説明

イオンプレーティング装置

【課題】成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択可能なイオンプレーティング装置を提供すること。
【解決手段】真空チャンバ3と、プラズマガン4と、プラズマビームPが照射されるハース5とを備え、ハース5は、タブレット21を真空チャンバ3の内部に露出するように配置する凹部24aと、真空チャンバ3の内部における露出面において成膜時にドーピングされるドーピング材22を支持する環状溝23bとを有し、ハース5の露出面のうちプラズマビームPが照射される被照射面の面積により、ハース5の被照射面における電流密度を調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンプレーティング装置に関し、特に、成膜時にドーピング材をドーピングするイオンプレーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマビームを利用したイオンプレーティング装置として、坩堝式のイオンプレーティング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このイオンプレーティング装置においては、ワークに対向して陽極としての坩堝が配置され、この坩堝に成膜材の粉末を焼結して形成されたタブレットが収容されている。そして、チャンバ内に発生したプラズマビームが坩堝の周囲に配置された磁石等により坩堝に向かって誘導され、タブレットの上面を照射することにより、照射により発生したタブレットの気体がプラズマビームを通過してイオン化し、基板の表面に付着して成膜している。
【特許文献1】特開2000−282226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したイオンプレーティング装置において、タブレットの成膜と同時にドーピング材をドーピングする場合、成膜材の粉末とドーピング材の粉末とを焼結してタブレットを成形することになるが、成膜材およびドーピング材の焼結温度や固溶限界等の違いにより、適切にタブレットを成形するのが困難であった。また、タブレットが成形されたとしても、成膜材およびドーピング材が一体としてプラズマビームに照射されるため、成膜材およびドーピング材の蒸気圧や昇華点等の違いによっては、不均一に成膜されるおそれがあった。したがって、上記したイオンプレーティング装置では、成膜材およびドーピング材の物性の違いを考慮して材料を選択しなければならず、使用可能な材料の選択幅が限定されてしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択可能なイオンプレーティング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のイオンプレーティング装置は、チャンバと、陰極として機能し、前記チャンバ内にプラズマビームを発生するプラズマビーム発生源と、陽極として機能し、前記チャンバ内においてプラズマビームが照射されるハースとを備え、前記ハースは、成膜材を前記チャンバ内に露出するように配置する成膜材配置部と、前記チャンバ内における露出面において成膜時にドーピングされるドーピング材を支持するドーピング材支持部とを有し、前記ハースの露出面のうち前記プラズマビームが照射される被照射面の面積により、前記ハースの前記被照射面における電流密度を調整することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、ハースおよび成膜材がプラズマビームに照射され、プラズマビームの照射により発生したドーピング材および成膜材の気体がプラズマビームを通過してワークに付着して被膜が成膜される。よって、焼結温度や固溶限界を考慮して成膜材とドーピング材とを一体に成形することなく、成膜材およびドーピング材を別々に気化させることができる。また、ハースの被照射面の面積によりハースの被照射面における電流密度を調整することで、ハースの温度を調整することができる。よって、成膜材とドーピング材とを異なる温度条件で気化させることができるため、蒸気圧や昇華点に関わらず均一に成膜することができる。したがって、ドーピング材の種類に応じてハースを交換し、被照射面における電流密度を適切に調整することで、成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択することができる。
【0007】
また本発明は、上記イオンプレーティング装置において、前記ドーピング材支持部は、前記ハースの露出面に形成された窪みから成ることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ドーピング材が粉状や顆粒状であっても、ドーピング材を窪みに収容した状態で支持することによりハースから脱落するのを防止することができる。
【0009】
また本発明は、上記イオンプレーティング装置において、前記成膜材配置部は、前記ハースの露出面の中央部分に形成され、前記ドーピング材支持部は、前記成膜材支持部に配置された成膜材を中心として対称に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ワークに対して成膜材とドーピング材とを均一分布させて成膜することができる。
