説明

イオン注入装置

【課題】 インジェクタフラグファラデーカップによりその周辺部材が悪影響を受けることが無いイオン注入装置を提供する。
【解決手段】 ビームスキャナ36への入射前のビームライン上に、イオンビームの全ビーム量を計測してビーム電流を検出するインジェクタフラグファラデーカップ32が入れ出し可能に配置される。インジェクタフラグファラデーカップ32をビームラインに挿入してイオンビームを遮断すると、イオンビームがインジェクタフラグファラデーカップ32に設けられたグラファイト32aに当たる。このとき、イオンビームでグラファイト32aがスパッタされても、インジェクタフラグファラデーカップ32がビームスキャナ36の上流側に配置されており、インジェクタフラグファラデーカップ32でイオンビームが遮断されているので、スパッタされたグラファイト粒子がインジェクタフラグファラデーカップ32の周辺部材に付着することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームを必要に応じて遮断するとともにビーム電流を計測する機能を持つインジェクタフラグファラデーカップを備えたイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハにn型またはp型の導電層を形成する方法として、イオン源でイオン化した導電型ドーパントを電界で加速してウェハに打ち込む、いわゆるイオン注入技術が用いられている。イオン注入技術においては、イオン源に供給されたガスをプラズマ室でイオン化することによってプラズマを発生させ、引出電極に所定電圧を印加することによりプラズマからイオンビームを引き出している。続いて、引き出したイオンビームを質量分析磁石装置に入射させることにより所望の質量を持つイオンから成るイオンビームを取り出し、更にこのイオンビームを質量分析スリットを通過させてウェハに照射することによりイオン注入を行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなイオン注入技術においては、イオンビームを必要に応じて遮断するとともに全ビーム電流を計測する機能を持つインジェクタフラグファラデーカップが、ビームラインに対して入れ出し可能に設けられている。インジェクタフラグファラデーカップにおいてイオンビームが当たる部分にはグラファイトが設けられており、インジェクタフラグファラデーカップをビームライン上に挿入した時には、イオンビームがグラファイトに当たることでイオンビームが遮断される。
【0004】
具体的には、図7(a)、(b)に示すように、インジェクタフラグファラデーカップ200は、ビームスキャナ300とともにスキャナハウジング310内に設けられている。後で説明されるように、ビームスキャナ300は、ビームラインを挟むようにして対向配置された一対の走査電極300−1、300−2により、入射したイオンビームをその進行方向と直交する水平方向に周期的に往復させるためのものである。ビームスキャナ300の上流側、下流側にはそれぞれ、イオンビームの発散を抑制するとともに、イオンビームの断面サイズの大きさを制限するスキャナサプレッション電極320、330が設けられている。インジェクタフラグファラデーカップ200はスキャナサプレッション電極330に近い下流側に対応する箇所に配置されている。
【0005】
インジェクタフラグファラデーカップ200は、ビームスキャナ300によるイオンビームの走査範囲に対応する受容面積を有し、スキャナハウジング310の外に設置された駆動機構(図示省略)により、ここでは上下方向に駆動されてビームライン上に入れ出し可能にされている。例えば、イオン注入が終了したウェハを未注入のウェハに交換するまでの間、インジェクタフラグファラデーカップ200をビームライン上に置いてイオンビームを遮断するようにしている。インジェクタフラグファラデーカップ200においてイオンビームが当たる箇所は、イオンビームによるスパッタに対して強い、グラファイト等の材料で被覆される。
【0006】
【特許文献1】特開2006−156259公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、イオンビームがインジェクタフラグファラデーカップにおけるグラファイト内壁部材に当たると、グラファイトのスパッタが発生することがある。スパッタされたグラファイト粒子はインジェクタフラグファラデーカップ200よりも上流側の周辺部材、特にスキャナサプレッション電極330や走査電極300−1、300−2に付着してこれらを汚染したり、更には2次スパッタによりスキャナサプレッション電極330や走査電極300−1、300−2が削られたりすることがある。
【0008】
このようにスキャナサプレッション電極330や走査電極300−1、300−2が汚染されたり、削られたりすると、イオンビームを正確に往復走査させることができなくなるおそれがある。また、万一、スキャナハウジング310とスキャナサプレッション電極330との間に大量のグラファイトが付着して短絡が発生した場合には、イオンビームを往復走査することができなくなる。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、インジェクタフラグファラデーカップによりその周辺部材が悪影響を受けることが無く、特にビームスキャナを最適な状態に維持することが可能なイオン注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イオン源から引き出されたイオンビームを、質量分析磁石装置および質量分析スリットを通過させ、ビームスキャナにより周期的に水平方向あるいはそれ以外の特定方向に往復走査させてウェハに照射し、ウェハにイオン注入を行うビームラインを有するイオン注入装置において、
