説明

イオン液体

【課題】 穏和な条件下で、蒸留速度の速いイオン液体を提供する。
【解決手段】 本発明は、カチオン成分およびアニオン成分からなる非プロトン性イオン液体であって、上記カチオン成分は有機カチオンであり、上記アニオン成分は下記化学式(1)で示される化学構造を含むことを特徴とするイオン液体である。但し、式中、R、Rは、水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。また、RとR、又はRとRの間で環を形成してもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイス用材料、各種反応用溶媒などに使用可能なイオン液体に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体は、一般に、イミダゾリニウムなどのカチオンと、Br、Cl、BF、PF、(CFSOなどのアニオンとの組み合わせで構成され、難燃性、不揮発性、高いイオン伝導性、優れた熱安定性を示すため、電池やキャパシタ用の電解液、環境適合性の高い溶媒(グリーン溶媒)などへの応用が広く研究されている。
【0003】
イオン液体の特性の一つとして、蒸気圧が非常に低いことが挙げられる。この特性は長所であるが、一方で短所となる場合がある。それは、精製を行う場合であり、蒸気圧が低いと蒸留による精製が困難となる。例えば、電解液のような電気デバイス用材料には高純度のイオン液体が必要であるが、蒸留精製することができれば容易に高純度のイオン液体を得ることができる。また、一度使用したイオン液体には様々な不純物が含まれており、再度利用するためには、不純物を除去する必要がある。しかし、不純物がイオン液体に可溶性で、さらに、不揮発性である場合、蒸留以外の方法での精製は困難である。このような事情もあって、効率よく容易に蒸留精製することができるイオン液体が切望されている。
【0004】
イオン液体はプロトン性イオン液体と非プロトン性イオン液体とに分類される。プロトン性イオン液体は中和型イオン液体とも呼ばれ、下記反応式(1)に示すブレンステッド酸(HA)とブレンステッド塩基(B)の中和により合成されるイオン液体である。プロトン性イオン液体以外のものが、非プロトン性イオン液体に分類される。
【0005】
【化1】

【0006】
非特許文献1にはプロトン性イオン液体の蒸留について報告されているが、その機構は通常の液体の蒸留とは異なる。それは、イオン液体を蒸留するものではなく、上記反応式で逆反応により生じるブレンステッド酸とブレンステッド塩基を蒸留するものである。HAとHBの酸性度の差(ΔpKa)が小さい場合のみ上記反応式(1)が平衡状態にあるため、蒸留が可能となる。蒸留された酸、塩基は再び中和してイオン液体を形成する。このように、プロトン性イオン液体は、中和反応が平衡状態にあると、中性分子であるブレンステッド酸、ブレンステッド塩基が生じるため、純粋なイオン液体を得にくい。
【0007】
特許文献1、特許文献2及び非特許文献2には、非プロトン性イオン液体についての記載がある。特許文献1には、非特許文献1と同じように、イオン液体中に平衡状態で存在する中性分子を蒸留することが記載されている。また、特許文献2には、イオン液体の熱分解により生成した分解物を蒸留し、それらを反応させて再びイオン液体とすることが記載されている。しかし、蒸留された分解物には複数の成分が含まれており成分分離を行わないでそのまま反応させると、再生されたイオン液体は、カチオン上のアルキル基の組み換えによって、複数の成分を含むイオン液体となる。特許文献2には、イオン液体として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムクロライドが例に挙げられているが、再生されるイオン液体の成分は、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジエチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムクロライドの混合物となる。一方、非特許文献2には高温、減圧下で、イオン液体を組成変化させずに蒸留できることが報告されている。しかし、蒸留速度が速いビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをアニオンとするイオン液体であっても、数百mg/hの蒸留速度を得るには0.1mbar(10Pa)で300℃もの高温が必要である。このような条件を工業レベルで実現することは、高額な設備が必要となる上、エネルギー消費も大きく、現実的には難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2007−524664
【特許文献2】特表2003−507185
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,Vol.125,NO.50,pp15411−15419,2003
【非特許文献2】Nature,Vol.439,pp831−834,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献2にあるように、ある種の非プロトン性イオン液体を蒸留することは可能であるものの、十分な蒸留速度を得るには、高温、高真空という厳しい条件が必要である。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、穏和な条件下で、蒸留速度の速いイオン液体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本発明者は鋭意研究して以下の発明がなされた。
【0012】
本発明は、カチオン成分およびアニオン成分からなる非プロトン性イオン液体であって、前記カチオン成分は有機カチオンであり、前記アニオン成分は下記化学式(1)で示される化学構造を含むイオン液体に関する。但し、式中、R、Rは、水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。また、RとR、又はRとRの間で環を形成してもよい。
【0013】
【化2】

