説明

イオン性液体を含む電気光学デバイス用電解質

【課題】溶融塩溶媒中の可溶性二官能性酸化還元染料の電解質溶液を使用して、紫外線照射に対して増強された安定性を有する電気工学デバイスを製造する。
【解決手段】溶媒として、リチウム陽イオンまたは四級アンモニウム陽イオン、およびトリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択されるパーフルオロスルホニルイミド陰イオンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(合衆国の権利に関する声明)
本発明は、米国エネルギー省により付与される契約番号第W−7405−ENG−36の下に政府の支援で行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2002年6月21日に提出された「イオン性液体を含む電気光学デバイス用電解質」と題される米国仮特許出願第60/390,611号(参考として本明細書中に援用される)の優先権を主張する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、概して、電解質溶液および電気光学デバイスに関する。そして、より詳細には、イオン性液体溶媒中UV安定化色素の電解質溶液に、そしてこれらの溶液を使用する電気光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
電気光学デバイスは、適用される電圧が、そのデバイスの光学特性に変化を引き起こすデバイスである。電気光学デバイスは、建築物における太陽熱獲得の管理のために使用される可変の伝送ウインドウ(variable transmission windows)、および可変の伝送自動車用ミラー(variable transmission automotive mirrors)などの多くの用途に使用される。特定の型の電気光学デバイスは、エレクトロクロミックデバイス、すなわち、適用電圧に応答して色を変化するデバイスである。
【0005】
エレクトロクロミック(EC)デバイスは、光の可逆性調節を提供し、そしていくつかの用途に有用である。用途のいくつかは、自動車、トラック、バス、スクーターおよびオートバイ用のバックミラー;自動車、他の輸送機関(道路、鉄道、水路および空路を含む)および建築物用の窓、眼鏡類ならびに人工光の減衰または調節、ディスプレイ、輝度増強フィルター(ディスプレイを備えたヘルメット用の可変の伝送フィルターを含む)である。唯一首尾よい市販用の用途は、今までのところは、自動車用バックミラーについてのものであった。高い費用と耐久性の欠如は、これらのECデバイスの市販用の窓用途を制限してきた。
【0006】
ECデバイスの耐久性制限は、一部、先行技術で使用された電解質および溶媒により生じる。今日のデバイスに使用されている代表的な高誘電溶媒は、1つ以上の、次の欠点を有し得る:高い揮発性、高湿度感受性、親水性、狭い範囲の電気化学安定性、化学的反応性、および光誘導分解に対する感受性(代表的には、紫外線またはUV光から)。ECデバイス用の溶媒の要求の1つは、ECデバイスの他の化学的成分が、溶解性で、そしてそれらと化学的に安定であることである。
【0007】
イオン性液体を用いる最近の進展は、従来の溶媒に関連した所定の問題が、アンモニウム陽イオンとトリフルオロスルホニルを含む陰イオンから構成される有機溶媒である多様なイオン性液体溶媒の使用によって克服され得ることを示した。既述の問題を克服することに加えて、これらの溶媒は低燃焼性を有するので、従来の有機溶媒を取り込む製品よりも安全にそれらを取り込む製品を製造する。
【0008】
電気光学デバイス用のイオン性液体の使用の制限は、エレクトロクロミックデバイスの多くの公知成分が、イオン性液体において制限された溶解性を有することである。さらに、本質的な制限、たとえば、公知のエレクトロクロミック染料および添加物の電気化学的安定性は、従来の有機溶媒に合致し、したがって、これらの染料および他の添加物が、イオン性液体の有利な特性の完全利用を可能としない。イオン性液体の使用は、たとえば、「不燃性電解質(Non-Flammable Electrolytes)」と題されるA.McEwenらに対するPCT特許出願国際公開第01/93363号パンフレットに、「常温溶融塩及びそれを用いた電気化学的デバイス(Room Temperature Molten Salts and Electrochemical Devices Using the Salts)」と題されるM.Watanabeらに対する日本国特許第98168028号明細書に、そして、2002年4月2日に発行した「電解質溶質として有用な材料(Materials Useful as Electrolytic Solutes)」と題されるC.Michotらに対する米国特許第6,365,301号明細書に記載される(その全体が参考として本明細書中に援用される)。これらの論文および特許には、電解質で使用するためのイオン性液体の使用が記載されているが、とくに詳細な電解質組成を提供せず、そしてまた、イオン性液体を使用して製造されるエレクトロクロミックデバイスの特徴付けがなされていない。
【0009】
大きな耐久性を有する電気光学デバイスの必要性が残る。
【0010】
したがって、本発明の目的は、大きな耐久性を有する電気光学デバイスを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、電気光学デバイス用の電解質溶液を提供することである。
【0012】
本発明のなお別の目的は、電気光学デバイス用のイオン性溶液と共に使用するための可溶性染料化合物を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的、利点および新規性は、続く説明で部分的に規定され、そして部分的には、以下の実験により当業者に明らかになるか、または本発明の実施により習得され得る。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲にとくに示される手段(instrumentalities)および組み合わせの手段(means)により認識され、そして達成され得る。
【発明の開示】
【0014】
(発明の要旨)
本明細書において、具体化され、かつ広範に記述されるとおり、本発明の対象および目的により、本発明は、イオン性液体溶媒に溶解される少なくとも1つの二官能性酸化還元染料化合物を含む、約−40℃未満のTgを有する電解質溶液を含む。本発明に有用な1つの型の酸化還元染料化合物は、酸化還元活性陽極部分と酸化還元活性陰極部分を含む。別の型の酸化還元染料化合物は、エネルギー受容体部分と、酸化還元活性陽極部分か酸化還元活性陰極部分のいずれかを含む。イオン性液体溶媒の好ましい陽イオンとしては、リチウム陽イオンおよび四級アンモニウム陽イオンがあげられる。ここで、好ましい四級アンモニウム陽イオンは、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、テトラアルキルアンモニウム、N−メチルモルホリニウム、式[(CH3CH23N(R1)]+(式中、R1は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)の陽イオン、式[(CH32(CH3CHCH3)N(R2)]+(式中、R2は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)の陽イオン、構造式
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R3は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する陽イオン、および構造式
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R4は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する陽イオンであり、そして好ましい陰イオンとしては、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)があげられる。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1つのチャンバ、そしてそのチャンバの内側の電解質媒体として、イオン性液体溶媒に溶解した二官能性酸化還元染料化合物の電解質溶液を有する電気光学デバイスを含み、この電解質溶液は、約−40℃未満のTgを有する。本発明に有用な1つの型の酸化還元染料化合物は、酸化還元活性陽イオン部分および酸化還元活性陰イオン部分を含む。別の型の酸化還元染料化合物は、エネルギー受容体部分と、酸化還元活性陽イオン部分か酸化還元活性陰イオン部分のいずれかを含む。イオン性液体溶媒の好ましい陽イオンとしては、リチウム陽イオンおよび四級アンモニウム陽イオンがあげられる。ここで、好ましい四級アンモニウム陽イオンとしては、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、テトラアルキルアンモニウム、N−メチルモルホリニウム、式[(CH3CH23N(R1)]+(式中、R1は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)の陽イオン、式[(CH32(CH3CHCH3)N(R2)]+(式中、R2は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)の陽イオン、構造式
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R3は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する陽イオン、および構造式
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R4は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する陽イオンであり、そして好ましい陰イオンとしては、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)があげられる。
【0024】
本発明はまた、電気光学デバイスと共に使用するための染料化合物を含む。
【0025】
本発明はまた、温かいイオン性液体電解質溶液を、空の電気光学デバイスに充填する方法を含み、そのデバイスは、比較的近い間隔をあけたプレートを有し、各プレートは内側に面する導電性表面を有し、プレートは、各プレートの領域を囲むシールによってそれらの表面の周りがシールされる。この方法は、小さな開口部を、空のデバイスのシールに導入する工程、および空のデバイスを、イオン性液体溶媒を含む電解質溶液の容器と一緒に、チャンバに設置する工程を含む。そのチャンバを空にした後、空のデバイスは電解質溶液に沈められる。その結果、シール中の開口部が、溶液の表面より下に配置される。その電解質溶液の少なくとも一部は、少なくとも40℃に加温される。空のデバイス中の圧力より大きな気圧にその溶液を曝露すると、その温かい電解質溶液は、デバイスに移動する。デバイスに電解質溶液を充填した後、隙間はシールされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、電解質溶媒としてイオン性液体を使用する電気光学デバイスに関する。イオン性液体は、室温以下の融点を有する融解塩である。本発明の目的のために、用語「イオン性液体」および「融解塩」は、同じ意味を有する。これらの材料の非網羅的なリストは、「アルキルイミダゾリウム陽イオンおよびフルオロ陰イオンの室温イオン性液体(Room Temperature Ionic Liquids of Alkylimidazolium Cations and Fluoroanions)」、J.Fluorine Chem.105巻、(2000年)、221〜227頁においてR.HagiwaraおよびY.Itoによって提供される。本発明のイオン性液体溶媒には、鉱物酸(たとえば、硫酸)を含まない。
【0027】
電解質中のイオン性液体の使用を示唆するほんの少しの論文および特許がある(「不燃性電解質(Non-Flammable Electrolytes)」と題されるA.McEwenらに対するPCT特許出願国際公開第01/93363号パンフレット、「常温溶融塩及びそれを用いた電気化学的デバイス(Room Temperature Molten Salts and Electrochemical Devices Using the Salts)」と題されるM.Watanabeらに対する日本国特許第98168028号明細書、および、2002年4月2日に発行した「電解質溶質として有用な材料(Materials Useful as Electrolytic Solutes)」と題されるC.Michotらに対する米国特許第6,365,301号明細書)。これらの論文および特許は、ECデバイス用のとくに詳細な電解質組成を提供せず、そしてまた、このような液体から製造されるECデバイスの特徴付けが記載されていない。
【0028】
本発明は、電解質および他の成分ならびに溶媒としてイオン性液体を使用するECデバイスの構造に関する。本発明は、ディスプレイデバイスにおけるイオン性液体溶媒の使用に関する。ここで、個々の電極が、画像、言葉、および他の画像を、EC作用を介して作製および制御させることが可能である。電気光学デバイスを製造するための加工方法が開示される。
【0029】
イオン性液体溶媒の注意深い選択は、電気化学的安定性(4Vより大きく、そしてある種の場合には6Vより大きい);高疎水性;高分解温度(本発明で使用されるイオン性液体は沸騰しないが、それらは分解し、分解温度は150℃より高く、かつより好ましくは200℃より高くあるべきである);無視できる程度の蒸気圧(たとえば、C.M.Gordon、「イオン性液体を使用する触媒における最新開発(New developments in catalysis using ionic liquids)」、Applied Catalysis:General A、222巻(2001年)101〜117頁;およびJ.M.Earle、「イオン性液体におけるディールス−アルダー反応(Diels-Alder Reactions in Ionic Liquids)」、Green Chemistry、1巻(1999年)23〜25頁参照);不燃性(炎により非引火性、国際公開第01/93363号パンフレット参照);低UV感受性(非共役陽イオンについて、290〜400nmのあいだに吸収ピークなし);および高い導電性についての広い範囲を含むいくつかの利益を提供し得る。
【0030】
本発明に有用なイオン性液体溶媒は、有機陰イオンか無機陰イオンのいずれかを組み合わせた有機陽イオンの塩を含む。本発明の好ましい陰イオンはフッ素を含み、そして、トリフルオロメチルスルホネート(「トリフレート」、CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(N(CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((C25SO22-)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)、テトラフルオロボレート(BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-)、およびヘキサフルオロアルセネート(AsF6-)があげられる。これらの陰イオンのうち、トリフルオロメチルスルホネート(「トリフレート」、CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(N(CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((C25SO22-)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)が好ましい。もっとも好ましい陰イオンは、それの低コストおよび高い疎水性のために、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオン(N(CF3SO22-)である。ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンは、ときどき、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとして、先行技術で引用され、そして構造式
【0031】
【化5】

