説明

イオン液体を使用して高配向のナノ粒子を含有するシートおよび膜を調製する方法、ならびにこの方法によって製造されたシートおよび膜

ナノ材料の調製のための方法が提供され、この方法は、1種以上のイオン液体から作製された媒質に、(a)1種以上の樹脂基材材料と(b)1種以上の磁性ナノ粒子物質との組み合わせを溶解および/または懸濁して混合物を提供することと、この混合物を非溶媒(イオン液体に対する溶媒であるが、他の成分に対する溶媒ではない)と組み合わせることによる固体ナノ材料を回収することとを包含し、また回収ステップ中に、磁性ナノ粒子物質を配列するために、混合物に電磁場を適用する。独特の情報記憶媒体を特にシートまたは膜の形状で提供するための、得られたナノ材料の使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年5月31日に出願された、米国特許出願番号11/139,690に対する優先権を主張する。この米国特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(分野)
本開示は、概して、ナノ粒子を含有する樹脂材料のシートおよび膜を調製するための、媒質としてのイオン液体の使用に関するが、これらのナノ粒子は、シートまたは膜内で高配向である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ナノ材料の製造は、通常、エネルギー集約型のプロセスを必要とする。ナノ粒子を捕捉して凝集を防止し、またその後規則的配列を形成するために、これらのナノ粒子を配列させる試みにおいて、特定の問題に直面してきた。これは、しばしばナノスケールの世界における、ブラウン運動と表面力の重要性に起因し得る。これらの力は、強い表面力が、NEMS装置の可動部をくっつけて、固着させるなど、凝集を発生させる顕著な要因となり得る。
【0004】
特に望まれる配向ナノ材料は、配列されたナノスケール磁性粒子が埋め込まれた、セルロースなどの樹脂材料から作製されたシートまたは膜である。かかる材料は、「スマートペーパー」として、および磁気情報記憶媒体において使用できる。媒質の信号対雑音比を増加させるために、薄膜における磁性粒子の粒子サイズと分布をさらに減少させることにより、記録媒体の記憶容量を著しく増加できることは立証されているが、磁性粒子がナノスケールに達すると、粒子を適切に分布し、凝集を防止することは、ますます困難になる。さらに、記録された情報の熱安定性を保証するために、得られる生成物の磁気異方性を増加させることがしばしば必要となる。
【0005】
非特許文献1は、懸濁樹脂を重合させながら、一軸磁場または二軸(例えば回転する)磁場において磁性粒子懸濁物を構築することによる、磁場構築合成物(FSC)の製造を開示している。しかしながら、懸濁物は、磁性粒子が懸濁した樹脂を重合させることによって製造されるため、そのプロセスは、懸濁樹脂がプロセス中に調製されるシステムによってのみ使用できる。
【0006】
マルチドメイン粒子を含有する磁性粒子懸濁物が一軸磁場に暴露されると、粒子上の磁気双極子モーメントは一般に増加し、適用された磁場に整列する。粒子はそれから、隣接する粒子との双極子相互作用の影響を受けて移動し、鎖状複合体構造を形成する。磁性粒子懸濁物が、代わりに二軸(例えば、回転する)磁場に暴露される場合、誘起双極子モーメントは、磁場の面に正味の引力相互作用を生成し、シート状複合体構造の形成をもたらす。誘電体粒子の懸濁物が一軸電場または二軸電場に曝されると、類似の効果が発生する。これらの材料は、当該分野で磁場構築合成物(FSC)として公知である。FSCは、伝導率、誘電率、絶縁破壊強度、光透過率などの特性に、大きな異方性を有し得る(非特許文献1)。
【非特許文献1】Martinら、Phys.Rev.E、2000年、61(3)、2818−2830
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、材料マトリックスに含有される配列されたナノ粒子を有するナノ材料を確実に製造し、同時に得られる材料の高い磁気異方性を提供するための方法に対する必要性が存在する。本明細書中に開示される材料と方法は、これらおよびその他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本明細書において実現され広く記載される、開示される材料、化合物、組成物、品物、および方法の目的に従って、開示される主題は、1つの局面において、化合物と組成物、およびかかる化合物と組成物を調製および使用するための方法に関する。さらなる局面では、開示される主題は、ナノ粒子が均一に分布されて埋め込まれているナノ材料を、特にシートまたは膜の形状で製造するための方法に関する。これらのナノ材料も本明細書中に開示される。さらに、高い磁気異方性を有し、熱安定性情報記憶媒体における使用を可能とするナノ材料が、その調製のための方法とともに開示される。またさらなる局面は、高い信号対雑音比と高い磁気異方性を有する熱安定性情報記憶媒体、およびかかる媒体を作製するための方法に関する。
【0009】
さらなる利点は、以下の記載において一部が説明されるが、一部は記載から明らかであるか、あるいは以下に記載の局面の実践により知ることができる。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素と組み合わせを用いて、実現および達成される。前述の大まかな説明と後述の詳細な説明は、例となる、説明のためのものに過ぎず、限定するものではないことも理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
本明細書中に開示される材料、化合物、組成物、品物、および方法は、開示される主題の具体的な局面についての以下の詳細な説明と、それに含まれる実施例とを参照することにより、より容易に理解することができる。
【0011】
本材料、化合物、組成物、品物、および方法が開示および説明される前に、以下に説明される局面は、合成方法または試薬はもちろん変化し得るので、特定の合成方法にも特定の試薬にも限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される専門用語は、特定の局面を説明する目的のためのみであり、限定することを意図していないこともまた理解されるべきである。
【0012】
また、この明細書を通して、さまざまな刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、開示される内容が関連する技術水準をより完全に説明するために、その参考により全体として本明細書中に援用される。また開示される参考文献は、その参考文献が頼りとされる文章において記述される、それらに含まれる主題について、その参考により個々に、また具体的に本明細書中に援用される。
【0013】
本明細書およ添付の特許請求の範囲において、数々の用語に言及するが、これらは以下の意味を有すると定義される。
【0014】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「備える(含む)」という語、および「備えている(含んでいる)」、などその語の別の形態は、含むが限定されないことを意味し、例えば、他の添加物、成分、整数、またはステップを除外することを意図しない。
