説明

イオン移動装置

【課題】無駄な損失が少ないコンパクトなイオン吸着装置及びそれを用いた熱発生装置、脱塩装置、イオン移動装置及び蓄電装置を提供すること。
【解決手段】たとえば、DLC13、14が個別に収容されるセル1、2のイオン吸着動作とイオン放出動作とを交互に行うことにより、セル1、2が熱発生と冷熱発生とを行う。冷却流体及び被冷却流体をセル1、2に交互に流すことにより、熱及び冷熱を連続的に取り出す。DLC13,14は相補的に充電と放電とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液(帯電粒子を含む液体(又はゲル)又はイオン液体を含む)中の正負のイオン(正負の帯電粒子や帯電分子を含むものとする)を移動させるイオン移動装置に関し、特にその効率的な移動を行うイオン移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液中に作用する静電力を用いた電極へのイオンの吸着を利用して電解液の濃度を増大させる装置は、脱塩装置(脱イオン装置を含む)や吸収式熱移動装置として提案されている。この吸収式熱移動装置はイオン濃度差による、電解液の蒸気圧差を利用して低濃度領域での吸熱や高濃度領域での発熱を行う。通液型コンデンサ(FTC)又は容量性脱イオン装置(CDI)として知られる従来の脱塩装置は、本質的に電気二重層キャパシタ(DLC)の一対の電極が電解液の正負のイオンを電極に吸着する。電解液(イオン含有液)は、電極間の液チャンネルを流れるか又は電極の孔を貫通して流れる。
【0003】
特許文献1は、蛇行チャンネルを有するCDIを記載している。FTC又はCDIによる海水脱塩は大電力を必要とする。特許文献2は、イオンにより飽和した充電済みのFTC又はCDIの電極対と、イオンが吸着されていない放電済みのFTC又はCDIの電極対とを直列接続することを提案している。この直列接続により、二つのFTC又はCDIの電極間電圧はたとえば約0.6Vの平衡電位となる。電極間電圧は略等しくなった二つのFTC又はCDIの電極は切り離され、必要な充電又は放電が更に持続される。しかしながら、特許文献2の装置(図2、図3)は、2つのFTC又はCDIの直列接続短絡による電力回収のために3つの切り換えスイッチを必要とする。毎分10回以上の頻繁な切り換え動作が必要となるこの種の切り換えスイッチとして接点摩耗が生じる電磁切り換えスイッチを採用することは非現実的である。けれども、このような複雑な切り換えスイッチ回路をトランジスタのような半導体スイッチにより構成することも容易ではない。これは通常のトランジスタが単方向性であるが、2つのFTC又はCDI間の電力の授受は双方向性となるためである。MOSトランジスタのごとき双方向性トランジスタは、放電と充電とを交互に繰り返す2つのFTC又はCDI間の双方向送電の制御に有益である。しかし、MOSトランジスタの最大電流はその他のトランジスタやサイリスタのそれに比べて小さく、たとえば数千から数万Aといった大電流を要する脱塩装置や吸収式熱発生装置のイオン移動装置としての使用が困難であった。更に、上記した2つのFTC又はCDIを直列接続短絡する従来の電力回収技術は、平衡電位に達した後はもはや電力回収を行うことができない。けれども放電すべきFTC又はCDIはまだ十分な電圧(約0.6V)をもっているにもかかわらず、放電モードのFTC又はCDIの残留蓄電蓄電エネルギーを上記平衡電位より更に低電位まで有効利用する技術は知られていなかった。
【0004】
その他、この種のイオン移動装置の一つであるイオンポンプ(イオンドラッグポンプ)は、一次元配列された複数の電極が液中に一次元移動電界を形成することにより液中のイオン又はこのイオンに随伴する溶媒を移動させる。下記の特許文献2は、2K〜20MHz、100〜500Vの2相電圧が印加される電極列と、DC100Vの電圧が印加される電極列とを液中に対向配置されたイオンポンプを記載する。液中の+イオン及び−イオンは逆向きに移動する。電気絶縁性の溶媒は、溶媒随伴能力が相対的に高い+イオンにより液移動方向へドラッグされる。けれども、このイオンポンプでは正負イオンを逆向きに移動するため、正負イオンを同方向へ移動させる用途には適切ではなかった。また、高速の進行する進行波静電界を形成するべく高周波電圧をもちいるため、電力回路のスイッチング損失が大きいという問題もあった。
【0005】
その他、たとえば活性炭などの多孔カーボンを主成分とする一対の電極を対向させた構造をもつ複数のDLCを電解液中に一次元に配列し、各DLCの充放電をタイミングをずらせて行うことにより、正負のイオンを一方向に移動させるイオンポンプを実現することができるはずである。けれども、その効率が良い駆動方法や駆動回路についてはいまだ提案されていなかった。結局、この種のイオン移動装置は本質的に低電圧であるため、大電力装置においては損失が少ない低電圧大電流の駆動回路を必要とする。このような電源回路又は駆動回路の観点での改良は、この種のイオン移動装置技術分野で未開発となっていた。
【特許文献1】WO95/32803
【特許文献2】US2005/0141999A1
【発明の開示】
【0006】
(発明の目的)
本発明は、目的とする方向へのイオンの効率的な移動が可能なイオン移動装置の提供をその第1の目的としている。本発明は、吸収式冷凍サイクル装置として好適なイオン移動装置の提供をその第2の目的としている。本発明は、イオン吸着電極の蓄電エネルギーを有効回収可能なイオン移動装置をその第3の目的としている。本発明はかさばりコストを増大させる活性炭量を低減可能な蓄電装置として好適なイオン移動装置を提供することをその目的としている。
【0007】
(発明の要約)
以下、イオン吸着装置に関して複数の独立発明が以下に説明される。各発明のイオン吸着装置は、吸収式熱発生装置、脱塩装置、脱イオン装置、人工腎臓、イオン移動装置、蓄電装置として利用されることができる。各発明のイオン吸着装置は、電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつ。各発明のイオン吸着装置は、好適には電気二重層キャパシタにより構成される。電気二重層キャパシタ(DLC)は、電気二重層の大きな静電容量をもつキャパシタを意味する。DLCの電極は、印加される電位に応じてイオンを吸着したり、放出したりする。
【0008】
第1発明のイオン吸着装置は、前記キャパシタをそれぞれ収容する前記セルとしての第1セル及び第2セルと、前記第1セル及び第2セルを蒸気流通可能に連通する蒸気管と、第1外部流体及び第2外部流体と前記第1セルとの熱授受を交互に行う第1熱交換器と、第1外部流体及び第2外部流体と前記第2セルとの熱授受を交互に行う第2熱交換器と、前記第1、第2熱交換器への前記第1、第2外部流体の供給を定期的に切り換える流路切換装置とを備え、前記駆動回路は、前記流路切換装置による前記第1、第2外部流体の供給切り換えと同期して前記第1、第2セル中の2つのキャパシタの充放電を切り換えて前記第1、第2セルの発熱及び吸熱を交互に実施することにより、前記第1外部流体を連続的に加熱し、かつ、前記第2外部流体を連続的に冷却することを特徴としている。すなわち、この発明のイオン吸着装置は、交互に放熱と吸熱とを行う2つのセルに個別に収容される2つのキャパシタ(好適には電気二重層キャパシタ)により構成される。この発明によれば、2つのセルにより連続的に吸熱及び放熱を行う吸収式熱発生装置を実現することができる。
【0009】
好適な態様において、前記流路切換装置は、前記蒸気管に設けられて前記第1セルと前記第2セルとの蒸気移動を制御する蒸気バルブを有し、かつ、蓄熱時に前記蒸気バルブを全閉する。このようにすれば、2つのセルの電解液のイオン濃度を保持することができるので、一種の蓄熱動作を実現することができ、蒸気バルブを開くことで直ちに放熱動作と吸熱動作とを強力に再開することができる。
【0010】
好適な態様において、前記第1外部流体が流れる第1の外部熱交換器と、前記第2外部流体が流れる第2の外部熱交換器とを有し、前記流路切換装置は、前記第1の熱交換器と前記第1の外部熱交換器とを接続し、前記第2の熱交換器と前記第2の外部熱交換器とを接続する第1運転モードと、前記第1の熱交換器と前記第2の外部熱交換器とを接続し、前記第2の熱交換器と前記第1の外部熱交換器とを接続する第2運転モードとを所定時間ごとに切り換える。第1外部流体及び第2外部流体は、好適には冷却水及び被冷却水とされる。このようにすれば、2つのセルが発生する熱及び冷熱を効率よく外部に移動することができる。
【0011】
好適な態様において、前記流路切換装置は、同期して切り換えられる2つの四方弁を有し、前記駆動回路は、前記2つの四方弁の切り換えに同期して前記第1運転モードと前記第2運転モードとを切り換える。このようにすれば、外部流体回路を簡素に構成することができる。
好適な態様において、前記流路切換装置は、前記第1、第2熱交換器の入り口側と出口側とに配置されて前記第1外部流体を前記第1、第2熱交換器の一方にのみ流す2つの第1外部流体ダンパと、前記第1、第2熱交換器の入り口側と出口側とに配置されて前記第2外部流体を前記第1、第2熱交換器の他方にのみ流す2つの第2外部流体ダンパとを有し、前記4つのダンパの切り換えにより、前記第1熱交換器に前記第1外部流体を流し、かつ、前記第2熱交換器に前記第2外部流体を流す第1運転モードと、前記第1熱交換器に前記第2外部流体を流し、かつ、前記第2熱交換器に前記第1外部流体を流す第2運転モードとを所定時間ごとに切り換える。このようにすれば、装置構成を簡素に構成することができる。
【0012】
好適な態様において、前記第1セルは、前記電解液を分離しDLCを収容する複数の小セルからなり、前記第2セルは、前記電解液を分離しDLCを収容する複数の小セルからなり、前記駆動回路は、前記キャパシタをなす前記第1セルの各DLCに直列に電圧を印加し、かつ、前記キャパシタをなす前記第2セルの各DLCに直列に電圧を印加する。このようにすれば、駆動回路の出力電圧を増大することができるため、駆動回路の損失を低減することができる。
好適な態様において、前記DLCと並列に順方向に接続されて所定の電圧値にて降伏するダイオード回路を有する。このようにすれば、直列に接続されたDLCの一つに電気分解電圧を超える大の電圧が印加されるてガスが発生するのを簡素な回路で防止することができる。
【0013】
第2発明のイオン吸着装置は、前記キャパシタとして第1、第2のキャパシタを有し、前記第1のキャパシタは、電解液が分離される複数の小セルに個別に収容される複数のDLCを直列接続してなり、前記第2のキャパシタは、電解液が分離される複数の小セルに個別に収容される複数のDLCを直列接続してなり、前記駆動回路は、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタを相補的に充放電させることを特徴としている。すなわち、この発明のイオン吸着装置は、互いに実質的に電気絶縁されるとともに直列接続された複数のDLCによりそれぞれ構成される2つのキャパシタを交互に充放電するので、駆動電圧を増大することができ、抵抗損失を低減することができる。
好適な態様において、前記各DLCとそれぞれに並列に所定の電圧値にて降伏する複数のダイオード回路を有する。このようにすれば、直列に接続されたDLCの一つに電気分解電圧を超える大電圧が印加されて、ガスが発生するのを簡素な回路で防止することができる。
【0014】
第3発明のイオン吸着装置は、前記キャパシタとして第1、第2のキャパシタを有し、前記駆動回路は、前記第1のキャパシタの充放電させる双方向DCDCコンバータと、前記第2のキャパシタの充放電させる双方向DCDCコンバータとを有し、前記第1、第2の双方向DCDCコンバータを作動させることにより、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタを相補的に充放電させるとともにイオン放出のための前記キャパシタの放電時に前記キャパシタの蓄電電力エネルギーを電源側に回収することを特徴としている。すなわち、この発明のイオン吸着装置は、2つの双方向DCDCコンバータにより2つのキャパシタを逆動作させる。このようにすれば、たとえば第1のキャパシタの充電時に、第2のキャパシタを十分に電源側へ放電させることができるため、電力回収効率がよく、かつ、駆動回路の入力電流の電流リップルも低減することができる。
好適な態様において、前記駆動回路は、イオン放出のための前記キャパシタの放電時に前記キャパシタの蓄電電圧が均衡電圧未満と半分以下となるまで前記キャパシタの蓄電電力エネルギーを電源側に回収する。なお、ここで言う均衡電圧とは、2つのキャパシタを短絡させた時の一つのキャパシタの端子電圧を言う。このようにすれば、電力効率の向上により、装置の運転コストを低減することができる。
【0015】
第4発明のイオン吸着装置は、前記キャパシタとして第1、第2のキャパシタを有し、前記駆動回路は、スイッチング素子により構成されて前記第1のキャパシタを充電する第1、第2の上アーム素子と、スイッチング素子により構成されて前記第1のキャパシタを放電する第1、第2の下アーム素子とを有する第1のHブリッジ回路と、スイッチング素子により構成されて前記第2のキャパシタを充電する第3、第4の上アーム素子と、スイッチング素子により構成されて前記第2のキャパシタを放電する第3、第4の下アーム素子とを有する第2のHブリッジ回路とを有し、前記第1のHブリッジ回路と前記第2のHブリッジ回路とは直列接続されていることを特徴としている。このようにすれば、駆動回路の電源電圧を増大することができるとともに、キャパシタの蓄電電力を有効利用することができる。