を有する。
【0032】
本発明で使用される溶融塩の好ましい有機陽イオンとしては、それに限定されないが、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、およびトリアゾリウムがあげられる。四級アンモニウムベースのイオン性液体の好ましいリストは、「四級アンモニウムイオンに基づいた室温溶融塩(Room-Temperature Molten Salts Based on the Quaternary Ammonium Ion)」と題されるJ.Sun、M.Forsyth、およびD.R.MacFarlaneによる出版物J.Phys.Chem.B、1998年、102巻、8858〜8864頁の表1に、そして1998年10月27日に発行された「疎水性イオン性液体(Hydrophobic Ionic Liquids)」と題されるV.R.Kochらに対する米国特許第5,827,602号明細書に示される−40℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するすべてのものである(これらの文献は、ともに参考として本明細書中に援用される)。
【0033】
好ましいイオン性液体としては、テトラアルキルアンモニウム陽イオンがあげられる。これは、これらの陽イオンから作られるイオン性液体は、スペクトルの紫外部分で最小光学吸光度を有し、光化学的安定性が増強されたこれらの陽イオンに基づく溶融塩を与えるからである(J.Sunら(前出)参照)。本発明に有用な四級アンモニウム陽イオンは、H、F、フェニル、1〜15個の炭素原子を有するアルキル基、および他の化学的置換基で置換され得る。陽イオンは、なお架橋環構造も有し得る。
【0034】
もっとも好ましい四級アンモニウム陽イオンは、式(CH3CH23N(R1)(式中、R1は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する;または式(CH32(CH3CHCH3)N(R2)(式中、R2は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する;または構造式
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、R3は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する;または構造式
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、R4は、2〜10個の炭素を有するアルキルである)を有する。
【0039】
もっとも好ましくは、イオン性液体溶媒は、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0040】
ECデバイスは広範囲の温度(たとえば、自動車の窓は−40℃〜95℃以上に供され得る)で使用することができるので、高い電気化学的安定性窓は、EC材料を還元または酸化するための電気化学的能力が温度で変化するときでさえ、それらが、イオン性液体溶媒の安定性窓の範囲内にあることを保証する。高い疎水性は、水が電解質の不可欠な部分にならず、そして不可逆の電気化学的反応を生じることを確実にする。
【0041】
イオン性液体の高い沸点および低い蒸気圧は、電気光学デバイスの組立の点(fabrication perspective)で有用な特性である。ECデバイスのほとんどは、真空で充填される(真空充填工程は、後に詳細に説明される)。低い蒸気圧は、真空系を汚染せず、電解質組成を一定に保ち、そして充填工程で気泡を取り込まない。これはまた、仕事場での化学的安全性を増強する。低燃焼性は、とくに、建築物および交通機関で使用されるときに、安全性の点から重要である。
【0042】
本発明で使用される好ましいイオン性液体溶媒は、約290ナノメートル(nm)をこえる波長を有する紫外線照射を顕著に吸収しない。したがって、不可逆な着色、ガス形成および/または電気化学的に活性/不活性な種の形成に導き得る副産物に対するこれらの波長に曝露されても分解しない。
【0043】
好ましいイオン性液体溶媒は、0℃未満、好ましくは−20℃未満、そしてもっとも好ましくは−40℃未満のTgを有する配合を生じ得るものである。実施例8(後記参照)に示されるとおり、Tgは、粘度データから測定され得る。
【0044】
実施用途のECデバイスを製造するために、いくつかの成分が、電解質に要求され得る。デバイスの構築およびその適用にしたがって、ECデバイスは、UV安定化剤、他の共溶媒(たとえば、プロピレンカーボネート、メチルスルホラン(methyl sulfolane))および塩、酸化還元染料、粘度調節剤、ゲル化材料、近赤外領域(700〜2500nmの波長)で吸収するものを含む永久色を与える染料および不透明化剤(opacifiers)を必要とし得る。数種の型のECデバイス、電解質溶液、および他の構成要素は、以下に記載される。液体または積載可能な固形電解質を含むいくつかは、図1〜4に示される。
【0045】
ここで、本発明の本好ましい実施態様に詳細に言及する。類似または同一の構造は、同一の呼び方を使用して同定される。図1aは、本発明のエレクトロクロミックデバイスの実施態様の端面図を示し、そして図1bは、その透視図を示す。この形態のデバイスは、電気化学活性が、導電性電極の間の材料(すなわち、電解質)の単一層に発生するので、当該分野で単一区分デバイス(single compartment devices)といわれる。図1a〜bは、図1a〜bは、エレクトロクロミックデバイス10を示す。このデバイス10は、第1の基板12および第2の基板14を含む。この基板はいかなる特定の形態または材料(たとえば、プラスチックまたはガラス)に限定されず、そして、1つの電極は不透明基板(たとえば、金属または金属被覆プラスチックまたは金属被覆ガラス)から製造され得ると理解されるべきである。好ましい金属としては、アルミニウム、銀、クロミウム、ロジウム、ステンレス鋼、および銀合金(銀は、金、パラジウム、白金、またはロジウムと合金される)があげられる。たとえば、湾曲した基板も使用され得る。便宜上、小さな平面のガラス片が、基板として使用され得る。デバイス10は、第1の基板12上に第1の導電性層16、そして第2の基板14上に第2の導電性層18を含む。導電性層は、代表的には、酸化スズインジウム、またはフッ素でドープ処理した酸化スズインジウムであるが、あらゆる導電性被覆物(たとえば、金属または導電性ポリマーの薄層)が使用され得る。導電性層18は、第2の基板14が導電性でない場合、たとえば、第2の基板14が、ガラスまたはプラスチックから製造される場合に必要とされる。しかし、導電性層18は、第2の基板14が、すでに導電性である場合、たとえば、第2の基板14が、金属または金属被覆ガラスまたは金属被覆プラスチックから製造される場合には任意である。第2の基板14が導電性である場合、第2の基板14は、構造上の基板と導電性層の両方として機能する。エレクトロクロミックデバイス10は金属性母線棒20を含む。この母線棒20は、一方が、第1の導電性層16の末端部分に付着し、そして他方が、第2の導電性層18の末端部分に付着する。第2の基板14が電気的に導電性である場合、母線棒20は、第2の基板14に直接付着され得る。ワイヤ22は、電源(バッテリなど。示さず)に接続するために、各母線棒20にはんだ付けされるか、そうでない場合は付着される。
【0046】
母線棒20は、適切な導電性金属性材料から作製され、そして導電性層または基板との良好な電気的接触を提供する。母線棒材料の例としては、銀フリット、ハンダ合金、金属性ストリップ、ワイヤ、およびクリップがあげられる。好ましい材料としては、銅、銅合金(たとえば、銅ベリリウム合金)、およびスズめっき銅があげられる。
【0047】
エレクトロクロミックデバイス10は、第2の導電性層18が、チャンバ26を提供するために使用されない場合には、第1の導電性層16と、第2の導電性層18または第2の基板14とでシールを形成する、電気的に非導電性ガスケット24を含む。好ましくは、チャンバ26の幅(第1の導電性層16と第2の導電性層18とのあいだの幅である)は、約20ミクロン〜約5000ミクロンである。より好ましくは、チャンバ幅は、約40マイクロ〜約500マイクロである。
【0048】
ガスケット24は、本発明で使用される溶融塩電解質に化学的に安定であり、実質的に、水および大気(とくに、酸素および二酸化炭素)に対して不透過性であり、そして広範な温度範囲、好ましくは約−40℃〜約100℃の温度にわたって丈夫であるべきである。ガスケット24は、2つの導電性表面のあいだに電気的絶縁を与え、その結果、実質的に全ての電流が、電解質溶液30を通過する。代表的には、ガスケット24の厚みは、第1の導電性層16(すなわち、稼動中の電極)と、第2の導電性層18(すなわち、対抗電極)のあいだの距離を決定し、そしてチャンバ26の容積およびデバイス10の内部抵抗に影響する。
【0049】
デバイス10は、チャンバ26を溶融塩の溶液30で充填するための少なくとも1つのポート28を含む。ポート28は、任意の都合のよい位置(たとえば、ガスケット24を通り、第1の基板12を通り、第2の基板14を通り)に配置され得る。真空充填技術が、溶液30をチャンバ26に充填するために使用される場合、1つのポートのみが必要とされるが、異なる充填方法が使用される場合、さらなるポート(たとえば、圧力除去装置の目的のため)が存在され得る。チャンバ26を充填した後、ポート28に栓をする。
【0050】
電解質溶液30は不揮発性で、かつ疎水性であり、そして電流に対して最小抵抗を与える高濃度の陽イオンおよび陰イオンを提供する。チャンバ26中の溶液30は、第1の導電性層16および第2の導電性層18との(または第2の導電性層18が使用されない場合には、第2の基板14との)電気的接触を維持する。
【0051】
電解質溶液30の大部分はイオン性液体溶媒である。溶液30はまた、少なくとも1つの陽イオン材料および少なくとも1つの陰イオン材料を含む。陽イオン材料および陰イオン材料は、おのおの、単一の二価官能性酸化還元化合物の一部分であり得る。陽イオン材料および/または陰イオン材料は、イオン性液体溶媒におけるそれらの安定性を改善するためにイオン性であり得、そして、それらの関連する陰イオンは、イオン性液体溶媒のものと同一であるのが好ましい。
【0052】
溶融塩溶媒の陽イオンは、好ましくは、テトラアルキルアンモニウム、アルキル置換ピロリジン、またはアルキル置換イミダゾールである。溶融塩の陰イオンは、好ましくは、パークロレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)である。
【0053】
最も好ましくは、溶融塩は、N−ブチル−N−エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0054】
溶液30は、任意に、分散された電気化学的に不活性な無機材料(チャンバ26への注入を容易にするシリカまたはアルミナなど)などのチキソトロープ剤を含み得る。
【0055】
溶液30はまた、暗色状態または脱色状態のいずれかにある所望の色を付与するために1つ以上の着色剤をも含有し得る。
【0056】
本発明に使用される二官能性染料は、紫外線照射に対して安定性を提供する。溶液30は、さらなる可溶性紫外線(UV)安定化剤を含み得る(たとえば、Modern Plastics World Encyclopedia(2001年)、C-120〜C-122頁、Chemical Week Publishing,NYを参照、(参考として本明細書中に援用される))。
【0057】
溶液30は、導電性を維持しながら、溶液30の粘度を増大するための1つ以上の硬化剤をも含み得る。これは、デバイス10が損傷を受けた場合、溶液30の広がりを最小限にするために望ましい。硬化剤としては、それに限定されないが、有機モノマーおよびポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ビニリデンフロライド)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(メチルメタクリレート)などのポリマーおよびそれらのコポリマーがあげられる。これらのポリマーは、インサイチュで形成され得る。それらは、モノマーの重合によりインサイチュで架橋され得る(たとえば、2002年7月16日に発行された「エレクトロクロミックポリマー性固形フィルム、そのような固形フィルムを使用するエレクトロクロミックデバイスの製造、およびそのような固形フィルムおよびデバイスを製造する方法(Electrochromic Polymeric Solid Films, Manufacturing Electrochromic Devices Using Such Solid Films, and Processes for Making Such Solid Films and Devices)」と題されるD.V.Varaprasadらに対する米国特許第6,420,036号明細書を参照(参考として本明細書中に援用される)。たとえば、ポリ(メチルメチルアクリレート)(PMMA)は、溶融塩にメチルメチルアクリレートを添加し、ついで、重合を開始するベンゾイルパーオキシドを添加することにより形成され得る。
【0058】
溶液30は、任意に、溶液30の粘度を減少させ、そして反転可能なミラーの耐久性および機能を干渉しない1つ以上の溶解性共溶媒を含む。好ましくは、共溶媒は非プロトン性であり、そして高い沸点(好ましくは、約150℃より上)、低い融点(好ましくは、−30℃未満)を有し、そして、約0.5%〜約30%の濃度で存在する。好ましい共溶媒としては、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン、パーフルオロデカリン、およびパーフルオロデカンがあげられる。
【0059】
任意に、デバイス10は、導電性層16の電位を評価するための偽参照電極32を含み得る。偽参照電極32が導電性層16または導電性層18に接触しないように、偽参照電極32は、ガスケット24を通して挿入された銀ワイヤの形態であり得る。偽参照電極は他の形態を取り得る。たとえば、第1の導電性層16または第2の導電性層18の小さな部分は、偽参照電極を提供する分離線をエッチングすることによって分離され得る。
【0060】
複数のパネル窓(multiple-pane window)の1つ以上のパネル(panes)を、本発明の電気光学デバイスと置き換えることによって、本発明は、標準のガラス製の複数のパネル窓で使用され得る。ガラスパネルは、UV、赤外、および/または可視光を遮断/減衰する低放射率材料で被覆され得る。
【0061】
ECデバイスを記載する多くの特許がある。非イオン性液体電解質を利用するECデバイスを記載されるいくつかの特許としては、1990年2月20日に発行された「単一区画の自己消去の溶液相エレクトロクロミックデバイス、それに使用するための溶液、およびその使用方法(Single Compartment, Self-Erasing, Solution Phase Electrochromic Devices, Solutions for Use Therein, and Uses Thereof)」と題されるH.J.Bykerに対する米国特許第4,902,108号明細書;1999年12月7日に発行された「エレクトロクロミック化合物(Electrochromic Compounds)」と題されるS.Ramanujanらに対する米国特許第5,998,617号明細書;および2000年4月4日に発行された「大面積エレクトロクロミック窓(Large Area Electrochromic Window)」と題されるD.V.Varaprasadらに対する米国特許第6,045,724号明細書があげられる(これら全ては、参考として本明細書中に援用される)。固形電解質を利用するECデバイスを記載するほかの特許としては、2001年6月12日に発行された「エレクトロクロミックポリマー性固形フィルム、そのような固形フィルムを使用するエレクトロクロミックデバイスの製造、およびそのようなフィルムおよびデバイスを製造する方法(Electrochromic Polymeric Solid Films, Manufacturing Electrochromic Devices Using Such Solid Films, and Processes for Making Such Films and Devices)」と題されるD.V.Varaprasadらに対する米国特許第6,245,262号明細書、および1999年8月17日に発行された「2つの薄層ガラス要素およびゲル化エレクトロクロミック媒体を有するエレクトロクロミックミラー」と題されるK.L.Ashらに対する米国特許第5,940,201号明細書があげられる(これら全ては、参考として本明細書中に援用される)。一般的に、液体電解質でポリマーを可塑化すると、固形電解質を生じる。これらの特許に記載される溶媒は、中性の極性材料(たとえば、ニトリル(たとえば、グルタロニトリル、3−ヒドロキシプロピオニトリル)、スルホラン(たとえば、3−メチルスルホラン)、エーテル(たとえば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびテトラグリム)、アルコール(エトキシエタノール、エタノール)、ケトンおよびエステル(たとえば、ガンマ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート)、およびこれらの混合物)である。溶媒および他の成分のより詳細なリストが、これらの特許に記載されているが、イオン性液体の使用は開示していない。
【0062】
報告された電気光学デバイスのUV安定性は、UVフィルタおよび添加剤で改善されている(たとえば、1999年1月26日に発行された「近赤外反射、紫外線保護され、安全に保護されたエレクトロクロミック媒体の艶出し(Near-Infrared Reflecting, Ultraviolet Protected, Safety Protected, Electrochromic Vehicular Glazing)」と題されるN.R.Lynamに対する米国特許第5,864,419号明細書;2000年9月19日に発行された「減少した紫外線照射透過、安全に保護されたエレクトロクロミック艶出し組立品(Reduced ultraviolet Radiation Transmitting, Safety Protected Electrochromic Glazing Assembly)」と題されるN.R.Lynamに対する米国特許第6,122,093号明細書;2002年3月26日に発行された「増強された紫外線安定性を有するエレクトロクロミック材料、およびそれを含むデバイス(Electrochromic Materials With Enhanced Ultraviolet Stability and Devices Comprising the Same)」と題されるK.L.Baumannらに対する米国特許第6,362,914号明細書;および2001年10月30日に発行された「色安定化エレクトロクロミックデバイス(Color-Stabilized Electrochromic Devices)」と題されるJ.R.Lompreyらに対する米国特許第6,310,714号明細書を参照)。
【0063】
1992年8月18日に発行された「高性能エレクトロケミクロミック溶液およびそのデバイス(High Performance Electrochemichromic Solutions and Devices Thereof)」と題されるD.V.Varaprasadらに対する米国特許第5,140,155号明細書では、溶媒の選択は、溶媒のUV吸収特性に基づいて行われる。最も費用効果的な方法は、電解質にUV安定化剤を添加することである。
【0064】
本発明に使用したイオン性液体はUV安定性材料であるが、これらの材料を含む本発明のECデバイスは、ポリマーおよび染料などの他の成分の保護のために、そしてまた、光により促進される電極/電解質のいかなる相互作用も減少させるためにさらなる安定化剤をなお必要とし得る。本発明の目的のために、UV安定化剤としては、UV(紫外線)照射を吸収する材料、およびUV照射により引き起される損傷を最小限にするために、UVにより発生される種を消滅する材料があげられる。あらゆるUV安定化剤または染料を含む他のあらゆる成分は、デバイスが使用される温度範囲内で電解質中で可溶性であるべきである。ほとんどの用途は、天候要素にさらされるミラー、窓およびデバイスのためであるので、UV安定化剤は、広範な温度範囲をこえて適合性であるべきである。デバイスを操作するための好ましい最小温度範囲は、0℃〜50℃であり、より好ましい範囲は−20℃〜70℃であり、そして最も好ましい範囲は−40℃〜105℃である。UV安定化剤の非包括的なリストは、現代プラスチック百科事典(Modern Plastics Encyclopedia)、C120〜C122頁、2001年、Chemical Week Associates publication, New York(参考として本明細書中に援用される)に見出され得る。好ましいUV安定化剤のいくつかとしては、ベンゾフェノンおよびその誘導体である。なぜなら、これらの材料はいくつかのイオン性液体と適合性があるからである(M.Muldoonら、「ベンゾフェノン三重線励起状態によるイオン性液体からの水素の引き抜き(Hydrogen abstraction from ionic liquids by benzophenone triplet excited states)」、Chem.Commun.(2001年)、2364〜2365頁;D.Baharら、「パルス放射線分解により研究されるイオン性液体中の反応速度論(Reaction kinetics in Ionic liquids as Studied by Pulse Radiolysis):溶媒メチルトリブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよびn−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレートにおける酸化還元反応」、J.Phys.Chem.A.、(2002年)、106巻、3139〜3147頁参照)。他の好ましいUV安定化剤は、ベンゾトリアゾール(およびそれの誘導体)およびトリアジン(およびそれの誘導体)である。UV安定化剤の添加はまた、それらが、溶融塩溶液の0.01重量%〜40重量%を構成し得る場合、電解質の凍結点を減少させる助けになり得る。
【0065】
UV安定化剤は、代表的には、1センチメートルの経路長で、イオン性液体中のUV安定化剤の約1重量%の濃度で測定したときに、290〜400nmの波長で1より大きな平均吸光度(UVの90%減衰)を、より好ましくは、2より大きな吸光度(UVの99%減衰)を生じる。この吸光度は、UV安定化剤を含む溶液の吸光度から、UV安定化剤なしのイオン性液体の吸光度を引くことにより測定される。
【0066】
2002年1月31日に刊行された「増強された紫外線安定性を有するエレクトロクロミック材料、およびそれを含むデバイス」と題されるK.L.Baumannらに対する米国特許出願公開第2002/0012155号明細書、および2002年2月5日に発行された「エレクトロクロミック対照プレート」と題されるH.Bernethに対する米国特許第6,344,918号明細書(ともに参考として本明細書中に援用される)では、化合物は、エネルギー受容体部分(すなわち、UV安定化部分)に架橋された酸化還元活性染料部分を含み、その結果、同じ分子は、UVを吸収でき、そして酸化還元染料としても機能し得ることを記載している。本発明の目的のために、これは、全般的に本明細書中で「二官能性酸化還元染料」といわれる型の化合物である。
【0067】
これらの二官能性酸化還元染料を用いる利点(UV安定化剤部分を拘束している)は、全デバイスのUV安定性が増大されることである。
【0068】
UV安定化剤部分に結合した染料部分を有する二官能性酸化還元染料のさらなる例は、2002年3月26日に発行された「増強された紫外線安定性を有するエレクトロクロミック材料、およびそれを含むデバイス」と題されるK.Baumannらに対する米国特許第6,362,914号明細書(参考として本明細書中に援用される)に記載される。‘914特許には、‘914号特許で「エネルギー受容体部位」といわれるUV安定性部分にビオローゲンの付着により製造される陰イオン化合物が記載されている。代表的には、UV安定化剤部分は、陽イオン染料部分または陰イオン染料部分のいずれかに共有結合で結合され得るベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾールを含む。その化合物のUV安定化剤部分は、UV照射を吸収し、そして染料部分に対する損傷を防止する。‘914号特許に記載されるこのような化合物の特定の例は、1−メチル−1−[1−ベンゾトリアゾール−2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−プロピル(プロピオネート)−[ベンゼン]]−4,4−ビピリジニウム・ビス(テトラフルオロレート)である。本発明のイオン性液体電気光学デバイスで使用するために、種々の化合物が使用され、そのひとつは、少なくとも1つのテトラフルオロボレート、好ましくは両方のテトラフルホロボレート陰イオンは、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)またはトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)に、最も好ましくはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)に置換され得る。ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含む化合物は、たとえば、対応のテトラフルオロボレート陰イオン基本の化合物を、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンに陰イオン交換することによって製造され得る。代替的に、この型の化合物は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンを含むイオン性液体中の陰イオン部分(たとえば、フェナジン部分)の電気化学的酸化によるか、または同じイオン性液体中の陽イオン部分(たとえば、ビオローゲン部分)の電気化学的還元および再酸化により合成される。
【0069】
本発明の二官能性酸化還元染料の陰イオン部分の例としては、以下の構造式
【0070】
【化8】

