説明

イオン発生装置、イオン発生システム及び収納庫

【課題】小型で効率良くイオンを放出することができ、さらには直流電源で動作するイオン発生装置、イオン発生システム及び収納庫を提供する。
【解決手段】正イオン発生器30aは、高電圧発生部6から正の駆動電圧が印加されて正イオンを発生する。負イオン発生器30bは、高電圧発生部6から負の駆動電圧が印加されて負イオンを発生する。正イオン発生器30aが有する誘電電極32a及び負イオン発生器30bが有する誘導電極32bには、固定電位線43によって、共通の固定電位を与えられており、誘電電極32a及び誘導電極32bの電位が安定することよって、効率よくイオンを放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正イオン及び負イオンを効率良く発生するイオン発生装置、イオン発生システム及び収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、居住空間内の空気を清浄化するために、正(プラス)及び/又は負(マイナス)のイオンを発生させる装置に関する研究が盛んに行われている。例えば、空気清浄機では、装置内部に設けた通風路の途中に正及び負のイオンを発生するイオン発生器を配置し、通風路を流れる空気とともに、イオン発生器が発生したイオンを外部の空間へ放出するようにしている。
【0003】
一般的に、イオン発生器は、針状の放電電極と該放電電極に対向する誘導電極との間に高電圧を印加することによってコロナ放電を起こし、正イオン及び負イオンを発生する。イオン発生器で発生する正イオンは、例えばH+ (H2 O)m (mは任意の自然数)であり、負イオンは、例えばO2 - (H2 O)n (nは自然数)である。空気清浄機から放出された正イオン及び負イオンは、空気中の浮遊菌やカビ菌に付着して反応を起こし、そのときに発生する水酸基ラジカル(・OH)、及び過酸化水素(H2 2 )によって、浮遊菌やカビ菌を殺菌し、ウィルスを不活性化する効果があり、両極性のイオンがより高濃度で一様に存在するほど、その効果は高いとされている。
【0004】
特許文献1には、送風機と、正の電圧の印加により正イオンを発生する放電電極、及び負の電圧の印加により負イオンを発生する放電電極を有するイオン発生器とを備えた空気清浄機が記載されている。特許文献1に記載された空気清浄機では、イオン発生器により正イオン及び負イオンを交互に発生し、発生したイオンを送風機が送風する空気とともに外部へ吹き出して拡散することにより、正イオン及び負イオンを同時に発生させる場合に比べて、正イオン及び負イオンの結合によるイオンの消滅が抑制されるため、イオンの発生効率を高めることができ、外部の空気中におけるイオンの濃度を高めることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−243288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の空気清浄機は、イオン発生器が発生したイオンを外部へ放出するために送風機を備えるので、消費電力が大きくなるとともに、装置の外形寸法も大きくなり、設置場所が限定されてしまうという課題があった。
【0007】
そこで、装置の低消費電力化及び小型化のために、送風機を設けずにイオン発生装置で発生したイオンを外部へ放出するようにした場合、送風によるイオンの拡散がないため、正イオン及び負イオンを同時に発生させると、正イオン及び負イオンの結合によるイオンの消滅が生じ易くなり、外部の空気中へ効率良くイオンを放出することができない。
【0008】
このため、特許文献1に記載のように、正イオン及び負イオンを交互に発生させることが考えられる。しかし、設置場所の自由度を高めるために、電池等の直流電源を用いて高電圧駆動するようにしたイオン発生装置では、誘導電極を接地することなく高電圧駆動すると、帯電により誘導電極に電位が生じ、放電電極と誘電電極との間の電位差が不安定になり、イオンの発生効率が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型で効率良くイオンを放出することができ、さらには直流電源で動作するイオン発生装置、イオン発生システム及び収納庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るイオン発生装置は、正の駆動電圧が印加されて正イオンを発生する正イオン発生器と、負の駆動電圧が印加されて負イオンを発生する負イオン発生器とを備えるイオン発生装置において、前記正イオン発生器及び前記負イオン発生器が有する誘導電極に共通の固定電位を与える固定電位線を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るイオン発生装置は、直流電源から供給される直流電圧を変換して前記駆動電圧を発生する駆動電圧発生部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るイオン発生装置は、前記正イオン発生器及び前記負イオン発生器に交互に駆動電圧を印加する制御を行う制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るイオン発生システムは、上述のいずれか1つに記載のイオン発生装置を複数備えるイオン発生システムにおいて、複数の前記イオン発生装置夫々の固定電位線が、接続してあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るイオン発生システムは、複数の前記イオン発生装置のうち、一のイオン発生装置は、該一のイオン発生装置が備える正イオン発生器及び負イオン発生器のいずれに駆動電圧を印加しているかを示す信号を出力する出力手段を備え、他のイオン発生装置は、前記信号を取得する取得手段と、該取得手段により取得した前記信号が、正イオン発生器に駆動電圧を印加していることを示すときには、該他のイオン発生装置が備える負イオン発生器に駆動電圧を印加し、負イオン発生器に駆動電圧を印加していることを示すときには、該他のイオン発生装置が備える正イオン発生器に駆動電圧を印加するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る収納庫は、上述のいずれか1つに記載のイオン発生装置と、被収納物を収納する収納庫本体とを備える収納庫であって、前記イオン発生装置は、前記収納庫本体内にイオンを放出するようにしてあること特徴とする。
