説明

イオン発生装置

【課題】 電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出することが可能なイオン発生装置を提供する。
【解決手段】 本発明のイオン発生装置1は、気体媒体の流路を形成するダクト10と、流路内にイオンを発生させるイオン発生器60と、流路に沿って離隔して、ダクト10に配設される複数の導電性部材31〜33と、複数の導電性部材毎に、個別に接続され、電気的に接地可能な複数の抵抗器41〜43とを有し、複数の抵抗器41〜43の抵抗値は、導電性部材の配設位置に応じて、各々設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正イオン又は負イオンを発生させるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内の空気の浄化、殺菌あるいは消臭などを行なうために、イオン発生装置が使用されている。
【0003】
たとえば、公知のイオン発生装置では、形成された流路の途中にイオン発生器を配設し、イオン発生器により発生させたイオンを放出口から外部空間に放出するように構成されている。またイオン発生器は、放電電極間に高圧の放電電圧を印加することにより、正イオン又は負イオンを発生させている。
【0004】
ここで、流路を形成するダクトの内壁面における電荷量を良好な状態に維持できない場合、イオン発生装置から高濃度のイオンを放出するのが困難になる現象が生じ、その現象について以下に説明する。
【0005】
先ず発生させたイオンの一部は、ダクトの内壁面に衝突するので、イオンの極性と同極に内壁面を帯電させることになり、内壁面を帯電させている電荷量は時間経過とともに徐々に増加していく。内壁面の電荷量が増加することにより、発生させたイオンには同極に帯電している内壁面から反発する力が加わることになる。これにより、イオンが内壁面に衝突する機会が減少するので、結果的に流路空間内のイオン量は増加する。
【0006】
しかしながら、流路空間内のイオン量が増加しすぎると、流路空間内のイオンは、放出口方向へ移動しづらくなり、場合によっては放出口と逆方向に移動する現象も生じ、結果的に高濃度のイオンが放出されなくなってしまうことがあった。そこで、内壁面の電荷量を良好な状態に保ち、高濃度のイオンが放出させる試みが特許文献1に開示されている。
【0007】
特許文献1には、図7に示す空調ダクト装置が記載されている。空調ダクト装置には、可変抵抗器141が設けられており、導電体の空気搬送路131に電荷を蓄えることができるようになっている。ここで可変抵抗器141の一端は該空気搬送路131、他端はアース180に各々電気的に接続されている。
【0008】
また、空調ダクト装置において、可変抵抗器141の抵抗値を調節することによって、負イオン発生器で発生した負イオンが導電体の空気搬送路131の内壁面に衝突し、該空気搬送路131に与える負極性の電荷がある電荷量に達するまで電荷を蓄えることができる。このことにより、負極性に帯電した浮遊微生物が導電体の空気搬送路131に付着することを防止できる。
【0009】
また、導電体の空気搬送路131と可変抵抗器141を離隔して複数配置することによって、高濃度の負イオンを効率よく空気搬送路110の末端部分まで供給することができる。さらに、抵抗値を適切な値に調節することによって、導電体の空気搬送路131が蓄える電荷量を調節できるので、静電気による障害発生を未然に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−277010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されている空調ダクト装置では、導電体部材を高抵抗の抵抗器に接続して接地し、流路を形成するダクトの内壁面に、導電体部材を配設することで、導電体部材が配設されている領域の電荷を回収している。
【0012】
したがって、ダクトの内壁面から電荷を回収する単位時間当たりの電荷量(以後「電荷の回収能力」と呼称する)は、導電体部材が配設されている領域の範囲において同一となる。
【0013】
ここで、電荷の回収能力は、主に、ダクトの部材又は材質等のダクト構成に係る条件と、導電体部材に接続されている抵抗器の抵抗値によって決定される。またダクト構成に係る条件が同一である場合は、より高抵抗の抵抗器に接続する方が電荷の回収能力は低くなる。
【0014】
