説明

イオン発生機

【課題】送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路の路壁に装着されているイオン発生部を、既存の送風機が送出する空気にて掃除することができるイオン発生機を提供する。
【解決手段】送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路21の路壁にイオン発生部4を装着し、前記空気の一部をイオン発生部4に向けて誘導する誘導体6を、誘導位置と非誘導位置との間で移動可能に設け、該誘導体6が誘導した空気にてイオン発生部4を掃除するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン発生部が発生したイオンを、送風機が送出する空気とともに室内等の空間に放出するためのイオン発生機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、換気が少ない密閉された部屋、事務所、会議室等に大勢の人が集まった場合、呼吸とともに排出される二酸化炭素、煙草の煙、埃等の汚染微粒子が増加し、また、人が持ち込んだ浮遊細菌やウイルスの数が増加する。この場合、人体にとって好ましくない有害物質が空気中に発散され、多数浮遊するので、この有害物質の濃度を低く抑えるために、イオン発生機が使用されている。
【0003】
イオン発生機は、送風機と、該送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路を有するハウジングと、前記通流路の路壁に装着されイオンを発生させるイオン発生部とを備え、該イオン発生部が発生したイオン(正イオン・負イオン)を、通流路を通流する空気とともに室内に放出し、空気中に浮遊する細菌を除去したり、ウイルスを不活化するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
イオン発生部は、放電針及び該放電針に電圧を印加する電圧印加部を有し、放電針からコロナ放電現象によってイオンを発生させるように構成されているため、イオン発生部に埃などの異物が付着し易い。イオン発生部に異物が付着すると、イオン発生のための放電性が低下し、イオンの発生量が減少することになるため、イオン発生部を掃除する必要がある。
【0005】
イオン発生機から外部へ放出される正イオンと負イオンとは、互いに引きあうため時間が経過するほど正イオンと負イオンとがぶつかり、中和されてしまう量も増加する。すると、室内に浮遊するイオンの量が減り、殺菌効果が低下してしまう。そのため、高濃度のイオンを発生し得るイオン発生素子の開発がすすめられ、また、発生したイオンを効率的に空気中に吹き出すための手法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−29497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、室内でのイオン濃度を高めるためには、送風機が送出する空気の通流路に配されるイオン発生部が発生するイオンの量を多くすることが考えられる。そのためには、イオン発生部の放電強度を高めたり、放電回数を増加させたりして、イオン発生効率を高めることが必要となる。
【0008】
ところが、イオン発生機が発生するイオンの量を増やすことは、一方では放電部に付着する異物が短時間で蓄積する結果を生み、イオン発生機が空気中に放出するイオン濃度を長期間維持することが困難となるので、定期的にメンテナンス(放電針の掃除)する必要があり、手間がかかってしまう。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は、送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路の路壁に装着されているイオン発生部に向けて前記空気の一部を誘導する誘導体を設けることにより、既存の送風機が送出する空気にてイオン発生部を掃除することができるイオン発生機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るイオン発生機は、送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路、及び該通流路の路壁に装着され、イオンを発生させるイオン発生部を備えるイオン発生機において、前記空気の一部を前記イオン発生部に向けて誘導する誘導体を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明にあっては、既存の送風機が送出する空気を誘導体にてイオン発生部に衝突させ、イオン発生部を掃除することができるため、イオン発生効率を高めることができるとともに掃除を可能にするための構造を簡単にでき、簡易に掃除をすることができる。
