説明

イオン性液体組成物、イオン伝導性材料及び電解液材料

【課題】 優れた耐熱性を有し、イオン性液体の劣化による着色を充分に抑制することができるイオン性液体組成物、並びに、このような組成物を含むイオン伝導性材料及び電解液材料を提供する。
【解決手段】 イオン性液体と、有機化合物とを含んでなるイオン性液体組成物であって、上記有機化合物は、特定構造を有するイオン性液体組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性液体組成物、イオン伝導性材料及び電解液材料に関する。より詳しくは、電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なイオン性液体組成物、並びに、このような組成物を含むイオン伝導性材料及び電解液材料に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン性液体は、イオン伝導による各種の電池等に広く用いられているものであり、例えば、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに用いられている。これらでは、一般に、一対の電極とその間を満たすイオン伝導体とから電池が構成されることになる。イオン伝導体としては、通常、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に、過塩素酸リチウム、LiPF、LiBF、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、フタル酸テトラメチルアンモニウム等の電解質を溶解した電解液が使用されており、電解質が溶解することによって、カチオンとアニオンとに解離して電解液中をイオン伝導することとなる。また、固体状態でイオン伝導することができる固体電解質もイオン伝導体として使用されている。
【0003】
しかしながら、このような電気化学テバイスを構成する電解液においては、有機溶媒が揮発しやすく引火点が低いという点や、漏液が発生し易く、長期間の信頼性に欠けるという点において、これらを改善することができる材料が求められている。そこで、近年、種々の材料が検討されているが、その特性において充分なものとはいえず、イオン伝導性や熱安定性に更に優れた材料の開発が要望されている。
なお、本発明は従来技術にはない新規な技術を伴うものであり、本発明に関係する先行技術文献情報は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの詳細な検討により、イオン性液体は、熱によって、分解、環化等の副反応が起こり、着色を呈することが判明したが、このようなイオン性液体の劣化による着色を抑制するために、添加剤により耐熱性向上の検討を行った。すなわち、本発明は、優れた耐熱性を有し、イオン性液体の劣化による着色を充分に抑制することができるイオン性液体組成物、並びに、このような組成物を含むイオン伝導性材料及び電解液材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、イオン性液体を含有する組成物について詳細な検討を行ったところ、不飽和結合や芳香環を含んだ構造を有する化合物や環状化合物が、イオン性液体による着色を抑制することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、このようなイオン性液体組成物からなるイオン伝導性材料や電解液材料が、イオン伝導体を構成する材料として特に好適なものとなることを見いだし、本発明に到達したものである。
なお、添加剤による有機溶媒の安定化は通常行われており、例えば、メチルメタクリレート(MMA)を安定化するために、MMAへヒドロキノンを添加する手法は広く知られているが、本発明のように、添加剤(有機化合物)によりイオン性液体を安定化する手法に関する先行技術文献情報は見当たらない。
【0006】
すなわち本発明は、イオン性液体と、有機化合物とを含んでなるイオン性液体組成物であって、上記有機化合物は、下記一般式(1)〜(6)で表される構造のうち少なくとも1つの構造を有するイオン性液体組成物である。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Xは、O又はSを表す。R及びRは、同一又は異なって、有機置換基を表し、これらのうち少なくとも1つは、不飽和結合及び/又は芳香環を有する有機置換基である。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Xは、N又はPを表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、有機置換基又はプロトンを表し、これらのうち少なくとも1つは、不飽和結合及び/又は芳香環を有する有機置換基である。また、R、R及びRが炭素鎖で繋がった飽和若しくは不飽和の環状構造又は複素環構造を形成していてもよい。)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Xは、C又はSiを表す。R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、有機置換基又はプロトンを表し、これらのうち少なくとも1つは、不飽和結合及び/又は芳香環を有する有機置換基である。また、R、R及びRが炭素鎖で繋がった飽和若しくは不飽和の環状構造又は複素環構造を形成していてもよい。)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、有機置換基を表し、これらのうち2以上が飽和又は不飽和の炭素鎖によって結合していてもよい。
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、X及びYは、同一又は異なって、4〜6員環の芳香環状構造を表し、その環上に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。また、X及びYは、飽和又は不飽和の共有結合で繋がれており、その結合中に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。更に、X及びYは、ハロゲン元素、水酸基、酸及びアミンのうち少なくとも1種で置換されていてもよい。また、X及びYの間に、更に、X及び/又はYで表される構造を有していてもよい。)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、X、Y及びZは、同一又は異なって、3〜8員環の飽和環状構造を表し、その環上に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。また、X、Y及びZは、飽和又は不飽和の共有結合で繋がれており、その結合中に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。更に、X、Y及びZは、ハロゲン元素、水酸基、酸及びアミンのうち少なくとも1種で置換されていてもよい。また、X、Y及びZの間に、更に、X、Y及び/又はZで表される構造を有していてもよい。)
以下に本発明を詳述する。
【0019】
本発明のイオン性液体組成物は、イオン性液体と有機化合物とを含むものである。イオン性液体とは、カチオンとアニオンにより構成される化合物よりなるものであり、1種又は2種以上を使用することができる。このようなイオン性液体としては、室温(25℃)において、一定体積をもち、かつ流動性を有する液体であることが好ましく、具体的には、室温(25℃)で300mPa・s以下の液体であることが好ましい。より好ましくは、200mPa・s以下、更に好ましくは、100mPa・s以下の液体である。
なお、上記イオン性液体の本発明のイオン性液体組成物中の含有量としては、イオン性液体組成物が後述する各種特性値を満たすように適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、イオン性液体組成物100質量%に対して、5質量%以上であることが好適である。より好ましくは、20質量%以上である。
【0020】
上記イオン性液体組成物において、有機化合物は、上記一般式(1)〜(6)で表される構造のうち少なくとも1つの構造を有する形態のものであり、1種又は2種以上を使用することができる。本発明においては、このような有機化合物を用いることにより、イオン性液体の熱劣化が充分に抑制され、充分な耐熱性を有するイオン性液体組成物が得られることとなる。
上記一般式(1)〜(4)において、有機置換基とは、基や化合物を構成する基本構造に結合している有機基を意味し、例えば、炭素数2〜18の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数2〜20のアルコキシアルキレン基、炭素数2〜8のハロゲン化(例えば、塩素化、臭素化又はフッ素化)アルキレン基、末端水酸基を除くポリエチレングリコール骨格、末端水酸基を除くポリプロピレングリコール骨格、末端水酸基を除くポリブチレングリコール骨格、アリール基等であることが好適である。
上記一般式(5)において、X及びYとしては、例えば、下記構造等が好適である。また、ハロゲン元素としては特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、I等が好ましい。
【0021】
【化7】