【0014】
本発明における非プロトン性イオン液体とは、プロトン性イオン液体に分類されないものを言う。プロトン性イオン液体とは、下記反応式(1)に示すブレンステッド酸(HA)とブレンステッド塩基(B)の中和により合成されるイオン液体である。さらに、カチオン中心を構成する原子又はカチオン中心とπ電子共役した原子は、炭素以外の原子を含み、その原子に水素原子が共有結合又はイオン結合した構造を有するものがプロトン性イオン液体のカチオン成分に該当する。
【0015】
【化3】

【0016】
また、前記化学式(1)中、R、Rは、CH、CHCH、CHCHCH、C(CH、CF、CFCF、CFCFCFのいずれかであり、Rは、H、CH、CF、Fのいずれかであることが好ましい。
【0017】
さらに、前記アニオン成分は下記化学式(2)で示される1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートアニオンであることが好ましい。
【0018】
【化4】

【0019】
また、前記カチオン成分は下記化学式(3)で示される群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。但し、式中、R〜Rは、炭素数が20以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示し、R´〜R´10は水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示す。
【0020】
【化5】

【0021】
さらに、本発明のイオン液体は下記化学式(4)で示される構造を有することが好ましい。
【0022】
【化6】

【0023】
また、本発明のイオン液体は下記化学式(5)で示される構造を有することが好ましい。
【0024】
【化7】

【0025】
さらに、本発明のイオン液体は下記化学式(6)で示される構造を有することが好ましい。
【0026】
【化8】

【0027】
また、本発明のイオン液体は下記化学式(7)で示される構造を有することが好ましい。
【0028】
【化9】

【0029】
さらに、本発明のイオン液体は下記化学式(8)で示される構造を有することが好ましい。
【0030】
【化10】

【発明の効果】
【0031】
本発明のイオン液体は、従来よりも速い速度、穏和な条件で蒸留が可能であり、精製や回収が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、実施例で用いられる蒸留装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明について更に詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。
【0034】
イオン液体
イオン液体に関しては幾つかの定義が提唱されている(イオン液体II―驚異的な進歩と多彩な近未来―,シーエムシー出版,pp4−15,2006)。本発明において、イオン液体とは、少なくとも一方が有機イオンであるカチオンとアニオンのみから成り、融点が100℃以下である物質を示す。また、本発明のイオン液体は、少なくとも常温で液体であることが好ましい。
【0035】
アニオン成分
本発明のイオン液体を構成するアニオン成分には下記化学式(1)で示されるアニオンが用いられる。但し、式中、R、Rは、水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。また、RとR、又はRとRの間で環を形成してもよい。
【0036】
【化11】

【0037】
、Rとしては水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、フェニル基、2−フラニル基、2−チエニル基が好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。RとRは同一でも異なっていても良い。Rとしては水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。化学式(1)で示されるアニオンの好ましい具体例としては下記化学式(2)で示される1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートアニオン、下記化学式(9)で示されるアセチルアセトネートアニオン、下記化学式(10)で示される1,1,1−トリフルオロアセチルアセトネートアニオン、下記化学式(11)で示されるジピバロイルメタネートアニオンが挙げられる。中でも1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートアニオンの場合に、特に好ましい。
【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
カチオン成分
本発明において用いられるカチオン成分は特に制限されない。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンやヘキサフルオロボレートアニオン等とイオン液体を形成するカチオンを本発明に於いても用いることができる。好ましいカチオンとしては下記化学式(3)で示されるカチオンが挙げられる。但し、式中、R〜Rは、炭素数が20以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示し、R´〜R´10は水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示す。
【0043】
【化16】