好適な態様において、前記第1のHブリッジ回路の前記第1、第2の下アーム素子と、前記第2のHブリッジ回路の前記第3、第4の上アーム素子は、前記第1のキャパシタの一端と前記第2のキャパシタの一端とを接続するスイッチング素子からなる第1の中間アーム素子と、前記第1のキャパシタの他端と前記第2のキャパシタの他端とを接続するスイッチング素子からなる第2の中間アーム素子とにより構成される。このようにすれば、駆動回路を簡素に構成することができる。
【0016】
第5発明のイオン吸着装置は、前記キャパシタは、所定のイオン移動方向に順番に配列された第1、第2、第3、第4の電極を有し、前記駆動回路は、前記4種類の電極の電位を交互に変更することにより、前記電解液中の正負のイオンを前記イオン移動方向へ移動させる。このようにすれば、簡素な駆動によりイオンを効率よく移動させることができるイオンポンプを実現することができる。また、駆動回路の構成も簡素となる。
好適な態様において、前記駆動回路は、前記第1、第3の電極の電位を逆向きに変更する第1の電位変化モードと、前記第2、第4の電極の電位を逆向きに変更する第2の電位変化モードとを交互に実施する。これにより、正負のイオンを同一方向へ効率よく移動させることができる。
好適な態様において、前記駆動回路は、前記第1、第3の電極からなる第1のキャパシタを交流駆動する第1のHブリッジと、前記第2、第4の電極からなる第2のキャパシタを交流駆動する第2のHブリッジとを有する。このようにすてば、2つのHブリッジ(Hブリッジ回路)により、イオンを正負のイオンを同一方向へ効率よく移動させることができる。
【0017】
好適な態様において、前記第1、第2、第3、第4電極は、イオン移動方向において重なっている。つまり、この態様では、第2電極は第1、第3電極とイオン移動方向においてオーバーラップし、第3電極は第2、第4電極とイオン移動方向においてオーバーラップし、第4電極は第4、第1電極とイオン移動方向においてオーバーラップしているので、イオン移動効率を向上することができる。
好適な態様において、前記イオン吸着装置は、相対的に高濃度の電解液を有する吸収器と、相対的に低濃度の電解液を有する蒸発器と、前記蒸発器から前記吸収器へ蒸気を送る蒸気管と、前記吸収器と前記蒸発器とを連通する液管と、前記液管に設けられて前記吸収器から前記蒸発器に送られる前記電解液中の正負のイオンを前記吸収器に移動させる再生器とを有する吸収冷凍サイクル装置に装備されて前記再生器を構成する。このようにすれば、簡素な構成をもつ連続駆動型吸収冷凍サイクル装置を実現することができる。
【0018】
第6発明のイオン吸着装置は、電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、高イオン濃度の電解液を収容する高濃度室と、低イオン濃度の電解液を収容する低濃度室と、前記高濃度室と低濃度室との間に配置されて回転する複数のディスクとを有し、前記複数のディスクは、周方向に配列されて前記キャパシタを構成する複数のDLCを有し、前記複数のDLCは、前記高濃度室で放電され、かつ、前記低濃度室で充電されることを特徴としている。本発明によれば、回転するディスクに設けられた多数のDLCが、低濃度室で吸着したイオンを高濃度室で放出するため、効率よくイオン移動を行うことができる。
好適な態様において、奇数番目の前記ディスクと偶数番目の前記ディスクとの一方に設けられた前記DLCの電極は、共通電位をもつ。これにより、電極構成を簡素化することができる。
【0019】
第7発明のイオン吸着装置は、前記キャパシタを構成する複数のDLCを互いに異なるタイミングで充電及び放電させるロータリーインバータを有し、前記ロータリーインバータは、円板面又は円筒面に周方向所定ピッチで設けられて前記複数のDLCの電極に個別に接続される複数の第1導電部材と、前記複数の第1導電部材に接しつつ前記ディスクに対して相対回転する高電位の第2導電部材と、前記複数の第1導電部材に接しつつ前記ディスクに対して相対回転する低電位の第2導電部材とを有し、前記複数のDLCの電極に交互に高電位と低電位とを与えることを特徴としている。このようにすれば、低電圧のDLCを充放電する大電流駆動回路を簡素に構成することができる。
好適な態様において、前記高電位の第2導電部材と前記低電位の第2導電部材との間、及び、前記低電位の第2導電部材と前記高電位の第2導電部材との間にそれぞれ浮遊電位の第2導電部材を有し、前記各浮遊電位の第2導電部材は短絡される。このようにすれば、DLCの蓄電電力を回収できるDLC充放電用ロータリーインバータを実現することができる。
【0020】
第8発明のイオン吸着装置は、DLCからなる前記キャパシタの前記一対の電極の間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に有し、蓄電装置を構成することを特徴としている。すなわち、この発明は、DLC用の電極(好適には多孔炭素電極)をもつ電気透析装置を蓄電装置として用いる。このようにすれば、たとえば活性炭からなる多孔炭素電極の使用量を低減しつつ濃淡電池電圧を利用して蓄電電圧を増大することができる。電解液としては、たとえば水酸化カリウムや水酸化リチウムなどのアルカリ液又は塩化カリウムや塩化リチウムなどの塩溶液を用いることができる。
陽イオン交換膜(カチオン膜)は、陽イオン(正イオン)が通過し、陰イオン(負イオン)をブロックする膜である。陰イオン交換膜(アニオン膜)は、陰イオンを通過させ、陽イオンを通過させない膜である。電解液はゲルでもよい。すなわち、この発明の電気二重層コンデンサは、陰イオンを吸着する陽極と、陽イオンを吸着する陰極との間に陽イオン交換膜(カチオン膜)と陰イオン交換膜(アニオン膜)とが交互に配置される。両極間の印加電圧は、電解液の電気分解電圧値(ガス発生電圧値)未満に制御される。このようにすれば、両極における電気二重層による大きな容量蓄電現象と、イオン交換膜により隔てられたイオン濃縮液とイオン希釈液との間の濃度エネルギー(化学エネルギー)蓄積現象との両方を用いて電気エネルギーの蓄積及び放出を行うことができる。このため、従来の濃淡電池は、DLCや濃淡電池に比べて体積、重量あたりの蓄電容量を大幅に増大することができる。また、活性炭使用量を減らすことができるため、コストダウンも可能となる。本発明の電気エネルギーの蓄積放出装置の他の利点は、DLC及び濃淡電池が本質的に化学反応を用いないため、高価な触媒や材料を必要とせず、かつ、サイクル劣化が少ないことである。
【0021】
従来において、陰イオン交換膜の両側に配置された2室に高イオン濃度液(イオン濃縮液)と低イオン濃度液(イオン希釈液)とを別々に供給し、両液間の化学エネルギーを電極により電力として外部に取り出す技術は、濃淡電池技術又は濃淡発電技術として知られている。しかし、この技術は、上記2室に常にイオン濃縮液とイオン希釈液とを供給し、連続的に発電することを想定している。同様の脱塩技術でも、イオン濃縮液とイオン希釈液とは、連続的に外部に排出される。これに対して、本発明では、装置の各室にイオン濃縮液及びイオン希釈液を供給することはなく、電解液としてはクローズドサイクルとなっている。このため、各室の両イオン性電解質は、液体でなくてもよく、たとえばゲル状でもよい。また、石綿などの多孔性材料に充填することもできる。また、各室の両イオン性電解質の量は必要最小限でよく、各室の両イオン性電解質(たとえば水酸化カリウム水溶液)の量が少ないほど充電時のそのイオン濃度変化が大きく、大きなイオン濃淡エネルギーを蓄積することができる。本発明は、イオン濃縮液及びイオン希釈液を外部に放出又は外部から供給する代わりに、通常のコンデンサと同じく所定の充電量が充電された後は放電を行う。これにより、イオン濃淡エネルギーの蓄積と放出とが電力エネルギーとして行われる。
好適な態様において、前記駆動回路は、双方向DCDCコンバータからなる。このようにすれば、濃淡電池のイオン濃度差の変化による電圧変動を良好に吸収することができるので、安定した出力電圧を得ることができる。
【0022】
好適な態様において、前記DLCの充電の進行に伴う前記各室の間の濃度差の増大に対抗して、前記電極界面における電気分解ガスの発生量が許容範囲未満となる所定のしきい電圧値の範囲内で徐々に端子電圧を増大させる充電制御を行う電圧制御装置を有する。これにより、両イオン性電解質として水溶液を採用したとしても充電動作時に電極界面からの電気分解ガスの発生を抑止することができる。
好適な態様において、充電完了時に、前記濃度増大室のイオン濃度は運転温度における前記両イオン性電解質の最大濃度値の90%未満とされ、前記濃度減少室のイオン濃度は運転温度における前記両イオン性電解質の最大濃度値の10%以上とされる。このようにすれば、内部損失増大を抑止しつつ蓄電エネルギーを増大することができる。以下、更に説明する。充電完了は、既述したように陽極又は陰極の電気分解ガス発生未満の充電終止電圧値でのイオン吸着能力に依存する。この充電は、電気抵抗を通じて定電圧型静電容量素子の充電とみなすことができる。この態様では、濃度増大室のイオン濃度を最大濃度値の90%未満としているので結晶析出を防止することができ、濃度減少室のイオン濃度を最大濃度値の10%以上としているので、イオン濃度低下による両イオン性電解質の電気抵抗増大を防止でき、DLCの抵抗損失を低減することができる。
【0023】
好適な態様において、前記DLCの放電に伴う前記各室のイオン濃度差の減少に伴う端子電圧の低下に応じて、前記端子電圧を所定の定出力電圧値に変更する放電制御のための電圧制御装置を有する。このようにすれば、安定した電源電圧で外部負荷に電力を供給することができる。なお、上記した充電制御用の電圧制御装置及び放電制御用の電圧制御装置は、いわゆるDCDCコンバータを採用することができる。このDCDCコンバータの損失低減のうえで、DCDCコンバータを昇降圧双方向DCDCコンバータとし、その充電時及び放電時の入出力電圧の電圧変換率は、k1(0.7未満)〜k2(1.3以上)の範囲で徐々に変更されることが好適である。すなわち、電圧変換率が1を中心としてその前後に設定されているので、DCDCコンバータの損失を減らすことができる。
好適な態様において、前記陽極室及び前記陰極室の少なくとも一方又はそれに隣接乃至近接する他の室の電解質電位を検出する電位プローブ電極と、前記陽極及び陰極の少なくとも一方の電位と前記電位プローブ電極の電位との間の電位差を高入力インピーダンス状態で検出する検出回路と、前記検出回路が検出した前記電位差が所定しきい値を超えないように充電時に前記DLCの端子電圧を制御する電圧制御装置とを有する。このようにすれば、両イオン性電解質からのガス発生を防止しつつDLCの蓄電能力を最大限に保つことができる。
【0024】
好適な態様において、前記DLCの端子電圧V1との変動を補償するDCDCコンバータを有し、前記DCDCコンバータの出力電圧V2と前記DLCの端子電圧V1との直列電圧(V1+V2)が一対の外部入出力端子に印加され、直列電圧(V1+V2)が、DCDCコンバータの一対の入力端に印加され、前記DCDCコンバータは、直列電圧(V1+V2)が所定目標電圧値となるように制御される。このようにすれば、DCDCコンバータを小型化することができる。
【0025】
上記した各発明に好適に採用されるDLCの多孔炭素質電極は、たとえば活性炭繊維シートにより構成することができる。たとえば比表面積が700〜2500平方m/gで、シートに130±50g/平方m程度の活性炭を含有する厚さが0.4〜1.0mm程度の活性炭繊維シートを用いることができる。たとえばクラレケミカル社製「クラクティブ」(商品名)や日本カイノール社製「カイノール活性炭繊維」等を採用することができる。正負の活性炭電極の間にイオン透過性のスペーサを設けることも当然可能である。活性炭電極をイオン透過性のシートにより包むこともできる。このシートとしては、合成樹脂繊維を集積させた不織布や射出成型等により形成されたメッシュ状の成形体を使用することができる。電気絶縁性シートの厚さは、0.01〜0.5mm、更に好適には0.02〜0.3mmとすることが好適である。たとえば、クラレ社製「メルトブロー」(商品名)のような多数の透孔を穿設して通液性を改善した合成樹脂不織布は、このイオン透過機能をもつ電気絶縁シートとして好適である。電解液として、帯電粒子又はイオンを含む電気絶縁性の液体又はゲルを用いても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のイオン吸着装置及びそれを用いた装置の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
実施形態1を図1を参照して説明する。図1は、本発明のイオン吸着装置を用いた吸収式熱発生装置(吸収式冷凍サイクル装置)の模式ブロック図である。この吸収式熱発生装置は、容器であるセル1、2、熱交換器3、4、外部熱交換器5、6、ポンプ7、8、四方弁9、10、駆動回路11、制御回路12を有している。図1において、破線は、セル1、2間の蒸気流通を行う蒸気管、実線は、各熱交換器3〜6間の外部流体(熱媒)移動のための液管を示す。
セル1は、電解液Lと、DLC(キャパシタ)13とを収容している。セル2は、電解液Lと、DLC(キャパシタ)14とを収容している。電解液LはたとえばKOH水溶液、LiBr水溶液、アンモニア水溶液などを採用することが好適であるがそれに限定されない。DLC13、14は、一定の隙間を挟んで対面する一対の電極により構成されている。良く知られているように、電極として多孔性炭素材料を主要素とすることが好適である。DLC13、14は駆動回路11から電圧を供給されている。熱交換器3はセル1と熱授受する間接熱交換器であり、熱交換器4はセル1と熱授受する間接熱交換器である。外部熱交換器5は室内空調用の間接熱交換器であり、外部熱交換器6は外気放熱用の間接熱交換器である。駆動回路11は、DLC13、14への印加電圧を制御する。制御回路12は、ポンプ7、8、四方弁9、10及び駆動回路11を制御するマイコン内蔵のコントローラである。
【0027】