一方、ダクトの内壁面を帯電させる単位時間当たりの電荷量(以後「電荷の供給能力」と呼称する)は、イオン発生器の配設位置付近では高くなるが、イオンを放出する放出口付近では低くなる傾向にある。ここで、電荷の供給能力は、送風機が空気を送風する風量、イオン発生器のイオン発生状態、温度又は湿度等の要因で変化する。
【0015】
このことから、イオン発生器の配設位置から放出口までの流路の全長が長くなると、流路全域における電荷の回収能力と供給能力のバランスを保つことが困難になってしまうという課題があった。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出するイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のイオン発生装置は、気体媒体の流路を形成するダクトと、流路内にイオンを発生させるイオン発生器と、流路に沿って離隔して、ダクトに配設される複数の導電性部材と、複数の導電性部材毎に、個別に接続され、電気的に接地可能な複数の抵抗器とを有し、複数の抵抗器の抵抗値は、導電性部材の配設位置に応じて、各々設定されることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、抵抗値は、イオン発生器と導電性部材との流路上の距離に応じて、設定される。
【0019】
また好ましくは、抵抗値は、流路上の距離が長いほど、高い値に設定される。
【0020】
またさらに好ましくは、導電性部材の配置位置に応じた複数の抵抗値情報を有し、抵抗値は、複数の抵抗値情報の中から1つの抵抗値情報を選択することによって設定される。
【0021】
またさらに好ましくは、複数の抵抗値情報の各々は、イオン発生装置を稼動させる際に用いられる稼働情報と関連付けられて記憶される。
【0022】
またさらに好ましくは、稼働情報は、気体媒体がダクト内を移動する移動量に対応した情報を含む。
【0023】
またさらに好ましくは、稼働情報は、イオン発生器を制御する制御情報に対応した情報を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明のイオン発生装置では、電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保ち、高濃度のイオンを放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係るイオン発生装置1の概略構成図である。
【図2】イオン発生装置1の稼働情報のデータ構成を説明するための図である。
【図3】イオン発生コントローラ81の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係るイオン発生装置2の概略構成図である。
【図5】イオン発生装置2の稼働情報のデータ構成を説明するための図である。
【図6】イオン発生コントローラ91の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】従来の空調ダクト装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の処理内容の説明においては、「ステップ」を「S」で表し、各々の処理を数字で区別している。
【0027】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るイオン発生装置1の概略構成を示し、本図を用いて、本発明に係るイオン発生装置1について、以下に説明する。
【0028】
イオン発生装置1は、ダクト10、送風ユニット50、イオン発生調整器80から構成されている。
【0029】
送風ユニット50は、内部に送風機51が設けられており、イオン発生装置1の外部から取り入れた空気等の気体媒体を送入口15へ送風する。ここで送風機51の動作条件は、駆動回路55を通じて設定可能に構成されている。設定される動作条件としては、送風機51内のモータの回転速度条件が挙げられるが、この動作条件のみに限定されるものではない。
【0030】
また、本実施形態では、気体媒体を送風機51から送入口15へ送風する形態を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えばイオンを放出する放出口側に、気体媒体を吸入するための吸入機を配設する形態を採用しても良い。
【0031】
ダクト10は、送風された気体媒体を、発生させたイオンとともに放出口16より外部に放出するための流路を形成している。またダクト10は、誘電体材質の単一部材又は複数部材の組み合せで構成されており、筒形状の空洞部分が気体媒体の流路となっている。