【0016】
本発明に係る収納庫は、上述のイオン発生システムと、被収納物を収納する収納庫本体とを備える収納庫であって、前記イオン発生システムは、前記収納庫本体内にイオンを放出するようにしてあること特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、正イオン発生器に正の駆動電圧を印加して正イオンを発生し、負イオン発生器に負の駆動電圧を印加して負イオンを発生し、固定電位線により、正イオン発生器及び負イオン発生器が有する誘導電極に共通の固定電位を与えるため、正イオン発生器及び負イオン発生器に印加される電位が安定し、効率良くイオンを放出する。
【0018】
本発明にあっては、直流電源から直流電圧が供給され、駆動電圧発生部により変換して駆動電圧を発生するため、装置の小型化を図ることができる。
【0019】
本発明にあっては、制御手段により正イオン発生器及び負イオン発生器に交互に駆動電圧を印加する制御を行うので、正イオン及び負イオンの結合によるイオンの消滅を抑制する。
【0020】
本発明にあっては、複数のイオン発生装置を備えるイオン発生システムにおいて、複数のイオン発生装置夫々の固定電位線が接続してあるため、正イオン発生器及び負イオン発生器に印加される電位が安定し、効率良くイオンを放出する。
【0021】
本発明にあっては、複数のイオン発生装置を備えるイオン発生システムにおいて、一のイオン発生装置が、出力手段により、正イオン発生器及び負イオン発生器のいずれに駆動電圧を印加しているかを示す信号を出力し、他のイオン発生装置は、取得手段により取得した該信号が、正イオン発生器に駆動電圧を印加していることを示すときには、該他のイオン発生装置が備える負イオン発生器に駆動電圧を印加し、負イオン発生器に駆動電圧を印加していることを示すときには、該他のイオン発生装置が備える正イオン発生器に駆動電圧を印加するように制御するため、1のイオン発生装置と他の1のイオン発生装置との間で接続線を介して帯電を打ち消し合い、効率よくイオンを放出する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、正イオン発生器に正の駆動電圧を印加して正イオンを発生し、負イオン発生器に負の駆動電圧を印加して負イオンを発生し、固定電位線により、正イオン発生器及び負イオン発生器が有する誘導電極に共通の固定電位を与えるので、正イオン発生器及び負イオン発生器に印加される電位が安定し、効率良くイオンを放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置を搭載する収納庫の構成を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
【図3】イオン発生装置の放電電極に印加される駆動電圧を示す模式図である。
【図4】イオン発生装置の一実施例を示す外観図である。
【図5】イオン発生装置の他の一実施例を示す外観図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るイオン発生システムを搭載する収納庫の構成を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るイオン発生システムの構成を示すブロック図である。
【図8】イオン発生システムにおける各放電電極に印加される駆動電圧を示す模式図である。
【図9】イオン発生システムにおけるイオン発生装置が発生するイオンを示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置を搭載する収納庫の構成を示す縦断側面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る正イオン発生部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
【図13】イオン発生装置における各放電電極に印加される駆動電圧を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置1を搭載する収納庫100の構成を示す縦断側面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態では、収納庫100が衣類を吊り下げて収納する衣類収納庫である例を示す。
【0025】
収納庫100は、イオン発生装置1と、収納庫本体2とを備える。収納庫本体2は、前扉2a、背板2b、天板2c、底板2d、ハンガーポール2e、側板(図示略)を備える箱体であり、ハンガーポール2eには衣類Cが掛けられている。イオン発生装置1は、例えば、図1に示すように天板2cの下面に配置する。イオン発生装置1のその他の配置場所としては、底板2dの上面、背板2bの内側上部(又は下部)、扉2aの内側上部(又は下部)、側板の内側上部(又は下部)などが考えられる。収納庫100は、図1に示す衣類収納庫に限られず、靴を収納する収納庫である下駄箱、衣類を折り畳んで収納する収納庫である収納ケース及びタンス等、食品を保管する収納庫である食品保管庫、さらに、書類を保管する収納庫である本棚及びラック等、その他の被収納物を収納するものであればよい。
