説明

イオン源とそれを用いた濃縮装置およびイオン源の運転方法

【課題】本発明の目的は、試料ガスを低パルス発光レートのレーザ光源で、効率良くイオン化できるイオン源とそれを用いた濃縮装置を提供することにある。
【解決手段】イオン源3Aは、電極11Aやイオン引き出し電極21Aなどで形成された試料セルSと、静電レンズ22Aと、レーザ光源23A、23B、ミラー25Aおよびレンズ27Aを含むレーザ照射手段とから構成されている。電極11Aは、冷媒で冷却される。内周面11bに向けられたノズル15aまで連通する試料ガス通路15が形成されている。レンズ27Aは1対のシリンドリカルレンズで構成され、所定の間隔を設けて設置されている。レンズ27Aは、平行ビームである脱離用のレーザ光Rとイオン化用のレーザ光Rを、凸レンズの作用で開口部21a、22aを通過するように絞り込み、開口部21a、22aを通過後に広がって、内周面11bを広く照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気分離方式の濃縮装置に係り、特に、それに用いるイオン源およびイオン源の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料ガスをイオン化してイオンビームとし、所定の磁場に導いてイオンの質量差を利用して分離濃縮したり、試料ガスを選択的にレーザ光でイオン化したりして、一段の処理過程で高濃縮のものを得る場合に、イオン化にレーザ光を用いる方法がある。
濃縮技術では無いが同様な技術を用いる質量分析装置において、レーザ光を用いて試料ガスをイオン化する技術が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2001−272376号公報(段落[0020]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、図8に示すように担体ガスとしてのヘリウム(He)で試料ガスを輸送して、ノズル41から噴出させ、幅L、例えば、10cmのレーザ光40を照射して試料ガスをイオン化する場合、略真空の空間に噴射される試料ガスを高効率にイオン化するためには、ミラー43、43間でレーザ光40を反射させて行なったとしても、ヘリウムの流速約1000m/secに対して、f=(1000m/sec)/(10cm)=10kHzのレーザ光のパルス発光レートとなる。
【0004】
このような高パルス発光レートのレーザ光源は大きな装置となりコストが高くなる。
また、試料ガスが放射性同位体を構成原子とする分子を含み、放射性同位体を含む分子を濃縮したい場合、その放射性同位体の半減期の長さによっては、短時間に高効率で試料ガスをイオン化する必要があるが、前記したような試料ガスが流れている場合は、イオン化せずに流れ去る試料ガスも多く生じ、試料ガスをイオン化する効率も低いものとなる。
【0005】
本発明の目的は、所定量の試料ガスを低パルス発光レートのレーザ光源で、効率良くイオン化できるイオン源とそれを用いた濃縮装置およびイオン源の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明のイオン源は、濃縮対象とする試料ガスを導入して閉じ込める空間を形成する空間形成手段と、試料ガスをイオン化するレーザ光を照射するレーザ照射手段と、空間形成手段の一部を構成し、空間に面して開口部を有し、その開口部を通してイオン化された試料ガスを引き出す引き出し電極と、空間形成手段の一部を構成し、空間に面して試料ガスを吸着する温度に設定された冷却トラップ手段と、を備え、レーザ照射手段は、冷却トラップ手段の表面に吸着された試料ガスを表面から脱離してイオン化することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のイオン源を組み合わせた濃縮装置は、イオンビームを所定の強度の磁場を通過させて、イオンの質量差によりイオンを分離することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明のイオン源の運転方法は、レーザ照射手段によるガスを脱離してイオン化するレーザ光を所定の時間照射した後、照射を休止して、再度照射を行なうことを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定量の試料ガスを低パルス発光レートのレーザ光源で、効率良くイオン化できるイオン源とそれを用いた濃縮装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
《第1の実施形態》
次に、本発明の好適な一実施形態である濃縮装置について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1は、濃縮装置全体の概要構成を示す断面図であり、図2はイオン源の模式図であり、図3はイオン源の主要構成要素を水平面で切った部分断面斜視図である。
【0011】
図1に示すように、濃縮装置1Aは、真空容器と10と、真空容器10の一端側に設けられたイオン源3Aと、真空容器10の他端側に設けられた回収系7A、7Bと、イオン源3Aおよび回収系7A、7Bの間にあって電磁石5の対の間に挟まれて一定の強さの磁場(図1中、紙面裏側から紙面表側に向かう磁場を、ドットを中心に持つ円で示してある)が形成される偏向部4と、を含む。真空容器10は、排気管9により図示しない真空ポンプに接続され、適切な真空度に保たれる。
