説明

イオン発生装置

【課題】通流路壁面における帯電の影響を低減してイオン量の検出をすることができるイオン発生装置を提供する。
【解決手段】イオン検出器8は、基板81の一側に電気回路82を配置し、他側に棒状電極83を立設してあり、ダクト上分体51の前壁部分下部であって、中央寄りの位置に配してある。この棒状電極83が通流路内に突出していることにより、ダクト及び風向体7よりなる通流路におけるイオン量を壁面帯電の影響を低減して検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生器から放出されたイオンを、送風機が送出する空気とともに室内に放出し、室内空気の除菌や消臭をするためのイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン発生装置は、居住室内などの設置空間にイオンを放出して空気のイオン濃度を増加させ、空間内に浮遊する細菌を分解して除菌し、又はカーテンや衣類に付着している付着臭を除去するものである。イオン発生装置の主な構成は、送風機と、該送風機が送出する空気を通流させて外部へ放出する通流路と、イオンを発生するイオン発生器と、イオン量を検出するイオン検出器などとからなる。
【0003】
イオン発生器は、針状の放電電極と誘導電極とを有しており、それらの電極間に高電圧を印加することによりコロナ放電を生じさせてイオンを発生させるものが一般的に知られている。イオン発生装置は、イオン発生器が発生したイオンを、送風機が送出する空気と通流路内で混和し、外部へ放出する。
【0004】
特許文献1では、片面に銅パターンを設けた基板を捕集体とするイオン検出器によってイオン量を検出し、検出したイオン量が一定の閾値以下と判定された場合には、イオン発生器の交換などの保守を実施することを促すために、表示により報知するようにしている。
【0005】
また、特許文献2では、複数のイオン発生器、平面状のイオン検出器、及び制御基板を備えたイオン発生カートリッジを構成し、イオン発生装置に着脱できるようにして、保守時の交換の容易性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−287322号公報
【特許文献2】特開2010―118351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イオン発生器で発生したイオンは、送風機が送出した空気と通流路において混和されて放出口へと運ばれていくが、イオン生成直後から、イオン同士の衝突や通流路内の他の空気中の分子との衝突によって減少するほか、通流路を形成する流路壁との衝突や摩擦等によっても徐々に減少する。
【0008】
一般に、居住室内などの設置空間の隅々までイオンを行き渡らせるために、放出口から放出される空気の流速は一定以上とする要求がある。その一方、消費電力を抑えるためには送風機の送風力を抑制することが望ましい。このため、通流路はより狭い空間として形成されることが多く、通流路内のイオン濃度は非常に高くなっており、上述のイオン同士や他の分子との衝突、流路壁との衝突や摩擦によるイオン量の減少が顕著に生じる。
【0009】
特に、通流路の流路壁が樹脂材で形成されている場合、通流路内を流れる空気と通流路の壁面とが接触し摩擦することにより、流路壁が帯電する。流路壁付近を壁面に沿って流れるイオンは、流路壁の帯電の影響を受けて消耗し減衰することになり、通流路の流路壁に近いほどイオン濃度が低くなるという問題がある。
【0010】
特許文献1及び2記載のイオン発生装置におけるイオン検出器は、銅パターンを設けた基板による平面状の捕集体を有し、該捕集体が通流路の流路壁面に配されており、このために、上述のような流路壁の帯電の影響を受けてイオン濃度が減少する領域でイオン量を検出することになる。また、流路壁の帯電が不安定に変動する場合には、流路壁付近のイオン濃度も不安定となるため、イオン検出器によるイオン量の検出値も不安定になる。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、通流路壁面における帯電の影響を低減してイオン量の検出をすることができるイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るイオン発生装置は、空気を送出する送風機と、該送風機が送出する空気を放出口へ向かって通流する通流路と、該通流路へ放出されるイオンを発生するイオン発生器とを備え、該イオン発生器が発生したイオンを、前記送風機が送出する空気とともに前記放出口から放出するようになしてあるイオン発生装置において、前記通流路の流路壁から前記通流路内に突出する棒状電極を有し、前記通流路を通流する空気に含まれるイオン量を前記棒状電極によって検出するイオン検出器を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、送風機が送出する空気とイオンとを通流路を通流させて放出口から放出し、通流路内に突出する棒状電極を有するイオン検出器によりイオン量を検出するため、通流路を通流する空気に含まれるイオン量を流路壁の影響を低減して検出することができる。