【0026】
イオン発生装置1は、正イオンを発生する正イオン発生器30a、負イオンを発生する負イオン発生器30b、電源から各部へ電力を供給する電源部4、正イオン発生器30a及び負イオン発生器30bがイオンを発生するタイミングを制御する制御回路部5、正イオン発生器30a及び負イオン発生器30bに高電圧の駆動電圧を印加する高電圧発生部6、基準電位信号及びタイミング信号を入出力するインタフェース7(以下、IF7と表記する)、筐体8を備えている。
【0027】
正イオン発生器30aは、放電電極31a、誘導電極32aを備え、正イオンを発生する。放電電極31aは、例えば針形状の電極であり、高電圧発生部6から正の駆動電圧が印加されることによりコロナ放電を起こし、正イオンを発生する。誘導電極32aは、例えば導電性を有する平板形状の電極であり、放電電極31aに対向して設けられ、放電電極31aによるコロナ放電時の電界を安定化させる。また、負イオン発生器30bは、放電電極31b、誘導電極32bを備え、負イオンを発生する。放電電極31bは、例えば針形状の電極であり、高電圧発生部6から負の駆動電圧が印加されることによりコロナ放電を起こし、負イオンを発生する。誘導電極32bは、例えば導電性を有する平板形状の電極であり、放電電極31bに対向して設けられ、放電電極31bによるコロナ放電時の電界を安定化させる。なお、誘電電極32a及び誘電電極32bは、夫々個別の電極であってもよいし、一体の電極であってもよい。
【0028】
電源部4は、電池等の直流電源41、該直流電源41の出力電圧を制御回路部5及び高電圧発生部6への入力電圧に変換する電圧変換回路42、基準電位線43を備えている。直流電源41には、例えば単4乾電池×2本、単3乾電池×2本、リチウムイオン充電池等の各種電池を用いる。また、直流電源41を電源部4に内蔵せずに、イオン発生装置1の外部に設けてある直流電源から電源部4へ直流電圧を供給する構成としてもよい。電圧変換回路42は、DC/DC変換器であり、直流電源41の出力電圧を制御回路部5及び高電圧発生部6への入力電圧に変換する。基準電位線43は、例えば直流電源41の負極側に接続されており、正イオン発生器30aの誘電電極32a及び負イオン発生器30bの誘電電極32bに基準となる固定電位を与える。また、基準電位線43は、直流電源41の負極と正極との間の電圧を分圧した所定電位(負極に対する電位)に接続されるものであってもよい。
【0029】
制御回路部5は、パルス発生回路51、同期回路52、スイッチ53を備え、例えばマイコン回路等により構成する。パルス発生回路51は、正イオン発生器30aから正イオンを発生させる正駆動パルス信号、及び負イオン発生器30bから負イオンを発生させる負駆動パルス信号を発生する。駆動パルス信号は、例えば16ミリ秒周期のパルス信号であり、後述の高電圧発生部6内のスイッチ62a及びスイッチ62bをオン/オフする。同期回路52は、スイッチ53において主系設定がされている場合には、同期のためのタイミング信号を生成して出力し、従系設定がされている場合には、タイミング信号を取得して同期をとる。
【0030】
具体的には、同期回路52は、スイッチ53が主系設定の場合、パルス発生回路51が発生する正駆動パルス信号及び負駆動パルス信号に基づき、正イオン発生器30a及び負イオン発生器30bのいずれに駆動電圧が印加されているかを示すタイミング信号を生成してIF7へ出力する。例えば、タイミング信号は、正イオン発生器30aに駆動電圧が印加されているときに「ハイ」の値をとり、負イオン発生器30bに駆動電圧が印加されているときに「ロー」の値をとる信号とする。同期回路52は、スイッチ53が従系設定の場合、IF7からタイミング信号を取得し、タイミング信号に基づきパルス発生回路51に正駆動パルス信号及び負駆動パルス信号を生成するタイミングを与える。タイミング信号は、例えば、一つのイオン発生装置1で、正イオンを数ミリ秒〜数秒発生させた後、負イオンを数ミリ秒〜数秒発生させる周期を繰り返す周期信号である。
【0031】
スイッチ53は、例えば、スライドスイッチであり、ユーザが主系又は従系の設定操作をする。複数のイオン発生装置1をIF7により接続して使用する場合には、各イオン発生装置1にてスイッチ53を主系又は従系に設定し、イオン発生装置1を単体で使用する場合には、スイッチ53を主系に設定する。
【0032】
高電圧発生部6は、高圧トランス61a,61b、スイッチ62a,62b、整流ダイオード63a,63bを備え、制御回路部5からの正駆動パルス信号及び負駆動パルス信号に基づいて、高圧トランス61a,61bで夫々正及び負方向に振動する波形のインパルス状電圧を発生し、整流ダイオード63a,63b等で整流して、正の高電圧、或いは負の高電圧をイオン発生器30a,30bに出力する。
【0033】
高圧トランス61a,61bは、1次側巻線の一端を電源部4からの直流電圧出力に接続し、他端にスイッチ62a,62bを接続し、2次側巻線の一端を放電電極31a,31bを接続し、他端を誘導電極32a,32bに接続してある。スイッチ62a,62bによるオン/オフ動作により、1次側巻線に印加される直流電圧を昇圧し、2次側巻線に接続された正イオン発生器30a及び負イオン発生器30bに高圧の駆動電圧を印加する。
【0034】
整流ダイオード63aは、アノードを高圧トランス61aの2次側巻線の一端に接続し、カソードを放電電極31aに接続してある。従って、整流ダイオード63aのアノードを接続した2次側巻線の一端に正の電圧が生じたときに電流が流れ、放電電極31aに正の高電圧が印加される。整流ダイオード63bは、カソードを高圧トランス61bの2次側巻線の一端に接続し、アノードを放電電極31bに接続してある。従って、整流ダイオード63bのカソードを接続した2次側巻線の一端に負の電圧が生じたときに電流が流れ、放電電極31bに負の高電圧が印加される。