なお、図1では、電磁石5は1つしか示されていないが、紙面の裏表方向の上下両側に電磁石5が真空容器10を間に挟んで対向して配置され、磁場が、例えば、紙面の裏側から表側の方向に発生するように所定の電流が流れるように制御されている。
【0012】
次にイオン源の構造について説明する。
図1に示すように、イオン源3Aは、主に、電極(冷却とラップ手段)11Aやイオン引き出し電極(引き出し電極)21Aなどで形成された試料セル(空間)Sと、静電レンズ22Aと、レーザ光源23A、23B、ミラー25Aおよびレンズ27Aを含むレーザ照射手段とから構成されている。
【0013】
(試料セル)
先ず、イオン源3Aの試料セルSについて説明する。
図1に示すように電極11Aは、一方側(図1の紙面で右側)に円筒周面状の窪みを有しており(図3参照)、その円筒周面状の窪みの側面側に接続された板状の絶縁材17Aと、電極11Aの円筒周面状の窪みの内周面(表面)11bに対向して配置されているイオン引き出し電極21Aとで、半円筒形に囲み、前記半円筒形の軸方向両端側を閉じる絶縁材17Aと同一部材の図示しない端部絶縁材とともに試料ガスを閉じ込める半円筒形状の試料セルSを形成している。そして、電極11A、絶縁材17A、前記端部絶縁材およびイオン引き出し電極21Aは本発明の空間形成手段を構成している。
絶縁材17Aおよび前記端部絶縁材は、例えば、セラミック製であり、電極11Aとイオン引き出し電極21Aとの間を電気的に絶縁するとともに、電極11Aとイオン引き出し電極21Aとの間の熱伝導抵抗の役割を果たす。ここでは、絶縁材17Aおよび前記端部絶縁材は、一体に四角形状に成形されて構成するものとし、以下、特別に断らない限り両者を一体物として単に絶縁材17Aと称する。
【0014】
電極11Aとイオン引き出し電極21Aとの間には、図示しない直流電源により、所定の電圧が掛けられている。
イオン引き出し電極21Aは間隙が、例えば、約2mmの前記半円筒形状の試料セルSの軸方向(図3において上下方)に延びるスリット状の開口部21aを有し、開口部21a側の縁に、電極11A側に突出した、試料セルSの軸方向に延びる条突起21p(図2、図3参照)を有し、イオンを開口部21aに誘引しやすい電界を電極11Aの内周面11bと条突起21pとの間で形成する。図2の条突起21pと内周面11bの間に破線で、電界を模式的に示す。
なお、電極11Aの内周面11bは、後記するレーザ光が照射される範囲を少なくともカバーしておれば、レーザ光により生成されたイオンを前記電界によりイオン引き出し電極21Aの開口部21aに効率的に誘引できる。
【0015】
イオン引き出し電極21Aのイオンビーム進行方向側には、例えば、2枚の静電レンズ22Aが配置され、所定の電圧が印加されイオンビームが拡散しないように整形して加速する。各々の静電レンズ22Aは中央にイオンビームを通過させるスリット状の開口部22a(図2、図3参照)を有している。
なお、開口部21a、22aを通過するイオンビームの形状は、帯状である。
【0016】
図2に示すように、電極11Aは、冷媒通路13を有し、背面側(図1の紙面における左側)から矢印Aで示すように冷媒が冷媒通路13に入り込んで循環し、冷却されるようになっている。
なお、図2では、模式的に冷媒通路13を示したが、1本の通路が蛇行して冷媒通路13を形成するようにしても良いし、図3に示したような一方向、例えば、図3に示すような試料セルSの軸方向に垂直な横方向の冷媒通路13を多段に設け、入口側、出口側それぞれに図示しないヘッダを設けて、ヘッダから各冷媒通路13に分岐するようにしても良い。また、前記試料セルSの軸方向に平行な冷媒通路13としても良い。
【0017】
絶縁材17Aは、四角形の鍔状のフランジ17a(図3では上下端側が省略されている)を有しており、図2に示すように弾性真空シール10bを介して、押さえフランジ10cと真空容器10の一端側のフランジ10aとに挟まれて、真空容器10の一端側に取り付けられる。
なお、図3では水平面で切った部分断面斜視図を示しているので、半円筒形状の試料セルSの軸方向両端(図3における上下端)を閉じる絶縁部材17Aの端部絶縁材が省略されている。
また、図2に示すように絶縁材17Aには、内周面11bの側面側縁部近くに設けられたノズル15aまで連通する試料ガス通路(導入路)15が形成されている。この試料ガス通路15は、試料セルSの軸方向に多段に設け、図示しないヘッダから各試料ガス通路15に分岐させる。
ノズル15aは、図2に示すように内周面11bの側面側縁部近くから、内周面11bに沿って試料ガスを噴出すように設定されている。そして、ノズル15aの噴出し方向近傍の内周面11bには、試料ガスの流れを撹乱して乱流にする乱流突起11cが設けられている。
【0018】
半円筒形状の試料セルSの軸方向両端側の絶縁材17Aの前記端部絶縁材は、図示しない軸受け孔をそれぞれ有し、一方はめくら孔であり、他方は貫通孔であり、そこに可動蓋19の回転軸19aを受け入れる。前記貫通孔を挿通した回転軸19aは図示しないアクチュエータによって駆動され、可動蓋19の蓋部19bが矢印Cで示す方向に回動可能であり、イオン引き出し電極21Aの開口部21aを塞ぐことができる。
可動蓋19は、例えば、シリコーンゴム製であり、イオン引き出し電極21Aの開口部21aを容易に塞ぐことができる。また、図2に示されたような可動蓋19の位置の状態(イオン引き出し電極21Aの開口部21aを開いている状態)において、イオン引き出し電極21Aと電極11Aの内周面11bとの間の電界を乱す影響が小さい。
【0019】
(レーザ照射手段)
