イオン収着材
【課題】イオン収着部中のイオン収着性基の密度が高く、しかし、イオン収着材の水溶解性が増すと言うことがなく、イオン収着材中におけるイオン溶液の拡散が容易でイオン収着部へのイオン溶液の接近が容易であり、さらに、イオン収着材全体の特性を変えることなくイオン交換容量を大幅に向上させ得る、イオン収着材、その製造方法およびその使用方法を提供すること。
【解決手段】本発明のイオン収着材は、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部と、このイオン収着部を化学的結合によって固定支持する基体部とを備える、ことを特徴とする。
【解決手段】本発明のイオン収着材は、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部と、このイオン収着部を化学的結合によって固定支持する基体部とを備える、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン収着材、その製造方法およびその使用方法に関する。詳しくは、特に、重金属イオン(カチオンおよび酸素酸アニオンなど)や富栄養塩の1つであるリン酸イオンなどの収着性に優れるイオン収着材、その製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃液中の重金属イオンの回収にあたっては、イオン濃度の希薄な大量の溶液を、迅速に処理する必要がある。従来、この回収操作は、重金属イオンを不溶の水酸化物や塩として沈殿分別することと、この沈殿分別で捕集し切れなかったイオンをイオン交換樹脂やリガンド形成剤で収着することとで行ってきた。この沈殿分別処理には、大規模の沈降槽と、遠心分離機、ろ過機などの大型分別装置を必要とする。そして、次の段階で使用されるMR型イオン交換樹脂やリガンド形成剤は、それらの形態に由来して、大量の希薄なイオン溶液の迅速な処理には余り適さないものであり、しかも、収着条件が限定される不便や価格が高い等の問題もあった。
【0003】
一方、生活、畜産、水産、農業、流通などの分野で排出される排水は、大型処理施設では、活性汚泥処理とエア曝気、浮遊懸濁物の凝集分離、砂地ろ過等の通常の処理をした後に放流するか、あるいは、リン酸を不溶のカルシウム塩に変えて大型槽で沈降分離するという煩雑かつ不完全な処理をした後に放流している。捕集除去しない、あるいは、捕集除去し切れなかった希薄なリン酸根は、多くの場合、放流先で藻類の異常増殖を引き起こし、それに伴う環境悪化をもたらしている。
そこで、固着藻類の繁殖を逆利用して、リン酸を含む溶液を藻類池で捕集する生物学的方法も行われているが、捕集能の不安定さ、繁殖した藻類の処理など、この方法には検討すべき問題が多い。
【0004】
極言すれば、希薄な富栄養塩溶液の小規模施設による迅速かつ効果的な処理技術はまだ確立されていないと言える。
そこで、イオン交換樹脂などよりも迅速な処理が可能なイオン収着繊維が検討されている(例えば、特許文献1参照)。イオン収着繊維とは、繊維を基体として、これにイオン収着性基を導入したものである。
しかし、前記イオン収着繊維においては、下記の問題が解決されなければならない。
第一に、イオン収着性基を基体に導入する際に、基体の特性、特に溶解特性が大きく変化するようなことのないことである。処理によって基体の親水性が増すと、繊維組織の破壊と分散が引き起こされ、目詰まりの原因となるからである。
【0005】
第二に、イオン収着性基が密集していることである。イオン収着性基が密集しているほどイオン収着能が高まるからである。
第三に、イオン収着性基の密集したイオン収着部にイオン溶液が迅速に拡散することである。
しかしながら、特許文献1に記載の技術などの従来技術では、長鎖のイオン収着性重合体を基体部にグラフト反応で結合する方法が一般的であるが、このグラフト結合法では、基体部の特性を一定に保持することができなかった。すなわち、前記従来技術のように、長鎖のイオン収着性重合体を基体部にグラフトさせて、基体部に直接にイオン収着性基を付加するようにすると、イオン収着性基の性質が、基体部にまで反映して、イオン収着材全体の性質として現れるため、例えば、イオン収着性基の数を増やすと、イオン収着材が水溶解性の高いものとなってしまうと言う問題があった。そのため、イオン収着性基の密度を大きくすることもできなかった。さらには、目的に応じた多様な収着性基を簡単なプロセスで導入することもできないと言う問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−18283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、イオン収着部中のイオン収着性基の密度が高く、しかし、イオン収着材の水溶解性が増すと言うことがなく、イオン収着材中におけるイオン溶液の拡散が容易でイオン収着部へのイオン溶液の接近が容易であり、さらに、イオン収着材全体の特性を変えることなくイオン交換容量を大幅に向上させ得る、イオン収着材、その製造方法およびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。そして、従来の方法では、前述のように、イオン収着部はグラフト枝のみによって形成されていたものであり、そのために、イオン収着性基の密度や大きさが不充分であったことから、イオン収着性基の密度とイオン収着部の大きさ、および、基体とイオン収着部の割合を自由に調整できる技術の開発についての種々の検討を図った結果、イオン収着部を、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子で構成すること、このイオン収着部を化学的結合によって基体に結合することを着想し、3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部とこれを化学的に固定支持する基体部の結合体を調製してその効果を確認する実験を重ねた結果、この結合体により上記課題を解決することができることを確認するとともに、このような結合体の好適な製造方法および使用方法も開発して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明にかかるイオン収着材は、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部と、このイオン収着部を化学的結合によって固定支持する基体部とを備える、ことを特徴とする。
本発明にかかるイオン収着材の第1の製造方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性基と反応性基を有する化合物を多官能性反応性化合物で縮合反応させることにより、3次元網目構造を有する高分子鎖を形成するとともに、前記高分子鎖を、直接におよび/または連結重合体鎖を介して、基体部と化学的結合させる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるイオン収着材の第2の製造方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性モノマーを必須とするモノマー成分の重合によるイオン収着性(共)重合体鎖の形成と、前記イオン収着性(共)重合体鎖と基体部との化学的架橋によるイオン収着部の基体部への固定とを同時に行う、ことを特徴とする。
本発明にかかるイオン収着材の第3の製造方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材を製造する方法であって、基体部を酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、シランカップリング基、チオール基およびメチロール基からなる少なくとも1つの反応性基を有する反応性化合物で処理するか、および/または、前記反応性基を有する不飽和単量体を基体部にグラフト重合させることにより基体部に前記反応性基を導入し、さらに、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するかおよび/または4級アンモニウム基を有する、アルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリンと、分子中に2〜6個のグリシジル基を有する、ポリアルコールのポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルおよびポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種のエポキシ化合物とを反応させてイオン収着性(共)重合体鎖を形成させるとともに、当該イオン収着性(共)重合体鎖を、反応性基を導入した前記基体部に化学的結合させる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかるイオン収着材の使用方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材に、イオン溶液を接触させて、前記イオン溶液に含まれるイオンをイオン収着材に収着させる方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のイオン収着材によれば、重金属溶液、富栄養塩などのイオン溶液処理において、大規模な処理設備、装置の一部の設置が不必要となり、かつ、従来達成されなかった低濃度のイオンの除去を迅速かつ効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるイオン収着材のリン酸排水処理工程の例を示す図である。
【図2】従来技術におけるリン酸排水処理工程の例を示す図である。
【図3】本発明にかかるイオン収着材のクロム酸排水処理工程の例を示す図である。
【図4】従来技術におけるクロム酸排水処理工程の例を示す図である。
【図5】本発明にかかるイオン収着材の重金属排水処理工程の例を示す図である。
【図6】従来技術における重金属排水処理工程の例を示す図である。
【図7】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【図8】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【図9】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性のpH依存性を示すグラフである。
【図10】実施例にかかるイオン収着材の滴定曲線を示すグラフである。
【図11】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【図12】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかるイオン収着材について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔イオン収着部〕
ここに、「収着」とは、吸着と吸収とを含む概念である(化学大辞典4(縮刷版)、p664右欄7〜9行)。
イオン収着部は、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなる。前記イオン収着部は、例えば、10〜1000nmの幅あるいは直径を有するミクロゲルであることができる。基体部における液透過性を妨げず、イオン収着部の表面積が増すような形状であれば、膜状、棒状、アメーバ状など、形は問わない。
【0015】
前記イオン収着部は、例えば、イオン収着性基を有する部位である。イオン収着性基は、対象とするイオンと化学結合する官能基であり、対象とするイオンに応じて、適宜のものを採用すれば良く、例えば、アニオンの収着を目的とする場合には、上記したように、各種アミノ基(1級、2級、3級)、4級アンモニウムにおけるアミノ基(ピリジン環やピリジニウム環を有する化合物におけるアミノ基も含まれる。)などが挙げられる。また、例えば、カチオンの収着を目的とする場合には、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基などが挙げられる。
前記イオン収着部は、化学的架橋構造により3次元網目構造をとっているイオン収着性(共)重合体鎖によって形成されているものが好ましく、基体部に導入された反応性基と、前記反応性基に対し化学的に反応可能なイオン収着性(共)重合体鎖との反応によって、基体部に固定されているものが好ましい。
【0016】
前記イオン収着性(共)重合体鎖は、イオン収着性基を有するものであり、単一のモノマー成分からなる単独重合体であっても良いし、2以上のモノマー成分からなる共重合体であっても良い。
前記単独重合体としては、例えば、前述のイオン収着性モノマー、すなわち、含アミノ基モノマー、含カルボキシル基モノマー、含スルホ基モノマー、含ホスホ基モノマーなどからなる単独重合体が挙げられる。