【0015】
説明および添付の請求項で使用される場合、文脈が特に明確に指示する場合を除き、単数形「a」「an」および「the」は複数の対象を含むものとする。したがって、例えば、「化合物」とは、2つ以上のかかる化合物の混合物を含み、「イオン液体」とは、2つ以上のかかるイオン液体の混合物を含み、「膜」とは、2つ以上のかかる膜を含む、などである。
【0016】
「任意の」または「任意で」とは、続いて記載される事象または状況が、発生してもしなくてもよいこと、およびその説明は、その事象または状況が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。
【0017】
本明細書において、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までのように表わすことができる。かかる範囲が表わされる場合、別の局面は、そのある特定の値から、および/またはその別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似値として表わされる場合、その特定の値は別の局面を形成することが理解される。さらに、それぞれの範囲の端点は、他方の端点との関係においても、他方の端点と無関係にも重要であることも理解される。数々の値が本明細書中に開示されており、各値は、その値自体に加え、「約」その特定の値としても開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。値が開示される場合、当業者により適切に理解されるように、その値「以下」、「その値以上」、および値間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」および「10以上」もまた開示される。本願を通して、データは多様な形式で提供され、これらのデータは終点と始点、およびデータ点のあらゆる組み合わせの範囲を代表することも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示される場合、10および15より大きい、以上、未満、以下、またそれと等しいものが、10と15の間と同様に開示されるものと理解される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、14もまた開示される。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「ナノ材料」という用語は、樹脂基材材料とともに1種以上のナノ粒子物質を含有する組成物を指す。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「樹脂基材材料」という用語は、1種以上のポリマー、1種以上のコポリマー、およびその組み合わせを含む。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「混和物」という用語は、分子レベルまたはドメインレベルで非混和性または混和性の、2つ以上のポリマー、2つ以上のコポリマー、およびその組み合わせを含む。
【0021】
「ポリマー材料」という用語は、1種以上のポリマー、1種以上のコポリマー、およびその組み合わせを含む。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「非溶媒」という用語は、1種以上のイオン液体と混和性であるが、1種以上の樹脂基材材料および1種以上のナノ粒子物質と非混和性の物質を指す。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「置換された」という用語は、許容される全ての有機化合物の置換基を含むことが意図される。広範な局面では、許容される置換基としては、有機化合物の、非環状および環状、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例となる置換基には、例えば以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対し、1つ以上であり得、同じであっても異なっていてもよい。本開示の目的上、窒素などのヘテロ原子は、そのヘテロ原子の原子価を満たす、水素置換基、および/または本明細書中に記載される有機化合物の許容される任意の置換基を有することができる。本開示は、有機化合物の許容される置換基により、どのような形で制限されることも意図されていない。また、「置換」または「〜で置換された」という用語は、かかる置換が、置換原子および置換基の許容される原子価に従い、またその置換は、例えば転位、環化、脱離などによる変換を自発的には起こさない化合物などの、安定化合物をもたらすという暗黙の条件を含む。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、化学種の「残留物」とは、特定の反応スキームで得られる化学種の生成物である部分、またはその結果生じる処方物もしくは化学生成物である部分であって、その部分が実際に化学種から得られたかどうかには関わらない部分をいう。
【0025】
「A」、「A」、「A」、および「A」は、さまざまな特定の置換基を表わす包括記号として、本明細書中で使用される。これらの記号は、任意の置換基であり得、本書に開示されるものに限定されず、またある例において一定の置換基として定義されるとき、別の例では別の何らかの置換基として定義され得る。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど、1〜24個の炭素原子を有する分岐または非分岐の飽和炭化水素基である。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基は、本明細書中に記載されるように、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基によって置換される。「低級アルキル」基は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子から成る非芳香族炭素環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記に定義されるシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」という用語の意味に包含され、環の炭素原子の少なくとも1つは、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどであるがこれらに限定されないヘテロ原子で置き換えられる。シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、本明細書中に記載される、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基によって置換できる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、エーテル結合により結合したアルキル基またはシクロアルキル基であり、すなわち「アルコキシ」基は、−OAと定義できるが、Aは上で定義されたアルキルまたはシクロアルキルである。