イオン交換膜法電解槽
【課題】製作が容易で、かつ、イオン交換膜が破損せず、長期間安定に運転可能なイオン交換膜法電解槽を提供する。
【解決手段】電極支持部材が、少なくとも一部が弾性マット10で覆われている耐食性フレーム(A)9と、全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)13とから構成され、可撓性電極5と集電板7との間に挟持されて収容されているイオン交換膜法電解槽。好ましくは、可撓性陰極は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しないピン8によって、可撓性電極と電極支持部材とが集電板に固定されている。
【解決手段】電極支持部材が、少なくとも一部が弾性マット10で覆われている耐食性フレーム(A)9と、全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)13とから構成され、可撓性電極5と集電板7との間に挟持されて収容されているイオン交換膜法電解槽。好ましくは、可撓性陰極は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しないピン8によって、可撓性電極と電極支持部材とが集電板に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロルアルカリ電解を代表とする電解工業に用いられるイオン交換膜法電解槽に関する。即ち、所要エネルギーを低減する目的で開発した、陽極と陰極との距離を可及的に短くしたゼロギャップ電解槽であって、陰極が変形せず、イオン交換膜を破損せず、長時間安定的に電解操業ができるという特長を有するイオン交換膜電解槽の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クロルアルカリ電解を代表とするイオン交換膜法電解工業は、素材産業として重要な役割を果たしているが、電気エネルギーの消費量が多大である。そのため、イオン交換膜法電解工業の省エネルギー化は普遍の課題と位置付けられ、種々の研究開発が持続的に実施されている。
【0003】
電解時に消費する電気エネルギーは電解電圧に比例するため、電解電圧の削減が省エネルギー化に直結する。電解電圧の削減を目的に、陽極と陰極との距離を可及的に短くした、所謂、ゼロギャップ電解槽の研究開発が行われている。ゼロギャップ電解槽は陽極と陰極でイオン交換膜を挟持した構造で、電解液の電気抵抗を可及的に小さくでき、クロルアルカリ電解の省エネルギーに大きく貢献する。
【0004】
図1はゼロギャップ電解槽の断面構造の一例を示している。ゼロギャップ電解槽は、陽極室(1)と陰極室(2)がイオン交換膜(3)で区画され、陽極(4)と陰極(5)でイオン交換膜(3)が挟まれた構造を有する。イオン交換膜は1mm以下の薄い樹脂フィルムからなり、陽極及び/又は陰極を過度に押し当てるとイオン交換膜が破損するため、ゼロギャップ電解槽においては、陽極及び/又は陰極を適度な圧力で均一にイオン交換膜に押し当てる技術が重要である。
【0005】
このため、「イオン交換膜の表面に設けられた一方の電極として使用される比較的剛性の網目スクリーンと、前記イオン交換膜の他方の表面に設けられて他方の電極として使用される可撓性あるいは柔軟性の薄いスクリーンと、前記薄いスクリーンの外表面に設けられた弾性マット(弾力的圧縮性マット)」から構成されるイオン交換膜法電解槽が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、可撓性の電極を、弾性マットの弾性反発力でイオン交換膜に押し当て、一方の剛性電極との間でイオン交換膜を挟持するゼロギャップ電解槽である。
【0006】
特許文献1に記載のゼロギャップ電解槽は、例えば、図1の可撓性陰極(5)の背面に設置された電極支持部材(6)が弾性マットからなり、該弾性マットの弾性反発力で可撓性陰極(5)が剛性陽極(4)に向かいイオン交換膜(3)に押し当てられる構造を有する。その電極支持部材(6)の外側には集電体(7)が設置されている。
特許文献1に記載のゼロギャップ電解槽においては、陽極(4)及び/又は陰極(5)を適度な圧力で均一にイオン交換膜(3)に押し当てることが可能となり、数平方メートルの電解面積を有する工業サイズのゼロギャップ電解槽であっても製作可能となった。
【0007】
その後、該ゼロギャップ電解槽の性能改良が幅広く行われ、「可撓性あるいは柔軟性の薄い電極に、0.3mm以下の厚みであり、1ヶ所の孔の面積が0.05〜1.0mm2、かつ、開孔率が20%以上の多孔体を使用し、電極が直径0.1〜1mmのワイヤーの集合体よりなる弾性マットを使用したゼロギャップ電解槽」が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、「耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材を電極支持部材に使用したゼロギャップ電解槽」が開示されている(例えば、特許文献3参照)。これは、金属製コイル体で構成される弾性マットを耐食性フレームが形成する空間に固定したものであり、弾性マットの取り扱いが容易で、かつ、再使用が可能であるという特長を有する。特許文献3に記載される電極支持部材を図9および図10(図9のa部断面を示す)に例示する。
【0009】
さらに、「可撓性電極及び弾性マットが、可撓性電極及び弾性マットを貫通し、弾性マットの裏面に設置された多孔体集電板の孔に係合するピンで固定されたゼロギャップ電解槽」が提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4に記載の固定手段は、例えば、図2と、そのbでの断面を示す図3に示したように、固定用のピン(8)が、可撓性陰極(5)と金属製コイル体(10)からなる弾性マットを貫通し、集電板(7)の孔に係合し、可撓性陰極(5)及び金属製コイル体(10)が集電板(7)に固定されるように構成される。
【0010】
この構造の場合、その製作過程において、ピン(8)を集電板(7)の孔に係合する作業時に、金属性コイル体(10)を圧縮しながらピン(8)を集電板(7)側に向けて押し込む必要がある。ピン(8)に過度の力が加わることにより、ピン(8)が変形したり、0.3mm以下の薄い多孔体からなる可撓性陰極(5)が過度に変形、あるいは破損したりする場合があった。
【0011】
また、ゼロギャップ電解槽を組立てる場合、可撓性陰極(5)がイオン交換膜(3)に接触し、陽極(4)側に押される。この時、陽極(4)は剛性のためイオン交換膜(3)は移動せず、可撓性陰極(5)と集電体(7)との距離が縮まり金属製コイル体(10)が圧縮され、金属製コイル体(10)の弾性反発力で可撓性陰極(5)がイオン交換膜(3)に密着する結果、陽極(4)と可撓性陰極(5)の距離が可及的に短くなる。
【0012】
特許文献4のゼロギャップ電解槽は、図3に示した通り、ピン(8)に接している部分の可撓性陰極(5)に窪みが生じている。そのため、電解槽組み立て時にイオン交換膜(3)で押された可撓性陰極(5)が集電板(7)に移動する時に、ピン(8)近傍の可撓性陰極(5)は移動しないため、図4に示したように、ピン近傍の可撓性陰極(5)が変形し、可撓性陰極(5)の変形部分(11)がイオン交換膜(3)側に局部的に突出する不都合が生じていた。
その結果、運転中にピン(8)近傍の陰極変形部(11)がイオン交換膜(3)と擦れて、イオン交換膜が破損し易くなるなど、電解槽組立て時や運転中にイオン交換膜が破損し易いという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭63−53272号公報
【特許文献2】特開昭59−173281号公報
