説明

イオン化カルシウムの定量のための計算方法

【課題】
血清中総カルシウム、アルブミン、総蛋白、無機リンの各測定値及びクエン酸、乳酸、炭酸水素イオンの各正常値からヒト血中のイオン化カルシウム値を計算によって求める方法を提供する。
【解決手段】
計算の正確性を高めるため6つのパラメータを使用し、pHの影響を解消するために酸解離平衡式を手段として遊離リガンド量を求め、この遊離リガンドとカルシウムとの錯体平衡式からそれぞれのカルシウム錯体量を求め、この複数のカルシウム錯体はカルシウムを軸として競合するが、錯体平衡計算を繰り返す方法で最終カルシウム錯体値を求め、さらに総カルシウム値から最終カルシウム錯体量を差し引くことでイオン化カルシウム値を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血中イオン化カルシウム値を求めるための計算方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血中のカルシウムは蛋白結合型43〜47%、非解離塩型5〜10%、イオン型48〜52%程度(高木康,他:臨床病理,28,1089頁,1980)と言われる。蛋白結合型とはアルブミン、グロブリンとカルシウムとの錯体であり、非解離塩型とはリン酸、炭酸水素イオン、クエン酸、乳酸などとカルシウムとの錯体である。イオン型とは非結合の遊離イオン化カルシウムを指す。
カルシウムは骨の形成、代謝、血液の凝固、心筋の律動維持など生命にとって重要である。特にイオン化カルシウムは生理機能に重要な役割を演じており病態の解明、疾患の診断に必須であると言われる。通常臨床検査では総カルシウムが広く測定されている。しかしイオン化カルシウムの測定は総カルシウムより診断に有効的であると言われるにもかかわらず、日常の臨床検査として普及していない。これはイオン化カルシウムの測定が難しいことや試料の取り扱いが難しいためと考えられる。
【0003】
従来のイオン化カルシウムの測定には(a)ムレキシド色素を用いる非特許文献1や特許文献1に記載の比色法、(b)カルシウム電極を用いる非特許文献2に記載の電極法、(c) イオン化カルシウムを実測せずに、血清総カルシウム値と蛋白質等の測定値から計算によって求める非特許文献3及び非特許文献4に記載の計算法がある。
(a)のムレキシド色素法は試料を透析する必要があり大変面倒である。特許文献1に記載の方法は測定値に対する正確性の証明が無い。(b)のカルシウム電極法は現在最も正確な測定方法である。血液が空気に晒されると直ちに脱炭酸し、血液pHが上昇、その結果イオン化カルシウムは大きく低下する。そのため試料を嫌気的に取り扱うことが必要で、採血後直ちにイオン化カルシウムとpHを測定しpH7.4に補正して報告される。そのため多量検体を迅速に測定することが難しい。(c)非特許文献3に記載の計算法は、総カルシウム値やアルブミン値に係数を乗除し、イオン化カルシウム値を求めるもので、比較実験により係数を定めたいわば経験式で、適用検体に限界がある。また非特許文献4に記載の計算法はカルシウムが血清総蛋白に配位結合し錯体平衡を示すことから、平衡式を用いてイオン化カルシウム値を計算する理論式である。しかし蛋白をアルブミンとグロブリンに分けての計算でなく、さらに蛋白質以外の低分子リガンドを無視しており、pH補正も簡単ではなく正確性に欠ける。
【0004】
生体内血中総カルシウム量(in vivo)は腸、骨からの吸収、腎臓からの排出等を通じて副甲状腺ホルモン、ビタミンDにより生物学的に制御されている。これに対し採血され対外に取り出された(in vitro)総カルシウムはもはや増減しない。血液カルシウムの内、蛋白結合型はカルシウムとアルブミンやグロブリンとが配位結合した錯体であり、非解離塩型はカルシウムとクエン酸、リン酸、乳酸、炭酸水素イオンといった配位子(リガンド)とが配位結合した錯体であると考えられる。これらカルシウム錯体の反応は非常に速い可逆反応で、そのカルシウムの構成比率は質量作用の法則に基づいた化学平衡によって決まると考えれば、平衡式から複数のカルシウム錯体量を計算することができ、この錯体量を総カルシウム値から差し引けば最終イオン化カルシウムが計算できると考えられる。これら蛋白質、無機物、有機物のすべてのリガンドに対し平衡式を同次元で適用させて、さらに酸解離平衡式を取り込むことでpH補正を行い、その後にイオン化カルシウムを計算するという発想の報告は今までに見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−335400
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rose GA,:Determination of the ionized and ultrafilterable calcium of normal human plasma ,Clin Chimca Acta:2,227236, 1957.