【0014】
本発明に係るイオン発生装置は、前記棒状電極は軸方向が前記通流路を通流する空気の流れの方向に交差するように配してあることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、棒状電極は軸方向が前記通流路を通流する空気の流れの方向に交差するように配されているため、通流路中のイオン量を一定の領域において平均的に検出することができる。
【0016】
本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン発生器よりも前記通流路の下流側に、前記棒状電極を配してあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、棒状電極がイオン発生器よりも前記通流路の下流側に配されているため、イオン発生器から放出されたイオンの検出を確実に行うことができる。
【0018】
本発明に係るイオン発生装置は、前記棒状電極は、前記通流路の流路壁に設けた貫通孔を通して、前記通流路内へ突出するように配してあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、棒状電極が前記通流路の流路壁に設けた貫通孔を通して通流路内へ突出するように配されているため、棒状電極を通流路内へ突出させる際の組立性がよい。
【0020】
本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン検出器は、基板の一側に電気回路を配置し、前記基板の他側に前記棒状電極を立設してなり、前記電気回路が前記通流路の外部に配してあることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、イオン検出器が基板の一側に電気回路を配置し、他側に棒状電極を立設してなり、電気回路を通流路の外部に配しているため、イオン検出器の電気回路が通流路内を流れる空気に影響することを抑制することができる。
【0022】
本発明に係るイオン発生装置は、前記通流路は、流路壁が前記イオン発生器よりも前記通流路の下流側にて樹脂材料により形成してあることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、通流路の流路壁がイオン発生器よりも下流側において樹脂材料により形成してあるため、軽量化を図ることができる。流路壁が樹脂材料により形成してあるために帯電現象が生じても、棒状電極により、その帯電の影響を低減して通流路内のイオン量を検出することができる。
【0024】
本発明に係るイオン発生装置は、前記棒状電極は、前記通流路の流路壁より離間する位置から先端部側に電極部を配してあることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、棒状電極は、通流路の流路壁より離間する位置から先端部側に電極部を配してあるため、流路壁の影響を低減して通流路内のイオン量を検出することができる。
【0026】
本発明に係るイオン発生装置は、前記棒状電極は軸方向に直交する断面形状を円形又は多角形としてあることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、棒状電極が軸方向に直交する断面形状を円形又は多角形としてあることで、通流路内の空気の乱れを低減し、又はイオンの検出面積を大きくすることができる。
【0028】
本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン検出器により検出するイオン量を、第1閾値および該第1閾値より小さい第2閾値と比較する制御部と、該制御部により比較した結果を報知する報知手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0029】