次に、第1運転モードの動作を図1を参照して説明する。ポンプ7は、外部(室内)熱交換器5、四方弁9、熱交換器3及び四方弁10を通じて被冷却水を循環している。ポンプ8は、外部(外気)熱交換器6、四方弁9、熱交換器4及び四方弁10を通じて冷却水を循環している。駆動回路11は、DLC13に所定値(たとえば1.2〜2V)の直流電圧を印加して、DLC13を充電している。これにより、セル1の電解液Lに含まれる正負のイオンがDLC13に吸着され、セル1の電解液Lは低濃度となり、その沸点が低下する。その結果、セル1の電解液Lの溶媒(ここでは水)は、熱交換器3から潜熱を吸収して水蒸気となり、蒸気管(破線図示)を通じてセル2に送られる。熱交換器3の被冷却水は低温となって、外部(室内)熱交換器5を冷却する。駆動回路11は、DLC14に0Vの電圧を電圧を印加し、DLC14の一対の電極を短絡している。これにより、DLC14は放電され、
DLC14の電極に吸着された正負のイオンが電解液Lに放出され、電解液Lは高濃度となり、その沸点が上昇する。その結果、セル2の電解液Lは、水蒸気を吸収して凝縮熱を発生し、熱交換器4内の冷却水はこの凝縮熱を吸収して高温となって、外部熱交換器6から外気に放熱される。
【0028】
次に、第2運転モードの動作を図2を参照して説明する。セル1のDLC13のイオン吸着がほぼ飽和し、セル2のDLC14からのイオン放出がほぼ終了した時点で、駆動回路11は、セル1のDLC13への印加電圧をほぼ0として、DLC13の一対の電極を短絡する。また、駆動回路11は、セル2のDLC13に所定値(たとえば1.2〜2V)の直流電圧を印加して、DLC13を充電する。これとほぼ同時に、四方弁9、10を切り換える(図2参照)。これにより、セル1が高温となり、セル2が低温となる。セル1の熱は、熱交換器3、四方弁10、ポンプ8、外部熱交換器6、四方弁9の順に流れる冷却水により、外部(外気)熱交換器6に送られる。セル2の冷熱は、熱交換器4、四方弁10、ポンプ7、外部(室内)熱交換器5、四方弁9の順に流れる被冷却水により、外部(室内)熱交換器6に送られる。
【0029】
つまり、この実施形態によれば、2つのセル1、2が交互に吸熱動作を行うため、外部(室内)熱交換器5はほぼ連続して冷熱を発生することができる。なお、四方弁9,10の切り換えにより、外部熱交換器5を高温とし、外部熱交換器6を低温とするヒートポンプ動作も可能である。その他、四方弁9,10を外気が進入しない密閉構造とすれば、ヒートパイプを用いて熱交換器3、4と外部熱交換器6、7との間の熱流体流通を行うこともできる。
上記した運転モード1から運転モード2への切り換え過渡期間において、セル1のDLC13への印加電圧を徐々に増加し、セル2のDLC14への印加電圧を徐々に低下してもよい。上記した運転モード1から運転モード2への切り換え過渡期間において、セル1のDLC13への印加電圧を徐々に低下し、セル2のDLC14への印加電圧を徐々に増大してもよい。更に、四方弁9、10の切り換えは、上記切り換え過渡期間の好適な時点にて行えばよい。また、熱交換器3、4のうち蒸発側の熱交換器の温度が十分に低温となってから、この低温となった熱交換器と外部(室内)熱交換器5とを熱的に連結するように四方弁9、10の切り換え遅延やポンプ7のオンオフを行ってもよい。ポンプ7、8は、同軸配置されて単一のモータにより駆動される。四方弁9、10も同軸配置されて単一のモータにより駆動される。これにより、装置構造を大幅に簡素化することができる。
【0030】
(変形態様1)
実施形態1の吸収式熱発生装置の変形態様を図3を参照して説明する。ただし、図3の符号は、図1、図2の符号と無関係である。吸収式熱発生装置9は、実施例1のセルに相当する吸収蒸発タンク91、92と、溶媒蒸気流量調整用の弁93と、DLC94、95と、実施例1の駆動回路に相当する電源96、97と、熱交換器98、99とをもつ。DLC94、95は、電解液中にて所定ギャップを隔てて対面する一対の活性炭電極からなり、DLC94は電源96から、DLC95は電源97から給電されている。熱交換器98は吸収蒸発タンク91内の電解液と熱交換し、熱交換器99は吸収蒸発タンク92内の電解液と熱交換する。
この装置の動作を説明する。電源96は、DLC94の電極ペア間に直流電圧を印加して、吸収蒸発タンク91内の電解液のイオンを吸着する。電源97はDLC94の電極ペア間を短絡して、吸収蒸発タンク92内の電解液に吸着イオンを放出する。これにより、吸収蒸発タンク91内の電解液のイオン濃度が低下し、吸収蒸発タンク92内の電解液のイオン濃度が増大する。これにより、両タンク91、92内の蒸気圧差が生じる。弁93を開くと、吸収蒸発タンク91からたとえば水蒸気のごとき溶媒蒸気が蒸発し、この溶媒蒸気は、弁93を通じて吸収蒸発タンク92内の電解液に吸収される。これにより、吸収蒸発タンク91は熱交換器98から吸熱し、吸収蒸発タンク92は熱交換器99に放熱する。
【0031】
次に、電源96は、DLC94の電極ペア間を短絡して、吸収蒸発タンク91内の電解液に吸着イオンを放出する。電源97はDLC94の電極ペア間に直流電圧を印加して、吸収蒸発タンク92内の電解液のイオンを吸着する。これにより、吸収蒸発タンク92内の電解液のイオン濃度が低下し、吸収蒸発タンク91内の電解液のイオン濃度が増大する。これにより、両タンク91、92内の蒸気圧差が生じる。弁93を開くと、吸収蒸発タンク92からたとえば水蒸気のごとき溶媒蒸気が蒸発し、この溶媒蒸気は、弁93を通じて吸収蒸発タンク91内の電解液に吸収される。これにより、吸収蒸発タンク92は熱交換器99から吸熱し、吸収蒸発タンク91は熱交換器98に放熱する。つまり、この態様では、吸収蒸発タンク91、92に個別に配置されたDLC94、95を逆動作させる。これにより、吸収蒸発タンク91、92間を溶媒蒸気が往復し、その結果として熱交換器98、99は交互に放熱、吸熱する。冷却水及び被冷却水が、熱交換器98、99に切り換えて送られる。冷房モードでは、加熱されるべき水は室温空気から吸熱し、冷却されるべき水は外気に放熱する。暖房モードでは、冷却されるべき水は室温空気に放熱し、加熱されるべき水は外気から吸熱する。結局、この態様は、蒸気流通を断続する弁93をもつ点において実施形態1と異なっている。この弁93を閉じ、電源96、97をオフすることにより、DLC94、95の一方を高濃度状態、他方を低濃度状態に維持することができる。これにより、一種の化学的蓄熱効果を維持することができ、電源94、95のオンと、弁93の開放により速やかに冷房を開始することができる。
【0032】
(変形態様2)
図3に示すDLC内蔵型のセルすなわち吸収蒸発タンクをそれぞれ複数並列に連結した吸収式熱発生装置の例を図4を参照して説明する。この態様は、図3に示す吸収蒸発タンク91、92のペアを4つ設け、各冷媒蒸気通路を共通としたものである。同一運転モードで動作する4つの吸収蒸発タンクに内蔵される4つのDLCは直列接続される。これにより、電源100の出力電圧を高電圧化することができる。放出モードのDLC及び吸着モードのDLCは、双方向昇降圧DCDCコンバータを通じて電力授受する。
まず、構造を説明する。91A〜91Dは図3に示す吸収蒸発タンク91と同じであり、92A〜92Dは図3に示す吸収蒸発タンク92と同じである。互いに対面する電極941、942のペアからなるDLCが吸収蒸発タンク91A〜91Dにそれぞれ内蔵されている。それぞれ対面する電極945、952のペアからなるDLCが吸収蒸発タンク92A〜92Dにそれぞれ内蔵されている。吸収蒸発タンク91A〜91Dは共通の熱交換器98(図3参照)と熱授受し、吸収蒸発タンク92A〜92Dは共通の熱交換器99(図3参照)と熱授受する。111は、吸収蒸発タンク91A〜91Dと弁93とを接続する溶媒蒸気配管、112は吸収蒸発タンク92A〜92Dと弁93とを接続する溶媒蒸気配管である。
【0033】
4対の電極941、942は直列に接続され、4対の電極ペア951、952は直列接続されている。電源100は、4対の電極ペア941、942に直列に駆動電圧V1を出力する。電源100は、4対の電極ペア951、952に直列に駆動電圧V2を出力する。駆動電圧V1と駆動電圧V2とは逆の波形で動作される。すなわち、吸収蒸発タンク91A〜91Dの電解液を高濃度、吸収蒸発タンク92A〜92Dの電解液を低濃度とする期間に、駆動電圧V1は0Vとされ、駆動電圧V2は電気分解が生じない範囲の値とされる。これにより、吸収蒸発タンク92A〜92Dから弁93を通じて吸収蒸発タンク91A〜91Dに溶媒蒸気が流れ、吸収蒸発タンク91A〜91Dが放熱し、吸収蒸発タンク92A〜92Dが吸熱する。
吸収蒸発タンク92A〜92Dの電解液を高濃度、吸収蒸発タンク91A〜91Dの電解液を低濃度とする期間に、駆動電圧V2は0V(電極短絡によるイオン放出状態)とされ、駆動電圧V1は電気分解が生じない範囲の値(イオン吸着状態)とされる。これにより、吸収蒸発タンク91A〜91Dから弁93を通じて吸収蒸発タンク92A〜92Dに溶媒蒸気が流れ、吸収蒸発タンク92A〜92Dが放熱し、吸収蒸発タンク91A〜91Dが吸熱する。以下、上記2つのモードを交互に実施する。たとえば冷房モードでは、上記モードの切り替えに同期して冷水と冷却水とが弁の切り替えにより切り替えられ、吸熱中の吸収蒸発タンクに常に冷水を流し、放熱中の吸収蒸発タンクに外気放熱用の冷却水を流す。
【0034】
電源100は双方向昇降圧DCDCコンバータにより構成されている。101、102は、電極ペア941、942の直列接続体の両端をなす第1端子対であり、103、104は、電極ペア951、952の直列接続体の両端をなす第2端子対である。第1端子対101、102は、双方向昇降圧DCDCコンバータの入力端対に接続され、第2端子対103、104は、双方向昇降圧DCDCコンバータの出力端対に接続されている。105、106は図略の外部直流電源から直流電力を受け取るための端子である。双方向昇降圧DCDCコンバータ自体は、電子回路技術分野にて公知であるため詳細な説明は省略する。双方向昇降圧DCDCコンバータに内蔵の半導体スイッチング素子のデューティ比を変更することにより、送電方向の切り替えと、昇圧比又は降圧比が調整される。
電源100の動作を説明する。最初に、駆動電圧V1が電極ペア941、942の直列接続体に印加され、電極ペア951、952の直列接続体に0Vの駆動電圧V2が印加される(短絡)。次に、駆動電圧V1を0Vとし、駆動電圧V2をある大きさに変更する動作を説明する。電源回路100の双方向昇降圧DCDCコンバータを駆動して、第1端子対101、102からその第2端子対103、104側に電力を送電する。第1端子対101、102には、直列接続された電極ペア941、942の直列接続体に蓄電された電力エネルギーが給電されている。すなわち、電極ペア941、942を放電する電力エネルギーにより電極ペア951、952が充電される。抵抗損失などにより、不足する電力エネルギーは、上記送電により第1端子対101、102間の電圧が所定値以下となった段階で、双方向昇降圧DCDCコンバータの入力端対を、第1端子対101、102から外部電源電圧受け取り用の端子対105、106に切り替え、かつ、第1端子対101、102間を短絡することによりなされる。これにより、電極ペア951、952の最後の充電は、外部電源電力により遂行される。
【0035】
次に、駆動電圧V2を0Vとし、駆動電圧V1をある大きさに変更する動作を説明する。電源回路100をなす双方向昇降圧DCDCコンバータを駆動して、第2端子対103、104からその第1端子対101、102側に電力を送電する。電極ペア941、942は、電極ペア951、952を放電する電力エネルギーにより充電される。抵抗損失などにより、不足する電力エネルギーは、上記送電により第2端子対103、104間の電圧が所定値以下となった段階で、双方向昇降圧DCDCコンバータの入力端対を、第2端子対103、104から外部電源電圧受け取り用の端子対105、106に切り替え、かつ、第1端子対103、104間を短絡することによりなされる。これにより電極ペア941、942の最後の充電は、外部電源電力により遂行される。なお、この双方向昇降圧DCDCコンバータにより、イオン放出中の電気二重層電極ペアからイオン吸着中の電気二重層電極ペアへの送電は、吸収式熱発生装置だけでなく、その他の脱塩装置やイオン移動装置や脱イオン装置などに適用することもできる。
【0036】
(変形態様3)
DLC内蔵型のセルすなわち吸収蒸発タンクの熱を直列に移動させる吸収式熱発生装置の変形態様を図5、図6を参照して説明する。この態様は、図3に示す吸収蒸発タンク91と同じ構造の吸収蒸発タンク90A〜90Dを一列に配置し、各タンク間を熱交換器112〜114で直列に熱授受可能としたものである。先頭の吸収蒸発タンク90Aは第1の外部熱源(図示せず)と熱交換器111とにより熱授受し、最後の吸収蒸発タンク90Dは第2の外部熱源(図示せず)と熱交換器111とにより熱授受している。
吸収蒸発タンク90A〜90Dには、DLCを構成する電極ペア110がそれぞれ内蔵されている。電極ペア110は、図4に示される互いに対面する一対の電極941、942により構成されている。奇数番目の吸収蒸発タンク90A、90Cの電極ペア110は直列接続されて図略の第1電源回路から給電され、偶数番目の吸収蒸発タンク90B、90Dの電気二重層電極ペア110は直列接続されて図略の第2電源回路から給電されている。本発明で言う駆動回路を構成する第1電源回路及び第2電源回路は、図4に示す電源100により構成されることができる。この場合、第1電源回路は電源100の第1端子対101、102により構成され、第2電源回路は電源100の第2端子対103、104により構成される。121〜124は開閉弁である。弁121は吸収蒸発タンク90Aと90Bとを接続し、弁122は吸収蒸発タンク90Bと90Cとを接続し、弁123は吸収蒸発タンク90Cと90Dとを接続し、弁124は吸収蒸発タンク90Dと90Aとを接続している。
