説明

イオン交換樹脂装置

【課題】ボンベ型のイオン交換樹脂装置について、内部構造に簡単な工夫を加えることで再生薬品の使用量を減少させる。
【解決手段】イオン交換樹脂50が充填される容器10底部に、ガラスビーズ60等の不活性粒子を充填する。ガラスビーズ60の充填量は、容器10底部側に配置される集水器30が埋没する程度とする。これにより、集水管20を下向き流れる再生薬品は、集水器30から容器10内に放出され、ガラスビーズ60の間を流れてイオン交換樹脂50の間をほぼ均一に流れる。集水器30の周囲を覆うカバー40を設ければ、再生薬品を押し出すための純水の使用量も低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂が容器内に充填されてなるイオン交換樹脂装置に関し、特にボンベ型の耐圧容器にイオン交換樹脂が充填されてなる、いわゆるカートリッジ式のイオン交換樹脂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、純水製造装置として、容器の内部にイオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂装置が知られている。イオン交換樹脂のイオン交換能力は、一定量の被処理水を脱イオン処理することで失われ、イオン交換能力を失ったイオン交換樹脂は再生薬品により再生される。イオン交換樹脂装置は、イオン交換樹脂の再生を据付現場で行う再生型と、現場での再生を行わない非再生型とに大別される。特許文献1には、互いに並列に接続された複数のイオン交換樹脂装置を据付現場で再生する再生ユニットを備える脱イオンシステムが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたイオン交換樹脂装置は、容器の互いに対向する一対の端面の一方に被処理水入口および再生廃液出口が設けられ、他方に処理水出口および再生薬品入口が設けられている。このため、特許文献1のイオン交換樹脂装置では、容器の一方の側から導入された液体は反対側から容器外に取り出されるため、容器の一端側に液体が滞留するおそれが低く、イオン交換樹脂を現場で再生する場合の効率もよい。一方、特許文献1のイオン交換樹脂装置は、容器の対向する端面の両方に液体の入口および出口がそれぞれ設けられているため、複数の容器を互いに接続し、または取り外すことは容易ではなく、イオン交換樹脂装置の数を増減させることは容易ではない。
【0004】
そこで、ボンベ型容器の片側端面に、被処理水および処理水(脱イオン水)の入口と出口の両方を設けたイオン交換樹脂装置も提案されている(例えば特許文献2)。このようなイオン交換樹脂装置は、「ボンベ型」とも称され、容器ごと取り外して容易に交換できることからカートリッジ式イオン交換樹脂装置として普及している。
【0005】
図6および図7は、従来例に係るボンベ型イオン交換樹脂装置90の構造を示す一部断面模式図である。イオン交換樹脂装置90は、耐圧性の容器10内部にイオン交換樹脂50が充填されて構成され、ヘッド部11を上にした状態で設置される。水道水等のイオンを含む被処理水は、図6に示すようにヘッド部11に形成された水入口12から容器10内に導入される。容器10内に導入された被処理水は、容器10内部を下向に移動する際に容器10内のイオン交換樹脂50と接触し、イオンが除去された脱イオン水が生成される。脱イオン水は、集水器30Bを介して集水管20内へ入り、水出口13から容器10外へ取り出される。
【0006】
一方、イオン交換樹脂50を再生する場合には、図7に示すように水出口13から塩酸または水酸化ナトリウム等の再生薬品を導入し、集水管20内を下向きに移動させて集水器30Bから容器10内に放出させる。このようにして容器10内部に放出された再生薬品は、イオン交換樹脂50と接触しながら容器10内を底部側から上向きに流れ、水入口12から容器10の外へ排出される。
【特許文献1】特開2003−19438号公報