【0044】
〜Rとしてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−メトキシエチル基、トリメチルシリルメチル基、アリル基が好ましい。R´〜R´10としては水素原子、メチル基が好ましい。好ましいカチオンとしてより具体的には、下記化学式(12)で示されるカチオンがあげられる。但し、式中、nは1〜10の整数を示す。
【0045】
【化17】

【0046】
合成方法
本発明のイオン液体は公知のイオン液体の合成法により合成することができる。例えば、下記反応式(2)〜(4)に示される合成法が挙げられる。式中、Cは本発明のイオン液体を構成するカチオン、XはCl、Br、Iのいずれかのアニオン、MはLi、Na、K、NH、Agのいずれかのカチオンを示す。
【0047】
【化18】

【0048】
上記反応式(2)に示したアニオン交換法によるイオン液体の合成方法について説明する。
【0049】
<アニオン原料>
アニオン原料には、目的アニオンとLi、Na、K、NH、Ag等からなる塩を用いる。これらの塩は、公知の方法により合成することができる。例えば、下記化学式(13)で示される化合物とLiOH、NaOH、KOH、LiH、NaH、KH、Li、Na、K、LiNH、NaNH、KNH、リチウムジイソプロピルアミド、NH、硝酸銀、酢酸銀等を反応させて合成する。但し、式中、R、Rは、水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。また、RとR、又はRとRの間で環を形成してもよい。合成法によっては水和物として得られることがあるが、組成が正確に分かっていればイオン液体の原料として用いることができる。
【0050】
【化19】

【0051】
また、上記化学式(13)で示される化合物には市販品を用いることができる他、公知の方法により合成することができる。例えば、アルデヒド又はケトンとカルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物等とのクライゼン縮合により合成することができる。アニオン原料は、純度99%以上に精製して用いることが望ましい。
【0052】
<カチオン原料>
カチオン原料は市販品を用いることができる他、公知の方法により合成することができる。カチオン原料には目的カチオンのハロゲン化物塩が用いられる。カチオン原料は、純度99%以上に精製して用いることが望ましい。
【0053】
<イオン液体の合成>
本発明のイオン液体は、カチオンの電荷とアニオンの電荷が等しくなるように反応させることにより合成することができる。例えば、1価のカチオン原料と1価のアニオン原料の場合は1:1のモル比で反応させ、2価のカチオン原料と1価のアニオン原料の場合は1:2のモル比で反応させる。反応溶媒としては水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンが好ましい。カチオン原料とアニオン原料それぞれの溶液を調整し、一方の溶液に他方の溶液を添加することにより反応を行う。反応は空気中、常温で実施することができる。ハロゲン化物塩が副生するが、蒸留によりイオン液体を分離することができる。また、イオン液体が疎水性の場合には、水で洗浄することによりハロゲン化物塩を除去することができる。
【0054】
蒸留
本発明のイオン液体の蒸留法としては分子蒸留又はショートパス蒸留が適している。分子蒸留とは0.1Pa未満の高真空下において、液体の蒸発面と凝縮面との間隔をその分子の平均自由行程より短くして蒸留する方法である。ショートパス蒸留は短行程蒸留とも呼ばれ、液体の蒸発面と凝縮面との間隔が短い蒸留法であるが、その間隔は分子の平均自由行程よりも長く、分子蒸留よりも高い0.1Pa以上の圧力で行われる。どちらの蒸留法も沸点以下の温度で蒸留することができる。分子蒸留とショートパス蒸留は装置が類似しており、市販の分子蒸留又はショートパス蒸留装置を用いることができる。中でも薄膜蒸留装置が適している。薄膜蒸留とは液体試料を薄い膜状にして加熱し蒸発させる蒸留法であり、蒸発効率が高く、試料への熱負荷が小さいという特徴がある。薄膜蒸留装置には、液膜の形成法によって流下式、回転遠心式、ワイパー式等がある。本発明のイオン液体の蒸留にはいずれの方式の装置も使用することができるが、これらに限定されるものではない。数ml以下少量の試料の蒸留には、クーゲルロール蒸留装置も使用することができ、昇華装置を蒸留装置として流用することもできる。これらの蒸留装置では、窒素やアルゴン等の不活性ガスをキャリアガスとして流しながら蒸留することもできる。
【0055】
蒸留温度は50℃以上300℃以下が好ましく、100℃以上200℃未満がより好ましい。蒸留圧力は0.01Pa以上1000Pa以下が好ましく、0.1Pa以上100Pa以下がより好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0057】
イオン液体の合成
〔実施例1〕1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート(化学式(4))の合成
<ナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの合成>
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。滴下ロートを備えた1000mLの3つ口フラスコに、水素化ナトリウム(純度60%、40%オイル含有)21.91g(547.8mmol)とn−ヘキサン750mLとを入れる。フラスコ内を攪拌しながら、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン126.1g(606.1mmol)を室温で160分間かけて滴下する。反応を完了させるために、滴下終了後、さらに3.5日間攪拌を続ける。析出した沈殿をグラスフィルターで濾過する。グラスフィルター上の沈殿をn−ヘキサン180mLで5回洗浄し、減圧乾燥すると白色固体123.65gが得られる。得られた白色固体をジエチルエーテル1250mLに溶解し、ガラス繊維フィルターでろ過する。濾液を濃縮すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過しジエチルエーテル100mLで2回洗浄した後減圧乾燥する。その結果、白色固体108.87g(収率86%)が得られる。表1に元素分析の結果を示す。
〔元素分析値〕
【0058】
【表1】

