イオン移動度に対するイオン光学ドレイン
試料分析システムは、試料分析システムから残留イオンを除去するためのイオン除去機構を組み込む。イオン除去機構は、イオン移動度フィルタを質量分析器計に接続する、イオン光学アセンブリの中に含むことができる。試料分析システムによって分析される試料は、イオン移動度フィルタの中へ進入させられ得る。イオン移動度フィルタは、試料のイオンを濾過して、濾過したイオン群をイオン光学アセンブリに通す。イオン光学アセンブリは、イオン群の中のイオンのうちのいくつかまたは全てが検出される質量分析器に、濾過したイオン群を輸送する。イオン除去機構は、次いで、第2の濾過した群を通過させる前に、第1の濾過した群から残った全てまたは実質的に全ての残留イオンをイオン光学系から除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本願は、米国仮特許出願第61/160,925号(2009年3月17日出願、名称「Ion Optics Drain For Ion Mobility,」)の利益を主張する。該出願の全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分離デバイスは、一般的に、関心の試料成分を分析する際にさらなる選択性を提供するように、質量分光器システムに組み込まれる。これらのシステムは、複数の異なる検体を同時に監視することを可能にする。しかしながら、イオン滞留時間のため、複数の異なる検体を処理することは、化学的クロストークの問題につながる可能性がある。化学的クロストークは、一方のサンプルからのイオンが、もう一方のサンプルからのイオンに関して得られたデータを汚染した時に生じる。
【0003】
故に、化学的クロストークを低減または排除するように、質量分光器システムからイオンを除去する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
説明されるシステムおよび方法は、とりわけ、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するために、試料分析システムの中にイオン除去機構を組み込む。イオン除去機構は、イオン移動度フィルタを質量分析器に接続する、イオン光学アセンブリの中に含むことができる。試料分析システムによって分析される試料は、イオン移動度フィルタの中へ進入させられ得る。イオン移動度フィルタは、試料のイオンを濾過して、濾過したイオン群をイオン光学アセンブリに通す。イオン光学アセンブリは、該イオン群の中のイオンのうちの一部または全てが検出される質量分析器に、濾過したイオン群を輸送する。イオン除去機構は、次いで、第2の濾過した群を通過させる前に、第1の濾過した群から残った残留イオンの全てまたは大部分をイオン光学系から除去する。
【0005】
一局面では、試料分析システムは、第1のイオン群を通過させるための、イオン移動度フィルタと、第1のイオン群を分析するための、質量分析器と、イオン移動度フィルタからイオン質量分析器に第1のイオン群を輸送するための、イオン光学アセンブリであって、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためのイオン除去機構を含む、イオン光学アセンブリとを含む。
【0006】
試料分析システムは、イオン移動度フィルタ、質量分析器、およびイオン光学アセンブリのうちの1つに、または3つ全ての組み合わせに動作可能に接続され、それぞれの動作を制御するためのコントローラを含むことができる。コントローラは、イオンをイオン移動度フィルタおよびイオン光学アセンブリに通過させる時間を表す、少なくとも第1の期間と、イオン除去機構を動作させてイオン光学アセンブリから残留イオンを除去するための時間を表す、少なくとも第2の期間とを規定するためのタイマーを含むことができる。
【0007】
イオン移動度フィルタは、低電場移動度セパレータ、高電場移動度セパレータ、微分移動度セパレータのうちの1つまたは複数から選択することができる。一局面では、イオン移動度フィルタは、電場非対称波形イオン移動度システム(FAIMS)、微分型移動度分光法(DMS)、イオン移動度分光法(IMS)、または微分型移動度分析器(DMA)のうちの1つまたは複数であることができる。
【0008】
別の局面では、イオン移動度フィルタは、第1の圧力領域の中に位置することができ、質量分析器は、第1の圧力領域とは異なる第2の圧力領域の中に位置することができ、イオン光学アセンブリは、第1および第2の圧力領域の中の圧力に対して中間の圧力を有する第3圧力領域の中に位置することができる。第3の圧力領域は、複数の異なる圧力領域を含むことができる。
【0009】
一局面では、イオン光学アセンブリは、多極子アレイ、リングガイド、イオン漏斗、または進行波デバイスのうちの1つまたは複数であることができる。
【0010】
別の局面では、イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように構成される、多極子アレイの少なくとも2つの極に、DC電位を印加するための電源を含む。イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから残留イオンを排出するために多極子アレイの極のうちの少なくとも2つの間に電場を生成するように、DC電位を印加することができる。
【0011】
さらに別の局面では、イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するようにDC電位を発生させるための電源と連通している少なくとも1つの電極を含む。イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから外へ残留イオンを半径方向に排出する電場を生成するDC電位を発生させることができる。イオン除去機構はまた、イオン光学アセンブリから外へ残留イオンを排出する軸方向電場を作成するDC電位を発生させることもできる。少なくとも1つの電極は、LINAC、抵抗イオンガイド、レンズ電極スタック、イオン漏斗、または進行波イオンガイドのうちの1つまたは複数であることができる。
【0012】
一局面では、イオン除去機構は、イオン光学系を通したイオン運動を加速するようにDC電位を発生させるための、電源と連通している少なくとも1つの電極を含む。別の局面では、コントローラは、イオンを脱集束させ、かつイオン光学アセンブリからイオン除去するように、イオン光学アセンブリ内のRF電位を減少させる、または除去するためのイオン除去機構と連通している。
【0013】
1つのプロセスでは、試料を分析するための方法は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップと、イオン移動度フィルタを使用して、第1のイオン群を濾過するステップと、イオン光学アセンブリを使用して、イオン移動度フィルタから質量分析器に第1のイオン群を輸送するステップと、質量分析器を使用して、第1のイオン群を分析するステップとを含む。第1のイオン群を濾過するステップ、および第1のイオン群を輸送するステップは、第1の期間中に生じることができる。イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップは、第2の期間中に生じることができる。第3の期間中に、イオン移動度フィルタは、第2のイオン群を濾過することができ、イオン光学アセンブリは、イオン移動度フィルタから前記質量分析器に前記第2のイオン群を輸送することができる。
【0014】
別のプロセスにおいて、試料を分析するための方法は、a)第1の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第1の部分を選択し、イオン光学アセンブリを使用してイオンの第1の部分を質量分析器に透過させるステップと、b)第2の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第2の部分を選択し、イオン光学アセンブリを使用してイオンの第2の部分を質量分析器に透過させるステップと、c)第3の期間中に、イオン光学アセンブリの少なくとも第1の部分から残留イオンを空にするステップであって、第3の期間は、第1および第2の軒間の間に生じる、ステップとを含む。ステップa)からステップc)は、反復的に繰り返すことができる。
【0015】
本出願人の教示のこれらの特徴および他の特徴を、本明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の前述および他の目的および利点は、添付図面を参照して、以下の本発明のさらなる説明から、より完全に理解されるであろう。当業者は、以下に記載される図面が例示のみを目的とすることを理解されるであろう。図面は、いかなる形であれ本出願人の教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図1】図1は、本発明の例示的一実施形態による、質量分光器システムの概略図である。
【図2】図2は、図1に記載のシステムでの使用に好適な質量分光器システムへの移動度インターフェースの分解図である。
【図3】図3は、図1に記載のシステムでの使用に好適なイオン光学系および質量分析器の構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、図3に記載のシステムに含むのに好適な4極子イオン光学系アレイの断面図である。
【図5】図5は、4極子イオン光学系アレイの断面図、およびイオン除去機構の例示的な構成の図である。
【図6】図6は、4極子イオン光学系の断面図、およびドレイン電極を使用したイオン除去機構の別の可能な構成の図である。
【図7】図7は、4極子イオン光学系の断面図、およびイオン除去機構の別の可能な構成の図である。
【図8】図8は、図5に示されるように設定したデバイスを使用して収集される、多重反応モニタリングデータの線図である。
【図9】図9は、図7に示されるようにデバイスを動作するためのタイミング図である。
【図10−1】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【図10−2】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【図10−3】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【図10−4】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願人の教示は、種々の実施形態とともに説明されているが、本出願人の教示を当該の実施形態に限定することを意図したものではない。逆に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、変形物、および同等物を包含する。例えば、例示されるシステムは、イオン光学系の中でのイオン除去を表すが、イオン除去は、イオン源、移動度分離デバイス、イオン源からの管路、質量分析器セル、または質量分光システム内の他の場所の中で成され得る。
【0018】
図1は、質量分光器システム10の概略図を示す。示される質量分光器システム10は、試料導入システム11と、イオン源15と、イオン移動度分離デバイス12と、計測光学系14と、イオン除去機構24と、質量分析器18と、コントローラ20と、タイマー22とを備える。コントローラ20は、試料導入システム11、イオン源15、イオン移動度分離デバイス12、計測光学系14、および質量分析器18に接続される。
【0019】
試料導入システム11は、当業者に公知のあらゆる好適な試料導入システムであることができる。試料導入システム11は、イオン源15に接続される。イオン源15は、導入システム11と一体的であるか、または導入システム11と別体であることができ、当業者に公知のあらゆる好適なイオン源であることができる。例えば、2つの要素11および15は、溶液中に溶解された試料検体からイオンを発生させる能力を伴う、エレクトロスプレー源を備えることができる。試料導入システム11およびイオン源15の他の例示的な配設は、大気圧化学イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)、リアルタイム直接分析(DART)、脱離エレクトロスプレー(DESI)、大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化(AP MALDI)、マルチモードイオン化源の配設、または複数の導入システムおよび/もしくは導入源を伴う構成である。しかしながら、あらゆる好適な試料導入システムおよびイオン源を使用することができる。
