説明

イオン伝導性重合体およびイオン伝導性重合体を含んでなるメンブラン

【課題】重合体電解質メンブラン(PEM)燃料電池用に好適なイオン伝導性重合体を提供する。
【解決手段】反復単位の少なくとも80%が、イオン伝導性区域およびスペーサー区域を含んでなるイオン伝導性重合体を開示する。イオン伝導性区域は、一個以上の芳香族基を含む芳香族骨格を有し、少なくとも一個のイオン伝導性官能基が各芳香族基に付加している。スペーサー区域は、少なくとも4個の芳香族基を含む芳香族骨格を有し、該芳香族骨格にはイオン伝導性官能基が付加していない。この重合体は、燃料電池メンブランとして使用するのに好適であり、メンブラン電極組立構造に取り入れることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規な重合体およびそれらの重合体を含んでなるメンブランに関する。
【0002】
スルホン化されたポリアリールエーテルスルホンおよびポリアリールエーテルケトン重合体は、有用なメンブラン材料であり、濾過工程、例えば逆浸透およびナノ濾過、に使用されている。スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)は、市販のビスフェノール−Aを基剤とするポリ(エーテルスルホン)の重合後スルホン化により製造されている。
【化1】

【0003】
米国特許第5,693,740号明細書は、式(I)のスルホン化されたポリアリールエーテルスルホン共重合体を開示している。
【化2】

【0004】
類似の重合体が、重合体電解質メンブラン(PEM)燃料電池におけるメンブラン用に開示されている。重合体電解質メンブランに最も一般的に使用されている重合体は、過フッ化スルホン酸重合体、例えばNafion(商品名)およびFlemion(商品名)、である。しかし、過フッ化重合体は高価であり、高温(100℃を超える)におけるイオン伝導率が限られている。スルホン化されたポリアリールエーテルスルホンおよびポリアリールエーテルケトン重合体が代替重合体電解質メンブラン材料として研究されている。
【0005】
米国特許第5,985,477号明細書は、3種類のモノマー
【化3】

から形成された共重合体をスルホン化することにより得られるスルホン化された共重合体を含んでなる重合体電解質を開示している。
【0006】
国際特許第WO02/25764号明細書は、下記のスルホン化された共重合体を開示している。
【化4】

この共重合体は、熱的安定性が改良され、プロトン伝導性が改良された重合体電解質メンブランを与えると云われている。
【0007】
本発明者らの目的は、PEM燃料電池用に好適なイオン伝導性重合体を提供することである。これらの重合体は、かなりのイオン伝導性を有するべきであり、燃料電池環境中で安定しているべきである。これらの重合体は、燃料電池温度で水に溶解すべきでなく、燃料電池温度で熱的に安定しているべきである。
【0008】
そこで、本発明は、
[1]
少なくとも80%の反復単位が、
a)一個以上の芳香族基を含む芳香族骨格を有するイオン伝導性区域と、及び
少なくとも一個のイオン伝導性官能基が各芳香族基に付加されてなり、
b)少なくとも4個又は6個の芳香族基を含む芳香族骨格を有するスペーサー区域とを含んでなり、
イオン伝導性官能基が前記芳香族骨格に付加されていない、重合体が提案される。
好ましくは、
少なくとも80%の反復単位が、
a)一個以上の芳香族基を含む芳香族骨格を有するイオン伝導性区域と、及び
ここで、少なくとも一個のイオン伝導性官能基が各芳香族基に付加されてなり、
b)少なくとも4個又は6個の芳香族基を含む芳香族骨格を有するスペーサー区域とを含んでなり、
ここで、イオン伝導性官能基が前記芳香族骨格に付加されていないものであり、
少なくとも80%の重合体鎖が、鎖の長さに沿ってイオン伝導性区域およびスペーサー区域を交互に含んでなるものである、重合体が提案される。
[2]
少なくとも95%の前記反復単位が、前記イオン伝導性区域および前記スペーサー区域を含んでなる、[1]に記載の重合体が提案される。
[3]
前記イオン伝導性区域中にある一個以上の芳香族基が、フェニレン、ナフチレンまたはアントラセニレン基である、[1]または[2]に記載の重合体が提案される。
[4]
前記イオン伝導性区域の前記芳香族骨格中にある各芳香族基が、電子供与基に隣接している、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[5]
前記電子供与基がエーテル基である、[4]に記載の重合体が提案される。
[6]
前記少なくとも一個のイオン伝導性官能基がスルホン酸基である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[7]
前記スペーサー区域における芳香族基の数と、前記イオン伝導性区域における芳香族基の数との比が、少なくとも2:1である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[8]
前記スペーサー区域における前記少なくとも4個の芳香族基が、フェニレン、ナフチレンまたはアントラセニレン基である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[9]
前記スペーサー区域における前記少なくとも4個の芳香族基が、電子求引基により接続されている、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[10]
前記電子求引基がスルホンまたはケトン基である、[9]に記載の重合体が提案される。
[11]
等価重量が800gmol−1未満である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[12]
固有粘度が1.0dl/gを超える、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の重合体が提案される。
[13]
[1]〜[12]のいずれか一項に記載の重合体を含んでなる、重合体溶液が提案される。
[14]
[1]〜[12]のいずれか一項に記載の重合体を含んでなる、重合体電解質メンブランが提案される。
[15]
[1]〜[12]のいずれか一項に記載の重合体を含んでなる、基材上の電気触媒層が提案される。
[16]
[14]に記載の重合体電解質メンブランおよび/または[15]に記載の電気触媒層を含んでなる、メンブラン電極組立構造が提案される。
【0009】
本重合体は、「反復単位」、すなわち重合体鎖に沿って多数回反復される原子の群から形成されている。本重合体は、2種類以上の反復単位からなることができるが、反復単位の少なくとも80%は、イオン伝導性区域とスペーサー区域の両方を含んでなる。
【0010】
好ましくは、反復単位の少なくとも80%が、実質的にイオン伝導性区域とスペーサー区域からなる。
【0011】
本発明の重合体は、反復単位から形成され、その際、反復単位の少なくとも80%、好適には少なくとも95%、好ましくはすべてが、イオン伝導性区域およびスペーサー区域を含んでなる。イオン伝導性反復単位および非伝導性反復単位から形成された統計的共重合体は公知である。そのような共重合体は、重合体鎖の長さに沿ってイオン伝導性区域および非伝導性区域が不規則に分布しているであろう。本発明の重合体では、重合体中の反復単位の少なくとも80%がイオン伝導性区域および非伝導性であるスペーサー区域を含む。従って、重合体鎖の大部分が、鎖の長さに沿ってイオン伝導性区域およびスペーサー区域を交互に含む。イオン伝導性区域およびスペーサー区域の間隔および頻度は、統計的共重合体におけるよりも、はるかに、より規則的である。
【0012】
イオン伝導性区域の芳香族骨格は、一個以上の芳香族基を含み、好ましくは1〜3個の芳香族基、最も好ましくは1または2個の芳香族基を含む。これらの芳香族基は、フェニレン、ナフチレンまたはアントラセニレン基でよいが、好ましくはフェニレン基である。好ましくは、イオン伝導性区域の芳香族骨格中の各芳香族基は、電子供与基、例えばエーテル基(−O−)またはチオエーテル基(−S−)、好ましくはエーテル基、に隣接している。イオン伝導性官能基、例えばスルホン酸基、は、芳香族基上に、電子供与基に対してオルトおよびパラ位置で容易に導入される。
【0013】
芳香族骨格中のフェニレン基は、1,4、1,3または1,2結合で、好ましくは1,4結合で、接続基または他の芳香族基に付加するのが好適である。芳香族骨格中のナフチレン基は、2,6、2,7、1,5または1,4結合で、接続基または他の芳香族基に付加するのが好適である。イオン伝導性区域に好ましい芳香族骨格は、
【化5a】

