説明

イオン液体からの沈着

イオン液体を真空に暴露後に、真空中または保護雰囲気中でイオン液体から基板上に物質を電着または無電解沈着するための方法並びに生成される物質。本発明に従うと、イオン液体を真空に暴露後に、真空中または保護雰囲気中で、望ましくない成分を含まない緻密な層を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、イオン液体から基板上への金属または半導体の電着または無電解沈着法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体からの金属の電着は周知であり、種々の刊行物(非特許文献9)並びに特許文献(特許文献2、3、4、5、6)中で考察されている(非特許文献9および特許文献2、3、4、5、6参照)。
【0003】
イオン液体からの電着および(程度は低いが)無電解沈着における興味はそれらの特性:
* 水溶液または有機溶液から電着されることができない元素に接近を許す、時々は4ボルトを越える広い電位枠、
* 金属塩に対する高い溶解度、
* 非水性溶媒に比較して高い伝導度、
* 保護雰囲気(例えば、グローブボックス内部に提供されるような)と組み合わせて疎水性イオン液体で処理することにより、水を回避させること、
に由来する。
【0004】
従って、イオン液体は例えば、電池、燃料電池、光起電性装置、電解研磨および電着法における使用のために使用されまたは請求される。
【0005】
大部分のイオン液体の他の重要な特性は、それらの非常に低い蒸気圧である。低い蒸気圧は健康、安全性および環境の観点から有益である。イオン液体の蒸留および揮発性の研究はごく近年にになって探求された、例えば、Earle他(非特許文献1)、J.P.Armstrong他(非特許文献2)、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5(非特許文献1、2、3、4、5参照)。
【0006】
イオン液体の低い揮発性はまた、イオン液体を研究するためのX線光電子分光法およびスタチック二次イオン質量分析(SIMS)のような超高真空法の使用に導いた、例えば、真空中のイオン液体:超高真空法を使用する液体表面の分析(非特許文献6)および真空中のイオン液体;液相X線光電子分光分析法(非特許文献7)(非特許文献6、7参照)。より近年になって、月面望遠鏡のための基板としてイオン液体上への真空中の銀の熱蒸着が提唱された(非特許文献8参照)。
【0007】
種々の著者が、より長い時間尺度において300℃までの温度で、そして短時間の尺度では400℃までの温度での実験を可能にする興味深い特性としてイオン液体の低い蒸気圧(室温で10−11〜10−12mbar)に、そしてその極めて低い蒸気圧が真空条件下の実験を許すことに言及した。
【0008】
しかし、これまでのところ、低い蒸気圧(イオン液体の固有の特性であると思われる)はイオン液体からの電着または無電解沈着における重要な利点としては見逃されてきた。我々は、イオン液体の低い蒸気圧が高真空中での物質の電着または無電解沈着を許し、そしてイオン液体を高真空に暴露し、次に保護ガス(例えば、稀ガス)でパージすることにより、電着の前にイオン液体と接する雰囲気からすべての気体の除去を許すことを見いだした。これは、そうしないと、タンタル、ニオブまたは他のバルブ金属(valve metal)のような酸素または水(蒸気)との接触により酸化または加水分解すると考え
られる基板上への電着または無電解沈着を許す。更に、すべての金属は酸素または水に暴露されると物理吸着または化学吸着された酸素の層、あるいは基板上に沈着される物質の高い核生成密度を得るために有害である可能性がある物質を含む酸素の層を形成する。
【0009】
本発明の方法は、そこで銅が拡散バリヤー、しばしばTaまたはTaN上に電着されるDamascene法の小型化における問題の1つを解決する。Taが空気または水と接触されると、Taは酸化物(または水酸化物)層で自然に自身を覆うために、沈着水溶液からTa上への銅の直接の電着は可能ではない。この反応層が実質的な接触抵抗をもたらし、バリヤー層上の銅の核生成を妨げる。従って、メッキ前に、バリヤー層上に薄い銅のシード層が沈着される。このシード層はPVD、ALDまたはCVD法により沈着される。シード層の適合性(conformity)および厚さが、銅沈着による欠陥を伴わずに、32nm以下のバイアス(vias)を満たすことを困難にさせる。しかし、銅が高真空中でイオン液体から沈着される場合は、Taの酸化が回避されて、バリヤー上に直接の沈着を許す。彼らの特許文献4において、Biermann,EndresおよびZein El Abedinは、グローブボックス中の保護雰囲気下でイオン液体からTaおよびCuを電着する可能性を考察している。しかし、グローブボックスの低い酸素および水の濃度(非常に優秀なグローブボックスに対して、せいぜい0.5〜1ppmの酸素および水である)においても、タンタルの酸化は非常に急速で、非常に短時間に酸化物層で覆われるであろう。真空中で作業することによってのみ、タンタルの酸化を、銅の直接的沈着を可能にするほど十分に遅らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,624,753号明細書、金属の電着法、G.E.MacMannis III他から、