本発明にあっては、イオン検出器により検出するイオン量を、第1閾値および第2閾値と比較し、その比較結果を報知するため、イオン発生装置の保守性を向上することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、送風機が送出する空気とイオンとを通流路を通流させて放出口から放出し、通流路の流路壁から通流路内に突出する棒状電極を有するイオン検出器によりイオン量を検出するため、通流路を通流する空気に含まれるイオン量を流路壁の影響を低減して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の外観を示す正面外観図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の外観を示す側面外観図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の構成を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の構成を示す縦断側面図である。
【図5】イオン発生器が前壁に取り付けられた状態を示す模式的な正面図である。
【図6】通流路の縦断側面を拡大し、イオン量の検出を模式的に説明する模式図である。
【図7】イオン検出器の外観を示す側面図である。
【図8】イオン検出器の外観を示す図7のDD線からの矢視図である。
【図9】他の例に係るイオン検出器の外観を示す図7のDD線からの矢視図である。
【図10】さらに他の例に係るイオン検出器の外観を示す側面図である。
【図11】他の例に係るイオン発生装置の縦断側面を模式的に表した模式図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【図13】イオン発生状態の監視を行う処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の外観を示す正面外観図、図2は本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の外観を示す側面外観図である。また、図3は本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の構成を示す縦断正面図、図4は本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の構成を示す縦断側面図である。図5はイオン発生器6a,6b,6c,6dが前壁5aに取り付けられた状態を示す模式的な正面図である。
【0033】
図中1はハウジングであり、ハウジング1は、その天蓋部分に放出口11,11を、その左右両側面の下部に吸込口14,14を有している。また、ハウジング1の前面部分には、イオン発生装置の運転を制御する運転ボタン12と、イオン発生装置の運転状況を表示する1または複数の運転ランプ13とを備えている。
【0034】
ハウジング1は、離隔し対向する両側壁1a,1b、及び中央部に二つの嵌合孔15,15を有する天壁1cを備える。ハウジング1内の下部には、回転軸方向の両側に出力軸21,21を有するモータ2が配され、該モータ2の出力軸21,21の夫々には、二つのケーシング4,4に回転自在に収容された二つの羽根車3,3が装着されている。
【0035】
羽根車3,3の上方には、夫々の回転により送出する空気を個別に上方へ通流させる筒部としての二つのダクト5,5が夫々配設されている。ダクト5,5の夫々は、二つのイオン発生部61,62を夫々有するイオン発生器6a,6c、6b,6dを下部に有し、嵌合孔15,15に取外しを可能に配置された風向体7,7を備える。イオン発生器6a,6bの上方には、発生したイオンを検出するためのイオン検出器8,8が配されている。尚、モータ2と、羽根車3,3と、ケーシング4,4とが送風機を構成している。
【0036】
ハウジング1は、更に、平面視矩形をなす底壁1dと、該底壁1dの前後の二辺に連なる前壁1e及び後壁1fとを備え、略直方体をなしている。両側壁1a,1b下部の吸込口14,14には、羽根車3,3が吸込口14,14から吸込む空気を通過させ、該空気中の異物を除去して清浄空気にするフィルタ9,9が取り付けられている。天壁1cの嵌合孔15,15はその長手方向が前後となる長方形をなし、前側の内面が鉛直に対して前方へ傾斜し、後側の内面が鉛直に対して後方へ傾斜している。また、ハウジング1は上下方向の途中で上分体と下分体とに分断され、下分体にケーシング4,4が装着され、上分体にダクト5,5が装着されている。
【0037】
羽根車3,3は、外縁に対し回転中心側が回転方向へ変位する複数の羽根3aを有する多翼羽根車、換言すると円筒形状をなすシロッコファンであり、一端に軸受板を有し、該軸受板の中心に開設されている軸孔にモータ2の出力軸21,21が取り付けられ、他端の開口から中心部の空洞へ吸込んだ空気を外周部の羽根3a間から放出するように構成されている。
【0038】
