説明

イオン移動度分光計システムを構成する方法

本発明は、イオン移動度分光計システムを構成する方法、特に、標的アナライトを検出するためのイオン移動度分光計システムを構成する方法に関する。本方法は、標的アナライトの換算した移動度定数値Kを概算するための量子化学的手法を用いることを含む、検出アルゴリズムに基づくイオン移動度分光計システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2009年6月18日に出願された米国特許出願第12/487,360号および2009年3月6日に出願された米国仮出願第61/158,147号の利益を主張し、双方とも出典明示によりその全部を本願明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、イオン移動度分光計システム、特に標的アナライトを検出するためのイオン移動度分光計システムを構成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン移動度分光は、大気中または表面から取り出された微量の化学物質を検出および特定するための公知のデバイスである。これらは、爆発物、化学兵器および麻酔薬の検出に広く用いられる。従来のイオン移動度分光計は、反応室、ドリフトチューブおよび検出器の3つの主要な構成要素を有する。標的アナライト試料は、反応室またはイオン化室に導入され、そこで試料はシャッター付グリッドを通ってドリフトチューブへと進む。ドリフトチューブ内で、イオンを印加電場に曝し、イオンを中性のドリフト分子(neutral drift molecules)に通じさせ、検出器にまで運ぶ。検出器に到着したアナライトのイオン移動度を、同一物のうちの化学種(chemical species of the same)を決定するために、様々な同定済みアナライトのイオン移動度の記録と比較する。この方法では、中性ドリフトガスとの特有の相互作用により生じる種々のイオンのドリフト時間の差異(移動度の差異)のために、高精度にアナライトの化学的構造を決定することが可能である。
【0004】
従来のイオン移動度分光計は、同定済みアナライト及びそれぞれのイオン移動度の内臓データベースを保有する。幾つかのイオン移動度分光計では、限られた数の同定済みアナライトをカバーするデータベースを保有するのみであり、かつ、容易に更新もしくは拡張できない。他のイオン移動度分光計では、新規および既存の化学物質の完全な範囲を検出するために、付加的なソフトウェアライブラリーを購入することが要求される。
【0005】
装置を適宜構成するためには、新規および既存のアナライトをイオン移動度分光計ライブラリーに導入し、様々な化学特性(例えば、イオン移動度)を測定しなければならない。精確な値を得るため、典型的にはこのプロセスは管理されたベンチ、チャンバーおよび様々な環境変数に曝されるフィールドの実験的に異なる3つの設定で達成される。しかしながら、この3つのプロセスは時間を費やし、コスト高であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当該分野には、追加する新規および既存のアナライトの同定情報を有するイオン移動度分光計を効率的に構成する方法についての要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明は、標的アナライトについての潜在的なクラスター構造および前記の潜在的なクラスター構造の形成に相当する結合エネルギーを決定すること;前記の潜在的なクラスター構造の形成に関する統計的分布を、可能な立体配置の相対エネルギーに基づいて算出すること;前記統計的分布により決定されたクラスター構造の量子化学的分析を通じて、標的アナライトの衝突断面積を算出すること;前記の算出した断面積に基づき、潜在的なクラスター構造の少なくとも1つのK値を概算すること(ここで、Kは換算した移動度定数である);前記の概算したK値をイオン移動度分光デバイスに移すこと;前記の概算したK値およびデバイス特性および環境因子に基づき、潜在的なクラスター構造のドリフト時間を算出すること;前記の算出したドリフト時間に少なくとも部分的に基づき、検出アルゴリズムを創出すること;および、前記検出アルゴリズムに基づき、イオン移動度分光計システムを構成することによる、標的アナライトを検出するためのイオン移動度分光計システムを構成する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】アンモニアの代表的な化学構造を示す。
【図2】より低いエネルギーの熱的に好ましいアンモニウム(すなわち、プロトン化アンモニア)−1〜6個の水分子の水複合体のいくつかを図示する。
【図3】様々なアンモニウム−水複合体に関するクラスターエネルギーの作表である。
【図4】様々なアンモニウム−水クラスターの算出したエンタルピー、ΔHを示す。
【図5】様々なアンモニウム−水クラスターの算出した自由エネルギー、ΔGを示す。
【図6】アンモニウム−水クラスターの様々な立体配置についての統計的分析を示す。
【図7】MP2/MED(未補正)、MP2/MED(ZPE補正)およびMP2G2MP2の3つの方法を用いて算出したプロトン親和性と比較した、様々な化合物に関するプロトン親和性の実験データに基づく文献値のチャートである。
【図8】算出した電子親和性と比較した、様々な化合物の電子親和性の実験データに基づく文献値のチャートである。
【図9】代表的な12−4剛体球ポテンシャルモデル(Hard-Sphere Potential Model)を用いた、移動度定数(K)および衝突断面積(Ω)の算出を図示する。
【図10】実験値と比較した、一連のアミン化合物の概算値を示す。
【図11】様々な環境条件下でのアンモニウム−水クラスターの様々な可能なクラスターおよび立体配置のK値のライブラリーである。
【図12】マスタードガスの3つの最小エネルギー立体配置を示す。
【図13】フランのプロトン親和性算出を、プロトン化部位の関数として図示する。
【図14】構成コンピュータシステムおよびイオン移動度分光計システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳しい記載)
本発明は、標的アナライトを検出するためのイオン移動度分光計システムを構成する方法に関する。イオン移動度分光計システムは、当分野で公知のすべてのイオン移動度分光計を含み、例えばAPD 2000(商標)、ICAM(商標)、Multi-IMS(商標)およびRAID-M(商標)がある。本発明の方法は、大掛かりな実験研究での労力を要することなく、イオン移動度分光計に使用するための検出アルゴリズムの創出を可能にすることで、改善された効率を提示する。本方法のインプリメンテーションは、以下で記載し、また実施例で記載する。図14は、本方法を実施するための構成コンピュータシステム100を説示する。
