イオン結合ポリマーとその利用
【課題】イオンバランス異常治療のための方法と製薬組成を提供すること。
【解決手段】本発明は特に、カリウム結合ポリマーおよびその製薬組成から成る組成を提示する。治療や予防の利点に関し、このポリマー組成および製薬組成の使用方法が、ここに公開されている。これら方法の例には、腎不全や、高カリウム血症を起こす薬剤の使用によって発症した高カリウム血症の治療が含まれる。1実施形態において本発明は、カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、ポリマーが動物被験体の胃腸管において、ポリマー1g当たりカリウムを平均約1.5mmol結合し除去し得る方法を、提供する。
【解決手段】本発明は特に、カリウム結合ポリマーおよびその製薬組成から成る組成を提示する。治療や予防の利点に関し、このポリマー組成および製薬組成の使用方法が、ここに公開されている。これら方法の例には、腎不全や、高カリウム血症を起こす薬剤の使用によって発症した高カリウム血症の治療が含まれる。1実施形態において本発明は、カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、ポリマーが動物被験体の胃腸管において、ポリマー1g当たりカリウムを平均約1.5mmol結合し除去し得る方法を、提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
この出願は、米国特許出願第10/965,274号(2004年10月13日出願)の一部継続であり、同出願はさらに米国特許出願第10/814,527号(2004年3月30日出願)、米国特許出願第10/814,749号(2004年3月30日出願)、米国特許出願第10/813,872号(2004年3月30日出願)の一部継続であり、これらは参考としてこれらの全体が援用されている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
カリウム(K+)は細胞内に最も豊富に存在する陽イオンであり、人体に約35〜40mEq/kg存在している。非特許文献1;非特許文献2を参照のこと。このうち1.5%〜2.5%だけが細胞外にある。カリウムは主に野菜、果物、肉、乳製品を介して食物から摂取され、ジャガイモ、豆類、バナナ、牛肉、ターキーのような特定の食物は、この元素が特に豊富である。非特許文献3;非特許文献4を参照のこと。米国において、摂取量は約80mEq/日である。この摂取量の約80%が胃腸管から吸収され、尿として排泄され、汗および便において排泄されて平衡をとっている。従って、カリウムのホメオスタシスは主に、腎臓排泄の調節によって維持されている。K+の腎臓排泄に支障があると、血清中のK+レベルが上昇する。高カリウム血症とは、血清中のカリウム濃度が約5.0mEq/Lを超える状態である。
【0003】
約5.0〜6mEq/Lの血清中カリウム濃度として規定される、軽度の高カリウム血症は、通常は命にかかわることはないが、中程度から重症の高カリウム血症(血清中カリウム濃度が約6.1mEq/Lより大きい)は、重篤な状態を引き起こし得る。不整脈やECG波形の異常は、高カリウム血症の診断上の特徴である。非特許文献5を参照のこと。血清中カリウムレベルが約9mEq/Lを超えて上昇すると、房室解離、心室性頻脈、または心室細動が生じ得る。
【0004】
高カリウム血症は、健康な人の一般集団においては稀である。しかしながら特定の群は、明らかにより高い頻度の高カリウム血症を示す。入院患者においては、高カリウム血症の発生率は、高カリウム血症の定義によって、1%〜10%である。人生の端にある患者(新生児または高齢者のいずれか)は、危険性が高い。腎臓機能の低下、尿生殖器疾患、癌、重篤な糖尿病、多剤療法も、患者を高カリウム血症に罹り易くさせ得る。
【0005】
高カリウム血症の現在の治療上の選択肢の多くは、病院内での使用に限られている。例えば、Kayexalateなどの交換樹脂は、用量が多いので患者コンプライアンスが非常に低くなり、胃腸(GI)への重篤な副作用、およびナトリウム量の大幅な増大(潜在的に、高ナトリウム血症、関連する流体うっ滞および高血圧を引き起こす)をもたらすため、外来患者や長期にわたる処置には適切でない。利尿薬は、腎臓経由で患者からナトリウムとカリウムを除去し得、背後に潜む腎臓疾患および頻度の高い関連の利尿薬耐性に起因して、しばしば効力が限定される。利尿薬はまた、血圧が低下している患者や体積減少が望ましくない患者については禁忌である(例えば、低血圧にさらに罹患した鬱血性心不全(CHF)患者は、ACE阻害薬およびカリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)のような薬物の併用を受けていることがしばしばあり、これは高カリウム血症を引き起こし得る)。
【0006】
全般的に、高カリウム血症の処置のためにより高結合容量の物質を得ることが望ましく、この物質は、好ましくは、生理的pH範囲においてカリウムの結合量がより多く、そしてまた非分解性であり、非吸収性であり、そして毒性作用が低いものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Agarwal,Rら(1994)Gastroenterology 107:548−571
【非特許文献2】Mandal,AK(1997)Med Clin North Am 81:611−639
【非特許文献3】Hunt,CDおよびMeacham,SL(2001)J Am Diet Assoc 101:1058−1060
【非特許文献4】Hazell,T(1985)World Rev Nutr Diet 46:1−123
【非特許文献5】Schwartz,MW(1987)Am J Nurs 87:1292−1299
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、胃腸管からカリウムイオンを除去するための組成物および方法を提示する。ある実施例において、カリウム結合ポリマーの有効量が動物被験体(例えば、ヒト)に投与され、このポリマーは、ポリマー1g当たりカリウムを平均1.5mmol以上を結合しそして除去し得る。別の実施例において、このポリマーは、約5.5より高いpHにおいて、ポリマー1gあたり約5mmolより大きいインビトロでの結合容量を有する。別の実施例において、このカリウム結合ポリマーはさらに、ポリマーに物理的または化学的に接着しているシェルを有している。
【0009】
カリウム結合ポリマーは、好ましくは、ポリフルオロアクリル酸ポリマー、ポリジフルオロマレイン酸ポリマー、ポリスルホン酸、あるいはこれらの組合せである。他の実施形態において、このポリマーは、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)2−プロパノール、ビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル、あるいはこれらの組合せによって架橋された、2−フルオロアクリル酸を含む。好ましくはこのシェルは、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、メタアリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサン、親電子物質(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルハライドまたはエポキシド)を有する脂肪族アミン付加物または芳香族アミン付加物のコポリマーから構成され、そしてここでアミンは必要に応じて第四級型である。必要に応じて、このシェルは、エポキシドやハライド、エステル、イソシアネート、および無水物(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルジイソシアネート、アルキルジハライド、またはジエステル)によって架橋することができる。
【0010】
好ましい実施例において、カリウム結合ポリマーは、ジビニルベンゼンによって架橋したα−フルオロアクリレートポリマーである。好ましいコア−シェル組成物は、ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーのコア、およびEudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、ベンジル化ポリエチレンイミン、またはN−ドデシルポリエチレンイミンのシェルを含む。好ましくは、コア−シェル組成物は、Wurster液体ベッドコーティングプロセスまたは制御されたコーティング沈殿プロセスによって合成される。適切な制御されたコーティング沈殿プロセスとしては、溶媒コアセルベーションプロセスや、pH誘発性沈殿プロセス、温度誘発性沈殿プロセスが挙げられる。
【0011】
本明細書中に説明されている組成は、高カリウム血症の処置における治療使用および/または予防使用に適している。ある実施形態においてカリウム結合組成物は、カリウム節約作用利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムのような、カリウム保持を引き起こす薬剤と組み合わせて使用される。
【0012】
動物被験体からカリウムを除去するための好ましい方法は、カリウム結合ポリマーである、ジビニルベンゼンによって架橋されたα−フルオロアクリレートポリマーを投与する工程を包含する。別の方法において、カリウムは、患者体内からカリウムを除去するためのコア−シェル組成物を用いて除去され、このコア−シェル組成物は、ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーのコアと、Eudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、ベンジル化ポリエチレンイミンまたはN−ドデシルポリエチレンイミンのシェルとを含む。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、該ポリマーが該動物被験体の胃腸管において、該ポリマー1g当たりカリウムを平均約1.5mmol結合し除去し得る、方法。
