説明

イオン発生装置

【課題】壁等に設置されている空気調和機等の送風機を改造することなく、該送風機が発生する風を利用してイオンを効率よく居住空間内に拡散するイオン発生装置を提供する。
【解決手段】空気の流入が可能な流入口4及び空気の流出が可能な流出口51,52を備えたケーシング3内に、流入口4と流出口51,52とを結ぶ通風路7と、通風路7内にイオンを放出するイオン発生器2とを設け、ケーシング3は傾斜した導風面34及び導風面34と鋭角をなす取付面31aを外面に有し、導風面34における取付面31aとの距離が短い側に流入口4を設け、導風面34における取付面31aとの距離が長い側に第1の流出口51を設け、第1の流出口51を設けた側の導風面34の端部から取付面31aに至るケーシング部分に第2の流出口52を設け、通風路7内に、流入口4から第2の流出口52に向かう空気の一部を第1の流出口52に導く案内部6を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁等に設置された送風機の吹出口に隣り合うように設置されるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イオンによって居住空間内の空気を清浄化する空気清浄機が実用化されている。空気清浄機では、送風機が外部から吸い込んだ空気が流れる送風路内にプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるイオン発生器が配設され、発生したイオンを吹き出される空気と共に外部へ放出させている。放出されたイオンは、室内等の居住空間において空気中の浮遊粒子を不活性化させ、浮遊細菌(カビ菌等)を死滅させると共に臭気成分を変性させる。その結果、居住空間内の空気が清浄化される。
【0003】
特許文献1には、室内機にプラズマ発生器(イオン発生器)を備えた天井埋込型空気調和機が開示されている。プラズマ発生器からは、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどが生成され、臭気成分、菌、ウイルスを分解し、無害化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−29665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空気清浄機能を有する天井埋込型空気調和機では、予めイオン発生器を内蔵している。イオン発生器を内蔵していない天井埋込型空気調和機にイオン発生器を設ける場合には、既に設置されている天井埋込型空気調和機の大規模な改造が必要となる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、壁等に設置されている空気調和機等の送風機を改造することなく、該送風機が発生する風を利用してイオンを居住空間内に効率よく拡散することができるイオン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るイオン発生装置は、外部からの空気の流入が可能な流入口及び外部への空気の流出が可能な流出口を備えたケーシング内に、前記流入口と流出口とを結ぶ通風路と、該通風路内にイオンを放出するイオン発生器とを設けたイオン発生装置において、前記ケーシングは傾斜した導風面を外面に有し、該導風面に前記流入口を設けてあることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、外部から送風された空気がケーシングの外面の傾斜した導風面に当たり、該導風面に沿って流れるとともに空気の一部が導風面に設けた流入口からケーシング内に流入し、通風路を流れるときにイオン発生器が通風路内に放出するイオンが付加され、イオンを含む空気が流出口から外部へ流出する。
【0009】
本発明に係るイオン発生装置は、前記ケーシングは、前記導風面と鋭角をなす他の外面を取付対象物に対する取付面とし、前記導風面における前記取付面との距離が短い側に前記流入口を設け、前記導風面における前記取付面との距離が長い側に第1の流出口を設け、前記第1の流出口を設けた側の前記導風面の端部と前記取付面とを繋ぐ部分に第2の流出口を設け、前記通風路内に、前記流入口から前記第2の流出口に向かう空気の一部を前記第1の流出口に導く案内部を設け、前記イオン発生器は前記案内部よりも前記流入口に近い側に設けてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記導風面と鋭角をなすケーシングの他の外面である取付面を取付対象物に取り付ける。外部の送風機から取付面に沿う方向に送風された空気が傾斜した導風面に対して取付面との距離が短い側から長い側に向かって当たると、導風面に沿って流れるとともに空気の一部が導風面の取付面との距離が短い側に設けた流入口からケーシング内に流入して通風路を流れ、通風路内を流れるときにイオン発生器が放出するイオンが付加される。イオンを含む空気は導風面の取付面との距離が長い側に位置する第1の流出口側の導風面の端部と取付面とを繋ぐケーシング部分に設けた第2の流出口に向かって流れて第2の流出口から外部に流出し、第2の流出口に向かう空気の一部は通風路内に設けた案内部によって第1の流出口に導かれ、第1の流出口から外部に流出して導風面に沿って流れる空気に合流する。