前記質量分析スリットの通過後の前記ビームスキャナ入射前のビームライン上に、イオンビームの全ビーム量を計測してビーム電流を検出するファラデーカップを入れ出し可能に配置したことを特徴とする。
【0011】
本発明によるイオン注入装置においては、前記ビームスキャナ及び前記ファラデーカップを収容するためのスキャナハウジングを備え、前記ファラデーカップを前記スキャナハウジングにおけるイオンビーム入口の直後に配置し、該ファラデーカップの直後に前記ビームスキャナを配置することが好ましい。
【0012】
本発明によるイオン注入装置においてはまた、前記ファラデーカップの形状を、横あるいは上下方向に長軸を持つ断面楕円形状のイオンビームに対応可能なように長方形状とすることが好ましい。
【0013】
本発明によるイオン注入装置においては、前記ファラデーカップをビームライン上に入れ出しするための駆動機構を前記スキャナハウジングの外に設置し、前記スキャナハウジングの壁を貫通して該スキャナハウジング内に導入された前記駆動機構の駆動軸に前記ファラデーカップを取り付けるように構成される。
【0014】
本発明によるイオン注入装置においては、ビームラインの最下流位置に配置された、ビーム電流検出機能を持つビームダンプを備えることにより、前記ファラデーカップの検出値と前記ビームダンプの検出値とを比較してビーム輸送効率を算出できる。
【0015】
本発明によるイオン注入装置においては更に、イオンビームの断面の電流密度分布を計測するプロファイルモニタを備え、該プロファイルモニタを、前記スキャナハウジング内で前記ファラデーカップの上流側直近または下流側直近に配置するようにしても良い。
【0016】
本発明によるイオン注入装置においては、ウェハの近傍に配置されたドーズ量計測手段と計測されたドーズ量が適切か否かを判定する判定手段を備え、更に前記質量分析磁石装置の出口から前記質量分析スリット手前のビームライン区間に配置されて電界の作用によりイオンビームをビームライン上から外れた所定の向きに偏向させ、これを維持することによりイオンビームの一時的退避を行う偏向装置を備えることにより、計測されたドーズ量が前記判定手段において不適切と判定された時に、前記偏向装置による一時的退避を行い、前記ドーズ量が不適切と判定されてから所定時間が経過したら前記一時的退避を停止させることによりイオンビームをビームラインに復帰させて前記ドーズ量計測手段によるドーズ量の再計測を行い、再計測したドーズ量が再び不適切と判断された時には、前記ファラデーカップをビームライン上に挿入するとともに前記一時的退避を解除するように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のイオン注入装置においては、インジェクタフラグファラデーカップをスキャナの上流側のビームラインに挿入してイオン源から引き出されたイオンビームをインジェクタフラグファラデーカップで遮断すると、イオンビームがインジェクタフラグファラデーカップに当たる。このとき、イオンビームによるスパッタが発生しても、インジェクタフラグファラデーカップがビームスキャナの上流側に配置されており、インジェクタフラグファラデーカップでイオンビームを遮断しているので、スパッタされた粒子が周辺部材、例えばビームスキャナの走査電極に付着することはない。従って、ビームスキャナの走査電極を最適な状態に維持することができ、その結果、ビームスキャナでイオンビームを正確に往復走査させることができる。加えて、大量のスパッタ粒子がビームスキャナの走査電極に付着することがないので、ビームスキャナなどを収容しているスキャナハウジングとビームスキャナの走査電極との間が短絡するおそれを確実に防止することができる。
【0018】
しかも、インジェクタフラグファラデーカップをビームスキャナの下流側の近傍に配置する構成に比べて、インジェクタフラグファラデーカップを小さくすることができる。これは、インジェクタフラグファラデーカップをビームスキャナの下流側に配置する構成では、ビームスキャナによるイオンビームの走査範囲に適合した受容面積を持つインジェクタフラグファラデーカップが必要である。これに対し、インジェクタフラグファラデーカップをビームスキャナの上流側に配置する構成では、イオンビームがビームスキャナで往復走査される前なので、イオンビームの走査範囲に適合した受容面積を持つインジェクタフラグファラデーカップを用意する必要がないからである。その結果、インジェクタフラグファラデーカップをビームスキャナの上流側に配置する構成だけで、インジェクタフラグファラデーカップの小型化にも寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明によるイオン注入装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明を枚葉式のイオン注入装置に適用した場合の模式図であり、特に図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。イオン注入装置1の構成について、イオン源10を起点とするビームラインの最上流から説明する。イオン源10の出口側には、イオンチャンバー内で生成されたプラズマからイオンビームを引き出す引出電極12が設けられている。引出電極12の下流側近傍には、引出電極12から引き出されたイオンビーム中に含まれる電子が引出電極12に向かって逆流するのを抑制するサプレッション電極14が設けられている。イオン源10には、イオン源高圧電源16が接続され、引出電極12とターミナル18との間には、引出電源20が接続されている。