【0037】
次に、動作を説明する。電極ペア110がイオン吸着しない同温度条件にて、吸収蒸発タンク90Aのイオン濃度はその飽和溶解度の60%、吸収蒸発タンク90Bのイオン濃度はその飽和溶解度の50%、吸収蒸発タンク90Cのイオン濃度はその飽和溶解度の40%、吸収蒸発タンク90Dのイオン濃度はその飽和溶解度の30%とされていると仮定する。
(動作モードA)
図5は、吸収蒸発タンク90Aから90Bに、吸収蒸発タンク90Cから90Dに冷媒蒸気を移送する動作モードAを示す。弁121、123は開き、弁122、124は閉じられる。吸収蒸発タンク90Aの電極ペア110には直流電圧が印加されて濃度は40%となる。吸収蒸発タンク90Aの電極ペア110には直流電圧が印加されて濃度は20%となる。吸収蒸発タンク90B、90Cの電極ペア110には電圧は印加されない。その結果、吸収蒸発タンク90Aから吸収蒸発タンク90Bに溶媒蒸気が流れ、吸収蒸発タンク90cから吸収蒸発タンク90Dに溶媒蒸気が流れる。溶媒蒸気吸収側の吸収蒸発タンクは熱交換器を通じて隣接する溶媒蒸気放出側の吸収蒸発タンクに凝縮熱を伝達する。
(動作モードB)
図6は、吸収蒸発タンク90Bから90Cに冷媒蒸気を移送する動作モードBを示す。弁121、123、124は閉じ、弁122が開かれる。吸収蒸発タンク90Bの電極ペア110には直流電圧が印加されてイオン濃度は50%から30%となる。吸収蒸発タンク90Cの電極ペア110は短絡される。吸収蒸発タンク90Cのイオン濃度は40%であるので、吸収蒸発タンク90Bから吸収蒸発タンク90Cに溶媒蒸気が流れる。溶媒蒸気吸収側の吸収蒸発タンクは熱交換器を通じて隣接する溶媒蒸気放出側の吸収蒸発タンクに凝縮熱を伝達する。
【0038】
上記した動作モードA、Bを繰り返すことにより、最初の吸収蒸発タンク90Aの溶媒(たとえば水)は、最終の吸収蒸発タンク90Dに送られる。熱交換器111、115は必要に応じて運転される。その結果として、吸収蒸発タンク90A、90D間のイオン濃度差を大きくすることができる。
(動作モードC)
次に、弁121〜123を閉じ、蒸気流量制御弁である弁124を必要量だけ開く。これにより、吸収蒸発タンク90Dから吸収蒸発タンク90Aに溶媒蒸気が流れる。冷房モードでは、吸収蒸発タンク90Dは熱交換器115を通じて外部の冷水から熱を吸収し、吸収蒸発タンク90Aは熱交換器111から外部の冷却水に熱を放熱する。この多段直列接続方式を採用すると、吸収蒸発タンク90Aと90Dとの間のイオン濃度差が大きいために熱交換器111、115の間の温度差を増大することができる。つまり、上記した動作モードA、Bを少なくとも一回実施した後、動作モードCを行うことにより、高い温度落差を得ることができる。
【0039】
(変形態様4)
DLC内蔵型のセルすなわち吸収蒸発タンクの熱を直列に移動させる吸収式熱発生装置の例を図7を参照して説明する。この実施形態は、図1に示す外部熱交換器5,6を省略し、四方弁9,10を切り換えダンパに変更し、ポンプ7,8を図略のファンに変更した点にその特徴がある。図示を簡単とするため、セル1、2中のDLC13、14及び電解液Lの図示は省略する。図1に示す熱交換器3、4は、金属製のセル1、2の壁面により構成されている。図7において、21、22は、外気(第1外部流体)を熱交換器3、4の一方に切り換えるダンパ(第1外部流体ダンパ)である。23、24は、室内気(第2外部流体)を熱交換器3、4の他方に切り換えるダンパ(第2外部流体ダンパ)である。ダンパ21〜24は本発明で言う流路切換装置を構成している。ダンパ21は、外気流入管路27から入った外気を、セル1を包む管路である熱交換器3と、セル2を包む管路である熱交換器4との一方に送る。ダンパ22は、熱交換器3及び熱交換器4の一方から出た外気を外気排出管路28に送る。ダンパ23は、室内気流入管路29から入った室内気を、熱交換器3及び熱交換器4の他方に送る。ダンパ24は、熱交換器3及び熱交換器4の他方から出た室内気を室内気送出管路30に送る。これらの空気流切り換え用のダンパ21〜24は、制御部12により制御される。
【0040】
第1運転モードの動作を説明する。ダンパ21〜24は図7に示す実線状態となっている。つまり、外気は熱交換器3に送られ、室内気は熱交換器4に送られる。駆動回路11は、セル1内のDLC13に所定値(たとえば1.2〜2V)の直流電圧を印加して、DLC13を充電している。これにより、セル1の電解液Lに含まれる正負のイオンがDLC13に吸着され、セル1の電解液Lは低濃度となり、その沸点が低下する。その結果、セル1の電解液Lの溶媒(ここでは水)は、熱交換器3から潜熱を吸収して水蒸気となり、蒸気管(破線図示)を通じてセル2に送られる。室内気は熱交換器3により冷却されて室内に送られる。駆動回路11は、DLC14に0Vの電圧を電圧を印加し、DLC14の一対の電極を短絡している。これにより、DLC14は放電され、DLC14の電極に吸着された正負のイオンが電解液Lに放出され、電解液Lは高濃度となり、その沸点が上昇する。その結果、セル2の電解液Lは、水蒸気を吸収して凝縮熱を発生し、熱交換器4内の冷却水はこの凝縮熱を吸収して高温となって、外部熱交換器6から外気に放熱される。
【0041】
次に、第2運転モードの動作を説明する。セル1のDLC13のイオン吸着がほぼ飽和し、セル2のDLC14からのイオン放出がほぼ終了した時点で、駆動回路11は、セル1のDLC13への印加電圧をほぼ0として、DLC13の一対の電極を短絡する。また、駆動回路11は、セル2のDLC13に所定値(たとえば1.2〜2V)の直流電圧を印加して、DLC13を充電する。これとほぼ同時に、ダンパ21〜24を破線位置に切り換える(図9参照)。これにより、セル1が高温となり、セル2が低温となる。セル1の熱は、熱交換器3を通じて外気に伝達され、セル2の冷熱は熱交換器4を通じて室内気に伝達される。この実施形態は、実施例1の四方弁をダンパに変更した他は、実施例1と同じ動作をする。ただし、装置構成は大幅に簡素となる。ダンパ21、23を共通のアクチエータで駆動し、ダンパ22、24を共通のアクチエータで駆動することにより、更に装置構成を簡素化することができる。
【0042】
(変形態様5)
電解液及びDLC13A、13B、13Cを個別に収容する3つの小セルによりセル1を構成し、電解液及びDLC14A、14B、14Cを個別に収容する3つの小セルによりセル2を構成した例を図8に示す。DLC13A、13B、13Cは直列接続されて駆動回路11により駆動される。DLC14A、14B、14Cは直列接続されて駆動回路11により駆動される。これにより、図4と同様に、駆動回路の出力電流を低減することができる。
【0043】
(変形態様6)
図8に示すセル1、2を駆動する駆動回路11の一構成例を図9を参照して説明する。駆動回路11は、双方向DCDCコンバータ11A、11Bと、降圧型の双方向DCDCコンバータ11A、11Bに直流電源電圧を印加する電源100とからなる。双方向DCDCコンバータ11Aは、直列接続されたDLC13A、13B、13Cに直流電圧を出力する。DLC13A、13B、13Cには、2乃至3個の接合ダイオードDを直列接続してなるダイオード回路がそれぞれ並列接続されている。双方向DCDCコンバータ11Bは、直列接続されたDLC14A、14B、14Cに直流電圧を出力する。DLC14A、14B、14Cには、2乃至3個のダイオードDを直列接続してなるダイオード回路がそれぞれ並列接続されている。
次に、この駆動回路11の動作を説明する。まず、DLC13A、13B、13Cを充電することによりセル1をイオン吸着モードとし、DLC14A、14B、14Cを放電することによりセル2をイオン放出モードとする第1運転モードを説明する。第1運転モードの初期において、DLC14A、14B、14Cは充電状態となっている。このため、双方向DCDCコンバータ11Bを逆送電モードで駆動して、DLC14A、14B、14Cの蓄電電力を電源100に送り、それらを放電する。同時に、双方向DCDCコンバータ11Aを順送電モードで駆動して、電源100からDLC13A、13B、13Cを充電する。これにより、DLC14A、14B、14Cの蓄電電力の大部分を電源100に回収することができる。これにより、セル1のイオン濃度は低下して蒸発が生じ、セル2のイオン濃度が増加して凝縮が生じる。
【0044】
次に、DLC13A、13B、13Cを放電することによりセル1をイオン放出モードとし、DLC14A、14B、14Cを充電することによりセル2をイオン吸着モードとする第2運転モードを説明する。第2運転モードの初期において、DLC13A、13B、13Cは充電状態となっている。このため、双方向DCDCコンバータ11Aを逆送電モードで駆動して、DLC13A、13B、13Cの蓄電電力を電源100に送り、それらを放電する。同時に、双方向DCDCコンバータ11Bを順送電モードで駆動して、電源100からDLC14A、14B、14Cを充電する。これにより、DLC13A、13B、13Cの蓄電電力の大部分を電源100に回収することができる。これにより、セル1のイオン濃度は低下して蒸発が生じ、セル2のイオン濃度が増加して凝縮が生じる。なお、この駆動回路は、吸収式熱サイクル装置だけでなく、逆動作する2つの電気二重層キャパシタをもつ種々のイオン吸着装置たとえば脱塩装置、脱イオン装置、イオン移動装置などにおいても採用することができる。つまり、双方向DCDCコンバータ11A、11Bの逆送電により、イオン放出のためのキャパシタの放電時にキャパシタの蓄電電圧が均衡電圧未満と半分以下となるまでキャパシタの蓄電電力エネルギーを電源側に回収することが可能となる。
降伏電圧が約0.75Vのシリコン接合ダイオードがダイオードDとして好適に採用される。これにより、大きな充電電圧がDLC13(A〜C)、14(A〜C)のどれか一つに印加されて電気分解が生じ、ガスが大量に発生するのを防止することができる。もちろん、ダイオードDとして種々の材料のショットキーダイオードや接合ダイオードを採用することにより、ダイオード回路の降伏(バイパス)電圧を適宜設定することは自由である。
【0045】
(変形態様7)
図8に示すセル1、2を駆動する駆動回路11の他の構成例を図10を参照して説明する。駆動回路11は、単方向のDCDCコンバータ11Cと、互いに直列接続されてDCDCコンバータ11Cから給電される2つのHブリッジ回路31、32により構成されている。Hブリッジ回路31は、上アームのスイッチ311、312と、下アームのスイッチ313、314とをもち、セル1のDLC13を充放電する。Hブリッジ回路32は、上アームのスイッチ315、316と、下アームのスイッチ317、318とをもち、セル2のDLC14を充放電する。各スイッチは低耐電圧のバイポーラトランジスタにより構成されているが、IGBT又はサイリスタなどの他の大電流単方向スイッチでもよい。パワー半導体スイッチング素子としてバイポーラトランジスタやIGBTやサイリスタなどの単方向スイッチは、双方向スイッチとして動作可能なMOSトランジスタよりも大電流を処理できる利点を有している。次に、動作を説明する。
【0046】
(第1モード)
最初に、DLC13は、図10に示すように充電されて多くのイオンを吸着している。キャパシタ14は放電されてイオンを吸着していない。第1モードの最初に、DLC13の蓄積電荷をDLC14に移す電位均衡動作を行う。具体的には、スイッチ312、313、315、318がオンされ、DCDCコンバータ11Cの出力段を通じて電流i1が流れる。一例において、第1モードの最初にDCDCコンバータ11Cの出力電圧を0とすることが好適である。これにより、DLC13、14は直列に短絡される。DLC13のイオンは一部放出され、DLC14は一部のイオンを吸着する。なお、第1モードの最初にDCDCコンバータ11Cは小さい(たとえば0.6V未満)の出力電圧V0を出力してもよい。この場合には、DLC13の蓄電電圧V1と出力電圧V0との合計がDLC14に印加される。その後、DLC13の蓄電電圧V1が減少するので、この減少分だけ、DCDCコンバータ11Cの出力電圧V0を増大させる。これにより、DLC14をほぼ定電圧充電することができ、かつ、DLC13の蓄電電圧をほぼ0Vまで有効に回収することができる。DLC13の蓄電電圧がほぼ0Vとなった時点で、スイッチ311もオンされる。これにより、DLC13の両端電圧は0Vに維持され、DLC14がスイッチ311を通じて充電される。
【0047】
(第2モード)
第1モードの完了により、DLC14は、図10に示すように充電されて多くのイオンを吸着している。DLC13は放電されてイオンを吸着していない。第2モードの最初に、DLC13の蓄積電荷をDLC14に移す電位均衡動作を行う。具体的には、スイッチ311、314、316、317がオンされ、DCDCコンバータ11Cの出力段を通じて電流i2が流れる。一例において、第2モードの最初にDCDCコンバータ11Cの出力電圧を0とすることが好適である。これにより、DLC13、14は直列に短絡される。DLC14のイオンは一部放出され、DLC13は一部のイオンを吸着する。なお、第2モードの最初にDCDCコンバータ11Cが小さい(たとえば0.6V未満)の出力電圧V0を出力してもよい。この場合には、DLC14の蓄電電圧V2と出力電圧V0との合計がDLC13に印加される。その後、DLC14の蓄電電圧V2が減少するので、この減少分だけ、DCDCコンバータ11Cの出力電圧V0を増大させる。これにより、DLC14をほぼ定電圧充電することができ、かつ、DLC14の蓄電電圧をほぼ0Vまで有効に回収することができる。DLC14の蓄電電圧がほぼ0Vとなった時点で、スイッチ318もオンされる。これにより、キャパシタ14の両端電圧は0Vに維持され、DLC13がスイッチ318を通じて充電される。2つのHブリッジを直列接続して駆動回路を構成するこの実施形態によれば、キャパシタ蓄電電力を有効回収できる。また、単方向のDCDCコンバータ11Cを一個採用すればよく、回路構成が簡素となる。その他、第1モードをDLC13が少し逆方向に充電させるまで実施し、第2モードをDLC14が少し逆方向に充電させるまで実施してもよい。