【0035】
スイッチ62a,62bはMOS FETであり、ドレイン端子が高圧トランスの一次側巻線の他端に接続され、ソース端子が基準電位線43に接続され、ゲート端子が制御回路部5のパルス発生回路51のパルス出力端子にされている。スイッチ62aのゲート端子にパルス発生回路51からの正駆動パルス信号が入力し、スイッチ62aがオン/オフする。また、スイッチ62bのゲート端子にパルス発生回路51からの負駆動パルス信号が入力し、スイッチ62bがオン/オフする。
【0036】
IF7は、基準電位線43が接続された基準電位用端子と、同期回路52が接続された同期用端子を備え、これらの端子により、他のイオン発生装置1が接続される。筐体8は、電源部4、制御回路部5、高電圧発生部6、正イオン発生器30a、負イオン発生器30b等を内蔵し、正イオン発生器30aの放電電極31a、及び負イオン発生器30bの放電電極31bを外部に露出させるための開口部81,81を有する。また、筐体8の側面にはIF7、及びスイッチ53が配してある。
【0037】
次に、イオン発生装置1の動作について説明する。制御回路部5は、パルス発生回路51から出力する正駆動パルス信号及び負駆動パルス信号により、正イオン発生器30a及び負イオン発生器30bに正イオン及び負イオンを交互に発生するように制御する。図3は、イオン発生装置1の放電電極31a,31bに印加される駆動電圧を示す模式図である。図3中A段は放電電極31aに印加される駆動電圧の波形を、B段は放電電極31bに印加される駆動電圧の波形を夫々模式的に示したものであり、横軸は時間経過を示す。制御回路部5は、正駆動パルス信号によりスイッチ62aをオン状態、負駆動パルス信号によりスイッチ62bをオフ状態にし、高圧トランス61aの2次側に高電圧を発生させ、整流ダイオード63aにより放電電極31aに正の駆動電圧(例えば+5kV)を印加する。続いて、制御回路部5は、正駆動パルス信号によりスイッチ62aをオフ状態、負駆動パルス信号によりスイッチ62bをオン状態にし、高圧トランス61bの2次側に高電圧を発生させ、整流ダイオード63bにより放電電極31bに負の駆動電圧(例えば−5kV)を印加する。これを繰り返すことにより、図3中A段に示す放電電極31aへの正の駆動電圧の印加と、図3中B段に示す放電電極31bへの負の駆動電圧の印加とが交互に行われる。
【0038】
正イオン発生器30aは、正の駆動電圧が放電電極31aに印加されると、放電電極31aと誘導電極32aとの間でコロナ放電を起こし、正イオンであるH+ (H2 O)m (mは任意の自然数)を発生する。また、負イオン発生器30bは、負の駆動電圧が放電電極31bに印加されると、放電電極31bと誘導電極32bとの間でコロナ放電を起こし、負イオンであるO2 - (H2 O)n (nは自然数)を発生する。図3に示すように放電電極31aへの正の駆動電圧の印加と、放電電極31bへの負の駆動電圧の印加が交互に行われることにより、正イオンと負イオンが交互に発生し、開口部81から放出される。
【0039】
図1に示すように、イオン発生装置1が収納庫100の天板2c下面に配置してある場合は、正イオン及び負イオンは、収納庫100の上部空間20aに放出され、前側中段空間20b及び後側中段空間20c、さらには下部空間20dへと拡散される。通常、収納庫100内部は、前扉2aが閉じられることにより閉空間となっているから、イオン発生装置1からイオンを放出し始めたときには、上部空間20aと下部空間20dとでイオン濃度に差が生じるが、時間の経過に従ってイオン濃度の差は減少していく。
【0040】
本実施形態においては、誘導電極32a及び誘導電極32bが、基準電位線43に接続されているため、誘導電極32a及び誘導電極32bは、帯電が互いに打ち消し合って電位の変動が抑制され、基準電位に保たれる。従って、駆動電圧が印加されたときの放電電極31aと誘電電極32aとの間の電位差、及び放電電極31bと誘電電極32bとの間の電位差が安定するので、効率よく安定してイオンを発生し、放出することができる。さらには、各放電電極に各々逆極性の高電圧を印加することにより、電界強度が倍増するため、正イオン及び負イオンの放出が良好になり、収納庫100内のイオン濃度を高めることができる。また、空気を送風する送風機を用いていないので、イオン発生装置1を小型化することができる。
【0041】
また、直流電源41から供給される直流電圧を高電圧発生部6により変換して駆動電圧を発生するので、外付け又は内蔵の電池等を用いることができ、イオン発生装置1を設置する場所の自由度を高めることができる。
【0042】
図4は、イオン発生装置1の一実施例を示す外観図であり、図5は、イオン発生装置1の他の一実施例を示す外観図である。図4に示すイオン発生装置1の実施例では、電池を除いた外径寸法が、W58mm×H24mm×D30mmで、直径9mmの開口部81が約20mm隔てて配置され、イオン発生器部分は、針電極型の電極構造を有する。また、図5に示すイオン発生装置1の実施例では、電池を除いた外径寸法が、W77mm×H8mm×D21mmで、直径6mmの開口部81が約20mm隔てて配置されている。いずれの実施例においても、筐体8内に、正イオン発生器30a、負イオン発生器30b、高電圧発生部6、制御回路部5、電源部4(直流電源41を除く)等を備えている。これらの実施例のとおり、イオン発生装置1にかかわる本体部分は、十分に小型化することができて、設置場所の自由度も高く、収納庫100内に配置できる好適なサイズとなる。
【0043】