【0010】
予備的工程は、標的アナライトを同定することを含む。標的アナライトの1つ以上の化学構造を、標準的な量子化学法により特定し、マップすることができる。適切なアナライトは、イオン移動度分光計システムにより検出することができる化学化合物または組成物、例えば有毒な工業化学物質、麻酔薬、爆発物、化学薬品および有害物質を含む。本発明の1つの実施形態に拠れば、標的アナライトは有毒化学物質である。これは、標準的な方法および図14の構成システム100への入力により達成することができるか、または構成システム100のモジュールにより達成することができる
【0011】
標的アナライトが同定された後に、当該標的アナライトを検出する際に陽イオンまたは陰イオンモードを用いるべきかどうかを決定するための最初の判断をし得る。モードの特定(または、可能な場合には両方のモード)は、形成され得る反応性イオンおよび潜在的なイオンクラスターを示す。この決定は標的アナライトを分析することを含んでいてもよく、標的アナライトの化学構造が陽子もしくは電子をより容易に受け取り、かくしてクラスター形成の性質に影響を及ぼすかどうか、及び前記クラスターが電界中でどのように挙動するかを決定する。プロトン親和性は文献の情報源(利用可能な場合)から算出でき又は得ることができ、分子が高プロトン親和性を有する場合には、陽イオンモードが典型的に用いられるべきである。分子が高電子親和性を有する場合には、陰イオンモードが典型的に用いられるべきである。特定の状況では、両方のモードが許容され得る。
【0012】
次に、アナライトの潜在的なクラスター構造および前記潜在的なクラスター構造に相当する結合エネルギーが、潜在的なクラスター決定モジュール12により決定され得る。これは、化学構造を分析するための量子化学的手法および方法を用いることで実行し得る。当分野で公知のように、量子化学は、その物理的性質および反応に関係するため、原子および原子の電子構造を分析する際に量子力学を適用する理論化学分野の分派である。本発明において、量子化学法は、クラスター構造または潜在的なクラスター構造の構造を決定し、作表し、それらのエネルギーを比較し、立体配置探索を実施し、最終的にどの分子が電荷を有するかを決定するために、用いられる。本発明の他の態様において、別の量子化学的手法および方法を、クラスターの大きさ、形状および質量を決定するために用いることができ、次いで、それらは、質量中心、電荷中心(center of charge)およびクラスターの移動度に直接影響を及ぼす他の物理的性質を決定するために用いられる。本発明に記載の量子化学は、上記の分析の幾つか又は全部を含んでよい。
【0013】
量子化学を用いた潜在的なクラスター構造の決定は、典型的には試薬と相互作用させることを含む。水は、IMSに用いられる共通試薬であり、アナライトとクラスター構造を形成する傾向があろう。しかしながら、他の試薬を用いて、同様に反応性イオンを生成させることができる。標的アナライトと試薬(複数の試薬)との、推察される反応を評価することができる。例えば、水を試薬として用いる場合、異なる推察反応を設定し、多数の水分子がアナライトとどのように相互作用するか又はどのようにクラスター化するかを決定することができる。
【0014】
潜在的なクラスター構造の形成に関する統計的分布は、評価される可能な立体配置の相対エネルギーに基づき、統計的分布モジュール14により算出可能である。この形成の可能性は、様々なクラスター構造の相対エネルギーを用いて、相対湿度および温度の関数として算出可能である。これは、クラスターエネルギーを作表および/または比較することによって行われ得る。例えば、相対エネルギーは、GAMESSソフトウエアスイートを用い、各クラスターについてのMoller-Plesset二次摂動論(MP2)および適度な基本セット(例えば、6-311++G**)を用いて算出可能である(M.W.Schmidt, K.K.Baldridge, J.A.Boatz, S.T.Elbert, M.S.Gordon, J.H.Jensen, S.Koseki, N.Matsunaga, K.A.Nguyen, S.Su, T.L.Windus, M.Dupuis, および J.A.Montgomery, General Atomic and Molecular Electronic Structure System, J. Comput. Chem. 1993, 14, 1347-1363)、その全部を出典明示により本明細書の一部とする。他の量子化学プログラム、例えば、Gaussian03、ACES IIおよびACES IIIも用いることができる。Gaussian03の改訂版C.02は、M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, J. A. Montgomery, Jr., T. Vreven, K. N. Kudin, J. C. Burant, J. M. Millam, S. S. Iyengar, J. Tomasi, V. Barone, B. Mennucci, M. Cossi, G. Scalmani, N. Rega, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, M. Klene, X. Li, J. E. Knox, H. P. Hratchian, J. B. Cross, V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann, O. Yazyev, A. J. Austin, R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski, P. Y. Ayala, K. Morokuma, G. A. Voth, P. Salvador, J. J. Dannenberg, V. G. Zakrzewski, S. Dapprich, A. D. Daniels, M. C. Strain, O. Farkas, D. K. Malick, A. D. Rabuck, K. Raghavachari, J. B. Foresman, J. V. Ortiz, Q. Cui, A. G. Baboul, S. Clifford, J. Cioslowski, B. B. Stefanov, G. Liu, A. Liashenko, P. Piskorz, I. Komaromi, R. L. Martin, D. J. Fox, T. Keith, M. A. Al-Laham, C. Y. Peng, A. Nanayakkara, M. Challacombe, P. M. W. Gill, B. Johnson, W. Chen, M. W. Wong, C. Gonzalez, およびJ. A. Pople, Gaussian, Inc., Wallingford CT (2004)により、開発された。