説明

イオン吸着剤及びその製造方法

【課題】 本発明は、溶液中のカチオン及び/又はアニオンを吸着除去するものであり、さらに、脱離・再生が可能で繰り返し使用できる吸着剤を提供する。
【解決手段】 ナトリウムを含有する含水アルミノケイ酸塩を主成分とする吸着剤であって、カチオン及び/又はアニオンを弱酸性〜弱アルカリ性領域で吸着する吸着剤は、水溶性ケイ素化合物、水溶性アルミニウム化合物及びアルカリ原料を用いてpH6〜8.0の弱酸性から弱アルカリ性領域の水溶液中で反応させて得ることができ、前記吸着剤は、カチオン及び/又はアニオンを弱酸性及び/又は弱アルカリ性領域で脱離し、再生使用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中のイオンを吸着する環境浄化用の吸着剤である。具体的には、カチオンとしてカリウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、銀、セシウム、銅等、アニオンとしては硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン等を吸着できる吸着剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、水系および土壌中の有害イオンを吸着・除去する環境技術が数多く提案されているが、広い濃度範囲かつ多種類のカチオン及びアニオン等を環境に大きな負荷を与えずに、経済的で効率的に吸着・除去し繰り返し使用できる材料は現在のところ知られていない。
【0003】
従来、水溶液中のカチオン及びアニオン等の除去には、生物学的な方法、物理化学的な方法、凝集法、晶析法などが行われているが、操作の簡便性からは物理化学的な手法の一つである吸着・イオン交換法が有利である。従来、吸着・イオン交換法として、ゼオライト、キレート樹脂・キレート繊維又はイオン交換樹脂や水酸化セリウム、ジルコニウムフェライト等を用いることが知られている。
【0004】
しかしながら、イオン交換樹脂やキレート樹脂・キレート繊維、水酸化セリウム、ジルコニウムフェライトなどは、効率的にイオンを吸着・除去できるが、高価であり環境中で大量に使用することは困難であった。またイオン交換樹脂やキレート樹脂・キレート繊維などは、選択的にイオンを吸着除去するが、自然に分解するものではなく、環境中に放出された場合、環境負荷を与える恐れがある。またゼオライトは天然に存在するものは産地によってイオン交換能が大きく異なる等の問題点がある。人工合成ゼオライトは高価な設備であるオートクレーブを使用して長時間反応により合成することが一般的で、比較的高価である。
【0005】
また、水酸化セリウム、ジルコニウムフェライトについても、希土類元素や高価な金属を使用しており高コストであることから環境中で大量に使用することは困難であった。
【0006】
従来、水蒸気等の吸着材料として、含水アルミノケイ酸塩等が知られている(特許文献1〜2)。また、吸着剤としてゼオライトなどを用いることが知られている(特許文献3〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−240956号公報
【特許文献2】特開2008−179533号公報
【特許文献3】特開平4−34049700号公報
【特許文献4】特開平5−34497号公報
【特許文献5】特開2005−91116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カチオン及び/又はアニオンを急速に吸着するものであり、殊に、低濃度であっても効率よくイオンを環境に大きな負荷を与えずに、吸着除去し、脱離、再生により繰り返し使用できる汎用性の高い吸着剤は未だに提供されていない。
【0009】
即ち、前出特許文献1又は2には、各種含水アルミノケイ酸塩を用いて水蒸気等を吸着することが記載されているが、環境負荷が軽微で経済的に各種イオンを吸着することを記載していない。
【0010】
また、特許文献3〜5に記載の技術では、短時間での処理、あるいは、吸着材のケーキフィルター状態での通水処理という点で、十分に被吸着物を吸着・除去することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0012】
即ち、本発明は、イオンを吸着する吸着剤であって、前記吸着剤はSiとAlとの合計量に対するナトリウム含有量のモル比(Na/(Si+Al))が0.1〜0.5である含水アルミノケイ酸塩粒子であることを特徴とする吸着剤である(本発明1)。
【0013】