【特許文献3】特許第3860132号公報
【特許文献4】特開2000−178781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記の通り、従来技術のゼロギャップ電解槽は、その組立て時に弾性マットや可撓性陰極を固定する作業が困難で、かつ、電解槽組立て時や運転中にイオン交換膜が破損し易いという課題を有している。
本発明の目的は、製作が簡便で、かつ、イオン交換膜の破損原因となる陰極変形部分が生じないゼロギャップ電解槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電極支持部材が可撓性電極と集電板との間に挟持されて収容される構成を有するイオン交換膜法電解槽であって、該電極支持部材は、少なくとも一部が弾性マットで覆われている耐食性フレーム(A)と、全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)とから構成されることを特徴とするイオン交換膜法電解槽を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供するイオン交換膜法電解槽は、従来のゼロギャップ電解槽では困難であった弾性マットと可撓性陰極を固定する作業が極めて簡便である。さらに、イオン交換膜の破損原因となる陰極変形部分が生じないため、長期間安定的な運転が可能となる特段の効果を奏する。また、電極性能が劣化した場合の電極交換が、極めて容易に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ゼロギャップ電解槽を示した断面図である。
【図2】従来の陰極取付け状態を示した平面図である。
【図3】図2のb部断面図である。
【図4】電解槽使用時における図2のb部断面図である。
【図5】本発明の電極支持部材の一例を示した平面図である。
【図6】図5のa−a線断面図である。
【図7】本発明の陰極取付け状態の一例を示した平面図である。
【図8】図7のb部断面図である。
【図9】従来の弾性部材を示した平面図である。
【図10】図9のa−a線断面図である。
【図11】電解槽使用時における図7のb部断面図である。
【図12】本発明の電極支持部材の他の一例を示した平面図である。
【図13】本発明の電極支持部材の他の一例を示した平面図である。
【図14】本発明のピンの一例を示した図である。
【図15】本発明のピンの一例を示した断面図である。
【図16】本発明のピンの一例を示した図である。
【図17】集電板の孔とピンの先端部の関係を示す図である。
【図18】集電板の孔とピンの先端部の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
以下の記載においては、剛性陽極(4)及び可撓性陰極(5)について説明するが、電極の極性を逆にして使用する態様、即ち、剛性陰極(4)及び可撓性陽極(5)として使用する態様も本願発明の範囲とし、特許請求の範囲では、両方の態様を含めて可撓性電極として表現する。
また、本発明のイオン交換膜法電解槽の応用例として食塩電解に用いる場合を説明するが、食塩電解以外の、例えば、塩化カリウム水溶液電解やアルカリ水電解などにも好適に利用できる。
【0019】
本発明のイオン交換膜法電解槽は、所謂、ゼロギャップ電解槽であり、その断面構造は図1で示される。陽極室(1)と陰極室(2)がイオン交換膜(3)で区画されており、電極支持部材(6)は可撓性陰極(5)と集電板(7)の間に挟持された形態で収容されている。
【0020】
剛性陽極(4)は特に限定はなく、従来知られているものを適時用いればよい。例えば、チタンからなるエキスパンドメタルに、イリジウム酸化物及び/又はルテニウム酸化物などの塩素発生電極触媒を担持してなる塩素発生電極が広く知られている。
イオン交換膜(3)は特に限定はなく、従来知られているものを適時用いればよい。例えば、スルホン酸基やカルボン酸基などの陽イオン交換基を有するフッ素樹脂フィルムからなるイオン交換膜が広く知られている。
【0021】
可撓性陰極(5)は柔軟であればよい。食塩電解用の可撓性陰極(5)としては、電解時に水素を発生する水素発生電極や酸素ガスを還元する酸素ガス拡散電極が広く知られており、その何れもが好適に用いられる。特に、電解時に水素を発生する水素発生陰極が好ましい。
水素発生電極は、通常、ニッケル基材に水素発生電極触媒を担持した、所謂、活性陰極が適用される。現在、種々の活性陰極が開発・実用化されており、本発明はこれらの活性陰極の何れもが使用可能である。
【0022】
活性陰極に用いられるニッケル基材には特に限定はないが、ニッケル製のエキスパンドメタルなどの多孔板が一般的である。ニッケル基材の厚みは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。ニッケル基材が厚すぎると可撓性が不足し、均一なゼロギャップが確保できず、本発明の省エネルギー効果が得られない場合があり、場合によってはイオン交換膜が過度に押されて破損が生じる。逆に、ニッケル基材の厚みの下限は、ニッケル基材がハンドリング可能であればよく、特に限定されないが、通常、0.01mm以上である。
【0023】
活性陰極のニッケル基材に担持する水素発生触媒は特に限定はないが、白金、白金合金、ルテニウム酸化物などの貴金属触媒が好ましい。貴金属触媒を用いることで少量の触媒担持量で、長期間にわたり水素過電圧を低く抑えることができるため、電解槽の安定した運転可能期間をより一層延長することができる。
【0024】
集電板(7)としては導電性で耐食性に優れた金属板を用いる。例えば、ニッケルやステンレスの板が好適に用いられる。また、銅などの導電性に優れた金属板の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。
集電板(7)の厚みは特に限定はないが、1〜3mmが好ましい。1mm未満であると剛性が不足し、本発明の効果が得られない場合がある。また、厚すぎると材料コストが悪化する。
【0025】
集電板(7)は、ピン(8)と係合する孔を有する。ピン(8)を設置する位置のみに孔を設けてもよいし、集電板(7)を多孔板とし、一部の孔にピン(8)を係合させてもよい。通常、集電板(7)は多孔板とし、ピン(8)を係合させると共に、イオン交換膜(3)や可撓性陰極(5)の部位と集電板(7)裏面の部位との間で電解液やガスが円滑に流通できるようにする。
【0026】
本発明のイオン交換膜法電解槽においては、前記可撓性陰極(5)と前記集電板(7)の間に電極支持部材(6)が設置されている。電極支持部材(6)は、表面の少なくとも1部が弾性マットで被覆されている。
本発明で用いる電極支持部材(6)の形態は、例えば、図5、並びに、図5のa−a線断面図を示した図6に例示される。耐食性フレーム(A)(9)の一部に金属性コイル体(10)が巻回されて弾性マットが形成されている。電極支持部材(6)の表面の少なくとも一部は弾性マットにより被覆されている。
【0027】
図5に例示される電極支持部材(6)は、数本の耐食性フレーム(A)(9)、4本の耐食性フレーム(B)(13)及び2本のフレーム連結材(12)から構成される。電極支持部材(6)は、その外周部が耐食性フレーム(B)(13)で構成され、横方向2本の耐食性フレーム(B)(13)間は2本のフレーム連結材(12)で橋渡しされ、フレーム連結部(12)間は2本以上の耐食性フレーム(A)(9)で橋渡しされている。フレーム連結部(12)の面及び耐食性フレーム(A)(9)の面の少なくとも一部は金属製コイル体(10)の弾性マットで覆われている。
【0028】