また、2以上のモノマー成分からなる共重合体としては、単独重合体と同様に、イオン収着性モノマーを用いるとともに、例えば、多ビニル化合物を用いて、両者の共重合体とすることで、イオン収着部内部での化学的な架橋密度を増大させることができる。前記多ビニル化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジビニル化合物、グリセリントリメチル(メタ)アクリレートなどのトリビニル化合物、グリセリンやペンタエリストールなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。さらに、多ビニル化合物以外にも、例えば、親水性基を有するイオン収着性モノマーとともに、スチレンなどの疎水性基を有するモノマー成分を用いるようにすれば、イオン溶液と疎水性基との相互反発により、イオン溶液が親水性基へと接近しやすくなるため、イオン収着性を顕著に高めることができる。
【0017】
前記イオン収着性(共)重合体鎖としては、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するアルキルアミン、ポリアルキレンアミン、ポリアルキルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ならびに、アミノ基および/またはイミノ基と4級アンモニウム基を併有するポリアミン化合物もしくはその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリン、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリフェノールのポリグリシジルエーテル、ならびに、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種とを反応させてなる、1〜3級アミノ基および/または4級アンモニウム基を有するイオン収着性(共)重合体鎖を用いることが好ましい。このイオン収着性(共)重合体鎖は、架橋密度が非常に高い。
【0018】
〔基体部〕
基体部は、前述のイオン収着部を化学的結合によって固定支持する役割を果たすものであり、基体部には水が透過するための空隙が存在して、液透過性となっていることが好ましい。
基体部に水が透過するための空隙が存在することにより、この基体部に固定された前述のイオン収着部にイオンが迅速に接近できる。このような基体部に用いることのできる材料としては、特に限定するわけではないが、具体的には、例えば、セルロース、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、シリカ、金属、不溶化したポリビニルアルコールなど多様な材料から選ぶことができる。これらの基体部は、必要に応じて、適宜に前処理しておいても良い。そのような前処理としては、例えば、シリカについてのシランカップリング剤処理や、金属についてのチオール処理などがあり、ほかにも、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基またはメチロール基などからなる反応性基を有する反応性化合物での処理などが挙げられる。基体部の形態は、繊維からなるワタ様の集合体、多孔(開放孔)体、粉、球、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布など、前述の条件を満たせば、目的に応じて多様な形態を選ぶことができる。ワタ様の集合体や不織布などの形態が特に好ましい。基体部に存在する前記した空隙は、例えば、前記ワタ様の集合体の単位である繊維と繊維の間の空隙や、前記多孔(開放孔)体における細孔などのことである。
【0019】
〔イオン収着材〕
イオン収着材は、前記イオン収着部が化学的結合によって基体部に固定支持される構造を有する。
このような構造を有していることにより、イオンの会合−解離の平衡は、大きく会合側に寄るため、イオン収着部中のイオン収着性基が優れた収着性を示す。基体部に水が透過できる空隙が存在するため、イオン溶液が容易に移動・透過でき、イオン溶液は基体部に固定支持されたイオン収着部に迅速に到達することができる。また、イオン収着部が基体部に固定支持されていることにより、空隙部およびこのイオン収着材を用いる装置の各部に目詰まりを引き起こすこともない。
【0020】
このイオン収着材の構造の例を、以下に詳しく説明するが、本発明は、以下に説明する構造に限定されない。
反応性基は、基体部にラジカル基を導入したり、ビニル基を導入したりすることで、基体部に導入することができる。そして、この反応性基とイオン収着性(共)重合体鎖とが化学的に固着される。
また、反応性基は、例えば、基体部に導入されたグラフト枝が有する反応性基であっても良い。この場合、1本のグラフト枝が複数の反応性基を備えているため、極めて複雑な化学的架橋構造が形成される。
【0021】
さらに、イオン収着性(共)重合体鎖および架橋剤の追加添加により、イオン収着部中のイオン収着性基の割合および架橋密度を調整することもできる。イオン収着性(共)重合体鎖が基体部に導入された反応性基との結合に加えて、追加添加した架橋剤とも結合しており、極めて複雑な化学的架橋構造が形成される。追加添加される架橋剤の例としては、例えば、エピクロルヒドリン、グルタルアルデヒド、エポキシ樹脂A剤などが挙げられる。
以上に説明したような構造を有するイオン収着材において、基体部とイオン収着部の割合(イオン収着部/基体部)は、例えば、体積比基準で、0.05/1〜3/1の範囲であることが望ましい。前記範囲よりもイオン収着部が少ないとイオン収着容量が小さくなり、大きすぎるとイオン収着部へのイオン拡散が小さくなり、また基体部の目詰まりを引き起こすおそれがある。グリシジルメタクリレートやエピクロルヒドリンなどにおけるイオン収着性(共)重合体鎖との反応点となる官能基数とイオン収着性(共)重合体鎖の官能基数の割合(反応点となる官能基数/イオン収着性(共)重合体鎖の官能基数)は、イオン収着部へのイオン拡散、イオン収着性基密度およびイオン収着部の膨潤の観点から、例えば、1/2〜1/500の範囲であることが望ましい。
【0022】
〔イオン収着材の製造〕
前記イオン収着材の製造方法としては、例えば、基体部に反応性基を導入し、この反応性基に対し化学的に反応可能なイオン収着性(共)重合体鎖を反応させる方法が挙げられる。
反応性基を基体部に導入する方法として、反応性基を有するグラフト枝として基体部に導入する場合、基体部に、反応性基を有するモノマーをグラフト重合させる方法が挙げられるが、具体的には、例えば、触媒を用いる方法や、反応開始剤重合法、熱重合法、電離性放射線重合法などが挙げられる。
【0023】
触媒を用いる場合、例えば、基体と反応性基を有するモノマーとを含む反応液を0℃〜常温で撹拌しながら、触媒としてCe(IV)溶液を2〜10時間かけて滴下することができる。触媒の使用量としては、特に限定されないが、例えば、基体100重量部に対して、触媒10〜100重量部の割合とすることができる。
反応開始剤を用いる場合、例えば、ベンゾイルパーオキサイドなどを用いて、50〜100℃で1〜20時間反応させる。好ましくは、70〜80℃で4〜6時間反応させる。反応開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、基体100重量部に対して、反応開始剤0.5〜10重量部の割合とすることができる。
【0024】
熱重合を行う場合、例えば、50〜100℃で10〜100時間加熱する。好ましくは、70〜100℃で10〜20時間加熱する。
電離性放射線を用いる場合、例えば、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などが使用でき、その照射線量としては、例えば、100〜200kGyとすることができ、空気中または不活性ガス中で−50〜0℃の温度で行うことが好ましい。
基体部に対する反応性基を有するモノマーの使用割合や、イオン収着性基を有する重合体の使用量としては、特に限定されないが、基体部とイオン収着部の割合(イオン収着部/基体部)や、グリシジルメタクリレートやエピクロルヒドリンなどにおけるイオン収着性(共)重合体鎖との反応点となる官能基数とイオン収着性(共)重合体鎖の官能基数の割合(反応点となる官能基数/イオン収着性(共)重合体鎖の官能基数)が、前述した範囲となるように適宜決定するのが好ましい。
【0025】
本発明にかかるイオン収着材の製造方法としては、上記のように、反応性基にイオン収着性(共)重合体鎖を反応させる方法でも良いが、イオン収着性モノマーを必須とするモノマー成分の重合によるイオン収着性(共)重合体鎖の形成と、前記イオン収着性(共)重合体鎖と基体部との化学的架橋によるイオン収着部の形成と、イオン収着部の基体部への固定とを同時に行う方法がさらに好適である。
このように、イオン収着性(共)重合体鎖の形成と、イオン収着部の形成と、イオン収着部の基体部への固定を同時に行うと、次のような利点がある。
すなわち、イオン収着性(共)重合体鎖を先に形成しておいたり、イオン収着部を形成した上で、このイオン収着部を基体部へ固定したりする、段階的な方法の場合、不定形のイオン収着部を基体部へ固定させることがほぼ不可能であり、したがって、乳化重合などにより得た定形(特に、球形)のイオン収着部を、基体部へと固定させることになるのであるが、このような定形のイオン収着部では、表面積が小さく、溶液中のイオンとの接触面積も小さくなってしまい、優れたイオン収着性が得られない。これに対し、本発明にかかる方法の如く、イオン収着性(共)重合体鎖の形成と、イオン収着部の形成と、イオン収着部の基体部への固定を同時に行うようにすれば、不定形のイオン収着部を基体部へと固定することが可能となるのである。
【0026】
上記のようにしてイオン収着材を製造する方法として、例えば、前記イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定を基体部に導入されたラジカル基により行う方法が好ましい。
また、イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定を基体部に導入されたビニル基により行う方法も好ましい。
〔イオン収着材の用途〕
本発明にかかるイオン収着材は、金属イオンや酸素酸イオンなど、目的に応じて種々のイオンを収着するのに用いられるが、具体的には、例えば、酸素酸イオンとして公知の酸素酸のイオンが挙げられる。金属元素の酸素酸イオンとしては、周期律表の5族のバナジン酸イオン、6族のクロム酸イオン、モリブデン酸イオン、7族のマンガン酸イオンなどの酸素酸のイオンが挙げられ、非金属元素では3族の硼酸イオン、5族の燐酸イオン、砒酸イオン、6族の硫酸イオン、セレン酸イオン、7族の臭素酸イオン、ヨウ素酸イオンなどの酸素酸のイオンが挙げられる。上記には価数の異なる酸素酸イオン、たとえば亜燐酸イオン、亜ヒ酸イオン、重クロム酸イオン、亜硫酸イオンなども含有する。上記酸素酸イオン中でも、特に、PO43−、CrO42−、SO42−、BO33−、AsO3−など、金属イオンとしてAg+、Ba2+、Be2+、Bi3+、Ca2+、Cd2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Ga3+、K+、Li+、Mg2+、Na+、Ni2+、Pb2+、Rb+、Sr2+、Tl3+、U3+、V2+、Zn2+の各イオンなどの収着に好適である。上述のイオン収着性基として適宜のものを選択することで、目的とするイオンの収着が可能となる。アニオンを収着したい場合にはアミノ基などのカチオン性のイオン収着性基を有するイオン収着材、カチオンを収着したい場合にはカルボキシル基などのアニオン性のイオン収着性基を有するイオン収着材を用いれば良い。
【0027】
特に、本発明にかかるイオン収着材は、極低濃度のイオンであっても収着することができ、具体的には、例えば、0.01〜100ppmの広範囲にわたっての適用が可能である。
前記イオン収着材は、前記基体部が、ワタ様の集合体および/または多孔(開放孔)体であって、浮遊状態および/または充填状態で使用されるか、前記基体部が、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布であって、円筒状、積層状および/または巻き込み状の形態で使用されることが好ましい。
本発明にかかるイオン収着材のイオン収着性は、用いるイオン収着性基や収着するイオンの種類によっては、pH依存性を示す場合がある。例えば、イオン収着性基としてアミノ基が導入されたイオン収着材を用いてリン酸や6価クロム酸などの酸素酸イオンを収着する場合、pH2〜8、より好ましくはpH3〜8で優れた収着性を示す。そして、収着後に再びイオンを回収したい場合やイオン収着材を再生したい場合には、前記pH範囲から外れるように、使用後のイオン収着材を酸やアルカリで洗浄することにより、前記使用後のイオン収着材から収着されたイオンを容易に溶離することもできるのである。
【0028】
したがって、本発明にかかるイオン収着材の具体的な使用場面としては、特に限定するわけではないが、例えば、工場などから排出される廃液中の有害なイオンなど、有毒イオンを除去する用途のほか、溶液中の貴金属の回収、飲料水のミネラル調整などのイオンの回収、濃度調整の用途への適用も可能である。以下に詳しく説明する。
(リン酸排水での使用例)
本発明にかかるイオン収着材をリン酸排水の処理に利用する場合、例えば、図1に示すようなプロセスが採用できる。
図1に示すように、リン酸排水を貯蔵した排水槽中の排水を本発明にかかるイオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液を放流する。
【0029】
