説明

イオン発生機

【課題】イオンを発生するイオン発生装置と発生したイオンを空間に放出する送風装置とを備えたイオン発生機において、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を提供する。
【解決手段】送風ファンと、この送風ファンのファン吹出口に接続され気流の進行方向に向かって流路の断面形状が縮小する第一送風経路7aと、この第一送風経路に接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路7bと、この第二送風経路内にイオン発生装置5を備え、当該イオン発生装置が発生したイオンを送風ファンによって吹出口から送出するとともに、第二送風経路7bの最も下流側にイオン発生装置5のイオン発生部を配置したイオン発生機M1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを発生するイオン発生装置と発生したイオンを空間に放出する送風装置とを備えたイオン発生機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中に発生させたプラスイオン(正イオン)とマイナスイオン(負イオン)によって空気中に浮遊する細菌を殺菌しウィルスを不活化して、空気を清浄する作用が見出され、この技術を応用した空気清浄機などの製品が注目を集めている。
【0003】
例えば、大気中におけるコロナ放電によって、空気中に正イオンであるH+(H2O)m(mは任意の自然数)と、負イオンであるO2-(H2O)n(nは任意の自然数)を同等量発生させて放出することにより、両イオンが空気中の浮遊カビ菌やウィルスの周りを取り囲んで付着し、その際に反応生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により、前記浮遊カビ菌等を不活化することを可能とする研究開発がなされている。
【0004】
例えば、本出願人からも、正イオンと負イオンを安定して発生させることが可能なイオン発生素子やイオン発生装置などが既に出願されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
このようなイオン発生装置において、正負のイオンをバランスよく室内に送出することが求められる。そのためには、送風経路内に設置したイオン発生装置のイオン発生部に均等に気流が当たることが不可欠であるが、機器のデザイン面や大きさの面からの制限のために、理想的な配置ができない場合が生じる。そのような場合には、送風機下流の送風経路内に気流ガイドを設けて気流を導くことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−47651号公報
【特許文献2】特開2002−319472号公報
【特許文献3】特開2010−55960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、空気中に浮遊する細菌を殺菌しウィルスを不活化する所定の除菌効果と、空気を清浄する所定の効果を得るためには、所定のイオン濃度が必要であることが既に知られている。そのために、ただ単に、送風通路内にイオン発生装置を取り付けるだけでは、また、単に、送風経路内の気流を安定させるだけでは、送風経路内を流通する気流全体に一様に安定して所定濃度のイオンを供給することは困難であって、十分な除菌効果と空気清浄効果を得ることができない。
【0008】
また、正イオンと負イオンの両イオンを用いる場合には、それぞれのイオンを同時に、所定濃度で供給することが肝要であって、イオン発生装置のイオン発生面で発生させたイオンを、速やかに大量の空気流れに供給するとともに、供給された両イオン同士が衝突や中和等によりイオン濃度が低下しないようにして安定して搬送することが望まれる。
【0009】
例えば、送風装置下流に送風装置の吹出口と流路断面形状の異なる送風経路を設ける構造の場合、送風装置から送出した気流が送風経路内に十分拡大せず、渦を生じたり片寄ったりしてしまうという現象が発生する。特に、イオン発生装置を送風経路内に設けて、流通する気流によって発生したイオンを機外に送出するイオン発生機においては、イオン発生部で発生したイオンが十分に機外に送出されないといった不具合が発生する。
【0010】