耐食性フレーム(A)(9)は、電解液に耐食性がある材料で構成され、通常、ニッケルやステンレスの丸棒や角棒などで構成される。例えば、1〜3mm径のニッケル丸棒を組み合わせて製造する。また、銅などの導電性に優れた金属の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。
【0029】
金属製コイル体(10)はコイル状の形状をした金属であり、例えば、金属の線材をロール加工した螺旋状の金属コイル体(10)が適用される。用いる線材は、ニッケルやステンレスなどの耐食性が高いものが好ましく使用され、また、銅などの導電性に優れた金属線材の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。銅の線材をロール加工した螺旋状の金属コイル体(10)にニッケル被覆を施し、耐食性を高めたものを適用してもよい。
【0030】
金属コイル体(10)のコイル巻き径(コイルの見掛け上の直径)は特に限定はないが、通常、3乃至10mmとすればよい。コイル巻き径が3mmより小さいと弾性マットの圧縮可能厚みが不足し、本発明の効果が発揮されない場合がある。逆に、10mmより大きいとハンドリング性が悪化する場合があり、また、圧縮時に塑性変形を受けて弾性反発力が不十分となる場合がある。
金属コイル体(10)のコイル厚みは特に限定はないが、通常、0.005〜1mm、好ましくは0.01〜0.1mmとすればよい。コイルが1mmより厚いと圧縮時の弾性反発力が異常に強くなり本発明の効果が得られない場合がある。逆に、0.005mmより薄いとハンドリング時にコイルが破損する場合がある。
【0031】
金属コイル体(10)は、耐食性フレーム(A)(9)に巻回されて弾性マットを形成する。図5、およびそのa−a断面を示す図6に示されるように、金属コイル体(10)を、長方形状に組み合わせた耐食性フレーム(A)(9)に巻回して弾性マットを形成することができる。別態様として、2本だけを並行に配置した耐食性フレーム(A)を用いて、これに金属コイル体(10)を巻回してもよい。金属コイル体(10)を耐食性フレーム(A)(9)に巻回する場合、図5を例にとれば、長方形形状の耐食性フレーム(A)(9)を構成する4本の枠体の内、対向する2本の間にほぼ均一な密度となるように、少なくとも1本の金属コイル体(10)を巻回すればよい。
耐食性フレーム(A)(9)に巻回する金属コイル体(10)の量は、弾性マットの弾性反発力が所望の値となるように適宜調整する。巻回する量は、コイルの巻き径、厚み並びに材質で異なる。弾性反発力は、通常、非圧縮時の厚みに対し60〜80%まで弾性マットを圧縮した時の弾性反発力が平方センチメートル当たり10〜150gとすればよい。
【0032】
上記は、本発明の電極支持部材(6)の弾性マットを有する空間部分の構成の好ましい実施形態の1つである。次に、本発明の電極支持部材(6)の弾性マットを有さない空間部分の構成の好ましい実施形態の例を説明する。
【0033】
図5に示したように、金属コイル体(10)が巻回された耐食性フレーム(A)(9)には、耐食性フレーム(B)(13)が、フレーム連結材(12)を介して連結されている。図5は、耐食性フレーム(B)(13)が長方形形状の耐食性フレーム(A)(9)の周囲を全て囲んだ例であるが、耐食性フレーム(B)(13)が耐食性フレーム(A)(9)の一部を囲む場合であっても本発明の効果を得ることが可能である。
【0034】
耐食性フレーム(B)(13)とフレーム連結材(12)の要件は、何れも耐食性フレーム(A)(9)と同一である。すなわち、耐食性フレーム(B)(13)とフレーム連結材(12)は電解液に耐食性がある材料で構成され、通常、ニッケルやステンレスの丸棒や角棒などで製造すればよい。例えば、1〜3mm径のニッケル丸棒が好ましく適用でき、銅などの導電性に優れた金属の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。
【0035】
耐食性フレーム(A)(9)、耐食性フレーム(B)(13)、及びフレーム連結材(12)は、同一材料を用いる必要はないが、通常、これらは同一材料からなる丸棒や角棒で構成される。
フレーム連結材(12)と耐食性フレーム(A)(9)及び/又は耐食性フレーム(B)(13)を連結する方法は特に制限はなく、溶接やネジ留めで連結すればよい。
耐食性フレーム(A)(9)と耐食性フレーム(B)(13)が形成する空間の少なくとも一部には弾性マットが存在せず、弾性マットを有さない空間が形成されている。従って、図5で示される電極支持部材(6)は、弾性マットを有する空間と、弾性マットを有さない空間を併せ持つ、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0036】
本発明の電極支持部材(6)の好ましい他の実施形態を、図12および図13に例示する。図12は、二つの耐食性フレーム(A)(9)の各々に金属コイル体(10)が巻回されており、これらはフレーム連結材(12)で互いに連結されている。図13は、二つの耐食性フレーム(A)(9)の各々に金属コイル体(10)が巻回されており、これらはフレーム連結材(12)で互いに連結され、かつ、耐食性フレーム(B)(13)がフレーム連結剤(12)で耐食性フレーム(A)(9)に連結され、耐食性フレーム(B)(13)には金属コイル体(10)が巻回されていない。
以上の通り、複数の耐食性フレーム(A)(9)を連結部材(12)で連結したり、さらに、その周囲の一部に耐食性フレーム(B)(13)を連結部材(12)で連結したりすることにより、本発明の弾性マットを有する空間と、弾性マットを有さない空間を併せ持つ電極支持部材(6)を構成することが可能である。
【0037】
本発明の電極支持部材(6)は、可撓性陰極(5)と集電板(7)と間に収容され、イオン交換膜法電解槽が構成される。電極支持部材(6)を可撓性陰極(5)と集電板(7)の間に収容する方法については特に限定はない。しかし、可撓性陰極(5)や電極支持部材(6)が電解槽組立時や電解槽運転時に位置がずれると、イオン交換膜(3)を破損したり、電圧が上昇したりといった、好ましくない状態が生じる場合があるので、可撓性陰極(5)及び電極支持部材(6)はイオン交換膜法電解槽に固定することが好ましい。
【0038】
次に、本発明のイオン交換膜法電解槽における可撓性陰極(5)及び電極支持部材(6)をイオン交換膜法電解槽に固定する好ましい実施形態を説明する。
本発明のイオン交換膜法電解槽では、集電板(7)は、溶接などにより電解槽に固定されている。可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)とを集電板(7)に固定することで、可撓性陰極(5)及び電極支持部材(6)をイオン交換膜法電解槽に固定する。例えば、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通するピン(8)で可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)が集電板(7)に固定される。ピン(8)は可撓性陰極(5)は貫通するが、電極支持部材(6)の弾性マットを有する空間は貫通しないように構成される。
【0039】
図7、および図7のb部断面を示す図8は、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)を集電板(7)に固定する好ましい形態を例示したものである。ピン(8)は電極支持部材(6)の弾性マットを有さない空間部分のみで、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通し固定する。