【特許文献2】特開平6−86976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したボンベ型のイオン交換樹脂装置は、容器同士を接続することで容易に増設でき、また容器同士の接続を解除することで減設も容易にできる。特に、同一容器内にアニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂が単独で充填されている単床式のボンベ型イオン交換樹脂装置は、特許文献1に記載されたイオン交換樹脂装置に比べて増設および減設が容易である。また、同一容器内にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが混合状態で充填された混床式のイオン交換樹脂装置に比べて据付現場での再生が容易でメンテナンスしやすいというメリットもある。
【0008】
一方で、ボンベ型のイオン交換樹脂装置ではイオン交換樹脂の再生時に要する再生薬品および再生薬品を洗い流すために必要な純水の使用量が、特許文献1に記載のイオン交換樹脂装置に比べて多くなるという問題があった。本発明者らは、かかる問題について検討した結果、ボンベ型のイオン交換樹脂装置の再生時に再生薬品が集水管近傍を多く流れ、容器内壁付近のイオン交換樹脂が効率的に再生されないことを見出した。
【0009】
本発明は、上記知見を得て完成されたものであり、ボンベ型のイオン交換樹脂装置について、イオン交換樹脂の再生時の再生薬品および洗浄用純水の使用量を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イオン交換樹脂が充填される容器の底部にガラスビーズのような粒状物を充填して集水器を粒状物の中に埋没させることにより、再生薬品が容器内部を均一に流れるようにする。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0011】
(1)開口が形成された開口端面および該開口端面に対向する底面を備えイオン交換樹脂が内部に充填される容器と、該容器内に設けられ該開口端面側から該底面側に延びる集水管と、該集水管の該底面側端縁に接続される集水器と、を含むイオン交換樹脂装置であって、前記集水器が埋没するように前記容器内に充填される真比重2以上の不活性粒子をさらに含むイオン交換樹脂装置。
(2)前記集水器を取り囲むカバーをさらに含む(1)に記載のイオン交換樹脂装置。
(3)前記集水器の前記底面側端縁と前記容器の底面との距離は、25mm以下である(1)または(2)に記載のイオン交換樹脂装置。
(4)前記カバーの前記底面側端縁と前記容器の底面との距離は、25mm以下である(1)から(3)のいずれかに記載のイオン交換樹脂装置。
(5)前記不活性粒子は、ガラスビーズである(1)から(4)のいずれかに記載のイオン交換樹脂装置。
(6)前記集水器は、前記容器の底面と対向し細隙が形成された底面を有する(1)から(5)のいずれかに記載のイオン交換樹脂装置。
【0012】
本発明は、いわゆるボンベ型のイオン交換樹脂装置に適用される。容器には、一端面に開口が形成され、被処理水および脱イオン水が同じ側の端面から導入または取り出される。容器は、好ましくは細長い略円柱形で、開口端面を上側、底面を底として設置される。
【0013】
本発明に係るイオン交換樹脂装置においては、集水器は開口端面側から底面近傍に延びる集水管の底面側端縁(先端)に接続され、容器底面近傍に存在する。集水器はイオン交換樹脂と水とを分離する細隙が形成された分離面を有する立体形状のものであればよい。
【0014】
分離面には、イオン交換樹脂を透過させない程度の細かい隙間が形成されていればよく、例えば細隙として複数の細かいスリットが形成された面、網体で構成されたメッシュ状の面、および細孔を有する面等が挙げられる。分離面で囲まれた内部には、イオン交換樹脂と分離された脱イオン水が一時的に滞留する貯水部が形成され、貯水部に集水管の先端が接続されていればよい。
【0015】
集水器は、底面に近づけて配置することが好ましく、具体的には底面に近い側の端部(先端)が底面から25mmまたはそれより底面に近い距離であることが好ましい。より具体的には、底面から集水器先端までの距離は1〜10mmであることが好ましい。
【0016】
本明細書において「不活性粒子」とは、イオン交換樹脂の再生薬品と実質的に反応しない、すなわち再生薬品と接触した際にそれ自身が分解等して成分が溶出したり変質したりする恐れが実質的になく、また、再生薬品を分解等して変質させるおそれが実質的にない粒状物を指すものとする。不活性粒子の材質としては、砂利、アンスラサイト、セラミック、ガラス、金属、およびゴム等が挙げられる。
【0017】