【0059】
<1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロライドの合成>
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、1−メチルイミダゾールは予め蒸留精製したものを使用する。ジムロート冷却管を備えた500mLの3つ口フラスコに、1−メチルイミダゾール70.10g(853.8mmol)と1−クロロブタン158.00g(1707mmol)とを入れる。90℃で30時間攪拌し、室温で冷却する。生成した固体をジエチルエーテルで洗浄し、濾過、減圧乾燥する。その結果、白色固体146.75g(収率98%)が得られる。表2に元素分析の結果を示す。
〔元素分析値〕
【0060】
【表2】

【0061】
<1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの合成>
ナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート23.51g(102.2mmol)と1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロライド17.85g(102.2mmol)とを窒素雰囲気下で別々の200mLナス型フラスコに秤量する。それぞれのフラスコにエタノール50mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながら1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロライドの溶液にナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はエタノール30mLで洗い流し、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロライドの溶液に残さず加える。添加と同時に白色の沈殿が生成する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに16時間攪拌を続ける。エタノールを減圧留去し、水50mLとジクロロメタン100mLを加えると透明な2層の溶液となる。有機層(下層)を分離し、水50mlで2回洗浄する。ジクロロメタンを減圧留去した後、66Pa、60℃で2時間乾燥する。その結果、黄色液体29.50g(収率83%)が得られる。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0062】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)9.21(1H,s),7.42(1H,t,J=1.7Hz),7.38(1H,s),5.50(0.77H,s),4.17(2H,t,J=7.2Hz),3.86(3H,s),2.36(0.23H,s),1.79(2H,quint,J=7.5Hz),1.31(2H,sext,J=7.4Hz),0.92(3H,t,J=7.3Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)173.61(q,JCF=30Hz),138.33,124.56,123.20,119.64(q,JCF=292Hz),84.09,50.23,36.74,32.80,20.03,13.65
合成したイオン液体は、後述する方法で150℃、13Paにて蒸留することができる。蒸留したイオン液体のNMR測定結果を以下に示す。これらの結果から、蒸留の前後でイオン液体の構造に変化が無いことが分かる。
【0063】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)9.21(1H,s),7.41(1H,t,J=1.7Hz),7.37(1H,s),5.47(0.66H,s),4.17(2H,t,J=7.5Hz),3.86(3H,s),2.33(0.34H,s),1.79(2H,quint,J=7.5Hz),1.31(2H,sext,J=7.5Hz),0.92(3H,t,J=7.5Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)173.26(q,JCF=29Hz),138.34,124.56,123.20,119.55(q,JCF=293Hz),83.78,50.23,36.75,32.79,20.03,13.65
〔実施例2〕1−ヘキシルピリジニウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート(化学式(5))の合成
1−ヘキシルピリジニウム・ブロマイドはACROS社製の試薬を使用し、ナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートは実施例1と同様に合成する。ナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート15.20g(66.08mmol)と1−ヘキシルピリジニウム・ブロマイド16.13g(66.06mmol)とを窒素雰囲気下で別々の200mLナス型フラスコに秤量する。それぞれのフラスコにアセトニトリル30mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながら1−ヘキシルピリジニウム・ブロマイドの溶液にナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はアセトニトリル30mLで洗い流し、1−ヘキシルピリジニウム・ブロマイドの溶液に残さず加える。添加と同時に白色の沈殿が生成する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに20時間攪拌を続ける。アセトニトリルを減圧留去し、水35mLとジクロロメタン70mLを加えると透明な2層の溶液となる。有機層(下層)を分離し、水35mLで2回洗浄する。ジクロロメタンを減圧留去した後、66Pa、60℃で3時間乾燥する。その結果、黄色液体22.36g(収率91%)が得られる。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0064】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)8.99(2H,d,J=5.5Hz),8.50(1H,t,J=7.7Hz),8.04(2H,t,J=6.9Hz),5.46(0.77H,s),4.57(2H,t,J=7.6Hz),2.37(0.23H,s),1.95(2H,quint,J=7.5Hz),1.30(6H,m),0.87(3H,t,J=7.1Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)173.24(q,JCF=29Hz),146.53,146.03,145.96,145.89,129.32,119.54(q,JCF=292Hz),83.77,62.73,32.02,31.81,26.32,23.08,22.13,14.18
〔実施例3〕1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート(化学式(6))の合成
<1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム・ブロマイドの合成>
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、1−メチルピロリジンは予め蒸留精製したものを使用する。滴下ロートとジムロート冷却管を備えた500mLの3つ口フラスコに、1−メチルピロリジン30.30g(355.8mmol)とシクロペンチルメチルエーテル200mLとを入れる。60℃で攪拌しながら1−ブロモヘキサン88.20g(534.3mmol)を4時間かけて滴下する。そのまま60℃で16時間攪拌し、さらに110℃で1時間還流した後室温へ冷却する。生成した沈殿をシクロペンチルメチルエーテルで洗浄し、濾過、減圧乾燥する。その結果、白色固体79.92g(収率89%)が得られる。表3に元素分析の結果を示す。
〔元素分析値〕
【0065】
【表3】