【0032】
また、本実施形態において、流路の形状は、流路全体にわたって断面寸法が均一でありかつ流路方向に直線的なものを採用しているが、該形状に限定されるものではない。
【0033】
ダクト10は、イオン発生ユニット20、流路ユニット21〜23の4つの部材を連結することによって流路を形成する。
【0034】
図1に示すようにイオン発生ユニット20は、送風ユニット50と流路ユニット21に連結され、送入口15と、送入口15から流路ユニット21までの流路D0を形成する。
【0035】
そして、イオン発生ユニット20には、流路D0においてイオンを発生させるイオン発生器60が配設されている。ここでイオン発生器60は、駆動回路65を通じて、動作条件の設定が可能である。イオン発生器60に設定可能な動作条件としては、例えばイオン発生器60の放電電極間に印加する放電電圧が挙げられるが、この動作条件のみに限定されるものではない。
【0036】
次いで流路ユニット21は、イオン発生ユニット20と流路ユニット22に連結され、流路D1を形成する。また流路ユニット22は、流路ユニット21と流路ユニット23に連結され、流路D2を形成する。さらに流路ユニット23は、流路ユニット22に連結され、送風された気体媒体を外部空間に放出する放出口16を含む流路D3を形成する。
【0037】
各々の流路ユニット21〜23には、それぞれ、流路D1〜D3の内壁表面を形成する導電性部材31〜33が配設されている。また導電性部材31〜33は、電気的に接地可能に構成された可変抵抗器41〜43に接続されている。
【0038】
イオン発生調整器80は、イオン発生コントローラ81、及びイオン発生コントローラ81に接続された記憶部85と選択部86から構成されている。ここで記憶部85には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリが用いられる。また選択部86は、例えばイオン発生装置1の利用者によって選択することを可能とするために、キーボードなどの入力手段で構成される。
【0039】
イオン発生コントローラ81は、送風機51用の駆動回路55、イオン発生器60用の駆動回路65、及び各々の可変抵抗器41〜43と接続され、信号の入出力によって、送風機51又はイオン発生器60の駆動処理、停止処理、動作条件等の設定処理、及び可変抵抗器41〜43の抵抗値設定処理を行う。
【0040】
なお、本実施形態では、イオン発生コントローラ81によって、可変抵抗器41、可変抵抗器42、可変抵抗器43の順で高い抵抗値が設定される。つまり抵抗値は、イオン発生器60と導電性部材31〜33との流路上の距離に応じて設定される。換言すれば、抵抗値は、流路上の距離が長いほど、高い値に設定されることになる。このことから、導電性部材が配設された領域毎に電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出することができる。
【0041】
記憶部85には、各々の可変抵抗器41〜43に設定する抵抗値に関する情報を含む稼働情報ND1、ND2、…、NDnが記憶されている。ここで稼働情報は、イオン発生装置1を稼働させる際に、送風機51、イオン発生器60、及び可変抵抗器41〜43を初期設定するために用いられる情報である。また選択部86は、記憶部85に記憶されている稼働情報ND1、ND2、…、NDnの中から1つの稼働情報を選択するために用いられる。
【0042】
図2は、稼働情報のデータ構成を説明するためのものである。稼働情報は、動作モードMN、送風機51の動作条件の1つである回転速度MS、イオン発生器60の動作条件の1つである放電電圧EV、基準抵抗値RB及び差分情報RDから構成されている。つまり稼働情報を構成する各情報は、一組の情報群として関連付けられて記憶部85に記憶されている。
【0043】
各々の稼働情報は、ND1、ND2、…、NDnとして予め記憶部85に記憶されており、選択部86を用いて稼働情報ND1、ND2、…、NDnのうちから必要な稼働情報を選択することで、記憶部85から必要な稼働情報を読み出し、イオン発生コントローラ81を介して可変抵抗器41〜43の抵抗値が設定可能となっている。
【0044】
動作モードMNは、選択されている動作モードを識別するための情報であり、回転速度MSは、送風機51のモータの回転速度MSに関する情報であり、放電電圧EVは、イオン発生器60の放電電極間に印加する放電電圧に関する情報である。
【0045】