不活性粒子としては、真比重が2.0以上、好ましくは2.5〜4.0程度のものを用い、粒径は0.5〜5mm程度、特に1〜3mm程度であることが好ましい。なお、「真比重」とは、粒状物1粒あたりの乾燥重量を当該1粒の粒状物の容積で除して求められる値である。不活性粒子は粒状であれば形状は特に限定されず、八面体、十二面体、二十面体等の多面体であってもよいが、角張っていない球形であることが好ましく、例えば偏平球、楕円球、および真球等が挙げられ、ほぼ真球に近い形状であることが好ましい。
【0018】
上述した好適な特性を備える不活性粒子の具体例としては、セラミック球、ゴム被覆された金属球、およびガラスビーズが挙げられる。
【0019】
不活性粒子の充填量は、不活性粒子を充填してなる層の表面(最上位)位置が、集水器の底面と対向する側の端縁(基端縁)より上であればよく、具体的には基端縁より10〜50mm程度上位であることが好ましい。集水器は、先端が容器底面から25mm以内の距離にあることが好ましく、集水器の先端は上述した通り容器底面から1〜10mm程度上方に位置させることが特に好ましい。
【0020】
このように、集水器を不活性粒子の中に埋め込むように配置することにより、集水器の内側から排出された再生薬品を不活性粒子の間から容器全体に均一に拡散させ、容器に充填されたイオン交換樹脂全体を効率よく再生薬品と接触させることができる。このため、再生薬品の使用量を低減できる。また、被処理水を脱イオン処理して脱イオン水を採水する際には、イオン交換樹脂層の圧力損失を低下させるため、容器に被処理水を供給する際に必要な給水圧力を低下させる。このため、被処理水の給水用ポンプをより小型化(より低馬力に)でき、ポンプの動力費を低減できる。
【0021】
本発明では、さらに集水器を取り囲むカバーを設けることが好ましい。このようなカバーとしては、上から流れてきた再生薬品押出用の純水が集水器の側面から直接、集水器内部に入ることを防止できるものであればよい。即ち、ボンベ型の容器底部に滞留する傾向のある再生用薬品を純水が押し出すように流れることを強制できるものとする。カバーは、集水器の側面をぐるりと取り囲む連続的な面を備えるものであれば形状は限定されない。カバーは、集水器の底面側端面を覆うことがないように集水器の底面側端面に対応する部分が開口していることが好ましい。
【0022】
カバーの形状としては、例えば、複数の平板の側縁同士を接続して構成され水平断面が四角形、六角形、または八角形等の多角形をなす多角形の筒、水平断面が円形(楕円を含む)の円筒等が挙げられる。なお、「連続的な面」とは実質的に隙間がない面であることを意味するが、上から流れてきた水が集水器の側方から集水器に入ることを妨害する邪魔板として機能する範囲で、面の一部に切れ目や継ぎ目等の不連続な部分があってもよい。
【0023】
集水器の側面とカバーとの間の距離は、5〜20mm程度、特に10〜15mm程度であることが好ましい。かかる距離であれば、集水器とカバーとの間、およびカバーと容器内壁の間で水を良好に流動させることができる。カバーは、集水器と同様に容器の底面に近い位置に配置することが好ましく、カバーの底面側の端縁と底面との間の距離は25mm以下、特に10〜20mmであることが好ましい。
【0024】
このように集水器を取り囲むカバーを設けることにより、集水器側から容器内に純水を供給して鉛直上方向に純水を流す場合に、容器底部に再生薬品が滞留することを防止できる。またこれとは逆に、水入口から純水を容器内に供給し、鉛直下方向に純水を流して再生薬品を集水管から押し出して排出する場合にも、容器底部に再生薬品が滞留することを防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ボンベ型の容器にイオン交換樹脂が充填されてなるイオン交換樹脂装置について、イオン交換樹脂の再生時に必要となる再生薬品および純水の使用量を減少させることができる。このため、ボンベ型のイオン交換樹脂装置の再生に要する時間およびコストを少なくできる。また、脱イオン水を採水する採水時に被処理水の供給を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。本明細書において、同一部材については同一符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るイオン交換樹脂装置1の内部構造を示す一部断面模式図である。図2は、イオン交換樹脂装置1内部の一部を拡大して示す模式図である。イオン交換樹脂装置1は、縦長のボンベ状容器10と、容器10の内部に配置され容器10内を縦断するように延びる集水管20と、集水管20の一方の端縁(先端)に接続された集水器30と、容器10底部に充填された不活性粒子としてのガラスビーズ60と、ガラスビーズ60の上方に充填されたイオン交換樹脂50と、を備える。