【化5b】

である。
【0014】
イオン伝導性官能基は、スルホン酸またはホスホン酸基が好適であり、好ましくはスルホン酸基である。イオン伝導性官能基は、芳香族基に隣接するすべての電子供与基に対してオルト位置にあるのが好適である。1または2個のイオン伝導性官能基が各芳香族基に付加しているのが好適である。好ましいイオン伝導性区域は、
【化6】

である。
【0015】
非イオン系スペーサー区域の芳香族骨格は、少なくとも4個の芳香族基、好適には少なくとも6個の芳香族基、好ましくは少なくとも7個の芳香族基を含む。スペーサー区域における芳香族基の数と、イオン伝導性区域における芳香族基の数との比は、少なくとも2:1であるのが好適であり、好ましくは少なくとも3:1である。この比は、重合体の等価重量(equivalent weight)に影響を及ぼす。芳香族基は、フェニレン、ナフチレンまたはアントラセニレン基でよいが、好ましくはフェニレン基である。芳香族基は、電子求引基、例えばスルホンまたはケトン基、により接続されるのが好適であるか、もしくは他の芳香族基に直接付加することもできる。これらの芳香族基は、電子供与基、例えばエーテル基、に接続していないのが好適である。あるいは、芳香族基が電子供与基に接続している場合、これらの芳香族基は、電子求引基にも接続している。
【0016】
好ましい実施態様では、イオン伝導性区域における芳香族基は、電子供与基に接続され、スペーサー区域における芳香族基は、電子供与基に接続されないか、または電子求引基および電子供与基に接続される。重合体は、イオン伝導性基を重合体鎖上に導入することにより、例えばスルホン化により、製造することができ、そのイオン伝導性基は、電子供与により活性化された芳香族基、すなわちイオン伝導性区域における基、の上に導入され、活性化されていない基、すなわちスペーサー区域区域中の基、の上には導入されない。
【0017】
非イオン系スペーサー区域の芳香族骨格中にあるフェニレン基は、1,4、1,3または1,2結合で、好ましくは1,4結合で、接続基または他の芳香族基に付加するのが好適である。芳香族骨格中のナフチレン基は、2,6、2,7、1,5または1,4結合で、接続基または他の芳香族基に付加するのが好適である。スペーサー区域に好ましい芳香族骨格は、
【化7a】

