説明

イオン源、質量分析装置、制御装置、制御方法、制御プログラムおよび記録媒体

【課題】イオン分布画像の画質を保持しつつ、飛行時間を収束させる。
【解決手段】試料18をパルス的にイオン化するレーザー光源15と、試料18の上流に位置するサンプルプレート11と、試料18の下流に位置し、レーザー光源15が試料18をイオン化した時点において、サンプルプレート11と自身との電位差により、生成されたイオンを試料18の表面から引き出す引き出し電極12と、引き出し電極12よりも下流に位置し、当該引き出し電極12と自身との電位差により、引き出し電極12によって引き出されたイオンを加速する引き込み電極13とを備えている。引き出し電極12は、自身と引き込み電極13との電位差によってイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行時間型の質量分析装置および当該質量分析装置に用いられるイオン源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病理研究や創薬などさまざまな分野において、タンパク質などの生体分子、およびそこへ導入された薬剤分子などの空間分布を、高空間分解能で測定する技術が求められている。イメージング質量分析では、質量分析に基づく成分分析に空間的な位置情報を付加することで、物質表面に存在する物質の分布を網羅的に検出することができる。
【0003】
非特許文献1に示されるように、現在、イメージング質量分析には2つの手法がある。ひとつは走査型であり、測定対象の微小領域を順次質量分析し、質量分析の結果と測定対象となった微小領域の位置情報とを結合して解析することで、質量の分布情報を得る方法である。この手法では、大部分の技術において従来の質量分析法が利用できる利点があるが、多数の微小領域を繰り返し測定しなければならないため測定に時間がかかる。また測定領域の微小化の限界により空間分解能が制限されるという問題もある。
【0004】
もうひとつの手法である投影型では、試料全面に対して均一な強度分布のレーザーを照射して試料をイオン化し、生成したイオンを位置・時間感知型の検出装置で検出する。この位置・時間感知型の検出装置は、イオンが当該検出装置に到達した時間と、検出装置の検出面におけるイオンの到達位置とを検出する。この構成により、検出されたイオンの質量電荷比および当該イオンの試料表面における位置を同時に検出することができ、試料に含まれる物質の空間分布を示す画像を得ることができる。投影型質量分析装置では、一度に広い領域の質量分析ができるため、高速高分解能での分布測定が可能であるが、実用化に向けては従来技術に加えてさらなる応用技術の開発が必要である。
【0005】
投影型イメージング質量分析に用いられている質量分析法は、飛行時間型である。飛行時間型質量分析装置では、イオン源においてパルス的にイオンを生成し、当該イオンを真空中で電場により加速し、質量による飛行速度の差を利用して、イオン源から検出装置までの一定距離を飛行するのに要する時間を計測することで、当該イオンの質量を測定する。
【0006】
精密な測定のためには、同じ質量のイオンが同じ時間に検出装置に到達することが好ましい。しかし、イオンが生成されたときの初期条件、すなわち生成された時間、位置、および速度にばらつきがあるため、同じ質量のイオンであっても全く同じ飛行時間にはならない。
【0007】
そこで、このイオンの初期条件による飛行時間の差を吸収して時間収束させるために、従来の飛行時間型質量分析装置では、イオン源において遅延引き出しという手法が用いられてきた。この手法は、イオン生成後に一定の時間(遅延時間)をあけてイオンを加速することで、遅延時間の間に生じた、初期速度に応じた位置分布を利用し、それぞれの位置に存在するイオンに適切な加速エネルギーを与えて、初期速度に関わらず同質量のイオンが同時刻に検出装置に到達するように制御するものである。遅延引き出し法については、非特許文献2および3にその詳細が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】間久直、粟津邦男、「レーザー脱離イオン化技術を用いた顕微イメージング質量分析」応用物理第77巻第12号(2008年12月)
【非特許文献2】Steven M. Colby, Timothy B. King and James P. Reilly“Improving the Resolution of Matrix-assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-flight Mass Spectrometry by Exploiting the Correlation between Ion Position and Velocity”RAPID COMMUNICATIONS IN MASS SPECTOMETRY, VOL. 8, 865-868, November.1994
