説明

イオン性液体

二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを流体から吸収する方法であって、選択されたガスを含有する流体と、以下の成分:1種または複数種のアニオン、1種または複数種の金属種、および場合により1種または複数種の有機カチオン、および場合により1種または複数種のリガンドを含むイオン性液体吸収剤であって、吸収剤が前記方法の作動する温度および圧力で液体状態であるように吸収剤各成分が選択される、イオン性液体吸収剤とを提供するステップと、選択されたガスが金属種と相互作用するように、流体とイオン性液体吸収剤とを接触させるステップと、選択されたガスの少なくとも一部を吸収したイオン性液体を捕集するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収剤を使用して排煙ストリームなどの流体からガスを吸収する方法、およびガスの豊富な吸収剤からガスを脱着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気へのガス放出により惹起される環境問題の認識で、これらのガス捕捉に関わる技法の開発または改善に対する関心が集中し、また高まっている。
【0003】
とりわけ酸性のガス、一酸化炭素、および硫黄または窒素の酸化物を含む数種のガスが、現在の大きい環境問題として知られているが、二酸化炭素の捕捉に関する技法は特に関心事である。
【0004】
化学的吸収は、ガスストリーム(発電所に由来するものなど)からCO2を除去するために使用することができる。現在、CO2を捕捉するためにアミン水溶液またはアンモニアを使用する化学的吸収方法が、使用されている。しかしながら、アミン水溶液またはアンモニアをガス吸収剤として使用することには:
(1)CO2の豊富なアミン溶液からCO2を脱着するための多大のエネルギーの必要性;
(2)合金鋼管、ポンプその他のアミン吸収剤による腐食;
(3)余分な廃棄物ストリームを生成し、さらに活性なアミンの損失を生ずる、吸収剤中のアミンの熱的または化学的分解;および
(4)吸収剤からガスストリーム中への揮発性アミンの損失
を含む多数の欠点がある。
【0005】
イオン性液体は、一般的には約150℃の温度未満で融点を示すが、場合によっては250℃までになることもある本質的にイオンから構成される材料である。従来の溶融塩は、通常、摂氏数百度のオーダーの融点を示す(例えば、塩化ナトリウム(NaCl)の融点は801℃である)。イオン性液体は、それらがガス吸収剤として使用するのに適していることを示す、以下を含む幾つかの性質を有する:
(1)脱着のためのエネルギー必要量がアミン溶液に対する必要量より低くてもよい。
(2)イオン性液体は一般的に腐食性でない。
(3)イオン性液体は一般的に熱的および化学的安定性を示す。イオン性液体の分解温度は通常250℃より上である。さらに、イオン性液体は、酸化機構による分解、および不純物との反応に対して一般的に耐性を示す。
(4)2〜3の例外はあるが、イオン性液体は一般的に非揮発性であり、蒸気圧は無視し得る。したがって、イオン性液体は一般的に非引火性であり、かつガスストリーム中への蒸発により示される損失は極めて小さいと期待される。
【0006】
しかしながら、従来のイオン性液体では、CO2の吸収は一般的に物理的吸収機構により起こる。この吸収機構は、溶解したガスとイオン性液体の溶質分子との間の化学的相互作用の形成がない、イオン性液体中へのガスの溶解を本質的に含む。この吸収機構により、CO2分圧が工業的設定で通常使用される周囲環境の圧力以下の条件であるときに、従来のイオン性液体は低いCO2吸収容量を示すことになる。
【0007】
イオン液体の低い吸収容量に対する1つの取り組みは、追加的な化学的吸収機構を導入するための官能基を担持するいわゆる課題特異的イオン性液体を設計および開発することであった。この戦略においては、カルボキシレート、アミンおよびアミノ酸などの官能基は、イオン性液体の構成カチオンまたはアニオンの構造中に、共有結合で組み込まれる。あるいは、イオン性部分をポリマーに共有結合で結合することもできる。しかしながら、両方の手法とも、これらの課題特異的イオン性液体の構成カチオンおよび/またはアニオンを作製するために、手の込んだおよび時間のかかる合成手順が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2002/72260号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S.A.Newman,「Acid and Sour Gas Treating Processes」, Gulf Publishing Company, Texas, 1995
【非特許文献2】Earle,M.J.ら, Chem.Commun. 2004, 1368〜1369
【非特許文献3】Rocher,N.M.; Izgorodina,E.I.; Ruether,T.; Forsyth,M.; MacFarlane,D.R.; Rodopoulos,T.; Home,M.D.; Bond,A.M. Chem.Eur.J. 2009, 15, 3435〜3447
【非特許文献4】Manson,J.L.; Lee,D.W.; Rheingold,A.L.; Miller,J.S.Inorg. Chem. 1998, 37, 5966〜5967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、先行技術の困難または欠点の1つまたは複数を克服するかまたは少なくとも緩和することが本発明の目的である。
【0011】
本明細書におけるいかなる先行技術に対する参照も、この先行技術が、オーストラリアもしくは任意の他の裁判管轄区域において、共通の一般的知識の一部を形成するという、またはこの先行技術が当業者により関連すると確かめられ、理解され、および見なされると無理なく期待できるという認容もしくはいかなる形態の示唆ではなく、かつそう受け取られるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを流体から吸収する方法であって、
選択されたガスを含有する流体と、
以下の成分:
1種または複数種のアニオン、
1種または複数種の金属種、および場合により
1種または複数種の有機カチオン、および場合により
1種または複数種のリガンド
を含むイオン性液体吸収剤であって、前記吸収剤が前記方法の作動する温度および圧力で液体状態であるように前記吸収剤各成分が選択される、イオン性液体吸収剤と、
を提供するステップであって、
ただし、
アニオンが、アミン官能基およびスルホネート官能基の両方、アミン官能基およびカルボキシレート官能基の両方、ホスフィン官能基およびスルホネート官能基の両方、またはホスフィン官能基およびカルボキシレート官能基の両方を同じ分子実体中に含有する場合、金属種はアルカリ金属でもアルカリ土類金属でもなく、
アニオンおよび/または金属種は銅酸塩を形成せず、
アニオンおよび/または金属種が金属ハロゲン化物を形成する場合、イオン性液体吸収剤は1種または複数種のリガンドを含む、ステップと、
選択されたガスが金属種と相互作用するように、流体とイオン性液体吸収剤とを接触させるステップと、
選択されたガスの少なくとも一部を吸収したイオン性液体を捕集するステップと、
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを吸収したイオン性液体から、ガスを脱着する方法であって、
1種または複数種の選択されたガスを吸収したイオン性液体吸収剤を提供するステップと、
選択されたガスを吸収したイオン性液体吸収剤を、ガスが放出されるように処理するステップと、
放出されたガスを捕集するステップと、
を含み、
イオン性液体吸収剤は、以下の成分:
1種または複数種のアニオン、
1種または複数種の金属種、および場合により
1種または複数種の有機カチオン、および場合により
1種または複数種のリガンド
を含み、前記吸収剤が前記方法の作動する温度および圧力で液体状態あるように吸収剤成分が選択され、
ただし、
アニオンが、アミン官能基およびスルホネート官能基の両方、アミン官能基およびカルボキシレート官能基の両方、ホスフィン官能基およびスルホネート官能基の両方、またはホスフィン官能基およびカルボキシレート官能基の両方を同じ分子実体中に含有する場合、金属種はアルカリ金属でもアルカリ土類金属でもなく、
アニオンおよび/または金属種は銅酸塩を形成せず、
アニオンおよび/または金属種が金属ハロゲン化物を形成する場合、イオン性液体吸収剤は1種または複数種のリガンドを含む、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の方法において使用され得るCO2吸収装置の例のフローチャートを示す図である。
【図2】40℃(▲)および60℃(▽)における[EMIM][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)について、CO2圧力の関数としてCO2吸収容量(wt%)のグラフを示す図である。純粋[EMIM][TFSI]についての40℃におけるCO2吸収容量(○)を比較のために含める。
【図3】40℃における[EMIM][TFSI](○)、[EMIM][TFSI]-Co(TFSI)2(1:1モル:モル)(▲)、[EMIM][TFSI]-Ni(TFSI)2(1:1モル:モル)(▽)、[EMIM][TFSI]-Cu(TFSI)2(1:1モル:モル)(◇)、[EMIM][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)(■)、および60℃における[EMIM][TFSI]-Cd(TFSI)2(1:0.5モル:モル)(●)について、CO2圧力の関数としてのCO2吸収容量(wt%)を示す図である。
【図4】40℃における[EMIM][TFSI](○)、[EMIM][TFSI]-Mn(TFSI)2(1:0.3モル:モル)(□)、[EMIM][TFSI]-Fe(TFSI)2(1:0.5モル:モル)(△)について、CO2圧力の関数としてCO2吸収容量(wt%)を示す図である。
【図5】40℃における[EMIM][TFSI](○)、[EMIM][TFSI]-Mg(TFSI)2(1:0.75モル:モル)(□)、[EMIM][TFSI]-Al(TFSI)3(1:1モル:モル)(△)について、CO2圧力の関数としてCO2吸収容量(wt%)を示す図である。