【0020】
引出電極12の下流側には、入射するイオンビームから所定のイオンを分離し、分離したイオンからなるイオンビームを取り出すための質量分析磁石装置22が配置されている。質量分析磁石装置22の下流側には、イオンビームを上下方向に収束させる四重極縦収束電磁石(QD:Quadrupole Defocusing)24、イオンビームをビームラインから偏向させるパーク電極26、イオンビームのうち所定の質量のイオンからなるイオンビームを通過させる質量分析スリット28、イオンビームを上下方向に収束させる四重極縦収束電磁石(QD)30が配置されている。パーク電極26と質量分析スリット28とは、アルミニウム等のクロスコンタミネーションのほとんどない材料から構成されるパークハウジング27に収容されている。なお、質量分析スリット28は、固定式の専用スリットのほか、三段切替式(例えば、高ビーム電流用の楕円形/または長円形スリット、低ビーム電流用の細長円形スリット、ビーム軌道軸確認用の極小径スリットを機械的に切り替えるもの)の質量分析スリットを用いても良い。
【0021】
四重極縦収束電磁石30の下流側には、イオンビームを必要に応じて遮断するとともにビーム電流を計測するインジェクタフラグファラデーカップ32、イオンビームの進行方向と直交する水平方向にイオンビームを周期的に往復走査させるビームスキャナ36が配置されている。ビームスキャナ36の上流側、下流側にはそれぞれ、イオンビームの断面サイズの大きさも制限することができる開口を有し、イオンビームの発散を抑制するとともにスキャン電場を周りから遮蔽するためのスキャナサプレッション電極34、38が設けられている。なお、インジェクタフラグファラデーカップ32は後で説明されるように、ここでは上下方向の駆動機構によりビームライン上に入れ出し可能にされている。また、インジェクタフラグファラデーカップ32、ビームスキャナ36およびスキャナサプレッション電極34,38は、アルミニウムからなるスキャナハウジング37に収容されている。
【0022】
引出電極12からパークハウジング27を含むスキャナハウジング37に至るビームラインの各部材はターミナル18に収容されており、ターミナル18にはターミナル電源19が接続されている。従って、パークハウジング27およびスキャナハウジング37の電位は、ターミナル18と同電位であり、ターミナル電源19の電位となる。
【0023】
ビームスキャナ36の下流側には、ビームライン(ビームスキャナ36で走査する前のイオンビームの中心軌道)に対し水平方向に角度を持つように偏向されたイオンビームを、ビームラインに平行となるように再偏向するパラレルレンズ40、イオンビームを加速または減速する加速/減速コラム42が配置されている。パラレルレンズ40は、中央にイオンビームが通過する孔が透設された円弧形状の電極で構成されており、上流側から1枚目の電極は、ターミナル電位に保たれている。2枚目の電極は、サプレッション電極と呼ばれ、サプレッション電源44が接続されて電子の流入を抑制している。3枚目の電極には、パラレルレンズ電源46が接続されて、2枚目の電極と3枚目の電極との間に電界が発生し、水平方向に偏向されたイオンビームが偏向前のイオンビーム中心軌道に平行なイオンビームとなる。パラレルレンズ40は、電界を利用する構造であり、2枚目の電極と3枚目の電極との間の電位差により、イオンビームは減速される。すなわち、ビームスキャナ36により偏向されたイオンビームが、2枚目の電極と3枚目の電極との間の電界により偏向前のイオンビーム中心軌道に平行な方向に軌道修正されるとともに減速されることとなる。
【0024】
加速/減速コラム42は、直線形状の電極で構成されており、上流側から1枚目の電極には、パラレルレンズ40の3枚目の電極と同様に、パラレルレンズ電源46が接続されている。2枚目および3枚目の電極には、それぞれ第1加速/減速コラム電源48、第2加速/減速コラム電源50が接続されており、これらの電源電圧を調整してイオンビームを加減速させる。また、4枚目の電極はグランド電位に接地されている。
【0025】
加速/減速コラム42の下流側には、ハイブリッド型の角度エネルギーフィルタ(AEF: Angular Energy Filter)52が配置されている。AEF52は、目的の加速エネルギーが得られているイオンビームを選別するエネルギーフィルタである。AEF52は、磁界偏向用の磁気偏向電磁石と電界偏向用電極とを備えている。磁界偏向用の磁気偏向電磁石は、AEFチャンバー54の上下を囲むように配置されており、上下左右を囲むヨーク部材とそのヨーク部材に巻回された上下及び左右のコイル群とから構成されている。そして、磁界偏向用の磁気偏向電磁石には、直流電圧電源(図示省略)が接続されている。
【0026】
一方、電界偏向用電極は、上下一対のAEF電極56から構成され、イオンビームを上下方向より挟み込むように配置されている。一対のAEF電極56のうち、上側のAEF電極56には正電圧を、下側のAEF電極56には負電圧をそれぞれ印加している。磁気による偏向時には、磁気偏向電磁石からの磁界によりイオンビームを下方に約20度偏向させ、目的エネルギーのイオンビームのみが選択されることとなる。一方、磁界と電界もしくは電界のみによる偏向時には、磁気偏向電磁石からの磁界と一対のAEF電極56間で発生する電界とによる併用作用もしくは電界の偏向作用によって、イオンビームを下方に約20度偏向させ、目的エネルギーのイオンビームのみが選択されることとなる。