さらに、基準抵抗値RBは、可変抵抗器41に設定される抵抗値に関する情報である。さらにまた差分情報RDは、所定の導電性部材に接続されている可変抵抗器の抵抗値と、所定の導電性部材に隣接する導電性部材に接続されている可変抵抗器の抵抗値との差分に関する情報である。ここで基準抵抗値RB及び差分情報RDを含むデータ構成とする代わりに、可変抵抗器41〜43の抵抗値をそれぞれ含むものとしても構わない。
【0046】
なお、稼働情報として送風機51の動作条件の1つである回転速度MSが含まれている場合を例示しているが、送風機51の他の動作条件が含まれていても構わない。同様に、稼働情報にはイオン発生器60の動作条件の1つである放電電圧EVが含まれている場合を例示しているが、イオン発生器60の他の動作条件が含まれても構わない。ここで回転速度MSは、気体媒体がダクト10内を移動する移動量に対応する情報である。また放電電圧EVは、イオン発生器60を制御する制御情報に対応する情報である。
【0047】
なお、本実施形態では、イオン発生コントローラ81によって、稼働情報ND1、ND2、…、NDnの中から選択された稼働情報に含まれる抵抗値情報を読み出し、各々の可変抵抗器41〜43に設定される。また各々の稼働情報に含まれる抵抗値情報は、可変抵抗器41、可変抵抗器42、可変抵抗器43の順で高い抵抗値が設定可能に構成されている。つまり導電性部材31〜33の配置位置に応じた複数の抵抗値情報を有し、抵抗値は、複数の抵抗値情報の中から1つの抵抗値情報を選択することによって設定される。さらに各々の稼働情報は、送風機51又はイオン発生器60の動作条件の1つである回転速度MS、放電電圧EVを含んでいる。このことから、送風機51又はイオン発生器60の動作条件の変更を行った場合等においても、電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出することができる。
【0048】
図3は、イオン発生コントローラ81の処理手順を示すフローチャートであり、同図を用いてイオン発生コントローラ81の処理手順を説明する。
【0049】
先ず、イオン発生装置1を稼働させる際に用いる稼働情報を選択する(S100)。ここで、稼働情報を選択する方法としては、各種方法が採用され得る。たとえば、記憶部85に記憶されている稼働情報ND1、ND2、…、NDnの動作モードMNを読み出し、不図示の表示手段に動作モードMNを一覧表示させ、表示された動作モードMNの中から単一の動作モードMNを利用者に選択させることによって稼働情報を選択させるよう構成することが可能である。
【0050】
もしくは、イオン濃度を検出する不図示のイオン検出センサによって放出口16から発生しているイオン濃度を検出する。そして予め定められた基準のイオン濃度と、検出されたイオン濃度を比較する。次いで基準のイオン濃度よりも検出されたイオン濃度の方が低い場合には、イオン濃度を高くする稼働情報を選択し、基準のイオン濃度よりも検出されたイオン濃度よりが高い場合には、イオン濃度を低くする稼働情報をイオン発生コントローラ81が記憶部85より選択することで実現することも可能である。
【0051】
もしくは、所望する回転速度MSと放電電圧EVを決定し、決定された回転速度MSと放電電圧EVが同じ内容になっている複数の稼働情報を記憶部85より抽出する。そして、イオン発生器60のいずれか一方の放電電極に流れる電流値を計測し、該電流値が最大となるように、抽出された複数の稼働情報の中から1つの稼働情報を選択することも可能である。
【0052】
S100の処理に続いて、選択された稼働情報の回転速度MSを、送風機51用の駆動回路55に信号出力し、送風機51のモータ速度を設定する(S101)。
【0053】
続いて、選択された稼働情報の放電電圧EVを、イオン発生器60用の駆動回路65に信号出力し、イオン発生器60の放電電極間に印加する放電電圧を設定する(S102)。さらに、選択された稼働情報の基準抵抗値RBを可変抵抗器41に設定する(S103)。
【0054】
次いで、基準抵抗値RBに差分情報RDを加算した抵抗値R2と、抵抗値R2に差分情報RDを更に加算した抵抗値を、可変抵抗器42及び可変抵抗器43にそれぞれ設定する(S104、S105)。
【0055】
最後に、送風機51及びイオン発生装置60の駆動を開始する信号を、それぞれの駆動回路55及び駆動回路65に出力し(S106)、処理を終了する。
【0056】
このように、本実施の形態に係るイオン発生装置1では、流路ユニット21〜23毎に導電性部材31〜33が配設され、各々の導電性部材に接続されている可変抵抗器41〜43の抵抗値がイオン発生調整器により設定される。このことから、導電性部材が配設された領域毎に電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出することができる。