(項目2)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、該ポリマーが、約5.5より大きいpHにおいて、該ポリマー1g当たりカリウム平均約5mmolより大きいインビトロカリウム結合容量を有する、方法。
(項目3)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、該ポリマーが、該ポリマー1g当たり少なくとも約1.5mmolであるインビボカリウム結合容量を有する、方法。
(項目4)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、動物被験体に効果的な量のコア−シェル組成物を投与する工程を包含し、該コア−シェル組成物はカリウム結合ポリマーとシェルとから成り、該シェルが物理的および/または化学的に該カリウム結合ポリマーに付着している、方法。
(項目5)
前記カリウム結合ポリマーが、Ca2+型、H+型、NH4+型、Na+型、あるいはこれらの組合せであるような、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記カリウム結合ポリマーが、非金属のプラス電荷をもつ対イオンを含むような、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目7)
非金属のプラス電荷の対イオンが、アルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、コリン、タウリン、カルニチン、グアニジン、クレアチン、アデニン、アミノ酸あるいはこれらの誘導体のから選択されるイオンのうちの少なくとも1つである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋されたカルボン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたスルホン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたスルファミン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたホスホン酸ポリマー、およびこれらの無水物から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記カリウム結合ポリマーがスルホン酸ポリスチレンである、項目4に記載の方法。
(項目10)
前記カリウム結合ポリマーが、該ポリマーの酸性基に付いたpKa低下基を含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記pKa低下基が電子吸引基である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記電子吸引基がハライド基またはOR基であり、ここでRがHまたはアルキルである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ハライド原子がフッ素、塩素、または臭素である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記カリウム結合ポリマーが、ポリフルオロアクリル酸ポリマー、ポリジフルオロマレイン酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む、項目8に記載の方法。
(項目15)
前記カリウム結合ポリマーが、2−フルオロアクリル酸を、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)2−プロパノール、ビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、またはこれらの組合せによって架橋したものである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記カリウム結合ポリマーが、架橋された2−フルオロアクリル酸ポリマーまたは架橋された2−フルオロアクリル酸コポリマーを含み、該ポリマーまたは該コポリマーが、2−フルオロアクリル酸のアルキルエステルとジビニルベンゼンとの重合化、そしてその後のエステル加水分解によって得られる、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋された2−フルオロアクリレートポリマー、必要に応じて架橋されたビニルスルホン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたビニルホスホン酸ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーである、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋されたカルボン酸、ホスホン酸、もしくはスルホン酸、またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つのポリマーを含み、そして前記シェルが、多価陽イオンに対して透過性が低い、プラスに荷電したポリマーを含む、項目4に記載の方法。
(項目19)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋された2−フルオロアクリル酸とアクリル酸とのコポリマーを含み、そして前記シェルが、多価陽イオンに対して透過性が低い、プラスに荷電したポリマーを含む、項目4に記載の方法。
(項目20)
前記シェルがコポリマーを含む項目18の方法であって、該コポリマーが、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、メタアリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサンであるか、または、エピクロロヒドリン、アルキルハライド、およびエポキシドから選択される少なくとも1つの親電子物質を有する脂肪族アミン付加物もしくは芳香族アミン付加物である、該コポリマーの少なくとも1つの繰り返し単位であり、ここでアミンは必要に応じて第四級型である、方法。
(項目21)
前記シェルが腸溶性コーティングを含み、該コーティングが結腸内で分解し得る、項目4に記載の方法。
(項目22)
前記シェルがさらに非腸溶性コーティングを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記シェルが、前記カリウム結合ポリマーに対する多価陽イオンの結合を阻害する、項目4に記載の方法。
(項目24)
前記シェルが、流動化ベッドコーティングプロセスによって前記カリウム結合ポリマーにコーティングされている、項目4に記載の方法。
(項目25)
前記シェルがプラスに荷電している、項目4の方法。
(項目26)
前記シェルが、前記カリウム結合ポリマーの口内の味覚のよさを向上させる、項目4に記載の方法。
(項目27)
前記シェルがポリエチレンイミンポリマーを含む、項目4に記載の方法。
(項目28)
前記シェルが、前記カリウム結合ポリマーに対する競合イオンの結合を阻害する、項目4に記載の方法。
(項目29)
前記カリウム結合ポリマーが、競合イオンよりも優先的にカリウムイオンと結合し、該競合イオンはナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、あるいはこれらの組合せである、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記動物被験体が高カリウム血症に罹患している、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記カリウム結合ポリマーが、カリウム保持を促進する薬剤と一緒に投与される、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記組成が、ACE阻害剤、ARB、カリウム節約作用利尿薬、あるいはこれらの組合せと一緒に投与されるような、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記カリウム結合ポリマーが、少なくとも1種類の薬学的に受容可能な賦形剤を含んで薬学的処方物を形成する、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目34)
前記薬学的処方物が経口処方物または直腸用処方物である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記経口処方物が液体処方物またはチュアブル錠剤処方物である、項目34に記載の方法。
(項目36)
カリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的処方物であって、ここで該カリウム結合ポリマーが、pKa低下基を有する、架橋されたカルボン酸ポリマーまたはその無水物である、薬学的処方物。
(項目37)
前記カリウム結合ポリマーが、架橋されたポリフルオロアクリル酸ポリマー、架橋されたポリジフルオロマレイン酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む、項目36に記載の薬学的処方物。
(項目38)
前記カリウム結合ポリマーが、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、またはこれらの組合せによって架橋された2−フルオロアクリル酸を含む、項目37に記載の薬学的処方物。
(項目39)
カリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的処方物であって、ここで該カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋されたα−フルオロアクリレートポリマー、必要に応じて架橋されたビニルスルホン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたビニルホスホン酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む、薬学的処方物。
(項目40)