【化7b】

【化7c】

である。
【0018】
スペーサー区域にある芳香族基は、非イオン伝導性置換基を含むことができるが、好ましくは置換基を全く含まない。
【0019】
本発明の重合体は、等価重量が1000gmol−1未満であるのが好適であり、好ましくは800gmol−1未満である。等価重量は、1モルのNaOHを中和するのに必要な、酸形態にある重合体の重量(グラム)である。重合体の伝導性は、通常、活性イオン系化学種の濃度に比例するので、低EW重合体は、高い伝導性を有する。
【0020】
重合体の固有粘度は、0.5dLg−1を超えるのが好適であり、好ましくは1.0dLg−1を超える。重合体が1.0dLg−1を超える固有粘度を有する場合、その重合体は良好な被膜形成特性を有し、重合体メンブランの形成に好適であると思われる。さらに、その重合体は、良好な機械的強度を有し、機械的劣化に対する耐性を有すると思われる。
【0021】
この重合体は、第一工程が2種類のモノマーの縮合重合である製法により製造するのが好適であり、その際、第一のモノマーが、末端水酸基を含む芳香族骨格を有し、第二のモノマーが末端クロロまたはフルオロ基を含む芳香族骨格を有する。例えば
【化8】

重合反応は、溶剤、例えばジフェニルスルホン、中、温度220℃以上で行うのが好適である。
【0022】
本発明の重合体は、イオン伝導性基を重合体中に、例えばスルホン化により導入することにより、与えられる。
【化9】

【0023】
この例では、重合体を濃硫酸で処理し、スルホン酸基を、電子供与性エーテル基に隣接する芳香族基上に導入する。
【0024】
縮合重合用のモノマーは、容易に入手できるか、または当業者には良く知られている方法により製造することができる。例えば、末端クロロ基を有するモノマーは、フリーデル−クラフツ反応により、製造することができる。
【化10a】

【化10b】

【0025】
本重合体は、スルホン酸基をモノマー中に導入してから、縮合重合させることによっても、製造することができ、例えば下に示すモノマーの重合により、本発明の重合体を得ることができよう。
【化11】

【0026】
本発明は、本発明の重合体を含んでなる重合体溶液をさらに提供する。この重合体溶液は、重合体を極性溶剤、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAc)、に溶解させることにより、調製できる。
【0027】
本発明は、本発明の重合体を含んでなる重合体電解質メンブランをさらに提供する。このメンブランは、典型的には濃度が5〜20%w/vである重合体溶液から注型することができる。例えばGardnerナイフを使用して注型することにより、溶液の薄い被膜(約100〜1000μm)が得られる。溶剤は、高温で、所望により減圧下で蒸発させることができる。この薄い被膜を水に浸漬し、残留溶剤をすべて置き換えるのが好適である。メンブランは、重合体溶液を支持体材料、例えば膨脹PTFEメンブラン、上に堆積させることによっても、製造できる。
【0028】
本発明の重合体溶液は、燃料電池に使用する電気触媒層中にイオン伝導性重合体を取り入れることにも使用できる。従って、本発明は、電気触媒層が本発明の重合体を含んでなる、基材上の電気触媒層をさらに提供する。用語「電気触媒」は、当業者には良く理解されているように、電気化学的反応を促進することができる触媒を意味する。
【0029】
本発明は、本発明の重合体電解質メンブランおよび/または電気触媒層を含んでなる、メンブラン電極組立構造(MEA)をさらに提供する。MEAは、水素燃料電池または直接メタノール燃料電池に使用できる。
【0030】
本発明の重合体の燃料電池メンブランとしての使用を詳細に説明したが、本重合体は、他の用途、例えば濾過またはイオン交換方法、にも使用することを意図している。ここで、本発明を例により説明するが、これらの例は、本発明を制限するものではない。
【0031】
例1
モノマーAの合成
【化12a】

【化12b】

ビフェニル(10g、0.065mol)および4−クロロベンゼンスルホニルクロリド(13.69g、0.065mol)をトリクロロベンゼン(3mL)に入れた混合物を、攪拌しながら110℃に加熱した。無水塩化第二鉄(0.05g、0.0003mmol)を加え、150℃で16時間攪拌した。冷却した固体をメタノール(200mL)と共に攪拌した。生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させ、酢酸から再結晶させ、4−(4’−クロロベンゼンスルホニル)ビフェニル(13.9g、65%)、m.p.169℃(lit.171〜173℃)を得た。
【0032】
イソフタロイルジクロリド(4.0g、0.0197mol)、4−(4’−クロロベンゼンスルホニル)ビフェニル(14.24g、0.043mol)、および塩化アルミニウム(13.08g、0.098mol)をトリクロロベンゼン(35mL)中で、HClの放出が事実上停止するまで、3時間、攪拌しながら150℃に加熱した。冷却後、粘性溶液を、水および濃HClの混合物(250mL/20mL)中に注ぎ込んだ。水相を分離し、黄色の粘性生成物をヘキサン(50mL)で処理し、次いでメタノール(50mL)中で攪拌した。白色−黄色の粉末を減圧下で一晩乾燥させ、次いでDMF(100mL)から再結晶させ、モノマーA(6.0g、収率42%)を白色粉末として得た。
【0033】
モノマーAは、m.p.284℃、m/z MALDI-TOF-MS[100%(M+H)]786.36、C4428Clに対する計算値787.71、HNMR(CDCl/CFCOOH、5/1)δ(ppm)7.57(AA’BB’系,4H)、7.75−7.85(m,9H)、7.93−7.99(m,8H)、8.07(AA’BB’系,4H)、8.14および8.17(dd,2H)、8.28(br,s,1H)、13C(CDCl/CFCOOH、5/1)δ(ppm)128.24、128.65、129.04、129.37、130.49、131.92、135、135.4、136.07、137.45、139.95、141.63、144.9、145.72を有していた。
【0034】
【化13】