次に、レーザ照射手段について説明する。図1に示すレーザ光源23A、23B、入射窓24、ミラー25A、レンズ27Aは本発明のレーザ照射手段を構成する。
図1に示すように真空容器10には、例えば、石英ガラスを用いたレーザ光入射用の入射窓24が設けられている。そして、脱離用のレーザ光源23Aとイオン化用のレーザ光源23Bが、その入射窓24から垂直に同軸でそれぞれレーザ光を入射するように配置されている。両者のレーザ光のビームの断面形状は所定の矩形をしており、これらのレーザ光源23A、23Bは、例えば、数十Hzの低パルス発光レートで発振する。
【0020】
図1に示すように入射窓24から同軸に入射された脱離用のレーザ光R(図2参照)とイオン化用のレーザ光R(図2参照)を反射し、図1紙面上で左方向に配置されたレンズ27Aに入射するようにミラー25Aが設置されている。ミラー25Aは平板であり、イオン引き出し電極21Aにより引き出され、そして、静電レンズ22Aで整形され、さらに加速されたイオンビームを通過させるためのスリット状の開口部25aが設けられている(図2、図3参照)。
【0021】
レンズ27Aは、例えば、石英ガラス製の1対の分離したシリンドリカルレンズ(図2、図3参照)で、1つの凸レンズを構成するものであり、1対のシリンドリカルレンズは所定の間隔を設けて設置されている。この間隔がレンズ27Aの開口部(レンズ開口部)27aを構成している。レンズ27Aは、平行ビームである脱離用のレーザ光Rとイオン化用のレーザ光Rを、凸レンズの作用で開口部21a、22aを通過するように絞り込み、開口部21a、22aを通過後に広がって、内周面11bを広く照射する。
【0022】
(回収系)
次に、図1を参照して回収系7A、7Bについて説明する。回収系7Aは収集電極31Aと回収配管33Aを含み、回収系7Bは収集電極31Bと回収配管33Bを含む。
真空容器10のイオン源3Aの設置されている側と反対側には回収系取り付けフランジ30が真空容器10のフランジに取り付けられる。回収系取り付けフランジ30の内面には、絶縁材32を介設させて所定の電圧を印加される収集電極31A、31Bが、少なくとも2つ設けられている。各収集電極31A、31Bには開口部が設けられ、それぞれ回収配管33A、33Bにつながっている。
なお、収集電極31A、31Bは、帯状のイオンビームを受けるので、イオンビームの幅方向に広幅の電極形状をしている。
【0023】
(第1の実施形態の動作説明)
次に、本実施形態の濃縮装置の動作について図1および図2を参照しながら説明する。
ここでは、RI製造装置で11Cを含むC(炭素)を製造し、それからCHIを合成した後に、合成されたCHIをキャリアガスであるヘリウム(He)ガスで回収して濃縮装置1Aに送り、濃縮装置1Aによりバッチ処理で高濃度の11CHIを得ることを考える。
11Cの半減期は約20分であり、RI製造装置で製造後、短時間にCHIを合成し、そして、同様に短時間に濃縮する必要がある。
イオンの質量差による磁場中での旋回軌道の差による分離方法(磁気分離法)は、1回の処理で高効率に分離できる特徴があり、少量の高濃縮された試料を短時間に得るには適した方法である。
【0024】
濃縮装置1Aを、試料ガス通路15に接続されている図示しない配管の止弁を閉じて、排気管9から真空引きし、真空容器10内を真空に保つ。回収系7A、7Bも閉じられている。このとき可動蓋19は、図2に示すようにイオン引き出し電極21Aの開口部21aを開いた状態である。
この状態で試料セルSの内部のガスも排気管9(図1参照)により真空引きされる。
【0025】
その後、冷媒通路13に、例えば、冷媒としての液体窒素を流す。このように、液体窒素を真空容器10の真空引き完了後に冷媒通路13に流すことにより、内周面11bに付着する水蒸気を減ずる。内周面11bが十分冷却されたところで、可動蓋19を回動させてイオン引き出し電極21Aの開口部21aを閉じ、試料ガス通路15を経由してキャリアガス(Heガス)により11CHIを含む試料ガスを試料セルSに導入する。
図2に示すように試料ガス通路15は絶縁材17Aに形成されているが、絶縁材17Aがセラミック製なので、冷媒による冷却効果が伝わりにくく、CHIが液化して試料ガス通路15の内面に付着することを防止できる。
【0026】
図2に示すようにノズル15aから噴出した試料ガスは、乱流突起11cにより攪拌されて内周面11bに沿って流れる。Heに比してCHIは質量が大きいので、遠心力により内周面11bに沿って流れやすく、その間に常温で気体のCHIは内周面11bで冷却されて液化し、内周面11bに吸着される。
なお、内周面11bは試料ガスが内周面11bに沿って流れる間乱流状態が継続しやすいように、周方向に離散的に表面粗さが大きい部分を形成しても良い。このように乱流にすることにより、内周面11bに沿って試料ガスが流れるとき内周面11bに近い流れと、内周面11bから少し遠ざかった流れが掻き回され、CHIの内周面11bへの吸着量が増す。
【0027】
試料ガスの試料セルSへの導入が完了したところで、可動蓋19を回動させてイオン引き出し電極21Aの開口部21aをゆっくりと開け、電極11A、イオン引き出し電極21A、静電レンズ22A、収集電極31A、31Bに所定の電位を印加する。
キャリアガスであるHeガスは、拡散が速いので開口部21aの隙間を通過し、排気管9から排出される。内周面11bに吸着されなかったCHIは試料セルSから拡散で開口部21aを通り漏れ出すが、開口部21aの隙間が狭いことと、CHIの質量が大きいことから拡散係数が小さく、大半は試料セルS内に留まる。