疾患を処置する方法であって、該方法は、疾患を処置する必要のある動物被験体に、項目36に記載の薬学的処方物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目41)
イオンに対する項目4に記載の前記シェルの透過性を測定する方法であって、以下:
(a)供給体溶液を収容する試験管に混成膜を取り付ける工程であって、該混成膜は前記シェルとセルロース膜とを含み、そして該供給溶液には前記イオンが含まれている、工程;
(b)該試験管を受容体溶液に浸し、該受容溶液には該イオンが含まれている、工程;
(c)該イオンに関して該受容溶液のサンプリングを採取し、そして分析する工程;
(d)該受容溶液中の該イオンの濃度変化を測定する工程;
を包含し、該濃度変化が、該イオンに対する該ポリマー膜の該透過性を示す、方法。
(項目42)
前記カリウム結合ポリマーの1%未満が胃腸管から吸収され得る、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目43)
カリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的処方物であって、ここで該カリウム結合ポリマーが、ジビニルベンゼンで架橋されたα−フルオロアクリレートポリマーを含む、薬学的組成物。
(項目44)
疾患を処置する方法であって、該方法は、疾患を処置する必要のある動物被験体に対して、項目43に記載の薬学的組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目45)
コアとシェルを含むコア−シェル組成物であって、該コアが、ジビニルベンゼンで架橋された、スルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーから選択されるカリウム結合ポリマーを含み、そして該シェルが、Eudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、ベンジル化ポリエチレンイミン、またはN−ドデシルポリエチレンイミンを含む、コアー−シェル組成物。
(項目46)
前記シェルがEudragit RL 100とEudragit RS 100を約50:50で混合したものを含む、項目45に記載の組成。
(項目47)
前記シェルは、ベンジル化ポリエチレンイミンを含み、ベンジル化の度合が窒素モル含量の約20%〜約99%である、項目45に記載の組成物。
(項目48)
前記シェルがN−ドデシルポリエチレンイミンを含み、ドデシルアルキル化の度合が窒素モル含量の約20%〜約99%である、項目45に記載の組成物。
(項目49)
前記コア−シェル組成物がWurster液体ベッドコーティングプロセスまたは制御されたコーティング沈殿プロセスによって合成される、項目45に記載の組成物。
(項目50)
前記制御されたコーティング沈殿プロセスが、溶媒コアセルベーションプロセス、pH誘発性沈殿プロセス、または温度誘発性沈殿プロセスである、項目49に記載の組成物。
(項目51)
疾患を処置する方法であって、ここで該方法は、疾患を処置する必要のある動物被験体に、項目45に記載のコア−シェル組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目52)
動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、カリウムを除去する必要のある該動物被験体に有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含し、該薬学的組成物はカリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含み、ここで該カリウム結合ポリマーはジビニルベンゼンで架橋されたα−フルオロアクリレートポリマーを含む、方法。
(項目53)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に有効量のコア−シェル組成物を投与する工程を包含し、該組成物がコアとシェルとを含み、該コアが、ジビニルベンゼンで架橋された、スルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーから選択されるカリウム結合ポリマーを含み、該シェルが、Eudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、またはベンジル化ポリエチレンイミンを含む、方法。
(項目54)
前記動物被験体が高カリウム血症に罹患している、項目52、53のいずれかに記載の方法。
(項目55)
前記組成物が、カリウム保持を促進する薬剤と一緒に投与される、項目52または53のいずれかに記載の方法。
(項目56)
前記組成物が、ACE阻害剤、ARB、カリウム節約作用利尿薬、あるいはこれらの組合せと一緒に投与される、項目52または53のいずれかに記載の方法。
(項目57)
α−フルオロアクリレートポリマーの合成方法であって、該方法は、水に難溶性のフリーラジカルイニシエーターと水溶性塩との存在下での、α−フルオロアクリレートモノマーの懸濁重合化を包含する、方法。
(項目58)
前記の水に難溶性のフリーラジカルイニシエーターは過酸化ラウリルであり、前記の水溶性塩は塩化ナトリウムである、項目57に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は食物模倣物中の陽イオン初期濃度を示したものである。
【図2】図2は食物模倣物中の、樹脂による陽イオン結合を示したものである。
【図3】図3は被験体2個体の便中に含まれる元の陽イオン濃度を示したものである。
【図4】図4は人間の便抽出物における、陽イオン交換樹脂への陽イオン結合を示したものである。
【図5】図5は、イオン透過性を測定するための膜の調製を示したものである。
【図6】図6は、さまざまな陽イオンに対し、異なるポリエチレンイミンをコーティングしたビーズの結合データを示したものである。
【図7】図7は、マグネシウムおよびカリウムの結合に対するEudragit RL 100シェルの影響を示したものである。
【図8】図8は、ベンジル化したポリエチレンイミンをコーティングしたDowex(K)ビーズへの、マグネシウムの結合を示したものである。
【図9】図9は、胃中の酸性状態の代わりの酸性状態の下での、Ben(84)−PEIコーティングされたDowex(K)ビーズの安定性を示したものである。
【図10】図10は、ベンジル化したポリエチレンイミンをコーティングしたDowexビーズによって結合した、カリウムおよびマグネシウムを示したものである。
【図11】図11は、ベンジル化したポリエチレンイミンのシェルを有するフルオロアクリル酸ビーズによって結合したマグネシウムを示したものである。
【図12】図12は、膜の透過性を決めるためのセットアップを示したものである。
【図13】図13は、ベンジル化ポリエチレンイミン膜の透過性を示したものである。
【図14】図14は、Eudragit RL100およびEudragit RS 100の混合物から成る膜の透過性および透過選択性を示したものである。
【図15】図15は、ポリエチレンイミンをコーティングしたDowex(Li)によるカリウム結合に対する、胆汁酸の作用を示したものである。
【図16】図16は、α−フルオロアクリレート−アクリル酸コポリマーにおけるpHの作用を示したものである。
【図17】図17は、ラットにおいて、フルオロアクリレートポリマーおよびKayexalateの投与後の陽イオン排泄レベルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、動物被験体の処置のための方法、ポリマー薬学的組成物、およびキットを提供する。ここで「動物被験体」および「動物」とは、本明細書中で使用される場合、ヒトならびにヒト以外の哺乳動物を含む。本発明は特に、カリウムイオン除去のためのポリマー組成物を提供する。好ましくは、この組成物は、動物被験体の胃腸管からカリウムイオンを除去するために使用される。
【0015】
本発明の一局面は、カリウム結合ポリマー組成物を用いてカリウムイオンを除去する方法である。ある実施形態において、カリウム結合ポリマー組成物は、カリウム結合に対する高結合容量および/または高選択性を有し、そしてがあり、胃腸管内において結合したカリウムを有意に放出しない。ポリマー組成物はカリウムイオンに対する選択的な結合を示すことが好ましい。
【0016】
本発明のポリマー組成は、カリウムイオンに対して、高結合容量および/または高選択性を示すことが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「高容量」とは、インビボでポリマー1グラム当たり平均約1.5mmol以上のカリウムを結合すること含む。代表的に、このインビボでの結合容量はヒトにおいて測定される。インビボでのカリウム結合容量をヒトにおいて測定する技術は、当該分野で周知である。例えば、カリウム結合ポリマーを患者に投与した後、便中のカリウム量を使用して測定して、インビボでのカリウム結合容量を算出し得る。平均のインビボ結合は、好ましくは健康なヒト被験者のセットにおいて計算される。このセットは、約5人のヒト被験体、好ましくは約10人のヒト被験体、さらにより好ましくは約25人のヒト被験体、そして最も好ましくは約50人のヒト被験体である。
【0017】
いくつかの実施形態において、人間におけるインビボでの平均のカリウム結合容量は、ポリマー1g当たり約1.5mmol以上である。好ましくは、人間におけるインビボでのカリウム結合容量はポリマー1g当たり約2mmol以上、より好ましくは1g当たり約3mmol以上、さらに好ましくは1g当たり約4mmol以上、そして最も好ましくは1g当たり約6mmol以上である。好ましい実施形態において、人間における平均のインビボでの平均のカリウム結合容量は、1g当たり約2mmol〜約6mmolである。
【0018】