【特許文献2】米国特許第6,573,405号明細書、イオン液体、Abbott他から、
【特許文献3】米国特許第7,196,221号明細書、イオン液体およびそれらの使用、Abbott他から、
【特許文献4】国際公開第06/053362 A2号パンフレット、イオン液体から層を沈着する方法、Schottenberger Herwig他から、
【特許文献5】国際公開第06/061081 A2号パンフレット、イオン液体中でのタンタルおよび/または銅の電気化学的沈着、Welz−Biermann他から、
【特許文献6】国際公開第06/074523 A1号パンフレット、金属の回収、Houchin他から、
【特許文献7】国際公開第2007039035号パンフレット、イオン液体中のセレンの電気化学的沈着、Welz−Biermann and Endres Frank、
【特許文献8】中国特許1884622号明細書、イオン液体による金属コバルトの電着法、Yang Peixia An、
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】イオン液体の蒸留および揮発性、Nature,vol.439,16 February 2006,831−834,M.J.Eerle,J.M.S.S.Esperanca,M.A.Gilea,J.N.Canongia Lopez,L.P.N.Rebelo,J.W.Magee,K.R.Seddon and J.A.Widegren
【非特許文献2】イオン液体の蒸発、J.P.Armstrong,C.Hurst,R.G.Jones,P.Licence,K.R.J.Lovelock,C.J.Satterley and I.J.Villar−Garcia,Phys.Chem.Chem.Phys,vol.9,982−990(2007)
【非特許文献3】混合物の真空蒸留によるイオン液体の相対的揮発性、J.A.Widgren,Y.M.Wang,W.A.Henderson and J.W.Magee,J.Phys.Chem.B,ウェブ07/07/2007上に公表、
【非特許文献4】イオン液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドの蒸気圧および熱安定性、Y.U.Paulechka,Dz.H.Zaitsau,G.J.Kabo and A.A.Strechan,Thermochimica Acta,Vol.439,pp.158−160(2005)
【非特許文献5】1−アルキル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの実験的蒸気圧およびイオン液体の気化エンタルピーの算定のための相関スキーム、D.H.Zaitsau,G.J.Kabo,A.A.Strechan,Y.U.Paulechka,A.Tschersich,S.P.Verevkin and A.Heintz,J.Phys.Chem.A,vol 110,pp.7303−7306(2006)
【非特許文献6】真空中のイオン液体;超高真空法を使用する液体表面の分析、E.F.Smith,F.J.M.Rutten,I.J.Villar−Garucia,D.Briggs and P.Licence,Langmuir,vol.22,pp.9386−9392(2006)
【非特許文献7】真空中のイオン液体;液相X線光電子分光分析、E.F.Smith,I.J.Villar−Garcia,D.Briggs and P.Licence
【非特許文献8】月面望遠鏡のための基板としてのイオン液体上の金属膜の沈着、E.F.Borra,O.Seddiki,R.Angel,D.Eisenstein,P.Hickson,K.R.Seddo and S.P.Wordern,Nature,vol.447,pp.979−981,21 June 2007
【非特許文献9】イオン液体の電気化学的アスペクト、H.Ohno(編者)、Wiley Interscinence,Tokyo(2005)およびその中の参考文献
【非特許文献10】El Abedin,SZ;Endres,F,空気および水に安定なイオン液体中の金属および半導体の電着、CHEMPHYSCHEM,7(1):58−61 JAN 16 2006
【非特許文献11】Abbott,AP;Capper,G;Swain,BG;他、イオン液体中のステンレス鋼の電解研磨法、TRANSACTIONS OF THE INSTITUTE OF METAL FINISHING,83(1):51−53 JAN 2005
【非特許文献12】Buzzeo,MC;Evans,RG;Compton,RG,電気化学における非ハロアルミネートの室温のイオン液体−総説、CHEMPHYSCHEM,5(8):1106−1120 AUG 20 2004
【非特許文献13】Endres,F,イオン液体:電気化学のための有望な溶媒、ZEITSCHRIFT FUR PHYSIKALISCHE CHEMIE−INTERNATIONAL JOURNAL OF RESEARCH IN PHYSICAL CHEMISTRY & CHEMICAL PHYSICS,218(2):255−283 2004
【発明の概要】
【0012】