【0022】
上記一般式(6)において、X、Y及びZとしては、例えば、下記構造等が好適であり、また、式中のA、B、C、D及びEを介して下記構造単位が繋がっていてもよい。また、ハロゲン元素としては、上述したとおりである。
【0023】
【化8】

【0024】
上記式中、A、B、C、D及びEは、同一若しくは異なって、元素数1〜10個のH、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有する飽和又は不飽和構造である。
【0025】
上記一般式(1)で表される構造を有する有機化合物としては、例えば、ジフェニルエーテル、ピコリン、ジフェニルチオエーテル、フェノール、チオフェノール等が好適である。
上記一般式(2)で表される構造を有する有機化合物としては、例えば、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、N−メチル−p−アニシジン、4,5−ジメチルチアゾール、インドール、インドリン、N−メチル−4−ニトロアニリン、4−シアノピリジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、4−メトキシピリジン、4−フェニルピリジン、4−フェニルピリジンN−オキシド、ジフェニルアミン、N−メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アニリン、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフィン、トリフェニルボラン等が好適であり、中でも、4,5−ジメチルチアゾール、インドール、N−メチル−4−ニトロアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、m−アニシジン、ジフェニルアミンが好ましい。より好ましくは、o−アニシジン、ジメチルアニリン、4−フェニルピリジンN−オキシド、N−メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミンである。
【0026】
上記一般式(3)で表される構造を有する有機化合物としては、例えば、トリフェニルメタン、テトラフェニルメタン、トリフェニルシラン等が好適であり、中でも、トリフェニルメタンが好ましい。
上記一般式(4)で表される構造を有する有機化合物としては、例えば、1,10−フェナントロリン、1,2,3−トリフェニルベンゼン、1,3,5−トリフェニルベンゼン1,1’−ビ−2−ナフトール、2,2’−ビフェノール等が好適であり、中でも、1,10−フェナントロリン、1,3,5−トリフェニルベンゼンが好ましい。
上記一般式(5)で表される構造を有する有機化合物としては、例えば、フタロシアニン、カリックス[n]アレーン(nは、4〜10の数を表す。)、チアカリックス[n]アレーン(nは、4〜10の数を表す。)、ポリチオフェン、ポルフィリン及びその誘導体等が好適である。
上記一般式(6)で表される構造を有する有機化合物としては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、サイクリックアデノシン三リン酸、ククルピット及びその誘導体等が好適である。
なお、以下に、フタロシアニン、カリックス[n]アレーン及びα−シクロデキストリンの構造を示す。
【0027】
【化9】

【0028】
上記イオン性液体組成物において、上記有機化合物の含有量としては、イオン性液体100重量部に対して、下限が0.01重量部、上限が10重量部であることが好適である。0.01重量部未満であると、充分な耐熱性を発揮できないおそれがあり、高温環境下における着色を充分に低減することができないおそれがある。また、10重量部を超えると、イオン伝導性を充分に向上することができないおそれがある。より好ましい下限は0.05重量部、上限は5重量部であり、更に好ましい下限は0.1重量部、上限は2重量部である。
【0029】
本発明のイオン性液体組成物としては、有機溶媒を含んでなることが好適であり、これにより、イオン伝導度がより向上することとなる。有機溶媒としては、例えば、プロトン性極性溶媒、非プロトン性溶媒及びこれらの混合物を用いることが好ましく、1種又は2種以上を使用することができる。プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール類(エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)等が挙げられる。また、非プロトン性の極性溶媒としては、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N─ジメチルホルムアミド、N─エチルホルムアミド、N,N─ジエチルホルムアミド、N─メチルアセトアミド、N,N─ジメチルアセトアミド、N─エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン等)、スルホラン系(スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等)、環状アミド系(N─メチル─2─ピロリドン等)、カーボネイト類(エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、イソブチレンカーボネイト等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等)〕等が挙げられる。
【0030】
上記有機溶媒の存在量としては、イオン性液体組成物100質量%に対して、下限が1質量%、上限が99質量%であることが好適である。1質量%未満であると、イオン伝導度を充分に向上させることができないおそれがあり、99質量%を超えると、溶媒の揮発等により安定性が充分に向上しないおそれがある。上限値としては、90質量%であることがより好ましく、更に好ましくは、80質量%である。
【0031】
本発明のイオン性液体組成物としてはまた、下記一般式(7);
【0032】
【化10】

【0033】
(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。M及びMは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、同一又は異なって、0以上の整数である。)で表されるアニオンを含んでなることが好適である。このようなアニオンを有することにより、イオン伝導性により優れるとともに、電極等への腐食性が充分に抑制され、経時的に更に安定な材料とすることが可能となる。なお、このアニオンは、本発明のイオン性液体組成物に含まれるイオン性液体を構成するアニオンであってもよいし、それ以外の化合物を構成するアニオンであってもよい。
【0034】
上記一般式(7)において、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表すが、C、N又はSが好ましい。より好ましくは、C又はNであり、更に好ましくは、Cである。M及びMは、同一又は異なって、有機連結基を表すが、それぞれ独立に、−S−、−O−、−SO−及び−CO−からなる群より選択される少なくとも1種の連結基であることが好適である。より好ましくは、−SO−、−CO−である。また、Qは、有機基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、C(2p+1−q)、OC(2p+1−q)、SO(2p+1−q)、CO(2p+1−q)、SO5−r、NO(式中、1≦p≦6、0<q≦13、0<r≦5である)等が好適である。より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、C(2p+1−q)、SO(2p+1−q)である。更に、aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数であるが、a、d及びeは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、Xが硫黄原子の場合、a=1、d=0、e=0となり、Xが窒素原子の場合、(1)a=2、d=0、e=0、(2)a=1、d=1、e=0、又は、(3)a=1、d=0、e=1のいずれかとなる。なお、b=0、d=0が好ましい。
【0035】
上記一般式(7)で表されるアニオンとしては、一般式(7)においてeが0である下記一般式(8)で表されるアニオンであることが好ましい。中でも、ジシアノアミドアニオン(DCA)、チオシアネートアニオン、トリシアノメチドアニオン(TCM)、シアノオキシアニオン(CYO)等が、フッ素を含まず、電極等の耐腐食性に優れるため好ましい。更に好ましくは、トリシアノメチドアニオンである。また、下記一般式(9)や(10)で表される化合物等も好ましいアニオンである。
【0036】
【化11】