そのために、送風装置を用いてイオン発生装置で発生した正負のイオンを送出するイオン発生機の場合は、気流の片寄りを抑制して送風経路内を流通させて、イオン発生部分で発生した正負の両イオンを十分に、また、均一に含んだ気流として吹出口から送出することが望ましく、生成したイオンを効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機であることが望まれる。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、イオンを発生するイオン発生装置と発生したイオンを空間に放出する送風装置とを備えたイオン発生機において、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、送風ファンと、この送風ファンのファン吹出口に接続され気流の進行方向に向かって流路の断面形状が縮小する第一送風経路と、この第一送風経路に接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路と、この第二送風経路に接続される本体吹出口とを備え、前記第二送風経路内にイオン発生装置を備えて、当該イオン発生装置が発生したイオンを前記送風ファンによって前記本体吹出口から送出するとともに、前記第二送風経路の最も下流側に前記イオン発生装置のイオン発生部を配置したイオン発生機としたことを特徴としている。
【0013】
この構成によると、流路の断面形状を縮小しているので、気流を所定方向に絞ることができ、この絞った送風経路の下流側にイオン発生部を配置することにより、流れの速い安定した気流にイオンを送出することができる。また、乱流等の気流の乱れによるイオンの消滅を減少することができ、発生したイオンを効率よく取り込むことが可能になる。すなわち、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として本体吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を得ることができる。
【0014】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記送風ファンはシロッコファンであり、前記第一送風経路は気流の進行方向に向かって前記シロッコファンの軸方向に、その吹出口高さが縮小されていることを特徴としている。この構成によると、シロッコファンから送出される風をファン吹出口の高さ方向に絞った空気流れを形成し、この絞った空気流れがある領域にイオン発生部を配置することにより、イオン発生部で発生したイオンを流れの速い安定した気流に送出することができる。
【0015】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記送風ファンはシロッコファンであり、前記第一送風経路は気流の進行方向に向かって前記シロッコファンの軸方向に垂直な面内で、前記シロッコファンのファン吹出口の幅よりも拡大されていることを特徴としている。この構成によると、送風経路の幅を広くすることができるので、この送風経路の幅方向に複数のイオン発生部を配置して、幅方向に一様な気流にイオンを均一に含ませて流通させることができる。すなわち、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として本体吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を得ることができる。
【0016】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記イオン発生装置は、所定間隔離間して設置される複数のイオン発生部を有し、この複数のイオン発生部の並び方向を前記送風経路の流通方向に交差する方向としたことを特徴としている。この構成によると、複数のイオン発生部で発生したイオンを送風経路の幅方向に略均等に含ませることができる。
【0017】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記イオン発生部は、正イオンを発生する正イオン発生部と負イオンを発生する負イオン発生部とを備え、前記イオン発生装置は、正イオンと負イオンを同時に発生することを特徴としている。この構成によると、複数のイオン発生部で発生した正負の両イオンを送風経路の幅方向に略均等に含ませて送出することができる。
【0018】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記正イオンはH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンはO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴としている。この構成によると、細菌を殺菌しウィルスを不活化する所定の除菌効果と、空気を清浄する所定の効果を発揮する所定の正負の両イオンを均一に拡散させて送出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流路の断面形状を縮小して所定方向に絞った送風経路の下流側にイオン発生部を配置したので、流れの安定した気流により発生したイオンを送出することができ、乱流等の気流の乱れによるイオンの消滅を減少することができ、発生したイオンを効率よく取り込むことが可能になる。すなわち、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を得ることができる。従って、イオン発生機外の空間に効率よく正負のイオンを拡散させることができる。この結果、浮遊カビ菌や細菌の殺菌、ウィルスやアレルゲンの不活性化、空間や物品の除電効果が良好に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るイオン発生機の外観斜視図である。
