説明

イオン注入システムのターミナル構造体のための絶縁体系

イオン注入システムは、イオンビームを供給するイオン源と、イオン源が少なくとも部分的に配置されるキャビティを定めるターミナル構造体と、絶縁体系とを備える。絶縁体系は、ターミナル構造体を電気的に絶縁し、ターミナル構造体の少なくとも1つの外側表面近傍の領域内に約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供する。イオン注入システムのガスボックスを電気的に絶縁するガスボックス絶縁体系も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン注入に関し、より詳しくは、イオン注入システムのターミナル構造体のための絶縁体系に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、導電性を変化させる不純物を半導体ウェハに導入するための標準的な技術である。望ましい不純物材料がイオン源においてイオン化され、イオンが加速されて所定のエネルギーを有するイオンビームを形成し、当該イオンビームは、ウェハの前面に向けられうる。ビーム内のエネルギーを有するイオンが半導体材料の大部分に浸透し、半導体材料の結晶格子内に入り込む。イオンビームは、ビーム走査、ウェハの移動、または、それらの組合せによってウェハ全体に分散されうる。
【0003】
イオンビームのイオンには異なる運動エネルギーが与えられうる。注入するイオンの質量などの他の因子と同様に、付与されるエネルギーもイオンが半導体ウェハに注入される深さに影響を及ぼしうる。一般的に、他のすべてのパラメータが等しい場合、エネルギーが低いと注入は浅く、エネルギーが高いと注入は深くなる。
【0004】
異なるイオン注入システムは、イオンビームのイオンに運動エネルギーを付与する1つ以上の方法を利用しうる。エネルギーを付与する1つの方法は、DC電位差によってイオンを加速させる直線DC加速である。電位差が大きいほど、多くのエネルギーが与えられる。その後、質量分析器がイオンビームを受け、受け取ったイオンビームから望ましくない種を除去しうる。他のマグネットは、ビームを平行化してウェハへと導く。直線DC加速など質量分析器の前にある加速は、前加速とも呼ばれ、一方、質量分析器の後、または、下流にあるさらなる加速は、後加速と呼ばれることもある。本願明細書中で使用する「上流」および「下流」は、イオンビーム輸送の方向で引き合いに出される。
【0005】
直線DC加速は、1つ以上の電源を利用して直流電位を提供しうる。電源は、イオン源に結合された引出電源を含み、従来の1つのシステムにおいて約70キロボルト(kV)の電圧を供給しうる。イオン源は、ターミナル構造体により定められるキャビティ内に少なくとも部分的に配置されうる。ターミナル構造体は、従来技術では、しばしば「ターミナル」または「高電圧ターミナル」ともよばれうる。ターミナル構造体は、独立した加速電源により200kVの電圧が印加にされうる。引出電源からの電圧70kVと加速電源からの電圧200kVとを結合させることにより、1価の荷電イオンでは270キロ電子ボルト(keV)までのエネルギー、2価の荷電イオンでは540keVまでのエネルギー、および、3価の荷電イオンでは810keVまでのエネルギーが得られる。
【0006】
この810keVのエネルギーは、多くの用途に適しているが、さらに大きいエネルギーを必要とする用途もありうる。例えば、フラッシュメモリなどのいくつかの半導体メモリは、特に深い井戸構造を形成するための高エネルギーイオン注入システムを必要とする。それゆえ、従来の他の高エネルギーイオン注入システムは、1メガ電子ボルト(MeV)以上のエネルギーを提供するように構成されうる。このような従来の高エネルギーイオン注入システムは、質量分析器の下流で加速器を利用しうる。質量分析器の下流にある加速器は、従来技術においては周知であるDCタンデム型加速器またはRF線形加速器であってよい。DCタンデム型加速器およびRF線形加速器は、高エネルギーを提供するには有効であるが、質量分析器で質量が分析されたイオンの約50%未満しか半導体ウェハの注入に利用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イオン注入システムは、イオン注入システムが開いているときにイオン注入システムの構成要素およびサブシステムを保護し、高電圧の危険性から作業者を保護するためのエンクロージャも含みうる。製造施設の空間コストを削減すべく、エンクロージャ、または、「設置面積」のサイズは制限することが望ましい。また、構成要素およびサブシステムの輸送は容易であることが望ましい。半導体の大量製造において用いられる従来の直線DC加速方法のほとんどは、ターミナル構造体をエンクロージャから絶縁するには空気だけが用いられ、設置面積の制約条件がターミナル構造体からエンクロージャまでの距離を制限するので、ターミナル構造体の電圧が200kVに制限されている。
【0008】
したがって、イオン注入システムのターミナル構造体のための絶縁体系を提供することが望ましい。また、妥当なサイズのエンクロージャ設置面積を有するターミナル構造体を高電圧にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の側面によれば、イオン注入システムが提供される。イオン注入システムは、イオンビームを供給するイオン源と、イオン源が少なくとも部分的に配置されるキャビティを定めるターミナル構造体と、ターミナル構造体を電気的に絶縁する絶縁体系とを含む。絶縁体系は、ターミナル構造体の少なくとも1つの外側表面近傍の領域内に約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供する。
【0010】
