イオン移動度分光計
【課題】
【解決手段】開示されるイオン移動度分光計において、イオンをイオン移動度分光計(5)に通して、時間的に分離させる。比較的高いイオン移動度を有するイオンが、非破壊式イオンゲート(6)を透過する一方、比較的低いイオン移動度を有するイオンは、イオンを前方に透過させないようにイオンゲート(6)が切り替えられると、イオン移動度分光計(5)内に捕捉される。イオンゲート(6)を透過したイオンは、下流側イオントラップ(7)に捕捉される。捕捉されたイオンは、上流側に戻され、上流側第2イオントラップ(4)に捕捉される。
【解決手段】開示されるイオン移動度分光計において、イオンをイオン移動度分光計(5)に通して、時間的に分離させる。比較的高いイオン移動度を有するイオンが、非破壊式イオンゲート(6)を透過する一方、比較的低いイオン移動度を有するイオンは、イオンを前方に透過させないようにイオンゲート(6)が切り替えられると、イオン移動度分光計(5)内に捕捉される。イオンゲート(6)を透過したイオンは、下流側イオントラップ(7)に捕捉される。捕捉されたイオンは、上流側に戻され、上流側第2イオントラップ(4)に捕捉される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、イオン移動度分光計又は分離装置、質量分析計、イオン移動度分離方法、及び、質量分析の方法に関する。
【0002】
ガス媒体の存在下でRF場に閉じ込められたイオンに前方推進力を与えることが分析上有用であることは、従来から知られている。特定の適用例としては、三連四重極装置に対してMRM(Multiple Reacion Monitoing:多重反応モニタリング)、親イオンスキャン、又は、ニュートラル・ロス実験を行なう際に輸送時間を高速にすることが望ましい、タンデム型質量分析計用の衝突セルの作成が挙げられる。このような装置を用いて、イオン移動度に従ってイオンを分離することも可能であり、イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置にも利用可能である。動作時の通常圧力範囲は、0.001mbarから10mbarの範囲である。さまざまな方法で、前方推進力を発生させることができる。以下、いくつかの例を簡単に説明する。
【0003】
US−6914241(Giles)は、複数の電極を備えるRFイオンガイド又はイオン移動度分離装置の長さ方向に過渡直流電圧を徐々に印可することにより、イオン移動度に応じてイオンが分離される様子を記載している。イオン移動度分離装置の中には、多極ロッドセットや積層リングセット等のAC又はRFイオンガイドを備えるものもある。イオンガイドは、軸方向にセグメント化されており、各セグメントに独立の過渡直流電位を印可することができる。過渡直流電位は、(イオンを径方向に閉じ込めるように作用する)交流電圧又は高周波(RF)電圧及び/又は一定の直流オフセット電圧に重畳される。過渡直流電位は、軸方向に沿って移動して、イオン移動度分離装置に沿ってイオンを平行移動させる進行波を形成する。
【0004】
周知のイオン移動度分離装置は、一連のリングを有するドリフト管を備える。隣接するリング間の電位差は一定に保持されるため、定電場が生じる。緩衝ガス入りのドリフト管にイオンパルスを導入すると、イオン移動度に応じて、長手軸に沿ってイオンが分離される。これらの装置は、高周波(RF)閉じ込めなしに大気圧で動作可能であり、最大150の解像度を与えることができる(Wuら、Anal.Chem.、1988、70、4929-4938)。ただし、イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置により適した低圧での動作時には、拡散損失が増大し、解像度が低くなる。疑似高周波(RF)井戸型ポテンシャルを用いて径方向にイオンを閉じ込め、イオンガイドとして機能させることによりイオンを効率的に輸送し、拡散損失の問題を解決することも考えられる。この場合、イオンをガイドに沿って移動させて、イオン移動度に従って分離することができる。ただし、低圧でイオン移動度分離を行なう場合、高解像度のイオン移動度分離を可能にするためには、以下に詳細に説明するように、低電場限界内での保持にかなり長いドリフト管を用いる必要がある。
【0005】
高周波(RF)イオンガイドにおいてイオン移動度に従ってイオンを分離するためには、径方向の高周波(RF)閉じ込めに直交する直流電場を生じさせる必要がある。ガス入りイオンガイドをイオンが通過するように定電場Eを印可する場合、イオンの特性速度は以下の式で表される。ここで、Kはイオン移動度を示す。
【0006】
【数1】
【0007】
ガスのバックグラウンド熱エネルギーと比べて無視できるレベルのエネルギーしかイオンが受けないようなイオン移動度分離を可能にするためには、パラメータE/Pを考慮する必要がある。ここで、Pは、中性ガスの圧力を示す。
【0008】
駆動場からの運動エネルギーをイオンが受けないような「いわゆる低電場領域」でイオン移動度分離を維持するためには、パラメータE/Pが約2V/cm−mbar未満であることが求められる。
【0009】
長さLのドリフト管を用い、印可電圧降下がVの低電場条件において、解像度は、イオン移動度には依存せず、電圧降下にのみ依存することが分かる。空間電荷の影響がない場合には、パラメータL/|xAVRG|は以下の式で表される。ここで、|xAVRG|は、移動するイオン雲の質量中心の平均変位を示す。
【0010】
【数2】
【0011】
パラメータL/|xAVRG|は、イオン移動度分離の解像度を事実上表している。このため、ドリフト管全域で大きな電圧降下を維持することにより、分光計の性能を向上させることができる。イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置では、イオン移動度ドリフト領域の標準的な圧力は0.5ないし1mbarである。この圧力レベルよりも高い圧力で動作させる場合には、質量分析計部分を効率的に動作させるためには、真空系の差動排気が必要になる。
【発明の概要】
【0012】
20cmの標準ドリフト管長及び0.5mbarの動作圧力において、低電場限界内で印可可能な最大電圧は20Vであり、これは、最大解像度26に対応する。同じ条件で解像度を100まで上げるためには、ドリフト管長を3メートルを超える長さにする必要があるが、市販の機器としてこの大きさは現実的ではない。
【0013】
イオン移動度分離方法及びイオン分離装置の性能向上が求められている。
【0014】
本発明の一つの態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える。
【0015】
本発明の好適な実施形態において、イオンゲートが、イオンゲートを通り越して前方にイオンが透過しないように直流電位及び/又は高周波(RF)電位が印可される電極を備える構成も望ましい。イオンゲートが、さらに、下流側イオントラップの上流側に配置される別の電極を備えるような構成でもよい。イオンゲートが、下流側イオントラップの電極を備える構成も可能である。
【0016】
本発明の方法が、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程を備える構成も望ましい。
【0017】
好適な実施形態において、本発明の方法が、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、さらに、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える構成も望ましい。
【0018】
本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0019】
本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0020】
好適な実施形態において、上述の処理をさらに繰り返して、イオンゲートを用いて、あらに多くの回数、イオンのゲートコントロールを行なうようにしてもよい。イオンゲートによって定められるドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを上流側第2イオントラップに戻す一方で、イオンゲートを通過していないイオンを上流側第1イオントラップに一時的に蓄積する。イオン移動度分光計又は分離装置に所望の回数イオンを通し、イオンゲートを用いてイオンのゲートコントロールを行なった後、イオンをイオン移動度分光計又は分離装置に通して、標準的なイオン移動度スキャンを実施する。
【0021】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、イオンを複数回イオン移動度分光計又は分離装置に通した後、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える構成も望ましい。
【0022】
時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3が、実質的に同じである構成が望ましいが、これらが実質的に異なる構成も可能である。
【0023】
本発明の方法が、さらに、時間ウィンドウT1、T2及びT3外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を、第2群のイオンとして、上流側第1イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える構成も望ましい。
【0024】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、
イオン移動度分光計又は分離装置に第2群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通し、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0025】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程を備える構成も望ましい。
【0026】
好適な実施形態において、本発明の方法が、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、さらに、時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える構成も望ましい。
【0027】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0028】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0029】
好適な実施形態において、上述の処理をさらに繰り返して、イオンゲートを用いて、あらに多くの回数、イオンのゲートコントロールを行なうようにしてもよい。イオンゲートによって定められるドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを上流側第2イオントラップに戻す一方で、イオンゲートを通過していないイオンを上流側第1イオントラップに一時的に蓄積する。イオン移動度分光計又は分離装置に所望の回数イオンを通し、イオンゲートを用いてイオンのゲートコントロールを行なった後、イオンをイオン移動度分光計又は分離装置に通して、標準的なイオン移動度スキャンを実施する。
【0030】
本発明の方法が、さらに、イオンを複数回イオン移動度分光計又は分離装置に通した後、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える構成も望ましい。
【0031】
一実施形態において、
(i)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、実質的に同じである。又は、
(ii)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、実質的に異なっている。
【0032】
一実施形態において、
(i)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、 時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3と、実質的に異なっている。又は、
(ii)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、 時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3と、実質的に同じである。
【0033】
一実施形態において、時間ウィンドウT1が、T1minからT1maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。また、一実施形態において、時間ウィンドウT2が、T2minからT2maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT3が、T3minからT3maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT4が、T4minからT4maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT5が、T5minからT5maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT6が、T6minからT6maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。
【0034】
第1の実施形態において、T1min=T2min=T3minである。望ましくは、T1max=T2max=T3maxである。また、望ましくは、T4min=T5min=T6minである。さらに、望ましくは、T4max=T5max=T6maxである。また、望ましくは、T4min=T1max又はT1min=T4maxのいずれかである。
【0035】
第2の実施形態において、T1min=T2min=T3minである。望ましくは、T1max=T2max=T3maxである。また、望ましくは、T4min=T5min=T6minである。さらに、望ましくは、T4max=T5max=T6maxである。また、望ましくは、T4max>T1maxである。
【0036】
本発明の方法が、さらに、イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、イオン移動度分光計又は分離装置を通ったイオンの平均ドリフト時間を求め、イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、平均ドリフト時間が実質的に一定に保たれる少なくとも1つの期間を求め、期間内に得られたイオン移動度データを合計して、複合イオン移動度スペクトルを形成することにより、単一イオン種に実質的に対応するイオン移動度スペクトルを取得する工程を備える構成も望ましい。
【0037】
時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3、及び/又は、時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンは、望ましくは、下流側イオントラップに入力され、蓄積される間に、及び/又は、上流側第2イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない。
【0038】
好適な実施形態において、時間ウィンドウT1外、及び/又は、時間ウィンドウT2外、及び/又は、時間ウィンドウT3外、及び/又は、時間ウィンドウT4外、及び/又は、時間ウィンドウT5外、及び/又は、時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンは、上流側第1イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない。
【0039】
本発明の別の態様は、質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、少なくとも一部のイオンを時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように、イオンゲートを作動させ、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える。
【0040】
本発明のまた別の態様は、質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)工程(ii)と工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える。
【0041】
一実施形態において、第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間又はT1minより小さいドリフト時間を有するイオンを包含する。
【0042】
本発明のまた別の態様は、質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)(ii)と(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える。
【0043】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)工程(ii)と工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウとは異なる第3の時間ウィンドウと、第4の時間ウィンドウと、をイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える。
【0044】
本発明の方法が、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置を通って第4の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程を備える構成も望ましい。
【0045】
一実施形態において、第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含し、第3の時間ウィンドウが、T2minから、T1maxより大きいT2maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、第4の時間ウィンドウが、T2maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含する。
【0046】
本発明のまた別の態様は、質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)(ii)と(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える。
【0047】
本発明のさらに別の態様は、イオン移動度分光計又は分離装置と、イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能なコンピュータプログラムであって、制御システムに、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないようにイオンゲートを作動させ、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される。
【0048】
本発明のまた別の態様は、コンピュータにより実行可能な命令が格納されるコンピュータ読み取り可能な媒体であって、命令は、イオン移動度分光計又は分離装置と、イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能に構成される。
コンピュータにより実行可能な命令は、制御システムに、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないようにイオンゲートを作動させ、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される。
【0049】
コンピュータ読み取り可能な媒体は、望ましくは、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光ディスク、(vii)RAM、及び(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される。
【0050】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
イオントラップに一時的に蓄積されたイオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える。
【0051】
本発明のまた別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、第1の時間ウィンドウ外のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
イオントラップに一時的に蓄積されたイオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、より長い第2の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える。
【0052】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
時間ウィンドウT1をイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用して、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを第1群のイオンとして設定して、第2群のイオンとして設定される時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンから分離する工程と、
第1群のイオンの少なくとも一部をイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、第1群のイオンの少なくとも一部を時間的に分離する工程と、
を備える。
【0053】
本発明のまた別の態様は、質量分析の方法であって、
一群のイオンを時間的に分離する工程と、
時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有する第2群のイオンと分ける工程と、
第1群のイオンの少なくとも一部を再び時間的に分離する工程と、
を備える。
【0054】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度に従って、初期群のイオンを時間的に分離する工程と、
分離された初期群のイオンのうち、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、残りのイオンと分ける工程であって、第1群のイオンには、時間分布が重複する少なくとも2種類のイオンが含まれ、少なくとも2種類のイオンの濃度比が、初期群のイオン内よりも、分けた後の第1群のイオンで高くなるように構成される工程と、
分けた後の第1群のイオンを時間的に分離する工程と、
分けた後の第1群のイオンのうち、時間ウィンドウT1又は異なる時間ウィンドウ内のドリフト時間を有する第2群のイオンを分ける工程であって、少なくとも2種類のイオンの濃度比が、第1群のイオンよりも、第2群のイオンで高くなるように構成される工程と、
を備える。
【0055】
本発明の方法が、さらに、分けた後の第2群のイオンを時間的に分離して、イオンの少なくとも1種類のイオンのイオン移動度の値を求める工程を備える構成も望ましい。
【0056】
本発明の好適な実施形態において、進行波イオン移動度分光計又は分離装置を用いて、イオンを時間的に分離するものでもよい。一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置がドリフトセルを備える構成でもよい。ドリフトセルの各端部にイオンを蓄積する貯蔵領域を備える構成が望ましい。たとえば、イオン移動度分光計又は分離装置の上流側に配置される1つ以上のイオントラップにイオンを蓄積するようにしてもよい。また、イオン移動度分光計又は分離装置の下流側に配置される1つ以上のイオントラップにイオンを蓄積するようにしてもよい。
【0057】
一実施形態において、イオン移動度分光計が、複数のリング電極を備え、過渡直流電圧をリング電極に印可して、イオン移動度分光計又は分離装置の長さ方向に沿ってイオンを移動させる構成でもよい。リング電極に形成された開口部をイオンが通過する構成が望ましい。イオン移動度分離装置は、比較的高圧に維持されることが望ましく、少なくとも一部の動作モードで、イオン移動度に従ってイオンが分離される構成が望ましい。他の動作モードとして、イオン移動度に従って実質的にイオンを分離することなく、所定の方向(たとえば、上流側)にイオンを移動させるだけのイオン誘導モードで、イオン移動度分光計を動作させるようにしてもよい。
【0058】
イオン移動度分光計は、望ましくは、複数の電極を備え、各電極が、使用時にイオンを透過させる開口部を有する。あるいは、イオン移動度分光計がセグメント化されたロッドセットを備える構成でもよい。
【0059】
質量分析計は、望ましくは、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置の少なくとも一部にわたって直流電圧勾配を印可又は維持する装置を備える。
【0060】
質量分析計は、望ましくは、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも一部に交流電圧又は高周波(RF)電圧を印可する装置を備える。
【0061】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、(i)0.0001mbar以上、(ii)0.005mbar以上、(iii)0.001mbar以上、(iv)0.005mbar以上、(v)0.01mbar以上、(vi)0.05mbar以上、(vii)0.1mbar以上、(viii)0.5mbar以上、(ix)1mbar以上、(x)5mbar以上、及び(xi)10mbar以上、からなる群から選択される圧力に維持されるものでもよい。
【0062】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、(i)10mbar以下、(ii)5mbar以下、(iii)1mbar以下、(iv)0.5mbar以下、(v)0.1mbar以下、(vi)0.05mbar以下、(vii)0.01mbar以下、(viii)0.005mbar以下、(ix)0.001mbar以下、(x)0.005mbar以下、及び(xi)0.0001mbar以下、からなる群から選択される圧力に維持されるものでもよい。
【0063】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、(i)0.0001から10mbarの範囲、(ii)0.0001から1mbarの範囲、(iii) 0.0001から0.1mbarの範囲、(iv) 0.0001から0.01mbarの範囲、(v) 0.0001から0.001mbarの範囲、(vi) 0.001から10mbarの範囲、(vii) 0.001から1mbarの範囲、(viii) 0.001から0.1mbarの範囲、(ix) 0.001から0.01mbarの範囲、(x) 0.01から10mbarの範囲、(xi) 0.01から1mbarの範囲、(xii) 0.01から0.1mbarの範囲、(xiii) 0.1から10mbarの範囲、(xiv) 0.1から1mbarの範囲、及び(xv) 1から10mbarの範囲、からなる群から選択される圧力に維持されるものでもよい。
【0064】
イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、イオン移動度分光計又は分離装置を通るイオンに粘性抵抗を加えるような圧力に維持されるものでもよい。
【0065】
1つ以上の過渡直流電圧又は1つ以上の過渡直流電圧波形を、最初に軸方向の第1位置に供給し、その後、イオン移動度分光計又は分離装置の長さ方向に沿って、それぞれ異なる軸方向第2位置、軸方向第3位置に供給されるものでもよい。
【0066】
1つ以上の過渡直流電圧又は1つ以上の過渡直流電圧波形は、イオン移動度分光計又は分離装置の一端からイオン移動度分光計又は分離装置の他端に移動し、イオン移動度分光計又は分離装置に沿って少なくとも一部のイオンが移動するような構成でもよい。
【0067】
1つ以上の過渡直流電圧又は1つ以上の過渡直流電圧波形は、10ないし250m/s、250ないし500m/s、500ないし750m/s、750ないし1000m/s、1000ないし1250m/s、1250ないし1500m/s、1500ないし1750m/s、1750ないし2000m/s、2000ないし2250m/s、2250ないし2500m/s、2500ないし2750m/s、2750ないし3000m/s、又は3000m/sより大きい速度で、イオン移動度分光計又は分離装置に沿って徐々に印可されるものでもよい。
【0068】
2つ以上の過渡直流電圧又は2つ以上の過渡直流電圧波形を同時にイオン移動度分光計又は分離装置に沿って供給する構成でもよい。
【0069】
一実施例において、連続イオンビームがイオン移動度分光計又は分離装置の入口に入射される構成でもよい。あるいは、イオンパケットがイオン移動度分光計又は分離装置の入口に入射される構成でもよい。
【0070】
イオン移動度分光計又は分離装置は、10ないし20個、20ないし30個、30ないし40個、40ないし50個、50ないし60個、60ないし70個、70ないし80個、80ないし90個、90ないし100個、100ないし110個、110ないし120個、120ないし130個、130ないし140個、140ないし150個、又は、150より多い数の電極を備えるものでもよい。イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%が直流電圧源及び交流電圧源又は高周波(RF)電圧源の両方に接続されていることが望ましい。イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向に隣接する電極に、180°の位相差を有する交流電圧又は高周波(RF)電圧が供給される構成が望ましい。この場合、位相差は180°未満でもよい。