【0020】
特定の実施形態では、試料成分は、試料導入システム11を通して質量分光器システム10の中に挿入される。ガス流16は、イオン移動度分離デバイス12を通して試料導入システム11およびイオン源15から試料を輸送する。当業者は、イオン源とガス流16との間の領域の中に対向ガス流を含むことが共通であることを理解されるであろう。対向ガス流(カーテンガス)は、イオンをクラスタ分離し、かつ中性粒子が真空システムに進入することを防止する。イオン移動度分離デバイス(イオン移動度フィルタとしても公知である)12は、ガスを通したイオン種の移動度または速度に基づいて、試料から所望の1つまたは複数のイオン群を分離する。特定のイオン種の移動度は、サイズおよび形状を含む、多数のパラメータに依存する。イオン移動度デバイス12は、質量が同一である異なるイオンを、システム10の質量分析器18等の質量分析器の前に区別できるように、同重核化合物を分離することを可能にする。図1に記載の質量分光器システム10で使用されるイオン移動度分離デバイスは、当業者に公知のあらゆるイオン移動度デバイス(例えば、電場非対称波形イオン移動度システム(FAIMS)、微分型移動度分光法(DMS)、イオン移動度分光法(IMS)、微分型移動度分析器(DMA)、高電場、低電場等)であってもよいことを理解されるであろう。コントローラ20は、イオン移動度デバイス12に連結され、試料から特定のイオン種を選択するように移動度フィルタの設定を制御することができる。イオン移動度デバイスによって所望のイオン種が濾過されると、濾過したイオン群は、イオン光学14に通される。
【0021】
イオン光学アセンブリ14は、イオンをイオン光路に集束させて、イオンを質量分析器18に方向付けるように、RF電場を使用することができる。システム10で使用されるイオン光学アセンブリは、当業者に公知のあらゆるイオン光学系(例えば、多極子アレイ、抵抗イオンガイド、イオン漏斗、進行波イオンガイド)で構成され得ることを理解されるであろう。示されるイオン光学アセンブリ14は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように、イオン除去機構24を備える。コントローラ20は、イオン光学アセンブリ14およびイオン除去機構24に連結され、これらに対するRF電位およびDC電位の印加を制御することができる。
【0022】
イオンは、イオン光学アセンブリ14を出た後に、イオン光路を介して、イオンがそれらの質量電荷比(m/z)に基づいて分離および検出される、質量分析器18に進行する。検出されたイオンのデータは、メモリに記憶して、コンピュータまたはコンピュータソフトウェアによって(図示せず)分析することができる。コントローラ20は、その動作を制御するように、質量分析器18に連結される。
【0023】
図1に記載のコントローラ20は、タイマー22を備える。種々の実施形態では、質量分光器システム10の機能動作のための期間を規定して、同期させるために、タイマー22を使用することができる。例えば、タイマー22は、イオンがイオン移動度分離デバイス12およびイオン光学14を通過するための1つまたは複数の特定の期間、ならびにイオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためにイオン除去機構24を動作させるための1つまたは複数の特定の期間を規定することができる。質量分光器システム10の動作中に、タイマー22によって規定される複数の動作期間が、種々の組み合わせシーケンスで生じる可能性がある。種々の実施形態では、タイマー22によって3つの相異なる期間が規定される。第1の期間は、第1のイオン群を選択的に濾過して、該第1のイオン群を、イオン光学アセンブリ14を介して、質量分析器18に透過させるために規定される。第2の期間は、第2のイオン群を選択的に濾過して、該第2のイオン群を、イオン光学アセンブリ14を介して、質量分析器18に透過させるために規定される。第3の期間は、イオン光学アセンブリ14から残留イオンを空にするために規定され、該第3の期間は、第1および第2の期間の間に生じる。種々の実施形態では、タイム22によって規定される3つの期間のシーケンスは、前述のように、質量分光器システム10の動作中に反復的に生じる。
【0024】
図2は、システム10として図1に記載のシステムでの使用に好適な、質量分光器システム26の分解図を示す。質量分光器システム26は、DMS移動度セル28と、組み合わせたイオン光学/質量分析器デバイス30の導入口と、オリフィス32と、カーテンプレート34と、ソース延長リング38とを備える。DMS移動度セル28は、図1に記載のシステム10の要素12としての使用に好適な、イオン移動度分離デバイスの例である。DMS移動度セル28は、イオン光学/質量分析器デバイス30に接続し、オリフィス32によって分離される。カーテンプレート34は、DMS移動度セル28に外嵌し、オリフィスプレート32上に固定する。ソース延長リング38は、図1に記載のイオン源15等のイオン源(図2には示さず)をシステムに接続する。図2に示される実施例では、ソース延長リング38は、イオン源15とカーテンプレート34との間に適切な間隔を提供する。加えて、図2に示されるように、ソース延長リング38は、電位およびガス流をイオン源15に送達するための経路を提供する。カーテンプレート34は、カーテンガス流をイオン源15に向かって方向付ける。高純度カーテンガス(例えば、N2)は、カーテンプレート34とオリフィス32との間を流れ、大きい中性粒子を溶解して排出することによって質量分光デバイス10を清浄に保つのに役立つ。
【0025】
図3は、要素30として図2に記載のシステム26の中に含むのに好適なイオン光学および質量分析器の一実施例の構造を概略的に、およびより詳細に示す。図3は、図1に記載のシステム10のイオン除去機構24としての使用に好適な、イオン除去機構41を含むように改良したAPI5000質量分光システムを示す。API5000は、イオンを除去するためのイオン除去機構を利用することができる、システムの一種である。図3は、計測光学系14と、質量分析器18と、イオン除去機構41と、カーテンプレート34と、オリフィス32とを含む。計測光学系14は、QJetRFイオンガイド40と、IQ0レンズ44によって分離されるQ0RFイオンガイド42とを備える。QJetRFイオンガイド40は、ガス力学および無線周波数電場の組み合わせを使用して、イオンを捕捉して、集束させるために使用される。QJet40は、オリフィス32から後続のQ0RFイオンガイド42等のイオン光学にイオンを移送する。Q0RFイオンガイド42は、中間圧力領域(図3に、≒6mトールと示される)を通してイオンを輸送し、IQ1レンズを通して、質量分析器18を含む高真空チャンバにイオンを送達する。図3に示されるように、質量分析器18の範囲は、Q1 4極子分析器50と、Q2 4極子衝突セル52と、Q3 4極子分析器54と、CEM検出器58とを備える。QJetRFイオンガイド40と、Q0RFイオンガイド42とを備える、示される計測光学系14は、図1に記載のイオン光学アセンブリ14で使用することができる光学系の一例である。しかしながら、いくつかの実施形態では、要素40、42は、他の種類のイオン光学系と組み合わせて個々に使用するか、または質量分光器システム10では全く使用しないことができる。いくつかの実施形態では、QJetイオンガイド40およびQ0イオンガイド42は、Q1 50またはQ3 54のいずれかに容量結合することができる。いくつかの実施形態では、イオン光学14および質量分析器18は、ある圧力範囲で動作する、開口によって分離される1つまたは複数の圧力領域を含むことができる。例えば、図3に記載のシステムでは、QJet40は2.5トールに設定され、Q0 42は6mトールに設定され、Q1 50、Q2 52、およびQ3 54を備える質量分析器18は10−5トールに設定される。当業者には、Q2 52が、イオンを断片化するための衝突セルを備え、Q2内のガス圧力が、Q1 50およびQ3 54の圧力よりも大幅に高くなり得ることが明らかになるであろう。イオン移動度デバイス12は、典型的に大気圧(約760トール)で動作する、図2に記載のDMS移動度セル28を備える。コントローラ20は、種々の領域の中の圧力を調整するために使用することができる。
【0026】
図3では、イオン除去機構41は、Q0RFイオンガイド42の電極を備える。この実施形態では、Q0RFイオンガイド42は、図4に示される電源61等の少なくとも1つの電源に電気的に接続され、該電源は、イオン光学アセンブリから外へイオンを移動させるために選択されるベクトル方向を有する電場を生成するように、電極に電圧を印加することができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41によって生成される電場は、イオン光学内の集束電場に打ち勝って、イオンを集束から外へ押し出すことによって、イオンを除去する。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、イオン光学系内の集束電場を排除して、イオンをドレインすることを可能にすることによって、イオンを除去する。イオンの脱集束の結果として、イオンは、イオン光学系内の電極と衝突することができ、もしくはガス流によってイオン光学系から外に搬送されることができ、または両方の組み合わせができる。電源61は、イオン光学系からイオンを除去する電場を制御および印加することが可能であるプログラム可能なコントローラユニットであることができる、コントローラ22の管理下で動作することができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、Q0 42とは別体であるか(例えば、周辺電極)、QJet40と一体的であるか、または図1に記載の質量分光器システム10の任意の他の部分であることができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、質量分光器デバイス10内の電極に印加する電圧を制御するように、コントローラ20と、タイマー22とを含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、質量分光構成要素へのRF電位およびDC電位の印加を制御するようコントローラ20に命令するように構成することができる、コンピュータデバイス上のソフトウェアを含むことができる。例えば、ソフトウェアは、イオン光学系14へのRF電圧およびDC電圧を制御するようにプログラムすることができる。イオン除去デバイス41の可能な構成の他の実施例を、図4〜図7に関して以下に詳述する。
【0027】
図2に記載のイオン移動度分離デバイスは、質量分光器システムの真空制限オリフィスの上に密封されるDMS移動度セル28を備える。オリフィスへの真空牽引は、DMSセルを通した搬送ガス流を確立する。したがって、DMSセル内の滞留時間は、セルの容量に正比例し、搬送ガス流の流速に反比例する。例えば、図2に示されるDMS移動度セルの滞留時間は、≒6msであり得る。特定の実施形態では、移動度分離デバイスの中の滞留時間は、計測方法の中に一時停止時間を加えて、移動度状態が変化した時に、ガス流が移動度セルを通したイオン電流を再度安定させることを可能にするように、コントローラ20のタイマー22を使用することによって補償することができる。本明細書に与えられる実施例は、≒6msの滞留時間を伴うDMSであったが、当業者には、移動度セル内の滞留時間が、代替の移動度技術について大幅に変化し得ることが明らかになるであろう。一例として、DMAの中の滞留時間は、約1ms以下であり得、円筒FAIMS移動度分析器内の滞留時間は、約100msであり得る。
【0028】
移動度セルを通して移動するイオンは、オリフィスの両側の圧力差の結果として真空膨張が生じる、オリフィスの中に搬送される。図3では、イオンは、移動度フィルタの中の大気圧領域から、QJetイオンガイド40の中の2.5トールの圧力領域の中に移動し、次いで、Q0イオンガイド42の中の6mトールの圧力領域の中に移動する。イオン光学系アセンブリ14を通してイオンが移動するにつれて、ガス流16は、特にQ0イオンガイド42の中で、分裂した状態になる可能性があり、とりわけ、イオン帯の広がりを引き起こす。イオン帯の広がりは、イオンの特定の部分が、異なる速度でイオン光学アセンブリ14を通って移動する時に生じる。動作中に、イオン速度の差は、RF多極子内のイオン群の滞留時間の大幅な広がりを提供する可能性があり、それによって、大部分のイオンが通過した後に残留イオンが多極子内に残り得る。いくつかの条件下では、イオン光学系内の残留イオンの滞留時間が比較的に長くなる(すなわち、100msを超える)可能性があり、したがって、残留イオンを補償するために長い一時停止時間が必要になり、結果的に、質量分光器システム10等のデバイスの負荷サイクルを損なう。加えて、残留イオンは、イオン光学系を通過する後続の試料と混ざった時に、化学的クロストークを引き起こす可能性があり、誤ったデータ結果を引き起こす。