また、本発明は、含水アルミノケイ酸塩粒子が非晶質であり、Si/Alモル比が1.3〜5であり、かつ、BET比表面積が300〜700m/gであることを特徴とする本発明1記載の吸着剤である(本発明2)。
【0014】
また、本発明は、水溶性ケイ素原料、水溶性アルミニウム原料及びアルカリ原料を混合し、反応溶液のpHが6.0〜8.0の領域で反応温度85〜110℃で合成した含水アルミノケイ酸塩粒子であることを特徴とする本発明1又は2の吸着剤である(本発明3)。
【0015】
また、本発明は、反応終了後に反応温度10〜70℃で、pH8.0〜9.5で熟成反応をすることを特徴とする本発明1又は2に記載の吸着剤である(本発明4)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吸着剤は、多くのカチオン及び/又はアニオンを吸着・捕捉できるので、飲料水、排水における処理剤・有害アニオン吸着剤として好適である。また、本発明に係る吸着剤は、複雑な処理工程を必要としないので、簡便な処理方法に用いる吸着剤として好適である。更に、複数のカチオン及び/又はアニオンが共存した飲料水や排水の処理剤・有害アニオン吸着剤に対しても、本発明に係る吸着剤は有効である。
【0017】
さらに、本発明に係る吸着剤は無害で地球に豊富に存在する元素または化合物から構成されているので、該吸着剤自体を埋め立て処分した場合も、環境への負荷は小さい。また本発明に係る吸着剤は1000℃付近の温度で急激に加熱収縮をするので、吸着イオンを保持した状態で減容積・ガラス固化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0019】
先ず、本発明に係るカチオン及び/又はアニオンを吸着する吸着剤(以下、「吸着剤」とする。)について述べる。
【0020】
本発明に係る吸着剤は、ナトリウムを含有するアルミノケイ酸塩粒子粉末であり、非結晶性である。
【0021】
本発明に係る吸着剤のナトリウム含有量は、SiとAlとの合計量に対するナトリウム含有量のモル比(Na/(Si+Al))が0.1〜0.5である。Na含有量が0.1未満の場合には、カチオンの吸着が十分ではない。Na含有量が0.5を超える場合には、アルミノケイ酸塩の微細構造が変化するので好ましくはない。好ましいNa含有量は0.12〜0.45であり、より好ましくは0.15〜0.40である。
【0022】
本発明に係る吸着剤の粒子形状は粒状又は板状が好ましい。
【0023】
本発明に係る吸着剤はSi/Alのモル比は1.3〜5.0が好ましい。Si/Alのモル比が1.3未満の場合には、吸着性能が低下して好ましくない。Si/Alのモル比が5.0を越えると混在すると吸着性能が低下して好ましくない。より好ましいSi/Alのモル比は1.5〜5.0であり、さらにより好ましくは1.8〜4.8である。
【0024】
本発明に係る吸着剤のBET比表面積値は300〜700m/gが好ましく、より好ましくは400〜600m/gである。BET比表面積値が300m/g未満の場合には、有害アニオンと吸着剤の接触面積が小さくなるので好ましくない。700m/gを超える場合には、有害アニオンの吸着には問題ないが、工業的に生産するには困難であり、取扱いにおいても困難である。
【0025】
本発明に係る吸着剤の炭素含有量は0.01〜0.5wt%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.3wt%である。硫黄含有量は0.5wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以下である。
【0026】
本発明に係る吸着剤の平均1次粒子径は2〜50nmが好ましい。好ましくは3〜30nmである。
【0027】
本発明に係る吸着剤はTi、Zr、Fe及びCeから選ばれる1種以上の元素を含有してもよく、前記元素を含有することによって耐熱性が向上する。Tiの含有量は0.1〜15wt%が好ましく、より好ましくは1.0〜15wt%である。Zr、FeまたはCeの含有量は0.2〜40wt%が好ましく、より好ましくは1.0〜30wt%である。Ti、Zr、FeまたはCeは含水アルミノケイ酸塩中に固溶して存在させることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る吸着剤は、球状、円柱状、中空を有する円柱状、粒状などの成型体とすることもできる。
【0029】
前記成型体を形成する場合には、樹脂を併用することができる。
【0030】