一方、従来のリン酸排水の処理方法は、例えば、図2に示すように、排水のpHを調整したのちに凝集剤を加えてフロックを形成させ、さらにpH調整したのちに凝集剤を加えて沈殿を生ぜしめ、最後に固液分離により沈殿物を除去するというプロセスを採用しており、処理が多工程に亘り、非常に煩雑で大規模な装置を必要とする。
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかるイオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかるイオン収着材を用いた方法ではリン酸イオンは荷電によりイオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、リン酸を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
【0030】
(クロム酸排水での使用例)
本発明にかかるイオン収着材をクロム酸排水の処理に利用する場合、例えば、図3に示すようなプロセスが採用できる。
図3に示すように、クロム酸排水を貯蔵した排水槽中の排水を本発明にかかるイオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液を放流する。
一方、従来のクロム酸排水の処理方法は、例えば、図4に示すように、還元槽で還元剤を添加してpH2以下の強酸下に6価クロムを3価クロムに還元し、その後反応槽で消石灰を添加して水酸化クロムとして沈殿除去する。沈殿槽で生じたスラッジは脱水を施されたのち廃棄される。プロセスが煩雑で、大量にスラッジを生じる上、このスラッジからのクロム回収に経済性は認められず、スラッジの処理も問題となる。
【0031】
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかるイオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかるイオン収着材を用いた方法ではクロム酸イオンは荷電によりイオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、クロム酸を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
(重金属イオン排水での使用例)
本発明にかかるイオン収着材を重金属イオン排水の処理に利用する場合、例えば、図5に示すようなプロセスが採用できる。
【0032】
図5に示すように、重金属排水を貯蔵した排水槽中の排水を本発明にかかるイオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液を放流する。
一方、従来の重金属排水の処理方法は、例えば、図6に示すように、イオン溶液を凝集反応槽で処理して重金属イオンを水酸化物などの難溶性物にして凝集させたのち、沈殿槽で凝集物を沈殿させ、ろ過受け槽でろ過することにより、重金属イオンを除去するようにしていた。
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかるイオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかるイオン収着材を用いた方法では重金属イオンは荷電によりイオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、重金属を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「%」と記すことがある。また、アニオンの収着を目的とするイオン収着材を「アニオン収着材」、カチオンの収着を目的とするイオン収着材を「カチオン収着材」として、それぞれのイオン収着材の製造および収着試験を行った。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<イオン濃度の測定>
溶液中のイオン濃度は、アニオン濃度についてはイオンクロマトグラフ法により、カチオン濃度についてはICP発光分析法により測定した。
【0034】
〔アニオン収着材〕
<実施例1>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)100部と水500部を高速撹拌機によって混和し、これにグリシジルメタクリレート10部を添加し、撹拌を続けながら、触媒として1%硝酸アンモニウムセリウム溶液50部を滴下することにより、セルロースパルプにグリシジルメタクリレートをグラフト重合させた。このグラフト反応は25℃で3時間かけて行った。
さらに2時間撹拌し、撹拌を続けながら、前記グラフト反応液に20%ポリアリルアミン溶液50部を加え、さらに25℃で20時間反応を継続することにより、反応性基であるエポキシ基とポリアリルアミンのもつアミノ基とを反応させ、前記グラフト重合体にアミノ基を導入した。
【0035】
得られた反応生成液の半分をろ過、乾燥することにより、イオン収着材(1)を得た。
なお、叩解によってセルロースパルプを得る際には、微細なセルロースも生成している。上記実施例1で得られた上記反応生成液には、この微細なセルロースが懸濁セルロースとなって混在しているが、実施例2においてグラフト反応液にエピクロルヒドリンおよびポリアリルアミン溶液を追加添加させる際に、基体部(セルロース)に固定されていたイオン収着部が有するイオン収着性基(アミノ基)が、未反応のグリシジルアクリレートによって化学的に架橋され、このような化学的架橋構造を介して、反応生成液中に混在していた懸濁セルロースもイオン収着材に結合されるので、最終的に得られる反応生成液は清澄となっている。
【0036】
得られたイオン収着材(1)は、黄色を呈していること以外は、外観、形状とも原材料のパルプと変わらないものであった。pHを指標とする酸/アルカリ中和滴定で測定したアミノ基含有量を元にイオン収着材中(1)のイオン収着部と基体部の割合(重量比基準)を確認したところ、イオン収着部が12.6%、基体部が87.4%の割合であることが分かり、イオン収着性基が3.45×10−3mol/gの割合で含まれていることが分かった。
<実施例2>
実施例1で得られた上記反応生成液の残り半分に塩酸を加えて弱酸性にし、これにエピクロルヒドリン0.5部を追加添加して撹拌し、直ちに前記ポリアリルアミン溶液70部をも追加添加して激しく撹拌し、この操作により、ポリアリルアミンによるイオン収着部の追加生成を行った。撹拌後、苛性ソーダを加えて弱アルカリ性にして24時間静置したのち、ろ過、乾燥することにより、イオン収着材(2)を得た。
【0037】
なお、実施例2においてグラフト反応液にエピクロルヒドリンおよびポリアリルアミン溶液を追加添加させる際にも、上記実施例1と同様に、もともと基体部(セルロース)に固定されていたイオン収着部および追加生成されたイオン収着部が有するイオン収着性基(アミノ基)が、未反応のグリシジルメタクリレートや追加添加した架橋剤(エピクロルヒドリン)によって化学的に架橋され、このような化学的架橋構造を介して、反応生成液中に混在していた懸濁セルロースもイオン収着材に結合されるので、最終的に得られる反応生成液は清澄となっている。
得られたイオン収着材(2)は、黄色を呈していること以外は、外観、形状とも原材料のパルプと変わらないものであった。pHを指標とする酸/アルカリ中和滴定で測定したアミノ基含有量を元にイオン収着材(2)中のイオン収着部と基体部の割合(重量比基準)を確認したところ、イオン収着部が46.4%、基体部が53.6%の割合であることが分かり、イオン収着性基が22.35×10−3mol/gの割合で含まれていることが分かった。
【0038】
(アニオン収着試験1)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.02gを、F−、Cl−、NO2−、Br−、NO3−、PO43−、SO42−をそれぞれ10ppm含む混合イオン水溶液1L(pH6.8)に加えて、20分間撹拌したのち、各イオンの濃度を測定した。
その結果、PO43−は5.8ppm、SO42−は6.5ppmに減少し、他のイオンは初期濃度(10ppm)のままであった。各イオン濃度の経時的変化をグラフ化し、図7に示した。
なお、イオン収着材に収着された上記PO43−、SO42−は、0.01M水酸化ナトリウム水溶液をイオン収着材に流すことで、ほぼ100%溶離させることができた。0.01M水酸化ナトリウム水溶液に代えて0.1M硝酸水溶液を用いても同様にほぼ100%の溶離回収率であった。以下のイオン収着試験でも同様に溶離回収が可能である。
【0039】
(アニオン収着試験2)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.02gを直径15mmのカラムに詰めて、pH6.8の条件で、100ppmリン酸水溶液を1ml/minの速度で流した。図8に流出液中のリン酸の測定結果を示す。縦軸に検出したリン酸を強度で表した。図8から分かるように、カラム中のイオン収着材がPO43−を収着し、カラムを通じて流れた水溶液中にPO43−はしばらく検出されなかった。そして、800秒後に初めてPO43−が検出された。この結果から、実施例1にかかるイオン収着材(1)のリン酸イオン捕集量は、イオン収着材1g当たり59.9mgであることが分かった。
【0040】
同様に、実施例2にかかるイオン収着材(2)のPO43−捕集量は、イオン収着材1g当たり350mgであることが分かった。
(アニオン収着試験3)
pHを様々に変えたこと以外はアニオン収着試験2と同様の条件で、実施例1にかかるイオン収着材(1)を充填したカラムにリン酸水溶液を流し、カラム通過後の溶液中のPO43−濃度を測定し、その収着率を算出したところ、図9に示す結果が得られ、pH3〜8で優れた収着能を示すことが分かった。pH3以下では収着能は失われPO43−を溶離する。以上の結果、および、図10に示すこの収着材(1)0.2gの強酸(1.0mol/l塩酸)による中和滴定曲線から、イオン収着性基を強酸塩としてもリン酸補足能があることが分かった。
【0041】
(アニオン収着試験4)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.01gを直径15mmのカラムに詰めて、濃度10ppmのCrO42−含有水溶液(pH6)を1ml/minの流速で流し、カラム通過後の溶液中のCrO42−濃度を測定したところ、0.02ppmに減少した。
実施例2にかかるイオン収着材(2)について、同様の操作を行ったところ、濃度10ppmのCrO42−は、0.01ppm以下に減少した。
(アニオン収着試験5)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.2gを濃度10ppmの砒素溶液(pH6.5)中に浸漬し、2時間撹拌した。イオン収着材(1)による溶液中の砒素除去性能を時間対除去率で表したグラフを図11に示す。図11より、5分で89%、30分で95%除去できたことが分かる。
【0042】
実施例2にかかるイオン収着材(2)について、同様の操作を行ったところ、砒素溶液中に濃度10ppmで含まれていたAsO3−は、30分で98%が除去された。
〔カチオン収着材〕
<実施例3>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)100部にアセトン400部を含浸させた。これに無水マレイン酸10部、スチレン8部、ジビニルベンゼン(純度50%)1部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部を溶解させたアセトン50部を添加し、20分間激しく攪拌した後、70℃で5時間加熱・重合を行った。重合終了後アセトンを蒸留し、残留固形物に0.1規定苛性ソーダ水溶液300部を加え攪拌し、24時間マレイン酸の加水分解を行った。加水分解反応終了後、ろ過、水洗浄、エタノール洗浄を行うことにより、イオン収着材(3)を得た。
【0043】
<実施例4>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)100部にアセトン500部を含浸させた。これに無水マレイン酸10部、触媒としてのピリジン5部を溶解させたアセトン50部を添加し、20分間激しく攪拌することによりビニル基を導入した後、70℃で3時間、加熱・還流した。このビニル基の導入されたセルロース/アセトン含浸液に、スチレン8部、ジビニルベンゼン(純度50%)1部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加え良く攪拌した。ついで70℃で5時間加熱・重合を行った後、アセトンを蒸留した。残留固形物に0.1規定苛性ソーダ水溶液300部を加え攪拌した後24時間常温でマレイン酸の加水分解を行った。加水分解反応終了後、ろ過、水洗浄、エタノール洗浄を行うことにより、イオン収着材(4)を得た。生成物重量から、加えたセルロース、モノマーがほぼ100%生成物として得られていることが分かった。
【0044】
なお、本実施例4では、無水マレイン酸が、セルロースパルプへビニル基を導入する役割を果たすとともに、さらにビニル基の導入後における無水マレイン酸の余剰分がイオン収着性モノマーとしての役割を果たしている。
(カチオン収着試験1)