【0071】
【化9】

【0072】
(式中、R5は、独立して、アルキルC1〜C20、アルキニルC2〜C20、およびアリールC5〜C20から選択される。R5は、任意に、1つ以上のエステル、カルボン酸、金属カルボキシレート、エーテル、アリール、アミン、ウレタン、アンモニウム、チオエステル、アルケンおよびアルキン官能基を含むことができ、そしてさらに、エネルギー受容体部分への架橋として機能し得る。R6は、独立して、水素、アルキルC1〜C20、アルキニルC2〜C10、アリールC5〜C20から選択され、そして任意に、1つ以上のエステル、カルボン酸、金属カルボキシレート、エーテル、アリール、アミン、ウレタン、アンモニウム、チオエステル、アルケンおよびアルキン官能基を含むことができ、そしてさらに、エネルギー受容体部分への架橋として機能し得る。R7は、独立して、アルキルC1〜C5、またはエチル、プロピルまたはエチレン架橋から選択される;n=0〜4;m=0〜2)により規定されるものがあげられる。陰イオンA-は、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)陰イオンであり、そして陰イオンB-は、ハロゲン陰イオン、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CH3COO-、およびCH3(C64)SO3-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)またはトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)陰イオンである。エネルギー受容体部分としては、以下の化学構造
【0073】
【化10】

【0074】
(式中、R7は、独立して、アルキルC1〜C20、アルキニルC2〜C20、およびアリールC5〜C20から選択され、そして任意に、1つ以上のエステル、カルボン酸、金属カルボキシレート、エーテル、アリール、アミン、ウレタン、アンモニウム、チオエステル、アルケンおよびアルキン官能基を含むことができ、そしてさらに、エネルギー受容体部分への架橋として機能し得る。これらの式では、n=0〜4およびk=0〜5である)を有するものがあげられる。エネルギー受容体部分のいずれかに適切に架橋される場合、前記陰イオン部分のいずれかは、二官能性酸化還元染料を形成し、そしてこれらの化合物の全ては、本発明の二官能性酸化還元染料の例である。
【0075】
本発明の二官能性酸化還元染料の陽イオン部分の例としては、以下の構造式
【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
(式中、XおよびYは、独立して、NH、NR8、SおよびOから選択される。R8は、独立して、アルキルC1〜C20、アルキニルC2〜C20、およびアリールC5〜C20から選択され、そして任意に、1つ以上のエステル、カルボン酸、金属カルボキシレート、エーテル、アリール、アミン、ウレタン、アンモニウム、チオエステル、アルケンおよびアルキン官能基などを含むことができ、そしてさらに、エネルギー受容体部分への架橋として機能し得る。R9は、独立して、アルキルC1〜C10、アルキルC2〜C10、アリールC5〜C20から選択され、そして任意に、1つ以上のエステル、カルボン酸、金属カルボキシレート、エーテル、アリール、アミン、ウレタン、アンモニウム、チオエステル、アルケンおよびアルキン官能基を含むことができ、そしてさらに、エネルギー受容体部分への架橋として機能し得て、そしてn=0〜4、およびm=0〜2である)により規定されるものがあげられる。エネルギー受容体部分は、構造
【0079】
【化13】