【0028】
容器10の片側端面は開口し、開口を覆うヘッド部11が設けられている。ヘッド部11には、水入口12および水出口13が形成され、水出口13の内側に集水管20の他方の端縁が接続されている。イオン交換樹脂装置1は、ヘッド部11が設けられた端面(開口端面)を上側とし、開口端面と対向する側の端面を底面として設置される。
【0029】
本実施形態の容器10は、開口端面から底面までの高さが約133cm、直径が325mm、容積93Lであるが、容器10の大きさはこれに限定されるものではない。容器10の材質は、金属溶出のおそれが少ないものが好ましいが、強度確保のためにステンレス合金等の金属溶出のおそれが比較的少ない金属製としてもよい。また、繊維強化プラスチック(FRP)等も好適に使用できる。
【0030】
容器10内部には、イオン交換樹脂50が充填されてなるイオン交換樹脂層が形成されている。イオン交換樹脂50を再生すると、容器10内に充填されたイオン交換樹脂50の容積が変化するため、イオン交換樹脂層と開口との間に、空洞部16が設けられている。本実施形態では、イオン交換樹脂層の最上面と開口までの間の距離は30cm程度であり、この空洞部16に散水器15が配置されている。散水器15は、筒状のものとしているが、他に容器10内部に面状に拡がる略円盤状の散水板等、任意のものを使用できる。
【0031】
集水管20は、容器10の略中央を鉛直方向に延び、先端は底面近くに達する。集水器30は、この例では分離面として多数のスリット31が形成された側面を有する略円柱形であり、集水器30の底面側の端面(以下、「先端面」)は、中央部が外側に突出する略円錐形となっている。ただし、円錐の先端は尖らず平らで、具体的には直径約2cmの円板状としている。この実施態様では、集水器30の円筒形部分の長さは約8cm、円錐の高さは約1.5cm、直径は約6cmである。集水器30の内部には、集水管20が接続される貯水部が形成されており、スリット31を通過した水は貯水部を経て、集水管20に入るように構成されている。
【0032】
スリット31を有する側面(分離面)は、集水管20の延伸方向と略平行に拡がっている。この例では、スリット31は、幅約0.2mmで水平に延び、スリット同士の間隔はイオン交換樹脂50の再生時に再生薬品を同じ流量で出せるように1〜5mm程度、具体的には約3mm間隔としている。ただし、分離面に形成される細隙は、イオン交換樹脂を透過させないものであればこれに限られず、メッシュ、小孔等任意の形状であってよい。
【0033】
集水器30は、先端部分が容器10の底面から25mm以内、具体的には約5mm離れた位置にあり、図2においてh1で示す部分の距離が約5mmである。集水器30の形状、および大きさはこれに限定されるものではなく、例えば、集水器30として、先端が略円錐形の本実施形態のものに代えて全体が円筒状のものを用いてもよい。また、円筒形以外の形、例えば十六面体等の多面体等としてもよいが、容器10本体が本実施形態のように円筒形である場合は、特にスリット31が形成された分離面が設けられた部分が円筒形であることが好ましい。いずれの場合においても、集水器の先端面は、底面から25mm以内にあることが好ましい。
【0034】
容器10内部には、底面から高さ13〜14cm程度の位置までガラスビーズ60が充填され、ガラスビーズ層が形成されている。ガラスビーズ層の高さは、容器10底面から集水器30の先端面と反対側の端面(以下、「基端面」)までの高さより3〜4cm程度、高い。集水器30の先端面から基端面までの高さ(図2においてh2として示す距離)は本実施形態では約10cmとしているため、集水器30の基端面からガラスビーズ層の表面までの距離(図2においてh3として示す距離)は3〜4cm程度である。このように、本実施形態では集水器30はガラスビーズ60の層の中に埋設された状態となっている。ガラスビーズ60の層は、少なくとも集水器30の基端面と面一となる高さであればよいが、本実施形態のように集水器30の基端面より1〜5cm程度高いことが好ましい。