【非特許文献2】Moore ED:Ionized calcium in normal serum,ultrafiltrates,and whole blood determined by ion-exchange electrodes,J Clin Invest 49: 318-334,1970.
【非特許文献3】Barry Kirschbaum:Effect of high bicarbonate hemodialysis on ionized calcium and risk of metastatic calcification.Clinca Chimica Acta 343:231-236,2004.
【非特許文献4】Harris EK,DeMets DL:Biological and analytic components of variation in long-term studies of serum constituents in normal subjects,Clinical chemistry:17,983-987,1971.
【非特許文献5】Pedersen KO. Binding of calcium to serum albumin I.stoichiometry and intrinsic association constant at physiological pH, ionic strength and temperature. Scand J Clin Lab Invest 28: 459-469,1971
【非特許文献6】Pedersen KO:Binding of calcium to serum albumin II.effect of pH via competitive hydrogen and calcium ion binding to the imidazole groups of albumin, Scand J Clin Lab Invest,29: 75-83, 1972.
【非特許文献7】Pedersen KO:Protein-bound calcium in human serum. Quantitative examina -tion of binding and its variables by a molecular binding model and clinical chemical implications for measurement of ionized calcium, Scand J Clin Lab Invest,30: 321-329, 1972.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
<1>イオン化カルシウムを求める従来の計算式では蛋白質をパラメータとして計算するものが多い。イオン化カルシウム値の正確性を高めるためには他のリガンド(配位子)をも計算に用いるべきである。
<2>電極法で必要なpH測定と試料の嫌気的取り扱いの省略が課題である。
<3>従来の計算式は蛋白質やリン酸の異常値を持つ特殊な検体への適用に限界があった。よって特殊な検体にも適用できる理論式であることが望ましい。
<4>多量の検体を迅速に且つ容易に処理できることが望ましい
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の計算方法は、まず血中総カルシウムを測定し、6個のリガンド値からカルシウム錯体量を錯体平衡式によって計算し、この複数のカルシウム錯体を収束計算で絞り込み、pH補正とカルシウム錯体計算の基礎数値算出のために酸解離計算を取り込んだものである。
<1>正確性を高めるため、アルブミン、総蛋白、無機リン、クエン酸、乳酸、炭酸水素イオンの6個のパラメータすべてに上記計算を当てはめた。
<2>まず酸解離計算について述べる。各リガンドはカルシウムと配位結合するが、また(化1)のように水素イオンとも配位結合し可逆平衡状態となる。そこでまず水素リガンド錯体量を計算し、しかる後に残存するリガンドとカルシウムとの間の錯体量を平衡計算する。一般に水素イオンとリガンドの平衡は酸解離平衡と呼ばれ(数1)酸解離式Aに示すように質量作用の法則に基づいた一定の酸解離定数を持つ。即ち変数が3個の内2個の数値が決まれば残り1個の変数が求まる。総リガンド量は(数2)に示すように[Ligand]や[HLigand]の合計値であり、これを(数1)酸解離平衡式Aに代入すれば(数3)酸解離式Bが得られる。さらにHligandについて整理すると(数4)の水素結合リガンドの計算式が導かれる。(単位はmol/L、電荷は省略)
