イオンビーム加工・観察装置
【課題】同一のイオン源から引き出した複数のイオンビームを用いて、試料の加工と観察を可能にするイオンビーム装置を提供する。
【解決手段】ガスボンベ53、54、ガス配管、ガス量調整バルブ59、60およびストップバルブ57、58とを備えた導入系統を少なくとも2つ備え、各々のガス系統においてガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を設定でき、各々のガス系統のストップバルブの操作により真空容器内に導入するガスを切り替えることが可能であるイオン源を用いて、質量数の異なる少なくとも2種類のガスイオンを生成して、試料の加工時と観察時でガスイオンビーム種の切り替えを可能とする。
【解決手段】ガスボンベ53、54、ガス配管、ガス量調整バルブ59、60およびストップバルブ57、58とを備えた導入系統を少なくとも2つ備え、各々のガス系統においてガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を設定でき、各々のガス系統のストップバルブの操作により真空容器内に導入するガスを切り替えることが可能であるイオン源を用いて、質量数の異なる少なくとも2種類のガスイオンを生成して、試料の加工時と観察時でガスイオンビーム種の切り替えを可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体メモリやマイクロプロセッサ、半導体レーザなどの半導体デバイス、および磁気ヘッドなどの、電子部品の検査・解析技術に係り、特に、試料断面のイオンビームによる加工・観察技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)に代表される半導体メモリやマイクロプロセッサ、半導体レーザなど半導体デバイス、および磁気ヘッドなど電子部品の製造においては、高歩留まり製造が求められる。これは不良発生による製品歩留りの低下は、採算の悪化を招くからである。このため、不良の原因となる欠陥や異物、加工不良の早期発見および早期対策が大きな課題となっている。
【0003】
例えば、電子部品の製造現場では、入念な検査による不良発見、およびその発生原因の解析に注力されている。ウェーハを用いた実際の電子部品製造工程では、プロセス途中にあるウェーハを検査して、回路パターンの欠陥や異物など異常箇所の原因を追及して対策方法が検討される。
【0004】
通常、試料の異常箇所の観察には高分解能の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、以下、SEMと略記)が用いられる。また、近年ではSEMと集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)の複合機FIB-SEM装置も用いられるようになった。このFIB-SEM装置では、FIBを照射して所望の箇所に角穴を形成することにより、その断面をSEM観察することができる。
【0005】
例えば、特開2002−150990号公報には、FIBにより試料の異常箇所近傍に角穴を形成し、当該角穴の断面をSEM装置で観察することにより、欠陥や異物などを観察・解析する装置が開示されている。
【0006】
また、一方、国際公開公報WO99/05506号公報には、FIBおよびプローブを用いて、バルク試料からTEM観察用の微小試料を摘出する技術が開示されている。
【0007】
また、イオンビーム加工装置関連技術として、特開平2−062039号公報には、イオンビームの照射部で局所的に反応性エッチング加工を行う際に、試料の被加工層の材質に対応して反応性ガスを切り替え供給するため、イオン化室に複数のガス種の反応性ガスボンベを、バルブを介して接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−150990号公報
【特許文献2】国際公開公報WO99/05506
【特許文献3】特開平H2−062039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、試料をイオンビームにより加工して断面を形成し、該断面をSEM(あるいはTEM)で観察する技術では、当然のことながら、FIB照射系と、SEM照射系(あるいはTEM照射系)とを併せ持つ。このため、装置構造が複雑になり、その制御も複雑である。結果として装置コストが上昇するという課題を有していた。また、イオンビームと電子ビームの性能についても両者を試料の同一点を照射できるようにすると、各々のレンズが空間的に干渉する。これを解消しようとすると各々の最高性能を実現することが難しいという課題を有していた。
【0010】
また、電子ビームを用いることなくイオンビームを試料に照射しても、試料の観察は可能である。しかし、加工に用いた種類のイオンを用いると、観察中に試料表面が削り取られるため所望の断面の観察が困難になるという課題を有しており、かかる課題を解決するイオンビーム加工・観察技術は、未だ実現していない。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、電子部品の断面を観察するための技術において、同一のイオン源から引き出したイオンビームを用いて、試料を加工し、試料の被加工部分の観察を可能にするイオンビーム加工・観察技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、断面を観察するのに電子ビームを用いることなく、質量数の異なる少なくとも2種類のガスイオンを試料に照射可能な装置として、試料を加工するガスイオンビーム種と試料を観察するときのガスイオンビーム種を切り替えることが可能である装置とする。
【0013】
試料加工時のガスイオンビーム種と試料観察時のガスイオンビーム種との切り替えを実現するためのイオン源として、ガスボンベ、ガス配管、ガス量調整バルブおよびストップバルブとを備えた導入系統を少なくとも2系統備え、各々のガス系統において各々のガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々のガス系統のストップバルブの操作により真空容器内に導入するガスを切り替えることが可能であるイオン源とする。
【0014】
また、特に、高速に加工が可能な装置を提供するために、試料を加工するガスイオンビームを照射するきは、イオンビーム照射カラム内にあるアーパーチャマスクの穴形状を試料状に投射させるイオンビーム加工・観察装置とする。
【0015】
また、特に、断面観察の際に試料が削られる量を少なくする装置を提供するために、イオン源から引き出したガスイオンビームを質量分離する機構を備え、相対的に質量数の小さいイオンを試料に照射する時には相対的に質量数の大きいイオンを試料に到達しないように制御するイオンビーム加工・観察装置とする。
【0016】
また、試料断面の加工・観察方法としては、相対的に質量数の大きなイオンを試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して断面を観察するステップを含む試料断面観察方法とする。
【0017】
以上のように、本発明では、従来のように電子ビームを用いて断面観察するのではなく、断面加工のために照射するイオンビームよりも質量数の小さなイオンビームを用いて観察するのに好適な装置を提供することにより、上記課題を解決する。
【0018】
以下、本発明の特徴的構成例について列挙する。
【0019】
(1)本発明のイオン源は、真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、真空容器内でガスイオンを生成するイオン源において、前記ガス供給機構が、ガスボンベと、ガス量調整バルブと、ストップバルブとを少なくとも備えたガス導入系統を、少なくとも2系統備え、各々の前記ガス導入系統において各々の前記ガス量調整バルブにより前記真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々の前記ガス導入系統の前記ストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替えることを可能にしたことを特徴とする。
【0020】
また、前記構成のイオン源において、前記イオン源が、ガスの放電によりガスイオンを生成するイオン源であり、ガス放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガス放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、前記ガス種の切り替えを、前記ストップバルブと前記放電電圧の切り替え操作で行うことを特徴とする。
【0021】
また、前記構成のイオン源において、前記ガス導入系統の一方は、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のいずれか一つのガス種を供給し、前記ガス導入系統の他方は、水素、ヘリウムのいずれか一つのガス種を供給し得ることを特徴とする。
【0022】
(2)本発明のイオンビーム加工・観察装置は、真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスイオンを生成するイオン源と、試料を格納する試料室と、前記真空容器に接続され、前記イオン源からイオンビームを引き出し、該イオンビームを前記試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、前記ガス供給機構が、ガスボンベと、ガス量調整バルブと、ストップバルブとを備えたガス導入系統を、少なくとも2系統備え、各々のガス導入系統において各々のガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々のガス導入系統のストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替え可能であり、前記試料を加工するガスイオンビーム種と、前記試料を観察するガスイオンビーム種とを切り替え可能に構成したことを特徴とすることを特徴とする。
【0023】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオン源が、ガスの放電を用いてガスイオンを生成するイオン源であり、ガス放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガスの放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、前記ガスイオンビーム種の切り替えを、前記ストップバルブと前記放電電圧の切り替え操作で行うことを特徴とする。
【0024】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を加工するガスイオンビームを照射するときは、前記イオンビーム照射カラム内に設けたマスクの穴形状を試料上に投射させることを特徴とする。
【0025】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を観察するガスイオンビームを照射するときは、前記イオン源から放出されたイオンビームを試料上で点状に集束させることを特徴とする。
【0026】
(3)本発明のイオンビーム加工・観察装置は、質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、前記イオンビーム照射カラムは、前記イオン源から引き出した前記ガスイオンビームを質量分離する質量分離機構を備え、前記質量分離されたガスイオンのうち、相対的に質量数の大きいイオンで試料断面が加工可能で、相対的に質量数の小さいイオンで前記試料断面を観察可能であり、前記相対的に質量数の小さいイオンを前記試料に照射する時には、前記相対的に質量数の大きいイオンを試料に到達しないように制御することを特徴とする。
【0027】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオン源が、同時に2種類以上のガスを導入することが可能であることを特徴とする。
【0028】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオンビーム照射カラム内に前記ガスイオンビームの形状を制限するアパーチャを有するマスクを少なくとも2種類備え、前記相対的に質量数の大きいガスを照射する時の前記アパーチャの板厚みよりも、相対的に質量数の小さいガスを照射する時のアパーチャの板厚みを薄くしたことを特徴とする。
【0029】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記相対的に質量数の大きなイオンとして、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスイオンであり、前記相対的に質量数の小さなイオンとして水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスイオンであることを特徴とする。
【0030】
(4)本発明のイオンビーム加工・観察装置は、真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスの放電によりガスイオンを生成するイオン源と、前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、前記ガス供給機構が、第1のガス種を供給するガス導入系統と、第2のガス種を供給するガス導入系統との、少なくとも2系統を備え、各々のガス導入系統から前記真空容器内に供給されるガス種を、前記ガスイオンビームによる試料の加工時と、観察時とに応じて切り替える手段を有することを特徴とする。
【0031】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記切り替え手段は、前記ガスの放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガス放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、前記放電電圧の切り替え操作をもとに前記ガス種の切り替えを行うことを特徴とする。
【0032】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記第1のガス種として、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスであり、前記第2のガス種として、水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスであることを特徴とする。
【0033】
(5)本発明の試料断面観察方法は、質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源から引き出したガスイオンビームを試料に照射するステップを有する試料断面観察方法において、前記少なくとも2種類以上のガスイオンのうち、相対的に質量数の大きなガスイオンを前記試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して該断面を観察するステップとを含むことを特徴とする。
【0034】
また、前記構成の試料断面観察方法において、前記相対的に質量数の大きなイオンを照射したときの最大電流よりも少ない電流で、前記相対的に質量数の小さなイオンを照射して断面を観察することを特徴とする。
【0035】
また、前記構成の試料断面観察方法において、前記イオン源で少なくとも2種類のガスイオンを同時に生成するステップと、前記少なくとも質量数の異なる2種類のガスイオンを質量分離して、相対的に質量数の大きなガスイオンビームを試料に照射して試料表面にほぼ垂直な断面を加工するステップと、質量分離の条件を変更して相対的に質量数の小さなガスイオンビームを該断面に照射して該断面を観察するステップとを含むことを特徴とする。
【0036】
また、前記構成の試料断面観察方法において、前記相対的に質量数の大きなイオンとして、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスイオンであり、前記相対的に質量数の小さなイオンとして水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスイオンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、半導体メモリやマイクロプロセッサ、半導体レーザなどの半導体デバイス、および磁気ヘッドなど、電子部品の断面を観察するための技術において、同一のイオン源から引き出したイオンビームを用いて、試料を加工し、試料の被加工部分の観察を可能にするイオンビーム加工・観察技術を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1におけるイオンビーム加工・観察装置の加工時の構成を説明する図。
【図2】本発明の実施例1におけるイオン源の構成を説明する図。
【図3】本発明の実施例1におけるイオンビーム加工・観察装置の観察時の構成を説明する図。
【図4】本発明の実施例2におけるイオンビーム加工・観察装置を説明する図。
【図5】本発明の実施例2におけるイオン源の構成を説明する図。
【図6】実施例2でステージ回転を用いて断面を観察する様子を説明する図。
【図7A】実施例2において微小試料を試料から摘出するフロー(a)〜(d)を説明する図。
【図7B】実施例2において微小試料を試料から摘出するフロー(e)〜(h)を説明する図。
【図8】ステンシルマスクの穴形状の例を示す図。
【図9】本発明の実施例3における電界電離型イオン源の構成を説明する図。