「アルコキシ」はまた、先述のアルコキシ基のポリマーを含む。すなわちアルコキシは、−OA−OAまたは−OA−(OA−OAなどのポリエーテルであり得るが、「a」は1から200までの整数であり、A、A、およびAは、アルキル基および/またはシクロアルキル基である。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する構造式を有する、2〜24個の炭素原子の炭化水素基である。(A)C=C(A)などの非対称構造は、E異性体およびZ異性体を両方とも含むことを意図される。これは、非対称アルケンが存在する本書における構造式で推定されてよく、あるいは結合記号C=Cにより明示されてよい。アルケニル基は、本明細書中に記載されるような、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基によって置換することができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子から成り、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、すなわちC=Cを有する非芳香族の炭素ベースの環である。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニルなどが挙げられるがこれらに限定されない。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記に定義されるシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味に包含され、環の炭素原子の少なくとも1つは、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどであるがこれらに限定されないヘテロ原子で置き換えられる。シクロアルケニル基およびヘテロシクロアルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基およびヘテロシクロアルケニル基は、本明細書中に記載される、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基によって置換できる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する構造式を有する、2個〜24個の炭素原子の炭化水素基である。アルキニル基は、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない、1つ以上の基による置換されていても置換されていなくてもよい。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキニル」という用語は、少なくとも7個の炭素原子から成り、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する、非芳香族の炭素ベースの環である。シクロアルキニル基の例は、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニルなどが挙げられるがこれらに限定されない。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記に定義されるシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味に含まれ、環の炭素原子の少なくとも1つは、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどであるがこれらに限定されないヘテロ原子で置き換えられている。シクロアルキニル基およびヘテロシクロアルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキニル基およびヘテロシクロアルキニル基は、本明細書中に記載される、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基によって置換できる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「アリール」という用語は、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されない任意の炭素ベースの芳香族基を含む基である。「アリール」という用語は、「ヘテロアリール」も含むが、これは芳香族基の環内に組み込まれた、少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基を含む基と定義される。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるがこれらに限定されない。同様に、「非ヘテロアリール」という用語も「アリール」という用語に含まれるが、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含む基を定義する。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、ボロン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、ヒドロキサメート、シリル、スルホ−オキソ、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない、1つ以上の基で置換できる。「ビアリール」という用語は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールとは、ナフタレンにおけるように縮合環構造により結合された2つのアリール基、またはビフェニルにおけるように1つ以上の炭素−炭素結合により結合された、2つのアリール基を指す。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「アミン」または「アミノ」という用語は、式NAで表わされるが、A、A、およびAは、独立して、水素、あるいは本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「ボリル」という用語は、式−B(Aで表わされるが、Aは、本明細書中に記載されるヒドロキシル、置換または非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る。同様にこの用語の意味に包含されるのは、イオン化化合物、塩および四価構造である。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「カルボン酸」という用語は、式−C(O)OHで表わされる。本明細書を通して、「C(O)」はカルボニル基、すなわちC=Oの簡便な表記法である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「エステル」という用語は、式−OC(O)Aまたは−C(O)OAで表わされるが、Aは、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得る。