他の側面によれば、他のイオン注入システムが提供される。イオン注入システムは、イオンビームを供給するイオン源と、イオン源にイオン化されるべきガスを供給するガスボックスと、キャビティを定めるターミナル構造体とを含む。イオン源およびガスボックスは、キャビティ内に少なくとも部分的に配置される。イオン注入システムは、ターミナル構造体を電気的に絶縁するターミナル構造体絶縁体系をさらに含む。ターミナル構造体絶縁体系は、ターミナル構造体の少なくとも1つの外側表面近傍の領域内に約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供する。イオン注入システムは、ガスボックスを電気的に絶縁するガスボックス絶縁体系をさらに含む。ガスボックス絶縁体系は、ガスボックスの対応する外側表面と接触する少なくとも一方の面を有する少なくとも1つの固体絶縁体を含む。イオン注入システムは、イオン源の下流に配置される質量分析器も含む。質量分析器は、イオンビームから望ましくないイオン種を除去する。イオン注入システムは、質量分析器の下流に配置されたエンドステーションをさらに含む。エンドステーションは、ウェハを支持する表面を有するプラテンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の理解をより深めるべく、添付の図面への参照がなされる。図面は、参照により本願明細書に組み込まれる。
【0012】
【図1】イオン注入システムを示す概略ブロック図である。
【0013】
【図2】図1のターミナル構造体を示す概略ブロック図である。
【0014】
【図3】固体絶縁体で形成された4つの面を有する絶縁体系の第1の実施形態を示す透視図である。
【0015】
【図4】図3をA−Aラインで切断した第1の実施形態の断面図である。
【0016】
【図5】固体絶縁体で形成された5つの面を有する絶縁体系の第2の実施形態の斜視図である。
【0017】
【図6】図5をA−Aラインで切断した第2の実施形態の断面図である。
【0018】
【図7】絶縁体系の第3の実施形態の斜視図である。
【0019】
【図8】図7をA−Aラインで切断した第3の実施形態を示す断面図である。
【0020】
【図8A】図7をB−Bラインで切断した図7の絶縁体の一実施形態を示す断面図である。
【0021】
【図8B】図7をB−Bラインで切断した図7の絶縁体の他の実施形態を示す断面図である。
【0022】
【図9】液体絶縁体を有する絶縁体系の第4の実施形態を示す断面図である。
【0023】
【図10】加圧ガス絶縁体を有する絶縁体系の第5の実施形態を示す概略ブロック図である。
【0024】
【図11】1つの面を有する第1の実施形態におけるガスボックス絶縁体系を有する図1のガスボックスを示す斜視図である。
【0025】
【図12】2つの面を有する第2の実施形態におけるガスボックス絶縁体系を有する図1のガスボックスを示す斜視図である。
【0026】
【図13】3つの面を有する第3の実施形態におけるガスボックス絶縁体系を有する図1のガスボックスを示す斜視図である。
【0027】
【図14】4つの面を有する第4の実施形態におけるガスボックス絶縁体系を有する図1のガスボックスを示す斜視図である。
【0028】
【図15】5つの面を有する第5の実施形態におけるガスボックス絶縁体系を有する図1のガスボックスを示す分解斜視図である。
【0029】
【図16】図15の第5の実施形態を示す組立斜視図である。
【0030】
【図17】図16をA−Aラインで切断した断面図である。
【0031】
【図18】6つの面を有する第6の実施形態におけるガスボックス絶縁体系を有する図1のガスボックスを示す分解斜視図である。
【0032】
【図19】図18の第6の実施形態を示す組立斜視図である。
【0033】
【図20】図19をA−Aラインで切断した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本願明細書中に記載される発明は、半導体ウェハに注入するイオン注入システムに関連する。しかしながら、本発明は、フラットパネルディスプレイなどの異なるワークピースに注入する他のイオン注入システムと共に用いられてもよい。したがって、本発明は、以下に記載される特定の実施形態に限定されない。
【0035】
図1は、イオン注入システム100を示すブロック図である。イオン注入システム100は、イオンビーム152を供給するイオン源102を含む。イオン源102は、イオンを生成することができ、ガスボックス106からのガスを収容するイオンチャンバを含みうる。ガスボックス106は、イオンチャンバに、イオン化されるべきガスを供給しうる。ガスボックス106は、ソースガスに加え、電源などの従来技術において知られる他の構成要素も含みうる。電源は、アーク、フィラメント、および、ソース102を駆動するバイアス電源を含みうる。ガスボックス106は、絶縁トランスを介し電位を上げられる。ガスボックス106は、商用電源の配電のための分電盤も含みうる。このようにしてイオンはイオン源102内で形成されて、イオン源102から抽出される。イオン源の構造および動作は、当業者にはよく知られている。
【0036】
イオン注入システム100は、従来技術では「ターミナル」または「高電圧ターミナル」とも呼ばれることがあるターミナル構造体104も含む。ターミナル構造体104は、キャビティ110を定めることができ、イオン源102は、キャビティ110内に少なくとも部分的に配置されうる。イオン注入システム100は、ターミナル構造体104を電気的に絶縁する絶縁体系162をさらに含みうる。絶縁体系162は、ターミナル構造体104の少なくとも1つの外側表面近傍の領域に約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供する。
【0037】
一例を挙げると、絶縁体系162は、約72kV/インチより大きい絶縁耐力を有する少なくとも1つの絶縁体171を含みうる。少なくとも1つの絶縁体171は、固体絶縁体、液体絶縁体、または、本願明細書中の実施形態でさらに詳細に説明されるような加圧ガスであってよい。絶縁体系162は、固体、液体、加圧ガス、および、空気の組合せも含みうる。イオン注入システム100は、エンクロージャ112も含みうる。エンクロージャ112は、内部体積を定めることができ、ターミナル構造体104は、当該内部体積に配置されうる。
【0038】