【0029】
種々の実施形態では、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構は、イオン光学系から残留イオンを除去または大幅に低減し、それによって、試料間の化学的クロストークを防止または低減する。イオン除去は、非常に速く生じることが可能であるので、タイマー22を使用して、前述のようにイオン移動度分離デバイスの中の滞留時間を補償するために使用される一時停止時間等の、計測の一時停止時間中に生じることが可能である。理論によって制限されるべきではないが、イオン除去機構24は、デバイス内に不安定化電場または磁場を生成することによって、質量分光器システム10から残留イオンを除去することができることを理解されたい。不安定化電場は、標準動作中に使用される質量分光器デバイス内の電場を変化させることができ、そしてイオンを脱集束させるか、またはデバイス内の集束電場に打ち勝つことができる。前述のように、イオン除去機構24は、コンピュータデバイス上のソフトウェア、Q0RFイオンガイド42等の計測イオン光学系、または質量分光デバイス内のイオンを脱集束させるために使用することができる任意の他の好適な組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラ20は、イオン除去機構24を制御するようにソフトウェアを記憶および実行するための好適なコンピュータデバイスであることができる。
【0030】
本出願人の教示の態様は、以下の実施例に照らしてさらに理解され得るが、いかなる形であれ本出願人の教示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、各実施例からの教示は、本発明の範囲から逸脱することなく組み合わせることができる。
【0031】
(実施例)
(実施例1)
図4は、図3に記載の計測光学系に含めるのに好適な、4極子イオン光学系アレイ60の断面図を示す。アレイ60は、4極子として示されるが、従来技術で公知であるような6極子、8極子、または任意の他の多極子であることができる。この例示的な説明図のために、イオン光学系アレイ60は、図3に記載のQ0イオンガイド42等のQ0 RFイオンガイドであるが、当業者は、光学系アレイ60が、図3に記載のQJetイオンガイド40等のQJetRFイオンガイドであるか、または当技術分野で公知の種々の他のイオン光学系構成のうちの1つであり得ることを理解されるであろう。イオン光学系アレイ60は、4極子ロッド62A〜62Dを備える。電源61は、ロッド62A〜62Dに接続され、かつRF電圧およびDC電圧を各ロッドに印加することができる。電源61は、ある範囲の相異なるRF電圧およびDC電圧をイオン光学系アレイ60の各ロッドのそれぞれに印加するように、図1に記載のコントローラ20によって制御することができる。この例示的な実施例では、Q0イオン光学系60がイオンをイオン光路に輸送して集束させるように動作している時に、各ロッドには、−10ボルトのDC電圧が印加される。ロッド62Aおよび62Cには、それぞれ同一のRF電圧(RFA)が印加され、ロッド対間にRFA電場を生成する。ロッド62Bおよび62Dには、それぞれ同一のRF電圧(RFB)が印加され、ロッド対間にRFB電場を生成する。4極子アレイ内のRF電場は、光学系アレイ60内でイオンを集束させるように、重畳されるDC電圧と組み合わせることができる。光学系アレイ60は、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構を生成するように構成することができる。可能な構成は、実施例2の中で図5に関してさらに詳細に説明する。種々の実施形態では、イオン除去機構24は、イオンを4極子ロッド62A〜62Dのうちの1つと衝突させるか、またはガス流の結果として4極子ロッドの間から飛び出させることによって、残留イオンを排除または実質的に排除することができる。
【0032】
(実施例2)
図5は、イオンドレイン期間中のイオン光学系アレイ60を示す。図5では、光学系アレイ60および電源61は、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構を生成するように構成される。図5では、イオン除去機構は、タイマー22によって規定されるドレイン期間中に、他の極に対して増大させたDC電位(すなわち、+200V)を4極子ロッド62Bおよび62Dに印加する。これは、4極子電極に不平衡分解DC電位を印加する。DC電位は、コントローラ20(図5には示さず)によって制御し、かつ電源61によってロッド62Bおよび62Dに印加することができる。4極子ロッド62Bおよび62Dに印加される増大したDC電位は、光学系アレイ60によって印加される集束電場に打ち勝ち、かつ残留イオンを含むイオンを光路から離れて排出するように、極間に不安定化電場を生成する。
【0033】
(実施例3)
図6は、別の可能な構成の4極子イオン光学系60の断面図を示す。図6では、4極子アレイ60とは別体であり、それぞれ、4極子ロッド62Aと62Bとの間、および62Cと62Dとの間に配置される、ドレイン電極64Aおよび64Bがある。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる好適な数または種類のドレイン電極を使用することができることを理解されるであろう。また、電源61が、1つまたは複数の異なる電源を備えてもよいことも明白である。この実施例では、ドレイン電極64Aおよび64Bは、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構を構成する。タイマー22によって規定されるドレイン期間中に、ドレイン電極に連結された電源61は、DC電位をドレイン電極64Aおよび64Bに印加することができ、それらの間にDC電場の勾配68を生成する。DC電場の勾配68は、光学系アレイ60によって生成される集束電場に打ち勝ち、かつ残留イオンを含むあらゆるイオンをイオン光路から離れてイオン光学系から外に放出するように、不安定化電場としての役割を果たすことができる。印加しなければならない電場の大きさおよび時間の長さは、RF多極子内の圧力および放出されるイオンの移動度に依存する。種々の実施形態では、少なくとも1つの電極(この一例は、LINAC等の線形加速器であり得る)は、イオン光学系の近傍に配置され、かつ図1に記載のイオン除去機構24としての使用に好適なイオン除去機構を構成する。電極は、RF多極子を通してイオンを加速するために、またはRF多極子から残留イオンを排出するために使用することができる。電極に接続される電源は、DC電位を電極に印加することができ、残留イオンを含むイオンをイオン光学系から外へ軸方向に排出するように、電極に電場を発生させる。電極はまた、イオン光学系内の滞留時間を低減し、それによってイオンビームの拡散を低減または実質的に排除するように、イオンを加速することもできる。
【0034】
(実施例4)
図7は、別の例示的な構成の4極子イオン光学系60の断面図を示す。図7の例示的な実施例では、図1に記載のイオン除去機構24としての使用に好適なイオン除去機構は、各ロッドに印加されるRF電位を制御するように、コントローラ20を電源61および4極子ロッド62A〜62Dに連結することによって生成することができる。この実施例では、イオン除去機構は、4極子ロッド62A〜62DへのRF電位、RFAおよびRFBを、ほぼ0ボルトに減少させることによって動作する。前述のように、コンピュータデバイス上のソフトウェアは、規定された期間中にイオン光学系60の中のRF電場を除去または低減するようコントローラ20に命令することができるようにプログラムすることができる。種々の実施形態では、4極子ロッドへのRF電位は、4極子ロッド62A〜62Dに容量結合される、図3に記載のQ1 50およびQ3 54分析器によって制御される。
【0035】
通常のイオン輸送モード中に、4極子ロッド62A〜62Dに印加されるRF電位は、イオンを集束させてイオン光路の中に方向付ける役目を果たす、RF電位、RFAおよびRFBを生成する。この例示的な実施例では、各ロッド62A〜62DへのRF電位を低減した結果、RFAおよびRFB電場は、実質的にまたは完全に排除され、したがって、イオン光学系60内でイオンに印加される集束電場を除去する。集束電場RFAおよびRFBの不足は、光学系内のイオンを、4極子ロッド62A〜62Dのうちの1つと衝突させるか、ガス流の結果として4極子ロッドの間から飛び出させるか、または別の様態でイオン光学系60から除去させる。タイマー22によって規定されるイオンドレイン期間中に、イオン光学系内に存在する残留イオンは、4極子ロッド62A〜62DからRF電位を除去した結果として、イオン光路から散乱させられて、その後、イオン光学系から除去されることができる。
【0036】
図8は、図5に示されるようなデバイス設定を使用し、かつQJetイオン光学系を使用して収集した、多重反応モニタリング(MRM)データの線図を示す。図8の線図70Aは、図1に記載のシステム10としての使用に好適なAPI5000質量分光器システムの中に進入した、レセルピン試料(一般に、抗精神病薬および高血圧治療薬として一般に使用される、インドールアルカロイド)のMRM信号78を示す。データ収集の開始時には、−10ボルトのDC電位が、図5に記載の各4極子ロッド62A〜62Dに印加される。線図70Aの期間72(0.34分から0.41分)および期間74(0.52分から0.6分)の間、電源は、−10ボルトに戻される前に、200ボルトのDC電位を4極子ロッド62Bおよび62Dに印加するように、コントローラ20によって切り替えられる。線図70Aに示されるように、図5に示されるデバイス構成で、200VのDC電圧が極62Bおよび62Dに印加された時に、期間72および74の間、MRM信号は、ほぼ0.0cpsである。線図70Bは、レセルピンイオンについてのMRM信号の完全な排除を証明するように、期間72のブローアップを示す。図8は、2.5トールで動作して、QJetイオン光学ロッドから残留レセルピンイオンを除去するための、図5に記載の構成のような、イオン除去機構の有効性を表す。
【0037】
図9は、図7に示される除去機構等のイオン除去機構の動作についてのタイミング図80を示す。タイミング図80は、ドレイン時間82と、一時停止時間84と、ドウエル時間88および90とを含む。タイミング図80では、ドウエル時間は、5msに設定される一方で、ドレイン時間および一時停止時間は、変数である。表1は、図2に示されるシステム等の質量分光器システムのDMS移動度セルに適用される設定を示す。表1の1行目には、特定のイオン種の透過を最大化するように適切な設定が与えられる(すなわち、m/z922)。この実験の全体を通して、質量分光器は、第1の質量分析器(Q1)で測定した時にm/zが922であるイオンについての信号を監視する。表1に示される走査テーブルの第1の期間では、移動度デバイスは、約3000Vの振幅を伴う分離電圧を印加するように構成される。これらの条件下で、関心の(m/z922)イオンの透過は、約4.2Vの補償電圧(CV)で最適化される。実験の際に、適切な設定を移動度デバイスに適用することで、最大強度分析信号が得られた。表1の2行目には、m/z922イオンの透過についての不適切な設定を示す。不適当な設定が移動度デバイスに適用された状態で、m/z922イオンの分析信号は、いかなるm/z922イオンも移動度デバイスによって透過されないという結果として、完全に排除されるはずである。しかしながら、期間1と期間2との間で急速に切り替えた時に、m/z922イオンの分析信号は、それでも、イオン光学系内の、特に、図3に示されるようなQJetRFイオンガイド40内およびQ0RFイオンガイド42内のクロストークの結果として、期間2の間に観察される。したがって、2行目の設定を使用して得られた信号は、質量分光器システムの移動イオン光学系内のクロストークを表す。
【0038】
【表1】