【0027】
このようにAEF52は、必要に応じてそれぞれ使用する磁界と電界のハイブリッド型であるので、低エネルギービームの輸送には電子閉じ込め効果の高い磁界を主として使用し、高エネルギービームの輸送には、常時使用する磁界に加えて、電界偏向を併用することに加え、電界のみの偏向作用を用いることもできる。なお、磁界を常時使用する場合と、磁界と電界とを併用するもしくは電界のみの偏向作用を用いる場合との使い分けは、エネルギーやイオン源10のガスの種類によって異なっている。
【0028】
AEF52には、電子を供給することでイオンビームの発散を抑え、ウェハ58までのイオンビームの輸送効率を向上させるAEFプラズマシャワー60が設けられている。また、AEF52は、AEFサプレッション電極62,64をAEFプラズマシャワー60の上流側および下流側に備えている。このAEFサプレッション電極62,64は、電子障壁およびイオンビームの断面サイズの大きさを制限することが主な役割である。
【0029】
AEFチャンバー54の壁面には、カスプ磁場を形成する複数の永久磁石66が配置されている。このカスプ磁場の形成によって、電子がAEFチャンバー54内に閉じ込められている。各永久磁石66は、磁極をAEFチャンバー54内に向け、かつ、隣り合う磁極が互いに反対になるように配置されている。なお、AEFチャンバー54の出口側には、AEF52で偏向されずに直進するイオンが中性化した中性粒子などを受けるストライカープレート68が設けられている。
【0030】
プロセスチャンバー(真空処理室)70は、AEFチャンバー54と連通している。プロセスチャンバー70内には、エネルギー分解可変スリット(SES:Selectable Energy Slit)72が配置されている。エネルギー分解可変スリット72は、イオンビームを上下方向から挟むように配置されており、上下の切り替えスリットは4つのスリット面を備えており、これらのスリット面を切り替えた後、さらに上下スリットの軸を上下方向に調整させたり、回転させたりすることによって、所望のスリット幅に変更する。これら4つのスリット面をイオン種に応じて順次切り替えることにより、クロスコンタミネーションを低減している。
【0031】
プラズマシャワー74は、低エネルギー電子をイオンビームとともにウェハ58の前面に供給し、イオン注入で生じる正電荷のチャージアップを中和するととともに抑制している。プラズマシャワー74の左右端に配置されたドーズカップ76は、ドーズ量を測定する。具体的には、電流測定回路に接続されている左右のドーズカップに入ってくるイオンビームが、その回路を流れてくる電子により中性化されるので、この電子の流れを測定することによってイオンビームの測定を行う。
【0032】
ビームプロファイラ78は、イオン注入位置でのビーム電流の強弱測定を行うためのビームプロファイラカップ(図示省略)と、ビーム形状・ビームX−Y位置を測定するためのバーティカルプロファイルカップ(図示省略)とを備えている。ビームプロファイラ78は、イオン注入前などに水平方向へ移動させながら、イオン注入位置のイオンビーム密度を測定する。ビームプロファイル測定の結果、イオンビームの予想不均一性(PNU:Predicted Non Uniformity)がプロセスの要求に満たない場合には、ビームスキャナ36の印加電圧などをプロセス条件に満たすように自動的に調整する。バーティカルプロファイルカップは、注入位置でのビーム形状を測定し、ビーム幅やビーム中心位置の確認を行う。
【0033】
ビームラインの最下流には、ファラデーカップと同様のビーム電流計測機能を有して最終セットアップビームを計測するトリプルサーフェスビームダンプ(TSBD:Triple Surface Beam Dump)80が配置されている。トリプルサーフェスビームダンプ80は、イオン源10のガスの種類に応じて三角柱の3面を切り替えることにより、クロスコンタミネーションを低減している。なお、ビームラインは高真空で維持されていることは言うまでもない。
【0034】
図2(a)、図2(b)を参照して、上記のように構成されたイオン注入装置1におけるインジェクタフラグファラデーカップ32について説明する。図2(a)は、インジェクタフラグファラデーカップ32とその周辺の構造を示す側面断面図であり、図2(b)はその平面断面図である。本発明によるイオン注入装置1においては、インジェクタフラグファラデーカップ32がビームスキャナ36の上流側であってスキャナハウジング37内に配置されている。図2(b)において、ビームスキャナ36は、ビームラインに沿って互いの離間距離が大きくなるように配置された一対の走査電極36a、36bを有している。
【0035】
ここでは、インジェクタフラグファラデーカップ32を上下方向に駆動して、図中二点鎖線で示すビームライン上に入れ出しするために、スキャナハウジング37の外側に駆動機構32−1が設けられている。駆動機構32−1から駆動軸32−2がスキャナハウジング37内に導入され、駆動軸32−2の先端にインジェクタフラグファラデーカップ32が取り付けられている。スキャナハウジング37内の真空状態(減圧状態)を劣化させないようにするために、駆動機構32−1はハウジング32−3内に収容されて気密状態が維持され、スキャナハウジング37を貫通している駆動軸32−2の周囲もシールが施される。
【0036】
インジェクタフラグファラデーカップ32はイオンビームの電流を計測するために用いられ、通常は図2(a)に実線で示す退避位置にあるが、計測の際に下降されて図中破線で示すようにビームライン上に出される。
【0037】