【0080】
または構造
【0081】
【化14】

【0082】
(式中、R7は、独立して、アルキルC1〜C20、アルキニルC2〜C20、およびアリールC5〜C20から選択され、そして任意に、1つ以上のエステル、カルボン酸、金属カルボキシレート、エーテル、アリール、アミン、ウレタン、アンモニウム、チオエステル、アルケンおよびアルキン官能基を含むことができ、そしてさらに、エネルギー受容体部分への架橋として機能し得て、n=0〜4、およびk=0〜5である)を有するものである。同じ分子中に陽イオン染料部分と、エネルギー受容体部分の両方を有するこれらの化合物は、本発明の二官能性酸化還元染料の例でもあり、そして、それらが、イオン性液体溶媒中で酸化されるときに、イオン性液体溶媒の陰イオンで平衡化された電荷であるラジカル陽イオンが形成される。
【0083】
本発明の重要な態様は、本発明の二官能性酸化還元染料が、酸化、還元およびあらゆる中間体状態で、本発明の好ましいイオン性液体溶媒への溶解性があることである。これらの染料は、電圧がかけられたとき、デバイス中で還元および/または酸化される。この酸化または還元は可逆性である。さらに、1つ以上の酸化または還元種は、それの早期の状態(電圧の使用前)に比べて、色の上で異なるに違いない。これらの種は、酸化還元染料でもあると理解されるべきである。陰極で還元される染料は、陰イオン染料であり、そして陽極で酸化される染料は、陽イオン染料である。図1に示される型の本発明のデバイスでは、これらの内のいくつかは存在し得るが、少なくとも1つの陰イオン染料または少なくとも1つの陽イオン染料は、電解質中に存在するに違いない。二官能性酸化還元染料は、単一分子、陽イオン部分と陰イオン部分の両方に含まれ得、そして、この型の染料は、2つの電極で酸化および還元の両方を受け得る。
【0084】
本発明の二官能性染料の好ましい陰イオン部分としては、陽イオン性であるビオローゲンがあげられる。好ましいビオローゲンは、陰イオンを含むフッ素(たとえば、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-))と結合したN,N’−ジエチルビオローゲン(「エチルビオローゲン」)、N,N’−ジメチルビオローゲン(「メチルビオローゲン」)およびN,N’−ジベンジルビオローゲン(「ベンジルビオローゲン」)である。好まし陰イオンは、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)である。
【0085】
本発明の二官能性染料の好ましい陽イオン部分としては、それらの誘導体および組み合わせを含めてメタロセン(とくに、フェロセン)、フェナジン、フェノチアジン、フルバレン、および置換1,4−または1,2−フェニレンジアミンがあげられる。いくつかの好ましいフェナジンは、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン、5,10−ジヒドロ−5,10−ジエチルフェナジン、5,10−ジヒドロ−5,10−ジオクチルフェナジンまたは他のあらゆる5,10−ジヒドロ−5,10−ジアルキルフェナジンである。好ましいフェニレンジアミンとしては、TMPD(N,N,N’,N’−テトラメチルフェニルジアミン)およびTMBZ(N,N,N’,N’−テトラメチルベンジジン)があげられる。好ましいフルバレンはテトラフルバレンである。本発明に有用なフェロセン誘導体の列挙のために、2001年11月13日に発行された「電気化学的に発電されるセルのための母線棒」と題されるA.Agrawalに対する米国特許第6,317,248号明細書、および「陽極エレクトロクロミック材料として使用するための置換メタロセン、およびそれを含むエレクトロクロミック媒体およびデバイス」と題されるJ.R.Lompreyに対する国際公開第01/63350号パンフレット(ともに参考として本明細書中に援用される)を参照する。本発明の好ましいフェロセンとしては、ターシャリーブチルフェロセンおよびデカメチルフェロセンなどの、シクロペンタジエン環の一方または両方に結合した電子供与基があげられる。これらの陽イオン染料のいくつかは、特定のイオン性溶媒中でのそれらの溶解性を増大するためにフッ素化され得る。代表的には、染料(陰イオン性および陽イオン性)のうちのいずれかの濃度は、0.1モル未満、好ましくは0.05モル未満である。
【0086】
二官能性酸化還元染料の陰イオン部分または陽イオン部分の少なくとも1つは、電磁線の可視領域での吸収で、還元または酸化状態でエレクトロクロミック性であるべきである。染料部分が、それの非活性形態に可逆に戻る場合、吸収も、逆向きとなるに違いなく、そしてそれの早期の状態に対して移行または減少を意味する。
【0087】
2つ以上の別個の染料化合物は、しばしば、デバイスの色、速度論などのデバイス特性(たとえば、2000年10月31日に発行された「予め選択された色を生じるためのエレクトロクロミック媒体」と題されるH.J.Bykerらに対する米国特許第6,141,137号明細書(参考として本明細書中に援用される)を参照)を制御するエレクトロクロミックデバイスで使用される。染料を選択するための電気化学的考慮は、米国特許第4,902,108号明細書(前記を参照)に示される。同じ分子中に陽イオン部分と陰イオン部分を有する二官能性酸化還元染料は、最近、報告された。これらの型の化合物の例は、2002年4月16日に発行された「UV保護エレクトロクロミック溶液」と題されるH.Bernethらに対する米国特許第6,372,159号明細書に、2003年2月11日に発行された「エレクトロクロミック溶液」と題されるY.Nishikitaniらに対する米国特許第6,519,072号明細書に、そして2001年6月5日に発行された「エレクトロクロミック系」と題されるU.Claussenらに対する米国特許第6,241,916号明細書に、そしてLompreyら(前記を参照)に対する国際公開第01/163350号パンフレットで見出され得る(これら全ては、参考として本明細書中に援用される)。米国特許第6,519,072号明細書および同第6,241,916号明細書には、陽イオン染料および陰イオン染料が、別個の分子でないが、しかしその代わりに、各々は、陽イオン部分または陰イオン部分のいずれかとして存在し、そして同じ分子に連結した染料が記載されている。このような分子の環状ボルタンモグラム(cyclic voltammogram)は、静止状態から測定されたとき(すなわち、使用された電気化学的電位がないとき)に、化合物から誘導される少なくとも1つの還元ピークと少なくとも1つの酸化ピークを示す。還元または酸化工程のいずれか、および好ましくは還元および酸化工程の両方は、可視範囲で少なくとも1つの波長でモル消滅係数における増加を伴う。
【0088】
本発明としては、陽イオン部分に共役結合で架橋された陰イオン部分を含む二官能性酸化還元染料があげられる。これらの化合物は、しばしば、優れたUV安定性を有する。このようなUV安定性染料などの例は、フェロセン部分を、適切なリンカーまたは架橋を使用してビオローゲン部分に結合させるときに生成され、そしてこの型の材料が、従来の非イオン性溶媒を使用するエレクトロクロミックデバイス用の電解質に、陽極酸化還元と陰極酸化還元の両方を提供することが示された。
【0089】
陽イオン部分および陰イオン部分を有する二官能性酸化還元染料を、エネルギー受容体部分ディスプレイと架橋させて、それらのUV安定性をさらにいっそう増大させ得る。本発明によるイオン性液体溶媒と共に使用するときに、これらの型の染料は、着色および脱色状態の両方での外側環境用途のために最も適切である電気光学デバイスを提供することが予測される。従来の非イオン性溶媒に使用するためのUV安定化剤に対するある種の修飾は、2003年2月13日に公開された「可溶化合部分を有する紫外線安定化材料」と題されるP.Giriらに対する米国特許出願公開第2003/0030883号明細書での例として示される。
【0090】
本発明は、1つ以上が、静止状態、酸化状態、または還元状態で陽イオン部分であり、そしてトリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)により、そして好ましくはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)により荷電平衡される、陽極および陰極部分の両方を有する二官能性化合物を包含する。これらの化合物は、陰イオン交換により、たとえば、米国特許番号第6,519,072号(上を参照すること)で記述される塩を、水中でリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Li(CF3SO22-)、と反応させることにより合成され得る。代わりに、陽イオン荷電のいくらかが、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンで平衡にされる化合物は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンを含むイオン性液体溶媒中での陽イオン部分(たとえば、フェロセン部分)の電気化学的酸化により合成され得る。陽イオン荷電のいくらかが、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンで平衡にされる化合物は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド陰イオンを含むイオン性液体中での陽イオン部分(たとえば、ビオローゲン部分)の電気化学的還元および再酸化によっても合成され得る。本発明は、電気光学デバイスでのこれらの化合物の使用法も含む。
【0091】
好ましくは、本発明の二官能性染料の陰イオン部分は、ビオローゲン(ビピリジニウムイオン対構造を有する)またはアントラキノンを含むが、陽イオン部分は、ピラゾリン、メタロセン、フェニレンジアミン、ベンジジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、またはテトラチアフラバレン構造を有するか、またはイオン性溶液溶媒で酸化され得る金属塩である。
【0092】
陽イオン部分および陰イオン部分が、同じ分子に存在し、そしてイオン性液体溶媒の陰イオンと同じである少なくとも1つの陰イオンを含むエレクトロクロミック化合物は、好ましくは、陰極エレクトロクロミック特徴を有する構造式
【0093】
【化15】

【0094】
によって表されるビピリジニウムイオン対構造を有するビオローゲン、および陽極エレクトロクロミック特徴を有する式
【0095】
【化16】

【0096】
によって表されるメタロセン構造である。これらの化合物について、A-は、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択され、そしてB-は、ハロゲン陰イオン、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CH3COO-、およびCH3(C64)SO3-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される。R10およびR11は、それぞれ独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、およびアリール基から選択される炭化水素基であり、R10またはR11が、アリール基である場合には、アリール基は、シクロペンタジエニル環と一緒に縮合環を形成し得る。さらに、m=0〜4、n=0〜4、およびMeは、Cr、Co、Fe、Mn、Ni、Os、Ru、V、Mo(X)(Q)、Nb(X)(Q)、Ti(X)(Q)、V(X)(Q)またはZr(X)(Q)(式中XおよびQは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CH3COO-、およびCH3(C64)SO3-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される)を示す。アルキル基の例は、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、およびシクロヘキシル基である。アリール基は、フェニル基によって例示される。とくに好ましいのは、メチル基、エチル基、およびプロピル基である。R10またはR11が、アリール基である場合には、アリール基は、シクロペンタジエニルに結合することによって縮合環を形成し得て、そしてR10またはR11は、メタロセン構造での2つのシクロペンタジエン環を架橋する基であり得る。mおよびnの両方が、好ましくは0または1であり、そしてとくに好ましくは0である。Meは、好ましくはFeである。
【0097】
陽イオン部分または陰イオン部分が、同じ分子に存在し、そして少なくとも1つの陽イオン部分を含む好ましいエレクトロクロミック化合物は、以下の式:
【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
(式中、A-は、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択され;そしてB-は、ハロゲン陰イオン、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CH3COO-、およびCH3(C64)SO3-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される。R10およびR11は、それぞれ独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、およびアリール基から選択される炭化水素基であり、R10またはR11がアリール基である場合、アリール基は、シクロペンタジエニル環と一緒に縮合環を形成し得る。さらに、m=0〜4、そしてn=0〜4。R12およびR13は、それぞれ独立して、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素残基であり、そしてR14は、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアラルキル基、4〜20個、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する複素環基、および炭化水素基または複素環基の水素の一部を置換基に置換することによって得られる置換炭化水素または複素環基からなる群から選択される炭化水素基である。Meは、Cr、Co、Fe、Mn、Ni、Os、Ru、V、Mo(X)(Q)、Nb(X)(Q)、Ti(X)(Q)、V(X)(Q)またはZr(X)(Q)(式中XおよびQは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CH3COO-、およびCH3(C64)SO3-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される)を示す。R12およびR13についての炭化水素残基の例は、それぞれ独立して、炭化水素基の一部にエステル結合単位、エーテル結合単位、アミド結合単位、チオエーテル結合単位、アミン結合単位、ウレタン結合単位、またはシリル単位を有するアルキレン基および種々の二価基などの炭化水素基である。エステル結合単位を有する二価基は、式−R−COO−R−または−R−OCO−R−(式中、Rは、1から8個までの炭素原子を有するアルキレン基である)によって表されるものによって例示され得る。エステル結合単位の特定の例は、−C48−COO−C24、−C48−OCO−C24、−C48−COO−C48−、および−C48−OCO−C48−である。エーテル結合単位を有する二価基は、式−R−O−R−(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基である)によって表されるものによって例示され得る。エーテル結合単位の特定の例は、−C48−O−C24および−C48−O−C48−である。アミド結合単位を有する二価基は、式−R−CONH−R−または−R−NHCO−R−(式中、Rは、1から8個までの炭素原子を有するアルキレン基である)によって表されるものによって例示され得る。アミド結合単位の特定の例は、−C48−CONH−C24−、−C48−NHCO−C24−、−C48−CONH−C48−、および−C48−NHCO−C48−である。チオエーテル結合単位を有する二価基は、式−R−S−R−(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基である)によって表されるものによって例示され得る。チオエーテル結合単位の特定の例は、−C48−S−C24−および−C48−S−C48−である。アミン結合単位を有する二価基は、式−R−NH−R−(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基である)および式−R−NH−Ph−(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、そしてPhは、1〜12個の炭素原子を有するアリーレン基または置換アリーレン基である)によって表されるものによって例示され得る。アミン結合単位の特定の例は、−C48−NH−C24−および−C48−NH−C48−である。ウレタン結合単位を有する二価基は、式−R−OCONH−R−または−R−NHCOO−R−(式中、Rは、1から8個までの炭素原子を有するアルキレン基である)によって表されるものによって例示され得る。ウレタン結合単位の特定の例は、−C48−OCONH−C24−、−C48−NHCOO−C48−、−C48−OCONH−C48−、および−C48−NHCOO−C48−である。シリル結合単位を有する二価基は、式−R−Si(R’)2−R−(式中、Rは、1から8個までの炭素原子を有するアルキレン基であり、そしてR’は、メチルまたはエチルである)によって表されるものによって例示され得る。シリル結合単位の特定の例は、−C48−Si(CH32−C24−、−C48−Si(CH32−C48−、−C48−Si(C252−C24−、および−C48−Si(CH32−C48−である。R14についてのアルキル基の例は、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、およびヘプチル基である。シクロアルキル基の例は、シクロヘキシルである。アリール基の例は、フェニル、トリル、キシリルおよびナフチルである。アルケニル基の例は、ビニルおよびアリル基である。アラルキル基の例は、ベンジルおよびフェニルプロピル基である。複素環芳香族基の例は、2−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジルおよびイソキノリン基である)によって表されるメタロセン−ビピリジン誘導体である。
【0101】
14が、置換炭化水素残基または複素環基である場合には、置換基の例は、1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ、アルコキシカルボニル、およびアシル基、ハロゲン、およびシアノ(−CN基)、ヒドロキシル、ニトロ、およびアミノ基である。アルコキシ基の例は、メトキシおよびエトキシ基である。アルコキシカルボニル基は、メトキシカルボニルによって例示される。アシル基は、アセチルによって例示される。ハロゲン基の例は、ClおよびFである。置換炭化水素残基の例は、メトキシフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メトキシクロロフェニル、シアノフェニル、アセチルフェニル、メトキシカルボニルフェニル、およびメトキシナフチル基である。
【0102】
本発明のこれらのメタロセン−ビピリジン二官能性酸化還元染料は、米国特許第6,519,072号明細書(前記を参照)に記載されるとおり前駆体を最初に合成し、そしてその後、たとえば、前駆体を水中に懸濁または溶解させることにより、陰イオンのいくらかまたは全部を交換し、そしてそれを、過剰のリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを合せることによって合成され得る。沈殿形態を収集し、そしてその後、再結晶化して、精製フェロセン−ビピリジン・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを得る。
【0103】
U.Claussenらに対する米国特許第6,241,916号明細書(前記を参照)には、陰イオン部分から陽イオン部分を分離する共役架橋を有する二官能性酸化還元染料が記載されている。これらの染料の多くには、テトラフルオロボレート、パークロレート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、およびヘキサフルオロシリケート(SiF62-)などの陰イオン、過フッ素化主要基化合物、スルホネート、およびパークロレートがあげられるが、スルホンアミドまたはパーフルオロスルホンイミドを含むものはない。対照的に、本発明の二官能性染料は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される少なくとも1つの陰イオンを含む。好ましくは、陰イオンの全ては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)またはトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)である。そしてさらに好ましくは、陰イオンの全ては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)である。本発明は、これらの同じ陰イオンを有するこれらの染料のラジカル陽イオンをも含む。
【0104】
本発明によるエレクトロクロミック系としては、式
Cat1−An1
を有するか、
または、式
Cat1−架橋1−An1
を有するか、
または、式
Cat1−架橋1−An1−架橋2−Cat2
を有するか、
または、式
An2−架橋2−Cat1−架橋1−An1
(式中、Cat1およびCat2は、独立して、陰イオン部分を表し、そしてAn1およびAn2は、独立して、陽イオン部分を示す。架橋1および架橋2は、独立して、架橋構成要素を示す)を有する二官能性染料があげられる。これらの二官能性酸化還元染料としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される少なくとも1つの陰イオンがあげられる。本発明としてはまた、これらの陰イオンを有するこれらの染料のラジカル陽イオンがあげられる。好ましくは、Cat1およびCat2は、独立して、以下の構造式
【0105】
【化19】