【0009】
(化1)酸解離反応 HLigand ⇔ Ligand + H
(数1)酸解離A Ka = [H][Ligand] / [HLigand]
(数2) tLigand = HLigand + Ligand
(数3)酸解離B Ka = [H][tLigand- HLigand] / [HLigand]
(数4)水素結合リガンドの計算式 HLigand = H×tLigand / (Ka + H)

【0010】
CaLigandが生成された場合の計算では、CaLigandが酸解離平衡の系外物質であるので、tLigandからCaLigandを差引いた値を酸解離平衡の総リガンド量として計算する。即ち水素結合リガンドの計算式はHLigand = H×(tLigand-CaLigand) / (Ka + [H])となる。
水素結合リガンド量の計算式。
(数5)HAlbsite = H×(tAlbsite - CaAlbsite) / (Ka1+H)
(数6)HGlbsite = H×(tGlbsite - CaGlbsite) / (Ka2+H)
(数7)H2PO4= H×(tPi - CaHPO4) / (Ka3+H)
(数8)HCitrate = H×(tCitrate - CaCitrate) / (Ka4+H)
(数9)HLact = H×(tLact - CaLact) / (Ka5+H)
炭酸水素イオンの正常値は酸解離平衡後の濃度であるため酸解離式による計算は不要である。
【0011】
上記式の用語説明1:
Ligand:遊離配位子(リガンド)、HLigand:水素結合配位子、[H]:水素イオン濃度(mol/L)、Ka:酸解離定数、tLigand:総リガンド
HAlbsite:水素結合アルブミン、tAlbsite:総アルブミンサイト数、 CaAlbsite:カルシウムアルブミン錯体数、HGlbsite:水素結合グロブリン、tGlbsite:グロブリンサイト総数、CaGlbsite:カルシウムグロブリン錯体数、サイトの定義については次項<3>にて説明する。tGlbsite濃度は血清総蛋白(g/L)から血清アルブミン(g/L)を差し引いて求めたグロブリン量(g/L)にグロブリン1g当たりのカルシウム最大結合数(mol/g)を乗じたもので、最終単位はmol/Lである。この最大結合数は非特許文献7の記載値から計算により求めた。tPi:血清無機リン測定値、H2PO4:リン酸二水素イオン、CaHPO:リン酸一水素カルシウム錯体、tCitrate:血清クエン酸正常平均値、HCitrate:クエン酸一水素イオン、CaCitrate:クエン酸カルシウム錯体、tLact:血清乳酸正常平均値、HLact:乳酸一水素イオン、CaLact:乳酸カルシウム錯体
Ka1、Ka2、Ka3、Ka4、Ka5:アルブミンサイト、グロブリンサイト、リン酸、クエン酸、乳酸それぞれの酸解離定数。
【0012】
<3−1>次にカルシウム錯体量を求める計算方法について、アルブミンで述べる。(非特許文献5)によるとアルブミン1分子は最大12分子のカルシウムと結合できる。Scatchardのモデル(青木幸一郎ほか「血清アルブミン」82ページ講談社サイエンティフィク)と同じ考え方で、12個のカルシウム結合サイトは(A)互いに独立し、他の結合サイトに影響しない、(B)各サイトの結合は同一性質であると仮定すると、総アルブミンサイト数(数10)はアルブミンモル濃度の12倍したものである。このアルブミンサイトと遊離カルシウムの錯体反応(化2)は可逆反応で(数11)の錯体平衡式Aに示すような動的平衡が成り立つ。(単位はmol/L、電荷は省略)
【0013】
(数10)総アルブミンサイト数 tAlbsite = tAlb×12 (mol/L)
(化2) カルシウム錯体反応 fCa + fAlbsite ⇔CaAlbsite
(数11)錯体平衡式A Ka1=[CaAlbsite] / ([fCa][fAlbsite])
(数12)錯体平衡式内の量関係
fAlbsite + CaAlbsite = t’Albsite
fCa + CaAlbsite = t’Ca
【0014】