【0012】
また、本発明に係るイオン発生機は、前記誘導体は、前記空気を誘導する誘導位置と非誘導位置との間で移動可能である構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、イオン発生部が掃除されるとき、非誘導位置から誘導位置へ誘導体が移動し、掃除を終えたとき、誘導体が誘導位置から非誘導位置へ移動するため、イオン発生時の誘導体による通流抵抗を低くすることができ、イオン発生効率を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係るイオン発生機は、前記イオン発生部が発生したイオンの量を検出する検出部を備える構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、検出部が検出した検出値、ひいてはイオンの量に応じて誘導体を移動させるように構成することが可能であり、イオン発生部でのイオン発生量を安定化させ得る。
【0014】
また、本発明に係るイオン発生機は、前記誘導体を移動させる移動手段及び前記検出部が検出した検出値が所定値以下のとき、前記移動手段を動作させるための制御部を備える構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、イオン発生機の動作時間に関係なく、イオンの量が所定量以下のときにイオン発生部を自動的に掃除することができ、イオン発生部でのイオン発生量をより一層安定化させることができるとともに、掃除作業の手間をなくし得る。
【0015】
また、本発明に係るイオン発生機は、前記路壁は、前記通流路に開口し前記誘導体を配してある孔を有し、前記移動手段は、前記誘導体に接触する転動体及び該転動体を回動させる電動モータを有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、イオン発生部が掃除されるとき、通流路内へ誘導体が移動し、掃除を終えたとき、誘導体が通流路の外側へ移動するため、イオン発生時の誘導体による通流抵抗をより一層低くすることができ、イオン発生効率をより一層高めることができる。また、電動モータにて誘導体を簡易に移動させることができ、掃除作業性を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係るイオン発生機は、前記誘導体は前記路壁に枢着されており、前記移動手段は、前記誘導体を枢動する電動モータを有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、誘導体の枢着部を支点として該誘導体が枢動されるため、誘導体を円滑に動作させるこができ、また、電動モータにて誘導体を簡易に駆動させることができ、掃除作業性を高めることができる。
【0017】
また、本発明に係るイオン発生機は、前記路壁は、前記通流方向と交差する方向へ貫通する第2孔を有し、前記イオン発生部は、前記通流方向と交差する方向に離隔して複数配してあり、前記イオン発生部夫々を保持する二つの保持部及び該保持部夫々を連結する連結部を有し、前記第2孔に挿脱可能に挿嵌してある保持体を備える構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、通流方向と交差する方向に離隔して配してある複数のイオン発生部を交換する際、誘導体を非誘導位置へ移動させた状態で保持体を第2孔から抜き出すことが可能であり、通流方向と交差する方向に離隔して配してある複数のイオン発生部の交換を簡易にできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既存の送風機が送出する空気をイオン発生部に衝突させ、イオン発生部を掃除することができるため、掃除を可能にするための構造を簡単にでき、簡易に掃除をすることができる。
【0019】