例えば、図7に示されている様に、電極支持部材(6)は、耐食性フレーム(B)(13)と連結部材(12)との間の弾性マットを有しない空間部分、及び、耐食性フレーム(B)(13)と耐食性フレーム(A)(9)との間の弾性マットを有しない空間部分に、ピン(8)で貫通させ、可撓性陰極(5)と集電板(7)に固定されている。
【0040】
ピン(8)は耐食性があり、かつ、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通して固定可能なものであれば如何なるものでもよい。材質はニッケル、ステンレス、フッ素樹脂などの耐食性材料が好ましく使用できる。しかし、フッ素樹脂製のピン(8)を用いると、可撓性陰極(5)やイオン交換膜(3)を傷つける可能性が低いのでより好ましい。
【0041】
図14は、本発明に使用される好適なピン(8)の一例を示す。ピン(8)は円形や多角形の薄板からなる頭部(14)と先端部(15)を棒状部材(16)で連結した形状を有する。先端部(15)は、集電板(7)の孔(18)と係合する形状であり、可撓性陰極(5)側から先端部(15)を挿入し、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通させることで、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)とを集電板(7)に固定する。
【0042】
本発明で言う「孔と係合する形状」とは、孔に挿入可能であり、かつ、挿入後は自然に抜け落ちることはないが、人為的に抜くことが可能な形状を言う。図15は、図14のピン(8)の断面図を示す。先端部(15)は切れ込み(17)を有し、自然状態では切れ込み(17)は開いており、集電板(図示せず)(7)の孔の内径よりやや大きいが、切れ込み(17)をすぼめると集電板(図示せず)(7)の孔の内径より小さくなる。従って、孔へ挿入する時は切れ込み(17)がすぼまり孔に容易に挿入できるが、挿入後は切れ込み(17)が元に戻り、孔から自然に抜けることはない。しかし、人力等で大きな力をかけると切れ込み(17)がすぼまり、孔から引く抜くことが可能である。
【0043】
図16は別の好ましいピン(8)の形態を例示したもので、先端部(15)は角柱の形状である。一方、集電板(7)は、例えば、エキスパンドメタルに代表される菱形形状の多数の孔を有する多孔板で構成される。ピン(8)の先端部(15)と集電板(7)の孔(18)を図17に示す関係に位置させることで、先端部(15)を孔(18)に容易に挿入又は抜き取ることができる。一方、ピン(8)の先端部(15)を集電板(7)の孔(18)に挿入した後、約90°回転させて図18に示す関係に位置させると、ピン(8)が集電板(7)から抜け落ちることはない。
【0044】
上記に、集電板(7)の孔(18)に係合するピン(8)の先端部(15)の好ましい実施形態の一例を記載したが、他の形態であっても、先端部(15)が集電板(7)の孔(18)に挿入可能であり、かつ、挿入後は自然に抜け落ちることはないが、人為的に抜くことが可能な形状であれば、本発明の効果が得られることは無論である。
【0045】
本発明で用いられる電極支持部材(6)は、弾性マットを有する空間と弾性マットを有さない空間部分を併せ持つ新規な形状を有しており、電極支持部材(6)の弾性マットを有さない空間部分の少なくとも一部を集電板(7)に固定することにより、電極支持部材(6)をイオン交換膜電解槽に固定することが可能となる。例えば、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通するピン(8)で可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)が集電板(7)に固定される。かくして、ピン(8)が可撓性陰極は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しない構造を持つことができる。
【0046】
この場合、図8と図11に断面構造を示した通り、ピン(8)の取り付け作業や電解槽組立作業、並びに電解実施時の何れの場合でも、ピン(8)の受ける反発力は微々たるものであり、ピン(8)を集電板(7)の孔に係合する作業時にピン(8)が変形したり、可撓性陰極(5)が過度に変形、あるいは破損したりすることは皆無である。
【0047】
また、電解槽組立時に可撓性陰極(5)がイオン交換膜(3)に押されて移動するが、この時、弾性マット部の可撓性陰極(5)とピン(8)周辺の可撓性陰極(5)との移動距離は同一のため、陰極変形部(11)は発生しない。従って、電解槽組立て時や運転中にイオン交換膜が破損することもない。
なお、水素発生型の陰極に代えて、酸素ガス拡散電極を陰極に用いることも可能であることは無論である。
【0048】
図9と図10に例示した従来の電極支持部材(6)には、本発明でいう「全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)」が存在しない。そのため、可撓性陰極(5)は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しない位置にピン(8)を取り付けた場合、集電板(7)に可撓性陰極(5)を固定することは可能であるが、電極支持部材(6)は固定できず、本発明の効果は得られない。全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)が存在しない電極支持部材(6)を取り付けるためには、ピン(8)で弾性マットを貫通させることが必須であり、上記のとおり、電解槽組立て時や電解運転中にイオン交換膜が破損しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のイオン交換膜法食塩電解槽は、従来のゼロギャップ電解槽の課題を克服し、なおかつ、ゼロギャップ電解槽の有する省エネルギー性能が発揮される。すなわち、電解工業の電気分解に必要なエネルギーを低く抑え、長期間安定した運転が可能となる。
上記の特長を活かして、本発明のイオン交換膜法電解槽は、食塩電解などクロルアルカリ電解に代表される電解工業で有利に採用される。塩化カリウム水溶液電解やアルカリ水電解などにも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 陽極室
2 陰極室
3 イオン交換膜
4 剛性陽極又は陽極
5 可撓性陰極又は陰極
6 電極支持部材
7 集電板
8 ピン
9 耐食性フレーム(A)
10 金属製コイル体
11 陰極変形部
12 フレーム連結材
13 耐食性フレーム(B)
14 頭部
15 先端部
16 棒状部材
17 切れ込み
18 集電板の孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロルアルカリ電解を代表とする電解工業に用いられるイオン交換膜法電解槽に関する。即ち、所要エネルギーを低減する目的で開発した、陽極と陰極との距離を可及的に短くしたゼロギャップ電解槽であって、陰極が変形せず、イオン交換膜を破損せず、長時間安定的に電解操業ができるという特長を有するイオン交換膜電解槽の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クロルアルカリ電解を代表とするイオン交換膜法電解工業は、素材産業として重要な役割を果たしているが、電気エネルギーの消費量が多大である。そのため、イオン交換膜法電解工業の省エネルギー化は普遍の課題と位置付けられ、種々の研究開発が持続的に実施されている。
【0003】
電解時に消費する電気エネルギーは電解電圧に比例するため、電解電圧の削減が省エネルギー化に直結する。電解電圧の削減を目的に、陽極と陰極との距離を可及的に短くした、所謂、ゼロギャップ電解槽の研究開発が行われている。ゼロギャップ電解槽は陽極と陰極でイオン交換膜を挟持した構造で、電解液の電気抵抗を可及的に小さくでき、クロルアルカリ電解の省エネルギーに大きく貢献する。