【0035】
モノマーA(5.00g、0.0064mol)、4,4’−ビフェノール(1.18g、0.0064mol)およびKCO(0.922g、0.0067mol)を秤量し、ジフェニルスルホン(DPS)35gと共に反応器に入れた。次いで、反応器を乾燥窒素で20分間掃気してから加熱した。温度制御プログラムは、220℃で開始し、反応混合物を、DPSが完全に融解するまでこの温度に維持し、その時点で機械的攪拌機を始動させた。次いで、温度を290℃に2時間かけて上昇させ、さらに3時間保持した。次いで、粘性溶液をアルミニウムシート上に注ぎ、冷却後、固体生成物を粉砕し、沸騰メタノールで2回抽出してからすり潰し、微粉を得た。次いで、この粉末を沸騰メタノールでさらに2回、高温(60℃)脱イオン水で1回抽出して残留塩を除去し、最後に再度メタノールで抽出した。得られた粉末を110℃で減圧乾燥させ、固有粘度(I.V.)1.36dlg−1、ガラス転移温度(T)247℃の淡いクリーム色の重合体4.97g(収率87%)を得た。
【0036】
【化14】

【0037】
機械的攪拌機およびPTFEパドルを取り付けた500mL三口丸底フラスコ中で、重合体(5g)を、98%硫酸(A.R.等級)70mLに攪拌しながら5分間かけて加えた。室温でさらに20分間攪拌した後、フラスコを油浴中で60℃に加熱し、16時間攪拌した。得られた透明で粘性の淡黄色溶液を冷却し、攪拌している脱イオン水に、PTFE製のこし器(孔径1mm)を通し、こし器中の重合体溶液の深さを約1cmに維持しながら、徐々に加えた。これによって、水中で凝固する際に、一様な重合体ビーズが形成された。凝固が完了した時、ビーズを粗いガラスシンター上に濾別し、脱イオン水(1L)中、室温で30分間攪拌し、次いで濾過した。洗浄液の導電率が10μs未満になるまで、この工程を数回繰り返した。次いで、得られたビーズを空気流中、75℃で乾燥させ、最後に75℃、減圧下で、一定重量になるまで乾燥させた。イオン伝導性重合体の収量は4.8g、I.V.=2.54dlg−1であった。
【0038】
例2
【化15】

重合工程で4,4’−ビフェノールの代わりに4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(2.135g、0.0064mol)を使用した以外は、例1を繰り返した。重合工程の収量は6.4g(90%)、I.V.=0.57dlg−1、T=230℃であった。スルホン化工程の収量は6.5gで、I.V.=1.5dlg−1であった。
【0039】
例3
モノマーBの合成
【化16】

ビフェニル(96.02g、0.632mol)をトリクロロベンゼン(640mL)に入れ、攪拌している溶液に、塩化アルミニウム(91g、0.174mol)を2回に分けて加えた。次いで、この溶液に、4−フルオロベンゾイルクロリド(70mL、0.593mol)を滴下漏斗から40℃で1時間かけて加え、次いでHClの放出が停止するまで、温度を100℃に6時間上昇させた。この混合物を室温に冷却し、氷/HCl混合物(約2L)中に注ぎ込み、一晩攪拌した。水をデカンテーションし、白色スラッジをメタノールと共に強く攪拌した。粗製物を濾過により回収し、メタノールで洗浄し、次いで80℃で一晩減圧乾燥させた。この生成物(110g)をトルエンから2回再結晶させ、4−(4’−フルオロベンゾイル)ビフェニル(77g、47%)、m.p.149℃(lit.148.5〜149℃)を得た。
【0040】
イソフタロイルジクロリド(10.152g、0.05mol)、4−(4−フルオロベンゾイル)ビフェニル(29.01g、0.105mol)、および塩化アルミニウム(33.25g、0.249mol)をトリクロロベンゼン(150mL)中で、HClの放出が停止するまで、6時間、攪拌しながら140℃に加熱した。次いで、混合物を氷/HCl混合物(2L)中に注ぎ込み、一晩攪拌し、次いで70℃に加熱し、水/HClデカンテーションした。次いで、スラリーをメタノールと共に強く攪拌し、生成物を濾別し、メタノールで2回、アセトンで2回洗浄し、80℃で減圧乾燥させ、粗製物(29g)を得た。これをNMPから1回、ジクロロ酢酸から1回再結晶させ、モノマーB(14g、41%)を灰色がかった白色の結晶性粉末として得た。
【0041】
モノマーBは、m.p.310℃、HNMR(CDCl/CFCOH、4/1)δ(ppm)7.22−7.30(dd,4H)、7.80−7.99(m,17H)、8.02−8.05(d,4H)、8.19−8.23(dd,2H)、8.34(br,s,1H)、13CNMRδ(ppm)116.3、116.6、128.0、128.2、129.7、131.8、132.0、132.3、132.8、134.0、134.2、135.6、135.7、136.5、137.5、145.2、145.9、164.9、169.0、200.1(CO)、200.3(CO)を有していた。
【0042】
重合
モノマーB(5g、0.00732mol)、4,4’−ビフェノール(1.364g、0.00732mol)および炭酸カリウム(1.063g、0.00769mol)を秤量し、ジフェニルスルホン(DPS)36gと共に反応器に入れた。重合手順は、重合温度が350℃で4時間であった以外は、例1に記載した手順と同様であった。重合体(6g、98%)は、I.V.=1.7dlg−1およびm.p.422℃であった。
【0043】
スルホン化
重合体(5g)を、例1に記載する手順と同じ手順を使用してスルホン化し、I.V.=3.1dl/gを有するイオノマー(4g)を得た。
【化17】