次に、複数のイオン発生装置1を接続してイオン発生システム10として使用する場合について説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係るイオン発生システム10を搭載する収納庫100の構成を示す縦断側面図である。図7は、本発明の実施の形態1に係るイオン発生システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態では、2つのイオン発生装置1を夫々の放電電極が向い合うように収納庫100内の天板2c下面と底板2d上面とに配置し、基準電位線及びタイミング信号を接続線9により接続している。
【0044】
2つのイオン発生装置1は、天板2c下面に配置したイオン発生装置1における正イオン発生器30aの放電電極31aと、底板2d上面に配置したイオン発生装置1における負イオン発生器30bの放電電極31bとが対向し、天板2c下面に配置したイオン発生装置1における負イオン発生器30bの放電電極31bと、底板2d上面に配置したイオン発生装置1における正イオン発生器30aの放電電極31aとが対向するように配置する。
【0045】
2つのイオン発生装置1は、夫々正イオン発生器30a及び負イオン発生器30bを有するが、単独のイオン発生器を有するイオン発生装置1を2つ接続し、夫々のイオン発生器の放電電極に正の高電圧と負の高電圧とを交互に印加することによって正イオンと負イオンを交互に発生する構成としたイオン発生システムを使用してもよい。
【0046】
2つのイオン発生装置1における基準電位線43,43は、IF7,7を介して基準電位接続線91によって接続してある。また、タイミング信号接続線92により、2つのイオン発生装置1における制御回路部5,5間でタイミング信号の入出力を行う。ユーザの操作により一方のイオン発生装置1におけるスイッチ53を主系に設定し、他方のイオン発生装置1におけるスイッチ53を従系に設定することにより、一方のイオン発生装置1の制御回路部5からタイミング信号が出力され、他方のイオン発生装置1の制御回路部5は該タイミング信号を取得する。
【0047】
図8は、イオン発生システム10における各放電電極に印加される駆動電圧を示す模式図である。図8中A段及びB段は、図6に示す収納庫100の天板2c下面に配置したイオン発生装置1に印加される駆動電圧の波形を模式的に示したものであり、横軸は時間経過を示す。また、C段及びD段は、底板2d上面に配置したイオン発生装置1に印加される駆動電圧の波形を模式的に示したものである。A段及びC段は、放電電極31a,31aに印加される駆動電圧を示しており、B段及びD段は放電電極31b,31bに印加される電圧を示している。
【0048】
図9は、イオン発生システム10におけるイオン発生装置1,1が発生するイオンを示す模式図である。図9中E段は、収納庫100の天板2c下面に配置したイオン発生装置1が発生するイオンを模式的に示したものであり、横軸は時間経過を示す。F段は、底板2d上面に配置したイオン発生装置1が発生するイオンを模式的に示したものである。図9中E段及びF段に示すように、2つのイオン発生装置1は夫々正イオン及び負イオンを交互に発生し、天板2c下面に配置したイオン発生装置1から正イオンを発生しているときに、同時に底板2d上面に配置したイオン発生装置1から負イオンを発生し、天板2c下面に配置したイオン発生装置1から負イオンを発生しているときには、同時に底板2d上面に配置したイオン発生装置1から正イオンを発生するように、タイミング信号に基づいて制御を行う。
【0049】
例えば、天板2c下面に配置したイオン発生装置1が発生したイオンは、放電電極31a又は放電電極31bの先端から収納庫100内の空間に向かって放出され、天板2c下面に配置したイオン発生装置1における放電電極31aと、底板2d上面に対向して配置されているイオン発生装置1の放電電極31bとの間に形成される電界、又は、天板2c下面に配置したイオン発生装置1における放電電極31bと、底板2d上面に対向して配置されているイオン発生装置1の放電電極31aとの間に形成される電界によって、底板2d上面に配置されたイオン発生装置1に向かって移動する。
【0050】
同様に、底板2d上面に配置したイオン発生装置1が発生したイオンは、放電電極31a又は放電電極31bの先端から収納庫100内の空間に向かって放出され、底板2d上面に配置したイオン発生装置1における放電電極31aと、天板2c下面に対向して配置されているイオン発生装置1の放電電極31bとの間に形成される電界、又は、底板2d上面に配置したイオン発生装置1における放電電極31bと、天板2c下面に対向して配置されているイオン発生装置1の放電電極31aとの間に形成される電界によって、天板2c下面に配置されたイオン発生装置1に向かって移動する。
【0051】
本実施形態におけるイオン発生システム10では、2つのイオン発生装置において夫々正イオン及び負イオンを交互に発生させることにより、一つのイオン発生装置1から正負イオンを同時に発生する場合において課題となっていた放出直後の正イオン及び負イオンの結合を抑制できる。
【0052】
また、本実施形態におけるイオン発生システム10では、天板2c下面に配置したイオン発生装置1から正イオンを発生しているときに、同時に底板2d上面に配置したイオン発生装置1から負イオンを発生し、天板2c下面に配置したイオン発生装置1から負イオンを発生しているときには、同時に底板2d上面に配置したイオン発生装置1から正イオンを発生するように、タイミング信号に基づいて制御を行う。これにより、天板2c下面に配置したイオン発生装置1と、底板2d上面に配置したイオン発生装置1との間に形成される電界の効果によって、収納庫100内部の空間に正イオンと負イオンを効率良く発生し、拡散させることができる。
【0053】