【0071】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、ドリフト管を備え、ドリフト管が、ドリフト管の少なくとも一部に沿って、軸方向の直流電圧勾配を維持する1つ以上の電極を備える構成でもよい。
【0072】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、イオン移動度に従って時間的にイオンを分離するように構成されるものでもよい。
【0073】
イオン移動度分光計又は分離装置が、電界強度に対するイオン移動度の変化率に従って時間的にイオンを分離するように配置及び構成される電界非対称イオン移動度分光計(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometer:FAIMS)を備える構成でもよい。
【0074】
イオン移動度分光計又は分離装置内に緩衝ガスを供給する構成も望ましい。
【0075】
イオン移動度分光計又は分離装置は、望ましくは、気相電気泳動装置を備える。
【0076】
イオン移動度分光計又は分離装置は、ドリフト管と、ドリフト管の少なくとも一部に沿って、軸方向の直流電圧勾配を維持する1つ以上の電極と、を備える構成でもよい。
【0077】
イオン移動度分光計又は分離装置は、1つ以上の多極ロッドセットを備える構成でもよい。たとえば、イオン移動度分光計又は分離装置が、1つ以上の四重極、六重極、八重極、又はそれより高次のロッドセットを備えるものでもよい。
【0078】
イオン移動度分光計又は分離装置は、1つ以上の四重極、六重極、八重極、又はそれより高次のロッドセットを備え、1つ以上の多極ロッドセットが軸方向にセグメント化されている、又は、複数の軸方向のセグメントを備える、構成でもよい。
【0079】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%が、望ましくは、使用時にイオンが透過する開口部を備える。
【0080】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%が、望ましくは、実質的に同じ寸法又は面積の開口部を備える。
【0081】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向に沿って、寸法又は面積が次第に大きくなる及び/又は次第に小さくなる開口部を備える。
【0082】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、(i)1.0mm以下、(ii)2.0mm以下、(iii)3.0mm以下、(iv)4.0mm以下、(v)5.0mm以下、(vi)6.0mm以下、(vii)7.0mm以下、(viii)8.0mm以下、(ix)9.0mm以下、(x)10.0mm以下、及び(xi)10.0mmより大きい値、からなる群から選択される内径又は内法を有する開口部を備える。
【0083】
イオン移動度分光計又は分離装置が、複数の平板電極又はメッシュ電極を備え、平板電極又はメッシュ電極の少なくとも一部は、通常、使用時にイオンが移動する平面内に配置される構成でもよい。イオン移動度分光計又は分離装置が、複数の平板電極又はメッシュ電極を備え、平板電極又はメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、通常、使用時にイオンが移動する平面内に配置される構成でもよい。イオン移動度分光計又は分離装置が、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21個以上の平板電極又はメッシュ電極を備える構成でもよい。
【0084】
イオン移動度分光計又は分離装置が、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21個以上の平板電極又はメッシュ電極を備え、平板電極又はメッシュ電極は、交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給し、隣接する平板電極又はメッシュ電極は、逆位相の交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給する。
【0085】
イオン移動度分光計又は分離装置が、複数の軸方向セグメント、すなわち、少なくとも、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100この軸方向セグメントを備える構成でもよい。
【0086】
イオン移動度分光計又は分離装置は、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも一部に沿って、実質的に一定の直流電圧勾配を維持する直流電圧手段を備える構成でもよい。
【0087】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下、からなる群から選択される軸方向の距離だけ互いに間隔をあけて配置される。
【0088】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも一部は、望ましくは、開口部を有し、隣接する電極間の軸方向の中心間距離に対する開口部の内径又は内法の比は、(i)1.0未満、(ii)1.0ないし1.2、(iii)1.2ないし1.4、(iv)1.4ないし1.6、(v)1.6ないし1.8、(vi)1.8ないし2.0、(vii)2.0ないし2.2、(viii)2.2ないし2.4、(ix)2.4ないし2.6、(x)2.6ないし2.8、(xi)2.8ないし3.0、(xii)3.0ないし3.2、(xiii)3.2ないし3.4、(xiv)3.4ないし3.6、(xv)3.6ないし3.8、(xvi)3.8ないし4.0、(xvii)4.0ないし4.2、(xviii)4.2ないし4.4、(xix)4.4ないし4.6、(xx)4.6ないし4.8、(xxi)4.8ないし5.0及び(xxii)5.0より大きい値、からなる群から選択される。
【0089】
イオン移動度分光計又は分離装置は、望ましくは、(i)20mm未満、(ii)20ないし40mm、(iii)40ないし60mm、(iv)60ないし80mm、(v)80ないし100mm、(vi)100ないし120mm、(vii)120ないし140mm、(viii)140ないし160mm、(ix)160ないし180mm、(x)180ないし200mm、及び(xi)200mmより大きい値、からなる群から選択される長さを有する。
【0090】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%は、望ましくは、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚み又は軸方向の長さを有する。
【0091】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、さらに、
(i) イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極及び/又は補助電極に1つ以上の直流電圧を印可して、動作モードで、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも一部すなわち少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、実質的に一定の直流電圧勾配を維持する装置と、
(ii) イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極に多相高周波(RF)電圧を印可して、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも一部すなわち少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動させる装置と、
を備える構成でもよい。
【0092】
一実施形態において、装置が、第1の周波数及び第1の振幅を有する第1の交流電圧又は高周波(RF)電圧をイオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも一部に印可して、使用時に、イオン移動度分光計又は分離装置内部に径方向にイオンを閉じ込めるように配置及び構成される第1の高周波(RF)装置を備える構成でもよい。
【0093】
第1の周波数は、望ましくは、(i)100kHz未満、(ii)100ないし200kHz、(iii)200ないし300kHz、(iv)300ないし400kHz、(v)400ないし500kHz、(vi)0.5ないし1.0MHz、(vii)1.0ないし1.5MHz、(viii)1.5ないし2.0MHz、(ix)2.0ないし2.5MHz、(x)2.5ないし3.0MHz、(xi)3.0ないし3.5MHz、(xii)3.5ないし4.0MHz、(xiii)4.0ないし4.5MHz、(xiv)4.5ないし5.0MHz、(xv)5.0ないし5.5MHz、(xvi)5.5ないし6.0MHz、(xvii)6.0ないし6.5MHz、(xviii)6.5ないし7.0MHz、(xix)7.0ないし7.5MHz、(xx)7.5ないし8.0MHz,(xxi)8.0ないし8.5MHz、(xxii)8.5ないし9.0MHz、(xxiii)9.0ないし9.5MHz、(xxiv)9.5ないし10.0MHz、及び(xxv)10.0MHzより大きい値、からなる群から選択される。
【0094】
第1の振幅は、望ましくは、(i)50V未満の最大振幅、(ii)50ないし100Vの最大振幅、(iii)100ないし150Vの最大振幅、(iv)150ないし200Vの最大振幅、(v)200ないし250Vの最大振幅、(vi)250ないし300Vの最大振幅、(vii)300ないし350Vの最大振幅、(viii)350ないし400Vの最大振幅、(ix)400ないし450Vの最大振幅、(x)450ないし500Vの最大振幅、及び(xi)500Vより大きい最大振幅、からなる群から選択される。
【0095】
動作モードにおいて、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極のうち隣接電極又は近傍電極は、逆位相の第1の交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給することが望ましい。
【0096】
一実施形態において、イオン移動度分光計が、1ないし10、10ないし20、20ないし30、30ないし40、40ないし50、50ないし60、60ないし70、70ないし80、80ないし90、90ないし100、又は100より大きい数の電極群を備え、各電極群には、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の電極が含まれ、各電極群に含まれる少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の電極が、同位相の第1の交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給する。
【0097】
装置は、望ましくは、さらに、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%に沿って、軸方向線形直流電場を形成する、又は、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%に沿って、軸方向非線形又はステップ型直流電場を形成する、
ように配置及び構成される装置を備える。
【0098】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を通過するイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%の滞留時間、通過時間、又は反応時間は、望ましくは、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から5ミリ秒の範囲の値、(iii)5から10ミリ秒の範囲の値、(iv)10から15ミリ秒の範囲の値、(v)15から20ミリ秒の範囲の値、(vi)20から25ミリ秒の範囲の値、(vii)25から30ミリ秒の範囲の値、(viii)30から35ミリ秒の範囲の値、(ix)35から40ミリ秒の範囲の値、(x)40から45ミリ秒の範囲の値、(xi)45から50ミリ秒の範囲の値、(xii)50から55ミリ秒の範囲の値、(xiii)55から60ミリ秒の範囲の値、(xiv)60から65ミリ秒の範囲の値、(xv)65から70ミリ秒の範囲の値、(xvi)70から75ミリ秒の範囲の値、(xvii)75から80ミリ秒の範囲の値、(xviii)80から85ミリ秒の範囲の値、(xix)85から90ミリ秒の範囲の値、(xx)90から95ミリ秒の範囲の値、(xxi)95から100ミリ秒の範囲の値、(xxii)100から105ミリ秒の範囲の値、(xxiii)105から110ミリ秒の範囲の値、(xxiv)110から115ミリ秒の範囲の値、(xxv)115から120ミリ秒の範囲の値、(xxvi)120から125ミリ秒の範囲の値、(xxvii)125から130ミリ秒の範囲の値、(xxviii)130から135ミリ秒の範囲の値、(xxix)135から140ミリ秒の範囲の値、(xxx)140から145ミリ秒の範囲の値、(xxxi)145から150ミリ秒の範囲の値、(xxxii)150から155ミリ秒の範囲の値、(xxxiii)155から160ミリ秒の範囲の値、(xxxiv)160から165ミリ秒の範囲の値、(xxxv)165から170ミリ秒の範囲の値、(xxxvi)170から175ミリ秒の範囲の値、(xxxvii)175から180ミリ秒の範囲の値、(xxxviii)180から185ミリ秒の範囲の値、(xxxix)185から190ミリ秒の範囲の値、(xl)190から195ミリ秒の範囲の値、(xli)195から200ミリ秒の範囲の値、(xlii)200ミリ秒より長い値、からなる群から選択される。
【0099】
イオン移動度分光計又は分離装置は、望ましくは、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、及び(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択されるサイクルタイムを有する。
【0100】
一実施形態において、上流側第1イオントラップ及び/又は上流側第2イオントラップ及び/又は下流側イオントラップが、使用時にイオンを透過させる開口部を有する複数の電極を備えるイオントンネル型イオントラップ、又は、四重極ロッドセット型(ポール型)イオントラップでもよい。
【0101】
イオンゲートは、非破壊式イオンゲートが望ましいが、少なくとも一部の動作モードで、イオンがイオンゲートに作用し、系から失われるような破壊式イオンゲートを用いることもできる。好適な実施形態において、イオンゲートは、イオンを透過させる開口部を有する電極を備える。イオンゲートは、2Vより大きい電圧又はイオン移動度分光計又は分離装置の出口領域の電位よりも高い10Vより大きい電圧を印可することによって、「オン」になる。この結果、イオンゲートによりイオンが反発するため、イオンが、イオンゲートを通過して、下流側イオントラップに入ることがない。
【0102】
一実施形態において、質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(Electrospray ionization:ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization:APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization:APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization:LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(Atmospheric Pressure Ionization:API)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(Desorption Ionization on Silicon:DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(Electron Impact:EI)イオン源、(ix)化学イオン化(Chemical Ionization:CI)イオン源、(x)電界イオン化(Field Ionization:FI)イオン源、(xi)電界脱離(Field Desorption:FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(Fast Atom Bombardment:FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(Liquid Secondary Ion Mass Spectrometry:LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(Desorption Electrospray Ionization:DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Atmospheric Pressure Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:APMALDI)イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(Atmospheric Sampling Glow Discharge Ionization:ASGDI)イオン源、(xx)グロー放電(Glow Discharge:GD)イオン源、(xxi)低大気圧エレクトロスプレーイオン化イオン源、及び(xxii)DART(リアルタイム直接質量分析:Direct Analysis in Real Time)イオン源、からなる群から選択される1つ以上のイオン源を備える構成でもよい。
【0103】
質量分析計は、1つ以上の連続又はパルスイオン源を備える構成でもよい。
【0104】
質量分析計は、1つ以上のイオンガイドを備える構成でもよい。
【0105】
一実施形態において、質量分析計は、さらに、1つ以上のイオン移動度分離装置及び/又は電界非対称イオン移動度分光計(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometer:FAIMS)を備える構成でもよい。
【0106】
質量分析計は、1つ以上のイオントラップ又は1つ以上のイオン捕捉領域を備える構成でもよい。
【0107】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、(i)衝突誘起解離(Collisional Induced Dissociation:CID)フラグメンテーション装置、(ii)表面誘起解離(Surface Induced Dissociation:SID)フラグメンテーション装置、(iii)電子移動解離(Electron Transfer Dissociation:ETD)フラグメンテーション装置、(iv)電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation:ECD)フラグメンテーション装置、(v)電子衝突(Electron Collision)又は電子衝撃解離(Electron Impact Dissociation)フラグメンテーション装置、(vi)光誘起解離(Photo Induced Dissociation:PID)フラグメンテーション装置、(vii)レーザー誘起解離(Laser Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(viii)赤外線誘起解離装置、(ix)紫外線誘起解離装置、(x)ノズル・スキマー・インターフェース・フラグメンテーション装置、(xi)インソースフラグメンテーション装置、(xii)インソース衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(xiii)熱源又は温度源フラグメンテーション装置、(xiv)電場誘起フラグメンテーション装置、(xv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xvi)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置、(xxiii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオン(生成イオン)を形成するイオン−イオン反応装置、(xxiv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxvi)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定イオン反応装置、(xxvii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定分子反応装置、(xxviii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定原子反応装置、及び(xxix)電子イオン化解離(Electron Ionization Dissociation:EID)フラグメンテーション装置、からなる群から選択される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルを備える構成でもよい。衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルは、イオン移動度分光計又は分離装置の上流側及び/又は下流側に配置されるものでもよい。
【0108】
一実施形態において、質量分析計は、(i)四重極質量分析器、(ii)2次元又はリニア四重極質量分析器、(iii)ポール(Paul)トラップ型又は3次元四重極質量分析器、(iv)ペニング(Penning)トラップ型質量分析器、(v)イオントラップ型質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(Ion Cyclotron Resonance:ICR)質量分析器(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance:FTICR)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ型質量分析器、(x)フーリエ変換(Fourier Transform)静電又はオービトラップ型質量分析器、(xi)フーリエ変換(Fourier Transform)質量分析器、(xii)飛行時間型(Time of Flight:TOF)質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、及び(xiv)線形加速飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、からなる群から選択される質量分析器を備える構成でもよい。
【0109】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、1つ以上のエネルギー分析器又は静電エネルギー分析器を備える構成でもよい。
【0110】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、1つ以上のイオン検出器を備える構成でもよい。
【0111】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、(i)四重極マスフィルタ、(ii)2次元又はリニア四重極イオントラップ、(iii)ポール(Paul)又は3次元四重極イオントラップ、(iv)ペニング(Penning)イオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁気セクタ型マスフィルタ、(vii)飛行時間型(Time of Flight:TOF)マスフィルタ、及び(viii)ウィーン(Wien)フィルタ、からなる群から選択される1つ以上のマスフィルタを備える構成も望ましい。
【0112】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、イオンをパルス状にする装置又はイオンゲートを備える構成でもよい。
【0113】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、実質的に連続的なイオンビームをパルスイオンビームに変換する装置を備える構成でもよい。
【0114】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、C型トラップと、外側たる形電極及び同軸の内側紡錘形電極を備えるオービトラップ型(RTM)質量分析器と、を備えるようにしてもよい。ここで、第1の動作モードにおいて、イオンは、C型トラップに送られ、次に、オービトラップ型(RTM)質量分析器に注入される。第2の動作モードにおいて、イオンは、C型トラップに、次に、衝突セル又は電子移動解離(Electron Transfer Dissociation)装置に送られて、少なくとも一部のイオンがフラグメント(断片)イオンにフラグメント化(断片化)される。フラグメントイオンは、C型トラップに送られた後、オービトラップ型(RTM)質量分析器に注入される。
【0115】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、使用時にイオンを透過させる開口部を各々有する複数の電極を備える積層リング型イオンガイドを備えるようにしてもよい。ここで、積層リング型イオンガイドは、イオン通路の長さ方向に沿って電極の間隔が増大する。イオンガイドの上流部に配置される電極の開口部が第1の直径を有する一方で、イオンガイドの下流部に配置される電極の開口部が第1の直径よりも小径の第2の直径を有する。使用時に交流電圧又は高周波(RF)電圧の逆位相が連続する電極に印加される構成が望ましい。
【0116】
以下、例示を目的として、本発明のさまざまな実施例を添付の図面を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】一実施例において、同じ標準偏差を有する2つのイオンのガウス分布ドリフト時間ピークであって、平均ピークが1標準偏差だけ離れている2つのイオン個々のガウス分布ドリフト時間ピークと、合計のガウス分布ドリフト時間ピークと、を示す図。
【図2】本発明の第1実施例において、第1の時間ウィンドウを用いるサンプリングを1回行なった後のドリフト時間ピークを示す図。
【図3A】本発明の第1実施例において、第1の時間ウィンドウを用いるサンプリングを4回行なった後のドリフト時間ピークを示す図。
【図3B】本発明の第1実施例において、第2の時間ウィンドウを用いるサンプリングであって、ここでサンプリングされるイオンは第1の時間ウィンドウを用いたサンプリング工程でサンプリングされなかったイオンを含むサンプリングを4回行なった後のドリフト時間ピークを示す図。
【図4】本発明の第2実施例において、イオンをサンプリングするために利用可能な連続的なドリフト時間ウィンドウを示す図。
【図5】図1に示すような2つのイオンポピュレーションのドリフト時間スキャンポイントに対する平均ドリフト時間の変化を示す図であり、連続するポイント間の勾配を0.1未満に制限することにより単一イオン種に対応する領域を特定する図。
【図6A】図5に示す第1領域から得られ、イオンが実質的に第1のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図6B】図5に示す第2領域から得られ、イオンが実質的に第2のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図7】同じ標準偏差を有する3つのイオンのガウス分布ドリフト時間ピークであって、平均ピークが1標準偏差だけ離れている3つのイオン個々のガウス分布ドリフト時間ピークと、合計のガウス分布ドリフト時間ピークと、を示す図。
【図8】図7に示すような3つのイオンポピュレーションドリフト時間スキャンポイントに対する平均ドリフト時間の変化を示す図であり、連続するポイント間の勾配を0.4未満に制限することにより単一イオン種に対応する領域を特定する図。
【図9A】図8に示す第1領域から得られ、イオンが実質的に第1のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図9B】図8に示す第2領域から得られ、イオンが実質的に第2のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図9C】図8に示す第3領域から得られ、イオンが実質的に第3イオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図10】本発明の第3実施例において、同じ平均ドリフト時間と異なる標準偏差を有する2つのイオンポピュレーションドリフト時間を示す図。
【図11】本発明の一実施例に従う質量分析計を示す図。
【図12】イオンをマスフィルタで選択して上流側第1イオントラップに蓄積する好適な実施例の態様を示す図。
【図13】イオンを上流側第1イオントラップから上流側第2イオントラップに移動させる好適な実施例の態様を示す図。
【図14】イオン移動度で分離したイオンをイオンゲートでコントロールして、イオンゲートを透過したイオンを下流側イオントラップに蓄積する好適な実施例の態様を示す図。
【図15】ゲートを通過できなかったイオンを上流側に戻し、第1イオントラップに捕捉する好適な実施例の態様を示す図。
【図16】ゲートを通過したイオンを上流側に戻し、上流側第2イオントラップに捕捉する好適な実施例の態様を示す図。
【図17】ゲートを通過したイオンポピュレーションをイオン移動度分光計に戻して通過させて、標準的なイオン移動度スキャン後に下流側イオン検出器でイオンを検出する好適な実施例の態様を示す図。
【図18】時間T=0における上流側第2イオントラップからのイオン放出と時間T=Tgにおけるイオンゲートの閉鎖とのタイミング関係と、第2実施例において遅延時間Tgが徐々に増大する様子と、を示す図。
【図19】本発明の好適な実施例の別の態様を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0118】