【0011】
本発明に係るイオン発生装置は、前記流入口及び第1の流出口は、夫々前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向に平行なスリット状の開口部をなして、前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向と交差する方向に複数並設され、前記流入口と第1の流出口とは、前記並設した方向での位置が同位置であることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、導風面における取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向と交差する方向に並設された複数のスリット状の開口部である流入口及び第1の流出口が並設した方向で同位置にあるので、流入口からケーシング内に流入し、通風路内を流れてイオンが付加された空気が、並設方向で同位置にある第1の流出口から外部にスムーズに流出することができ、加えて外部に流出した際に、スリット状の開口部である流入口及び第1の流出口の両側の開口部でない導風面に沿って安定状態で流れる空気に合流し、効率よく外部空間に拡散される。
【0013】
本発明に係るイオン発生装置は、前記流入口及び第1の流出口は、前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向に連なり、該連なり方向に平行なスリット状の開口部をなし、前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向と交差する方向に複数並設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、導風面における取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向と交差する方向に並設されている複数の流入口と第1の流出口とが連なって1つのスリット状の開口部をなしているので、導風面に沿って流れる空気の流量、流速、方向等に適切に対応して、流入口となる開口部と第1の流出口となる開口部との割合が変化する。
また、流入口となるスリット状の開口部からケーシング内に流入し、通風路内を流れてイオンが付加された空気が、同じスリット状の開口部の第1の流出口から外部にスムーズに流出することができ、加えて外部に流出した際に、スリット状の開口部の両側の開口部でない導風面に沿って安定状態で流れる空気に合流し、効率よく外部空間に拡散される。
【0015】
本発明に係るイオン発生装置は、前記複数のスリット状の開口部は並設方向での幅が並設方向での端部間の離隔距離よりも広いことを特徴とする。
本発明においては、スリット状の開口部である流入口及び第1の流出口の導風面での割合が大きくなるので、ケーシング内に流入しまた外部に流出する空気量が多くなるので、より多くのイオンを室内に放出することができる。
【0016】
本発明に係るイオン発生装置は、前記案内部は、前記通風路の内方に向けて前記ケーシングの内面から突出した板片であることを特徴とする。
本発明においては、ケーシングの内面に板片を立てるという簡単な手段で案内部を構成することができる。
【0017】
本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン発生器は前記取付面とは反対向きにイオンを放出するイオン発生部を有していることを特徴とする。