カリウム結合ポリマーの結合容量は、インビトロでも測定することができる。インビトロでのカリウム結合容量は、胃腸管(特に、結腸)の生理学的条件を模した条件で測定することが好ましい。いくつかの実施形態において、インビトロでのカリウム結合容量は、pHが約5.5以上の溶液中で測定される。さまざまな実施形態において、pHが約5.5以上でのインビトロでのカリウム結合容量は、ポリマー1g当たり約6mmol以上である。pHが約5.5以上におけるインビトロでのカリウム結合容量の好ましい範囲は、ポリマー1g当たり約6mmol〜約12mmolである。好ましくは、pHが約5.5以上におけるインビトロでのカリウム結合容量はポリマー1g当たり約6mmol以上、より好ましくは1g当たり約8mmol以上、さらに好ましくは1g当たり約10mmol以上、そして最も好ましくは1g当たり約12mmol以上である。
【0019】
ポリマー組成物の結合容量が高くなるほど、より少ない投与用量が可能である。代表的に、所望の治療的利益および/または予防的利益を得るのに用いられるポリマー組成の投与用量は、約0.5g/日〜約25g/日である。最も望ましい用量は、1日当たり約15g以下である。好ましい用量範囲は約5g/日〜約20g/日、より好ましくは約5g/日〜約15g/日、さらに好ましくは約10g/日〜約20g/日、最も好ましくは約10g/日〜約15g/日である。好ましくは、この用量は食事と共に1日3回服用する。最も好ましくは1日1回の服用である。
【0020】
本明細書中に記載の組成物が、結合したカリウムをかなりの量を保持することもまた望ましい。好ましくは、カリウムはポリマーによって大腸中で結合され、そして便中にポリマーが排泄される以前にはカリウムは放出されない。本明細書中で使用される場合、用語「かなりの量」とは、結合されるカリウムの全量が保持されることを意味するようには意図されない。治療的利益および/または予防的利益が得られるように、結合したカリウムの少なくともいくらかが保持されることが好ましい。結合されるカリウムの保持され得る好ましい量は、約5%〜約100%に及ぶ。好ましくは、ポリマー組成物は、結合されるカリウムのうち約25%を保持し、より好ましくは約50%、さらに好ましくは75%、そして最も好ましくは、結合されるカリウムの約100%の保持である。保持期間は、この組成物が治療的そして/または予防的に使用されている時間の間であることが好ましい。この組成物が胃腸管からカリウムを結合しそして除去するために用いられる実施形態において、この保持期間は、この組成の胃腸管内における保持時間であり、そしてより具体的には、結腸内の平均保持時間である。
【0021】
好ましくは、このカリウム結合ポリマーは胃腸管からは吸収されない。用語「吸収されない」およびこの文法上の等価物は、投与されたポリマーの全量が吸収されないことを意味するようには意図されない。ポリマーの特定の量は、吸収される可能性があると予想される。ポリマーの約90%以上が吸収されないことが好ましく、より好ましくは約95%以上が吸収されず、さらに好ましくは約97%以上が吸収されず、そして最も好ましくは約98%以上のポリマーが吸収されない。
【0022】
(カリウム結合ポリマー)
いくつかの実施形態において、カリウム結合ポリマーは、プロトン化形態またはイオン化形態において、酸性基(例えば、スルホン基(−SO3−)、硫酸基(−OSO3−)、カルボキシル基(−CO2−)、ホスホン基(−PO3−−)、リン酸基(−OPO3−−)、スルファミン酸基(−NHSO3−)がある。好ましくは、この酸基のイオン化割合は大腸内の生理学的pHにおいて約75%であり、カリウム結合容量は約5mmol/g以上である。好ましくは、この酸基のイオン化は約80%以上、より好ましくは約90%、最も好ましくは約100%である。特定の実施例において、酸を含むポリマーには、複数の酸基が含まれている。特定の実施例において、酸を含むポリマーは無水物の形態で投与され、生理学的液体に接触するとイオン化形態となる。
【0023】
他のいくつかの実施形態において、pKa低下基(好ましくは電子吸引性の置換基)がこの酸性基に隣接して配置されており、好ましくはこの酸性基に対してα位またはβ位にある。好ましい電子吸引性置換基は、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基またはハロゲン原子であり、最も好ましくはFである。好ましい酸性基としてはスルホン基(−SO3−)、硫酸基(−OSO3−)、カルボキシル基(−CO2−)、ホスホン基(−PO3−−)、リン酸基(−OPO3−−)、またはスルファミン酸基(−NHSO3−)がある。他に好ましいポリマーとしては、α−フルオロアクリル酸、ジフルオロマレイン酸、またはこれらの無水物のポリマーから得られる。
【0024】
カリウム結合ポリマーに適したモノマーの他の例を、表1に示す。
【0025】
【表1】
他に適している陽イオン交換構成部分としては、以下が挙げられる:
【0026】
【化1】
ここでnは1以上の数であり、そしてZはSO3HあるいはPO3Hを示す。好ましくは、nは約50以上、より好ましくは約100以上、さらに好ましくは約200以上、最も好ましくは約500以上である。
【0027】
適したホスホン酸モノマーとしては、ホスホン酸ビニル、ビニル−1,1−ビスホスホネート、ならびにホスホノカルボン酸エステル、オリゴ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸のエチレン誘導体が挙げられる。これらモノマーの合成方法は、当該分野で周知である。
【0028】
スルファミン(Z=SO3Hの場合)ポリマーまたはホスホラミド(Z=PO3Hの場合)ポリマーは、アミンポリマーやモノマーの前駆物質を、三酸化イオウ/アミン付加物などのスルホン化剤、またはP2O5などのホスホン化剤を用いてそれぞれ処理することにより、得ることができる。代表的に、ホスホン基の酸性プロトンは、pHが約6〜約7において、ナトリウムやカリウムなどの陽イオンと交換可能である。
【0029】
スルホン酸ビニルやホスホン酸ビニル、スルファミン酸ビニルのようなモノマーから誘導されるフリーラジカルポリマーも、使用することができる。
【0030】
本明細書中での使用が好ましいモノマーはα−フルオロアクリレートとジフルオロマレイン酸であり、特にα−フルオロアクリレートが最も好ましい。このモノマーは、さまざまな経路で調製することができる。例えばGassenら、J.Fluorine Chemistry,55,(1991)149−162、KF Pittman,C.U.、M.Uedaら、(1980)Macromolecules 13(5):1031−1036を参照。フルオロ芳香族化合物の酸化によるジフルオロマレイン酸(Bogachevら、Zhurnal Organisheskoi Khimii,1986,22(12),2578−83)、またはジフルオロマレイン酸のフッ素化フラン誘導体(米国特許第5,112,993号を参照)が、好ましい。α−フルオロアクリレートの好ましい合成形態は、欧州特許第415214号に示されている。
【0031】
他の方法としては、ホスホン酸、カルボン酸、リン酸、スルフィン酸、硫酸、スルホン酸の官能基をもつ化合物から行う段階成長重合を含む。Briquest(発売元:Rhodia)のような高密度ポリホスホネートは特に有用である。
【0032】
本発明のポリマーには、サッカライドポリマーなどの天然ポリマーから合成したイオン交換樹脂、および必要に応じて主鎖またはペンダント残基にイオン交換部位を形成するように官能化した半合成ポリマーが挙げられる。対象となるポリサッカライドの例には、植物起源由来の物質および動物起源由来の物質が挙げられ、例えばセルロース誘導体物質、ヘミセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スルホエチルセルロース、デンプン、キシラン、アミロペクチン、コンドロイチン、ヒアルロン酸塩、ヘパリン、グアールガム、キサンタン、マンナン、ガラクトマンナン、キチン、キトサンが挙げられる。最も好ましいポリマーは、例えばカルボキシメチルセルロースやキトサン、スルホエチルセルロースのような、胃腸管内の生理学的条件下で分解せず、吸収もされないものである。
【0033】
カリウム結合ポリマーは、透析バッグや紙バッグ、細孔マトリクス、ポリマーゲル、中空ファイバー、小胞、カプセル、錠剤、フィルムなどで覆うことができる。
【0034】
ポリマーは、均一系と不均一系のいずれかを用いた重合プロセスで生成される。均一系の場合、架橋ゲルは、水溶性ポリマー主鎖を架橋剤と反応させてバルクゲルを形成し、押し出し成形して微粉状にするか、または粉砕して細かな粒子とするかのいずれかによって得られる。前者の場合、水溶性ポリマー前駆物質を乳化あるいは分散液とし、次に架橋を行って、粒子が得られる。別の方法では、乳化プロセスまたは懸濁プロセス、微懸濁プロセス、分散プロセスにおいてモノマーの重合化を行い、粒子を調製する。この連続相は、水性ビヒクルまたは有機溶媒のいずれかである。懸濁プロセスを使用する場合、「テンプレート重合」や「多段階シード懸濁」のような方法を含む、適切なさまざまなタイプの改変が可能である。これらはいずれも、ほとんどが単分散の粒子を生じる。1実施形態においては、「ジェット(jetting)」プロセス(米国特許第4,427,794号)を使用してビーズが形成され、これによって、モノマーとイニシエーターとの混合物を含む液体のチューブを、振動させたノズルから連続相へと押し出す。このノズルは回転タレットに設置されて、液体に遠心力をかけ得る。
【0035】
α−フルオロアクリレートビーズを生成するための好ましいプロセスは、直接懸濁重合である。代表的に、ポリビニルアルコールなどの懸濁安定剤を使用して、プロセス中の粒子の合体を防止する。水溶液相にNaClを加えると、合体および粒子凝集を低下させることが観察されている。この目的で加える塩としては他には、水溶液相に溶ける塩が挙げられる。この実施形態において、追加する水溶性塩は約0.1重量〜約10重量%の間であり、好ましくは約2重量%〜約5重量%の間を含み、そしてより好ましくは約3重量%〜約4重量%の間を含む。
【0036】
α−フルオロアクリレートエステル(例えばMeFAなど)の懸濁重合の場合には、粒子安定性、ビーズ収量、球形の維持といった懸濁液の品質に対し、フリーラジカルイニシエーターの性質が重要な役割を果たすことが観察されている。過酸化ラウリルなどの水に難溶性のフリーラジカル開始剤を使用すると、ゲルがほとんどなくなり、そして高収率でビーズを生成した。水に対する溶解度が0.1g/L未満、好ましくは0.01g/L未満のフリーラジカル開始剤が、最適の結果を得ることがわかった。好ましい実施形態において、ポリMeFAビーズは、水に溶けにくいフリーラジカル開始剤と、NaClなど水相に存在する塩との組合せによって生成される。