【図10】本発明の実施例3における電界電離型イオン源のエミッタ先端部を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
【0040】
(実施例1)
図1に、本実施例のイオンビーム加工・観察装置を示す。本実施例では、プラズマイオン源としてのデュオプラズマトロン1を用いて、2種類のガスイオンを試料に照射可能な装置について説明する。一般に、プラズマイオン源の輝度は、Ga等の液体金属イオン源に比べて少なくとも2桁から3桁低くなる。そこで、本実施例では、イオンビームカラム21内のイオンビーム照射系の途中に、所定形状の開口を持つステンシルマスク5を挿入し、開口の形状を試料上に投影した成型ビームを用いる場合について述べる。ここで、イオン源のイオン種として不活性ガスや酸素、窒素のような元素種を選べば、デバイスの電気的な特性に影響を与えないのでイオンビームで加工後に加工済みのウェーハをプロセスに戻しても不良を発生させるようなことは少ない。
【0041】
イオンビームカラム21の下部には、真空試料室23が配置されており、真空試料室内23には、試料11を載置する第1の試料ステージ13、二次粒子検出器12、デポガス源18などが格納されている。また、本装置には、第1の試料ステージ13上の試料11からイオンビーム加工を用いて摘出した試料片を搬送するためのプローブ15と、プローブ15を駆動するマニュピレータ16、微小試料303を載せる第2の試料ステージ24を備える。なお、イオンビームカラム21内部も真空に維持されているのは言うまでもない。
【0042】
本装置を制御する装置として、デュオプラズマトロン制御装置91、レンズ制御装置94、ステンシルマスク制御装置95、第1の試料ステージ制御装置14、マニピュレータ制御装置17、デポガス源制御装置19、二次電子検出器制御装置27、28、および、計算処理装置98などが配置されている。ここで、計算処理装置98は、二次粒子検出器12の検出信号をもとに生成された画像や、情報入力手段によって入力した情報などを表示するディスプレイを備える。
【0043】
ここで、第1試料ステージ13は、試料載置面内の直交2方向への直線移動機構、試料載置面に垂直方向への直線移動機構、試料載置面内回転機構および、傾斜軸周りに回転することによりイオンビームの試料への照射角度を可変できる傾斜機能を備え、これらの制御は計算処理装置98からの指令によって第1の試料ステージ制御装置14で行われる。また、第2試料ステージ24は、第1の試料ステー13上に配置されているため、第1の試料載置面内の直交2方向への直線移動、試料載置面に垂直方向への直線移動、および試料載置面内回転、および、傾斜軸周りに回転することによる傾斜は、第1の試料ステージ13を移動・回転・傾斜させることによって可能になる。
【0044】
図2に、本発明による、ガス供給機構を備えたイオン源の詳細を示す。ガス供給機構は、ボンベバルブ51、52をもつガスボンベ53、54、減圧弁55、56、ストップバルブ57、58、および微量なガス流量を調整可能であるニードルバルブ59、60からなる系統を2系統を備える。一方の系統における第一のガスボンベ53には、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のいずれかが高圧力で充填されている。また、他方の第二のガスボンベ54には、ヘリウムまたは水素が高圧力で充填されている。デュオプラズマトロンはカソード71、中間電極72、アノード73、磁石74などによって構成される。本実施例では、第一のガスボンベにはキセノン、第二のガスボンベには水素が充填される例について述べる。
【0045】
次に、イオン源の動作について述べる。キセノンボンベのボンベバルブ51を開け、次に減圧弁55によりガス配管内の圧力を調整する。次に、イオン源へガス供給に開閉を行うためのストップバルブ57を開ける。最後にニードルバルブ59によりイオン源内へのガス流量を調整する。イオン源の真空度が数Paになるように調整して、カソード71とアノード73間に約1kVの電圧を印加するとガス放電が生じる。この放電プラズマよりアノード孔を通してキセノンイオンを引き出す。すなわち、イオン源に20kVの高電圧を印加して、接地電位の引き出し電極76方向にイオンビーム75を引き出すのである。なお、図2中の点線85内は、イオン源電圧の20kV電圧が印加されている。ここで、キセノンイオンビームの量が最高になるようにガス流量をニードルバルブ59で調整し、さらに放電電圧についても調整する。そして、ニードルバルブ調整ノブ61は固定し、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0046】
次に、ストップバルブを閉止し、放電電圧を印加解除してキセノンの放電を止める、そして、バイパスバルブ81を開けてイオン源中のキセノンを真空ポンプ82により排気する。なお、イオン源カラムも真空ポンプ83により排気されている。
【0047】
次に、水素ガスについても同様に、水素ボンベバルブ52を開け、減圧弁56によりガス配管内の圧力を調整し、ストップバルブ58を開ける。最後にニードルバルブ60によりイオン源内へのガス流量を調整して、ガス放電が生じるようにする。水素についても、キセノンと同様に水素イオンビームの量が最高になるようにガス流量をニードルバルブ60で調整し、さらに放電電圧についても調整する。ここでもニードルバルブ調整ノブ62は固定し、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0048】
次に、キセノンビームに切り替えるためには、同様にストップバルブ58を閉止し、放電電圧を印加解除して水素の放電を止め、バイパスバルブ81を開けてイオン源中の水素を排気する。そして、キセノンイオンを生成するためにキセノンのストップバルブ57を開けて、記憶されている放電電圧に切り替える。このようにガス種の切り替えは、ストップバルブと放電電圧の切り替え操作で行い、各々のニードルバルブは固定しておく。
【0049】
ここで、一般に、イオン源内のガス量は、イオンビームの量を最大にする条件がキセノンと水素では異なる。また、微量なガス流量を調整するニードルバルブは再現性が良くない。このため、ニードルバルブが一つでガス種を切り替える場合には、切り替えるたびにニードルバルブの調整が必要であり、ガス種の切り替えを迅速にすることが困難となる。本実施例では、独立したガス供給系統を2種類に設けて、それぞれを予め最適条件に調整しておくことにより迅速なガス種切り替えを実現する。
【0050】
また、これらのガス種切り替えは、計算処理装置98によって集中的に操作可能である。ずなわち、計算処理装置98のディスプレイ上にはガス種、ガス種切り替えスイッチ、ボタンなどが表示される。そして、ディスプレイ上のガス種を選択するかあるいは切り替えスイッチを選択すると、自動的にガス種切り替えの操作が行われる。
【0051】
次に、イオンビーム照射系の動作について述べる。イオンビーム照射系の動作は、計算処理装置98からの指令により制御される。まず、イオン源のデュオプラズマトロン1から引き出した、キセノンイオンビームをコンデンサレンズ2により対物レンズ3の中心近傍に集束させる。すなわち、コンデンサレンズ2の電極に印加する電圧を、この条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置で設定する。そして、キセノンイオンビームは矩形の穴を有するステンシルマスク5を通過する。対物レンズ3は、ステンシルマスク5を試料の上に投影する条件で制御する。ここでも対物レンズ3の電極に印加する電圧を、上記条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置98で設定する。このようにすると、試料上には矩形の成型イオンビームが照射される。また、ここでは成型ビームを用いるため、約100nAの大電流ビームが試料に照射できる。この成型イオンビームを照射し続けると試料に矩形の穴が形成される。ここで、観察するための深さ領域のよりも十分な深さで、かつ試料表面に垂直に近づくように矩形穴形状を仕上げる。
【0052】
次に、試料ステージ制御装置により第1の試料ステージ13を、図3のように傾斜させて、イオンビーム照射系から、イオンビームで形成した試料断面が観察できるようにする。また、イオン源の動作を上述したような手順でキセノンから水素に切り替える。また、イオンビームのコンデンサレンズ2と対物レンズ3の電圧条件を変えて、イオン源のアノード穴を光源として、これをコンデンサレンズと対物レンズで試料上に縮小投影する。これにより、アノード穴径に対して数100分の1の微小な点状ビームを試料上で得ることができる。この場合には、電流は数pA程度に少ないがビーム径は数10nmと小さくできる。この微細なイオンビームを試料断面上で走査させることにより、詳細な観察像を得ることができる。すなわち、加工のときに用いた成型イオンビーム電流に比べて、観察のときには少ない集束イオンビーム電流を用いることにより高分解能観察を実現する。
【0053】
ここで、加工に用いたキセノンイオンビームを観察に用いると、試料面が削り取られ詳細な観察が困難になるが、本実施例では水素イオンビームを用いることにより削り取れる割合が少なくなるため詳細な観察が可能になる。
【0054】
なお、水素イオンビームによる観察機能は、試料の断面を観察することのみならず、試料表面の構造、異物、および欠陥を観察することなどにも用いることができる。
【0055】
また、本実施例では、イオン源を試料上に縮小投影して点状の水素イオンビームを形成して、これを試料上で走査することにより試料画像を取得したが、ステンシルマスクにマスク穴を小さく制限する機構を設け、その穴を投射した成型ビームで試料上を走査して試料画像を取得しても良い。この場合には、加工と観察でレンズ電圧を変更しなくても良く、ビーム照射軸ずれが生じる懸念も無く、装置制御が安定するという効果を奏する。
【0056】
なお、マスク穴を小さく制限する機構としては、予め径の小さな穴を持つステンシルマスク構造としたり、ステンシルマスクに別の微細アパーチャを重ねる構造としたりしても良い。なお、ステンシルマスクがイオンビームで照射されるとスパッタにより穴が拡大したり、マスク板厚が薄くなって、ついには穴形状が変形したりする。このため、ステンシルマスク板厚みは厚い方が好ましい。しかし、厚い板に微細な穴を開けるのは一般に困難である。このため、加工の際にキセノンなどの相対的に質量数の大きいイオンを照射する場合には、相対的に板厚の厚いマスクを用い、一方、キセノンに比べてスパッタ率の小さい水素に対しては板厚みの薄いアパーチャを用いる。これにより、アパーチャに、より微細な穴を形成することが可能になり、微細なビームが得られ、高分解能で観察できるという効果を奏する。
【0057】
また、本実施例では、イオン源としてデュオプラズマトロンを用いたが、マイクロ波を用いたプラズマイオン源、誘導結合プラズマイオン源、マルチカスプ型のイオン源、電界電離型イオン源等を用いても同様な効果が得られる。
【0058】
また、二次電子検出器については、二次電子のみならず反射電子や二次イオンを含んで良い。また、二次電子検出器制御装置は2系統27、28が備えられている。一方の二次電子検出器制御装置27では、検出器の信号を直流増幅する。他方の二次電子検出器制御装置28では、検出器の信号のパルスを計数して信号強度を測定する。後者の場合では、検出粒子の個数を直接計数するため検出器のノイズを除去できるため検出感度が高い。従来は、試料に照射するイオンビームや電子ビームが充分に多くパルスを計数する必要は無かった。しかし、特に微細な水素イオンビームを照射する場合にはイオン電流が少ないため、パルスを計数して信号強度を測定する検出器制御装置28が有効になる。これにより、従来よりも高分解能の観察が可能になる。しかし、パルスを計数する場合には計数できる個数が1秒間に100万個程度に制限され、ピコアンペアレベル以上の大電流では計数できない。したがって照射するイオンの電流の大きさにしたがって2つの制御装置を切り替える。これは試料に照射される荷電粒子の電流を監視して計算処理装置98で自動的に切り替えることも可能である。
【0059】
なお、イオンビームによる加工、マニュピレータ16先端のプローブ15およびイオンビームアシストデポジション膜をもちいて、試料11から微小試料303を摘出して第2のステージ24に設置することができる。微小試料は薄膜加工により透過電子顕微鏡用の試料にできる。この手順については、後述の実施例2で説明する。
【0060】
以上、本実施例で説明したイオンビーム加工・観察装置および加工観察方法によれば、キセノン成型イオンビームによる試料断面の加工、および水素微細イオンビームによる断面観察が可能になった。すなわち半導体回路パターンの欠陥や異物など異常箇所の断面を形成すれば、欠陥や異物などの断面を観察することができ、その発生原因を解析できることになる。
【0061】
特に、本実施例では、成型イオンビームを用いることにより、より大きな電流で精度の高い加工ができる。特に輝度の低いイオン源であってもビーム電流を大きくでき、かつ加工精度が高くできるため断面加工が短時間で可能という効果を奏することができる。これは半導体装置の製造プロセスにおいては、不良発生原因となる可能性が高いGaに替わって、試料の特性に顕著な影響を及ぼさない不活性ガスや酸素、窒素などの気体元素のイオンビームを用いることができることを意味する。したがって、半導体デバイス等の歩留向上のために、ウェーハをGaなどの金属で汚染することなく、イオンビームによる断面形成が可能となり、さらにウェーハを割断することなく断面観察ができるため、ウェーハを評価のために無駄に廃棄せず、かつ検査のための試料を取り出したウェーハをプロセスに戻しても不良を発生させない新たな検査・解析方法が提供される。また、ウェーハを割断することなく評価でき、新たな不良を発生させず、高価なウェーハを無駄にすることはない。ひいては、半導体装置の製造歩留りが向上する
(実施例2)
実施例1で示した構成のイオンビーム加工・観察装置では、イオンビーム照射系が鉛直方向にイオンビーム照射系が配置されているが、本実施例では、イオンビーム照射系は鉛直方向から傾斜した方向に配置され、ステージ面が水平方向に固定された装置について述べる。
【0062】
また、本実施例では、イオンビームの行路途中に質量分離器を設けて、相対的に質量数の小さいイオンを照射する際に、質量数の大きなイオンを除去するイオンビーム加工・観察装置について説明する。
【0063】
また、本実施例では、試料から微小試料を摘出して透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)試料を作製する手段についても説明する。
【0064】
なお、本実施例でも、マスク開口の形状を試料上に投影した成型イオンビームを用いる。
【0065】
図4に、本実施例のイオンビーム加工・観察装置を示す。本イオンビーム加工・観察装置は、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、酸素、窒素、ヘリウム、水素等のガスイオンを放出するイオン源のデュオプラズマトロン1、質量分析器300、イオン源アパーチャ26、コンデンサレンズ2、対物レンズ3、イオンビーム走査偏向器4、ステンシルマスク5、及びこれらを格納するイオンビームカラム21用の鏡筒などから構成されるイオンビーム照射系が配置されている。本実施例の質量分析器300は、イオンビームに対して電場と磁場を各々垂直方向に、かつ、電場方向と磁場方向が垂直関係にある所謂ExB質量分離器である。本実施例では永久磁石を用いたが、代わりに電磁石を用いても良い。また、磁場のみの質量分離でも良い。
【0066】
また、本装置には、電子銃7、電子銃7から放出する電子ビーム8を集束する電子レンズ9、電子ビーム走査偏向器10及びそれらを格納する電子ビームカラム(SEMカラム)22等で構成される電子ビーム照射系を備えている。イオンビームカラム21及びSEMカラム22の下部には真空試料室23が配置されており、真空試料室内23には、試料11を載置する第1の試料ステージ13、二次粒子検出器12、デポガス源18などが格納されている。また、本装置には、第1試料ステージ上の試料からイオンビーム加工を用いて摘出した試料片を搬送するためのプローブ15と、プローブ15を駆動するマニュピレータ16、微小試料303を載せる第2の試料ステージ24を備える。なお、イオンビームカラム21内部も真空に維持されているのは言うまでもない。ここで、本装置では、イオンビームの試料照射点および電子ビーム試料照射点は各々試料載置面の中心からは外れた位置にあり、各々別の位置に存在する。すなわち、イオンビーム照射軸301と電子ビーム照射軸302とは交わることは無い。
【0067】
本装置を制御する装置として、デュオプラズマトロン制御装置91、質量分離器制御装置62、イオン源アパーチャ制御装置93、レンズ制御装置94、ステンシルマスク制御装置95、イオンビーム走査偏向器制御装置96、第1の試料ステージ制御装置14、第2の試料ステージ制御装置25、マニピュレータ制御装置17、デポガス源制御装置18、二次電子検出器制御装置27、28、電子ビーム照射系制御装置97、および計算処理装置98などが配置されている。ここで、計算処理装置98は、二次粒子検出器の検出信号を基に生成された画像や、情報入力手段によって入力した情報などを表示するディスプレイを備える。なお、図中の30は、試料高さ測定器29を制御する試料高さ測定器制御装置30を示す。
【0068】