【図2】図1のイオン発生機が備えるイオン発生装置の外観斜視図である。
【図3】図1のイオン発生機の内部構造を示す概略説明図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】比較例のイオン発生機の内部構造を示す概略説明図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。また、同一構成部材については同一の符号を用い、詳細な説明は適宜省略する。まず本実施形態に係るイオン発生機の一例について、図1および図2を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るイオン発生機M1の外観斜視図であり、図2は、図1のイオン発生機M1が備えるイオン発生装置5の外観斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係るイオン発生機M1は、送風装置V1とイオン発生装置5を内蔵する装置全体を覆うカバー4と、吸込口1と吹出口2(本体吹出口)を備えている。吸込口1の周辺はフィルター9(図4参照)が嵌め込まれるための凹部となっている。また、側面部に操作部3を設けており、運転スイッチ等のスイッチと運転状態を表示する表示部を備える。
【0023】
イオン発生装置5は、イオン発生機本体に対して着脱自在な構成とされており、カバー4の切欠き部からその表面の一部が露出している。また、後述するように、本体の背面側には、送風装置V1が有する送風ファンや制御装置などの取付部や、イオン発生装置5を着脱するためのガイドなどが形成された背面カバー8(図4参照)を備えている。
【0024】
本実施形態に係るイオン発生装置5は、図2に示すように、正イオン発生部51a、52aと、負イオン発生部51b、52bとの複数のイオン発生部を備え、吸込口1から吸い込んだ空気に発生したイオンを含ませて、吹出口2から正負のイオンを含んだ空気を空間に放出する。
【0025】
イオン発生装置5は、例えば、同量の正イオンと負イオンを生成するイオン発生装置であって、正イオン発生部と負イオン発生部となる電極をそれぞれ備える。この電極には交流波形またはインパルス波形から成る電圧が印加される。電極の印加電圧が正電圧の場合はイオンが空気中の水分と結合して主としてH+(H2O)mから成る正イオンを発生する。電極の印加電圧が負電圧の場合はイオンが空気中の水分と結合して主としてO2-(H2O)nから成る負イオンを発生する。ここで、m、nは任意の自然数である。H+(H2O)m及びO2-(H2O)nは空気中の浮遊菌や臭い成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。
【0026】
そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH22(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭い成分を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。従って、正イオン及び負イオンを発生して吐出口から吐出することにより各貯蔵室の殺菌及び臭い除去を行うことができる。
【0027】
+(H2O)m+O2-(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ H22+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
【0028】
本実施形態に係るイオン発生装置5は、高圧発生回路等の制御部を収納する本体部50a、制御回路から高圧電気を印加されて正または負イオンを発生するイオン発生部51a、51b、52a、52b、これらのイオン発生部51a、51b、52a、52bを損傷から守り、ユーザー等が指先を怪我することを防止するガード50b、および、イオン発生装置5に電力を供給するとともに動作情報やID等の情報データを装置本体の制御装置と交換する端子部50cを備える。
【0029】
イオン発生部は、正イオン発生部が51a、52aの二か所、負イオン発生部が51b、52bの二か所設けられており、各々略同量の正イオンまたは負イオンを同時に発生している。イオン発生部で発生したイオンは、このイオン発生部を通過する気流によって機外に送出される。従って、正負のイオンを同等量で送出するためには、各々のイオン発生部を通過する気流も同等であることが要求される。
