説明

イオン発生装置

【課題】 流路を形成するダクト毎にアース接続しなくとも、内壁面の電荷量を良好な状態に保って、高濃度のイオンを発生させることが可能なイオン発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 負イオンを発生させる負イオン発生器50と、正イオンを発生させる正イオン発生器55と、負イオン発生器50で発生させたイオンを含む気体媒体の第1流路11を形成する第1ダクト10と、正イオンを含む気体媒体の第2流路21を形成する第2ダクト20と、第1ダクト10の内壁面を形成する第1導電性層30と、第2ダクトの内壁面を形成する第2導電性層35とを有し、第1導電性層30と第2導電性層35は、可変抵抗器40を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正イオン及び負イオンを発生させるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内の空気の浄化、殺菌あるいは消臭などを行なうために、イオン発生装置が使用されている。このようなイオン発生装置の多くは、負イオンだけを発生させるイオン発生装置と、正イオン及び負イオンを発生させるイオン発生装置の2種類に大別される。
【0003】
前者のイオン発生装置は、リラックス効果を生むことができ、後者のイオン発生装置は、空気中に浮遊するカビ菌又はウィルスの分解、ニオイの除去、集塵等などの効果を生むことができるとされている。
【0004】
従来の正イオン及び負イオンを発生させるイオン発生装置としては、正イオン又は負イオンを放出するために形成された各々の流路の途中に、正イオン又は負イオンを発生させるイオン発生器を各々配設し、送風機から送出される空気とともに、発生させた正イオン及び負イオンを各々の流路の放出口から外部空間に放出するものが知られている。ここで、該イオン発生装置のイオン発生器は、放電電極間に高圧の放電電圧を印加することにより、正イオン又は負イオンを発生させている。
【0005】
また、発生させたイオンの一部は、流路を形成するダクトの内壁面に衝突するので、内壁面をイオンの極性と同極性に帯電させることになるが、この内壁面を帯電させている電荷量は、時間の経過にともなって徐々に増加する。内壁面が同極性に帯電していると、発生させたイオンは、内壁面から反発力を受けるが、内壁面の帯電電荷量が増加することに伴い、該反発力も徐々に大きくなっていく。これにより、該イオンが内壁面に衝突する機会が減少し、結果的に流路空間内のイオン量は増加する。
【0006】
しかしながら、流路空間内のイオン量が増加しすぎると、流路空間内のイオンは、放出口方向へ移動できなくなったり、又は放出口と逆方向に移動したりすることとなり、結果的に高濃度のイオンが放出されなくなるという課題があった。
【0007】
このような従来技術の課題に対し、内壁面の電荷量を良好な状態に保って、高濃度のイオンを放出させる試みが特許文献1に開示されている。
【0008】
特許文献1には、図3に示す空調ダクト装置が開示されている。該空調ダクト装置には、可変抵抗器141が設けられており、導電体の空気搬送路131に電荷を蓄えることができるようになっている。ここで可変抵抗器141の一端は該空気搬送路131、他端はアース180に各々電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−277010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されている空調ダクト装置において、可変抵抗器を該装置の筐体に接続することでは、筐体全体が帯電して高濃度のイオンが十分に放出されなくなってしまう。このことから、可変抵抗器に接続されているアース線を、例えばACコンセントのアース線接続用端子に接続して利用する必要があった。
【0011】
しかしながら、一般的にアース線の接続は利用者に委ねられることから、アースされずに使用される場合があり、このような場合、高濃度のイオンが十分に放出されなくなってしまう。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アース接続しなくても、内壁面の電荷量を良好な状態に保って、高濃度のイオンを発生させることが可能なイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のイオン発生装置は、イオンを発生させる第1イオン発生器と、イオンを発生させる第2イオン発生器と、第1イオン発生器で発生させたイオンを含む気体媒体の流路を形成する第1ダクトと、第2イオン発生器で発生させたイオンを含む気体媒体の流路を形成する第2ダクトと、第1ダクトの内壁面を形成する第1導電性層と、第2ダクトの内壁面を形成する第2導電性層とを有し、第1導電性層と第2導電性層は、抵抗器を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、第1イオン発生器は、第2イオン発生器が発生させるイオンと異極のイオンを発生させることを特徴とする。
【0015】
また好ましくは、第1導電性層は、直流電源器の一方の電極に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のイオン発生装置では、流路を形成するダクト毎にアース接続しなくても、内壁面の電荷量を良好な状態に保ち、高濃度のイオンを発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態に係るイオン発生装置1の概略構成を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係るイオン発生装置2の概略構成を示す図である。
【図3】従来の空調ダクト装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るイオン発生装置1の概略構成を示し、本図を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0019】
イオン発生装置1は、第1ダクト10、負イオン発生ユニット15、第2ダクト20、正イオン発生ユニット25、送風機ユニット60から構成されている。
【0020】
ここで、ダクト10及びダクト20は、送風又は吸入された気体媒体を外部に放出するための流路が形成されたダクトの一実施形態を示している。
【0021】
また、流路の形成は、筒形状の空洞部分が気体媒体の流路になるように、誘電体材質の単一部材又は複数部材の組み合せによって形成される。ここで、流路の形状は、流路全体にわたって断面寸法が均一でありかつ流路方向に直線的なものを採用しているが、該形状に限定されるものではない。
【0022】
送風機ユニット60は、気体媒体を流路の上流から下流に移動させ、外部に放出するための一実施形態を示す。したがって、該送風機ユニット60は、流路の上流側に配設され、送風することによって気体媒体を上流から下流にまで移動させる。ここで、流路の下流側に配設し吸入することによって気体媒体を上流から下流にまで移動させる態様としても構わない。