【0011】
また本発明は、上記イオンプレーティング装置において、前記成膜材配置部は、前記ハースの露出面に凹状に形成されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、凹状に形成された成膜配置部を有した坩堝状のハースを有するイオンプレーティング装置においても、成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択することができる。
【0013】
また本発明は、上記イオンプレーティング装置において、前記成膜材を前記ハースの成膜配置部に供給する成膜材供給部を備え、前記成膜材配置部は、前記ハースに貫通形成された貫通孔を有し、前記成膜材供給部は、前記貫通孔を介して前記チャンバ内に前記成膜材を供給することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、貫通孔を介して成膜材をチャンバ内に供給する突き出し式のイオンプレーティング装置においても、成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択することができる。
【0015】
本発明の他のイオンプレーティング装置は、チャンバと、陰極として機能し、前記チャンバ内にプラズマビームを発生するプラズマビーム発生源と、陽極として機能し、前記チャンバ内においてプラズマビームが照射されるハースとを備え、前記ハースは、成膜材を前記チャンバ内に露出するように配置する成膜材配置部を有し、前記チャンバ内における露出面を有する少なくとも一部が成膜時にドーピングされる導電性のドーピング材で形成され、前記ハースの前記チャンバ内における露出面の面積により、前記ハースの前記露出面における電流密度を調整することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ハースの他にドーピング材を設けることなく、導電性材料をドーピングすることができ、部品点数を削減することができる。また、ハースの露出面の面積によりハースの露出面における電流密度を調整することで、ハースの温度を調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択してワークに成膜することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態に係るイオンプレーティング装置は、単一のハースに配置された成膜材とドーピング材とに別々にプラズマビームを照射し、成膜材とドーピング材とを異なる温度条件で気化させることにより、成膜材とドーピング材との物性の違いに関わらずワークに対して同時かつ均一に成膜するようにしたものである。
【0019】
図1および図2を参照して、イオンプレーティング装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るイオンプレーティング装置の模式図である。図2は、本発明の実施の形態に係るハースの上面模式図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るイオンプレーティング装置1は、気密性の真空チャンバ3を備えており、真空チャンバ3の一の側壁3aには陰極として機能するプラズマビーム発生源としてのプラズマガン4が設けられ、真空チャンバ3の底壁3bには陽極として機能するハース5が設けられている。また、真空チャンバ3の上壁3cには成膜対象のワークWを搬送する搬送部6が設けられ、真空チャンバ3のプラズマガン4が設けられた側壁3aに対向する側壁3dには酸素ガスおよびアルゴンガス等のキャリアガスを導入するガス導入口8が形成されている。
【0021】
プラズマガン4は、ハース5に対してプラズマビームPを照射するものであり、プラズマビームPを発生させるプラズマガン本体11と、プラズマガン本体11の真空チャンバ3側においてプラズマガン本体11と同軸上に配置された第1の中間電極12および第2の中間電極13とを有して構成されている。プラズマガン本体11は、導体板14を介して直流電源16のマイナス端子に接続されており、導体板14とハース5との間で放電を生じさせることによりプラズマビームPを発生させている。第1の中間電極12および第2の中間電極13には、それぞれ永久磁石が内蔵されており、この永久磁石によりプラズマガン4により発生されたプラズマビームPが収束される。
【0022】
また、プラズマガン4の真空チャンバ3の外部に突出した部分には、周囲を取り囲むように第1のコイル15が設けられており、この第1のコイル15により第1の中間電極12および第2の中間電極13まで引き出されたプラズマビームPが真空チャンバ3の内部に誘導される。
【0023】
ハース5は、プラズマガン4から出射されたプラズマビームPを下方に吸引するものであり、プラズマビームPが照射されるハース電極23と、ハース電極23の下方に設けられたハース本体24とから坩堝状に構成されている。ハース電極23は、モリブデン等により形成されており、上面視中央部分には貫通孔23aが形成されている。ハース本体24は、導電性材料により形成されており、上面視中央部分にはハース電極23の貫通孔23aの内周面と面一となるように凹部24aが形成されている。ハース本体24の凹部24aには、円柱状のタブレット21が充填され、タブレット21の上面がハース電極23の貫通孔23aを介して真空チャンバ3の内部に露出される。