【非特許文献3】Robert S. Brown, and John J. Lennon“Mass Resolution Improvement by Incorporation of Pulsed Ion Extraction in a Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Linear Time-of-Flight Mass Spectrometer”Analytical Chemistry, Vol. 67, No. 13, July 1, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の飛行時間型質量分析装置では、遅延引き出しの技術を用いて質量分解能を高めてきた。しかし、投影型イメージング質量分析において遅延引き出し法を用いると、遅延時間の間に、生成されたイオンが拡散することにより、検出装置に到達したイオンの空間分布を示す画像(以下、イオン分布画像と称する)がぼけてしまうという問題が生じる。このため、イオンの生成条件による飛行時間のばらつきを補うことができず、質量分解能の向上に限界があった。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、遅延引き出し法を用いずに飛行時間の収束が可能なイオン源を提供することであり、特に、上記イオン分布画像の画質を保持しつつ、飛行時間の収束が可能なイオン源、当該イオン源の制御方法、当該イオン源を備える質量分析装置およびその制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るイオン源は、上記の課題を解決するために、質量分析の対象となる試料をイオン化して出射するイオン源であって、上記試料をパルス的にイオン化するイオン化部と、上記イオン化部によって生成されたイオンの流れにおいて、当該イオンが生成される側を上流とし、生成されたイオンが上記イオン源から出射される側を下流とした場合に、上記試料の上流に位置する第1電極と、上記試料の下流に位置し、上記イオン化部が上記試料をイオン化した時点において、上記第1電極と自身との電位差により、上記イオン化部により生成されたイオンを上記試料の表面から引き出す第2電極と、上記第2電極と自身との電位差により、上記第2電極によって引き出されたイオンを加速する第3電極とを備え、上記第2電極は、自身と上記第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る制御方法は、上記イオン源の制御方法であって、上記イオン化部によって試料をパルス的にイオン化するイオン化工程と、上記イオン化工程において上記試料がイオン化された時点において、上記第1電極と上記第2電極との電位差により、生成されたイオンを試料表面から引き出す引き出し工程と、上記引き出し工程において引き出されたイオンを上記第2電極と上記第3電極との電位差によって加速する加速工程と、上記加速工程においてイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げる電圧変化工程とを含むことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、上記イオン源は、質量分析の対象となる試料をイオン化して出射するものである。すなわち、上記イオン源は、質量分析装置のイオン源として利用できる。
【0014】
上記イオン源において、イオン化部は、試料をパルス的にイオン化する。このイオン化部は、例えば、レーザー光をパルス的に試料に照射するものや、イオンビーム(一次イオン)をパルス的に試料に照射するものである。試料をパルス的にイオン化することにより、イオンが生成されるタイミングをそろえることができる。
【0015】
第1電極は、試料よりもイオンの流れの上流に位置し、第2電極は、試料よりもイオンの流れの下流に位置している。第2電極は、生成されるイオンが正イオンの場合には第1電極よりも低い電位を有し、上記イオンが負イオンの場合には第1電極よりも高い電位を有することにより、生成したイオンをすぐに試料の表面から引き出す。すなわち、第2電極は、第1電極と自身との電位差により、上記イオン化部により生成されたイオンを上記試料の表面から引き出す。
【0016】
なお、生成されるイオンが正イオンであるか負イオンであるかは予め分かっており、その情報に基づいて第1電極と第2電極との電位差を設定すればよい。
【0017】
イオンは、電位が高い方から低い方へ移動するため、第2電極の電位が第1電極の電位よりも低いことにより、生成されたイオンが試料表面から引き出される。イオンが生成されたと同時に当該イオンを引き出すことにより、上記イオン源を投影型イメージング質量分析装置に適用した場合に、上記イオンによって形成される像(イオン分布画像)がぼやける可能性を低減できる。
【0018】
第3電極は、第2電極よりも下流に位置し、上記イオンが正イオンの場合には第1電極よりも低い電位を有し、上記イオンが負イオンの場合には第1電極よりも高い電位を有しているため、第2電極によって引き出されたイオンを加速することができる。すなわち、第3電極は、第2電極と自身との電位差により、第2電極によって引き出されたイオンを加速する。
【0019】
イオン化部が試料をイオン化すると同時に当該イオンを引き出す場合には、イオンの初期速度がばらついている可能性が高い。そのため、上記イオン源を投影型イメージング質量分析装置に適用した場合に、当該投影型イメージング質量分析装置が備える検出部に、同一質量のイオンが到達するまでの時間に差が生じてしまう。換言すれば、本来同時に検出部に到達すべき一群のイオンが同時には検出部に到達しない可能性が高い。