【0106】
【化20】

【0107】
【化21】

【0108】
(式中、R17およびR18は、互いに独立して、C1〜C18アルキル、C2〜C12アルケニル、C3〜C7シクロアルキル、C7〜C15アラルキルまたはC6〜C10アリールを示すか、またはR17およびR18は、−(CH22−、−(CH23−、または−CH=CH−架橋を一緒に形成し、R19、R20およびR22〜R25は、互いに独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはC1〜C18アルコキシカルボニルを示すか、または、R22およびR23および/またはR24およびR25は、−CH=CH−CH=CH−架橋を形成する。R26、R27、R28およびR29は、互いに独立して、水素を示すか、または対で、−(CH22−、−(CH23−、または−CH=CH−架橋を示し、E3およびE4は、互いに独立して、O、N−CN、C(CN)2またはN−C6〜C10アリールを示し、R34およびR35は、独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C18アルコキシカルボニルまたはC6〜C10アリールを示す。R30〜R33は、互いに独立して、水素またはC1〜C6アルキルを示すか、または、R30およびR26および/またはR31およびR27は、−CH=CH−CH=CH−架橋を形成する。E1およびE2は、互いに独立して、O、S、NR36またはC(R362を示すか、またはE1およびE2は、一緒に、−N−(CH22−N−架橋を形成し、R36は、C1〜C18アルキル、C2〜C12アルケニル、C4〜C7シクロアルキル、C7〜C15アラルキルまたはC6〜C10アリールを示す。Z1は、直接結合、−CH=CH−、−C(CH3)=CH−、−C(CN)=CH−、−CCl=CCl−、−C(OH)=CH−、−CCl=CH−、−C≡C−、−CH=N−N=CH−、−C(CH3)=N−N=C(CH3)−または−CCl=N−N=CCl−を示す。Z2は、−(CH2r−または−CH2−C64−CH2−(式中r=1−10)を示す。C-は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択され、そしてD-は、ハロゲン陰イオン、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CH3COO-、CH3(C64)SO3-、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される(ここで、架橋部分架橋1または架橋2に対する結合は、ラジカルR17〜R36のうちの1つを介してもたらされ、ついで、示されるラジカルは直接結合を示す))を示す。
【0109】
An1およびAn2は、独立して、以下の構造式:
【0110】
【化22】