そして、レーザ光源23Aとレーザ光源23Bを発振させ、脱離用のレーザ光Rとイオン化用のレーザ光Rをそれぞれ出力させる。そして、両方のレーザ光源23A、23Bを所定の発振期間(例えば、1分間)の後、所定の休止期間(例えば、4分間)を経て、再び発振させる繰り返しのレーザ発振の運転をさせる。
その結果、イオン化したがイオン引き出し電極21Aの内周面11b側に付着したCHIは、再びガス化して試料セルS内に浮遊し、内周面11bから脱離したがイオン化されなかった試料セルS内に浮遊しているCHIとともに、冷却された内周面11bに再び吸着される。
【0028】
CHIの場合は電離してCHの形にイオン化される。冷却された内周面11bに吸着されたCHIにレーザ光を照射してもレーザ光のエネルギが内周面11bに伝わって逃げるので、いきなりはイオン化できない。先ず、脱離用のレーザ光RによりCHIを内周面11bから脱離させ、ガス化したCHIをイオン化用のレーザ光Rにより電離してイオン化する2段階の過程が必要である。
脱離用のレーザ光源23Aおよびイオン化用のレーザ光源23Bは、対象とする試料ガスにより適切に選定すべきものである。
ここでは、11CHIの濃縮が目的なので、脱離やイオン化に同位体効果がある場合は、11CHIの脱離やイオン化に適したレーザ光源を選択することが好ましい。
【0029】
11CHIのレーザ光による脱離には、(1)11CHI分子の赤外線、近赤外線の吸収により11CH−I間の結合部分で振動を生じさせる振動励起による方法、(2)UV領域の波長の紫外線の吸収により11CHI分子の電子を励起する電子励起による方法、(3)断熱吸収によるCHIの蒸発の3通りが考えられる。
(1)の方法のレーザ光源としては、Nd(ネオジウム)をドーピングさせた固体YAG結晶のランプ励起によるYAGレーザを励起源とした波長8〜10μmのチタンサファイヤレーザが考えられる。これは、パルス幅2nsec以下で10mJ/パルスの出力が得られるものがある。また、そのほかに、OPO(光パラメトリック発振器)レーザも考えられる。
(2)の方法のレーザ光源としては、エキシマレーザ、窒素レーザ、アルゴンエキシマランプなどがある。
(3)の方法のレーザ光源としては、エキシマレーザ、窒素レーザ、YAGレーザなどがある。
【0030】
次に、CHIのイオン化に適する紫外レーザについて説明する。波長約360nm、パルス幅としては数nsec、レーザ光発振レートは数十Hz以上が求められ、エキシマレーザ励起色素レーザ、YAGレーザ励起色素レーザ、窒素レーザ励起色素レーザなどが考えられる。
図4を参照しながら360nm前後の紫外線レーザによるCHのイオン化エネルギ準位を説明する。図4はレーザ光のエネルギとCHIをイオン化するに必要な閾値を説明する図である。
362.5nmまたは366nmの波長では、3フォトンの多重吸収でイオン化エネルギ準位E1/2を超え、CHにイオン化できる。これに対し、370nmの波長では4フォトンの多重吸収でようやくイオン化エネルギ準位E1/2を超えるので、イオン化効率(確率)が低い。
また、402nmの波長では、4フォトンの多重吸収でようやくイオン化エネルギ準位E3/2を超えるが、4フォトンの多重吸収の結果の励起準位が高すぎてCHIが分解してしまう。従って、362.5nm〜366nmの波長の紫外線レーザが適切なことが分かる。
【0031】
本実施形態の説明におけるCHIの脱離、イオン化用のレーザ光として362.5nm〜366nmの波長の紫外線レーザを兼用することもできる。このように、分子の種類によっては、脱離、イオン化用のレーザを兼用して1つのレーザ光源で行なうこともできる。
【0032】
図1においてイオン化されたCHは、内周面11bとイオン引き出し電極21Aとの間の電界によりイオン引き出し電極21Aの開口部21aに誘導され、さらに、静電レンズ22Aにより加速されると同時に帯状の平行イオンビームに整形されて、電磁石5により形成された磁場の存在する偏向部4に導かれる。偏向部4でフレミングの左手の法則により、イオンビームの進行方向に向かって右方向の旋回力を受ける。11CH12CHとの質量の差により、11CHの方が小さな半径で右方向に旋回し、収集電極31Aに到達し、12CHは収集電極31Bに到達する。
11CHは収集電極31Aで電気的に中和され、回収配管33Aに接続された図示しない定量ポンプにより所定の図示しない止弁付きの試料カプセルに収集される。
なお、回収配管33Aおよび試料カプセルは、例えば、液体窒素で冷却しておけば、11CHIが液化するので、再びガス化して排気管9から喪失することを防止できる。
試料カプセルに収集された11CHIは、キャリアガス、例えば、Heを試料カプセルに接続された一方の管から送り、試料カプセルに接続されたもう一方の管から回収して、所要の薬剤を合成する装置に送り込む。
12CHは収集電極31Bで電気的に中和され、回収配管33Bに接続された図示しない排気管により排気され、排気を貯留するタンクに集めて、放射能の減衰を待つてから、通常の化学物質として処理する。
【0033】
ちなみに、イオンビームの軌道は、イオンの質量、加速されたイオンの速度、偏向部4における磁場の強度、イオンの電荷量に依存するので、分離濃縮するイオンに応じて、磁場の強度を調整し、収集電極31A、31Bの位置を設定する。
【0034】
以上、第1の実施形態では、11CHIの濃縮を例に説明したが、この11CHIには以下に説明するような用途目的があり、半減期20分の11Cを含む11CHIを高濃縮で得るものである。