【0004】
図1はゼロギャップ電解槽の断面構造の一例を示している。ゼロギャップ電解槽は、陽極室(1)と陰極室(2)がイオン交換膜(3)で区画され、陽極(4)と陰極(5)でイオン交換膜(3)が挟まれた構造を有する。イオン交換膜は1mm以下の薄い樹脂フィルムからなり、陽極及び/又は陰極を過度に押し当てるとイオン交換膜が破損するため、ゼロギャップ電解槽においては、陽極及び/又は陰極を適度な圧力で均一にイオン交換膜に押し当てる技術が重要である。
【0005】
このため、「イオン交換膜の表面に設けられた一方の電極として使用される比較的剛性の網目スクリーンと、前記イオン交換膜の他方の表面に設けられて他方の電極として使用される可撓性あるいは柔軟性の薄いスクリーンと、前記薄いスクリーンの外表面に設けられた弾性マット(弾力的圧縮性マット)」から構成されるイオン交換膜法電解槽が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、可撓性の電極を、弾性マットの弾性反発力でイオン交換膜に押し当て、一方の剛性電極との間でイオン交換膜を挟持するゼロギャップ電解槽である。
【0006】
特許文献1に記載のゼロギャップ電解槽は、例えば、図1の可撓性陰極(5)の背面に設置された電極支持部材(6)が弾性マットからなり、該弾性マットの弾性反発力で可撓性陰極(5)が剛性陽極(4)に向かいイオン交換膜(3)に押し当てられる構造を有する。その電極支持部材(6)の外側には集電体(7)が設置されている。
特許文献1に記載のゼロギャップ電解槽においては、陽極(4)及び/又は陰極(5)を適度な圧力で均一にイオン交換膜(3)に押し当てることが可能となり、数平方メートルの電解面積を有する工業サイズのゼロギャップ電解槽であっても製作可能となった。
【0007】
その後、該ゼロギャップ電解槽の性能改良が幅広く行われ、「可撓性あるいは柔軟性の薄い電極に、0.3mm以下の厚みであり、1ヶ所の孔の面積が0.05〜1.0mm2、かつ、開孔率が20%以上の多孔体を使用し、電極が直径0.1〜1mmのワイヤーの集合体よりなる弾性マットを使用したゼロギャップ電解槽」が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、「耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材を電極支持部材に使用したゼロギャップ電解槽」が開示されている(例えば、特許文献3参照)。これは、金属製コイル体で構成される弾性マットを耐食性フレームが形成する空間に固定したものであり、弾性マットの取り扱いが容易で、かつ、再使用が可能であるという特長を有する。特許文献3に記載される電極支持部材を図9および図10(図9のa部断面を示す)に例示する。
【0009】
さらに、「可撓性電極及び弾性マットが、可撓性電極及び弾性マットを貫通し、弾性マットの裏面に設置された多孔体集電板の孔に係合するピンで固定されたゼロギャップ電解槽」が提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4に記載の固定手段は、例えば、図2と、そのbでの断面を示す図3に示したように、固定用のピン(8)が、可撓性陰極(5)と金属製コイル体(10)からなる弾性マットを貫通し、集電板(7)の孔に係合し、可撓性陰極(5)及び金属製コイル体(10)が集電板(7)に固定されるように構成される。
【0010】
この構造の場合、その製作過程において、ピン(8)を集電板(7)の孔に係合する作業時に、金属性コイル体(10)を圧縮しながらピン(8)を集電板(7)側に向けて押し込む必要がある。ピン(8)に過度の力が加わることにより、ピン(8)が変形したり、0.3mm以下の薄い多孔体からなる可撓性陰極(5)が過度に変形、あるいは破損したりする場合があった。
【0011】
また、ゼロギャップ電解槽を組立てる場合、可撓性陰極(5)がイオン交換膜(3)に接触し、陽極(4)側に押される。この時、陽極(4)は剛性のためイオン交換膜(3)は移動せず、可撓性陰極(5)と集電体(7)との距離が縮まり金属製コイル体(10)が圧縮され、金属製コイル体(10)の弾性反発力で可撓性陰極(5)がイオン交換膜(3)に密着する結果、陽極(4)と可撓性陰極(5)の距離が可及的に短くなる。
【0012】
特許文献4のゼロギャップ電解槽は、図3に示した通り、ピン(8)に接している部分の可撓性陰極(5)に窪みが生じている。そのため、電解槽組み立て時にイオン交換膜(3)で押された可撓性陰極(5)が集電板(7)に移動する時に、ピン(8)近傍の可撓性陰極(5)は移動しないため、図4に示したように、ピン近傍の可撓性陰極(5)が変形し、可撓性陰極(5)の変形部分(11)がイオン交換膜(3)側に局部的に突出する不都合が生じていた。
その結果、運転中にピン(8)近傍の陰極変形部(11)がイオン交換膜(3)と擦れて、イオン交換膜が破損し易くなるなど、電解槽組立て時や運転中にイオン交換膜が破損し易いという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭63−53272号公報
【特許文献2】特開昭59−173281号公報
【特許文献3】特許第3860132号公報
【特許文献4】特開2000−178781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記の通り、従来技術のゼロギャップ電解槽は、その組立て時に弾性マットや可撓性陰極を固定する作業が困難で、かつ、電解槽組立て時や運転中にイオン交換膜が破損し易いという課題を有している。
本発明の目的は、製作が簡便で、かつ、イオン交換膜の破損原因となる陰極変形部分が生じないゼロギャップ電解槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電極支持部材が可撓性電極と集電板との間に挟持されて収容される構成を有するイオン交換膜法電解槽であって、該電極支持部材は、少なくとも一部が弾性マットで覆われている耐食性フレーム(A)と、全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)とから構成されることを特徴とするイオン交換膜法電解槽を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供するイオン交換膜法電解槽は、従来のゼロギャップ電解槽では困難であった弾性マットと可撓性陰極を固定する作業が極めて簡便である。さらに、イオン交換膜の破損原因となる陰極変形部分が生じないため、長期間安定的な運転が可能となる特段の効果を奏する。また、電極性能が劣化した場合の電極交換が、極めて容易に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ゼロギャップ電解槽を示した断面図である。
【図2】従来の陰極取付け状態を示した平面図である。
【図3】図2のb部断面図である。
【図4】電解槽使用時における図2のb部断面図である。
【図5】本発明の電極支持部材の一例を示した平面図である。
【図6】図5のa−a線断面図である。
【図7】本発明の陰極取付け状態の一例を示した平面図である。
【図8】図7のb部断面図である。
【図9】従来の弾性部材を示した平面図である。
【図10】図9のa−a線断面図である。
【図11】電解槽使用時における図7のb部断面図である。
【図12】本発明の電極支持部材の他の一例を示した平面図である。
【図13】本発明の電極支持部材の他の一例を示した平面図である。
【図14】本発明のピンの一例を示した図である。
【図15】本発明のピンの一例を示した断面図である。