実施例3にかかるイオン収着材(3)について、様々な金属イオンについての収着率を測定した。具体的には、Ag+、Ba2+、Be2+、Bi3+、Ca2+、Cd2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Ga3+、K+、Li+、Mg2+、Na+、Ni2+、Pb2+、Rb+、Sr2+、Tl3+、U3+、V2+、Zn2+の各イオンについて、pH6.8に調製した濃度1ppmの溶液5mlを用意し、カラムに詰めた実施例3にかかるカチオン収着材(3)0.5g中に滴下し、流下させた。図12から明らかなように、この収着材(3)は、試験したカチオンの中で、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のカチオン以外は非常に希薄なイオン溶液でも収着することが分かった。
【0045】
(カチオン収着試験2)
上記実施例3にかかるイオン収着材(3)を用いて、Pdイオンの収着試験を行った。
濃度1ppmのPd溶液(pH6.8)を調製し、該Pd溶液5mlを、前記イオン収着材0.20gを充填したカラムに滴下し、溶液中のPdイオンを収着させ、カラムから流出した溶液中のPd濃度から収着率を測定した。
その結果、実施例3にかかるイオン収着材(3)では、初期濃度に対して81.6%のPdイオンを収着したことが分かった。
〔アニオン収着材〕
<実施例5>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)10部にエチレングリコールジグリシジルエーテル20%水溶液17.5部を含浸させ、70℃で2時間反応させてセルロースパルプへのエポキシ基の導入反応を行った。冷却後、更にポリアリルアミン(重量平均分子量:3000)20%水溶液7.6部を含浸させ、更に70℃で2時間加熱してアミノ基の導入反応と網状化反応を行い、セルロース繊維(基体)にイオン収着部であるアミノ基を導入した。水で十分に洗浄し未反応物を除去し、イオン収着材(5)を得た。
【0046】
<実施例6>
セルロース繊維からなるセルロース織布10部に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(グリセロールの平均重合度は約3、分子中のグルシジル基は約3)25%水溶液15.0部を含浸させ、70℃で2時間反応させて織布繊維にエポキシ基導入反応を行った。冷却後、更にポリアリルアミン(重量平均分子量:15000)20%水溶液6.4部を含浸させた。熱風乾燥機中で、80℃で予備乾燥後、120℃で30分間加熱処理を行い、アミノ基の導入反応と網状化反応を行い、セルロース織布(基体)にイオン収着部であるアミノ基を導入した。水で十分に洗浄し未反応物を除去し、イオン収着材(6)を得た。
【0047】
<実施例7>
粉体高速混合機中に、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング材)を処理した合成非晶質シリカの粉体(基体部、平均粒径:230μm、吸油量:200ml/g)10部を仕込み、攪拌しながら実施例6で使用したポリグリセロールポリグリシジルエーテル25%水溶液15.0部及びポリアリルアミン20%水溶液6.4部を滴下し、混合して吸収させた。湿潤したシリカを取り出し、熱風乾燥機中で、80℃で予備乾燥後、120℃で30分間加熱処理を行い、アミノ基の導入反応と網状化反応を行い、シリカ(基体)にイオン収着部であるアミノ基を導入したシリカ粉末を得た。メタノールおよび水で洗浄し未反応物を除去し、イオン収着材(7)を得た。
【0048】
(アニオン収着試験)
上記実施例5、6および7で得られたアニオン収着材(5)、(6)および(7)を用いて、上記したアニオン収着試験1、2、3、4および5と同様にして収着試験を行い、アニオン収着材(1)と同様なイオン収着の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
生活排水、農業廃水、水処理施設等の高栄養塩排水からリン酸を除き藻類や微小生物の異常繁殖を抑制し環境保全に役立つのみならず、新しいリン資源回収法への利用や、硫酸イオンの捕捉・除去を簡便な方法で迅速に行うことができ、硫酸根を含まない塩化ナトリウムを必要とする工業への利用の可能性がある。また、希薄溶液中の酸素酸アニオンや重金属カチオンなどの有害イオンを多種に亘って捕捉・除去することで環境保全の有効な手段となる。さらに、本発明のカチオン収着材を強酸塩の形で用いれば、中性に近い通常の排水を、アニオン収着に伴うpH変動がほとんど無い(イオン収着能の低下が起きない)状態で連続的に処理することもでき、被処理溶液の煩雑なpH調整を必要しない点において、排水の処理上非常に有利である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン収着材、その製造方法およびその使用方法に関する。詳しくは、特に、重金属イオン(カチオンおよび酸素酸アニオンなど)や富栄養塩の1つであるリン酸イオンなどの収着性に優れるイオン収着材、その製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃液中の重金属イオンの回収にあたっては、イオン濃度の希薄な大量の溶液を、迅速に処理する必要がある。従来、この回収操作は、重金属イオンを不溶の水酸化物や塩として沈殿分別することと、この沈殿分別で捕集し切れなかったイオンをイオン交換樹脂やリガンド形成剤で収着することとで行ってきた。この沈殿分別処理には、大規模の沈降槽と、遠心分離機、ろ過機などの大型分別装置を必要とする。そして、次の段階で使用されるMR型イオン交換樹脂やリガンド形成剤は、それらの形態に由来して、大量の希薄なイオン溶液の迅速な処理には余り適さないものであり、しかも、収着条件が限定される不便や価格が高い等の問題もあった。
【0003】
一方、生活、畜産、水産、農業、流通などの分野で排出される排水は、大型処理施設では、活性汚泥処理とエア曝気、浮遊懸濁物の凝集分離、砂地ろ過等の通常の処理をした後に放流するか、あるいは、リン酸を不溶のカルシウム塩に変えて大型槽で沈降分離するという煩雑かつ不完全な処理をした後に放流している。捕集除去しない、あるいは、捕集除去し切れなかった希薄なリン酸根は、多くの場合、放流先で藻類の異常増殖を引き起こし、それに伴う環境悪化をもたらしている。
そこで、固着藻類の繁殖を逆利用して、リン酸を含む溶液を藻類池で捕集する生物学的方法も行われているが、捕集能の不安定さ、繁殖した藻類の処理など、この方法には検討すべき問題が多い。
【0004】
極言すれば、希薄な富栄養塩溶液の小規模施設による迅速かつ効果的な処理技術はまだ確立されていないと言える。
そこで、イオン交換樹脂などよりも迅速な処理が可能なイオン収着繊維が検討されている(例えば、特許文献1参照)。イオン収着繊維とは、繊維を基体として、これにイオン収着性基を導入したものである。
しかし、前記イオン収着繊維においては、下記の問題が解決されなければならない。
第一に、イオン収着性基を基体に導入する際に、基体の特性、特に溶解特性が大きく変化するようなことのないことである。処理によって基体の親水性が増すと、繊維組織の破壊と分散が引き起こされ、目詰まりの原因となるからである。
【0005】
第二に、イオン収着性基が密集していることである。イオン収着性基が密集しているほどイオン収着能が高まるからである。
第三に、イオン収着性基の密集したイオン収着部にイオン溶液が迅速に拡散することである。
しかしながら、特許文献1に記載の技術などの従来技術では、長鎖のイオン収着性重合体を基体部にグラフト反応で結合する方法が一般的であるが、このグラフト結合法では、基体部の特性を一定に保持することができなかった。すなわち、前記従来技術のように、長鎖のイオン収着性重合体を基体部にグラフトさせて、基体部に直接にイオン収着性基を付加するようにすると、イオン収着性基の性質が、基体部にまで反映して、イオン収着材全体の性質として現れるため、例えば、イオン収着性基の数を増やすと、イオン収着材が水溶解性の高いものとなってしまうと言う問題があった。そのため、イオン収着性基の密度を大きくすることもできなかった。さらには、目的に応じた多様な収着性基を簡単なプロセスで導入することもできないと言う問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−18283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、イオン収着部中のイオン収着性基の密度が高く、しかし、イオン収着材の水溶解性が増すと言うことがなく、イオン収着材中におけるイオン溶液の拡散が容易でイオン収着部へのイオン溶液の接近が容易であり、さらに、イオン収着材全体の特性を変えることなくイオン交換容量を大幅に向上させ得る、イオン収着材、その製造方法およびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。そして、従来の方法では、前述のように、イオン収着部はグラフト枝のみによって形成されていたものであり、そのために、イオン収着性基の密度や大きさが不充分であったことから、イオン収着性基の密度とイオン収着部の大きさ、および、基体とイオン収着部の割合を自由に調整できる技術の開発についての種々の検討を図った結果、イオン収着部を、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子で構成すること、このイオン収着部を化学的結合によって基体に結合することを着想し、3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部とこれを化学的に固定支持する基体部の結合体を調製してその効果を確認する実験を重ねた結果、この結合体により上記課題を解決することができることを確認するとともに、このような結合体の好適な製造方法および使用方法も開発して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明にかかるイオン収着材は、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部と、このイオン収着部を化学的結合によって固定支持する基体部とを備える、ことを特徴とする。
本発明にかかるイオン収着材の第1の製造方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性基と反応性基を有する化合物を多官能性反応性化合物で縮合反応させることにより、3次元網目構造を有する高分子鎖を形成するとともに、前記高分子鎖を、直接におよび/または連結重合体鎖を介して、基体部と化学的結合させる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるイオン収着材の第2の製造方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性モノマーを必須とするモノマー成分の重合によるイオン収着性(共)重合体鎖の形成と、前記イオン収着性(共)重合体鎖と基体部との化学的架橋によるイオン収着部の基体部への固定とを同時に行う、ことを特徴とする。
本発明にかかるイオン収着材の第3の製造方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材を製造する方法であって、基体部を酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、シランカップリング基、チオール基およびメチロール基からなる少なくとも1つの反応性基を有する反応性化合物で処理するか、および/または、前記反応性基を有する不飽和単量体を基体部にグラフト重合させることにより基体部に前記反応性基を導入し、さらに、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するかおよび/または4級アンモニウム基を有する、アルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリンと、分子中に2〜6個のグリシジル基を有する、ポリアルコールのポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルおよびポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種のエポキシ化合物とを反応させてイオン収着性(共)重合体鎖を形成させるとともに、当該イオン収着性(共)重合体鎖を、反応性基を導入した前記基体部に化学的結合させる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかるイオン収着材の使用方法は、本発明にかかる上記のイオン収着材に、イオン溶液を接触させて、前記イオン溶液に含まれるイオンをイオン収着材に収着させる方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のイオン収着材によれば、重金属溶液、富栄養塩などのイオン溶液処理において、大規模な処理設備、装置の一部の設置が不必要となり、かつ、従来達成されなかった低濃度のイオンの除去を迅速かつ効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるイオン収着材のリン酸排水処理工程の例を示す図である。