図7のように構成したイオン除去機構24の有効性を判定するために、図9に示されるように、計測一時停止時間の前に、タイマー22によってドレイン期間82を挿入した。表1の1行目による設定をドウエル時間88中に適用すると、イオン種の最大透過が得られた(2行目のm/z設定は、ドウエル時間90中に適用した)。ドレイン期間82の開始時に、Q1およびQ3を5ダルトンに設定し、かつ、期間2の移動度状態を設定し、それによって、Q0イオン光学系から残留イオンを排出するように、図7の4極子ロッド62A〜62DからRF電位を実質的に除去(または低減)した。規定されたドレイン期間82の直後に、表1の2行目(クロストーク)のm/z設定を、Q1質量分析器に適用した。
【0039】
図10は、前述したイオン除去実験の結果を示す。図10は、図9に関してドレイン時間を変化させた、分析信号データの線図を示す。図10は、カウント毎秒(cps)対時間(分)での信号強度を示す線図70A〜70Eを含む。線図70Aは、イオン種の最大透過中の、2,847,193±120,890cpsに等しい、分析信号の強度を示す(条件は、表1による期間1によって規定される)。線図70B〜70Eでは、図9に記載の一時停止時間84を、5msで一定に保つ一方で、図9に記載のドレイン時間82を、15msから30msの間で変化させた。%クロストークは、以下の式に従って各ドレイン時間について計算される。
【0040】
【数1】
線図70B〜70Eに示されるように、ドレイン時間82が15msから30msに増大するにつれて、本質的に、残留イオンの全てが排除され、%クロストークは、0.0217%から0.000039%まで大幅に減少する。これらの実験について、イオン除去デバイスを完全に停止させて、デフォルトの20msの一時停止時間を用いると、クロストークは、約3%であった。したがって、図10に示される最低ドレイン時間(15ms)であっても、いかなるイオン除去デバイスも伴わない同じハードウェアに対して、測定したクロストークは、約100倍低減された。したがって、前述の実験は、イオン光学から残留イオンを除去する際のイオン除去機構が有効であること、および化学的クロストークを大幅に低減することを証明する。
【0041】
当業者は、ルーチンの実験を超えるものを用いなくても、本明細書に記載する実施形態および具体的な態様の多くの等価物を知ること、または確認することができるであろう。故に、本発明は、本明細書に開示される実施形態に限定されないが、以下の特許請求の範囲によって理解されるべきであり、法律によって許容される最大の範囲で解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本願は、米国仮特許出願第61/160,925号(2009年3月17日出願、名称「Ion Optics Drain For Ion Mobility,」)の利益を主張する。該出願の全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分離デバイスは、一般的に、関心の試料成分を分析する際にさらなる選択性を提供するように、質量分光器システムに組み込まれる。これらのシステムは、複数の異なる検体を同時に監視することを可能にする。しかしながら、イオン滞留時間のため、複数の異なる検体を処理することは、化学的クロストークの問題につながる可能性がある。化学的クロストークは、一方のサンプルからのイオンが、もう一方のサンプルからのイオンに関して得られたデータを汚染した時に生じる。
【0003】
故に、化学的クロストークを低減または排除するように、質量分光器システムからイオンを除去する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
説明されるシステムおよび方法は、とりわけ、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するために、試料分析システムの中にイオン除去機構を組み込む。イオン除去機構は、イオン移動度フィルタを質量分析器に接続する、イオン光学アセンブリの中に含むことができる。試料分析システムによって分析される試料は、イオン移動度フィルタの中へ進入させられ得る。イオン移動度フィルタは、試料のイオンを濾過して、濾過したイオン群をイオン光学アセンブリに通す。イオン光学アセンブリは、該イオン群の中のイオンのうちの一部または全てが検出される質量分析器に、濾過したイオン群を輸送する。イオン除去機構は、次いで、第2の濾過した群を通過させる前に、第1の濾過した群から残った残留イオンの全てまたは大部分をイオン光学系から除去する。
【0005】
一局面では、試料分析システムは、第1のイオン群を通過させるための、イオン移動度フィルタと、第1のイオン群を分析するための、質量分析器と、イオン移動度フィルタからイオン質量分析器に第1のイオン群を輸送するための、イオン光学アセンブリであって、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためのイオン除去機構を含む、イオン光学アセンブリとを含む。
【0006】
試料分析システムは、イオン移動度フィルタ、質量分析器、およびイオン光学アセンブリのうちの1つに、または3つ全ての組み合わせに動作可能に接続され、それぞれの動作を制御するためのコントローラを含むことができる。コントローラは、イオンをイオン移動度フィルタおよびイオン光学アセンブリに通過させる時間を表す、少なくとも第1の期間と、イオン除去機構を動作させてイオン光学アセンブリから残留イオンを除去するための時間を表す、少なくとも第2の期間とを規定するためのタイマーを含むことができる。
【0007】
イオン移動度フィルタは、低電場移動度セパレータ、高電場移動度セパレータ、微分移動度セパレータのうちの1つまたは複数から選択することができる。一局面では、イオン移動度フィルタは、電場非対称波形イオン移動度システム(FAIMS)、微分型移動度分光法(DMS)、イオン移動度分光法(IMS)、または微分型移動度分析器(DMA)のうちの1つまたは複数であることができる。
【0008】
別の局面では、イオン移動度フィルタは、第1の圧力領域の中に位置することができ、質量分析器は、第1の圧力領域とは異なる第2の圧力領域の中に位置することができ、イオン光学アセンブリは、第1および第2の圧力領域の中の圧力に対して中間の圧力を有する第3圧力領域の中に位置することができる。第3の圧力領域は、複数の異なる圧力領域を含むことができる。
【0009】
一局面では、イオン光学アセンブリは、多極子アレイ、リングガイド、イオン漏斗、または進行波デバイスのうちの1つまたは複数であることができる。
【0010】
別の局面では、イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように構成される、多極子アレイの少なくとも2つの極に、DC電位を印加するための電源を含む。イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから残留イオンを排出するために多極子アレイの極のうちの少なくとも2つの間に電場を生成するように、DC電位を印加することができる。
【0011】
さらに別の局面では、イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するようにDC電位を発生させるための電源と連通している少なくとも1つの電極を含む。イオン除去機構は、イオン光学アセンブリから外へ残留イオンを半径方向に排出する電場を生成するDC電位を発生させることができる。イオン除去機構はまた、イオン光学アセンブリから外へ残留イオンを排出する軸方向電場を作成するDC電位を発生させることもできる。少なくとも1つの電極は、LINAC、抵抗イオンガイド、レンズ電極スタック、イオン漏斗、または進行波イオンガイドのうちの1つまたは複数であることができる。
【0012】
一局面では、イオン除去機構は、イオン光学系を通したイオン運動を加速するようにDC電位を発生させるための、電源と連通している少なくとも1つの電極を含む。別の局面では、コントローラは、イオンを脱集束させ、かつイオン光学アセンブリからイオン除去するように、イオン光学アセンブリ内のRF電位を減少させる、または除去するためのイオン除去機構と連通している。
【0013】
1つのプロセスでは、試料を分析するための方法は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップと、イオン移動度フィルタを使用して、第1のイオン群を濾過するステップと、イオン光学アセンブリを使用して、イオン移動度フィルタから質量分析器に第1のイオン群を輸送するステップと、質量分析器を使用して、第1のイオン群を分析するステップとを含む。第1のイオン群を濾過するステップ、および第1のイオン群を輸送するステップは、第1の期間中に生じることができる。イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップは、第2の期間中に生じることができる。第3の期間中に、イオン移動度フィルタは、第2のイオン群を濾過することができ、イオン光学アセンブリは、イオン移動度フィルタから前記質量分析器に前記第2のイオン群を輸送することができる。
【0014】
別のプロセスにおいて、試料を分析するための方法は、a)第1の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第1の部分を選択し、イオン光学アセンブリを使用してイオンの第1の部分を質量分析器に透過させるステップと、b)第2の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第2の部分を選択し、イオン光学アセンブリを使用してイオンの第2の部分を質量分析器に透過させるステップと、c)第3の期間中に、イオン光学アセンブリの少なくとも第1の部分から残留イオンを空にするステップであって、第3の期間は、第1および第2の軒間の間に生じる、ステップとを含む。ステップa)からステップc)は、反復的に繰り返すことができる。
【0015】
本出願人の教示のこれらの特徴および他の特徴を、本明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の前述および他の目的および利点は、添付図面を参照して、以下の本発明のさらなる説明から、より完全に理解されるであろう。当業者は、以下に記載される図面が例示のみを目的とすることを理解されるであろう。図面は、いかなる形であれ本出願人の教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図1】図1は、本発明の例示的一実施形態による、質量分光器システムの概略図である。
【図2】図2は、図1に記載のシステムでの使用に好適な質量分光器システムへの移動度インターフェースの分解図である。
【図3】図3は、図1に記載のシステムでの使用に好適なイオン光学系および質量分析器の構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、図3に記載のシステムに含むのに好適な4極子イオン光学系アレイの断面図である。
【図5】図5は、4極子イオン光学系アレイの断面図、およびイオン除去機構の例示的な構成の図である。
【図6】図6は、4極子イオン光学系の断面図、およびドレイン電極を使用したイオン除去機構の別の可能な構成の図である。
【図7】図7は、4極子イオン光学系の断面図、およびイオン除去機構の別の可能な構成の図である。
【図8】図8は、図5に示されるように設定したデバイスを使用して収集される、多重反応モニタリングデータの線図である。
【図9】図9は、図7に示されるようにデバイスを動作するためのタイミング図である。
【図10−1】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【図10−2】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【図10−3】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【図10−4】図10は、図9に関連してドレイン時間を変化させた場合の分析信号データの線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願人の教示は、種々の実施形態とともに説明されているが、本出願人の教示を当該の実施形態に限定することを意図したものではない。逆に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、変形物、および同等物を包含する。例えば、例示されるシステムは、イオン光学系の中でのイオン除去を表すが、イオン除去は、イオン源、移動度分離デバイス、イオン源からの管路、質量分析器セル、または質量分光システム内の他の場所の中で成され得る。