【0111】
【化23】

【0112】
【化24】

【0113】
(式中、An1またはAn2は、独立して、チタニウム(III)、バナジウム(III)、バナジウム(IV)、鉄(II)、コバルト(II)、銅(I)、銀(I)、インジウム(I)、スズ(II)、アンチモン(III)、ビスマス(III)、セリウム(III)、サマリウム(II)、ジスプロジウム(II)、イッテルビウム(II)、またはユーロピウム(II)を含む金属塩を表す。R37〜R43は、互いに独立して、C1〜C18アルキル、C2〜C12アルケニル、C3〜C7シクロアルキル、C7〜C15アラルキルまたはC6〜C10アリールを示し、そしてR41〜R43は、さらに、水素を示し、R44〜R50は、互いに独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C18アルコキシカルボニルまたはC6〜C10アリールを示し、そしてR48およびR49はさらに、任意に、ベンゾ融合芳香族または準芳香族5または6員複素環を示し、そしてR50はさらに、独立して、N(R51)(R52)を示す。R44およびR45および/またはR46およびR47は、−(CH23−、−(CH24−、−(CH25−または−CH=CH−CH=CH−架橋を形成する。Z3は、直接結合または−CH=CH−または−N=N−架橋を示し、=Z4=は、直接二重結合または=CH−CH=または=N−N=架橋を示す。E3〜E4、E10およびE11は、互いに独立して、O、S、NR51、C(R51)(R52)、C=OまたはSO2を示す。E5〜E8は、互いに独立して、S、SeまたはNR51を示し、R51およびR52は、互いに独立して、C1〜C12アルキル、C2〜C8アルケニル、C3〜C7シクロアルキル、C7〜C15アラルキルまたはC6〜C10アリールを示す。R53〜R60は、互いに独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシ、シアノ、C1〜C4アルコキシカルボニルまたはC6〜C10アリールを示すか、またはR53およびR54およびR59およびR60は、独立して、互いに一緒になって−(CH23−、−(CH24−、または−CH=CH−CH=CH−架橋を形成し、v=0−10、そして、架橋部分架橋1または架橋2に対する結合は、ラジカルR37〜R54、R59またはR60のうちの1つによりもたらされ、そして示されるラジカルは、直接結合を示し、そして架橋1または架橋2は、独立して、式−(CH2n−または−(Y1s(CH2m−(Y2o−(CH2p−(Y3q−の架橋部分を示し、その各々は、任意に、C1〜C4アルコキシ、ハロゲンまたはフェニルにより置換される。Y1からY3までは、互いに独立して、O、S、NR61、COO、CONH、NHCONH、シクロペンタンジイル、シクロヘキサンジイル、フェニレン、ナフチレン、またはベータ−ジカルボニルを示す。R61は、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C4〜C7シクロアルキル、C7〜C15アラルキルまたはC6〜C10アリールを示し、n=0〜12、m=0〜8、p=0〜12、o=0〜6、q=0〜1、およびs=0〜1である)のうちの1つを示す。
【0114】
本発明は、前記の陰イオン化合物の対応のラジカル陰イオンを含み、ラジカル陰イオンが、電気化学的還元のあいだにインサイチュで発生され、そして荷電平衡については、イオン性液体溶媒に存在する型のアンモニウム陽イオンを必然的に含むことも理解されるべきである。
【0115】
本発明のエレクトロクロミック化合物としては、また、それの色特性を有する染料を提供する酸化還元活性陰イオン部分を有する二官能性酸化還元染料および酸化還元活性金属種(たとえば、チタニウム(III)、チタニウム(IV)、バナジウム(III)、バナジウム(IV)、バナジウム(V)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(I)、銅(II)、銀(I)、銀(II)、インジウム(I)、インジウム(III)、スズ(II)、スズ(IV)、アンチモン(III)、アンチモン(V)、ビスマス(III)、ビスマス(V)、セリウム(III)、セリウム(I)、サマリウム(II)、サマリウム(III)、ジスプロジウム(II)、ジスプロジウム(III)、イッテルビウム(II)、イッテルビウム(III)、ユーロピウム(II)、ユーロピウム(III))があげられる。二官能性イオン対構造およびEuを含むこのような材料の特定の例を製造した(実施例12、以下を参照)。
【0116】
本発明のECデバイスはまた、イオン性液体溶媒、酸化還元活性陰極染料(たとえば、ビオローゲン)、および染料および金属が、金属アレーン錯体(金属アレーン錯体は、たとえば、M.Niemeyer、「モノマーユーロピウム(II)とイッテルビウム(II)チオレートにおけるシグマ−供与体対η6−アレーン相互作用:実験的およびコンピュータ上の研究」、Eur.J.Inorg.Chem.(2001年)、1969〜1981年に記載される)の形態で二官能性染料を形成する酸化還元活性金属の電解質溶液から製造され得る。
【0117】
金属アレーン錯体の形態にある本発明の二官能性酸化還元染料は、式
[Cat1][M]
(式中、Mは、チタニウム(III)、バナジウム(III)、バナジウム(IV)、鉄(II)、コバルト(II)、銅(I)、銀(I)、インジウム(I)、スズ(II)、アンチモン(III)、ビスマス(III)、セリウム(III)、サマリウム(II)、ジスプロジウム(II)、イッテルビウム(II)、またはユーロピウム(II)を含む金属塩を表す)を示す。この型の二官能性染料の例を製造した(実施例11、以下を参照)。
【0118】
本発明に使用される酸化還元染料の別のクラスは、電荷移動化合物のクラスである。しばしば、電荷移動錯体と称される電荷移動化合物は、少なくとも1つの電子富化芳香族化合物、および少なくとも1つの電子欠乏芳香族化合物を含む;電子富化芳香族化合物および電子欠乏芳香族化合物は、イオン性液体溶媒中で合せて、電荷移動化合物を形成する。電荷移動化合物のUV−VISスペクトルは、電子富化芳香族化合物および電子欠乏芳香族化合物のスペクトルの単純な直線の組合わせではなく(図13を参照)、増強溶解性などの他の特性を有する。1:1の比で5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン(白色化合物)を、ジエチルビオローゲン ビス[ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド](別の白色化合物)と合せることによって形成される緑色の電荷移動化合物のスペクトルは、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンまたはN,N’−ジエチルビオローゲン ビス[ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド]のいずれかについての吸光スペクトルに存在するあらゆるものと異なる吸収バンドを含む。
【0119】
本発明はまた、電荷移動化合物の電解質溶液を使用し、そしてイオン性液体に溶解された電気光学デバイスを含む。本発明はまた、酸化還元不活性の無色の陰イオン(ここで、少なくとも1つの陰イオンが、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される)を有する電荷移動化合物を含む。好ましくは、少なくとも1つの陰イオンは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)である。さらに好ましくは、陰イオンの全ては、同一であり、そしてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO22-)およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)から選択される。最も好ましくは、唯一の陰イオンは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)である。
【0120】
本発明の電解質溶液の特定の特性を変化させるために使用されるいくつかの他の添加剤がある。これらのうちの1つは、粘度改質剤である。粘度改質剤は、ヒュームドシリカ、微細アルミナなどのような可溶性ポリマーおよび充填剤であり得る。添加剤としてはまた、他のイオン性液体および非イオン性液体などの共溶媒があげられる。これらのいくつかは、融点などの、電解質溶液のそれらの物理特性を変化させるために使用される。添加剤は、染料の粘性抗力を変化させることにより、電解質の、したがって電解質を使用する本発明の電気光学デバイスの電子特性(反応の速度、電流/時間特徴)をも変化させる可能性があり得る。米国特許第5,140,455号明細書に記載されるこれらのうちのいくつかは、漏れ電流または戻り反応を減少させる。イオン性液体自体が導電しているが、固形塩などの他のイオン性種も、それらの凍結点を押し下げ、イオン性導電性を変化させるか、または後に検討されるとおり他の特徴(たとえば、挿入のためのイオンなど)を提供するために添加され得る。さらに、イオン性種の高い濃度の存在は、脱色反応を抑制し得る。
【0121】
従来の溶媒(すなわち、非イオン性溶媒)およびイオン性液体の混合物、または2つ以上のイオン性液体は、イオン性液体の高いイオン性濃度、および従来の非イオン性溶媒の低い粘度特徴を有する電解質溶液を提供する。溶媒混合物は、粘度制御、イオン性導電性での変化、凍結点での変化、電気光学反応の速度論での変化、溶解性での変化(たとえば、染料およびUV安定化剤のような他の添加成分の)、加工性が増強されること、または他の特徴を可能にし得る。代表的には、従来の有機溶媒の容積を、電解質溶液の80%より低く、さらに好ましくは30%より低く、そして最も好ましくは20%より低く維持することが好ましい。濃度を測定する別の方法は、モル濃度、すなわち、溶液のリットル当たりのイオンのモルによる。電解質溶液中の全てのイオン性種の好ましい濃度は、1モル/lより大きく、そしてさらに好ましくは2モル/lより大きく、そして最も好ましくは3モル/より大きい。容積で80%/20%混合で、1−ブチル−3−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと、プロピレンカーボネートを混合した後の容積における変化がないことを仮定すると、イオン性種の2.7モル(M)濃度が存在する。実施例8および9(下に参照すること)に示されるとおり、混合イオン性液体−従来の溶媒系は、高い着色均一性と同様に、Tgが低下される、そして許容し得る漏れ電流(デバイスの漏れ電流は、光伝送または反射の所定の状態でデバイスを維持するために安定な電圧をかけ、そしてその後、安定な状態で電流を測定することによって測定される)ような利益を提供する。
【0122】
最も好ましい非イオン性共溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、スルホラン、メチルスルホラン、およびガンマ−ブチロラクトンである。共溶媒として使用され得る多くの他の溶媒は、D.Varaprasadらに対する米国特許第6,245,262号明細書(前記を参照)に見出され得る。第6,245,262号特許における非イオン性溶媒は、可塑剤と称され、そして、この非イオン性溶媒としては、トリグリム、テトラグリム、アセトニトリル、ベンジルアセトン、3−ヒドロキシプロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、グリセリンカーボネート、2−アセチルブチロラクトン、シアノエチルショ糖、ガンマ−ブチロラクトン、2−メチルグルタロニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド、3−メチルスルホラン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、アセトフェノン、グルタロニトリル、3,31−オキシジプロピオニトリル、2−メトキシエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、またはその組合わせがあげられる。
【0123】
図1に示されるとおり構築される自己消滅エレクトロクロミックデバイスは、さらに着色も顕著に示す。この構築のデバイスは、しばしば、酸化還元活性材料または酸化還元染料と称され、色変化が付随する酸化還元反応を提供する少なくとも1つの電気化学的に活性な材料を有する。図1により構築されるデバイスは、単一区画とも称され、電気化学活性の全てとして、2つの導体とガスケット内に含まれる電解質層により定義される1つの区画でのみ起こる。自己消滅は、電気光学的着色の自発的または自動的反転に該当し、そしてそれは、デバイスに対する活性化電力が、取除かれた直後(たとえば、代表的には秒から分まで、しかし、電解質組成物により、いっそう長くなり得る)に起こる。ついで、デバイスは、着色のその非動力状態(non-powered state)に戻る。非動力状態にあるデバイスの光学特性の対する逆転は、エレクトロクロミックダイニングミラーとして、迅速に、たとえば、5分未満で、そして好ましくは30秒未満で起こるべきである;これらの時間は、脱色のための時間に該当し、そして着色は、着色範囲の50%になる。望ましい着色および脱色時間は、電気光学デバイスの使用による。エレクトロクロミック窓は、いっそうゆっくりとした着色時間を有し得て、そして、いっそうゆっくりとした脱色時間を有すべきであり、しばしば、A.W.Czandernaら、「建築物用途のためのエレクトロクロミック窓の耐久性供給およびサービス寿命推定」、Solar Energy Materials and Solar Cells、56巻(1999年)、419〜436頁(参考として本明細書中に援用される)に記載されるとおり開放回路メモリといわれる。A.W.Czandernaらは、エレクトロクロミックの建築物の窓の望ましい特性の多くを記載する。コンピュータディスプレイのような電気光学ディスプレイは、いっそう早い速度論を示すべきであるが、時折更新される信号系は、よりゆっくりとした速度論を示し得る。デバイスが、所定の着色のための安定状態での漏れ電流により、所定の稼動電力特徴(電圧)について測定される動力状態における競合する戻り反応を示すので、自己脱色が起こる。ある種の戻り反応は、自己消滅のために、たとえば、自動車バックミラーのために必要とされる。しかし、高い値は、下に記述されるとおり不均等な脱色などの多くの他の問題を引き起こす。順行反応(たとえば、着色)は、本発明の一部である電解質溶液のイオンの濃度が高いことによって増強されるが、戻り反応(たとえば、脱色)は、液体電解質の粘性とイオン性種の濃度により減速される。早い順行反応および遅い戻り反応は、本発明のデバイスの領域にわたっていっそう均一な電流、および本発明の電気光学デバイスの非常に均一な着色を導く。本発明における均一な着色は、いくつかの方法で有益である。第1に、均一な着色は、これらのデバイスは、電流が、デバイスの外辺部に、導体、特に母線棒を介してかけられたときに均一に彩色する、大面積デバイスを製造させることができる。イオン濃度が低い代表的なデバイスでは、デバイスは、デバイスのサイズが増大するときに、外辺部で、その後中央で、母線棒領域に近くに深く彩色する。本発明の電気光学デバイスに使用されるイオン性液体の導電性の第2の利点は、デバイスにわたる電圧が、いっそう均一であり、そして活性状態にある酸化還元染料の電気泳動分離を減少させることである。対照的に、従来の非イオン性溶媒を使用する電気光学デバイスでは、酸化還元染料の電気泳動分離は、電力が長い期間、たとえば、10分間およびそれより長くはずされるとき、母線棒に近い着色バンドの形成を導く。第三に、戻り反応および順行反応は、通常、温度で均一に増大せず、そして従来の非イオン性溶媒を使用する電気光学デバイスでは、順行反応と戻り反応のあいだでの速度における違いは、非常に高い可能性があるので、25℃で均一に着色するデバイスは、40℃で非均一に着色する可能性がある。さらに、非均一性は、デバイスのサイズを増加することに伴い増大する傾向にあり、母線棒と、母線棒から最も遠い電極の一部とのあいだの距離における増加で最も破壊的な傾向がある。温度変動は、特に、一般に内部ミラーより大きく、そして寒い気候で霜を除去するために加熱され得る外部自動車ミラーに影響するか、またはそれらは、太陽光を減少させることができる安定性を増大させるために、着色を必要とし得る。ミラーのサイズを増加させながら、非均一性および温度で誘導された非均一性は、いっそう明白になり、そしてこの問題は、従来の非イオン性溶媒を使用する電気光学デバイスと比較したときに、本発明の電気光学デバイスで重度が低い可能性がある。
【0124】
ECデバイスの電解質のイオン性種の濃度は、イオン性液体、塩、染料などを含めた塩様である(すなわち、陰イオンおよび陽イオンを有する)種、全ての総計である。デバイスのサイズを測定する別の方法は、図に示されるとおりの対峙極性母線棒のあいだの距離を測定することである。図10は、内側に向くそれらの導体側を有する2つの基板54を使用して製造されたエレクトロクロミックデバイスを示す。2tの対峙電極56および58についての母線棒は、距離「W」で示される。ミラーの形状は、この距離が一定でない可能性があり、したがって、平均数が使用されているようなものであり得る。さらに、ECデバイスのサイズは、外辺部シール内の幅を測定することによって測定され得る。しかし、ほとんどの実際のデバイスについては、「W」は、シールと母線棒の幅が、各側で数ミリメートルだけ加わるとき、これと明らかには異ならない。自動車の内側ミラーについての母線棒の距離「W」は、約5cm〜8cmの範囲内にあり得て、そして自動車の外側ミラーについては、約7cm〜20cmの範囲に入り得る。本発明から製造される電気光学デバイスについての電解質層の厚みは、全般的に1mm未満で、そしてさらに好ましくは0.5mm未満である。自動車のエレクトロクロミックミラーについては、この距離は、好ましくは0.25mm未満であり、その結果、自己消滅速度が許容される。
【0125】
漏れ電流のいずれかの値は、デバイスが、均一に着色する限り許容され、そして自己消滅は、許容速度で起こる。したがって、漏れ電流は、様々なサイズのミラーと異なり得る。約25cm×約6cmのサイズを有する内側ミラーについては、漏れ電流は、好ましくは、デバイスの活性領域の0.5mA/cm2より低くあるべきである。
【0126】
共反応モノマー、付加反応モノマー、触媒、開始剤などの重合可能な材料を、電解質に添加し得る。電解質をデバイスに導入した後に、モノマーを、インサイチュで重合させ得るか、またはそれらを、フィルムに固形化し、その後積層させ得る。さらに、組成物は、熱、UVまたは他の照射方法により硬化ささることのような加工の方法による。モノマー性添加物が、重合後に、不適合になり得るので、材料の選択を行うのに注意深くなければならない。材料、加工などにおける詳細は、米国特許第6,245,262号明細書および同第5,940,201号明細書に記載される。一般的に、好ましいものは、エポキシ、ウレタンおよびアクリル酸化学に基づく。インサイチュでの重合についての収縮を低下させ続けるために、添加剤の濃度は、代表的には、溶媒の25%未満である。
【0127】
非電気化学的に活性な染料(所望の色を付与する)、界面活性剤および他の改質剤を、所望のデバイス特徴および加工性により、電解質溶液に添加し得る。これらは、上の資料に記述されている。たとえば、近IR吸収剤も、添加されて(「近赤外吸収エレクトロクロミック化合物およびそれを含むデバイス」と題されるD.Thiesteら、PCT出願国際公開第99/45081号パンフレット(参考として本明細書中に援用される)を参照)、その結果、デバイスは、窓用途のための拡大された太陽光の範囲で吸収できた。
【0128】
本発明のECデバイスは、電極の一方で沈着した他方の層を含み得る。これらのデバイスの略図は、図2および3に示される。図2に示されるデバイス34は、デバイス34が、さらなるエレクトロクロミック的に活性な層36を有すること以外は、図1に示されるデバイス10と類似である。エレクトロクロミック的に活性な層36は、導体層16または導体層18(またはそれら自身が、導体である場合、基板12または基板14に)のいずれかに、または両方に沈着する:便宜上、エレクトロクロミック的に活性な層36は、第2の導電性層18に沈着されると示される。エレクトロクロミック的に活性な層を製造するために使用される材料の例は、酸化タングステン、プルシアンブルー、酸化モリブデン、酸化バナジウム、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、および誘導体、およびこれらの材料の混合物である(これらの層で製作されるデバイスは、1987年6月9日に発行された「電気光学デバイス」と題されるT.Kaminoriらに対する米国特許第4,671,619号明細書に、そして1998年3月17日に発行された「エレクトロクロミックデバイス」と題されるP−M.Allemandらに対する米国特許第5,729,379号明細書に記載される(ともに、参考として本明細書中に援用される)。
【0129】
層16、18および36のいずれかは、それ自身、いくつかの層を含み得る。たとえば、酸化スズの導電性層は、抗虹色光彩被覆剤(anti-iridescent coating)の上に沈着され得る。エレクトロクロミック的に活性な層は、材料の異なる2つの層の複合物であり得る。
【0130】
この構築物においては、溶液30は、イオン性液体と少なくとも1つの酸化還元活性化合物を包含する。たとえば、陰極層である酸化タングステンを使用する場合、それにより少なくとも1つの陽イオン材料(たとえば、フェロセン、フェノチアジン)を電解質に使用する。電解質は、リチウム、ナトリウム、およびカリウムなどをも含み得る。着色の間に、電解質から得られるイオン(Li+、Na+、K+)を、酸化タングステンに可逆に注入する。このような塩を使用する場合、関連陰イオンは、イオン性液体溶媒の内の1つと類似か、または同じであることが好ましい。染料の酸化還元特性とリチウムの出所を合せる材料は、ヨウ化リチウム塩である(たとえば、T.Kamimoriらに対する米国特許第4,671,619号明細書を参照)。
【0131】