【0044】
例4
モノマーCの合成
【化18】

1,4−ビス(4’−アセチルフェノキシ)ベンゼンを、文献に記載されている方法(G.W. YeagerおよびD.N. Schissel, Synthesis; 1991; 1, 63)により、収量30%で合成した。mCPBAおよびクロロホルムとの反応により、ジエステルを収量70%で得た。このジエステルの加水分解により、モノマーCを収量72%で得た。
【0045】
重合
モノマーB(5g、7.32mmol)、モノマーC(2.156g、7.32mmol)、KCO(1.06g、7.69mmol)およびジフェニルスルホン(40.52g)を190℃に0.5時間加熱した。温度を2時間かけて徐々に280℃に増加し、この温度に2時間維持し、最後に1.75時間かけて310℃に達し、この温度に1時間保持した。重合体は、IV=0.82dL/gおよびm.p.=315℃および337℃(二重ピーク)を有していた。
【0046】
スルホン化
この重合体を、例1に記載する手順と同じ手順を使用してスルホン化し、IV=1.28dL/gを有するイオノマーを得た。
【化19】

【0047】
例5
モノマーDの合成
【化20】

モノマーAのフルオロ類似体を、4−クロロベンゼンスルホニルクロリドの代わりに4−クロロベンゼンスルホニルフルオリドを使用した以外は、モノマーAの合成に関して説明した方法と同じ方法により製造した。
【0048】
重合
モノマーD(5g、6.35mmol)、モノマーC(1.868g、6.35mmol)、KCO(0.922g、6.67mmol)およびジフェニルスルホン(38.9g)を190℃から290℃に3.5時間かけて加熱した。温度を290℃に3時間保持した。重合体は、IV=0.55dL/gを有していた。
【0049】
スルホン化
この重合体を、例1に記載する手順と同じ手順を使用してスルホン化し、IV=1.00dL/gを有するイオノマーを得た。
【化21】

【0050】
例6
モノマーEの合成
【化22a】

【化22b】

4−フルオロベンゼンスルホニルビフェニル(40g、128mmol)をCHCl(300mL)中に溶解させ、0℃に冷却した。この溶液に、クロロスルホン酸(74.6g、640mmol)を滴下しながら加えた。HClが直ちに放出された。反応混合物を0℃に、HClの放出が停止するまで、次いで、室温にさらに2時間維持した。混合物を水に注ぎ込み、有機層を水で洗浄し、続いて溶剤を蒸発させ、スルホニルクロリド(30g、収率55%)を得た。
【0051】
スルホニルクロリド(37.63g、89mmol)、m−テルフェニル(10g、43.4mmol)および塩化第二鉄(0.3g)をニトロベンゼン(125mL)に入れた混合物を、窒素下、150℃で一晩反応させ、冷却し、メタノールを加えて生成物を沈殿させた。粗製物をDMFから再結晶させ、ジフルオロモノマーE(11.4g、収率27%)、m.p.=309℃、MS(MALDI-TOF)=978.7を得た。
【0052】
重合
モノマーE(4g、4.09mmol)、モノマーC(1.2g、4.09mmol)、KCO(0.59g、4.29mmol)およびジフェニルスルホン(36.1g)を190℃から290℃に3.5時間かけて加熱した。温度を290℃に3時間保持した。重合体は、IV=0.61dL/gおよびT147℃を有していた。
【0053】
スルホン化
この重合体を、例1に記載する手順と同じ手順を使用してスルホン化し、IV=1.50dL/gを有するイオノマーを得た。スルホン化は、エーテル基に隣接する3個の芳香族基上で起きたが、電子供与基に隣接していない芳香族基上でも起きた。この重合体は、2種類の反復単位を有し、第一の反復単位では、イオン伝導性区域が3個の芳香族基を含み、スペーサー区域が4個の芳香族基を含み、第二の反復単位では、イオン伝導性区域が1個の芳香族基を含み、スペーサー区域が4個の芳香族基を含むと考えられる。
【化23】