ACES IIおよびACES IIIは、Quantum Theory Project, University of Floridaのプログラム製品であり、J.F. Stanton, J. Gauss, J.D. Watts, M. Nooijen, N. Oliphant, S.A. Perera, P.G. Szalay, W.J. Lauderdale, S.A. Kucharski, S.R. Gwaltney, S. Beck, A. Balkova D.E. Bernholdt, K.K. Baeck, P. Rozyczko, H. Sekino, C. Hober, およびR.J. Bartlettにより開発された。同梱の統合パッケージは、VMOL(J. AlmlofおよびP.R. Taylor);VPROPS(P. Taylor)ABACUS;(T. Helgaker, H.J. Aa. Jensen, P. Jorgensen, J. Olsen, およびP.R. Taylor);およびGAMESS統合パッケージである。
【0015】
統計的分布を分析する場合、低いパーセンテージの立体配置は単純に無視することができる。これは、その分子が検出されるのに十分長期にわたって、その条件下で存在する可能性がありそうもないことによる。加えて、IMS装置に付随する電子雑音は、多くの場合、非常に小さいピークを圧倒するであろう;すなわち、より小さいピークはノイズに埋もれて失われるであろうし、あるいは、より突出したピークが優勢になるであろう。かくして、パーセンテージが小さければ小さいほど、一般にIMSシグナルで検出することはより難しくなる。
【0016】
ともかくイオンクラスターを形成することも決定できる。これは、上記の潜在的なクラスター構造の形成に関する統計的分布の算出と並行して、例えばボルツマン統計的分布分析における相対ギブズ自由エネルギー(ΔG)を用いることによって行うことができる。イオンクラスターが存在する可能性を決定する1つの方法には、分子のプロトン親和性を算出することがある;他の方法には、電子親和性を算出することがある。ひとたび算出されると、正確性を評価するために、そのプロトン親和性または電子親和性を文献値(存在する場合には)と比較することができる。図7は、3つの方法を用いて算出されたプロトン親和性と比較した、様々な化合物のプロトン親和性の文献値(実験データに基づく)を示す。図7は、プロトン(正電化キャリア)を受け取る傾向の最も大きい化合物を探し出す、陽イオンモードIMSに関する。図8は、電子(負電荷キャリア)を受け取る傾向の最も大きい化合物を探し出す、陰イオンモードIMSに関する。様々な算出を用いて、さらにプロトン親和性または電子親和性値を改善することができる。例えば、零点エネルギー(ZPE)補正は分子の内部振動エネルギーを考慮し、一般に文献で見出される実験値とより一致する算出値を導く。推定の無署名のエラー(unsigned error)を最小化するために、MP2G2MP2方法論である内部プロトコルに基づく改良G2(MP2)プロトコルをさらに用いることができる。MP2G2MP2方法論は、L.A. Curtiss, K. Raghavachari, および J.A. Pople, GAUSSIAN-2 Theory Using Reduced Moller-Plesset Orders, J. Chem. Phys. 1993, 98 1293(その全部を出典明示により本明細書の一部とする)に記載されるように、他の改良の中でも、MP2ストラクチャーを、スタンダードG2(MP2)プロトコルのHFストラクチャーの代わりに用いる改良G2(MP2)プロトコルである。
【0017】
クラスターを、それらの熱力学特性に従って分析し、各クラスターが電荷を受け取り得るかどうかを決定することができる。クラスター形成反応に関するエンタルピー(H)およびギブズ自由エネルギー(G)を含む熱力学特性を分析し、それらが負の値であるかどうかを決定する。ΔG(G生成物−G反応物)が負であれば、モデルプロセスは熱力学的に許容され、推察されるプロセスが生じ得る。温度の関数として、各プロセスが生じ得るかどうかを分析することは、潜在的なクラスターが形成され得ることを明らかにする。
【0018】
次に、統計的分布から決定されたクラスター構造の量子化学的分析を通じ、標的アナライトの衝突断面積を、衝突断面積算出モジュール16によって算出することができる。K式中で以下に記述するΩは、イオンの有効衝突断面積である。分子間相互作用(引力または斥力)の強度を、それが生じる距離の関数として記述するため、相互作用モデルポテンシャルを用いることができる。選択したモデルポテンシャルは、最小エネルギーの立体配置を利用し、標的クラスターの質量中心および電荷の両方を考慮に入れる。
【0019】
次に、算出した横断面に基づき、少なくとも1つの潜在的なクラスター構造のK値を、概算モジュール18により概算する。ここで、Kは換算した移動度定数である。G.A. Eiceman および Z. Karpas, Ion Mobility Spectroscopy (CRC Press 2005)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載された12−4剛体球ポテンシャルモデル(hard-sphere potential model)を、単純なシステムのKを予測するために用いることができる。しかしながら、より複雑な場合には、当分野で公知の他のポテンシャルモデルが好ましいであろう。既存のポテンシャルを適合させてもよいし、または新たなポテンシャル形を開発してKを予測してもよい。ポテンシャルは化合物のクラスに適用可能であろうし、また既知のシステムの実験データに対する実績に基づいて選択されるであろう。これは、あるクラス内の未知の移動度定数を有する化合物に対する手順を推定する場合に、確からしさを与えるであろう。
【0020】
いったんモデルが選択されると、それに依存する物理パラメータ(例えば、質量中心、電荷中心、分子体積など)は、量子化学的手法により算出される。粒子系の質量中心 Rは、それらの質量mにより重み付けされた位置rの平均と定義され、R = Σm/Σmである。入力は、以前に得られた構造中の原子群の各原子の(x、y、z、質量)である。出力は、質量中心の(x、y、z)である。これらの算出を補助するために、相対値を適切に組合せるいずれかの適切なプログラムを用いることができる。例えば、単純なフォートラン(Fortran)コードを用いることができる。
【0021】