【0037】
上記イオン性液体組成物においてはまた、本発明の作用効果を奏する限り、その他のアニオンを含有していてもよく、例えば、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン(TFSI)、テトラフルオロホウ酸アニオン、酢酸や安息香酸等のモノカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、コハク酸アニオン等のジカルボン酸アニオン、メチル硫酸、エチル硫酸等の硫酸エステルアニオン等を含有することができる。また、含フッ素無機イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロニオブ酸イオン、ヘキサフルオロタンタル酸イオン等の含フッ素無機イオン;フタル酸水素イオン、マレイン酸水素イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、アジピン酸イオン等のカルボン酸イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、パーフルオロブタンスルホン酸等のスルホン酸イオン;ホウ酸イオン、リン酸イオン等の無機オキソ酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、パーフルオロアルキルフルオロボレートイオン、パーフルオロアルキルフルオロホスフェートイオン、ボロジカテコレート、ボロジグリコレート、ボロジサリチレート、ボロテトラキス(トリフルオロアセテート)、ビス(オキサラト)ボレート等の四配位ホウ酸イオン等の1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0038】
上記アニオンの存在量としては、イオン性液体組成物100質量%に対して、アニオンの由来となる化合物の含有量の下限が1質量%、上限が99.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、下限が5質量%、上限が95質量%であり、更に好ましくは、下限が10質量%、上限が90質量%である。
【0039】
本発明のイオン性液体組成物はまた、イオン性液体を構成するカチオンを含有することとなるが、それ以外の化合物を構成するカチオンを含有していてもよい。このような本発明のイオン性液体組成物に含有されることとなるカチオンとしては特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(11);
【0040】
【化12】

【0041】
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。sは、3、4又は5の整数であり、元素Lの価数によって決まる。)で表されるオニウムカチオンが好適である。なお、オニウムカチオンとは、O、N、S、P等の非金属原子又は半金属原子のカチオンを有する有機基を意味する。
上記一般式(11)で表されるカチオンとしては、下記一般式;
【0042】
【化13】

【0043】
(式中、Rは、上記一般式(11)と同様である。)で表されるものが好ましく、これらのオニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、下記(a)〜(d)のオニウムカチオンがより好ましい。
(a)下記一般式で表される10種類の複素環オニウムカチオン。
【0044】
【化14】

【0045】
(b)下記一般式で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
【0046】
【化15】

【0047】
(c)下記一般式で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
【0048】
【化16】

【0049】
上記一般式中、R〜R12は、同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
(d)Rが、C〜Cのアルキル基である鎖状オニウムカチオン。
これらのオニウムカチオンの中でも、上記一般式(11)におけるLが窒素原子であるものがより好ましい。更に好ましくは、下記一般式;
【0050】
【化17】