被検体に放射性元素、例えば、18Fを含む薬剤、フルオロデオキシグルコース(18FDG)等を注射して陽電子放出型CT(Positron Emission Tomography(以下、PETという)やSPECT単光子放出型CT(Single Photon Emission Computed Tomography、以下、「SPECT」という)により18FDGの体内の分布を画像化してガン検診を行なう技術が一般に実用化している。この技術を応用して、体内の特定の分子分布を画像化して身体の働きをダイナミックに観察する「分子イメージング」という技術が研究されている。この着目する特定の分子の中には、極微量の作用で働く物質がある。例えば、神経伝達物質などである。このような、体内で極微量で作用する化学物質の体内分布を、放射性同位体で標識してPETで観察するには、体内に注入するその化学物質も極微量に留めないと、正常な状態における身体の状況を観察できない。
【0035】
通常、用いられる前記18FDGの比放射能は10−6程度であり、このように小さい比放射能では、極微量の注入では、放射能強度が低く、PETやSPECTでは観察できなかった。薬剤の比放射能を0.1〜1程度まで高めることができると、前記分子イメージングに利用できる。
【0036】
以上、本実施形態によれば、試料ガスを所定の空間に閉じ込めて電極(冷却とラップ手段)11Aの内周面(表面)11bに吸着できるので、低パルス発光レートのレーザ光源23A、23Bを用いた場合でも電極11Aの内周面11bに吸着した試料ガスをレーザ照射手段により、効率良くイオン化できる。
また、本実施形態のような構成のイオン源3Aからのイオンビームを、所定の磁場に導くことによりイオンの質量差で、旋回半径に差が生じ1段の処理で効率的に濃縮できる。
また、脱離イオン化用のレーザ光の照射を所定期間続けた後、休止し、その後再び照射を繰り返すので、照射の休止期間に試料セルS内のイオン化しなかった試料を再び内周面11bに吸着することができ、試料の漏洩を抑制でき、試料を効率良くイオン化できる。
【0037】
さらに、本実施形態では、試料ガスを試料セルSに導入するときには、イオン引き出し電極21Aの開口部21aを可動蓋19で閉じ、試料ガスの漏洩を抑制し、内周面11bに吸着される確率を高めているので、少量の試料ガスをバッチ処理で有効に濃縮することができる。
また、レーザ光源23A、23Bの発振を休止させる期間、可動蓋19を閉じて開口部21aから試料ガスが漏出するのを抑制するようにしても良い。
【0038】
その結果、本実施形態によれば、11Cを含む薬剤を合成して各種試験に用いることができる。図5は、加速器で11Cを製造後、11Cを含む薬剤を合成するまでのフローチャートである。
ステップS1では、加速器で所定のターゲットに所定の粒子を衝突させて11Cを製造する(所要時間約40分)。次いで、ステップS2では、ターゲットから11Cを含むCを回収し、CHIを製造する(所要時間約10分)
【0039】
ステップS3では、ステップS2で製造されたCHIを、配管を通じてHeガスで濃縮装置1Aのイオン源3Aに輸送し、CHIを試料セルSで内周面11bに吸着させる(所要時間約3分)。
ステップS4では、濃縮装置1Aを運転して11CHIを濃縮する(所要時間約25分)。
ステップS5では、濃縮11CHIを回収し、薬剤合成装置へHeガスで輸送する(所要時間約3分)。
【0040】
ステップS6では、濃縮11CHIで薬剤を合成する(所要時間約15分)。こうして合成された薬剤は高比放射能である。
最後に、ステップS7では、合成された11C薬剤を用いて各種試験を行なう(所要時間約20分)。
【0041】
以上、本実施例によれば、加速器で11Cを製造後、約56分と極めて短時間で、目的とする比放射能が0.1〜1程度の11C薬剤が合成できる。
このとき、C11薬剤は加速器で製造した直後の初期放射能の6%程度に減衰していることになるが、この時点で所要の放射能強度を10mCiとすると、加速器で製造する放射能強度は164mCi程度であり、加速器で容易に製造できる量である。
【0042】
以上、第1の実施形態における濃縮装置1Aの動作説明をしたが、そのなかで11CHIの濃縮を例に説明したが、11Cを含む化学物質はこれに限定されるものではない。常温で気体であり、容易に手に入る冷媒、例えば、液体窒素、液体Heなどで液化できる分子なら適用可能である。
また、放射性標識元素としては11Cに限定されるものではなく、18F、124I、76Br、13Nなどが考えられ、適切な常温で気体であり、容易に手に入る冷媒、例えば、液体窒素、液体Heなどで液化できる分子形態に合成すれば、本濃縮装置1Aが適用できる。
さらに、放射性標識元素に限定されることはない。自然界に少ない存在比の安定な同位体元素を高濃縮してトレーサとして使用する場合にも、液体窒素、液体Heなどで液化できる分子形態に合成すれば、本濃縮装置1Aが適用できる。
【0043】
なお、その場合、分子形態に合わせて、脱離用、イオン化用のレーザ光源を選定する必要がある。
【0044】
《第2の実施形態》
次に、図1、図2、および図6を参照しながら本発明の第2の実施形態について説明する。図6はイオン源の主要構成要素を水平面で切った部分断面斜視図である。
第2の実施形態は第1の実施形態におけるイオン源3Aが、形状の異なるイオン源3Bに置き換わるだけである。第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