陽極エレクトロクロミック的に活性な層36の例は、ポリアニリンであり、そしてそれは、本発明の電解質溶液中のビオローゲンのような陰極染料を用いて使用され得る。
【0132】
図2にあるデバイス34の機能性を改善する別の機能性被覆剤があり得る。1つの例は、図3に示されるデバイス38であり、そしてそれは、エレクトロクロミック的に活性な層36は、最初に、たとえば、リチウムは通過するが、しかし溶液30中に存在する大型イオンの運動を遮断または廃棄させるイオン選択性輸送層40で被覆されることを除いてデバイス34に一致する。イオン選択性輸送層40は、戻り反応を制限し、そしてデバイスのメモリを増大させる。これは、着色が、いっそう均一である場合、大型窓にとって有用な特性である。イオン選択性輸送層およびデバイスは、2001年1月23日に発行された「エレクトロクロミックデバイス」と題されるP.M.Allemandらに対する米国特許第6,178,034号明細書に記載される(参考として本明細書中に援用される)。
【0133】
いくつかのECデバイスにおいては、図4に示されるとおりの2つの挿入層があり得る。図4は、導電性層16および18の各々が、エレクトロクロミック的に活性な層で被覆されることを除いてデバイス34に類似するデバイス42を示す。図4は、エレクトロクロミック的に活性な層44に被覆される場合の第1の導電性層16、およびエレクトロクロミック的に活性な層36に被覆された第2の導電性層18を示す。エレクトロクロミック的に活性な層の一方(層44または層36)は、エレクトロクロミック性でなければならず;他方のエレクトロクロミック的に活性な層44または36(対抗電極、CE)は、エレクトロクロミック性でも、イオン可逆性を保持するのみでもよい。エレクトロクロミック層が、酸化タングステンまたは酸化モリブデンを含む場合、それにより他方のエレクトロクロミック的に活性な層は、ポリアニリン、酸化ニッケル、酸化イリジウムおよび酸化バナジウムを含み得る。イオンを保存する非エレクトロクロミック層の例は、酸化セリウム−チタンおよび酸化バナジウム−チタンである。デバイス構築の間に、これらの層の一方は、代表的に、予備還元されるか、リチウムなどの陽イオンが挿入される。デバイスは、イオンが対抗電極から取り出され、そしてエレクトロクロミック層に注入されるときに、その光学特性を変化させる。陽極エレクトロクロミック層については、電荷の取り出しは、色における変化をも導く。デバイス42における溶液30は、イオン性液体溶媒が、イオン性液体溶媒に加えて、UV安定化剤をも含む。デバイス42における溶液30は、CEからエレクトロクロミック層へ、そしてその逆に輸送され得る陽イオンを有する塩を、任意に含有し得る。例のとおり、リチウムが、電極に挿入される予定である場合、それによりリチウム塩は電解質に添加され得る。プロトンの出所である限りプロトンの出所を添加することさえでき、代表的には、酸は、電解質媒体中に解離できる。さらに、添加塩の陰イオンは、好ましくは、イオン性液体の陰イオンに類似するべきである。好ましいリチウム塩の例は、リチウムトリフルオロメチルスルホネート、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(パーフルオロメチルスルホニル)イミド、およびリチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドである。エレクトロクロミック層の例、対抗電極およびデバイス構築物は、以下の特許:2001年7月24日に発行された「エレクトロクロミックデバイス」と題されるP.M.Allemandに対する米国特許第6,266,177号明細書、2001年12月4日に発行された「リチウムニオベート対抗電極との組み合わせでポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)誘導体に基づいたエレクトロクロミック構築物」H.−W.Heuerらに対する米国特許第6,327,070号明細書、および2001年1月9日に発行された「エレクトロクロミックデバイス」と題されるM.S.Burdisに対する米国特許第6,172,794号明細書に見出され得る。
【0134】
他の発色体デバイスは、本発明の電解質溶液から利益を得ることもできる。これらは、使用者制御光互変性デバイス(UCPC)および光電気化学デバイス(たとえば、2001年6月12日に発行された「光互変性デバイス」と題されるG.Teoweeらに対する米国特許第6,246,505号明細書、およびC.Bechingerら、「光エレクトロクロミック窓およびディスプレイ」、Nature、383巻(1996年)608〜610頁を参照)と称される。これらのデバイスにおいては、着色は光活性化され、そして、使用者により制御され得る。これらは、図4に示されるデバイス42の構造と類似である。
【0135】
本発明は、真空充填により電気光学デバイスを製造する方法を含む。多くの種類の電気光学デバイスは、エレクトロクロミック、電気反射、および電気発光デバイスを含む真空充填技術により製造され、そしてミラー、窓、フィルタ、光パネルおよびディスプレイがあげられ得る。
【0136】
本発明のイオン性液体を含む電気光学デバイスは、真空充填方法を用いて都合よく製造され得る。イオン性液体の無視できる程度の蒸気圧は、従来の非イオン性溶媒を用いた場合のように、真空充填技術を、充填装置の気泡発生および溶媒混入の懸念なしに使用させ得る。さらに、重要なことには、上昇した温度においてさえ、イオン性液体の無視できる程度の蒸気圧(実施例14を参照)は、溶媒が蒸発せず、したがって、溶媒に溶解した溶質の濃度が変化しないことを保証する。
【0137】
先に説明されたとおり、イオン性液体の低い蒸気圧のため、これは、デバイス構築物について非常に魅力的な方法である。この工程で、別個の容器内に充填ポートを有する空のセル(電解質なし)と、電解質をチャンバに入れ、そして空にする。その後、セルの充填ポートを、なお真空のままで電解質に沈める。その後、チャンバ真空を、開放する一方で、充填ポートは、なお、電解質溶液に沈められる。溶液の粘度が高い(たとえば、10センチポイス(cP)より大きい)場合、充填工程の間に、電解質溶液を、温かい空のセルと接触させることにより;電解質を加温することによるか;加熱チャンバでの充填操作を行うことによるか、またはある種の他の手段により、電解質溶液を加温する。電解質における周囲圧力は、それを、セルに充填させる。充填セルを取除き、そして第1ポートをシールする。
【0138】
図5aは、真空チャンバ46を示す。ポート48は、空気またはガス(たとえば、不活性ガス)を排除するか、またはチャンバ46に導入するために使用される。図5aは、真空がチャンバ46内で確立された後の充填工程を示す。チャンバ46は、電解質とセルを導入するための他のポートを有し得る(示さず)。チャンバは、溶液30を保持する容器50を含む。チャンバ52は、2つの基板およびガスケットにより形成される(たとえば、ガスケット24、第1の基板12、および第2の基板から、それらの基板上に任意の被覆剤と一緒に、形成されるチャンバ26)。ガスケットは、チャンバ52に、溶液30を充填するために使用される充填ポート28を有する。充填ポート28は、基板上に1つ以上の穴を有し得る。基板は、穴形成の前にすでに組み込まれた図1〜4に示されるとおりの他の層を有し得る。充填工程を開始するために、1つ以上の空のセルを、電解質と一緒に、チャンバに導入する。1つ以上のイオン性液体、任意に、非イオン性共溶媒、1つ以上の酸化還元染料、任意に1つ以上のUV安定化剤、任意に1つ以上のインサイチュで重合可能なモノマー、および任意に1つ以上の重合触媒および/または開始剤を含むイオン性液体溶液30をも、真空チャンバに導入する。チャンバを空にするときに、セルおよびイオン性液体溶液を、ばらばらに維持する。米国特許第5,140,455号明細書に記載されるとおりの非イオン性の従来の溶媒を用いた場合のように、充填溶液が、相当の蒸気圧を示す場合、それにより溶媒は蒸発し、そして溶媒の蒸気圧より大きな真空の確立を防止する。さらに、米国特許第5,140,455号明細書に記載されるとおりの非イオン性の従来の溶媒を用いた場合のように、充填溶液が、相当の蒸気圧を示す場合、とくに真空、そして特に高温での溶媒の蒸発は、それらの最適値から溶質の濃度を変化させ得る。イオン性液体が、従来の溶媒が蒸発する条件下では蒸発しないので、溶質の濃度は変化しない。イオン性液体の蒸気圧は、無視できるので、チャンバを素早く空にし、そしてさらに、真空系により電解質を消費しない。さらに、従来の液体については、気泡がつねに、充填穴に残り、そして、これは蒸気圧に依存する(この現象の詳細な説明については、米国特許第5,140,455号明細書を参照)。本発明のイオン性液体の蒸気圧は無視できるので、真空チャンバは真空系による溶媒の消費または気泡の形成なしに、素早くそして効果的に空にされ得る。その後、真空チャンバが図5bで示されるとおり真空下にある一方で、セルの充填ポートをイオン性液体に沈める。その後、充填ポートが、なお電解質に沈められたままで、チャンバ真空を開放し、そして、任意に、チャンバは雰囲気圧力より上に加圧される。セルの外側とセルの内側の圧力差は、図5cに示されるとおり、イオン性液体をセルに充填する原因となる。図5cは、真空が、予め確立された真空より高い不活性ガスまたは空気の圧力と交換された後のチャンバ46(好ましくは、大気圧以上の圧力が、チャンバ46において確立されている)を示す。充填されたセルを、真空チャンバから取り出し、そして充填ポートを、温度または照射(たとえば、UV照射)により硬化する接着剤でシールする。電解質用にしばしば使用される材料である、プロピレンカーボネートの蒸気圧は、20℃で、0.03mmHgである。フルホランも、添加剤としてエレクトロクロミックデバイスに使用される;それは、27.6℃の融点を示し、そしてこの温度で、0.0062mmの蒸気圧を有する。イオン性液体の蒸気圧は無視できる(Gordon,C.M.、イオン性液体を使用する触媒における新たな開発、Applied Catalysis:General A、222巻(2001年)、101〜117頁、Earle,J.M.、ディールスアルダー反応、Green Chemistry、1巻(1999年)、23〜25頁)。本発明の目的のために、充填条件下で、0.003mmHg未満の、好ましくは0.001mmHg未満の蒸気圧は、無視できる程度の圧力である。無視できる程度の圧力は、溶媒を、1時間、100℃で、0.1mmHgの真空下で、1.5cm2開口部を有する開放容器に入れる。これらの条件下での、蒸発による溶媒の損失は、1mg未満であり、そして好ましくは0.1mg未満であるべきである。
【0139】
他の充填技術(たとえば、米国特許第5,140,455号明細書に記載される技術)も、本発明の電気光学デバイスを製造するために使用され得る。これらの他の充填技術は、圧力下の電解質をその穴に入れる注入充填技術を含む。電解質が充填されるので、気体を排出するために、空洞に別の穴を設けるのが好ましく、あるいは、注入充填デバイスはまた、排気機能を提供し得る。
【0140】
以下の実施例は、本発明の操作性を実証する。
【実施例】
【0141】
[実施例1]
イオン性液体溶媒でのUV安定化剤の吸収スペクトル。吸収スペクトルについて、プロピレンカーボネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMI)、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMP)、およびユビヌル(Uvinul)3035(エチル 2−シアノ−3,3−ジフェニル−アクリレート、ニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive,NJ)のBASFから入手可能である)と称される1%市販のUV安定化剤を伴うBMIの溶液を800〜250nmで測定した。BMIおよびBMPの両方は、本発明に使用されるイオン性液体溶媒である。BMIは、それのより結合した性質により、UVにおいて、BMPよりも高い吸収(400nm未満)を示す。1%UV安定化剤をともなうBMIの溶液は、15時間後、−30℃で沈殿を形成しない透明液体である。4つの溶液の吸収スペクトルは、図6に示される。
【0142】
[実施例2]
酸化還元染料を含む電解質溶液を用いたエレクトロクロミック窓。ITO基板(15Ω/平方)を、2つの5.25”×3.7”矩形片に切断した。2つの穴、直径で約3mmを、対角の1つの角に近い1片に開けた。その後、基板を洗浄し、乾燥させ、そしてクリーンルーム条件下で保存した。105ミクロンのガラスビーズスペーサーを含むエポキシを、基板の1つの末端の周辺に分配し、そして第2の規範を、2つの基板が、矩形末端の長い側に沿ってわずかに中心をはずされるように空洞を作るために、その上に載せた。のちに、両方の基板上のこの露出末端を、母線棒を使用し、そして電気接続を行うために使用した。エポキシシールを、120℃の温度で硬化させた。室温で、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド中のN,N’−ジメチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(メチルビオローゲンイミド塩)、0.0015M N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンにより形成される0.015Mの電荷移動錯体を含む液体電解質溶液を、空洞に充填した。空洞を充填した後、2つの穴をテフロン球により栓をし(好ましくは、球の直径は、穴の直径より5〜30%大きい)、そしてさらに、カバーガラスおよびエポキシを使用してシールした。はんだ片を、超音波はんだを使用して、空洞の長い側に沿って各基板上に露出したITOに載せた。その後、電線をこれらのハンダ片に付着させた。分光器上にデバイスを載せ、そして1.0ボルトの色電位(color potential)をかけながら、550nmでの着色速度を監視することによって、窓デバイスのエレクトロクロミック作用を測定した。このデバイスは、暗青色(deep blue color)に均一に着色し、そして2つの電極から電気リードを短結させることによる脱色により元の無色の状態に戻った。図7は、着色および脱色状態でのスペクトルを示す。そのデバイスについての速度論追跡は、図8に550nmで示される。
【0143】
[実施例3]
酸化タングステン被覆剤を有するエレクトロクロミック窓デバイス。穴を開けなかった基板を、30モル%の酸化リチウム(タングステン原子に基づいて)を含む300nm厚の酸化タングステン被覆剤(導電性側に)で被覆することを除き、2つの2分の1波長ITO基板(15Ω/立方)を、実施例2に記載したとおりに製造した。この被覆剤を、米国特許第6,266,177号明細書に記載されるとおりの湿式化学法により塗布した。他のあらゆる方法(たとえば、化学的蒸気析出および物理的蒸気析出)を使用して、酸化タングステン層を析出させた。被覆剤を、湿潤雰囲気で135℃の温度で、ついで、空気中で250℃で焼いた。ついで、実施例1に記載されるとおりにセルに組み立てた。空洞厚は、175ミクロンであった。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに溶解させた0.1モルリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、0.015Mフェロセン、1重量%Uvinul3035(ニュージャージ州マウント・オリーブのBASFから得た)を含む電解質を空洞に充填し、そして充填空洞を、実施例1に前記されるとおりに栓をした。セルを、分光光度計にセルを載せ、そして1.2ボルトの色電位をかけ、つづいて−0.6ボルトの脱色電位(bleach potential)を続けながら、550nmでの着色速度を続け、そのデバイスのエレクトロクロミック作用を測定した。伝送(脱色)状態で、セルは76%Tの伝送を有し、かつ550nmで12%Tという十分な着色を有した。脱色および着色状態での窓デバイスの伝送スペクトルは、図9に示される。
【0144】
[実施例4]
イオン性液体溶媒に溶解した酸化還元染料およびUV安定化剤の電解質溶液を有するエレクトロクロミック窓デバイス。それに、N,N’−ジメチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.015M)、フェロセン(0.015M)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに溶解させた1重量%Uvinul3035(ニュージャージ州マウント・オリーブのBASF)を含む電解質溶液を代わりに充填したことを除き、実施例2によりデバイスを製造した。セルを1.0ボルトを使用して着色し、かつ550nmで、41%の伝送を有し、そして短結させたときに、76%の伝送を有した。
【0145】
[実施例5]
イオン性液体溶媒に溶解した酸化還元染料およびUV安定化剤の電解質溶液を有するエレクトロクロミック窓デバイス。N,N’−ジメチルビオローゲンジクロリドヒドレートおよびN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン(0.015M)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに溶解させた1重量%Uvinul3035(ニュージャージ州マウント・オリーブのBASF)を反応させて形成した電荷移動錯体の電解質溶液を代わりに充填したことを除き、実施例2によりデバイスを製造した。セルを1.0ボルトを使用して着色し、かつ550nmで、19%の伝送を有し、そして短結させたときに、70%の伝送を有した。
【0146】
[実施例6]
イオン性液体溶媒に溶解した酸化還元染料およびUV安定化剤の電解質溶液を有するミラーデバイス。TEC15(オハイオ州トレド(Toledo,OH)のLOFから得た)から製造された基板を使用し、そして酸化インジウム−スズ(15Ω/平方)をさらに使用して、ECミラーを構築した。TEC15基板に、銀を使用して非導電性側にミラーを取り付けた。基板を実施例2のように構築した。穴あきの片方の電極はITO電極であった。セル間隙、すなわち、間隙を充填する電解質層の幅は、105ミクロンであった。N,N’−ジメチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.015M)、フェロセン(0.015M)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに溶解させた1重量%Uvinul3035(ニュージャージ州マウント・オリーブのBASF)を含む電解質溶液を充填した後、得られたデバイスを、1.0Vで着色し、そして短結させて脱色させた。550nmで、脱色様式におけるセルの反射率は71%であり、そして着色されたき、それは26%であった。550nmで、71%〜26%の範囲の50%着色する時間は、12秒であり、そして50%の範囲が脱色されるのは9秒であった。
【0147】
[実施例7]
イオン性液体溶媒に溶解した酸化還元染料系およびUV安定化剤の電解質溶液を有するミラーデバイス。N,N’−ジメチルビオローゲンジクロリドヒドレートおよびN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンおよび1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに溶解させた1重量%Uvinul3035(ニュージャージ州マウント・オリーブのBASF)から形成される0.015Mの電荷移動錯体の組成物を有する電解質溶液を代わりに充填したことを除き、実施例6によりデバイスを製造した。セルを1.0Vで着色し、そして短結させて脱色させた。550nmで、脱色様式にあるセルの反射率は77%であり、そして着色されたき7.7%であった。1Vの電位をかけたときに、デバイスは1.6秒で50%着色に達し、そして3.7秒で80%着色に達した。
【0148】
[実施例8]
液体の粘度およびTgの測定。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BMI)の粘度およびBMIとプロピレンカーボネート(PC)の混合物(容積で90:10)の粘度を、様々な温度で、BROOKFIELD粘度計モデルDV−III+(Stoughton,MA)のコーンとプレート付着物を使用して測定した。これらの液体の各々のついて得られたこのデータを、図11および12にプロットして示した。データを、以下の線形方程式
In(粘度)=A+B/(T−Tg)
(ここで、Tは、摂氏の度の測定値の温度であり、Tgは、摂氏度でのガラス遷移温度であり、そしてAおよびBは、曲線についての適合定数である。)
に適合させた。
【0149】
Tgの値は、その曲線の補正係数が最高になるまでTgの仮定値を変化させることによって決定した。図11での適合については、線形補正係数(R2)が0.996であり、そして図12に示される溶媒混合については、補正定数が0.999であった。BMIについての最適方程式は、
In(粘度)=601.41/(T−Tg)−1.1483
であった。
【0150】
ここで、曲線は、−85℃のTgで最適であった。BMIとプロピレンカーボネートの混合物についての最適方程式は、
In(粘度)=967.35/(T−Tg)−2.694
であった。
ここで、曲線は、−130℃のTgで最適であった。
【0151】
[実施例9]
3つの異なる電解質溶液を使用するECデバイスの比較。3つのデバイスを、実施例2に記載されるとおりに作製した。各デバイスの活性領域は約94cm2であった。二官能性酸化還元染料は、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン(フェナジン)およびN,N’−ジメチルビオローゲン ビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]塩(ビオローゲン)を反応させることによって形成した電荷移動錯体であった。UV安定化剤は、UVINULTM3035であった。イオン性液体は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含んだ。以下の表1は、電解質溶液の各成分のグラムでの重量を含む。
【0152】
【表1】