【0024】
また、ハース電極23の上面には、貫通孔23aと同心円状に環状溝23bが形成され、この環状溝23bに顆粒状のドーピング材22が充填されている。なお、環状溝23bの大きさは、ドーピング量がハース電極23上面に対するドーピング材22の割合で調整されるため、ドーピング量を考慮して形成されている。また、ハース本体24は、上端面がハース電極23に導通し、下端面が直流電源16のプラス端子に接続されている。
【0025】
ハース5の真空チャンバ3の外部に突出した部分には、周囲を取り囲むように第2のコイル26が設けられており、この第2のコイル26によりハース5に入射されるプラズマビームPの向き等が修正される。
【0026】
タブレット21は、成膜用のGZOタブレットであり、酸化亜鉛(ZnO)の粉末と酸化ガリウム(Ga2O3)の粉末とにより円柱状に焼結成形されている。タブレット21の上面にプラズマビームPが照射されると、プラズマビームPにより加熱されて気化し、タブレット21の上方に位置するワークWの表面に被膜が形成される。
【0027】
ドーピング材22は、絶縁性を有する酸化マグネシウム(MgO)であり、顆粒状に成形されている。なお、以下の説明においては、顆粒状に成形したドーピング材22を例示して説明するが、この構成に限定されるものではない。ドーピング材22はどのように成形されていてもよく、例えば、粉状に成形されてもよいし、環状溝23bに収まる環状に焼結成形されていてもよい。また、本実施の形態においては、ドーピング材として絶縁性材料を例示して説明するが、ドーピング材として導電性材料を使用してもよい。
【0028】
搬送部6は、真空チャンバ3の内部においてハース5の上方にワークWを支持している。また、直流電源16は、可変直流電源であり、直流電源16のマイナス端子に接続された電源ラインはプラズマガン4に直接接続され、直流電源16のプラス端子に接続された電源ラインはハース5に直接接続されている。
【0029】
このように構成されたイオンプレーティング装置1において、直流電源16がハース5とプラズマガン4との間に直流電圧を印加すると、真空チャンバ3の内部にプラズマビームPが発生し、ワークWに成膜処理が行われる。
【0030】
具体的には、直流電源16によりハース5とプラズマガン4との間に直流電圧が印加されると、プラズマビームPが発生される。このプラズマビームPは、第1のコイル15および第2のコイル26等により形成される磁界に誘導されてハース5に照射される。ハース本体24の凹部24aに支持されたタブレット21はプラズマビームPの照射により上面が加熱されて昇華される。
【0031】
また、ハース電極23に対してもプラズマビームPが照射されるが、ドーピング材22が絶縁性を有するため、ハース電極23にはドーピング材22が収容された環状溝23bを除く上面にプラズマビームPが照射される。ハース電極23は、このプラズマビームPが照射された被照射面における単位面積当たりのプラズマビームPの照射量、すなわち被照射面における電流密度に応じて加熱される。ドーピング材22は、プラズマビームPの照射によるハース電極23の温度上昇により加熱されて昇華される。タブレット21およびドーピング材22の気体は、プラズマビームPを通過中にイオン化してワークWの表面に付着して被膜を形成する。
【0032】
ここで、図3を参照してイオンプレーティング装置におけるハース電極の電流密度の調整方法について説明する。図3は、イオンプレーティング装置におけるハース電極の電流密度の調整方法の説明図である。図3(a)は、被照射面の面積が大きなハース電極を使用した場合、図3(b)は、被照射面の面積の小さなハース電極を使用した場合をそれぞれ示している。
【0033】
なお、本実施の形態のタブレットに使用されるGZOの昇華点は約1400[℃]〜1500[℃]であり、ドーピング材に使用されるMgOの昇華点は約2800[℃]である。また、タブレットに対するドーピング量を10[%]として成膜するものとする。さらに、直流電源16によりタブレット21が昇華可能な通電量となるようにガン電流が一定に調整されているものとする。
【0034】
図3(a)に示すように、ハース電極23上面のプラズマビームPが照射される被照射面の面積が大きい場合、ハース電極23に照射されるプラズマビームPの照射範囲が広がるため、ハース電極23に対するプラズマビームPの単位面積当たりの照射量、すなわち電流密度が減少する。よって、ハース電極23の温度が低くなり、ドーピング材22の昇華量が減少する。
【0035】
一方、図3(b)に示すように、ハース電極23上面のプラズマビームPが照射される被照射面の面積が小さい場合、ハース電極23に照射されるプラズマビームPの照射範囲が狭まるため、ハース電極23に対するプラズマビームPの単位面積当たりの照射量、すなわち電流密度が増加する。よって、ハース電極23の温度が高くなり、ドーピング材22の昇華量が増加する。
【0036】
このように、ガン電流を一定とした場合、ハース電極23の被照射面の面積の大きさに応じて、プラズマビームPの単位面積当たりの照射量を調整し、ドーピング材22の昇華量を調整することが可能となる。よって、ガン電流をタブレット21の昇華可能な通電量に調整し、所望のドーピング材およびドーピング量に応じて異なる被照射面積を有するハース電極23を用意しておくことで適切なドーピングが可能となる。