【0030】
次に、図3、図4を用いて装置本体内部の気流状態について説明する。図3は、イオン発生機M1の内部構造を示す概略説明図であり、図4は、図3のA−A断面図である。また、本実施形態では、送風ファンとしてシロッコファン6を用いている。シロッコファン6は、ファン6bと、この外側に気流をガイドするケーシング6aを備えている。ケーシング6aには、渦巻き部60a、のど部60b、ファン吹出口の一方の端部60c、直線部60d、ファン吹出口の他方の端部60eが設けられている。すなわち、直線部60dは、シロッコファン6を囲む渦巻き部60aと、この渦巻き部60aの外周部から接線方向に延設されファン吹出口に至る直線部分を指している。
【0031】
図3に示すように、シロッコファン6から送出される風は、拡幅される送風経路7(第一送風経路7a、第二送風経路7b)を介してイオン発生装置5のイオン発生部に供給され、吹出口2から吹き出される。すなわち、送風経路7は、シロッコファン6のファン6bの回転軸に垂直な面内で拡幅している第一送風経路7aと、この第一送風経路7aに接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路7bとを備え、この拡幅された第二送風経路7bに、気流の流通方向と直交する方向に所定間隔離れて複数のイオン発生部を配設するようにしてイオン発生装置5が設置されている。
【0032】
イオン発生装置5は、図4に示すように、ガード50bが背面カバー8側に位置するように(図2に示すイオン発生装置5の上下を逆にした状態に)配置され、イオン発生機5の正面側に配置された吸込口1から空気流れFL1として取り込まれた気流は、イオン発生装置5の本体部50aの面と背面カバー8との間に形成された送風経路(第一送風経路7a、第二送風経路7b)を通りイオン発生部を通過して、正負のイオンを含んだ状態で正面側に設けられた吹出口2から空気流れFL2として送出される。
【0033】
イオン発生装置5から発生するイオンは、正イオンがH+(H2O)m(mは任意の自然数)、負イオンがO2-(H2O)n(nは任意の自然数)となるように構成されており、両者のイオンは空気中に送出されることによって、空気中の浮遊細菌やウィルスに付着し、その際に起こる反応によって水酸基ラジカル(・OH)を生じ、その活性によって殺菌もしくは不活化する。
【0034】
図3に見るように、イオン発生装置5のイオン発生部の並び方向の寸法に比べて、シロッコファン6の吹出口寸法が小さく、シロッコファン6が吹出した気流を、イオン発生部51a、51b、52a、52bを包括する幅まで拡大する構造となっている。
【0035】
また、図4に見るように第一送風経路7aはシロッコファン6の吹出口高さが縮小されて高さの低い第二送風経路7bに接続している。すなわち、本実施形態に係るイオン発生機M1は、ファン吹出口に接続され気流の進行方向に向かって流路の断面形状が縮小する第一送風経路7aと、この第一送風経路7aに接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路7bと、この第二送風経路7bに接続される吹出口2(本体吹出口)とを備え、第二送風経路7bの最も下流側にイオン発生装置5のイオン発生部を配置した構成である。
【0036】
このように、第一送風経路7aは気流の進行方向に向かってシロッコファン6の軸方向に、その吹出口高さが縮小されているので、シロッコファン6から送出される風をファン吹出口の高さ方向に絞った空気流れを形成する。すなわち、この所定方向に絞った空気流れの下流側にイオン発生部を配置することにより、流れの速い安定した気流にイオンを送出することができ、イオン発生部で発生したイオンを効率よく拡散できる。
【0037】
シロッコファン6はケーシング6aの内部にファン6bを備え、さらにその中央部にモータ6cを備える。モータ6cは外側に回転子を持つ構造であり、回転子が直接ファン6bに固定され、中心部のコアは直接ケーシング6aに固定されている。
【0038】
ケーシング6aには、渦巻き部60a、のど部60b、ファン吹出口の一方の端部60c、直線部60d、ファン吹出口の他方の端部60eが設けられている。のど部60bは、渦巻き部60aの始点となる部分で、ファン6bとの間隔が最も狭く、ファン6bの円周方向に沿って移動する気流を堰き止め、ファン吹出口に向かわせる働きをする。渦巻き部60aはファン6bによって送り込まれてくる空気を集めてファン吹出口へ導く働きをする部分で、その半径を次第に拡大しながら直線部60dに繋がる。直線部60dは気流を整えて吹出させる働きをする。
【0039】