本実施例では、図5で示すようなガス供給系を持つイオン源について説明する。本ガス供給機構は、ボンベバルブ51、52をもつ2種類のガスボンベ53、54、各々のボンベの減圧弁55、56、各々のガス系統のストップバルブ57、58、および微量なガス流量を調整可能であるニードルバルブ59からなる。第一のガスボンベ53には、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のいずれかが高圧力で充填されている。また、他方の第二のガスボンベ54には、ヘリウムまたは水素が高圧力で充填されている。本実施例では、第一のガスボンベにはアルゴン、第二のガスボンベにはヘリウムが充填される例について述べる。
【0069】
次に、イオン源の動作について述べる。アルゴンボンベ53のボンベバルブ51を開け、次に減圧弁55によりガス配管内の圧力を調整する。次にイオン源へガス供給に開閉を行うためのストップバルブ57を開ける。最後にニードルバルブ59によりイオン源内へのガス流量を調整する。イオン源の真空度が数Paになるように調整して、カソード71とアノード73の間に約1kVの電圧を印加するとガス放電が生じる。この放電プラズマよりアノード孔を通してアルゴンイオンを引き出す。なお、図2中の点線85内は、イオン源電圧の20kV電圧が印加されている。ここで、イオンビーム75の量が最高になるようにガス流量をニードルバルブ59で調整し、さらに放電電圧についても調整する。ここでニードルバルブ調整ノブ61は固定し、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0070】
次に、ストップバルブ57を閉止し、放電電圧を印加解除してアルゴンの放電を止める、そしてバイパスバルブ81を開けてイオン源中のアルゴンを排気する。なお、イオン源カラムも真空ポンプ83により排気されている。
【0071】
次に、ヘリウムガスについても同様に、ヘリウムボンベバルブ52を開け、減圧弁56によりガス配管内の圧力を調整し、ストップバルブ58を開ける。最後にニードルバルブ59については固定したままとする。イオン源内へのガス流量については減圧弁56の2次圧力により調整して、ガス放電が生じるようにする。ヘリウムについてもヘリウムイオンビームの量が最高になるようにガス流量を調整し、さらに放電電圧についても調整して、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0072】
次に、アルゴンビームに切り替えるためには同様にストップバルブ58を閉止し、放電電圧を印加解除してヘリウムの放電を止め、バイパスバルブを開けてイオン源中のヘリウムを排気する。そして、アルゴンイオンを生成するためにアルゴンのストップバルブを開けて、記憶されている放電電圧に切り替える。このように、ガス種の切り替えはストップバルブと放電電圧の切り替操作で行い、ニードルバルブ59は固定しておく。
【0073】
ここで、一般にイオン源内のガス量はイオンビームの量を最大にする条件は、アルゴンとヘリウムでは異なる。本実施例では、このためニードルバルブが一つでガス種を切り替えるため、実施例1の2系統のガス供給機構を持つ場合に比べて、ガス量の調整精度は良くないが、ニードルバルブがひとつであり、構造が簡単になるという効果を奏する。
【0074】
次に、イオンビーム照射系の動作について述べる。まず、デュオプラズマトロン1からアルゴンイオンビームを引き出す。質量分離器300を動作させて、アルゴンイオンビームが通過するようにする。なお、質量分離器の機能は、計算処理装置からの指令により、質量分離器制御装置が動作して実行される。そして、質量分析器300を通過したアルゴンイオンビームをコンデンサレンズ2により対物レンズ3の中心近傍に集束させる。すなわち、コンデンサレンズ2の電極に印加する電圧を、この条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置98で設定する。そして、イオンビームは矩形の穴を有するステンシルマスク5を通過する。対物レンズ3はステンシルマスク5を試料の上に投影する条件で制御する。ここでも対物レンズ3の電極に印加する電圧を、上記条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置98で設定する。このようにすると、試料上には矩形の成型イオンビームが照射される。成型ビームを用いるため、約100nAの大電流ビームが試料に照射できる。この成型イオンビームを照射し続けると試料に矩形の穴が形成される。ここで、観察するための深さ領域のよりも十分な深さで、かつ試料表面に垂直に近づくように矩形穴形状を仕上げる。
【0075】
次に、試料ステージ制御装置により第1のステージ13を、図6のように90度回転させて、イオンビーム照射系から、イオンビームで形成した試料断面が観察できるようにする。図6には、イオンビームによる加工時と観察時の、それぞれの側面図と上面図を示す。試料11に対して傾斜方向からアルゴンイオンビーム201を照射して矩形穴202を形成した様子を、図6の左図に示す。次に90度回転した様子を、図6の右図に示す。
【0076】
イオン源の動作を上述したような手順でアルゴンからヘリウムに切り替え、質量分析器300を動作させて、ヘリウムイオンビームが通過するようにする。また、イオンビームのコンデンサレンズと対物レンズの電圧条件を変えて、イオン源のアノード穴を光源として、これをコンデンサレンズと対物レンズで試料上に縮小投影する。これにより、アノード穴径に対して数100分の1の微小な点状のビームを試料上で得ることができる。この場合には、電流は数pA程度に少ないがビーム径は数10nmと小さくできる。この微細なヘリウムイオンビーム203を、図6の右図のように試料垂直断面に照射して走査させることにより詳細な断面観察像を得ることができる。すなわち、加工のときに用いた成型イオンビーム電流に比べて、観察のときには少ない集束イオンビーム電流を用いることにより高分解能観察を実現する。
【0077】
ここで、質量分析器を用いない場合には、イオン源の残留アルゴンがイオン化して試料に照射される場合がある。このアルゴンイオンにより、試料面が削り取られ詳細な観察が困難になる場合があるが、本実施例では、質量分析器によりヘリウムイオンのみを観察に用いることにより削り取れる割合が少なくなるため詳細な観察が可能になる。
【0078】
なお、ヘリウムイオンビームによる観察機能は、試料の断面を観察することのみならず、試料表面の構造、異物、および欠陥を観察することなどにも用いることができる。
【0079】
また、本実施例の装置でも、図2に示したような2系統のガス供給機構のイオン源を使っても有効であることは言うまでもない。また、イオン源に同時にアルゴンおよびヘリウムのガスを混合して導入するか、予め準備したアルゴンとヘリウムの混合ガスを導入して、同時にアルゴンとヘリウムのイオンを生成させても良い。この場合にも、ヘリウムイオンビームを照射している時には、アルゴンイオンビームが試料に照射されないという効果を生じる。この場合には必ずしも各々のイオン種に対してイオン電流を最大にするのは簡単ではないが、特に、イオン種の切り替えが質量分析器のみで行えるという効果を奏することができる。
【0080】
次に、電子ビーム照射系の動作について説明する。電子銃7から放出される電子ビーム8を電子レンズ9により集束して試料11に照射する。このとき電子ビーム8を電子ビーム走査偏向器10により走査しながら試料表面に照射し、試料表面から放出される二次電子を二次粒子検出器12で検出して、その強度を画像の輝度に変換すれば試料を観察することができる。この電子ビームによる試料観察機能によれば試料上に形成された回路パターンの欠陥や異物など異常箇所を観察することが可能である。特に、本装置では、試料に対して垂直方向から電子ビームを照射する構造であるため穴径に対する深さの比の大きい穴の中に関する異常についても情報を得るのに好適である。
【0081】
本装置では、電子ビームによる観察機能は、試料の欠陥や異物の断面を観察することや、電子顕微鏡用薄膜試料の断面を観察して、加工終点を把握することなどにも用いる。すなわち、本装置では、試料断面をイオンビームのみならず電子ビームでも観察可能である。一般に、イオンビームによる観察像は元素コントラストが高いという特長があり、一方、電子ビームによる像観察は空間分解能が高いという特長があり、本装置では両者の特長を併せ持つ観察が可能になるという効果を奏することができる。
【0082】
また、本装置では、イオンビームの試料照射点および電子ビーム試料照射点は各々試料載置面の中心からは外れた位置にあり、各々別の位置に存在する。このため各々の対物レンズが空間的に干渉することが無く試料近傍に配置することができるため、各々の対物レンズの仕事距離を短くできる。すなわちイオンビームおよび電子ビームの微細化あるいは大電流性能に優れると言う特徴を有する。
【0083】
次に、成型イオンビームを用いて第1のステージ上の試料から微小試料を摘出する手順について、図7A、図7Bで説明する。図7A、図7Bの左図が試料上方から見た上面図、図7A、図7Bの右図が試料側方から見た側面図である。本装置ではミクロンメートルサイズの成型イオンビームを用いるため、加工位置のマーキングをイオンビームで行うことは必ずしも適切で無い。そこで本装置ではナノメートルサイズの電子ビームを用いて行う。
【0084】
まず、微小試料を摘出する領域が電子ビーム照射可能になるように第1の試料ステージ13を移動する。図7Aの(a)において、デポガス源18からデポジションガスを供給しながら電子ビーム8を照射して、試料11面上にデポジション膜を形成することにより観察断面を指示する両端マーク130を2個作製する。すなわち、計算処理装置のディスプレイの画面で、試料の画像を観察しながら観察位置をマークで特定するのである。このようにミクロンメートルサイズ成型イオンビームによる加工装置でありながら電子ビームとの連携によりナノメートルオーダのマーキングが可能になった。
【0085】
次に、マーク近傍にアルゴンの第1の成型イオンビーム131が照射可能なように第1の試料ステージ13を移動する。ここで、ステンシルマスクを、図8の(a)に示す形状の穴に切り替える。この時には電流が約200nA得られる。そこで、図7Aの(b)に示すように、2個のマークをその内側に含むようにアルゴンの第1の成型イオンビーム131を照射し、深さ約15μmの第1の成型穴132(成型穴A)を設ける。
【0086】
次に、イオンビームをアルゴンからヘリウムに切り替え、ステンシルマスクを、図8の(b)に示す円形の穴に切り替える。この時には、このビームの断面はほぼ円形になる。ただし、試料上ではイオンビームが試料に対して傾斜しているため楕円形となるが、これを走査すれば試料を観察することが可能である。なお、切り替え動作は、装置ユーザが、情報入力手段を介して切り替え命令を入力するか、或いは、計算制御装置がマスク制御機構へ切替えの制御信号を送信することにより実行される。
【0087】
次に、図7Aの(c)に示すように、試料表面に対する垂直軸を回転軸として、試料ステージ制御装置により試料を約180度回転させる。ここで、楕円形のヘリウムイオンビームの照射によって試料から発生する二次電子によって形成する二次電子像を画像処理することによって、最初に形成した穴を認識する。図7Aの(d)において、ヘリウムイオンビーム133を照射して得られる二次電子像を観察しながら、プローブ制御装置によりプローブ15の位置を移動して、摘出すべき試料の端部に移送手段先端のプローブを接触させる。
【0088】
ここで、アルゴンイオンビームの替わりにヘリウムイオンビームを用いているために、プローブがイオンビーム照射によって損傷される度合いが低いという効果を奏する。そして摘出すべき試料にプローブを固定するために、プローブ先端を含む領域に、デポジション用ガスを流出させつつイオンビームを走査させる。このようにしてイオンビーム照射領域にデポ膜134が形成され、プローブと摘出すべき試料とは接続される。
【0089】
次に、イオンビームをヘリウムからアルゴンに切り替えて、ステンシルマスクを、図8の(c)に示す形状の成型ビーム135の試料照射位置も円形のビームによって設定できるように予め調整しておく。図7B(e)において、楕円形のビームの照射によって得られた試料形状情報によりイオンビーム制御装置によってイオンビーム照射位置を制御し、第1の成型ビームと合せて2個のマークをその内側に含むように第2の成型イオンビーム135を照射し、深さ約15μmの第2の成型穴136(成型穴B)を設ける。この成型穴Bは先に第1の成型イオンビームによって形成した成型穴Aと交わる。図7Aの(a)から図7Bの(e)の工程によってマークを含み、三角形断面のクサビ型微小試料137がプローブに保持されている状態になる。
【0090】
次に、イオンビームをアルゴンからヘリウムに切り替えて、ステンシルマスクを、図8の(b)に示す円形の穴に切り替える。図7Bの(f)に示すように、イオンビームを照射して得られる二次電子像を観察しながら、プローブ制御装置によりプローブ位置を移動してプローブの先端に接続されて摘出した微小試料137を第2のステージ上の試料ホルダ140に移動させる。図7Bの(g)において、デポジションガスを導入しつつ微小試料137と試料ホルダ140との接触部にヘリウムイオンビームを照射する。ここで、イオンビーム照射領域にデポ膜138が形成され、微小試料137は試料ホルダ140に接続できる。
【0091】
次に、図7Bの(h)に示すように、イオンビームをヘリウムからアルゴンに切り替えて、プローブと微小試料を接続しているデポ膜にアルゴンイオンビームを照射してスパッタ除去することで、プローブ15を微小試料137から分離する。
【0092】
本実施例のイオンビーム装置の特徴は、イオンビームカラムが試料に対して傾斜して配置した構造にある。この構造の場合、イオンビームで微小試料を摘出する場合に、試料ステージを傾斜することなく、ステージを回転させることによって実現できるというという効果を奏することができる。
【0093】
なお、本装置は、第1試料ステージ13上の試料11からイオンビーム加工を用いて摘出した微小試料137を搬送するためのプローブ15と、微小試料を載せる第2の試料ステージ24を備え、前記第2の試料ステージが傾斜軸周りに回転することによりイオンビームの微小試料への照射角度を可変できる傾斜機能を持つ。
【0094】
また、第2のステージの傾斜機能を使い断面をヘリウムイオンビームに垂直方向に向ければ、断面を垂直方向から詳細に観察することが可能になる。すなわち、本装置ではアルゴンイオンビームによる断面切削加工とヘリウムイオンビームによる観察、これを繰り返せば試料中の3次元情報を得ることができ、2次元の複数の観察像を用いて3次元像を構築することも可能である。
【0095】
次に、電子顕微鏡用試料作製では、粗加工、中加工、仕上げ加工の順にビーム電流が小さくなるように準備した3種類のステンシルマスク穴を順次切り替えながら試料厚みが薄くなるように加工を行う。最終的には観察領域を厚さが100nm以下程度のウォールになるように薄く仕上げ加工を施して電子顕微鏡試料とする。上述の加工の結果、TEM観察領域ができあがる。なお、以上では操作者が計算処理装置の入力装置を使って装置を制御している例を説明したが、計算処理装置にメモリなどの記憶手段を設けて、全ての工程の制御条件を制御シーケンスとして格納しておくことにより、全自動でサンプリングを行うことも可能である。
【0096】
以上のように薄膜加工を施した後、微小試料はTEMの試料室に導入される。TEM観察では欠陥や異物などの断面を、SEM観察に比べてより高分解能な観察することができ、観察結果から欠陥原因をより詳細に解析することができる。
【0097】
なお、本実施例では、加工のときにアルゴンイオンビームを用いたが、他に窒素、酸素、ネオン、キセノン、クリプトンなどでも同様な効果が得られるのは明らかであるが、特にアルゴンビームの場合には質量数40の同位体の割合が99.6%と高いため、質量分離しても電流の減少が少ないと言う効果を奏する。また、観察の時にはヘリウムイオンビームを用いたが、他に水素でも同様な効果が得られるのは明らかであるが、特にヘリウムビームの場合には分子イオンが少なく、ヘリウム質量数4のイオンの割合が高いため質量分離しても電流の減少が少ないと言う効果を奏する。
【0098】
また、本実施例では、デュオプラズマイオン源を用いた場合について説明したが、マイクロ波を用いたプラズマイオン源、誘導結合プラズマイオン源、マルチカスプ型のイオン源、電界電離型イオン源等を用いても同様な効果が得られる。
【0099】
また、本装置では、試料を透過した水素イオンを検出する透過イオン検出器1201を備えており、いわゆる走査透過イオン顕微鏡像を得ることができ。高空間分解能の試料観察が可能になるという効果を奏する。
【0100】
以上、本実施例で説明したイオンビーム加工・観察装置、加工・観察方法および微小試料作製方法によれば、実施例1に説明した効果に加え、ヘリウムイオンビーム照射時に相対的に質量数の大きいイオンの照射を避けられるという効果を得ることができ、また、ヘリウムイオンビームに切り替え時にアルゴンイオンの排気および置換に要する時間を短縮できるためイオンビーム切り替えに要する時間を短縮することが可能になる。また、イオン源で発生した金属イオン等の不純物イオンが質量分離器で取り除かれ試料まで到達することが無く、試料を不純物で汚染することがないため、デバイス製造の歩留まりを低下させないという効果を奏することができる。
【0101】
(実施例3)
図9に、イオン源として電界電離型イオン源を用いた例について示す。なお、本実施例では、ガス供給機構は、実施例1で説明したものと同様な構成を有するので、その動作についての説明は省略する。
【0102】
本イオン源では、タングステン製イオンエミッタティップ402の先端を鋭利に加工する。さらに、イオンエミッタティップ402を冷凍機401により数10K程度に冷却する。また、ガスも冷却して、イオンエミッタティップ402に強電界を印加するとエミッタティップ先端近傍からイオンビームを引き出すことができる。