本明細書中で使用される場合、「ポリエステル」という用語は、式−(AO(O)C−A−C(O)O)−または−(AO(O)C−A−OC(O))−で表わすことができるが、AおよびAは、独立して、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり、「a」は1〜500の整数である。「ポリエステル」とは、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物と、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物との間の反応により生成される基を記述するために使用される用語である。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「エーテル」という用語は、式AOAで表わされるが、AおよびAは、独立して、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る。本明細書中で使用される場合、「ポリエーテル」という用語は、式−(AO−AO)−で表わされるが、AおよびAは、独立して、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得、「a」は1〜500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「ハライド」という用語は、ハロゲンであるフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、式−OHで表わされる。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「ケトン」という用語は、式AC(O)Aで表わされるが、AおよびAは、独立して、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「アジド」という用語は、式−Nで表わされる。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「ニトロ」という用語は、式−NOで表わされる。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「ニトリル」という用語は、式−CNで表わされる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「シリル」という用語は、式−SiAで表わされるが、A、A、およびAは、独立して、水素、あるいは本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「スルホ−オキソ」という用語は、式−S(O)A、−S(O)、−OS(O)、または−OS(O)OAで表わされるが、Aは、水素、あるいは本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得る。本明細書を通して、「S(O)」は、S=Oの簡便な表記法である。「スルホニル」という用語は、本明細書中では式−S(O)で表わされるスルホ−オキソ基を指すために使用されるが、Aは、水素、あるいは本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得る。本明細書中で使用される場合、「スルホン」という用語は、式AS(O)で表わされるが、AおよびAは、独立して、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得る。本明細書中で使用される場合、「スルホキシド」という用語は、式AS(O)Aで表わされるが、AおよびAは、独立して、本明細書中に記載される置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得る。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「チオール」という用語は、式−SHで表わされる。
【0048】
ここで、特定の開示される材料、化合物、組成物、品物、および方法の局面を詳細に述べる。これらの例は、添付の実施例で説明される。
【0049】
本明細書中で開示される一部の材料、化合物、組成物、および成分は、市販のものを取得することができるか、あるいは一般に当業者に公知である技術を用いて、容易に合成することができる。例えば、開示される化合物および組成物の調製に使用される出発物質および試薬は、Aldrich Chemical Co.(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Acros Organics(ニュージャージー州モリスプレーンズ)、Fisher Scientific(ペンシルベニア州ピッツバーグ)、またはSigma(ミズーリ州セントルイス)などの商品サプライヤーから入手可能であるか、あるいはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、第1〜17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、第1巻〜第5巻および補遺(Elsevier Science Publishers、1989);Organic Reactions、第1巻〜第40巻(John Wiley and Sons、1991);March’s Advanced Organic Chemistry、(John Wiley and Sons、第4版);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989)などの参考文献に記述されている手順に従う当業者に公知である方法により、調製される。
【0050】
同様に本明細書中に開示されるのは、開示される方法および組成物に使用できるか、それと組み合わせて使用できるか、その調製で使用できるか、またはその生成物である、材料、化合物、組成物、および成分である。これらおよび別の材料が本明細書中に開示されるが、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されるとき、これらの化合物のさまざまな独立した、また集合的な組み合わせと順列のそれぞれに対する特別な言及は、明確に開示されないことがあるが、それぞれは本書において特別に意図され、説明されることが理解される。例えば、化合物が開示され、化合物の数々の成分に加えることができる多くの変更が議論される場合、可能なありとあらゆる組み合わせと順列は、特に具体的に示されない限り、具体的に意図される。したがって、成分A、B、およびCの群が開示され、同時に成分D、E、およびFの群と組み合わせ化合物の例A〜Dも開示される場合、それぞれが独立して述べられていなくても、それぞれは独立して、また集合的に意図される。したがって、この例では、組み合わせA〜E、A〜F、B〜D、B〜E、B〜F、C〜D、C〜E、およびC〜Fのそれぞれは、AとBとC、およびDとEとF、および組み合わせ例A〜Dの開示から具体的に意図され、開示されるものと考慮されるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも、具体的に意図され、開示される。したがって、例えば、A〜E、B〜F、およびC〜Eのサブグループは、AとBとC、およびDとEとF、および組み合わせ例A〜Dの開示から具体的に意図され、開示されるものと考慮されるべきである。この概念は、開示される組成物を作製および使用するための方法におけるステップを含むがこれに限定されない、本開示の全ての局面に適用される。したがって、実施できるさまざまな追加ステップがある場合、これらの追加ステップのそれぞれは、開示される方法のいかなる特定の局面、または局面の組み合わせによっても実施することができ、またかかる組み合わせのそれぞれは具体的に意図され、開示されるものと考慮されるべきであることが理解される。