なお、正イオン及び負イオンを発生する比率(タイミング信号の「ハイ」値及び「ロー」値の比率に等しい)及び周期、並びに高電圧発生部駆動パルスの周期等は、イオン発生システム10を設置する収納庫100内の空間によって、目標とするイオン濃度、イオンバランスになるように、任意に調整、設定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、2つのイオン発生装置1の基準電位を接続して正イオン及び負イオンを交互に発生するので、単独のイオン発生装置1によって正イオン及び負イオンを交互に発生する場合に比べて、各誘導電極及び基準電位線等の帯電を互いに打ち消し合う。このため、2つのイオン発生装置1の基準電位が同じ電位レベルに制御され、各放電電極で発生するイオン量のバランスを取ることができ、各放電電極及び各誘導電極が形成する電界が安定するとともに、正イオン及び負イオンの放出が安定する効果が得られる。さらに、本実施形態では、向い合った放電電極に逆極性の高電圧を印加することにより、単独のイオン発生装置1により正イオン及び負イオンを交互に発生する場合に比べて、電界が倍増するため、イオンの放出が加速され、収納庫100内のイオン濃度を高めることができる。
【0055】
また、前扉2aおよび背板2bに夫々イオン発生装置1を配置してイオン発生システム10を構成し、各イオン発生装置1から夫々正イオン及び負イオンを交互に発生するようにしてもよい。同様に、左右の側板に夫々イオン発生装置1を配置してイオン発生システム10を構成し、各イオン発生装置1から夫々正イオン及び負イオンを交互に発生するようにしてもよい。
【0056】
本実施形態の収納庫100では、収納庫100内に多くの衣類Cが吊るされて収納されていると、イオンが自由に拡散できる空間は、前扉2aと衣類Cとの間の前側中段空間20b、背板2bと衣類Cとの間の後側中段空間20c、および衣類Cと右側板または左側板との間の空間に限られる。天板2c下面に配置されたイオン発生装置1と底板2d上面に配置されたイオン発生装置1とが互いに逆極性の高圧の駆動電圧を印加されて形成する電界によるイオンの加速によって、イオンが狭い空間を長い距離移動することが可能となる。
【0057】
発明者らの実験によると、単独のイオン発生装置1から送風等を伴わないでイオンを放出した場合には、イオンは自らの放電電極近傍で形成される電界によって数十cm飛行するものの、更にその遠方へは拡散現象によって到達することとなる。したがって、本実施形態に例示する衣類の収納庫100のように空間内に多くの障害物が存在し、かつ距離が長い場合には、その空間に十分にイオンを拡散させることが困難となるが、本発明に係るイオン発生システム10によれば、上述のように対向配置したイオン発生装置1が形成する電界によって、イオンの拡散を促進させることができる。
【0058】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置1は、正イオンを発生する正イオン発生部1aと、負イオンを発生する負イオン発生部1bと、接続線9とを備えている。正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bは、夫々単極性のイオンを発生する。図10は、本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置1を搭載する収納庫100の構成を示す縦断側面図である。図11は、本発明の実施の形態2に係る正イオン発生部1aの構成を示すブロック図である。図12は、本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態では、収納庫100が衣類を吊り下げて収納する衣類収納庫である例を示す。
【0059】
正イオン発生部1aは、収納庫100の天板2c下面に配置され、負イオン発生部1bは、収納庫100の底板2d上面に配置されている。正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bのその他の配置場所としては、背板2bの内側上部(又は下部)、扉2aの内側上部(又は下部)、側板の内側上部(又は下部)などが考えられる。また、正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bを対向させて、前扉2a及び背板2bに配置してもよいし、されるように、左右の側板に配置してもよい。
【0060】
正イオン発生部1aは、正イオンを発生する正イオン発生器30a,30a、電源から各部へ電力を供給する電源部4、正イオン発生器30a,30aがイオンを発生するタイミングを制御する制御回路部5、正イオン発生器30aに正の駆動電圧を印加する高電圧発生部6、基準電位信号及びタイミング信号を入出力するIF7、筐体8aを備えている。負イオン発生部1bは、負イオン発生器30b,30b、負イオン発生器30bに負の駆動電圧を印加する高電圧発生部6を備えるほか、正イオン発生部1aと同等の構成となっている。以下では、主として正イオン発生部1aについて説明する。
【0061】
正イオン発生器30a,30aは、ともに放電電極31a、誘導電極32aを備え、正イオンを発生する。放電電極31a,31aは、例えば針形状の電極であり、高電圧発生部6から正の駆動電圧が印加されることによりコロナ放電を起こし、正イオンを発生する。誘導電極32a,32aは、例えば導電性を有する平板形状の電極であり、放電電極31a,31aに対向して設けられ、放電電極31a,31aによるコロナ放電時の電界を安定化させる。なお、誘電電極32a,32aは、夫々個別の電極であってもよいし、一体の電極であってもよい。誘電電極32a,32aには、電源部4が有する基準電位線43により基準となる固定電位が与えられる。
【0062】