本発明においては、取付面に沿う方向に送風されて導風面に当たり、流入口からケーシング内に流入して取付面に沿うように通風路を流れる空気に対して、取付面とは反対向きにイオンを放出するイオン発生部によって効率よくイオンを放出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部の送風機から送風された空気をケーシングの外面の傾斜した導風面に当てて導風面に沿って通流させながら、空気の一部を導風面に設けた流入口からケーシング内に流入させ、ケーシング内の通風路を流れる空気にイオンを付加した後、外部に流出させる構成であるので、壁等に設置されている空気調和機等の送風機を改造することなく、該送風機が発生する風を利用してイオンを居住空間内に効率よく拡散することができるイオン発生装置が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、ケーシングの異なる箇所に2つの流出口を設け、導風面に設けた流入口からケーシング内に流入し、イオンが付加されて第2の流出口に向かって流れる空気の一部を導風面に設けた案内部によって第1の流出口に導き、第1及び第2の流出口から外部に流出する構成であるので、さらに効率よくイオンを居住空間内に拡散することができるイオン発生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置の斜視図である。
【図2】図1に示すイオン発生装置の側面図である。
【図3】図1に示すイオン発生装置の下面図である。
【図4】図1に示すイオン発生装置のカバー部を取り外した状態の下面図である。
【図5】イオン発生器の一例を模式的に示す平面図である。
【図6】図1のイオン発生装置のカバー部を開いた状態を示す側面図である。
【図7】図3のVII−VII線における側面断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線における側面断面図である。
【図9】図1のイオン発生装置の設置状態及び動作を示す天井部分の平面図である。
【図10】図1のイオン発生装置の設置構造及び動作を示す天井部分の側面断面図である。
【図11】図1のイオン発生装置によるイオン拡散効果を測定する測定点の配置図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るイオン発生装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置の斜視図、図2は図1に示すイオン発生装置の側面図、図3は図1に示すイオン発生装置の下面図、図4は図1に示すイオン発生装置のカバー部を取り外した状態の下面図、図5はイオン発生器の一例を模式的に示す平面図、図6は図1のイオン発生装置のカバー部を開いた状態を示す側面図、図7は図3のVII−VII線における側面断面図、図8は図3のVIII−VIII線における側面断面図である。尚、図7及び図8は図1のイオン発生装置の構造及び動作を示す。
【0022】
本実施形態に係るイオン発生装置1は、略直方体形状で一方向に長い形状のベース部31と、ベース部31を下側から覆うカバー部32とを有するケーシング3を備えている。尚、本発明のイオン発生装置1は、後述のように、カバー部32が下側になる状態でベース部31の上面を天井等の取付対象物に取り付けるので、ベース部31の上面を取付面31aとする。
【0023】
ベース部31の下面には略直方体形状の2個のイオン発生器2を夫々固定するための固定部材33が長手方向に離間した2箇所に設けてある。それぞれの固定部材33は、変形しない鉤状の第1の係止部331と、先端に鉤部を有する変形可能な第2の係止部332とを備えている。イオン発生器2は第1の係止部331と第2の係止部332とにより側面及び下側縁部が係止されている。
【0024】
イオン発生器2は、4つのイオン発生部21,22を備えている。各イオン発生部21,22は針状を成す放電電極21a,22aと、放電電極21a,22aを囲繞する誘導電極環21b,22bとを有し、放電電極21a,22aはそれぞれ誘導電極環21b,22bの中心部に配される。イオン発生部21,22に電圧を供給する給電部(不図示)が設けられ、給電部から各イオン発生部21,22に電圧を供給することによってイオン発生部21,22がイオンを発生する。
【0025】
以下に説明するように、一方のイオン発生部21がプラスイオンを発生し、他方のイオン発生部22がマイナスイオンを発生するように構成されている。
一方のイオン発生部21には放電電極21aが正となる電圧が印加され、放電によるプラズマ領域で空気中の水分子が電気的に分解して主として水素イオンH+ が生成される。そして、生成された水素イオンH+ の周りに空気中の水分子が凝集し、正のクラスターイオンH+ (H2 O)m(mは任意の整数)(以下、「プラスイオン」とする)が形成される。他方のイオン発生部22には放電電極22aが負となる電圧が印加され、放電によるプラズマ領域で空気中の酸素分子が電気的に分解して主として酸素イオンO2-が生成される。そして、生成された酸素イオンO2-の周りに空気中の水分子が凝集し、負のクラスターイオンO2-(H2 O)n(nは任意の整数)(以下、「マイナスイオン」とする)が形成される。
【0026】