【図16】本発明のピンの一例を示した図である。
【図17】集電板の孔とピンの先端部の関係を示す図である。
【図18】集電板の孔とピンの先端部の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
以下の記載においては、剛性陽極(4)及び可撓性陰極(5)について説明するが、電極の極性を逆にして使用する態様、即ち、剛性陰極(4)及び可撓性陽極(5)として使用する態様も本願発明の範囲とし、特許請求の範囲では、両方の態様を含めて可撓性電極として表現する。
また、本発明のイオン交換膜法電解槽の応用例として食塩電解に用いる場合を説明するが、食塩電解以外の、例えば、塩化カリウム水溶液電解やアルカリ水電解などにも好適に利用できる。
【0019】
本発明のイオン交換膜法電解槽は、所謂、ゼロギャップ電解槽であり、その断面構造は図1で示される。陽極室(1)と陰極室(2)がイオン交換膜(3)で区画されており、電極支持部材(6)は可撓性陰極(5)と集電板(7)の間に挟持された形態で収容されている。
【0020】
剛性陽極(4)は特に限定はなく、従来知られているものを適時用いればよい。例えば、チタンからなるエキスパンドメタルに、イリジウム酸化物及び/又はルテニウム酸化物などの塩素発生電極触媒を担持してなる塩素発生電極が広く知られている。
イオン交換膜(3)は特に限定はなく、従来知られているものを適時用いればよい。例えば、スルホン酸基やカルボン酸基などの陽イオン交換基を有するフッ素樹脂フィルムからなるイオン交換膜が広く知られている。
【0021】
可撓性陰極(5)は柔軟であればよい。食塩電解用の可撓性陰極(5)としては、電解時に水素を発生する水素発生電極や酸素ガスを還元する酸素ガス拡散電極が広く知られており、その何れもが好適に用いられる。特に、電解時に水素を発生する水素発生陰極が好ましい。
水素発生電極は、通常、ニッケル基材に水素発生電極触媒を担持した、所謂、活性陰極が適用される。現在、種々の活性陰極が開発・実用化されており、本発明はこれらの活性陰極の何れもが使用可能である。
【0022】
活性陰極に用いられるニッケル基材には特に限定はないが、ニッケル製のエキスパンドメタルなどの多孔板が一般的である。ニッケル基材の厚みは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。ニッケル基材が厚すぎると可撓性が不足し、均一なゼロギャップが確保できず、本発明の省エネルギー効果が得られない場合があり、場合によってはイオン交換膜が過度に押されて破損が生じる。逆に、ニッケル基材の厚みの下限は、ニッケル基材がハンドリング可能であればよく、特に限定されないが、通常、0.01mm以上である。
【0023】
活性陰極のニッケル基材に担持する水素発生触媒は特に限定はないが、白金、白金合金、ルテニウム酸化物などの貴金属触媒が好ましい。貴金属触媒を用いることで少量の触媒担持量で、長期間にわたり水素過電圧を低く抑えることができるため、電解槽の安定した運転可能期間をより一層延長することができる。
【0024】
集電板(7)としては導電性で耐食性に優れた金属板を用いる。例えば、ニッケルやステンレスの板が好適に用いられる。また、銅などの導電性に優れた金属板の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。
集電板(7)の厚みは特に限定はないが、1〜3mmが好ましい。1mm未満であると剛性が不足し、本発明の効果が得られない場合がある。また、厚すぎると材料コストが悪化する。
【0025】
集電板(7)は、ピン(8)と係合する孔を有する。ピン(8)を設置する位置のみに孔を設けてもよいし、集電板(7)を多孔板とし、一部の孔にピン(8)を係合させてもよい。通常、集電板(7)は多孔板とし、ピン(8)を係合させると共に、イオン交換膜(3)や可撓性陰極(5)の部位と集電板(7)裏面の部位との間で電解液やガスが円滑に流通できるようにする。
【0026】
本発明のイオン交換膜法電解槽においては、前記可撓性陰極(5)と前記集電板(7)の間に電極支持部材(6)が設置されている。電極支持部材(6)は、表面の少なくとも1部が弾性マットで被覆されている。
本発明で用いる電極支持部材(6)の形態は、例えば、図5、並びに、図5のa−a線断面図を示した図6に例示される。耐食性フレーム(A)(9)の一部に金属性コイル体(10)が巻回されて弾性マットが形成されている。電極支持部材(6)の表面の少なくとも一部は弾性マットにより被覆されている。
【0027】
図5に例示される電極支持部材(6)は、数本の耐食性フレーム(A)(9)、4本の耐食性フレーム(B)(13)及び2本のフレーム連結材(12)から構成される。電極支持部材(6)は、その外周部が耐食性フレーム(B)(13)で構成され、横方向2本の耐食性フレーム(B)(13)間は2本のフレーム連結材(12)で橋渡しされ、フレーム連結部(12)間は2本以上の耐食性フレーム(A)(9)で橋渡しされている。フレーム連結部(12)の面及び耐食性フレーム(A)(9)の面の少なくとも一部は金属製コイル体(10)の弾性マットで覆われている。
【0028】
耐食性フレーム(A)(9)は、電解液に耐食性がある材料で構成され、通常、ニッケルやステンレスの丸棒や角棒などで構成される。例えば、1〜3mm径のニッケル丸棒を組み合わせて製造する。また、銅などの導電性に優れた金属の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。
【0029】
金属製コイル体(10)はコイル状の形状をした金属であり、例えば、金属の線材をロール加工した螺旋状の金属コイル体(10)が適用される。用いる線材は、ニッケルやステンレスなどの耐食性が高いものが好ましく使用され、また、銅などの導電性に優れた金属線材の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。銅の線材をロール加工した螺旋状の金属コイル体(10)にニッケル被覆を施し、耐食性を高めたものを適用してもよい。
【0030】
金属コイル体(10)のコイル巻き径(コイルの見掛け上の直径)は特に限定はないが、通常、3乃至10mmとすればよい。コイル巻き径が3mmより小さいと弾性マットの圧縮可能厚みが不足し、本発明の効果が発揮されない場合がある。逆に、10mmより大きいとハンドリング性が悪化する場合があり、また、圧縮時に塑性変形を受けて弾性反発力が不十分となる場合がある。
金属コイル体(10)のコイル厚みは特に限定はないが、通常、0.005〜1mm、好ましくは0.01〜0.1mmとすればよい。コイルが1mmより厚いと圧縮時の弾性反発力が異常に強くなり本発明の効果が得られない場合がある。逆に、0.005mmより薄いとハンドリング時にコイルが破損する場合がある。
【0031】
金属コイル体(10)は、耐食性フレーム(A)(9)に巻回されて弾性マットを形成する。図5、およびそのa−a断面を示す図6に示されるように、金属コイル体(10)を、長方形状に組み合わせた耐食性フレーム(A)(9)に巻回して弾性マットを形成することができる。別態様として、2本だけを並行に配置した耐食性フレーム(A)を用いて、これに金属コイル体(10)を巻回してもよい。金属コイル体(10)を耐食性フレーム(A)(9)に巻回する場合、図5を例にとれば、長方形形状の耐食性フレーム(A)(9)を構成する4本の枠体の内、対向する2本の間にほぼ均一な密度となるように、少なくとも1本の金属コイル体(10)を巻回すればよい。
耐食性フレーム(A)(9)に巻回する金属コイル体(10)の量は、弾性マットの弾性反発力が所望の値となるように適宜調整する。巻回する量は、コイルの巻き径、厚み並びに材質で異なる。弾性反発力は、通常、非圧縮時の厚みに対し60〜80%まで弾性マットを圧縮した時の弾性反発力が平方センチメートル当たり10〜150gとすればよい。