また、本発明によれば、イオン発生時の誘導体による通流抵抗を低くすることができ、イオン発生効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るイオン発生機の構成を示す一部を分解した斜視図である。
【図2】本発明に係るイオン発生機の内部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るイオン発生機のイオン発生部部分の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るイオン発生機のイオン発生部の構成を示す斜視図である。
【図5】図3のV −V 線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明に係るイオン発生機の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係るイオン発生機の誘導体の動作状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係るイオン発生機の誘導体の動作で空気の通流が変化する状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係るイオン発生機の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1
図1は本発明に係るイオン発生機の構成を示す一部を分解した斜視図、図2はイオン発生機の内部構造を示す斜視図、図3はイオン発生機のイオン発生部部分の構成を示す斜視図、図4はイオン発生機のイオン発生部の構成を示す斜視図、図5は図3のV −V 線断面図、図6は図3のVI−VI線断面図である。
【0022】
図1に示したイオン発生機は、後面下部に吸込口11を有し、上部に吹出口12を有するハウジング1と、該ハウジング1内に内装されているケーシング2と、該ケーシング2内の下部に配されている送風機3と、ハウジング1内における送風機3及び吹出口12間に配されているイオン発生部4と、該イオン発生部4を保持してある保持体5と、送風機3が送出する空気の一部をイオン発生部4へ誘導する誘導体6と、該誘導体6を誘導位置と非誘導位置との間で移動させるための移動手段7と、ハウジング1内におけるイオン発生部4及び吹出口12間の通流路に配され、イオンの量を検出する検出部8とを備える。
【0023】
ハウジング1は横断面略コ字形をなす前キャビネット1a及び横断面略コ字形をなす後キャビネット1bを有し、前キャビネット1a及び後キャビネット1b間にケーシング2が配されている。前キャビネット1a及び後キャビネット1bの上面部に吹出口12が開設されており、後キャビネット1bの後面下部に吸込口11が開設されている。後キャビネット1bの後面下部には送風機3が吸込口11から吸込む空気を通過させ、該空気中の異物を除去して清浄空気にするフィルタ13aを有するカバー13が取付けられている。また、ハウジング1の上面部で、吹出口12の一側には、運転用スイッチ等の複数のスイッチ及びランプ等の表示手段を含む操作部9が設けられている。
【0024】
ケーシング2は、前後に離隔して対向する前壁2a、後壁2b、前壁2a及び後壁2b間の下部に配されている湾曲誘導壁2cと、該湾曲誘導壁2cの上端に連なる二つの側壁2d,2eと、後壁2bの下端に連なる基台2fとを有し、上部が吹出口12に開放されており、前壁2a、後壁2b及び側壁2d,2e間に通流路21が形成されている。一方の側壁2dは、湾曲誘導壁2cの一端から上方へほぼまっすぐに配され、他方の側壁2eは、湾曲誘導壁2cの他端から該湾曲誘導壁2cの内側に回転自在に配される羽根車の接線方向へ傾斜する傾斜部2gを有し、該傾斜部2gの上端から上方へほぼまっすぐに配されている。
【0025】
一方の側壁2dの下部には保持体5を前後方向へ移動可能に支持する凹条部22が設けられており、他方の側壁2eにおける傾斜部2gの下部には横方向へ貫通し、誘導体6の横方向への移動を案内する長孔23が開設されている。後壁2bには凹条部22に連なり、前後方向へ貫通する挿抜孔24が開設され、前壁2aには、凹条部22に連なり、前方へ窪む凹所25が設けられ、該凹所25の奥面に給電用のコネクタ26が設けられている。尚、長孔23が孔を構成し、挿抜孔24が第2孔を構成する。
【0026】