【図6】40℃における[EMIM][DCA](○)および[EMIM][DCA]-Zn(DCA)2(1:0.5モル:モル)(□)について、CO2圧力の関数としてCO2吸収容量(wt%)を示す図である。
【図7】40℃における[C4mpyrr][TFSI](○)および[C4mpyrr][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)(□)について、CO2圧力の関数としてCO2吸収容量(wt%)を示す図である。
【図8】77℃および8mbarにおける[EMIM][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)について、脱着曲線を示す図である。
【図9】40℃(○)および90℃(□)における[EMIM][OAc]-Zn(OAc)2(1:1モル:モル)について、CO2圧力の関数としてCO2吸収容量(wt%)を示す図である。
【図10】[EMIM][TFSI]-CO(TFSI)2(1:1モル:モル)(*)、[EMIM][TFSI]-Ni(TFSI)2(1:1モル:モル)(◆)、[EMIM][TFSI]-Cu(TFSI)2(1:1モル:モル)(◇)、[EMIM][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)(■)について、熱重量分析のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
驚くべきことに、イオン性液体吸収剤中における金属種の包含により、イオン性液体単独の吸収容量と比較して高いガス吸収容量を示す吸収剤が生じ得ることが発見された。
【0016】
好ましくは、選択されたガスと金属種との間の相互作用が、選択されたガスの吸収に対する主要な機構である。
【0017】
理論に束縛されることは望まず、イオン性液体中における金属種の包含が、ガス吸収に対する物理的吸収機構に加えて作用し得る化学的吸収機構を提供すると考えられる。化学的吸収機構は、金属とガスとの間の化学的相互作用の可逆的形成を含むことができる。
【0018】
その上、適切なイオン性液体の選択および/または1種または複数種の適切な金属錯体リガンドの選択によって金属種の電子的環境を変化させることにより、金属種と1種または複数種の選択されたガスとの間の相互作用の強度を、金属種と吸収されたガスとの間の相互作用がガス吸収方法の作動条件で安定であり、かつガス脱着方法の作動条件下で不安定であるように改変することができると考えられる。金属種と吸収されたガスとの間の相互作用の強度を変化させることにより、脱着方法を起こさせるために必要なエネルギー入力が最小化されるので、ガス吸収および脱着方法をより効率的にすることができると考えられる。
【0019】
金属の電子的環境の変化は、(1)アニオン成分、(2)有機カチオン成分または(3)リガンド成分の1つまたは複数による金属中心への配位により達成することができ、有機カチオンおよび/またはリガンドの存在は本発明の特定の実施形態に依存する。金属種と1種または複数種のこれらの成分との間の配位錯体の形成は、金属種の電子配置に直接影響し得る。あるいは、金属の電子的環境は、イオン性液体吸収剤全体の全体的な静電的環境により更に巨視的なレベルで影響され得る。
【0020】
本明細書を通じて使用される「イオン性液体」という用語は、大気圧で約250℃の温度未満の、より好ましくは大気圧で約200℃未満の、および最も好ましくは大気圧で約150℃未満の融点を有するイオン性の化合物を指す。「イオン性液体」という用語の使用は、他の成分または溶媒のイオン性液体中への添加を排除することを意図しない。例えば、イオン性液体は、水などの追加の溶媒を含んでもよい。イオン性液体は、腐食阻害剤または酸化阻害剤として作用する添加剤も含むことができる。
【0021】
当業者により知られているように、本明細書において使用する「液体状態」という用語は、均一な組成物と懸濁液または分散液との両方を指す。
【0022】
イオン性液体吸収剤中の金属種は、イオン性液体に溶解するか、またはイオン性液体に懸濁もしくは分散していてよい。
【0023】
本明細書を通じて使用する「相互作用する(interact)」、「相互作用する(interacts)」および「相互作用(interaction)」という用語は、選択されたガスとイオン性液体吸収剤との間の可逆的会合を指す。相互作用は、例えば、選択されたガスとイオン性液体吸収剤との間の弱い、非共有結合性相互作用(例えば、静電的相互作用またはファンデルワールス相互作用)、イオン性液体吸収剤と選択されたガスとの間の配位結合、またはイオン性液体吸収剤と選択されたガスとの間の共有結合性相互作用の形態であり得る。換言すれば、吸収/脱着方法に関与する選択されたガスについて、ガスは、吸収前と脱着後とで同じ化学的構造を有する。吸収/脱着方法は、選択されたガスが吸収されて異なった種に変換され、その異なった種が次にイオン性液体から放出される「変換」方法を包含することは意図しない。
【0024】
本明細書を通じて使用する略記号「EMIM」は、スキーム1に構造を図示した1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオンを指す。
【0025】
本明細書を通じて使用する略記号「C4mpyrr」は、スキーム1に構造を図示したN-メチル,N-ブチルピロリジニウムイオンを指す。
【0026】
本明細書を通じて使用する略記号「DCA」は、スキーム1に構造を図示したジシアナミドイオンを指す。
【0027】
本明細書を通じて使用する略記号「TFSI」は、スキーム1に構造を図示したトリフルオロメタンスルホンイミドアニオンを指す。このアニオンは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとしても知られる。
【0028】
本明細書を通じて使用する略記号「OAc」は酢酸イオンを指す。
【0029】
【化1】

【0030】
吸収されるべきガスは、二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物(例えばSO2およびSO3)、窒素酸化物(例えばNO、NO2およびN2O)および一酸化炭素から選択される。好ましくは、ガスは、二酸化炭素、硫黄酸化物および窒素酸化物である。最も好ましくは、ガスは二酸化炭素である。
【0031】
選択されたガスを吸収する流体は、選択されたガスの流体からの分離が望まれる任意の流体ストリームであってよい。流体の例として、例えば石炭ガス化プラント、リフォーマーからの生成ガスストリーム、燃焼前ガスストリーム、排煙などの燃焼後ガスストリーム、化石燃料燃焼の発電所からの排気ストリーム、硫黄化合物を含む天然ガス、焼却炉からの燃焼後放出ガス、工業ガスストリーム、車輌からの排気ガス、潜水艦などの閉鎖環境からの排気ガスが挙げられる。
【0032】
上述のように、本発明によるイオン性液体の成分は、イオン性液体吸収剤が方法の作動する温度および圧力で液体状態であるように選択される。典型的には、作動温度は、約-80℃から約350℃、より好ましくは約20℃から約200℃、最も好ましくは約20℃から約180℃の間であってよい。方法で使用される圧力は、約0.01気圧から約150気圧、より好ましくは1から70気圧、最も好ましくは1から30気圧であってよい。
【0033】
本発明の第1の態様によるイオン性液体のアニオン性成分は、方法の作動条件下でアニオンが吸収剤の他の成分と共に存在するときにイオン性液体が形成されさえすれば、当業者に知られた任意のアニオンを含むことができる。アニオンは無機または有機アニオンであってよい。
【0034】
好ましくは、アニオンは:
i)置換アミドまたは置換イミド;例えばジシアナミドなど;例えばアルキルまたはアリールスルホンアミドおよびそれらのフッ素化された誘導体、例えばトルエンスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミドなど、およびさらにそれらのN-アルキルまたはアリール誘導体;アルキルおよびアリールスルホンイミドおよびそれらの置換誘導体、例えばビス(フェニルスルホニル)イミドおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど、ビス(ハロスルホニル)イミド、例えばビス(フルオロスルホニル)イミドなど;ビス(ハロホスホリル)イミド、例えばビス(ジフルオロホスホリル)イミドなど;混合イミド、例えば(トリフルオロメタンスルホニル)(ジフルオロホスホリル)イミドなど;
ii)トリシアンメタニドなどの安定なカルボアニオン;
iii)テトラハロボレート;ハロゲン化物、シアネート;イソシアネート;チオシアネート;
iv)無機硝酸イオン、有機硝酸イオン(アルキルまたはアリール硝酸イオンなど)および亜硝酸イオン;
v)硫酸イオン、硫酸水素イオン、アルキルまたはアリール硫酸エステルイオン、過硫酸イオン(SO52-)、亜硫酸イオン(SO32-)、次亜硫酸イオン(SO22-)、ペルオキシ二硫酸イオン(S2O82-)からなる群から選択することができるが、これらに限定されない硫酸イオンを含むオキシ硫黄種、
viii)アルキルまたはアリールスルホネート、例えばトリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエチルスルホネート、トルエン-4-スルホネート、およびそれらの置換もしくはハロゲン化された誘導体および/またはアリールスルホネートのアルキル置換誘導体からなる群から選択されるスルホネート、
vi)リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、ヘキサハロホスフェート、場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;混合置換されたホスフェートジおよびトリエステル、混合置換されたホスフェートジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェート;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェート;ハロゲン、アルキルまたはアリールで混合置換されたホスフェート、アルキルまたはアリールホスホネート、アルキルまたはアリールホスフィネート、他のオキソアニオンリン酸およびメタリン酸イオンからなる群から選択することができるオキシリン(oxyphosphosphorus)種、