【0054】
比較例1
例1のランダム共重合体類似体を、2種類の異なったジハライドモノマーおよび2種類のビス−フェノールから製造した。
【化24】

【0055】
モノマーは、従来のフリーデル−クラフツ反応により製造した。4,4’−ビフェノール(1.117g、0.006mol)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(0.901g、0.0036mol)、4,4’−ビス(4−クロロベンゼンスルホニル)ビフェニル(3.021g、0.006mol)および1,3−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン(1.16g、0.0036mol)の混合物を、例1に記載する手順を使用して重合させた。重合工程の収量は5.4g(96%)、I.V.=1.16dL/g−1、Tg=234℃であった。この重合体(5.18g)を、例1に記載するようにしてスルホン化し、イオノマー(5.58g、92%)、I.V.=1.86dL/g−1を得た。
【0056】
例1〜3の重合体と比較して、比較例1で製造した重合体は、統計的共重合体であり、イオン伝導性およびスペーサー区域の両方を含んでなる反復単位を含まない。比較例1の重合体におけるイオン伝導性および非イオン伝導性区域は、鎖の長さに沿って不規則に配置されている。
【0057】
比較例2
公知のスルホン化されたポリアリールエーテルスルホン重合体を、米国特許第5,693,740号明細書に記載されている重縮合経路を使用して製造した。
【化25】

m:nの比はm=0.5nであった。重合体中にある2種類の反復単位の分布は、統計的であり、本発明の重合体と異なり、この重合体は、イオン伝導性区域、および少なくとも4個の芳香族基を含む芳香族骨格を有するスペーサー区域の両方を含む反復単位は含まない。
【0058】
メンブラン製造
例1〜6および比較例1〜2により製造した重合体をメンブランに製造した。酸形態にある重合体のビーズ(4g)をN−メチルピロリドン(NMP)(22.67g)に加え、乾燥窒素下で、透明な粘性溶液が得られるまで攪拌した。この溶液を、5μm細孔径PTFEマイクロ濾過メンブラン(Sartorius、47mm直径)を通し、Sartorius加圧フィルターセル(SM 16249)を使用して濾過した。
【0059】
プレート−ガラスシート(20x25cm)を微小摩耗性クリームで強く浄化し、大量の脱イオン水、次いでアセトンで洗浄し、空気乾燥させた。注型材料(dope)を、Gardnerナイフ(ガラス表面上、高さ300μmに設定)の全幅に沿って、ブレードから約6cmの距離まで一様に延ばした。次いで、ナイフを引き、重合体溶液の一様な被膜を形成し、これを50℃で乾燥させて溶剤の大部分を除去し、次いで減圧下、105℃で一定重量に乾燥させた。
【0060】
得られた重合体被膜は、大気中の水蒸気で数時間平衡化した後、プレートから容易に取り外すことができた。メンブランの厚さ(約40μm)は、6地点で測定し、それらの値を平均した。
【0061】
幾つかの他の比較用メンブラン、すなわちスルホン化96%のスルホン化されたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)重合体(比較例3)、Flemion(商品名)SH-30過フッ化スルホン酸メンブラン(比較例4)、Nafion(商品名)117厚さ170ミクロンの過フッ化スルホン酸メンブラン(比較例5)、およびNafion(商品名)112厚さ50ミクロンの過フッ化スルホン酸メンブラン(比較例6)、を使用した。
【0062】
重合体およびメンブランの特性:
イオン交換容量
例1〜6および比較例1〜2で製造した重合体のイオン交換容量を、製造したばかりの湿った重合体ビーズ(すなわち洗浄した後だが、乾燥前の)6.5gを、水酸化ナトリウム(5g)を水(200mL)に入れた溶液と共に、65℃で2時間攪拌することにより、測定した。これらのビーズを濾別し、脱イオン水で洗浄し、脱イオン水(200mL)中に60℃で30分間再分散させ、次いで濾過した。この最後の工程を、ビーズが最終的に75℃、減圧下で一定重量に乾燥するまで、5回繰り返した。次いでナトリウムに対する元素分析により、イオノマーのイオン交換容量を直接測定した。表1は、これらの例で製造および使用したイオノマーの、測定したイオン交換容量を(等価重量で)示す。
【0063】

等価重量(gmol−1
例1 529
例2 606
例3 495
例4 388
例5 412
例6 426
比較例1 548
比較例2 506
比較例3 385
【0064】
吸水率
室温におけるメンブランの吸水率を下記の様に測定した。2種類の注型メンブラン(約5x5cm)を、1MHSO中に室温で数時間浸漬し、次いで脱イオン水で数回洗浄した。これらの試料を110℃、減圧下で少なくとも2時間乾燥させ、秤量した(w)。次いで、これらの試料をガラス容器中の脱イオン水に浸漬し、ガラス容器を水浴中に入れた。温度を段階的(各段階で1時間)に増加した。温度増加の前に、試料を水から取り出し、濾紙で水気を取り、迅速に秤量し(w)、再度浸漬した。下記の様に計算した吸水率を2種類の試料に対して平均した。
吸水率 = −w x100%

