク形成する。図13に示すブラッグピークBP1の線量は、患部32へのイオンビームの照射が終了するまでに領域R1を通過したイオンビームによって患部33に照射された総線量である。ブラッグピークBP1の線量が線量の設定値TD1となる。領域R2,R3,…,R11と、RMW67の底面からの厚みが増大するほど、イオンビームのエネルギーが減衰されるため、ブラッグピークの形成される位置が体表面の方に移動する。すなわち、図13に示すように、ブラッグピークBPa,BPb,BPc,…が形成される。ブラッグピークBPaの線量は、患部32へのイオンビームの照射が終了するまでに領域Raを通過したイオンビームによって患部33に照射された総線量である。ブラッグピークBPcの線量は、患部32へのイオンビームの照射が終了するまでに領域Rcを通過したイオンビームによって患部33に照射された総線量である。このため、ブラッグピークBPaの線量が線量の設定値TDa、ブラッグピークBPbの線量が線量の設定値TDb、ブラッグピークBPcの線量が線量の設定値TDcである。このように、ある患者32に対する線量の設定値TDi、例えば、線量の設定値TD1〜TD11が決められる。
【0058】
目標線量Di(i=1,2,…n)は、線量の設定値TDi(i=1,2,…n)、および患部32に対してイオンビームの照射を開始してからその照射を終了するまでの期間におけるRMW67の回転数に基づいて定められる。その照射期間におけるRMW67の回転数が例えば10回転である場合には、Di=TDi/10となる。特に、線量の設定値が最も大きい設定値TD1が照射可能な回転数を用いて定めるとよい。
【0059】
本実施形態も、実施形態1で生じる効果を得ることができる。本実施形態は、各段部(平面領域)におけるそれぞれの目標線量Di(i=1,2,…n)を変えることにより、実施形態1に比較して線量分布の微調整が可能となる。これにより、異なるエネルギー(又は異なる飛程調整体挿入量、異なる照射野サイズ)を有する複数のイオンビームに対して、深さ方向の線量分布を均一に調整することが可能となる。さらに、本実施形態によれば、実施形態1に比べてRMWの回転数を比較的小さくすることが可能である。RMWは治療照射時に患者32の側近に位置するビーム照射ノズル15内において回転駆動するものであるため、回転数を小さくすることにより、安全性を向上することができる。また、実施形態1は、従来技術に比べて準備するRMW29の個数を低減できるが、種々の大きさの患部の照射野サイズに対応できるように、何種類かのRMWを準備する必要がある。これに対して、本実施形態は例えば図10に示す1種類のRMWで種々の照射野サイズの患部に対してイオンビームを用いた治療を行うことができる。すなわち、準備すべきRMWを著しく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施形態1のイオンビーム出射装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す照射装置の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図1、図2に示すRMWの斜視図である。
【図4】図3に示したRMWの平面図であり、イオンビームの出射のケースa〜cを例として示したものである。
【図5】図4に示すケースa〜cにおけるそれぞれのビームON及びビームOFFを時系列で示した図である。
【図6】図4に示すケースa〜cのそれぞれに対する深さ方向の線量分布及びSOBP幅を示す図である。
【図7】図1に示す照射制御装置で実行される制御ステップに係るフローチャートである。
【図8】RMWの他の実施形態の平面図であり、イオンビームの出射のケースd〜fを例として示したものである。
【図9】図8に示すケースd〜fのそれぞれに対する深さ方向の線量分布及びSOBP幅を示す図である。
【図10】本発明の実施形態2のイオンビーム出射装置に用いられるRMWの平面図であり、イオンビームの出射の1つのケースを例として示したものである。
【図11】図10に示すケースにおけるビームONの状態を時系列的に示した図である。
【図12】実施形態2における照射制御装置で実行される制御ステップに係るフローチャートである。
【図13】各ブラックピークの線量を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ビーム発生装置
3 前段加速器
4 シンクロトロン
5 高周波印加装置
6 高周波加速空洞
8 第1高周波電源
7 陽子線出射装置(イオンビーム出射装置)
9 開閉スイッチ
10 出射用デフレクタ
11,13、17,18 四極電磁石
12,14,19,20 偏向電磁石
15 ビーム照射ノズル
16 ビームダクト
21 ケーシング
22 基準線
23 線量モニタ
24 第1散乱体装置
24A 散乱体
24B 支持部材
25 第2散乱体装置
25A 散乱体
25B 支持部材
26 RMW装置
27 ボーラス
28 コリメータ
29 RMW
29A 複数の羽根部
30 回転装置(例えば、モータ)
30A 回転軸
31 角度センサ
32 患者
33 患部
34 治療用ベッド
35 治療計画装置
36 中央制御装置
37 複数の羽根部
37A,37B,37C 羽根部
38 照射制御装置
39 円筒部材
40 回転軸
40A,40B,40C 羽根部
41 貫通孔
42 開口
43 複数の平面領域(段部)
43A,43B,43C,43D,43E,43F 平面領域
44 頂部
45 支持部材
45A,45B,45C イオンビームの出射ONの点
46A,46B,46C イオンビームの出射OFFの点
62 RMW
63A,63B,63C 羽根部
64A,64B,64C 頂部
65A,65B,65C イオンビームの出射ONの点
66A,66B,66C イオンビームの出射OFFの点
67 RMW
68 羽根部
69 最も厚みの薄い位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを照射対象に出射するイオンビーム出射装置において、
前記イオンビームを発生させかつ加速させるビーム発生装置と、
厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を有し、前記回転体を通過した前記イオンビームを前記照射対象に照射するビーム照射ノズルと、