総アルブミンサイトの内訳は(数13)に示すものであるが、この錯体平衡式A(数11)における合計アルブミンサイト数(t'Albsite)は(fAlbsite)と(CaAlbsite)の合計(数12)であり、且つ総アルブミンサイト数(tAlbsite)から本錯体平衡式に関与しない水素結合アルブミンサイト数(数5)を差引いたもの(数14)である。
また総カルシウムの内訳は(数15)に示すものであるが、この錯体平衡式A(数11)における合計カルシウム(t’Ca)は[fCa]と[CaAlbsite]の合計(数12)であり、且つ総カルシウム測定値(tCa)から本平衡反応の系外に当たる各リガンドのカルシウム錯体量を差し引いたカルシウム量(数16)である。
【0015】
(数13) tAlbsite=fAlbsite+HAlbsite+CaAlbsite
(数14) t’Albsite=tAlbsite-HAlbsite
(数15) tCa=fCa+CaAlbsite+CaGlbsite+CaHPO4+CaCitrate+CaLact +CaHCO3
(数16) t’Ca=tCa -CaGlbsite -CaHPO4 -CaCitrate -CaLact -CaHCO3
これらを(数11)錯体平衡式Aに代入すると(数17)錯体平衡式Bが求まる。この式をCaAlbsiteについて整理すると下記(数23)2次式が得られ、これを解くことにより CaAlbsite錯体量を算出することができる
(数17)錯体平衡式B Ks1=[CaAlbsite] / ([t’Ca-CaAlbsite][t’Albsite - CaAlbsite])
【0016】
同様にして錯体平衡式に使用する合計リガンド量を以下に示す。
(数18) t’Glbsite = tGlbsite - HGlbsite
(数19) t’Pi = tPi - H2PO4
(数20) t’Citrate = tCitrate - HCitrate
(数21) t’Lact = tLact - HLact
(数22) t’HCO3 = 0.02mol/l
【0017】
CaAlbsite錯体量の計算式と同様にした、CaGlbsite錯体量、CaHPO4錯体量、Citrate錯体量、CaLact錯体量、CaHCO3錯体量の計算式を示す。
(数23)
Ks1×CaAlbsite2- (Ks1×t’Ca +Ks1× t’Albsite +1)×CaAlbsite + Ks1×t’Ca×t’Albsite = 0
(数24)
Ks2×CaGlbsite2 - (Ks2×t’Ca + Ks2× t’Glbsite+ 1)×CaGlbsite + Ks2×t’Ca×t’Glbsite = 0
(数25)
Ks3×CaHPO42 - (Ks3×t’Ca +Ks3×t’Pi + 1)×CaHPO4 + Ks3×t’Ca×t’Pi = 0
(数26)
Ks4×CaCitrate2 - (Ks4×t’Ca +Ks4× t’Citrate + 1)×CaCitrate + Ks4×t’Ca× t’Citrate = 0
(数27)
Ks5×CaLact2 - (Ks5×t’Ca + Ks5×t’Lact +1)×CaLact + Ks5×t’Ca×t’Lcat = 0
(数28)
Ks6×CaHCO32 - (Ks6×t’Ca + Ks6× t’HCO3 + 1)× CaHCO3 + Ks6×t’Ca×t’HCO3 = 0
【0018】
上記式の用語説明2:
tAlb:アルブミン測定値(mol/L)、12:アルブミン1モルが結合できるカルシウムのブミンサイトモル数、fCa:遊離カルシウムモル数、t’Ca:錯体平衡式中の総カルシウム、Ks1:アルブミンとカルシウムの錯体平衡定数
Ks1,Ks2,Ks3,Ks4,Ks5,Ks6:アルブミンサイト、グロブリンサイト、リン酸、クエン酸、乳酸、炭酸水素イオンとカルシウムとの平衡定数。CaAlbsite, CaGlbsite, CaHPO4, CaCitrate, CaLact, CaHCO3:それぞれのリガンドのカルシウム錯体モル濃度
【0019】
<3−2>次に複数のカルシウムリガンド錯体間の多重平衡ついて述べる。1つのカルシウム錯体量の計算が終わると生成されたカルシウム錯体量の分だけ遊離カルシウム量が減少する。そのため他のリガンドの平衡が崩れる。よって減少した遊離カルシウムを用いて錯体の平衡計算を再度し直さなければならない。遊離カルシウム濃度の変化に応じて再計算を10回程度行えば一定した値に収束される。(図1)に繰り返し計算の概要を示す。