ケーシング4,4は、羽根車3,3の回転により発生する気流を羽根車3,3の回転方向へ誘導し、気流の速度を増すための円弧形誘導壁41,41、及び該円弧形誘導壁41,41の一部から円弧形誘導壁41,41の接線方向の一方へ上向きに開放された吹出口42,42を有する。吹出口42,42は円弧形誘導壁41,41の一部から円弧形誘導壁41,41の接線方向の一方へ、且つ鉛直に対して斜め方向へ突出する角筒形状をなしている。
【0039】
また、ケーシング4,4は、深皿形をなし、円弧形誘導壁41,41及び吹出口42,42用の開放部を有するケーシング本体4a,4aと、羽根車3,3の前記開口と対応する箇所が開放されており、ケーシング本体4a,4aの開放側を閉塞する蓋板4b,4bとを備え、ケーシング本体4a,4a夫々の対向側が仕切り用の連結壁43にて一体に連結されている。また、蓋板4b,4bの開放部とフィルタ9,9との間に、複数の通気孔を有する通気板91,91が設けられている。
【0040】
連結壁43のモータ2と対応する箇所は一方のケーシング本体4a側へ窪む凹所を有し、該凹所の縁部に深皿状の支持板44が取り付けられ、凹所及び支持板44の中央部間にゴム板45,45を介してモータ2を挾着保持し、凹所及び支持板44の中央部に開設されている軸孔に出力軸21,21が挿通され、出力軸21,21に羽根車3,3を取り付けてある。また、連結壁43の上端はケーシング4,4よりも上方へ延出されている。
【0041】
ダクト5,5は、その下端が吹出口42,42に連なり、その上端が嵌合孔15,15に連なり、上下方向の途中が絞られている角筒形の筒部からなる。また、ダクト5,5は、吹出口42,42から円弧形誘導壁41,41の接線方向の一方に沿って配された前壁5a,5a、及び吹出口42,42からほぼ鉛直に配された後壁5b,5bを有する。前壁5a,5a及び後壁5b,5bには、ほぼ鉛直に配された二つの側壁5c,5c、5d,5dが連なっており、吹出口42,42から吹き出された空気を、前壁5a,5a及び側壁5c,5c、5d,5dに沿って層流とし、鉛直に沿わせて通流させるように構成さ
れている。
【0042】
前壁5a,5aにはイオン発生部61,62に対応する貫通孔が開設されており、該貫通孔にイオン発生器6a,6b,6c,6dが嵌込みにより取り付けられ、後壁5b,5bにはモータ2、イオン発生器6a,6b,6c,6d、イオン検出器8,8及び電源線に接続されている回路基板10と、該回路基板10を被覆するカバー20とが取り付けられている。
【0043】
また、ダクト5,5は上下方向の途中でダクト上分体51とダクト下分体52とに分断されている。ダクト下分体52は角筒形をなし、横方向の中央が連結壁43にて仕切られている。ダクト上分体51は、横方向に離隔して並置される角筒部51a,51aの下部が連結部51bにて一体に連なっており、連結部51b及び連結壁43にて仕切られている。また、ダクト上分体51の上端には、外部から指等の異物が挿入されるのを防ぐための防護網30,30を配してある。
【0044】
風向体7,7は、前後方向の断面形状が逆台形をなす角枠部71,71、及び該角枠部71,71内に前後方向へ離隔して並置され、鉛直に対して前後方向一方へ傾斜する複数の風向板72,72を有し、等形状に形成されている。角枠部71,71の前後の壁は鉛直に対して前後方向へ傾斜している。
【0045】
ダクト5,5及び風向体7,7で囲まれる内部空間は、送風機から送出された空気が通流する通流路を形成しており、風向体7,7の上端部の開口部分により放出口11,11が形成されている。ダクト5,5及び風向体7,7の内壁は、送風機から送出された空気が通流する通流路の流路壁を形成している。
【0046】
イオン発生器6a,6b,6c,6dの夫々は、羽根車3,3の回転により発生する空気の通流方向と略直交する方向へ離隔した二つのイオン発生部61,62を備える。イオン発生部61,62の夫々は、内奥側に尖鋭状をなす放電電極61a,62a、及び該放電電極61a,62aを囲繞する誘導電極61b,62bを有し、高電圧を印加された放電電極61a,62aがコロナ放電を発生する。これにより、一方のイオン発生部61がプラスのイオンを、他方のイオン発生部62がマイナスのイオンを夫々発生させるように構成されている。
【0047】
イオン発生器6a,6b,6c,6dは、保持体63に保持されてダクト5,5夫々の前壁5a,5aに取り付けられている。イオン発生器6a,6b、及びイオン発生器6c,6dの夫々2つは、マイナスのイオン発生部62同士を向かい合わせ、前記通流方向と略直交する方向に隣り合わせて組をなすようにしてあり、夫々の組を、前記通流方向に離隔して並置してある。イオン発生器6a,6b,6c,6d夫々のイオン発生部61,62は、前記貫通孔からダクト5,5内に臨んでいる。また、保持体63のダクト5,5への取り付け側はイオン発生部61,62夫々に対応する4箇所が開口されており、各開口63a,・・63aの夫々にイオン発生部61,62を配してある。