【0037】
カリウム結合ポリマーがシェルなしで使用されているいくつかの実施形態において、カリウム結合ポリマーは、Kayexalateでも、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムでも、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩の形態でもない。
【0038】
いくつかの実施形態において、クラウンエーテルおよびクラウンエーテル様分子がカリウム結合ポリマーとして使用されている。クラウンエーテルは、その穴サイズと金属イオンのサイズに基づき、他のものよりも特定のアルカリ金属に対して選択性を示す。表2、表3、表4およびPedersen,C.J.1987、Charles J.Pederson「Nobel Lecture.The discovery of crown ethers」Nobel Lectures,Chemistry 1981−1990.T.Frangsmyr編、World Scientific Publishing Co.,Singapore.を参照。
【0039】
また他の実施形態において、クラウンエーテルをシェル物質として使用することにより、ナトリウムやマグネシウム、カルシウム、その他の阻害分子のコアへの通過を減らし、その結果として、コアポリマーのインビボ結合容量が増加する。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
。
【0043】
カリウム結合ポリマーは代表的に、陽対イオンを有している。この陽イオンは金属イオン、非金属イオン、あるいはその組合せがあり得る。金属イオンの例としてはCa2+型、H+型、NH4+型、Na+型、あるいはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。非金属イオンの例としてはアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、コリン、タウリン、カルニチン、グアニジン、クレアチン、アデニン、アミノ酸あるいはこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
好ましい実施形態において、本明細書中に記述されているカリウム結合ポリマーは副作用(例えば、有害なイオン放出による高ナトリウム血症およびアシドーシス)を起こす傾向を低下させた。ここで「有害なイオン」という語は、使用期間中に体内において、本明細書中に記載される組成物によって放出されるのが好ましくないイオンをいうために、本明細書中で用いられる。組成物に対する有害イオンは代表的に、組成物の処理される条件、組成物の化学的性質および/または結合特性に依存する。例えば、有害イオンはアシドーシスを起こし得るH+である場合もあれば、高ナトリウム血症を起こし得るNa+である場合もある。好ましくは、結合されるカリウム 対 誘導される有害な陽イオンの比率は、1:約2.5〜約4である。
【0045】
(コア−シェルの組成物)
本発明の一面において、コア−シェル組成物がカリウム除去のために使用される。コア−シェル組成では代表的に、コアはカリウム結合ポリマーから成り、好ましくは高い結合容量でカリウムを結合することができるポリマーである。本明細書中に記述されているさまざまなカリウム結合ポリマーは、コア−シェル組成のコア部分として使用することができる。いくつかの実施形態において、シェルによって、マグネシウムやカルシウムなどの競合溶質がシェルを通ってコア部分に侵入することが調節される。1実施形態において、二価陽イオンに対する膜の透過性は、水和した大きな陽イオン(例えば、アルカリ土類金属イオン)に対し有孔性を下げることにより、および前記多価陽イオンとの電気的反発を起こす陽電荷を組み入れることにより、減少される。コア−シェル組成のシェルは本質的に、胃腸管内での停滞中および通過中にも、分解することはないのが好ましい。
【0046】
本明細書中で用いられている「競合溶質」という語は、コア部分と結合するためのカリウムと競合する溶質であるが、コア部分と接触および/または結合することが望ましくない溶質のことを意味する。コア−シェル組成の競合溶質は通常、コアの結合特性、および/またはシェル部分の透過性特性によって左右される。競合溶質は、コア部分の選択的結合特性や、競合溶質の外部環境からシェル部分への透過性を低下させることにより、コア−シェル粒子との接触および/または結合を防ぐことができる。競合溶質は代表的に、カリウムイオンに比べ、外部環境からのシェルへのより低い透過性を有する。適切な競合溶質の例としては、Mg++、Ca++、プロトン化アミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態において、シェルは一価陽イオンと二価陽イオンの両方に透過性がある。シェルが一価陽イオンと二価陽イオンの両方に透過性である実施形態において、コアは、コアの結合特性によって、一価陽イオン(好ましくはカリウム)と優先的に結合する。他の実施形態において、シェルはカリウムイオンに対して優先的な透過性を有している。
【0048】
本明細書中に記載されるコア−シェル組成物およびカリウム結合ポリマー組成物は、比較的高いカリウム濃度を有する胃腸管(GI)部分(例えば、結腸)でカリウムを結合するのが特に望ましい。次いで、この結合したカリウムは、組成物に結合したまま、体外に排泄されるのが好ましい。
【0049】
1実施形態において、シェル物質は外部の胃腸管環境からコア部分を保護する。いくつかの実施形態において、シェル物質は、コアポリマーの酸性基を保護し、コアポリマーが胃腸管環境に曝露するのを防ぐ。ある実施形態において、シェル部分は腸溶性コーティングによって保護されている。適切な腸溶性コーティングの例は、この分野で公開されている。例えば、A.R.Gennaro(編者)による、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年を参照。
【0050】
別の実施形態において、シェル物質は多価陽イオンに対する透過性をより低くさせるように操作される。アルカリ土類陽イオンに対するシェルの透過性は、膜の孔の平均サイズや電荷密度、膜の疎水性を変えることによって変更され得る。下の表5に示すように、Mg++およびCa++などの水和イオンは、K+およびNa+などの一価陽イオンに比べ、サイズが大きい(Nightingale E.R.、J.Phys.Chem.,63,(1959),1381−89)。
【0051】
【表5】
二価陽イオンに対する透過性を低下させる方法は、電気透析の陽イオン交換膜に関する以前の研究から公知である(例えば、Sataら、J.Membrane Science,206(2002),31−60)。これらの方法は通常、孔サイズによる除外、静電気的作用、およびこれらの組合せに基づいたものである。
【0052】
従って、いくつかの実施形態においては、シェル部分の特性を調整して、透過性の差異を構築する。例えば、シェル物質のメッシュサイズが溶質の寸法と同じサイズ範囲にある場合、より嵩高い二価陽イオンが無作為にシェル部分を通り抜ける速度は大幅に遅くなる。例えば、実験研究(Krajewska,B.、Reactive and Functional polymers 47,2001,37−47)では、セルロースエステルまたは架橋キトサンゲル膜におけるイオン溶質および非イオン溶質両方についての透過係数は、メッシュサイズが溶質寸法に近くなると、より嵩高い溶質の方が遅くなることが示されることを報告する。膨潤した樹脂におけるポリマー体積の割合が、組成物内のメッシュサイズについての良好な指標となる。例えば、理論研究により、メッシュサイズは通常φ−3/4のスケールであり、φは溶液中で膨潤したときのシェル部分のポリマー体積割合である。膜の膨潤率は、疎水性や架橋密度、電荷密度、溶媒のイオン強度に依存する。
【0053】
例えば、、ピロールのインサイチュ重合により陽イオン交換物質上を覆ったポリピロールは、非常に密な多孔性膜を形成することによって選択透過性を導くことが示され、この多孔性膜は、一価陽イオンに比べ、大きな二価陽イオンの拡散を阻害する。
【0054】
代替的に、陽イオン多価電解質の薄層を物理的に吸着させて強い電場を形成し、この電場は、Mg++やCa++などの高度に荷電した陽イオンを反発する。適切な陽イオン多価電解質としては、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサン、親電子物質(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルハライド、エポキシド)を有する脂肪族アミンまたは芳香族アミンの付加物から選択される反復単位を有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ここでアミンは、必要に応じて、四級化型である。脂肪族アミンや芳香族アミンのアルキルジハライド付加物は、イオネン(ionene)とも呼ばれる。ポリマーの選択透過性はまたpHによっても制御することができ、ここで、ポリマー電荷密度および膨潤率がプロトン化(脱プロトン化)の割合によって変化する。
【0055】
ポリマーに最初に取り込まれている対イオンが置換され、そして最終的にはカリウムで置換されなければならない場合、pH制御による結合選択性は重要な手段である。ポリマーが最初に、カルボキシル基やスルホン基に対して高い結合定数を有する二価陽イオンであるCa++を有して調整される場合、胃中で遭遇する酸性環境を利用してポリマーの結合部位をプロトン化し、最初に取り込まれていた対イオン(すなわち、Ca++)を置換し得る。この場合、局所的なpHによってイオン交換特性を変化させるポリマーを設計することが有利であり、より好ましくは、胃のpHにおいて結合容量が低く、約5.5より高いpHにおいて結合容量が高いポリマーが好ましい。好ましい1実施形態において、本発明のポリマーは約3未満のpHにおいて利用可能な容量のある割合、全容量(すなわち、pHが約12のときの測定値)のうちの約0〜10%を有し、そして約4より高いpHにおいて約50%より大きい。