インジェクタフラグファラデーカップ32によるビーム電流の計測原理は以下の通りである。インジェクタフラグファラデーカップ32は、ターミナルビームモニタコントローラ(図示省略)を介してグランドに接地されている。インジェクタフラグファラデーカップ32がビームライン上に配置されると、インジェクタフラグファラデーカップ32に進入してきたイオンに相当する電子がグランドからインジェクタフラグファラデーカップ32に流れてイオンを中和する。ターミナルビームモニタコントローラは、この中和のために流れた電子量を計測し、ビーム電流量を算出している。
【0038】
インジェクタファラデーカップ32は、そこに入射するイオンビームの断面形状に対応する受容面積を有していれば良い。つまり、本例の場合、インジェクタファラデーカップ32に入射するイオンビームの断面形状は、横方向に長軸を持つ楕円あるいは扁平形状であるが、往復走査される前であるので、入射するイオンビームの断面形状より少し大きめの長方形状であれば良い。
【0039】
インジェクタフラグファラデーカップ32においてイオンビームが当たる部分、具体的には、ビーム電流の検出に利用される面には、グラファイト32aが設けられている。インジェクタフラグファラデーカップ32が下降してビームライン上に配置されると、イオンビームがインジェクタフラグファラデーカップ32に進入してグラファイト32aに当たる。このとき、イオンビームでグラファイト32aがスパッタされても、インジェクタフラグファラデーカップ32がビームスキャナ36の上流側に配置されており、インジェクタフラグファラデーカップ32でイオンビームを遮断しているので、スパッタされたグラファイト32aの粒子がビームスキャナ36の走査電極36a,36bに付着することはない。従って、ビームスキャナ36の走査電極36a,36bを最適な状態に維持することができ、その結果、ビームスキャナ36でイオンビームを正確に往復走査させることができる。
【0040】
また、大量のグラファイト32a粒子がビームスキャナ36の走査電極36a,36bに付着することがないので、ビームスキャナ36などを収容しているスキャナハウジング37とビームスキャナ36の走査電極36a,36bとの間が短絡するおそれを確実に防止することができる。しかも、図6で説明したインジェクタフラグファラデーカップ200をビームスキャナ300の下流側に配置する従来の構成に比べて、インジェクタフラグファラデーカップ32を小さくすることができる。これは、以下の理由による。インジェクタフラグファラデーカップをビームスキャナの下流側に配置する従来の構成では、イオンビームが往復走査される広い範囲に適合した受容面積を持つインジェクタフラグファラデーカップが必要である。これに対し、インジェクタフラグファラデーカップ32をビームスキャナ36の上流側に配置する本発明の構成では、イオンビームが往復走査されていないので、インジェクタフラグファラデーカップ32の受容面積を小さくすることができる。特に、インジェクタフラグファラデーカップ32に入射するイオンビームは、その前段に配置されている四重極縦収束電磁石30によって収束されるので、断面形状が更に小さくなっている。その結果、インジェクタフラグファラデーカップ32全体のサイズを小さくすることができる。
【0041】
一方、インジェクタフラグファラデーカップ32が上昇してビームライン上から退避すると、イオンビームが下流側に配置されたビームスキャナ36に向かって進行する。ビームスキャナ36の走査電極36a,36bが最適な状態に維持されているので、ビームスキャナ36に到着したイオンビームは正確に往復走査されることとなる。
【0042】
なお、インジェクタフラグファラデーカップ32の検出値とトリプルサーフェスビームダンプ80の検出値とを比較してビーム輸送効率を算出することができる。
【0043】
図3は、スキャナハウジング37内でのイオンビームの往復走査の様子を示す平面断面図である。
【0044】
次に、パーク電極26とインジェクタフラグファラデーカップ32との組み合わせで行われるイオンビームの遮断機能について説明する。
【0045】
図4は、バーク電極26と質量分析スリット28とこれらを収容したパークハウジング27とを示す断面図である。図4中、二点鎖線で示すビームラインにおいて、質量分析スリット28の手前、つまり上流側に、プラス電極26−1とマイナス電極26−2とからなるパーク電極26が配置されている。これらパーク電極26と質量分析スリット28とは、アルミニウムからなるパークハウジング27に収容されている。質量分析スリット28の中央には、イオンビームのうち所定の質量のイオンからなるイオンビームを通過させる孔120が透設されている。また、質量分析スリット28の上流側の面、孔120の壁面及びマイナス電極26−2の下流側に対応するパークハウジング27の内壁面は、グラファイト122で覆われる。グラファイト122は、イオンビームが当たっても、スパッタされ難く剥がれ難い。
【0046】
パーク電極26にパーク電圧が印加されずにプラス電極26−1とマイナス電極26−2との間に電位差がなく、パーク電極26に電界が存在していないときには、質量分析磁石装置22で分離されたイオンビームは、パーク電極26をビームラインに沿って通過する。パーク電極26を通過したイオンビームのうち所定の質量のイオンからなるイオンビームが質量分析スリット28の孔120を通過する。質量分析スリット28の孔120を通過したイオンビームは、下流側に位置するビームスキャナ36に向かって進行する(図1参照)。
【0047】