【0066】
<1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの合成>
実施例1と同様に合成したナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート21.09g(91.68mmol)と1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム・ブロマイド22.94g(91.68mmol)とを窒素雰囲気下で別々の200mLナス型フラスコに秤量する。それぞれのフラスコにアセトニトリル30mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながら1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム・ブロマイドの溶液にナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はアセトニトリル30mLで洗い流し、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム・ブロマイドの溶液に残さず加える。添加と同時に白色の沈殿が生成する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに20時間攪拌を続ける。アセトニトリルを減圧留去し、水50mLとジクロロメタン100mLを加えると透明な2層の溶液となる。有機層(下層)を分離し、水50mLで2回洗浄する。ジクロロメタンを減圧留去した後、66Pa、60℃で2時間乾燥する。その結果、黄色液体29.53g(収率77%)が得られる。表6に元素分析の結果を示す。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0067】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)5.43(0.81H,m),3.44(4H,m),3.25(2H,m),2.96(3H,s),2.38(0.19H,s),2.14(4H,s),1.71(2H,m),1.31(6H,s),0.90(3H,t,J=6.6Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)173.24(q,JCF=29Hz),119.54(q,JCF=292Hz),83.74,65.33,65.29,65.26,65.24,49.24,49.21,31.92,26.73,26.72,26.70,24.32,23.11,22.40,14.21
〔実施例4〕1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート(化学式(7))の合成
<1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム・ブロマイドの合成>
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、1−メチルピペリジンは予め蒸留精製したものを使用する。滴下ロートとジムロート冷却管を備えた500mLの3つ口フラスコに、1−メチルピペリジン19.58g(197.5mmol)とシクロペンチルメチルエーテル100mLとを入れる。110℃で攪拌しながら1−ブロモヘキサン65.86g(399.0mmol)を4時間かけて滴下する。そのまま110℃で16時間攪拌した後室温へ冷却する。生成した沈殿をシクロペンチルメチルエーテルで洗浄し、濾過、減圧乾燥する。その結果、白色固体51.12g(収率98%)が得られる。表4に元素分析の結果を示す。
〔元素分析値〕
【0068】
【表4】