【0035】
次に、図3、および図5〜図8を参照して本発明の一実施形態に係るイオン交換樹脂装置1と従来例に係るイオン交換樹脂装置90について、脱イオン水の採水操作およびイオン交換樹脂の再生操作について説明する。図3は、図1に示したイオン交換樹脂装置1の再生時の水の流れを示す一部拡大図である。図6および図7は、従来例に係るイオン交換樹脂装置90の一部断面模式図であり、図6は脱イオン水の採水時の水の流れを示す。図7は、イオン交換樹脂50の再生時の再生薬品の流れを示し、図8は図7の一部拡大図であり再生時の集水器30B付近を示す。
【0036】
イオン交換樹脂装置90は、容器10内の底部に集水器30Bを埋没させるガラスビーズ60が充填されておらず、集水器30Bの先端(円錐頂点)から容器10底面までの距離が約35mmである点で、本実施形態に係るイオン交換樹脂装置1と異なる。
【0037】
従来のイオン交換樹脂装置90では、イオンを含む被処理水から脱イオン水を得る採水時には、図6に示すようにイオンを含む水道水等が被処理水として水入口12から容器10内へ導入される。水入口12から容器10内部に導入された被処理水は、散水器15により容器10の水平断面全体に拡がってイオン交換樹脂層の上部界面にほぼ均一に分散される。ついで、被処理水はイオン交換樹脂層の内部に入り、イオン交換樹脂50の間を下向きに、つまり開口端面側から底面側へ移動する。このため、容器10の下部には、被処理水がイオン交換されて生成された脱イオン水が集まる。容器10は耐圧性であり、被処理水を加圧状態で導入することにより、脱イオン水を集水器30Bの内部へ圧力により流入させ、集水管20を介して水出口13から取り出す。
【0038】
一方、イオン交換樹脂50のイオン交換能力が失われた場合は、採水時とは逆向きの流れとなるように再生薬品を流してイオン交換樹脂50を再生する。具体的には、図7に示すように水出口13から再生薬品を供給して集水管20内部を流下させる。再生薬品は、集水器30Bに設けられたスリット31の間から容器10内部に放出される。
【0039】
ここで、本実施形態では集水器30はガラスビーズ60の中に埋設されているのに対し、従来のイオン交換樹脂装置90では集水器30Bの周りもイオン交換樹脂50が充填されている。イオン交換樹脂50は、ガラスビーズ60に比して粒形および真比重が小さいので、スリット31から排出された再生薬品により容易に動かされる。このため、図8に示すように従来のイオン交換樹脂装置90では集水管20近傍に再生薬品の流路が形成され、再生薬品は集水管20の近くを多く流れ、容器10内壁付近のイオン交換樹脂50の再生が不十分となる。したがって、容器10内壁付近のイオン交換樹脂50まで十分に再生するためには多くの再生薬品が必要となる。
【0040】
これに対し、本実施形態で使用するガラスビーズ60は真比重が2.0以上で粒径も1〜3mm程度であるため、真比重が1.05〜1.3程度で粒径が0.5〜0.7(平均的には0.6)mm程度のイオン交換樹脂に比して流動しにくい。このため、スリット31から再生薬品を排出してもガラスビーズ60は容器10底部にほぼ固定された状態となる。また、ガラスビーズ60同士の間の隙間はイオン交換樹脂50同士の間の隙間より大きいため、再生薬品はガラスビーズ60の間を縦横に移動しやすい。このため、再生薬品はガラスビーズ60の間をまんべんなく通り、ガラスビーズ60の層の上部界面全体からほぼ均等に流れ、流速がある程度弱まった状態でイオン交換樹脂50の間を流れる。
【0041】
この結果、本発明に係るイオン交換樹脂装置1によれば、ガラスビーズ60の層の上方に形成されたイオン交換樹脂50の層の間を再生薬品がほぼ均一に流れる(図3参照)。このため、イオン交換樹脂50がほぼ均等に再生され、再生薬品の使用量を低減できる。また、採水時には被処理水が隙間の大きいガラスビーズ60の間を流れるため、後述するカバーをつけた場合でも、圧力損失を低減できる。このため、容器10に被処理水を給水するために水入口12に接続された給水管(図示せず)途中に設けたポンプ(図示せず)を動かす動力を低減できる。
【0042】