【0048】
イオン検出器8,8は、ダクト5,5及び風向体7,7よりなる通流路におけるイオン量を検出している。イオン検出器8,8は、基板81,81の一側に電気回路82,82を配置し、他側に棒状電極83,83を立設してあり、ダクト上分体51の前壁部分下部であって、中央寄りの位置に配され、該棒状電極83,83が通流路内に突出している。ダクト上分体51の前壁部分下部には貫通孔53,53が開設されている。イオン検出器8,8は、該貫通孔53,53に棒状電極83,83を挿入して取り付けられている。
【0049】
上述のとおり構成されたイオン発生装置は、居住室内などの設置空間に据えられる。送風機のモータ2の駆動により、羽根車3,3が回転し、室内の空気が両側の吸込口14,14から二つのケーシング4,4内へ吸込まれ、吸込まれた空気中の塵埃等の異物はフィルタ9,9により除去される。この際、ケーシング4,4内に吸込まれた空気は、羽根車3,3周りの円弧形誘導壁41,41により層流となり、この層流の空気が円弧形誘導壁41,41に沿って吹出口42,42へ通流し、該吹出口42,42からダクト5,5内へ吹き出される。
【0050】
イオン発生器6a,6b,6c,6dからダクト5,5内へ放出されたイオンは、吹出口42,42からダクト5,5内へ吹き出される空気と混和されて、ダクト5,5及び風向体7,7よりなる通流路を下流へと流され、放出口11,11から外部へ放出される。
【0051】
図6は通流路の縦断側面を拡大し、イオン量の検出を模式的に説明する模式図である。図6中の矢印は空気の流れを表しており、イオン発生器6a,6b,6c,6dから実線で囲まれる領域Aにイオンが放出され、空気の流れに乗って点線Cで囲まれるハッチングを付した領域Bにてイオンが混和している状態を示している。
【0052】
点線Cの外側であって通流路であるダクト5,5の内壁面までの領域では、イオン量が減少している状態となっている。このイオン量の減少は、ダクト5,5の内壁面沿いに流れる空気とダクト5,5の内壁面との間で摩擦が生じ、ダクト5,5の内壁面が帯電する現象により生じ得る。
【0053】
ダクト5,5の材質には、軽量化のため、例えば樹脂材であるPS(ポリスチレン)材が用いられるが、このほかにも、PP(ポリプロピレン)材、PE(ポリエチレン)材、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)材なども使用される。
【0054】
このような樹脂材によるダクト5,5の内壁面にイオンを含む空気が衝突し、摩擦が生じる。この摩擦によって、ダクト5,5の内壁面はマイナスに帯電し、ダクト5,5の内壁面と摩擦した空気(イオンを含む)はプラスに帯電する。マイナスに帯電したダクト5の内壁面の影響を受けたイオンは消耗され、イオン濃度が低下していく。この結果、領域Bにおけるイオンの濃度と、点線Cの外側であってダクト5,5の内壁面までの領域におけるイオンの濃度とは異なるものとなる。尚、領域Bは、ダクト5,5の内壁面からの距離が離れており、ダクト5,5の内壁面の帯電による影響を受けにくく、イオン濃度は高濃度に保たれている。
【0055】
マイナスに帯電したダクト5,5の内壁面にプラスイオンが接触することによって、徐々にダクト5,5の内壁面の帯電が無くなると、該内壁面の帯電による影響が無くなり、領域Bにおけるイオンの濃度と、点線Cの外側であってダクト5,5の内壁面までの領域におけるイオンの濃度とはほぼ等しくなる。さらに、ダクト5,5内を流れる空気が、ダクト5,5の内壁面に衝突し、摩擦していくことにより、ダクト5,5の内壁面の帯電が再度発生する。このような帯電現象が、非周期的に、あるいは周期的に発生することによって、点線Cの外側であってダクト5,5の内壁面までの領域でのイオン濃度は変化することになる。
【0056】
従来技術に示された平面状の検出電極をダクト5,5の内壁面に沿って配置し、イオン量を検出する方法によれば、点線Cの外側であってダクト5,5の内壁面までの領域のイオン量を検出することになり、イオン量の検出が安定せず、また、領域Bでのイオン量とは異なるイオン量を検出することにもなる。これに対し、本発明によるイオン検出器8,8は、棒状電極83,83を備えることにより、ダクト5,5の内壁面の帯電現象の影響を低減して通流路内のイオン量を検出することが可能となる。
【0057】