【0069】
<1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの合成>
実施例1と同様に合成したナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート11.50g(49.99mmol)と1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム・ブロマイド13.21g(49.99mmol)とを窒素雰囲気下で別々の200mLナス型フラスコに秤量する。それぞれのフラスコにアセトニトリル20mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながら1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム・ブロマイドの溶液にナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はアセトニトリル30mLで洗い流し、1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム・ブロマイドの溶液に残さず加える。添加と同時に白色の沈殿が生成する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに16時間攪拌を続ける。アセトニトリルを減圧留去し、水30mLとジクロロメタン60mLを加えると透明な2層の溶液となる。有機層(下層)を分離し、水30mLで2回洗浄する。ジクロロメタンを減圧留去した後、66Pa、60℃で2時間乾燥する。その結果、黄色液体17.99g(収率92%)が得られる。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0070】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)5.41(0.74H,s),3.29〜3.21(6H,m),2.96(3H,s),2.38(0.26H,s),1.82(4H,m),1.71〜1.54(3H,m),1.32(6H,m),0.90(3H,t,J=6.6Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)172.87(q,JCF=29Hz),119.67(q,JCF=293Hz),83.42,64.51,61.95,48.60,31.93,26.66,23.11,22.34,21.65,20.62,14.21
〔実施例5〕n−ヘキシルトリメチルアンモニウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート(化学式(8))の合成
n−ヘキシルトリメチルアンモニウム・ブロマイドは、東京化成工業(株)製の試薬を使用し、ナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートは実施例1と同様に合成する。ナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート23.89g(103.9mmol)とn−ヘキシルトリメチルアンモニウム・ブロマイド23.28g(103.8mmol)とを窒素雰囲気下で別々の200mLナス型フラスコに秤量する。それぞれのフラスコにアセトニトリル40mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながらn−ヘキシルトリメチルアンモニウム・ブロマイドの溶液にナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はアセトニトリル30mLで洗い流し、n−ヘキシルトリメチルアンモニウム・ブロマイドの溶液に残さず加える。添加と同時に白色の沈殿が生成する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに15時間攪拌を続ける。アセトニトリルを減圧留去し、水50mLとジクロロメタン100mLを加えると透明な2層の溶液となる。有機層(下層)を分離し、水50mLで2回洗浄する。ジクロロメタンを減圧留去した後、66Pa、60℃で3時間乾燥する。その結果、黄色液体34.59g(収率95%)が得られる。表8に元素分析の結果を示す。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0071】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)5.45(0.77H,s),3.23(2H,m),3.21(9H,s),2.41(0.23H,s),1.69(2H,m),1.31(6H,m),0.90(3H,t,J=6.7Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)173.29(q,JCF=29Hz),119.51(q,JCF=292Hz),83.79,67.58,53.85,53.81,53.77,31.88,26.49,26.47,26.46,23.47,23.07,14.19
〔実施例6〕1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート(化学式(14))の合成
【0072】
【化20】

【0073】
<1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・クロライドの合成>
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、1,2−ジメチルイミダゾールは予め蒸留精製したものを使用する。ジムロート冷却管を備えた300mLの3つ口フラスコに、1,2−ジメチルイミダゾール50.12g(521.4mmol)と1−クロロブタン97.46g(1053mmol)とを入れる。90℃で30時間攪拌し、室温で冷却する。生成した固体をジエチルエーテルで洗浄し、濾過、減圧乾燥する。その結果、白色固体69.52g(収率71%)が得られる。表5に元素分析の結果を示す。
〔元素分析値〕
【0074】
【表5】