【図2】従来技術におけるリン酸排水処理工程の例を示す図である。
【図3】本発明にかかるイオン収着材のクロム酸排水処理工程の例を示す図である。
【図4】従来技術におけるクロム酸排水処理工程の例を示す図である。
【図5】本発明にかかるイオン収着材の重金属排水処理工程の例を示す図である。
【図6】従来技術における重金属排水処理工程の例を示す図である。
【図7】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【図8】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【図9】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性のpH依存性を示すグラフである。
【図10】実施例にかかるイオン収着材の滴定曲線を示すグラフである。
【図11】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【図12】実施例にかかるイオン収着材のイオン収着性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかるイオン収着材について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔イオン収着部〕
ここに、「収着」とは、吸着と吸収とを含む概念である(化学大辞典4(縮刷版)、p664右欄7〜9行)。
イオン収着部は、イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなる。前記イオン収着部は、例えば、10〜1000nmの幅あるいは直径を有するミクロゲルであることができる。基体部における液透過性を妨げず、イオン収着部の表面積が増すような形状であれば、膜状、棒状、アメーバ状など、形は問わない。
【0015】
前記イオン収着部は、例えば、イオン収着性基を有する部位である。イオン収着性基は、対象とするイオンと化学結合する官能基であり、対象とするイオンに応じて、適宜のものを採用すれば良く、例えば、アニオンの収着を目的とする場合には、上記したように、各種アミノ基(1級、2級、3級)、4級アンモニウムにおけるアミノ基(ピリジン環やピリジニウム環を有する化合物におけるアミノ基も含まれる。)などが挙げられる。また、例えば、カチオンの収着を目的とする場合には、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基などが挙げられる。
前記イオン収着部は、化学的架橋構造により3次元網目構造をとっているイオン収着性(共)重合体鎖によって形成されているものが好ましく、基体部に導入された反応性基と、前記反応性基に対し化学的に反応可能なイオン収着性(共)重合体鎖との反応によって、基体部に固定されているものが好ましい。
【0016】
前記イオン収着性(共)重合体鎖は、イオン収着性基を有するものであり、単一のモノマー成分からなる単独重合体であっても良いし、2以上のモノマー成分からなる共重合体であっても良い。
前記単独重合体としては、例えば、前述のイオン収着性モノマー、すなわち、含アミノ基モノマー、含カルボキシル基モノマー、含スルホ基モノマー、含ホスホ基モノマーなどからなる単独重合体が挙げられる。
また、2以上のモノマー成分からなる共重合体としては、単独重合体と同様に、イオン収着性モノマーを用いるとともに、例えば、多ビニル化合物を用いて、両者の共重合体とすることで、イオン収着部内部での化学的な架橋密度を増大させることができる。前記多ビニル化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジビニル化合物、グリセリントリメチル(メタ)アクリレートなどのトリビニル化合物、グリセリンやペンタエリストールなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。さらに、多ビニル化合物以外にも、例えば、親水性基を有するイオン収着性モノマーとともに、スチレンなどの疎水性基を有するモノマー成分を用いるようにすれば、イオン溶液と疎水性基との相互反発により、イオン溶液が親水性基へと接近しやすくなるため、イオン収着性を顕著に高めることができる。
【0017】
前記イオン収着性(共)重合体鎖としては、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するアルキルアミン、ポリアルキレンアミン、ポリアルキルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ならびに、アミノ基および/またはイミノ基と4級アンモニウム基を併有するポリアミン化合物もしくはその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリン、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリフェノールのポリグリシジルエーテル、ならびに、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種とを反応させてなる、1〜3級アミノ基および/または4級アンモニウム基を有するイオン収着性(共)重合体鎖を用いることが好ましい。このイオン収着性(共)重合体鎖は、架橋密度が非常に高い。
【0018】
〔基体部〕
基体部は、前述のイオン収着部を化学的結合によって固定支持する役割を果たすものであり、基体部には水が透過するための空隙が存在して、液透過性となっていることが好ましい。
基体部に水が透過するための空隙が存在することにより、この基体部に固定された前述のイオン収着部にイオンが迅速に接近できる。このような基体部に用いることのできる材料としては、特に限定するわけではないが、具体的には、例えば、セルロース、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、シリカ、金属、不溶化したポリビニルアルコールなど多様な材料から選ぶことができる。これらの基体部は、必要に応じて、適宜に前処理しておいても良い。そのような前処理としては、例えば、シリカについてのシランカップリング剤処理や、金属についてのチオール処理などがあり、ほかにも、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基またはメチロール基などからなる反応性基を有する反応性化合物での処理などが挙げられる。基体部の形態は、繊維からなるワタ様の集合体、多孔(開放孔)体、粉、球、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布など、前述の条件を満たせば、目的に応じて多様な形態を選ぶことができる。ワタ様の集合体や不織布などの形態が特に好ましい。基体部に存在する前記した空隙は、例えば、前記ワタ様の集合体の単位である繊維と繊維の間の空隙や、前記多孔(開放孔)体における細孔などのことである。
【0019】
〔イオン収着材〕
イオン収着材は、前記イオン収着部が化学的結合によって基体部に固定支持される構造を有する。
このような構造を有していることにより、イオンの会合−解離の平衡は、大きく会合側に寄るため、イオン収着部中のイオン収着性基が優れた収着性を示す。基体部に水が透過できる空隙が存在するため、イオン溶液が容易に移動・透過でき、イオン溶液は基体部に固定支持されたイオン収着部に迅速に到達することができる。また、イオン収着部が基体部に固定支持されていることにより、空隙部およびこのイオン収着材を用いる装置の各部に目詰まりを引き起こすこともない。
【0020】
このイオン収着材の構造の例を、以下に詳しく説明するが、本発明は、以下に説明する構造に限定されない。
反応性基は、基体部にラジカル基を導入したり、ビニル基を導入したりすることで、基体部に導入することができる。そして、この反応性基とイオン収着性(共)重合体鎖とが化学的に固着される。
また、反応性基は、例えば、基体部に導入されたグラフト枝が有する反応性基であっても良い。この場合、1本のグラフト枝が複数の反応性基を備えているため、極めて複雑な化学的架橋構造が形成される。
【0021】
さらに、イオン収着性(共)重合体鎖および架橋剤の追加添加により、イオン収着部中のイオン収着性基の割合および架橋密度を調整することもできる。イオン収着性(共)重合体鎖が基体部に導入された反応性基との結合に加えて、追加添加した架橋剤とも結合しており、極めて複雑な化学的架橋構造が形成される。追加添加される架橋剤の例としては、例えば、エピクロルヒドリン、グルタルアルデヒド、エポキシ樹脂A剤などが挙げられる。
以上に説明したような構造を有するイオン収着材において、基体部とイオン収着部の割合(イオン収着部/基体部)は、例えば、体積比基準で、0.05/1〜3/1の範囲であることが望ましい。前記範囲よりもイオン収着部が少ないとイオン収着容量が小さくなり、大きすぎるとイオン収着部へのイオン拡散が小さくなり、また基体部の目詰まりを引き起こすおそれがある。グリシジルメタクリレートやエピクロルヒドリンなどにおけるイオン収着性(共)重合体鎖との反応点となる官能基数とイオン収着性(共)重合体鎖の官能基数の割合(反応点となる官能基数/イオン収着性(共)重合体鎖の官能基数)は、イオン収着部へのイオン拡散、イオン収着性基密度およびイオン収着部の膨潤の観点から、例えば、1/2〜1/500の範囲であることが望ましい。
【0022】
〔イオン収着材の製造〕
前記イオン収着材の製造方法としては、例えば、基体部に反応性基を導入し、この反応性基に対し化学的に反応可能なイオン収着性(共)重合体鎖を反応させる方法が挙げられる。
反応性基を基体部に導入する方法として、反応性基を有するグラフト枝として基体部に導入する場合、基体部に、反応性基を有するモノマーをグラフト重合させる方法が挙げられるが、具体的には、例えば、触媒を用いる方法や、反応開始剤重合法、熱重合法、電離性放射線重合法などが挙げられる。
【0023】
触媒を用いる場合、例えば、基体と反応性基を有するモノマーとを含む反応液を0℃〜常温で撹拌しながら、触媒としてCe(IV)溶液を2〜10時間かけて滴下することができる。触媒の使用量としては、特に限定されないが、例えば、基体100重量部に対して、触媒10〜100重量部の割合とすることができる。
反応開始剤を用いる場合、例えば、ベンゾイルパーオキサイドなどを用いて、50〜100℃で1〜20時間反応させる。好ましくは、70〜80℃で4〜6時間反応させる。反応開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、基体100重量部に対して、反応開始剤0.5〜10重量部の割合とすることができる。
【0024】
熱重合を行う場合、例えば、50〜100℃で10〜100時間加熱する。好ましくは、70〜100℃で10〜20時間加熱する。
電離性放射線を用いる場合、例えば、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などが使用でき、その照射線量としては、例えば、100〜200kGyとすることができ、空気中または不活性ガス中で−50〜0℃の温度で行うことが好ましい。
基体部に対する反応性基を有するモノマーの使用割合や、イオン収着性基を有する重合体の使用量としては、特に限定されないが、基体部とイオン収着部の割合(イオン収着部/基体部)や、グリシジルメタクリレートやエピクロルヒドリンなどにおけるイオン収着性(共)重合体鎖との反応点となる官能基数とイオン収着性(共)重合体鎖の官能基数の割合(反応点となる官能基数/イオン収着性(共)重合体鎖の官能基数)が、前述した範囲となるように適宜決定するのが好ましい。
【0025】
本発明にかかるイオン収着材の製造方法としては、上記のように、反応性基にイオン収着性(共)重合体鎖を反応させる方法でも良いが、イオン収着性モノマーを必須とするモノマー成分の重合によるイオン収着性(共)重合体鎖の形成と、前記イオン収着性(共)重合体鎖と基体部との化学的架橋によるイオン収着部の形成と、イオン収着部の基体部への固定とを同時に行う方法がさらに好適である。
このように、イオン収着性(共)重合体鎖の形成と、イオン収着部の形成と、イオン収着部の基体部への固定を同時に行うと、次のような利点がある。
すなわち、イオン収着性(共)重合体鎖を先に形成しておいたり、イオン収着部を形成した上で、このイオン収着部を基体部へ固定したりする、段階的な方法の場合、不定形のイオン収着部を基体部へ固定させることがほぼ不可能であり、したがって、乳化重合などにより得た定形(特に、球形)のイオン収着部を、基体部へと固定させることになるのであるが、このような定形のイオン収着部では、表面積が小さく、溶液中のイオンとの接触面積も小さくなってしまい、優れたイオン収着性が得られない。これに対し、本発明にかかる方法の如く、イオン収着性(共)重合体鎖の形成と、イオン収着部の形成と、イオン収着部の基体部への固定を同時に行うようにすれば、不定形のイオン収着部を基体部へと固定することが可能となるのである。
【0026】
上記のようにしてイオン収着材を製造する方法として、例えば、前記イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定を基体部に導入されたラジカル基により行う方法が好ましい。