本実施形態では、プラスイオンを発生させるイオン発生部21及びマイナスイオンを発生させるイオン発生部22を備えたイオン発生器2を用いたが、他に、マイナスイオンのみを発生させるイオン発生器や、その他のイオンを発生させるイオン発生器を用いてもよい。また、イオン発生器2のイオン発生部21,22から発生するイオンの極性を所定時間毎に切り換えてもよい。
【0027】
カバー部32は、側面視で略逆三角形の形状を有し、ベース部31の長手方向に沿って伸びた形状を有している。カバー部32は、該逆三角形の2辺に対応する第1の傾斜面34及び第2の傾斜面35と、第1の傾斜面34及び第2の傾斜面35の両端部に位置する側面36とを形成する板材で構成されている。
【0028】
第1の傾斜面である導風面34には、スリット状の開口部Sがカバー部32の長手方向に複数個形成(並設)されている。スリット状の開口部Sは並設方向での幅が並設方向で隣り合う端部間の離隔距離よりも広い。スリット状の開口部Sの一方側(取付面31aとの距離が短い側)が流入口4となり、スリット状の開口部Sの他方側(取付面31aとの距離が長い側)が第1の流出口51となる。即ち、本実施形態においては、流入口4と第1の流出口51とが一つの連なったスリット状の開口部Sを形成している。
【0029】
また、導風面34の端部と取付面31aとを繋ぐケーシング部分である第2の傾斜面35にはスリット状の第2の流出口52が備えられる。尚、第2の流出口52の形状はスリット状に限らず、例えば1つ又は複数の矩形状の開口部等の形状をしていてもよい。
【0030】
ベース部31の下面とカバー部32の内壁面とにより、流入口4と第1の流出口51及び第2の流出口52とを結ぶ通風路7が形成される。第1の傾斜面34と第2の傾斜面35とが繋がる逆三角形の頂点部には、カバー部32の内側から通風路7内へ略鉛直上方に伸び、流入口4から流入した空気流を第1の流出口51に導く遮風板6が備えられる。遮風板6はカバー部32の長手方向に沿って伸びた形状を有している。なお、遮風板6は鉛直上方に伸びるものに限るものではなく、第1の流出口51に風を導く形であれば他の形をしていてもよい。
【0031】
カバー部32の両側面36の上部には、孔が開いた耳部36aが延設されている。一方、ベース部31の長手方向両端には支点軸311が備えられている。カバー部32の耳部36aの孔はベース部31の支点軸311に嵌り、カバー部32は支点軸311を中心として、ベース部31に対して回動することができる。図6にカバー部32が下側に90°開いた状態のイオン発生装置1の側面図を示す。
【0032】
ベース部31の支点軸311とは反対側の端部にはマグネット312が備えられており、カバー部32にはベース部31のマグネット312に対応した位置にマグネット321が備えられている。カバー部32が閉まった状態のときは、カバー部32のマグネット321と、ベース部31のマグネット312とが引き合うことで、カバー部32が閉まった状態を維持できる。このようにカバー部32を回動可能とすることで、イオン発生器2を容易に交換及び清掃することができる。
【0033】
なお、マグネットはイオン発生装置1の長手方向において、イオン発生器2のイオン発生部21、22と重ならない位置に備えられている。なるべく、イオンがマグネットに吸収され、イオン濃度が低下するのを防止するためである。
【0034】
次に、本実施形態に係るイオン発生装置1の設置形態について説明する。図9は図1のイオン発生装置の設置状態及び動作を示す天井部分の平面図、図10は図1のイオン発生装置の設置構造及び動作を示す天井部分の側面断面図である。
【0035】
本実施形態に係るイオン発生装置1は天井埋込型空気調和機9の吹出口91近傍の天井8に設置されている。天井埋込型空気調和機9は空気を4方向に吹き出す4個の吹出口91を備えている。イオン発生装置1は、天井埋込型空気調和機9の吹出口91に近い側に第1の傾斜面34が位置するようにそれぞれの吹出口91に対して設置してある。尚、天井8には既に照明等が設置されていることもあり、必ずしも全ての吹出口91に対してイオン発生装置1を設置できるわけではないため、一部の吹出口91に対してのみ取り付けてもよい。
【0036】
イオン発生装置1は天井埋込型空気調和機9が設置された天井8の近傍に、ベース部31の上側の取付面31aを天井8の壁に対向させた状態で取り付けて固定されている。固定には固定ボルト81が使用されている。固定ボルト81は、ベース部31側からベース部31に空けられた孔と、天井8に空けられた孔とを貫通し、天井の裏面側からナット82で固定されている。
【0037】
天井埋込型空気調和機9は、吸込口95と、送風機94と、熱交換器93と、吹出口91とを備える。天井埋込型空気調和機9の運転時は、送風機94によって吸込口95から室内の空気を吸い込み、熱交換機93を通して、吹出口91から調和空気を吹き出す。吹出口91には風向変更板92が設置されている。