【0075】
<1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム/1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの合成>
実施例1と同様に合成したナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネート23.04g(100.2mmol)と1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・クロライド18.90g(100.2mmol)とを窒素雰囲気下で別々の200mLナス型フラスコに秤量する。それぞれのフラスコにエタノール30mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながら1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・クロライドの溶液にナトリウム・1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はエタノール30mLで洗い流し、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・クロライドの溶液に残さず加える。添加と同時に白色の沈殿が生成する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに15時間攪拌を続ける。エタノールを減圧留去し、水50mLとジクロロメタン100mLを加えると透明な2層の溶液となる。有機層(下層)を分離し、水50mLで2回洗浄する。ジクロロメタンを減圧留去した後、66Pa、60℃で2時間乾燥する。その結果、黄色液体32.20g(収率89%)が得られる。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0076】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)7.35(1H,d,J=1.9Hz),7.33(1H,d,J=1.9Hz),5.41(0.65H,s),4.04(2H,t,J=7.3Hz),3.71(3H,s),2.47(3H,s),2.38(0.35H,s),1.72(2H,quint,J=7.6Hz),1.33(2H,sext,J=7.5Hz),0.93(3H,t,J=7.5Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)173.11(q,JCF=26Hz),145.42,123.41,121.95,119.54(q,JCF=293Hz),83.60,49.02,35.74,32.34,20.16,13.76,10.07
〔実施例7〕1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム/1,1,1−トリフルオロアセチルアセトネート(化学式(15))の合成
【0077】
【化21】

【0078】
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム炭酸水素塩水溶液はAldrich社製の試薬を使用し、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトンは予め蒸留精製したものを使用する。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム炭酸水素塩50.0wt%水溶液10.10g(25.2mmol)と1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン3.89g(25.2mmol)とを窒素雰囲気下で別々の50mLナス型フラスコに秤量する。1,1,1−トリフルオロアセチルアセトンにメタノール5mLを加え溶液とする。室温で攪拌しながら1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム炭酸水素塩の溶液に1,1,1−トリフルオロアセチルアセトンの溶液を添加する。フラスコに残った溶液はメタノール5mLで洗い流し、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム炭酸水素塩の溶液に残さず加える。添加と同時に気体が発生する。反応を完了させるために、添加終了後、さらに1時間攪拌を続ける。ロータリーエバポレーターで濃縮した後、66Pa、60℃で3時間乾燥する。その結果、黄色液体7.37g(収率100%)が得られる。合成したイオン液体の構造はNMRにて確認した。結果を下記に示す。
【0079】
〔NMRスペクトルデータ〕
H−NMR(400MHz,CDCN)
δ(ppm)9.29(1H,s),7.47(1H,s),7.41(1H,s),4.98(0.73H,s),4.17(2H,t,J=7.3Hz),3.86(3H,s),2.95(0.27H,s),2.15(3H,s),1.80(2H,quint,J=7.4Hz),1.31(2H,sext,J=7.4Hz),0.92(3H,t,J=7.3Hz)
13C−NMR(100MHz,CDCN)
δ(ppm)195.25,169.19(q,JCF=27Hz),138.43,124.58,123.24,121.79(q,JCF=288Hz),93.39,50.21,36.72,32.76,29.89,20.05,13.69
蒸留速度の測定
<1>イオン液体のモル吸光係数の測定
合成したイオン液体100.0mgを窒素雰囲気下で25.0mLのメスフラスコに量りとる。秤量を窒素雰囲気下で行うのはイオン液体の吸湿を避けるためであり、以後の操作は空気中で行うことができる。次に、イオン液体を入れたメスフラスコにメタノールを注入し定容する。希釈した溶液を蓋付きの光路長1.00cmの石英セルに入れ、吸光光度計にセットする。溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長における吸光度を読み取る。イオン液体の溶液の吸光度が0.1〜1の間になるように、メタノールで適当な濃度に希釈する。希釈した溶液の濃度は、下記〔式1〕のモル濃度c(molL−1)となり、この時の吸光度からモル吸光係数を求める。モル吸光係数は〔式1〕に示すLambert−Beerの法則より求めることができる。但しAは吸光度、εはモル吸光係数、lは光路長、cは溶液のモル濃度を示す。
[式1]
A=εlc
合成した各実施例のイオン液体及び比較例として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化学式(16),関東化学(株)製)の極大吸収波長とモル吸光係数を表6に示す。
【0080】
【化22】