【0051】
本明細書中に開示されるのは、1種以上のイオン液体を含む媒質に、1種以上の樹脂基材材料と1種以上の磁性ナノ粒子物質を溶解および/または懸濁させて混合物を提供するステップと、この混合物を前述の1種以上のイオン液体と混和性であるが、前述の1種以上の樹脂基材材料および1種以上のナノ粒子物質とは非混和性である物質と組み合わせることにより、1種以上の磁性ナノ粒子物質が分布された1種以上の樹脂基材材料を含む固体ナノ材料を回収するステップとを含むプロセスであって、前述の回収ステップ中に、前述の1種以上のナノ粒子物質を前述の1種以上の樹脂基材材料内に配列させるために、混合物に電磁場が適用されるプロセスと、それによって製造されるナノ材料、およびそのスマートペーパーおよび磁気記録テープなどの情報記憶媒体を提供する際の使用である。
【0052】
イオン液体は、イオン化種のみを含有し、150℃を大きく下回る、あるいは100℃未満であることが最も望ましい融点を有する、充分に確立された種類の液体である。ほとんどの場合には、イオン液体(IL)は、通常はアンモニウム、イミダゾリウム、またはピリジニウムイオンである、1種以上のカチオンを含有する有機塩であるが、その他多種が公知である。
【0053】
本明細書中に開示されるのは、ナノ粒子が、樹脂基材材料内に配列され、実質的に均一に分布される、ナノ材料製造のプロセスである。このプロセスは、1種以上の樹脂基材材料と1種以上の磁性ナノ粒子物質を、1種以上のイオン液体を含む媒質に溶解および/または懸濁して、混合物を提供するステップと、この混合物を非溶媒と組み合わせることにより、1種以上の磁性ナノ粒子物質が分布された、1種以上の樹脂基材材料を含む固体ナノ材料を回収するステップを含み、回収ステップ中には、1種以上のナノ粒子物質を1種以上の樹脂基材材料内に配列させるために、混合物に電磁場が適用される。
【0054】
イオン液体の独特の溶媒和特性は、広範な樹脂基材材料、特にポリエステルやセルロース材料など、磁気情報記憶媒体の製造に有用な材料の溶解を可能にする。さらに、この独特の溶媒和特性は、イオン液体が、広範な磁性ナノ粒子物質を溶解することも可能にする。この二重の溶解能力は、樹脂基材材料と磁性ナノ粒子物との完全な混合を可能にし、これは、次にこの混合物を「非溶媒」に添加するとき、最も望ましくはシートまたは膜の形状での、ナノ材料の作製を可能にし、磁性ナノ粒子物質は、樹脂基材材料全体に分布され、ナノ粒子がまだ移動可能で配列可能な再構成ステップ中に、電磁場の存在によって配列される。得られるナノ材料は、樹脂基材材料内のナノ粒子の高い異方性および配列により、例えば、情報記憶媒体の作製に適切なシートまたは膜の形状など、任意の望ましい形状であり得る。これらの情報記憶媒体は、電気、磁気、光、熱など、特定の種類の記録媒体に使用される従来のあらゆる記録のための力を用いて、記録することができる。適切な情報記憶媒体には、「スマートペーパー」として公知である材料(当業者には、eインク、再利用可能サインメディア、またはeペーパーとしても公知である、イスラエルのNeveh−IlanのMaginkにより製造されるフルカラー・プログラマブルメディアに基づく電子ディスプレイ技術など)、および磁気記憶テープまたはディスク中の材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
適切な非溶媒には、水、アルコール、およびその他の水素を含む(hydric)液体などの極性液体系が含まれるが、これらに限定されない。1つの例では、イオン液体は水を加えることにより、除去される。
【0056】
使用される磁場は、望ましいナノ粒子の配向性の種類により、一軸、二軸、または三軸であり得、また当該分野で周知の方法に従って、ナノ粒子を含有する樹脂基材材料に適用される。ナノ粒子材料を配列するために使用される磁場は、例えば約10ガウス〜約1000ガウス、または約50ガウス〜約350ガウスなどの範囲内など、望ましい任意の磁場強度を有し得る。
【0057】
本明細書中で開示されるプロセスは、樹脂基材材料として、さまざまな繰り返しモノマー単位を含有するポリマーを使用することができる。これらのモノマー単位は、−NH−、−NHR、−NR、−N、−O−、−OH、−COOH、−COO、−SH、−SO、−PO2−2+、−PR、−NH−CO−NH、および-NHC(NH)NHが挙げられるがこれらに限定されない、極性基、非イオン性基、および荷電基を含有することができる。これらの基は、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミドアミド、ポリベンゾイミド、アラミド、ポリイミド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、およびポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)などのポリマーにおいて、ポリマー骨格に沿ってまたはぶら下がって、十分な数で存在してよい。またこれらの基は、それぞれのポリマーの溶解度に影響を与える。ポリマーは、分子内水素結合、イオン相互作用、分子間相互作用、および鎖−鎖の複合体形成により、複合体構造を有することができる。これらの相互作用は、溶液の特性および性能を支配する。
【0058】
極性、電荷、水素結合、ポリマーと溶媒との間の相互作用などの溶媒特性もまた、有効な溶解および混和のために考慮され得る。
【0059】
3種の豊富な多糖類である、セルロース、デンプン、およびキチンは、その独特の分子構造および超分子構造に直接起因して、最も一般的な溶媒に溶解しない。ポリマーの溶解を増進するための1つの方法は、例えば、ポリマー構造に、1つ以上のヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基、カルボキシメチル基、スルフェート基、またはホスフェート基を加えることにより、そのポリマーを化学的に修飾することである。これらの修飾は、ポリマーの先述の相互作用を変化させ、それにより、一般的な有機溶媒、また多くの場合水への、その溶解度を向上することができる。ポリマーを化学的に変化させる代わりに、開示される方法は、溶媒としてイオン液体を使用して、バージンポリマーを処理する方法を提供し、そのため化学物質の使用量とプロセスステップを減らし、全体のプロセスを環境的および経済的により適切にする。しかしながら、前述のように修飾されたポリマーもまた、開示される方法で使用され得ることが意図される。特にセルロースの使用は、情報を記憶することが可能で、ペーパーへの情報の再記録によって再使用が可能な、スマートペーパーの製造に有用である。
【0060】