電荷中心(陽性または陰性)は、部分電荷に基づくことを除いて、質量中心の算出と類似する:Q = Σ q/Σ q。入力は、以前に得られた構造中の原子群の各原子の(x、y、z、部分電荷)であり、出力は電荷中心の(x、y、z)である。
【0022】
ドリフトチューブ媒体(例えば、空気、CO、N、O、アルゴン)の質量中心座標および媒体の静的分極率、αも方程式に組み込まれる。「分極率」は、例えば近くのイオンの存在により生じ得る外部電場でその正常な形から歪められる、原子または分子の電子雲のような、電荷分布の相対的傾向である。
【0023】
次いで、換算した移動度定数(K)は、算出した衝突断面積および以下の方程式を用いて、あるクラスの化合物について算出することができる:
= (3e/16N)(2π/mkTeff1/2[1/Ω(Teff)](273/T)(P/760)
[変数は、e = 電子の電荷 = 1.60217646×10−19 クーロン
π = 3.1415926535898
N = 測定圧力での中性ガス分子の数密度 = 6.02214179×1023 分子/モル
act = N*P/(760.0*R*Teff
P = 圧力(トール)
μ = 支持大気(supporting atmosphere)のイオンおよびガスの換算した質量 = m / (m + m
k = ボルツマン定数 = 1.3806503 × 10−23 kg 秒−2−1
eff =熱エネルギーおよび電界で得られるエネルギーにより決定されるイオンの有効温度(ケルビン)
Ω = 支持大気中のイオンの有効衝突断面積、である]。
【0024】
この手順を用いて、あるクラスの化合物を適合させることができる。そのような例として、実験データが存在する一連のモデル化合物を、モデルを評価する際に用いることができる。算出した移動度定数が文献値からかけ離れている場合には、ポテンシャルモデルを適合させてもよく、異なるポテンシャルモデルを用いることもでき、または、新しいモデルを開発してもよい。インプリメントしたポテンシャルモデルの質は、実験データが存在するモデル化合物の使用および適用に基づいて評価される。
【0025】
次に、概算したK値を、イオン移動度分光計システムに電気的に又は他の方法により移す。次いで、そのイオン移動度分光計システムを、デバイス特性および環境因子に基づいて構成することができる。デバイス特性には、例えば、イオン移動度分光計の製造番号および型式番号、ドリフトガス、ドリフトチューブの温度、ならびにドリフトチューブの長さ及び直径が挙げられる。環境因子には、例えば、イオン移動度分光計が操作されるときの温度、圧力および相対湿度が挙げられる。
【0026】
次に、その潜在的なクラスター構造に関するドリフト時間(t)は、以下の方程式を用い、概算したK値、デバイス特性(ドリフトガス、ドリフトチューブの温度、ドリフトチューブの長さ及び直径)および環境因子(相対湿度、温度)に基づいて、ドリフト時間算出モジュール20により算出することができる。
= d / v
[ここで、v = K(Tドリフトチューブ/273)(760/Patm)E
d = ドリフトチューブ長(cm)
=ドリフト速度(cm/s)
E = 電場
T = 温度(ケルビン)
P = 圧力(トール)
K = K(T/273)(760/P)、である]。
【0027】
少なくとも部分的に算出したドリフト時間に基づき、検出アルゴリズムを、検出アルゴリズム創出モジュール22により創り出すことができる。1つの実施形態において、検出アルゴリズムは、算出したドリフト時間および/または異なる操作条件下で得られたドリフト時間の組合せに基づく。操作条件には、例えば、イオンモード、ドリフトチューブの温度および濃度が挙げられる。次いで、イオン移動度分光計システムを、検出アルゴリズムに基づいて構成することができる。具体的には、イオン移動度分光計の設計は、所望の操作および検出を提供するために調整される。請求項にかかる本願発明の1つの実施形態において、イオン移動度分光計システムは、潜在的なクラスター構造の算出したドリフト時間の入力に基づいて、構成することができる。
【0028】
このモデルを用い、装置設計を、妨害化合物(interfering compound)間のピークのコントラストを得るために改変することができる。換言すれば、設計は、アナライトのより容易な検出にするため、好ましい高さ及び幅のピークを作り出すよう改良することができる。有利なことに、これは、湿度および他の環境因子を考慮することを可能にし、他の面では、IMSのウィンドウを検索される情報から切り離せる。
【0029】
このシステムは、現在使用される従来型のシステムに勝る多くの利点を提供する。第一に、それは、新たな危険物(threat)を検出するために必要な情報、すなわち実験的にまだ分析されていないアナライトを検出するための必要な情報を有するIMSシステムを構成する非常に効率的な方法を創出する。本発明に記載の量子化学的手法を用いることにより、IMSシステムでの使用に適した検出アルゴリズムを、数日〜数週〜数ヶ月の間に創り出すことができ、一方で純粋に実験結果に頼る従来型のシステムでは幾月も要するであろう。これは、標的アナライトが国の安全保障にとって重大な危険物であり、その新たな危険物を説明するためのIMSを可能な限り迅速に構成することが最重要事項であるという状況下では、特に決定的なことであろう。
【0030】
第二に、この方法により創出される検出アルゴリズムは、IMSの操作者が様々な妨害化合物を考慮することを可能にする。多くの場合、妨害化合物は、標的アナライトのピークに類似したピークを生じ、操作者が擬陽性、同様に擬陰性の結果をもたらすこととなる。湿度および他の環境因子などの様々な状況を考慮に入れた検出アルゴリズムに拠れば、妨害化合物間のピークのコントラストを得るために、検出ウィンドウを改変することができる。かくして、改良した設定は、ピークのさらなる分離をもたらし、アナライトのより容易な検出およびより正確な検出をもたらす。
【0031】
実施例
実施例1は、アンモニアに対する本方法のインプリメンテーションを記載する。実施例2は、アンモニアの例における実施例1.3のマスタードガスに対するインプリメンテーションを記載する。実施例3は、アンモニアの例における実施例1.5のフランに対するインプリメンテーションを記載する。
【0032】
実施例1:アンモニアに対する本方法のインプリメンテーション
【0033】
1.1 新しい危険物の構造を特定する:最初に、アンモニア分子の構造を特定し、従来の量子化学方法によりマップした。図1は、アンモニアの代表的な最小エネルギー化学構造を示す。
【0034】
1.2 陽イオンおよび/または陰イオンモードかどうかを決定する:次に、アンモニア分子を分析し、それが電場内でどのように挙動するかに影響を及ぼし得る部分電荷および双極子モーメントを決定する。プロトン親和性は文献の情報源(利用可能な場合)から算出でき又は得ることができ、前記分子が高プロトン親和性を有する場合、陽イオンモードが典型的には用いられるべきである。