図6に示すように、イオン検出器8,8の棒状電極83,83は、ダクト5,5が形成する流路壁から、ダクト5,5内の通流路に突出しており、領域Bでのイオン量の検出をするように配してある。即ち、棒状電極83,83が、ダクト5,5の内壁面の帯電の影響を受けない領域Bまで入り込み、通流路を通流する空気の流れの方向に交差するように配してあることにより、領域Aに放出されたイオンを高濃度に含む領域Bでのイオン量を安定して検出することができる。また、空気の流れの方向に交差させて棒状電極82,82を配してあることで、ダクト5,5の内壁面から通流路の中央にかけての一定の領域において平均的にイオン量を検出することができる。なお、イオン量の検出は、例えば、棒状電極83,83によってマイナスイオンを捕集したときに生じる棒状電極83,83の電位の低下を電気回路82,82によって検出するものとすればよい。
【0058】
イオン検出器8,8は、ダクト5,5に開設した貫通孔53,53に棒状電極83,83を挿入して取り付けてある。イオン検出器8,8の棒状電極83,83以外の構成である基板81,81及び電気回路82,82はダクト5,5の外部に配してあることにより、基板81,81の影響がダクト5,5内の通流路を流れるイオンに影響することや、ダクト5,5による通流路内の空気の流れが乱れることを抑制することができる。
【0059】
図3および図4に示すように、イオン検出器8,8は夫々、向かい合うマイナスのイオン発生部62,62の上部であって、ダクト上分体51の前壁部分下部の中央寄りの位置に配されているが、この位置に限らず、例えば、マイナスのイオン発生部62,62の上部であって、ダクト上分体51の前壁部分の他の位置や、マイナスのイオン発生部62,62の上部以外のダクト上分体51上の位置に、さらには風向体7,7に配してあってもよい。このようにイオン発生器6a,6b,6c,6dよりも下流側にイオン検出器8,8を配置することにより、確実にイオン量を検出することができる。また、イオン検出器8,8の個数は、2個に限られるものではなく、3個以上のイオン検出器を設けることも可能である。
【0060】
また、イオン検出器8,8の取り付け方は、棒状電極83,83がダクト5,5内の通流路に突出する方法であれば、貫通孔53,53に棒状電極83,83を挿入して取り付ける方法に限られるものではない。しかし、貫通孔53,53に棒状電極83,83を挿入して、イオン検出器8,8をダクト5,5に取り付ける方法によれば、取付作業をダクト5,5の外側で行うことができ、組立性がよい。
【0061】
図7はイオン検出器8の外観を示す側面図であり、図8はイオン検出器8の外観を示す図7のDD線からの矢視図であり、図9は他の例に係るイオン検出器8の外観を示す図7のDD線からの矢視図である。棒状電極83は、少なくとも表面が電極部である検出電極84となっており、この検出電極84によってイオンを捕集する。基板81に棒状電極83を立設し、電気回路82とともにイオン検出器の一体ユニットを構成することにより、イオン検出器8のダクト5への組立性を向上させることができる。
【0062】
棒状電極83の断面は、図8に示すような円形のものであっても、図9に示すような長方形のものであってもよい。例えば、居住室内で用いられる高さ約35cm、水平断面約15cm角のイオン発生装置内に取り付けるイオン検出器8について、図8に示す場合には、棒状電極83の直径を1.5mm、長さaを18mm程度とすれば、棒状電極83(即ち、検出電極84)の表面積を約85mm2 とすることができる。図9に示す場合には、棒状電極83の断面を0.5mm×2mm、長さaを18mm程度とすれば、棒状電極83(即ち、検出電極84)の表面積を約90mm2 とすることができる。この棒状電極83の長さと、断面の形状及び寸法とは、イオン検出精度や通流路内の空気の流れへの影響に基づいて、種々の改良を試みることができる。棒状電極83の断面形状を円形とすれば、空気の流れへの乱れは少なく、また任意の多角形形状により表面積を大きくしてイオン検出精度を高めることもできる。
【0063】
図10はさらに他の例に係るイオン検出器8の外観を示す側面図である。このイオン検出器8の例では、電極部である検出電極84を棒状電極83の付け根部分から離間した長さb1の位置から、先端部までの長さb2に配してあるものである。流路壁であるダクト5,5の内壁面の帯電現象の影響を受ける範囲を壁面からの距離として数値計算や実験等によって求め、ダクト5,5の内壁面の帯電現象の影響を受ける範囲を除外するような寸法b1を定めることにより、流路壁から離間した位置から棒状電極83の先端側へ、電極部である検出電極84を設けるようにする。例えば、棒状電極83の長さaである18mmに対して、長さb1を6mmとし、検出電極84を長さb2である12mmの部分に配置する。なお、検出電極84は棒状電極83の途中まで設けるものであってもよく、先端まで設けられている必要はないが、検出電極84の表面積を大きくするためには、棒状電極83の先端まで検出電極84が設けられていることが好ましい。
【0064】