次に、図4および図5を参照して本発明の第2実施形態に係るイオン交換樹脂装置2について説明する。図4は、イオン交換樹脂装置2の一部断面模式図であり、図5はイオン交換樹脂装置2の集水管20近傍のみを拡大して示す一部断面模式図である。
【0043】
第2実施形態に係るイオン交換樹脂装置2は、集水器30基端面に接する取付板23を介して集水器30を取り囲むカバー40を設けた点が第1実施形態に係るイオン交換樹脂装置1と異なり、その他の点はイオン交換樹脂装置1と同様の構成となっている。取付板23は、集水器30の水平断面より20〜40mm程度大きい直径を有する略円盤状である。本実施形態では、取付板23の直径は約9cmであるがこれに限定されない。略円筒形のカバー40は、取付板23の円形の周辺部から容器10の底に向かって延びている。
【0044】
カバー40は、容器10の底面に近い側の端縁(以下、「先端」)が集水器30の円筒部分と円錐部分との境界とほぼ同じ位置に来るように延びており、先端縁は底面から25mm以内、具体的には容器10の底面から約15mm離れた位置にある。カバー40は、集水器30の円筒形部分の側面を取り囲んでおり、取付板23と接続された端縁(以下、「基端」)から先端までの長さは8cm程度である。カバー40の内壁から集水器30の側面までの直線距離は、本実施形態では約10mmであるが、これに限定されず、好ましくは5〜20mm程度とする。
【0045】
本実施形態では、集水器30の先端面がカバー40で覆われることがないようにカバー40の端面は開口している。これにより、容器10の底に達した水はカバー40の開口部からカバー40の内側に入り込み、また、イオン交換樹脂50を再生する際の再生薬品の流れを阻害するおそれを防止できる。ただし、カバー40の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、カバー40が集水器30の先端面の一部を覆うような面を有することは本発明の範囲から排除されない。
【0046】
カバー40の材質は特に限定されないが、金属イオンが溶出するおそれの少ない材質、例えばポリプロピレンおよびポリエチレン等の合成樹脂を使用できる。容器10内部の他の構成部材、すなわち集水管20、集水器30、および取付板23も同様の素材で構成できる。
【0047】
本実施形態に係るイオン交換樹脂装置2では、イオン交換樹脂50の層を通って容器10内を鉛直方向下向きに流れる液体は、集水器30側方から直接、集水器30に入り込まずにカバー40の外側面を伝って底面に達する。また、集水管20内部を流下して集水器30のスリット31から排出される液体は、カバー40の内側面を伝い、底面に達する。このため、再生薬品を容器10外へ排出させるために、濯ぎ用水としての純水を容器10のヘッド部11から底面側へ流下させた場合に容器10底部に滞留した再生薬品との置換が速やかに行なわれる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、イオン交換樹脂50を再生した後、再生薬品を洗い流すために使用する純水使用量を減少させ、再生薬品を押し流すために要する時間を低減できる。かかる効果をさらに向上させるため、集水器30の先端面にはスリット、および小孔等の細隙を形成してもよい。細隙は、液体を透過させる一方、イオン交換樹脂50およびガラスビーズ60を透過させない大きさであればよい。
【0049】
再生薬品を洗い流す純水の流れは、採水時の被処理水の流れと同一方向でもよく、再生時の再生薬品の流れと同一方向でもよい。つまり、イオン交換樹脂50の層を下方向に流れ集水管20内を上方向に流れるようにしてもよく、集水管20内を下向きに流れ、ガラスビーズ60の層を通ってイオン交換樹脂50の間を上向きに流れるようにしてもよい。
【0050】
上記実施形態は適宜、変更でき、例えば本実施形態のような小型のイオン交換樹脂装置1、2では集水器30は一つで足りるが、集水器30を2つ以上設けてもよい。集水器の設置数を複数にしてカバーを設ける場合、カバーを複数設けて各々が各集水器を覆うようにしてもよく、全体を覆うカバーを一つ設けてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ガラスビーズ60は直径が1〜3mm程度のほぼ真球であり、真比重は2.5程度である。しかし、集水器30を埋没させるための不活性粒子としてはこれに限定されず、他の粒状物を用いてもよい。