本発明の第1実施例を以下説明する。異なるイオン移動度を有する2種類の異なったイオン種を考える。2種類のイオン種は、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過するものであることが望ましい。好適な実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置は、使用時にイオンを透過させる開口部を有する複数のリング電極を備える。1つ以上の過渡直流電圧又は電位をドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の電極に印可して、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の長さ方向に沿って、イオンを通過させ、移動させる構成が望ましい。ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置をイオンが通過する際に、イオン移動度に従って、イオンが時間的に分離し始める。
【0119】
単一イオン種がドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過する場合には、ガウス分布に近いドリフト時間分布、及び、イオンの移動度と、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置内のガス圧と、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の電極に望ましくは印可される過渡直流電圧のパラメータと、に関係する平均偏差並びに標準偏差を有するドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置からイオンが出力される又は出現することが望ましい。
【0120】
第1実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置にイオンポピュレーションが入り、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の出口側には非破壊式イオンゲートが配置される構成でもよい。以下に詳述するように、最初に第1の時間ウィンドウを適用してイオンのサンプリングを行ない、次に第2の時間ウィンドウを適用してイオンのサンプリングを行なうようにしてもよい。イオンゲートが「オフ」の場合、イオンはイオンゲートを前方に透過する。一方、イオンゲートが「オン」の場合、イオンはイオンゲートを前方に透過できず、イオンゲートの上流側のイオン移動度分光計又は分離装置の出口領域内に捕捉される構成が望ましい。
【0121】
一実施例において、上流側イオントラップからドリフトセル又はイオン移動度分光計に最初にイオンが注入されたとき(時間T=0)から測定される遅延時間T=T1経過後に、イオンゲートを「オフ」から「オン」にする。第1実施例において、時間T=0から時間T=T1までの期間、イオンがイオンゲートを透過可能とすることにより第1の時間ウィンドウが設定される。したがって、時間T=T1でイオンの前方への透過をイオンゲートが遮断する前に、ドリフトセル又はイオン移動度分光計に注入されたイオンの一部だけがドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力される。
【0122】
本発明の一実施例において、2つのイオンポピュレーション又は2種類の異なるイオン種が同時にドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に注入される場合を考える。イオンは、イオン移動度に従って時間的に分離される。イオンゲートを透過したイオンが2つのイオンポピュレーションR1及びR2からなると考える。第1イオンポピュレーションR1は第1のイオン種に対応するため、第1のイオンのガウス分布型ドリフト時間分布とイオンゲートをイオンが透過した第1のドリフト時間ウィンドウとの重なりが第1イオンポピュレーションR1を形成する。同様に、第2イオンポピュレーションR2は第2のイオン種に対応するため、第2のイオンのガウス分布型ドリフト時間分布とイオンゲートをイオンが透過した第1のドリフト時間ウィンドウとの重なりが第2イオンポピュレーションR2を形成する。イオンゲートを透過した2つのイオンポピュレーションの比は、R1/R2で表される。
【0123】
イオンゲートを透過し、ドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力される2つのイオンポピュレーションR1及びR2を再圧縮する構成が望ましい。すなわち、これまでに行なったドリフト時間分離を無効にする。このイオン群をドリフトセル又はイオン移動度分光計の入口に戻して、再びイオンをドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に通す。同じ遅延時間T1経過後に、イオンゲートを再び「オフ」から「オン」にする。この結果、同じ第1のドリフト時間ウィンドウを用いてイオンが再選択され、ドリフトセル又はイオン移動度分離装置への2回目の実効透過後の2つのイオンポピュレーションの比は(R1/R2)2で表される。この工程を繰り返す場合、ドリフトセル又はイオン移動度分離装置へのn回目の通過後の2つのイオンポピュレーションの比を(R1/R2)nで表わすことができる。ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを複数回透過させ、各回ごとに同じ遅延時間T1経過後にイオンゲートを閉鎖することにより、1つのイオンポピュレーションに対する他のイオンポピュレーションに対する割合が減衰する。
【0124】
ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを所望の回数透過させた後、最後にもう一度ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを透過させるようにしてもよい。本発明の一実施例において、最後にもう一度ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを透過させる場合、ドリフト時間ウィンドウは設定されない。すなわち、イオンゲートは「オフ」状態に維持される。この場合、イオンに標準的なイオン移動度スキャンを行ない、イオンがドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過する際に時間的に分離されるすべてのイオンのドリフト時間ピークを求める構成が望ましい。
【0125】
好適な実施例において、いずれの段階でもイオンゲートを透過しなかったイオンは喪失するわけではない。n回のスキャンの間にイオンゲートを透過しなかったイオンをイオントラップに保持する構成が望ましい。一実施例において、イオンゲートを透過しなかったイオンを、イオン移動度分光計の出口領域でイオンゲートにより最初に捕捉する構成が望ましい。捕捉したイオンを上流側イオントラップに移動させて、そこに蓄積する。その一方、イオンゲートを透過したイオンの処理を行なう。第1実施例において、イオンゲートを透過したイオンを複数回イオン移動度分光計又は分離装置に戻して通過させる処理が完了して、最後のイオン移動度スキャンを行なった後、上流側のイオントラップに蓄積されたイオン、すなわち、イオンゲートの通過を阻止されたイオンの処理を行なう。第2のドリフトウィンドウを用いて、上流側のイオントラップに蓄積されたイオンのサンプリングを繰り返し行なって、第2のドリフトウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンのみを保持する。この場合、第1のドリフトウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンは保持しないことが望ましい。
【0126】
イオン移動度分光計又は分離装置を通過する平均ドリフト時間が異なる2つのイオンポピュレーションを示す図1を参照して、第1実施例の態様をさらに説明する。図1は、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を1回通過させた後の2種類のイオン種のドリフト時間ピークを示す。図1に示す例では、2種類のイオン種は同じ標準偏差を持ち、また、2種類のイオン種の平均ドリフト時間は1標準偏差だけ異なっている。図1は、さらに、2つのイオン分布を組み合わせることにより得られる合計のドリフト時間ピークも示し、この図から、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を1回通過した後も、ドリフト時間ピークが2種類のイオン種に分解されないままであることがわかる。
【0127】
第1実施例において、イオンがドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過する際に、イオンに2つのドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用する。第1のドリフト時間ウィンドウ(図1に示すウィンドウ1)は、2つのイオンピークの間の中心点に対応する時間、すなわち、合計ピークの平均ドリフト時間(5.25ミリ秒)、までのドリフト時間を有するイオンを包含することが望ましい。第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、したがって、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過するドリフト時間が0から5.25ミリ秒の範囲のイオンを包含する。
【0128】
第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ(図1に示すウィンドウ2)は、合計ピークの平均ドリフト時間よりも長いドリフト時間を持つイオンを包含することが望ましい。すなわち、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過するドリフト時間が5.25ミリ秒より長いイオンを包含する。2つのドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、+/−10標準偏差を網羅するため、ほとんどすべてのイオンを捕捉することができる。
【0129】
第1実施例のさまざまな態様を説明するために、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を同時に通過する2つのイオンポピュレーションと、2つのイオンポピュレーションに適用する第1のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ1)の効果を考える。一実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の出口に非破壊式イオンゲートを備える構成でもよい。イオンゲートは、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ(ウィンドウ1)の間、イオンを透過させ(すなわち、「オフ」にする)、一方、イオンの最初の放出から測定される遅延時間T1後の第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウの間、イオンの前方への透過を遮断する(すなわち、「オン」にする)ように構成されることが望ましい。この結果、第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウの間、イオンゲートに到達したイオンは、イオンゲートにより、ドリフトセル又はイオン移動度分光計内に捕捉されることが望ましい。第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウの間にイオンゲートを透過したイオンは、望ましくはイオンゲートの下流に配置されるイオントラップ内に捕捉されることが望ましい。
【0130】
このように2つのドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用することにより、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオン(すなわち、イオンゲートの前方に透過したイオン)は、第1イオンポピュレーションの69.1%と、第2イオンポピュレーションの30.9%である。これらの2つのイオンポピュレーションが、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオントラップに保持されることが望ましい。
【0131】
イオンゲートに遮断されたイオン(すなわち、第2のドリフト時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオン)は、イオンゲートにより、ドリフトセル又はイオン移動度分光計内に捕捉されることが望ましい。これらのイオンは、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通って上流側に戻り、上流側第1イオントラップに蓄積されることが望ましい。
【0132】
イオンゲートを透過し、下流側イオントラップ内に捕捉されたイオンが、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通って上流側に戻り、上流側第2イオントラップに蓄積されるような構成でもよい。上流側第2イオントラップは、上流側第1イオントラップの下流側に配置されることが望ましい。
【0133】
イオンゲートを透過し、一時的に上流側第2イオントラップに蓄積されたイオンが、上流側第2イオントラップから放出されて、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に戻るような構成でもよい。このような実施例において、イオンゲートは「オフ」状態に維持され、イオンに標準的なイオン移動度スキャンを行ない、イオンがドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過する際に時間的に分離されるすべてのイオンのドリフト時間ピークを求める構成が望ましい。
【0134】
図2は、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウによりイオンゲートを透過した後、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を2度目に通過したイオンの2つのイオンポピュレーションのピーク分布を示す。合計ピークは、実際に測定されるイオンピークを示す。平均ドリフト時間の測定値は5.25ミリ秒未満であり、これは、イオンゲートを透過したイオンポピュレーションにおける比率が(第2のイオン種よりも平均ドリフト時間が短い)第1のイオン種のほうが高いことに起因している。
【0135】
イオンゲートを透過したイオンに対して標準的なイオン移動度スキャンを行なう代わりに、同じ遅延時間T1経過後にイオンゲートを再び「オン」にすれば、上流側第2イオントラップから放出されたイオンは、同じドリフト時間ウィンドウ又はサンプリング時間ウィンドウ(ウィンドウ1)を用いて、もう一度サンプリングされる。この結果、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を2回通過させた後にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力され、イオンゲートでサンプリングされたイオンは、第1イオンポピュレーションの0.692=47.8%と、第2イオンポピュレーションの0.312=9.5%である。
【0136】
本発明のさまざまな実施例において、上述の工程を複数回繰り返すようにしてもよい。たとえば、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を4回通過させてイオンゲートでサンプリングした後に、イオンゲートを透過したイオンは、第1イオンポピュレーションの0.694=22.9%と、第2イオンポピュレーションの0.314=0.9%である。第2イオンポピュレーションR2に対する第1イオンポピュレーションR1の割合は、22.9/0.9=25.4である。これは、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を4回通過させてイオンゲートで処理後にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力されるイオンは、第2のイオン種のポピュレーションに対して第1のイオン種のポピュレーションが約25倍になることを意味する。
【0137】
図3Aは、両方のイオンポピュレーションをドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に4回通した後、第1のドリフト時間ウィンドウでサンプリングされたイオンポピュレーションを示す。この結果から、イオンゲートを透過したイオンの大部分が第1のイオン種であることが明らかである。
【0138】
上述したように、好適な実施例において、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウで排斥されたイオン(すなわち、いずれの時点においても、非破壊式イオンゲートを透過できなかったイオン)は、系で喪失してしまうのではなく、上流側第1イオントラップに蓄積されることが望ましい。第1のドリフト時間ウィンドウを用いて4回サンプリング後に蓄積されるイオンは、第1イオンポピュレーションの77.1%と、第2イオンポピュレーションの99.1%である。
【0139】
イオンゲートの通過を遮断された後に上流側第1イオントラップに送られたイオンは、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を4回通過後に、第2のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ2)を用いてサンプリングすることが望ましい。第1実施例において、第2のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ2)内のドリフト時間を有するイオンだけをサンプリングする。第1のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ1)の間にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力されるイオンは、下流側イオントラップに保持されない。あるいは、破壊式イオンゲートを用いて除去する構成も可能である。5.25ミリ秒よりも長いドリフト時間を有するイオンのみを下流側イオントラップに保持する構成が望ましい。このようなイオンをドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過させて、上流側イオントラップに戻す。イオンをドリフトセル又はイオン移動度分光計に4回通した後に、第2のドリフト時間ウィンドウでサンプリングした場合、最終的にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力されるイオンポピュレーションは、第1イオンポピュレーションの77.1*(0.31)4=0.7%と、第2イオンポピュレーションの99.1*(0.69)4=22.5%である。
【0140】
図3Bは、図3Aを参照して上述した第1のスキャンを4回行なった後に残るイオンを第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを用いてサンプリングした結果得られたドリフト時間ピークを示す。図3Bの結果から、サンプリングされたイオンの大部分が第2のイオン種であることがわかる。
【0141】
図1に示すように、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を1回だけ通過させてドリフト時間ピークは2つのイオン種に分解されないが、図3A及び図3Bに示すように、上述した方法でドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を4回通過させた場合には、ドリフト時間ピークは2つのイオンポピュレーションに基本的に分解される。
【0142】
第1実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過したイオンは、2つの固定ドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウで処理される。
【0143】
時間とともに徐々に増大する又は変化するドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを使用又は適用する形態を、本発明の第2実施例として説明する。各ドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、特定のドリフト時間スキャン値以下のすべてのドリフト時間を含むことが望ましい。n回のサンプリングを行なった後、スキャン値を所定のインクリメント(増分)だけ変化または増大させることが望ましい。この結果、ドリフト時間スキャン領域にわたって、ドリフト時間ウィンドウを徐々に増大させることができる。図4に、本発明の第2実施例において、連続的なスキャンの間にドリフト時間ウィンドウが増大する様子の一例を示す。
【0144】
第2実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に対してイオンをn回スキャン、通過、又はサンプリングを行なうことが望ましい。この場合、同じドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用して、毎回、イオンのサンプリングすなわちゲートコントロールを行なう。ゲートを通過できなかったイオンを蓄積して、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に対してイオンをn回スキャン、通過、又はサンプリングを行なう。この場合も、同じドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用して、毎回、イオンのサンプリングすなわちゲートコントロールを行なうが、ここで適用されるドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、先のn回のスキャンで用いられたウィンドウからわずかに増大させたものである。第2実施例は、第1実施例をスキャニングの態様にしたものであり、この結果、さまざまな比率のイオンポピュレーションを含む(スキャン領域とインクリメントとに基づく)複数のドリフト時間スペクトルが得られる。
【0145】
スペクトルから求められる平均ドリフト時間の位置をドリフト時間スキャンポイントすなわちイオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対してプロットすると、実質的に単一のイオンポピュレーションに対応するスペクトルに関しては、単一の平均ドリフト時間を有する単一ピークの寄与分しか存在しないため、平均ドリフト時間の測定値がほとんど変化しないことがわかる。ただし、別のイオンポピュレーションからの寄与分が増大するにつれて、スペクトルの平均ドリフト時間は移動を始め、次第に異なるピークの組み合わせとなっていく。第2実施例において、ドリフト時間スキャンポイント、すなわち、イオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対して平均測定ドリフト時間をプロットすると、曲線の勾配を解析することにより、イオンが主に単一のイオンポピュレーションから形成される領域を求めることができる。
【0146】
図5は、各ウィンドウ位置で4回サンプリングした後の図1に示す2つのイオンポピュレーションに関して、ドリフト時間スキャンポイント、すなわち、イオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対する平均測定ドリフト時間の変化を示す。この場合、ドリフト時間ウィンドウを、同じドリフト時間ウィンドウで4回サンプリングした後、0.0158ミリ秒(ピーク標準偏差の0.1)ずつ増大させる。
【0147】
主に単一のイオンポピュレーションを含む複数のスペクトルを、緩勾配を有するこのプロットの部分から求めることもできる。求められた複数のスペクトルを合計することにより、実質的に単一のイオン種に対応する分解されたドリフト時間ピークを得ることができる。
【0148】
図6Aは、図5の領域1に示すドリフト時間スペクトルの合計ドリフト時間スペクトルを示し、図6Bは、図5の領域2に示すドリフト時間スペクトルの合計ドリフト時間スペクトルを示す。
【0149】
図6Aに示す領域1の合計ドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの33.5%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.4%と、を含むことがわかる。また、図6Bに示す領域2の合計ドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.2%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの56.7%と、を含むことがわかる。
【0150】
第2実施例では、2つのイオンピークが分離可能であり、2つの固定ドリフト時間ウィンドウを適用した第1実施例のアプローチと比較して、より高い分解能でイオンピークを分割した最終的な合計ドリフト時間スペクトルが得られる。ただし、このためには、より多数のスキャンウィンドウが必要になる。図5に示す実施例では38個の異なるスキャンウィンドウが用いられるが、第1実施例ではたった2つのスキャンウィンドウが用いられるのに過ぎない。第2実施例の構成は自動スキャニングに特に適しており、一方、第1実施例の構成は2つのドリフト時間ウィンドウ間の切点の最初の位置決めを正確に行う必要がある。第2実施例の構成は、さらに、以下に説明するように、3つ以上の重なったピークを分離する場合に適している。
【0151】
図7に、同じピーク標準偏差を有する3種類のイオン種の個々のイオンドリフト時間ピークと合計のイオンドリフト時間ピークとを示す。平均ドリフト時間は、第1のイオン種と第2のイオン種との間で1標準偏差だけ異なり、同様に、第2のイオン種と第3のイオン種との間で1標準偏差だけ異なる。
【0152】
図8は、前述したように、ドリフト時間ウィンドウのインクリメントを0.0158ミリ秒(ピーク標準偏差の0.1)として、各ウィンドウ位置で4回サンプリングを行なった場合の3つのイオンポピュレーションに関して、ドリフト時間スキャンポイント、すなわち、イオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対する平均ドリフト時間の変化を示す。連続したポイントの勾配変化を0.4に制限することにより、平坦な、又は、概ね平坦な3つの領域を選択又は特定した。
【0153】
図9Aは、図8に示す第1領域(領域1)の最終的な合計スペクトルを示す。図8に示す第1領域(領域1)の合計スペクトルのドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの64.3%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの2.2%と、第3のイオン種の初期ポピュレーションの0.004%と、を含むことがわかる。
【0154】
図9Bは、図8に示す第2領域(領域2)の最終的な合計スペクトルを示す。図8に示す第2領域(領域2)の合計スペクトルのドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.5%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの30.7%と、第3のイオン種の初期ポピュレーションの1.8%と、を含むことがわかる。
【0155】
図9Cは、図8に示す第3領域(領域3)の最終的な合計スペクトルを示す。図8に示す第3領域(領域3)の合計スペクトルのドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションのほぼ0%(2×10-9)と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.5%と、第3のイオン種の初期ポピュレーションの66.4%と、を含むことがわかる。
【0156】
これらの割合から、他のイオンに対する所望のイオンポピュレーションのゲイン比は、3つのイオン領域に対して少なくとも30/13/130であることがわかる。
【0157】
同じ平均ドリフト時間と異なる標準偏差を有する2つのピークを分解する構成を第3実施例として説明する。図10は、このような場合の初期イオンポピュレーションを示す。このプロットから、幅広いピークの左側端をサンプリングすることにより、幅広い分布のイオンに対して有意なバイアスをかけたポピュレーションが得られる。また、ピーク中心の狭いウィンドウをサンプリングすることにより、幅の狭いピークに対してバイアスをかけたポピュレーションが得られる。この場合、平均ドリフト時間が同じであるため、平均ドリフト時間を変化させる方法を用いてサンプリングされるスペクトルの相対寄与度を推定することはできないが、標準偏差の変動に基づいて、ピークの解析を行うことはできる。このアプローチは、同じ質量対電荷比と同じイオン移動度とを持ち、標準偏差が異なる2種類のイオンにしか適用できない。荷電状態が異なれば、同じ質量対電荷比と異なる標準偏差の条件を満たすことができるが、さらに、同じイオン移動度の条件を満たすことは難しい。
【0158】
図11は、マスフィルタ2、望ましくは四重極ロッドセット型マスフィルタ、の上流側にイオン源1を備える本発明の好適な実施例の構成を示す図である。上流側第1イオントラップ3と上流側第2イオントラップ4とを、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置5の上流側に備えることが望ましい。ドリフトセル又はイオン移動度分離装置5の下流側に非破壊式イオンゲート又はシャッター6を備えることが望ましい。イオンゲート6の下流側に下流側イオントラップ7を備え、下流側イオントラップ7の下流側にイオン検出器8を備える。イオン検出器8として、ポイント検出器、飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、四重極ロッドセット型質量分析器、又は、フーリエ変換(Fourier Transform)質量分析計を用いることができる。別の実施例において、イオン検出器は、他の形態のイオン検出器でもよい。