【0051】
(式中、R〜R12は、上述したとおりである(同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。)。)で表される4種類のオニウムカチオンや、トリエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチルメトキシエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム等の鎖状オニウムカチオン等である。特に好ましくは、第四級アンモニウムカチオンであり、第四級アンモニウムカチオンを含んでなるイオン性液体組成物もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記R〜R12の有機基としては、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基や、直鎖、分岐鎖又は環状で、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基、炭化フッ素基等であることが好適である。より好ましくは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭化フッ素基である。
【0052】
このようなアニオンと上述のようなオニウムカチオンとから構成される化合物は、常温で溶融した状態を安定に保つ常温溶融塩となり、このような溶融塩を含む本発明のイオン性液体組成物は、長期間に耐える電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。なお、溶融塩とは、室温から80℃の温度範囲において液体状態を安定に保つことができるものである。
【0053】
本発明のイオン性液体組成物としてはまた、共役二重結合を有する窒素複素環カチオンを含んでなることが好ましい。このような共役二重結合を有する窒素複素環カチオンとしては、上記(a)の10種類の複素環オニウムカチオンや、上記(b)の5種類の不飽和オニウムカチオン等のうち、共役二重結合を有し、上記一般式(11)におけるLが窒素原子であるもの等が好適である。
上記イオン性液体組成物におけるカチオンの存在量としては、イオン性液体組成物中に存在するアニオン1molに対し、下限が0.5mol、上限が2.0molであることが好ましい。より好ましくは、下限が0.8mol、上限が1.2molである。
【0054】
本発明のイオン性液体組成物としては更に、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなるものであることが好適である。このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる本発明のイオン性液体組成物は、電解質を含有するものとなり、電気化学デバイスの電解液の材料として好適なものとなる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
【0055】
上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩としては、上述のようなアニオンを必須とする化合物であってもよいし、それ以外の化合物であってもよい。
上記アニオンを必須とする化合物である場合には、上記一般式(7)で表されるアニオンのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることが好ましく、リチウム塩であることがより好ましい。このようなリチウム塩としては、上述した好ましいアニオンのリチウム塩の他にも、LiC(CN)、LiSi(CN)、LiB(CN)、LiAl(CN)、LiP(CN)、LiP(CN)、LiAs(CN)、LiOCN、LiSCN等が好適である。
【0056】
上記アニオンを必須とする化合物以外の化合物である場合には、電解液中や高分子固体電解質中での解離定数が大きい電解質塩であることが好ましく、例えば、LiCFSO、NaCFSO、KCFSO等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF、NaPF、KPF等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO、NaClO等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF、NaBF等のテトラフロロ硼酸塩;LiAsF、LiI、NaI、NaAsF、KI等のアルカリ金属塩が好適である。これらの中でも、溶解性やイオン伝導度の点から、LiPF、LiBF、LiAsF、パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0057】
上記イオン性液体組成物としては、その他の電解質塩を含有していてもよく、例えば、過塩素酸テトラエチルアンモニウム等の過塩素酸の四級アンモニウム塩;(CNBF等のテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(CNPF等の四級アンモニウム塩;(CHP・BF、(CP・BF等の四級ホスホニウム塩等が好適であり、溶解性やイオン伝導度の点から、四級アンモニウム塩が好適である。
上記電解質塩の存在量としては、イオン性液体組成物100質量%に対して、下限が0.1質量%、上限が50質量%であることが好適である。0.1質量%未満であると、イオンの絶対量が充分なものとはならず、イオン伝導度が小さくなるおそれがあり、50質量%を超えると、イオンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましい上限は30質量%である。
【0058】
本発明のイオン性液体組成物としてはまた、プロトンを含むことにより、水素電池を構成するイオン伝導体の材料として好適に用いることができるものとなる。本発明においては、解離してプロトンを発生することができる化合物を含むことにより、イオン性液体組成物中にプロトンが存在することとなる。
上記プロトンの存在量としては、イオン性液体組成物に対して、下限が0.01mol/L、上限が10mol/Lであることが好ましい。0.01mol/L未満であると、プロトンの絶対量が充分なものとはならず、プロトン伝導度が小さくなるおそれがあり、10mol/Lを超えると、プロトンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましい上限は5mol/Lである。
【0059】
本発明のイオン性液体組成物としてはまた、重合体を含むことにより、固体化して高分子固体電解質として好適に用いることができるものとなる。重合体としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニル系重合体;ポリオキシメチレン:ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリフォスファゼン類、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート系重合体、アイオネン系重合体の1種又は2種以上が好適である。
上記イオン性液体組成物を高分子固体電解質とする場合、重合体の存在量としては、イオン性液体組成物100重量部に対して、下限が0.1重量部、上限が5000重量部であることが好ましい。0.1重量部未満であると、固体化の効果を充分に得られないおそれがあり、5000重量部を超えると、イオン伝導度が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、下限が1重量部、上限が1000重量部である。
【0060】
本発明のイオン性液体組成物は、本発明の作用効果を奏する限り、上記以外の構成要素を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、各種無機酸化物微粒子を含むことにより、複合電解質としても使用でき、これにより、強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機酸化物と上述した重合体間に微細な空孔が生じることになり、特に溶媒を添加した場合には空孔内にフリーの電解液が複合電解質内に分散することになり、強度改善効果を損ねることなく、逆にイオン伝導度、移動度を増加させることもできる。
上記無機酸化物微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なものが好適であり、また、イオン伝導性を有するものがより好ましい。このような微粒子としては、α、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト等のイオン伝導性又は非電導性セラミックス微粒子が好適である。
【0061】
上記無機酸化物微粒子の比表面積としては、高分子固体電解質中の電解質含有液の保有量を多くし、イオン伝導性や移動度を増加させるという点から、できるだけ大きいことが好ましく、例えば、BET法で5m/g以上であることが好適であり、50m/g以上がより好ましい。このような無機酸化物微粒子の結晶粒子径としては、上記イオン性液体組成物における他の構成要素と混合できるものであればよいが、例えば、大きさ(平均結晶粒径)としては、下限値が0.01μm、上限値が20μmであることが好ましい。より好ましい下限値は0.01μm、上限値は2μmである。
上記無機酸化物微粒子の形状としては、球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒、棒状等の種々の形状を有するものを用いることができる。
上記無機酸化物微粒子の添加量としては、イオン性液体組成物100質量%に対して、上限値が50質量%であることが好ましい。50質量%を超えると、逆にイオン伝導性が充分とはならなかったり、成膜しづらくなったりするおそれがある。より好ましくは、30質量%である。また、下限値は0.1質量%であることが好適である。
また、その他、無水酢酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物やその酸化合物、トリエチルアミン、メチルイミダゾール等の塩基性化合物を添加してもよい。添加量としては、イオン性液体組成物100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01質量%以上、20質量%以下である。
【0062】
本発明のイオン性液体組成物にはまた、上述した塩や溶媒の他にも種々の添加剤を含有させてもよい。添加剤を加える目的は多岐にわたり、電気伝導率の向上、熱安定性の向上、水和や溶解による電極劣化の抑制、ガス発生の抑制、耐電圧の向上、濡れ性の改善等を挙げることができる。このような添加剤としては、例えば、p−ニトロフェノール、m−ニトロアセトフェノン、p−ニトロ安息香酸等のニトロ化合物、リン酸ジブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジオクチル、オクチルホスホン酸モノオクチル、リン酸等のリン化合物、ホウ酸又はホウ酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリン、マンニトール、ポリビニルアルコール等)や多糖類との錯化合物等のホウ素化合物、ニトロソ化合物、尿素化合物、ヒ素化合物、チタン化合物、ケイ酸化合物、アルミン酸化合物、硝酸及び亜硝酸化合物、2−ヒドロキシ−N−メチル安息香酸、ジ(トリ)ヒドロキシ安息香酸等の安息香酸類、グルコン酸、重クロム酸、ソルビン酸、ジカルボン酸、EDTA、フルオロカルボン酸、ピクリン酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘテロポリ酸(タングステン酸、モリブデン酸)、ゲンチシン酸、ボロジゲンチシン酸、サリチル酸、N−アミノサリチル酸、ボロジプロトカクテ酸、ボロジピロカテコール、バモン酸、ボン酸、ボロジレゾルシル酸、レゾルシル酸、ボロジプロトカクエル酸、グルタル酸、ジチオカルバミン酸等の酸類、そのエステル、そのアミド及びその塩、シランカップリング剤、シリカ、アミノシリケート等のケイ素化合物、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン化合物、L−アミノ酸類、ベンゾール、多価フェノール、8−オキシキノリン、ハイドロキノン、N−メチルピロカテコール、キノリンおよびチオアニソール、チオクレゾール、チオ安息香酸等の硫黄化合物、ソルビトール、L−ヒスチジン等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記添加剤の含有量は特に限定されないが、例えば、イオン性液体組成物100質量%に対して、下限が0.1質量%、上限が20質量%であることが好ましい。より好ましくは、下限が0.5質量%、上限が10質量%である。
【0063】
本発明のイオン性液体組成物としては、0℃におけるイオン伝導度が0.5mS/cm以上であることが好ましい。0.5mS/cm未満であると、本発明のイオン性液体組成物を用いてなるイオン伝導体が、優れたイオン伝導度を保って経時的に安定に機能することが充分にはできなくなるおそれがある。より好ましくは、2.0mS/cm以上である。
上記イオン伝導度の測定方法としては、SUS電極を用いたインピーダンスアナライザーHP4294A(商品名、東陽テクニカ社製)を用いて行う複素インピーダンス法により測定する方法が好適である。
【0064】
上記イオン性液体組成物の粘度としては、200mPa・s以下であることが好ましい。粘度が200mPa・sを超えると、イオン伝導度が充分に向上されたものとはならないおそれがある。より好ましくは、100mPa・s以下であり、更に好ましくは、50Pa・s以下であり、最も好ましくは10Pa・s以下ある。
上記粘度の測定方法としては特に限定されないが、例えば、25℃において、TV−20形粘度計 コープレートタイプ(トキメック社製)を用いて測定する方法が好適である。
【0065】
本発明のイオン性液体組成物の製造方法としては特に限定されないが、上記一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性液体を誘導する工程を含んでなる製造方法が好適である。これにより、イオン性液体を溶融塩を構成する塩として好適な形態とすることが可能となる。このような製造方法としては、ハロゲン化物を用いて上記一般式(7)で表されるアニオン構造を有する化合物からイオン性物質を誘導する工程を含んでなることが好ましく、例えば、上記一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物又は炭酸化合物とを反応させる工程を含んでなり、該ハロゲン化物又は炭酸化合物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものであることが好適である。これらの製造原料は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物としては、下記一般式(12);
【0066】
【化18】