vii)炭酸イオン、炭酸水素イオン、アルキルまたはアリールカーボネートおよび他のオキソアニオン炭酸、
ix)アルキルカルボキシレート、アリールカルボキシレートおよびエチレンジアミンテトラアセテートからなる群から選択することができるが、これらに限定されないカルボキシレート。好ましくは、アルキルカルボキシレートは1個、2個または3個のカルボキシル基を含有する。アルキルカルボキシレートの例として、アセテート、プロパノエート、ブタノエート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート、ノナノエート、デカノエート、オキサレート、マロノエート、スクシネート、クロトノエート、フマレート;およびそれらのハロゲン置換誘導体、例えば、トリフルオロアセテート、ペンタフルオロプロパノエート、ヘプタフルオロブタノエートなどが挙げられる。アルキルカルボキシレートのアルキル基は、グリコレート、ラクテート、タータレート、マレート、シトレートなどの他の置換基で置換することもできる;ヒスチジンおよびそれらの誘導体などの脱プロトン化されたアミノ酸。カルボキシレートがアリールカルボキシレートであるとき、構造は、好ましくは、1個、2個、または3個のカルボキシル基を含有する。好ましいアリールカルボキシレートの例として、ベンゾエート、ベンゼンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、ベンゼンテトラカルボキシレート、およびそれらのハロゲン置換誘導体、例えばクロロベンゾエート、フルオロベンゾエートなどが挙げられる、
x)シリケートおよびオルガノシリケート、
xi)テトラシアノボレート、アルキルおよびアリールケラトボレート(aryl chelatoborate)などのボレート;およびそれらのフッ素化された誘導体、例えばビス(オキサレート)ボレート(BOB)、ビス(1,2フェニルジオラト)ボレート、ジフルオロ-モノオキサラト-ボレート、ペルフルオロアルキルトリフルオロボレートなど、
xi)アルキルボランおよびアリールボラン、並びにそれらのフッ素化されたおよびシアノ化された誘導体、例えばテトラ(トリフルオロメチル)ボラン、ペルフルオロアリールボラン、アルキルシアノボランなど、
xii)アルキルおよびアリールイミダゾールなどの脱プロトン化された酸性複素環化合物およびそれらのフッ素化された誘導体、
xiii)アルキルオキシ化合物およびアリールオキシ化合物およびメタノレート、フェノレート、およびそれらのフッ素化された誘導体、例えばペルフルオロブタノエートなど、
xiv)α〜ωジケトネート;α〜ωアセチルケトネートおよびそれらのフッ素化された誘導体、例えば、アセチルアセトネート(acac)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロペンタン-2,4-ジオンなど、および
xv)金属錯体アニオン、例えば、メタル化ハロゲンまたは遷移金属のメタル化ハロゲン[MaXb]t-(例えばハロゲンジンケートアニオン、ハロゲノ銅(II)もしくは(I)アニオン、ハロゲノ鉄(II)もしくは(III)アニオン、X:リガンド)、ハロゲノアルミネートアニオン、有機ハロゲノアルミネートアニオン、有機金属アニオンおよびそれらの混合物など
の1種または複数種からなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0035】
アニオンは、「電荷拡散」アニオンであってもよい。特に好ましい「電荷拡散」アニオンは、それらの構造中に、アミド、イミド、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、ハロゲニド、シアニド、フルオロアルキル、アリールおよびフルオロアリール、カルボキシレート、カルボニル、ボレート、ボラン官能基を含むが、これらに限定されない電子吸引性官能基を有する。
【0036】
より好ましくは、アニオンは、生じる金属種が方法の作動条件下で選択されたガスとの相互作用を可逆的に形成し得るような適当な化学的環境を、金属種周囲に形成し得るアニオンからなる群から選択される。好ましくは、アニオンは、金属種と選択されたガスとの間に形成される相互作用が、ガス吸収方法において安定であり、かつガス脱着方法において不安定であるように選択される。最も好ましくは、アニオンはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)である。
【0037】
最も好ましくは、1種または複数種のアニオンは、置換アミド;置換イミド、安定なカルボアニオン;ヘキサハロホスフェート;テトラハロボレート;ハライド;シアネート;イソシアネート;チオシアネート;無機硝酸塩;有機硝酸塩;亜硝酸塩;オキシ硫黄種;スルホネート;オキシリン種;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;混合置換されたホスフェートジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェート;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェート;ハロゲン、アルキルまたはアリールで混合置換されたホスフェート;カルボキシレート;カーボネート;シリケート;オルガノシリケート;ボレート;アルキルボラン;アリールボラン;脱プロトン化された酸性複素環化合物;アルキルオキシ化合物;アリールオキシ化合物;α〜ωジケトネート;α〜ωアセチルケトネート;および金属錯体イオンからなる群から選択することができる。
【0038】
イオン性液体吸収剤中の金属種は、イオン性液体中に溶解しても、またはイオン性液体に懸濁していても分散していてもよい。
【0039】
金属種は、1a族典型金属(LiからCsまでを含む)、2a族典型金属(BeからBaまでを含む)、3a族典型金属(BからTlまでを含む)、スカンジウムから亜鉛まで、イットリウムからカドミウムまで、ハフニウムから水銀まで、およびラザホージウムから最終既知元素までを含む遷移金属、ランタンからルテチウムまでのランタニド、およびアクチニウムからローレンシウムまでのアクチニド、およびp-ブロック金属のゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマスおよびポロニウムからなる群から選択される1種または複数種の金属を含むことができる。
【0040】
好ましくは、金属種は、周期表の2列から6列の金属元素から選択された金属を含む。より好ましくは、金属種は、遷移金属、2a族典型金属または3a族典型金属を含む。さらにより好ましくは、金属種は、2b遷移金属、3d遷移金属、4d遷移金属、5d遷移金属、2a族典型金属および3a族典型金属からなる群から選択される金属を含む。最も好ましくは、金属種は、亜鉛、カドミウム、水銀またはアルミニウムを含む。
【0041】
金属は、吸収剤中に約0.01から約10のモル比で存在することができる(モル比はアニオンのモル数に対する金属のモル数として定義される)。好ましくは、金属は、吸収剤中に約0.01から約5のモル比で存在することができ、最も好ましくは、金属は、吸収剤中に約0.01から約1のモル比で存在することができる。
【0042】
当業者により理解されるように、イオン性液体吸収剤は、2種以上の金属種および/または2種以上のアニオン性種を含むことができる。これらの実施形態により、金属のモル数は、溶液中における全ての金属種のモル数の合計として表される。同様に、アニオンのモル数は、イオン性液体吸収剤中における全てのアニオン種のモル数の合計として表される。
【0043】
当業者により理解されるように、吸収剤中に含まれる金属種の量は、金属種の原子質量、金属種の吸収容量、金属種のコスト、イオン性液体中の金属種の溶解度等を含む幾つかの要因に依存するであろう。
【0044】
金属種は電荷を帯びていても帯びていなくてもよい。
【0045】
金属種は、1種または複数種の中性のまたは電荷を帯びたリガンドと配位していなくても配位していてもよい。金属種は、金属種が選択されたガスと、ガス吸収および脱着の条件下で可逆的相互作用を形成することができるように配位することが好ましい。
【0046】
金属種は、イオン性液体吸収剤中に、金属-リガンド錯体の形態で導入することができる。あるいは、金属種は、インサイチュで1種または複数種の金属-リガンド錯体を形成することができる。金属種はまた、イオン性液体吸収剤中に金属(0)粒子の形態で導入することもできる。
【0047】
リガンドは、全体として電荷が中性であるか、またはもう1つの選択肢として全体として電荷を有してもよい。電荷を帯びたリガンドは、実際にカチオン性またはアニオン性のいずれかであることもできる。
【0048】
中性のまたは電荷を帯びたリガンドは、配位化学および/または有機金属化学における当業者に知られたものから選択することができて、本発明による方法の吸収条件下で金属種と安定な配位結合を形成し得る1種または複数種の供与体中心を有する分子種を含む。金属種と配位結合を形成し得る供与体中心は、1つもしくは複数の孤立電子対を有することができるか、またはπ-電子を有することができる。好ましくは、リガンドは、1つもしくは複数の孤立電子対を有するV〜VII族元素からなる群から選択される1種もしくは複数種の供与体中心を含有するか、またはπ-電子を含有する。最も好ましくは、供与体中心は、1つまたは複数の孤立電子対を有するN、O、PまたはS原子であるか、またはπ-電子を含有する。好ましい実施形態において、リガンドは1個から4個の供与体中心を有する。
【0049】
例えば、リガンドが中性リガンドである場合、リガンドは、アルキル(飽和および不飽和)および/またはアリール置換されたエーテル、クラウンエーテル、アミン、エチレンジアミン、エチレントリアミン、または酸素、窒素、硫黄、リン、ヒ素、および/もしくはアンチモン供与体を含有するそれぞれの誘導体;置換されたピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、イミダゾール、ピロール、オキサゾールおよび配位化学において通常使用される他のN-複素環;アルケン;アルキン;アレン;カルベンからなる群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0050】