【0057】
〔第2の実施の形態〕
図4は、第2の実施の形態に係るイオン発生装置2の概略構成を示し、本図を用いて、本発明に係るイオン発生装置2について、以下に説明する。なお、前述した構成要素と同一の構成要素には、同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の説明は省略する。
【0058】
また、イオン発生装置2は、上述したイオン発生装置1との比較において、流路ユニット25の構成が異なっている。さらに、イオン発生調整器90に記憶される稼働情報の構成、及びイオン発生コントローラ91における処理内容が異なっている。
【0059】
ダクト11は、送風された気体媒体を、発生させたイオンとともに放出口16より外部に放出するための流路を形成している。またダクト11は、誘電体材質の単一部材又は複数部材の組み合せで構成されており、筒形状の空洞部分が気体媒体の流路となっている。
【0060】
ダクト11は、イオン発生ユニット20、流路ユニット25、22、23の4つの部材を連結することによって流路を形成する。
【0061】
図4に示すようにイオン発生ユニット20は、送風ユニット50と流路ユニット25に連結され、送入口15と、送入口15から流路ユニット25までの流路D0を形成する。
【0062】
そして、イオン発生ユニット20には、流路D0においてイオンを発生させるイオン発生器60が配設されている。ここでイオン発生器60は、駆動回路65を通じて、動作条件の設定が可能である。イオン発生器60に設定可能な動作条件としては、例えばイオン発生器60の放電電極間に印加する放電電圧が挙げられる。
【0063】
次いで流路ユニット25は、イオン発生ユニット20と流路ユニット22に連結され、流路D1を形成する。また流路ユニット25は、流路D1の内壁表面を形成する内壁面形成部材251と被覆部材252から形成され、これら部材の間には、流路D1の内壁表面とほぼ同じサイズの導電性部材35が内壁表面に沿って配設されている。ここで被覆部材252は、導電性部材35を利用者の接触等から保護するために設けられている。また導電性部材35は、電気的に接地可能に構成された可変抵抗器41に接続されている。
【0064】
流路ユニット22は、流路ユニット25と流路ユニット23に連結され、流路D2を形成する。さらに流路ユニット23は、流路ユニット22に連結され、送風された気体媒体を外部空間に放出する放出口16を含む流路D3を形成する。
【0065】
流路ユニット22、23には、流路D2、D3の内壁表面を形成する導電性部材32、33がそれぞれ配設されている。また導電性部材32、33は、電気的に接地可能に構成された可変抵抗器42、43に接続されている。
【0066】
イオン発生調整器90は、イオン発生コントローラ91、イオン発生コントローラ91に接続された記憶部95及び選択部96から構成されている。
【0067】
イオン発生コントローラ91は、送風機51用の駆動回路55、イオン発生器60用の駆動回路65、及び各々の可変抵抗器41〜43と接続され、信号の入出力によって、送風機51又はイオン発生器60の駆動処理、停止処理、動作条件等の設定処理、及び可変抵抗器41〜43の抵抗値設定処理を行う。
【0068】
記憶部95には、各々の可変抵抗器41〜43に設定する抵抗値に関する情報を含む稼働情報SD1、SD2、…、SDnが記憶されている。ここで稼働情報は、イオン発生装置2を稼働させる際に、送風機51、イオン発生器60、及び可変抵抗器41〜43を初期設定するために用いられる情報である。また選択部96は、記憶部95に記憶されている稼働情報SD1、SD2、…、SDnの中から1つの稼働情報を選択するために用いられる。
【0069】
図5は、稼働情報のデータ構成を説明するためのものである。稼働情報は、動作モードMN、送風機51の動作条件の1つである回転速度MS、イオン発生器60の動作条件の1つである放電電圧EV、第1基準抵抗値R1B、第2基準抵抗値R2B及び差分情報RDから構成されている。つまり稼働情報を構成する各情報は、一組の情報群として関連付けられて記憶部95に記憶されている。
【0070】
各々の稼働情報は、SD1、SD2、…、SDnとして予め記憶部95に記憶されており、選択部96を用いて稼働情報SD1、SD2、…、SDnのうちから必要な稼働情報を選択することで、記憶部95から必要な稼働情報を読み出し、イオン発生コントローラ91を介して可変抵抗器41〜43の抵抗値が設定可能となっている。