【0067】
で表される化合物であることが好ましく、この場合において、一般式(12)中のAとしては、水素原子、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子が挙げられ、また、アンモニウム基等の金属元素を有しない基が挙げられるが、イオン性物質の不純物含量を抑制する点から、金属元素を有さない基であることが好ましい。また、一般式(12)において、X、M、M及びQや、a、b、c、d及びeは、上述したとおりである。
【0068】
上記製造方法としては、上記一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程において用いられる一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物を製造する工程を含んでもよく、この場合には、上述したような一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物とハロゲン化物とを反応させることにより、一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物を製造することが好ましい。これにより、イオン性物質における一般式(7)で表されるアニオンの構造をイオン性液体組成物に要求される性能等に応じて適宜設定することが可能となり、この場合には、一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物を製造する工程における製造原料である該アニオンを有する化合物がもつアニオンと、イオン性物質における一般式(7)で表されるアニオンとは同一のものではないこととなる。
【0069】
上記工程において、上記一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程における化学反応式の1形態を下記式(1)に示し、一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物を製造する工程における化学反応式の1形態を下記式(2)に示す。
【0070】
【化19】

【0071】
上記工程において、一般式(7)で表されるアニオンを有する化合物のモル数をaとし、ハロゲン化物のモル数をbとすると、反応におけるモル比(a/b)としては、100/1〜0.1/1であることが好ましい。アニオンを有する化合物が0.1未満であると、ハロゲン化物が過剰となりすぎて効率的に生成物を得られないおそれがあり、また、イオン性液体組成物中にハロゲンが混入し、電極等を被毒させるおそれがある。100を超えると、アニオンを有する化合物が過剰となりすぎて更に収率の向上は期待できないおそれがあり、また、金属イオンがイオン性液体組成物中に混入して電気化学デバイスの性能を低下させるおそれがある。より好ましくは、10/1〜0.5/1である。
【0072】
上記工程の反応条件としては、製造原料や他の反応条件等により適宜設定することができるが、反応温度としては、−20〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、10〜60℃が更に好ましい。反応圧力としては、1×10〜1×10Paが好ましく、1×10〜1×10Paがより好ましく、1×10〜1×10Paが更に好ましい。反応時間としては、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が更に好ましい。
【0073】
上記工程においては、通常では反応溶媒を用いることとなるが、反応溶媒としては、(1)ヘキサン、オクタンなど脂肪族炭化水素系;(2)シクロヘキサンなど脂環式飽和炭化水素系;(3)シクロヘキセンなど脂環式不飽和炭化水素系;(4)ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族炭化水素系;(5)アセトン、メチエチルケトンなどケトン類;(6)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどエステル類;(7)ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などハロゲン化炭化水素類;(8)ジエチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランなどエーテル類、(9)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどアルキレングリコールのエーテル類;(10)メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどアルコール類;(11)ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどアミド類;(12)ジメチルスルホキシドなどスルホン酸エステル類;(13)ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど炭酸エステル類;(14)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど脂環式炭酸エステル類;(15)アセトニトリル等のニトリル類;(16)水等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、反応溶媒として、イオン性液体を使用してもよい。この中でも、(5)、(6)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)が好適である。より好ましくは、(5)、(10)、(15)、(16)である。
【0074】
上記イオン性液体組成物の製造方法においては、上記工程の後に、沈殿物等のろ過、溶媒の除去、脱水、減圧乾燥等の処理を行ってもよく、例えば、生成した沈殿物をろ過し、イオン性物質を含んだ溶媒から真空等の条件下で溶媒を除去した後、ジクロロメタン等の溶剤に溶解することで洗浄し、MgSO等の脱水効果を有する物質を添加して脱水し、溶媒除去後に減圧乾燥することでイオン性物質を必須とするオン性液体組成物を得てもよい。溶剤による洗浄処理の回数としては、適宜設定すればよく、溶剤としては、ジクロロメタン以外に、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、水等が好適である。また、脱水効果を有する物質としては、MgSO以外に、モレキュラーシーブ、CaCl、CaO、CaSO、KCO、活性アルミナ、シリカゲル等が好適であり、添加量は、生成物や溶剤の種類等により適宜設定すればよい。
【0075】
本発明のイオン性物質含有組成物は、上述したような特性を発揮することができるため、様々な用途に好適に適用することが可能であり、中でも、イオン伝導性材料又は電解液材料として、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として特に好適なものである。すなわち、上記イオン性液体組成物からなるイオン伝導性材料又は電解液材料もまた、本発明の1つであり、このような本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料を用いてなるリチウム二次電池、電解コンデンサ又は電気二重層キャパシタは、本発明の好適な実施形態である。なお、上記イオン性液体組成物としては、イオン伝導性材料又は電解液材料として用いることが好ましいが、イオン伝導性材料又は電解液材料以外の材料に用いることも可能である。イオン導電性材料又は電解液材料以外の用途としては、反応溶媒、洗浄溶媒、熱媒、冷媒、シール材、生体材料、潤滑材が好適である。また、揮発しないため高真空化でも安定な液体として存在することから、宇宙空間でも使用可能である。
ここで、イオン伝導性材料とは、電解液又は電解質用材料であって、電解液を構成する溶媒及び/又は電解質の材料(イオン伝導体用材料)として、また、固体電解質の材料(電解質用材料)として電気化学デバイスのイオン伝導体に好適に用いることができるものであり、電解液材料とは、電気化学デバイスの電解液を構成する材料である媒体(溶媒)及び/又は電解質として好適に用いることができるものである。
【0076】
上記イオン伝導性材料又は電解液材料を用いて電気化学デバイスを構成する場合、電気化学デバイスの好ましい形態としては、基本構成要素として、イオン伝導体、負極、正極、集電体、セパレータ及び容器を有するものである。
上記イオン伝導体としては、電解質と有機溶媒又は重合体との混合物が好適である。有機溶媒を用いれば、一般にこのイオン伝導体は電解液と呼ばれ、重合体を用いれば、高分子固体電解質と呼ばれるものとなる。高分子固体電解質には可塑剤として有機溶媒を含有するものも含まれる。本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料は、このようなイオン伝導体において、電解液における電解質や有機溶媒の代替として、また、高分子固体電解質として好適に適用することができ、本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料をイオン伝導体の材料として用いてなる電気化学デバイスでは、これらのうちの少なくとも1つが、本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料により構成されることになる。これらの中でも、電解液における有機溶媒の代替、又は、高分子固体電解質として用いることが好ましい。
【0077】
上記有機溶媒としては、本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料を溶解できる非プロトン性の溶媒であればよく、上述した有機溶媒と同様のものが好適である。ただし、2種類以上の混合溶媒にする場合、電解質がLiイオンを含むものである場合は、これらの有機溶媒のうち誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより電解液を調製することが好ましい。特にリチウム塩を用いる場合には、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート等の誘電率が10以下の非プロトン性溶媒に対する溶解度が低く単独では充分なイオン伝導度が得られず、また、逆に誘電率20以上の非プロトン性溶媒単独では溶解度は高いもののその粘度も高いため、イオンが移動しにくくなりやはり充分なイオン伝導度が得られないことになる。これらを混合すれば、適当な溶解度と移動度を確保することができ充分なイオン伝導度を得ることができる。
【0078】
上記電解質を溶解する重合体としては、上述した重合体1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、ポリエチレンオキシドを主鎖又は側鎖にもつ重合体又は共重合体、ポリビニリデンフロライドの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステル重合体、ポリアクリロニトリルが好適である。これらの重合体に可塑剤を加える場合は、上記の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0079】
上記イオン伝導体中における電解質濃度としては、0.01mol/dm以上が好ましく、また、飽和濃度以下が好ましい。0.01mol/dm未満であると、イオン伝導度が低いため好ましくない。より好ましくは、0.1mol/dm以上、また、1.5mol/dm以下である。
【0080】
上記負極材料としては、リチウム電池の場合、リチウム金属やリチウムと他の金属との合金が好適である。また、リチウムイオン電池の場合、重合体、有機物、ピッチ等を焼成して得られたカーボンや天然黒鉛、金属酸化物等のインターカレーションと呼ばれる現象を利用した材料が好適である。電気二重層キャパシタの場合、活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。
【0081】
上記正極材料としては、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn等のリチウム含有酸化物;TiO、V、MoO等の酸化物;TiS、FeS等の硫化物;ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子が好適である。電気二重層キャパシタの場合、活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。