リガンドがアニオン性リガンドであるとき、リガンドは当業者に知られたものから選択することができる。例えば、リガンドは、アルキルおよびアリールで置換されたシクロペンタジエニル、またはそれらのフッ素化された誘導体であってよい。
【0051】
一実施形態において、イオン性液体吸収剤のアニオン成分は金属種リガンドとして機能し得る。適当なアニオンは上記の通りである。
【0052】
あるいは、リガンドがカチオン性リガンドである場合、リガンドは当業者に知られたものから選択することができる。例えば、カチオン性リガンドは、ビスアミンであってよく、その場合、アミノ基が1つだけ四級化されて(正に帯電して)、その結果、第2のアミノ基の電子対が未だ配位のために利用できる。この考えは、ビスホスフィン、ビスアルシン、ビススルフィド、またはそれらの混合種のようなオニウムカチオンを形成し得る全ての他の基にも適用することができる。
【0053】
一実施形態においては、イオン性液体吸収剤の有機カチオン成分が、金属種のリガンドとして機能し得る。適当なカチオンは下記の通りである。
【0054】
本発明による好ましい金属錯体には、中性のもしくは帯電したリガンドが配位した2b、3dもしくは4d遷移金属または3a族典型金属が含まれる。本発明による特に好ましい金属錯体には、酸素、窒素および/またはリン供与体リガンドが配位した2b、3dまたは4d遷移金属が含まれる。
【0055】
本発明のこの態様によるイオン性液体吸収剤の有機カチオン成分は、有機カチオンがイオン性液体吸収剤の他の成分と共に存在するときにイオン性液体が形成されさえすれば、当業者に知られた任意の適切なタイプのものであってよい。
【0056】
有機カチオンは、環式でも非環式でもよい。それは飽和でも不飽和でもよい。有機カチオンは、場合により、1種または複数種のヘテロ原子を含有することができる。
【0057】
一実施形態において、有機カチオンは、限定されないが、ボロニウム(R2L'L''B+)、カルボカチオン(R3C+)、アミジニウム(RC(NR2)2+)、グアニジニウム(C(NR2)3+)、シリリウム(R3Si+)、アンモニウム(R4N+)、オキソニウム(R3O+)、ホスホニウム(R4P+)、アルソニウム(R4As+)、アンチモニウム(R4Sb+)、スルホニウム(R3S+)、セレノニウム(R3Se+)、ヨードニウム(IR2+)カチオン、およびそれらの置換誘導体からなる群から選択することができ、式中、
Rは、Y、YO-、YS-、Y2N-またはハロゲンからなる群から独立に選択され、
Yは1価の有機基またはHであり、
L'およびL''は、同一であっても異なっていてもよいリガンドであり、L'およびL''は全体としての正味の電荷がゼロである。
【0058】
好ましくは、Yは、1から16個の炭素原子を有する1価の有機基であり、アルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、アリール、アルキルアリール、およびそれらの部分的にフッ素化または過フッ化された対応物からなる群から選択される。
【0059】
Rが1価の有機基であるとき、それは、他の1価の有機基Rと連結して、上記のように正の形式電荷の中心を含む環系を形成することができる。
【0060】
リガンドL'およびL''は、配位化学および/または有機金属化学における当業者に知られたものから選択することができ、本発明による方法の作動条件下で安定なボロニウム実体と配位結合を形成し得る1種または複数種の供与体中心を有する分子種を含む。ボロニウム実体と配位結合を形成し得る供与体中心は、1つもしくは複数の孤立電子対を有することができるか、またはπ-電子を有することができる。好ましくは、リガンドL'およびL''は、1つもしくは複数の孤立電子対を有するV〜VII族元素からなる群から選択される1種または複数種の供与体中心を含有するか、またはπ-電子を含有する。最も好ましくは、供与体中心は、1つもしくは複数の孤立電子対を有するN、O、PまたはS原子であるか、またはπ-電子を含有する。リガンドL'およびL''が2種以上の供与体中心を含有するとき、供与体中心は同一であってもまたは異なっていてもよい。例えば、同じリガンドL'またはL''が、OおよびN−供与体中心を両方含有することもできる。一実施形態において、リガンドL'およびL''は、同じ分子実体の供与体中心である(例えば、L'およびL''はキレートを形成するリガンドの一部である)。
【0061】
それに加えて、有機カチオンは、置換および非置換のピリジニウム(C5R6N+)、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム(C3R5N2+)、ピラゾリウム、チアゾリウム、トリアゾリウム(C2R4N3+)、オキサゾリウム、およびそれらの置換および非置換の多環系相当物等を含むが、これらに限定されない不飽和複素環カチオンであってよい。不飽和複素環系は、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズチアゾールなどのベンゼン環と縮合したアゾールおよびベンゾオキサゾール、ジアザビシクロ-[x,y,z]-ウンデセン系、インドールおよびイソインドール、プリン、キノリン、チアフルバレンなどの拡張多環系の1種または数種の構成要素も形成することができる。
【0062】
有機カチオンは、置換および非置換のピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、モルホリニウム、アゼパニウム、イミダゾリニウム(C3R7N2+)、およびそれらの置換および非置換の多環系相当物などの飽和した複素環カチオンであってよい。飽和複素環系は、拡張多環系の1種または数種の構成要素も形成することができる。
【0063】
あるいは、有機カチオンは、非環式カチオンであってもよい。非環式カチオンは、飽和または不飽和の炭素骨格を含有することができる。
【0064】
好ましくは、有機カチオンは、周期表の2列から5列の非金属元素から選択された1種または複数種のヘテロ原子を含有する環式または非環式の有機カチオンである。より好ましくは、有機カチオンは、B、N、O、Si、P、およびSから選択された少なくとも1個のヘテロ原子を含有する環式または非環式の有機カチオンである。最も好ましくは、有機カチオンは、B、N、P、およびSから選択された少なくとも1個のヘテロ原子を含有する環式または非環式の有機カチオンである。
【0065】
アニオンおよび/またはリガンドの成分と組み合わされた金属種がイオン性液体吸収剤を形成すれば、有機カチオン種を含むことが必要でなくなり得ることは、当業者により理解されるであろう。しかしながら、イオン性液体吸収剤の電気的中性を保つために、ある実施形態においては有機カチオン種を含有することが必要になることがあることも理解されるであろう。イオン性液体吸収剤の電気的中性を保つために有機カチオン種を含むことが必要でないそれらの実施形態において、有機カチオン種を含むことが依然として望ましいこともある。
【0066】
イオン性液体吸収剤は、場合により、さらに溶媒、界面活性剤または添加剤を含んでもよい。
【0067】
イオン性液体吸収剤は、場合により、イオン性液体吸収剤と混和性である1種または複数種の溶媒を含むことができる。適切な溶媒は、使用される特定のイオン性液体吸収剤に依存し、当業者にはわかるであろう。1種または複数種の溶媒がイオン性液体吸収剤中に含まれる場合、溶媒は、イオン性液体吸収剤の合計重量に基づいて約0.01から約50%(w/w)の量で含まれ得る。好ましくは、溶媒は0.1から約50%の量で、より好ましくは、約0.1から約30%の量で含まれる。
【0068】
場合により、腐食防止剤、スケール防止剤、消泡剤、抗酸化剤および当業者に知られた本発明のガス吸収または脱着方法で役立つ他の添加剤を使用することができる。
【0069】
イオン性液体吸収剤は、従来の方法にしたがって調製することができる。例えば、イオン性液体吸収剤は、金属含有前駆体を従来のイオン性液体中に物理的に混合することにより調製することができ、添付の実施例中で例を示す。
【0070】
本発明によるガス吸収および脱着の方法は、任意の従来の設備で、反応性の化学的吸収により流体からガスを除去するために実施することができ、詳細な手順は当業者に周知である。例えば、図1のフローチャートまたは、非特許文献1を参照されたい。
【0071】
一実施形態において、ガス吸収および脱着の方法は、ガス分離方法を含むこともある。ガス分離方法は、当業者に知られた方法にしたがって実施することができ、例えば、膜の使用を含むことができる。この実施形態によると、イオン性液体吸収剤を、ポリマーなどの支持体上に固定化して、支持されたイオン性液体膜を形成することができる。
【0072】
本発明による方法において使用することができるプロセスの例を下で説明する。この方法は、限定するものであることは意図されず、当業者は、記載された設備および作動条件(例えば、温度および圧力)が、吸収および脱着方法において使用されるイオン性液体吸収剤、および吸収されることが意図されるガスの両方の性質に応じて変更され得ることを理解するであろう。少なくともCO2の吸収および脱着方法に関連する、図1に記載した実施形態において、設備は、吸収塔2、熱交換器5、脱着塔6およびリボイラ9を備える。典型的には10から15%のCO2を含む排煙は、場合により除じん塔(prescrubber)を通って、それから導管1を通り充填された吸収塔2に至り、そこで本発明のイオン性液体吸収剤と接触する。CO2稀薄排煙は、導管3により吸収装置の頂上から放出され、そこでそれは当業者に知られた方法にしたがって捕集され、または他の方法で廃棄される。
【0073】
吸収塔2における圧力および温度条件は、典型的には従来のアミン吸収技法のための1気圧および約40から約60℃である。しかしながら、吸収方法において使用される特定のイオン性液体吸収剤に応じて、吸収方法は、吸収塔において、例えば、約-50℃から約350℃の間、好ましくは、約-30℃から約200℃の間、より好ましくは約20℃から約200℃の間、および最も好ましくは約20℃から約180℃の間の作動温度で実施することができる。
【0074】
さらに、吸収方法において使用される特定のイオン性液体に応じて、吸収塔における作動圧力は、約1気圧と150気圧との間、好ましくは約1気圧と約70気圧との間、および最も好ましくは約1気圧と30気圧との間であってよい。
【0075】
本発明による方法は、任意の適切な吸収塔で便利に実施することができる。ガス精製の作動のために使用される多数の吸収塔には、充填塔、棚段塔または噴霧塔が含まれる。これらの吸収塔は、ある特定の条件が1つの塔にとって他の塔に対するよりも有利であることもあるが、相当程度互換性である。従来の充填塔、棚段塔または噴霧塔に加えて、特化された吸収塔が特定の方法の要求に合致するように開発された。これらの特定の塔の例として、そらせ板ガス洗浄装置(impingement-plate scrubber)、乱流接触ガス洗浄装置(turbulent contact scrubber)および膜式接触装置が挙げられる。本発明において使用される吸収塔は、最適の方法作動に必要な他の周辺設備も含むことができる。そのような周辺設備には、導入口ガス分離装置、処理ガスコアレッサ、溶媒フラッシュタンク、粒子フィルタおよび炭素床精製装置が含まれ得るが、これらに限定されない。導入口ガス流速は、設備のサイズにより変化するが、典型的には、毎秒5000から25000立方メートルの間である。溶媒循環率は、典型的にはCO2の1トン当たり10から40立方メートルの間である。
【0076】
選択されたガスを吸収したイオン性液体吸収剤からのガスの脱着は、当業者に知られた従来の方法および装置を使用してガスの豊富なイオン性液体吸収剤を処理することにより達成することができる。限定するものでない例として、選択されたガスを吸収したイオン性液体吸収剤からのガスの脱着は、ガスの豊富なイオン性液体吸収剤を、好ましくは脱着塔中で加熱することにより起こすことができる。図1を参照すると、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤は、パイプ4を通り熱交換器5を経て脱着塔6に導かれる。脱着塔6において、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤は加熱されて吸収反応を逆行する。CO2および湿分は脱着塔の塔頂から導管7を経て捕集される。脱着塔は、導管8および10により脱着装置に接続されたリボイラ9により加熱される。リボイラの熱供給源は、好ましくは低圧スチームである。次にCO2稀薄イオン性液体吸収剤は、パイプ11を通り熱交換器5を経て吸収装置2に導かれる。熱交換器5において、稀薄イオン性液体組成物の顕熱が、吸収装置からのCO2の豊富な溶液を加熱するために使用される。
【0077】
図1に記載した実施形態における脱着装置中の典型的な圧力および温度条件は、約1〜5気圧および100℃から150℃である。好ましくは、脱着装置は、リボイラからの105〜135℃の温度の低圧スチームを熱供給源として使用して加熱される。
【0078】
前段落に記載した温度および圧力条件は従来のアミン吸収技法にとって適切なものであること、および本発明による方法では、使用する特定のイオン性液体に応じて、より広い範囲の脱着条件を使用することができることは、やはり当業者により理解されるであろう。例えば、脱着方法は、CO2の豊富な吸収剤を、約20℃と350℃との間の温度で加熱することにより実施することができる。より好ましくは、脱着方法は、40℃と200℃との間、最も好ましくは、40℃と180℃との間で実施することができる。
【0079】
他の実施形態において、CO2の豊富な吸収剤は、それを減圧条件にさらすことにより処理される。「減圧条件」により、当業者は、圧力条件がガス吸収方法の圧力条件に対して相対的に低下していることを理解するであろう。脱着をもたらすために要求される圧力条件は、当業者に知られており、イオン性液体吸収剤の性質に依存するであろう。このような性質には、限定するものでない例として、イオン性液体吸収剤と吸収されたCO2分子との間に形成された相互作用の強度が挙げられる。典型的には、圧力は、吸収方法の作動圧力から、約0.01気圧と100気圧との間に下げられ、好ましくは、圧力は、約0.1気圧と10気圧との間に下げられ、および最も好ましくは、圧力は、約0.1気圧と2気圧との間に下げられるであろう。
【0080】
他の実施形態において、脱着塔は膜接触装置を含むことができる。当業者は、膜および作動条件の選択がイオン性液体吸収剤の性質に依存することを理解するであろう。
【0081】
温度および圧力両方の組合せを、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤からCO2の脱着を達成するために使用できることは理解されるであろう。限定するものでない例として、CO2の豊富な吸収剤は、CO2脱着を促進するための減圧および加熱両方の組合せを使用して処理することができる。
【0082】
本発明による他の実施形態において、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤は、イオン性液体吸収剤が固化するようなイオン性液体吸収剤の融点未満の温度に、CO2の豊富な吸収剤を冷却するかまたはCO2の豊富な吸収剤が冷えるに任せることにより処理することができる。理論に束縛されることは望まず、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤が一旦固化すると、イオン性液体吸収剤と選択されたガスとの間の相互作用が破壊されて、吸収されたガスの脱着が促進されると考えられる。液体から固体への相転移が起こる温度がイオン性液体吸収剤の性質に依存することは、当業者により理解されるであろう。典型的には、本発明によるイオン性液体吸収剤の温度は、イオン性液体吸収剤の融点より約1から約150℃低い温度、より好ましくはイオン性液体吸収剤の融点より約1から約50℃低い温度、および最も好ましくはイオン性液体吸収剤の融点より約1から約20℃低い温度に下げるかまたは下がるに任せることができる。本発明により予期されるイオン性液体の典型的な融点は、当業者に知られており、およそ-50℃から250℃の範囲であり得る。
【0083】
再び、理論に束縛されることは望まず、イオン性液体吸収剤の冷却に伴うエネルギー必要量は比較的小さいことが予想されるので、イオン性液体吸収剤の冷却は脱着を実施する特に有利な方法を代表すると考えられる。当業者により理解されるように、現行のアミン吸収技法に関連する主要な問題の1つは、CO2の豊富なアミン溶液からCO2の脱着を起こすために必要とされる集中的なエネルギー入力である。
【0084】
他の実施形態において、CO2の豊富な吸収剤は、それを電気化学的処理にかけることにより処理することができる。「電気化学的処理」により、当業者は、電気化学ポテンシャルがCO2の豊富なイオン性液体吸収剤に電極を通じて適用されて、その結果、吸収部位の酸化状態(または電子配置)が変化して、イオン性液体吸収剤と吸収されたCO2ガスとの間の相互作用が破壊され、吸収されたガスの脱着が促進されることを理解するであろう。電気化学ポテンシャルがイオン性液体吸収剤の性質に依存することは、当業者により理解されるであろう。電位は、標準水素電極に対して-3.2Vから2.0Vの間であってよい。
【0085】
さらに他の実施形態において、吸収されたCO2は、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤と凝縮性ストリップガスを含有する流体とを接触させることにより脱着される。この方法に適した凝縮性ストリップガスは、当業者に知られており、例えばスチーム(水蒸気)である。一実施形態においては、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤を、フラッシングとして知られる方法で、凝縮性ストリップガスを含有する流体と接触させる。簡単にいえば、CO2の豊富なイオン性液体吸収剤を、向流の凝縮性ストリップガスと接触させる。フラッシングによるガスの脱着に適した装置は、当業者に知られており、例えば、フラッシング塔を含むことができる。流速、温度および圧力を含むが、これらに限定されない作動条件は、当業者が容易に決定することができ、例えば、イオン性液体吸収剤の性質および脱着方法が起こる装置に依存するであろう。
【0086】
CO2吸収方法と脱着方法とは同時に実施することができるか、または代わりに吸収方法と脱着方法とは離散的ステップまたは段階として実施することができるか、のいずれかである。例えば、吸収方法は、CO2放出の現場、例えば工業用地で起こり得る。吸収方法が実施された後、CO2の豊富な吸収剤は、次に放出現場から従来の方法により処理施設に輸送することができて、そこで脱着方法が実施される。例えば、脱着処理施設はCO2の地下貯留の現場付近に位置してもよいが、一方、CO2吸収の現場は、この位置から地理的に離れていてもよい。
【0087】
本明細書中で開示および定義した本発明が、言及したかまたは本文もしくは図面から自明の個々の特徴の2つ以上の全ての別の組合せに拡張されることは理解されるであろう。これらの異なった組合せの全てが、本発明の種々の代替的態様を構成する。
【0088】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており限定するものではない。
【0089】
(実施例)
(実施例1)
<遷移金属を含有する[EMIM][TFSI]>
[金属ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水和物M(TFSI)2・x(水和物)(M=Co、Cu、Ni、Zn)の合成]
金属ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、Earle,M.J.らの方法(非特許文献2;特許文献1(Earle,M.J.著))により合成した。0.02モルのHNTf2を20mLの脱イオン水に溶解して、次に0.01モルの金属水酸化物M(OH)2(M=Cu、Co、Ni)をこの溶液に加えた。懸濁液を約24時間室温で攪拌した後、水を真空中40℃で除去した。得られた生成物を高真空下、60℃で少なくとも24時間乾燥した。水和した生成物を89%〜92%の間の収率で得た。
【0090】
HNTf2・1.25H2O(6g、19.76mmol)の脱イオン水30mL中の溶液に、金属亜鉛(塊)(1.94g、29.64mmol)を加えた。懸濁液を室温で24時間攪拌し、その後pHは7であった。反応液を濾過して、濾液の揮発性成分を真空で除去した。生成物をさらに真空下150℃で終夜乾燥し、白色固体(5.45g、90%)を得た。亜鉛含有率は、ICP-OESにより9.45%(計算値10.45%)であることが見出された。19F NMR 200MHz(DMSO-d6):δ-79.17。
【0091】
M=Co、Cu、Niについて、xはカールフィッシャー測定により2〜4であると見積もられた;M=Znについて、xは、カールフィッシャー測定により大体0.2であると見積もられた。
【0092】
[金属イオン含有IL[EMIM][TFSI]-M(TFSI)2(1:1モル:モル)(M=Co、Ni、Cu、Zn)の調製]
等モル量の[EMIM][TFSI]とM(TFSI)2・xH2Oとを混合し、引き続き真空下70℃で約48時間攪拌した。このようにして得た金属イオン含有ILの含水率はカールフィッシャー測定の検出限界未満であった。
【0093】
[鉄(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド五水和物の合成]
HNTf2・1.25H2O(3.0g、9.88mmol)の脱イオン水30mL中の溶液に、金属鉄粉末(1.5g、26.9mmol)を加えた。懸濁液を室温で72時間攪拌し、その後pHは7であった。反応液を濾過して濾液の揮発性成分を真空で除去した。生成物をさらに真空下75℃で終夜乾燥し、青味を帯びた色調の白色固体を得た(3.10g、Fe(TFSI)2・5H2Oに対して89%)。カールフィッシャー滴定により定量して生成物は5当量の水を有することが見出された。鉄含有率はICP-OESにより7.55%(計算値7.91%)であることが見出された。19F NMR 200MHz (DMSO-d6):δ-79.20。MS (ESI, MeOH) -280.3。
【0094】
[鉄(II)含有IL[EMIM][TFSI]-Fe(TFSI)2(1:0.5モル:モル)の調製]
丸底フラスコに鉄(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.353g、0.50mmol)および1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.39g、1.0mmol)を加えた。混合物を攪拌して、高真空下に75℃で72時間置いた。結果として生じた生成物は透明な粘性油状物であった。
【0095】
[マンガン(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成]
HNTf2・1.7H2O(4.56g、14.6mmol)の脱イオン水25mL中の溶液に炭酸マンガン粉末(1.11g、9.7mmol)を加えた。反応液は発泡してCO2が発生した。反応液を室温で40分間攪拌し、その後pHは7であった。過剰の炭酸マンガンを濾過して、濾液の揮発性成分を真空で除去した。生成物をさらに真空下150℃で終夜乾燥し、白色固体(4.22g、94%)を得た。生成物は、カールフィッシャー滴定により定量して約0.02当量の水を有することが見出された。マンガン含有率はICP-OESにより8.3%(計算値8.9%)であることが見出された。19F NMR 200MHz (DMSO-d6):δ-79.12。MS (ESI, MeOH) -280.2。
【0096】
[マンガン(II)含有IL[EMIM][TFSI]-Mn(TFSI)2(1:0.3モル:モル)の調製]
丸底フラスコに、マンガンビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.50g、0.8mmol)および1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.954g、2.44mmol)を加えた。混合物を攪拌して高真空下に75℃で48時間置いた。結果として生じた生成物は透明な粘性油状物であった。
【0097】
[カドミウム(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成]
HNTf2・1.25H2O(2.0g、6.59mmol)の脱イオン水5mL中の溶液に、炭酸カドミウム(0.568g、3.29mmol)を加えた。反応液は発泡しCO2が発生した。反応液を室温で2.75時間攪拌した。反応混合物を濾過して粒状物を除去し、濾液の揮発性成分を真空で除去した。生成物をさらに真空下150℃で終夜乾燥し、白色固体(2.16g、97%)を得た。生成物は、カールフィッシャー滴定により定量して0.22当量の水を有することが見出された。カドミウム含有率はICP-OESにより16.6%(計算値16.6%)であることが見出された。19F NMR 200MHz(DMSO-d6):δ-79.20。MS (ESI, MeOH) -280.2。
【0098】
[カドミウム(II)含有IL[EMIM][TFSI]-Cd(TFSI)2(1:0.5モル:モル)の調製]
丸底フラスコに、カドミウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.61g、0.91mmol)および1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.71g、1.82mmol)を加えた。混合物をジクロロメタン(5mL)中に溶解して室温で15分間攪拌した。ジクロロメタンを真空で除去して、残渣を高真空下に75℃で16時間置いた。結果として生じた生成物は75℃で透明な粘性油状物であった。しかしながら、それは室温に達すると固化した。MS(ESI、MeOH)-280.2。
【0099】
図2は、純粋な[EMIM][TFSI]について、40℃における吸収が圧力に対して直線的吸収挙動を示し、物理的吸収機構であることを示す。1barにおける吸収容量は0.35wt%である。6.4wt%のZn2+([EMIM]+:Zn2+=1:1モル/モル)をILに添加すると、異なった形状の吸収曲線が生ずる。吸収は0.1barで急勾配の増加を示し、続いて圧力を増加すると凸型形状になる。この凸型形状の吸収曲線は化学的吸収挙動であることを表す。1barで、吸収容量は、40℃および60℃で、それぞれ8.8および0.7wt%である。6.4wt%のZn2+イオンを[EMIM][TFSI]中に導入すると、CO2吸収容量は純粋なILに比較して40℃で25倍増大する。
【0100】
図3および図4は、他の遷移金属Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびCdの効果を示す。6.3wt%のCu2+([EMIM]+:Cu2+=1:1モル/モル))をILに添加しても、1barでのCO2吸収容量は2.3wt%に増加し、すなわち純粋な[EMIM][TFSI]の6.6倍になる。CO2吸収は1bar未満の圧力範囲で急勾配の増加を示し、飽和吸収は1barを超える圧力範囲では2.5wt%に近く、やはり、化学的吸収挙動を示唆する。同様に、3.1wt%のMn2+([EMIM]+:Mn2+=3:1モル/モル)、4.0wt%のFe2+([EMIM]+:Fe2+=2:1モル/モル)、5.8wt%のCo2+([EMIM]+:Co2+=1:1モル/モル)またはNi2+([EMIM]+:Ni2+=1:1モル/モル)を加えると、CO2吸収容量は、1bar、40℃で、それぞれ0.6wt%、1.1wt%、1.23wt%および0.7wt%に増加する。Cd2+の効果は60℃で測定した。7.7wt%のCd2+([EMIM]+:Cd2+=2:1モル/モル)の添加は60℃で3.4wt%のCO2吸収容量を示す。それとの比較で、純粋な[EMIM][TFSI]に対するCO2吸収容量は、60℃で僅か0.27wt%である。
【0101】
(実施例2)
<典型金属を含有する[EMIM][TFSI]>
[マグネシウム(II)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成]
HNTf2・1.25H2O(2.0g、6.59mmol)の脱イオン水10mL中の溶液に、マグネシウムの削りくず(0.08g、3.29mmol)を加えた。反応液は発泡しH2が発生した。反応液を室温で10時間攪拌し、その後pHは7であった。反応混合物を濾過し、粒状物を除去して濾液の揮発性成分を真空で除去した。生成物をさらに真空下150℃で終夜乾燥し、白色固体(1.61、84%)を得た。生成物はカールフィッシャー滴定により定量して0.09当量の水を有することが見出された。マグネシウム含有率は、ICP-OESにより4.23%(計算値4.15%)であることが見出された。19F NMR 200MHz (DMSO-d6):δ-79.18。MS (ESI, MeOH) -280.2。
【0102】
[マグネシウム(II)含有IL[EMIM][TFSI]-Mg(TFSI)2(4:3モル:モル)の調製]
丸底フラスコにマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.75g、1.28mmol)および1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.67g、1.71mmol)を加えた。混合物を高真空下75℃で16時間攪拌した。生成物は透明な粘性油状物であった。質量(ESI)-280.3。
【0103】
[アルミニウム(III)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成]
アルミニウム(III)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、Rocherら(非特許文献3)により記載された方法にしたがって調製した。攪拌棒およびガス接続栓を備えたアルゴン雰囲気下の丸底フラスコ中で、蒸留したばかりのトルエン(3mL)中でのHNTf2(0.949g、3.38mmol)の溶液に、純粋なAlCl3(0.150g、1.13mmol)を加えた。懸濁液は直ちに鮮明な黄色になり、この色は2〜3分以内に褪色し、その間に透明な液体が分離し始めた。ガス発生(HCl)が観察され、容器を時々排気して反応平衡からHClを除去した。毎回の排気後に、アルゴン雰囲気を補充した。反応混合物を5日間放置すると、液体は周囲温度で固化した。上澄みをデカントして、残存固体をヘキサンで洗浄して(3×2mL)、生成物を高真空下40℃で乾燥し、白色固体(0.50g、51%)を得た。元素分析 C6F18N3O12S6Alに対する計算値(%):C8.31、H0.00、N4.84、F39.42;実測値:C7.94、H0.16、N5.15、F38.95。M.p.53.6℃(DSC)。19F NMR 200MHz (DMSO-d6):δ-79.12。
【0104】
[アルミニウム(III)含有IL[EMIM][TFSI]-Al(TFSI)3(1:1モル:モル)の調製]
丸底フラスコにアルミニウム(III)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.311g、0.36mmol)および1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.140g、0.36mmol)を加えた。混合物を攪拌して高真空下に70℃で24時間置いた。結果として生じた生成物は透明な粘性油状物であった。Tg=-63.8℃(DSC)。Tdec=94.2℃(TGA)。
【0105】
典型金属種のCO2吸収に対する効果を図5に示す。2.2wt%のMg2+([EMIM]+:Mg2+=4:3モル/モル)または2.1wt%のAl3+([EMIM]+:Al3+=1:1モル/モル)を[EMIM][TFSI]中に添加すると、CO2吸収容量は、40℃、1barでそれぞれ1.0wt%および2.7wt%に増加した
【0106】
(実施例3)
<Zn2+を含有する[EMIM][DCA]>
[亜鉛ジシアナミドの合成]
亜鉛ジシアナミドは、Manson,J.L.ら(非特許文献4)と同様な方法を使用して調製した。ナトリウムジシアナミド(2.0g、22.46mmol)の脱イオン水(80mL)中の溶液を、亜鉛硝酸塩六水和物(3.34g、11.23mmol)の脱イオン水(40mL)中の攪拌している溶液に加えた。反応液を室温で16時間攪拌し、その後、反応液を濾過して、沈殿を脱イオン水で洗浄した。沈殿を真空下で五酸化リン上に終夜置いて乾燥した。生成物は白色固体(1.63g、76%)であった。融点は300℃(DSC)を超える。
【0107】
[亜鉛(II)含有IL[EMIM][DCA]-Zn(DCA)2(1:0.5モル:モル)の調製]
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(0.448g、2.53mmol)を入れた丸底フラスコに亜鉛ジシアナミド(0.250g、1.26mmol)を加えた。混合物を攪拌して、亜鉛ジシアナミドが全て溶解するまで75℃に加熱した。生成物は透明な黄色油状物であった。
【0108】
図6は、イオン性液体[EMIM][DCA]におけるCO2吸収容量に対する金属種の効果を示す。11.8wt%のZn2+を添加すると、1bar、40℃におけるCO2吸収容量は純粋な[EMIM][DCA]中における0.33wt%から3.7wt%に増大する。
【0109】
(実施例4)
<Zn2+を含有する[C4mpyrr][TFSI]>
[亜鉛(II)含有IL[C4mpyrr][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)の調製]
アルゴン雰囲気下で、RBF含有N-メチル-N-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.313g、0.80mmol)に、無水亜鉛ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(0.500g、0.80mmol)を加えた。混合物を70℃で6時間攪拌し、その後、Zn(TFSI)2の白色粉末はイオン性液体中に完全に溶解して、透明な油状物を生じた。
【0110】
図7は、イオン性液体[C4mpyrr][TFSI]におけるCO2吸収容量に対する金属種の効果を示す。6.2wt%のZn2+を添加すると、CO2吸収容量は1bar、40℃で、純粋な[C4mpyrr][TFSI]の0.22wt%から11wt%に増加し、50倍の増加である。
【0111】
(実施例5)
[脱着]
脱着は、温度スイング手順で温度を上昇させることにより実施する。相転移が起こらないときは、温度が上昇する間、吸収容量は減少することが本発明で検討した全ての系について観察された。このことはCO2吸収が発熱方法であることを表す。例えば、図2に示すように、[EMIM][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)は、温度につれて減少するCO2吸収を示す。吸収されたCO2は、温度スイング手順により、より高い温度で除去される。高い温度(77℃)および低いCO2分圧(8mbar)における[EMIM][TFSI]:Zn(TFSI)2についての脱着方法の例を図8に示す。吸収されたCO2は時間が経つと次第に除去される。
【0112】
温度スイング手順の温度範囲において相転移を示す幾つかのイオン性液体について、より高いCO2吸収容量を高温相で観察することができる。例えば、イオン性液体[EMIM][OAc]-Zn(OAc)2(1:1モル:モル)は、融点が77℃である。それは、図9に示したように40℃よりも90℃でより高い吸収容量を示す。それ故に、脱着はイオン性液体を冷却することにより起こすことができる。
【0113】
(実施例6)
[イオン性液体の液相線温度]
イオン性液体の液相線温度は融点(またはガラス転移温度)と分解温度との間にある。融点およびガラス転移温度はTA示差走査熱量計(DSC)2910により測定した。約10mgの試料をAlの気密皿中に封じた。試料を液体窒素により10〜20℃分-1で-150℃に冷却した。DSC軌跡を10℃分-1で加熱中に記録した。
【0114】
分解温度はTA熱重量分析計(TGA)2050により測定した。約10mgの試料をAl皿に載せた。試料の重量を10℃分-1で加熱中に記録した。分解温度はDSC測定により知ることもできる。
【0115】
イオン性液体の液相線温度および分解温度を表1でリストにした。図10は、ILの幾つかの例の熱的安定性を示す。[EMIM][TFSI]-CO(TFSI)2(1:1モル:モル)、[EMIM][TFSI]-Ni(TFSI)2(1:1モル:モル)、[EMIM][TFSI]-Cu(TFSI)2(1:1モル:モル)および[EMIM][TFSI]-Zn(TFSI)2(1:1モル:モル)に対する分解温度は、それぞれ352℃、379℃、195℃および355℃である。
【0116】
【表1】

【符号の説明】
【0117】
1 導管
2 吸収塔
3 導管
4 パイプ
5 熱交換器
6 脱着塔
7 導管
8 導管
9 リボイラ
10 導管
11 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを流体から吸収する方法であって、選択されたガスを含有する流体と、
以下の成分:
1種または複数種のアニオンと、
1種または複数種の金属種と、
場合により、1種または複数種の有機カチオンと、
場合により、1種または複数種のリガンドと、
を含むイオン性液体吸収剤であって、前記吸収剤が前記方法の作動する温度および圧力で液体状態であるように前記吸収剤の各成分が選択される、イオン性液体吸収剤と、
を提供するステップであって、
ただし、
前記アニオンが、アミン官能基およびスルホネート官能基の両方、アミン官能基およびカルボキシレート官能基の両方、ホスフィン官能基およびスルホネート官能基の両方、またはホスフィン官能基およびカルボキシレート官能基の両方を同じ分子実体中に含有する場合、前記金属種はアルカリ金属でもアルカリ土類金属でもなく、
前記アニオンおよび/または金属種は銅酸塩を形成せず、
前記アニオンおよび/または金属種が金属ハロゲン化物を形成する場合、前記イオン性液体吸収剤は1種または複数種のリガンドを含む、ステップと、
前記選択されたガスが前記金属種と相互作用するように、前記流体と前記イオン性液体吸収剤とを接触させるステップと、
前記選択されたガスの少なくとも一部を吸収したイオン性液体を捕集するステップと、
を含む、二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを流体から吸収する方法。
【請求項2】
前記アニオンが、置換アミド;置換イミド;安定なカルボアニオン;ヘキサハロホスフェート;テトラハロボレート;ハライド;シアネート;イソシアネート;チオシアネート;無機硝酸塩;有機硝酸塩;亜硝酸塩;オキシ硫黄種;スルホネート;オキシリン種;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;混合置換されたホスフェートジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェート;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェート;ハロゲン、アルキルまたはアリールで混合置換されたホスフェート;カルボキシレート;カーボネート;シリケート;オルガノシリケート;ボレート;アルキルボラン;アリールボラン;脱プロトン化された酸性複素環化合物;アルキルオキシ化合物;アリールオキシ化合物;α〜ωジケトネート;α〜ωアセチルケトネート;および金属錯体イオンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種または複数種の金属種が3d遷移金属、4d遷移金属、5d遷移金属、2a族典型金属および3a族典型金属からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属種が3d遷移金属である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属種が4d遷移金属である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記金属種が2a族典型金属である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記金属種が3a族典型金属である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記金属種が2b遷移金属である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記金属種が前記イオン性液体吸収剤に溶解している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属種が前記イオン性液体吸収剤に懸濁または分散している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン性液体吸収剤が1種または複数種の有機カチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記有機カチオンが、ボロニウム(R2L'L''B+)、カルボカチオン(R3C+)、アミジニウム(RC(NR2)2+)、グアニジニウム(C(NR2)3+)、シリリウム(R3Si+)、アンモニウム(R4N+)、オキソニウム(R3O+)、ホスホニウム(R4P+)、アルソニウム(R4As+)、アンチモニウム(R4Sb+)、スルホニウム(R3S+)、セレノニウム(R3Se+)、ヨードニウム(IR2+)カチオン、およびそれらの置換誘導体からなる群から選択され、式中、