イオン液体(「IL」)は、従来の水性溶媒および有機溶媒と比較して、より複雑な溶媒の挙動を有するが、これはILが塩であり、分子性の非イオン溶媒でないためである。ILと多くの溶質との間の相互作用の種類には、分散相互作用、π−π相互作用、σ−π相互作用、水素結合相互作用、双極性相互作用、およびイオン/電荷間相互作用が含まれる。アブラハム溶媒和方程式は、ILにおけるポリマー溶解挙動を理解する上で、ILの溶媒特性を特徴付けるために使用される有用な方法である。Cmim ILの典型的な相互作用パラメータのいくつかは、以下の表1に示される。強い双極性、水素結合受容(A)性、および水素結合供与(B)性を有するILが、セルロースを溶解することができる他の溶媒と比較されている(下表参照)。最も独特の溶媒の1つであるCmim Clは、最大のA(a=4.860)と、非結合相互作用またはπ電子相互作用(r=0.408)で溶質と相互作用する高い能力とを示している。Cmimカチオンは、アニオンClとの組み合わせで、溶質分子のπ系と相互作用する有意な能力を示す(Anderson、J.L.ら)。Clの小さい水和ギブス自由エネルギー(ΔGhyd=−347kJ/mol)は、[BF](ΔGhyd=−200kJ/mol)の1.660と比較して、高いHBA4.860を示している。
【0061】
【表1】

いくつかの例では、開示されるプロセスは、1種以上の樹脂基材材料(ポリマーおよび/またはコポリマー)および1種以上の磁性ナノ粒子物質の、1種以上のイオン液体との混合を提供する。混合は、さまざまなかき混ぜ機構、攪拌機構、超音波処理、およびボルテックスが挙げられるがこれらに限定されない、当該分野の従来のいかなる手順によっても達成できる。1つの具体的な例では、混合物は約100℃に加熱される。熱の付加は、マイクロ波源を含むがこれに限定されない、いかなる従来のあるいは非従来的な熱源によっても供給することができる。マイクロ波放射は、熱を提供するだけでなく、イオン液体へのポリマー材料の溶解を促進することがわかっている。理論に縛られることは望まないが、溶解の促進は、吸収と、結果としての溶質と溶媒の分子運動の増加に起因し得ると考えられる。
【0062】
樹脂基材材料がセルロースである他の例では、イオン液体は、高濃度での誘導体化を伴わずに、セルロースの溶解を可能にすることができる。かかる溶液は、超音波浴で約100℃、または約80℃に加熱することができる。この加熱は、家庭用電子レンジにより供給されるマイクロ波放射を使用することにより、効果的に達成できる。1つの例では、親水性イオン液体とセルロースとの混合物は、マイクロ波放射を用いて、約100℃〜約150℃の温度に加熱される。セルロースのイオン液体への溶解のためのさらなる方法は、米国特許第6,824,599号および同第6,808,557号に記載されているが、これらは参考により、それらのイオン液体とその使用方法についての教示に関し、全体として本明細書中に援用される。
【0063】
(樹脂基材材料)
本発明のプロセスで使用するために適切な樹脂基材材料には、段階重合、連鎖重合、イオン重合、開環重合、および触媒重合により形成されるポリマーおよびコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
適切なポリマーおよびコポリマーは、多糖類、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、フェノールポリマー、ポリスルフィド、ポリアセタール、ポリオレフィン、アクリレート、メタクリレート、およびジエンが挙げられるがこれらに限定されない、天然または合成源に由来できる。特に、望ましいポリマーには、セルロース、ヘミセルロース、デンプン、キチン、絹、羊毛、ポリ−2−ヒドロキシメチルメタクリレート、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミドアミド、ポリベンゾイミド、アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリアニリン、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、末端アミン基を有するポリエチレンオキシド、線状ポリエチレンイミン、および分岐ポリエチレンイミンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
モノマーは、α−オレフィン、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート、アニリン、アクリロニトリル、エチレン、イソブチレン、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、メタクリル酸メチル、エチレングリコール、セロビオース、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ビニルピロリドン、ブタジエン、およびイソプレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
(磁性ナノ粒子物質)
開示される方法および組成物に適切な磁性ナノ粒子物質は、電磁場の存在下で配列可能なまたは配向性の、ナノスケール寸法を有するいかなる磁性材料でもよい。適切な磁性ナノ粒子物質には、鉄、コバルト、ニッケル、それらの酸化物、およびそれらの混合物/合金が含まれるが、これらに限定されない。磁性ナノ粒子物質のさらなる例としては、コバルト粒子、鉄コバルト粒子、鉄酸化物粒子、ニッケル粒子、およびそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0067】
(イオン液体)
イオン液体は、1種以上のカチオンと1種以上のアニオンを含む。多くの例では、カチオンとアニオンの混合物は、1種以上の樹脂基材材料と1種以上磁性ナノ粒子材料の特定の組み合わせの溶解のために、選択および最適化される。
【0068】
他の例では、カチオンは、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、アザチアゾール、オキソチアゾール、オキサジン、オキサゾリン、オキサザボロール、ジチオゾール、トリアゾール、セレノゾール、オキサホスホール、ピロール、ボロール、フラン、チオフェン、ホスホール、ペンタゾール、インドール、インドリン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソトリアゾール、テトラゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホロン、ピラン、アノリン(annoline)、フタラジン、キナゾリンおよびキノキサリン、キノリン、ピロリジン、イソキノリン、ならびにその組み合わせの複素環式化合物が挙げられるが、これらに限定されない有機化合物に由来する。
【0069】
イオン液体のアニオン部は、ハロゲン、BX、PF、AsF、SbF、NO、NO、SO2−、BR、置換または非置換カルボラン、置換または非置換金属カルボラン、ホスフェート、ホスファイト、ポリオキソメタレート、置換または非置換カルボキシレート、トリフラート、および非配位性アニオンの基のうちの少なくとも1つを含むことができるが、ここでRは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、シリル、ボリル、ホスフィノ、アミノ、チオ、セレノ、およびその組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0070】