【0020】
この問題を解決するために、第2電極は、自身と第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げる。これにより、初期速度が小さいイオンほど顕著に加速されるため、初期速度の差に由来する飛行時間の差を吸収することができる。すなわち、飛行時間を収束させることができる。それゆえ、検出部によって検出されるイオンのスペクトルがシャープになる。その結果、質量電荷比が近似した異なるイオンを別々のイオンとして検出することができ、イオンの検出性能(質量分解能)を高めることができる。
【0021】
このように、上記の構成により、従来の遅延引き出し法を用いずにイオンの質量分解能を高めることができ、上記イオン源を投影型イメージング質量分析装置に適用した場合に得られるイオンの像を鮮明にできると同時にイオンの質量分解能を高めることができる。
【0022】
また、上記イオン化部は、上記試料の表面を均一にイオン化することが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、イオン化部によって試料の表面が均一にイオン化される。例えば、試料の全面に対して均一な強度のレーザー光がパルス的に照射される。それゆえ、生成されたイオンの試料表面における位置を検出することができ、上記イオン源を投影型イメージング質量分析装置に適用することができる。
【0024】
本発明に係る制御装置は、上記イオン源を制御する制御装置であって、上記イオン化部に上記試料をパルス的にイオン化させるイオン化制御手段と、上記イオン化制御手段の制御下で上記イオン化部が上記試料をイオン化した時点において上記第1電極と上記第2電極との電位差を形成するとともに、上記第2電極と上記第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に、上記イオンが正イオンの場合には上記第2電極の電位を所定量上げ、上記イオンが負イオンの場合には上記第2電極の電位を所定量下げる電圧制御手段とを備えることを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、イオン化制御手段は、上記イオン化部を制御することにより上記試料をパルス的にイオン化する。電圧制御手段は、試料がイオン化された時点において第1電極と第2電極との電位差を形成することにより、生成されたイオンをすぐに試料の表面から引き出す。さらに、電圧制御手段は、第2電極と第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に第2電極の電位を所定量変化させることにより、イオンの飛行時間を収束させる。具体的には、電圧制御手段は、生成されるイオンが正イオンの場合には第2電極の電位を所定量上げ、上記イオンが負イオンの場合には第2電極の電位を所定量下げる。
【0026】
それゆえ、従来の遅延引き出し法を用いずにイオンの質量分解能を高めることができ、上記イオン源を投影型イメージング質量分析装置に適用した場合に得られるイオンの像を鮮明にできると同時にイオンの質量分解能を高めることができる。
【0027】
また、上記制御装置を動作させるための制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための制御プログラムおよび当該制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0028】
本発明に係る質量分析装置は、飛行時間型の質量分析装置であって、上記イオン源と、上記イオン源から出射されたイオンを、その質量電荷比に基づく飛行時間差を利用して分離し、出射する分離部と、上記分離部から出射されたイオンを検出する検出部とを備えることを特徴としている。
【0029】
上記の構成によれば、分離部は、イオン源から出射されたイオンを、その質量電荷比に基づく飛行時間差を利用して分離し、出射する。検出部は、分離部から出射されたイオンを検出する。それゆえ、上記イオン源を用いて飛行時間型の質量分析装置を実現できる。
【0030】
また、上記イオン化部は、上記試料の表面を均一にイオン化し、上記検出部は、上記分離部から出射されたイオンの到達位置および到達時間を測定することが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、イオン化部によって試料の表面が均一にイオン化される。例えば、試料の全面に対して均一な強度のレーザー光がパルス的に照射される。また、検出部において、イオンの到達位置および到達時間が測定される。
【0032】
それゆえ、生成されたイオンの試料表面における位置を検出することができ、上記質量分析装置を投影型イメージング質量分析装置として利用できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るイオン源は、以上のように、試料をパルス的にイオン化するイオン化部と、上記イオン化部によって生成されたイオンの流れにおいて、当該イオンが生成される側を上流とし、生成されたイオンが上記イオン源から出射される側を下流とした場合に、上記試料の上流に位置する第1電極と、上記試料の下流に位置し、上記イオン化部が上記試料をイオン化した時点において、上記第1電極と自身との電位差により、上記イオン化部により生成されたイオンを上記試料の表面から引き出す第2電極と、上記第2電極と自身との電位差により、上記第2電極によって引き出されたイオンを加速する第3電極とを備え、上記第2電極は、自身と上記第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げる構成である。