【0056】
いくつかの実施例において、陽イオン多価電解質のシェルを物理的に吸着させて強い電場を形成し、この電場は、Mg++やCa++などの高度に荷電した陽イオンを反発する。適切な陽イオン多価電解質としては、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサン、親電子物質(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルハライド、エポキシド)を有する脂肪族アミンまたは芳香族アミンの付加物から選択される反復単位を有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ここでアミンは必要に応じて四級化型である。アルキルジハライドを有する脂肪族アミンおよび芳香族アミンの付加物はまた、イオネンとも呼ばれる。ポリマーの選択透過性はまたpHによっても制御することができ、ここで、ポリマー電荷密度および膨潤率がプロトン化(脱プロトン化)の割合によって変化する。このポリマーは、物理的結合、化学的結合、あるいはその組合せを介してコア上で保持される。前者の物理的結合の場合、マイナスに荷電したコアとプラスに荷電したシェルとの間の静電的相互作用により、胃腸管内を移動する間のコア−シェル会合が維持される。後者の化学的結合の場合、コア−シェル界面において化学反応を行い、シェル物質の「剥離」を防ぐ。
【0057】
好ましくは、シェルは、大腸内にこの組成物の滞在する時間中、特定値を超える選択透過性の要因(すなわちK+の結合速度 対 他の競合イオンの結合速度)を有する。1つの作用機序に限定するわけではないが、選択性のメカニズムは、動力学的効果によって決まる(すなわち、コア内における結合事象について純粋な熱力学的メカニズムではない)と考えられる。すなわち、本発明のコア−シェル粒子が結腸中にある時間のあいだに平衡に導かれる場合、コア−シェルは最終的に、コア単独と同様なプロフィールで陽イオンを結合すると予測される。ゆえに、ある実施形態においてシェル物質は標的イオン(例えば、K+)に対して充分高いな透過率を維持し、これによりこの標的イオンが結腸内での平均滞在時間中に完全に平衡に達するが、競合する陽イオン(例えば、Mg2+、Ca2+)の透過率はより低い。この特徴は、選択透過性の時間的持続と定義される。この実施形態では、時間的持続は、結腸の電解質プロフィールを反映する条件において、平衡時における結合容量が、約20%〜約80%に達するのに必要とされる時間(すなわち、t20〜t80)である。代表的に、K+(および一価陽イオン全般)について、t80は好ましくは約5時間未満、より好ましくは約2時間未満である。Mg(および多価陽イオン全般)については、t20は好ましくは約24時間より大きく、より好ましくは約40時間である。
【0058】
他の実施形態において、プラスに荷電したシェルと、胃腸管中に存在する一部の疎水性陰イオンとの相互作用により、胃腸管において、より高いレベルの持続性が達成できる(Mg2+およびCa2+のt80値の増加として測定)。このような疎水性陰イオンとしては、胆汁酸、脂肪酸、陰イオン性タンパク質消化物が挙げられる。あるいは、陰イオン界面活性剤でも同じ利点が得られる。この実施形態において、コア−シェル物質は、そのまま投与されるか、脂肪酸塩もしくは胆汁酸塩と一緒に処方されるか、または硫酸アルキルやスルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルアリールのような合成陰イオン界面活性剤(しかし、これらに限定されない)と一緒に調剤される。
【0059】
プラス電荷と疎水性を組み合わせたシステムでは、好ましいシェルポリマーとしては、本明細書中で開示されるようなアミン官能化ポリマーが挙げられ、これは必要に応じて疎水性物質によりアルキル化される。
【0060】
アルキル化には、ポリマーの窒素原子とアルキル化剤(通常、アルキル基やアルキルアリール基を有するアミン反応性の親電子物質)との間の反応が含まれる。さらに、アルキル化剤と反応する窒素原子は、複数のアルキル化による第四級アンモニウムイオン形成を起こしにくく、アルキル化終了時点で、第四級アンモニウムイオンを形成する窒素原子は10mol%未満である。
【0061】
好ましいアルキル化剤としては、ハライド、エポキシド、エステル、無水物、イソシアネート、αβ−不飽和カルボニルなどの官能基を有する化合物のような親電子物質である。これらは化学式RXを有する。ここでRはC1〜C20のアルキル基(好ましくはC4〜C20)、C1〜C20のヒドロキシアルキル基(好ましくはC4〜C20のヒドロキシアルキル基)、C6〜C20のアラルキル基、C1〜C20のアルキルアンモニウム基(好ましくはC4〜C20のアルキルアンモニウム基)、またはC1〜C20のアルキルアミド基(好ましくはC4〜C20のアルキルアミド基)であり、そしてXは1つ以上の親電子基を含んでいる。ここで「親電子基」とは、アルキル化反応中にポリマーの窒素原子によって置換または反応する基を意味する。好ましい親電子基Xの例としては、ハライド、エポキシ基、トシレート基、およびメシレート基が挙げられる。例えばエポキシ基の場合、アルキル化反応によって、3員のエポキシ環の開裂を生じる。
【0062】
アルキル化剤の好ましい例としては、C3〜C20のアルキルハライド(例えば、n−ブチルハライド、n−ヘキシルハライド、n−オクチルハライド、n−デシルハライド、n−ドデシルハライド、n−テトラデシルハライド、n−オクタデシルハライド、およびこれらの組合せ);C1〜C20のヒドロキシアルキルハライド(例えば、11−ハロ−1−ウンデカノール);C1〜C20のアラルキルハライド(例えば、ベンジルハライド);C1〜C20のアルキルハライドアンモニウム塩(例えば、(4−ハロブチル)トリメチルアンモニウム塩、(6−ハロヘキシル)トリメチルアンモニウム塩、(8−ハロオクチル)トリメチルアンモニウム塩、(10−ハロデシル)トリメチルアンモニウム塩、(12−ハロドデシル)−トリメチルアンモニウム塩、およびこれらの組合せ);C1〜C20のアルキルエポキシアンモニウム塩(例えば、(グリシジルプロピル)−トリメチルアンモニウム塩);およびC1〜C20のエポキシアルキルアミド(例えば、N−(2,3−エポキシプロパン)ブチルアミド、N−(2,3−エポキシプロパン)ヘキサンアミド、およびこれらの組合せ)が挙げられる。ベンジルハライドおよびドデシルハライドがより好ましい。
【0063】
ポリアミンシェル前駆物質のアルキル化手順は、シェルをコアビーズに適用する前に、別の反応として実行することができる。あるいは、一旦、ポリアミンシェル前駆体をコアビーズ上に堆積させて、アルキル化を行うこともできる。後者の場合、アルキル化は少なくとも2つの親電子基Xを有するアルキル化剤によって行うことが望ましい。これにより、アルキル化でシェル層内の架橋を起こすこともまたできる。好ましい多官能性アルキル剤としては、ジハロアルカン、ジハロポリエチレングリコール、エピクロロヒドリンが挙げられる。その他の架橋剤としては、塩化アシル、イソシアネート、チオシアネート、クロロスルホニル、活性化エステル(N−ヒドロキシスクシンイミド)、カルボジイミド中間生成物なども適している。
【0064】
代表的に、アルキル化レベルはポリアミン前駆物質の性質およびアルキル化に使用するアルキル基のサイズに応じて調整される。アルキル化のレベルには、次のようないくつかの要素が影響する:
a.胃腸管内の条件下におけるシェルポリマーの不溶性。特に、胃中で優勢である低pHは、イオン化pHが5以上のアルキル化ポリアミンポリマーは溶解しやすい。この目的ため、アルキル化の度合がより高く、そしてより鎖の長いアルキルが好ましい。別の方法として、酸性pHに対してシェル物質を保護する腸溶性コーティングを使用することもできる。この腸溶性コーティングは、コア−シェルビーズが腸下部に進む場合に解除される。
【0065】
b.選択透過性プロフィール:アルキル化率が低い場合、競合イオン(例えば、Mg2+やCa2+)に対する選択透過性の持続時間が、結腸中の代表的な滞在時間よりも短くなり得る。逆に、アルキル化率(または疎水性物質の重量分画)が高い場合は、この物質は、多くの無機陽イオンに対して不透過性となり、これによってK+の平衡速度が長くなる。
好ましくは、アルキル化の度合は上記2つの変数をモニターしながらの反復アプローチにより選択される。
【0066】
透過係数を算出するための方法は、公知である。例えば、W.Jost、Diffusion in Solids,Liquids and Gases,Acad.Press,New−York,1960を参照のこと。例えば、シェルポリマーにおけるイオン透過係数は、固体の多孔性物質の上にある膜としてポリマーを成型(cast)し、次に目的のイオンを含んでいる生理的溶液(供給体)に接触させ、受容体溶液中に膜を横切った、そのイオンの安定状態での透過率を測定することができる。次に膜の特性を最適化することにより、選択性と透過率の最良の組合せを達成することができる。膜の構造的特性は、例えば、ポリマーの体積割合(膨潤した膜中の割合)、ポリマーの化学的性質とその特性(疎水性、架橋密度、電荷密度)、ポリマーの混合組成(複数のポリマーが使用されている場合)、加湿剤や可塑剤などの添加剤の配合、および/または製造プロセスを変更することにより、改変することができる。
【0067】
本発明の選択透過性膜は、その選択透過性特性を、ポリマーの組成と物理的特性との相関関係として選択透過性プロフィールを調べることにより、最適化される。選択透過性は、実際の使用環境(例えば、結腸)に近い条件で測定されるのが望ましい。典型的な実験では、供給体溶液は結腸内液体のイオン組成、重量オスモル濃度およびpHを模した合成液、または、回腸造瘻か結腸造瘻により採取した動物の流体である。別の実施形態において、膜は、胃腸管(すなわち、胃、十二指腸、空腸、および回腸)の各部位に見出される条件をモデル化した流体と順次接触される。また別の実施形態において、シェルをプロトン型としてマイクロカプセル化法によって陽イオン交換樹脂ビーズ状に沈着させ、そして水酸化ナトリウム水溶液に接触させる。pHまたは導電率をモニターすることにより、NaOHの膜透過率が算出される。別の実施例において、樹脂は、リチウム陽イオンをあらかじめ取り込まれ、そしてリチウムの放出と、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムの吸着を、イオンクロマトグラフィーでモニターする。好ましい実施例において、前記の条件で測定されたカリウムと二価陽イオン(Mg++、Ca++など)の透過率は、約1:0.5〜約1:0.0001の間、好ましくは約1:0.2〜約1:0.01の間である。