【0018】
図1は、質量分光器システム10の概略図を示す。示される質量分光器システム10は、試料導入システム11と、イオン源15と、イオン移動度分離デバイス12と、計測光学系14と、イオン除去機構24と、質量分析器18と、コントローラ20と、タイマー22とを備える。コントローラ20は、試料導入システム11、イオン源15、イオン移動度分離デバイス12、計測光学系14、および質量分析器18に接続される。
【0019】
試料導入システム11は、当業者に公知のあらゆる好適な試料導入システムであることができる。試料導入システム11は、イオン源15に接続される。イオン源15は、導入システム11と一体的であるか、または導入システム11と別体であることができ、当業者に公知のあらゆる好適なイオン源であることができる。例えば、2つの要素11および15は、溶液中に溶解された試料検体からイオンを発生させる能力を伴う、エレクトロスプレー源を備えることができる。試料導入システム11およびイオン源15の他の例示的な配設は、大気圧化学イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)、リアルタイム直接分析(DART)、脱離エレクトロスプレー(DESI)、大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化(AP MALDI)、マルチモードイオン化源の配設、または複数の導入システムおよび/もしくは導入源を伴う構成である。しかしながら、あらゆる好適な試料導入システムおよびイオン源を使用することができる。
【0020】
特定の実施形態では、試料成分は、試料導入システム11を通して質量分光器システム10の中に挿入される。ガス流16は、イオン移動度分離デバイス12を通して試料導入システム11およびイオン源15から試料を輸送する。当業者は、イオン源とガス流16との間の領域の中に対向ガス流を含むことが共通であることを理解されるであろう。対向ガス流(カーテンガス)は、イオンをクラスタ分離し、かつ中性粒子が真空システムに進入することを防止する。イオン移動度分離デバイス(イオン移動度フィルタとしても公知である)12は、ガスを通したイオン種の移動度または速度に基づいて、試料から所望の1つまたは複数のイオン群を分離する。特定のイオン種の移動度は、サイズおよび形状を含む、多数のパラメータに依存する。イオン移動度デバイス12は、質量が同一である異なるイオンを、システム10の質量分析器18等の質量分析器の前に区別できるように、同重核化合物を分離することを可能にする。図1に記載の質量分光器システム10で使用されるイオン移動度分離デバイスは、当業者に公知のあらゆるイオン移動度デバイス(例えば、電場非対称波形イオン移動度システム(FAIMS)、微分型移動度分光法(DMS)、イオン移動度分光法(IMS)、微分型移動度分析器(DMA)、高電場、低電場等)であってもよいことを理解されるであろう。コントローラ20は、イオン移動度デバイス12に連結され、試料から特定のイオン種を選択するように移動度フィルタの設定を制御することができる。イオン移動度デバイスによって所望のイオン種が濾過されると、濾過したイオン群は、イオン光学14に通される。
【0021】
イオン光学アセンブリ14は、イオンをイオン光路に集束させて、イオンを質量分析器18に方向付けるように、RF電場を使用することができる。システム10で使用されるイオン光学アセンブリは、当業者に公知のあらゆるイオン光学系(例えば、多極子アレイ、抵抗イオンガイド、イオン漏斗、進行波イオンガイド)で構成され得ることを理解されるであろう。示されるイオン光学アセンブリ14は、イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように、イオン除去機構24を備える。コントローラ20は、イオン光学アセンブリ14およびイオン除去機構24に連結され、これらに対するRF電位およびDC電位の印加を制御することができる。
【0022】
イオンは、イオン光学アセンブリ14を出た後に、イオン光路を介して、イオンがそれらの質量電荷比(m/z)に基づいて分離および検出される、質量分析器18に進行する。検出されたイオンのデータは、メモリに記憶して、コンピュータまたはコンピュータソフトウェアによって(図示せず)分析することができる。コントローラ20は、その動作を制御するように、質量分析器18に連結される。
【0023】
図1に記載のコントローラ20は、タイマー22を備える。種々の実施形態では、質量分光器システム10の機能動作のための期間を規定して、同期させるために、タイマー22を使用することができる。例えば、タイマー22は、イオンがイオン移動度分離デバイス12およびイオン光学14を通過するための1つまたは複数の特定の期間、ならびにイオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためにイオン除去機構24を動作させるための1つまたは複数の特定の期間を規定することができる。質量分光器システム10の動作中に、タイマー22によって規定される複数の動作期間が、種々の組み合わせシーケンスで生じる可能性がある。種々の実施形態では、タイマー22によって3つの相異なる期間が規定される。第1の期間は、第1のイオン群を選択的に濾過して、該第1のイオン群を、イオン光学アセンブリ14を介して、質量分析器18に透過させるために規定される。第2の期間は、第2のイオン群を選択的に濾過して、該第2のイオン群を、イオン光学アセンブリ14を介して、質量分析器18に透過させるために規定される。第3の期間は、イオン光学アセンブリ14から残留イオンを空にするために規定され、該第3の期間は、第1および第2の期間の間に生じる。種々の実施形態では、タイム22によって規定される3つの期間のシーケンスは、前述のように、質量分光器システム10の動作中に反復的に生じる。
【0024】
図2は、システム10として図1に記載のシステムでの使用に好適な、質量分光器システム26の分解図を示す。質量分光器システム26は、DMS移動度セル28と、組み合わせたイオン光学/質量分析器デバイス30の導入口と、オリフィス32と、カーテンプレート34と、ソース延長リング38とを備える。DMS移動度セル28は、図1に記載のシステム10の要素12としての使用に好適な、イオン移動度分離デバイスの例である。DMS移動度セル28は、イオン光学/質量分析器デバイス30に接続し、オリフィス32によって分離される。カーテンプレート34は、DMS移動度セル28に外嵌し、オリフィスプレート32上に固定する。ソース延長リング38は、図1に記載のイオン源15等のイオン源(図2には示さず)をシステムに接続する。図2に示される実施例では、ソース延長リング38は、イオン源15とカーテンプレート34との間に適切な間隔を提供する。加えて、図2に示されるように、ソース延長リング38は、電位およびガス流をイオン源15に送達するための経路を提供する。カーテンプレート34は、カーテンガス流をイオン源15に向かって方向付ける。高純度カーテンガス(例えば、N2)は、カーテンプレート34とオリフィス32との間を流れ、大きい中性粒子を溶解して排出することによって質量分光デバイス10を清浄に保つのに役立つ。
【0025】
図3は、要素30として図2に記載のシステム26の中に含むのに好適なイオン光学および質量分析器の一実施例の構造を概略的に、およびより詳細に示す。図3は、図1に記載のシステム10のイオン除去機構24としての使用に好適な、イオン除去機構41を含むように改良したAPI5000質量分光システムを示す。API5000は、イオンを除去するためのイオン除去機構を利用することができる、システムの一種である。図3は、計測光学系14と、質量分析器18と、イオン除去機構41と、カーテンプレート34と、オリフィス32とを含む。計測光学系14は、QJetRFイオンガイド40と、IQ0レンズ44によって分離されるQ0RFイオンガイド42とを備える。QJetRFイオンガイド40は、ガス力学および無線周波数電場の組み合わせを使用して、イオンを捕捉して、集束させるために使用される。QJet40は、オリフィス32から後続のQ0RFイオンガイド42等のイオン光学にイオンを移送する。Q0RFイオンガイド42は、中間圧力領域(図3に、≒6mトールと示される)を通してイオンを輸送し、IQ1レンズを通して、質量分析器18を含む高真空チャンバにイオンを送達する。図3に示されるように、質量分析器18の範囲は、Q1 4極子分析器50と、Q2 4極子衝突セル52と、Q3 4極子分析器54と、CEM検出器58とを備える。QJetRFイオンガイド40と、Q0RFイオンガイド42とを備える、示される計測光学系14は、図1に記載のイオン光学アセンブリ14で使用することができる光学系の一例である。しかしながら、いくつかの実施形態では、要素40、42は、他の種類のイオン光学系と組み合わせて個々に使用するか、または質量分光器システム10では全く使用しないことができる。いくつかの実施形態では、QJetイオンガイド40およびQ0イオンガイド42は、Q1 50またはQ3 54のいずれかに容量結合することができる。いくつかの実施形態では、イオン光学14および質量分析器18は、ある圧力範囲で動作する、開口によって分離される1つまたは複数の圧力領域を含むことができる。例えば、図3に記載のシステムでは、QJet40は2.5トールに設定され、Q0 42は6mトールに設定され、Q1 50、Q2 52、およびQ3 54を備える質量分析器18は10−5トールに設定される。当業者には、Q2 52が、イオンを断片化するための衝突セルを備え、Q2内のガス圧力が、Q1 50およびQ3 54の圧力よりも大幅に高くなり得ることが明らかになるであろう。イオン移動度デバイス12は、典型的に大気圧(約760トール)で動作する、図2に記載のDMS移動度セル28を備える。コントローラ20は、種々の領域の中の圧力を調整するために使用することができる。
【0026】
図3では、イオン除去機構41は、Q0RFイオンガイド42の電極を備える。この実施形態では、Q0RFイオンガイド42は、図4に示される電源61等の少なくとも1つの電源に電気的に接続され、該電源は、イオン光学アセンブリから外へイオンを移動させるために選択されるベクトル方向を有する電場を生成するように、電極に電圧を印加することができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41によって生成される電場は、イオン光学内の集束電場に打ち勝って、イオンを集束から外へ押し出すことによって、イオンを除去する。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、イオン光学系内の集束電場を排除して、イオンをドレインすることを可能にすることによって、イオンを除去する。イオンの脱集束の結果として、イオンは、イオン光学系内の電極と衝突することができ、もしくはガス流によってイオン光学系から外に搬送されることができ、または両方の組み合わせができる。電源61は、イオン光学系からイオンを除去する電場を制御および印加することが可能であるプログラム可能なコントローラユニットであることができる、コントローラ22の管理下で動作することができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、Q0 42とは別体であるか(例えば、周辺電極)、QJet40と一体的であるか、または図1に記載の質量分光器システム10の任意の他の部分であることができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、質量分光器デバイス10内の電極に印加する電圧を制御するように、コントローラ20と、タイマー22とを含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン除去機構41は、質量分光構成要素へのRF電位およびDC電位の印加を制御するようコントローラ20に命令するように構成することができる、コンピュータデバイス上のソフトウェアを含むことができる。例えば、ソフトウェアは、イオン光学系14へのRF電圧およびDC電圧を制御するようにプログラムすることができる。イオン除去デバイス41の可能な構成の他の実施例を、図4〜図7に関して以下に詳述する。
【0027】