【0020】
<3−3>イオン化カルシウム量は血清総カルシウム値から最終各リガンドのカルシウム錯体量を差し引いて求める。下記に(数29)にイオン化カルシウムを求める最終式を示す。
(数29)
イオン化カルシウム= tCa - CaAlbsite - CaGlbsite - CaHPO4 - CaCitrate - CaLact - CaHCO3
【0021】
<4>パーソナルコンピュータの表計算ソフトに本計算のプログラムを付けることで、多数検体の迅速な計算を可能とした。
【発明の効果】
【0022】
<1>計算のパラメータ数を増やすことで、従来式より正確性が増した。
<2>酸解離式を採用することでpH測定が不要となり、且つ検体の嫌気的取り扱いが不要となった。
<3>錯体平衡式に基づく化学量論的計算であるため検体の適用範囲が広がる。
<4>パーソナルコンピュータ用のプログラムを作成したことで、計算が迅速且つ容易となり、日常検査としての実施が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】イオン化カルシウム計算方法の概要図
【図2】イオン化カルシウムの計算値と電極測定値の比較図
【実施例1】
【0024】
試料として健常人から真空採血管にて嫌気的に採血し血清分離後直ちに測定した。イオン化カルシウムの測定にはSiemensの血液ガス分析機 RapidPoint405電極装置を使用した。総蛋白、アルブミン、総カルシウム、無機リンについては臨床検査用の生化学自動分析装置を使用した。測定結果は総蛋白7.6g/dl、アルブミン4.5g/dl、総カルシウム9.2mg/dl、無機リン4.1mg/dlであった(グロブリン量=総蛋白値−アルブミン値)。その他の項目値にはクエン酸=2.4mg/dl、乳酸=10mg/dl、炭酸水素イオン=20mMの各正常値相当を計算に使用した。
【0025】
各リガンドの酸解離定数には-log(Ka1)=7.55, -log(Ka2)=7.55, -log(Ka3)= 7.2, -log(Ka4)=4.76, -log(Ka5)=3.86を使用した。各リガンドの錯体平衡定数には log(Ks1)=2.38, log(Ks2)=2.55, log(Ks3)=2.66, log(Ks4)=3.16, log(Ks5)=1.42, log(Ks6)=1.0を使用した。(Ka及びKs値は非特許文献6非特許文献7及び化学便覧II日本化学会編丸善pp317-331, 1993等から引用する)
イオン化カルシウムの成績:計算結果1.10mmol/L、電極法測定結果1.16mmol/L
【実施例2】
【0026】
カルシウム代謝異常を示した34試料を使用する。
イオン化カルシウム及びその他生化学項目の測定方法については実施例1と同じものを使用した。酸解離定数、平衡定数、クエン酸、乳酸、炭酸水素イオン含量は実施例1と同じ数値を使用した。
34試料の成績:電極法平均値1.24 計算平均値1.20、相関係数r=0.993 回帰直線 y=0.95x - 0.02、図2に個々のデータを相関図として示す。
【産業上の利用可能性】
【0027】
臨床診断及び経過観察として血中イオン化カルシウムの測定は大きな意義があり、要望がある。本計算法で容易にイオン化カルシウム値が得られるため実用的価値は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)血清中のアルブミン、グロブリン、無機リン、クエン酸、乳酸、炭酸水素イオンの6つのリガンド含有値を用い、(2)それぞれのリガンドの酸解離式を手段として作成した計算式から各遊離リガンド量を求め、(3)各遊離リガンドとイオン化カルシウムからなる錯体平衡式を手段としてそれぞれのカルシウム錯体量を求め、(4)一つのリガンドのカルシウム錯体が形成されると遊離カルシウムは減少するが、遊離カルシウムが減少すると他のリガンドの平衡は崩れるため平衡計算をやり直す必要があり、この再計算を繰り返すことで収束する最終カルシウム錯体量を求め、(5)しかる後に総血清カルシウム測定値から最終リガンドの錯体量を差し引き、イオン化カルシウムを算出する計算方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate