説明

イオン水生成装置及び同装置に使用するバブル発生ノズル

【課題】電気分解を必要とすることなくアルカリイオン水を生成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】水内に気泡径が50μm以下のマイクロバブルを発生させてイオン水を生成するイオン水生成方法である。そして、水源3へ接続され、水内の不純物を除去するための不純物除去手段5と、上記不純物除去手段5から供給された水内に空気を溶解した溶解水を製造する溶解水製造手段7と、注水ノズル9を備えた容器11と、前記溶解水製造手段7から供給された溶解水から前記容器11内にマイクロバブルを発生させるためのバブル発生ノズル13とを備えており、容器11の上部に空間部17を備えている。前記バルブ発生ノズル13は、オリフィス45と、微細目の網部材47を備えた圧力解放室49と、水の流れ方向を屈曲するための流れ方向屈曲部と、前記流れ方向屈曲部を通過した水を対流すると共に圧力解放を行う対流室29とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルカリイオン水等のイオン水を生成する方法及び装置並びに同方法に使用するバブル発生ノズルに係り、さらに詳細には、イオン交換膜,陰極,陽極を必要としないでイオン水を生成する方法及びその装置並びにバブル発生ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアルカリイオン水を生成する場合、容器内を、イオン交換膜によって正極側と負極側とに区画し、上記容器内に電気分解される水を入れ、前記両極間に通電することにより、正極側に酸性イオン水を生成し、負極側にアルカリイオン水を生成している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−25016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のイオン水生成方法においては、酸性イオン水とアルカリイオン水とが生成されるので、例えばアルカリイオン水が必要で、酸性イオン水が必要でない場合には、酸性イオン水が無駄になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、水内に気泡径が50μm以下のマイクロバブルを発生させてイオン水を生成するイオン水生成方法である。
【0005】
また、水源へ接続され、水内の不純物を除去するための不純物除去手段と、上記不純物除去手段から供給された水内に空気を溶解した溶解水を製造する溶解水製造手段と、注水ノズルを備えた容器と、前記溶解水製造手段から供給された加圧溶解水から前記容器内にマイクロバブルを発生させるためのバブル発生ノズルとを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
気泡径が50μm以下のマイクロバブルは負に帯電しているので、水内にマイクロバブルを発生することによりアルカリイオン水が生成される。この際、容器内の水が全てアルカリイオン水になるので、換言すれば、酸性イオン水が生成されることがないので、水を無駄にするようなことが解消されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るイオン水生成装置1は、例えば水道などの水源3に接続され水内の不純物を除去するための不純物除去手段5を備えている。この不純物除去手段5は、活性炭や中空系膜等を内部に備えた一般的な浄水器よりなるものである。
【0008】
上記不純物除去手段5には、空気を溶解した溶解水を製造するための溶解水製造手段7が接続してある。この溶解水製造手段7は、空気導入部8から導入される空気を、前記不純物除去手段5から送給される水内に溶解する作用をなすものである。なお、この種の溶解水製造手段7は、公知であるから、溶解水製造手段7についてのより詳細な説明は省略する。
【0009】
前記溶解水製造手段7には、注水ノズル9を備えた容器11に取付けたバブル発生ノズル13に接続してある。前記バブル発生ノズル13は、前記溶解水製造手段7から供給された溶解水から前記容器11内に気泡径が50μm以下のマイクロバブルを発生させるためのもので、その構造については後述する。
【0010】
前記容器11は密閉容器であって、上部に前記注水ノズル9を備えている。より詳細には、前記注水ノズル9の内端部9Eは、前記容器11における上部内面11Fよりも下側に位置しており、前記容器11内に水15が供給されたとき、容器11の上部に空間部17が形成される構成である。なお、前記容器11の上部を開口し、容器11の最上部よりも僅かに下側に前記注水ノズル9の取付部を水平に取付けることも可能である。
【0011】
前記気泡発生用ノズル(バブル発生ノズル)13は、図2に示すように、前記容器11に取付けるための取付部を備えた構成であって、前記容器11の外側に取付け自在のノズル本体19と、当該ノズル本体19に対して前記容器11の内側から着脱可能の内側本体21とを備えている。
【0012】
前記ノズル本体19は、前記容器11の外側へ取付ける外側本体23を備えており、前記外側本体23は大略円筒形状をなすものであって、前記容器11の外面に当接自在のフランジ部25を備えている。前記内側本体21は、前記容器11に形成した穴27を貫通して前記外側本体23の大径穴29の内周面に形成した螺子部へ螺入自在の円筒部31を備えると共に、前記外側本体23の前記フランジ部25との間に前記容器11を挟み込み自在のフランジ部33を備えた構成である。
【0013】
したがって、前記容器11の穴27に対応して外側本体23を位置せしめると共に、容器11の内側から内側本体21の円筒部31を前記外側本体23の大径穴29の螺子部に螺入して強固に締付けることにより、前記容器11に対してノズル本体19を取付けることができるものである。
【0014】
なお、バブル発生ノズル13を容器11に対して取付ける構成としては、前記構成に限ることなく、適宜の構成を採用することができる。すなわち、ノズル本体19を、内側本体21と外側本体23とを予め一体的又は一体に備えた構成となし、容器11に予め一体に備えたパイプ状のねじ体に、ノズル本体19を一体的に螺合(螺入)する構成とすることも可能である。すなわち、バブル発生ノズル13を容器11に取付ける構成としては、種々の構成を採用することができる。
【0015】
前記外側本体23における底部(大径穴29の奥の部分)35には、前記溶解水製造手段7から供給される飽和溶液(加圧溶解水)の流路を形成する流入口37が形成してある。この流入口37は、前記溶解水製造手段7との接続部をなすものであって、前記底部35から前記大径穴29内へ突設した円筒形状の中空パイプ39に連通してある。この中空パイプ39の内孔41は前記流入口37に連続した流路を構成するものである。
【0016】
流路としての前記内孔41内には適数の小孔43を備えたオリフィス45が着脱可能に嵌入固定してあり、前記流入口37から流入した流体の流れ方向に見て、前記オリフィス45の下流側(図2においての左側)には網部材47が着脱可能に配置してある。
【0017】
上記網部材47は、例えば30メッシュ〜60メッシュ程度の細い網目の網体を複数枚重ね合せた構成である。この網部材47は、図2に示すように、前記オリフィス45の下流側の面に接触してあること、あるいは一体的に設けてあることが望ましいが、前記網部材47を前記オリフィス45から下流側に適宜に離して配置した構成とすることもできるものである。
【0018】
前記オリフィス45及び網部材47を固定するために、前記中空パイプ39の先端部には、内孔49の奥の部分を奥壁部51によって閉じた嵌合パイプ53が螺合固定してあり、前記奥壁部51より僅かに上流側(図2において右側)の位置には、前記内孔49内の流体の流れ方向を屈曲するための流れ方向屈曲部が設けてある。すなわち、前記嵌合パイプ53の周壁には、対流室としての前記大径穴29側へ開口した開口部55が複数設けてある。この開口部55は、大きな貫通穴に形成することができるが、開口部55としては、前記網部材47と同様の網部材を備えた構成又は複数の小孔(例えば数mmの径)を備えた構成とすることが望ましいものである。
【0019】
前記対流室としての大径穴29は、前記開口部55を経て流入した流体を対流させ撹拌する作用をなすものであって、この対流室(大径穴29)に対応して前記内側本体21には複数の出口57を備えた円板状のキャップ59が着脱可能に螺入固定してある。前記出口57には前記網部材47と同程度に細い目の網部材を設けることも可能である。また出口57を数mm径の小孔とすることが望ましいものである。
【0020】
以上のごとき構成において、水源3から水を供給すると、水内の不純物が不純物除去手段5によって除去され、浄水となって溶解水製造手段7に供給される。上記溶解水製造手段7においては、空気導入部8から導入される空気を前記水内に溶解して加圧した状態にある溶解水(飽和溶液)が製造される。そして、前記溶解水製造手段7において製造された溶解水(加圧溶解水)をバブル発生ノズル13に供給すると、前記容器11内に例えば気泡径が1μm〜20μmのマイクロバブルを発生し、容器11内を乳白色化すると共に容器11内の水をアルカリイオン化し、注水ノズル9から外部へ注水されるものである。
【0021】
前述のように溶解水をバブル発生ノズル13に供給すると、溶解水は中空パイプ39の内孔41に備えたオリフィス45の小孔43を通過して網部材47方向へ噴射される。溶解水が前記小孔43を通過して圧力解放室としての内孔49に流入すると、急激に圧力が解放されて減圧されるので、溶解していた空気が気泡として発生する。この発生した気泡は微細網目の網部材47を通過することにより細分化されると共に解放室49の奥壁部51に激突(衝突)し撹拌されて、さらに細分化される。
【0022】
その後、前記奥壁部51に衝突された溶解水は、流れ方向を屈曲されて開口部55から大径穴29内に流入する。この大径穴29の容積は前記圧力解放室49の容積よりも大きく第2の圧力解放室をなすものである。この第2の圧力解放室29としての大径穴内に流入した溶解水は、この圧力解放室29の内面に衝突して撹拌され対流すると共にさらに減圧されるので、さらに気泡が発生する。この際、第2の圧力解放室(対流室)内において、気泡を含む溶解水は対流,撹拌されるので、気泡はさらに細分化される。そして、出口57から気泡径が1〜3μmの大量(約8リットル/min 、その密度は10000〜15000個/cm3 )のマイクロバブルを含む水として容器11に供給される。なお、前記出口57にも微細目の網部材を設けることが望ましい。
【0023】
前記容器11内の水内のマイクロバブルは水中に長時間漂い、一部はゆらゆらと上昇して水面で破裂し、また一部は自己縮小してナノバブルになる。また一部は注水ノズル9から外部へ流出する。
【0024】
ところで、水の中で浮遊する気泡を限りなく小さくし、気泡径が50μm程度以下のマイクロバブルになると、通常の水においては、マイクロバブルの表面がマイナスに帯電することが知られている(産業技術総合研究所(茨城県つくば市)、環境管理研究部門、環境流体工学研究グループの高橋正好主任研究員の研究による)。そして、水には極く一部であるが、水素イオン(H)と水酸イオン(OH)というイオンの形で存在していることも知られている。
【0025】
そこで、産業技術総合研究所、環境管理部門、環境流体工学研究グループの高橋研究室の水道水と、上記水道水を用い、前記構成のバブル発生ノズル13を使用しマイクロバブルを発生した後のpH(水素イオン濃度),ORP(酸化還元電位)、COND(導電率)を、測定器として堀場製作所、D−54型、pHメータを用いて3回測定したところ、表1,表2に示すごとき測定結果が得られた。
【表1】

【表2】

【0026】
上記表1,表2より明らかなように、水道水は中性であり、マイクロバブルを発生した後の水はアルカリ性に変化していることが分かる。
【0027】
すなわち、前述したように、マイクロバブルがマイナスに帯電することにより、プラスイオンの水素イオンと結合するので、水内のイオンのバランスが崩れ、また、マイクロバブルが破裂するときに引き寄せた水素イオンが空気中に放出されることもあり、水中の水酸イオンが水素イオンに比較して相対的に多くなり、液性がアルカリ性になるものである。
【0028】
以上のごとき説明より理解されるように、本実施形態によれば、容器11内の水を全てアルカリ性にすることができ、酸性の水が生成されるようなことがないので、水を有効利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るイオン水生成装置の概略的、概念的な説明図である。
【図2】バブル発生ノズルの断面説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 イオン水生成装置
3 水源
5 不純物除去手段
7 溶解水製造手段
9 注水ノズル
11 容器
13 バブル発生ノズル
17 空間部
19 ノズル本体
21 内側本体
23 外側本体
29 大径穴(圧力解放室)
37 流入口
39 中空パイプ
45 オリフィス
47 網部材
49 内孔(圧力解放室)
51 奥壁部
55 開口部
57 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水内に気泡径が50μm以下のマイクロバブルを発生させてイオン水を生成することを特徴とするイオン水生成方法。
【請求項2】
水源への接続部と、水内の不純物を除去するための不純物除去手段と、上記不純物除去手段から供給された水内に空気を溶解した溶解水を製造する溶解水製造手段と、注水ノズルを備えた容器と、前記溶解水製造手段から供給された加圧溶解水から前記容器内にマイクロバブルを発生させるためのバブル発生ノズルとを備えていることを特徴とするイオン水生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン水生成装置において、容器の上部に空間部を備えていることを特徴とするイオン水生成装置。
【請求項4】
容器内にマイクロバブルを発生させるためのバルブ発生ノズルであって、前記容器への取付部と、空気を水に溶解するための溶解水製造手段から送給される溶解水の流路内に配置されたオリフィスと、このオリフィスの下流側に設けられ微細目の網部材を備えた圧力解放室と、前記網部材を通過した後の水の流れ方向を屈曲するための流れ方向屈曲部と、前記流れ方向屈曲部を通過した水を対流すると共に圧力解放を行う対流室とを備えていることを特徴とするバブル発生ノズル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源への接続部と、水内の不純物を除去するための不純物除去手段と、上記不純物除去手段から供給された水内に空気を溶解した溶解水を製造する溶解水製造手段と、注水ノズルを備えた容器と、前記溶解水製造手段から供給された加圧溶解水から前記容器内に空気の気泡径が50μm以下のマイクロバブルを発生させるために前記容器の壁面に取付けられたバブル発生ノズルとを備え、このバルブ発生ノズルは、前記容器への取付部と、空気を水に溶解するための溶解水製造手段から送給される溶解水の流路内に配置されたオリフィスと、このオリフィスの下流側に設けられ微細目の網部材を備えた圧力解放室と、前記網部材を通過した後の水の流れ方向を屈曲するための流れ方向屈曲部と、前記流れ方向屈曲部を通過した水を対流すると共に圧力解放を行う対流室とを備えていることを特徴とするイオン水生成装置
【請求項2】
容器内にマイクロバブルを発生させるためのバルブ発生ノズルであって、前記容器への取付部と、空気を水に溶解するための溶解水製造手段から送給される溶解水の流路内に配置されたオリフィスと、このオリフィスの下流側に設けられ微細目の網部材を備えた圧力解放室と、前記網部材を通過した後の水の流れ方向を屈曲するための流れ方向屈曲部と、前記流れ方向屈曲部を通過した水を対流すると共に圧力解放を行う対流室とを備えていることを特徴とするバブル発生ノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−43642(P2006−43642A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231488(P2004−231488)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【特許番号】特許第3672918号(P3672918)
【特許公報発行日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(598127789)資源開発株式会社 (7)
【Fターム(参考)】