【0153】
上の表に示されるとおり、デバイス1は、イオン性液体および非イオン性添加剤プロピレンカーボネートの電解質溶液を使用し、デバイス2は、プロピレンカーボネートなしのイオン性液体を使用し、そしてデバイス3は、あらゆるイオン性液体なしのプロピレンカーボネートを使用した。デバイス1での電解質の粘度は、25℃で、50cPであり、そして82℃で8cPであった。粘度測定値から得た電解質のTgは、−140℃であると測定された。デバイス1および2の電解質厚は、63ミクロンであった。デバイス3については、これが175ミクロンであった。デバイス3の厚みが薄かった場合、漏れ電流は非常に高くて、デバイスは均一には着色しなかった;とくに、中心は末端と同じ程度までは着色しなかった。漏れ電流は、電解質厚が大きくなると減少するが、他のパラメーターは一定に保たれた。これらのデバイスからの結果は、下の表2に示される。デバイスの伝送は、着色のために0.9Vをかけながら繊維光学分光計を使用して測定した。
【0154】
【表2】

【0155】
[実施例10]
二官能性酸化還元染料の合成、およびイオン性液体溶媒に溶解した二官能性酸化還元染料の電解質溶液を使用するECデバイス。クロロメチルフェロセン(1g)を、アセトニトリル(20mL)に溶解した4,4’−ビピリジン(681mg)を含む溶液に添加した。この混合物を、24時間、封鎖管中で130℃に加熱した。その管を冷却し、そしてその溶媒の全てを減圧下で除去して、黄色固形物を得て、その後、熱トルエンで洗浄し、そして乾燥させて、メチルフェロセンビオローゲンクロリド(1.6g)を得た。メチルフェロセンビオローゲンクロリド(1.6g)を、5mLのメチルヨーダイドを含むアセトニトリル(20mL)に溶解させた。その後、これを、24時間、100℃で加熱し、その後冷却し、そして全ての溶媒を、減圧下で除去した。生じた黄色固形物を、水(100mL)に溶解させて、透明溶液を形成した。その後、リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3g)を、透明溶液に添加した。N−メチル−N’−メチルフェロセンビオローゲン・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの暗色沈殿を形成し、そして濾過により単離した(収量:3.1g)。構造式
【0156】
【化25】

【0157】
を有する生成物二官能性酸化還元染料を、2つのITOプレートおよびo−リングにより形成されたチャンバ中に、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド中のN−メチル−N’−メチルフェロセンビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド溶液を入れることにより、ECデバイスに使用した。得られたエレクトロクロミックデバイスは、セルを横切る電圧の循環的適用において、首尾よく着色および脱色が繰り返された。
【0158】
[実施例11]
イオン性液体溶媒と、陰極部分とユーロピウム陽極部分を有する二官能性酸化還元染料の電解質溶液を使用するECデバイス。1.0グラムのEu(II)クロリドと2当量の水素 ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの混合物を、気体発生が停止するまで加熱した。その後、4時間、60℃で真空で加熱することによって、生成物Eu(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを精製した。Eu(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(100mg)およびN,N’−ジエチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(100mg)を、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(2mL)に溶解させた。得られた溶液を、2つのITOプレートの間に入れた。得られたエレクトロクロミックデバイスは、おそらく、同時に、ジエチルビオローゲンを、対応のラジカル陽イオンに還元させながら、Eu(II)をEu(III)に酸化させることにより、セルを横切る電圧の循環的適用において、首尾よく着色および脱色が繰り返された。
【0159】
[実施例12]
二官能性酸化還元染料の合成およびECデバイスでの使用方法。アセトニトリル(20mL)中の1−ブロモ−2−エチルヘキサン(1.2g)および4,4’−ビピリジン(1g)の混合物を、24時間、封鎖管で130℃に加熱して、精製後に4−(2−エチルヘキシル)−4,4’−ビピリジンブロミド(2g)を得た。4−(2−エチルヘキシル)−4,4’−ビピリジンブロミド(0.5g)、水酸化ナトリウム(40mg)、および1−ブロモ酢酸(200mg)の水性溶液を、12時間、還流し、その後、リチウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(500mg)を添加し、そして白色沈殿を形成した。白色沈殿4−(2−エチルヘキシル)−4’−メチレンカルボキシレート−4,4’−ビオローゲン・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを濾過し、そして乾燥させた(収量:620mg)。4−(2−エチルヘキシル)−4’−メチレンカルボキシレート−4,4’−ビオローゲン ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは、構造式
【0160】
【化26】

【0161】
を有し、そしてECデバイスに使用した。4−(2−エチルヘキシル)−4’−メチレンカルボキシレート −4,4’−ビオローゲン・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(602mg)を、(II)ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(518mg)と混合し、溶融し、そして15時間溶融として維持して、構造式:
【0162】
【化27】

【0163】
を有する4−(2−エチルヘキシル)−4’−メチレンカルボキシレート(ユーロピウム(II))−4,4’−ビオローゲン・トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を形成した。N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMP、3mL)中の4−(2−エチルヘキシル)−4’−メチレンカルボキシレート(ユーロピウム(II))−4,4’−ビオローゲン トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)(600mg)を溶解させることによって、4−(2−エチルヘキシル)−4’−メチレンカルボキシレート(ユーロピウム(II))−4,4’−ビオローゲン トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を使用するエレクトロクロミックデバイスを製造した。生じた電解質溶液を、o−リングと2つのITO電極により形成されるチャンバに入れることによって、ECデバイスを製造した。デバイスは、首尾よく着色および脱色した。おそらく、ジエチルビオローゲンを、対応のラジカル陽イオンに還元させながら、Eu(II)をEu(III)に酸化させ、そしてジエチルビオローゲンをラジカル陽イオンに還元することにより機能するデバイスの電極への電圧の循環的適用において、デバイスは、首尾よく着色および脱色を繰り返した。
【0164】
[実施例13]
二官能性酸化還元染料の合成およびECデバイスでの使用方法。N,N’−ジエチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド溶媒(10mL)中の1当量の5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン(20mg混合マス)に混合することによって、電荷移動錯体を製造した。N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド溶媒(10mL)中のN,N’−ジエチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(20mg)、およびアセトン(10mL)中の5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン(20mg)の溶液も製造した。300nm〜900nmで測定した3つの溶液のスペクトルを、図13に示す。N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド中のN,N’−ジエチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、標識「ビオローゲン」である;アセトン中の5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンのスペクトルは、標識「フェナジン」である;そしてN−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド中のN,N’−ジエチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンの溶液のスペクトルは、標識「電荷移動錯体」である。「電荷移動錯体」スペクトルは、450nm、665nm、および730nmで新たな吸収バンドを表し、そしてそれは、構成要素N,N’−ジエチルビオローゲン・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドまたは5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンのスペクトルには存在せず、そして電荷移動錯体の形成を強力に示唆する。電荷移動錯体の形成を、複合体の結晶を製造し、そしてそれのX線結晶構造を得ることにより後に確認した。N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド溶媒中の0.05Mの前記電荷移動錯体、2−シアノ−3,3−ジフェニル−アクリル酸エチルエステル(5重量%)の電解質溶液を、空洞に充填することを除いて、実施例2に記載されるとおりECデバイスを製造した。
【0165】
低濃度(0.03M)の電荷移動錯体と、2%2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとを有するデバイスも構築し、そして70℃で繰返し循環(79,500サイクル)を含む一組の試験にかけ、そして明らかな作用の損失なしに2,000kJのUV光にさらした。N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド溶媒中の5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンとN,N’−ジエチルビオローゲン ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのあいだの電荷移動錯体のサイクリックボルタンモグラムは、図14に示されるとおり、1つのみの可逆性酸化を示す。
【0166】
[実施例14]
真空での溶媒の重量損失。プロピレンカーボネート(1g)を、1.5cm2の表面積を有する容器に入れ、そしてそれを、その後、1mmHgの真空下で、100℃まで加熱した。1時間後、雰囲気圧力を保持し、そしてバイアルを室温まで冷却した。試料を再秤量し、そして0.627gのプロピレンカーボネートが残った。イオン性液体N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMP)(1g)を、1.5cm2の表面積を有する容器に入れ、そしてそれを、その後、1mmHgの真空下で100℃まで加熱した。1時間後、大気圧力を保持し、そしてバイアルを室温まで冷却した。サンプルを、1mgまで正確なスケールを使用して再秤量し、そしてマスにおける変化は観察されなかった。
【0167】
[実施例15]
ビオローゲン部分とフェロセン部分を合せる多官能性染料を有するエレクトロクロミックデバイスの例。EC窓デバイスを、バックミラー形態で作製した。これは、長さ約25cm、そして幅約6cmであった。基板は40.5Ω/平方の抵抗を有する導電性酸化スズ被覆剤を有する商標サンゲート(Sungate(商標))300ガラス(ピーピージー インダストリー(Pittsburgh,PA)から得る)であった。電解質を、シールに残された空洞を通して充填、そしてそれを、充填操作の後にUV硬化シーラントで栓をした。電解質厚は100ミクロンであり、電解質溶媒は、イオン性液体(1−ブチル−3−イミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)およびPC混合物であった。電解質厚を、外辺部シール材料にスペーサービーズを添加することによって制御した;外辺部シール材料は、エポキシ樹脂である。電解質組成は、2.502gのイオン性液体、0.2378gのPCおよび0.0973gのビオローゲン部分とフェレセン部分を有する二官能性酸化還元染料であった。このデバイスを、0.9Vで着色させたとき、550nmでのその伝送は、79%から16%に減少した。このデバイスは、自動車工業協会(Society of Automotive Engineer)(Warrandale,PA)の試験J1960で説明される、UV強度条件を使用して1000kJの露光を使用して、その脱色状態で試験したときに、優れたUV安定性を示した。
【0168】
要約すると、本発明は、UV安定化する二官能性酸化還元染料、イオン性液体溶媒に溶解されたこれらの染料の電解質溶液、およびこれらの電解質溶液を使用する電気光学デバイスを含む。これらの溶液は、代表的には、−40℃未満のTgを有し、そして優れた耐久性および機能を有する電気光学デバイスを提供する。
【0169】
本発明の前述の説明は、例示と説明の目的のために示され、そして開示された正確な形態が網羅的でも、この形態に本発明が制限されることも意図せず、明らかに、多くの修飾および改変が、前記教示を考慮して可能である。この実施態様は、当業者が種々の実施態様で本発明を最大限に利用できるように、本発明の概念およびその実用化を最大限に説明するために、選択され、そして説明され、そして考えられる特定の用途に適するように種々の修飾を有する。本発明の範囲が、本明細書に添付した特許請求の範囲によって規定されることが意図される。
【0170】
明細書に組み込まれ、そしてその一部を形成する添付の図面は、本発明の実施態様を例証し、そして説明とともに、本発明の概念を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1a】本発明のエレクトロクロミックデバイスの実施態様の断面の端面図を示す。
【図1b】図1aのエレクトロクロミックデバイスの実施態様の透視図を示す。
【図2】図2は、エレクトロクロミック的に活性な被覆剤を含む本発明のエレクトロクロミックデバイスの実施態様の断面の端面図を示す。
【図3】図3は、エレクトロクロミック的に活性な被覆剤およびイオン選択輸送層を含む本発明のエレクトロクロミックデバイスの実施態様の断面の端面図を示す。
【図4】図4は、2つのエレクトロクロミック的に活性な被覆剤を含む本発明のエレクトロクロミックデバイスの実施態様の断面の端面図を示す。
【図5】図5a〜cは、真空充填工程の概略図を示す。
【図6】図6は、いくつかの溶媒の吸収スペクトルを示す。
【図7】図7は、着色および脱色状態にある電解質中に酸化還元染料を含むエレクトロクロミックデバイスの透過スペクトルを示す。
【図8】図8は、電解質中に酸化還元染料を含むエレクトロクロミックデバイスの反応速度論追跡を示す。
【図9】図9は、着色および脱色状態にある酸化タングステンの層を含むエレクトロクロミックデバイスの透過スペクトルを示す。
【図10】図10は、本発明の実施態様の母線のあいだの距離を測定する方法を示す。
【図11】図11は、イオン性液体およびイオン性液体と非イオン性液体の溶液のTgを測定するために使用されるデータのグラフを示す。
【図12】図12は、イオン性液体およびイオン性液体と非イオン性液体の溶液のTgを測定するために使用されるデータの別のグラフを示す。
【図13】図13は、電荷移動錯体および個々の成分の吸収スペクトルを示す。
【図14】図14は、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド中の5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンとN,N’−ジエチルビオローゲンビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとのあいだの電荷移動錯体の環状ボルタンモグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体溶媒中に溶解した少なくとも1つの下記構造式で示される二官能性酸化還元染料を含有する電解質溶液:
【化1】

(式中、mおよびnは0、R12は−CH2−、R14はメチル基、MeはFe、
AおよびBは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)、あるいは、式
Cat1−An1
または、式
Cat1−架橋1−An1
または、式
Cat1−架橋1−An1−架橋2−Cat2
または、式
An2−架橋2−Cat1−架橋1−An1
(式中、Cat1−An1が電荷移動錯体を示す;式中、Cat1およびCat2が、独立して、構造式
【化2】

(式中、R17およびR18はメチル基またはエチル基を、R26〜R33は水素原子を、Z1は直接結合子を、C-およびD-はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)を示す)そしてAn1およびAn2は独立して、構造式:
【化3】

(式中、R37〜R40はメチル基を、R44は水素原子を示す)か、または構造式
【化4】

(式中、R50は水素原子、E3は−NR51を、R41およびR51はメチル基を示す))。
【請求項2】
イオン性液体溶媒中に溶解した少なくとも1つの下記構造式で示される二官能性酸化還元染料を含有する電解質溶液:
[Cat1][M]
(式中、Mはユーロピウム(II)を含む金属塩を示す;
式中Cat1は、構造式
【化5】

(式中、R17はエチル基またはエチルヘキシル基を、R18はメチル基、エチル基またはメチレンカルボキシレート基を、R26〜R33は水素原子を、Z1は直接結合子を、C-およびD-はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)を示す)。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−53700(P2009−53700A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232311(P2008−232311)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【分割の表示】特願2004−516104(P2004−516104)の分割
【原出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503278245)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】