【0103】
このとき、ヘリウムイオンや水素イオンを引き出す場合には、図10に示すように、イオンエミッタティップ先端403に原子のナノピラミッド構造404を形成する。このようにすると1個ないし3個の原子近傍でのみイオンが生成されるため、非常に輝度の高いイオン源が実現する。すなわち試料上で1nm以下のビーム径のイオンビーム405を得ることができ、非常に高空間分解の観察が可能になる。
【0104】
しかし、イオンの質量が小さく、かつイオンビーム電流が少なく加工には不向きである。そこで加工では、イオン源に供給するガスをヘリウムからアルゴンに切り替え、さらにイオンエミッタティップ先端のナノピラミッド構造を電解蒸発により除去する。このようにするとイオンエミッタティップ先端近傍の比較的広い領域からイオンが生成するため、ナノアンペアオーダのアルゴンイオンビーム406が得られ加工が可能になる。次に、微細なヘリウムイオンビームを引き出すためには、再び原子のナノピラミッド構造を形成すれば良い。ナノピラミッド構造の形成方法としては、タングステンの上にパラジウムあるいは白金などを蒸着して高温アニールするなどの方法がある。
【0105】
以上、本実施例で説明したイオンビーム加工・観察装置、加工・観察方法および微小試料作製方法によれば、実施例1で説明した効果に加え、極微細なヘリウムまたは水素イオンビームを得ることができ、さらに加工時には大電流のアルゴン、キセノンなどのイオンビームを得ることができるため、特に極微細な加工や超高分解能観察が可能になるという効果を奏することができる。
【0106】
以上、詳述したように、本発明によれば、電子部品の断面を観察するための装置で従来に比べ低コストで製造可能な装置が提供される。また、従来に比べ低コストで実現できる試料断面観察方法が提供される。また、イオンビームによる断面形成加工時間を短縮するイオンビーム加工・観察装置が提供される。
【0107】
さらに、イオンビームに不活性ガスや酸素、窒素イオンを用いてウェーハを評価のために無駄に廃棄せず、かつ検査のための試料を取り出したウェーハをプロセスに戻しても不良を発生させない新たな検査・解析方法が提供される。また、本発明による電子部品製造方法を用いることで、ウェーハを割断することなく評価でき、新たな不良を発生させず、高価なウェーハを無駄にすることはない。ひいては、電子部品の製造歩留りが向上する。
【0108】
なお、本発明によるイオンビーム加工・観察装置および試料断面観察方法には、以下に示す構成例が含まれる。
【0109】
(1)試料を保持する試料ステージと、少なくとも2種類以上のガス種のイオンビームを発生させるイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を持ち、 前記イオンビーム照射系がイオンビームを所望の形状の開口を有するマスクを通して試料に照射する投射イオンビーム照射系であり、少なくとも2つ以上のイオンビームレンズと開口が可変なマスク駆動機構あるいはアパーチャ駆動機構を備えたことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【0110】
(2)試料を保持する試料ステージと、少なくとも2種類以上のガス種のイオンビームを発生させる電解電離イオン源と、試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を持ち、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかのイオンビームを用いて加工が可能で、へリウム、水素のいずれかのイオンで観察が可能なイオンビーム加工・観察装置。
【0111】
(3)試料を保持する第1の試料ステージと、少なくとも2種類以上のガス種のイオンビームを発生させるイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を持ち、試料からの第1のガス種イオンビーム加工を用いて摘出した微小試料を搬送するためのプローブと、試料片を載せる第2の試料ステージを備え、第2のガス種のイオンビームによりプローブおよび微小試料が観察可能なイオンビーム加工・観察装置。
【0112】
(4)ほぼ水平に試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備えたイオンビーム加工観察装置を用いた試料断面観察方法において、相対的に質量数の大きなイオンを試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、試料ステージを水平軸中心で傾斜するステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して断面を観察するステップを含む試料断面観察方法。
【0113】
(5)ほぼ水平に試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備え、該イオンビーム照射系が鉛直軸に対して傾斜したイオンビーム加工観察装置を用いた試料断面観察方法において、相対的に質量数の大きなイオンを試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、試料ステージを鉛直軸中心で回転させるステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して断面を観察するステップを含む試料断面観察方法。
【0114】
(6)試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能な電界電離型イオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備えたイオンビーム加工観察装置を用いた試料観察方法において、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかのイオンビームを用いて加工するステップと、へリウム、水素のいずれかのイオンで観察するステップを含むイオンビーム加工・観察方法。
【0115】
(7)試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能な電界電離型イオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備えたイオンビーム加工観察装置を用いた試料観察方法において、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかのイオンビームを用いて加工するステップと、イオンエミッタ先端に原子のナノピラミッド構造を作製するステップと、へリウム、水素のいずれかのイオンで観察するステップと、原子のナノピラミッド構造を除去するステップを含むイオンビーム加工・観察方法。
【符号の説明】
【0116】
1…デュオプラズマトロン、2…コンデンサレンズ、3…対物レンズ、4…イオンビーム走査偏向器、5…ステンシルマスク、6…イオンビーム、7…電子銃、8…電子ビーム、9…電子レンズ、10…電子ビーム走査偏向器、11…試料、12…二次粒子検出器、13…第1の試料ステージ、14…第1の試料ステージ制御装置、15…プローブ、16…マニピュレータ、17…マニピュレータ制御装置、18…デポガス源、19…デポガス源制御装置、20…イオンビーム偏向器、21…イオンビームカラム、22…電子ビームカラム、23…真空試料室、24…第2の試料ステージ、25…第2の試料ステージ制御装置、26…イオン源アパーチャ、27、28…二次粒子検出器制御装置、29…試料高さ測定器、30…試料高さ測定器制御装置、51、52…ボンベバルブ、53、54…ガスボンベ、55、56…減圧弁、57、58…ストップバルブ、59、60…ニードルバルブ、71…カソード、72…中間電極、73…アノード、74…磁石、75…イオンビーム、76…引き出し電極、91…デュオプラズマトロン制御装置、92…レンズ制御装置、93…イオンビーム走査偏向制御装置、95…計算処理装置、130…マーク、131…第1の成型イオンビーム、132…第1の成型穴、133…イオンビーム、134…デポ膜、135…第2の成型イオンビーム、136…第2の成型穴、137…微小試料、138…デポ膜、140…試料ホルダ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体メモリやマイクロプロセッサ、半導体レーザなどの半導体デバイス、および磁気ヘッドなどの、電子部品の検査・解析技術に係り、特に、試料断面のイオンビームによる加工・観察技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)に代表される半導体メモリやマイクロプロセッサ、半導体レーザなど半導体デバイス、および磁気ヘッドなど電子部品の製造においては、高歩留まり製造が求められる。これは不良発生による製品歩留りの低下は、採算の悪化を招くからである。このため、不良の原因となる欠陥や異物、加工不良の早期発見および早期対策が大きな課題となっている。
【0003】
例えば、電子部品の製造現場では、入念な検査による不良発見、およびその発生原因の解析に注力されている。ウェーハを用いた実際の電子部品製造工程では、プロセス途中にあるウェーハを検査して、回路パターンの欠陥や異物など異常箇所の原因を追及して対策方法が検討される。
【0004】
通常、試料の異常箇所の観察には高分解能の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、以下、SEMと略記)が用いられる。また、近年ではSEMと集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)の複合機FIB-SEM装置も用いられるようになった。このFIB-SEM装置では、FIBを照射して所望の箇所に角穴を形成することにより、その断面をSEM観察することができる。
【0005】
例えば、特開2002−150990号公報には、FIBにより試料の異常箇所近傍に角穴を形成し、当該角穴の断面をSEM装置で観察することにより、欠陥や異物などを観察・解析する装置が開示されている。
【0006】
また、一方、国際公開公報WO99/05506号公報には、FIBおよびプローブを用いて、バルク試料からTEM観察用の微小試料を摘出する技術が開示されている。
【0007】
また、イオンビーム加工装置関連技術として、特開平2−062039号公報には、イオンビームの照射部で局所的に反応性エッチング加工を行う際に、試料の被加工層の材質に対応して反応性ガスを切り替え供給するため、イオン化室に複数のガス種の反応性ガスボンベを、バルブを介して接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−150990号公報
【特許文献2】国際公開公報WO99/05506
【特許文献3】特開平H2−062039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、試料をイオンビームにより加工して断面を形成し、該断面をSEM(あるいはTEM)で観察する技術では、当然のことながら、FIB照射系と、SEM照射系(あるいはTEM照射系)とを併せ持つ。このため、装置構造が複雑になり、その制御も複雑である。結果として装置コストが上昇するという課題を有していた。また、イオンビームと電子ビームの性能についても両者を試料の同一点を照射できるようにすると、各々のレンズが空間的に干渉する。これを解消しようとすると各々の最高性能を実現することが難しいという課題を有していた。
【0010】
また、電子ビームを用いることなくイオンビームを試料に照射しても、試料の観察は可能である。しかし、加工に用いた種類のイオンを用いると、観察中に試料表面が削り取られるため所望の断面の観察が困難になるという課題を有しており、かかる課題を解決するイオンビーム加工・観察技術は、未だ実現していない。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、電子部品の断面を観察するための技術において、同一のイオン源から引き出したイオンビームを用いて、試料を加工し、試料の被加工部分の観察を可能にするイオンビーム加工・観察技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、断面を観察するのに電子ビームを用いることなく、質量数の異なる少なくとも2種類のガスイオンを試料に照射可能な装置として、試料を加工するガスイオンビーム種と試料を観察するときのガスイオンビーム種を切り替えることが可能である装置とする。
【0013】
試料加工時のガスイオンビーム種と試料観察時のガスイオンビーム種との切り替えを実現するためのイオン源として、ガスボンベ、ガス配管、ガス量調整バルブおよびストップバルブとを備えた導入系統を少なくとも2系統備え、各々のガス系統において各々のガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々のガス系統のストップバルブの操作により真空容器内に導入するガスを切り替えることが可能であるイオン源とする。
【0014】
また、特に、高速に加工が可能な装置を提供するために、試料を加工するガスイオンビームを照射するきは、イオンビーム照射カラム内にあるアーパーチャマスクの穴形状を試料状に投射させるイオンビーム加工・観察装置とする。
【0015】
また、特に、断面観察の際に試料が削られる量を少なくする装置を提供するために、イオン源から引き出したガスイオンビームを質量分離する機構を備え、相対的に質量数の小さいイオンを試料に照射する時には相対的に質量数の大きいイオンを試料に到達しないように制御するイオンビーム加工・観察装置とする。
【0016】
また、試料断面の加工・観察方法としては、相対的に質量数の大きなイオンを試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して断面を観察するステップを含む試料断面観察方法とする。
【0017】
以上のように、本発明では、従来のように電子ビームを用いて断面観察するのではなく、断面加工のために照射するイオンビームよりも質量数の小さなイオンビームを用いて観察するのに好適な装置を提供することにより、上記課題を解決する。
【0018】
以下、本発明の特徴的構成例について列挙する。
【0019】
(1)本発明のイオン源は、真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、真空容器内でガスイオンを生成するイオン源において、前記ガス供給機構が、ガスボンベと、ガス量調整バルブと、ストップバルブとを少なくとも備えたガス導入系統を、少なくとも2系統備え、各々の前記ガス導入系統において各々の前記ガス量調整バルブにより前記真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々の前記ガス導入系統の前記ストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替えることを可能にしたことを特徴とする。
【0020】
また、前記構成のイオン源において、前記イオン源が、ガスの放電によりガスイオンを生成するイオン源であり、ガス放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガス放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、前記ガス種の切り替えを、前記ストップバルブと前記放電電圧の切り替え操作で行うことを特徴とする。
【0021】
また、前記構成のイオン源において、前記ガス導入系統の一方は、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のいずれか一つのガス種を供給し、前記ガス導入系統の他方は、水素、ヘリウムのいずれか一つのガス種を供給し得ることを特徴とする。
【0022】
(2)本発明のイオンビーム加工・観察装置は、真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスイオンを生成するイオン源と、試料を格納する試料室と、前記真空容器に接続され、前記イオン源からイオンビームを引き出し、該イオンビームを前記試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、前記ガス供給機構が、ガスボンベと、ガス量調整バルブと、ストップバルブとを備えたガス導入系統を、少なくとも2系統備え、各々のガス導入系統において各々のガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々のガス導入系統のストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替え可能であり、前記試料を加工するガスイオンビーム種と、前記試料を観察するガスイオンビーム種とを切り替え可能に構成したことを特徴とすることを特徴とする。
【0023】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオン源が、ガスの放電を用いてガスイオンを生成するイオン源であり、ガス放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガスの放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、前記ガスイオンビーム種の切り替えを、前記ストップバルブと前記放電電圧の切り替え操作で行うことを特徴とする。