イオン注入システム100の動作中は、いくつかの例では、ターミナル構造体104には少なくとも300kVの電圧が印加される。他の実施形態では、ターミナル構造体104には600kVの電圧が印加され、また、さらに他の例では、ターミナル構造体104には全く電圧が印加されないか、または、イオンビームの望ましいエネルギーのみに依存する公称値の電圧が印加される。絶縁体系162は、絶縁破壊なしにエンクロージャ112の電気的アースからターミナル構造体104を電気的に絶縁させるのに十分な絶縁耐力を有しうる。
【0039】
ターミナル構造体104および関連する絶縁体系162は、当業者に知られる多くの異なるイオン注入システムに利用されうる。図1のイオン注入システム100は、イオン注入システムの一実施形態であり、一例として挙げられるだけであって、限定することを意図しない。図1のイオン注入システム100は、質量分析器120、分離アパーチャ122、スキャナ124、角度補正マグネット126、エンドステーション128、および、コントローラ118をさらに含みうる。
【0040】
質量分析器120は、イオンを偏向させることにより、望ましい種のイオンに分離アパーチャ122を通過させ、望ましくない種は分離アパーチャ122を通過させないようにする分離マグネットを含みうる。一実施形態では、質量分析器120は、望ましい種のイオンを90度偏向させ、望ましくない種のイオンをそれらの異なる質量によって異なる量だけ偏向させうる。分離アパーチャ122の下流に配置されるスキャナ124は、イオンビームを走査する走査電極および他の電極を含みうる。角度補正マグネット126は、望ましい種のイオンを偏向させることにより、分岐しているイオンビーム経路を実質的に平行なイオン軌道を有するほとんど平行化したイオンビーム経路に変える。一実施形態では、角度補正マグネット126は、望ましい種のイオンを45度偏向させうる。
【0041】
エンドステーション128は、望ましい種のイオンがウェハ140に注入されるように、イオンビーム経路内で1つ以上のウェハを支持する。ウェハ140は、プラテン142によって支持されうる。エンドステーション128は、従来技術において知られているような、ウェハ140をプラテン142に対しさまざまな保持領域から往復運動させるウェハハンドリング装置150などの他の構成要素およびサブシステムを含みうる。ウェハハンドリング装置150がウェハ140を保持領域からプラテンへと移動させると、ウェハ140は、静電力によってプラテンに固定される静電ウェハ固定、または、機械力によってプラテンに固定される機械固定などの既知の技術によってプラテン142に固定されうる。エンドステーション128は、従来技術で知られるように、プラテン142を望ましい方法で移動させるプラテン駆動システム152も含みうる。プラテン駆動システム152は、従来技術ではメカニカルスキャンシステムとも呼ばれうる。
【0042】
コントローラ118は、イオン注入システム100の構成要素からの入力データを受信してそれを制御する。説明を明確にすべく、コントローラ108からシステム100の構成要素までの入出力経路は、図1には示していない。コントローラ118は、望ましい入出力機能を実行するようプログラムされうる汎用コンピュータを含んでもそれ自体であってもよく、あるいは、汎用コンピュータのネットワークを含んでもよい。コントローラ118は、また、特定用途向け集積回路などの他の電子回路、他の物理的に組み込まれたかまたはプログラム可能な電子デバイス、離散要素回路なども含みうる。コントローラ118は、タッチスクリーン、ユーザポインティングデバイス、ディスプレイ、プリンタなどの、ユーザによるコマンドおよびデータの入力を可能にし、および/または、イオン注入システム100の監視を可能にするユーザインターフェースデバイスも含みうる。コントローラ118は、通信デバイスおよびデータ記憶装置も含みうる。
【0043】
ウェハ140の表面に供給されるイオンビーム152は、走査されたイオンビームであってよい。他のイオン注入システムは、スポットビームまたはリボンビームを提供しうる。一例におけるスポットビームは、当該スポットビームの特性に依存する特定の直径のほぼ円形の断面を有しうる。リボンビームは、幅/高さのアスペクト比が大きく、少なくともウェハ140と同じ大きさであってよい。スキャナ124は、リボンビームまたは静止したスポットビームを用いるシステムには必要ないだろう。イオンビーム152は、ウェハ140に注入するために用いられうるエネルギーを有するイオンビームなどのいかなるタイプの荷電粒子ビームであってよい。ウェハ140は、一般的なディスク形状などのさまざまな物理的形状をとりうる。ウェハ140は、シリコンなどの任意のタイプの半導体材料、または、イオンビーム152を用いて注入される他のいかなる材料から形成される半導体ウェハでありうる。
【0044】
図2を参照すると、図1のターミナル構造体104の概略ブロック図がより詳細に示されている。ターミナル構造体104により定められるキャビティ110内には、イオン源102、ガスボックス106、および、ターミナル構造体104内の構成要素の動作を制御するターミナル電子部品208が存在しうる。ターミナル電子部品208は、コントローラ118と通信することもできる。
【0045】
引出電源204は、イオン源102と結合されうる。引出電源204は、イオンを加速させてイオン源102から抽出するためのDC電圧レベル(Vx)を提供しうる。引出電源は、20kV乃至120kVの範囲のDC電圧(Vx)を供給しうる。
【0046】
また、加速電源202は、ターミナル構造体104とエンクロージャ112などの接地面との間に結合されることにより、ターミナル構造体104をグラウンドに対し正の電圧(Va)でバイアスしうる。加速電源202は、200kV乃至1、000kVの範囲の最高電圧を有し、一実施形態では600kVでありうる付加DC電圧レベル(Va)を提供しうる。したがって、ターミナル構造体104には、いくつかの例では、200kV乃至1、000kVであり、一実施形態では600kVである高電圧が印加されうる。他の例では、ターミナル構造体104には全く電圧が印加されないか、または、イオンビームの望ましいエネルギーだけに依存する公称値の電圧が印加されうる。説明を明確にすべく、1つの加速電源202だけが示されているが、望ましい最高電圧レベル(Va)を供給すべく2つ以上の電源が利用されてもよい。