【0082】
以下に、本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料を用いてなる(1)リチウム二次電池、(2)電解コンデンサ、及び、(3)電気二重層キャパシタについてより詳しく説明する。
(1)リチウム二次電池
リチウム二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ及び本発明の電解液材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されるものである。この場合、本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料には、電解質としてリチウム塩が含有されていることになる。このようなリチウム二次電池としては、水電解質以外のリチウム二次電池である非水電解質リチウム二次電池であることが好ましい。リチウム二次電池の一形態の断面模式図を図1に示す。このリチウム二次電池は、後述する負極活物質としてコークスを用い、正極活物質としてCoを含有する化合物を用いたものであるが、このようなリチウム二次電池おいて、充電時には、負極においてCLi→6C+Li+eの反応が起こり、負極表面で発生した電子(e)は、電解液中をイオン伝導して正極表面に移動し、正極表面では、CoO+Li+e→LiCoOの反応が起こり、負極から正極へ電流が流れることになる。放電時には、充電時の逆反応が起こり、正極から負極へ電流が流れることになる。このように、イオンによる化学反応により電気を蓄えたり、供給したりすることとなる。
【0083】
上記負極としては、負極活物質、負極用導電剤、負極用結着剤等を含む負極合剤を負極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。負極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記負極活物質としては、金属リチウム、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料等が好適である。上記リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料としては、金属リチウム;熱分解炭素;ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス;グラファイト;ガラス状炭素;フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したものである有機高分子化合物焼成体;炭素繊維;活性炭素等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアセン等のポリマー;Li4/3Ti5/3、TiS等のリチウム含有遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;アルカリ金属と合金化するAl、Pb、Sn、Bi、Si等の金属;アルカリ金属を格子間に挿入することのできる、AlSb、MgSi、NiSi等の立方晶系の金属間化合物や、Li3−fN(G:遷移金属)等のリチウム窒素化合物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる金属リチウムや炭素材料がより好ましい。
【0084】
上記負極用導電剤は、電子伝導性材料であればよく、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、銅、ニッケル等の金属粉末;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維がより好ましい。負極用導電剤の使用量としては、負極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。また、負極活物質は電子伝導性を有するため、負極用導電剤を用いなくてもよい。
【0085】
上記負極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルピロリドン及びその共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルピロリドン及びその共重合体がより好ましい。
【0086】
上記負極用集電体としては、電池の内部において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらの中でも、銅や銅を含む合金がより好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの負極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。負極用集電体の形状としては、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体等が好適である。集電体の厚さとしては、1〜500μmが好適である。
【0087】
上記正極としては、正極活物質、正極用導電剤、正極用結着剤等を含む正極合剤を正極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。正極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記正極活物質としては、金属Li、LiCoO 、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMn、LiMn2−y;MnO、V、Cr(g及びhは、1以上の整数)等のリチウムを含まない酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記Jは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBから選ばれた少なくとも1種の元素を表す。また、xは、0≦x≦1.2であり、yは、0≦y≦0.9であり、zは、2.0≦z≦2.3であり、xは、電池の充放電により増減することとなる。また、正極活物質としては、遷移金属カルコゲン化物、リチウムを含んでいてもよいバナジウム酸化物やニオブ酸化物、共役系ポリマーからなる有機導電性物質、シェブレル相化合物等を用いてもよい。正極活物質粒子の平均粒径としては、1〜30μmであることが好ましい。
【0088】
上記正極用導電剤としては、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であればよく、上述した負極用導電剤と同様のもの;アルミニウム、銀等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、ニッケル粉末がより好ましい。正極用導電剤の使用量としては、正極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。カーボンブラックやグラファイトを用いる場合には、正極活物質100重量部に対して2〜15重量部とすることが好ましい。
【0089】
上記正極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、上述した負極用結着剤におけるスチレンブタジエンゴム以外のものや、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0090】
上記正極用集電体としては、用いる正極活物質の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂、アルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金が好ましい。また、これらの正極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。正極用集電体の形状及び厚さとしては、上述した負極集電体と同様である。
【0091】
上記セパレータは、大きなイオン透過度と、所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜であることが好ましく、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を有するものであることが好ましい。材質としては、耐有機溶剤性と疎水性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等ポリオレフィン系ポリマーの多孔性合成樹脂フィルム、ポリプロピレン、フッ素化ポリオレフィン等の有機材料からなる織布もしくは不織布、ガラス繊維、無機材料からなる織布もしくは不織布等が好適である。セパレータが有する細孔の孔径としては、電極から脱離した正極活物質や負極活物質、結着剤、導電剤が透過しない範囲であることが好ましく、0.01〜1μmであることが好ましい。セパレータの厚さとしては、5〜300μm、であることが好ましく、より好ましくは、10〜50μmである。また、空隙率としては、30〜80%であることが好ましい。
また、セパレータの表面は予めコロナ放電処理、プラズマ放電処理、その他界面活性剤を用いた湿式処理により、その疎水性が低減するように改質しておくことが好ましい。これによりセパレータの表面及び空孔内部の濡れ性が向上し、電池の内部抵抗の増加を極力抑制することが可能となる。
【0092】
上記リチウム二次電池としては、ポリマー材料に、電解液を保持させたゲルを正極合剤又は負極合剤に含ませたり、電解液を保持するポリマー材料からなる多孔性のセパレータを正極又は負極と一体化することで構成されるものであってもよい。上記ポリマー材料としては、電解液を保持できるものであればよく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体等が好ましい。
上記リチウム二次電池の形状としては、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大形等が挙げられる。
【0093】
(2)電解コンデンサ
電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、陽極箔と陰極箔との間に挟まれたセパレータである電解紙及びリード線より構成されるコンデンサ素子と、本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料を用いてなるイオン伝導体と、有底筒状の外装ケースと、外装ケースを密封する封口体とを基本構成要素として構成されているものである。コンデンサ素子の一形態の斜視図を図2(a)に示す。本発明における電解コンデンサは、コンデンサ素子に本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料を用いてなるイオン伝導体である電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースの開口部に封口体を装着するとともに、外装ケースの端部に絞り加工を施して外装ケースを密封することにより得ることができるものである。このような電解コンデンサとしては、アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサが好適である。アルミ電解コンデンサの一形態の断面模式図を図2(b)に示す。
【0094】
上記陽極箔としては、純度99%以上のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的又は電気化学的にエッチングして拡面処理した後、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム又はアジピン酸アンモニウム等の水溶液中で化成処理を行い、その表面に陽極酸化皮膜層を形成したものを用いることができる。
上記陰極箔としては、表面の一部又は全部に、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル及び窒化ニオブから選ばれる1種以上の金属窒化物、及び/又は、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブから選ばれる1種以上の金属より構成される皮膜を形成したアルミニウム箔を用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、蒸着法、メッキ法、塗布法等を挙げることができ、皮膜を形成する部分としては、陰極箔の全面に被覆してもよいし、必要に応じて陰極箔の一部、例えば陰極箔の一面のみに金属窒化物又は金属を被覆してもよい。