長孔23は、側壁2eに直接設けられる他、合成樹脂等の摩擦抵抗が少ない材料により枠形に形成された枠形部材が、側壁2eに開設される孔に嵌め込みにより固定される構成としてもよいし、また、短毛のブラシ体や、合成樹脂表面に植毛された部材が、側壁2eに開設される孔に嵌め込みにより固定される構成としてもよい。
【0027】
送風機3は、ケーシング2の湾曲誘導壁2c内に前後方向への回転軸3aを中心として回転自在に収容されている羽根車31と、該羽根車31を駆動する電動モータ32と、該電動モータ32を支持する支持部33とを有し、該支持部33がケーシング2における前壁2aの前面に取付けられている。電動モータ32の出力軸は前壁2aを貫通し、先端部に羽根車31が固定されている。羽根車31は図3、図5の矢印方向へ回転自在であり、羽根車31の回転により送出される空気が、通流路21を経て吹出口12から外部へ放出される。また、羽根車31の周方向1箇所での接線方向に傾斜部2gが配されている。
【0028】
イオン発生部4、換言するとイオン発生素子は、ケーシング2の前壁2a及び後壁2bから通流路21に臨む放電針41、該放電針41を囲繞する誘導電極環42、放電針41及び誘導電極環42に電圧を印加する電圧印加部とを有し、電圧印加部が放電針41及び誘導電極環42に電圧を印加することにより、放電針41がコロナ放電し、イオンを発生するように構成されている。イオン発生部4は図6に示すように前後に離隔して対向配置されている。また、イオン発生部4は正イオンを発生する正イオン発生部4a及び負イオンを発生する負イオン発生部4bを有し、イオン発生部4,4夫々の正イオン発生部4a及び負イオン発生部4bが横方向にほぼ等距離で離隔して配されている。
【0029】
保持体5は、前後に離隔して対向配置される二つのイオン発生部4,4夫々を収容して保持する二つの保持部51,52及び該保持部51,52夫々を連結し、凹条部22に移動可能に支持される連結部53を有し、保持部51,52の二つの放電針41,41と対向する箇所に二つのイオン放出孔54,54が開設されており、イオン放出孔54,54同士が対向し、イオン放出孔54,54のほぼ中心に放電針41が配されている。
【0030】
一方の保持部51は連結部53と一体に成形され、該連結部53の先端に他方の保持部52が結合されている。連結部53内には他方の保持部52に保持されているイオン発生部4に給電するための導線及び該導線に接続されているコネクタが収容されている。一方の保持部51の連結部53側端部及び連結部53は、挿抜孔24から凹条部22に移動可能に挿嵌され、一方の保持部51が凹所25に収容され、通流路21の前後方向両側にイオン発生部4,4が対向配置されている。
【0031】
連結部53の保持部51側の端部には、凹所25内のコネクタ26に接続されるコネクタ55が設けられ、保持体5が挿抜孔24から凹条部22に挿嵌されたとき、コネクタ26,55同士が自動的に接続され、給電可能となるように構成されている。また、他方の保持部52の連結部側には把持用の把持部が設けられている。
【0032】
誘導体6は、イオン放出孔54,54の上端及び下端間の寸法よりも薄い厚さを有し、長孔23に横方向への移動を可能に挿嵌される板体により形成されている。誘導体6は、二つのイオン発生部4,4の離隔距離よりも若干短い幅(例えば約80%の幅)で、且つ通流路21の横方向幅よりも長く、横方向に離隔して並置されたイオン放出孔54,54のすべてを横断する長さを有し、長手方向基端側が移動手段7に連動連結されている。また、通流路21内の誘導位置へ進出移動したとき、通流路21の中央側を遮るとともに幅方向両側端がイオン発生部4,4夫々の放電針31と対向、換言するとイオン放出孔54,54の中心部と対向し、通流路21を通流する空気の一部が誘導体6に衝突して該空気を両側のイオン発生部4,4へ誘導し、該イオン発生部4,4の放電針41を掃除するようになし、通流路21から非誘導位置へ後退移動したとき、長手方向先端部だけが長孔23から通流路21に突出し、誘導体6が通流路21を通流する空気の通流抵抗にならないようになしてある。
【0033】
移動手段7は、ケーシング2の側壁2eとハウジング1との間の空間に装着され、正逆回転が可能な電動モータ71と、該電動モータ71の出力軸に連動連結され、弾性を有する転動体としての駆動輪72と、該駆動輪72に対向し、駆動輪72との間で誘導体6を弾性的に挾持する遊動輪73とを備え、電動モータ71の正回転により誘導体6を通流路21内の誘導位置へ進出移動させ、電動モータ71の逆回転により誘導体6を非誘導位置へ後退移動させるように構成されている。