シロッコファン6は特性上ファン6bの接線方向に気流を送出するので、ファン吹出口の一方端でのど部60bに近いところにある端部60c近傍では、ファン6bと端部60cとを結ぶ接線の方向に気流が送出される。ファン吹出口の他方端で直線部60dに近い端部60eでは、直線部60dと略平行の気流が送出される。
【0040】
渦巻き部60aで集められた気流は、その遠心力のために外側に多く存在するため、ファン6bで吸い込まれた空気の多くが渦巻き部60aの内壁に沿って移動して直線部60dまで導かれ、ファン吹出口から前方に向けて送出される。このことから判るように、ファン吹出口から送出される気流は、直線部60dが長ければ長いほど、平行で方向性を持った気流となる。
【0041】
以上説明したようなシロッコファンの特性は、シロッコファン6のファン吹出口に接続されている送風経路がファン吹出口の幅と同じ程度の幅で形成される場合や、この幅方向にほんの少し広がっている場合には、ファン吹出口から送出された気流は送風経路の幅一杯に広がって進行するので特に問題はないが、本実施形態のように、シロッコファン6のファン吹出口の幅に対して送風経路の幅が大きく拡大されているような場合には、うまく送風経路内に広がらずに進行して、気流の片寄りが発生する。
【0042】
特に、直線部60dに近いファン吹出口の部分では気流が直進してしまうため、紙面の下方向に拡大された送風経路部分には気流が行き渡らないという不都合が生じる。このような状態で、送風経路中にイオン発生装置5を設置する場合、イオン発生部を通過する気流に片寄りがあるために、イオンが効率よく搬送されないことが起こる。特に、極性の異なるイオンを同時に発生させる場合には、両極性のイオンがバランスを崩す原因となってしまう。
【0043】
本実施形態は,シロッコファン6のファン吹出口がファン6bの軸方向(高さ方向)に縮小されつつ幅方向に拡大される構造であり、シロッコファン6による気流が第二送風経路7bに至る過程で複雑な気流状態を呈する。図4に示すように、空気はフィルター9を経由してシロッコファン6の吸込口1から吸い込まれ、ファン吹出口から送出されるが、ファン6bの中央にモータ6cがあるために、吸込口1からモータ6cの頂上部までに間に存在する翼には空気が潤沢に流れるのに対して、モータ6cの頂上部からモータ6cの下部に存在する翼には空気が侵入しにくい状況になっている。
【0044】
そのために、吸込口1に近いシロッコファン6のファン吹出口から送出される気流は速度が速く空気の量も多い。また、逆にモータ6cの頂上部よりも下部のシロッコファン6のファン吹出口から送出される気流は速度が遅く空気の量も少ない。
【0045】
また、本実施形態では、シロッコファン6に接続される第一送風経路7aの形状が、気流の速度が速いファン吹出口と接続する部分で気流方向を変更するような形状となっている。このような状態で、送風経路中にイオン発生装置を設置する場合、イオン発生部を通過する気流に片寄りがあるためにイオンが効率よく搬送されない場合が生じる。特に、極性の異なるイオンを同時に発生させる場合には、両極性のイオンがバランスを崩す原因となってしまう。
【0046】
本発明はこのような事態に対応するためになされたものであり、本発明を実施した場合の気流の状態について図4を用いて詳細に説明する。
【0047】
図4において、気流a1は最も速度が速い気流であり、ファン6bから送出されて第一送風経路7aの傾斜する壁に衝突し方向が変更される。方向変更された気流はそのまま傾斜した壁に沿って進行して第二送風経路7bへと流通する。気流a2は、気流a1の下部を平行に進行し、第一送風経路7aの傾斜する壁の下部に衝突して方向が変更される。
【0048】
しかし、気流a2は、その沿って進む壁の長さが短いので、気流a1ほどの方向性を持たない。また、気流a1よりも若干吸込口1から遠い位置にあるが、空気が潤沢に供給される領域にあるので速度は速い。
【0049】
気流a3は、モータ6cの頂上部よりも下側の気流で、気流a1、a2に比べて風量が少なく速度も遅いが、第一送風経路7aの傾斜する壁よりも下側にあるので、第二送風経路7bに向かって直進する。
【0050】
同様に気流a4も第二送風経路7bに向かって直進するが、気流a3よりも風量が少なく速度も遅い。気流a3、a4は速度の速い気流a1、a2と合流して速度が速くなって第二送風経路7bの下壁側をイオン発生装置5に向かって進行する。また、一方では、気流a1の速度が速いので、第一送風経路7aの傾斜する壁と第二送風経路7bとが接続される接続部では渦気流a5が発生する。
【0051】
上記したように、第一送風経路7aが気流の進行方向に向かって高さ方向で縮小し、幅方向で拡大するという形状となっているために、シロッコファン6が送出する気流は立体的な構成となり、第一送風経路7aと第二送風経路7bとが接続される接続部の正面側では、気流a1、気流a2が渦気流a5によって背面側に押しやられ、気流が絞られるとともに、ファン6bの軸と垂直な面内に拡幅される。