【0035】
1.3 構造の選択:アンモニアは比較的単純な分子であるため、単一の最小エネルギー立体配置だけが、化学理論のMP2//6−311++G**レベルで得られた。マスタードガスに関する実施例2には、少なくとも3つの最小エネルギーの立体配置を有するより複雑な構造が見られる。
【0036】
1.4 潜在的なクラスター構造を決定する:図2は、より低いエネルギーの熱的に好ましいアンモニウム(すなわち、プロトン化アンモニア)−1〜6個の水分子の水複合体の幾つかを図示する。水は、アナライトが大気に曝された場合にクラスターを形成し得る主要な分子である。図2では、高エネルギーレベルの特定のクラスター立体配置は割愛した。これらの図は、様々な数の水分子がアナライトとどのように相互作用し得るかを示す。水はしばしば二量体を形成し、アンモニウムと相互作用する水二量体は、その質量中心をアンモニウムと相互作用する2分子の水単量体の質量中心に移動させ得る。例えば、2分子の水および3分子の水の複合体の場合、図には二量体は示していないが、二量体の存在は質量中心をシフトさせ、その質量中心はクラスターのより中心に存在する。これらの変動は、電荷中心もまたシフトさせ得る。各立体配置は、特有の質量中心および電荷中心を有する。
【0037】
1.5 クラスターエネルギーの作表/比較:相対エネルギーは、各クラスターについてのMoller−Plesset二次摂動論およびGAMESS(商標)ソフトウエアスイートを使用する適度な基本セット(6−311++G**)を用いて算出できる。他の量子化学プログラム、例えばGaussian03(商標)およびACES(商標)も用いることができる。図3は、様々なアンモニウム−水クラスターの作表の例である。この例において、試薬は、ヒドロニウムの反応性イオンを形成する水と仮定した。エンタルピー(ΔH)および自由エネルギー(ΔG)を含む熱力学特性を分析し、それらが様々なクラスターの形成に関し、「大きな」負の値であったかどうかを決定した。図4は、様々なアンモニウム−水クラスターのΔHを示す。図4で示されるように、各例に関して、大きな負のエンタルピーは、プロトンをアンモニアに移行させアンモニウムイオンを形成するヒドロニウム−水クラスターと一致した。このアンモニア−アンモニウム複合体の形成に関する熱力学的データ(大きな負のΔH)は、この反応が生じ得ることを示す。この化学的性質は、より高いアンモニア濃度で高まるであろう。図5は、様々なアンモニウム−水クラスターのΔGを示す。ΔGが負の場合、モデルプロセスは熱力学的に許容される。ΔGsをコンピュータ算出し、その反応が負のギブズ自由エネルギーを有することを確かめた。アンモニアは、電荷を受け取るものとして、かなり簡単な分析を提示する。図3は、フランに関するより複雑な算出について示し、構造がどのようにプロトン化されるかについて複数の可能性があり、幾つかの可能性が他のものよりもエネルギー的により好ましい。
【0038】
1.6 立体配置が存在する可能性を決定する:特定の立体配置が規定の温度で存在する可能性は、ボルツマン統計的分布分析における相対自由エネルギー(ΔG)を用いて算出した。図6は、アンモニウム−水クラスターの様々な立体配置の統計的分布を示す。より小さいパーセンテージを有する立体配置は単純に無視した。これは、その分子がその条件下で存在する可能性がありそうもないことによる。
【0039】
1.7 プロトン親和性を文献値と比較する:図7は、3つの方法を用いて算出したプロトン親和性と比較した、アンモニアを含む様々な化合物のプロトン親和性の文献値(実験データに基づく)を示す。零点エネルギー(ZPE)補正を用いて、分子の内部振動エネルギーを考慮し、これは一般的に、文献で見出される実験値とより一致する算出値を導く。MP2G2MP2方法論を用いて、推定の無署名のエラーを最小化した。図7で示され得るように、本実施例に従って実行し、算出したプロトン親和性は、特に、ZPE補正した場合またはMP2G2MP2プロトコルを用いた場合に、文献値に近似する。図8は、様々な化合物の電子親和性を示す。図8は、電子(負電荷)を受け取る傾向の最も大きい化合物を探し出す、陰イオンモードIMSに基づく。
【0040】
1.8 衝突断面積を算出する:図9は、イオンの有効衝突断面積、Ωの算出を図示する。モデルポテンシャルを用いて、化学部分の間の相互作用(距離および空間的定位の関数としての相互作用力の強さ)を規定する。開発したモデルポテンシャルは、他の物理パラメータ、標的クラスターの質量中心および電荷中心の中から、最小エネルギー立体配置を利用し、考慮に入れる。最小エネルギーのアンモニアクラスターの各々について、質量中心および電荷中心は異なる。この場合、2個の水分子を有する2つの同定済みアンモニアクラスターは、同じ質量および総電荷を有するが、それらは、それぞれ特有の種で質量中心および電荷分布が異なるために、IMSにおいてそれぞれ異なる挙動をするであろう。
【0041】
1.9 換算した移動度定数(K)を概算する:アンモニウムは、速い換算移動度を有する比較的小さいイオンであり、以前に150℃で水ベースのイオン化化学を用いて2.8 cm/V−sと報告された。したがって、12−4剛体球ポテンシャルモデルを、2つの異なるキャリアガス中の一連のアミンアナライトをモデルにするために用い、これらのシステムは、図10で理解されるように、Kを予測するのに十分であった。
【0042】
移動度定数を導き、最終的にドリフト時間を導く衝突断面積を決定するために、質量中心および電荷中心を算出した。粒子系の質量中心 Rは、それらの質量 mにより重み付けされたそれらの位置 rの平均として規定され、R = Σm/Σmである。入力は、量子化学最小エネルギー構造中の原子群の各原子の(x、y、z、質量)であり、出力は、質量中心の(x、y、z)である。電荷中心(陽性または陰性)は、量子化学生成(quantum chemistry generated)部分電荷に基づくことを除いて、質量中心の算出と類似する:Q = Σ q/Σ q。入力は、構造中の原子群の各原子の(x、y、z、部分電荷)であり、出力は、電荷中心の(x、y、z)である。標準的なフォートラン・ルーティンを用いて、質量中心および電荷中心の値を積算した。ドリフトチューブ媒体(例えば、空気、CO、N、O、アルゴン)の質量中心座標および媒体の静的分極率、αも方程式に組み込んだ。
【0043】
次いで、換算した移動度定数(K)は、衝突断面積および以下の方程式を用いて算出した:
= (3e/16N)(2π/mkTeff1/2[1/Ω(Teff)](273/T)(P/760)
[変数は、e = 電子の電荷 = 1.60217646×10−19 クーロン
π = 3.1415926535898