本発明における樹脂成分は、ポリウレタン樹脂や塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂などで特に限定するものではなく、ウレタン、塩化ビニリデンなどと、アクリレート、アクリロニトリルなどとを共重合させた共重合体なども本発明の樹脂成分として有効である。さらに、必要に応じて、エポキシ系やメラミン系などの架橋剤や他の添加剤を添加することもできる。
【0031】
なお、本発明に係る吸着剤は、造粒の核となるような第3成分を加えて、吸着剤と樹脂成分を前記核の周囲に複合化して形成することで吸着剤成分の使用量を低減することも可能である
【0032】
次に、本発明に係る吸着剤の製造法について述べる。
【0033】
本発明に係る吸着剤は、水溶性ケイ素原料と水溶性アルミニウム原料及びアルカリ原料とを混合し、反応溶液のpHを6.0〜8.0に制御して加熱熟成反応を行って得ることができる。
【0034】
本発明における水溶性ケイ素原料としては、オルトケイ酸ナトリウム、水ガラス、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等を使用することができる。水溶性アルミニウム原料としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を使用することができる。
【0035】
アルカリ原料は、炭酸アルカリ水溶液としては炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液等であり、水酸化アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0036】
Si/Alモル比としては1.3〜5が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0である。1.3未満の場合には、吸着性能が低下して好ましくない。5.0を越えると混在すると吸着性能が低下して好ましくない。
【0037】
反応時のpHは6.0〜8.0が好ましい。pHが6.0未満の場合には、含水アルミノケイ酸塩中のナトリウム含有量が少なくなり、カチオン及び/又はアニオンの吸着能が低下し、吸着剤として好ましくない。pH8.0を越える場合は、カチオン及び/又アニオンの吸着能が低下し、吸着剤として好ましくない。
【0038】
反応温度は、85〜110℃の温度が好ましい。85℃未満の場合には、反応時間が長くなるので好ましくない。110℃を超える場合には吸着性能が低下して好ましくない。
【0039】
反応の終了後にナトリウムイオンを含むアルカリ溶液の添加による脱プロトン反応を伴う熟成を行い、ナトリウムイオンの含有量を向上させる後反応を行ってもよい。
【0040】
前記後反応における反応溶液のpHは8.0〜9.5が好ましい。また後反応における反応溶液の温度は20〜70℃が好ましい。
【0041】
本発明に係るTiを含有する含水アルミノケイ酸塩粒子を製造する際は、前記反応において、Ti原料を添加して混合、熟成すればよい。Ti原料としては、硫酸チタニル溶液、四塩化チタン溶液などである。
【0042】
本発明に係るZrを含有する含水アルミノケイ酸塩粒子を製造する際は、前記反応において、Zr原料を添加して混合、熟成すればよい。Zr原料としては、硫酸ジルコニウム・オキシ塩化ジルコニウムなどの4価のジルコニウム塩である。
【0043】
本発明に係るFeを含有する含水アルミノケイ酸塩粒子を製造する際は、前記反応において、Fe原料を添加して混合、熟成すればよい。Fe原料としては、硫酸第二鉄・塩化第二鉄・硝酸鉄などの3価の鉄塩である。また、鉄は硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に不純物として含まれていることもある。
【0044】
本発明に係るCeを含有する含水アルミノケイ酸塩粉末を製造する際は、前記反応において、Ce原料を添加して混合、熟成すればよい。Ce原料としては、硫酸第二セリウムなどの4価のセリウム塩である。
【0045】
また、前記含水アルミノケイ酸塩粒子を有機物などで乾式表面処理することによって、水系における有害アニオンとの反応性をコントロールすることができる。表面処理剤としては、ロジン化合物、シランカップリング剤、高級脂肪酸等を挙げることができる。上記の表面処理剤による吸着剤粉末に対する被覆量は、含水アルミノケイ酸塩粒子に対してC換算で各々0.1〜5重量%が好ましい。乾式表面処理機としては、らいかい機・振動ミル、ローラー型混合機などを使用することができる。
【0046】
次に、本発明に係る吸着剤を用いたカチオン及び/又はアニオンの処理方法について述べる。
【0047】