【0034】
イオンの量を検出する検出部8は、イオン発生部4,4が発生し、通流路21を通流する空気中のイオンの量を検出するものであり、イオン吸着用の電極を有し、該電極の電圧の変化を検知することによりイオンの量を検出するように構成されており、通流路21におけるイオン発生部4及び吹出口12間の路壁に取付けられている。図6ではケーシング2における前壁2aの通風路21側に配されている。
【0035】
図7はイオン発生機の制御系の概略構成を示すブロック図である。CPU、プログラム等の情報を記憶するROM、一時的に発生した情報を記憶するRAM及び時間を計時するためのタイマを有する制御部90の入力部に、イオン発生機の運転/停止の入力操作を受け付けるための運転スイッチ91と、入力操作にてイオン発生部4の掃除を開始させるか又はタイマによる時間の計時が終了したとき、自動的にイオン発生部4の掃除を開始させるかを選択する運転モード選択スイッチ92と、時間の計時を始めるためのタイマスイッチ93と、イオンの量を検出する検出部8とが接続され、制御部90の出力部に、イオン発生部4の電圧印加部と、送風機3における電動モータ32の駆動回路と、移動手段7における電動モータ71の駆動回路と、操作の内容、運転状態等の情報を表示する表示部94とが接続されている。
【0036】
以上のように構成されたイオン発生機の運転動作について説明する。イオン発生機は吸込口11が壁側となるように居住室内の壁の近くに据えられる。操作部9に配置されている運転スイッチ91を操作することにより、イオン発生部4,4及び送風機3が運転を開始する。送風機3の羽根車31は、図2及び図5に示すように電動モータ32の出力軸を中心として反時計回りに回転する。羽根車31によって吸込口11からフィルタ13aを経て吸込まれた空気はケーシング2の湾曲誘導壁2cにより誘導されて上方の通流路21へ送出される。
【0037】
通流路21の路壁で、前後方向に離隔して対向する2箇所には、正イオン発生部4a及び負イオン発生部4bを有する二つのイオン発生部4,4を配してあるため、これらイオン発生部4,4が通流路21に沿って上方へ通流する空気中にイオンを発生させる。このイオンを含む空気が通流路21を上方へ通流し、吹出口12から居住室内に放出される。この際、イオン発生部4と吹出口12との間に配してある検出部8にてイオンの量を検出することができる。
【0038】
検出部8は、予め定められた時期にイオン検知電極に吸着したイオンの量から電圧の変化を検出し、その変化量から制御部90はイオン発生部4,4が正常に働いているか否かを判断する。即ち、イオン発生部4,4の起動直後に一定の期間イオン検出動作を行い、その電圧変化の平均値からイオン発生部4,4が正常運転しているか否かを判定する。また、イオン発生機の運転中も所定の時間間隔で検出を行う。検出部8の検出結果が所定値以下である場合、制御部90はイオン発生部4,4が正常運転でないことを判定し、移動手段7の電動モータ71を駆動する。
【0039】
イオン発生機を通常運転する場合、誘導体6は、移動手段7の電動モータ71によって通流路21の外側の非誘導位置に配置されて通流を妨げないようにされる。使用者の運転操作によってイオン発生機の運転が開始され、ケーシング2内に配されている送風機3の羽根車31が回転することによって、ハウジング1の吸込口11からケーシング2内に空気が吸込まれる。この吸込まれた空気は羽根車31にて通流路21へ送出され、イオン発生部4,4からイオンを付加される。イオンを付加された空気は、上部の吹出口12から居住室内に放出される。
【0040】
累積使用時間が長くなって、イオン発生部4,4の放電針41に異物が付着して放電を妨げ、イオンの発生量が減少することによって、検出部8がイオンの量を所定量検知することができなくなった場合、または、運転中定期的にイオン発生部4,4をメンテナンスする場合の動作ついて説明する。
【0041】
使用者の操作または制御部90の計時機能によって累積使用時間が設定時間に達した場合、移動手段7の電動モータ71が駆動され、清掃用の誘導体6が非誘導位置から誘導位置へ移動される。誘導体6は、前後方向に離隔して対向する2箇所のイオン発生部4,4の間に横方向への移動が可能に配されているため、誘導体6が通流路21へ進出移動することにより、通流路21のイオン発生部4間の中央側を遮る誘導位置に停止する。