【0047】
ウェハ140は、グラウンド電位にあってよい。したがって、1価の荷電イオンの注入エネルギーは、加速電源からの加速電圧(Va)と引出電源からの引出電圧(Vx)との和(Va+Vx)であるグラウンドに対するイオン源102の電位により得られる。例えば、引出電圧が80kVであり、加速電圧が600kVである場合、質量分析器120の下流にある加速器を使用しないで追加のエネルギーを供給するための1価の荷電イオンの注入エネルギーは、680keVである。
【0048】
図3は、4つの面をもつ固体絶縁体を有する絶縁体系162aの第1の実施形態を示す斜視図である。4つの面は、底面320、底面320の一方の端部に結合される第1の直立側壁322、底面320のもう一方の端部に結合される第2の直立側壁324、および、上面326を含む。固体絶縁体は、72kV/インチより大きい絶縁耐力を有しうる。4つの面のそれぞれは、モノリシック構造などの一体成形で形成されうる。あるいは、4つの面のそれぞれは、個別に形成されて接合されることにより、絶縁体系162aの4面構造を形成してもよい。絶縁体系162aを一体成形で形成することにより、4つの面の間の接合部に気泡などの空気が入るリスクが減少するだろう。
【0049】
固体絶縁体は、これに限定されないが、ポリエチレン、または、低密度ポリエチレンを含みうる。ポリエチレンは、約500kV/インチの絶縁耐力を有しうる。固体絶縁体は、一体成形プラスチックであってもよい。一実施形態では、一体成形プラスチックは、3インチの厚みが600kVの電圧降下を可能にするような200kV/インチの絶縁耐力を有しうる。固体絶縁体は、また、シンタクチックフォームであってもよい。シンタクチックフォームは、中空のガラス球体、および/または、エポキシまたはシリコンなどの充填化合物のまわりに分散されるポリマーペレットを含みうる。シンタクチックフォームは、一体成形プラスチックの絶縁耐力より小さい、例えば、一実施形態では100kV/インチの絶縁耐力を有しうる。したがって、600kVの電圧降下では、シンタクチックフォームの厚みは、約6インチは必要だろう。一体成形プラスチックおよびポリエチレンより厚くはなるが、シンタクチックフォームのほうが一体成形プラスチックおよびポリエチレンより安価で軽量でありうる。さらに、固体絶縁体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコーン、繊維ガラス、または、エポキシも含みうる。
【0050】
ターミナル構造体104は、絶縁体系162aの4つの面のそれぞれがターミナル構造体104の対応する外側表面と接触するように、当該4つの面により定められた内部体積に配置されうる。ターミナル構造体104は、さまざまな外形を有してよく、一実施形態では、実質的に矩形の断面形状を有しうる。ターミナル構造体104は、これに限定されないが、金属材料などの導電材料を含むさまざまな材料で形成されうる。ターミナル構造体104は、キャビティ110を定義し、さまざまな構成要素は、破線で示されているイオン源102、および、ガスボックス106(図3には示されていない)を含むキャビティ110内に少なくとも部分的に配置されうる。
【0051】
図4は、図3をA−Aラインで切断した絶縁体系162aの第1の実施形態を示す断面図である。グラウンド電位にあるエンクロージャ112も示されている。4つの面を有する絶縁体系の第1の直立側壁322および第2の直立側壁324は、ターミナル構造体104の対応する外側表面と接することにより、ターミナル構造体のそれぞれの面を絶縁しうる。絶縁体系162aは、また、底面320、第1および第2の直立壁322、324、および、上面326のそれぞれの一部分により定められる第1の開口440も有しうる。さらに、絶縁体系162aは、底面320、第1および第2の直立壁322、324、および、上面326のそれぞれの反対側の一部分により定められる第2の開口442も有しうる。これらの開口440および442の絶縁体として空気が用いられうる。空気を絶縁体として使用することにより、作業員がターミナル構造体104および内部の構成要素にアクセスできるようになる。
【0052】
ターミナル構造体の外側後面430をエンクロージャ112の後面壁119から絶縁する絶縁体として空気を用いるので、後面壁119は、後面430から十分距離410を置いて配置される必要がある。距離410は、ターミナル構造体104の最高予測DC電圧レベルに少なくとも一部依存するはずである。距離410は、エンクロージャ112の後面壁119の電気的アースからターミナル104の後面430を電気的に絶縁するのに十分な大きさでなければならない空気は、想定された条件の下では、約72kV/インチの絶縁耐力を有しうる。この絶縁耐力は、相対湿度、イオン注入システムの特定の場所の海抜(すなわち空気圧)、分離距離、および、電極の表面仕上げによって変化しうる。このような変化のための安全対策としては、32kV/インチの空気の絶縁耐力がデザインルールとして用いられうる。例えば、ターミナル構造体104に最高600kVの電圧が印加される場合、距離410は、32kV/インチの設計ルールを用いて18.75インチになるように選択されうる。
【0053】
直立壁322および324(、底面320、および、上面326)の固体絶縁体の絶縁耐力は、壁322および324における電圧降下がターミナル構造体104の最高予測DC電圧レベルと等しくなるよう設計されうる。一実施形態では、直立壁322および324の固体絶縁体は、ターミナル構造体の対応する外側表面と接触しうる。直立壁322および324の固体絶縁体は、接地されたエンクロージャ112とも接触しうる。したがって、直立壁324の厚み408は、ターミナル構造体104の最高予測DC電圧レベルと、直立壁324に対し選択された特定の固体絶縁体の絶縁耐力とに基づき変化しうる。例えば、ターミナル構造体104の最高予測DC電圧レベルが600kVであり、直立壁の信頼できる絶縁耐力が200vV/インチだとすると、壁は3インチの厚み408を有していなくてはならない。
【0054】