本発明におけるカチオン及び/又はアニオン処理工程は、溶存しているカチオン及び/又はアニオンの固定化・分離処理の場合とカチオン及び/又はアニオンを放出させる可能性のあるものに吸着剤を共存させてカチオン及び/又はアニオンの水系への放出を抑制させる場合に区別される。以下、本発明における溶存カチオン及び/又はアニオンの処理工程について説明する。
【0048】
本発明では、各種イオン、たとえば、カチオンとしてカリウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、銀、セシウム、銅等、アニオンとしては硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン等を吸着することができる。
【0049】
本発明において、被処理水と吸着剤を接触させる方法は、特に制限はない。吸着剤及び/又は吸着剤の顆粒物が充填されたカラムや濾過槽に被処理水を流通させる方法、粉末状の含水アルミノケイ酸塩粒子を用いた攪拌槽と沈殿槽を組み合わせた方法などが利用できる。
【0050】
吸着剤を接触させる時の液温については、特に制限はなく、通常使用される温度範囲の5〜90℃が好ましく、より好ましくは10〜50℃である。
【0051】
カチオン及び/又はアニオンを吸着する際の水溶液のpHは弱酸性〜弱アルカリ性であることが好ましく、特に、4.5〜9.5であることが好ましい。
【0052】
また、本発明に係る吸着剤は、カチオンを吸着した後、水溶液中のpHを弱酸性、例えば、4.5〜6.0にすることによって、吸着したカチオンを脱離することができる。一方、アニオンを吸着した後、水溶液中のpHを弱アルカリ性、例えば、7.5〜9.5にすることによって、吸着したアニオンを脱離することができる。なお、脱離反応を促進するために、各種添加剤を添加してもよい。
【0053】
<作用>
本発明において重要な点は、本発明に係る吸着剤は、カチオン及び/又はアニオンを低濃度から高濃度まで広範囲にわたって、吸着できるという事実である。また本発明において重要な点は、本発明に係る吸着剤は、カチオン及び/又はアニオンを急速に吸着できるという事実である。
【0054】
本発明に係る吸着剤がカチオン及び/又はアニオンに対して、高い吸着能を有する理由は未だ明らかではないが、後出実施例及び比較例に示すとおり、吸着剤を構成する含水アルミノケイ酸塩粒子表面にイオン交換可能なナトリウム等のイオンが多く存在することによるものと本発明者は推定している。
本発明に係る吸着剤は、アルミノケイ酸塩の組成や比表面積を制御することによって、多くの交換が可能なイオンが粒子表面に存在することに起因するものと本発明者は推定している。
【0055】
本発明に係る吸着剤は、カチオン及び/又はアニオンに対して高い吸着能を有するので、目的とする複数のカチオンと複数のアニオンが共存する場合であっても、また高い吸着能を維持することができる。また本発明に係る吸着剤は粒子表面のイオン交換によるカチオン及び/又はアニオンの吸着メカニズムを持つために、吸着速度が大きいという特長を持っている。
【0056】
本発明に係る吸着剤は、溶液のpHを変化させる方法及び各種イオン含有溶液と接触せることにより、吸着剤として再利用が可能である。
【実施例】
【0057】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0058】
本発明に係る吸着剤の結晶相の同定は、「X線回折装置RINT2500(理学電機(株)製)」(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:300mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.010°、走査速度:4.00°/min、発散スリット:1/2°、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mm)を使用して行った。
【0059】
本発明に係る吸着剤のBET比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0060】
本発明に係る吸着剤のAl、Na、Fe、Ti、Zr、Ceなどの金属元素含有量の分析は、該粉末を塩酸で溶解し、「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業(株))」で測定して求めた。また本発明に係る吸着剤のSi及びAlは蛍光エックス線分析装置Rigaku RIX2100を用いて含有量を求めた。
【0061】
本発明に係る吸着剤の炭素含有量(重量%)、硫黄含有量(重量%)は、カーボン・サルファーアナライザー:EMIA−2200(HORIBA製)により測定した。