第1の実施形態において電極11Aは円筒周面状の窪みを有していたが、本実施形態における電極(冷却トラップ手段)11Bは球周面状の窪みを有する。その球周面状の窪みと、電極11Bに接続された円筒形状の絶縁材17Bと、電極11Bの内周面11bに対向して配置されているイオン引き出し電極21Bとともに試料ガスを閉じ込める半球形状の試料セル(空間)Sを形成している。そして、電極11B、絶縁材17Bおよび絶縁材17Bは本発明の空間形成手段を構成している。
【0045】
イオン引き出し電極21Bは、例えば、直径が約2mmの前記球周面形状の窪みの中心に対向する円形の開口部21a(図6参照)を有し、開口部21a側の縁に、電極11B側に突出した、環状の条突起21pを有し、イオンを開口部21aに誘引しやすい電界を電極11Bの内周面11bと条突起21pとの間で形成する。
なお、電極11Bの内周面11bは、レーザ光が照射される範囲を少なくともカバーしておれば、レーザ光により生成されたイオンを電界によりイオン引き出し電極21Bの開口部21aに効率的に誘引できる。
【0046】
イオン引き出し電極21Bのイオンビーム進行方向側には、例えば、2枚の円盤状の静電レンズ22Bが配置され、所定の電圧が印加されイオンビームが拡散しないように整形して加速する。各々の静電レンズ22Bは中央にイオンビームを通過させる円形の開口部22a(図2、図6参照)を有している。
なお、開口部21a、22aを通過するイオンビームの断面形状は、円形である。
【0047】
図6に示すように、電極11Bは、冷媒通路13を有し、背面側(図6の紙面における左側)から矢印Aで示すように冷媒が循環し、冷却されるようになっている。
なお、図6では、模式的に冷媒通路13を示したが、1本の通路がらせん状に冷媒通路13を形成するようにしても良いし、図6に示したような一方向の冷媒通路13を多段に設け、入口側、出口側それぞれに図示しないヘッダを設けて、ヘッダから各冷媒通路13に分岐するようにしても良い。
【0048】
また、絶縁材17Bには、内周面11bの側面側縁部近くに設けられたノズル15aまで連通する試料ガス通路(導入路)15が形成されている。この試料ガス通路15は、前記球周面状の窪みの縁の略半周分に沿って多段に設け、図示しないヘッダから各試料ガス通路15に分岐させる。
ノズル15aは、図1に示すように内周面11bの側面側縁部近くから、内周面11bに沿って試料ガスを噴出すように設定されている。そして、ノズル15aの噴出し方向近傍の内周面11bには、試料ガスの流れを撹乱して乱流にする乱流突起11cが設けられている。
【0049】
円筒状の絶縁材17Bのノズル15aの設けてない側に、図示しない軸受け孔を2箇所設け、一方はめくら孔であり、他方は貫通孔であり、そこに図6に示すような可動蓋19の回転軸19aを受け入れる。前記貫通孔を挿通した回転軸19aは図示しないアクチュエータによって駆動され、可動蓋19の蓋部19bがイオン引き出し電極21Bの開口部21aを塞ぐことができる。
可動蓋19は、例えば、シリコーンゴム製であり、イオン引き出し電極21Bの開口部21aを容易に塞ぐことができる。また、図6に示されたような可動蓋19の位置の状態(イオン引き出し電極21Aの開口部21aを開いている状態)において、イオン引き出し電極21Bと電極11Bの内周面11bとの間の電界を乱す影響が小さい。
なお、図6では電極11Bの球周面状の窪みの中心を通る水平面で切った部分断面斜視図を示しているので、半球形状の試料セルSの図6における上側を閉じる電極11Bおよび絶縁部材17Bが省略されている。
【0050】
(レーザ照射手段)
次に、レーザ照射手段について説明する。図1に示すレーザ光源23A、23B、入射窓24、ミラー25Bおよびレンズ27Bは本発明のレーザ照射手段を構成する。
第2の実施形態のイオン源3Bのレーザ光源は、図1に示す第1の実施形態と同じものである。
図1に示すように入射窓24から同軸に入射された脱離用のレーザ光R(図2参照)とイオン化用のレーザ光R(図2参照)を反射し、図1紙面上で左方向に配置されたレンズ27Bに入射するようにミラー25Bが設置されている。図6に示すようにミラー25Bは平板であり、イオン引き出し電極21Bにより引き出され、そして、静電レンズ22Bで整形され、さらに、加速されたイオンビームを通過させる円形の開口部25aが設けられている。
【0051】
レンズ27Bは、例えば、石英ガラス製の玉レンズ(図6参照)で、レンズ27Bの光軸中央に円形の開口部(レンズ開口部)27aを有している。レンズ27Bは、平行ビームである脱離用のレーザ光Rとイオン化用のレーザ光Rを、凸レンズの作用で開口部21a、22aを通過するように絞込み、開口部21a、22aを通過後に広がって、内周面11bを広く照射する。
【0052】
なお、本実施形態では、収集電極31A、31B(図1参照)は、円形断面のイオンビームを受けるので、円形の電極形状をしている。
【0053】
本実施形態の作用効果は、第1の実施形態と同じである。ただ、開口部21aの面積が第1の実施形態の場合より小さいので、試料ガスを導入したときの試料セルSから開口部21aを通じたCHIの拡散漏洩が少ないので、ノズル15aからの流速を遅くなるように制御すれば、可動蓋19を省略できる。
【0054】
《第3の実施形態》
次に、図7を参照しながら本発明の第3の実施形態について説明する。
図7は第3の実施形態のイオン源の構成を示す縦断面図である。
本実施形態では電極(冷却トラップ手段)11Cは円筒形状をし、その一方の側が、円盤状の石英ガラス製の入射窓18を中央に配した環状の絶縁材17Dで蓋をされ、他方の側は円筒形状の絶縁材17Cが接続している。入射窓18に対向して円形の開口部21aを有するイオン引き出し電極21Cが配置されている。これら入射窓18、電極11C、絶縁材17C、イオン引き出し電極21Cは、試料ガスを閉じ込める試料セル(空間)Sを形成している。そして、電極11C、絶縁材17C、絶縁材17D、入射窓18、イオン引き出し電極21Cは本発明の空間形成手段を構成する。