【0052】
これによって、第二送風経路7bの背面側の気流速度が速くなって、イオン発生部51a、51b、52a、52bを経由することが可能になる。すなわち、発生したイオンの多くが気流によって搬送され、吹出口2へ流れるイオン濃度が増加し、吹出口2から空間に効率よくイオンを拡散させることが可能になる。
【0053】
次に、図5、図6を用いて、本発明によらない比較例のイオン発生機M2について説明する。図5、図6の構造は、基本的に図3、図4と同じである。従って、同じ構成部品には同じ部番を付している。異なっているのは、イオン発生装置5の配設姿勢であり、イオン発生部51a、51b、52a、52bが第一送風経路7aと第二送風経路7bとの接続部に近いところに設置されている。すなわち、図3に示すイオン発生装置5を180°回転させて、左右を逆にして配設したものである。そのために、図3に示す図中の上側にあるイオン発生部52aが図5では図中の下側に配置されている。
【0054】
この場合の気流について考察すると、送風経路7の構成には変化がないので図4と同じとなる。すなわち、図6において、気流a1は空気が潤沢に供給され量も多く最も速度が速い気流であり、ファン6bから送出されて第一送風経路7aの傾斜する壁に衝突し方向が変更される。方向が変更された気流はそのまま傾斜した壁に沿って進行し第二送風経路7bに流通する。
【0055】
気流a2は、気流a1の下部を平行に進行し、第一送風経路7aの傾斜する壁の下部に衝突して方向が変更される。しかし、進行すべき壁の長さが短いので気流a1ほどの方向性を持たない。また、気流a1よりも若干吸込口1から遠い位置にあるが、空気が潤沢に供給される領域にあるので気流a1と同じように量も多く速度も速い。
【0056】
気流a3は、モータ6cの頂上部よりも下側の気流で、気流a1、a2に比べて風量が少なく速度も遅いが、第一送風経路7aの傾斜する壁よりも下側にあるので、第二送風経路7bに向かって直進する。
【0057】
同様に気流a4も第二送風経路7bに向かって直進するが、気流a3よりも風量が少なく速度も遅い。気流a3、a4は速度の速い気流a1、a2と合流して速度が速くなって第二送風経路7bの下壁側をイオン発生装置5に向かって進行する。また、一方では、気流a1の速度が速いので、第一送風経路7aの傾斜する壁と第二送風経路7bとが接続される接続部では渦気流a5が発生する。
【0058】
ここまでは、前述した図4に示すイオン発生機M1の気流状態と差はない。ただし、図6に示す比較例のイオン発生機M2では、イオン発生部が第一送風経路7aの下流側に近接して設置されている点が異なる。
【0059】
そのために、イオン発生装置5のイオン発生部51a、51b、52a、52bが、渦気流a5の発生する部位に配置される構成となり、発生したイオンが渦気流a5に囚われてうまく搬送されない事態に陥る。
【0060】
第一送風経路7aが気流の進行方向に向かって高さ方向で縮小し、幅方向で拡大するという形状となっているために、シロッコファン6が送出する気流は立体的な構成となり、さらにシロッコファン6の吹出口からの距離も短いことによって、気流がファン6bの軸と垂直な面内において十分に拡幅されないままイオン発生部51a、51b、52a、52bを通過するため、各々のイオン発生部を気流が同等に経由することが不可能になる。
【0061】
このため、イオン発生部51a、51b、52a、52bが発生したイオンの一部が気流によって十分に送出されず、イオン発生機全体として見た場合に、正イオンと負イオンのバランスが崩れた状態で作動するという結果が生じる。
【0062】
以上の比較から、送風装置下流の送風経路がその幅方向に急激に拡大され,この幅方向に複数のイオン発生部を配置するような構造においては、渦気流が発生する部位から離れた、流れの安定した送風経路内にイオン発生部を設置するようにしてイオン発生装置を配設することが好ましい。
【0063】
さらに、イオン発生部に高速で流れの安定した気流を流通させるためには、複数のイオン発生部を包含する幅に拡大することに加えて、送風装置下流の送風経路を、その高さ方向に縮小した断面形状として、この断面形状で延長した送風経路内にイオン発生部を配設することが好ましい。
【0064】
すなわち、ファン吹出口の高さ方向に縮小し幅方向に拡大した送風経路の最も下流側にイオン発生部を配置することで、流れの安定した気流により発生したイオンを均一に送出することができ、乱流等の気流の乱れによるイオンの消滅を減少することができ、発生したイオンを効率よく取り込むことが可能になる。
【0065】
また、本実施形態では、送風ファンとしてシロッコファンを用いているが、ターボファンであっても同じ効果を得ることができる。すなわち、送風ファンの吹出口と接続する送風経路の中で接続部近傍の乱流領域を避けて、送風経路内の接続部から離れた下流側にイオン発生部を配置することで、乱流等の気流の乱れによるイオンの消滅を減少することができる。