また、イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定を基体部に導入されたビニル基により行う方法も好ましい。
〔イオン収着材の用途〕
本発明にかかるイオン収着材は、金属イオンや酸素酸イオンなど、目的に応じて種々のイオンを収着するのに用いられるが、具体的には、例えば、酸素酸イオンとして公知の酸素酸のイオンが挙げられる。金属元素の酸素酸イオンとしては、周期律表の5族のバナジン酸イオン、6族のクロム酸イオン、モリブデン酸イオン、7族のマンガン酸イオンなどの酸素酸のイオンが挙げられ、非金属元素では3族の硼酸イオン、5族の燐酸イオン、砒酸イオン、6族の硫酸イオン、セレン酸イオン、7族の臭素酸イオン、ヨウ素酸イオンなどの酸素酸のイオンが挙げられる。上記には価数の異なる酸素酸イオン、たとえば亜燐酸イオン、亜ヒ酸イオン、重クロム酸イオン、亜硫酸イオンなども含有する。上記酸素酸イオン中でも、特に、PO43−、CrO42−、SO42−、BO33−、AsO3−など、金属イオンとしてAg+、Ba2+、Be2+、Bi3+、Ca2+、Cd2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Ga3+、K+、Li+、Mg2+、Na+、Ni2+、Pb2+、Rb+、Sr2+、Tl3+、U3+、V2+、Zn2+の各イオンなどの収着に好適である。上述のイオン収着性基として適宜のものを選択することで、目的とするイオンの収着が可能となる。アニオンを収着したい場合にはアミノ基などのカチオン性のイオン収着性基を有するイオン収着材、カチオンを収着したい場合にはカルボキシル基などのアニオン性のイオン収着性基を有するイオン収着材を用いれば良い。
【0027】
特に、本発明にかかるイオン収着材は、極低濃度のイオンであっても収着することができ、具体的には、例えば、0.01〜100ppmの広範囲にわたっての適用が可能である。
前記イオン収着材は、前記基体部が、ワタ様の集合体および/または多孔(開放孔)体であって、浮遊状態および/または充填状態で使用されるか、前記基体部が、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布であって、円筒状、積層状および/または巻き込み状の形態で使用されることが好ましい。
本発明にかかるイオン収着材のイオン収着性は、用いるイオン収着性基や収着するイオンの種類によっては、pH依存性を示す場合がある。例えば、イオン収着性基としてアミノ基が導入されたイオン収着材を用いてリン酸や6価クロム酸などの酸素酸イオンを収着する場合、pH2〜8、より好ましくはpH3〜8で優れた収着性を示す。そして、収着後に再びイオンを回収したい場合やイオン収着材を再生したい場合には、前記pH範囲から外れるように、使用後のイオン収着材を酸やアルカリで洗浄することにより、前記使用後のイオン収着材から収着されたイオンを容易に溶離することもできるのである。
【0028】
したがって、本発明にかかるイオン収着材の具体的な使用場面としては、特に限定するわけではないが、例えば、工場などから排出される廃液中の有害なイオンなど、有毒イオンを除去する用途のほか、溶液中の貴金属の回収、飲料水のミネラル調整などのイオンの回収、濃度調整の用途への適用も可能である。以下に詳しく説明する。
(リン酸排水での使用例)
本発明にかかるイオン収着材をリン酸排水の処理に利用する場合、例えば、図1に示すようなプロセスが採用できる。
図1に示すように、リン酸排水を貯蔵した排水槽中の排水を本発明にかかるイオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液を放流する。
【0029】
一方、従来のリン酸排水の処理方法は、例えば、図2に示すように、排水のpHを調整したのちに凝集剤を加えてフロックを形成させ、さらにpH調整したのちに凝集剤を加えて沈殿を生ぜしめ、最後に固液分離により沈殿物を除去するというプロセスを採用しており、処理が多工程に亘り、非常に煩雑で大規模な装置を必要とする。
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかるイオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかるイオン収着材を用いた方法ではリン酸イオンは荷電によりイオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、リン酸を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
【0030】
(クロム酸排水での使用例)
本発明にかかるイオン収着材をクロム酸排水の処理に利用する場合、例えば、図3に示すようなプロセスが採用できる。
図3に示すように、クロム酸排水を貯蔵した排水槽中の排水を本発明にかかるイオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液を放流する。
一方、従来のクロム酸排水の処理方法は、例えば、図4に示すように、還元槽で還元剤を添加してpH2以下の強酸下に6価クロムを3価クロムに還元し、その後反応槽で消石灰を添加して水酸化クロムとして沈殿除去する。沈殿槽で生じたスラッジは脱水を施されたのち廃棄される。プロセスが煩雑で、大量にスラッジを生じる上、このスラッジからのクロム回収に経済性は認められず、スラッジの処理も問題となる。
【0031】
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかるイオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかるイオン収着材を用いた方法ではクロム酸イオンは荷電によりイオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、クロム酸を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
(重金属イオン排水での使用例)
本発明にかかるイオン収着材を重金属イオン排水の処理に利用する場合、例えば、図5に示すようなプロセスが採用できる。
【0032】
図5に示すように、重金属排水を貯蔵した排水槽中の排水を本発明にかかるイオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液を放流する。
一方、従来の重金属排水の処理方法は、例えば、図6に示すように、イオン溶液を凝集反応槽で処理して重金属イオンを水酸化物などの難溶性物にして凝集させたのち、沈殿槽で凝集物を沈殿させ、ろ過受け槽でろ過することにより、重金属イオンを除去するようにしていた。
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかるイオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかるイオン収着材を用いた方法では重金属イオンは荷電によりイオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、重金属を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「%」と記すことがある。また、アニオンの収着を目的とするイオン収着材を「アニオン収着材」、カチオンの収着を目的とするイオン収着材を「カチオン収着材」として、それぞれのイオン収着材の製造および収着試験を行った。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<イオン濃度の測定>
溶液中のイオン濃度は、アニオン濃度についてはイオンクロマトグラフ法により、カチオン濃度についてはICP発光分析法により測定した。
【0034】
〔アニオン収着材〕
<実施例1>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)100部と水500部を高速撹拌機によって混和し、これにグリシジルメタクリレート10部を添加し、撹拌を続けながら、触媒として1%硝酸アンモニウムセリウム溶液50部を滴下することにより、セルロースパルプにグリシジルメタクリレートをグラフト重合させた。このグラフト反応は25℃で3時間かけて行った。
さらに2時間撹拌し、撹拌を続けながら、前記グラフト反応液に20%ポリアリルアミン溶液50部を加え、さらに25℃で20時間反応を継続することにより、反応性基であるエポキシ基とポリアリルアミンのもつアミノ基とを反応させ、前記グラフト重合体にアミノ基を導入した。
【0035】
得られた反応生成液の半分をろ過、乾燥することにより、イオン収着材(1)を得た。
なお、叩解によってセルロースパルプを得る際には、微細なセルロースも生成している。上記実施例1で得られた上記反応生成液には、この微細なセルロースが懸濁セルロースとなって混在しているが、実施例2においてグラフト反応液にエピクロルヒドリンおよびポリアリルアミン溶液を追加添加させる際に、基体部(セルロース)に固定されていたイオン収着部が有するイオン収着性基(アミノ基)が、未反応のグリシジルアクリレートによって化学的に架橋され、このような化学的架橋構造を介して、反応生成液中に混在していた懸濁セルロースもイオン収着材に結合されるので、最終的に得られる反応生成液は清澄となっている。
【0036】
得られたイオン収着材(1)は、黄色を呈していること以外は、外観、形状とも原材料のパルプと変わらないものであった。pHを指標とする酸/アルカリ中和滴定で測定したアミノ基含有量を元にイオン収着材中(1)のイオン収着部と基体部の割合(重量比基準)を確認したところ、イオン収着部が12.6%、基体部が87.4%の割合であることが分かり、イオン収着性基が3.45×10−3mol/gの割合で含まれていることが分かった。
<実施例2>
実施例1で得られた上記反応生成液の残り半分に塩酸を加えて弱酸性にし、これにエピクロルヒドリン0.5部を追加添加して撹拌し、直ちに前記ポリアリルアミン溶液70部をも追加添加して激しく撹拌し、この操作により、ポリアリルアミンによるイオン収着部の追加生成を行った。撹拌後、苛性ソーダを加えて弱アルカリ性にして24時間静置したのち、ろ過、乾燥することにより、イオン収着材(2)を得た。
【0037】
なお、実施例2においてグラフト反応液にエピクロルヒドリンおよびポリアリルアミン溶液を追加添加させる際にも、上記実施例1と同様に、もともと基体部(セルロース)に固定されていたイオン収着部および追加生成されたイオン収着部が有するイオン収着性基(アミノ基)が、未反応のグリシジルメタクリレートや追加添加した架橋剤(エピクロルヒドリン)によって化学的に架橋され、このような化学的架橋構造を介して、反応生成液中に混在していた懸濁セルロースもイオン収着材に結合されるので、最終的に得られる反応生成液は清澄となっている。
得られたイオン収着材(2)は、黄色を呈していること以外は、外観、形状とも原材料のパルプと変わらないものであった。pHを指標とする酸/アルカリ中和滴定で測定したアミノ基含有量を元にイオン収着材(2)中のイオン収着部と基体部の割合(重量比基準)を確認したところ、イオン収着部が46.4%、基体部が53.6%の割合であることが分かり、イオン収着性基が22.35×10−3mol/gの割合で含まれていることが分かった。
【0038】
(アニオン収着試験1)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.02gを、F−、Cl−、NO2−、Br−、NO3−、PO43−、SO42−をそれぞれ10ppm含む混合イオン水溶液1L(pH6.8)に加えて、20分間撹拌したのち、各イオンの濃度を測定した。
その結果、PO43−は5.8ppm、SO42−は6.5ppmに減少し、他のイオンは初期濃度(10ppm)のままであった。各イオン濃度の経時的変化をグラフ化し、図7に示した。
なお、イオン収着材に収着された上記PO43−、SO42−は、0.01M水酸化ナトリウム水溶液をイオン収着材に流すことで、ほぼ100%溶離させることができた。0.01M水酸化ナトリウム水溶液に代えて0.1M硝酸水溶液を用いても同様にほぼ100%の溶離回収率であった。以下のイオン収着試験でも同様に溶離回収が可能である。
【0039】
(アニオン収着試験2)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.02gを直径15mmのカラムに詰めて、pH6.8の条件で、100ppmリン酸水溶液を1ml/minの速度で流した。図8に流出液中のリン酸の測定結果を示す。縦軸に検出したリン酸を強度で表した。図8から分かるように、カラム中のイオン収着材がPO43−を収着し、カラムを通じて流れた水溶液中にPO43−はしばらく検出されなかった。そして、800秒後に初めてPO43−が検出された。この結果から、実施例1にかかるイオン収着材(1)のリン酸イオン捕集量は、イオン収着材1g当たり59.9mgであることが分かった。
【0040】
同様に、実施例2にかかるイオン収着材(2)のPO43−捕集量は、イオン収着材1g当たり350mgであることが分かった。
(アニオン収着試験3)