【0024】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を加工するガスイオンビームを照射するときは、前記イオンビーム照射カラム内に設けたマスクの穴形状を試料上に投射させることを特徴とする。
【0025】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を観察するガスイオンビームを照射するときは、前記イオン源から放出されたイオンビームを試料上で点状に集束させることを特徴とする。
【0026】
(3)本発明のイオンビーム加工・観察装置は、質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、前記イオンビーム照射カラムは、前記イオン源から引き出した前記ガスイオンビームを質量分離する質量分離機構を備え、前記質量分離されたガスイオンのうち、相対的に質量数の大きいイオンで試料断面が加工可能で、相対的に質量数の小さいイオンで前記試料断面を観察可能であり、前記相対的に質量数の小さいイオンを前記試料に照射する時には、前記相対的に質量数の大きいイオンを試料に到達しないように制御することを特徴とする。
【0027】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオン源が、同時に2種類以上のガスを導入することが可能であることを特徴とする。
【0028】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオンビーム照射カラム内に前記ガスイオンビームの形状を制限するアパーチャを有するマスクを少なくとも2種類備え、前記相対的に質量数の大きいガスを照射する時の前記アパーチャの板厚みよりも、相対的に質量数の小さいガスを照射する時のアパーチャの板厚みを薄くしたことを特徴とする。
【0029】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記相対的に質量数の大きなイオンとして、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスイオンであり、前記相対的に質量数の小さなイオンとして水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスイオンであることを特徴とする。
【0030】
(4)本発明のイオンビーム加工・観察装置は、真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスの放電によりガスイオンを生成するイオン源と、前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、前記ガス供給機構が、第1のガス種を供給するガス導入系統と、第2のガス種を供給するガス導入系統との、少なくとも2系統を備え、各々のガス導入系統から前記真空容器内に供給されるガス種を、前記ガスイオンビームによる試料の加工時と、観察時とに応じて切り替える手段を有することを特徴とする。
【0031】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記切り替え手段は、前記ガスの放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガス放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、前記放電電圧の切り替え操作をもとに前記ガス種の切り替えを行うことを特徴とする。
【0032】
また、前記構成のイオンビーム加工・観察装置において、前記第1のガス種として、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスであり、前記第2のガス種として、水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスであることを特徴とする。
【0033】
(5)本発明の試料断面観察方法は、質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源から引き出したガスイオンビームを試料に照射するステップを有する試料断面観察方法において、前記少なくとも2種類以上のガスイオンのうち、相対的に質量数の大きなガスイオンを前記試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して該断面を観察するステップとを含むことを特徴とする。
【0034】
また、前記構成の試料断面観察方法において、前記相対的に質量数の大きなイオンを照射したときの最大電流よりも少ない電流で、前記相対的に質量数の小さなイオンを照射して断面を観察することを特徴とする。
【0035】
また、前記構成の試料断面観察方法において、前記イオン源で少なくとも2種類のガスイオンを同時に生成するステップと、前記少なくとも質量数の異なる2種類のガスイオンを質量分離して、相対的に質量数の大きなガスイオンビームを試料に照射して試料表面にほぼ垂直な断面を加工するステップと、質量分離の条件を変更して相対的に質量数の小さなガスイオンビームを該断面に照射して該断面を観察するステップとを含むことを特徴とする。
【0036】
また、前記構成の試料断面観察方法において、前記相対的に質量数の大きなイオンとして、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスイオンであり、前記相対的に質量数の小さなイオンとして水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスイオンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、半導体メモリやマイクロプロセッサ、半導体レーザなどの半導体デバイス、および磁気ヘッドなど、電子部品の断面を観察するための技術において、同一のイオン源から引き出したイオンビームを用いて、試料を加工し、試料の被加工部分の観察を可能にするイオンビーム加工・観察技術を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1におけるイオンビーム加工・観察装置の加工時の構成を説明する図。
【図2】本発明の実施例1におけるイオン源の構成を説明する図。
【図3】本発明の実施例1におけるイオンビーム加工・観察装置の観察時の構成を説明する図。
【図4】本発明の実施例2におけるイオンビーム加工・観察装置を説明する図。
【図5】本発明の実施例2におけるイオン源の構成を説明する図。
【図6】実施例2でステージ回転を用いて断面を観察する様子を説明する図。
【図7A】実施例2において微小試料を試料から摘出するフロー(a)〜(d)を説明する図。
【図7B】実施例2において微小試料を試料から摘出するフロー(e)〜(h)を説明する図。
【図8】ステンシルマスクの穴形状の例を示す図。
【図9】本発明の実施例3における電界電離型イオン源の構成を説明する図。
【図10】本発明の実施例3における電界電離型イオン源のエミッタ先端部を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
【0040】
(実施例1)
図1に、本実施例のイオンビーム加工・観察装置を示す。本実施例では、プラズマイオン源としてのデュオプラズマトロン1を用いて、2種類のガスイオンを試料に照射可能な装置について説明する。一般に、プラズマイオン源の輝度は、Ga等の液体金属イオン源に比べて少なくとも2桁から3桁低くなる。そこで、本実施例では、イオンビームカラム21内のイオンビーム照射系の途中に、所定形状の開口を持つステンシルマスク5を挿入し、開口の形状を試料上に投影した成型ビームを用いる場合について述べる。ここで、イオン源のイオン種として不活性ガスや酸素、窒素のような元素種を選べば、デバイスの電気的な特性に影響を与えないのでイオンビームで加工後に加工済みのウェーハをプロセスに戻しても不良を発生させるようなことは少ない。
【0041】
イオンビームカラム21の下部には、真空試料室23が配置されており、真空試料室内23には、試料11を載置する第1の試料ステージ13、二次粒子検出器12、デポガス源18などが格納されている。また、本装置には、第1の試料ステージ13上の試料11からイオンビーム加工を用いて摘出した試料片を搬送するためのプローブ15と、プローブ15を駆動するマニュピレータ16、微小試料303を載せる第2の試料ステージ24を備える。なお、イオンビームカラム21内部も真空に維持されているのは言うまでもない。
【0042】
本装置を制御する装置として、デュオプラズマトロン制御装置91、レンズ制御装置94、ステンシルマスク制御装置95、第1の試料ステージ制御装置14、マニピュレータ制御装置17、デポガス源制御装置19、二次電子検出器制御装置27、28、および、計算処理装置98などが配置されている。ここで、計算処理装置98は、二次粒子検出器12の検出信号をもとに生成された画像や、情報入力手段によって入力した情報などを表示するディスプレイを備える。
【0043】
ここで、第1試料ステージ13は、試料載置面内の直交2方向への直線移動機構、試料載置面に垂直方向への直線移動機構、試料載置面内回転機構および、傾斜軸周りに回転することによりイオンビームの試料への照射角度を可変できる傾斜機能を備え、これらの制御は計算処理装置98からの指令によって第1の試料ステージ制御装置14で行われる。また、第2試料ステージ24は、第1の試料ステー13上に配置されているため、第1の試料載置面内の直交2方向への直線移動、試料載置面に垂直方向への直線移動、および試料載置面内回転、および、傾斜軸周りに回転することによる傾斜は、第1の試料ステージ13を移動・回転・傾斜させることによって可能になる。
【0044】
図2に、本発明による、ガス供給機構を備えたイオン源の詳細を示す。ガス供給機構は、ボンベバルブ51、52をもつガスボンベ53、54、減圧弁55、56、ストップバルブ57、58、および微量なガス流量を調整可能であるニードルバルブ59、60からなる系統を2系統を備える。一方の系統における第一のガスボンベ53には、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のいずれかが高圧力で充填されている。また、他方の第二のガスボンベ54には、ヘリウムまたは水素が高圧力で充填されている。デュオプラズマトロンはカソード71、中間電極72、アノード73、磁石74などによって構成される。本実施例では、第一のガスボンベにはキセノン、第二のガスボンベには水素が充填される例について述べる。
【0045】
次に、イオン源の動作について述べる。キセノンボンベのボンベバルブ51を開け、次に減圧弁55によりガス配管内の圧力を調整する。次に、イオン源へガス供給に開閉を行うためのストップバルブ57を開ける。最後にニードルバルブ59によりイオン源内へのガス流量を調整する。イオン源の真空度が数Paになるように調整して、カソード71とアノード73間に約1kVの電圧を印加するとガス放電が生じる。この放電プラズマよりアノード孔を通してキセノンイオンを引き出す。すなわち、イオン源に20kVの高電圧を印加して、接地電位の引き出し電極76方向にイオンビーム75を引き出すのである。なお、図2中の点線85内は、イオン源電圧の20kV電圧が印加されている。ここで、キセノンイオンビームの量が最高になるようにガス流量をニードルバルブ59で調整し、さらに放電電圧についても調整する。そして、ニードルバルブ調整ノブ61は固定し、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0046】
次に、ストップバルブを閉止し、放電電圧を印加解除してキセノンの放電を止める、そして、バイパスバルブ81を開けてイオン源中のキセノンを真空ポンプ82により排気する。なお、イオン源カラムも真空ポンプ83により排気されている。
【0047】
次に、水素ガスについても同様に、水素ボンベバルブ52を開け、減圧弁56によりガス配管内の圧力を調整し、ストップバルブ58を開ける。最後にニードルバルブ60によりイオン源内へのガス流量を調整して、ガス放電が生じるようにする。水素についても、キセノンと同様に水素イオンビームの量が最高になるようにガス流量をニードルバルブ60で調整し、さらに放電電圧についても調整する。ここでもニードルバルブ調整ノブ62は固定し、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0048】
次に、キセノンビームに切り替えるためには、同様にストップバルブ58を閉止し、放電電圧を印加解除して水素の放電を止め、バイパスバルブ81を開けてイオン源中の水素を排気する。そして、キセノンイオンを生成するためにキセノンのストップバルブ57を開けて、記憶されている放電電圧に切り替える。このようにガス種の切り替えは、ストップバルブと放電電圧の切り替え操作で行い、各々のニードルバルブは固定しておく。
【0049】
ここで、一般に、イオン源内のガス量は、イオンビームの量を最大にする条件がキセノンと水素では異なる。また、微量なガス流量を調整するニードルバルブは再現性が良くない。このため、ニードルバルブが一つでガス種を切り替える場合には、切り替えるたびにニードルバルブの調整が必要であり、ガス種の切り替えを迅速にすることが困難となる。本実施例では、独立したガス供給系統を2種類に設けて、それぞれを予め最適条件に調整しておくことにより迅速なガス種切り替えを実現する。
【0050】
また、これらのガス種切り替えは、計算処理装置98によって集中的に操作可能である。ずなわち、計算処理装置98のディスプレイ上にはガス種、ガス種切り替えスイッチ、ボタンなどが表示される。そして、ディスプレイ上のガス種を選択するかあるいは切り替えスイッチを選択すると、自動的にガス種切り替えの操作が行われる。
【0051】
次に、イオンビーム照射系の動作について述べる。イオンビーム照射系の動作は、計算処理装置98からの指令により制御される。まず、イオン源のデュオプラズマトロン1から引き出した、キセノンイオンビームをコンデンサレンズ2により対物レンズ3の中心近傍に集束させる。すなわち、コンデンサレンズ2の電極に印加する電圧を、この条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置で設定する。そして、キセノンイオンビームは矩形の穴を有するステンシルマスク5を通過する。対物レンズ3は、ステンシルマスク5を試料の上に投影する条件で制御する。ここでも対物レンズ3の電極に印加する電圧を、上記条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置98で設定する。このようにすると、試料上には矩形の成型イオンビームが照射される。また、ここでは成型ビームを用いるため、約100nAの大電流ビームが試料に照射できる。この成型イオンビームを照射し続けると試料に矩形の穴が形成される。ここで、観察するための深さ領域のよりも十分な深さで、かつ試料表面に垂直に近づくように矩形穴形状を仕上げる。
【0052】
次に、試料ステージ制御装置により第1の試料ステージ13を、図3のように傾斜させて、イオンビーム照射系から、イオンビームで形成した試料断面が観察できるようにする。また、イオン源の動作を上述したような手順でキセノンから水素に切り替える。また、イオンビームのコンデンサレンズ2と対物レンズ3の電圧条件を変えて、イオン源のアノード穴を光源として、これをコンデンサレンズと対物レンズで試料上に縮小投影する。これにより、アノード穴径に対して数100分の1の微小な点状ビームを試料上で得ることができる。この場合には、電流は数pA程度に少ないがビーム径は数10nmと小さくできる。この微細なイオンビームを試料断面上で走査させることにより、詳細な観察像を得ることができる。すなわち、加工のときに用いた成型イオンビーム電流に比べて、観察のときには少ない集束イオンビーム電流を用いることにより高分解能観察を実現する。
【0053】
ここで、加工に用いたキセノンイオンビームを観察に用いると、試料面が削り取られ詳細な観察が困難になるが、本実施例では水素イオンビームを用いることにより削り取れる割合が少なくなるため詳細な観察が可能になる。
【0054】
なお、水素イオンビームによる観察機能は、試料の断面を観察することのみならず、試料表面の構造、異物、および欠陥を観察することなどにも用いることができる。
【0055】
また、本実施例では、イオン源を試料上に縮小投影して点状の水素イオンビームを形成して、これを試料上で走査することにより試料画像を取得したが、ステンシルマスクにマスク穴を小さく制限する機構を設け、その穴を投射した成型ビームで試料上を走査して試料画像を取得しても良い。この場合には、加工と観察でレンズ電圧を変更しなくても良く、ビーム照射軸ずれが生じる懸念も無く、装置制御が安定するという効果を奏する。
【0056】
なお、マスク穴を小さく制限する機構としては、予め径の小さな穴を持つステンシルマスク構造としたり、ステンシルマスクに別の微細アパーチャを重ねる構造としたりしても良い。なお、ステンシルマスクがイオンビームで照射されるとスパッタにより穴が拡大したり、マスク板厚が薄くなって、ついには穴形状が変形したりする。このため、ステンシルマスク板厚みは厚い方が好ましい。しかし、厚い板に微細な穴を開けるのは一般に困難である。このため、加工の際にキセノンなどの相対的に質量数の大きいイオンを照射する場合には、相対的に板厚の厚いマスクを用い、一方、キセノンに比べてスパッタ率の小さい水素に対しては板厚みの薄いアパーチャを用いる。これにより、アパーチャに、より微細な穴を形成することが可能になり、微細なビームが得られ、高分解能で観察できるという効果を奏する。
【0057】