【0159】
好適な実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置5は、望ましくは、進行波イオン移動度分光計又は分離装置ドリフトセル5である。所定の移動度を有するイオンは、イオン移動度分光計又は分離装置5を通過して、イオン移動度、ドリフトセル内のガス圧、及び進行波パルスに関係する平均及び標準偏差を持ち、ガウス分布に近似するドリフト時間分布で出力される。
【0160】
イオンゲート6は、イオン移動度分光計又は分離装置5の出口に配置され、所定のドリフト時間Tg以下のイオンのみを透過させるように構成されることが望ましい。前方に透過されたイオンは、下流側イオントラップ7に蓄積され、一方、透過されず残ったイオンは上流側第1イオントラップ3に戻される。下流側イオントラップ7内のイオンのポピュレーション(イオン種1に対するR1、イオン種2に対するR2等)は、各イオンのガウス分布型ドリフト時間分布と所定のドリフト時間ウィンドウとの重なりとして与えられる。したがって、下流側イオントラップ7内の2つのイオンポピュレーションの比はR1/R2で与えられる。
【0161】
下流側イオントラップ7内のイオンポピュレーションを、イオン移動度分光計又は分離装置5を介して、上流側第2イオントラップ4に戻し、イオンを基本的に再正規化する(すなわち、ドリフト時間分離を保持しない)ことが望ましい。イオンポピュレーションを、その後、上述と同様のゲートコントロールを行なって、再スキャンすることが望ましい。透過されなかったイオンは、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に戻り、上流側の第1イオントラップ3に蓄積される。下流側イオントラップ7内の新しいイオンポピュレーションは、(R1/R2)2で規定される。上述の工程を何度も繰り返すようにしてもよい。最後にイオン移動度分光計又は分離装置5を通過させる場合には、ゲートコントロールをすることなく行なう(すなわち、標準的なイオン移動度スキャンを行なう)ことが望ましい。この結果、最終的なイオンポピュレーション(R1/R2)nのドリフト時間ピークプロファイルが得られる。第2実施例において、ドリフト時間ゲートTgをインクリメントして、n回のスキャンで透過されずに上流側第1イオントラップ3に蓄積されたイオンを、新しいスキャンの初期ポピュレーションとして用いることが望ましい。上述した一連の動作を図12ないし図19を参照して、以下にさらに詳述する。
【0162】
図12は、本発明の実施例の一態様として、イオン源1によってイオンが生成される様子を示す図である。特定の質量又は質量対電荷比を有するイオンをマスフィルタ2により前方に透過させる一方で、それ以外の不要な質量又は質量対電荷比を有するイオンをマスフィルタ2で減衰させる。特定のすなわち所望のイオンポピュレーションを有するイオンを上流側第1イオントラップ3に蓄積する。
【0163】
図13は、本発明の実施例の一態様として、イオン源1を「オフ」にして、当面の間新しいイオンの生成が停止している様子を示す図である。イオン源1が「オン」の間に上流側第1イオントラップ3に蓄積されたイオンを上流側第1イオントラップ3から上流側第2イオントラップ4に移動させる。
【0164】
図14は、本発明の実施例の別の態様として、イオンが、上流側第2イオントラップ4から放出されて、イオン移動度に従って時間的にイオンを分離するように構成されるドリフトセル又はイオン移動度分離装置5に移動する様子を示す図である。非破壊式イオンゲート6は、上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出開始に応じて開く(すなわち、「オフ」になる)ように構成されることが望ましい。このイオンゲートは、上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出開始から時間Tgが経過後に、閉じる(すなわち、「オン」になる)。イオンゲート6が時間Tgに閉鎖されるまでにイオンゲート6を通過したイオンは、下流側イオントラップ7に捕捉される。時間Tgまでにイオンゲート6を通過しなかったイオンは、イオンゲート6により、一時的にイオン移動度分離装置5内に捕捉される。
【0165】
図15は、本発明の実施例の一態様として、時間Tgまでにイオンゲート6を通過せず、イオンゲート6によりイオン移動度分離装置5内に捕捉されたイオンが、イオン移動度分離装置5を介して上流側に戻る様子を示す図である。イオンは、上流側第2イオントラップ4を通過して、上流側第1イオントラップ3に捕捉されることが望ましい。この動作モードにおいて、イオン移動度分離装置5を介してイオンが上流側に戻るときに、イオン移動度分離装置5がイオンガイド単独動作モードで動作することが望ましい。すなわち、イオンが上流側に戻る際にイオン移動度に従ってイオンが分離されないことが望ましい。
【0166】
図16は、本発明の実施例の別の態様として、イオンゲート6が時間Tgに閉鎖される前にイオンゲート6を通過して、下流側イオントラップ7に一時的に捕捉されたイオンがイオン移動度分離装置5を介して上流側に戻る様子を示す図である。イオンは、上流側第2イオントラップ4に蓄積されることが望ましい。この動作モードにおいて、イオン移動度分離装置5を介してイオンが上流側に戻るときに、イオン移動度分離装置5がイオンガイド単独動作モードで動作することが望ましい。すなわち、イオンが上流側に戻る際にイオン移動度に従ってイオンが分離されないことが望ましい。
【0167】
図17は、本発明の実施例の一態様として、最初にイオンゲート6を透過した後、上流側に戻って、上流側第2イオントラップ4に蓄積されたイオンが、再びイオン移動度分離装置5を通過する様子を示す図である。イオンは、イオン移動度分離装置5を通過する際に、時間的に分離される。イオン移動度分離装置5からイオンが出力される際に、イオンゲート6を「オフ」状態のままにしておくことが望ましい。イオン移動度分離装置5から出力されるイオンをイオン検出器8により検出する。
【0168】
図18は、最初の時間T=0に上流側第2イオントラップ4からイオンが放出される様子と、その後の時間T=Tgにイオンゲート6がイオンの前方への透過を遮断する(すなわち、イオンゲート6が「オン」される)様子を示す図である。図18は、さらに、本発明の第2実施例に従い、上流側第2イオントラップ4からイオンが放出されてイオンゲート6が「オン」されるまでの遅延時間が時間とともに増大する様子を示す。
【0169】
図19は、好適な動作モードを示すフロー図である。図12を参照して上述したように、第1の動作モード(図19では「状態1」と称する)で、イオンが生成されて、上流側第1イオントラップ3に蓄積される。次に、図13を参照して上述したように、第2の動作モード(図19では「状態2」と称する)で、イオンを上流側第1イオントラップ3から上流側第2イオントラップ4に移動させる。ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置5を通過する回数を所望の回数nに設定する。図14を参照して上述したように、第3の動作モード(図19では「状態3」と称する)で、上流側第2イオントラップ4からドリフトセル又はイオン移動度分光計5にイオンを移動させて、イオン移動度に従ってイオンを時間的に分離する。上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出開始から時間Tgが経過後に、非破壊式イオンゲート6を閉じる。図15を参照して上述したように、第4の動作モード(図19では「状態4」と称する)で、ドリフトセル又はイオン移動度分光計5に捕捉されているイオンを上流側に戻して、上流側第1イオントラップ3に捕捉する。
【0170】
図16を参照して上述したように、第5の動作モード(図19では「状態5」と称する)で、イオンゲート6を透過して、下流側イオントラップ7内に捕捉されたイオンを上流側に戻して、上流側第2イオントラップ4に捕捉する。次に、イオンのイオン移動度分光計又は分離装置5の通過とイオンゲート6によるゲートコントロールを反映させて、値nを1だけデクリメントする。値nが0までデクリメントされると、質量分析計は、第6の動作モード(図19では「状態6」と称する)に進む。図17を参照して上述したように、第6の動作モードでは、イオンゲート6が「オフ」状態のまま保持される(したがって、標準的なイオン移動度スキャンが実行される)間に、上流側第2イオントラップ4に捕捉されたイオンがイオン移動度分光器または分離装置5を再び通過して、イオン検出器8で検出されることにより、質量分析が行なわれる。値nが0までデクリメントされておらず、1以上の場合には、質量分析計は、図14を参照して上述した第3の動作モードを繰り返す。すなわち、イオン移動度分光計又は分離装置5にイオンを通過させて、イオン移動度に従ってイオンを分離し、時間Tg経過後にイオンゲート6を閉じる。
【0171】
所定の遅延時間Tg後にイオンのゲートコントロールを複数回行なった後、図13を参照して上述した第2の動作モードで、何れの段階でもイオンゲート6を通過せず、上流側第1イオントラップ3に送られたイオンを、上流側第1イオントラップ3から上流側第2イオントラップ4に移動させる。上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出から非破壊式イオンゲート6に対するゲート電圧の印加までの時間Tgをインクリメントして、イオンをイオン移動度分光計又は分離装置5に通して、遅延時間後イオンゲート6を「オン」にする処理を繰り返す。遅延時間が最大遅延時間Tgmaxに達するまで、上述したさまざまな動作サイクルを繰り返すことが望ましい。この時点で、質量分析計は、図12を参照して上述した第1の動作モードに戻り、イオン源1により新しいイオン群を生成することが望ましい。生成されたイオンに対してマスフィルタ2による質量フィルタリングを行なうことにより、上流側第1イオントラップ3に新しいイオンポピュレーションを蓄積させる。その後、上述の工程を繰り返すことが望ましい。
【0172】
以上、本発明をその好適な実施例を参照して詳述したが、本発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、当業者には自明のことであるが、特許請求の範囲に記載される本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態及び態様において実施することが可能である。
【背景技術】
【0001】
本発明は、イオン移動度分光計又は分離装置、質量分析計、イオン移動度分離方法、及び、質量分析の方法に関する。
【0002】
ガス媒体の存在下でRF場に閉じ込められたイオンに前方推進力を与えることが分析上有用であることは、従来から知られている。特定の適用例としては、三連四重極装置に対してMRM(Multiple Reacion Monitoing:多重反応モニタリング)、親イオンスキャン、又は、ニュートラル・ロス実験を行なう際に輸送時間を高速にすることが望ましい、タンデム型質量分析計用の衝突セルの作成が挙げられる。このような装置を用いて、イオン移動度に従ってイオンを分離することも可能であり、イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置にも利用可能である。動作時の通常圧力範囲は、0.001mbarから10mbarの範囲である。さまざまな方法で、前方推進力を発生させることができる。以下、いくつかの例を簡単に説明する。
【0003】
US−6914241(Giles)は、複数の電極を備えるRFイオンガイド又はイオン移動度分離装置の長さ方向に過渡直流電圧を徐々に印可することにより、イオン移動度に応じてイオンが分離される様子を記載している。イオン移動度分離装置の中には、多極ロッドセットや積層リングセット等のAC又はRFイオンガイドを備えるものもある。イオンガイドは、軸方向にセグメント化されており、各セグメントに独立の過渡直流電位を印可することができる。過渡直流電位は、(イオンを径方向に閉じ込めるように作用する)交流電圧又は高周波(RF)電圧及び/又は一定の直流オフセット電圧に重畳される。過渡直流電位は、軸方向に沿って移動して、イオン移動度分離装置に沿ってイオンを平行移動させる進行波を形成する。
【0004】
周知のイオン移動度分離装置は、一連のリングを有するドリフト管を備える。隣接するリング間の電位差は一定に保持されるため、定電場が生じる。緩衝ガス入りのドリフト管にイオンパルスを導入すると、イオン移動度に応じて、長手軸に沿ってイオンが分離される。これらの装置は、高周波(RF)閉じ込めなしに大気圧で動作可能であり、最大150の解像度を与えることができる(Wuら、Anal.Chem.、1988、70、4929-4938)。ただし、イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置により適した低圧での動作時には、拡散損失が増大し、解像度が低くなる。疑似高周波(RF)井戸型ポテンシャルを用いて径方向にイオンを閉じ込め、イオンガイドとして機能させることによりイオンを効率的に輸送し、拡散損失の問題を解決することも考えられる。この場合、イオンをガイドに沿って移動させて、イオン移動度に従って分離することができる。ただし、低圧でイオン移動度分離を行なう場合、高解像度のイオン移動度分離を可能にするためには、以下に詳細に説明するように、低電場限界内での保持にかなり長いドリフト管を用いる必要がある。
【0005】
高周波(RF)イオンガイドにおいてイオン移動度に従ってイオンを分離するためには、径方向の高周波(RF)閉じ込めに直交する直流電場を生じさせる必要がある。ガス入りイオンガイドをイオンが通過するように定電場Eを印可する場合、イオンの特性速度は以下の式で表される。ここで、Kはイオン移動度を示す。
【0006】
【数1】
【0007】
ガスのバックグラウンド熱エネルギーと比べて無視できるレベルのエネルギーしかイオンが受けないようなイオン移動度分離を可能にするためには、パラメータE/Pを考慮する必要がある。ここで、Pは、中性ガスの圧力を示す。
【0008】
駆動場からの運動エネルギーをイオンが受けないような「いわゆる低電場領域」でイオン移動度分離を維持するためには、パラメータE/Pが約2V/cm−mbar未満であることが求められる。
【0009】
長さLのドリフト管を用い、印可電圧降下がVの低電場条件において、解像度は、イオン移動度には依存せず、電圧降下にのみ依存することが分かる。空間電荷の影響がない場合には、パラメータL/|xAVRG|は以下の式で表される。ここで、|xAVRG|は、移動するイオン雲の質量中心の平均変位を示す。
【0010】
【数2】
【0011】
パラメータL/|xAVRG|は、イオン移動度分離の解像度を事実上表している。このため、ドリフト管全域で大きな電圧降下を維持することにより、分光計の性能を向上させることができる。イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置では、イオン移動度ドリフト領域の標準的な圧力は0.5ないし1mbarである。この圧力レベルよりも高い圧力で動作させる場合には、質量分析計部分を効率的に動作させるためには、真空系の差動排気が必要になる。
【発明の概要】
【0012】
20cmの標準ドリフト管長及び0.5mbarの動作圧力において、低電場限界内で印可可能な最大電圧は20Vであり、これは、最大解像度26に対応する。同じ条件で解像度を100まで上げるためには、ドリフト管長を3メートルを超える長さにする必要があるが、市販の機器としてこの大きさは現実的ではない。
【0013】
イオン移動度分離方法及びイオン分離装置の性能向上が求められている。
【0014】
本発明の一つの態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える。
【0015】
本発明の好適な実施形態において、イオンゲートが、イオンゲートを通り越して前方にイオンが透過しないように直流電位及び/又は高周波(RF)電位が印可される電極を備える構成も望ましい。イオンゲートが、さらに、下流側イオントラップの上流側に配置される別の電極を備えるような構成でもよい。イオンゲートが、下流側イオントラップの電極を備える構成も可能である。
【0016】
本発明の方法が、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程を備える構成も望ましい。
【0017】
好適な実施形態において、本発明の方法が、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、さらに、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える構成も望ましい。
【0018】
本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0019】
本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0020】
好適な実施形態において、上述の処理をさらに繰り返して、イオンゲートを用いて、あらに多くの回数、イオンのゲートコントロールを行なうようにしてもよい。イオンゲートによって定められるドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを上流側第2イオントラップに戻す一方で、イオンゲートを通過していないイオンを上流側第1イオントラップに一時的に蓄積する。イオン移動度分光計又は分離装置に所望の回数イオンを通し、イオンゲートを用いてイオンのゲートコントロールを行なった後、イオンをイオン移動度分光計又は分離装置に通して、標準的なイオン移動度スキャンを実施する。
【0021】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、イオンを複数回イオン移動度分光計又は分離装置に通した後、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える構成も望ましい。
【0022】
時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3が、実質的に同じである構成が望ましいが、これらが実質的に異なる構成も可能である。
【0023】
本発明の方法が、さらに、時間ウィンドウT1、T2及びT3外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を、第2群のイオンとして、上流側第1イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える構成も望ましい。
【0024】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、
イオン移動度分光計又は分離装置に第2群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通し、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0025】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程を備える構成も望ましい。
【0026】
好適な実施形態において、本発明の方法が、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、さらに、時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える構成も望ましい。
【0027】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0028】
好適な実施形態において、本発明の方法が、さらに、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに戻したイオンを蓄積する工程と、
時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンを下流側イオントラップに捕捉して、捕捉したイオンを上流に戻して、イオン移動度分光計又は分離装置に通し、上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、蓄積したイオンを上流側第2イオントラップからイオン移動度分光計又は分離装置に放出し、イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える構成も望ましい。
【0029】
好適な実施形態において、上述の処理をさらに繰り返して、イオンゲートを用いて、あらに多くの回数、イオンのゲートコントロールを行なうようにしてもよい。イオンゲートによって定められるドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを上流側第2イオントラップに戻す一方で、イオンゲートを通過していないイオンを上流側第1イオントラップに一時的に蓄積する。イオン移動度分光計又は分離装置に所望の回数イオンを通し、イオンゲートを用いてイオンのゲートコントロールを行なった後、イオンをイオン移動度分光計又は分離装置に通して、標準的なイオン移動度スキャンを実施する。
【0030】
本発明の方法が、さらに、イオンを複数回イオン移動度分光計又は分離装置に通した後、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える構成も望ましい。
【0031】
一実施形態において、
(i)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、実質的に同じである。又は、
(ii)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、実質的に異なっている。
【0032】
一実施形態において、
(i)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、 時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3と、実質的に異なっている。又は、
(ii)時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6が、 時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3と、実質的に同じである。
【0033】
一実施形態において、時間ウィンドウT1が、T1minからT1maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。また、一実施形態において、時間ウィンドウT2が、T2minからT2maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT3が、T3minからT3maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT4が、T4minからT4maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT5が、T5minからT5maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。さらに、一実施形態において、時間ウィンドウT6が、T6minからT6maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する構成が望ましい。
【0034】
第1の実施形態において、T1min=T2min=T3minである。望ましくは、T1max=T2max=T3maxである。また、望ましくは、T4min=T5min=T6minである。さらに、望ましくは、T4max=T5max=T6maxである。また、望ましくは、T4min=T1max又はT1min=T4maxのいずれかである。
【0035】
第2の実施形態において、T1min=T2min=T3minである。望ましくは、T1max=T2max=T3maxである。また、望ましくは、T4min=T5min=T6minである。さらに、望ましくは、T4max=T5max=T6maxである。また、望ましくは、T4max>T1maxである。
【0036】
本発明の方法が、さらに、イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、イオン移動度分光計又は分離装置を通ったイオンの平均ドリフト時間を求め、イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、平均ドリフト時間が実質的に一定に保たれる少なくとも1つの期間を求め、期間内に得られたイオン移動度データを合計して、複合イオン移動度スペクトルを形成することにより、単一イオン種に実質的に対応するイオン移動度スペクトルを取得する工程を備える構成も望ましい。
【0037】
時間ウィンドウT1、及び/又は、時間ウィンドウT2、及び/又は、時間ウィンドウT3、及び/又は、時間ウィンドウT4、及び/又は、時間ウィンドウT5、及び/又は、時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンは、望ましくは、下流側イオントラップに入力され、蓄積される間に、及び/又は、上流側第2イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない。
【0038】
好適な実施形態において、時間ウィンドウT1外、及び/又は、時間ウィンドウT2外、及び/又は、時間ウィンドウT3外、及び/又は、時間ウィンドウT4外、及び/又は、時間ウィンドウT5外、及び/又は、時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンは、上流側第1イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない。
【0039】
本発明の別の態様は、質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、少なくとも一部のイオンを時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように、イオンゲートを作動させ、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える。
【0040】
本発明のまた別の態様は、質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)工程(ii)と工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える。
【0041】
一実施形態において、第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間又はT1minより小さいドリフト時間を有するイオンを包含する。
【0042】
本発明のまた別の態様は、質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)(ii)と(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える。
【0043】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)工程(ii)と工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウとは異なる第3の時間ウィンドウと、第4の時間ウィンドウと、をイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える。
【0044】
本発明の方法が、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置を通って第4の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程を備える構成も望ましい。
【0045】
一実施形態において、第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含し、第3の時間ウィンドウが、T2minから、T1maxより大きいT2maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、第4の時間ウィンドウが、T2maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含する。
【0046】
本発明のまた別の態様は、質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)(ii)と(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、イオン移動度分光計又は分離装置に放出されたイオンを通して、イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)イオン移動度分光計又は分離装置を通って第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとをイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える。
【0047】
本発明のさらに別の態様は、イオン移動度分光計又は分離装置と、イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能なコンピュータプログラムであって、制御システムに、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないようにイオンゲートを作動させ、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される。
【0048】
本発明のまた別の態様は、コンピュータにより実行可能な命令が格納されるコンピュータ読み取り可能な媒体であって、命令は、イオン移動度分光計又は分離装置と、イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能に構成される。
コンピュータにより実行可能な命令は、制御システムに、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないようにイオンゲートを作動させ、