本発明は、イオン液体を真空に暴露後に、真空中または保護雰囲気中でイオン液体から基板上に金属元素または半導体元素および/またはそれらの組み合わせ物よりなる層を電着または無電解沈着する方法並びに生成される物質に関する。本発明に従うと、イオン液体を高真空に暴露後に、真空中または保護雰囲気中で、低温(好ましくは100℃未満)で、望ましくない成分を含まない緻密な層を生成することができる。この方法および生成
される物質は、物質および装置の汚染が致命的であるマイクロ電子産業に特に適する。より具体的には、本法は銅のシード層の必要なしに、TaおよびTa−基材のバリヤー上に銅を直接沈着するために使用することができる。
【0013】
タンタルに基くバリヤー層上に銅を直接沈着する1つの方法は、ロードロックを通って移動モジュールへ基板を移動する工程(その場合、圧力は10−5Paの次元である)を伴うと考えられる。基板は移動モジュールから沈着室に移動され、そこでタンタル層の沈着が行われる[例えば10−8Paの次元の基底圧(base pressure)の物理的蒸着(PVD)により]。タンタル層の沈着後に、基板を移動モジュールに移動して戻し、その後、第2の沈着室(圧力は10−4Pa未満)に移し、そこで基板をイオン液体と接触させ、イオン液体から基板上への金属または半導体物質の沈着が起る。この沈着法の前に、イオン液体は酸素および水を除去してタンタルの酸化を回避するために、真空工程(10−4Pa未満の圧力で)に暴露される。
【0014】
イオン液体はアニオンおよびカチオンのみからなる融解塩である。幾つかのイオン液体は100℃未満で融解し、そして幾つかは室温でも液体である。これらの後者の塩は時々、室温イオン液体(RTIL)と呼ばれる。種々のカチオンおよびアニオンの組み合わせに基づいて、原則的には、膨大な範囲のイオン液体を調製することができる。
【0015】
イオン液体中に使用することができる典型的なカチオンは:テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアルキルスルホニウム、N,N−ジアルキルイミダゾリウム、N,N−ジアルキル−ピロリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、N−アルキルピリジニウム、N,N−ジアルキル−ピペリジニウムを含む。窒素またはリン原子に結合される置換基は同一のまたは異なる脂肪族または芳香族基、あるいはこれらの基の組み合わせ物であることができる。これらの基の例は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基並びにヘテロアリール基(ここでヘテロ原子はN、S、O、P、SiおよびSeから選択される)を含む。置換基はそれら自体、ハロゲンおよび/または他の官能基のような基により置換されてもよい。好ましい官能基はFおよびCNを含む。イオン液体のアニオン成分は典型的には比較的小型の物質であり、例えば、Cl、BF、PF、NO、アルキルスルホネート(RSO)アセテート、トリフルオロアセテート、置換スルホネート(例えばトリフルオロエタンスルホネート)、ブロミド、テトラシアノボレート、アルキルスルフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミドおよびジシアナミドアニオンを含む。その基Rがカチオン成分に対して前述されたようなチオール(RS)、ジチオカルバメート(RNCS)およびキサンテート(ROCS)もまた、適当なイオン液体の形成に有用であると考えられる。
【0016】
【表1】

【0017】
電解沈着または無電解沈着により基板上に所望の物質を沈着することができるあらゆる適した原料を使用することができる。本明細書における「物質(species)」により、金属酸化物、非酸化物の半導体/伝導体または有機ポリマーを含む金属、無機酸化物を意味する。適した原料は当業者には明白であろう。
【0018】
1種以上の物質を同時に沈着するために混合物中に1種以上の原料を含むことができる。異なる物質を同一混合物から同時に沈着することができる。あるいはまた、どれか一方の物質が、選択される電位に従って優先的に沈着されるように電位または電流密度を変え
ることにより、異なる物質を同一混合物から連続して層状に沈着することができる。
【0019】
適した金属は例えば、周期表からのグループIIB、IIIA〜VIAの金属、とりわけ亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモンおよびビスマス、第1、第2および第3列の遷移金属、とりわけ白金、パラジウム、金、ロジウム、ルテニウム、銀、イリジウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄、クロムおよびマンガン、そしてもっとも好ましくは銅、並びにランタニドおよびアクチニド金属、例えばサマリウム、ネオジム、ガドリニウムおよびウランを含む。
【0020】
イオン液体は原料の溶解度を改善する添加剤を含んでも含まなくてもよい。
【0021】
イオン液体は沈着物質の核形成密度を改善する添加剤を含んでも含まなくてもよい。
【0022】
金属は単独の金属としてまたは合金としてそれらの塩から沈着することができる。
【0023】
イオン液体がメッキ期間中またはメッキ前に暴露される圧力は100〜10−8Paの間、そして好ましくは10−4Pa未満からなる。沈着期間中の温度は0℃〜350℃の間、そして好ましくは20℃〜200℃の間からなる。