電荷は、直立壁322、324の内側表面に沿って移動するので、内側表面は、移動する電荷のトラッキング長を効率よく長くする波状または波形の表面385によって形成されうる。10kV/インチのトラッキング長を条件とすると、600kVの電圧が印加されたターミナル構造体104に関しては、側壁322および324の滑らかな内側表面の長さは、60インチになるであろう。波状または波形の表面385は、この長さを3分の1にするか、または、約たった20インチまでに減らしうる。底面320および上面326の内側表面も、波状または波形の表面で形成されうる。
【0055】
図5は、5つの面をもつ固体絶縁体を有する絶縁体系162bの第2の実施形態を示す斜視図であり、図6は、図5をA−Aラインで切断した第2の実施形態を示す断面図である。第1の実施形態と同様に、5つの面のそれぞれは、モノリシック構造などの一体成形で形成されることにより、接合部に空気が入る危険性を低くすることができる。または、5つの面のそれぞれは、個別に形成されて接合されることにより、5つの面を有する絶縁体系162aを形成しうる。
【0056】
図3および4の第1の実施形態と比較すると、図5および6の第2の実施形態の絶縁体系162bは、さらなる後面直立壁328(図6参照)を有する。後面直立壁328は、底面320の裏側、および、第1の直立壁322、第2の直立壁324、および、上面326の裏側に結合されうる。図4および5の第1の実施形態と同様の第2の実施形態の他の構成要素も同様に名付けられるので、説明を明確にすべく、繰り返しの記載は省略する。
【0057】
第2の実施形態は、後面直立壁328を用いるので、エンクロージャ112の後面壁119は、後面直立壁328の外側表面と接触しうる。後面直立壁328の厚み608は、第1の直立壁324の厚み408と同様に選択されうる。すなわち、厚み608は、後面直立壁328における電圧降下がターミナル構造体104の最高予測DC電圧レベルと等しくなるように選択されうる。したがって、厚み608は、ターミナル構造体104の最高予測DC電圧レベルと、後面直立壁328に対して選択された特定の誘電体の絶縁耐力とに基づき変化しうる。
【0058】
あるいは、絶縁体系162bの後面直立壁328は、エンクロージャ112の後面壁119とだけ接触し、後面直立壁328とターミナル構造体104との間にはエアギャップが形成されうる。しかしながら、後面直立壁328は、この場合のターミナル構造体104の電圧レベルを高くしすぎないために依然として必要であろう。
【0059】
図7は、絶縁体系162cの第3の実施形態を示す斜視図であり、図8は、図7をA−Aラインで切断した絶縁体系162cの第3の実施形態を示す断面図である。絶縁体系162cは、ターミナル構造体703の外側表面の一部分のまわりに配置された絶縁体732および734を含みうる。ターミナル構造体703の外側表面の残りの部分を絶縁するために空気が用いられうる。一般的に、固体絶縁体732および734は、例えば、端および隅など、過剰な電気応力を有するターミナル構造体703の外側表面における部分のまわりに配置されうる。他のターミナル構造体は、追加の固体絶縁体を必要とする垂直端部などの付加的な部分を有する。
【0060】
ターミナル構造体703は、底面702、当該底面702に結合された4つの直立壁704、706、708、710、および、上面712を含みうる。4つの直立壁704、706、708、および、710は、1つの固体物質、または、複数の別個の物質から形成されうる。絶縁体732は、直立壁704、706、708、710と上面712との接合部のまわりに配置され、絶縁体734は、直立壁704、706、708、710と底面702との接合部のまわりに配置されうる。絶縁体732および734は、固体絶縁体でありうる。一実施形態では、絶縁体732、734は、実質的に管状の外形を有する。
【0061】
固体絶縁体732および734は、これに限定されないが、ポリエチレン、シンタクチックフォーム(シリコーン、または、ガラスマイクロバルーンエポキシ)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)、または、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの図3の実施形態に関連して説明された任意の固体絶縁体を含みうる。一実施形態では、固体絶縁体732および734は、絶縁体732および734の断面全体が固体材料でありうる。例えば、図8Aは、破線で図示されている側壁706と上面712との接合部を絶縁する絶縁体732aの断面全体が固体絶縁材料である図7をB−Bラインに沿って切断した固体絶縁体732の一実施形態732aを示す断面図である。または、絶縁体732は、図8Bの実施形態732bに示されるような内部キャビティ854を形成する外側の固体絶縁体852を有しうる。内部キャビティ854にはガスが充填されうる。一実施形態では、ガスは、加圧空気でありうる。いくつかの例では、二酸化炭素(CO2)または、六フッ化硫黄(SF)などのガスが用いられ、このようなガスは、それらの加圧されない絶縁耐力に基づき、加圧されなくてよい。
【0062】
イオン注入システムの作動中、ターミナル構造体703には、少なくとも200キロボルト(kV)の電圧が印加されうる。一実施形態では、4つの直立壁の1つ以上は、作業員がターミナル構造体703の内部キャビティにアクセスすることを可能にするドアとして機能する少なくとも1つのヒンジ722およびロック機構724を有する部分718を含みうる。
【0063】
図9は、液体絶縁体902を有する絶縁体系162dの第4の実施形態を示す断面図である。液密キャビティは、ターミナル構造体104の外側表面と、エンクロージャ912との間に形成されうる。液体絶縁体902は、この液密キャビティ内に配置されうる。
【0064】
液体絶縁体902は、これに限定されないが、油を含みうる。紙904などの固体が液体絶縁体902内に配置されることにより、液体の誘電性を高めうる。まず、紙904がターミナル構造体104のまわりにぴったりと巻きつけられ、油などの液体絶縁体902が紙904のシート間の液密キャビティに圧入されうる。
【0065】