また、本実施例では、イオン源としてデュオプラズマトロンを用いたが、マイクロ波を用いたプラズマイオン源、誘導結合プラズマイオン源、マルチカスプ型のイオン源、電界電離型イオン源等を用いても同様な効果が得られる。
【0058】
また、二次電子検出器については、二次電子のみならず反射電子や二次イオンを含んで良い。また、二次電子検出器制御装置は2系統27、28が備えられている。一方の二次電子検出器制御装置27では、検出器の信号を直流増幅する。他方の二次電子検出器制御装置28では、検出器の信号のパルスを計数して信号強度を測定する。後者の場合では、検出粒子の個数を直接計数するため検出器のノイズを除去できるため検出感度が高い。従来は、試料に照射するイオンビームや電子ビームが充分に多くパルスを計数する必要は無かった。しかし、特に微細な水素イオンビームを照射する場合にはイオン電流が少ないため、パルスを計数して信号強度を測定する検出器制御装置28が有効になる。これにより、従来よりも高分解能の観察が可能になる。しかし、パルスを計数する場合には計数できる個数が1秒間に100万個程度に制限され、ピコアンペアレベル以上の大電流では計数できない。したがって照射するイオンの電流の大きさにしたがって2つの制御装置を切り替える。これは試料に照射される荷電粒子の電流を監視して計算処理装置98で自動的に切り替えることも可能である。
【0059】
なお、イオンビームによる加工、マニュピレータ16先端のプローブ15およびイオンビームアシストデポジション膜をもちいて、試料11から微小試料303を摘出して第2のステージ24に設置することができる。微小試料は薄膜加工により透過電子顕微鏡用の試料にできる。この手順については、後述の実施例2で説明する。
【0060】
以上、本実施例で説明したイオンビーム加工・観察装置および加工観察方法によれば、キセノン成型イオンビームによる試料断面の加工、および水素微細イオンビームによる断面観察が可能になった。すなわち半導体回路パターンの欠陥や異物など異常箇所の断面を形成すれば、欠陥や異物などの断面を観察することができ、その発生原因を解析できることになる。
【0061】
特に、本実施例では、成型イオンビームを用いることにより、より大きな電流で精度の高い加工ができる。特に輝度の低いイオン源であってもビーム電流を大きくでき、かつ加工精度が高くできるため断面加工が短時間で可能という効果を奏することができる。これは半導体装置の製造プロセスにおいては、不良発生原因となる可能性が高いGaに替わって、試料の特性に顕著な影響を及ぼさない不活性ガスや酸素、窒素などの気体元素のイオンビームを用いることができることを意味する。したがって、半導体デバイス等の歩留向上のために、ウェーハをGaなどの金属で汚染することなく、イオンビームによる断面形成が可能となり、さらにウェーハを割断することなく断面観察ができるため、ウェーハを評価のために無駄に廃棄せず、かつ検査のための試料を取り出したウェーハをプロセスに戻しても不良を発生させない新たな検査・解析方法が提供される。また、ウェーハを割断することなく評価でき、新たな不良を発生させず、高価なウェーハを無駄にすることはない。ひいては、半導体装置の製造歩留りが向上する
(実施例2)
実施例1で示した構成のイオンビーム加工・観察装置では、イオンビーム照射系が鉛直方向にイオンビーム照射系が配置されているが、本実施例では、イオンビーム照射系は鉛直方向から傾斜した方向に配置され、ステージ面が水平方向に固定された装置について述べる。
【0062】
また、本実施例では、イオンビームの行路途中に質量分離器を設けて、相対的に質量数の小さいイオンを照射する際に、質量数の大きなイオンを除去するイオンビーム加工・観察装置について説明する。
【0063】
また、本実施例では、試料から微小試料を摘出して透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)試料を作製する手段についても説明する。
【0064】
なお、本実施例でも、マスク開口の形状を試料上に投影した成型イオンビームを用いる。
【0065】
図4に、本実施例のイオンビーム加工・観察装置を示す。本イオンビーム加工・観察装置は、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、酸素、窒素、ヘリウム、水素等のガスイオンを放出するイオン源のデュオプラズマトロン1、質量分析器300、イオン源アパーチャ26、コンデンサレンズ2、対物レンズ3、イオンビーム走査偏向器4、ステンシルマスク5、及びこれらを格納するイオンビームカラム21用の鏡筒などから構成されるイオンビーム照射系が配置されている。本実施例の質量分析器300は、イオンビームに対して電場と磁場を各々垂直方向に、かつ、電場方向と磁場方向が垂直関係にある所謂ExB質量分離器である。本実施例では永久磁石を用いたが、代わりに電磁石を用いても良い。また、磁場のみの質量分離でも良い。
【0066】
また、本装置には、電子銃7、電子銃7から放出する電子ビーム8を集束する電子レンズ9、電子ビーム走査偏向器10及びそれらを格納する電子ビームカラム(SEMカラム)22等で構成される電子ビーム照射系を備えている。イオンビームカラム21及びSEMカラム22の下部には真空試料室23が配置されており、真空試料室内23には、試料11を載置する第1の試料ステージ13、二次粒子検出器12、デポガス源18などが格納されている。また、本装置には、第1試料ステージ上の試料からイオンビーム加工を用いて摘出した試料片を搬送するためのプローブ15と、プローブ15を駆動するマニュピレータ16、微小試料303を載せる第2の試料ステージ24を備える。なお、イオンビームカラム21内部も真空に維持されているのは言うまでもない。ここで、本装置では、イオンビームの試料照射点および電子ビーム試料照射点は各々試料載置面の中心からは外れた位置にあり、各々別の位置に存在する。すなわち、イオンビーム照射軸301と電子ビーム照射軸302とは交わることは無い。
【0067】
本装置を制御する装置として、デュオプラズマトロン制御装置91、質量分離器制御装置62、イオン源アパーチャ制御装置93、レンズ制御装置94、ステンシルマスク制御装置95、イオンビーム走査偏向器制御装置96、第1の試料ステージ制御装置14、第2の試料ステージ制御装置25、マニピュレータ制御装置17、デポガス源制御装置18、二次電子検出器制御装置27、28、電子ビーム照射系制御装置97、および計算処理装置98などが配置されている。ここで、計算処理装置98は、二次粒子検出器の検出信号を基に生成された画像や、情報入力手段によって入力した情報などを表示するディスプレイを備える。なお、図中の30は、試料高さ測定器29を制御する試料高さ測定器制御装置30を示す。
【0068】
本実施例では、図5で示すようなガス供給系を持つイオン源について説明する。本ガス供給機構は、ボンベバルブ51、52をもつ2種類のガスボンベ53、54、各々のボンベの減圧弁55、56、各々のガス系統のストップバルブ57、58、および微量なガス流量を調整可能であるニードルバルブ59からなる。第一のガスボンベ53には、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のいずれかが高圧力で充填されている。また、他方の第二のガスボンベ54には、ヘリウムまたは水素が高圧力で充填されている。本実施例では、第一のガスボンベにはアルゴン、第二のガスボンベにはヘリウムが充填される例について述べる。
【0069】
次に、イオン源の動作について述べる。アルゴンボンベ53のボンベバルブ51を開け、次に減圧弁55によりガス配管内の圧力を調整する。次にイオン源へガス供給に開閉を行うためのストップバルブ57を開ける。最後にニードルバルブ59によりイオン源内へのガス流量を調整する。イオン源の真空度が数Paになるように調整して、カソード71とアノード73の間に約1kVの電圧を印加するとガス放電が生じる。この放電プラズマよりアノード孔を通してアルゴンイオンを引き出す。なお、図2中の点線85内は、イオン源電圧の20kV電圧が印加されている。ここで、イオンビーム75の量が最高になるようにガス流量をニードルバルブ59で調整し、さらに放電電圧についても調整する。ここでニードルバルブ調整ノブ61は固定し、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0070】
次に、ストップバルブ57を閉止し、放電電圧を印加解除してアルゴンの放電を止める、そしてバイパスバルブ81を開けてイオン源中のアルゴンを排気する。なお、イオン源カラムも真空ポンプ83により排気されている。
【0071】
次に、ヘリウムガスについても同様に、ヘリウムボンベバルブ52を開け、減圧弁56によりガス配管内の圧力を調整し、ストップバルブ58を開ける。最後にニードルバルブ59については固定したままとする。イオン源内へのガス流量については減圧弁56の2次圧力により調整して、ガス放電が生じるようにする。ヘリウムについてもヘリウムイオンビームの量が最高になるようにガス流量を調整し、さらに放電電圧についても調整して、放電電圧は制御装置91に記憶する。
【0072】
次に、アルゴンビームに切り替えるためには同様にストップバルブ58を閉止し、放電電圧を印加解除してヘリウムの放電を止め、バイパスバルブを開けてイオン源中のヘリウムを排気する。そして、アルゴンイオンを生成するためにアルゴンのストップバルブを開けて、記憶されている放電電圧に切り替える。このように、ガス種の切り替えはストップバルブと放電電圧の切り替操作で行い、ニードルバルブ59は固定しておく。
【0073】
ここで、一般にイオン源内のガス量はイオンビームの量を最大にする条件は、アルゴンとヘリウムでは異なる。本実施例では、このためニードルバルブが一つでガス種を切り替えるため、実施例1の2系統のガス供給機構を持つ場合に比べて、ガス量の調整精度は良くないが、ニードルバルブがひとつであり、構造が簡単になるという効果を奏する。
【0074】
次に、イオンビーム照射系の動作について述べる。まず、デュオプラズマトロン1からアルゴンイオンビームを引き出す。質量分離器300を動作させて、アルゴンイオンビームが通過するようにする。なお、質量分離器の機能は、計算処理装置からの指令により、質量分離器制御装置が動作して実行される。そして、質量分析器300を通過したアルゴンイオンビームをコンデンサレンズ2により対物レンズ3の中心近傍に集束させる。すなわち、コンデンサレンズ2の電極に印加する電圧を、この条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置98で設定する。そして、イオンビームは矩形の穴を有するステンシルマスク5を通過する。対物レンズ3はステンシルマスク5を試料の上に投影する条件で制御する。ここでも対物レンズ3の電極に印加する電圧を、上記条件を満たすように予め計算によって求めておいた値に計算処理装置98で設定する。このようにすると、試料上には矩形の成型イオンビームが照射される。成型ビームを用いるため、約100nAの大電流ビームが試料に照射できる。この成型イオンビームを照射し続けると試料に矩形の穴が形成される。ここで、観察するための深さ領域のよりも十分な深さで、かつ試料表面に垂直に近づくように矩形穴形状を仕上げる。
【0075】
次に、試料ステージ制御装置により第1のステージ13を、図6のように90度回転させて、イオンビーム照射系から、イオンビームで形成した試料断面が観察できるようにする。図6には、イオンビームによる加工時と観察時の、それぞれの側面図と上面図を示す。試料11に対して傾斜方向からアルゴンイオンビーム201を照射して矩形穴202を形成した様子を、図6の左図に示す。次に90度回転した様子を、図6の右図に示す。
【0076】
イオン源の動作を上述したような手順でアルゴンからヘリウムに切り替え、質量分析器300を動作させて、ヘリウムイオンビームが通過するようにする。また、イオンビームのコンデンサレンズと対物レンズの電圧条件を変えて、イオン源のアノード穴を光源として、これをコンデンサレンズと対物レンズで試料上に縮小投影する。これにより、アノード穴径に対して数100分の1の微小な点状のビームを試料上で得ることができる。この場合には、電流は数pA程度に少ないがビーム径は数10nmと小さくできる。この微細なヘリウムイオンビーム203を、図6の右図のように試料垂直断面に照射して走査させることにより詳細な断面観察像を得ることができる。すなわち、加工のときに用いた成型イオンビーム電流に比べて、観察のときには少ない集束イオンビーム電流を用いることにより高分解能観察を実現する。
【0077】
ここで、質量分析器を用いない場合には、イオン源の残留アルゴンがイオン化して試料に照射される場合がある。このアルゴンイオンにより、試料面が削り取られ詳細な観察が困難になる場合があるが、本実施例では、質量分析器によりヘリウムイオンのみを観察に用いることにより削り取れる割合が少なくなるため詳細な観察が可能になる。
【0078】
なお、ヘリウムイオンビームによる観察機能は、試料の断面を観察することのみならず、試料表面の構造、異物、および欠陥を観察することなどにも用いることができる。
【0079】
また、本実施例の装置でも、図2に示したような2系統のガス供給機構のイオン源を使っても有効であることは言うまでもない。また、イオン源に同時にアルゴンおよびヘリウムのガスを混合して導入するか、予め準備したアルゴンとヘリウムの混合ガスを導入して、同時にアルゴンとヘリウムのイオンを生成させても良い。この場合にも、ヘリウムイオンビームを照射している時には、アルゴンイオンビームが試料に照射されないという効果を生じる。この場合には必ずしも各々のイオン種に対してイオン電流を最大にするのは簡単ではないが、特に、イオン種の切り替えが質量分析器のみで行えるという効果を奏することができる。
【0080】
次に、電子ビーム照射系の動作について説明する。電子銃7から放出される電子ビーム8を電子レンズ9により集束して試料11に照射する。このとき電子ビーム8を電子ビーム走査偏向器10により走査しながら試料表面に照射し、試料表面から放出される二次電子を二次粒子検出器12で検出して、その強度を画像の輝度に変換すれば試料を観察することができる。この電子ビームによる試料観察機能によれば試料上に形成された回路パターンの欠陥や異物など異常箇所を観察することが可能である。特に、本装置では、試料に対して垂直方向から電子ビームを照射する構造であるため穴径に対する深さの比の大きい穴の中に関する異常についても情報を得るのに好適である。
【0081】
本装置では、電子ビームによる観察機能は、試料の欠陥や異物の断面を観察することや、電子顕微鏡用薄膜試料の断面を観察して、加工終点を把握することなどにも用いる。すなわち、本装置では、試料断面をイオンビームのみならず電子ビームでも観察可能である。一般に、イオンビームによる観察像は元素コントラストが高いという特長があり、一方、電子ビームによる像観察は空間分解能が高いという特長があり、本装置では両者の特長を併せ持つ観察が可能になるという効果を奏することができる。
【0082】
また、本装置では、イオンビームの試料照射点および電子ビーム試料照射点は各々試料載置面の中心からは外れた位置にあり、各々別の位置に存在する。このため各々の対物レンズが空間的に干渉することが無く試料近傍に配置することができるため、各々の対物レンズの仕事距離を短くできる。すなわちイオンビームおよび電子ビームの微細化あるいは大電流性能に優れると言う特徴を有する。
【0083】
次に、成型イオンビームを用いて第1のステージ上の試料から微小試料を摘出する手順について、図7A、図7Bで説明する。図7A、図7Bの左図が試料上方から見た上面図、図7A、図7Bの右図が試料側方から見た側面図である。本装置ではミクロンメートルサイズの成型イオンビームを用いるため、加工位置のマーキングをイオンビームで行うことは必ずしも適切で無い。そこで本装置ではナノメートルサイズの電子ビームを用いて行う。
【0084】
まず、微小試料を摘出する領域が電子ビーム照射可能になるように第1の試料ステージ13を移動する。図7Aの(a)において、デポガス源18からデポジションガスを供給しながら電子ビーム8を照射して、試料11面上にデポジション膜を形成することにより観察断面を指示する両端マーク130を2個作製する。すなわち、計算処理装置のディスプレイの画面で、試料の画像を観察しながら観察位置をマークで特定するのである。このようにミクロンメートルサイズ成型イオンビームによる加工装置でありながら電子ビームとの連携によりナノメートルオーダのマーキングが可能になった。
【0085】
次に、マーク近傍にアルゴンの第1の成型イオンビーム131が照射可能なように第1の試料ステージ13を移動する。ここで、ステンシルマスクを、図8の(a)に示す形状の穴に切り替える。この時には電流が約200nA得られる。そこで、図7Aの(b)に示すように、2個のマークをその内側に含むようにアルゴンの第1の成型イオンビーム131を照射し、深さ約15μmの第1の成型穴132(成型穴A)を設ける。
【0086】
次に、イオンビームをアルゴンからヘリウムに切り替え、ステンシルマスクを、図8の(b)に示す円形の穴に切り替える。この時には、このビームの断面はほぼ円形になる。ただし、試料上ではイオンビームが試料に対して傾斜しているため楕円形となるが、これを走査すれば試料を観察することが可能である。なお、切り替え動作は、装置ユーザが、情報入力手段を介して切り替え命令を入力するか、或いは、計算制御装置がマスク制御機構へ切替えの制御信号を送信することにより実行される。
【0087】
次に、図7Aの(c)に示すように、試料表面に対する垂直軸を回転軸として、試料ステージ制御装置により試料を約180度回転させる。ここで、楕円形のヘリウムイオンビームの照射によって試料から発生する二次電子によって形成する二次電子像を画像処理することによって、最初に形成した穴を認識する。図7Aの(d)において、ヘリウムイオンビーム133を照射して得られる二次電子像を観察しながら、プローブ制御装置によりプローブ15の位置を移動して、摘出すべき試料の端部に移送手段先端のプローブを接触させる。