図11は他の例に係るイオン発生装置の縦断側面を模式的に表した模式図である。上述した図4に示すイオン発生装置では、ダクト5,5の内壁面がイオン発生器6a,6b,6c,6dの上流側から下流側にかけて前方から後方へ傾斜していくように形成されている。これに対し、図11に示すイオン発生装置は、ダクト5,5の内壁面がイオン発生器6a,6b,6c,6dの上流側から下流側にかけて前方あるいは後方へ傾斜することなくほぼ鉛直向きに形成されている。このような場合であってもダクト5,5の内壁面と通流路内の空気との摩擦は発生し、ダクト5,5の内壁面に帯電現象が生じ得るので、本発明による棒状電極83,83を用いたイオン検出器8,8によって、領域Aに放出されたイオンを高濃度に含む領域Bでのイオン量を安定して検出することができる。
【0065】
図12は本発明の実施の形態に係るイオン発生装置の機能ブロックを示すブロック図である。イオン発生装置は、外部電源32より電力供給を受けて、モータ2、イオン発生器6(上述のイオン発生器6a,6b,6c,6dにより構成されるイオン発生器を指す。)、イオン検出器8等の内部機器を動作させている。制御部31は、各内部機器の動作のオン/オフ制御や、運転ランプの表示やその表示変更を行う。
【0066】
制御部31は、制御処理を行うために、CPU、制御処理プログラムを格納したROM、及び一時的に発生した情報を記憶するRAM等を有している。制御部31への入力は、運転ボタン12の入力信号、及びイオン検出器8からのイオン量の検出信号等であり、制御部31の出力は、モータ2を駆動する駆動回路2aへの制御出力、イオン発生器6へのオン/オフ信号、運転ランプ13への表示制御信号等である。
【0067】
次に図13により制御部31がイオンの発生状態を監視する処理フローについて説明する。図13はイオン発生状態の監視を行う処理手順を示すフローチャートである。制御部31は、運転ボタン12の押下を受け付けると(ステップS11)、イオン発生装置の運転を開始し、順次、送風機(モータ2)の運転開始(ステップS12)、イオン発生器6の運転開始(ステップS13)、イオン検出器8の運転開始(ステップS14)を行う。制御部31は、制御信号により時間(例えば0.5秒)をずらして各内部機器の運転を開始させるなどの制御を行う。
【0068】
ステップS11からステップS14までの処理により、イオン発生装置は、送風機(モータ2)の駆動により室内へ空気を放出し、イオン発生器6により生成したイオンを放出する空気に混和せしめ、イオン検出器8により装置内の通流路中のイオン量を検出する状態となる。
【0069】
運転が開始されると、制御部31は、運転ボタン12が再び押下されて運転停止になるかどうかを判定する(ステップS15)。運転ボタン12が再び押下されずに運転が継続する限り(ステップS15:NO)、制御部31は、イオン検出器8により検出したイオン量と第1の閾値とを比較判定する(ステップS16)。例えば、第1の閾値は、イオン発生器8の性能上、定格出力イオン量を満たし、十分に室内へイオンを放出できていると判断できるイオン量の所定値に設定しておく。この際、制御部31は、例えば0.5秒程度の所定時間の間、イオン検出器8にイオン量を検出させ、イオン量の検出信号を積算又は平均化するなどして第1の閾値との判定を行う。
【0070】
検出したイオン量が第1の閾値以上であれば(ステップS16:YES)、制御部31は、運転ランプ13を緑色に照明させる表示制御信号を送出し、運転ランプ13が緑色に照明される(ステップS17)。
【0071】
検出したイオン量が第1の閾値未満であれば(ステップS16:NO)、制御部31は、検出したイオン量と第2の閾値とを比較判定する(ステップS18)。例えば、第2の閾値は、イオン発生器8の性能上、定格出力イオン量を下回っているが、イオン出力劣化は進行しておらず、室内へのイオン放出の実用に供し得るイオン量の所定値に設定しておく。検出したイオン量が第2の閾値以上であれば(ステップS18:YES)、制御部31は運転ランプ13を黄色に照明させる表示制御信号を送出し、運転ランプ13が黄色に照明される(ステップS19)。
【0072】
検出したイオン量が第2の閾値未満であれば(ステップS18:NO)、制御部31は、運転ランプ13を赤色に照明させ、点滅させる表示制御信号を送出し、運転ランプ13が赤色に照明されて点滅する(ステップS20)。
【0073】
ステップS17、S19、S20にて運転ランプ13を照明させ、または点滅させた後、制御部31は、再びステップS15に戻って処理を継続する。なお、運転ボタン12が再び押下されて運転停止になったと判定された場合には(ステップS15:YES)、制御部31は、イオン発生装置内の各内部機器の運転を停止させ、外部電源32からの電力供給も停止する(ステップS21)。