【0065】
図1は、例1、例3および比較例1の重合体から製造されたメンブランに対する吸水率を示す。3種類の重合体は、類似のEWを有するが、比較例1の統計的共重合体は、温度増加と共に、より高い吸水率を示す。吸水率が増加するにつれて、メンブランは膨潤し、溶解し始めることがあり、従って、燃料電池に使用するには不適当である。
【0066】
例4の重合体から製造されたメンブランの吸水率を比較メンブラン3(スルホン化されたPEEK)の吸水率と比較した。非常に良く似た等価重量にも関わらず、溶解に先立つ過剰膨潤は、これらの2種類のメンブランに対して、非常に異なった温度で開始した。例4の重合体から製造されたメンブランに関して、膨潤は約70℃で起きたのに対し、比較メンブラン3の場合は、35℃未満で膨潤が起きた。
【0067】
熱機械的分析(TMA)
熱機械的分析(TMA)を、メンブラン試料で行い、それらの高温における機械的安定性を評価する。この分析は、直径5mmの半球状金属プローブを使用し、これを一定負荷79gでメンブラン表面中に押し込むことにより、行う。試料を20℃から180℃に、10℃/官能基で加熱した。装置の中には位置したメンブラン試料は、室温で周囲の相対湿度で平衡化しておいた。先端がメンブラン中に移動する距離を温度との関係で記録した。
【0068】
図2は、例1の重合体から製造されたメンブランおよび比較メンブラン4(Flemion(商品名)SH-30)に関するTMAデータを示す。高温で、Flemion(商品名)メンブランは、軟化のために厚さが大きく減少するのに対し、本発明のメンブランは、温度増加にあまり影響されない。これは、燃料電池が通常作動する温度範囲30〜150℃に、特に当てはまる。
【0069】
水素透過性データ
メンブランの水素透過性は、メンブラン電極組立構造(MEA)を使用し、温度30〜100℃で、十分に湿潤した条件下で(100%相対湿度)測定した。MEAは、メンブランを、2枚の多孔質白金黒電極間に、Toray TGP-H-60多孔質炭素繊維紙集電装置と共に挟み込むことにより、製造した。ガス配分通路を機械加工した2枚の集電プレートを使用し、純粋な水素ガスをMEAのA側に通し、純粋な窒素ガスをMEAのB側に通した。メンブランをA側からB側に拡散する水素が、電気化学的に消費され、ポテンショスタットにより電流が発生した。幾つかのガス圧における電流の大きさを使用し、メンブランを横切る水素拡散速度を計算した。
【0070】
図3は、例1および3の重合体から製造された、30μm厚メンブランに対する水素透過性データを、やはり30μm厚の比較メンブラン4(Flemion(商品名)SH-30)と比較して示す。すべての圧力で、Flemion(商品名)メンブランは本発明のメンブランよりもはるかに高い水素透過性を示す。従って、本発明のメンブランは、過フッ化された材料よりも優れたガス分離体である。
【0071】
燃料電池性能
例1および比較例4の重合体から製造されたメンブランを含むMEAを、電気化学的電池中でメンブランを2個の電極間に、MEAを約20%圧縮する負荷の下で挟むことにより、製造した。3.1cm活性面積電極を、カーボンブラック、ポリテトラフルオロエチレン重合体、白金黒電気触媒およびNafion(商品名)イオノマーの組合せで被覆したToray TGP-H-60炭素繊維集電基材を使用して製造した。製造した電極およびメンブランを、試験の前に純水中で予め湿潤させ、十分な水和を確保した。
【0072】
MEAを、定常状態電気化学的分極実験を使用して試験し、メンブランの性能を測定した。これらのMEAは、燃料電池中、80℃で、湿らせた水素をアノードに、湿らせた酸素をカソードに、どちらも圧力30psigで供給することにより、試験した。次いで、電流中断実験を行い、メンブランのイオン抵抗を測定した。
【0073】
図4は、厚さ30μmのメンブランで行った試験から得た燃料電池性能およびメンブランイオン抵抗のデータを示す。例1の重合体から製造されたメンブランの電流−電圧性能およびイオン抵抗は、Flemion(商品名)SH-30メンブラン(比較例4)の特性に匹敵する。
【0074】
本発明の重合体を使用して製造されたメンブランの長期間性能を、MEAの性能が、例えばピンホールの形成により、損なわれるまでの、長時間にわたる燃料電池試験で測定した。十分に湿らせた水素および空気を、例1の重合体から製造された、厚さ35μmのメンブランを含むMEAに供給した。試験は、80℃、圧力30psig、一定電流500mA/で、上記と同じであるが、活性面積が49cmである電極により行った。図5は、例1の重合体から製造されたメンブランが、壊れるまで500時間近く耐えられることを示す耐久性データを示す。
【0075】
直接メタノール燃料電池(DMFC)における、例1の重合体から製造された、厚さ40μmを有するメンブランの性能を測定した。アノードに0.75M水性メタノール燃料を供給し、カソードに乾燥空気を供給した。アノード電極は、カーボンブラック、炭素担持された白金−ルテニウム電気触媒およびNafion(商品名)イオノマーの組合せで被覆したToray TGP-H-90炭素繊維集電基材を使用して製造した。カソードは、カーボンブラック、ポリテトラフルオロエチレン重合体、白金黒電気触媒およびNafion(商品名)イオノマーの組合せで被覆したToray TGP-H-90炭素繊維集電基材を使用して製造した。
【0076】
図6は、例1の重合体から製造された、厚さ40μmを有するメンブランを含むMEAの性能を比較メンブラン5(Nafion(商品名)117)および比較メンブラン6(Nafion(商品名)112)含むMEAと比較する燃料電池データを示す。9本の線は、例1(正方形の記号)、比較メンブラン5(菱形の記号)および比較メンブラン5(三角形の記号)に対する、電池性能(黒色の記号)、抵抗補正したカソード性能(灰色の記号)および抵抗補正したアノード性能(白色の記号)を表す。これらの電池性能データは、本発明のメンブランを含むMEAが、200mA/cmを超える電流密度で、最も厚い試料Nafion(商品名)117よりも高い性能を発揮することを示す。この電池性能データから、例1の重合体を含むMEAが、同等の厚さを有するNafion(商品名)112メンブランを含むMEAに対して、すべての電流密度で重大な性能改良を示すことも分かる。