【0071】
動作モードMNは、選択されている動作モードを識別するための情報であり、回転速度MSは、送風機51のモータの回転速度MSに関する情報であり、放電電圧EVは、イオン発生器60の放電電極間に印加する放電電圧EVに関する情報である。ここで動作モードMN、回転速度MS及び放電電圧EVは、図2によって上述した、イオン発生装置1の記憶部85に記憶される稼働情報と同じデータ構成で構成されている。
【0072】
さらに、第1基準抵抗値R1Bには可変抵抗器41に設定される抵抗値、第2基準抵抗値R2Bには可変抵抗器42に設定される抵抗値が記憶されている。また差分情報RDには、可変抵抗器42の抵抗値と可変抵抗器43の抵抗値との差分が記憶されている。
【0073】
そして、流路ユニット25と流路ユニット22、23の構成は、流路の内壁表面を誘電体部材で形成しているか、それとも導電性部材で形成しているかという点で異なる。また可変抵抗器41に設定される抵抗値は、可変抵抗器42、43に設定される抵抗値に比べ非常に低い抵抗値が設定される。このことから、可変抵抗器41の抵抗値設定に用いられる第1基準抵抗値R1Bと、可変抵抗器42、43の抵抗値設定に用いられる第2基準抵抗値R2Bを含むデータ構成を採用している。ここでこのようなデータ構成とする代わりに、可変抵抗器41〜43の抵抗値をそれぞれ含むものとしても構わない。
【0074】
本実施形態では、イオン発生コントローラ91によって、稼働情報SD1、SD2、…、SDnの中から選択された稼働情報に含まれる抵抗値情報を読み出し、各々の可変抵抗器41〜43に設定される。また各々の稼働情報に含まれる抵抗値情報は、可変抵抗器41とは別に、可変抵抗器42、可変抵抗器43の順で高い抵抗値が設定可能に構成されている。そしてこれらの可変抵抗器42、43に接続されている導電性部材32、33は、流路を形成する導電性部材と誘電体部材の構成が同一である流路ユニット22、23に配設されている。このことから、ダクトの部材又は材質等のダクト構成に係る条件によって異なる領域毎に、電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出することができる。
【0075】
図6は、イオン発生コントローラ91の処理手順を示すフローチャートであり、同図を用いてイオン発生コントローラ91の処理手順を以下に説明する。
【0076】
先ず、イオン発生装置2を稼働させる際に用いる稼働情報を選択する(S200)。ここで、稼働情報を選択する方法としては、各種方法が採用され得る。たとえば、記憶部95に記憶されている稼働情報SD1、SD2、…、SDnの動作モードMNを読み出し、不図示の表示手段に動作モードMNを一覧表示させ、表示された動作モードMNの中から単一の動作モードMNを利用者に選択させることによって稼働情報を選択させるよう構成することが可能である。
【0077】
もしくは、イオン濃度を検出する不図示のイオン検出センサによって放出口16から発生しているイオン濃度を検出する。そして予め定められた基準のイオン濃度と、検出されたイオン濃度を比較する。次いで基準のイオン濃度よりも検出されたイオン濃度の方が低い場合には、イオン濃度を高くする稼働情報を選択し、基準のイオン濃度よりも検出されたイオン濃度よりが高い場合には、イオン濃度を低くする稼働情報をイオン発生コントローラ91が記憶部95より選択することで実現することも可能である。
【0078】
もしくは、所望する回転速度MSと放電電圧EVを決定し、決定された回転速度MSと放電電圧EVが同じ内容になっている複数の稼働情報を記憶部95より抽出する。そして、イオン発生器60のいずれか一方の放電電極に流れる電流値を計測し、該電流値が最大となるように、抽出された複数の稼働情報の中から1つの稼働情報を選択することも可能である。
【0079】
S200の処理に続いて、選択された稼働情報の回転速度MSを、送風機51用の駆動回路55に信号出力し、送風機51のモータ速度を設定する(S201)。
【0080】
続いて、選択された稼働情報の放電電圧EVを、イオン発生器60用の駆動回路65に信号出力し、イオン発生器60の放電電極間に印加する放電電圧を設定する(S202)。S200からS202までの処理は、図3のS100からS102までの処理手順と同一である。
【0081】