一方、パーク電圧が印加されることにより、プラス電極26−1とマイナス電極26−2とからなるパーク電極26に電界が存在しているときには、質量分析磁石装置22で分離されたイオンビームは、図4に実線で示すように、マイナス電極26−2に向かって下方に偏向される。マイナス電極26−2に印加される電圧は、イオン源10における引出電圧の10%前後が好ましく、例えば引出電圧が数十kV以上の場合、−10kV前後が好ましい。この偏向によるイオンビームの退避は、機械的に行われる偏向に比べて非常に高速(マイクロ秒オーダー)であり、高速退避と呼ばれる。偏向したイオンビームは、質量分析スリット28の上流側の面あるいはパークハウジング27の内壁を覆っているグラファイト122に当たった状態を維持する。この状態は、通常、数秒程度の短時間であり、イオンビームの一時的退避と呼ばれる。この状態においてパーク電極26への印加電源をオフとして電位差をなくすと、パーク電極26に電界が存在しない状態となり、偏向していたイオンビームは、二点鎖線で示すビームラインに沿うように復帰する。これにより、パーク電極26を通過したイオンビームのうち所定の質量のイオンからなるイオンビームが質量分析スリット28の孔120を通過する。そして、質量分析スリット28の孔120を通過したイオンビームは、下流側に位置するビームスキャナ36に向かって進行する。
【0048】
このようなパーク電極26を備えることにより、イオンビームの断面形状が、通常の円形、横方向に長い(横方向に長軸を持つ)あるいは上下方向に長い(上下方向に長軸を持つ)楕円あるいいは扁平形状のいずれであっても、その断面形状の影響を受けることなく、イオンビームをパークハウジング27内で良好に退避させることができる。そして、一時的退避状態にあるイオンビームが当たる領域にはこのイオンビームによりスパッタの生じにくいグラファイト材で覆われているので、質量分析スリット28の下流側においてスパッタ粒子による汚染等の悪影響を受けることは無い。なお、上記のようなパーク電極26による電界偏向に代えて、磁界偏向を採用しても良い。
【0049】
次に、上記のイオン注入装置1のイオン源10において放電現象が発生して所望のイオンビームを得ることができなくなった時の動作について説明するが、その前に通常時のイオン注入について簡単に説明する。
【0050】
図5は、ウェハ58にイオン注入を行うときの様子を示す説明図である。図5に示すように、昇降装置130は、ウェハ58を保持するプラテン(図示省略)を備え、プラテンを上下方向に昇降させることによりウェハ58を昇降させる。また、昇降装置130は、制御を司るCPU(Central Processing Unit)132と、ウェハ58の上下方向の位置を記憶するRAM(Random Access Memory)134とを備え、必要に応じてウェハ58の位置を記憶する。一対のドーズカップ140は、イオンビームが照射される領域内の固定位置、ここでは昇降装置130の左右位置に配置されており、ドーズ量を測定し、測定値を出力する。ドーズ量判定部142は、一対のドーズカップ140で測定された測定値に基づいてドーズ量が適切か否かを判定し、判定結果を判定信号として出力する。具体的には、ドーズ量が所定値以上である場合には、ドーズ量判定部142はドーズ量が適切である旨の判定信号を出力する。一方、ドーズ量が所定値未満である場合には、ドーズ量判定部142はドーズ量が不適切である旨の判定信号を出力する。
【0051】
破線の矢印(横方向の矢印)で示すように、イオンビームは、ビームスキャナ36によって周期的に一対のドーズカップ140を横切るように水平方向に往復走査される。水平方向に往復走査しているイオンビームに対して、実線の矢印(上下方向の矢印)で示すように、ウェハ58が上下方向に移動すると、イオンビームはウェハ58の全面を往復走査することとなり、その結果としてイオンビームのイオンがウェハ58の全面に注入される。具体的には、ウェハ58が最下位置から最上位置、または最上位置から最下位置まで移動する間に、イオンがウェハ58全面に注入される。
【0052】
ところで、このようにウェハ58にイオン注入を行っているときに、放電現象が発生して所望のイオンビームを得ることができなくなると、ドーズカップ140で測定しているドーズ量が減少する。そして、ドーズ量が所定値未満になると、ドーズ量判定部142は、ドーズ量が不適切である旨の判定信号を出力する。この判定信号を受け取ると、パーク電源制御部144は、パーク電圧をパーク電極26に印加する。パーク電圧が印加されると、パーク電極26は、イオンビームを瞬時にビームラインから下方に偏向させることにより退避させ、この状態が所定時間(例えば2秒)維持される。その結果、イオンビームは、質量分析スリット28のグラファイト122、またはパークハウジング27内のグラファイト122に当たる。従って、質量分析スリット28やパークハウジング27を退避場所として活用することができる。加えて、イオンビームが質量分析スリット28やパークハウジング27内のグラファイト122に向けて偏向されるため、イオンビームがウェハ58に到達することはなく、ウェハ58に注入されることもない。
【0053】
また、ドーズ量が不適切である旨の判定信号を受け取ると、昇降装置130のCPU132は、ウェハ58の上下方向の位置情報をRAM134に記憶させるとともに、念のためウェハ58をイオン注入されない位置(イオンビームの照射領域外)に退避させる。具体的には、放電現象が発生したときのウェハ58へのイオン注入位置が、ウェハ58の中心よりも上側である場合には、ウェハ58を最上位置まで上昇させることにより、ウェハ58をイオンビームの照射領域から退避させる。一方、放電現象が発生したときのイオン注入位置が、ウェハ58の中心よりも下側である場合には、ウェハ58を最下位置まで下降させることにより、ウェハ58をイオンビームの照射領域から退避させる。