(iii)イオン移動度分光計又は分離装置に時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンの少なくとも一部を再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される。
【0049】
コンピュータ読み取り可能な媒体は、望ましくは、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光ディスク、(vii)RAM、及び(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される。
【0050】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
イオントラップに一時的に蓄積されたイオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える。
【0051】
本発明のまた別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、第1の時間ウィンドウ外のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
イオントラップに一時的に蓄積されたイオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、より長い第2の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える。
【0052】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
時間ウィンドウT1をイオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用して、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを第1群のイオンとして設定して、第2群のイオンとして設定される時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンから分離する工程と、
第1群のイオンの少なくとも一部をイオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、第1群のイオンの少なくとも一部を時間的に分離する工程と、
を備える。
【0053】
本発明のまた別の態様は、質量分析の方法であって、
一群のイオンを時間的に分離する工程と、
時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有する第2群のイオンと分ける工程と、
第1群のイオンの少なくとも一部を再び時間的に分離する工程と、
を備える。
【0054】
本発明のさらに別の態様は、質量分析の方法であって、
イオン移動度に従って、初期群のイオンを時間的に分離する工程と、
分離された初期群のイオンのうち、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、残りのイオンと分ける工程であって、第1群のイオンには、時間分布が重複する少なくとも2種類のイオンが含まれ、少なくとも2種類のイオンの濃度比が、初期群のイオン内よりも、分けた後の第1群のイオンで高くなるように構成される工程と、
分けた後の第1群のイオンを時間的に分離する工程と、
分けた後の第1群のイオンのうち、時間ウィンドウT1又は異なる時間ウィンドウ内のドリフト時間を有する第2群のイオンを分ける工程であって、少なくとも2種類のイオンの濃度比が、第1群のイオンよりも、第2群のイオンで高くなるように構成される工程と、
を備える。
【0055】
本発明の方法が、さらに、分けた後の第2群のイオンを時間的に分離して、イオンの少なくとも1種類のイオンのイオン移動度の値を求める工程を備える構成も望ましい。
【0056】
本発明の好適な実施形態において、進行波イオン移動度分光計又は分離装置を用いて、イオンを時間的に分離するものでもよい。一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置がドリフトセルを備える構成でもよい。ドリフトセルの各端部にイオンを蓄積する貯蔵領域を備える構成が望ましい。たとえば、イオン移動度分光計又は分離装置の上流側に配置される1つ以上のイオントラップにイオンを蓄積するようにしてもよい。また、イオン移動度分光計又は分離装置の下流側に配置される1つ以上のイオントラップにイオンを蓄積するようにしてもよい。
【0057】
一実施形態において、イオン移動度分光計が、複数のリング電極を備え、過渡直流電圧をリング電極に印可して、イオン移動度分光計又は分離装置の長さ方向に沿ってイオンを移動させる構成でもよい。リング電極に形成された開口部をイオンが通過する構成が望ましい。イオン移動度分離装置は、比較的高圧に維持されることが望ましく、少なくとも一部の動作モードで、イオン移動度に従ってイオンが分離される構成が望ましい。他の動作モードとして、イオン移動度に従って実質的にイオンを分離することなく、所定の方向(たとえば、上流側)にイオンを移動させるだけのイオン誘導モードで、イオン移動度分光計を動作させるようにしてもよい。
【0058】
イオン移動度分光計は、望ましくは、複数の電極を備え、各電極が、使用時にイオンを透過させる開口部を有する。あるいは、イオン移動度分光計がセグメント化されたロッドセットを備える構成でもよい。
【0059】
質量分析計は、望ましくは、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置の少なくとも一部にわたって直流電圧勾配を印可又は維持する装置を備える。
【0060】
質量分析計は、望ましくは、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも一部に交流電圧又は高周波(RF)電圧を印可する装置を備える。
【0061】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、(i)0.0001mbar以上、(ii)0.005mbar以上、(iii)0.001mbar以上、(iv)0.005mbar以上、(v)0.01mbar以上、(vi)0.05mbar以上、(vii)0.1mbar以上、(viii)0.5mbar以上、(ix)1mbar以上、(x)5mbar以上、及び(xi)10mbar以上、からなる群から選択される圧力に維持されるものでもよい。
【0062】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、(i)10mbar以下、(ii)5mbar以下、(iii)1mbar以下、(iv)0.5mbar以下、(v)0.1mbar以下、(vi)0.05mbar以下、(vii)0.01mbar以下、(viii)0.005mbar以下、(ix)0.001mbar以下、(x)0.005mbar以下、及び(xi)0.0001mbar以下、からなる群から選択される圧力に維持されるものでもよい。
【0063】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、(i)0.0001から10mbarの範囲、(ii)0.0001から1mbarの範囲、(iii) 0.0001から0.1mbarの範囲、(iv) 0.0001から0.01mbarの範囲、(v) 0.0001から0.001mbarの範囲、(vi) 0.001から10mbarの範囲、(vii) 0.001から1mbarの範囲、(viii) 0.001から0.1mbarの範囲、(ix) 0.001から0.01mbarの範囲、(x) 0.01から10mbarの範囲、(xi) 0.01から1mbarの範囲、(xii) 0.01から0.1mbarの範囲、(xiii) 0.1から10mbarの範囲、(xiv) 0.1から1mbarの範囲、及び(xv) 1から10mbarの範囲、からなる群から選択される圧力に維持されるものでもよい。
【0064】
イオン移動度分光計又は分離装置は、使用時に、イオン移動度分光計又は分離装置を通るイオンに粘性抵抗を加えるような圧力に維持されるものでもよい。
【0065】
1つ以上の過渡直流電圧又は1つ以上の過渡直流電圧波形を、最初に軸方向の第1位置に供給し、その後、イオン移動度分光計又は分離装置の長さ方向に沿って、それぞれ異なる軸方向第2位置、軸方向第3位置に供給されるものでもよい。
【0066】
1つ以上の過渡直流電圧又は1つ以上の過渡直流電圧波形は、イオン移動度分光計又は分離装置の一端からイオン移動度分光計又は分離装置の他端に移動し、イオン移動度分光計又は分離装置に沿って少なくとも一部のイオンが移動するような構成でもよい。
【0067】
1つ以上の過渡直流電圧又は1つ以上の過渡直流電圧波形は、10ないし250m/s、250ないし500m/s、500ないし750m/s、750ないし1000m/s、1000ないし1250m/s、1250ないし1500m/s、1500ないし1750m/s、1750ないし2000m/s、2000ないし2250m/s、2250ないし2500m/s、2500ないし2750m/s、2750ないし3000m/s、又は3000m/sより大きい速度で、イオン移動度分光計又は分離装置に沿って徐々に印可されるものでもよい。
【0068】
2つ以上の過渡直流電圧又は2つ以上の過渡直流電圧波形を同時にイオン移動度分光計又は分離装置に沿って供給する構成でもよい。
【0069】
一実施例において、連続イオンビームがイオン移動度分光計又は分離装置の入口に入射される構成でもよい。あるいは、イオンパケットがイオン移動度分光計又は分離装置の入口に入射される構成でもよい。
【0070】
イオン移動度分光計又は分離装置は、10ないし20個、20ないし30個、30ないし40個、40ないし50個、50ないし60個、60ないし70個、70ないし80個、80ないし90個、90ないし100個、100ないし110個、110ないし120個、120ないし130個、130ないし140個、140ないし150個、又は、150より多い数の電極を備えるものでもよい。イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%が直流電圧源及び交流電圧源又は高周波(RF)電圧源の両方に接続されていることが望ましい。イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向に隣接する電極に、180°の位相差を有する交流電圧又は高周波(RF)電圧が供給される構成が望ましい。この場合、位相差は180°未満でもよい。
【0071】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、ドリフト管を備え、ドリフト管が、ドリフト管の少なくとも一部に沿って、軸方向の直流電圧勾配を維持する1つ以上の電極を備える構成でもよい。
【0072】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、イオン移動度に従って時間的にイオンを分離するように構成されるものでもよい。
【0073】
イオン移動度分光計又は分離装置が、電界強度に対するイオン移動度の変化率に従って時間的にイオンを分離するように配置及び構成される電界非対称イオン移動度分光計(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometer:FAIMS)を備える構成でもよい。
【0074】
イオン移動度分光計又は分離装置内に緩衝ガスを供給する構成も望ましい。
【0075】
イオン移動度分光計又は分離装置は、望ましくは、気相電気泳動装置を備える。
【0076】
イオン移動度分光計又は分離装置は、ドリフト管と、ドリフト管の少なくとも一部に沿って、軸方向の直流電圧勾配を維持する1つ以上の電極と、を備える構成でもよい。
【0077】
イオン移動度分光計又は分離装置は、1つ以上の多極ロッドセットを備える構成でもよい。たとえば、イオン移動度分光計又は分離装置が、1つ以上の四重極、六重極、八重極、又はそれより高次のロッドセットを備えるものでもよい。
【0078】
イオン移動度分光計又は分離装置は、1つ以上の四重極、六重極、八重極、又はそれより高次のロッドセットを備え、1つ以上の多極ロッドセットが軸方向にセグメント化されている、又は、複数の軸方向のセグメントを備える、構成でもよい。
【0079】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%が、望ましくは、使用時にイオンが透過する開口部を備える。
【0080】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%が、望ましくは、実質的に同じ寸法又は面積の開口部を備える。
【0081】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向に沿って、寸法又は面積が次第に大きくなる及び/又は次第に小さくなる開口部を備える。
【0082】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、(i)1.0mm以下、(ii)2.0mm以下、(iii)3.0mm以下、(iv)4.0mm以下、(v)5.0mm以下、(vi)6.0mm以下、(vii)7.0mm以下、(viii)8.0mm以下、(ix)9.0mm以下、(x)10.0mm以下、及び(xi)10.0mmより大きい値、からなる群から選択される内径又は内法を有する開口部を備える。
【0083】
イオン移動度分光計又は分離装置が、複数の平板電極又はメッシュ電極を備え、平板電極又はメッシュ電極の少なくとも一部は、通常、使用時にイオンが移動する平面内に配置される構成でもよい。イオン移動度分光計又は分離装置が、複数の平板電極又はメッシュ電極を備え、平板電極又はメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、通常、使用時にイオンが移動する平面内に配置される構成でもよい。イオン移動度分光計又は分離装置が、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21個以上の平板電極又はメッシュ電極を備える構成でもよい。
【0084】
イオン移動度分光計又は分離装置が、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21個以上の平板電極又はメッシュ電極を備え、平板電極又はメッシュ電極は、交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給し、隣接する平板電極又はメッシュ電極は、逆位相の交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給する。
【0085】
イオン移動度分光計又は分離装置が、複数の軸方向セグメント、すなわち、少なくとも、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100この軸方向セグメントを備える構成でもよい。
【0086】
イオン移動度分光計又は分離装置は、さらに、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも一部に沿って、実質的に一定の直流電圧勾配を維持する直流電圧手段を備える構成でもよい。
【0087】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下、からなる群から選択される軸方向の距離だけ互いに間隔をあけて配置される。
【0088】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも一部は、望ましくは、開口部を有し、隣接する電極間の軸方向の中心間距離に対する開口部の内径又は内法の比は、(i)1.0未満、(ii)1.0ないし1.2、(iii)1.2ないし1.4、(iv)1.4ないし1.6、(v)1.6ないし1.8、(vi)1.8ないし2.0、(vii)2.0ないし2.2、(viii)2.2ないし2.4、(ix)2.4ないし2.6、(x)2.6ないし2.8、(xi)2.8ないし3.0、(xii)3.0ないし3.2、(xiii)3.2ないし3.4、(xiv)3.4ないし3.6、(xv)3.6ないし3.8、(xvi)3.8ないし4.0、(xvii)4.0ないし4.2、(xviii)4.2ないし4.4、(xix)4.4ないし4.6、(xx)4.6ないし4.8、(xxi)4.8ないし5.0及び(xxii)5.0より大きい値、からなる群から選択される。
【0089】
イオン移動度分光計又は分離装置は、望ましくは、(i)20mm未満、(ii)20ないし40mm、(iii)40ないし60mm、(iv)60ないし80mm、(v)80ないし100mm、(vi)100ないし120mm、(vii)120ないし140mm、(viii)140ないし160mm、(ix)160ないし180mm、(x)180ないし200mm、及び(xi)200mmより大きい値、からなる群から選択される長さを有する。
【0090】
イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%は、望ましくは、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚み又は軸方向の長さを有する。
【0091】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置は、さらに、
(i) イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極及び/又は補助電極に1つ以上の直流電圧を印可して、動作モードで、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも一部すなわち少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、実質的に一定の直流電圧勾配を維持する装置と、
(ii) イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極に多相高周波(RF)電圧を印可して、イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも一部すなわち少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動させる装置と、
を備える構成でもよい。
【0092】
一実施形態において、装置が、第1の周波数及び第1の振幅を有する第1の交流電圧又は高周波(RF)電圧をイオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極の少なくとも一部に印可して、使用時に、イオン移動度分光計又は分離装置内部に径方向にイオンを閉じ込めるように配置及び構成される第1の高周波(RF)装置を備える構成でもよい。
【0093】
第1の周波数は、望ましくは、(i)100kHz未満、(ii)100ないし200kHz、(iii)200ないし300kHz、(iv)300ないし400kHz、(v)400ないし500kHz、(vi)0.5ないし1.0MHz、(vii)1.0ないし1.5MHz、(viii)1.5ないし2.0MHz、(ix)2.0ないし2.5MHz、(x)2.5ないし3.0MHz、(xi)3.0ないし3.5MHz、(xii)3.5ないし4.0MHz、(xiii)4.0ないし4.5MHz、(xiv)4.5ないし5.0MHz、(xv)5.0ないし5.5MHz、(xvi)5.5ないし6.0MHz、(xvii)6.0ないし6.5MHz、(xviii)6.5ないし7.0MHz、(xix)7.0ないし7.5MHz、(xx)7.5ないし8.0MHz,(xxi)8.0ないし8.5MHz、(xxii)8.5ないし9.0MHz、(xxiii)9.0ないし9.5MHz、(xxiv)9.5ないし10.0MHz、及び(xxv)10.0MHzより大きい値、からなる群から選択される。
【0094】
第1の振幅は、望ましくは、(i)50V未満の最大振幅、(ii)50ないし100Vの最大振幅、(iii)100ないし150Vの最大振幅、(iv)150ないし200Vの最大振幅、(v)200ないし250Vの最大振幅、(vi)250ないし300Vの最大振幅、(vii)300ないし350Vの最大振幅、(viii)350ないし400Vの最大振幅、(ix)400ないし450Vの最大振幅、(x)450ないし500Vの最大振幅、及び(xi)500Vより大きい最大振幅、からなる群から選択される。
【0095】
動作モードにおいて、イオン移動度分光計又は分離装置を形成する電極のうち隣接電極又は近傍電極は、逆位相の第1の交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給することが望ましい。
【0096】
一実施形態において、イオン移動度分光計が、1ないし10、10ないし20、20ないし30、30ないし40、40ないし50、50ないし60、60ないし70、70ないし80、80ないし90、90ないし100、又は100より大きい数の電極群を備え、各電極群には、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の電極が含まれ、各電極群に含まれる少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の電極が、同位相の第1の交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給する。
【0097】
装置は、望ましくは、さらに、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%に沿って、軸方向線形直流電場を形成する、又は、
(ii)イオン移動度分光計又は分離装置の軸方向の長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%に沿って、軸方向非線形又はステップ型直流電場を形成する、
ように配置及び構成される装置を備える。
【0098】
一実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置を通過するイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%の滞留時間、通過時間、又は反応時間は、望ましくは、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から5ミリ秒の範囲の値、(iii)5から10ミリ秒の範囲の値、(iv)10から15ミリ秒の範囲の値、(v)15から20ミリ秒の範囲の値、(vi)20から25ミリ秒の範囲の値、(vii)25から30ミリ秒の範囲の値、(viii)30から35ミリ秒の範囲の値、(ix)35から40ミリ秒の範囲の値、(x)40から45ミリ秒の範囲の値、(xi)45から50ミリ秒の範囲の値、(xii)50から55ミリ秒の範囲の値、(xiii)55から60ミリ秒の範囲の値、(xiv)60から65ミリ秒の範囲の値、(xv)65から70ミリ秒の範囲の値、(xvi)70から75ミリ秒の範囲の値、(xvii)75から80ミリ秒の範囲の値、(xviii)80から85ミリ秒の範囲の値、(xix)85から90ミリ秒の範囲の値、(xx)90から95ミリ秒の範囲の値、(xxi)95から100ミリ秒の範囲の値、(xxii)100から105ミリ秒の範囲の値、(xxiii)105から110ミリ秒の範囲の値、(xxiv)110から115ミリ秒の範囲の値、(xxv)115から120ミリ秒の範囲の値、(xxvi)120から125ミリ秒の範囲の値、(xxvii)125から130ミリ秒の範囲の値、(xxviii)130から135ミリ秒の範囲の値、(xxix)135から140ミリ秒の範囲の値、(xxx)140から145ミリ秒の範囲の値、(xxxi)145から150ミリ秒の範囲の値、(xxxii)150から155ミリ秒の範囲の値、(xxxiii)155から160ミリ秒の範囲の値、(xxxiv)160から165ミリ秒の範囲の値、(xxxv)165から170ミリ秒の範囲の値、(xxxvi)170から175ミリ秒の範囲の値、(xxxvii)175から180ミリ秒の範囲の値、(xxxviii)180から185ミリ秒の範囲の値、(xxxix)185から190ミリ秒の範囲の値、(xl)190から195ミリ秒の範囲の値、(xli)195から200ミリ秒の範囲の値、(xlii)200ミリ秒より長い値、からなる群から選択される。
【0099】
イオン移動度分光計又は分離装置は、望ましくは、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、及び(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択されるサイクルタイムを有する。
【0100】
一実施形態において、上流側第1イオントラップ及び/又は上流側第2イオントラップ及び/又は下流側イオントラップが、使用時にイオンを透過させる開口部を有する複数の電極を備えるイオントンネル型イオントラップ、又は、四重極ロッドセット型(ポール型)イオントラップでもよい。
【0101】
イオンゲートは、非破壊式イオンゲートが望ましいが、少なくとも一部の動作モードで、イオンがイオンゲートに作用し、系から失われるような破壊式イオンゲートを用いることもできる。好適な実施形態において、イオンゲートは、イオンを透過させる開口部を有する電極を備える。イオンゲートは、2Vより大きい電圧又はイオン移動度分光計又は分離装置の出口領域の電位よりも高い10Vより大きい電圧を印可することによって、「オン」になる。この結果、イオンゲートによりイオンが反発するため、イオンが、イオンゲートを通過して、下流側イオントラップに入ることがない。
【0102】
一実施形態において、質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(Electrospray ionization:ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization:APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization:APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization:LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(Atmospheric Pressure Ionization:API)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(Desorption Ionization on Silicon:DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(Electron Impact:EI)イオン源、(ix)化学イオン化(Chemical Ionization:CI)イオン源、(x)電界イオン化(Field Ionization:FI)イオン源、(xi)電界脱離(Field Desorption:FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(Fast Atom Bombardment:FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(Liquid Secondary Ion Mass Spectrometry:LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(Desorption Electrospray Ionization:DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Atmospheric Pressure Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:APMALDI)イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(Atmospheric Sampling Glow Discharge Ionization:ASGDI)イオン源、(xx)グロー放電(Glow Discharge:GD)イオン源、(xxi)低大気圧エレクトロスプレーイオン化イオン源、及び(xxii)DART(リアルタイム直接質量分析:Direct Analysis in Real Time)イオン源、からなる群から選択される1つ以上のイオン源を備える構成でもよい。
【0103】
質量分析計は、1つ以上の連続又はパルスイオン源を備える構成でもよい。
【0104】
質量分析計は、1つ以上のイオンガイドを備える構成でもよい。
【0105】
一実施形態において、質量分析計は、さらに、1つ以上のイオン移動度分離装置及び/又は電界非対称イオン移動度分光計(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometer:FAIMS)を備える構成でもよい。
【0106】
質量分析計は、1つ以上のイオントラップ又は1つ以上のイオン捕捉領域を備える構成でもよい。