【0052】
本発明に係るイオン交換樹脂装置は、アニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂を単独で充填されてなる単床式のイオン交換樹脂装置に特に好適に使用できる。アニオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂装置の場合、再生薬品としては水酸化ナトリウム等の水溶液を使用すればよい。カチオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂装置の場合、再生薬品としては塩酸、硫酸等を使用すればよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0054】
[実施例1]
実施例1として、図1に示した上記実施形態に係るイオン交換樹脂装置1を2塔、互いに直列に接続して構成した純水製造装置を用いて通水試験を行なった。容器10には、ガラスビーズを容器10底面から13cmの高さまで充填した。集水器30は、先端が容器10底面から0.5cm、基端面が容器10底面から10cmとなるように配置した。このとき、ガラスビーズ60の層の上部界面は集水器30の基端面から3〜4cm上位に位置し、集水器30はガラスビーズ60の層の中に埋没した状態となった。ガラスビーズ60の層の上方には、イオン交換樹脂50を高さ0.9mで充填した。なお、イオン交換樹脂50の層の上部界面から開口までの高さは30cmとした。
【0055】
容器10に充填したイオン交換樹脂50としては、前段側のイオン交換樹脂装置1についてはカチオン交換樹脂、後段側のイオン交換樹脂装置1についてはアニオン交換樹脂とした。通水試験としては、この純水製造装置のカチオン交換樹脂を充填した前段側のイオン交換樹脂装置1について、ガラスビーズの充填効果を調べるものとした。このため、アニオン交換樹脂を充填した後段イオン交換樹脂装置1については、十分に再生されたアニオン交換樹脂を充填し、かつ、アニオン交換樹脂のイオン交換能力が失われる前に後段イオン交換樹脂装置1ごと交換した。
【0056】
通水試験では、上述した純水製造装置に所定量の水道水(電気伝導率15mS/m)を通水し、カチオン交換樹脂を充填した前段側のイオン交換樹脂装置1のカチオン交換樹脂の陽イオン交換能力が失われた後、再生薬品として濃度3%の塩酸を流量0.6m/hで水出口13から集水管20内へ供給した。実施例1では、再生薬品の供給時間は10分とした。続いて再生薬品の供給を停止し、水出口13から純水を流量0.6m/hで集水管20内部から容器10内へ流れるように供給し、再生薬品の流れと同一方向に流した。純水の供給による再生薬品の押し出し時間は90分とした。
【0057】
上記手順で再生を行なった前段側イオン交換樹脂装置1と上述した後段側イオン交換樹脂装置1とで構成される純水製造装置に、被処理水として水道水を通水し、再び脱イオン水を得る採水操作を行なった。この結果、再生終了後の採水開始から10時間経過後までの処理水(脱イオン水)水質は比抵抗2MΩ・cm以上を維持できた。
【0058】
[参考例]
参考例として、実施例1において純水を供給することによる再生薬品の押し出し時間を30分に短縮した。その他の条件は実施例1と同様にして再生を終えたイオン交換樹脂装置1に水道水を供給したところ、採水開始から30分後までの処理水(脱イオン水)の水質は比抵抗2MΩ・cmを下回った。しかしながら、採水開始から30分経過した後は、脱イオン水の水質は採水開始後10時間経過するまで比抵抗2MΩ・cm以上を維持できた。
【0059】
[実施例2]
図1のイオン交換樹脂装置1を用いる代わりに、図4に示した本発明の第2実施形態に係るイオン交換樹脂装置2を用い、参考例と同じ試験を行なった。実施例2では、採水開始直後から比抵抗2MΩ・cm以上の高い水質の脱イオン水を処理水として得ることができ、脱イオン水の水質は採水開始後10時間経過するまで比抵抗2MΩ・cm以上を維持できた。
【0060】
[比較例1]