N = 測定圧力での中性ガス分子の数密度=6.02214179×1023 分子/モル
act = N*P/(760.0*R*Teff
P = 圧力(トール)
μ = 支持大気のイオンおよびガスの換算した質量 = m / (m + m
k = ボルツマン定数 = 1.3806503 × 10−23 kg 秒−2−1
eff = 熱エネルギーおよび電界で得られるエネルギーにより決定されるイオンの有効温度(ケルビン)
Ω = 支持大気中のイオンの有効衝突断面積、である]。
【0044】
算出した移動度定数が、選択したモデル化合物の文献値からかけ離れている場合、異なるポテンシャルモデルを用いるべきであるか、または新しいモデルを創り出してもよい。図10で理解されるように、一連のアミン化合物の推定値は文献値と同等である。したがって、12−4剛体球ポテンシャルモデルは、このクラスの化合物に関して十分であった。
【0045】
1.10 可能なクラスター構造についてのKライブラリーを構築する:各Kを、環境条件の変動(例えば温度)下での様々な可能なクラスターおよび立体配置について算出し、値のライブラリーを作成した。図11は、この値のライブラリーを示す。データは、IMS分析に関する相対ピークの高さ(ボルツマン統計的分布)および幅に変換した。
【0046】
1.11 ドリフト時間を算出する:Kおよび環境特性(相対湿度、圧力)および装置特性(ドリフトガス、ドリフトチューブの温度、ドリフトチューブの長さ)に基づき、関連するクラスターのすべてのドリフト時間を、以下の方程式を用いて算出した:
= d / v
[ここで、v =K(Tドリフトチューブ/273)(760/Patm)E
d = ドリフトチューブ長(cm)
= ドリフト速度(cm/s)
E = 電界
T = 温度(ケルビン)
P = 圧力(トール)
K = K(T/273)(760/P)、である]。
【0047】
実施例2:マスタードガスの最小エネルギー立体配置を決定する
【0048】
図12は、硫黄マスタードガスの3つの最小エネルギー立体配置を示す。この場合、Cが優勢な立体配置である。それは、構造のエネルギーが、他の立体配置(C2VおよびC)に対して、最も低いからである(E = 0.00)。最小エネルギーは、GAMESS(商標)ソフトウェアを用いて算出した。
【0049】
実施例3:フランのクラスターエネルギーを作表/比較する
【0050】
フランは、相対エネルギーを決定する際に、より複雑な算出を伴う。図13は、フランが陽子電荷を受け取り得ることの決定を図示する。構造をどのようにプロトン化するかについて複数の可能性があるが、幾つかの可能性が他のものよりもエネルギー的により好ましい。この場合、[フラン−H](3)がエネルギー的に最も好ましいプロトン化構造を提供することを示す。プロトンが酸素原子に隣接する炭素原子に存在する第3の構造が、第1の構造(プロトンが酸素に存在する)および第2の構造(プロトンが酸素に対してβ位の炭素に存在する)の双方よりも好ましい。これは、文献で与えられるプロトン親和性を、各ポテンシャル構造のプロトン親和性値と比較することによって確認された。
【0051】
本発明は、デバイスを所望の機能を達成させるコンピュータ読取可能ソフトウェア命令でプログラムされたコンピュータデバイスまたは複数のコンピュータデバイスにより達成され得る。これらのデバイスは、ソフトウェアが記録されるコンピュータ読取可能メディアを含むメモリを有する。本発明は機能モジュールを通じて記載され、前記機能モジュールは、実行された場合にコンピュータが方法の工程を実施することとなる、コンピュータ読取可能メディアに記録された実行可能な命令により規定される。モジュールは、明確さのために機能ごとに隔離される。しかしながら、モジュールは、コードの個々のブロックに対応している必要はなく、記載の機能が、別々のメディアに保存された別々のコード部分の実行により行われ、様々な時間に実行されてよいことは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的アナライトを検出するためのイオン移動度分光計システムを構成する方法であって、
標的アナライトの潜在的なクラスター構造および前記の潜在的なクラスター構造の形成に相当する結合エネルギーを決定する工程;
前記の潜在的なクラスター構造の形成に関する統計的分布を、可能な立体配置の相対エネルギーに基づいて算出する工程;
前記統計的分布から決定されたクラスター構造の量子化学的分析により、標的アナライトの衝突断面積を算出する工程;
前記の算出した断面積に基づき、潜在的なクラスター構造の少なくとも1つのK値を概算する工程(ここで、Kは換算した移動度定数である);
前記の概算したK値をイオン移動度分光デバイスに移す工程;
前記の概算したK値およびデバイス特性および環境因子に基づき、潜在的なクラスター構造のドリフト時間を算出する工程;
前記の算出したドリフト時間に少なくとも部分的に基づき、検出アルゴリズムを創出する工程;および
前記検出アルゴリズムに基づき、イオン移動度分光計システムを構成する工程を含む、方法。
【請求項2】
標的アナライトの1つ以上の化学構造を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デバイス特性および環境因子に基づき、前記デバイスを構成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
標的アナライトが有毒化学物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
潜在的なクラスター構造を決定する工程が、量子化学を用いて化学構造を解析する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
潜在的なクラスター構造を決定する工程が、潜在的なクラスター構造の形成に相当する熱力学を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
熱力学の決定が、ギブズ自由エネルギー(ΔG)および/またはエンタルピー(ΔH)を算出する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
統計的分布を算出する工程が、クラスター構造のギブズ自由エネルギー(ΔG)の差を用いて前記形成の確率を、相対湿度および温度の関数として算出する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
衝突断面積を算出する工程が、量子化学を用いて、潜在的なクラスターの大きさ、形状および質量を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