【0048】
(変形態様8)
図10に示すセル1、2を駆動する駆動回路11の他の構成例を図11を参照して説明する。この駆動回路11は、図11に示す2Hブリッジ直列接続型の駆動回路11において、スイッチ315、316を省略した点にその特徴がある。また、図11は、単方向のDCDCコンバータ11Cの具体的な回路例を示している。DCDCコンバータ11Cは、インバータ11A、降圧トランス102、整流ダイオード103、104からなる。インバータ11Aは所定周波数で交流電圧を出力する。降圧トランス102の降圧電圧は、整流ダイオード10により全波整流されて駆動回路11に電源電圧V0として出力される。インバータ101内のスイッチング素子のデユーティ比制御により、DCDCコンバータ11Cの出力電圧は調整される。
図10に示す変形態様7から明らかなように、図10に示すスイッチ313、315は第1モードでオンし、第2モードでオフする。同じく、直列接続されたスイッチ314、316も第2モードでオンし、第1モードでオフする。結局、スイッチ315、316を省略して、スイッチ313、314がスイッチ315、316の機能を兼ねることができる。これにより、駆動回路11の構成を更に簡素化することができる。313、314は本発明で言う中間アーム素子をなす。311、312は上アーム素子、317、318は下アーム素子である。
【0049】
(変形態様9)
図10,図11においてDCDCコンバータ11Cを省略して、6スイッチ型のブリッジ回路である駆動回路11を定電圧の直流電源に直接接続してもよい。この場合、第1モードの最初及び第2モードの最初の期間に、直流電源を駆動回路11から切り離し、駆動回路11の高低の電源入力端子を短絡スイッチで短絡することにより、DLC13、14の電位が略等しくなるまで蓄電状態のキャパシタの蓄電電力を回収することができる。
【0050】
(実施形態2)
本発明のイオン吸着装置の他の実施例を図12〜図16を参照して説明する。この実施例は、電界液の正負のイオンを所定方向へ移動させるイオン移動装置に本発明のイオン吸着装置の原理を用いた実施態様を示す。このイオン移動装置は、正負イオン又は電解液を所定方向へ引きずるイオンポンプとして実施することができる。このイオンポンプは電解液のイオン濃度の変更に用いることができる。図12はこの実施形態のイオン移動装置40の一つの電極列40を示す模式部分平面図である。電極列40は、金属棒40Aの周囲に活性炭40Bを設けた円柱状電極40Cを所定ピッチでX方向へ所定ピッチで平行に配置してなる。各円柱状電極40Cは多孔性樹脂フィルム40D、40Eにより包まれている。多孔性樹脂フィルム40D、40Eはイオンを自由に透過させる。このイオン移動装置は、図13に示すように電極列40と同じ構造をもつ電極列41〜44をY方向へ所定ピッチで繰り返し配列してなる。奇数番目の電極列41、43は、偶数番目の電極列42、44に対してX方向へ円柱状電極40Cのピッチの半分だけずれている。電極列41、43は、互いに反対の電位変化を行う。つまり、電極列41、43はキャパシタ13の一対の電極を構成している。電極列42、44は、互いに反対の電位変化を行う。つまり、電極列42、44はキャパシタ14の一対の電極を構成している。
【0051】
次に、このイオン移動装置の4相イオン移動動作を図13〜図16を参照して説明する。ただし、図13〜図16において、各電極列41〜44の+電位と−低電位とは電極列間の相対的な電位であり、低電位−は電解液電位より負であることを意味していないことに留意されたい。
(第1モード)
T1期間に実施される第1モードを図13に示す。図13では、電極列41は+電位、電極列43は−電位をもつ。電極列42は+電位から−電位に変化し、電極列44は−電位から+電位に変化する。その結果、電極列42に吸着していた−イオンは電極列41に吸着され、電極列44に吸着していた+イオンは電極列43に吸着される。その後、電極列44の電位が十分に増大すると電極列41に吸着していた負イオンは電極列44に分散し、電極列42の電位が十分に低下すると電極列43に吸着していた正イオンは電極列43に分散する。
【0052】
(第2モード)
T2期間に実施される第2モードを図14に示す。図14では、電極列44は+電位、電極列42は−電位をもつ。電極列41は+電位から−電位に変化し、電極列43は−電位から+電位に変化する。その結果、電極列41に吸着していた−イオンは電極列44に吸着され、電極列43に吸着していた+イオンは電極列42に吸着される。その後、電極列41の電位が十分に低下すると電極列42に吸着していた+イオンは電極列41に分散し、電極列43の電位が十分に増大すると電極列44に吸着していた負イオンは電極列43に分散する。
(第3モード)
T3期間に実施される第3モードを図15に示す。図15では、電極列41は−電位、電極列43は+電位をもつ。。電極列42は−電位から+電位に変化し、電極列44は+電位から−電位に変化する。その結果、電極列42に吸着していた+イオンは電極列41に吸着され、電極列44に吸着していた−イオンは電極列43に吸着される。その後、電極列42の電位が十分に増大すると電極列43に吸着していた負イオンは電極列42に分散し、電極列44の電位が十分に低下すると電極列41に吸着していた正イオンは電極列44に分散する。
【0053】
(第4モード)
T4期間に実施される第4モードを図16に示す。図16では、電極列42は+電位、電極列44は−電位をもつ。電極列43は+電位から−電位に変化し、電極列41は−電位から+電位に変化する。その結果、電極列43に吸着していた−イオンは電極列42に吸着され、電極列41に吸着していた+イオンは電極列44に吸着される。その後、電極列43の電位が十分に低下すると電極列44に吸着していた+イオンは電極列43に分散し、電極列41の電位が十分に増大すると電極列42に吸着していた負イオンは電極列41に分散する。各電極列41〜44の電位変化を図17に示すタイミングチャートに示す。結局、この実施形態のイオン移動装置は、4相クロック電圧により駆動されることがわかる。したがって、4相クロック電圧を低インピーダンスかつ低損失で発生することができれば、このイオン駆動装置は正負のイオンをY方向へ移動することができる。この4相駆動回路の一例を図18に示す。図18は、それぞれ相補動作する4つのインバータ回路からなる4相クロック回路である。各インバータ回路の上アーム素子と下アーム素子とは逆動作する。つまり、簡単な回路により、この実施形態の4相駆動を実現することができる。電気二重層キャパシタであるこの実施形態のキャパシタ13、14は既述した図9に示す2つの双方向DCDCコンバータ11A、11Bにより駆動されることができる。これにより、充電されたキャパシタの蓄電電力を有効に回収することができる。同じく、この実施形態のキャパシタ13、14を図10〜図11に示すDCDCコンバータにより駆動することも可能である。
【0054】
(変形態様1)
この実施形態の4相駆動(2キャパシタ駆動)型イオンポンプの変形態様を図19を参照して説明する。この態様は、図13の電極列41〜44の形状を変更した点にその特徴がある。図19において、50は電気絶縁樹脂材料におり形成された4つの隔壁、51は電解液が充填された3つのイオンチャンネルである。隔壁50は互いに平行にY方向に延設され、イオンチャンネル51は隔壁50に区画されてY方向に延存している。隔壁50の一側面に電極列41、43がY方向へ交互に設けられている。隔壁50の他側面に電極列42、44がY方向へ交互に設けられている。電極列41、43と電極列42、44とは小間隔を隔てて対面している。ただし、電極列41、43は電極列42、44に対して、半電力ピッチだけずれて配置されている。この態様の電極列41〜44は図13〜図16に示す電極列41〜44と同様に4相クロック電圧により駆動されることができる。すなわち、この態様においても、電極列41、43からなるキャパシタ13と、電極列42、44からなるキャパシタ14とを駆動することにより、正負のイオンを一方向へ移動することができる。
【0055】
(実施形態3)
実施形態2のイオン移動装置を再生器として用いる吸収式冷凍サイクル装置を図20を参照して説明する。この吸収式冷凍サイクル装置は、実施形態2で説明したイオン移動装置70、高濃度槽に相当する吸収タンク71、低濃度槽に相当する蒸発タンク72、蒸気流量制御用の弁73、弁74〜75、弁85〜86、ポンプ76、放熱熱交換器77をもつ。78は吸収タンク71と弁74とを接続する配管、79は蒸発タンク72と弁75とを接続する配管、80はポンプ76とイオン移動装置70の流入口とを連通する配管、81は弁85と吸収タンク71とを連通する配管、82は弁86と蒸発タンク72とを連通する配管である。83は吸収タンク71を放熱する熱交換器、84は蒸発タンク72に熱を与える熱交換器である。各弁は比例弁でも開放弁でもよい。この装置の動作を図20を参照して説明する。蒸発タンク72内の吸収液(電解液)として、水酸化カリウム水溶液や水酸化アンモニウム水溶液などのアルカリ水溶液が好適であるが、その代わりにたとえば臭化リチウム水溶液などの電解性の塩水溶液を採用してもよい。吸収タンク71にはイオン濃度が高い電解液が存在し、蒸発タンク72にはイオン濃度が低い電解液が存在する。
【0056】
(熱発生動作)
弁73を開くと、沸点差により蒸発タンク72から吸収タンク71に蒸気(ここでは水蒸気)が流れる。これにより蒸発タンク72内の液が加熱され、熱交換器83から熱が外部に送られる。また、吸収タンク71内の液が冷却され、熱交換器84は外部から熱を吸収する。
(吸収タンク71から蒸発タンク72への低濃度液移送動作)
次に、吸収タンク71から蒸発タンク72への低濃度液移送動作を説明する。これは、実質的に蒸発タンク72から吸収タンク71へのイオンの選択的な移送動作と考えることもできる。弁74、86を開き、弁75、85を閉じ、ポンプ76を運転する。イオン移動装置70は、実施形態2で説明したように配管80から流入する高濃度液からイオンを吸着して上流側に送る。これにより、イオン移動装置70から出た低濃度液が熱交換器77により冷却された後、蒸発タンク72に送られる。次に、弁86を閉じ、弁85を開き、イオン移動装置70の各電気二重層電極を放出モードとする。これにより、イオン移動装置70内の各電気二重層電極に吸着されたイオンは、高濃度液に放出され、配管81を通じて吸収タンク71に戻る。これにより、吸収タンク71のイオン濃度が増大する。
【0057】
(蒸発タンク72から吸収タンク71へのイオン移送動作)
次に、蒸発タンク72から吸収タンク71へのイオン移送動作を説明する。上記した吸収タンク71から蒸発タンク72への低濃度液の移送を継続すると、蒸発タンク72でのイオン濃縮が生じる。そこで、定期的に又は蒸発タンク72のイオン濃度の増大検出により、蒸発タンク72から吸収タンク71へのイオン移送を行う。まず、弁74、85を閉じ、弁75、86を開き、ポンプ76を運転する。イオン移動装置70は、実施形態2で説明したように配管80から流入する高濃度液からイオンを吸着して上流側に送る。これにより、イオン移動装置70から出た低濃度液が蒸発タンク72が熱交換器77により冷却された後、蒸発タンク72に送られる。次に、弁75、86を閉じ、弁74、85を開き、イオン移動装置70の各電気二重層電極を放出モードとする。これにより、イオン移動装置70内の各電気二重層電極に吸着されたイオンは、高濃度液に放出され、配管81を通じて吸収タンク71に戻る。これにより、蒸発タンク72のイオンは吸収タンク71に戻される。
ただし、図20において、弁73を開いて蒸発タンク72から吸収タンク71への熱移動動作を行っている場合には、蒸発タンク72が低温となり、吸収タンク71が高温となっている。このため、上記した吸収タンク71からイオン移動装置70を通じての液移動動作、及び、上記した蒸発タンク72からイオン移動装置70を通じての吸収タンク71へイオン移動動作は、上記熱移動動作とは異なる時間に行うことが好ましい。これにより、熱損失を低減することができる。
【0058】
(変形態様1)
図20では、吸収タンク71のイオン濃度を増大させる吸収液再生動作と、蒸発タンク72のイオン濃度減少動作とを一つのイオン移動装置70により交互に行った。明らかに、これら2つの動作は互いに独立した動作であるので、別々のイオン移動装置により行うことができる。別々のイオン移動装置により上記2つの動作を別々に行う実施形態を図21を参照して以下に説明する。図21において、吸収タンク71のイオン濃度を増大させる吸収液再生動作を行う第1イオン移送系と、蒸発タンク72のイオン濃度減少動作を行う第2イオン移送系とが設けられる。第1イオン移送系は、ポンプ76Aと、イオン移動装置70Aと、弁85A、86Aとからなる。第2イオン移送系は、ポンプ76Bと、イオン移動装置70Bと、弁85B、86Bとからなる。弁73を通じて蒸発タンク72から吸収タンク71への溶媒蒸気としてのたとえば水蒸気の輸送による熱移動動作は、図20と同じである。吸収タンク71内の吸収液(高濃度液)の再生動作は次のように行われる。
【0059】