【0034】
それゆえ、従来の遅延引き出し法を用いずにイオンの質量分解能を高めることができ、上記イオン源を投影型イメージング質量分析装置に適用した場合に得られるイオンの像を鮮明にできると同時にイオンの質量分解能を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るイオン源の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る質量分析システムの構成を示す概略図である。
【図3】イオン源の変更例を示す図である。
【図4】従来の遅延引き出し法および本発明の原理を説明するための図である。
【図5】上記質量分析システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】上記イオン源の詳細な構成を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施例における実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の一形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の質量分析装置の一例として、投影型イメージング質量分析装置10を挙げて説明する。以下では、投影型イメージング質量分析装置10を単に質量分析装置10と略称する。
【0037】
(質量分析システム20の構成)
図2は、質量分析システム20の構成を示す概略図である。同図に示すように、質量分析システム20は、イオン源1、多重周回飛行時間型質量分析計(分離部)2および検出器(検出部)3を備える質量分析装置10および制御装置4を備えている。
【0038】
イオン源1は、質量分析の対象となる試料をイオン化して出射するものである。本発明のイオン源の一例として、レーザー光を試料に照射することで当該試料をイオン化するものを例に挙げて説明する。
【0039】
多重周回飛行時間型質量分析計2(以下、質量分析計2と略称する)は、イオン源から出射されたイオンを、真空の同一飛行空間(8の字型の周回軌道)を複数回周回させることにより分離する。本発明に適用できる質量分析計は、イオン源から出射されたイオンを、その質量電荷比に基づく飛行時間差を利用して分離するものであればよく、イオンの軌道は直線であってもよい。
【0040】
検出器3は、質量分析計2から出射されたイオンを検出する。この検出器3は、位置・時間感知型の検出器であり、自身に到達したイオンの到達位置、その到達時間および当該イオンの強度を測定するとともにイオン分布画像を形成する。上記の要求に適する検出器3として、例えば、ディレイライン検出器がある。このディレイライン検出器は、飛来したイオンの衝突位置と時間とを計測できる検出器である。
【0041】
なお、検出器3の構成は、上述のものに限定されず、イオンの到達位置、その到達時間を測定できるものであればよい。
【0042】
制御装置4は、イオン源1、質量分析計2および検出器3を制御するとともに、検出器3から出力された質量分析結果データを取得する。制御装置4は、パーソナルコンピュータであってもよいし、質量分析装置10に組み込まれた電気回路の組み合わせであってもよい。特にナノ秒オーダーの短い時間での制御が要求される場合は、電気回路によるハードウェア的な制御を行うことが好ましい。制御装置4の詳細については後述する。
【0043】
(イオン源1の構成)
図1は、イオン源1の構成を示す概略図である。同図に示すように、イオン源1は、試料18を保持するサンプルプレート(第1電極)11、引き出し電極(第2電極)12、引き込み電極(第3電極)13、静電レンズ電極14、レーザー光源15、レンズ16およびミラー17を備えている。なお、図1は、各部材の配置を概念的に示すものであり、各部材の大きさ、形状および厳密な関係を限定するものではない。
【0044】
レーザー光源15、レンズ16およびミラー17は、サンプルプレート11に載置された試料18をパルス的にイオン化するイオン化部として機能する。このイオン化部は、試料の表面を均一にイオン化するものであることが好ましい。
【0045】
レーザー光源15は、サンプルプレート11上の試料18の全面に対して均一な強度のレーザー光をパルス的に照射することにより、当該試料18をイオン化する。イオン化には、マトリックスを用いるMALDI法(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)などの、イオン化促進法を用いることができる。レーザー光源15の位置は、試料18にレーザー光を照射できる位置であればよく、図1に示す位置に限定されない。サンプルプレート11の背面側からレーザー光を照射してもよい。
【0046】