【0024】
イオン液体から沈着される金属イオンの濃度は10−5〜10モル/lの間、そして好ましくは10−3〜1モル/lの間からなる。
【0025】
電着の場合は、沈着は制御電流または制御電位下のいずれかで実施される。適用電流密度は還元可能な金属イオンの濃度およびイオン液体の撹拌速度に応じて、10−7〜10A/dmの間にある。電解沈着は2電極または3電極形態のいずれを使用しても実施することができる。陽極の物質は十分に伝導性で、陰極に沈着工程を妨げる生成物を生成しないどんな金属または物質でもよい。銅沈着の場合は、銅の陽極を使用することができるが、Ptで製造された不活性陽極もまた可能である。無電解沈着の場合は、イオン液体から沈着されるイオンを還元することができる適当な還元剤をイオン液体に添加する。可能な還元剤は、LiBH、KBH、NaBH、N、HCHO、Ti3+イオンであり、ここで沈着物がホウ素を含むべきでない場合は最後の3種の還元剤が好ましい。
【0026】
沈着物質およびコーティングは、酸素または水の存在がTaおよびTa基材のバリヤー上への直接の沈着を妨げる、マイクロ電子産業における相互接続具の製造に特に適する。
【0027】
本発明の適用性の更なる範囲は以下に与える詳細な説明から明白になるであろう。しかし、発明の精神および範囲内の種々の変更および修正はこの詳細な説明から当業者には明白になるため、詳細な説明および特定の実施例は本発明の好ましい実施態様を示してはいるが、図示によってのみ与えられることを理解しなければならない。以上の一般的説明および以下の詳細な説明は両方とも、典型的であり、説明のためのみのものであり、請求される発明を制約するものではないことを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は高真空中の金のTEMグリッド上に沈着された銅の層の表面のSEM画像を示す。
【図2】高真空中のAuのTEMグリッド上に沈着された銅の層の表面のEDXスペクトルを示す。
【図3】低真空中の銅のTEMグリッド上に沈着されたコバルト層の表面のSEM画像を示す。
【図4】低真空中の銅のTEMグリッド上に沈着されたコバルト層の表面のEDXスペクトルを示す。
【図5】高真空中の銅のTEMグリッド上に沈着されたコバルト層の表面のSEM画像を示す。
【図6】高真空中の銅のTEMグリッド上に沈着されたコバルト層の表面のEDXスペクトルを示す。
【図7】高真空中の金のTEMグリッド上に沈着された銅の層の表面のSEM画像を示す。
【図8】高真空中の金のTEMグリッド上に沈着された銅の層の表面のEDXスペクトルを示す。
【0029】
以下の実施例は本発明を限定しない。その代わりに、発明の範囲は付記の請求の範囲およびそれらの同等物により規定される。システムの構成および方法、そしてより具体的には、イオン液体を真空に暴露後に真空中または保護雰囲気中でのイオン液体からの物質の沈着において、あるいは物質を沈着するための本法の使用において、発明の範囲または精神から逸脱せずに種々の修正および変更を実施することができることは当業者に明白であろう。
【0030】
発明の他の実施態様は本明細書に開示された発明の明細および実施を考慮すると当業者に明白であろう。明細および実施例は例示的のみと考えられることが意図される。
【実施例1】
【0031】
7.5ミクロン幅の孔サイズをもつAuグリッド上に高真空中で銅を沈着した。メッキ浴は、0.1モルdm−3の銅ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが溶解された1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであった。メッキ液を使用前に真空室内に入れ、圧力を2・10−6mbarに減圧した。次に、溶液をe−SEM内に入れ、圧力を10−4mbarに減圧した。電着法期間中、圧力は更に2・10−6mbarに低下した。メッキ溶液を90℃に加熱された銅のるつぼ中に維持した。このるつぼはまた、対極として働き、対照電極は使用しなかった。数時間後、約1ミクロンの厚さの沈着がAu−グリッド上に形成された。沈着物は滑らかで、基板に固く付着した(図1)。イオン液体を溶解するためにグリッドをアセトン中に1晩放置した後のEDX分析は、明瞭な銅のピークを示し、Au基板は25kVにおいても沈着により全体を覆われる(図2)。
【実施例2】
【0032】
e−SEMを使用して低真空中でコバルトの沈着物を製造した。圧力はNの3torrであり、加速電圧は25kVであった。基板は銅グリッドであり、その孔は200ミクロンの幅である。使用された溶液は、0.1モルdm−3の無水CoIが溶解された1−ブチル−1−メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであった。本溶液を使用前に減圧下、120℃で乾燥した。溶液は銅のるつぼ中に含まれ、そこでコバルトの層がCoCl水溶液浴から電着され、そしてこのるつぼが対極として働いた。それはペルチエ要素により約90℃に加熱された。作業電極と対極間に−3.00Vの電圧を約2時間維持した。対照電極は使用しなかった。沈着後に、銅基板上に樹木状のコバルト沈着物を認めることができた(図3)。イオン液体およびあらゆる付着性樹脂を溶解するためにグリッドをアセトン中に1晩入れた後のEDX分析は非常に明白なコバルトのピークを示す(図4)。