S202に続いて、選択された稼働情報の第1基準抵抗値R1Bを可変抵抗器41に設定する(S203)。続いて、選択された稼働情報の第2基準抵抗値R2Bを可変抵抗器42に設定する(S204)。続いて、第2基準抵抗値R2Bに差分情報RDを加算した抵抗値を可変抵抗器43に設定する(S205)。最後に、送風機51及びイオン発生装置60の駆動を開始する信号を、それぞれの駆動回路55及び駆動回路65に出力し(S206)、処理を終了する。
【0082】
このように、本実施の形態に係るイオン発生装置2では、流路ユニット25、22、23毎に導電性部材35、32、33が配設され、各々の導電性部材に接続されている可変抵抗器41〜43の抵抗値が設定される。このことから、導電性部材が配設された領域毎に電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保つことができ、高濃度のイオンを放出することができる。
【0083】
上述したように、本発明のイオン発生装置では、流路全域において、電荷の回収能力と供給能力のバランスを良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出することができる。
【0084】
ここで、本実施の形態に係るイオン発生装置では、イオン発生コントローラ81、91が、上述した図3、図6に従う処理手順を制御プログラムとして記憶部85、95から読み出して実行する場合を説明した。しかしながらイオン発生コントローラ81、91に読み出される制御プログラムについては、イオン発生装置で読み取り可能な記録媒体に予め記録させ、プログラム製品として提供することもできる。このような記録媒体としては、CD(Compact Disc)又はメモリカードなどが挙げられる。あるいは、イオン発生装置に内蔵するハードディスクなどの記録媒体に記録させて提供することもできる。さらに、インターネットを含む各種ネットワークを介するダウンロードによって提供することもできる。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1,2 イオン発生装置
10,11 ダクト
15 送入口
16 放出口
20 イオン発生ユニット
21,22,23,25 流路ユニット
251 内壁面形成部材
252 被覆部材
31,32,33,35 導電性部材
41,42,43 可変抵抗器
50 送風ユニット
51 送風機
55 駆動回路(送風機用)
60 イオン発生器
65 駆動回路(イオン発生器用)
80,90 イオン発生調整器
81,91 イオン発生コントローラ
85,95 記憶部
86,96 選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体媒体の流路を形成するダクトと、
前記流路内にイオンを発生させるイオン発生器と、
前記流路に沿って離隔して、前記ダクトに配設される複数の導電性部材と、
前記複数の導電性部材毎に、個別に接続され、電気的に接地可能な複数の抵抗器とを有し、
前記複数の抵抗器の抵抗値は、前記導電性部材の配設位置に応じて、各々設定されることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記抵抗値は、前記イオン発生器と前記導電性部材との前記流路上の距離に応じて、設定されることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記抵抗値は、前記流路上の距離が長いほど、高い値に設定されることを特徴とする請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記導電性部材の配設位置に応じた複数の抵抗値情報を有し、
前記抵抗値は、前記複数の抵抗値情報の中から単一の抵抗値情報を選択することによって設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記複数の抵抗値情報の各々は、前記イオン発生装置を稼動させる際に用いられる稼働情報と関連付けられて記憶されていることを特徴とする請求項4に記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記稼働情報は、気体媒体が前記ダクト内を移動する移動量に対応した情報を含むことを特徴とする請求項5に記載のイオン発生装置。
【請求項7】
前記稼働情報は、前記イオン発生器を制御する制御情報に対応した情報を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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