【0088】
ここで、アルゴンイオンビームの替わりにヘリウムイオンビームを用いているために、プローブがイオンビーム照射によって損傷される度合いが低いという効果を奏する。そして摘出すべき試料にプローブを固定するために、プローブ先端を含む領域に、デポジション用ガスを流出させつつイオンビームを走査させる。このようにしてイオンビーム照射領域にデポ膜134が形成され、プローブと摘出すべき試料とは接続される。
【0089】
次に、イオンビームをヘリウムからアルゴンに切り替えて、ステンシルマスクを、図8の(c)に示す形状の成型ビーム135の試料照射位置も円形のビームによって設定できるように予め調整しておく。図7B(e)において、楕円形のビームの照射によって得られた試料形状情報によりイオンビーム制御装置によってイオンビーム照射位置を制御し、第1の成型ビームと合せて2個のマークをその内側に含むように第2の成型イオンビーム135を照射し、深さ約15μmの第2の成型穴136(成型穴B)を設ける。この成型穴Bは先に第1の成型イオンビームによって形成した成型穴Aと交わる。図7Aの(a)から図7Bの(e)の工程によってマークを含み、三角形断面のクサビ型微小試料137がプローブに保持されている状態になる。
【0090】
次に、イオンビームをアルゴンからヘリウムに切り替えて、ステンシルマスクを、図8の(b)に示す円形の穴に切り替える。図7Bの(f)に示すように、イオンビームを照射して得られる二次電子像を観察しながら、プローブ制御装置によりプローブ位置を移動してプローブの先端に接続されて摘出した微小試料137を第2のステージ上の試料ホルダ140に移動させる。図7Bの(g)において、デポジションガスを導入しつつ微小試料137と試料ホルダ140との接触部にヘリウムイオンビームを照射する。ここで、イオンビーム照射領域にデポ膜138が形成され、微小試料137は試料ホルダ140に接続できる。
【0091】
次に、図7Bの(h)に示すように、イオンビームをヘリウムからアルゴンに切り替えて、プローブと微小試料を接続しているデポ膜にアルゴンイオンビームを照射してスパッタ除去することで、プローブ15を微小試料137から分離する。
【0092】
本実施例のイオンビーム装置の特徴は、イオンビームカラムが試料に対して傾斜して配置した構造にある。この構造の場合、イオンビームで微小試料を摘出する場合に、試料ステージを傾斜することなく、ステージを回転させることによって実現できるというという効果を奏することができる。
【0093】
なお、本装置は、第1試料ステージ13上の試料11からイオンビーム加工を用いて摘出した微小試料137を搬送するためのプローブ15と、微小試料を載せる第2の試料ステージ24を備え、前記第2の試料ステージが傾斜軸周りに回転することによりイオンビームの微小試料への照射角度を可変できる傾斜機能を持つ。
【0094】
また、第2のステージの傾斜機能を使い断面をヘリウムイオンビームに垂直方向に向ければ、断面を垂直方向から詳細に観察することが可能になる。すなわち、本装置ではアルゴンイオンビームによる断面切削加工とヘリウムイオンビームによる観察、これを繰り返せば試料中の3次元情報を得ることができ、2次元の複数の観察像を用いて3次元像を構築することも可能である。
【0095】
次に、電子顕微鏡用試料作製では、粗加工、中加工、仕上げ加工の順にビーム電流が小さくなるように準備した3種類のステンシルマスク穴を順次切り替えながら試料厚みが薄くなるように加工を行う。最終的には観察領域を厚さが100nm以下程度のウォールになるように薄く仕上げ加工を施して電子顕微鏡試料とする。上述の加工の結果、TEM観察領域ができあがる。なお、以上では操作者が計算処理装置の入力装置を使って装置を制御している例を説明したが、計算処理装置にメモリなどの記憶手段を設けて、全ての工程の制御条件を制御シーケンスとして格納しておくことにより、全自動でサンプリングを行うことも可能である。
【0096】
以上のように薄膜加工を施した後、微小試料はTEMの試料室に導入される。TEM観察では欠陥や異物などの断面を、SEM観察に比べてより高分解能な観察することができ、観察結果から欠陥原因をより詳細に解析することができる。
【0097】
なお、本実施例では、加工のときにアルゴンイオンビームを用いたが、他に窒素、酸素、ネオン、キセノン、クリプトンなどでも同様な効果が得られるのは明らかであるが、特にアルゴンビームの場合には質量数40の同位体の割合が99.6%と高いため、質量分離しても電流の減少が少ないと言う効果を奏する。また、観察の時にはヘリウムイオンビームを用いたが、他に水素でも同様な効果が得られるのは明らかであるが、特にヘリウムビームの場合には分子イオンが少なく、ヘリウム質量数4のイオンの割合が高いため質量分離しても電流の減少が少ないと言う効果を奏する。
【0098】
また、本実施例では、デュオプラズマイオン源を用いた場合について説明したが、マイクロ波を用いたプラズマイオン源、誘導結合プラズマイオン源、マルチカスプ型のイオン源、電界電離型イオン源等を用いても同様な効果が得られる。
【0099】
また、本装置では、試料を透過した水素イオンを検出する透過イオン検出器1201を備えており、いわゆる走査透過イオン顕微鏡像を得ることができ。高空間分解能の試料観察が可能になるという効果を奏する。
【0100】
以上、本実施例で説明したイオンビーム加工・観察装置、加工・観察方法および微小試料作製方法によれば、実施例1に説明した効果に加え、ヘリウムイオンビーム照射時に相対的に質量数の大きいイオンの照射を避けられるという効果を得ることができ、また、ヘリウムイオンビームに切り替え時にアルゴンイオンの排気および置換に要する時間を短縮できるためイオンビーム切り替えに要する時間を短縮することが可能になる。また、イオン源で発生した金属イオン等の不純物イオンが質量分離器で取り除かれ試料まで到達することが無く、試料を不純物で汚染することがないため、デバイス製造の歩留まりを低下させないという効果を奏することができる。
【0101】
(実施例3)
図9に、イオン源として電界電離型イオン源を用いた例について示す。なお、本実施例では、ガス供給機構は、実施例1で説明したものと同様な構成を有するので、その動作についての説明は省略する。
【0102】
本イオン源では、タングステン製イオンエミッタティップ402の先端を鋭利に加工する。さらに、イオンエミッタティップ402を冷凍機401により数10K程度に冷却する。また、ガスも冷却して、イオンエミッタティップ402に強電界を印加するとエミッタティップ先端近傍からイオンビームを引き出すことができる。
【0103】
このとき、ヘリウムイオンや水素イオンを引き出す場合には、図10に示すように、イオンエミッタティップ先端403に原子のナノピラミッド構造404を形成する。このようにすると1個ないし3個の原子近傍でのみイオンが生成されるため、非常に輝度の高いイオン源が実現する。すなわち試料上で1nm以下のビーム径のイオンビーム405を得ることができ、非常に高空間分解の観察が可能になる。
【0104】
しかし、イオンの質量が小さく、かつイオンビーム電流が少なく加工には不向きである。そこで加工では、イオン源に供給するガスをヘリウムからアルゴンに切り替え、さらにイオンエミッタティップ先端のナノピラミッド構造を電解蒸発により除去する。このようにするとイオンエミッタティップ先端近傍の比較的広い領域からイオンが生成するため、ナノアンペアオーダのアルゴンイオンビーム406が得られ加工が可能になる。次に、微細なヘリウムイオンビームを引き出すためには、再び原子のナノピラミッド構造を形成すれば良い。ナノピラミッド構造の形成方法としては、タングステンの上にパラジウムあるいは白金などを蒸着して高温アニールするなどの方法がある。
【0105】
以上、本実施例で説明したイオンビーム加工・観察装置、加工・観察方法および微小試料作製方法によれば、実施例1で説明した効果に加え、極微細なヘリウムまたは水素イオンビームを得ることができ、さらに加工時には大電流のアルゴン、キセノンなどのイオンビームを得ることができるため、特に極微細な加工や超高分解能観察が可能になるという効果を奏することができる。
【0106】
以上、詳述したように、本発明によれば、電子部品の断面を観察するための装置で従来に比べ低コストで製造可能な装置が提供される。また、従来に比べ低コストで実現できる試料断面観察方法が提供される。また、イオンビームによる断面形成加工時間を短縮するイオンビーム加工・観察装置が提供される。
【0107】
さらに、イオンビームに不活性ガスや酸素、窒素イオンを用いてウェーハを評価のために無駄に廃棄せず、かつ検査のための試料を取り出したウェーハをプロセスに戻しても不良を発生させない新たな検査・解析方法が提供される。また、本発明による電子部品製造方法を用いることで、ウェーハを割断することなく評価でき、新たな不良を発生させず、高価なウェーハを無駄にすることはない。ひいては、電子部品の製造歩留りが向上する。
【0108】
なお、本発明によるイオンビーム加工・観察装置および試料断面観察方法には、以下に示す構成例が含まれる。
【0109】
(1)試料を保持する試料ステージと、少なくとも2種類以上のガス種のイオンビームを発生させるイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を持ち、 前記イオンビーム照射系がイオンビームを所望の形状の開口を有するマスクを通して試料に照射する投射イオンビーム照射系であり、少なくとも2つ以上のイオンビームレンズと開口が可変なマスク駆動機構あるいはアパーチャ駆動機構を備えたことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【0110】
(2)試料を保持する試料ステージと、少なくとも2種類以上のガス種のイオンビームを発生させる電解電離イオン源と、試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を持ち、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかのイオンビームを用いて加工が可能で、へリウム、水素のいずれかのイオンで観察が可能なイオンビーム加工・観察装置。
【0111】
(3)試料を保持する第1の試料ステージと、少なくとも2種類以上のガス種のイオンビームを発生させるイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を持ち、試料からの第1のガス種イオンビーム加工を用いて摘出した微小試料を搬送するためのプローブと、試料片を載せる第2の試料ステージを備え、第2のガス種のイオンビームによりプローブおよび微小試料が観察可能なイオンビーム加工・観察装置。
【0112】
(4)ほぼ水平に試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備えたイオンビーム加工観察装置を用いた試料断面観察方法において、相対的に質量数の大きなイオンを試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、試料ステージを水平軸中心で傾斜するステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して断面を観察するステップを含む試料断面観察方法。
【0113】
(5)ほぼ水平に試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備え、該イオンビーム照射系が鉛直軸に対して傾斜したイオンビーム加工観察装置を用いた試料断面観察方法において、相対的に質量数の大きなイオンを試料に照射して試料表面に対してほぼ垂直な断面を形成するステップと、試料ステージを鉛直軸中心で回転させるステップと、相対的に質量数の小さなガスイオンを該断面に照射して断面を観察するステップを含む試料断面観察方法。
【0114】
(6)試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能な電界電離型イオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備えたイオンビーム加工観察装置を用いた試料観察方法において、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかのイオンビームを用いて加工するステップと、へリウム、水素のいずれかのイオンで観察するステップを含むイオンビーム加工・観察方法。
【0115】
(7)試料を保持する試料ステージと、試料を質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能な電界電離型イオン源と、該試料ステージに保持される試料に対してイオンビームを照射する照射光学系を備えたイオンビーム加工観察装置を用いた試料観察方法において、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかのイオンビームを用いて加工するステップと、イオンエミッタ先端に原子のナノピラミッド構造を作製するステップと、へリウム、水素のいずれかのイオンで観察するステップと、原子のナノピラミッド構造を除去するステップを含むイオンビーム加工・観察方法。
【符号の説明】
【0116】
1…デュオプラズマトロン、2…コンデンサレンズ、3…対物レンズ、4…イオンビーム走査偏向器、5…ステンシルマスク、6…イオンビーム、7…電子銃、8…電子ビーム、9…電子レンズ、10…電子ビーム走査偏向器、11…試料、12…二次粒子検出器、13…第1の試料ステージ、14…第1の試料ステージ制御装置、15…プローブ、16…マニピュレータ、17…マニピュレータ制御装置、18…デポガス源、19…デポガス源制御装置、20…イオンビーム偏向器、21…イオンビームカラム、22…電子ビームカラム、23…真空試料室、24…第2の試料ステージ、25…第2の試料ステージ制御装置、26…イオン源アパーチャ、27、28…二次粒子検出器制御装置、29…試料高さ測定器、30…試料高さ測定器制御装置、51、52…ボンベバルブ、53、54…ガスボンベ、55、56…減圧弁、57、58…ストップバルブ、59、60…ニードルバルブ、71…カソード、72…中間電極、73…アノード、74…磁石、75…イオンビーム、76…引き出し電極、91…デュオプラズマトロン制御装置、92…レンズ制御装置、93…イオンビーム走査偏向制御装置、95…計算処理装置、130…マーク、131…第1の成型イオンビーム、132…第1の成型穴、133…イオンビーム、134…デポ膜、135…第2の成型イオンビーム、136…第2の成型穴、137…微小試料、138…デポ膜、140…試料ホルダ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスイオンを生成するイオン源と、試料を格納する試料室と、前記真空容器に接続され、前記イオン源からイオンビームを引き出し、該イオンビームを前記試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、
前記ガス供給機構が、ガスボンベと、ガス量調整バルブと、ストップバルブとを備えたガス導入系統を、少なくとも2系統備え、
各々のガス導入系統において各々のガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々のガス導入系統のストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替え可能であり、
前記試料を加工するガスイオンビーム種と、前記試料を観察するガスイオンビーム種とを切り替え可能に構成したことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記ガス導入系統は、前記真空容器内へのガス流量を調整するニードルバルブを有し、
各々の前記ガス導入系統の前記ニードルバルブの操作により前記真空容器内のガス流入量条件を各々設定できる
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項3】
請求項2記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記ガス供給機構は、
前記真空容器と第1の前記ニードルバルブとが第1の配管で接続され、試料を加工するガスイオンビーム種が導入される第1のガス導入系統と、
前記真空容器と第2の前記ニードルバルブとが第2の配管で接続され、試料を観察するガスイオンビーム種が導入される第2のガス導入系統と、を有する
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項4】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
各々の前記ガス導入系統の前記ストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替える際に、前記電界電離イオン源のエミッタティップ先端に原子のピラミッド構造形成をする
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項5】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、
各々の前記ガス導入系統の前記ストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替える際、前記電界電離イオン源のエミッタティップ先端に形成された前記構造を電界蒸発させる