【0068】
別の実施形態において、コア−シェル組成のシェルは、上部胃腸管内を通過する間に、受動的吸着による選択透過性を示す。胃腸管内に存在する多くの成分(食事成分、消化代謝物、分泌物などを含む)は、ある程度不可逆的な様式でシェル上およびシェル内に吸着しやすく、そしてシェルの透過性のパターンを大きく変えることができる。これら水溶性物質の大多数はマイナスに荷電しており、そしてさまざまなレベルの疎水性を示す。これらの中には、脂肪酸や胆汁酸、リン脂質、胆汁塩など、親水性と疎水性の両方の性質を有するものがあり、界面活性剤として挙動し得る。界面活性剤は、疎水性相互作用やイオン性相互作用、あるいはこれらの組合せを通じて、表面に非特異的に吸着することができる。この実施形態においては、この現象を利用して、カリウムイオン結合の過程におけるポリマー組成の透過性を変える。ある実施形態において、脂肪酸を使用してシェルの透過性を改変しており、また別の実施形態においては胆汁酸を使用することができる。脂肪酸と胆汁酸とはいずれも凝集体(ミセルまたは小胞)を形成し、そしてプラスに荷電したポリマーと混合する場合に不溶性錯体を形成し得る(例えばKanekoら、Macromolecular Rapid Communications(2003),24(13),789−792を参照)。脂肪酸と胆汁酸の両方とも、合成陰イオン界面活性剤に似た性質を有している。陰イオン界面活性剤とプラス電荷のポリマーとの間に不溶性錯体が形成されることを、数多くの研究が報告されている(例えばChen,L.ら,Macromolecules(1998),31(3),787−794)。この実施形態において、シェル物質は疎水基と陽イオン基との両方を有するコポリマーから選択され、胃腸管内に代表的に見られるマイナス電荷の疎水性物質(例えば、胆汁酸、脂肪酸、ビリルビン、その他の関連化合物)とシェルが錯体を形成する。また、適切な組成物はまた、例えば米国特許第5,607,669号、同第6,294,163号、同第5,374,422号、Figulyら、Macromolecules,1997,30,6174−6184に報告されているような、胆汁酸捕捉剤として記載されるポリマー物質を含む。この錯体の形成により、シェル膜の崩壊を導き、次いで、好ましくはカリウムの透過性は変わらないまま、嵩高い二価陽イオンの拡散率が低下する。
【0069】
また別の実施例において、コア−シェル組成のシェルの透過度は、胃腸管内の酵素作用によって変化する。通常の大腸ミクロフローラによって分泌される酵素は数多くある。例えば、Bacteroides、Prevotella、Porphyromonas、Fusobacteriumはコラゲナーゼやノイラミニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ[DNase]、ヘパリナーゼ、プロテイナーゼといったさまざまな酵素を分泌している。この実施例において、シェルは疎水性主鎖と親水性ペンダント基から成り、このペンダント基は腸内の酵素反応によって分解され離れる。酵素反応が進むと、ポリマー膜が次第に疎水性になり、結果として非常に膨潤した高透過性の材質が、完全に押しつぶされ、Mg++やCa++などのかさばる水和陽イオンに対して透過性に乏しい低水和性の膜となる。胃腸管で分泌される酵素の中性基質の中から、親水性のものを選ぶことができる。このような物質には、アミノ酸、ペプチド、炭水化物、エステル、リン酸エステル、オキシリン酸ものエステル、O−およびS−ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、チオリン酸塩、アゾ基、その他のものが挙げられる。シェルポリマーを化学的に変化させることができる腸内酵素の例としては、リパーゼ、ホスホリパーゼ、カルボキシルエステラーゼ、グリコシダーゼ、アゾリダクターゼ、ホスファターゼ、アミダーゼ、プロテアーゼなどがあり、これらに限定されない。シェルは、近位結腸に入るまではカリウムイオンを通し、次に近位結腸にある酵素がシェルと化学反応して二価陽イオンに対する透過性を低減させることができる。
【0070】
いくつかの実施例において、シェル厚さは0.002〜50ミクロンであり、好ましくは約0.005〜20ミクロンである。好ましくは、シェル厚さは約0.5ミクロン以上、より好ましくは約2ミクロン以上、さらに好ましくは約5ミクロン以上である。好ましくは、シェル厚さは約30ミクロン未満、より好ましくは約20ミクロン未満、さらに好ましくは約10ミクロン未満、最も好ましくは約5ミクロン未満である。
【0071】
コア−シェル粒子のサイズは通常、約200nm〜約2mmであり、好ましくは約100ミクロンである。好ましくは、コア−シェル粒子のサイズは約1ミクロン以上、より好ましくは約10ミクロン以上、さらに好ましくは約20ミクロン以上、最も好ましくは約40ミクロン以上である。好ましくは、コア−シェル粒子のサイズは約250ミクロン未満、より好ましくは約150ミクロン未満、さらに好ましくは約100ミクロン未満、最も好ましくは約50ミクロン未満である。
【0072】
(コア−シェル粒子の合成)
好ましい実施例において、シェルはコア材質表面に均一にコーティングされ、好ましくはピンホールや泡がなく、コア材質よりも軽量である(例えば、約20重量%以下)。シェルはコアに固定することができ、好ましくは、膨潤や錠剤製剤中の圧力などの機械的外力に耐えられる抵抗力がある。
【0073】
シェルは、化学的プロセスあるいは非化学的プロセスによって形成される。非化学的プロセスとしては、スプレーコーティング、液体ベッドコーティング、有機溶媒または超臨界CO2中での溶媒コアセルベーション、溶媒蒸発、スプレー乾燥、回転ディスクコーティング、押出し(環状ジェット)、一層ごとの形成などがある。化学的プロセスの例としては、界面重合、grafting from法、grafting unto法、コア−シェル重合などがある。
【0074】
液体ベッドコーティングでは、通常、循環する液化ベッド(Wurster型)の中にコアビーズをおき、コーティング溶液または懸濁液をスプレーする。コーティングポリマーは、アルコール、酢酸エチル、ケトンなどの適切な溶媒に溶かして、あるいはラテックスとして使用することができる。通常、緊密かつ均一層の膜を形成できるように、かつ粒子が水溶液に触れて膨潤した際にひび割れができないようにするために、条件を最適化する。膜ポリマーは、体積膨張に従って伸び、寸法変化に対応できるのが望ましい。ポリマー膜は断裂時の伸びが10%以上、好ましくは30%以上である。このアプローチの例が、Ichekawa H.ら、International Journal of Pharmaceuticals,216(2001),67−76に報告されている。
【0075】
溶媒コアセルベーションはこの分野において広く知られている。例えば、Leach,K.ら、J.Microencapsulation,1999,16(2),153−167を参照のこと。このプロセスでは、通常、コアポリマーとシェルポリマーの2種類のポリマーを溶媒に溶かし、さらに水相中の液滴として乳化する。液滴の内部は通常、均一な2成分ポリマー溶液である。次に、注意しながら蒸留を行うことにより、溶媒をゆっくりと飛ばす。各液滴内のポリマー溶液は、ポリマーの体積割合が高くなるにつれて、相分離を起こす。一方のポリマーが水と液滴の界面に移動し、ある程度の形をなしたコア−シェル粒子(または二重ミクロスフェア)を形成する。
【0076】
溶媒コアセルベーションは、コア上にシェルポリマーの薄膜を制御しながら沈殿させるのに公的な方法の1つである。ある実施例において、このコアセルベーション技法には、シェル材質を溶解させた連続的な液層中にコアビーズを分散させる手順が含まれる。コアセルベーションプロセスでは、この連続相の溶解力が次第に変化していき、シェル材質の部分に近づくとだんだん不溶性になる。沈殿の始まり部分では、シェル材質の一部がビーズ表面に薄い堆積または薄膜となっている。溶解度の変化は、さまざまな物理化学的手段によって生じさせることができる。例えばpHの変化、イオン強度の変化(透過性など)、溶媒組成の変化(溶媒の追加や蒸留によって)、温度の変化(LCST(下限臨界溶液温度)でのシェルポリマーが使用されている場合など)、圧力の変化(特に臨界超過液体が使用されている場合)などが挙げられ、これらに限らない。より好ましいのは、pHあるいは溶媒組成により変化を生じさせる場合の、溶媒コアセルベーションプロセスである。通常、pHによって変化を生じさせ、かつポリマーにアミンタイプの材質を選択した場合、シェルポリマーは低pHで最初に溶解する。次の段階として、pHを次第に上げて不溶限界にし、シェルを沈殿させる。pHの変化は通常、激しく攪拌しながら塩基を追加していくことによって行う。他の方法としては、前駆物質の温度加水分解による塩基の生成が挙げられる(例えば尿素を温度処理してアンモニアを発生させるなど)。最も好ましいコアセルベーションプロセスは、シェル材質と、シェル材質の溶媒/非溶媒混合物から成る三元システムを用いた場合である。コアビーズが均一溶液内に分散した状態で、溶媒を蒸留によって次第に除去していく。シェルコーティングの厚さは、連続相のシェルポリマー濃度をライン内またはライン外で調整することができる。一部のシェル材質がコア表面にコロイド状または離散した粒子として沈殿するという状況はよく起こるが、これは、コア−シェル粒子を簡単な濾過およびふるい操作によって簡単に分離することができる。シェル厚さは通常、最初のコア対シェルの重量比と、前述のシェルポリマーのコアセルベーションの度合によってコントロールされる。コア−シェルビーズは外膜の完全性(競合結合によって測定される)を向上させるため、焼き鈍しを行う。
【0077】