【0038】
天井埋込型空気調和機9によって調和空気は、イオン発生装置1の第1の傾斜面である導風面34に向かって吹き出される。吹き出される調和空気は、矢印に示す通り、導風面34に沿って流れる。また、導風面34の流入口4がある部分では図7の矢印に示す通り、流入口4からイオン発生装置1の内部の通風路7に調和空気が流入する。
【0039】
ここで、イオン発生器2によって発生させられたイオンはイオン風により、イオン発生器2のイオン発生部21,22から下向きに放出される。流入口4から流入した調和空気は、通風路7を流れるときにイオン発生器2が発生させたイオンが付加されて、第1の吹出口51及び第2の吹出口52からイオン発生装置1の外部へと放出される。
【0040】
イオンを含んだ調和空気の一部は、遮風板6に当たり、第1の流出口51へと導かれ、第1の流出口51から流出する。第1の流出口51から流出したイオンを含んだ調和空気は、導風面34に沿って流れる調和空気と合流し、室内に吹き出される。また、イオンを含んだ調和空気の残りは、第2の流出口52から流出する。第1の流出口51から流出したイオンを含んだ調和空気及び第2の流出口52から流出したイオンを含んだ調和空気により、イオンを効率よく室内に拡散することができる。
【0041】
このように、傾斜した導風面34に流入口4を設けることによって、導風面34に沿うように天井埋込型空気調和機9の吹出口91から吹き出された調和空気が、傾斜した導風面34に沿って流れる空気と、イオン発生装置1の流入口4からイオン発生装置1内に入る空気とに分けることができる。
【0042】
そして、天井埋込型空気調和機9の吹出口91から吹き出された調和空気の流れ方向で流入口4よりも下流側位置の導風面34に、第1の流出口51を設けることによって、イオン発生装置1の内部に流入し、イオンが付加された空気の一部は、第1の流出口51から流出し、再び導風面34に沿って流れる空気と合流することができる。
【0043】
本実施形態1では、流入口4と第1の流出口51とが連なったスリット状の開口部Sを形成しているので、導風面34に沿って流れる調和空気の流量、流速、方向等に対応して、流入口4となる開口部Sの部分と第1の流出口51となる開口部Sの部分との割合を変化させることができる。流入口4となる開口部Sの部分割合が大きくなると、イオン発生装置1内に入る空気の量が増加するため、イオン発生装置1内でイオンが付加され、第1の流出口51及び第2の流出口52から外部により多くのイオンを含む空気を流出させることができる。
【0044】
第1の流出口51から流出する調和空気の量と、第2の流出口52から流出する調和空気の量の割合は、遮風板6の長さを調整することで変更することができる。遮風板6を長くすれば、第1の流出口51から流出する調和空気の風量の割合が増え、遮風板6を短くすれば、第1の流出口51から流出する調和空気の風量の割合が減る。
【0045】
本実施形態において、遮風板6が室内におけるイオン濃度分布に与える影響を表1に示す。図11は図1のイオン発生装置によるイオン拡散効果を測定する測定点の配置図である。天井埋込型空気調和機9の吹出口91近傍の天井にイオン発生装置1を設置した。なお、遮風板6の高さは10mmとした。天井埋込型空気調和機9は所定条件(運転モード:冷房、設定温度:28℃、風量:強)で、天井埋込型空気調和機9の風向変更板92を最も上向きの状態で稼働させた。床面から1.2mの高さでイオン発生装置1の鉛直真下の位置をA点とし、床面から1.2mの高さでイオン発生装置1から水平方向に1m離れた位置をB点、同じく2m離れた位置をC点とした。
【0046】
A点、B点及びC点のそれぞれの位置において、イオン発生装置1の遮風板6がある場合及び遮風板6がない場合のプラスイオン濃度及びマイナスイオン濃度を測定した。表1中で+を付した数字がプラスイオン濃度を表し、−を付した数字がマイナスイオン濃度を表す。表1中の変化率とは、遮風板6がない場合のイオン濃度に対する遮風板6がある場合のイオン濃度の割合である。表1に示す通り、遮風板6がない場合に比べて、遮風板6がある場合はイオン濃度が25%〜92%向上した。
【0047】
【表1】

【0048】
このように、遮風板6を設けることで、第1の流出口51から吹き出されるイオンを含んだ空気を、導風面34に沿って流れる空気に合流させ、室内に拡散することで、導風板6を設置しないイオン発生装置と比べて効率よく室内にイオンを拡散することができる。
【0049】
なお、第2の流出口52を備えていないイオン発生装置1では、流入口4から流入した空気の抜け(外部への流出)が悪くなるため、イオン発生装置1内に入る調和空気が減る。したがって、イオン発生装置1内で発生したイオンを効率よく室内に拡散することができない。