【0066】
上記したように、本発明によれば、ファン吹出口に接続され気流の進行方向に向かって流路の断面形状が縮小する第一送風経路と、この第一送風経路に接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路とを備え、第二送風経路の最も下流側にイオン発生装置のイオン発生部を配置した構成とすることで、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を得ることができる。特に、正負のイオン発生装置を搭載したイオン発生機において、イオン発生装置が発生した正負の両イオンを空気中にバランスよく送出することができる。
【0067】
従って、イオン発生機外の空間に効率よく正負のイオンを拡散させることができる。この結果、浮遊カビ菌や細菌の殺菌、ウィルスやアレルゲンの不活性化、空間や物品の除電効果を得ることができる。
【0068】
また、従来よりも効率よく空間に正負のイオンを拡散させることができるので、より小型の送風ファンを用いることができ、小型化による風切り音の低減を図りながら、正負のイオンをバランスよく放出して均一に拡散することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
そのために、本発明に係るイオン発生機は、細菌などの殺菌、ウィルスやアレルゲンなどの不活性化、空間や物品の除電効果などを発揮するための正負のイオンをバランスよく均一に送出することが求められるイオン発生機に好適に利用可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1 吸込口
2 吹出口(本体吹出口)
4 ケース
5 イオン発生装置
51a、52a 正イオン発生部
51b、52b 負イオン発生部
6 シロッコファン(送風ファン)
7 送風経路
7a 第一送風経路
7b 第二送風経路
V1 送風装置
M1 イオン発生機
FL1、FL2 空気流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ファンと、この送風ファンのファン吹出口に接続され気流の進行方向に向かって流路の断面形状が縮小する第一送風経路と、この第一送風経路に接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路と、この第二送風経路に接続される本体吹出口とを備え、
前記第二送風経路内にイオン発生装置を備えて、当該イオン発生装置が発生したイオンを前記送風ファンによって前記本体吹出口から送出するとともに、
前記第二送風経路の最も下流側に前記イオン発生装置のイオン発生部を配置したことを特徴とするイオン発生機。
【請求項2】
前記送風ファンはシロッコファンであり、前記第一送風経路は気流の進行方向に向かって前記シロッコファンの軸方向に、その吹出口高さが縮小されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生機。
【請求項3】
前記送風ファンはシロッコファンであり、前記第一送風経路は気流の進行方向に向かって前記シロッコファンの軸方向に垂直な面内で、前記シロッコファンのファン吹出口の幅よりも拡大されていることを特徴とする請求項2に記載のイオン発生機。
【請求項4】
前記イオン発生装置は、所定間隔離間して設置される複数のイオン発生部を有し、この複数のイオン発生部の並び方向を前記送風経路の流通方向に交差する方向としたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のイオン発生機。
【請求項5】
前記イオン発生部は、正イオンを発生する正イオン発生部と負イオンを発生する負イオン発生部とを備え、前記イオン発生装置は、正イオンと負イオンを同時に発生することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のイオン発生機。
【請求項6】
前記正イオンはH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンはO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴とする請求項5に記載のイオン発生機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−93175(P2013−93175A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233913(P2011−233913)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)