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項6】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記電界電離イオン源のエミッタティップ先端に原子のピラミッド構造から放出される1nm以下のビーム径イオンビームにて試料を観察する
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項7】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記構造形成はパラジウムや白金を蒸着してアニールする
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項8】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
加工時には観察時に比べて大電流のネオン,アルゴン,クリプトンまたはキセノンビームを用いる
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項9】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
ネオン,アルゴン,クリプトンまたはキセノンビームを用いて試料断面を形成して,水素またはヘリウムイオンビームをもちいて断面を観察する
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項10】
請求項1に記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記イオン源が、ガスの放電を用いてガスイオンを生成するイオン源であり、ガス放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガスの放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、
前記ガスイオンビーム種の切り替えを、前記ストップバルブと前記放電電圧の切り替え操作で行うことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項11】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を加工するガスイオンビームを照射するときは、前記イオンビーム照射カラム内に設けたマスクの穴形状を試料上に投射させることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項12】
請求項10記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を観察するガスイオンビームを照射するときは、前記イオン源から放出されたイオンビームを試料上で点状に集束させることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項13】
質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、
前記イオンビーム照射カラムは、前記イオン源から引き出した前記ガスイオンビームを質量分離する質量分離機構を備え、
前記質量分離されたガスイオンのうち、相対的に質量数の大きいイオンで試料断面が加工可能で、相対的に質量数の小さいイオンで前記試料断面を観察可能であり、
前記相対的に質量数の小さいイオンを前記試料に照射する時には、前記相対的に質量数の大きいイオンを試料に到達しないように制御することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項14】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオン源が、同時に2種類以上のガスを導入することが可能であることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項15】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオンビーム照射カラム内に前記ガスイオンビームの形状を制限するアパーチャを有するマスクを少なくとも2種類備え、前記相対的に質量数の大きいガスを照射する時の前記アパーチャの板厚みよりも、相対的に質量数の小さいガスを照射する時のアパーチャの板厚みを薄くしたことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項16】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記相対的に質量数の大きなイオンとして、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスイオンであり、前記相対的に質量数の小さなイオンとして水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスイオンであることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項17】
真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスの放電によりガスイオンを生成するイオン源と、
前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、
前記ガス供給機構が、第1のガス種を供給するガス導入系統と、第2のガス種を供給するガス導入系統との、少なくとも2系統を備え、
各々のガス導入系統から前記真空容器内に供給されるガス種を、前記ガスイオンビームによる試料の加工時と、観察時とに応じて切り替える手段を有することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項18】
請求項17に記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記切り替え手段は、前記ガスの放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガス放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、
前記放電電圧の切り替え操作をもとに前記ガス種の切り替えを行うことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項19】
請求項17に記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記第1のガス種として、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスであり、前記第2のガス種として、水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスであることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項1】
真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスイオンを生成するイオン源と、試料を格納する試料室と、前記真空容器に接続され、前記イオン源からイオンビームを引き出し、該イオンビームを前記試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、
前記ガス供給機構が、ガスボンベと、ガス量調整バルブと、ストップバルブとを備えたガス導入系統を、少なくとも2系統備え、
各々のガス導入系統において各々のガス量調整バルブにより真空容器内のガス圧力条件を各々設定でき、各々のガス導入系統のストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替え可能であり、
前記試料を加工するガスイオンビーム種と、前記試料を観察するガスイオンビーム種とを切り替え可能に構成したことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記ガス導入系統は、前記真空容器内へのガス流量を調整するニードルバルブを有し、
各々の前記ガス導入系統の前記ニードルバルブの操作により前記真空容器内のガス流入量条件を各々設定できる
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項3】
請求項2記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記ガス供給機構は、
前記真空容器と第1の前記ニードルバルブとが第1の配管で接続され、試料を加工するガスイオンビーム種が導入される第1のガス導入系統と、
前記真空容器と第2の前記ニードルバルブとが第2の配管で接続され、試料を観察するガスイオンビーム種が導入される第2のガス導入系統と、を有する
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項4】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
各々の前記ガス導入系統の前記ストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替える際に、前記電界電離イオン源のエミッタティップ先端に原子のピラミッド構造形成をする
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項5】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、
各々の前記ガス導入系統の前記ストップバルブの操作により前記真空容器内に導入するガス種を切り替える際、前記電界電離イオン源のエミッタティップ先端に形成された前記構造を電界蒸発させる
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項6】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記電界電離イオン源のエミッタティップ先端に原子のピラミッド構造から放出される1nm以下のビーム径イオンビームにて試料を観察する
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項7】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記構造形成はパラジウムや白金を蒸着してアニールする
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項8】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
加工時には観察時に比べて大電流のネオン,アルゴン,クリプトンまたはキセノンビームを用いる
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項9】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、
ネオン,アルゴン,クリプトンまたはキセノンビームを用いて試料断面を形成して,水素またはヘリウムイオンビームをもちいて断面を観察する
ことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項10】
請求項1に記載のイオンビーム加工・観察装置において、
前記イオン源が、ガスの放電を用いてガスイオンを生成するイオン源であり、ガス放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガスの放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、
前記ガスイオンビーム種の切り替えを、前記ストップバルブと前記放電電圧の切り替え操作で行うことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項11】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を加工するガスイオンビームを照射するときは、前記イオンビーム照射カラム内に設けたマスクの穴形状を試料上に投射させることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項12】
請求項10記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記試料を観察するガスイオンビームを照射するときは、前記イオン源から放出されたイオンビームを試料上で点状に集束させることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項13】
質量数の異なる少なくとも2種類以上のガスイオンを生成可能なイオン源と、前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、
前記イオンビーム照射カラムは、前記イオン源から引き出した前記ガスイオンビームを質量分離する質量分離機構を備え、
前記質量分離されたガスイオンのうち、相対的に質量数の大きいイオンで試料断面が加工可能で、相対的に質量数の小さいイオンで前記試料断面を観察可能であり、
前記相対的に質量数の小さいイオンを前記試料に照射する時には、前記相対的に質量数の大きいイオンを試料に到達しないように制御することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項14】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオン源が、同時に2種類以上のガスを導入することが可能であることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項15】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記イオンビーム照射カラム内に前記ガスイオンビームの形状を制限するアパーチャを有するマスクを少なくとも2種類備え、前記相対的に質量数の大きいガスを照射する時の前記アパーチャの板厚みよりも、相対的に質量数の小さいガスを照射する時のアパーチャの板厚みを薄くしたことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項16】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記相対的に質量数の大きなイオンとして、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスイオンであり、前記相対的に質量数の小さなイオンとして水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスイオンであることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項17】
真空容器と、該真空容器内にガスを導入するガス供給機構とを備え、前記真空容器内でガスの放電によりガスイオンを生成するイオン源と、
前記イオン源からガスイオンビームを引き出し、該ガスイオンビームを試料に照射するイオンビーム照射カラムとを有し、
前記ガス供給機構が、第1のガス種を供給するガス導入系統と、第2のガス種を供給するガス導入系統との、少なくとも2系統を備え、
各々のガス導入系統から前記真空容器内に供給されるガス種を、前記ガスイオンビームによる試料の加工時と、観察時とに応じて切り替える手段を有することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項18】
請求項17に記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記切り替え手段は、前記ガスの放電電圧を少なくとも2つ以上記憶する機能があり、前記ガス放電電圧を切り替え可能な制御装置を備え、
前記放電電圧の切り替え操作をもとに前記ガス種の切り替えを行うことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項19】
請求項17に記載のイオンビーム加工・観察装置において、前記第1のガス種として、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、酸素、窒素のうち少なくとも一種類を含むガスであり、前記第2のガス種として、水素またはヘリウムのいずれか、または混合ガスであることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−164674(P2012−164674A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92786(P2012−92786)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2007−113358(P2007−113358)の分割
【原出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2007−113358(P2007−113358)の分割
【原出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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