【0062】
実施例1:吸着剤の製造
内容積100lの反応容器中に、Siとして1.0mol/lの3号オルトケイ酸ナトリウム溶液28lを投入した後、Al3+0.5mol/lの塩化アルミニウム溶液40lを添加・混合し、つぎに3NのNaOH溶液をpH7.2になるまで滴下して、さらに水を加えて、溶液量95l・温度40℃に調整した。
【0063】
上記懸濁液を温度40℃で30分間保持して熟成した後、当該懸濁液の温度を95℃とし、20時間熟成撹拌反応を行った。得られた白色懸濁液の温度を50℃まで冷却したところ、溶液のpHは6.1であった。さらに撹拌しながら1.0MのNaOH溶液を滴下してpHを8.5に調整し、1時間保持した。次に濾別、水洗、乾燥、粉砕した。
【0064】
得られた白色粒子粉末は、X線回折の結果、非晶質であり、BET比表面積が472m/gの粒状を呈した粒子からなり、組成分析の結果、Si/Alモル比1.42、Na/Si+Alが0.164、硫黄(T−S)0.01wt%炭素(T−C)0.07wt%であった。
【0065】
実施例2〜10、比較例1〜5
吸着剤の生成反応におけるアルカリ水溶液の種類、濃度及び使用量、水溶性ケイ素水溶液及び水溶性アルミニウムの種類、濃度及び使用量、添加元素原料の種類、濃度、使用量などを種々変化させた以外は、実施例1と同様にして含水アルミノケイ酸塩粒子を生成した。
【0066】
このときの製造条件を表1に、アルカリ処理条件を表2に、得られたアルミノケイ酸塩粒子の諸特性を表3に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
<リンイオン吸着試験>
使用例1
特級試薬のリン酸ニ水素ナトリウムをイオン交換水に溶解して、リン濃度として115ppm、pH4.95のリン吸着試験溶液を調製した。樹脂製ボトルにリン吸着試験溶液200mlを注ぎ、実施例1で得た吸着剤を0.2g(1g/L)添加して、水平振とう機を用いて60分間振とうした後、5Cのろ紙を用いて固液分離し、液中のリン濃度を「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業(株))」用いて測定した結果、92ppmに低減し、本試験における吸着剤1g当りのリン吸着容量は23mgとなった。また分配係数Kdは250ml/gとなった。
【0071】
使用例2〜30:
吸着剤の添加量、リン濃度、水平振とう機での処理時間以外は、前記使用例1と同様にしてリン吸着試験を実施して結果を表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
<セシウムイオン吸着試験>
使用例31
特級試薬の塩化セシウムをイオン交換水に添加・溶解してセシウム濃度として579ppm、pH7.8のセシウム吸着試験溶液を調製した。樹脂製ボトルにセシウム吸着試験溶液100mlを注ぎ、実施例1で得た吸着剤を0.2g(2g/L)添加して、水平振とう機を用いて60分間振とうした後、5Cのろ紙を用いて固液分離し、液中のセシウム濃度を「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業(株))」用いて測定した結果、367ppmに低減し、本試験における吸着剤1g当りのセシウム吸着容量は106mgとなった。また分配係数Kdは289ml/gとなった。
【0074】
使用例32〜62:
実施例及び比較例の各吸着剤について、前記使用例31と同様にしてセシウム吸着試験を実施した。その結果を表5に示す。
【0075】
【表5】

【0076】
<セシウム・ストロンチウムイオン混合溶液吸着試験>
使用例63
特級試薬の塩化セシウム及び特級試薬の塩化ストロンチウム六水和物をイオン交換水に溶解して、セシウム210ppm、ストロンチウム130ppm、pH3.8の吸着試験溶液を調製した。樹脂製ボトルに吸着試験溶液100mlを注ぎ、実施例1で得た吸着剤を0.1g(1g/L)添加して、水平振とう機を用いて60分間振とうした後、5Cのろ紙を用いて固液分離し、液中のセシウム及びストロンチウムをICPを用いて測定した結果、140ppm及び104ppmに低減し、本試験における吸着剤1g当りのセシウム吸着容量は70mg/g、ストロンチウム吸着容量は26mg/gとなった。また分配係数はそれぞれ、KdCs500ml/g、KdSr250mg/gとなった。
【0077】
使用例64〜94:
吸着剤の添加量、セシウム・ストロンチウム濃度、水平振とう機での処理時間以外は、前記使用例63と同様にしてセシウム・ストロンチウム吸着試験を実施して結果を表6に示す。
【0078】
【表6】

【0079】