前記回転体の回転時に、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするイオンビーム出射装置。
【請求項2】
イオンビームを照射対象に出射するイオンビーム出射装置において、
前記イオンビームを発生させかつ加速させるビーム発生装置と、
厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を有し、前記回転体を通過した前記イオンビームを前記照射対象に照射するビーム照射ノズルと、
前記回転体の回転角度に基づいて、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするイオンビーム出射装置。
【請求項3】
前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置を前記ビーム照射ノズルに設け、前記制御装置は前記回転角度検出装置で計測された前記回転角度に基づいて前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する請求項2記載のイオンビーム出射装置。
【請求項4】
イオンビームを照射対象に出射するイオンビーム出射装置において、
前記イオンビームを発生させかつ加速させるビーム発生装置と、
厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を有し、前記回転体を通過した前記イオンビームを前記照射対象に照射するビーム照射ノズルと、
前記回転体の回転方向における第1領域が前記ビーム照射ノズル内のビーム経路に位置するときには前記ビーム発生装置から前記イオンビームを出射させ、前記第1領域以外の第2領域が前記ビーム経路に位置するときには前記ビーム発生装置から前記イオンビームを出射させないように、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするイオンビーム出射装置。
【請求項5】
前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置を前記ビーム照射ノズルに設け、前記制御装置は、前記回転角度検出装置で計測された前記回転角度に基づいて、前記第1領域が前記ビーム経路に位置するときに前記ビーム発生装置から前記イオンビームを出射させ、前記第2領域が前記ビーム経路に位置するときには前記ビーム発生装置から前記イオンビームを出射させないように、前記イオンビームの出射を制御する請求項4記載のイオンビーム出射装置。
【請求項6】
イオンビームを照射対象に出射するイオンビーム出射装置において、
前記イオンビームを加速するシンクロトロンと、
厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を有し、前記回転体を通過した前記イオンビームを前記照射対象に照射するビーム照射ノズルと、
前記回転体の回転時に、前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするイオンビーム出射装置。
【請求項7】
イオンビームを照射対象に出射するイオンビーム出射装置において、
前記イオンビームを加速するシンクロトロンと、
厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を有し、前記回転体を通過した前記イオンビームを前記照射対象に照射するビーム照射ノズルと、
前記回転体の回転角度に基づいて、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするイオンビーム出射装置。
【請求項8】
前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置を前記ビーム照射ノズルに設け、前記制御装置は前記回転角度検出装置で計測された前記回転角度に基づいて前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する請求項7記載のイオンビーム出射装置。
【請求項9】
イオンビームを照射対象に出射するイオンビーム出射装置において、
前記イオンビームを加速するシンクロトロンと、
厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を有し、前記回転体を通過した前記イオンビームを前記照射対象に照射するビーム照射ノズルと、
前記回転体の回転方向における第1領域が前記ビーム照射ノズル内のビーム経路に位置するときには前記シンクロトロンから前記イオンビームを出射させ、前記第1領域以外の第2領域が前記ビーム経路に位置するときには前記シンクロトロンから前記イオンビームを出射させないように、前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするイオンビーム出射装置。
【請求項10】
前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置を前記ビーム照射ノズルに設け、前記制御装置は、前記回転角度検出装置で計測された前記回転角度に基づいて、前記第1領域が前記ビーム経路に位置するときに前記シンクロトロンから前記イオンビームを出射させ、前記第2領域が前記ビーム経路に位置するときには前記シンクロトロンから前記イオンビームを出射させないように、前記イオンビームの出射を制御する請求項9記載のイオンビーム出射装置。
【請求項11】
前記シンクロトロンは高周波印加装置を有し、前記制御装置は、前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射及び出射停止の制御を、前記高周波印加装置への高周波の供給及び供給停止を制御することによって行う請求項6ないし請求項10のいずれか1項に記載のイオンビーム出射装置。
【請求項12】
前記回転体は、回転方向における厚みの変化を複数の段部を形成することによって行っている請求項1または請求項6記載のイオンビーム出射装置。
【請求項13】
前記回転体は、厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える複数の前記羽根部を有し、前記複数の羽根部は最も肉厚の厚い部分の厚さが同じである請求項6、7及び9のいずれか1項記載のイオンビーム出射装置。
【請求項14】
前記回転体は、厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える複数の前記羽根部を有し、前記複数の羽根部は最も肉厚の厚い部分の厚さが異なっている請求項6、7及び9のいずれか1項記載のイオンビーム出射装置。