また、本発明のイオン源は、レーザー光を用いるものに限定されず、サンプルプレート11に保持された試料18の表面を均一に、パルス的にイオン化するものであればよい。イオン源1は、例えば、1次イオンを試料に照射することにより2次イオンを発生させる2次イオン質量分析法が想定され得る。
【0047】
レンズ16は、レーザー光源15から出射されたレーザー光を収束させる。
【0048】
ミラー17は、レンズ16を通過したレーザー光を反射し、サンプルプレート11上の試料18へとレーザー光を導く。図1においてレーザー光の光路は符号21で示されている。試料18にレーザー光が照射されるとイオンが生成され、当該イオンを加速することでイオンビーム22が発生する。レーザー光はパルス的に照射されるため、イオンビームもパルス的に発生する。
【0049】
サンプルプレート11は、試料18を保持する試料保持部として機能するとともに、引き出し電極12と対をなす板状の電極(第1電極)としても機能する。イオン化部によって生成されたイオンの流れにおいて、イオンが生成される側を上流とし、生成されたイオンが出射される側を下流とした場合に、サンプルプレート11は、試料18よりもイオンの流れの上流に位置する。試料18は、例えば、生体の組織の切片や、半導体デバイスである。試料18が組織である場合には、当該組織に含まれるタンパク質などがイオン化される。試料18が半導体デバイスである場合には、当該半導体デバイスの表面に含まれる物質がイオン化される。
【0050】
なお、以下では、イオン化部によって生成されるイオンは正イオンであるという前提のもとに説明を行う。生成されるイオンが負イオンの場合には、電極間の電位の高低および引き出し電極12の電位の変動方向は逆になる。
【0051】
引き出し電極12は、試料18よりもイオンの流れの下流に位置し、イオン化部が試料18をイオン化した時点においてサンプルプレート11よりも低い電位(負イオンの場合には、高い電位)を有することにより、生成されたイオンを試料18の表面から引き出す。すなわち、引き出し電極12は、サンプルプレート11と自身との電位差により、生成されたイオンを試料18の表面から引き出す。
【0052】
さらに、引き出し電極12は、自身と引き込み電極13との電位差によってイオンが加速されている間に自身の電位を所定量上げることにより、イオンの飛行時間を収束させる。なお、生成されたイオンが負イオンの場合には、引き出し電極12は、自身の電位を所定量下げる。この原理については後述する。この引き出し電極12は、板状の電極であり、イオンが通過する孔またはメッシュを有している。
【0053】
引き込み電極13は、引き出し電極12よりもイオンの流れの下流に位置し、当該第2電極よりも低い電位(負イオンの場合には、高い電位)を有することにより、引き出し電極12によって引き出されたイオンを加速する。すなわち、引き込み電極13は、引き込み電極13と自身との電位差により、引き出し電極12によって引き出されたイオンを加速する。この引き込み電極13も板状の電極であり、イオンの通過のための孔を有している。引き込み電極13の電位は、例えば、0Vである。
【0054】
静電レンズ電極14は、イオンを検出面に結像させるものであり、例えば、孔を有する3枚の板状の電極からなるアインツェルレンズである。ただし、静電レンズ電極14の形状は上述のものに限定されず、静電レンズ電極14を省略することも可能である。また、引き込み電極13と静電レンズ電極14とを同一の部材として形成してもよい。
【0055】
(制御装置4の構成)
図2に示すように、制御装置4は、イオン化制御部(イオン化制御手段)41、電圧制御部(電圧制御手段)42、質量分析計制御部43、分析データ取得部44および記憶部45を備えている。
【0056】
イオン化制御部41は、レーザー光源15を制御することにより、試料18にパルス的にレーザー光を照射し、試料をパルス的にイオン化させる。
【0057】
電圧制御部42は、サンプルプレート11、引き出し電極12および引き込み電極13の電圧を制御する。特に電圧制御部42は、イオン化部が試料18をイオン化した時点において引き出し電極12の電位をサンプルプレート11よりも低く維持するとともに、引き込み電極13によってイオンが加速されている間に引き出し電極12の電位を所定量上げる。
【0058】
質量分析計制御部43は、質量分析計2を制御することにより、イオン源1から出射されたイオンを所定の回数、8の字軌道を周回させる。
【0059】
分析データ取得部44は、検出器3から出力された質量分析結果データを取得し、当該質量分析結果データを記憶部45に格納する。
【0060】
記憶部45は、質量分析結果データに加え、制御装置4が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。記憶部45は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。
【0061】
また、制御装置4は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置によって構成される一次記憶部(不図示)を備えている。この一次記憶部は、制御装置4が上述の各種プログラムを実行する過程でデータを一時的に保持するための作業領域として使用される。
【0062】
(イオン源1の変更例)