【0037】
また、タブレット21とドーピング材22とを単一のハース5に配置して別々の温度条件で気化させることができるため、装置構成を単純化することができコスト低減を図ることが可能となる。さらに、ハース5においてタブレット21を中心として対称な同心円状にドーピング材22が配置されるため、ワークWに対して均一に成膜することが可能となる。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係るイオンプレーティング装置1によれば、ハース5およびタブレット21がプラズマビームPに照射され、プラズマビームPの照射により発生したドーピング材22およびタブレット21の気体がプラズマビームPを通過してワークWに付着して被膜が成膜される。よって、焼結温度や固溶限界を考慮してタブレット21とドーピング材22とを一体に成形することなく、タブレット21およびドーピング材22を別々の温度条件で気化させることが可能となる。また、ハース電極23の被照射面の面積によりハース電極23に対するプラズマビームPの単位面積当たりの照射量を調整することで、ハースの温度を調整することができる。よって、タブレット21とドーピング材22とを異なる温度条件で気化させることができるため、蒸気圧や昇華点に関わらず均一に成膜することが可能となる。したがって、ドーピング材22に応じてハース電極23を交換して被照射面における電流密度を調整することで、タブレット21の物性との違いに関わらずドーピング材22を自由に選択することができる。
【0039】
なお、上記した実施の形態においては、タブレット21としてGZOタブレット、ドーピング材22として酸化マグネシウムを使用したが、この構成に限定されるものではない。例えば、プラズマビームPの単位面積当たりの照射量を減少させて、ドーピング材22としてマグネシウムを使用する構成としてもよい。
【0040】
また、上記した実施の形態においては、タブレット21およびドーピング材22を昇華点まで加熱する構成としたが、この構成に限定されるものではない。タブレット21およびドーピング材22として使用される材料に適したエネルギー状態で気化させればよく、材料によっては、蒸発、スパッタリング等が発生するように電流密度を調整する構成としてもよい。
【0041】
また、上記した実施の形態においては、ハース5の上面に環状溝23bを形成して、この環状溝23bに顆粒状のドーピング材22を収容する構成としたが、この構成に限定されるものではない。ドーピング材22がハース5に支持されていればよく、ハース5の上面にドーピング材22を収容可能な窪みが形成されていればよい。また、例えば、ドーピング材22が一塊で形成されていれば、環状溝23bを形成することなく、単にハース5の上面に載置する構成としてもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態においては、ハース電極23の被照射面の面積を変えることで、ドーピング材22のドーピング量を調整する構成としたが、さらにハース電極23とドーピング材22との接触面積を変えることにより、ドーピング材22のドーピング量を調整する構成としてもよい。この場合、環状溝23bの深さや溝幅を変えることでドーピング量を調整することが可能となる。
【0043】
また、上記した実施の形態においては、ハース電極23の環状溝23bに収容されたドーピング材22をドーピングする構成としたが、導電性材料をドーピングする場合には、ハース電極23またはハース電極23を含んだハース5全体をドーピング材としてドーピングする構成としてもよい。この場合、ハース電極23の上面全体がプラズマビームPに照射されるため、ハース電極23の上面の面積に応じてプラズマビームPの単位面積当たりの照射量を調整し、ドーピング材のドーピング量を調整することが可能となる。これにより、ハース5の他にドーピング材22を設けることなく、導電性材料をドーピングすることができ、部品点数を削減することが可能となる。
【0044】
また、上記した実施の形態においては、坩堝状のハース5を使用したイオンプレーティング装置1を例に挙げて説明したが、図4に示すような環状のハース33を使用した突き上げ式のイオンプレーティング装置31に適用することも可能である。すなわち、ハース本体37に上面視中央部分に貫通孔37aを形成し、この貫通孔37aに対して下方から絶縁性の突き上げ棒39によりタブレット34を連続供給するように構成する。
【0045】
このように構成された突き上げ式のイオンプレーティング装置31においても、ハース電極36の被照射面の面積の大きさに応じて、プラズマビームPの単位面積当たりの照射量を調整し、ドーピング材35の昇華量を調整することが可能となる。
【0046】
また、この突き上げ式のイオンプレーティング装置31においては、60[mm]以上のロングサイズのタブレットを使用する構成としてもよい。これにより、20[mm]程度のスモールサイズのタブレットを縦一列に重ねた状態と異なり、タブレット間の合わせ目を少なくし、タブレット間の合わせ目で生じる異常放電を抑制することが可能となる。また、タブレットが消費されて細かい破片だけが、残った場合には、破片が真空チャンバ32の内部に飛び散って汚染の原因となるが、タブレット間の合わせ目が少ないため、真空チャンバ32の内部の汚染を抑制することも可能となる。