【0107】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、(i)衝突誘起解離(Collisional Induced Dissociation:CID)フラグメンテーション装置、(ii)表面誘起解離(Surface Induced Dissociation:SID)フラグメンテーション装置、(iii)電子移動解離(Electron Transfer Dissociation:ETD)フラグメンテーション装置、(iv)電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation:ECD)フラグメンテーション装置、(v)電子衝突(Electron Collision)又は電子衝撃解離(Electron Impact Dissociation)フラグメンテーション装置、(vi)光誘起解離(Photo Induced Dissociation:PID)フラグメンテーション装置、(vii)レーザー誘起解離(Laser Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(viii)赤外線誘起解離装置、(ix)紫外線誘起解離装置、(x)ノズル・スキマー・インターフェース・フラグメンテーション装置、(xi)インソースフラグメンテーション装置、(xii)インソース衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(xiii)熱源又は温度源フラグメンテーション装置、(xiv)電場誘起フラグメンテーション装置、(xv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xvi)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置、(xxiii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオン(生成イオン)を形成するイオン−イオン反応装置、(xxiv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxvi)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定イオン反応装置、(xxvii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定分子反応装置、(xxviii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定原子反応装置、及び(xxix)電子イオン化解離(Electron Ionization Dissociation:EID)フラグメンテーション装置、からなる群から選択される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルを備える構成でもよい。衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルは、イオン移動度分光計又は分離装置の上流側及び/又は下流側に配置されるものでもよい。
【0108】
一実施形態において、質量分析計は、(i)四重極質量分析器、(ii)2次元又はリニア四重極質量分析器、(iii)ポール(Paul)トラップ型又は3次元四重極質量分析器、(iv)ペニング(Penning)トラップ型質量分析器、(v)イオントラップ型質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(Ion Cyclotron Resonance:ICR)質量分析器(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance:FTICR)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ型質量分析器、(x)フーリエ変換(Fourier Transform)静電又はオービトラップ型質量分析器、(xi)フーリエ変換(Fourier Transform)質量分析器、(xii)飛行時間型(Time of Flight:TOF)質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、及び(xiv)線形加速飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、からなる群から選択される質量分析器を備える構成でもよい。
【0109】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、1つ以上のエネルギー分析器又は静電エネルギー分析器を備える構成でもよい。
【0110】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、1つ以上のイオン検出器を備える構成でもよい。
【0111】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、(i)四重極マスフィルタ、(ii)2次元又はリニア四重極イオントラップ、(iii)ポール(Paul)又は3次元四重極イオントラップ、(iv)ペニング(Penning)イオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁気セクタ型マスフィルタ、(vii)飛行時間型(Time of Flight:TOF)マスフィルタ、及び(viii)ウィーン(Wien)フィルタ、からなる群から選択される1つ以上のマスフィルタを備える構成も望ましい。
【0112】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、イオンをパルス状にする装置又はイオンゲートを備える構成でもよい。
【0113】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、実質的に連続的なイオンビームをパルスイオンビームに変換する装置を備える構成でもよい。
【0114】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、C型トラップと、外側たる形電極及び同軸の内側紡錘形電極を備えるオービトラップ型(RTM)質量分析器と、を備えるようにしてもよい。ここで、第1の動作モードにおいて、イオンは、C型トラップに送られ、次に、オービトラップ型(RTM)質量分析器に注入される。第2の動作モードにおいて、イオンは、C型トラップに、次に、衝突セル又は電子移動解離(Electron Transfer Dissociation)装置に送られて、少なくとも一部のイオンがフラグメント(断片)イオンにフラグメント化(断片化)される。フラグメントイオンは、C型トラップに送られた後、オービトラップ型(RTM)質量分析器に注入される。
【0115】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、使用時にイオンを透過させる開口部を各々有する複数の電極を備える積層リング型イオンガイドを備えるようにしてもよい。ここで、積層リング型イオンガイドは、イオン通路の長さ方向に沿って電極の間隔が増大する。イオンガイドの上流部に配置される電極の開口部が第1の直径を有する一方で、イオンガイドの下流部に配置される電極の開口部が第1の直径よりも小径の第2の直径を有する。使用時に交流電圧又は高周波(RF)電圧の逆位相が連続する電極に印加される構成が望ましい。
【0116】
以下、例示を目的として、本発明のさまざまな実施例を添付の図面を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】一実施例において、同じ標準偏差を有する2つのイオンのガウス分布ドリフト時間ピークであって、平均ピークが1標準偏差だけ離れている2つのイオン個々のガウス分布ドリフト時間ピークと、合計のガウス分布ドリフト時間ピークと、を示す図。
【図2】本発明の第1実施例において、第1の時間ウィンドウを用いるサンプリングを1回行なった後のドリフト時間ピークを示す図。
【図3A】本発明の第1実施例において、第1の時間ウィンドウを用いるサンプリングを4回行なった後のドリフト時間ピークを示す図。
【図3B】本発明の第1実施例において、第2の時間ウィンドウを用いるサンプリングであって、ここでサンプリングされるイオンは第1の時間ウィンドウを用いたサンプリング工程でサンプリングされなかったイオンを含むサンプリングを4回行なった後のドリフト時間ピークを示す図。
【図4】本発明の第2実施例において、イオンをサンプリングするために利用可能な連続的なドリフト時間ウィンドウを示す図。
【図5】図1に示すような2つのイオンポピュレーションのドリフト時間スキャンポイントに対する平均ドリフト時間の変化を示す図であり、連続するポイント間の勾配を0.1未満に制限することにより単一イオン種に対応する領域を特定する図。
【図6A】図5に示す第1領域から得られ、イオンが実質的に第1のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図6B】図5に示す第2領域から得られ、イオンが実質的に第2のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図7】同じ標準偏差を有する3つのイオンのガウス分布ドリフト時間ピークであって、平均ピークが1標準偏差だけ離れている3つのイオン個々のガウス分布ドリフト時間ピークと、合計のガウス分布ドリフト時間ピークと、を示す図。
【図8】図7に示すような3つのイオンポピュレーションドリフト時間スキャンポイントに対する平均ドリフト時間の変化を示す図であり、連続するポイント間の勾配を0.4未満に制限することにより単一イオン種に対応する領域を特定する図。
【図9A】図8に示す第1領域から得られ、イオンが実質的に第1のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図9B】図8に示す第2領域から得られ、イオンが実質的に第2のイオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図9C】図8に示す第3領域から得られ、イオンが実質的に第3イオン種を含むことを表す、個々のドリフト時間スペクトルと合計ドリフト時間スペクトルとを示す図。
【図10】本発明の第3実施例において、同じ平均ドリフト時間と異なる標準偏差を有する2つのイオンポピュレーションドリフト時間を示す図。
【図11】本発明の一実施例に従う質量分析計を示す図。
【図12】イオンをマスフィルタで選択して上流側第1イオントラップに蓄積する好適な実施例の態様を示す図。
【図13】イオンを上流側第1イオントラップから上流側第2イオントラップに移動させる好適な実施例の態様を示す図。
【図14】イオン移動度で分離したイオンをイオンゲートでコントロールして、イオンゲートを透過したイオンを下流側イオントラップに蓄積する好適な実施例の態様を示す図。
【図15】ゲートを通過できなかったイオンを上流側に戻し、第1イオントラップに捕捉する好適な実施例の態様を示す図。
【図16】ゲートを通過したイオンを上流側に戻し、上流側第2イオントラップに捕捉する好適な実施例の態様を示す図。
【図17】ゲートを通過したイオンポピュレーションをイオン移動度分光計に戻して通過させて、標準的なイオン移動度スキャン後に下流側イオン検出器でイオンを検出する好適な実施例の態様を示す図。
【図18】時間T=0における上流側第2イオントラップからのイオン放出と時間T=Tgにおけるイオンゲートの閉鎖とのタイミング関係と、第2実施例において遅延時間Tgが徐々に増大する様子と、を示す図。
【図19】本発明の好適な実施例の別の態様を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0118】
本発明の第1実施例を以下説明する。異なるイオン移動度を有する2種類の異なったイオン種を考える。2種類のイオン種は、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過するものであることが望ましい。好適な実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置は、使用時にイオンを透過させる開口部を有する複数のリング電極を備える。1つ以上の過渡直流電圧又は電位をドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の電極に印可して、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の長さ方向に沿って、イオンを通過させ、移動させる構成が望ましい。ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置をイオンが通過する際に、イオン移動度に従って、イオンが時間的に分離し始める。
【0119】
単一イオン種がドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過する場合には、ガウス分布に近いドリフト時間分布、及び、イオンの移動度と、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置内のガス圧と、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の電極に望ましくは印可される過渡直流電圧のパラメータと、に関係する平均偏差並びに標準偏差を有するドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置からイオンが出力される又は出現することが望ましい。
【0120】
第1実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置にイオンポピュレーションが入り、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の出口側には非破壊式イオンゲートが配置される構成でもよい。以下に詳述するように、最初に第1の時間ウィンドウを適用してイオンのサンプリングを行ない、次に第2の時間ウィンドウを適用してイオンのサンプリングを行なうようにしてもよい。イオンゲートが「オフ」の場合、イオンはイオンゲートを前方に透過する。一方、イオンゲートが「オン」の場合、イオンはイオンゲートを前方に透過できず、イオンゲートの上流側のイオン移動度分光計又は分離装置の出口領域内に捕捉される構成が望ましい。
【0121】
一実施例において、上流側イオントラップからドリフトセル又はイオン移動度分光計に最初にイオンが注入されたとき(時間T=0)から測定される遅延時間T=T1経過後に、イオンゲートを「オフ」から「オン」にする。第1実施例において、時間T=0から時間T=T1までの期間、イオンがイオンゲートを透過可能とすることにより第1の時間ウィンドウが設定される。したがって、時間T=T1でイオンの前方への透過をイオンゲートが遮断する前に、ドリフトセル又はイオン移動度分光計に注入されたイオンの一部だけがドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力される。
【0122】
本発明の一実施例において、2つのイオンポピュレーション又は2種類の異なるイオン種が同時にドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に注入される場合を考える。イオンは、イオン移動度に従って時間的に分離される。イオンゲートを透過したイオンが2つのイオンポピュレーションR1及びR2からなると考える。第1イオンポピュレーションR1は第1のイオン種に対応するため、第1のイオンのガウス分布型ドリフト時間分布とイオンゲートをイオンが透過した第1のドリフト時間ウィンドウとの重なりが第1イオンポピュレーションR1を形成する。同様に、第2イオンポピュレーションR2は第2のイオン種に対応するため、第2のイオンのガウス分布型ドリフト時間分布とイオンゲートをイオンが透過した第1のドリフト時間ウィンドウとの重なりが第2イオンポピュレーションR2を形成する。イオンゲートを透過した2つのイオンポピュレーションの比は、R1/R2で表される。
【0123】
イオンゲートを透過し、ドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力される2つのイオンポピュレーションR1及びR2を再圧縮する構成が望ましい。すなわち、これまでに行なったドリフト時間分離を無効にする。このイオン群をドリフトセル又はイオン移動度分光計の入口に戻して、再びイオンをドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に通す。同じ遅延時間T1経過後に、イオンゲートを再び「オフ」から「オン」にする。この結果、同じ第1のドリフト時間ウィンドウを用いてイオンが再選択され、ドリフトセル又はイオン移動度分離装置への2回目の実効透過後の2つのイオンポピュレーションの比は(R1/R2)2で表される。この工程を繰り返す場合、ドリフトセル又はイオン移動度分離装置へのn回目の通過後の2つのイオンポピュレーションの比を(R1/R2)nで表わすことができる。ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを複数回透過させ、各回ごとに同じ遅延時間T1経過後にイオンゲートを閉鎖することにより、1つのイオンポピュレーションに対する他のイオンポピュレーションに対する割合が減衰する。
【0124】
ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを所望の回数透過させた後、最後にもう一度ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを透過させるようにしてもよい。本発明の一実施例において、最後にもう一度ドリフトセル又はイオン移動度分光計にイオンを透過させる場合、ドリフト時間ウィンドウは設定されない。すなわち、イオンゲートは「オフ」状態に維持される。この場合、イオンに標準的なイオン移動度スキャンを行ない、イオンがドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過する際に時間的に分離されるすべてのイオンのドリフト時間ピークを求める構成が望ましい。
【0125】
好適な実施例において、いずれの段階でもイオンゲートを透過しなかったイオンは喪失するわけではない。n回のスキャンの間にイオンゲートを透過しなかったイオンをイオントラップに保持する構成が望ましい。一実施例において、イオンゲートを透過しなかったイオンを、イオン移動度分光計の出口領域でイオンゲートにより最初に捕捉する構成が望ましい。捕捉したイオンを上流側イオントラップに移動させて、そこに蓄積する。その一方、イオンゲートを透過したイオンの処理を行なう。第1実施例において、イオンゲートを透過したイオンを複数回イオン移動度分光計又は分離装置に戻して通過させる処理が完了して、最後のイオン移動度スキャンを行なった後、上流側のイオントラップに蓄積されたイオン、すなわち、イオンゲートの通過を阻止されたイオンの処理を行なう。第2のドリフトウィンドウを用いて、上流側のイオントラップに蓄積されたイオンのサンプリングを繰り返し行なって、第2のドリフトウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンのみを保持する。この場合、第1のドリフトウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンは保持しないことが望ましい。
【0126】
イオン移動度分光計又は分離装置を通過する平均ドリフト時間が異なる2つのイオンポピュレーションを示す図1を参照して、第1実施例の態様をさらに説明する。図1は、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を1回通過させた後の2種類のイオン種のドリフト時間ピークを示す。図1に示す例では、2種類のイオン種は同じ標準偏差を持ち、また、2種類のイオン種の平均ドリフト時間は1標準偏差だけ異なっている。図1は、さらに、2つのイオン分布を組み合わせることにより得られる合計のドリフト時間ピークも示し、この図から、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を1回通過した後も、ドリフト時間ピークが2種類のイオン種に分解されないままであることがわかる。
【0127】
第1実施例において、イオンがドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過する際に、イオンに2つのドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用する。第1のドリフト時間ウィンドウ(図1に示すウィンドウ1)は、2つのイオンピークの間の中心点に対応する時間、すなわち、合計ピークの平均ドリフト時間(5.25ミリ秒)、までのドリフト時間を有するイオンを包含することが望ましい。第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、したがって、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過するドリフト時間が0から5.25ミリ秒の範囲のイオンを包含する。
【0128】
第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ(図1に示すウィンドウ2)は、合計ピークの平均ドリフト時間よりも長いドリフト時間を持つイオンを包含することが望ましい。すなわち、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過するドリフト時間が5.25ミリ秒より長いイオンを包含する。2つのドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、+/−10標準偏差を網羅するため、ほとんどすべてのイオンを捕捉することができる。
【0129】
第1実施例のさまざまな態様を説明するために、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を同時に通過する2つのイオンポピュレーションと、2つのイオンポピュレーションに適用する第1のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ1)の効果を考える。一実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の出口に非破壊式イオンゲートを備える構成でもよい。イオンゲートは、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ(ウィンドウ1)の間、イオンを透過させ(すなわち、「オフ」にする)、一方、イオンの最初の放出から測定される遅延時間T1後の第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウの間、イオンの前方への透過を遮断する(すなわち、「オン」にする)ように構成されることが望ましい。この結果、第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウの間、イオンゲートに到達したイオンは、イオンゲートにより、ドリフトセル又はイオン移動度分光計内に捕捉されることが望ましい。第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウの間にイオンゲートを透過したイオンは、望ましくはイオンゲートの下流に配置されるイオントラップ内に捕捉されることが望ましい。
【0130】
このように2つのドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用することにより、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオン(すなわち、イオンゲートの前方に透過したイオン)は、第1イオンポピュレーションの69.1%と、第2イオンポピュレーションの30.9%である。これらの2つのイオンポピュレーションが、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオントラップに保持されることが望ましい。
【0131】
イオンゲートに遮断されたイオン(すなわち、第2のドリフト時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオン)は、イオンゲートにより、ドリフトセル又はイオン移動度分光計内に捕捉されることが望ましい。これらのイオンは、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通って上流側に戻り、上流側第1イオントラップに蓄積されることが望ましい。
【0132】
イオンゲートを透過し、下流側イオントラップ内に捕捉されたイオンが、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を通って上流側に戻り、上流側第2イオントラップに蓄積されるような構成でもよい。上流側第2イオントラップは、上流側第1イオントラップの下流側に配置されることが望ましい。
【0133】
イオンゲートを透過し、一時的に上流側第2イオントラップに蓄積されたイオンが、上流側第2イオントラップから放出されて、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に戻るような構成でもよい。このような実施例において、イオンゲートは「オフ」状態に維持され、イオンに標準的なイオン移動度スキャンを行ない、イオンがドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過する際に時間的に分離されるすべてのイオンのドリフト時間ピークを求める構成が望ましい。
【0134】
図2は、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウによりイオンゲートを透過した後、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を2度目に通過したイオンの2つのイオンポピュレーションのピーク分布を示す。合計ピークは、実際に測定されるイオンピークを示す。平均ドリフト時間の測定値は5.25ミリ秒未満であり、これは、イオンゲートを透過したイオンポピュレーションにおける比率が(第2のイオン種よりも平均ドリフト時間が短い)第1のイオン種のほうが高いことに起因している。
【0135】
イオンゲートを透過したイオンに対して標準的なイオン移動度スキャンを行なう代わりに、同じ遅延時間T1経過後にイオンゲートを再び「オン」にすれば、上流側第2イオントラップから放出されたイオンは、同じドリフト時間ウィンドウ又はサンプリング時間ウィンドウ(ウィンドウ1)を用いて、もう一度サンプリングされる。この結果、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を2回通過させた後にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力され、イオンゲートでサンプリングされたイオンは、第1イオンポピュレーションの0.692=47.8%と、第2イオンポピュレーションの0.312=9.5%である。
【0136】
本発明のさまざまな実施例において、上述の工程を複数回繰り返すようにしてもよい。たとえば、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を4回通過させてイオンゲートでサンプリングした後に、イオンゲートを透過したイオンは、第1イオンポピュレーションの0.694=22.9%と、第2イオンポピュレーションの0.314=0.9%である。第2イオンポピュレーションR2に対する第1イオンポピュレーションR1の割合は、22.9/0.9=25.4である。これは、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を4回通過させてイオンゲートで処理後にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力されるイオンは、第2のイオン種のポピュレーションに対して第1のイオン種のポピュレーションが約25倍になることを意味する。
【0137】
図3Aは、両方のイオンポピュレーションをドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に4回通した後、第1のドリフト時間ウィンドウでサンプリングされたイオンポピュレーションを示す。この結果から、イオンゲートを透過したイオンの大部分が第1のイオン種であることが明らかである。
【0138】
上述したように、好適な実施例において、第1のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウで排斥されたイオン(すなわち、いずれの時点においても、非破壊式イオンゲートを透過できなかったイオン)は、系で喪失してしまうのではなく、上流側第1イオントラップに蓄積されることが望ましい。第1のドリフト時間ウィンドウを用いて4回サンプリング後に蓄積されるイオンは、第1イオンポピュレーションの77.1%と、第2イオンポピュレーションの99.1%である。
【0139】
イオンゲートの通過を遮断された後に上流側第1イオントラップに送られたイオンは、ドリフトセル又はイオン移動度分光計を4回通過後に、第2のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ2)を用いてサンプリングすることが望ましい。第1実施例において、第2のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ2)内のドリフト時間を有するイオンだけをサンプリングする。第1のドリフト時間ウィンドウ(ウィンドウ1)の間にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力されるイオンは、下流側イオントラップに保持されない。あるいは、破壊式イオンゲートを用いて除去する構成も可能である。5.25ミリ秒よりも長いドリフト時間を有するイオンのみを下流側イオントラップに保持する構成が望ましい。このようなイオンをドリフトセル又はイオン移動度分光計を通過させて、上流側イオントラップに戻す。イオンをドリフトセル又はイオン移動度分光計に4回通した後に、第2のドリフト時間ウィンドウでサンプリングした場合、最終的にドリフトセル又はイオン移動度分光計から出力されるイオンポピュレーションは、第1イオンポピュレーションの77.1*(0.31)4=0.7%と、第2イオンポピュレーションの99.1*(0.69)4=22.5%である。
【0140】
図3Bは、図3Aを参照して上述した第1のスキャンを4回行なった後に残るイオンを第2のドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを用いてサンプリングした結果得られたドリフト時間ピークを示す。図3Bの結果から、サンプリングされたイオンの大部分が第2のイオン種であることがわかる。
【0141】
図1に示すように、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を1回だけ通過させてドリフト時間ピークは2つのイオン種に分解されないが、図3A及び図3Bに示すように、上述した方法でドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を4回通過させた場合には、ドリフト時間ピークは2つのイオンポピュレーションに基本的に分解される。
【0142】
第1実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置を通過したイオンは、2つの固定ドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウで処理される。