図示してないが、絶縁材17Cの外周に環状の鍔状のフランジが設けられ、それを第1の実施形態と同様に真空容器10のフランジに取り付ける。
【0055】
図7に示すようにイオン引き出し電極21Cは、円形の開口部21aを有し、イオンを開口部21aに誘引しやすい電界を電極11Cの内周面11bと開口部21aとの間で形成する。
【0056】
イオン引き出し電極21Cのイオンビーム進行方向側には、例えば、2枚の円盤状の静電レンズ22Cが配置され、所定の電圧が印加されイオンビームが拡散しないように整形して加速する。各々の静電レンズ22Cは中央にイオンビームを通過させる円形の開口部22a(図7参照)を有している。
なお、開口部21a、22aを通過するイオンビームの断面形状は、円形である。
【0057】
図7に示すように、電極11Cは、冷媒通路13を有し、径方向外周側から矢印Aで示すように冷媒が循環し、冷却されるようになっている。
なお、図7では、模式的に冷媒通路13を示したが、軸方向に一方向の冷媒通路13を周方向に複数設け、入口側、出口側それぞれに図示しないヘッダを設けて、ヘッダから各冷媒通路13に分岐するようにしても良い。
【0058】
また、絶縁材17Dには試料ガス通路15が形成されている。試料ガス通路15の先端のノズル15aは、電極11Cの石英ガラス製の入射窓18側の内周面11bに開口している。ノズル15aは、図7に示すように内周面11b沿って試料ガスがらせん状に流れるように設定されている。そして、ノズル15aの噴出し方向近傍の内周面11bには、試料ガスの流れを撹乱して乱流にする図示しない乱流突起が設けられている。
【0059】
(レーザ照射手段)
次に、レーザ照射手段について説明する。図7に示す脱離用のレーザ光Rおよびイオン化用のRを出力する図示しないレーザ光源、レンズ27C、アクチュエータ29、および入射窓18は、本発明のレーザ照射手段を構成する。
本実施形態では、レーザ光は真空容器10の入射窓からではなく、直接イオン源3Cの入射窓18から入射される。同軸の脱離用のレーザ光R、イオン化用のレーザ光R
図7に示すように、例えば、石英ガラス製の玉レンズ27Cを経て同軸に入射された脱離用のレーザ光Rとイオン化用のレーザ光Rは内周面11bに照射される。
【0060】
レンズ27Cは、脱離用のレーザ光Rとイオン化用のレーザ光Rを、内周面11bに照射するためレンズ27Cの光軸を傾けて周方向に回転させるアクチュエータ29を有している。
なお、本実施形態では、収集電極31A、31Bは、円形断面のイオンビームを受けるので、円形の電極形状をしている。
【0061】
本実施形態の作用効果は、第1の実施形態と同じである。ただ、開口部21aの面積が第1の実施形態の場合より小さいので、試料ガスを導入したときの試料セルSから開口部21aを通じたCHIの拡散漏洩が少ないので、ノズル15aからの流速を遅くなるように制御し、可動蓋を省略してある。
【0062】
以上、本発明の第1の実施形態から第3の実施形態によれば、試料ガスを所定の空間に閉じ込めて電極(冷却とラップ手段)11A、11B、11Cの内周面(表面)11bに吸着できるので、低パルス発光レートのレーザ光源を用いた場合でも電極11A、11B、11Cの内周面11bに吸着した試料ガスをレーザ照射手段により、効率良くイオン化できる。
また、このような構成のイオン源3A、3B、3Cからのイオンビームを、所定の磁場に導くことによりイオンの質量差で、旋回半径に差が生じ1段の処理で効率的に濃縮できる。
また、脱離イオン化用のレーザ光の照射を所定期間続けた後、休止し、その後再び照射を繰り返すので、照射の休止期間に試料セルS内のイオン化しなかった試料を再び内周面11bに吸着することができ、試料の漏洩を抑制でき、試料を効率良くイオン化できる。
【0063】
さらに、第1の実施形態および第2の実施形態では、試料ガスを試料セルSに導入するときには、イオン引き出し電極21A、21Bの開口部21aを可動蓋19で閉じ、試料ガスの漏洩を抑制し、内周面11bに吸着される確率を高めているので、少量の試料ガスをバッチ処理で有効に濃縮するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る濃縮装置の全体の概要構成を示す断面図である。
【図2】イオン源の模式図である。
【図3】イオン源の主要構成要素の水平断面を示す部分斜視図である。
【図4】紫外線によるCH3Iのイオン化の波長による差異を説明する図である。
【図5】11Cを製造してから11Cを含む高比放射能の薬剤を合成するまでの手順を説明するフローチャートである。
【図6】第2の実施形態におけるイオン源の主要構成要素の水平断面を示す斜視図である。
【図7】第3の実施形態におけるイオン源の主要構成要素の縦断面図である。
【図8】従来の試料ガスの流れの中でイオン化する場合を説明した図である。
【符号の説明】
【0065】
1A、1B 濃縮装置
3A、3B、3C イオン源
4 偏向部
5 電磁石
7A、7B 回収系
9 排気管
10 真空容器
10a フランジ
10b 真空シール
10c 押さえフランジ
11A、11B、11C 電極(空間形成手段、冷却トラップ手段)
11b 内周面(表面)
11c 乱流突起
13 冷媒通路
15 試料ガス通路
15a ノズル
17A、17B、17C、17D 絶縁材(空間形成手段)