制御回路部5は、パルス発生回路51、同期回路52、スイッチ53を備え、例えばマイコン回路等により構成する。パルス発生回路51は、正イオン発生器30a,30aから正イオンを発生させる正駆動パルス信号を発生する。なお、負イオン発生部1bにおいては、パルス発生回路51は、負イオン発生器30b,30bから負イオンを発生させる正駆動パルス信号を発生する。同期回路52は、スイッチ53において主系設定がされている場合には、同期のためのタイミング信号を生成して出力し、従系設定がされている場合には、タイミング信号を取得して同期をとる。
【0063】
具体的には、同期回路52は、スイッチ53が主系設定の場合、パルス発生回路51が発生する正駆動パルス信号(負イオン発生部1bでは負駆動パルス信号)に基づき、正イオン発生器30a,30aに駆動電圧が印加されているタイミングを示すタイミング信号を生成してIF7へ出力する。例えば、タイミング信号は、正イオン発生器30aに駆動電圧が印加されているときに「ハイ」の値をとり、正イオン発生器30aに駆動電圧が印加されていないときに「ロー」の値をとる信号とする。同期回路52は、スイッチ53が従系設定の場合、IF7からタイミング信号を取得し、タイミング信号に基づきパルス発生回路51に正駆動パルス信号(負イオン発生部1bでは負駆動パルス信号)を生成するタイミングを与える。
【0064】
高電圧発生部6は、高圧トランス61a、スイッチ62a、整流ダイオード63aを備え、制御回路部5からの正駆動パルス信号に基づいて、高圧トランス61aで正及び負方向に振動する波形のインパルス状電圧を発生し、整流ダイオード63a等で整流して、正の高電圧を正イオン発生器30a,30aに出力する。
【0065】
高圧トランス61aは、1次側巻線の一端を電源部4からの直流電圧出力に接続し、他端にスイッチ62aを接続し、2次側巻線の一端を放電電極31a,31aを接続し、他端を誘導電極32a,32aに接続してある。スイッチ62aによるオン/オフ動作により、1次側巻線に印加される直流電圧を昇圧し、2次側巻線に接続された正イオン発生器30a,30aに高圧の駆動電圧を印加する。
【0066】
整流ダイオード63aは、アノードを高圧トランス61aの2次側巻線の一端に接続し、カソードを放電電極31a,31aに接続してあり、負イオン発生部1bでは、カソードを高圧トランスの2次側巻線の一端に接続し、アノードを放電電極31b,31bに接続してある。
【0067】
IF7は、基準電位線43が接続された基準電位用端子と、同期回路52が接続された同期用端子を備え、これらの端子により、正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bが接続線9により接続される。筐体8aは、電源部4、制御回路部5、高電圧発生部6、正イオン発生器30a、30a等を内蔵し、正イオン発生器30a,30aの放電電極31a,31aを外部に露出させるための開口部81,81を有する。また、筐体81の側面にはIF7、及びスイッチ53が配してある。
【0068】
イオン発生装置1は、天板2c下面に配置した正イオン発生部1aの放電電極31a,31aと、底板2d上面に配置した負イオン発生部1bの放電電極31b,31bとが対向するように配置してある。
【0069】
正イオン発生部1aの基準電位線43と負イオン発生部1bの基準電位線43は、IF7,7を介して基準電位接続線91によって接続してある。また、タイミング信号接続線92により、正イオン発生部1aの制御回路部5及び負イオン発生部1bの制御回路部5間でタイミング信号の入出力を行う。ユーザの操作により一方のイオン発生部におけるスイッチ53を主系に設定し、他方のイオン発生部におけるスイッチ53を従系に設定することにより、一方のイオン発生部の制御回路部5からタイミング信号が出力され、他方のイオン発生部の制御回路部5は該タイミング信号を取得する。
【0070】
次に実施の形態2に係るイオン発生装置1の動作について説明する。図13は、イオン発生装置1における各放電電極に印加される駆動電圧を示す模式図である。図13中A段は、収納庫100の天板2c下面に配置した正イオン発生部1aに印加される駆動電圧の波形を模式的に示したものであり、横軸は時間経過を示す。また、B段は、底板2d上面に配置した負イオン発生部1bに印加される駆動電圧の波形を模式的に示したものである。
【0071】
図13に示す駆動電圧が正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bに印加されることにより、正イオン発生部1aは正イオンを発生し、負イオン発生部1bは負イオンを発生する。天板2c下面に配置した正イオン発生部1aから正イオンを発生しているときに、同時に底板2d上面に配置した負イオン発生部1bから負イオンを発生するように、タイミング信号に基づいて制御を行う。
【0072】
例えば、天板2c下面に配置した正イオン発生部1aが発生したイオンは、放電電極31a,31aの先端から収納庫100内の空間に向かって放出され、天板2c下面に配置した正イオン発生部1aにおける放電電極31a,31aと、底板2d上面に対向して配置されている負イオン発生部1bの放電電極31b,31bとの間に形成される電界によって、底板2d上面に配置された負イオン発生部1bに向かって移動する。
【0073】
同様に、底板2d上面に配置した負イオン発生部1bが発生したイオンは、放電電極31b,31bの先端から収納庫100内の空間に向かって放出され、底板2d上面に配置した負イオン発生部1bにおける放電電極31b,31bと、天板2c下面に対向して配置されている正イオン発生部1aの放電電極31a,31aとの間に形成される電界によって、天板2c下面に配置された正イオン発生部1aに向かって移動する。
【0074】