衝突断面積を算出する工程が、モデルポテンシャルの使用をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モデルポテンシャルが、2つの部分がどのように相互作用するかを決定する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
デバイス特性が、イオン移動度分光計の製造番号および型式番号、ドリフトガス、ドリフトチューブの温度、およびドリフトチューブの長さを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
環境因子が、イオン移動度分光計を評価するときの温度、圧力および相対湿度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
潜在的なクラスター構造を決定する工程の前に、標的アナライトを検出する際に陽イオンおよび/または陰イオンモードを用いるべきかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
陽イオンおよび/または陰イオンモードを決定する工程が、標的アナライトを分析し、標的アナライトの化学構造が高プロトン親和性または高電子親和性を有するかどうかを決定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
イオン移動度分光デバイスを構成するために、潜在的なクラスター構造の算出したドリフト時間を前記デバイスに入力する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
検出アルゴリズムを創出する工程が、算出したドリフト時間および/または異なる操作条件下で得られたドリフト時間の組み合わせに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
操作条件が、イオンモードおよび濃度からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
標的アナライトを検出するイオン移動度分光計システムを構成するための装置であって、
前記アナライトの潜在的なクラスター構造および前記の潜在的なクラスター構造の形成に相当する結合エネルギーを決定する手段;
前記の潜在的なクラスター構造の形成に関する統計的分布を、可能な立体配置の相対エネルギーに基づいて算出する手段;
前記統計的分布により決定されたクラスター構造の量子化学的分析を通じて、標的アナライトの衝突断面積を算出する手段;
前記の算出した断面積に基づき、潜在的なクラスター構造の少なくとも1つのK値を概算する手段(ここで、Kは換算した移動度定数である);
前記の概算したK値をイオン移動度分光デバイスに移す手段;
前記の概算したK値およびデバイス特性および環境因子に基づき、潜在的なクラスター構造のドリフト時間を算出する手段;
前記の算出したドリフト時間に少なくとも部分的に基づき、検出アルゴリズムを創出する手段;および
前記検出アルゴリズムに基づき、イオン移動度分光計システムを構成する手段を含む、装置。
【請求項20】
標的アナライトの1つ以上の化学構造を決定することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
デバイス特性および環境因子に基づき、前記デバイスを構成することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
標的アナライトが有毒化学物質である、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
潜在的なクラスター構造を決定する手段が、量子化学を用いて化学構造を分析する手段をさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
潜在的なクラスター構造を決定する手段が、潜在的なクラスター構造の形成に相当する熱力学を決定する手段をさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項25】
熱力学を決定する手段が、ギブズ自由エネルギー(ΔG)および/またはエンタルピー(ΔH)を算出する手段をさらに含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
統計的分布を算出する手段が、クラスター構造のギブズ自由エネルギー(ΔG)の差を用いて、前記形成の可能性を、相対湿度および温度の関数として算出する手段をさらに含む、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
衝突断面積を算出する手段が、量子化学を用いて、潜在的なクラスターの大きさ、形状、電荷分布および質量を決定する手段をさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項28】
衝突断面積を算出する手段が、モデルポテンシャルを使用する手段をさらに含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
モデルポテンシャルを用いる手段が、2つの部分がどのように相互作用するかを決定する手段をさらに含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
デバイス特性が、イオン移動度分光計の製造番号および型式番号、ドリフトガス、ドリフトチューブの温度、ならびにドリフトチューブの長さ及び直径を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項31】
環境因子が、イオン移動度分光計を測定するときの温度、圧力および相対湿度を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項32】
標的アナライトを検出する際に陽イオンおよび/または陰イオンモードを用いるべきかどうかを決定する手段をさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項33】
陽イオンおよび/または陰イオンモードを決定する手段が、標的アナライトの化学構造が高プロトン親和性を有するか又は高電子親和性を有するかどうかを決定するために標的アナライトを分析する手段をさらに含む、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
潜在的なクラスター構造の算出したドリフト時間を、イオン移動度分光デバイスを構成するために、前記デバイスに入力する手段をさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項35】
検出アルゴリズムを創出する手段が、算出したドリフト時間および/または異なる操作条件下で得られたドリフト時間の組合せに基づく、請求項19に記載の装置。