【請求項15】
前記ビーム照射ノズルを通過する前記イオンビームの線量を検出する線量検出装置と、
前記線量検出装置で検出した線量計測値の累積線量が目標線量に達したとき、前記ビーム発生装置又は前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射を停止させる前記制御装置とを備えた請求項1または請求項6に記載のイオンビーム出射装置。
【請求項16】
前記回転体の回転角度に基づいて、前記ビーム発生装置又は前記シンクロトロンからの前記イオンビームの前記出射を制御する前記制御装置を備えた請求項1または請求項6に記載のイオンビーム出射装置。
【請求項17】
前記複数の段部のうち少なくとも一部の前記段部で前記イオンビームを通過させ、前記一部の段部において、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射及び出射停止を制御する前記制御装置を備えた請求項12に記載のイオンビーム出射装置。
【請求項18】
前記ビーム照射ノズルを通過する前記イオンビームの線量を検出する線量検出装置と、
前記一部の段部における前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射を前記回転体の回転角度に基づいて制御し、この段部における前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射停止の制御を、前記線量検出装置で検出した線量計測値がその段部の目標線量に達したときに行う前記制御装置とを備えた請求項17記載のイオンビーム出射装置。
【請求項19】
ビーム発生装置から出射されたイオンビームをビーム照射ノズルより出射させるイオンビーム出射方法において、
前記ビーム照射ノズルに設けられた、厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を、回転させ、
前記回転体の回転時において、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射および出射停止を制御することを特徴とするイオンビーム出射方法。
【請求項20】
前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射の制御は、前記回転体の回転角度に基づいて行われる請求項19記載のイオンビーム出射方法。
【請求項21】
シンクロトロンから出射されたイオンビームをビーム照射ノズルより出射させるイオンビーム出射方法において、
前記ビーム照射ノズルに設けられた、厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体を、回転させ、
前記回転体の回転時において、前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射および出射停止を制御することを特徴とするイオンビーム出射方法。
【請求項22】
前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射の制御は、前記回転体の回転角度に基づいて行われる請求項21記載のイオンビーム出射方法。
【請求項23】
前記イオンビームの出射停止の制御は、前記回転体の回転角度に基づいて行われる請求項20または請求項22に記載のイオンビーム出射方法。
【請求項24】
回転方向における厚みの変化を形成された複数の段部によって行っている前記回転体の前記複数の段部のうち少なくとも一部の前記段部で前記イオンビームを通過させ、前記一部の段部において前記イオンビームの出射および出射停止の制御を行う請求項19または請求項21に記載のイオンビーム出射方法。
【請求項25】
前記出射制御は前記回転体の回転角度に基づいて行われ、前記出射停止制御は前記ビーム照射ノズルを通過する前記イオンビームの線量の計測値に基づいて行われる請求項25記載のイオンビーム出射方法。
【請求項26】
前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射および出射停止は、前記シンクロトロンに設けられた前記高周波印加装置への高周波の供給及び供給停止を制御することによって行う請求項21記載のイオンビーム出射方法。
【請求項27】
前記ビーム照射ノズルを通過する前記イオンビームの線量の計測値の累積線量が目標線量に達したとき、前記イオンビームの前記出射を停止させる請求項23に記載のイオンビーム出射方法。
【請求項28】
ビーム発生装置から出射されたイオンビームをビーム照射ノズルより出射させるイオンビーム出射方法において、
前記ビーム照射ノズルに設けられた、厚みが回転方向において変化して通過する前記イオンビームのエネルギーを変える回転体の回転時において、前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射を前記回転体の回転角度に基づいて制御することを特徴とするイオンビーム出射方法。
【請求項29】
前記ビーム発生装置がシンクロトロンである請求項28記載のイオンビーム出射方法。
【請求項30】
前記ビーム発生装置からの前記イオンビームの出射停止を、前記回転体の回転角度に基づいて制御する請求項28記載のイオンビーム出射方法。
【請求項31】
回転方向における厚みの変化を形成された複数の段部によって行っている前記回転体の前記複数の段部のうち少なくとも一部の前記段部で前記イオンビームを通過させる制御は、前記一部の段部における前記出射の制御、および前記ビーム照射ノズルを通過する前記イオンビームの線量の計測値に基づいて行われる前記イオンビームの出射停止の制御を含んでいる請求項28記載のイオンビーム出射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−239404(P2006−239404A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14375(P2006−14375)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(506025899)ザ ボード オブ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (3)
【Fターム(参考)】