図2に記載のイオン移動度分離デバイスは、質量分光器システムの真空制限オリフィスの上に密封されるDMS移動度セル28を備える。オリフィスへの真空牽引は、DMSセルを通した搬送ガス流を確立する。したがって、DMSセル内の滞留時間は、セルの容量に正比例し、搬送ガス流の流速に反比例する。例えば、図2に示されるDMS移動度セルの滞留時間は、≒6msであり得る。特定の実施形態では、移動度分離デバイスの中の滞留時間は、計測方法の中に一時停止時間を加えて、移動度状態が変化した時に、ガス流が移動度セルを通したイオン電流を再度安定させることを可能にするように、コントローラ20のタイマー22を使用することによって補償することができる。本明細書に与えられる実施例は、≒6msの滞留時間を伴うDMSであったが、当業者には、移動度セル内の滞留時間が、代替の移動度技術について大幅に変化し得ることが明らかになるであろう。一例として、DMAの中の滞留時間は、約1ms以下であり得、円筒FAIMS移動度分析器内の滞留時間は、約100msであり得る。
【0028】
移動度セルを通して移動するイオンは、オリフィスの両側の圧力差の結果として真空膨張が生じる、オリフィスの中に搬送される。図3では、イオンは、移動度フィルタの中の大気圧領域から、QJetイオンガイド40の中の2.5トールの圧力領域の中に移動し、次いで、Q0イオンガイド42の中の6mトールの圧力領域の中に移動する。イオン光学系アセンブリ14を通してイオンが移動するにつれて、ガス流16は、特にQ0イオンガイド42の中で、分裂した状態になる可能性があり、とりわけ、イオン帯の広がりを引き起こす。イオン帯の広がりは、イオンの特定の部分が、異なる速度でイオン光学アセンブリ14を通って移動する時に生じる。動作中に、イオン速度の差は、RF多極子内のイオン群の滞留時間の大幅な広がりを提供する可能性があり、それによって、大部分のイオンが通過した後に残留イオンが多極子内に残り得る。いくつかの条件下では、イオン光学系内の残留イオンの滞留時間が比較的に長くなる(すなわち、100msを超える)可能性があり、したがって、残留イオンを補償するために長い一時停止時間が必要になり、結果的に、質量分光器システム10等のデバイスの負荷サイクルを損なう。加えて、残留イオンは、イオン光学系を通過する後続の試料と混ざった時に、化学的クロストークを引き起こす可能性があり、誤ったデータ結果を引き起こす。
【0029】
種々の実施形態では、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構は、イオン光学系から残留イオンを除去または大幅に低減し、それによって、試料間の化学的クロストークを防止または低減する。イオン除去は、非常に速く生じることが可能であるので、タイマー22を使用して、前述のようにイオン移動度分離デバイスの中の滞留時間を補償するために使用される一時停止時間等の、計測の一時停止時間中に生じることが可能である。理論によって制限されるべきではないが、イオン除去機構24は、デバイス内に不安定化電場または磁場を生成することによって、質量分光器システム10から残留イオンを除去することができることを理解されたい。不安定化電場は、標準動作中に使用される質量分光器デバイス内の電場を変化させることができ、そしてイオンを脱集束させるか、またはデバイス内の集束電場に打ち勝つことができる。前述のように、イオン除去機構24は、コンピュータデバイス上のソフトウェア、Q0RFイオンガイド42等の計測イオン光学系、または質量分光デバイス内のイオンを脱集束させるために使用することができる任意の他の好適な組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラ20は、イオン除去機構24を制御するようにソフトウェアを記憶および実行するための好適なコンピュータデバイスであることができる。
【0030】
本出願人の教示の態様は、以下の実施例に照らしてさらに理解され得るが、いかなる形であれ本出願人の教示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、各実施例からの教示は、本発明の範囲から逸脱することなく組み合わせることができる。
【0031】
(実施例)
(実施例1)
図4は、図3に記載の計測光学系に含めるのに好適な、4極子イオン光学系アレイ60の断面図を示す。アレイ60は、4極子として示されるが、従来技術で公知であるような6極子、8極子、または任意の他の多極子であることができる。この例示的な説明図のために、イオン光学系アレイ60は、図3に記載のQ0イオンガイド42等のQ0 RFイオンガイドであるが、当業者は、光学系アレイ60が、図3に記載のQJetイオンガイド40等のQJetRFイオンガイドであるか、または当技術分野で公知の種々の他のイオン光学系構成のうちの1つであり得ることを理解されるであろう。イオン光学系アレイ60は、4極子ロッド62A〜62Dを備える。電源61は、ロッド62A〜62Dに接続され、かつRF電圧およびDC電圧を各ロッドに印加することができる。電源61は、ある範囲の相異なるRF電圧およびDC電圧をイオン光学系アレイ60の各ロッドのそれぞれに印加するように、図1に記載のコントローラ20によって制御することができる。この例示的な実施例では、Q0イオン光学系60がイオンをイオン光路に輸送して集束させるように動作している時に、各ロッドには、−10ボルトのDC電圧が印加される。ロッド62Aおよび62Cには、それぞれ同一のRF電圧(RFA)が印加され、ロッド対間にRFA電場を生成する。ロッド62Bおよび62Dには、それぞれ同一のRF電圧(RFB)が印加され、ロッド対間にRFB電場を生成する。4極子アレイ内のRF電場は、光学系アレイ60内でイオンを集束させるように、重畳されるDC電圧と組み合わせることができる。光学系アレイ60は、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構を生成するように構成することができる。可能な構成は、実施例2の中で図5に関してさらに詳細に説明する。種々の実施形態では、イオン除去機構24は、イオンを4極子ロッド62A〜62Dのうちの1つと衝突させるか、またはガス流の結果として4極子ロッドの間から飛び出させることによって、残留イオンを排除または実質的に排除することができる。
【0032】
(実施例2)
図5は、イオンドレイン期間中のイオン光学系アレイ60を示す。図5では、光学系アレイ60および電源61は、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構を生成するように構成される。図5では、イオン除去機構は、タイマー22によって規定されるドレイン期間中に、他の極に対して増大させたDC電位(すなわち、+200V)を4極子ロッド62Bおよび62Dに印加する。これは、4極子電極に不平衡分解DC電位を印加する。DC電位は、コントローラ20(図5には示さず)によって制御し、かつ電源61によってロッド62Bおよび62Dに印加することができる。4極子ロッド62Bおよび62Dに印加される増大したDC電位は、光学系アレイ60によって印加される集束電場に打ち勝ち、かつ残留イオンを含むイオンを光路から離れて排出するように、極間に不安定化電場を生成する。
【0033】
(実施例3)
図6は、別の可能な構成の4極子イオン光学系60の断面図を示す。図6では、4極子アレイ60とは別体であり、それぞれ、4極子ロッド62Aと62Bとの間、および62Cと62Dとの間に配置される、ドレイン電極64Aおよび64Bがある。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる好適な数または種類のドレイン電極を使用することができることを理解されるであろう。また、電源61が、1つまたは複数の異なる電源を備えてもよいことも明白である。この実施例では、ドレイン電極64Aおよび64Bは、図1に記載のイオン除去機構24等のイオン除去機構を構成する。タイマー22によって規定されるドレイン期間中に、ドレイン電極に連結された電源61は、DC電位をドレイン電極64Aおよび64Bに印加することができ、それらの間にDC電場の勾配68を生成する。DC電場の勾配68は、光学系アレイ60によって生成される集束電場に打ち勝ち、かつ残留イオンを含むあらゆるイオンをイオン光路から離れてイオン光学系から外に放出するように、不安定化電場としての役割を果たすことができる。印加しなければならない電場の大きさおよび時間の長さは、RF多極子内の圧力および放出されるイオンの移動度に依存する。種々の実施形態では、少なくとも1つの電極(この一例は、LINAC等の線形加速器であり得る)は、イオン光学系の近傍に配置され、かつ図1に記載のイオン除去機構24としての使用に好適なイオン除去機構を構成する。電極は、RF多極子を通してイオンを加速するために、またはRF多極子から残留イオンを排出するために使用することができる。電極に接続される電源は、DC電位を電極に印加することができ、残留イオンを含むイオンをイオン光学系から外へ軸方向に排出するように、電極に電場を発生させる。電極はまた、イオン光学系内の滞留時間を低減し、それによってイオンビームの拡散を低減または実質的に排除するように、イオンを加速することもできる。
【0034】
(実施例4)
図7は、別の例示的な構成の4極子イオン光学系60の断面図を示す。図7の例示的な実施例では、図1に記載のイオン除去機構24としての使用に好適なイオン除去機構は、各ロッドに印加されるRF電位を制御するように、コントローラ20を電源61および4極子ロッド62A〜62Dに連結することによって生成することができる。この実施例では、イオン除去機構は、4極子ロッド62A〜62DへのRF電位、RFAおよびRFBを、ほぼ0ボルトに減少させることによって動作する。前述のように、コンピュータデバイス上のソフトウェアは、規定された期間中にイオン光学系60の中のRF電場を除去または低減するようコントローラ20に命令することができるようにプログラムすることができる。種々の実施形態では、4極子ロッドへのRF電位は、4極子ロッド62A〜62Dに容量結合される、図3に記載のQ1 50およびQ3 54分析器によって制御される。
【0035】
通常のイオン輸送モード中に、4極子ロッド62A〜62Dに印加されるRF電位は、イオンを集束させてイオン光路の中に方向付ける役目を果たす、RF電位、RFAおよびRFBを生成する。この例示的な実施例では、各ロッド62A〜62DへのRF電位を低減した結果、RFAおよびRFB電場は、実質的にまたは完全に排除され、したがって、イオン光学系60内でイオンに印加される集束電場を除去する。集束電場RFAおよびRFBの不足は、光学系内のイオンを、4極子ロッド62A〜62Dのうちの1つと衝突させるか、ガス流の結果として4極子ロッドの間から飛び出させるか、または別の様態でイオン光学系60から除去させる。タイマー22によって規定されるイオンドレイン期間中に、イオン光学系内に存在する残留イオンは、4極子ロッド62A〜62DからRF電位を除去した結果として、イオン光路から散乱させられて、その後、イオン光学系から除去されることができる。
【0036】
図8は、図5に示されるようなデバイス設定を使用し、かつQJetイオン光学系を使用して収集した、多重反応モニタリング(MRM)データの線図を示す。図8の線図70Aは、図1に記載のシステム10としての使用に好適なAPI5000質量分光器システムの中に進入した、レセルピン試料(一般に、抗精神病薬および高血圧治療薬として一般に使用される、インドールアルカロイド)のMRM信号78を示す。データ収集の開始時には、−10ボルトのDC電位が、図5に記載の各4極子ロッド62A〜62Dに印加される。線図70Aの期間72(0.34分から0.41分)および期間74(0.52分から0.6分)の間、電源は、−10ボルトに戻される前に、200ボルトのDC電位を4極子ロッド62Bおよび62Dに印加するように、コントローラ20によって切り替えられる。線図70Aに示されるように、図5に示されるデバイス構成で、200VのDC電圧が極62Bおよび62Dに印加された時に、期間72および74の間、MRM信号は、ほぼ0.0cpsである。線図70Bは、レセルピンイオンについてのMRM信号の完全な排除を証明するように、期間72のブローアップを示す。図8は、2.5トールで動作して、QJetイオン光学ロッドから残留レセルピンイオンを除去するための、図5に記載の構成のような、イオン除去機構の有効性を表す。
【0037】