【0032】
上記は、本発明の電極支持部材(6)の弾性マットを有する空間部分の構成の好ましい実施形態の1つである。次に、本発明の電極支持部材(6)の弾性マットを有さない空間部分の構成の好ましい実施形態の例を説明する。
【0033】
図5に示したように、金属コイル体(10)が巻回された耐食性フレーム(A)(9)には、耐食性フレーム(B)(13)が、フレーム連結材(12)を介して連結されている。図5は、耐食性フレーム(B)(13)が長方形形状の耐食性フレーム(A)(9)の周囲を全て囲んだ例であるが、耐食性フレーム(B)(13)が耐食性フレーム(A)(9)の一部を囲む場合であっても本発明の効果を得ることが可能である。
【0034】
耐食性フレーム(B)(13)とフレーム連結材(12)の要件は、何れも耐食性フレーム(A)(9)と同一である。すなわち、耐食性フレーム(B)(13)とフレーム連結材(12)は電解液に耐食性がある材料で構成され、通常、ニッケルやステンレスの丸棒や角棒などで製造すればよい。例えば、1〜3mm径のニッケル丸棒が好ましく適用でき、銅などの導電性に優れた金属の表面をニッケル被覆して耐食性を高めたものも好適に用いられる。
【0035】
耐食性フレーム(A)(9)、耐食性フレーム(B)(13)、及びフレーム連結材(12)は、同一材料を用いる必要はないが、通常、これらは同一材料からなる丸棒や角棒で構成される。
フレーム連結材(12)と耐食性フレーム(A)(9)及び/又は耐食性フレーム(B)(13)を連結する方法は特に制限はなく、溶接やネジ留めで連結すればよい。
耐食性フレーム(A)(9)と耐食性フレーム(B)(13)が形成する空間の少なくとも一部には弾性マットが存在せず、弾性マットを有さない空間が形成されている。従って、図5で示される電極支持部材(6)は、弾性マットを有する空間と、弾性マットを有さない空間を併せ持つ、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0036】
本発明の電極支持部材(6)の好ましい他の実施形態を、図12および図13に例示する。図12は、二つの耐食性フレーム(A)(9)の各々に金属コイル体(10)が巻回されており、これらはフレーム連結材(12)で互いに連結されている。図13は、二つの耐食性フレーム(A)(9)の各々に金属コイル体(10)が巻回されており、これらはフレーム連結材(12)で互いに連結され、かつ、耐食性フレーム(B)(13)がフレーム連結剤(12)で耐食性フレーム(A)(9)に連結され、耐食性フレーム(B)(13)には金属コイル体(10)が巻回されていない。
以上の通り、複数の耐食性フレーム(A)(9)を連結部材(12)で連結したり、さらに、その周囲の一部に耐食性フレーム(B)(13)を連結部材(12)で連結したりすることにより、本発明の弾性マットを有する空間と、弾性マットを有さない空間を併せ持つ電極支持部材(6)を構成することが可能である。
【0037】
本発明の電極支持部材(6)は、可撓性陰極(5)と集電板(7)と間に収容され、イオン交換膜法電解槽が構成される。電極支持部材(6)を可撓性陰極(5)と集電板(7)の間に収容する方法については特に限定はない。しかし、可撓性陰極(5)や電極支持部材(6)が電解槽組立時や電解槽運転時に位置がずれると、イオン交換膜(3)を破損したり、電圧が上昇したりといった、好ましくない状態が生じる場合があるので、可撓性陰極(5)及び電極支持部材(6)はイオン交換膜法電解槽に固定することが好ましい。
【0038】
次に、本発明のイオン交換膜法電解槽における可撓性陰極(5)及び電極支持部材(6)をイオン交換膜法電解槽に固定する好ましい実施形態を説明する。
本発明のイオン交換膜法電解槽では、集電板(7)は、溶接などにより電解槽に固定されている。可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)とを集電板(7)に固定することで、可撓性陰極(5)及び電極支持部材(6)をイオン交換膜法電解槽に固定する。例えば、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通するピン(8)で可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)が集電板(7)に固定される。ピン(8)は可撓性陰極(5)は貫通するが、電極支持部材(6)の弾性マットを有する空間は貫通しないように構成される。
【0039】
図7、および図7のb部断面を示す図8は、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)を集電板(7)に固定する好ましい形態を例示したものである。ピン(8)は電極支持部材(6)の弾性マットを有さない空間部分のみで、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通し固定する。
例えば、図7に示されている様に、電極支持部材(6)は、耐食性フレーム(B)(13)と連結部材(12)との間の弾性マットを有しない空間部分、及び、耐食性フレーム(B)(13)と耐食性フレーム(A)(9)との間の弾性マットを有しない空間部分に、ピン(8)で貫通させ、可撓性陰極(5)と集電板(7)に固定されている。
【0040】
ピン(8)は耐食性があり、かつ、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通して固定可能なものであれば如何なるものでもよい。材質はニッケル、ステンレス、フッ素樹脂などの耐食性材料が好ましく使用できる。しかし、フッ素樹脂製のピン(8)を用いると、可撓性陰極(5)やイオン交換膜(3)を傷つける可能性が低いのでより好ましい。
【0041】
図14は、本発明に使用される好適なピン(8)の一例を示す。ピン(8)は円形や多角形の薄板からなる頭部(14)と先端部(15)を棒状部材(16)で連結した形状を有する。先端部(15)は、集電板(7)の孔(18)と係合する形状であり、可撓性陰極(5)側から先端部(15)を挿入し、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通させることで、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)とを集電板(7)に固定する。
【0042】
本発明で言う「孔と係合する形状」とは、孔に挿入可能であり、かつ、挿入後は自然に抜け落ちることはないが、人為的に抜くことが可能な形状を言う。図15は、図14のピン(8)の断面図を示す。先端部(15)は切れ込み(17)を有し、自然状態では切れ込み(17)は開いており、集電板(図示せず)(7)の孔の内径よりやや大きいが、切れ込み(17)をすぼめると集電板(図示せず)(7)の孔の内径より小さくなる。従って、孔へ挿入する時は切れ込み(17)がすぼまり孔に容易に挿入できるが、挿入後は切れ込み(17)が元に戻り、孔から自然に抜けることはない。しかし、人力等で大きな力をかけると切れ込み(17)がすぼまり、孔から引く抜くことが可能である。
【0043】
図16は別の好ましいピン(8)の形態を例示したもので、先端部(15)は角柱の形状である。一方、集電板(7)は、例えば、エキスパンドメタルに代表される菱形形状の多数の孔を有する多孔板で構成される。ピン(8)の先端部(15)と集電板(7)の孔(18)を図17に示す関係に位置させることで、先端部(15)を孔(18)に容易に挿入又は抜き取ることができる。一方、ピン(8)の先端部(15)を集電板(7)の孔(18)に挿入した後、約90°回転させて図18に示す関係に位置させると、ピン(8)が集電板(7)から抜け落ちることはない。