まず、弁86Aを開き、弁85Aを閉じ、ポンプ76Aを運転する。イオン移動装置70Aに流入した高濃度液のイオンは、イオン移動装置70A内の電気二重層電極に吸着され、低濃度液がイオン移動装置70Aから弁86Aを通じて蒸発タンク(低濃度槽)72に送られる。イオン移動装置70A内の電気二重層電極にイオンが蓄積したら、弁86Aを閉じ、弁85Aを開き、ポンプ76Aを運転し、イオン移動装置70A内の各電気二重層電極を短絡して、各電気二重層電極に蓄積されたイオンを電解液に放出し、この電解液を吸収タンク71に戻す。なお、ポンプ76Aを弁側すなわち、イオン移動装置70Aの下流側に設ける場合、弁85Aを省略することも可能である。これは、イオン移動装置70Aが実施形態3で説明した進行静電界型イオン移動機構であるため、イオン移動装置70Aの各電気二重層電極に吸着されるイオンは、順番に吸収タンク71側に逆送されるためである。蒸発タンク72内の蒸発液(低濃度液)の再生動作すなわちイオン除去動作は次のように行われる。まず、弁86Bを開き、弁85Bを閉じ、ポンプ76Bを運転する。イオン移動装置70Bに流入した低濃度液のイオンはイオン移動装置70B内の電気二重層電極に吸着される。更に低濃度となった低濃度液がイオン移動装置70Bから弁86Bを通じて蒸発タンク(低濃度槽)72に送られる。イオン移動装置70B内の電気二重層電極にイオンが蓄積したら、弁86Bを閉じ、弁85Bを開き、ポンプ76Bを運転し、イオン移動装置70B内の各電気二重層電極を短絡して、各電気二重層電極に蓄積されたイオンを電解液に放出し、この電解液を吸収タンク71に戻す。なお、深夜を除く期間に上記熱の発生が行われて空調空気の温度調整又は冷却熱の発生が実施され、深夜において安価な深夜電力を用いて、上記吸収液の再生が行われることができる。このようにすれば、吸収液の再生において、高濃度液と低濃度液との温度差がほとんど生じないため、熱エネルギーの無駄を減らすことができる。ただし、上記熱の発生モードにおいて高濃度液のイオン濃度の低下があるしきい値を超えた場合には、熱移動動作中に吸収液(高濃度液)の再生を行っても良い。
【0060】
(実施形態4)
DLC(電気二重層キャパシタ)を用いる本発明のイオン吸着装置を用いる回転ディスク式の海水脱塩装置を図22〜図25を参照して説明する。図22は軸心Mと直角方向における模式径方向部分断面図、図23は軸心Mと平行方向における模式軸方向部分断面図である。この海水脱塩装置60は、上端開口の水槽61と、多段回転ディスク装置62とを有する。水槽61は、底面から立設される隔壁61Aをもつ。多段回転ディスク装置62は、図略のモータにより低速で間欠回転される大径の回転軸63と、回転軸63に軸方向所定ピッチ(たとえば10〜200mm)で固定された多数のディスク64とをもつ。隔壁61Aの水平なX方向中央は軸心Mの直下に位置している。隔壁61Aは、各ディスク64がほとんど接触することなく個別に収容された多数の溝をもつ。
隔壁61Aの上面SUは、軸心Mを中心として回転軸63の外径よりわずかに大きい径の部分円筒面の形状をもつ。これにより、隔壁61Aの上面SUと回転軸63の外周面との間には非常に小さい径方向ギャップGUが設けられる。隔壁61Aの溝底面SLは、ディスク64の外径よりわずかに大きい径の部分円筒面の形状をもつ。これにより、部分円筒面である隔壁61Aの溝底面SLとディスク64の外周面との間には非常に小さい径方向ギャップGLが設けられる。隔壁61Aの各溝の側面SSは、小さい軸方向ギャップGAを挟んでディスク64の側面に対面している。これらのギャップSU、SL、SSはできるだけ小さく(たとえば0.1mm以下)される。これにより、水槽61は、隔壁61A及び多数のディスク64により、海水が収容される海水室65と、脱塩水が収容される脱塩室66とに区画されている。更に、ギャップSU、SL、SSに面する隔壁61Aの表面は多数の細毛をもち、これら細毛は、ギャップSU、SL、SSを通じての海水室65と脱塩室66との間の液移動を抑止する。電気絶縁性の細毛は撥水加工されていることが好適である。この液移動を低減するために、回転軸63の回転速度を小さくすることが好適である。
【0061】
奇数番目のディスク64の表面形状の一例を図24に示す。図24では、合計8枚の活性炭電極671〜678がディスク64の表面に周方向所定ピッチで固定されている。活性炭電極671〜678は、扇形に形成されて放射状に配置されている。もちろん、一枚のディスク64の一つの表面に更に多く(たとえば32個)の活性炭電極67を設けても良い。活性炭電極671〜678の表面には、細毛との接触による摩耗、破損を防止するために、耐摩耗性の多孔膜が形成されている。偶数番目のディスク64は、図25に示すように、接地された1個の輪板状の活性炭電極670をもつ。これにより、偶数番目のディスク64の輪板状の活性炭電極と、奇数番目のディスク64の活性炭電極671〜678とは合計8個のDLCを構成する。これらのDLCは、活性炭電極671〜678の電位をたとえば+2Vとすることにより充電されてイオン吸着し、活性炭電極671〜678の電位を輪板状の活性炭電極と同じ接地電位とすることにより放電されてイオンを放出する。
【0062】
この装置の動作を以下に説明する。多段回転ディスク装置62は、図22に示すように、ディスク64の上部が海水室65から脱塩室66に向かう方向にゆっくりとかつ完結的に回転する。奇数番目のディスク64の活性炭電極671〜678のうち、脱塩室66に面する活性炭電極には+電位が与えられる。これにより、脱塩室66に面する活性炭電極と偶数番目のディスク64の輪板状の活性炭電極とが構成するDLCが脱塩室66の正負イオンを吸着する。回転軸63の回転により、イオンを吸着した活性炭電極は、隔壁61Aの間の溝を通じて海水室65に移動する。海水室65に達した奇数番目のディスク64の活性炭電極には接地電位が与えられ、この活性炭電極と輪板状の活性炭電極とにより構成されるDLCが放電され、正負イオンが海水に放出される。その結果、脱塩室66内の海水の濃度が低下する。つまり、奇数番目のディスク64の8つの活性炭電極671〜678を海水室65で接地し、脱塩室66で+電位(−電位でもよい)とすることより、脱塩室66のイオン濃度を低減することができる。各電気二重層キャパシタへの電圧印加や短絡は、既述したDCDCコンバータにより行うことができる。
【0063】
(変形態様1)
海水室65と脱塩室66との間に中間室68を設けた変形例を図26に示す。隔壁61Aが海水室65と中間室68と間に設けられ、多段回転ディスク装置62Aが隔壁61Aの上に配置されている。隔壁61Bが中間室68と脱塩室66との間に設けられ、多段回転ディスク装置62Bが隔壁61Bの上に配置されている。多段回転ディスク装置62Aの回転により、中間室68は海水室65よりも低いイオン濃度をもち、多段回転ディスク装置62Bの回転により、脱塩室66は中間室68よりも低いイオン濃度をもつ。複数の中間室68及び複数の多段回転ディスク装置62を海水室65と脱塩室66との間に直列配置してもよい。これにより、脱塩性能を更に向上することができる。この電気二重層キャパシタに給電する電源として低電圧の太陽電池を用いることも可能である。
【0064】
(実施形態5)
上記した各実施形態において、本質的にDLC列からなるイオン吸着装置を駆動する駆動回路は、DCDCコンバータ、特に好適には双方向DCDCコンバータにより放電損失を減らしつつ駆動されることができる。しかしながら、数万〜数十万Aといった大電流が通電される大型のDLC型の吸収式熱発生装置や海水脱塩装置において、DCDCコンバータの製造コストが装置価格を増大させるという問題がある。この実施形態では、本質的に一般の直流モータに設けられるブラシ整流機構であるロータリーインバータにより駆動回路を構成することにより簡素で安価な駆動回路を実現する。ここで言うロータリーインバータとは、ブラシと整流子片との相対回転により出力電圧の大きさを定期的に切り換える装置を言う。電気二重層キャパシタに給電するロータリーインバータのブラシと整流子片とは同じ材料で構成されることが好適である。これは、このロータリーインバータの出力電圧が非常に低電圧であるので、ロータリーインバータのブラシと電極層との間の整流電圧損失を低減する必要があることが特に重要なためである。好適には、ブラシ(固定側端子)及び電極層(回転側端子)は、摺動損失が小さい黒鉛を主成分とする。黒鉛に銅粉を混入してもよい。他例において、ブラシ(固定側端子)及び電極層(回転側端子)は、たとえば銅とされる。ロータリーインバータ自体は公知であり、たとえば直流モータの整流子機構として用いられている。しかし、DLCの定期充放電にロータリーインバータを採用することは、次の点で有利である。まず、DLCに印加する電圧が小さく(単段で2V以下)、かつ、DLCが容量負荷であるためロータリーインバータが火花を生じて摩耗することが無い。これに対して、直流モータの整流子機構はインダクタンス負荷の電流を断続するため、火花を生じ摩耗が生じる。次に、DLCは、充電終期に活性炭電極のイオン吸着が激減し、放電の終期に活性炭電極のイオン放出が激減するので、充電終期及び放電終期の電流が非常に小さくなる。これに対して、ロータリーインバータでは、ブラシと整流子片との接触面積は、充電の終期及び放電の終期に小さくなり、その接触抵抗値が著しく増大する。しかし、DLCの充電終期及び放電終期の電流が小さいため、充電終期及び放電終期におけるロータリーインバータの電圧降下損失を低減することができる。従来のDLC技術において、ロータリーインバータの上記利点については知られていなかった。
【0065】
実施例4のDLCと本質的同じ構造をもつ図27の回転型DLCを駆動するのに好適な駆動回路としてのロータリーインバータを図28、図29を参照して説明する。図27はDLC型海水脱塩装置をなす多段回転ディスク装置の模式軸方向半断面図であり、図28はロータリーインバータの模式軸方向断面図であり、図29は図27の装置のブロック回路図である。670は偶数番目のディスク64に設けられた輪板状の活性炭電極、671〜678は奇数番目のディスク64に周方向へ配列された扇状の活性炭電極である。活性炭電極670と活性炭電極671〜678とは合計8つの電気二重層キャパシタC1〜C8を構成している。
【0066】
図28、図29に示すロータリーインバータ7は、ブラシ71、72と、回転する整流子片731〜737とをもつ。整流子片731〜737は、図27に示す多段回転ディスク装置62の回転軸63の一端部に嵌着された樹脂ディスク70に周方向一定ピッチで固定されている。樹脂ディスク70は8個の扇形孔をもち、扇形に形成された8つの整流子片731〜737はこの扇形孔に個別に嵌められている。扇形に形成された2個のブラシ71は樹脂ディスク70の表面と裏面とにそれぞれ密着している。扇形に形成された2個のブラシ72は樹脂ディスク70の表面と裏面とにそれぞれ密着している。ブラシ71、72は、180度離れて配置されている。ブラシ71には正電位(たとえば+2V)が印加され、ブラシ72は接地されている。整流子片731〜737は、活性炭電極671〜678に個別に接続されている。輪板状の活性炭電極670は図略のブラシ及び輪板状整流子片を通じて接地されている。
多段回転ディスク装置62及び樹脂ディスク70が固定された回転軸63を回転させると、ブラシ71、72は8つの整流子片731〜737に順次接触し、8つの活性炭電極671〜678の一部に正電位を印加し、他の一部に接地電位を印加する。ブラシ71、72に接触しない残りの活性炭電極は浮遊電位状態となる。図29に示す状態では、整流子片732、733に+電位が印加され、整流子片736、737に接地電位が印加される。ブラシ71は脱塩室66の活性炭電極に+電位を印加する角度位置に配置され、ブラシ72は海水室65の活性炭電極に接地電位を印加する角度位置に配置されている。これにより、このロータリーインバータ7は、実施例4の海水脱塩装置に必要な8相の電圧を発生して、これらの8相の電圧を8つの活性炭電極671〜678に個別に印加することができる。
【0067】
(変形態様1)
図29のロータリーインバータ7に浮遊電位ブラシ74、75を増設した変形態様を図30を参照して説明する。奇数番目のディスク64には16個の扇形の活性炭電極671〜686(681〜686は図示せず)と、扇形の整流子片731〜746(741〜746は図示せず)が設けられている。正電位のブラシ71は、整流子片743、744に接している(図示せず)。接地電位のブラシ72は、整流子片735、736に接している。浮遊電位ブラシ74、75は短絡線76により短絡されている。図30の状態にて、正電位のブラシ71に接する整流子片743、744に接続される電気二重層キャパシタC13、C14(図示せず)は充電され、脱塩室66にてイオンを吸着する。ブラシ72に接する整流子片735、736に接続される電気二重層キャパシタC5、C6は放電され、海水室65にてイオンを放出する。脱塩室66から海水室65に向かう途中の電気二重層キャパシタC1、C2と、海水室65から脱塩室66に向かう途中の電気二重層キャパシタC9〜C10は浮遊電位ブラシ74、75により短絡され、これにより、電気二重層キャパシタC1、C2の蓄電電荷の半分は電気二重層キャパシタC9、C10に移動する。これにより、海水室65に入る電気二重層キャパシタは半分だけ放電されるので、ブラシ72による放電は半分でよい。同じく、脱塩室66に入る電気二重層キャパシタは半分だけ充電されているので、ブラシ71(図示せず)による充電は半分でよい。
【0068】
(変形態様2)
実施態様1〜3に用いた電気二重層キャパシタC1、C2の充放電に用いる駆動回路をロータリーインバータにより構成する変形態様を図31、32を参照して説明する。図31はロータリーインバータ8の一面を示す模式側面図、図32はロータリーインバータ8の模式回路図である。ロータリーインバータ8は、電気二重層キャパシタC1、C2を逆位相で充放電を行う。ロータリーインバータ8は、回転軸88に固定された樹脂ディスク80と、この樹脂ディスク80の表面に周方向へ配列された扇形の整流子片81〜84をもつ。整流子片81は+電位が印加され、整流子片82は接地電位が印加されている。浮遊電位の整流子片83、84は短絡線85により短絡されている。扇形のブラシ86はDLC13の一端に接続され、扇形のブラシ87はDLC14の一端に接続されている。DLC13、14の他端は接地されている。ブラシ86、87は180度離れて配置されている。樹脂ディスク80を回転させると、+電位と接地電位がブラシ86、87に交互に印加される。浮遊電位の整流子片83、84がブラシ86、87に接触すると、DLC13、14の電圧が均衡するため、充電状態のDLCから放電状態のDLCに電力を回収することができる。