18 入射窓(空間形成手段、レーザ照射手段)
19 可動蓋
19a 回転軸
21A、21B イオン引き出し電極(空間形成手段、イオン引き出し電極)
22A、22B 静電レンズ
21a、22a 開口部
21p 条突起
23A、23B レーザ光源
24 入射窓(レーザ照射手段)
25A、25B ミラー(レーザ照射手段)
25a 開口部
27A シリンドリカルレンズ(レーザ照射手段)
27B 玉レンズ(レーザ照射手段)
27a 開口部(レンズ開口部)
29 アクチュエータ(レーザ照射手段)
30 回収系取り付けフランジ
31A、31B 収集電極
32 絶縁材
33A、33B 回収配管
S 試料セル(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮対象とする試料ガスを導入して閉じ込める空間を形成する空間形成手段と、
前記試料ガスをイオン化するレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
前記空間形成手段の一部を構成し、前記空間に面して開口部を有し、該開口部を通して前記イオン化された試料ガスを引き出す引き出し電極と、
前記空間形成手段の一部を構成し、前記空間に面して前記試料ガスを吸着する温度に設定された冷却トラップ手段と、を備え、
前記レーザ照射手段は、前記冷却トラップ手段の表面に吸着された前記試料ガスを前記表面から脱離してイオン化することを特徴とするイオン源。
【請求項2】
前記レーザ照射手段は、前記引き出し電極の開口部を通して前記冷却トラップ手段の表面に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記レーザ照射手段は、前記引き出し電極の開口部において前記レーザ光の断面積を絞るレンズを有し、
前記レンズは、前記イオン化された試料ガスのイオンビームを通過させるレンズ開口部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン源。
【請求項4】
前記レーザ照射手段は、脱離用のレーザ光源とイオン化用のレーザ光源を個別に有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のイオン源。
【請求項5】
前記レーザ照射手段は、脱離用のレーザ光源とイオン化用のレーザ光源を共用することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のイオン源。
【請求項6】
前記試料ガスを前記空間に導入する導入路の先端は、前記冷却トラップ手段の表面に沿って乱流を生じるような吹き出し構造であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のイオン源。
【請求項7】
前記試料ガスを前記空間に導入するときには、前記空間の前記引き出し電極側を閉鎖することが可能な可動式閉鎖機構を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のイオン源。
【請求項8】
前記空間形成手段により形成される空間は半円筒形状であり、前記冷却トラップ手段は前記半円筒形状の円筒周面側に設けられ、
前記引き出し電極は、前記半円筒形状の側平面側に設けられ、その前記開口部はスリット状をしており、
前記レンズは、前記スリット状の開口部に対応したスリット状の前記レンズ開口部を有するシリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のイオン源。
【請求項9】
前記空間形成手段により形成される空間は半球形状であり、前記冷却トラップ手段は前記半球形状の周面側に設けられ、
前記引き出し電極は、前記半球形状の平面側に設けられ、その前記開口部は円形状をしており、
前記レンズは、前記円形状の開口部に対応した円形状の前記レンズ開口部を中央に有する玉レンズであることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のイオン源。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項のイオン源に組み合わせ、該イオン源の前記引き出し電極により引き出されたイオンビームを所定の強度の磁場を通過させて、前記試料ガスのイオンの質量差によりイオンを分離することを特徴とする濃縮装置。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のイオン源を運転するイオン源の運転方法において、
前記レーザ照射手段は、試料ガスを脱離してイオン化するレーザ光の照射を、所定の時間照射した後、照射を休止して、再度照射を行なうことを繰り返すことを特徴とするイオン源の運転方法。
【請求項12】
請求項7に記載のイオン源を運転するイオン源の運転方法において、
前記レーザ照射手段は、試料ガスを脱離してイオン化するレーザ光の照射を、所定の時間照射した後、照射を休止して、再度照射を行なうことを繰り返し、
前記照射を休止する間、前記閉鎖機構を閉じることを特徴とするイオン源の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−76222(P2009−76222A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241827(P2007−241827)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】