図9は、図7に示される除去機構等のイオン除去機構の動作についてのタイミング図80を示す。タイミング図80は、ドレイン時間82と、一時停止時間84と、ドウエル時間88および90とを含む。タイミング図80では、ドウエル時間は、5msに設定される一方で、ドレイン時間および一時停止時間は、変数である。表1は、図2に示されるシステム等の質量分光器システムのDMS移動度セルに適用される設定を示す。表1の1行目には、特定のイオン種の透過を最大化するように適切な設定が与えられる(すなわち、m/z922)。この実験の全体を通して、質量分光器は、第1の質量分析器(Q1)で測定した時にm/zが922であるイオンについての信号を監視する。表1に示される走査テーブルの第1の期間では、移動度デバイスは、約3000Vの振幅を伴う分離電圧を印加するように構成される。これらの条件下で、関心の(m/z922)イオンの透過は、約4.2Vの補償電圧(CV)で最適化される。実験の際に、適切な設定を移動度デバイスに適用することで、最大強度分析信号が得られた。表1の2行目には、m/z922イオンの透過についての不適切な設定を示す。不適当な設定が移動度デバイスに適用された状態で、m/z922イオンの分析信号は、いかなるm/z922イオンも移動度デバイスによって透過されないという結果として、完全に排除されるはずである。しかしながら、期間1と期間2との間で急速に切り替えた時に、m/z922イオンの分析信号は、それでも、イオン光学系内の、特に、図3に示されるようなQJetRFイオンガイド40内およびQ0RFイオンガイド42内のクロストークの結果として、期間2の間に観察される。したがって、2行目の設定を使用して得られた信号は、質量分光器システムの移動イオン光学系内のクロストークを表す。
【0038】
【表1】
図7のように構成したイオン除去機構24の有効性を判定するために、図9に示されるように、計測一時停止時間の前に、タイマー22によってドレイン期間82を挿入した。表1の1行目による設定をドウエル時間88中に適用すると、イオン種の最大透過が得られた(2行目のm/z設定は、ドウエル時間90中に適用した)。ドレイン期間82の開始時に、Q1およびQ3を5ダルトンに設定し、かつ、期間2の移動度状態を設定し、それによって、Q0イオン光学系から残留イオンを排出するように、図7の4極子ロッド62A〜62DからRF電位を実質的に除去(または低減)した。規定されたドレイン期間82の直後に、表1の2行目(クロストーク)のm/z設定を、Q1質量分析器に適用した。
【0039】
図10は、前述したイオン除去実験の結果を示す。図10は、図9に関してドレイン時間を変化させた、分析信号データの線図を示す。図10は、カウント毎秒(cps)対時間(分)での信号強度を示す線図70A〜70Eを含む。線図70Aは、イオン種の最大透過中の、2,847,193±120,890cpsに等しい、分析信号の強度を示す(条件は、表1による期間1によって規定される)。線図70B〜70Eでは、図9に記載の一時停止時間84を、5msで一定に保つ一方で、図9に記載のドレイン時間82を、15msから30msの間で変化させた。%クロストークは、以下の式に従って各ドレイン時間について計算される。
【0040】
【数1】
線図70B〜70Eに示されるように、ドレイン時間82が15msから30msに増大するにつれて、本質的に、残留イオンの全てが排除され、%クロストークは、0.0217%から0.000039%まで大幅に減少する。これらの実験について、イオン除去デバイスを完全に停止させて、デフォルトの20msの一時停止時間を用いると、クロストークは、約3%であった。したがって、図10に示される最低ドレイン時間(15ms)であっても、いかなるイオン除去デバイスも伴わない同じハードウェアに対して、測定したクロストークは、約100倍低減された。したがって、前述の実験は、イオン光学から残留イオンを除去する際のイオン除去機構が有効であること、および化学的クロストークを大幅に低減することを証明する。
【0041】
当業者は、ルーチンの実験を超えるものを用いなくても、本明細書に記載する実施形態および具体的な態様の多くの等価物を知ること、または確認することができるであろう。故に、本発明は、本明細書に開示される実施形態に限定されないが、以下の特許請求の範囲によって理解されるべきであり、法律によって許容される最大の範囲で解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析システムであって、
第1のイオン群を通過させるためのイオン移動度フィルタと、
該第1のイオン群を分析するための質量分析器と、
該イオン移動度フィルタから該質量分析器に該第1のイオン群を輸送するためのイオン光学アセンブリであって、該イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためのイオン除去機構を備えるイオン光学アセンブリと
を備える、試料分析システム。
【請求項2】
前記イオン移動度フィルタ、前記質量分析器、および前記イオン光学アセンブリに動作可能に接続され、これらに対する動作を制御するためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、イオンを前記イオン移動度フィルタおよび前記イオン光学アセンブリに通過させる時間を表す少なくとも第1の期間と、前記イオン除去機構を動作させて該イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するための時間を表す少なくとも第2の期間とを規定するためのタイマーを備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記イオン移動度フィルタは、低電場移動度セパレータ、高電場移動度セパレータ、微分移動度セパレータから成る群より選択することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記イオン移動度フィルタは、FAIMS、DMS、IMS、およびDMAから成る群より選択することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記イオン移動度フィルタは、第1の圧力領域の中に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記質量分析器は、前記第1の圧力領域とは異なる第2の圧力領域の中に位置する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記イオン光学アセンブリは、前記第1および第2の圧力領域の中の圧力に対して中間の圧力を有する第3圧力領域の中に位置する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第3の圧力領域は、複数の異なる圧力領域を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記イオン光学アセンブリは、多極子アレイ、リングガイド、イオン漏斗、および進行波デバイスから成る群より選択することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように構成される前記多極子アレイの少なくとも2つの極に、DC電位を印加するための電源を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから前記残留イオンを排出するために、DC電位を印加し、前記多極子アレイの極のうちの少なくとも2つの間に電場を生成する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためのDC電位を発生させるための電源と連通している少なくとも1つの電極を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから外へ前記残留イオンを半径方向に排出する電場を生成するDC電位を発生させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから外へ残留イオンを排出する軸方向電場を生成する、DC電位を発生させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの電極は、LINAC、抵抗イオンガイド、レンズ電極スタック、イオン漏斗、進行波イオンガイドから成る群より選択することができる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学系を通したイオン運動を加速するためのDC電位を発生させるための電源と連通している少なくとも1つの電極を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、イオンを脱集束させ、かつ前記イオン光学アセンブリから該イオンを除去するために、該イオン光学アセンブリ内のRF電位を減少させるための前記イオン除去機構と連通している、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
試料を分析するための方法であって、
イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップと、
イオン移動度フィルタを使用して、第1のイオン群を濾過するステップと、
該イオン光学アセンブリを使用して、該イオン移動度フィルタから質量分析器に該第1のイオン群を輸送するステップと、
該質量分析器を使用して、該第1のイオン群を分析するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記第1のイオン群を濾過するステップ、および前記第1のイオン群を輸送するステップは、第1の期間中に生じる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップは、第2の期間中に生じる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第3の期間中に、前記イオン移動度フィルタは、第2のイオン群を濾過し、前記イオン光学アセンブリは、前記イオン移動度フィルタから前記質量分析器に該第2のイオン群を輸送する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記イオン移動度フィルタは、低電場移動度セパレータ、高電場移動度セパレータ、微分移動度セパレータから成る群より選択することができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン移動度フィルタは、FAIMS、DMS、IMS、およびDMAから成る群より選択することができる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記イオン移動度フィルタは、第1の圧力領域の中に位置する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記質量分析器は、前記第1の圧力領域とは異なる第2の圧力領域の中に位置する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記イオン光学アセンブリは、前記第1および第2の圧力領域の中の圧力に対して中間の圧力を有する第3圧力領域の中に位置する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3の圧力領域は、複数の異なる圧力領域を備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記イオン光学アセンブリは、多極子アレイ、リングガイド、イオン漏斗、および進行波デバイスから成る群より選択することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように構成される前記多極子アレイの少なくとも2つの電極に、DC電位を印加するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記イオン光学アセンブリから前記残留イオンを排出する電場を発生させるステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するために、DC電位を少なくとも1つの電極に印加するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記イオン光学アセンブリから外へ前記残留イオンを半径方向に排出する電場を発生させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記イオン光学アセンブリから外へ前記残留イオンを排出する軸方向電場を発生させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの電極は、LINAC、抵抗イオンガイド、レンズ電極スタック、イオン漏斗、進行波イオンガイドから成る群より選択することができる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン光学アセンブリを通したイオン運動を加速するために、DC電位を少なくとも1つの電極に印加するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