【0023】
図1において、ダクト10は、送風された気体媒体を、発生させたイオンとともに外部に放出するための第1流路11を形成し、ダクト20は、送風された気体媒体を、発生させたイオンとともに外部に放出するための第2流路21を形成する。
【0024】
第1流路11は、第1ダクト10と負イオン発生ユニット15の連結によって形成され、第2流路21は、第2ダクト20と正イオン発生ユニット25の連結によって形成される。
【0025】
また送風機ユニット60には送風機61が設けられており、装置外部から取り入れた空気等の気体媒体を、第1ダクト10の送入口12及び第2ダクト20の送入口22に送風する。
【0026】
ここで、負イオン発生ユニット15及び正イオン発生ユニット25は、送風又は吸入された気体媒体を外部に放出するまでの流路内において、イオンを発生させるための一実施形態を示している。イオンを発生させるイオン発生器の配設に係り、流路を形成するダクトの壁面にイオン発生器を配設し、壁面方向から流路内にイオンを発生させる態様が考えられるが、このような態様に限定されるものではない。
【0027】
図1において、負イオン発生ユニット15及び正イオン発生ユニット25は、送風機ユニット60に連結されている。そして負イオン発生ユニット15は、送風機ユニット60から送風される気体媒体を送入する第1送入口12と、該第1送入口12から第1ダクト10までの第1流路11を形成する。また第2イオン発生ユニット25は、送風機ユニット60から送風される気体媒体を送入する第2送入口22と、該第2送入口12から第2ダクト20までの第2流路21を形成する。
【0028】
そして、負イオン発生ユニット15には、負イオンを第1流路11に発生させる負イオン発生器50、正イオン発生ユニット25には、正イオンを第2流路21に発生させる正イオン発生器55が各々配設されている。
【0029】
また、第1ダクト10及び第2ダクト20には、流路の内壁表面に帯電した電荷を回収するために、流路の内壁表面に沿って導電性層が形成される。
【0030】
図1において、第1ダクト10には第1流路11の内壁表面を形成する第1導電性層30、第2ダクト20には第2流路21の内壁表面を形成する第2導電性層35が各々形成されている。ここで、第1流路11又は第2流路21の内壁表面を誘電体層で形成し、第1流路11又は第2流路21に沿って第1導電性層30又は第2導電性層35が形成される態様としても構わない。
【0031】
そして、第1導電性層30と第2導電性層35は、高抵抗に調整された可変抵抗器40を介して、電気的に接続されている。ここで、本実施形態において、可変抵抗器40を接続するイオン発生装置を例示しているが、固定抵抗器を採用することも可能である。しかしながら、可変抵抗器を用いることで、温度、湿度などの周辺環境、またはイオン発生量や風量などの装置の稼働条件などに応じて、該可変抵抗器の抵抗値を適宜調整することが可能となる。
【0032】
このように、本発明のイオン発生装置1では、高抵抗の可変抵抗器40を介して、第1導電性層30と、異極に帯電している第2導電性層35とを電気的に接続することで、第1導電性層30が形成されている第1流路11の内壁面に蓄積された電荷を回収している。一方で、高抵抗の可変抵抗器40を介して、第2導電性層35と、異極に帯電している第1導電性層30とを電気的に接続することで、第2導電性層35が形成されている第2流路21の内壁面に蓄積された電荷を回収している。
【0033】
このことから、第1導電性層30又は第2導電性層35を電気的にアース接続しなくても、第1流路11の内壁面又は第2流路21の内壁面の電荷量を良好な状態に保つことができ、高濃度のイオンを発生させることができる。
【0034】
〔第2の実施の形態〕
図2は、第2の実施の形態に係るイオン発生装置2の概略構成を示し、本図を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、前述した構成要素と同一の構成要素には、同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の説明は省略する。
【0035】
また、イオン発生装置2は、上述したイオン発生装置1との比較において、直流電源器45を含んで構成される点でのみ異なっている。
【0036】
図2に示されるように、第1導電性層30は、直流電源器45の一方の電極と接続されている。ここで、直流電源器45の他方の電極は、第1導電層30と接続されずに、例えばアース接続される。また、イオン発生装置2では、第1導電性層30に直流電源器45を接続しているものとしているが、第2導電性層35に直流電源器45を接続するものとしても構わない。
【0037】
このように、本発明のイオン発生装置2では、第1導電性層30に直流電流器45が接続されていることから、直流電源器45によって第1流路11の内壁面の電荷量を調整することができる。そして、可変抵抗器40によって第2流路21の内壁面の電荷量を調整することができる。
【0038】
このことから、第1流路11又は第2流路21毎に、内壁面の電荷量を良好な状態に調整することができる。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】

1 イオン発生装置
10 第1ダクト
11 第1流路
12 第1送入口
15 負イオン発生ユニット
20 第2ダクト
21 第2流路
22 第2送入口
25 正イオン発生ユニット
30 第1導電性層
35 第2導電性層
40 可変抵抗器
45 直流電源器
50 負イオン発生器
55 正イオン発生器
60 送風機ユニット
61 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生させる第1イオン発生器と、
イオンを発生させる第2イオン発生器と、
前記第1イオン発生器で発生させたイオンを含む気体媒体の流路を形成する第1ダクトと、
前記第2イオン発生器で発生させたイオンを含む気体媒体の流路を形成する第2ダクトと、
前記第1ダクトの内壁面を形成する第1導電性層と、
前記第2ダクトの内壁面を形成する第2導電性層とを有し、
前記第1導電性層と前記第2導電性層は、抵抗器を介して電気的に接続されていることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記第1イオン発生器は、前記第2イオン発生器が発生させるイオンと異極のイオンを発生させることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記第1導電性層は、直流電源器の一方の電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−114892(P2013−114892A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259899(P2011−259899)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)