図3は、イオン源1の変更例を示す図である。図3には、引き込み電極13と静電レンズ電極14との両方の機能を有するアインツェルレンズ14aが示されている。このアインツェルレンズ14aは、3個の円板電極からなるものである。この3個の円板電極のうち、最も引き出し電極12に近い円板電極が引き込み電極13として機能する。
【0063】
(本発明の原理)
次に、本発明の原理について説明する。図4は、従来の遅延引き出し法および本発明の原理を説明するための図である。
【0064】
まず、図4(a)を用いて、従来の遅延引き出し法の原理について説明する。図4(a)に示す31a〜cは、試料18にレーザー光が照射されることによって生成された同一質量のイオンを示している。イオンの初期速度は、イオン31aが最も小さく、イオン31cが最も大きい。図4(a)に示すグラフの横軸はイオンの位置を示し、縦軸は電極に印加される電位を示している。
【0065】
遅延引き出し法では、レーザー光を照射した後、一定時間(イオンが位置32まで移動する時間まで)はサンプルプレートの電位と引き出し電極の電位とを同じにする。この状態では、各イオンは初期速度にまかせて飛行する。その後、引き出し電極の電位を所定量下げることにより、イオンが加速される。このとき、初期速度の小さいイオン31aは、初期速度の大きいイオン31bおよびイオン31cよりも大きな加速エネルギーを受ける。それゆえ、上記所定量を調整することにより、初期速度の異なる同質量のイオンを同時に検出器に到達させることができる。
【0066】
しかし、この方法では、イオンを加速するまでの間に、生成されたイオンが拡散してしまうため、試料表面におけるイオンの分布を示す画像(イオン分布画像)がぼけてしまう。
【0067】
次に、図4(b)を用いて、本発明の原理について説明する。本発明では、レーザー光を照射した時点で引き出し電極12の電位は、サンプルプレート11の電位よりも低く設定されている。そのため、レーザー光の照射によって生成されたイオンは、サンプルプレート11と引き出し電極12との電位差(電場)によって、引き出し電極12の側へすぐに引き出される。それゆえ、生成されたイオンが試料表面近傍において拡散しない。その結果、試料18の表面における物質の分布をイオン光学的に保持したまま、当該イオンを引き出すことができる。
【0068】
引き出されたイオンは、引き出し電極12と引き込み電極13との間の領域(加速領域と称する)において、引き出し電極12と引き込み電極13との電位差によって加速される。
【0069】
そして、イオンが加速領域で加速されている間に、引き出し電極12の電位を所定量上げる。換言すれば、試料18に対してレーザー光を照射してから所定の時間後(イオンが位置33を超えて移動したある時点)に引き出し電極12の電位を所定量上昇させる。これにより、イオンの初期速度の差による位置の差に応じた加速エネルギー(静電ポテンシャル)が各イオンに与えられる。すなわち、初期速度の小さいイオン(イオン31a)ほど大きな加速エネルギーが与えられ、最終的な飛行速度が速くなる。それゆえ、上記所定量を調整することにより、初期速度の異なる同一質量のイオンを同時に検出器3の検出面に到達させることができる。すなわち、初期速度の差に由来する、同一の質量を有するイオンの飛行時間の差を吸収することができ、飛行時間を収束させることができる。
【0070】
引き出し電極12の電位を所定量上げるタイミングは、イオンが引き出し電極12と引き込み電極13との間に存在しているときであればよく、実験またはシミュレーションを行うことによって適切なタイミングを決定すればよい。
【0071】
イオン源1から出射されたイオンは、質量分析計2において所定の距離を飛行した後に、検出器3の検出面で検出され、イオンの飛行時間が測定される。イオンの質量電荷比をm/z、イオンの加速電圧をV、自由空間の距離(イオンの飛行距離)をL、電気素量をeとし、イオン源1内での飛行時間が自由空間での飛行時間に比べて十分に短いとすると、イオンの飛行時間tは、近似的に次の(1)式で表せる。
【0072】
【数1】

【0073】
したがって、イオンの飛行時間tを測定することによりイオンの質量電荷比を求めることができる。
【0074】
以上のように、質量分析システム20では、イオンが脱離した直後に当該イオンを引き出すことによりイオンの拡散を抑え、後続の加速領域においてイオンの初期速度に応じた運動エネルギーの補正を行い、イオンの検出面への到達時間をそろえることで、位置分解能と時間分解能とを同時に満足させることができる。
【0075】
(質量分析システム20における動作)
次に質量分析システム20における処理の流れの一例について説明する。図5は、質量分析システム20における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
まず、制御装置4のイオン化制御部41は、レーザー光源15を制御することにより、試料18にレーザー光をパルス的に照射させる(S1)(イオン化工程)。このとき、電圧制御部42は、引き出し電極12の電位をサンプルプレート11の電位よりも低く設定している。これにより、試料18の表面からイオンが引き出される(S2)(引き出し工程)。
【0077】