イオンを脱集束させ、かつ前記イオン光学アセンブリから該イオンを除去するために、該イオン光学アセンブリ内のRF電位を減少させるステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
試料を分析するための方法であって、
A.第1の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第1の部分を選択し、イオン光学アセンブリを使用して該イオンの第1の部分を質量分析器に透過させるステップと、
B.第2の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第2の部分を選択し、該イオン光学アセンブリを使用して該イオンの第2の部分を該質量分析器に透過させるステップと、
C.第3の期間中に、該イオン光学アセンブリの少なくとも一部分から残留イオンを空にするステップであって、該第3の期間は、該第1および第2の期間の間に生じる、ステップと
を含む、方法。
【請求項39】
ステップA〜Cを反復的に繰り返すステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項1】
試料分析システムであって、
第1のイオン群を通過させるためのイオン移動度フィルタと、
該第1のイオン群を分析するための質量分析器と、
該イオン移動度フィルタから該質量分析器に該第1のイオン群を輸送するためのイオン光学アセンブリであって、該イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためのイオン除去機構を備えるイオン光学アセンブリと
を備える、試料分析システム。
【請求項2】
前記イオン移動度フィルタ、前記質量分析器、および前記イオン光学アセンブリに動作可能に接続され、これらに対する動作を制御するためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、イオンを前記イオン移動度フィルタおよび前記イオン光学アセンブリに通過させる時間を表す少なくとも第1の期間と、前記イオン除去機構を動作させて該イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するための時間を表す少なくとも第2の期間とを規定するためのタイマーを備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記イオン移動度フィルタは、低電場移動度セパレータ、高電場移動度セパレータ、微分移動度セパレータから成る群より選択することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記イオン移動度フィルタは、FAIMS、DMS、IMS、およびDMAから成る群より選択することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記イオン移動度フィルタは、第1の圧力領域の中に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記質量分析器は、前記第1の圧力領域とは異なる第2の圧力領域の中に位置する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記イオン光学アセンブリは、前記第1および第2の圧力領域の中の圧力に対して中間の圧力を有する第3圧力領域の中に位置する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第3の圧力領域は、複数の異なる圧力領域を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記イオン光学アセンブリは、多極子アレイ、リングガイド、イオン漏斗、および進行波デバイスから成る群より選択することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように構成される前記多極子アレイの少なくとも2つの極に、DC電位を印加するための電源を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから前記残留イオンを排出するために、DC電位を印加し、前記多極子アレイの極のうちの少なくとも2つの間に電場を生成する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するためのDC電位を発生させるための電源と連通している少なくとも1つの電極を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから外へ前記残留イオンを半径方向に排出する電場を生成するDC電位を発生させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学アセンブリから外へ残留イオンを排出する軸方向電場を生成する、DC電位を発生させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの電極は、LINAC、抵抗イオンガイド、レンズ電極スタック、イオン漏斗、進行波イオンガイドから成る群より選択することができる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記イオン除去機構は、前記イオン光学系を通したイオン運動を加速するためのDC電位を発生させるための電源と連通している少なくとも1つの電極を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、イオンを脱集束させ、かつ前記イオン光学アセンブリから該イオンを除去するために、該イオン光学アセンブリ内のRF電位を減少させるための前記イオン除去機構と連通している、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
試料を分析するための方法であって、
イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップと、
イオン移動度フィルタを使用して、第1のイオン群を濾過するステップと、
該イオン光学アセンブリを使用して、該イオン移動度フィルタから質量分析器に該第1のイオン群を輸送するステップと、
該質量分析器を使用して、該第1のイオン群を分析するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記第1のイオン群を濾過するステップ、および前記第1のイオン群を輸送するステップは、第1の期間中に生じる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するステップは、第2の期間中に生じる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第3の期間中に、前記イオン移動度フィルタは、第2のイオン群を濾過し、前記イオン光学アセンブリは、前記イオン移動度フィルタから前記質量分析器に該第2のイオン群を輸送する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記イオン移動度フィルタは、低電場移動度セパレータ、高電場移動度セパレータ、微分移動度セパレータから成る群より選択することができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン移動度フィルタは、FAIMS、DMS、IMS、およびDMAから成る群より選択することができる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記イオン移動度フィルタは、第1の圧力領域の中に位置する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記質量分析器は、前記第1の圧力領域とは異なる第2の圧力領域の中に位置する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記イオン光学アセンブリは、前記第1および第2の圧力領域の中の圧力に対して中間の圧力を有する第3圧力領域の中に位置する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3の圧力領域は、複数の異なる圧力領域を備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記イオン光学アセンブリは、多極子アレイ、リングガイド、イオン漏斗、および進行波デバイスから成る群より選択することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するように構成される前記多極子アレイの少なくとも2つの電極に、DC電位を印加するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記イオン光学アセンブリから前記残留イオンを排出する電場を発生させるステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記イオン光学アセンブリから残留イオンを除去するために、DC電位を少なくとも1つの電極に印加するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記イオン光学アセンブリから外へ前記残留イオンを半径方向に排出する電場を発生させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記イオン光学アセンブリから外へ前記残留イオンを排出する軸方向電場を発生させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの電極は、LINAC、抵抗イオンガイド、レンズ電極スタック、イオン漏斗、進行波イオンガイドから成る群より選択することができる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン光学アセンブリを通したイオン運動を加速するために、DC電位を少なくとも1つの電極に印加するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
イオンを脱集束させ、かつ前記イオン光学アセンブリから該イオンを除去するために、該イオン光学アセンブリ内のRF電位を減少させるステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
試料を分析するための方法であって、
A.第1の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第1の部分を選択し、イオン光学アセンブリを使用して該イオンの第1の部分を質量分析器に透過させるステップと、
B.第2の期間中に、イオン移動度に基づいてイオンの第2の部分を選択し、該イオン光学アセンブリを使用して該イオンの第2の部分を該質量分析器に透過させるステップと、
C.第3の期間中に、該イオン光学アセンブリの少なくとも一部分から残留イオンを空にするステップであって、該第3の期間は、該第1および第2の期間の間に生じる、ステップと
を含む、方法。
【請求項39】
ステップA〜Cを反復的に繰り返すステップを含む、請求項38に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図10−4】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図10−4】
【公表番号】特表2012−521072(P2012−521072A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500843(P2012−500843)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/027108
【国際公開番号】WO2010/107666
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/027108
【国際公開番号】WO2010/107666
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]