【0069】
(実施形態6)
図33〜図39を参照してこの実施形態のイオン吸着装置を以下に説明する。ただし、図33〜図39で用いた符号は、図1〜図32で用いた符号とは無関係である。このイオン吸着装置は、外部電源から充電され、外部の負荷に電力を供給するDLC型蓄電装置である。1は電気絶縁性のケース、2は活性炭からなる陽極、3は活性炭からなる陰極、4は陽イオン交換膜、5は陰イオン交換膜、6はDCDCコンバータ、7はコントローラ、8は抵抗器、9はメッシュ状又はニードル状の電位プローブ電極、10は水酸化カリウム水溶液からなる電解液(両イオン性電解質)、11は陰極3とDCDCコンバータ6の一出力端61とを接続する低電位ライン、12は陽極2とDCDCコンバータ6の他出力端62とを接続する高電位ライン、63、64はDCDCコンバータ6の一対の入力端である。ケース1は耐アルカリ性の樹脂容器とされている。放熱性を考慮して金属容器を樹脂被覆して用いてもよい。陽極2及び陰極3は、活性炭電極であるが、内部抵抗を減らすために耐アルカリ性の金属たとえばステンレスメッシュ又はニッケル被覆銅メッシュを集電体として内部に設け、その上端を陽極端子及び陰極端子としている。活性炭の電気抵抗を減らすために、金属ファイバーなどを活性炭に混入したりしてもよい。また、上記集電体を活性炭内に分布する多数の金属細線とし、これら多数の金属細線をその上端で束ねて端子としてもよい。活性炭内に電解液が十分に液が浸透するようにスルフォン化などの処理により活性炭表面を化学修飾してもよく、更に機械強度を向上するためにPTFE粒子などを分散させてもよい。その他、活性炭層をPTFEメッシュなどにより包んでもよい。
【0070】
図33では、3枚の陽イオン交換膜4と3枚の陰イオン交換膜5とが交互に配置され、これによりケース1内は、陽極2を内蔵する1つの陽極室21、陰極3を内蔵する一つの陰極室22、2つの濃度増大室23、3つの濃度減少室24に区画されている。ただし、図33は、原理を示す図であって、実際には必要以上の空間を減らしてコンパクトに形成されている。また、各室の電解液10は、多孔性シートなどに保持されることもできる。
DCDCコンバータ6は、双方向昇降圧チョッパ回路により構成されており、一対の入力端63、64に印加される入力電圧(充電時)と、一対の出力端61、62が出力する出力電圧(充電時)との間の整合を行うため、必要な昇降圧比kをもつ。電位プローブ電極9は、陽極室21及び陰極室22のうち、陽極2及び陰極3近傍の液電位を検出する一対の電極である。電位プローブ電極9が検出した液電位は、それぞれ高抵抗値をもつ抵抗器8を通じてコントローラ7に入力される。
【0071】
コントローラ7による充電制御動作を図35を参照して説明する。陽極2に近接配置された電位プローブ電極9と陽極2との間の電位差ΔVp、及び、陰極3に近接は位置された電位プローブ電極9と陰極3との間の電位差ΔVcの少なくともどちらかが電気分解開始に必要な電圧差ΔVthに達したか否かを判定し、達しない範囲で、充電時に陽極2と陰極3との間の電位をなるべく高くするべく、DCDCコンバータ6の昇降圧比kを調整する。すなわち、DCDCコンバータ6の出力電圧+Vを調整する。電気分解開始に必要な電圧差ΔVthは、予め決定された値であるが、温度やPHの変化や電流量に応じて補正される。まず、電気二重層コンデンサの温度T、陽極室21及び陰極室22のPH及びDCDCコンバータ6の出力電流Iを読み込み、読み込んだこれらのデータとΔVthとの関係を予め記憶するマップにこれらのデータを代入してΔVthを求め、これを次回のΔVthとしてレジスタに登録する。なお、このΔVth補正用のマップは、実験などにより予め求められてコントローラ7のメモリに書き込まれている。これにより、この電気二重層コンデンサ装置に電解液の電気分解が生じて水素ガスや酸素ガスが発生する直前の状態でこれらガスの発生を防止しつつ強力な充電を行うことができる。
【0072】
(変形態様1)
図33に示す陽イオン交換膜4と陰イオン交換膜5との位置を逆に配置してもよい(図34参照)。このようにすると、陽極室21及び陰極室22を濃度減少室24とすることができる。次に、充電終了後のDLCの状態について以下に説明する。充電が終了して、陽極2がDCDCコンバータ6に対して電気的に開放された状態となると、陽極2から負イオンが離れようとするが、陽極2はこの負イオンと静電的に結合していた等価的陽電子を放出できないため、陽極2は負イオンを放出できない。陽極室21に隣接する濃度増大室23は陽イオン交換膜4を通じて陽極室21に陽イオンを一部拡散させるが、これは陽極室21の電位を増大させる。このため、この陽イオンの一部拡散は、陽極室21の電位増大による逆電界により停止する。同様に、充電が終了して、陰極3から陽イオンが離れようとするが、陰極3はこの陽イオンと静電的に結合していた電子を放出できないため、陰極3は陽イオンを放出できない。陰極室22に隣接する濃度増大室23は陰イオン交換膜5を通じて陰極室22に陰イオンを一部拡散させるが、これは陰極室22の電位を低下させる。このため、この陰イオンの一部拡散は、陰極室22の電位減少による逆電界により停止する。つまり、充電終了した状態において、陽極2及び陰極3からの吸着イオンの脱離は、DLCの陽極2と陰極3とを結ぶ外部回路の開放により不能となり、陽極2及び陰極3は、イオン吸着状態を維持し、濃度増大室及び濃度減少室のイオン濃度状態は維持される。電気二重層コンデンサの陽極2と陰極3とを結ぶ外部回路を所定のインピーダンスの負荷で接続すると、DLCの端子電圧とこの負荷のインピーダンスに応じた電流が外部回路に流れ、この電流積分値に応じた電荷量の吸着イオンが陽極2及び陰極3から脱離する。
【0073】
(変形態様2)
上記実施形態では、陽極、陰極及びイオン交換膜は積層構造に構成されたが、これら各部材を巻回構造としてもよい。
(変形態様3)
図33において、陽極2及び陰極3と電位プローブ電極9との間にそれらの直接接触を防ぐ隔壁を設けてもよい。また、電位プローブ電極9を陽極21に隣接する室や、陰極室22に隣接する室に設けてもよい。図34はこの隣接室配置方式の電位プローブ電極9を図示する。当然、この場合には、上記しきい値電圧ΔVthは図1の場合に比べて変更される。
【0074】
(変形態様4)
上記実施形態では、電位プローブ電極9を導電体とし、陽極2と陽極室21内の液との間の電位差、及び、陰極3と陰極室22内の液との間の電位差を、高抵抗の抵抗器8を通じて直接計測したが、高抵抗素子が介在すると、ローパスフィルタ効果により急激な電位変化の検出が遅れるという問題が発生する。この態様では、陽極2とそれに近接する電位プローブ電極9との間、及び、陰極3とそれに近接する電位プローブ電極9との間に、コンデンサを通じて交流電圧を印加したり、ステップ電圧を印加してもよい。また、電位プローブ電極9の表面に誘電膜を設けて上記コンデンサとしてもよい。
【0075】
(変形態様5)
その他、抵抗器8を高入力インピーダンス電圧増幅回路に置換してもよい。陰極3とそれに近接する電位プローブ電極9との間の電位差を高入力インピーダンス電圧増幅回路で検出する回路例を図36に示す。31、32はオペアンプ、r1、rfは抵抗器であり、33はエミッタフォロワ回路、34は電圧増幅回路である。Vcは陰極3の電位、Vxは陰極3近傍の電位プローブ電極9の電位である。このようにすれば、電位プローブ電極9を通じて流れる電流の影響をほとんど回避することができる。また、オペアンプ31、32と陰極3及び電位プローブ電極9との間を接続するラインにアナログスイッチなどを設けることにより、電位差検出を行わない場合には、これらアナログスイッチを開放することにより、電流損失を更に低減することができる。
【0076】
(変形態様6)
図37は、図33に示すDLCを駆動する従来の定電圧電源回路を示す。100はDLC、101は負荷抵抗L、102は直流電源、200はDLC内蔵装置である。直流電源102及び負荷101からなる外部回路と、DLC内蔵200との間の授受電力のすべてはDCDCコンバータ6を通過する。
図38は、この実施形態のDLC内蔵装置に用いる定電圧電源回路を示す。100はDLC、101は負荷抵抗L、102は直流電源である。DCDCコンバータ6の高電位側入力端(充電時)64はDLC100の陽極2及び直流電源102の高電位端に接続され、DCDCコンバータ6の高電位側の出力端(充電時)62はDLC100の陰極3に接続されている。DLC100の低電位側入力端(充電時)63及び低電位側出力端61は直流電源102の低電位端に接続されている。コントローラ7は、DLC内蔵装置200の両端子201、202間の電圧+Vが所定目標値となるようにDCDCコンバータ6を構成する昇降圧チョッパ回路のスイッチング素子のデューティ比をフィードバック制御する。また、既述したように、DCDCコンバータ100内のガス発生を防止するため、陽極2及び陰極3と電位プローブ電極9との間の電位差が所定しきい値を超えないように上記デューティ比を制御する。当然、後者の制御が前者の制御より優先する。つまり、DCDCコンバータ6は、DLC100の充電時及び放電時の端子電圧と直流電源102の端子電圧+Vとの差を補償する。
【0077】
図37、図38のDCDCコンバータ6は、本発明で言う電圧制御装置として、DLCの充電進行に伴う各室の間の濃度差の増大に対抗して、電極界面における電気分解ガスの発生量が許容範囲未満となる所定のしきい電圧値の範囲内で徐々にDLCの端子電圧(上記で言う出力電圧)を増大させる充電制御を行う。また、DCDCコンバータ6は、DLCの放電に伴う各室のイオン濃度差の減少に伴うDLCの端子電圧(上記で言う出力電圧)の低下に応じて、DCDCコンバータ6の入力電圧を直流電源102の端子電圧(所定の定出力電圧値)に変更する放電制御を行う。なお、各室の充電時及び放電時のイオン濃度は、結晶析出及び電気抵抗増大の影響をなるべく回避しつつ各室の液量をなるべく減らすように定めることがコンパクト化の点で好適である。たとえば、濃度増大室のイオン濃度は装置運転温度範囲内にて電解液10の最大イオン濃度値の90%未満とすることが析出防止の点で好適である。同じく、濃度減少室のイオン濃度は電解液10の最大濃度値の10%以上とすることが液の電気抵抗低減の点で好適である。
【0078】
図37のDLC内蔵装置200に対する図38のDLC内蔵装置200の利点は、DCDCコンバータ6を小型化できることである。この点について、図39を参照して以下に説明する。400は蓄電装置、500は蓄電装置内蔵定電圧装置である。蓄電装置400は図38に示すDLC100でもよく、その他のDLCでもよく、バッテリ(二次電池)や燃料電池でもよい。61はDCDCコンバータ6の高電位出力端(充電時)、62はDCDCコンバータ6の高電位出力端(充電時)、63はDCDCコンバータ6の低電位入力端(充電時)、64はDCDCコンバータ6の高電位入力端(充電時)である。高電位出力端62は蓄電装置400の負極端と接続され、蓄電装置400の正極端及びDCDCコンバータ6の高電位入力端64は蓄電装置内蔵定電圧装置500の高電位端201に接続されている。DCDCコンバータ6の端子61、63は蓄電装置内蔵定電圧装置500の低電位端202に接続されている。既述したように、DCDCコンバータ6の出力電圧V2が目標出力電圧+Vと蓄電装置400の端子電圧V1との差に等しくなるように、+Vの値に応じてDCDCコンバータ6をフィードバック制御する。その結果、次の式が成立する。
+V・I=V1・I1+V2・I1
=+V・I2+ I1・V1
【0079】
結局、DCDCコンバータ6を通過する電力は+V・I2となる。たとえば、V1=V2とするとき、DCDCコンバータ6を通過する入出力電力は、蓄電装置内蔵定電圧装置500の入出力電力の半分となる。これにより、DCDCコンバータ6を大幅に小型化することができる。なお、図39において、DCDCコンバータ6は入出力間絶縁型としてもよく、入出力間非絶縁型としてもよい。また、図39において、DCDCコンバータ6を蓄電装置400よりも高電位側に配置してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施形態1のイオン吸着装置を用いる吸収式熱発生装置(吸収式冷凍サイクル装置)の模式ブロック図である。図1は第1運転モードの状態も示す。
【図2】図1の装置の第2運転モードの状態を示す模式ブロック図である。
【図3】実施形態1の変形態様である蓄熱可能な吸収式熱発生装置を示す模式ブロック図である。
【図4】実施形態1の変形態様である直列接続DLCをもつ吸収式熱発生装置を示す模式ブロック図である。
【図5】実施形態1の変形態様である多段熱移動型の吸収式熱発生装置を示す模式ブロック図である。図5は動作モードAの状態も示す。
【図6】実施形態1の変形態様である多段熱移動型の吸収式熱発生装置を示す模式ブロック図である。図6は動作モードBの状態も示す。
【図7】実施形態1の変形態様である切り換えダンパをもつ吸収式熱発生装置のブロック図である。
【図8】実施形態1の変形態様である直列接続DLCをもつ吸収式熱発生装置を示す模式ブロック図である。
【図9】実施形態1のイオン吸着装置である一対のDLCを駆動する駆動回路のブロック回路図である。
【図10】実施形態1のイオン吸着装置である一対のDLCを駆動する駆動回路のブロック回路図である。