【0044】
上記に、集電板(7)の孔(18)に係合するピン(8)の先端部(15)の好ましい実施形態の一例を記載したが、他の形態であっても、先端部(15)が集電板(7)の孔(18)に挿入可能であり、かつ、挿入後は自然に抜け落ちることはないが、人為的に抜くことが可能な形状であれば、本発明の効果が得られることは無論である。
【0045】
本発明で用いられる電極支持部材(6)は、弾性マットを有する空間と弾性マットを有さない空間部分を併せ持つ新規な形状を有しており、電極支持部材(6)の弾性マットを有さない空間部分の少なくとも一部を集電板(7)に固定することにより、電極支持部材(6)をイオン交換膜電解槽に固定することが可能となる。例えば、可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)と集電板(7)とを貫通するピン(8)で可撓性陰極(5)と電極支持部材(6)が集電板(7)に固定される。かくして、ピン(8)が可撓性陰極は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しない構造を持つことができる。
【0046】
この場合、図8と図11に断面構造を示した通り、ピン(8)の取り付け作業や電解槽組立作業、並びに電解実施時の何れの場合でも、ピン(8)の受ける反発力は微々たるものであり、ピン(8)を集電板(7)の孔に係合する作業時にピン(8)が変形したり、可撓性陰極(5)が過度に変形、あるいは破損したりすることは皆無である。
【0047】
また、電解槽組立時に可撓性陰極(5)がイオン交換膜(3)に押されて移動するが、この時、弾性マット部の可撓性陰極(5)とピン(8)周辺の可撓性陰極(5)との移動距離は同一のため、陰極変形部(11)は発生しない。従って、電解槽組立て時や運転中にイオン交換膜が破損することもない。
なお、水素発生型の陰極に代えて、酸素ガス拡散電極を陰極に用いることも可能であることは無論である。
【0048】
図9と図10に例示した従来の電極支持部材(6)には、本発明でいう「全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)」が存在しない。そのため、可撓性陰極(5)は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しない位置にピン(8)を取り付けた場合、集電板(7)に可撓性陰極(5)を固定することは可能であるが、電極支持部材(6)は固定できず、本発明の効果は得られない。全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)が存在しない電極支持部材(6)を取り付けるためには、ピン(8)で弾性マットを貫通させることが必須であり、上記のとおり、電解槽組立て時や電解運転中にイオン交換膜が破損しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のイオン交換膜法食塩電解槽は、従来のゼロギャップ電解槽の課題を克服し、なおかつ、ゼロギャップ電解槽の有する省エネルギー性能が発揮される。すなわち、電解工業の電気分解に必要なエネルギーを低く抑え、長期間安定した運転が可能となる。
上記の特長を活かして、本発明のイオン交換膜法電解槽は、食塩電解などクロルアルカリ電解に代表される電解工業で有利に採用される。塩化カリウム水溶液電解やアルカリ水電解などにも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 陽極室
2 陰極室
3 イオン交換膜
4 剛性陽極又は陽極
5 可撓性陰極又は陰極
6 電極支持部材
7 集電板
8 ピン
9 耐食性フレーム(A)
10 金属製コイル体
11 陰極変形部
12 フレーム連結材
13 耐食性フレーム(B)
14 頭部
15 先端部
16 棒状部材
17 切れ込み
18 集電板の孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極支持部材が可撓性電極と集電板との間に挟持されて収容されている構成を有するイオン交換膜法電解槽であって、該電極支持部材は、少なくとも一部が弾性マットで覆われている耐食性フレーム(A)と、全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)とから構成されることを特徴とするイオン交換膜法電解槽。
【請求項2】
可撓性電極と電極支持部材とがピンで集電板に固定されており、該ピンは、可撓性陰極は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しない構造を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項3】
弾性マットが金属製コイル体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項4】
可撓性電極及び集電板に孔が設けられ、これらの孔及び電極支持部材の弾性マットを有していない空間を貫通するピンによって、可撓性電極と電極支持部材とが集電板に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項5】
可撓性電極が水素発生陰極であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項1】
電極支持部材が可撓性電極と集電板との間に挟持されて収容されている構成を有するイオン交換膜法電解槽であって、該電極支持部材は、少なくとも一部が弾性マットで覆われている耐食性フレーム(A)と、全く弾性マットで覆われていない耐食性フレーム(B)とから構成されることを特徴とするイオン交換膜法電解槽。
【請求項2】
可撓性電極と電極支持部材とがピンで集電板に固定されており、該ピンは、可撓性陰極は貫通するが、電極支持部材の弾性マットを有する空間部分は貫通しない構造を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項3】
弾性マットが金属製コイル体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項4】
可撓性電極及び集電板に孔が設けられ、これらの孔及び電極支持部材の弾性マットを有していない空間を貫通するピンによって、可撓性電極と電極支持部材とが集電板に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のイオン交換膜法電解槽。
【請求項5】
可撓性電極が水素発生陰極であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のイオン交換膜法電解槽。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−140652(P2012−140652A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292305(P2010−292305)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000105040)クロリンエンジニアズ株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000105040)クロリンエンジニアズ株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
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