【0143】
時間とともに徐々に増大する又は変化するドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを使用又は適用する形態を、本発明の第2実施例として説明する。各ドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、特定のドリフト時間スキャン値以下のすべてのドリフト時間を含むことが望ましい。n回のサンプリングを行なった後、スキャン値を所定のインクリメント(増分)だけ変化または増大させることが望ましい。この結果、ドリフト時間スキャン領域にわたって、ドリフト時間ウィンドウを徐々に増大させることができる。図4に、本発明の第2実施例において、連続的なスキャンの間にドリフト時間ウィンドウが増大する様子の一例を示す。
【0144】
第2実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に対してイオンをn回スキャン、通過、又はサンプリングを行なうことが望ましい。この場合、同じドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用して、毎回、イオンのサンプリングすなわちゲートコントロールを行なう。ゲートを通過できなかったイオンを蓄積して、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に対してイオンをn回スキャン、通過、又はサンプリングを行なう。この場合も、同じドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウを適用して、毎回、イオンのサンプリングすなわちゲートコントロールを行なうが、ここで適用されるドリフト時間ウィンドウ又はサンプリングウィンドウは、先のn回のスキャンで用いられたウィンドウからわずかに増大させたものである。第2実施例は、第1実施例をスキャニングの態様にしたものであり、この結果、さまざまな比率のイオンポピュレーションを含む(スキャン領域とインクリメントとに基づく)複数のドリフト時間スペクトルが得られる。
【0145】
スペクトルから求められる平均ドリフト時間の位置をドリフト時間スキャンポイントすなわちイオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対してプロットすると、実質的に単一のイオンポピュレーションに対応するスペクトルに関しては、単一の平均ドリフト時間を有する単一ピークの寄与分しか存在しないため、平均ドリフト時間の測定値がほとんど変化しないことがわかる。ただし、別のイオンポピュレーションからの寄与分が増大するにつれて、スペクトルの平均ドリフト時間は移動を始め、次第に異なるピークの組み合わせとなっていく。第2実施例において、ドリフト時間スキャンポイント、すなわち、イオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対して平均測定ドリフト時間をプロットすると、曲線の勾配を解析することにより、イオンが主に単一のイオンポピュレーションから形成される領域を求めることができる。
【0146】
図5は、各ウィンドウ位置で4回サンプリングした後の図1に示す2つのイオンポピュレーションに関して、ドリフト時間スキャンポイント、すなわち、イオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対する平均測定ドリフト時間の変化を示す。この場合、ドリフト時間ウィンドウを、同じドリフト時間ウィンドウで4回サンプリングした後、0.0158ミリ秒(ピーク標準偏差の0.1)ずつ増大させる。
【0147】
主に単一のイオンポピュレーションを含む複数のスペクトルを、緩勾配を有するこのプロットの部分から求めることもできる。求められた複数のスペクトルを合計することにより、実質的に単一のイオン種に対応する分解されたドリフト時間ピークを得ることができる。
【0148】
図6Aは、図5の領域1に示すドリフト時間スペクトルの合計ドリフト時間スペクトルを示し、図6Bは、図5の領域2に示すドリフト時間スペクトルの合計ドリフト時間スペクトルを示す。
【0149】
図6Aに示す領域1の合計ドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの33.5%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.4%と、を含むことがわかる。また、図6Bに示す領域2の合計ドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.2%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの56.7%と、を含むことがわかる。
【0150】
第2実施例では、2つのイオンピークが分離可能であり、2つの固定ドリフト時間ウィンドウを適用した第1実施例のアプローチと比較して、より高い分解能でイオンピークを分割した最終的な合計ドリフト時間スペクトルが得られる。ただし、このためには、より多数のスキャンウィンドウが必要になる。図5に示す実施例では38個の異なるスキャンウィンドウが用いられるが、第1実施例ではたった2つのスキャンウィンドウが用いられるのに過ぎない。第2実施例の構成は自動スキャニングに特に適しており、一方、第1実施例の構成は2つのドリフト時間ウィンドウ間の切点の最初の位置決めを正確に行う必要がある。第2実施例の構成は、さらに、以下に説明するように、3つ以上の重なったピークを分離する場合に適している。
【0151】
図7に、同じピーク標準偏差を有する3種類のイオン種の個々のイオンドリフト時間ピークと合計のイオンドリフト時間ピークとを示す。平均ドリフト時間は、第1のイオン種と第2のイオン種との間で1標準偏差だけ異なり、同様に、第2のイオン種と第3のイオン種との間で1標準偏差だけ異なる。
【0152】
図8は、前述したように、ドリフト時間ウィンドウのインクリメントを0.0158ミリ秒(ピーク標準偏差の0.1)として、各ウィンドウ位置で4回サンプリングを行なった場合の3つのイオンポピュレーションに関して、ドリフト時間スキャンポイント、すなわち、イオンゲートを透過した最大ドリフト時間に対する平均ドリフト時間の変化を示す。連続したポイントの勾配変化を0.4に制限することにより、平坦な、又は、概ね平坦な3つの領域を選択又は特定した。
【0153】
図9Aは、図8に示す第1領域(領域1)の最終的な合計スペクトルを示す。図8に示す第1領域(領域1)の合計スペクトルのドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの64.3%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの2.2%と、第3のイオン種の初期ポピュレーションの0.004%と、を含むことがわかる。
【0154】
図9Bは、図8に示す第2領域(領域2)の最終的な合計スペクトルを示す。図8に示す第2領域(領域2)の合計スペクトルのドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.5%と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの30.7%と、第3のイオン種の初期ポピュレーションの1.8%と、を含むことがわかる。
【0155】
図9Cは、図8に示す第3領域(領域3)の最終的な合計スペクトルを示す。図8に示す第3領域(領域3)の合計スペクトルのドリフト時間スペクトルから、イオンが、第1のイオン種の初期イオンポピュレーションのほぼ0%(2×10-9)と、第2のイオン種の初期イオンポピュレーションの0.5%と、第3のイオン種の初期ポピュレーションの66.4%と、を含むことがわかる。
【0156】
これらの割合から、他のイオンに対する所望のイオンポピュレーションのゲイン比は、3つのイオン領域に対して少なくとも30/13/130であることがわかる。
【0157】
同じ平均ドリフト時間と異なる標準偏差を有する2つのピークを分解する構成を第3実施例として説明する。図10は、このような場合の初期イオンポピュレーションを示す。このプロットから、幅広いピークの左側端をサンプリングすることにより、幅広い分布のイオンに対して有意なバイアスをかけたポピュレーションが得られる。また、ピーク中心の狭いウィンドウをサンプリングすることにより、幅の狭いピークに対してバイアスをかけたポピュレーションが得られる。この場合、平均ドリフト時間が同じであるため、平均ドリフト時間を変化させる方法を用いてサンプリングされるスペクトルの相対寄与度を推定することはできないが、標準偏差の変動に基づいて、ピークの解析を行うことはできる。このアプローチは、同じ質量対電荷比と同じイオン移動度とを持ち、標準偏差が異なる2種類のイオンにしか適用できない。荷電状態が異なれば、同じ質量対電荷比と異なる標準偏差の条件を満たすことができるが、さらに、同じイオン移動度の条件を満たすことは難しい。
【0158】
図11は、マスフィルタ2、望ましくは四重極ロッドセット型マスフィルタ、の上流側にイオン源1を備える本発明の好適な実施例の構成を示す図である。上流側第1イオントラップ3と上流側第2イオントラップ4とを、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置5の上流側に備えることが望ましい。ドリフトセル又はイオン移動度分離装置5の下流側に非破壊式イオンゲート又はシャッター6を備えることが望ましい。イオンゲート6の下流側に下流側イオントラップ7を備え、下流側イオントラップ7の下流側にイオン検出器8を備える。イオン検出器8として、ポイント検出器、飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、四重極ロッドセット型質量分析器、又は、フーリエ変換(Fourier Transform)質量分析計を用いることができる。別の実施例において、イオン検出器は、他の形態のイオン検出器でもよい。
【0159】
好適な実施例において、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置5は、望ましくは、進行波イオン移動度分光計又は分離装置ドリフトセル5である。所定の移動度を有するイオンは、イオン移動度分光計又は分離装置5を通過して、イオン移動度、ドリフトセル内のガス圧、及び進行波パルスに関係する平均及び標準偏差を持ち、ガウス分布に近似するドリフト時間分布で出力される。
【0160】
イオンゲート6は、イオン移動度分光計又は分離装置5の出口に配置され、所定のドリフト時間Tg以下のイオンのみを透過させるように構成されることが望ましい。前方に透過されたイオンは、下流側イオントラップ7に蓄積され、一方、透過されず残ったイオンは上流側第1イオントラップ3に戻される。下流側イオントラップ7内のイオンのポピュレーション(イオン種1に対するR1、イオン種2に対するR2等)は、各イオンのガウス分布型ドリフト時間分布と所定のドリフト時間ウィンドウとの重なりとして与えられる。したがって、下流側イオントラップ7内の2つのイオンポピュレーションの比はR1/R2で与えられる。
【0161】
下流側イオントラップ7内のイオンポピュレーションを、イオン移動度分光計又は分離装置5を介して、上流側第2イオントラップ4に戻し、イオンを基本的に再正規化する(すなわち、ドリフト時間分離を保持しない)ことが望ましい。イオンポピュレーションを、その後、上述と同様のゲートコントロールを行なって、再スキャンすることが望ましい。透過されなかったイオンは、ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置に戻り、上流側の第1イオントラップ3に蓄積される。下流側イオントラップ7内の新しいイオンポピュレーションは、(R1/R2)2で規定される。上述の工程を何度も繰り返すようにしてもよい。最後にイオン移動度分光計又は分離装置5を通過させる場合には、ゲートコントロールをすることなく行なう(すなわち、標準的なイオン移動度スキャンを行なう)ことが望ましい。この結果、最終的なイオンポピュレーション(R1/R2)nのドリフト時間ピークプロファイルが得られる。第2実施例において、ドリフト時間ゲートTgをインクリメントして、n回のスキャンで透過されずに上流側第1イオントラップ3に蓄積されたイオンを、新しいスキャンの初期ポピュレーションとして用いることが望ましい。上述した一連の動作を図12ないし図19を参照して、以下にさらに詳述する。
【0162】
図12は、本発明の実施例の一態様として、イオン源1によってイオンが生成される様子を示す図である。特定の質量又は質量対電荷比を有するイオンをマスフィルタ2により前方に透過させる一方で、それ以外の不要な質量又は質量対電荷比を有するイオンをマスフィルタ2で減衰させる。特定のすなわち所望のイオンポピュレーションを有するイオンを上流側第1イオントラップ3に蓄積する。
【0163】
図13は、本発明の実施例の一態様として、イオン源1を「オフ」にして、当面の間新しいイオンの生成が停止している様子を示す図である。イオン源1が「オン」の間に上流側第1イオントラップ3に蓄積されたイオンを上流側第1イオントラップ3から上流側第2イオントラップ4に移動させる。
【0164】
図14は、本発明の実施例の別の態様として、イオンが、上流側第2イオントラップ4から放出されて、イオン移動度に従って時間的にイオンを分離するように構成されるドリフトセル又はイオン移動度分離装置5に移動する様子を示す図である。非破壊式イオンゲート6は、上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出開始に応じて開く(すなわち、「オフ」になる)ように構成されることが望ましい。このイオンゲートは、上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出開始から時間Tgが経過後に、閉じる(すなわち、「オン」になる)。イオンゲート6が時間Tgに閉鎖されるまでにイオンゲート6を通過したイオンは、下流側イオントラップ7に捕捉される。時間Tgまでにイオンゲート6を通過しなかったイオンは、イオンゲート6により、一時的にイオン移動度分離装置5内に捕捉される。
【0165】
図15は、本発明の実施例の一態様として、時間Tgまでにイオンゲート6を通過せず、イオンゲート6によりイオン移動度分離装置5内に捕捉されたイオンが、イオン移動度分離装置5を介して上流側に戻る様子を示す図である。イオンは、上流側第2イオントラップ4を通過して、上流側第1イオントラップ3に捕捉されることが望ましい。この動作モードにおいて、イオン移動度分離装置5を介してイオンが上流側に戻るときに、イオン移動度分離装置5がイオンガイド単独動作モードで動作することが望ましい。すなわち、イオンが上流側に戻る際にイオン移動度に従ってイオンが分離されないことが望ましい。
【0166】
図16は、本発明の実施例の別の態様として、イオンゲート6が時間Tgに閉鎖される前にイオンゲート6を通過して、下流側イオントラップ7に一時的に捕捉されたイオンがイオン移動度分離装置5を介して上流側に戻る様子を示す図である。イオンは、上流側第2イオントラップ4に蓄積されることが望ましい。この動作モードにおいて、イオン移動度分離装置5を介してイオンが上流側に戻るときに、イオン移動度分離装置5がイオンガイド単独動作モードで動作することが望ましい。すなわち、イオンが上流側に戻る際にイオン移動度に従ってイオンが分離されないことが望ましい。
【0167】
図17は、本発明の実施例の一態様として、最初にイオンゲート6を透過した後、上流側に戻って、上流側第2イオントラップ4に蓄積されたイオンが、再びイオン移動度分離装置5を通過する様子を示す図である。イオンは、イオン移動度分離装置5を通過する際に、時間的に分離される。イオン移動度分離装置5からイオンが出力される際に、イオンゲート6を「オフ」状態のままにしておくことが望ましい。イオン移動度分離装置5から出力されるイオンをイオン検出器8により検出する。
【0168】
図18は、最初の時間T=0に上流側第2イオントラップ4からイオンが放出される様子と、その後の時間T=Tgにイオンゲート6がイオンの前方への透過を遮断する(すなわち、イオンゲート6が「オン」される)様子を示す図である。図18は、さらに、本発明の第2実施例に従い、上流側第2イオントラップ4からイオンが放出されてイオンゲート6が「オン」されるまでの遅延時間が時間とともに増大する様子を示す。
【0169】
図19は、好適な動作モードを示すフロー図である。図12を参照して上述したように、第1の動作モード(図19では「状態1」と称する)で、イオンが生成されて、上流側第1イオントラップ3に蓄積される。次に、図13を参照して上述したように、第2の動作モード(図19では「状態2」と称する)で、イオンを上流側第1イオントラップ3から上流側第2イオントラップ4に移動させる。ドリフトセル若しくはイオン移動度分光計又は分離装置5を通過する回数を所望の回数nに設定する。図14を参照して上述したように、第3の動作モード(図19では「状態3」と称する)で、上流側第2イオントラップ4からドリフトセル又はイオン移動度分光計5にイオンを移動させて、イオン移動度に従ってイオンを時間的に分離する。上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出開始から時間Tgが経過後に、非破壊式イオンゲート6を閉じる。図15を参照して上述したように、第4の動作モード(図19では「状態4」と称する)で、ドリフトセル又はイオン移動度分光計5に捕捉されているイオンを上流側に戻して、上流側第1イオントラップ3に捕捉する。
【0170】
図16を参照して上述したように、第5の動作モード(図19では「状態5」と称する)で、イオンゲート6を透過して、下流側イオントラップ7内に捕捉されたイオンを上流側に戻して、上流側第2イオントラップ4に捕捉する。次に、イオンのイオン移動度分光計又は分離装置5の通過とイオンゲート6によるゲートコントロールを反映させて、値nを1だけデクリメントする。値nが0までデクリメントされると、質量分析計は、第6の動作モード(図19では「状態6」と称する)に進む。図17を参照して上述したように、第6の動作モードでは、イオンゲート6が「オフ」状態のまま保持される(したがって、標準的なイオン移動度スキャンが実行される)間に、上流側第2イオントラップ4に捕捉されたイオンがイオン移動度分光器または分離装置5を再び通過して、イオン検出器8で検出されることにより、質量分析が行なわれる。値nが0までデクリメントされておらず、1以上の場合には、質量分析計は、図14を参照して上述した第3の動作モードを繰り返す。すなわち、イオン移動度分光計又は分離装置5にイオンを通過させて、イオン移動度に従ってイオンを分離し、時間Tg経過後にイオンゲート6を閉じる。
【0171】
所定の遅延時間Tg後にイオンのゲートコントロールを複数回行なった後、図13を参照して上述した第2の動作モードで、何れの段階でもイオンゲート6を通過せず、上流側第1イオントラップ3に送られたイオンを、上流側第1イオントラップ3から上流側第2イオントラップ4に移動させる。上流側第2イオントラップ4からのイオンの放出から非破壊式イオンゲート6に対するゲート電圧の印加までの時間Tgをインクリメントして、イオンをイオン移動度分光計又は分離装置5に通して、遅延時間後イオンゲート6を「オン」にする処理を繰り返す。遅延時間が最大遅延時間Tgmaxに達するまで、上述したさまざまな動作サイクルを繰り返すことが望ましい。この時点で、質量分析計は、図12を参照して上述した第1の動作モードに戻り、イオン源1により新しいイオン群を生成することが望ましい。生成されたイオンに対してマスフィルタ2による質量フィルタリングを行なうことにより、上流側第1イオントラップ3に新しいイオンポピュレーションを蓄積させる。その後、上述の工程を繰り返すことが望ましい。
【0172】
以上、本発明をその好適な実施例を参照して詳述したが、本発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、当業者には自明のことであるが、特許請求の範囲に記載される本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態及び態様において実施することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程を備える、
方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか一つに記載の方法であって、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、
さらに、前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える、
方法。
【請求項4】
請求項1、2及び3のいずれか一つに記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項5】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力される前記イオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える、
方法。
【請求項7】
請求項4、5及び6のいずれか一つに記載の方法であって、
前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3が、実質的に同じである、又は、実質的に異なっている、
方法。
【請求項8】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
さらに、前記時間ウィンドウT1、T2及びT3外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を、第2群のイオンとして、前記上流側第1イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
さらに、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記第2群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通し、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程を備える、
方法。
【請求項11】
請求項9及び10のいずれか一つに記載の方法であって、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、
さらに、前記時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える、
方法。
【請求項12】
請求項9、10及び11のいずれか一つに記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか一つに記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力される前記イオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える、
方法。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、実質的に同じである、又は、
(ii)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、実質的に異なっている、
のいずれかである、方法。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、 前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3と、実質的に異なっている、又は、
(ii)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、 前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3と、実質的に同じである、
のいずれかである、方法。
【請求項17】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
(i)前記時間ウィンドウT1が、T1minからT1maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(ii)前記時間ウィンドウT2が、T2minからT2maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(iii)前記時間ウィンドウT3が、T3minからT3maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(iv)前記時間ウィンドウT4が、T4minからT4maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(v)前記時間ウィンドウT5が、T5minからT5maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、及び、
(vi)前記時間ウィンドウT6が、T6minからT6maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
(i)T1min=T2min=T3min、
(ii)T1max=T2max=T3max、
(iii)T4min=T5min=T6min、
(iv)T4max=T5max=T6max、及び、
(v)T4min=T1max又はT1min=T4maxのいずれかである、
方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
(i)T1min=T2min=T3min、
(ii)T1max=T2max=T3max、
(iii)T4min=T5min=T6min、
(iv)T4max=T5max=T6max、及び、
(v)T4max>T1maxである、
方法。
【請求項20】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、前記イオン移動度分光計又は分離装置を通ったイオンの平均ドリフト時間を求め、
前記イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、前記平均ドリフト時間が実質的に一定に保たれる少なくとも1つの期間を求め、
前記期間内に得られたイオン移動度データを合計して、複合イオン移動度スペクトルを形成することにより、
単一イオン種に実質的に対応するイオン移動度スペクトルを取得する工程を備える、
方法。
【請求項21】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3、及び/又は、前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有する前記イオンは、前記下流側イオントラップに入力され、蓄積される間に、及び/又は、前記上流側第2イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない、
方法。
【請求項22】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
前記時間ウィンドウT1外、及び/又は、前記時間ウィンドウT2外、及び/又は、前記時間ウィンドウT3外、及び/又は、前記時間ウィンドウT4外、及び/又は、前記時間ウィンドウT5外、及び/又は、前記時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有する前記イオンは、前記上流側第1イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない、
方法。
【請求項23】
質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、少なくとも一部のイオンを時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように、イオンゲートを作動させ、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える質量分析計。
【請求項24】
質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)前記工程(ii)と前記工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)前記工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間又はT1minより小さいドリフト時間を有するイオンを包含する、
方法。
【請求項26】
質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)前記(ii)と前記(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)前記(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える質量分析計。
【請求項27】
質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)前記工程(ii)と前記工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウとは異なる第3の時間ウィンドウと、第4の時間ウィンドウと、を前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第3の時間ウィンドウと前記第4の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)前記工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第4の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程を備える、
方法。
【請求項29】
請求項27及び28のいずれか一つに記載の方法であって、
前記第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第3の時間ウィンドウが、T2minから、T1maxより大きいT2maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第4の時間ウィンドウが、T2maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含する、