Rは、Y、YO-、YS-、Y2N-またはハロゲンからなる群から独立に選択され、
Yは、1価の有機基またはHであり、
L'およびL''は、同一であっても異なっていてもよいリガンドであり、L'およびL''は全体としての正味の電荷がゼロである、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Yが1価の有機基である場合、前記有機カチオンは、正の形式電荷中心を含む環系を形成するように第2の1価の有機基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機カチオンが、1つまたは複数のヘテロ原子を場合により含有する飽和または不飽和の環式または非環式カチオンである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記有機カチオンが、置換および非置換のピリジニウム(C5R6N+)、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム(C3R5N2+)、ピラゾリウム、チアゾリウム、トリアゾリウム(C2R4N3+)、オキサゾリウム、ならびに置換および非置換の多環系相当物からなる群から選択される不飽和複素環カチオンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記有機カチオンが、置換および非置換のピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、モルホリニウム、アゼパニウム、イミダゾリニウム(C3R7N2+)、およびそれらの置換および非置換の多環系相当物からなる群から選択される飽和複素環カチオンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン性液体吸収剤が1つまたは複数のリガンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記選択されたガスが二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記選択されたガスと前記金属種との間の相互作用が、前記選択されたガスの吸収のための主要な機構である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを吸収したイオン性液体から、ガスを脱着する方法であって、
1種または複数種の選択されたガスを吸収したイオン性液体吸収剤を提供するステップと、
前記選択されたガスを吸収したイオン性液体吸収剤を、ガスが放出されるように処理するステップと、
前記放出されたガスを捕集するステップと、
を含み、
前記イオン性液体吸収剤は、以下の成分:
1種または複数種のアニオンと、
1種または複数種の金属種と、
場合により、1種または複数種の有機カチオンと、
場合により、1種または複数種のリガンドと、
を含み、前記吸収剤が前記方法の作動する温度および圧力で液体状態あるように前記吸収剤の各成分が選択され、
ただし、
前記アニオンが、アミン官能基およびスルホネート官能基の両方、アミン官能基およびカルボキシレート官能基の両方、ホスフィン官能基およびスルホネート官能基の両方、またはホスフィン官能基およびカルボキシレート官能基の両方を同じ分子実体中に含有する場合、前記金属種はアルカリ金属でもアルカリ土類金属でもなく、
前記アニオンおよび/または金属種は銅酸塩を形成せず、
前記アニオンおよび/または金属種が金属ハロゲン化物を形成する場合、前記イオン性液体吸収剤は1種または複数種のリガンドを含む、二酸化炭素、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物および一酸化炭素からなる群から選択される1種または複数種のガスを吸収したイオン性液体から、ガスを脱着する方法。
【請求項21】
前記アニオンが、置換アミド;置換イミド、安定なカルボアニオン;ヘキサハロホスフェート;テトラハロボレート;ハライド;シアネート;イソシアネート;チオシアネート;無機硝酸塩;有機硝酸塩;亜硝酸塩;オキシ硫黄種;スルホネート;オキシリン種;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェートモノ、ジおよびトリエステル;混合置換されたホスフェートジおよびトリエステル;場合により置換および/またはハロゲン化されたアルキルホスフェート;場合により置換および/またはハロゲン化されたアリールホスフェート;ハロゲン、アルキルまたはアリールで混合置換されたホスフェート;カルボキシレート;カーボネート;シリケート;オルガノシリケート;ボレート;アルキルボラン;アリールボラン;脱プロトン化された酸性複素環化合物;アルキルオキシ化合物;アリールオキシ化合物;α〜ωジケトネート;α〜ωアセチルケトネート;および金属錯体イオンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1種または複数種の金属種が、3d遷移金属、4d遷移金属、5d遷移金属、2a族典型金属および3a族典型金属からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記金属種が3d遷移金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記金属種が4d遷移金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記金属種が2a族典型金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記金属種が3a族典型金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記金属種が2b遷移金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記金属種が前記イオン性液体吸収剤に溶解している、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記金属種が前記イオン性液体吸収剤中に懸濁または分散している、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記イオン性液体吸収剤が1種または複数種の有機カチオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記有機カチオンが、ボロニウム(R2L'L''B+)、カルボカチオン(R3C+)、アミジニウム(RC(NR2)2+)、グアニジニウム(C(NR2)3+)、シリリウム(R3Si+)、アンモニウム(R4N+)、オキソニウム(R3O+)、ホスホニウム(R4P+)、アルソニウム(R4As+)、アンチモニウム(R4Sb+)、スルホニウム(R3S+)、セレノニウム(R3Se+)、ヨードニウム(IR2+)カチオン、およびそれらの置換誘導体からなる群から選択され、式中、
Rは、Y、YO-、YS-、Y2N-またはハロゲンからなる群から独立に選択され、
Yは1価の有機基またはHであり、
L'およびL''は、同一であっても異なっていてもよいリガンドであり、L'およびL''は全体として正味の電荷がゼロである、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Yが1価の有機基であるとき、前記有機カチオンは、正の形式電荷中心を含む環系を形成するように、第2の1価の有機基を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記有機カチオンが、1つもしくは複数のヘテロ原子を場合により含有する飽和または不飽和の環式または非環式カチオンである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記有機カチオンが、置換および非置換のピリジニウム(C5R6N+)、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム(C3R5N2+)、ピラゾリウム、チアゾリウム、トリアゾリウム(C2R4N3+)、オキサゾリウム、および置換および非置換の多環系相当物からなる群から選択される不飽和複素環カチオンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記有機カチオンが、置換および非置換のピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、モルホリニウム、アゼパニウム、イミダゾリニウム(C3R7N2+)、およびそれらの置換および非置換の多環系相当物からなる群から選択される飽和複素環カチオンである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン性液体吸収剤が1つまたは複数のリガンドを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記選択されたガスが二酸化炭素である、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記選択されたガスの脱着が電気化学的方法により達成される、請求項20に記載の方法。
【請求項39】
前記選択されたガスの脱着が、前記1種または複数種の選択されたガスを吸収したイオン性液体を冷却することにより達成される、請求項20に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2013−500152(P2013−500152A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521909(P2012−521909)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000960
【国際公開番号】WO2011/011830
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】