比較例1として、図1のイオン交換樹脂装置1を用いる代わりに、図6に示す従来例に係るイオン交換樹脂装置90を用いて実施例1と同じ条件で試験を行なった。イオン交換樹脂装置90は、容器10底部にガラスビーズが充填されず、集水器30Bの先端(円錐頂点)から容器10底面までの距離が35mmであり、先端が尖っている点で実施例1のイオン交換樹脂装置1と異なる。その他の条件は実施例1と同様としたところ、再生終了後の採水開始から10分以内の時点で処理水の水質は比抵抗2MΩ・cmを下回り、その後、処理水の水質が比抵抗2MΩ・cmまで回復することは一度もなかった。このため、比較例1では、採水開始から10時間継続して比抵抗2MΩ・cm以上の処理水を得ることができなかった。
【0061】
[比較例2]
比較例2として、比較例1において再生薬品の供給時間を40分とした。その他の条件は実施例1および比較例1と同じ条件としたので、比較例2においては再生薬品の供給量は実施例1および比較例1の4倍となった。かかる再生操作を行なった比較例2については、再生終了後の採水開始から10時間経過後までの処理水(脱イオン水)水質は比抵抗2MΩ・cm以上を維持できた。
【0062】
表1に実施例1、2、参考例、および比較例1、2についてイオン交換樹脂装置の内部構成の概要、再生薬品および純水の供給時間、処理水水質を示す。処理水水質については、再生終了後の採水開始から10時間経過後までの処理水水質が比抵抗2MΩ・cmを維持できた場合を○、維持できなかった場合を×で示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示すように、本発明によれば再生薬品の使用量を少なくしてもイオン交換樹脂を十分に再生できることが示された。また、カバーを設けることで再生薬品を押し出す純水の使用量も低減できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、純水製造装置に用いられるイオン交換樹脂装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係るイオン交換樹脂装置の模式図である。
【図2】図1のイオン交換樹脂装置の一部拡大図である。
【図3】前記実施形態に係るイオン交換樹脂装置における水の挙動を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るイオン交換樹脂装置の一部拡大図である。
【図5】図4のイオン交換樹脂装置の一部拡大図である。
【図6】従来例に係るイオン交換樹脂装置での被処理水の流れを示す図である。
【図7】前記従来例に係るイオン交換樹脂装置での再生薬品の流れを示す図である。
【図8】図7のイオン交換樹脂装置の一部拡大図であり再生時の集水器付近を示す。
【符号の説明】
【0067】
1、2、90 イオン交換樹脂装置
10 容器
20 集水管
23 取付板
30 集水器
40 カバー
50 イオン交換樹脂
60 不活性粒子(ガラスビーズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成された開口端面および該開口端面に対向する底面を備えイオン交換樹脂が内部に充填される容器と、該容器内に設けられ該開口端面側から該底面側に延びる集水管と、該集水管の該底面側端縁に接続される集水器と、を含むイオン交換樹脂装置であって、
前記集水器が埋没するように前記容器内に充填される真比重2以上の不活性粒子をさらに含むイオン交換樹脂装置。
【請求項2】
前記集水器を取り囲むカバーをさらに含む請求項1に記載のイオン交換樹脂装置。
【請求項3】
前記集水器の前記底面側端縁と前記容器の底面との距離は、25mm以下である請求項1または2に記載のイオン交換樹脂装置。
【請求項4】
前記カバーの前記底面側端縁と前記容器の底面との距離は、25mm以下である請求項1から3のいずれかに記載のイオン交換樹脂装置。
【請求項5】
前記不活性粒子は、ガラスビーズである請求項1から4のいずれかに記載のイオン交換樹脂装置。
【請求項6】
前記集水器は、前記容器の底面と対向し細隙が形成された底面を有する請求項1から5のいずれかに記載のイオン交換樹脂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−245005(P2007−245005A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72078(P2006−72078)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】