【0095】
上記リード線は、陽極箔及び陰極箔に接する接続部、丸棒部及び外部接続部より構成されるものであることが好適である。このリード線は、接続部においてそれぞれステッチや超音波溶接等の手段により陽極箔及び陰極箔に電気的に接続されている。また、リード線における接続部及び丸棒部は、高純度のアルミニウムよりなるものが好適であり、外部接続部は、はんだメッキを施した銅メッキ鉄鋼線よりなるものが好適である。また、陰極箔との接続部及び丸棒部の表面の一部又は全部に、ホウ酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液又はアジピン酸アンモニウム水溶液等による陽極酸化処理によって形成した酸化アルミニウム層を形成したり、Al、SiO、ZrO等より構成されるセラミックスコーティング層等の絶縁層を形成することができる。
【0096】
上記外装ケースは、アルミニウムより構成されるものであることが好適である。
上記封口体は、リード線をそれぞれ導出する貫通孔を備え、例えば、ブチルゴム等の弾性ゴムより構成されるものであることが好適であり、ブチルゴムとしては、例えば、イソブチレンとイソプレンとの共重合体からなる生ゴムに補強剤(カーボンブラック等)、増量剤(クレイ、タルク、炭酸カルシウム等)、加工助剤(ステアリン酸、酸化亜鉛等)、加硫剤等を添加して混練した後、圧延、成型したゴム弾性体を用いることができる。加硫剤としては、アルキルフェノールホルマリン樹脂;過酸化物(ジクミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等);キノイド(p−キノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム等);イオウ等を用いることができる。なお、封口体の表面をテフロン(登録商標)等の樹脂でコーティングしたり、ベークライト等の板を貼り付けたりすると、溶媒蒸気の透過性が低減するので更に好ましい。
上記セパレータとしては、通常マニラ紙やクラフト紙等の紙が用いられるが、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等の不織布を用いることもできる。
【0097】
上記電解コンデンサとしてはまた、ハーメチックシール構造や樹脂ケースに密閉した構造(例えば、特開平8−148384号公報に記載)のものであってもよい。ゴム封止構造のアルミニウム電解コンデンサの場合、ある程度ゴムを通して気体が透過するため、高温環境下においてはコンデンサ内部から大気中へ溶媒が揮発し、また、高温高湿環境下においては大気中からコンデンサ内部へ水分が混入するおそれがあり、これらの過酷な環境の下では、コンデンサは静電容量の減少等の好ましくない特性変化を起こすおそれがある。一方、ハーメチックシール構造や樹脂ケースに密閉した構造のコンデンサにおいては、気体の透過量が極めて小さいため、このような過酷な環境下においても安定した特性を示すこととなる。
【0098】
(3)電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタは、負極、正極及び本発明のイオン伝導性材料又は電解液材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものであり、好ましい形態としては、対向配置した正極及び負極からなる電極素子に、イオン伝導体である電解液を含ませたものである。このような電気二重層キャパシタの一形態の断面模式図及び電極表面の拡大模式図を図3に示す。
【0099】
上記正極及び負極は、分極性電極であり、電極活物質として活性炭繊維、活性炭粒子の成形体、活性炭粒子等の活性炭と、導電剤と、バインダー物質とから構成され、薄い塗布膜、シート状又は板状の成形体として使用することが好適である。このような構成を有する電気二重層キャパシタにおいては、図3の拡大図に示されるように、イオンの物理的な吸・脱着により分極性電極と電解液との界面に生成する電気二重層に電荷が蓄えられることとなる。
【0100】
上記活性炭としては、平均細孔径が2.5nm以下であるものが好ましい。この活性炭の平均細孔径は、窒素吸着によるBET法によって測定されることが好ましい。活性炭の比表面積としては、炭素質種による単位面積あたりの静電容量(F/m)、高比表面積化に伴う嵩密度の低下等により異なるが、窒素吸着によるBET法により求めた比表面積としては、500〜2500m/gが好ましく、1000〜2000m/gがより好ましい。
【0101】
上記活性炭の製造方法としては、植物系の木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液、化石燃料系の石炭、石油重質油、又は、それらを熱分解した石炭及び石油系ピッチ、石油コークス、カーボンアエロゲル、メソフェーズカーボン、タールピッチを紡糸した繊維、合成高分子、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イオン交換樹脂、液晶高分子、プラスチック廃棄物、廃タイヤ等の原料を炭化した後、賦活して製造する賦活法を用いることが好ましい。
【0102】
上記賦活法としては、(1)炭化された原料を高温で水蒸気、炭酸ガス、酸素、その他の酸化ガス等と接触反応させるガス賦活法、(2)炭化された原料に、塩化亜鉛、リン酸、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫化カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カルシウム、ホウ酸、硝酸等を均等に含浸させて、不活性ガス雰囲気中で加熱し、薬品の脱水及び酸化反応により活性炭を得る薬品賦活法が挙げられ、いずれを用いてもよい。
【0103】
上記賦活法により得られた活性炭は、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で、好ましくは500〜2500℃、より好ましくは700〜1500℃で熱処理することが好ましく、不要な表面官能基を除去したり、炭素の結晶性を発達させて電子伝導性を増加させてもよい。活性炭の形状としては、破砕、造粒、顆粒、繊維、フェルト、織物、シート状等が挙げられる。粒状の場合においては、電極の嵩密度の向上、内部抵抗の低減という点で、平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。
上記電極活物質としては、活性炭以外にも上述の高比表面積を有する炭素材料を用いてもよく、例えば、カーボンナノチューブやプラズマCVDにより作製したダイヤモンド等を用いてもよい。
【0104】
上記導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン、アルミニウム、ニッケル等の金属ファイバー等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、少量で効果的に導電性が向上する点で、アセチレンブラック及びケッチェンブラックがより好ましい。導電剤の配合量としては、活性炭の嵩密度等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0105】
上記バインダー物質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシルメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。バインダー物質の配合量としては、活性炭の種類と形状等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、0.5〜30質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。
【0106】
上記正極及び負極の成形方法としては、(1)活性炭とアセチレンブラックの混合物に、ポリテトラフルオロエチレンを添加混合した後、プレス成形して得る方法、(2)活性炭とピッチ、タール、フェノール樹脂等のバインダー物質を混合、成型した後、不活性雰囲気下で熱処理して焼結体を得る方法、(3)活性炭とバインダー物質又は活性炭のみを焼結して電極とする方法等が好適である。炭素繊維布を賦活処理して得られる活性炭繊維布を用いる場合は、バインダー物質を使用せずにそのまま電極として使用してもよい。
【0107】
上記電気二重層キャパシタには、セパレータを分極性電極に挟み込む方法や、保持手段を用いることにより分極性電極を間隔を隔てて対向させる方法等により、分極性電極が接触や短絡することを防ぐことが好ましい。セパレータとしては、使用温度域において溶融塩等と化学反応を起こさない多孔性の薄膜を用いることが好適である。セパレータの材質としては、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維等が好適である。
上記電気二重層キャパシタの形状としては、コイン型、巻回型、角型、アルミラミネート型等が挙げられ、いずれの形状としてもよい。
【0108】
本発明によるイオン伝導性材料又は電解液材料を用いてなるリチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスは、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の各種用途に好適に用いることができるものである。
【発明の効果】
【0109】
本発明のイオン性液体組成物は、上述のような構成であるので、イオン伝導性に優れ、電気化学的安定性を奏するとともに、充分な耐熱性を発揮することができるものであり、イオン伝導性材料又は電解液材料として、例えば、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに好適に適用することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0110】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
EMImDCA:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノアミド
EMImTCM:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノメチド
GBL:γ−ブチロラクトン
【0111】
実施例1〜18
EMImDCA/GBL(35/65)に対して、表1に記載の添加剤を5000ppm添加したサンプルをサンプル管に入れ、125℃の熱風オーブンにて加熱試験を行い、133時間経過したときの着色をブランクと比較・観察した。結果を表1に示す。
【0112】
実施例19〜20
EMImDCA/GBL(35/65)に対して、表1に記載の添加剤を1000ppm添加したサンプルをサンプル管に入れ、125℃の熱風オーブンにて加熱試験を行い、130時間経過したときの着色をブランクと比較・観察した。結果を表1に示す。
【0113】
比較例1〜2
EMImDCA/GBL(35/65)に対して、表1に記載の添加剤を1000ppm添加したサンプルをサンプル管に入れ、125℃の熱風オーブンにて加熱試験を行い、168時間経過したときの着色をブランクと比較・観察した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
実施例21〜25
EMImTCM/GBL(35/65)に対して、表2に記載の添加剤を5000ppm添加したサンプルをサンプル管に入れ、125℃の熱風オーブンにて加熱試験を行い、240時間経過したときの着色をブランクと比較・観察した。結果を表2に示す。
【0116】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】リチウム二次電池の一形態を示す断面模式図である。
【図2】(a)は、電解コンデンサの一形態を示す斜視図であり、(b)は、アルミ電解コンデンサの一形態を示す断面模式図である。
【図3】電気二重層キャパシタの一形態を示す断面模式図及び電極表面の拡大模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体と、有機化合物とを含んでなるイオン性液体組成物であって、
該有機化合物は、下記一般式(1)〜(6)で表される構造のうち少なくとも1つの構造を有することを特徴とするイオン性液体組成物。
【化1】