他の例では、イミダゾリウムカチオンなどの、単一の五員環を含有する他の環構造に縮合しないカチオンが適切であり、イオン液体のアニオンは、ハロゲンまたは疑似ハロゲンとできる。例えば、1,3−ジ−(C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシアルキル)−置換−イミダゾリウムイオンは、適切なカチオンである。対応するアニオンは、ハロゲンまたは擬似ハロゲンであり得る。さらに、1−(C〜Cアルキル)−3−(メチル)−イミダゾリウム[n=1〜6であるCmim]カチオンも適切であり、ハロゲンは適切なアニオンである。
【0071】
イオン液体のさらなる例は、約200℃以下の温度(例えば約150℃未満の温度)および約−100℃より高い温度で液体であるものである。例えば、N−アルキルイソキノリニウム塩およびN−アルキルキノリニウムハロゲン化物塩は、約200℃未満の融点を有する。N−メチルイソキノリニウム塩化物の融点は約183℃であり、N−エチルキノリニウムヨウ化物は、約158℃の融点を有する。他の例では、意図されるイオン液体は、約120℃以下の温度およびマイナス44℃より高い温度で液体である(溶融している)。またさらに、意図されるイオン液体は、約マイナス10℃〜約100℃の温度で液体である(溶融している)。
【0072】
イオン液体のさらなる例としては、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]I、[Cmim]I、[Cmim][PF]、[Cmim][PF]、[Cmim][PF]、[Cmim][PF]、[Cmim][PF]、[Cmim][BF]、[Cmim][BF]、[Cmim][C]、および[Cmim][C]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
例となる1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウムイオン液体である、[C−mim]X(n=4および6、X=Cl、Br、SCN、(PF、(BF)、および[Cmim]Clが調製された。周囲条件下での、超音波処理およびマイクロ波加熱での100℃までの加熱による、これらの例となるイオン液体へのセルロース(Aldrich Chemical Co.製の、繊維状セルロース)の溶解が検査された。溶解は、マイクロ波加熱の使用によって増進される。セルロース溶液は、非常に迅速に調製され得、これはエネルギー効率がよく、付随する経済的利益も提供する。
【0074】
イオン液体の1つの例では、かかる液体から調製された溶液は、水または窒素含有塩基を実質的に含まない。かかる液体または溶液は、約1パーセント以下の水または窒素含有塩基を含有する。したがって、溶液の調製の際には、水も窒素含有塩基もない状態で、イオン液体とセルロースを混ぜて混合物を形成することにより、この溶液が調製される。
【0075】
イオン液体を調製するために使用される一般的なものから選別された、一連の異なるカチオンを使用することができるが、最小のイミダゾリウムカチオンは最も容易な溶解を示すので、イミダゾリウム塩が最も有効であると思われる。有機塩基を含まないアルキルピリジニウム塩は、やや有効性に劣る。より短鎖のアルキル置換基を含有する、より小さいホスホニウムおよび第四級アンモニウム塩が知られているが、より高い融点を有し、イオン液体の定義での容認される範囲内で液体でないことが多い。
【0076】
セルロースの溶媒としてのイミダゾリウム塩化物イオン液体の使用は、以前に報告されている、米国特許第1,943,176号に述べられている、最大溶解度は5重量パーセントであった、有機塩/塩基であるN−ベンジルピリジニウム塩化物/ピリジンにおけるセルロースの溶解度に優る、有意な改善を提供する。実際に、前述の特許で使用されたような窒素含有塩基の追加は、イオン液体におけるセルロースの良好な溶解度を獲得するために必要とされない。
【0077】
その他のイオン液体には、米国特許第6,824,599号および米国特許第6,808,557号に開示されているイオン液体が含まれるが、これらに限定されない。これらそれぞれの内容は参考により、少なくともそのイオン液体の教示に関し、全体として本明細書中に援用される。
【0078】
(添加物)
ポリマー形成に使用される従来のいかなる添加物も、本明細書中に開示される組成物および方法のナノ材料に組み込むことができる。これらの添加物が、樹脂基材材料と磁性ナノ粒子物の溶解ステップで組み込まれる場合、かかる添加物は、溶質−溶媒の相互作用および溶媒−溶媒の相互作用を阻害するべきではない。従来の添加物の例としては、可塑剤、充填剤、着色料、紫外線遮断剤、および酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。その他の添加物には、米国特許第6,808,557号に開示されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、開示される主題による、方法と結果を説明するために示される。これらの実施例は、本明細書中に開示される主題の全ての局面を網羅することを意図せず、代表的な方法と結果を説明することを意図する。これらの実施例は、当業者には明らかな、本発明の均等物および変形物を除外することを意図しない。
【0080】
数字(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にするための努力がなされたが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。特に指示されない限り、部は重量部、温度は℃で示されるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧またはそれに近いものとする。例えば、成分濃度、望ましい溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、およびその他の反応範囲と条件など、記載されるプロセスから獲得できる生成物の純度および収量を最適化するために使用できる反応条件の変形および組み合わせは多数存在する。かかるプロセスの条件を最適化するために、合理的かつ慣用的な実験のみが必要とされる。
【0081】
(実施例1)
開示されるプロセスの実施の例として、例えば溶解したセルロースなどの、イオン液体と樹脂基材材料の混合物中に、ナノ粒子を懸濁させる。ナノ粒子は、イオン液体に対して、2.0重量%〜30.0重量%の範囲で存在する。樹脂基材材料は、イオン液体に対して、2重量%〜20重量%の量で存在する。得られた懸濁物を超音波浴に1時間入れ、それから真空オーブンで脱気する(例えば、約50℃でおよそ10分間)。次に、単一の磁場源、または磁場源の組み合わせを用いて、150ガウスの磁場を供給する。樹脂基材材料は、水と接触させて、イオン液体を除去することにより、ナノ粒子を配列された形態で捕捉して再構成されるが、その間に、ナノ粒子が封入された状態で、樹脂基材材料を固体形状で再構成させ、その全ての間に、磁場の存在が維持される。水との接触は、混合物をシートに成形し、シートを水で洗浄し、イオン液体を除去すること、シートの形状での混合物の水中への押出など、さまざまな方法でおこなうことができる。