【0077】
図6は、各MEAにおけるアノード電極の性能が、すべての電流密度で同等であることを示す。カソード電極の性能は著しく変動することが分かる。カソード電極の性能は、例1の重合体を含むMEA試料の方が、比較例6を含むMEA試料よりも高いように見えるが、両メンブランの厚さは同等である。これは、本発明により製造されたメンブランの方が、燃料の透過性が低いことを示している。DMFC中で使用するメンブラン材料を通した高レベルの燃料透過性は、装置の効率を大きく低下させる現象であることは、十分に確立されている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、例1、例3および比較例1の重合体から製造されたメンブランに対する吸水率を示す。
【図2】図2は、例1の重合体から製造されたメンブランおよび比較メンブラン4(Flemion(商品名)SH-30)に関するTMAデータを示す。
【図3】図3は、例1および3の重合体から製造された、30μm厚メンブランに対する水素透過性データを、やはり30μm厚の比較メンブラン4(Flemion(商品名)SH-30)と比較して示す。
【図4】図4は、厚さ30μmのメンブランで行った試験から得た燃料電池性能およびメンブランイオン抵抗のデータを示す。
【図5】図5は、例1の重合体から製造されたメンブランが、壊れるまで500時間近く耐えられることを示す耐久性データを示す。
【図6】図6は、例1の重合体から製造された、厚さ40μmを有するメンブランを含むMEAの性能を比較メンブラン5(Nafion(商品名)117)および比較メンブラン6(Nafion(商品名)112)含むMEAと比較する燃料電池データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも80%の反復単位が、
a)一個以上の芳香族基を含む芳香族骨格を有するイオン伝導性区域と、及び
b)少なくとも6個の芳香族基を含む芳香族骨格を有するスペーサー区域とを含んでなり、
少なくとも一個のイオン伝導性官能基が各芳香族基に付加されてなり、
イオン伝導性官能基が前記芳香族骨格に付加されていないものである、重合体。
【請求項2】
少なくとも95%の前記反復単位が、前記イオン伝導性区域および前記スペーサー区域を含んでなる、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
前記イオン伝導性区域中にある一個以上の芳香族基が、フェニレン、ナフチレンまたはアントラセニレン基である、請求項1または2に記載の重合体。
【請求項4】
前記イオン伝導性区域の前記芳香族骨格中にある各芳香族基が、電子供与基に隣接している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項5】
前記電子供与基がエーテル基である、請求項4に記載の重合体。
【請求項6】
前記少なくとも一個のイオン伝導性官能基がスルホン酸基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項7】
前記スペーサー区域における芳香族基の数と、前記イオン伝導性区域における芳香族基の数との比が、少なくとも2:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項8】
前記スペーサー区域における前記少なくとも4個の芳香族基が、フェニレン、ナフチレンまたはアントラセニレン基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項9】
前記スペーサー区域における前記少なくとも4個の芳香族基が、電子求引基により接続されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項10】
前記電子求引基がスルホンまたはケトン基である、請求項9に記載の重合体。
【請求項11】
等価重量が800gmol−1未満である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項12】
固有粘度が1.0dl/gを超える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の重合体を含んでなる、重合体溶液。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の重合体を含んでなる、重合体電解質メンブラン。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の重合体を含んでなる、基材上の電気触媒層。
【請求項16】
請求項14に記載の重合体電解質メンブランおよび/または請求項15に記載の電気触媒層を含んでなる、メンブラン電極組立構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180517(P2012−180517A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45690(P2012−45690)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2006−548391(P2006−548391)の分割
【原出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】