【0042】
図8はイオン発生機の誘導体6の動作状態を示す説明図、図9はイオン発生機の誘導体6の動作で空気の通流が変化する状態を示す説明図である。送風機3が回転駆動されることによって通流路21へ送出された空気の一部は誘導体6に衝突し両側のイオン発生部4,4に向かって集中的に流動する。放電針41に付着する異物は吸込み空気中の埃等であり比較的簡単に除去できるものであるため、集中的に流動した空気によって付着物が放電針41からはがされ、吹出口12から排出される。誘導体6は、予め設定された時間の経過後に再び電動モータ71にて通流路21から非誘導位置へ後退移動し、通流路21での通流を妨げないようにされる。この間、付着した異物は極めて少量であるため、通常使用者が気付くことはないと思われるが、イオン発生部4,4の清掃中であることを表示手段で報知することが好ましい。表示手段としては、記号や文字表示を付したLEDの点滅もしくはブザー音等の手段が使用される。
【0043】
誘導体6は、使用者の利便性を考慮して、自動的に動作する構成とするのが好ましい。イオン発生機の起動時にイオンの量を検出し、その結果から判断して自動的に動作する構成とするのが使用者に対する負担を少なくすることができる。また、使用者の意向によって適宜動作できるように操作部9にスイッチを設けておくこともより一層好ましい。
【0044】
本実施の形態1では、誘導体6は移動手段7によって横方向へ移動する構成としたが、これに限定されるものでない。例えば、移動手段7を廃止し、誘導体6の一部をハウジング1の外部へ突出させ、ハウジング1の外部から使用者が手で直接誘導体6を駆動することができるようにしてもよい。いずれにしても、本発明の趣旨を理解して実現できるものであれば同等の効果を発揮する。
【0045】
実施の形態2
図10は本発明に係るイオン発生機の他の構成を示す断面図である。このイオン発生機は、誘導体6を横方向へ移動可能とする代わりに、通流路21に配される誘導体6aを枢軸61にて枢着し、該誘導体6aを枢動する電動モータを備え、枢動により回転方向へ移動する構成としたものである。
【0046】
誘導体6aはイオン放出孔54の上端及び下端間の寸法よりも薄い厚さを有し、略矩形をなす板体により形成されている。また、誘導体6aは、二つのイオン発生部4,4の離隔距離よりも若干短い幅で、且つ通流路21の横方向幅よりも若干短く、横方向に離隔して並置されたイオン放出孔54,54のすべてを横断する長さを有しており、保持部51,52と非対向の長手方向一端部が枢軸61に結合されている。
【0047】
枢軸61はケーシング2の後壁2bに支持され、後壁2bとハウジング1との間の空間に装着された電動モータの出力軸に連動連結されている。電動モータは正逆回転が可能であり、電動モータの正回転により誘導体6aを放電針41と対向する誘導位置(清掃位置)へ回動させ、電動モータの逆回転により誘導体6aを、羽根車31の周方向1箇所の接線3b方向となる非誘導位置(退避位置)へ回動させるように構成されている。
【0048】
この実施の形態2にあっては、検出部8が検出したイオンの検出値に基づいて電動モータが正回転し、図10実線の誘導位置(清掃位置)に誘導体6aが枢動される。送風機3が回転駆動されることによって通流路21へ送出された空気の一部は誘導体6aに衝突し両側のイオン発生部4,4に向かって集中的に流動する。この集中的に流動した空気によってイオン発生部4,4の放電針41部分を清掃することができる。
【0049】
放電針41部分を清掃した後、電動モータが逆回転し、清掃位置の誘導体6が図10鎖線の非誘導位置(退避位置)に枢動され、通流路21での通流を妨げないようにされる。
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。また、検出部8の検出結果を制御部90で判断して誘導体6を実施の形態1と同様に駆動する構成とすることも好ましい。さらには枢動用の電動モータを省いて、枢軸61の一端部をハウジング1の外部に突出させ、ハウジング1の外部から枢軸61を手で回動させ、誘導体6aを回動させることができるようにしてもよい。
【0050】
尚、以上説明した実施の形態では、横方向に離隔して対向する二つのイオン発生部4,4を備える構成としたが、その他、イオン発生部4は一つ又は三つ以上であってもよく、その個数は特に制限されない。また、イオン発生部4は通流路21を通流する空気の通流方向へ離隔して並置される複数を備える構成としてもよい。