図10は、加圧ガス絶縁体を有する絶縁体系162eの第5の実施形態を示す概略ブロック図である。加圧ガスは、これに限定されないが、空気、二酸化炭素、または、六フッ化硫黄を含みうる。エンクロージャ1012は、選択されるガスの圧力に耐えうる適切な材料および構造で形成されうる。エンクロージャ1012は、ターミナル構造体104を囲みうる。したがって、チャンバは、エンクロージャ1012の内側表面、および、ターミナル構造体104の外側表面により定められうる。加圧ガスがチャンバ内に導入されることにより、当該加圧ガスによってエンクロージャ1012の電気的アースはターミナル構造体104から絶縁されうる。いくらかの圧力に対し、二酸化炭素は、空気よりわずかに高い絶縁耐力を有する。ガスの絶縁耐力は、対象の圧力範囲における圧力に対して線形であり、例えば、ガス圧が高まると、絶縁耐力も線形に上昇するので、ターミナル構造体104と接地されたエンクロージャ1012との間の距離を短くすることができる。
【0066】
一実施形態に合致するターミナル構造体の絶縁体系は、イオン注入システムが高い注入エネルギーのために直線DC加速のみを利用する一方で、イオン注入システムのエンクロージャの設置面積のサイズを維持するかまたは減らすことを可能にしうる。これによって、DCタンデム型加速器またはRF線形加速器などの質量分析器の下流に配置される加速器は必要なくなるので、このような加速器に付随するコスト、複雑さ、および、非効率性の問題も解消されうる。
【0067】
図11を参照すると、第1の実施形態に従うガスボックス絶縁体系1100aを伴い図1のガスボックス106の斜視図が示されている。ガスボックス106は、40kV乃至120kVの電圧が印加されうる。一般的に、ガスボックス絶縁体系は、ガスボックス106の少なくとも1つの外側表面近傍の領域で約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供しうる。図11では固体絶縁体として示されてはいるが、当該少なくとも1つの絶縁体は、ターミナル構造体の絶縁体系の実施形態で上記説明されたのと同様の液体絶縁体、加圧ガス、または、固体、液体、加圧ガスおよび、空気の組合せでありうる。例えば、図7、8、8Aおよび8Bのターミナル構造体の絶縁体系と同様の固体絶縁体と空気との組合せが用いられうる。この場合、ガスボックス106の外側表面の、過剰な電気応力を有する端および隅などの部分のまわりに固体絶縁体物が配置され、そうでなければ空気が用いられうる。
【0068】
図11の第1の実施形態では、ガスボックス絶縁体系1100aは、ガスボックス106の対応する外側底面と接触する一方の面1102を有する固体絶縁体を含みうる。固体絶縁体の一方の面1102は、平らな形状を有し、ガスボックス1106が図11に示されるように載置される底面として機能する。
【0069】
固体絶縁体材料は、これに限定されないが、図3の実施形態に関連して詳述される任意の固体絶縁体を含みうる。特に、固体絶縁体物は、いくつか挙げると、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、シンタクチックフォーム、固体エポキシ、PTFE、CPVC、 PVDF、または、繊維ガラスでありうる。固体絶縁体の底面1102の厚みは、ガスボックス106の最高予測DC電圧と、選択された特定の固体絶縁体の絶縁耐力とに応じて選択されうる。
【0070】
図12は、第2の実施形態におけるガスボックス絶縁体系1100bを有する図1のガスボックスを示す透視図である。ガスボックス絶縁体系1100bは、底面1102と第1の直立側壁1104とを含む2つの面を有する固体絶縁体を含みうる。面1102、1104のそれぞれは、ガスボックス106の対応する外側表面と接触しうる。上述のターミナル構造体の絶縁体系と同様に、本実施形態、および、多数の面を有する実施形態の面1102、1104のそれぞれは、例えば、モノリシック構造などの一体成形で形成されることにより、接合部に空気が入る危険性を低くすることができる。または、面のそれぞれは、個別に形成されて接合されてもよい。
【0071】
図13は、第3の実施形態におけるガスボックス絶縁体系1100cを有する図1のガスボックスを示す斜視図である。ガスボックス絶縁体系1100cは、底面1102、第1の直立側壁1104、および、上面1106を含む3つの面を有する固体絶縁体を含みうる。面1102、1104、および1106のそれぞれは、ガスボックス106の対応する外側表面と接触しうる。
【0072】
図14は、第4の実施形態におけるガスボックス絶縁体系1100dを有する図1のガスボックスを示す透視図である。ガスボックス絶縁体系1100dは、底面1102、第1の直立側壁1104、第2の直立側壁1108、および、上面1106を含む4つの面を有する固体絶縁体を含みうる。面1102、1104、1106、および、1108のそれぞれは、ガスボックス106の対応する外側表面と接触しうる。
【0073】
図15は、第5の実施形態におけるガスボックス絶縁体系1100eを有する図1のガスボックスを示す分解斜視図であり、図16は、それの組立斜視図である。図17は、図16をA−Aラインで切断した組立てられた絶縁体系を示す断面図である。第5の実施形態のガスボックス絶縁体系1100eは、底面1102、第1の直立側壁1104、第2の直立側壁1110、上面1106、および、後面直立側壁1108(後面直立側壁1108は図17で最もよく見える)を含む5つの面を有する固体絶縁体を含みうる。面1102、1104、1106、1108、1110は、ガスボックス106の対応する外側表面と接触しうる。
【0074】
5つの面1102、1104、1106、1108、1110は、作業員がガスボックス106にアクセスできるようにする開口1170を形成する。底面1102および上面1106の長さ(12)と同様に、第1および第2の直立側壁1104、1110の長さ(12)は、ガスボックス106の長さ(11)より長いので、ガスボックス106が開口1170に挿入されたとき、面1102、1106、1104、1110のそれぞれの部分は、ガスボックス106の端部より外側に延びている。この延長部により、電荷の移動が防止され、また、図示していないが、ガスボックスに近くない面1102、1106、1104、1110の表面を波状または波形にすることにより、延長部を短縮することができる。同様に、図示しないが、図11乃至20のすべてのガスボックスに近くない他の面の内側表面も波状または波形にすることにより、移動する電荷のトラッキング長を効果的に長くすることができる。