【0082】
本発明を実施するための好ましい方法では、混合物は手動で均質化され(完全な相互分散を確実にするため)、それからコーティングロッド(R&D Specialties、ニューヨーク州ウィーバー)を用いて、ガラス板上に膜(厚さおよそ1mm)として成形される。膜は再構成され、IL溶媒は、脱イオン(DI)HOにより膜から浸出される。再構成が完了した後、膜から残留IL([Cmim]Clなど)を浸出させるために、膜は槽に入れられ、DIHOに少なくとも24時間浸漬される。
【0083】
明らかであり、また本発明に固有であるその他の利点は、当業者には明白である。一部の特徴と下位の組み合わせは有用であり、他の特徴と下位の組み合わせと関わりなく使用されてよいことが理解される。これは、特許請求の範囲により意図され、それに含まれる。本発明から、その要旨から逸脱することなく、多数の可能な実施形態が作り出されてよいため、本明細書中に記述される、あるいは添付の図面に示される全ての事柄は、説明のためと解釈され、限定の意味に解釈されないものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ材料を作製する方法であって、
a.(i)1種以上の樹脂基材材料と(ii)1種以上の磁性ナノ粒子物質との組み合わせを、1種以上のイオン液体を含む媒質に溶解および/または懸濁させて、混合物を提供するステップと、
b.前記混合物を非溶媒と組み合わせることにより、前記1種以上の磁性ナノ粒子物質が分布した1種以上の樹脂基材材料を含む固体ナノ材料を回収するステップとを含み、
前記回収ステップ中に、前記1種以上のナノ粒子物質を前記1種以上の樹脂基材材料内に配列させるために、前記混合物に電磁場が適用される、
方法。
【請求項2】
前記電磁場は一軸電磁場である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁場は二軸電磁場である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁場は三軸電磁場である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上の樹脂基材材料は、多糖類、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、フェノールポリマー、ポリスルフィド、ポリアセタール、ポリオレフィン、アクリレート、メタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミドアミド、ポリベンゾイミド、アラミド、ポリイミド、およびジエンから成る群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上の樹脂基材材料は、セルロースまたはその誘導体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記媒質は、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、アザチアゾール、オキソチアゾール、オキサジン、オキサゾリン、オキサザボロール、ジチオゾール、トリアゾール、セレノゾール、オキサホスホール、ピロール、ボロール、フラン、チオフェン、ホスホール、ペンタゾール、インドール、インドリン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソトリアゾール、テトラゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホロン、ピラン、アノリン、フタラジン、キナゾリンおよびキノキサリン、キノリン、ピロリジン、イソキノリン、およびその組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つのメンバーから形成される、1種以上のイオン液体のカチオン部を有する1種以上のイオン液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記媒質は、ハロゲン、BX、PF、AsF、SbF、NO、NO、SO2−、BR、カルボラン、置換カルボラン、金属カルボラン、置換金属カルボラン、ホスフェート、ホスファイト、ポリオキソメタレート、カルボキシレート、置換カルボキシレート、トリフラート、および非配位性アニオンから成る群から選択される少なくとも1つのメンバーから形成される、1種以上のイオン液体のアニオン部を有する1種以上のイオン液体を含み、
Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、シリル、ボリル、ホスフィノ、アミノ、チオ、セレノ、およびその組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記媒質は、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]Cl、[Cmim]I、[Cmim]I、[Cmim][PF]、[Cmim][PF]、[iCmim][PF]、[Cmim][PF]、[Cmim][PF]、[Cmim][BF]、[Cmim][BF]、[Cmim][C]、および[Cmim][C]から成る群から選択される1種以上のイオン液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非溶媒は、水およびアルコールから成る群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の磁性ナノ粒子物質は、鉄、コバルト、ニッケル、その酸化物、その合金、およびその混合物から成る群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1種以上の磁性ナノ粒子物質が全体に分布した、1種以上の樹脂基材材料のマトリックスを備える情報記憶媒体であって、前記1種以上の磁性ナノ粒子物質は、前記マトリックス内に配列され、記録のための力の適用に応答して配向の変化の影響を受けやすい、情報記憶媒体。
【請求項13】
前記情報記憶媒体は、シート、膜、またはディスクの形状である、請求項12の情報記憶媒体。
【請求項14】
請求項1に記載の方法により調製されるナノ材料。
【請求項15】
前記ナノ材料は、シートまたは膜の形状である、請求項14のナノ材料。

【公表番号】特表2008−545543(P2008−545543A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514775(P2008−514775)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/020941
【国際公開番号】WO2006/130593
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507394569)ザ ユニバーシティ オブ アラバマ (3)
【Fターム(参考)】