pHを様々に変えたこと以外はアニオン収着試験2と同様の条件で、実施例1にかかるイオン収着材(1)を充填したカラムにリン酸水溶液を流し、カラム通過後の溶液中のPO43−濃度を測定し、その収着率を算出したところ、図9に示す結果が得られ、pH3〜8で優れた収着能を示すことが分かった。pH3以下では収着能は失われPO43−を溶離する。以上の結果、および、図10に示すこの収着材(1)0.2gの強酸(1.0mol/l塩酸)による中和滴定曲線から、イオン収着性基を強酸塩としてもリン酸補足能があることが分かった。
【0041】
(アニオン収着試験4)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.01gを直径15mmのカラムに詰めて、濃度10ppmのCrO42−含有水溶液(pH6)を1ml/minの流速で流し、カラム通過後の溶液中のCrO42−濃度を測定したところ、0.02ppmに減少した。
実施例2にかかるイオン収着材(2)について、同様の操作を行ったところ、濃度10ppmのCrO42−は、0.01ppm以下に減少した。
(アニオン収着試験5)
実施例1にかかるイオン収着材(1)0.2gを濃度10ppmの砒素溶液(pH6.5)中に浸漬し、2時間撹拌した。イオン収着材(1)による溶液中の砒素除去性能を時間対除去率で表したグラフを図11に示す。図11より、5分で89%、30分で95%除去できたことが分かる。
【0042】
実施例2にかかるイオン収着材(2)について、同様の操作を行ったところ、砒素溶液中に濃度10ppmで含まれていたAsO3−は、30分で98%が除去された。
〔カチオン収着材〕
<実施例3>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)100部にアセトン400部を含浸させた。これに無水マレイン酸10部、スチレン8部、ジビニルベンゼン(純度50%)1部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部を溶解させたアセトン50部を添加し、20分間激しく攪拌した後、70℃で5時間加熱・重合を行った。重合終了後アセトンを蒸留し、残留固形物に0.1規定苛性ソーダ水溶液300部を加え攪拌し、24時間マレイン酸の加水分解を行った。加水分解反応終了後、ろ過、水洗浄、エタノール洗浄を行うことにより、イオン収着材(3)を得た。
【0043】
<実施例4>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)100部にアセトン500部を含浸させた。これに無水マレイン酸10部、触媒としてのピリジン5部を溶解させたアセトン50部を添加し、20分間激しく攪拌することによりビニル基を導入した後、70℃で3時間、加熱・還流した。このビニル基の導入されたセルロース/アセトン含浸液に、スチレン8部、ジビニルベンゼン(純度50%)1部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加え良く攪拌した。ついで70℃で5時間加熱・重合を行った後、アセトンを蒸留した。残留固形物に0.1規定苛性ソーダ水溶液300部を加え攪拌した後24時間常温でマレイン酸の加水分解を行った。加水分解反応終了後、ろ過、水洗浄、エタノール洗浄を行うことにより、イオン収着材(4)を得た。生成物重量から、加えたセルロース、モノマーがほぼ100%生成物として得られていることが分かった。
【0044】
なお、本実施例4では、無水マレイン酸が、セルロースパルプへビニル基を導入する役割を果たすとともに、さらにビニル基の導入後における無水マレイン酸の余剰分がイオン収着性モノマーとしての役割を果たしている。
(カチオン収着試験1)
実施例3にかかるイオン収着材(3)について、様々な金属イオンについての収着率を測定した。具体的には、Ag+、Ba2+、Be2+、Bi3+、Ca2+、Cd2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Ga3+、K+、Li+、Mg2+、Na+、Ni2+、Pb2+、Rb+、Sr2+、Tl3+、U3+、V2+、Zn2+の各イオンについて、pH6.8に調製した濃度1ppmの溶液5mlを用意し、カラムに詰めた実施例3にかかるカチオン収着材(3)0.5g中に滴下し、流下させた。図12から明らかなように、この収着材(3)は、試験したカチオンの中で、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のカチオン以外は非常に希薄なイオン溶液でも収着することが分かった。
【0045】
(カチオン収着試験2)
上記実施例3にかかるイオン収着材(3)を用いて、Pdイオンの収着試験を行った。
濃度1ppmのPd溶液(pH6.8)を調製し、該Pd溶液5mlを、前記イオン収着材0.20gを充填したカラムに滴下し、溶液中のPdイオンを収着させ、カラムから流出した溶液中のPd濃度から収着率を測定した。
その結果、実施例3にかかるイオン収着材(3)では、初期濃度に対して81.6%のPdイオンを収着したことが分かった。
〔アニオン収着材〕
<実施例5>
充分に叩解したセルロースパルプ(ワタ様の集合体)10部にエチレングリコールジグリシジルエーテル20%水溶液17.5部を含浸させ、70℃で2時間反応させてセルロースパルプへのエポキシ基の導入反応を行った。冷却後、更にポリアリルアミン(重量平均分子量:3000)20%水溶液7.6部を含浸させ、更に70℃で2時間加熱してアミノ基の導入反応と網状化反応を行い、セルロース繊維(基体)にイオン収着部であるアミノ基を導入した。水で十分に洗浄し未反応物を除去し、イオン収着材(5)を得た。
【0046】
<実施例6>
セルロース繊維からなるセルロース織布10部に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(グリセロールの平均重合度は約3、分子中のグルシジル基は約3)25%水溶液15.0部を含浸させ、70℃で2時間反応させて織布繊維にエポキシ基導入反応を行った。冷却後、更にポリアリルアミン(重量平均分子量:15000)20%水溶液6.4部を含浸させた。熱風乾燥機中で、80℃で予備乾燥後、120℃で30分間加熱処理を行い、アミノ基の導入反応と網状化反応を行い、セルロース織布(基体)にイオン収着部であるアミノ基を導入した。水で十分に洗浄し未反応物を除去し、イオン収着材(6)を得た。
【0047】
<実施例7>
粉体高速混合機中に、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング材)を処理した合成非晶質シリカの粉体(基体部、平均粒径:230μm、吸油量:200ml/g)10部を仕込み、攪拌しながら実施例6で使用したポリグリセロールポリグリシジルエーテル25%水溶液15.0部及びポリアリルアミン20%水溶液6.4部を滴下し、混合して吸収させた。湿潤したシリカを取り出し、熱風乾燥機中で、80℃で予備乾燥後、120℃で30分間加熱処理を行い、アミノ基の導入反応と網状化反応を行い、シリカ(基体)にイオン収着部であるアミノ基を導入したシリカ粉末を得た。メタノールおよび水で洗浄し未反応物を除去し、イオン収着材(7)を得た。
【0048】
(アニオン収着試験)
上記実施例5、6および7で得られたアニオン収着材(5)、(6)および(7)を用いて、上記したアニオン収着試験1、2、3、4および5と同様にして収着試験を行い、アニオン収着材(1)と同様なイオン収着の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
生活排水、農業廃水、水処理施設等の高栄養塩排水からリン酸を除き藻類や微小生物の異常繁殖を抑制し環境保全に役立つのみならず、新しいリン資源回収法への利用や、硫酸イオンの捕捉・除去を簡便な方法で迅速に行うことができ、硫酸根を含まない塩化ナトリウムを必要とする工業への利用の可能性がある。また、希薄溶液中の酸素酸アニオンや重金属カチオンなどの有害イオンを多種に亘って捕捉・除去することで環境保全の有効な手段となる。さらに、本発明のカチオン収着材を強酸塩の形で用いれば、中性に近い通常の排水を、アニオン収着に伴うpH変動がほとんど無い(イオン収着能の低下が起きない)状態で連続的に処理することもでき、被処理溶液の煩雑なpH調整を必要しない点において、排水の処理上非常に有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部と、このイオン収着部を化学的結合によって固定支持する基体部とを備える、イオン収着材。
【請求項2】
前記イオン収着部が、化学的架橋構造により3次元網目構造をとっているイオン収着性(共)重合体鎖によって形成されている、請求項1に記載のイオン収着材。
【請求項3】
前記イオン収着部が、前記基体部に導入された反応性基と、当該反応性基に対し化学的に反応可能なイオン収着性(共)重合体鎖との反応によって、前記基体部に固定されている、請求項1または2に記載のイオン収着材。
【請求項4】
前記反応性基が、前記基体部に導入されたグラフト枝が有する反応性基である、請求項3に記載のイオン収着材。
【請求項5】
前記イオン収着性(共)重合体鎖が、イオン収着性モノマーと多ビニル化合物の共重合体である、請求項2から4までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項6】
前記基体部は、セルロース、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、シリカ、金属、不溶化したポリビニルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料からなり、ワタ様の集合体、多孔(開放孔)体、粉、球、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布の状態である、請求項1から5までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項7】
前記イオン収着部が、イオン収着性基として、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジン環基およびピリジニウム環基からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン収着性基、および/または、カルボキシル基、スルホ基およびホスホ基からなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン収着性基を有する、請求項1から6までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項8】
前記イオン収着性(共)重合体鎖が、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するアルキルアミン、ポリアルキレンアミン、ポリアルキルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ならびに、アミノ基および/またはイミノ基と4級アンモニウム基を併有するポリアミン化合物もしくはその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリン、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリフェノールのポリグリシジルエーテル、ならびに、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種とを反応させてなる、1〜3級アミノ基および/または4級アンモニウム基を有するイオン収着性(共)重合体鎖である、請求項2から7までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性基と反応性基を有する化合物を多官能性反応性化合物で縮合反応させることにより、3次元網目構造を有する高分子鎖を形成するとともに、前記高分子鎖を、直接におよび/または連結重合体鎖を介して、基体部と化学的結合させる、ことを特徴とする、イオン収着材の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性モノマーを必須とするモノマー成分の重合によるイオン収着性(共)重合体鎖の形成と、前記イオン収着性(共)重合体鎖と基体部との化学的架橋によるイオン収着部の基体部への固定とを同時に行う、ことを特徴とする、イオン収着材の製造方法。
【請求項11】
前記イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定のための化学的架橋を前記基体部に導入されたラジカル基により行う、請求項10に記載のイオン収着材の製造方法。
【請求項12】
前記イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定のための化学的架橋を前記基体部に導入されたビニル基により行う、請求項10に記載のイオン収着材の製造方法。
【請求項13】