【0075】
ガスボックス106近傍の面1102、1104、106、1108、1110の内側表面は、金属などの導電部分(図示せず)を有しうる。したがって、いくつかの実施形態では、ガスボックス106近傍の面の内側表面は、「金属化される」とも言う。ガスボックスに近くない面の他の部分は、金属化されず、波状または波形にされることによって移動する電荷のトラッキング長を長くすることができる。ガスボックス近傍のガスボックス絶縁体系の他の実施形態の内側表面も「金属化」されうる。さらに、ガスボックス106の外側表面も金属化されることにより、気泡なしの接地接続を実現しうる。
【0076】
図18は、第6の実施形態におけるガスボックス絶縁体系1100fを有する図1のガスボックスを示す分解斜視図であり、図19は、その組立斜視図である。図20は、図19をラインA−Aで切断した組立てられた絶縁体系の断面図である。第6の実施形態のガスボックス絶縁体系1100fは、底面1802、第1の直立側壁1804、第2の直立側壁1810、上面1806、および、後面直立側壁1808を含む5つの面を有する固体絶縁体を含みうる。面1802、1804、1806、1808、1810のそれぞれは、ガスボックス106の対応する外側表面と接触しうる。
【0077】
ガスボックス絶縁体系1100fは、ガスボックスが5つの面1802、1804、1806、1808、1810により形成される開口に挿入されたとき、当該ガスボックス106の上に載置されうる着脱可能なカバー1830も含みうる。着脱可能なカバー1830により、側壁1804、1810、底面1802、および、上面1806の長さ(13)を第5の実施形態における長さ(12)より短くすることができる。長さ(13)は、ガスボックスの長さ(11)よりわずかに長いので、ガスボックスは、ガスボックス絶縁体系1100fにより形成されるキャビティ内に嵌合されうる。着脱可能なカバー1830は、5つの面を有する構造の対応する部分に嵌め込まれるとき、閉じたキャビティを形成する面の当該対応する部分と対になる部分を有しうる。例えば、部分1834は、上面1806と対になり、部分1838は、側壁1810と対になりうる。
【0078】
これまで、少なくとも1つの例示的実施形態を説明してきたが、さまざまな変更、修正、および、改良が当業者によって直ちになされよう。そのような変更、修正、および、改良は、本開示の範囲内であると意図される。したがって、上記説明は、単なる例であって、限定を意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを供給するイオン源と、
前記イオン源が少なくとも部分的に配置されるキャビティを定めるターミナル構造体と、
前記ターミナル構造体を電気的に絶縁する絶縁体系とを備え、
前記絶縁体系は、前記ターミナル構造体の少なくとも1つの外側表面近傍の領域内に約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供する、
イオン注入システム。
【請求項2】
前記ターミナル構造体に少なくとも200kVの電圧を印加する加速電源をさらに備える、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記加速電源は、前記ターミナル構造体に600kVの電圧を印加する、請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記絶縁体系は、約72kV/インチより大きい絶縁耐力を有する少なくとも1つの絶縁体を含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの絶縁体は、固体絶縁体を含む、請求項4に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
内部体積を定めるエンクロージャをさらに備え、前記ターミナル構造体は、前記内部体積内に配置され、前記固体絶縁体は、前記内部体積内において前記エンクロージャの内側表面と前記ターミナル構造体の前記少なくとも1つの外側表面との間に配置される、請求項5に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記固体絶縁体は、底面と、前記底面の一方の端部に結合される第1の直立側壁と、前記底面の他方の端部に結合される第2の直立側壁と、前記第1および第2の直立側壁に結合される上面とを含み、前記底面、前記第1および第2の直立側壁、および、前記上面は、前記ターミナル構造体の対応する外側表面と接触する、請求項5に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
前記固体絶縁体は、シンタクチックフォームを含む、請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記固体絶縁体は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコーン、または、エポキシを含む、請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記絶縁体系は、前記底面、前記第1および第2の直立側壁、および、前記上面のそれぞれの一部分により定められる第1の開口と、前記底面、前記第1の直立側壁、前記第2の直立側壁、および、前記上面のそれぞれの反対側の一部分により定められる第2の開口とを有し、前記絶縁体系は、前記第1および第2の開口を絶縁する空気をさらに含む、請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