【0054】
続いて、ドーズ量が不適切である旨の判定信号を受け取ってから所定時間が経過してウェハ58が最上位置または最下位置に退避したと判断すると、パーク電源制御部144はパーク電極26への印加を停止する。その結果、退避しているイオンビームが瞬時にビームラインに復帰する。イオンビームが復帰すると、ビームスキャナ36で周期的に往復走査が行われるので、イオンビームのドーズ量がドーズカップ140で測定される。測定の結果、ドーズ量が所定値以上であると、ドーズ量判定部142は、ドーズ量が適切である旨の判定信号を出力する。この判定信号を受け取ると、パーク電源制御部144は、パーク電圧をパーク電極26に印加する。パーク電圧が印加されると、パーク電極26は、イオンビームを瞬時にビームラインから下方に偏向させることによりイオンビームを退避させる。また、この判定信号を受け取ると、CPU132はRAM134からウェハ58の位置情報を読み出し、昇降装置130を駆動してウェハ58を放電現象が発生したときの位置に復帰させる。
【0055】
次に、ドーズ量が適切である旨の判定信号を受け取ってから所定時間が経過してウェハ58が退避前の位置(放電現象が発生したときの位置)に復帰したと判断すると、パーク電源制御部144はパーク電極26へのパーク電圧の印加を停止する。パーク電極26へのパーク電圧印加が停止されると、イオンビームの偏向が停止され、イオンビームが瞬時にビームラインに復帰する。その結果、質量分析スリット28の孔120を通過したイオンビームはビームスキャナ36に向かって進行し、ビームスキャナ36でイオンビームが周期的に水平方向に往復走査される。このとき、ウェハ58は、放電現象が発生したときの位置に復帰しているので、イオン注入が中断された時の途中位置からイオン注入を再開することができる。従って、万一、放電現象が発生しても、それが所定時間以内であればイオンビームの均一性を確保することや、ドーズ量を均一にすることが困難となることはなく、ウェハ58に均一にイオン注入することができる。
【0056】
上記のような構成によるインジェクタフラグファラデーカップ32を備えることにより、ドーズ量が不適切である旨の判定信号を受け取ってから所定時間(例えば2秒)が経過し、ドーズ量の再計測を行った時にドーズ量が適切である旨の判定信号を受け取ることができない場合には、スキャナハウジング37においてインジェクタフラグファラデーカップ32をビームライン上に進出させることでイオンビームをインジェクタフラグファラデーカップ32で遮断することとしている。勿論、イオンビームの一時的退避は解除される。このような作用により、イオンビームを退避させている時間が長くなることはなく、質量分析スリット28やパークハウジング27に設けられたグラファイト122がスパッタされることを抑制することができる。
【0057】
以上説明したパーク電極26とインジェクタフラグファラデーカップ32との組み合わせによれば、イオンビームの径や断面形状の影響を受けることなくイオンビームの高速退避、一時的退避を、周辺部材に影響を及ぼすことなく実現できる。また、ドーズ量計測手段、ドーズ量判定手段、制御手段としてのCPU及びRAM、パーク電源制御手段及びウェハの移動手段(昇降手段)との組み合わせにより、所望のイオンビームが得られない場合には、イオンビームの一時的退避動作とウェハの退避動作とを組み合わせることで不均一なイオンビームがウェハに照射されることを防ぐことができ、ウェハに対し常に、均一にイオン注入を行うことができる。
【0058】
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0059】
上記実施形態では、質量分析磁石装置22を備えたイオン注入装置1であったが、本発明は質量分析磁石装置を備えていないイオン注入装置にも適用され得る。これは、質量分析磁石装置でイオンを分離する必要がないガス(例えば水素など)がイオン源10に供給される場合である。
【0060】
図6(a)、図6(b)に示すように、イオンビーム断面の電流密度分布を計測する2線式ビームプロファイルモニタ31を、インジェクタフラグファラデーカップ32直近の上流側(図6a)または下流側(図6b)においてビームライン上に入れ出し可能に配置しても良い。このように構成すれば、2線式ビームプロファイルモニタ31で計測された電流密度分布などに基づいて四重極縦収束電磁石24や四重極縦収束電磁石30を調整することができる。また、トリプルサーフェスビームダンプ80で計測されたデータと、2線式ビームプロファイルモニタ31で計測されたデータとを比較することによっても、四重極縦収束電磁石24や四重極縦収束電磁石30を調整することができる。
【0061】
上記実施形態では、ビームライン、つまりイオンビームの進行方向と直交する水平方向にイオンビームを周期的に往復走査させる構成であったが、これに代えて、イオンビームを水平方向以外の特定方向、例えば垂直方向に周期的に往復走査させる構成であっても良い。
【0062】
上記実施形態では、枚葉式のイオン注入装置に本発明を適用したが、これに代えて、バッチ式のイオン注入装置に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1(a)は、本発明を枚葉式のイオン注入装置に適用した場合の構成を模式的に示した平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示したイオン注入装置を側面から模式的に示した図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)に示されたインジェクタフラグファラデーカップとその周辺の構造を示した側面断面図であり、図2(b)は、図2(a)の平面断面図である。