【0074】
運転ランプ13は、図1に示すように、イオン発生装置の前面パネルに複数個が配置されており、それぞれのランプの点灯状態によって、ユーザへ機器の運転に関する情報を報知している。図13の処理手順に基づいて、制御部31は検出したイオン量と第1及び第2の閾値とを比較することにより、イオン発生器6のイオンの発生状態を監視しており、比較した結果について運転ランプ13を用いてユーザに対して報知しているものである。運転ランプ13が緑色に照明されている場合には、イオン発生状態は正常であることを、運転ランプ13が黄色に照明されている場合には、イオン発生状態が劣化し始め、イオン発生器6の点検や保守が必要となりつつあることを、運転ランプ13が赤色に照明され点滅している場合には、イオン発生器6の清掃や交換などの保守が必要であることをユーザに報知しており、イオン発生装置の保守性と利便性とを向上することができる。
【0075】
制御部31は、運転ランプ13の色及び点滅状態によってイオン発生状態を報知しているが、報知する手段はこれらに限らず、ブザーやスピーカーを備えて音や音声によって報知することもでき、また、液晶パネルを備えて表示によって報知することもできる。
【0076】
なお、本発明は、本実施の形態だけに限ることなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲及びそれと均等な範囲に及ぶものとする。
【符号の説明】
【0077】
11 放出口
13 運転ランプ
2 モータ
3 羽根車
31 制御部
4 ケーシング
5 ダクト
53 貫通孔
6a,6b,6c,6d イオン発生器
7 風向体
8 イオン検出器
81 基板
82 電気回路
83 棒状電極
84 検出電極(電極部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送出する送風機と、該送風機が送出する空気を放出口へ向かって通流する通流路と、該通流路へ放出されるイオンを発生するイオン発生器とを備え、該イオン発生器が発生したイオンを、前記送風機が送出する空気とともに前記放出口から放出するようになしてあるイオン発生装置において、
前記通流路の流路壁から前記通流路内に突出する棒状電極を有し、前記通流路を通流する空気に含まれるイオン量を前記棒状電極によって検出するイオン検出器を備えることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記棒状電極は軸方向が前記通流路を通流する空気の流れの方向に交差するように配してあることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記イオン発生器よりも前記通流路の下流側に、前記棒状電極を配してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記棒状電極は、前記通流路の流路壁に設けた貫通孔を通して、前記通流路内へ突出するように配してあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記イオン検出器は、基板の一側に電気回路を配置し、前記基板の他側に前記棒状電極を立設してなり、前記電気回路が前記通流路の外部に配してあることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記通流路は、流路壁が前記イオン発生器よりも前記通流路の下流側にて樹脂材料により形成してあることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項7】
前記棒状電極は、前記通流路の流路壁より離間する位置から先端部側に電極部を配してあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項8】
前記棒状電極は軸方向に直交する断面形状を円形又は多角形としてあることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項9】
前記イオン検出器により検出するイオン量を、第1閾値および該第1閾値より小さい第2閾値と比較する制御部と、該制御部により比較した結果を報知する報知手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−212519(P2012−212519A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76454(P2011−76454)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)