【0051】
また、以上説明した実施の形態では、イオン発生部4の放電針41と離隔して対向する位置に誘導体6,6aを移動させる構成としたが、その他、誘導体6,6aは放電針41よりも送風機3側に配され、衝突した空気の一部を放電針41部へ誘導する構成としてもよい。また、誘導体6,6aは板状である他、非板状であってもよく、その形状は特に制限されない。
【0052】
また、以上説明した実施の形態では、駆動輪72及び遊動輪73を有する移動手段7が誘導体6を移動させる構成としたが、その他、電動モータの出力軸に繋がるピニオン及びラックを有する移動手段、又は電磁ソレノイドを有する移動手段が誘導体6を移動させる構成としてもよい。
【0053】
また、以上説明した実施の形態では、横方向への移動が可能な誘導体6、又は回転方向への移動が可能な誘導体6aを備える構成としたが、その他、誘導体は非移動の構成であってもよい。この場合、例えばイオン発生部4を保持する保持体5から放電針41と離隔して対向する側へ延出された比較的細い延出部の延出端に、比較的小形の誘導体を設け、通流路を上方へ通流する空気の一部が常時誘導体に衝突し、空気の一部を常時放電針41部に向かって流動させ、誘導体による通流抵抗を小さくするように構成する。
【0054】
また、本発明に係るイオン発生機は、冷房機能及び暖房機能の少なくとも一つを備える空気調和機に組み込まれてもよい。この場合、イオン発生機を備える空気調和機となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
イオン発生機を備える空気調和機において、イオンを発生する電極に直接触れることなく気流の力で電極に付着する塵埃を除去し、イオン発生部の放電が良好に保たれイオンの発生量を多く維持することができるようにしたので、比較的大型の施設に設置することも可能である。また、電極に直接触れることがないので電極の損壊を防止でき、耐久性を高めることができる。また、清掃作業が自動的に行われるので使用者のメンテナンス回数を減少することができる。
【符号の説明】
【0056】
21 通流路
23 長孔(孔)
24 挿抜孔(第2孔)
3 送風機
4 イオン発生部
5 保持体
51,52 保持部
53 連結部
6,6a 誘導体
7 移動手段
71 電動モータ
72 駆動輪(転動体)
8 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路、及び該通流路の路壁に装着され、イオンを発生させるイオン発生部を備えるイオン発生機において、前記空気の一部を前記イオン発生部に向けて誘導する誘導体を備えることを特徴とするイオン発生機。
【請求項2】
前記誘導体は、前記空気を誘導する誘導位置と非誘導位置との間で移動可能である請求項1記載のイオン発生機。
【請求項3】
前記イオン発生部が発生したイオンの量を検出する検出部を備える請求項2記載のイオン発生機。
【請求項4】
前記誘導体を移動させる移動手段及び前記検出部が検出した検出値が所定値以下のとき、前記移動手段を動作させるための制御部を備える請求項3記載のイオン発生機。
【請求項5】
前記路壁は、前記通流路に開口し前記誘導体を配してある孔を有し、前記移動手段は、前記誘導体に接触する転動体及び該転動体を回動させる電動モータを有する請求項4記載のイオン発生機。
【請求項6】
前記誘導体は前記路壁に枢着されており、前記移動手段は、前記誘導体を枢動する電動モータを有する請求項4記載のイオン発生機。
【請求項7】
前記路壁は、前記通流方向と交差する方向へ貫通する第2孔を有し、前記イオン発生部は、前記通流方向と交差する方向に離隔して複数配してあり、前記イオン発生部夫々を保持する二つの保持部及び該保持部夫々を連結する連結部を有し、前記第2孔に挿脱可能に挿嵌してある保持体を備える請求項2から6のいずれか一つに記載のイオン発生機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−29213(P2013−29213A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163622(P2011−163622)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】