【0081】
【表6】

【0082】
<2>イオン液体の蒸留
図1は、蒸留装置1の概略図である。蒸留装置1の外径は20mm、全長は180mmである。蒸留装置1は外管2と冷却管3で構成される。外管2の底部にはマグネチックスターラーの攪拌子4が入っている。減圧口5には真空ラインを接続し、冷却水接続管6より冷却水を流す。外管2の底部に500mgの合成したイオン液体7を入れ、マグネチックスターラーで攪拌子4を攪拌しながら13Paまで減圧する。減圧はイオン液体7が発泡して飛沫を飛ばさないようにゆっくりと行う。外管2の下端から6cmまでを150℃に調節されたオイルバスに浸けると、冷却管3の下部に蒸留されたイオン液体7’が結露する。沸点より低い温度で蒸留するのでイオン液体7は沸騰せず、蒸留中に飛沫が飛散することはない。冷却管に結露したイオン液体7’の量が多くなると落下するので、その前に蒸留装置1をオイルバスから引き上げ、水浴に浸けて冷却する。
<3>蒸留速度の計算
上記の操作で、蒸留装置1をオイルバスに浸けてから引き上げるまでを蒸留時間とし、下記〔式3〕での蒸留時間t(時間)とする。
【0083】
減圧口5の真空ラインを停止させ、常圧とした後、イオン液体7’を落下させないように冷却管3を取り外す。冷却管3に付着したイオン液体7’を25.0mLのメスフラスコにメタノールで洗い流し入れ定容する。希釈した溶液を吸光光度計で測定し、吸光度が0.1〜1の間になるように、適宜希釈する。この時の希釈倍率が下記〔式2〕で示すxとなる。適宜希釈した溶液の紫外可視吸収スペクトルは、蒸留前とスペクトルの形に変化がないことを確認した。表6に示した極大吸収波長における吸光度を読み取り、表6のモル吸光度係数と〔式1〕から、モル濃度c’を計算する。
【0084】
ここで、蒸留時間t(時間)の間に蒸留されたイオン液体の質量をw(g)、イオン液体の分子量をM、希釈倍率をxとすると溶液のモル濃度c’(molL−1)は〔式2〕で示される。
[式2]

【0085】
計算したモル濃度c’と〔式2〕からwを求める。蒸留速度を1時間当たりに蒸留されるイオン液体の質量と定義すると、蒸留速度は〔式3〕より求めることができる。
[式3]

【0086】
蒸留速度の結果を表7に示す。尚、表中の相対速度は、各実施例の蒸留速度を比較例である1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの蒸留速度で除した値である。
【0087】
【表7】

【0088】
表7より本発明のイオン液体は、比較例の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドよりも蒸留速度が速いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のイオン液体は、穏和な条件で速い速度での蒸留が可能であるため、従来のイオン液体では難しかった精製や回収を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0090】
1・・・蒸留装置、2・・・外管、3・・・冷却管、4・・・攪拌子、5・・・減圧口、6・・・冷却水接続管、7、7’・・・イオン液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン成分およびアニオン成分からなる非プロトン性イオン液体であって、
前記カチオン成分は有機カチオンであり、
前記アニオン成分は下記化学式(1)で示される化学構造を含むことを特徴とするイオン液体。
但し、式中、R、Rは、水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数が10以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。また、RとR、又はRとRの間で環を形成してもよい。
【化1】

【請求項2】
前記化学式(1)中、R、Rは、CH、CHCH、CHCHCH、C(CH、CF、CFCF、CFCFCFのいずれかであり、Rは、H、CH、CF、Fのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のイオン液体。
【請求項3】
前記アニオン成分は下記化学式(2)で示される1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトネートアニオンであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のイオン液体。
【化2】

【請求項4】
前記カチオン成分は下記化学式(3)で示される群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のイオン液体。
但し、式中、R〜Rは、炭素数が20以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示し、R´〜R´10は水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示す。
【化3】

【請求項5】
下記化学式(4)で示される構造を有する、請求項1に記載のイオン液体。
【化4】

【請求項6】
下記化学式(5)で示される構造を有する、請求項1に記載のイオン液体。
【化5】

【請求項7】
下記化学式(6)で示される構造を有する、請求項1に記載のイオン液体。
【化6】

【請求項8】
下記化学式(7)で示される構造を有する、請求項1に記載のイオン液体。
【化7】

【請求項9】
下記化学式(8)で示される構造を有する、請求項1に記載のイオン液体。
【化8】


【図1】
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【公開番号】特開2010−70539(P2010−70539A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179503(P2009−179503)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】