(式中、Xは、O又はSを表す。R及びRは、同一又は異なって、有機置換基を表し、これらのうち少なくとも1つは、不飽和結合及び/又は芳香環を有する有機置換基である。)
【化2】

(式中、Xは、N又はPを表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、有機置換基又はプロトンを表し、これらのうち少なくとも1つは、不飽和結合及び/又は芳香環を有する有機置換基である。また、R、R及びRが炭素鎖で繋がった飽和若しくは不飽和の環状構造又は複素環構造を形成していてもよい。)
【化3】

(式中、Xは、C又はSiを表す。R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、有機置換基又はプロトンを表し、これらのうち少なくとも1つは、不飽和結合及び/又は芳香環を有する有機置換基である。また、R、R及びRが炭素鎖で繋がった飽和若しくは不飽和の環状構造又は複素環構造を形成していてもよい。)
【化4】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、有機置換基を表し、これらのうち2以上が飽和又は不飽和の炭素鎖によって結合していてもよい。)
【化5】

(式中、X及びYは、同一又は異なって、4〜6員環の芳香環状構造を表し、その環上に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。また、X及びYは、飽和又は不飽和の共有結合で繋がれており、その結合中に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。更に、X及びYは、ハロゲン元素、水酸基、酸及びアミンのうち少なくとも1種で置換されていてもよい。また、X及びYの間に、更に、X及び/又はYで表される構造を有していてもよい。)
【化6】

(式中、X、Y及びZは、同一又は異なって、3〜8員環の飽和環状構造を表し、その環上に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。また、X、Y及びZは、飽和又は不飽和の共有結合で繋がれており、その結合中に、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有していてもよい。更に、X、Y及びZは、ハロゲン元素、水酸基、酸及びアミンのうち少なくとも1種で置換されていてもよい。また、X、Y及びZの間に、更に、X、Y及び/又はZで表される構造を有していてもよい。)
【請求項2】
前記イオン性液体組成物は、有機溶媒を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のイオン性液体組成物。
【請求項3】
前記イオン性液体組成物は、下記一般式(7);
【化7】

(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。M及びMは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、同一又は異なって、0以上の整数である。)で表されるアニオンを含んでなることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン性液体組成物。
【請求項4】
前記イオン性液体組成物は、第四級アンモニウムカチオンを含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のイオン性液体組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のイオン性液体組成物からなることを特徴とするイオン伝導性材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のイオン性液体組成物からなることを特徴とする電解液材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−202646(P2006−202646A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14450(P2005−14450)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】