【0047】
また、上記した実施の形態においては、ハース5を真空チャンバ3の底壁3bに設け、下方からワークWの表面に成膜する構成としたが、図5に示すように、複数のハース45を真空チャンバ43の側壁43dに設け、側方からワークWの表面に成膜する構成としてもよい。この構成により、ワークWを立てた状態でワークWの表面に成膜することができ、ワークWを水平した状態のように自重により撓むことがないため、大面積の大型ワークに成膜することが可能となる。
【0048】
また、上記した実施の形態においては、成膜材して酸化亜鉛および酸化ガリウムの粉末により焼結成形したタブレットを使用したが、ワークWを成膜するものであればこれに限定されるもではない。
【0049】
また、上記した実施の形態においては、ハース5の中央にタブレット21を収容して、ハース5とタブレット21とを近接配置した例を示して説明したが、タブレット21がハース5に近接配置されていれば、ハース5の中央にタブレット21を収容する構成に限定されない。
【0050】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、成膜材の物性との違いに関わらずドーピング材を自由に選択できるという効果を有し、特に成膜時にドーピング材をドーピングするイオンプレーティング装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るイオンプレーティング装置の実施の形態を示す図であり、イオンプレーティング装置の模式図である。
【図2】本発明に係るイオンプレーティング装置の実施の形態を示す図であり、ハースの上面模式図である。
【図3】本発明に係るイオンプレーティング装置の実施の形態を示す図であり、イオンプレーティング装置によるハース電極の電流密度の調整方法の説明図である。
【図4】本発明に係るイオンプレーティング装置の第1の変形例を示す図である。
【図5】本発明に係るイオンプレーティング装置の第2の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 イオンプレーティング装置
3 真空チャンバ(チャンバ)
4 プラズマガン(プラズマビーム発生源)
5 ハース
21 タブレット(成膜材)
22 ドーピング材
23 ハース電極
23a 貫通孔(成膜材配置部)
23b 環状溝(ドーピング材支持部)
24 ハース本体
24a 凹部(成膜材配置部)
26 第2のコイル
P プラズマビーム
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、陰極として機能し、前記チャンバ内にプラズマビームを発生するプラズマビーム発生源と、陽極として機能し、前記チャンバ内においてプラズマビームが照射されるハースとを備え、
前記ハースは、成膜材を前記チャンバ内に露出するように配置する成膜材配置部と、前記チャンバ内における露出面において成膜時にドーピングされるドーピング材を支持するドーピング材支持部とを有し、
前記ハースの露出面のうち前記プラズマビームが照射される被照射面の面積により、前記ハースの前記被照射面における電流密度を調整することを特徴とするイオンプレーティング装置。
【請求項2】
前記ドーピング材支持部は、前記ハースの露出面に形成された窪みから成ることを特徴とする請求項1に記載のイオンプレーティング装置。
【請求項3】
前記成膜材配置部は、前記ハースの露出面の中央部分に形成され、
前記ドーピング材支持部は、前記成膜材支持部に配置された成膜材を中心として対称に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオンプレーティング装置。
【請求項4】
前記成膜材配置部は、前記ハースの露出面に凹状に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のイオンプレーティング装置。
【請求項5】
前記成膜材を前記ハースの成膜配置部に供給する成膜材供給部を備え、
前記成膜材配置部は、前記ハースに貫通形成された貫通孔を有し、
前記成膜材供給部は、前記貫通孔を介して前記チャンバ内に前記成膜材を供給することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のイオンプレーティング装置。
【請求項6】
チャンバと、陰極として機能し、前記チャンバ内にプラズマビームを発生するプラズマビーム発生源と、陽極として機能し、前記チャンバ内においてプラズマビームが照射されるハースとを備え、
前記ハースは、成膜材を前記チャンバ内に露出するように配置する成膜材配置部を有し、前記チャンバ内における露出面を有する少なくとも一部が成膜時にドーピングされる導電性のドーピング材で形成され、
前記ハースの前記チャンバ内における露出面の面積により、前記ハースの前記露出面における電流密度を調整することを特徴とするイオンプレーティング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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