【0050】
(実施の形態2)
図12は本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置の側面断面図である。
実施の形態2では、流入口4と第1の流出口51とがそれぞれ連通しない単独のスリット状の開口部Sである点が実施の形態1と異なる。
【0051】
実施の形態2では、導風面34に設けられた流入口4の面積を調整することで、イオン発生装置1内に入る空気の量を調整することができる。流入口4の面積を大きくするとイオン発生装置1の中に入る空気の量が増えるため、イオン発生装置1内でより多くのイオンを発生させることができる。
【0052】
上記の実施の形態1−2では、本発明に係るイオン発生装置1を天井埋込型空気調和機9の吹出口91近傍の天井8に設置したが、天井埋込型空気調和機に限らず、壁面に設置された送風機に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 イオン発生装置
2 イオン発生器
21 イオン発生部
22 イオン発生部
3 ケーシング
31a 取付面
34 導風面
4 流入口
51 第1の流出口
52 第2の流出口
6 遮風板(板片、案内部)
7 通風路
8 天井(取付対象物)
S スリット状の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの空気の流入が可能な流入口及び外部への空気の流出が可能な流出口を備えたケーシング内に、前記流入口と流出口とを結ぶ通風路と、該通風路内にイオンを放出するイオン発生器とを設けたイオン発生装置において、
前記ケーシングは傾斜した導風面を外面に有し、該導風面に前記流入口を設けてあることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記導風面と鋭角をなす他の外面を取付対象物に対する取付面とし、
前記導風面における前記取付面との距離が短い側に前記流入口を設け、
前記導風面における前記取付面との距離が長い側に第1の流出口を設け、
前記第1の流出口を設けた側の前記導風面の端部と前記取付面とを繋ぐ部分に第2の流出口を設け、
前記通風路内に、前記流入口から前記第2の流出口に向かう空気の一部を前記第1の流出口に導く案内部を設け、
前記イオン発生器は前記案内部よりも前記流入口に近い側に設けてあることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記流入口及び第1の流出口は、夫々前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向に平行なスリット状の開口部をなして、前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向と交差する方向に複数並設され、
前記流入口と第1の流出口とは、前記並設した方向での位置が同位置であることを特徴とする請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記流入口及び第1の流出口は、前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向に連なり、該連なり方向に平行なスリット状の開口部であり、前記導風面における前記取付面との距離が短い側と長い側とを結ぶ方向と交差する方向に複数並設されていることを特徴とする請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記複数のスリット状の開口部は並設方向での幅が並設方向での端部間の離隔距離よりも広いことを特徴とする請求項3又は4に記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記案内部は、前記通風路の内方に向けて前記ケーシングの内面から突出した板片であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のイオン発生装置。
【請求項7】
前記イオン発生器は前記取付面とは反対向きにイオンを放出するイオン発生部を有していることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−94333(P2012−94333A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239925(P2010−239925)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000230858)日本金銭機械株式会社 (43)