【図3】図3は、スキャナハウジング37内でのイオンビームの往復走査の様子を示す平面断面図である。
【図4】図4は、本発明によるイオン注入装置に備えられるパーク電極と質量分析スリット及びこれらを収容しているパークハウジングについて説明するための側面断面図である。
【図5】図5は、本発明によるイオン注入装置においてウェハにイオン注入する時の様子を説明するための図である。
【図6】図6(a)、図6(b)はそれぞれ、本発明によるイオン注入装置においてインジェクタフラグファラデーカップに2線式ビームプロファイルモニタを組み合わせる場合の組み合わせ例を示した平面図である。
【図7】図7(a)は、従来のイオン注入装置でインジェクタフラグファラデーカップがビームスキャナの下流側にある場合の問題点について説明するための平面断面図であり、図7(b)は、図7(a)に示されたインジェクタフラグファラデーカップを上流側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 イオン注入装置
10 イオン源
22 質量分析磁石装置
24 四重極縦収束電磁石
28 質量分析スリット
30 四重極縦収束電磁石
31 2線式ビームプロファイルモニタ(プロファイルモニタ)
32 インジェクタフラグファラデーカップ
32a グラファイト
36 ビームスキャナ
36a、36b 走査電極
37 スキャナハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源から引き出されたイオンビームを、質量分析磁石装置および質量分析スリットを通過させ、ビームスキャナにより周期的に水平方向あるいはそれ以外の特定方向に往復走査させてウェハに照射し、ウェハにイオン注入を行うビームラインを有するイオン注入装置において、
前記質量分析スリットの通過後の前記ビームスキャナ入射前のビームライン上に、イオンビームの全ビーム量を計測してビーム電流を検出するファラデーカップを入れ出し可能に配置したことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記ビームスキャナ及び前記ファラデーカップを収容するためのスキャナハウジングを備え、前記ファラデーカップを前記スキャナハウジングにおけるイオンビーム入口の直後に配置し、該ファラデーカップの直後に前記ビームスキャナを配置したことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記ファラデーカップの形状を、横あるいは上下方向に長軸を持つ断面楕円形状のイオンビームに対応可能なように長方形状としたことを特徴とする請求項2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記ファラデーカップをビームライン上に入れ出しするための駆動機構を前記スキャナハウジングの外に設置し、前記スキャナハウジングの壁を貫通して該スキャナハウジング内に導入された前記駆動機構の駆動軸に前記ファラデーカップを取り付けてなることを特徴とする請求項2又は3に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
ビームラインの最下流位置に配置された、ビーム電流検出機能を持つビームダンプを備え、前記ファラデーカップの検出値と前記ビームダンプの検出値とを比較してビーム輸送効率を算出できるようにしたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
更に、イオンビームの断面の電流密度分布を計測するプロファイルモニタを備え、該プロファイルモニタは、前記スキャナハウジング内で前記ファラデーカップの上流側直近または下流側直近に配置されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
ウェハの近傍に配置されたドーズ量計測手段と計測されたドーズ量が適切か否かを判定する判定手段を備え、
更に前記質量分析磁石装置の出口から前記質量分析スリット手前のビームライン区間に配置されて電界の作用によりイオンビームをビームライン上から外れた所定の向きに偏向させ、これを維持することによりイオンビームの一時的退避を行う偏向装置を備え、
計測されたドーズ量が前記判定手段において不適切と判定された時に、前記偏向装置による一時的退避を行い、
前記ドーズ量が不適切と判定されてから所定時間が経過したら前記一時的退避を停止させることによりイオンビームをビームラインに復帰させて前記ドーズ量計測手段によるドーズ量の再計測を行い、
再計測したドーズ量が再び不適切と判断された時には、前記ファラデーカップをビームライン上に挿入するとともに前記一時的退避を解除することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−262748(P2008−262748A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103094(P2007−103094)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000183196)株式会社 SEN−SHI・アクセリス カンパニー (31)
【Fターム(参考)】