試料18から引き出されたイオンは、引き出し電極12と引き込み電極13との間の加速領域によって加速される(S3)(加速工程)。レーザー光源15がレーザー光を照射した時点から所定の時間後に、電圧制御部42は、引き出し電極12の電位を所定量上昇させる(S4)(電圧変化工程)。これにより、同一の質量を有するイオンの飛行時間が収束される。
【0078】
引き込み電極13を通過したイオンは、静電レンズ電極14によって検出器3へ結像されるようにイオン軌道が制御される(S5)。その後、イオンはイオン源1から出射される。
【0079】
イオン源1から出射されたイオンは、質量分析計2に入射し、所定の距離を飛行中に、その質量電荷比に応じて分離される(S6)。イオンの周回数が所定の回数に達すると質量分析計制御部43は、質量分析計2を制御することによりイオンを質量分析計2から出射する。
【0080】
質量分析計2から出射したイオンが検出器3の検出面に到達すると、検出器3は、イオンの到達時間、到達位置およびイオンの強度を検出するとともにイオン分布画像を生成する(S7)。検出器3は、その検出結果およびイオン分布画像を質量分析結果データとして制御装置4の分析データ取得部44に出力する。
【0081】
分析データ取得部44は、質量分析結果データを取得すると、当該質量分析結果データを記憶部45に格納する(S8)。制御装置4は、取得した質量分析結果を自装置が備える表示部(不図示)に表示する。
【0082】
(変更例)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
また、上述した制御装置4の各ブロック、特に電圧制御部42は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0084】
すなわち、制御装置4は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御装置4の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記制御装置4に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0085】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0086】
また、制御装置4を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【実施例】
【0087】
本発明の一実施例について図6および図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の質量分析システム20を用いることによって得られた実験結果の一例について説明する。
【0088】
本実施例では、図6に示したイオン源1を用いて実験を行った。このイオン源1では、サンプルプレート11と引き出し電極12とは2.5mmの間隔をあけて配置されており、引き出し電極12と引き込み電極13とは16mmの間隔をあけて配置されている。また、引き出し電極12、および引き込み電極13には直径4mmの孔が形成されている。
【0089】
引き込み電極13とアインツェルレンズ14とは、62mmの間隔をあけて配置されている。
【0090】
アインツェルレンズ14の各円板電極には、直径4mmの孔が形成されている。両端の円板電極には0Vが、中央の円板電極には、約8kVがかけられる。3個の円板電極の厚さは全て3mmであり、6mmの間隔をあけて配置されている。
【0091】
試料18として色素の一種であるクリスタルバイオレットを用いた。サンプルプレート11にクリスタルバイオレットの飽和水溶液を1.5μL滴下し、乾燥させた後に周期63.5μm、線幅20μm、厚さ10μmの網目状の金属薄板をかぶせ、レーザー光源15から波長355nm、パルス幅6nsのレーザー光を繰り返し周波数10Hzで照射した。イオンはアインツェルレンズを通過した後、長さ1.4mの自由空間を飛行し、検出器3においてマイクロチャンネルプレートで電子に変換され、増倍された後、蛍光板に入射し、可視光に変換される。すなわち、イオンの空間分布は可視光の空間分布に変換され、蛍光板上に現れた可視光の像をCCDカメラで1s露光して撮影した。
【0092】
なお、本実施例では、質量分析計2においてイオンを周回飛行させずに、直線的に飛行させている。
【0093】
レーザー光照射時のサンプルプレート11、引き出し電極12、引き込み電極13の電位は、それぞれ、20、19.2、0kVに、アインツェルレンズ14の中央の円板電極の電位は6.8kVに設定した。そして、レーザー光源15がレーザー光を照射してから600ns後に引き出し電極12の電位を20kVに上昇させた。
【0094】
図7は、上述の実験における実験結果を示す図である。比較のために、従来の連続引き出し方法を用いた場合の結果を図7(a)に示し、従来の遅延引き出し法を用いた場合の結果を図7(b)に示している。図7(c)に本発明の実験結果を示している。
【0095】
従来の連続引き出し法では、レーザー光照射時のサンプルプレート、引き出し電極、引き込み電極の電位は、それぞれ、20、19.2、0kVに固定した。すなわち、この方法では、レーザー光が照射された後、電場の変化は起こさない。
【0096】
従来の遅延引き出し法では、レーザー光照射時から400nsは、サンプルプレートおよび引き出し電極の電位を20kVに設定し、その後引き出し電極の電位を19.2kVに低下させた。