【実施例3】
【0033】
200ミクロン幅の孔をもつCuグリッド上に高真空中でコバルトを沈着した。メッキ浴は、0.2モルdm−3のCo(TfN)を溶解した[BMP][TfN]であった。メッキ溶液を使用前に真空室内に入れ、圧力を2・10−6mbarに減圧した。次に、溶液をe−SEM内に入れ、圧力を1・10−4mbarに減圧した。電着法期間中に、圧力は更に5.4・10−6mbarに低下した。メッキ溶液は90℃に加熱された銅のるつぼ中に維持された。このるつぼはまた、対極として働き、対照電極は使用しなかった。陰極と陽極の間に2Vの電圧を適用した。90分後、Cuグリッド上に沈着物が形成された(図5)。イオン液体を溶解するためにグリッドをアセトン中に1晩入れた後のEDX分析は明白なコバルトのピークを示す(図6)。
【実施例4】
【0034】
銅を7.5ミクロン幅の孔サイズをもつAuグリッド上に高真空中で沈着した。メッキ浴は、0.2モルdm−3の銅ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを溶解した1−ブチル−1−メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであった。メッキ溶液を使用前に真空室内に入れ、圧力を2・10−6mbarに減圧した。次に、溶液をe−SEM内に入れ、圧力を1・10−4mbarに減圧した。電着法期間中に、圧力は更に2・10−6mbarに低下した。メッキ溶液は90℃に加熱された銅のるつぼ中に維持された。このるつぼはまた、対極として働き、対照電極は使用しなかった。陰極と陽極の間に2Vの電圧を適用した。3時間後滑らかな沈着物が形成された(図7)。イオン液体を溶解するためにグリッドをアセトン中に1晩入れた後のEDX分析は明白な銅のピークを示す(図8)。
【実施例5】
【0035】
基板をロードロックを通して移動モジュール(その中の圧力は10−5Paの次元である)に移す。基板を移動モジュールから沈着室に移し、そこでタンタル層の沈着が実施される[例えば10−8Paの次元の基底圧の物理的蒸着(PVD)により]。タンタル層の沈着後、基板を移動モジュールに移動して戻し、次に第2の沈着室(10−4Pa未満の圧力)に移し、そこで基板はイオン液体と接触され、基板上へのイオン液体からの金属物質または半導体物質の沈着が起る。この沈着法の前に、イオン液体は真空工程(10−4Pa未満の圧力で)に暴露された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈着の前にイオン液体を10−2Pa未満の大気圧に暴露することにより酸素および水が枯渇されているイオン液体から、基板上に金属元素または半導体元素またはそれらの組み合わせ物を沈着する方法であって、その大気圧が少なくとも沈着の初期相期間中は10−2Pa未満に維持される方法。
【請求項2】
10−2Pa未満の圧力にイオン液体を暴露することによりイオン液体が酸素および水を枯渇された後に、基板がイオン液体中に移動される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
イオン液体が10−4Pa未満の室温における蒸気圧を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
沈着前および/または沈着中の大気圧が10−4Paより低い、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
金属元素または半導体元素またはそれらの組み合わせ物が電着により沈着される、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
金属元素または半導体元素またはそれらの組み合わせ物が無電解沈着により沈着される、請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
銅がタンタルまたは窒化タンタルでコートされた基板上に沈着される、請求項1〜6に記載の方法。
【請求項8】
タンタルまたは窒化タンタルでコートされた基板がタンタルまたは窒化タンタルをスパッターすることにより得られる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
タンタルまたは窒化タンタルでコートされた基板がイオン液体への移動前またはその期間中に酸化剤に対する暴露から保護される、請求項7および8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の方法の使用により得られる物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−535939(P2010−535939A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519419(P2010−519419)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059783
【国際公開番号】WO2009/019147
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510031486)カトリーケ・ウニベルシタイト・リユーベン (2)
【Fターム(参考)】