【図11】実施形態1のイオン吸着装置である一対のDLCを駆動する駆動回路のブロック回路図である。
【図12】実施形態2のイオン移動装置の電極列を示す部分断面図である。
【図13】図12のイオン移動装置の第1モードを示す模式平面図である。
【図14】図12のイオン移動装置の第2モードを示す模式平面図である。
【図15】図12のイオン移動装置の第3モードを示す模式平面図である。
【図16】図12のイオン移動装置の第4モードを示す模式平面図である。
【図17】図12のイオン移動装置の4相駆動電圧を示すタイミングチャートである。
【図18】図17のイオン移動装置を駆動する4相駆動回路を示す回路図である。
【図19】実施形態2の4相駆動(2キャパシタ駆動)型イオンポンプの変形態様を示す模式平面図である。
【図20】実施形態3の吸収式冷凍サイクル装置を示す模式図である。
【図21】実施形態3の吸収式冷凍サイクル装置の変形態様を示す模式図である。
【図22】実施形態4の回転ディスク式海水脱塩装置の要部を示す径方向断面図である。
【図23】実施形態4の回転ディスク式海水脱塩装置の要部を示す軸方向断面図である。
【図24】実施形態4の回転ディスク式海水脱塩装置の奇数番目のディスクの正面図である。
【図25】実施形態4の回転ディスク式海水脱塩装置の偶数番目のディスクの正面図である。
【図26】実施形態4の変形態様を示す要部径方向断面図である。
【図27】実施形態5の回転型イオン吸着装置の軸方向部分断面図である。
【図28】実施形態5のロータリーインバータの模式軸方向断面図である。
【図29】実施形態5のロータリーインバータのブロック回路図である。
【図30】実施形態5の変形態様であるロータリーインバータを示すブロック回路図である。
【図31】実施形態5の変形態様であるロータリーインバータの一面を示す模式側面図である。
【図32】図31のロータリーインバータ8の模式回路図である。
【図33】実施形態6のイオン吸着装置を用いた蓄電装置の模式縦断面図である。
【図34】実施形態6のイオン吸着装置を用いた蓄電装置の変形態様を示す模式縦断面図である。
【図35】実施形態6の装置の充電制御動作を示すフローチャートである。
【図36】実施形態6の変形態様を示す回路図である。
【図37】実施形態6の変形態様を示す回路図である。
【図38】実施形態6の変形態様を示す回路図である。
【図39】実施形態6の変形態様を示す回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
前記キャパシタをそれぞれ収容する前記セルとしての第1セル及び第2セルと、
前記第1セル及び第2セルを蒸気流通可能に連通する蒸気管と、
第1外部流体及び第2外部流体と前記第1セルとの熱授受を交互に行う第1熱交換器と、
第1外部流体及び第2外部流体と前記第2セルとの熱授受を交互に行う第2熱交換器と、
前記第1、第2熱交換器への前記第1、第2外部流体の供給を定期的に切り換える流路切換装置と、
を備え、
前記駆動回路は、前記流路切換装置による前記第1、第2外部流体の供給切り換えと同期して前記第1、第2セル中の2つのキャパシタの充放電を切り換えて前記第1、第2セルの発熱及び吸熱を交互に実施することにより、前記第1外部流体を連続的に加熱し、かつ、前記第2外部流体を連続的に冷却することを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項2】
前記流路切換装置は、前記蒸気管に設けられて前記第1セルと前記第2セルとの蒸気移動を制御する蒸気バルブを有し、かつ、蓄熱時に前記蒸気バルブを全閉する請求項1記載のイオン吸着装置。
【請求項3】
前記第1外部流体が流れる第1の外部熱交換器と、前記第2外部流体が流れる第2の外部熱交換器とを有し、
前記流路切換装置は、
前記第1の熱交換器と前記第1の外部熱交換器とを接続し、前記第2の熱交換器と前記第2の外部熱交換器とを接続する第1運転モードと、前記第1の熱交換器と前記第2の外部熱交換器とを接続し、前記第2の熱交換器と前記第1の外部熱交換器とを接続する第2運転モードとを所定時間ごとに切り換える請求項1記載のイオン吸着装置。
【請求項4】
前記流路切換装置は、同期して切り換えられる2つの四方弁を有し、前記駆動回路は、前記2つの四方弁の切り換えに同期して前記第1運転モードと前記第2運転モードとを切り換える請求項3記載のイオン吸着装置。
【請求項5】
前記流路切換装置は、
前記第1、第2熱交換器の入り口側と出口側とに配置されて前記第1外部流体を前記第1、第2熱交換器の一方にのみ流す2つの第1外部流体ダンパと、
前記第1、第2熱交換器の入り口側と出口側とに配置されて前記第2外部流体を前記第1、第2熱交換器の他方にのみ流す2つの第2外部流体ダンパと、
を有し、
前記4つのダンパの切り換えにより、前記第1熱交換器に前記第1外部流体を流し、かつ、前記第2熱交換器に前記第2外部流体を流す第1運転モードと、前記第1熱交換器に前記第2外部流体を流し、かつ、前記第2熱交換器に前記第1外部流体を流す第2運転モードとを所定時間ごとに切り換える請求項1記載のイオン吸着装置。
【請求項6】
前記第1セルは、前記電解液を分離し電気二重層キャパシタを収容する複数の小セルからなり、
前記第2セルは、前記電解液を分離し電気二重層キャパシタを収容する複数の小セルからなり、
前記駆動回路は、前記キャパシタをなす前記第1セルの各電気二重層キャパシタに直列に電圧を印加し、かつ、前記キャパシタをなす前記第2セルの各電気二重層キャパシタに直列に電圧を印加する請求項1記載のイオン吸着装置。
【請求項7】
前記電気二重層キャパシタと並列に所定の電圧値にて降伏するダイオード回路を有する請求項6記載のイオン吸着装置。
【請求項8】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
前記キャパシタとして第1、第2のキャパシタを有し、
前記第1のキャパシタは、電解液が分離される複数の小セルに個別に収容される複数の電気二重層キャパシタを直列接続してなり、
前記第2のキャパシタは、電解液が分離される複数の小セルに個別に収容される複数の電気二重層キャパシタを直列接続してなり、
前記駆動回路は、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタを相補的に充放電させることを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項9】
前記各電気二重層キャパシタとそれぞれに並列に所定の電圧値にて降伏する複数のダイオード回路を有する請求項8記載のイオン吸着装置。
【請求項10】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
前記キャパシタとして第1、第2のキャパシタを有し、
前記駆動回路は、前記第1のキャパシタの充放電させる双方向DCDCコンバータと、前記第2のキャパシタの充放電させる双方向DCDCコンバータとを有し、前記第1、第2の双方向DCDCコンバータを作動させることにより、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタを相補的に充放電させるとともにイオン放出のための前記キャパシタの放電時に前記キャパシタの蓄電電力エネルギーを電源側に回収することを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項11】
前記駆動回路は、イオン放出のための前記キャパシタの放電時に前記キャパシタの蓄電電圧が均衡電圧未満と半分以下となるまで前記キャパシタの蓄電電力エネルギーを電源側に回収することを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項12】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
前記キャパシタとして第1、第2のキャパシタを有し、
前記駆動回路は、
スイッチング素子により構成されて前記第1のキャパシタを充電する第1、第2の上アーム素子と、スイッチング素子により構成されて前記第1のキャパシタを放電する第1、第2の下アーム素子とを有する第1のHブリッジ回路と、
スイッチング素子により構成されて前記第2のキャパシタを充電する第3、第4の上アーム素子と、スイッチング素子により構成されて前記第2のキャパシタを放電する第3、第4の下アーム素子とを有する第2のHブリッジ回路と、
を有し、
前記第1のHブリッジ回路と前記第2のHブリッジ回路とは直列接続されていることを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項13】
前記第1のHブリッジ回路の前記第1、第2の下アーム素子と、前記第2のHブリッジ回路の前記第3、第4の上アーム素子は、前記第1のキャパシタの一端と前記第2のキャパシタの一端とを接続するスイッチング素子からなる第1の中間アーム素子と、前記第1のキャパシタの他端と前記第2のキャパシタの他端とを接続するスイッチング素子からなる第2の中間アーム素子とにより構成される請求項12記載のイオン吸着装置。
【請求項14】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
前記キャパシタは、所定のイオン移動方向に順番に配列された第1、第2、第3、第4の電極を有し、
前記駆動回路は、前記4種類の電極の電位を交互に変更することにより、前記電解液中の正負のイオンを前記イオン移動方向へ移動させることを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項15】
前記駆動回路は、前記第1、第3の電極の電位を逆向きに変更する第1の電位変化モードと、前記第2、第4の電極の電位を逆向きに変更する第2の電位変化モードとを交互に実施する請求項14記載のイオン吸着装置。
【請求項16】
前記駆動回路は、前記第1、第3の電極からなる第1のキャパシタを交流駆動する第1のHブリッジと、前記第2、第4の電極からなる第2のキャパシタを交流駆動する第2のHブリッジとを有する請求項14記載のイオン吸着装置。
【請求項17】
前記第1、第2、第3、第4電極は、イオン移動方向において重なっている請求項14記載のイオン吸着装置。
【請求項18】
前記イオン吸着装置は、
相対的に高濃度の電解液を有する吸収器と、相対的に低濃度の電解液を有する蒸発器と、前記蒸発器から前記吸収器へ蒸気を送る蒸気管と、前記吸収器と前記蒸発器とを連通する液管と、前記液管に設けられて前記吸収器から前記蒸発器に送られる前記電解液中の正負のイオンを前記吸収器に移動させる再生器とを有する吸収冷凍サイクル装置に装備されて前記再生器を構成する請求項14記載のイオン吸着装置。
【請求項19】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
高イオン濃度の電解液を収容する高濃度室と、低イオン濃度の電解液を収容する低濃度室と、前記高濃度室と低濃度室との間に配置されて回転する複数のディスクとを有し、
前記複数のディスクは、周方向に配列されて前記キャパシタを構成する複数の電気二重層キャパシタを有し、
前記複数の電気二重層キャパシタは、前記高濃度室で放電され、かつ、前記低濃度室で充電されることを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項20】
奇数番目の前記ディスクと偶数番目の前記ディスクとの一方に設けられた前記電気二重層キャパシタの電極は、共通電位をもつ請求項19記載のイオン吸着装置。
【請求項21】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
前記キャパシタを構成する複数の電気二重層キャパシタを互いに異なるタイミングで充電及び放電させるロータリーインバータを有し、
前記ロータリーインバータは、
円板面又は円筒面に周方向所定ピッチで設けられて前記複数の電気二重層キャパシタの電極に個別に接続される複数の第1導電部材と、
前記複数の第1導電部材に接しつつ前記ディスクに対して相対回転する高電位の第2導電部材と、
前記複数の第1導電部材に接しつつ前記ディスクに対して相対回転する低電位の第2導電部材と、
を有し、
前記複数の電気二重層キャパシタの電極に交互に高電位と低電位とを与えることを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項22】
前記高電位の第2導電部材と前記低電位の第2導電部材との間、及び、前記低電位の第2導電部材と前記高電位の第2導電部材との間にそれぞれ浮遊電位の第2導電部材を有し、
前記各浮遊電位の第2導電部材は短絡される請求項21記載のイオン吸着装置。
【請求項23】
電解液を収容するセル中に設けられた一対の電極をもち充放電によりイオン吸着とイオン放出とを行うキャパシタと、前記キャパシタの印加電圧を制御する駆動回路とをもつイオン吸着装置において、
電気二重層キャパシタからなる前記キャパシタの前記一対の電極の間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に有し、蓄電装置を構成することを特徴とする電気二重層コンデンサ装置。
【請求項24】
前記駆動回路は、双方向DCDCコンバータからなる請求項23記載の電気二重層コンデンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2010−82606(P2010−82606A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257563(P2008−257563)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507348676)有限会社 スリ−アイ (35)
【Fターム(参考)】