【0097】
図7の上段の図は、イオン分布画像を示し、下段の図は、飛行時間スペクトルを示す図である。同図に示すように、遅延引き出し法を用いた場合には、連続引き出し法を用いた場合と比べてイオン分布画像の画質が低下するが、本発明ではイオン分布画像の画質がほぼ維持されている。また、本発明における飛行時間スペクトルは、連続引き出し法を用いた場合よりも、各ピークの幅が狭くなっている。すなわち、同一質量のイオンの飛行時間が収束され、質量分析の質量分解能が高まっている。
【0098】
このように、本発明では、イオン分布画像の画質を保持しつつ、同一質量のイオンの飛行時間を収束させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、遅延引出し法を用いずに飛行時間を収束させることができるため、飛行時間型の質量分析装置、特に、投影型イメージング質量分析装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 イオン源
2 多重周回飛行時間型質量分析計(分離部)
3 検出器
4 制御装置
10 投影型イメージング質量分析装置
11 サンプルプレート(第1電極)
12 引き出し電極(第2電極)
13 引き込み電極(第3電極)
18 試料
20 質量分析システム
31a イオン
31b イオン
31c イオン
41 イオン化制御部
42 電圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析の対象となる試料をイオン化して出射するイオン源であって、
上記試料をパルス的にイオン化するイオン化部と、
上記イオン化部によって生成されたイオンの流れにおいて、当該イオンが生成される側を上流とし、生成されたイオンが上記イオン源から出射される側を下流とした場合に、上記試料の上流に位置する第1電極と、
上記試料の下流に位置し、上記イオン化部が上記試料をイオン化した時点において、上記第1電極と自身との電位差により、上記イオン化部により生成されたイオンを上記試料の表面から引き出す第2電極と、
上記第2電極と自身との電位差により、上記第2電極によって引き出されたイオンを加速する第3電極とを備え、
上記第2電極は、自身と上記第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げることを特徴とするイオン源。
【請求項2】
上記イオン化部は、上記試料の表面を均一にイオン化することを特徴とする請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイオン源を制御する制御装置であって、
上記イオン化部に上記試料をパルス的にイオン化させるイオン化制御手段と、
上記イオン化制御手段の制御下で上記イオン化部が上記試料をイオン化した時点において上記第1電極と上記第2電極との電位差を形成するとともに、上記第2電極と上記第3電極との電位差によってイオンが加速されている間に、上記イオンが正イオンの場合には上記第2電極の電位を所定量上げ、上記イオンが負イオンの場合には上記第2電極の電位を所定量下げる電圧制御手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置を動作させるための制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
請求項1または2に記載のイオン源の制御方法であって、
上記イオン源の制御方法であって、上記イオン化部によって試料をパルス的にイオン化するイオン化工程と、
上記イオン化工程において上記試料がイオン化された時点において、上記第1電極と上記第2電極との電位差により、生成されたイオンを試料表面から引き出す引き出し工程と、
上記引き出し工程において引き出されたイオンを上記第2電極と上記第3電極との電位差によって加速する加速工程と、
上記加速工程においてイオンが加速されている間に、当該イオンが正イオンの場合には自身の電位を所定量上げ、当該イオンが負イオンの場合には自身の電位を所定量下げる電圧変化工程とを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
飛行時間型の質量分析装置であって、
請求項1に記載のイオン源と、
上記イオン源から出射されたイオンを、その質量電荷比に基づく飛行時間差を利用して分離し、出射する分離部と、
上記分離部から出射されたイオンを検出する検出部とを備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
上記イオン化部は、上記試料の表面を均一にイオン化し、
上記検出部は、上記分離部から出射されたイオンの到達位置および到達時間を測定することを特徴とする請求項7に記載の質量分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−251174(P2010−251174A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100686(P2009−100686)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】