前記絶縁体系は、前記底面、前記第1および第2の直立側壁、および、前記上面のそれぞれの一部分により定められる開口を有し、前記固体絶縁体は、前記底面、前記第1および第2の直立側壁、および、前記上面のそれぞれの反対側の一部分に結合される後面直立壁をさらに含み、前記後面直立壁は、前記ターミナル構造体の対応する外側表面と接触し、前記絶縁体系は、前記開口を絶縁する空気をさらに含む、請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記固体絶縁体は、前記ターミナル構造体の前記少なくとも1つの外側表面の一部に結合され、前記絶縁体系は、前記ターミナル構造体の残りの部分のまわりに配置される空気を含む、請求項5に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記外側表面の一部は、側壁と前記ターミナル構造体の上面との接合部、および、前記側壁と前記ターミナル構造体の底部との接合部を含む、請求項12に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
前記固体絶縁体は、シンタクチックフォームを含む、請求項13に記載のイオン注入システム。
【請求項15】
前記固体絶縁体は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコーン、または、エポキシを含む、請求項13に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記固体絶縁体は、内部キャビティを形成し、前記絶縁体系は、前記内部キャビティ内に配置されるガスをさらに含む、請求項13に記載のイオン注入システム。
【請求項17】
前記ガスは、加圧空気を含む、請求項16に記載のイオン注入システム。
【請求項18】
前記側壁の一部は、ドアを形成し、前記ドアが開くことにより、前記ターミナル構造体の前記キャビティへアクセスすることができる、請求項13に記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの絶縁体は、液体絶縁体を含む、請求項4に記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記液体絶縁体は、油を含む、請求項19に記載のイオン注入システム。
【請求項21】
前記絶縁体系は、前記ターミナル構造体のまわりに配置された固体絶縁体と、前記固体絶縁体内に配置された前記液体絶縁体とをさらに含む、請求項19に記載のイオン注入システム。
【請求項22】
前記固体絶縁体は、紙を含み、前記液体絶縁体は、油を含む、請求項21に記載のイオン注入システム。
【請求項23】
前記ターミナル構造体を囲むエンクロージャをさらに備え、前記少なくとも1つの絶縁体は、前記エンクロージャおよび前記ターミナル構造体により定められるチャンバ内に配置される加圧ガスを含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項24】
前記加圧ガスは、加圧空気、二酸化炭素、または、六フッ化硫黄(SF)を含む、請求項23に記載のイオン注入システム。
【請求項25】
前記イオン源の下流に配置され、前記イオンビームから望ましくない種を除去する質量分析器と、前記イオン源にイオン化されるべきガスを供給するガスボックスとをさらに備え、前記ガスボックスは、前記キャビティ内に少なくとも部分的に配置される、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項26】
前記ガスボックスを電気的に絶縁するガスボックス絶縁体系をさらに備え、前記ガスボックス絶縁体系は、約72キロボルト(kV)/インチより大きい絶縁耐力を有する少なくとも1つの絶縁体を含む、請求項25に記載のイオン注入システム。
【請求項27】
前記ガスボックス絶縁体系の前記少なくとも1つの絶縁体は、前記ガスボックスの対応する外側表面と接触する少なくとも1つの面を有する固体絶縁体を含む、請求項26に記載のイオン注入システム。
【請求項28】
イオンビームを供給するイオン源と、
前記イオン源にイオン化されるべきガスを供給するガスボックスと、
前記イオン源および前記ガスボックスが少なくとも部分的に配置されるキャビティを定めるターミナル構造体と、
前記ターミナル構造体を電気的に絶縁するターミナル構造体絶縁体系と、
前記ガスボックスを電気的に絶縁するガスボックス絶縁体系と、
前記イオン源の下流に配置され、前記イオンビームから望ましくない種を除去する質量分析器と、
前記質量分析器の下流に配置され、ウェハを支持するための表面を有するプラテンを含むエンドステーションと、
を備えるイオン注入システムであって、
前記ターミナル構造体絶縁体系は、前記ターミナル構造体の少なくとも1つの外側表面近傍の領域内に約72キロボルト(kV)/インチより大きい有効絶縁耐力を提供し、
前記ガスボックス絶縁体系は、前記ガスボックスの対応する外側表面と接触する少なくとも1つの面を有する固体絶縁体を含む、
イオン注入システム。
【請求項29】
前記ガスボックス絶縁体系の前記固体絶縁体は、底面、前記底面の一方の端部に結合された第1の直立側壁、前記底面のもう一方の端部に結合された第2の直立側壁、および、前記第1および第2の直立側壁に結合された上面を含み、前記底面、前記第1および第2の直立側壁、および、前記上面は、前記ガスボックスの対応する外側表面と接触する、請求項28に記載のイオン注入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2009−532826(P2009−532826A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503001(P2009−503001)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/007781
【国際公開番号】WO2007/126966
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(500324750)バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド (88)
【Fターム(参考)】