方法。
【請求項30】
質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)前記(ii)と前記(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第3の時間ウィンドウと前記第4の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)前記(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える質量分析計。
【請求項31】
イオン移動度分光計又は分離装置と、前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能なコンピュータプログラムであって、前記制御システムに、
(i)前記イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように前記イオンゲートを作動させ、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される、
コンピュータプログラム。
【請求項32】
コンピュータにより実行可能な命令が格納されるコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記命令は、イオン移動度分光計又は分離装置と、前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能に構成され、
前記コンピュータにより実行可能な命令は、前記制御システムに、
(i)前記イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように前記イオンゲートを作動させ、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される、
コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項33】
請求項32に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光ディスク、(vii)RAM、及び(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される、
コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項34】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、前記第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、前記第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
前記イオントラップに一時的に蓄積された前記イオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記イオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、前記第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える方法。
【請求項35】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、前記第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、前記第1の時間ウィンドウ外のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
前記イオントラップに一時的に蓄積された前記イオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記イオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、より長い第2の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、前記第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える方法。
【請求項36】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
時間ウィンドウT1を前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用して、前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを第1群のイオンとして設定して、第2群のイオンとして設定される前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンから分離する工程と、
前記第1群のイオンの少なくとも一部を前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記第1群のイオンの少なくとも一部を時間的に分離する工程と、
を備える方法。
【請求項37】
質量分析の方法であって、
一群のイオンを時間的に分離する工程と、
時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有する第2群のイオンと分ける工程と、
前記第1群のイオンの少なくとも一部を再び時間的に分離する工程と、
を備える方法。
【請求項38】
質量分析の方法であって、
イオン移動度に従って、初期群のイオンを時間的に分離する工程と、
前記分離された初期群のイオンのうち、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、残りのイオンと分ける工程であって、前記第1群のイオンには、時間分布が重複する少なくとも2種類のイオンが含まれ、前記少なくとも2種類のイオンの濃度比が、前記初期群のイオン内よりも、前記分けた後の第1群のイオンで高くなるように構成される工程と、
前記分けた後の第1群のイオンを時間的に分離する工程と、
前記分けた後の第1群のイオンのうち、前記時間ウィンドウT1又は異なる時間ウィンドウ内のドリフト時間を有する第2群のイオンを分ける工程であって、前記少なくとも2種類のイオンの濃度比が、前記第1群のイオンよりも、前記第2群のイオンで高くなるように構成される工程と、
を備える方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、
さらに、前記分けた後の前記第2群のイオンを時間的に分離して、前記イオンの少なくとも1種類のイオンのイオン移動度の値を求める工程を備える、
方法。
【請求項1】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程を備える、
方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか一つに記載の方法であって、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、
さらに、前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える、
方法。
【請求項4】
請求項1、2及び3のいずれか一つに記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT2外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT2内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項5】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT3外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT3内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力される前記イオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える、
方法。
【請求項7】
請求項4、5及び6のいずれか一つに記載の方法であって、
前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3が、実質的に同じである、又は、実質的に異なっている、
方法。
【請求項8】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
さらに、前記時間ウィンドウT1、T2及びT3外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を、第2群のイオンとして、前記上流側第1イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
さらに、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記第2群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通し、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT4外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程を備える、
方法。
【請求項11】
請求項9及び10のいずれか一つに記載の方法であって、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通す工程の前に、
さらに、前記時間ウィンドウT4内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出する工程を備える、
方法。
【請求項12】
請求項9、10及び11のいずれか一つに記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT5外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT5内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか一つに記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートを作動させて、時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有するイオンを透過させない工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部又は実質的に全部を戻して、上流側第1イオントラップに前記戻したイオンを蓄積する工程と、
前記時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有する前記イオンを下流側イオントラップに捕捉して、前記捕捉したイオンを上流に戻して、前記イオン移動度分光計又は分離装置に通し、前記上流に戻したイオンを上流側第2イオントラップに蓄積し、前記蓄積したイオンを前記上流側第2イオントラップから前記イオン移動度分光計又は分離装置に放出し、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
を備える方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力される前記イオンの少なくとも一部の質量分析を行なう工程を備える、
方法。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、実質的に同じである、又は、
(ii)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、実質的に異なっている、
のいずれかである、方法。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、 前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3と、実質的に異なっている、又は、
(ii)前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6が、 前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3と、実質的に同じである、
のいずれかである、方法。
【請求項17】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
(i)前記時間ウィンドウT1が、T1minからT1maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(ii)前記時間ウィンドウT2が、T2minからT2maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(iii)前記時間ウィンドウT3が、T3minからT3maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(iv)前記時間ウィンドウT4が、T4minからT4maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
(v)前記時間ウィンドウT5が、T5minからT5maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、及び、
(vi)前記時間ウィンドウT6が、T6minからT6maxの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含する、
方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
(i)T1min=T2min=T3min、
(ii)T1max=T2max=T3max、
(iii)T4min=T5min=T6min、
(iv)T4max=T5max=T6max、及び、
(v)T4min=T1max又はT1min=T4maxのいずれかである、
方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
(i)T1min=T2min=T3min、
(ii)T1max=T2max=T3max、
(iii)T4min=T5min=T6min、
(iv)T4max=T5max=T6max、及び、
(v)T4max>T1maxである、
方法。
【請求項20】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
さらに、
前記イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、前記イオン移動度分光計又は分離装置を通ったイオンの平均ドリフト時間を求め、
前記イオンゲートが透過させたイオンの最大ドリフト時間の関数として、前記平均ドリフト時間が実質的に一定に保たれる少なくとも1つの期間を求め、
前記期間内に得られたイオン移動度データを合計して、複合イオン移動度スペクトルを形成することにより、
単一イオン種に実質的に対応するイオン移動度スペクトルを取得する工程を備える、
方法。
【請求項21】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
前記時間ウィンドウT1、及び/又は、前記時間ウィンドウT2、及び/又は、前記時間ウィンドウT3、及び/又は、前記時間ウィンドウT4、及び/又は、前記時間ウィンドウT5、及び/又は、前記時間ウィンドウT6内のドリフト時間を有する前記イオンは、前記下流側イオントラップに入力され、蓄積される間に、及び/又は、前記上流側第2イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない、
方法。
【請求項22】
前記いずれか一つの請求項に記載の方法であって、
前記時間ウィンドウT1外、及び/又は、前記時間ウィンドウT2外、及び/又は、前記時間ウィンドウT3外、及び/又は、前記時間ウィンドウT4外、及び/又は、前記時間ウィンドウT5外、及び/又は、前記時間ウィンドウT6外のドリフト時間を有する前記イオンは、前記上流側第1イオントラップに入力され、蓄積される間に、実質的にフラグメント化されない、
方法。
【請求項23】
質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、少なくとも一部のイオンを時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように、イオンゲートを作動させ、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える質量分析計。
【請求項24】
質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)前記工程(ii)と前記工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)前記工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間又はT1minより小さいドリフト時間を有するイオンを包含する、
方法。
【請求項26】
質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)前記(ii)と前記(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)前記(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える質量分析計。
【請求項27】
質量分析の方法であって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程と、
(iv)前記工程(ii)と前記工程(iii)とを一回以上繰り返す工程と、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウとは異なる第3の時間ウィンドウと、第4の時間ウィンドウと、を前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用する工程と、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第3の時間ウィンドウと前記第4の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用する工程と、
(vii)前記工程(vi)を一回以上繰り返す工程と、
を備える方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
さらに、前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第4の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させる工程を備える、
方法。
【請求項29】
請求項27及び28のいずれか一つに記載の方法であって、
前記第1の時間ウィンドウが、T1minからT1maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第2の時間ウィンドウが、T1maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第3の時間ウィンドウが、T2minから、T1maxより大きいT2maxまでの範囲のドリフト時間を有するイオンを包含し、
前記第4の時間ウィンドウが、T2maxより大きいドリフト時間を有するイオンを包含する、
方法。
【請求項30】
質量分析計であって、
イオン移動度分光計又は分離装置と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、
制御システムであって、
(i)イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(ii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第1の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第2の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンをイオントラップに蓄積させ、
(iv)前記(ii)と前記(iii)とを一回以上繰り返し、
(v)前記イオントラップに蓄積されたイオンを放出させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記放出されたイオンを通して、前記イオンを時間的に分離させ、第3の時間ウィンドウと第4の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用し、
(vi)前記イオン移動度分光計又は分離装置を通って前記第3の時間ウィンドウ内に含まれるドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンを時間的に分離させ、前記第3の時間ウィンドウと前記第4の時間ウィンドウとを前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに再び適用し、
(vii)前記(vi)を一回以上繰り返す、
ように配置・構成される制御システムと、
を備える質量分析計。
【請求項31】
イオン移動度分光計又は分離装置と、前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能なコンピュータプログラムであって、前記制御システムに、
(i)前記イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように前記イオンゲートを作動させ、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される、
コンピュータプログラム。
【請求項32】
コンピュータにより実行可能な命令が格納されるコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記命令は、イオン移動度分光計又は分離装置と、前記イオン移動度分光計又は分離装置の下流に配置されるイオンゲートと、を備える質量分析計の制御システムにより実行可能に構成され、
前記コンピュータにより実行可能な命令は、前記制御システムに、
(i)前記イオン移動度分光計又は分離装置に第1群のイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、
(ii)時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを透過させる一方で、前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンを透過させないように前記イオンゲートを作動させ、
(iii)前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する前記イオンの少なくとも一部を再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる、
ように構成される、
コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項33】
請求項32に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光ディスク、(vii)RAM、及び(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される、
コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項34】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウと第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、前記第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、前記第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
前記イオントラップに一時的に蓄積された前記イオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記イオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、前記第1の時間ウィンドウと前記第2の時間ウィンドウとを用いてサンプリングする工程であって、前記第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える方法。
【請求項35】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、第1の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、前記第1の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる一方で、前記第1の時間ウィンドウ外のドリフト時間を有するイオンをイオントラップに一時的に蓄積させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
前記イオントラップに一時的に蓄積された前記イオンの少なくとも一部を放出させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に前記イオンを繰り返し通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させ、前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンを、より長い第2の時間ウィンドウを用いてサンプリングする工程であって、前記第2の時間ウィンドウ内のドリフト時間を有するイオンを前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
前記イオン移動度分光計又は分離装置に繰り返し通した後に出力されるイオンの質量分析を行なう工程と、
を備える方法。
【請求項36】
質量分析の方法であって、
イオン移動度分光計又は分離装置にイオンを通して、前記イオンの少なくとも一部を時間的に分離させる工程と、
時間ウィンドウT1を前記イオン移動度分光計又は分離装置から出力されるイオンに適用して、前記時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有するイオンを第1群のイオンとして設定して、第2群のイオンとして設定される前記時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有するイオンから分離する工程と、
前記第1群のイオンの少なくとも一部を前記イオン移動度分光計又は分離装置に再び通して、前記第1群のイオンの少なくとも一部を時間的に分離する工程と、
を備える方法。
【請求項37】
質量分析の方法であって、
一群のイオンを時間的に分離する工程と、
時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、時間ウィンドウT1外のドリフト時間を有する第2群のイオンと分ける工程と、
前記第1群のイオンの少なくとも一部を再び時間的に分離する工程と、
を備える方法。
【請求項38】
質量分析の方法であって、
イオン移動度に従って、初期群のイオンを時間的に分離する工程と、
前記分離された初期群のイオンのうち、時間ウィンドウT1内のドリフト時間を有する第1群のイオンを、残りのイオンと分ける工程であって、前記第1群のイオンには、時間分布が重複する少なくとも2種類のイオンが含まれ、前記少なくとも2種類のイオンの濃度比が、前記初期群のイオン内よりも、前記分けた後の第1群のイオンで高くなるように構成される工程と、
前記分けた後の第1群のイオンを時間的に分離する工程と、
前記分けた後の第1群のイオンのうち、前記時間ウィンドウT1又は異なる時間ウィンドウ内のドリフト時間を有する第2群のイオンを分ける工程であって、前記少なくとも2種類のイオンの濃度比が、前記第1群のイオンよりも、前記第2群のイオンで高くなるように構成される工程と、
を備える方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、
さらに、前記分けた後の前記第2群のイオンを時間的に分離して、前記イオンの少なくとも1種類のイオンのイオン移動度の値を求める工程を備える、
方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2012−500967(P2012−500967A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523443(P2011−523443)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002001
【国際公開番号】WO2010/020763
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(509314666)マイクロマス・ユーケイ・リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】MICROMASS UK LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002001
【国際公開番号】WO2010/020763
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(509314666)マイクロマス・ユーケイ・リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】MICROMASS UK LIMITED
【Fターム(参考)】
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