<海水組成におけるセシウム・ストロンチウムイオン混合溶液吸着試験>
使用例95
特級試薬の塩化セシウム及び特級試薬の塩化ストロンチウム六水和物をイオン交換水に添加して溶解したのち、ろ過済み海水に添加してセシウム12ppm、ストロンチウム11ppmに調整した。その溶液100mlに実施例1の吸着剤0.4gを投入し、60分間水平振とう機で振とうした後、5Cのろ紙を用いて固液分離し、液中のセシウム濃度を原子吸光分光計で、ストロンチウム濃度をICPを用いて測定し、その溶液中のセシウム及びストロンチウム濃度はそれぞれ5.9ppm、9.8ppmとなり、分配係数Kdはそれぞれ258ml/g、30.6ml/gとなった。
【0080】
使用例96〜126:
各吸着剤について、前記使用例95と同様にしてセシウム及びストロンチウムの海水組成の吸着試験を実施した。その結果を表7に示す。
【0081】
【表7】

【0082】
<バリウム・セシウム・ストロンチウム及びカルシウムイオン混合溶液吸着試験>
使用例127
特級試薬の塩化バリウム六水和物、特級試薬の塩化セシウム、特級試薬の塩化ストロンチウム六水和物及び特級試薬の塩化カルシウム六水和物をイオン交換水に溶解して、濃度バリウム212ppm、セシウム211ppm、ストロンチウム136ppm及びカルシウム71.3ppmのpH7.2の溶液を調整した。実施例1の吸着剤0.15gをこの調整した溶液150mlに添加し、60分間水平振とう機で振とうした後、5Cのろ紙を用いて固液分離し、液中のバリウム、セシウム、ストロンチウム及びカルシウム濃度をICPを用いて測定し、その溶液中の各イオンの濃度から吸着剤1gからの吸着量を計算した結果それぞれ30、32、7、5.4となった。また吸着イオンのそれぞれのモル比率は0.97/1/0.34/0.58となった。
【0083】
使用例128〜144:
各吸着剤について、前記使用例127と同様にしてバリウム、セシウム、ストロンチウム及びカルシウムの吸着試験を実施した。その結果を表8に示す。
【0084】
【表8】

【0085】
<セシウムイオンの吸着速度試験>
使用例145
特級試薬の塩化セシウムをイオン交換水に添加・溶解してセシウム濃度として210ppm、pH7.7のセシウム吸着試験溶液を調製した。樹脂製ボトルにセシウム吸着試験溶液100mlを注ぎ、実施例4−2で得た吸着剤を0.1g(1g/L)添加して、水平振とう機を用いて5分間振とうした後、5Cのろ紙を用いて固液分離し、液中のセシウム濃度をICPを用いて測定した結果、73ppmに低減し、本試験における吸着剤1g当りのセシウム吸着容量は137mg/gとなった。また分配係数Kdは1877ml/gとなった。
【0086】
使用例146〜162:
実施例及び比較例の各吸着剤について、吸着時間を変化させた以外は前記使用例145と同様にしてセシウムイオン吸着試験を実施した。その結果を表9に示す。
【0087】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る吸着剤は、広い濃度範囲のカチオン及び/又はアニオンを容易に急速に吸着できるので、カチオン及び/又はアニオンの吸着剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを吸着する吸着剤であって、前記吸着剤はSiとAlとの合計量に対するナトリウム含有量のモル比(Na/(Si+Al))が0.1〜0.5である含水アルミノケイ酸塩粒子であることを特徴とする吸着剤。
【請求項2】
含水アルミノケイ酸塩粒子が非晶質であり、Si/Alモル比が1.3〜5であり、かつ、BET比表面積が300〜700m/gであることを特徴とする請求項1記載の吸着剤。
【請求項3】
水溶性ケイ素原料、水溶性アルミニウム原料及びアルカリ原料を混合し、反応溶液のpHが6.0〜8.0の領域で反応温度85〜110℃で合成した含水アルミノケイ酸塩粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸着剤の製造方法。
【請求項4】
請求項3の製造方法において、反応終了後に反応温度10〜70℃で、pH8.0〜9.5で熟成反応をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸着剤の製造方法。



【公開番号】特開2013−59717(P2013−59717A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198896(P2011−198896)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】