【請求項36】
操作条件が、イオンモードおよび濃度から成る群より選択される、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
標的アナライトを検出するためのイオン移動度分光計システムを構成する方法をインプリメントするために適用される、実行されるべき、コンピュータ読取可能プログラムコードを有するコンピュータ可読用媒体を含む、コンピュータプログラム製品であって、
前記アナライトの潜在的なクラスター構造および前記の潜在的なクラスター構造の形成に相当する結合エネルギーを、潜在的なクラスター決定モジュールによって決定する手段;
前記の潜在的なクラスター構造の形成に関する統計的分布を、可能な立体配置の相対エネルギーに基づき、統計的分布モジュールによって算出する手段;
前記統計的分布により決定されたクラスター構造の量子化学的分析を通じて、標的アナライトの衝突断面積を、衝突断面積算出モジュールによって算出する手段;
前記の算出した断面積に基づき、潜在的なクラスター構造の少なくとも1つのK値を、概算モジュールによって概算する手段(ここで、Kは換算した移動度定数である);
前記の概算したK値をイオン移動度分光デバイスに移す手段;
前記の概算したK値およびデバイス特性および環境因子に基づき、潜在的なクラスター構造のドリフト時間を、ドリフト時間の算出モジュールによって算出する手段;
前記の算出したドリフト時間に少なくとも部分的に基づき、検出アルゴリズムを、検出アルゴリズム創出モジュールによって創出する手段;および
前記検出アルゴリズムに基づき、イオン移動度分光計システムを構成する手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項38】
標的アナライトの1つ以上の化学構造を決定することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
デバイス特性および環境因子に基づき、前記装置を構成することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
標的アナライトが有毒化学物質である、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項41】
潜在的なクラスター構造を決定するステップが、量子化学を用いて化学構造を分析することを含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項42】
潜在的なクラスター構造を決定するステップが、潜在的なクラスター構造の形成に相当する熱力学を決定することをさらに含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項43】
熱力学の決定が、ギブズ自由エネルギー(ΔG)および/またはエンタルピー(ΔH)を算出することを含む、請求項42に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項44】
統計的分布を算出するステップが、クラスター構造のギブズ自由エネルギー(ΔG)の差を用いて、形成の可能性を相対湿度および温度の関数として算出する、請求項42に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項45】
衝突断面積を算出するステップが、量子化学を用いて、潜在的なクラスターの大きさ、形状および質量を決定することを含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項46】
衝突断面積を算出するステップが、モデルポテンシャルの使用をさらに含む、請求項45に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項47】
モデルポテンシャルが、2つの部分がどのように相互作用するかを決定する、請求項46に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項48】
デバイス特性が、イオン移動度分光計の製造番号および型式番号、ドリフトガス、ドリフトチューブの温度、ならびにドリフトチューブの長さ及び直径を含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項49】
環境因子が、イオン移動度分光計を測定するときの温度、圧力および相対湿度を含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項50】
潜在的なクラスター構造を決定するステップの前に、標的アナライトを検出する際に陽イオンおよび/または陰イオンモードを用いるべきかどうかを決定する手段をさらに含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項51】
陽イオンおよび/または陰イオンモードを決定するステップが、標的アナライトの化学構造が高プロトン親和性を有するか又は高電子親和性を有するかどうかを決定するための、標的アナライトを分析する手段を含む、請求項50に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項52】
算出した潜在的なクラスター構造のドリフト時間を、デバイスを構成するために、イオン移動度分光デバイスに入力するステップをさらに含む、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項53】
検出アルゴリズムを創出するステップが、算出したドリフト時間および/または異なる操作条件下で得られたドリフト時間の組合せに基づく、請求項37に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項54】
操作条件が、イオンモードおよび濃度から成る群より選択される、請求項53に記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−519859(P2012−519859A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553165(P2011−553165)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/026538
【国際公開番号】WO2010/102291
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511216385)エンスコ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ENSCO, INC.
【Fターム(参考)】