イオン収着性(共)重合体鎖と架橋剤の追加添加によりイオン収着部中のイオン収着性基の割合および架橋密度を調整する、請求項10から12までのいずれかに記載のイオン収着材の製造方法。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材を製造する方法であって、基体部を酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、シランカップリング基、チオール基およびメチロール基からなる少なくとも1つの反応性基を有する反応性化合物で処理するか、および/または、前記反応性基を有する不飽和単量体を基体部にグラフト重合させることにより基体部に前記反応性基を導入し、さらに、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するかおよび/または4級アンモニウム基を有する、アルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリンと、分子中に2〜6個のグリシジル基を有する、ポリアルコールのポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルおよびポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種のエポキシ化合物とを反応させてイオン収着性(共)重合体鎖を形成させるとともに、当該イオン収着性(共)重合体鎖を、反応性基を導入した前記基体部に化学的結合させる、ことを特徴とする、イオン収着材の製造方法。
【請求項15】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材に、イオン溶液を接触させて、前記イオン溶液に含まれるイオンを前記イオン収着材に収着させるようにする、イオン収着材の使用方法。
【請求項16】
前記イオン収着材がアニオン収着材であり、当該アニオン収着材のイオン収着性基を塩として使用する、請求項15に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項17】
前記イオン溶液に含まれるイオンが、酸素酸イオンである、請求項15に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項18】
前記酸素酸イオンが、バナジン酸イオン、クロム酸イオン、モリブデン酸イオン、マンガン酸イオン、硼酸イオン、燐酸イオン、砒酸イオン、硫酸イオン、セレン酸イオン、臭素酸イオンおよび/またはヨウ素酸イオンである、請求項17に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項19】
前記イオン溶液に含まれるイオンが、Ag+、Ba2+、Be2+、Bi3+、Ca2+、Cd2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Ga3+、K+、Li+、Mg2+、Na+、Ni2+、Pb2+、Rb+、Sr2+、Tl3+、U3+、V2+、Zn2+からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンである、請求項16に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項20】
前記イオン収着材は、前記基体部が、ワタ様の集合体および/または多孔(開放孔)体であって、浮遊状態および/または充填状態で使用される、請求項15から19までのいずれかに記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項21】
前記イオン収着材は、前記基体部が、粉、球、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布であって、円筒状、積層状および/または巻き込み状の形態で使用される、請求項15から19までのいずれかに記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項1】
イオン収着性の3次元網目構造を有する高分子からなるイオン収着部と、このイオン収着部を化学的結合によって固定支持する基体部とを備える、イオン収着材。
【請求項2】
前記イオン収着部が、化学的架橋構造により3次元網目構造をとっているイオン収着性(共)重合体鎖によって形成されている、請求項1に記載のイオン収着材。
【請求項3】
前記イオン収着部が、前記基体部に導入された反応性基と、当該反応性基に対し化学的に反応可能なイオン収着性(共)重合体鎖との反応によって、前記基体部に固定されている、請求項1または2に記載のイオン収着材。
【請求項4】
前記反応性基が、前記基体部に導入されたグラフト枝が有する反応性基である、請求項3に記載のイオン収着材。
【請求項5】
前記イオン収着性(共)重合体鎖が、イオン収着性モノマーと多ビニル化合物の共重合体である、請求項2から4までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項6】
前記基体部は、セルロース、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、シリカ、金属、不溶化したポリビニルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料からなり、ワタ様の集合体、多孔(開放孔)体、粉、球、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布の状態である、請求項1から5までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項7】
前記イオン収着部が、イオン収着性基として、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジン環基およびピリジニウム環基からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン収着性基、および/または、カルボキシル基、スルホ基およびホスホ基からなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン収着性基を有する、請求項1から6までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項8】
前記イオン収着性(共)重合体鎖が、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するアルキルアミン、ポリアルキレンアミン、ポリアルキルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ならびに、アミノ基および/またはイミノ基と4級アンモニウム基を併有するポリアミン化合物もしくはその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリン、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリフェノールのポリグリシジルエーテル、ならびに、分子中に2〜6個のグリシジル基を有するポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種とを反応させてなる、1〜3級アミノ基および/または4級アンモニウム基を有するイオン収着性(共)重合体鎖である、請求項2から7までのいずれかに記載のイオン収着材。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性基と反応性基を有する化合物を多官能性反応性化合物で縮合反応させることにより、3次元網目構造を有する高分子鎖を形成するとともに、前記高分子鎖を、直接におよび/または連結重合体鎖を介して、基体部と化学的結合させる、ことを特徴とする、イオン収着材の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材を製造する方法であって、イオン収着性モノマーを必須とするモノマー成分の重合によるイオン収着性(共)重合体鎖の形成と、前記イオン収着性(共)重合体鎖と基体部との化学的架橋によるイオン収着部の基体部への固定とを同時に行う、ことを特徴とする、イオン収着材の製造方法。
【請求項11】
前記イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定のための化学的架橋を前記基体部に導入されたラジカル基により行う、請求項10に記載のイオン収着材の製造方法。
【請求項12】
前記イオン収着性(共)重合体鎖がイオン収着性モノマーと多ビニル化合物との共重合体であり、前記イオン収着部の基体部への固定のための化学的架橋を前記基体部に導入されたビニル基により行う、請求項10に記載のイオン収着材の製造方法。
【請求項13】
イオン収着性(共)重合体鎖と架橋剤の追加添加によりイオン収着部中のイオン収着性基の割合および架橋密度を調整する、請求項10から12までのいずれかに記載のイオン収着材の製造方法。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材を製造する方法であって、基体部を酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、シランカップリング基、チオール基およびメチロール基からなる少なくとも1つの反応性基を有する反応性化合物で処理するか、および/または、前記反応性基を有する不飽和単量体を基体部にグラフト重合させることにより基体部に前記反応性基を導入し、さらに、分子中に1〜3級アミノ基を1〜5個有するかおよび/または4級アンモニウム基を有する、アルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれた少なくとも1種と、エピハロヒドリンと、分子中に2〜6個のグリシジル基を有する、ポリアルコールのポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルおよびポリカルボン酸のポリグリシジルエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種のエポキシ化合物とを反応させてイオン収着性(共)重合体鎖を形成させるとともに、当該イオン収着性(共)重合体鎖を、反応性基を導入した前記基体部に化学的結合させる、ことを特徴とする、イオン収着材の製造方法。
【請求項15】
請求項1から8までのいずれかに記載のイオン収着材に、イオン溶液を接触させて、前記イオン溶液に含まれるイオンを前記イオン収着材に収着させるようにする、イオン収着材の使用方法。
【請求項16】
前記イオン収着材がアニオン収着材であり、当該アニオン収着材のイオン収着性基を塩として使用する、請求項15に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項17】
前記イオン溶液に含まれるイオンが、酸素酸イオンである、請求項15に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項18】
前記酸素酸イオンが、バナジン酸イオン、クロム酸イオン、モリブデン酸イオン、マンガン酸イオン、硼酸イオン、燐酸イオン、砒酸イオン、硫酸イオン、セレン酸イオン、臭素酸イオンおよび/またはヨウ素酸イオンである、請求項17に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項19】
前記イオン溶液に含まれるイオンが、Ag+、Ba2+、Be2+、Bi3+、Ca2+、Cd2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Ga3+、K+、Li+、Mg2+、Na+、Ni2+、Pb2+、Rb+、Sr2+、Tl3+、U3+、V2+、Zn2+からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンである、請求項16に記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項20】
前記イオン収着材は、前記基体部が、ワタ様の集合体および/または多孔(開放孔)体であって、浮遊状態および/または充填状態で使用される、請求項15から19までのいずれかに記載のイオン収着材の使用方法。
【請求項21】
前記イオン収着材は、前記基体部が、粉、球、糸、紙、フィルム、織布および/または不織布であって、円筒状、積層状および/または巻き込み状の形態で使用される、請求項15から19までのいずれかに記載のイオン収着材の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−91062(P2013−91062A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19158(P2013−19158)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2008−266654(P2008−266654)の分割
【原出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2008−266654(P2008−266654)の分割
【原出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【Fターム(参考)】
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