図13では、イオン発生と休止とを繰り返す制御を行っているが、休止する期間を設けずに連続してイオンを発生するようにしてもよい。また、イオン発生のための駆動電圧は、脈動するような電圧であってもよい。
【0075】
本実施形態におけるイオン発生装置1では、正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bにおいて夫々正イオン及び負イオンを発生させることにより、放出直後の正イオン及び負イオンの結合を抑制することできる。
【0076】
また、本実施形態におけるイオン発生装置1では、天板2c下面に配置した正イオン発生部1aにおける放電電極31a,31aと、底板2d上面に対向して配置されている負イオン発生部1bの放電電極31b,31bとの間に形成される電界の効果によって、収納庫100内部の空間に正イオンと負イオンを効率良く発生し、拡散させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bの基準電位を接続して正イオン及び負イオンを発生するので、各誘導電極及び基準電位線等の帯電を互いに打ち消し合う。このため、正イオン発生部1a及び負イオン発生部1bの基準電位が同じ電位レベルに制御され、各放電電極で発生するイオン量のバランスを取ることができ、各放電電極及び各誘導電極が形成する電界が安定するとともに、正イオン及び負イオンの放出が安定する効果が得られる。
【0078】
本実施形態の収納庫100では、収納庫100内に多くの衣類Cが吊るされて収納されていると、イオンが自由に拡散できる空間は、前扉2aと衣類Cとの間の前側中段空間20b、背板2bと衣類Cとの間の後側中段空間20c、および衣類Cと右側板または左側板との間の空間に限られる。天板2c下面に配置された正イオン発生部1aと底板2d上面に配置された負イオン発生部1bとが互いに逆極性の高圧の駆動電圧を印加されて形成する電界によるイオンの加速によって、イオンが狭い空間を長い距離移動することが可能となる。本実施形態に例示する衣類の収納庫100のように空間内に多くの障害物が存在し、かつ距離が長い場合には、その空間に十分にイオンを拡散させることが困難となるが、本発明に係るイオン発生装置1によれば、上述のように対向配置した正イオン発生部1aと負イオン発生部1bとが形成する電界によって、イオンの拡散を促進させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
イオンを送出するための送風機を持たない構成により、イオン発生装置の低消費電力化、小型化が可能となり、設置場所の自由度が高く、小空間等でのイオン発生装置の使用用途が拡がる。
【符号の説明】
【0080】
1 イオン発生装置
10 イオン発生システム
100 収納庫
4 電源部(直流電源)
43 基準電位線(固定電位線)
5 制御回路部(制御手段)
52 同期回路(出力手段、取得手段)
6 高電圧発生部(駆動電圧発生部)
30a 正イオン発生器
30b 負イオン発生器
32a,32b 誘導電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の駆動電圧が印加されて正イオンを発生する正イオン発生器と、負の駆動電圧が印加されて負イオンを発生する負イオン発生器とを備えるイオン発生装置において、
前記正イオン発生器及び前記負イオン発生器が有する誘導電極に共通の固定電位を与える固定電位線を
備えることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
直流電源から供給される直流電圧を変換して前記駆動電圧を発生する駆動電圧発生部を備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記正イオン発生器及び前記負イオン発生器に交互に駆動電圧を印加する制御を行う制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のイオン発生装置を複数備えるイオン発生システムにおいて、
複数の前記イオン発生装置夫々の固定電位線が、接続してあることを特徴とするイオン発生システム。
【請求項5】
請求項3に記載のイオン発生装置を複数備えるイオン発生システムにおいて、
複数の前記イオン発生装置のうち、一のイオン発生装置は、該一のイオン発生装置が備える正イオン発生器及び負イオン発生器のいずれに駆動電圧を印加しているかを示す信号を出力する出力手段を備え、
他のイオン発生装置は、前記信号を取得する取得手段と、該取得手段により取得した前記信号が、正イオン発生器に駆動電圧を印加していることを示すときには、該他のイオン発生装置が備える負イオン発生器に駆動電圧を印加し、負イオン発生器に駆動電圧を印加していることを示すときには、該他のイオン発生装置が備える正イオン発生器に駆動電圧を印加するように制御する制御手段とを備えることを特徴とするイオン発生システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のイオン発生装置と、被収納物を収納する収納庫本体とを備える収納庫であって、前記イオン発生装置は、前記収納庫本体内にイオンを放出するようにしてあること特徴とする収納庫。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載のイオン発生システムと、被収納物を収納する収納庫本体とを備える収納庫であって、前記イオン発生システムは、前記収納庫本体内にイオンを放出するようにしてあること特徴とする収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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