超臨界CO2コーティングはこの分野において広く知られている。例えば、Benoit J.P.ら、J.Microencapsulation,2003,20(1)87−128を参照のこと。このアプローチは、いわば溶媒コアセルベーションの変形である。まず、シェルコーティング材料を超臨界CO2に溶かし、超臨界条件においてその液中に活性物質を分散させる。この反応器を冷まして液体CO2条件にすると、シェル材質は溶けていられなくなり、コアビーズ上に沈殿する。このプロセスは、蝋やパラフィンなどの小分子のシェル材料を用いて例示されている。コア−シェル材質は粉末として回収される。
【0078】
回転ディスクコーティング法では、コア粒子をコーティング内に懸濁させ、回転ディスクを使用することによって小さな液滴として余分なコーティング液を除去し、残るコーティングがコア粒子周りにとどまる。米国特許第4,675,140号を参照。
【0079】
一層ごとのプロセスでは、電荷をもったコア材質が、反対の電荷をもったポリ電解質と接触し、ポリマー複合体を形成する。コア表面に複数の層が沈殿するまでこの手順を繰り返す。さらにオプションとして、架橋層も可能である。
【0080】
界面重合は、反応モノマー1種を含むコア材質を、反応相手となるモノマーを含む連続相の中に分散させる手順で始まる。重合反応がコアの界面で起こり、シェルポリマーを生成する。コアは、親水性でも疎水性でもよい。通常、この目的に使用されるモノマーには、ジアシルクロライド/ジアミン、ジイソシアネート/ジアミン、ジイソシアネート/ジオール、ジアシルクロライド/ジオール、ビスクロロフォーメートとジアミンまたはジオールなどがある。膜の多孔性や丈夫さをコントロールするために、三官能性のモノマーも使用することができる。
【0081】
また別の実施例として、イオン交換材質を、反対の電荷(コア材質は通常マイナスに荷電し、シェルはプラスに荷電)のポリマー分散液に接触させてシェルを形成し、このビーズ粒子を濾過し、シェルポリマーの遷移温度(軟化点)より高い温度で、液化ベッド内で焼き鈍しを行う。この実施例においてポリマー分散液はラテックスまたはポリマーコロイド分散液で、粒子サイズはミクロン単位またはそれ以下の範囲にある。
【0082】
さらに、ある実施例において、シェル材質は、コア材質またはその誘導体(メチルエステルや塩化アシルなど)を含む酸と、反応性モノマーまたはポリマーとの処理により成る。好ましくは、この酸反応性材質はポリマーであり、より好ましくはポリアミンである。例えば、カルボキシル化されたコアポリマーを、有機溶媒中において高温でポリエチレンイミンと反応させ、COOH基とNHおよびNH2基の間をアミン結合させる。アミン結合生成を促進するには、酸基を活性化するのも役立つ。例えば、COOH基やSO3H基を塩化チオニルまたはクロロスルホン酸で処理して、これらの官能基を酸塩化物の形態に変える。詳しくはSataら、Die Angewandte Makromolekulare Chemie 171,(1989)101−117(Nr2794)を参照。
【0083】
grafting from法ではコア表面にある重合開始が可能な活性箇所が関与し、ポリマー鎖は単層の表面から成長していく。リビング重合法(ニトロキシド媒介リビング重合、ATRP、RAFT、ROMPなど)が最も適しているが、非リビングの重合法も適用されている。
【0084】
grafting onto法では、小分子(通常は、エポキシやイソシアネート、無水物などの親電子物質)をポリマーコア材質に接触させ、このコアには反応性部分がある(通常、アミンやアルコールなどの求核基)。このようにして形成されるシェルの厚みは、シェルの小分子前駆物質の拡散率と、コアとの反応率によって制御される。拡散が遅く反応性が高い場合は、コア表面から近い範囲内に反応がとどまるため、薄いシェルになる。逆に、拡散が速く反応が遅い場合は、明確なシェルを形成せずコア全体に透過する傾向になり、シェルとコアの境界がはっきりしない、グラデーションとして形成される。
【0085】
コア−シェルの重合化は、乳化重合、懸濁/ミニ懸濁重合、分散重合などで行うことができる。これらのプロセスはすべて、フリーラジカル重合を利用したものである。乳化重合では、界面活性剤を含んだ水性媒体中で行い、水に対する溶解度が低いモノマーを用いて、水溶性のフリーラジカルイニシエーターを使用する。ポリマー粒子は、ミセル核形成または均質核形成、またはこれら両方として生成される。コア−シェル粒子は、理論的には、まずコアモノマーを加え、次にシェルモノマーを加えれば形成されるはずである。ただしこれは、モノマーを加えると瞬時に消費される場合(「飢餓状態」)に限られる。カリウム結合コアビーズは、好ましくは水に難溶性のモノマー(アルキルエステルやフルオロアクリル酸など)から生成される。
【0086】
懸濁/ミニ乳化重合においては、フリーラジカルイニシエーターはモノマーに溶ける。モノマーとイニシエーターをあらかじめ溶かしておき、界面活性剤または両親媒性ポリマーのいずれかで安定化させた液滴に乳化する。この方法では、一方の形成済みポリマー(例えばシェルポリマー)を溶かしておくこともできる。反応が進むと、シェルポリマーとコアポリマーの層が分離し、目的のコア−シェル粒子が形成される。
【0087】
分散重合では、モノマーとイニシエーター両方が連続層(通常、有機溶媒)に溶ける。ブロックコポリマーが立体配置スタビライザーとして用いられる。ポリマー粒子は、均質核形成として生成され、成長する。粒子サイズは1〜10ミクロンの範囲で、単分散する。
【0088】
好ましい分散プロセスにおいては、重合にはStover H.ら、Macromolecules,1999,32,2838−2844に報告されている精製方法を用いる。この方法を次に説明する。シェルモノマーにはジビニルモノマー(1,4−ジビニルベンゼンなど)がかなりの割合含まれており、コア粒子の表面には重合化が可能な二重結合がある。シェル重合化の反応メカニズムは、連続層にある短いオリゴラジカルの形成によるものであり、これが粒子表面にある二重結合に捕捉される。オリゴマー自体には反応していない不飽和結合があり、これが反応性二重結合内の表面を埋める。結果として、シェルとコア材質との間にはっきりした境界をもつ架橋シェルが形成される。
【0089】
ある実施例において、本発明のコア−シェル組成は、適切なモノマーを使用した、通常の逆懸濁プロセスによる陽イオン交換コアの形成によって合成される。酸基と後反応させることにより、反応性二重結合でこの粒子の表面を修飾する。次にアセトニトリルなどの通常の分散重合溶媒(陽イオン交換コアポリマーについては非溶媒)中に分散させ、官能基モノマーと共にDVBまたはEGDMAの重合化混合物を追加する。
【0090】
好ましい実施例において、シェルはEudragit(例えばEudragit RL
100またはRS 100またはこれらの組合せ)、またはポリエチレンイミン(PEI)と共に形成される。これらのシェルは、溶媒コアセルベーション技法によって適用することができる。PEIは、オプションとしてベンジル化することができ、また架橋することもできる。適切な架橋剤の例としては次のものが挙げられ、これらの他にもあり得る:
【0091】
【化2】
(治療方法)
ここに述べる方法および組成は、疾患や特定の薬剤使用により生じた高カリウム血症の治療に適している。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、ここに記載されている組成および方法は、特にカリウム摂取量を制限していない場合に、カリウム排泄の減少によって生じた高カリウム血症の治療に用いられる。腎臓からのカリウム排泄減少の主な原因は腎不全(特に腎糸球体濾過率が低下している場合)であり、しばしばカリウム排泄を阻害する薬剤(例えばカリウム保持性利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムなど)の摂取も伴っている。アルドステロンに対する遠位尿細管の反応に支障がある場合、例えば糖尿病に併発するIV型の遠位尿細管性アシドーシスや、鎌状赤血球貧血、慢性の慢性の尿路部分閉塞なども、カリウム排泄減少の原因となる。カリウムは、広汎性副腎皮質不全やアジソン病、低アルドステロン症においても、排泄が阻害される。高カリウム血症は、糖尿病により低レニン性低アルドステロン症や腎不全を発症している場合によく起こる(Mandal,A.K.1997.Hypokalemia and hyperkalemia.Med Clin North Am.81:611−39)。
【0093】
特定の好ましい実施形態では、ここに記載されているカリウム結合ポリマーは長期間にわたって投与される。通常、このような長期間の投与により、患者は高カリウム血症を引き起こす薬剤(カリウム保持性利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムなど)を使用し続けることができる。また、ここに記載されているポリマー組成の使用により、高カリウム血症を引き起こす薬剤を使用できなかった患者群も、このような薬剤を使用できるようになる。
【0094】
特定の長期的使用状況において、好ましいカリウム結合ポリマー使用では、1日に最高で約5mmolのカリウム、または1日に約5〜約10mmolのカリウムを除去することができる。急性状態では、使用するカリウム結合ポリマーは1日に約15〜約60mmolのカリウムを除去することができるのが望ましい。
【0095】
他の特定の実施形態において、ここに記載されている組成および方法は、細胞内から細胞外へのカリウム移動によって生じた高カリウム血症の治療に用いられる。感染症や外傷によって起こる細胞破壊、特に横紋筋融解や筋細胞(主なカリウム貯蔵源)の溶解、腫瘍の溶解などにより、急性の高カリウム血症が生じることがある。さらによく見られるのは、軽度〜中程度のカリウムの細胞内移動不全で、これは糖尿病性ケトアシドーシス、急性アシドーシス、代謝性アルカリ血症の治療に用いられる塩化アルギニンまたは塩化リジンの注入、50%デキストロースやマンニトールなどの高張液の注入の場合に生じる。β−受容体阻害薬も、エピネフリンの影響を阻害するため、高カリウム血症を起こすことがある。
【0096】
他の特定の実施形態において、ここに記載されている組成および方法は、過剰なカリウム摂取によって生じた高カリウム血症の治療に用いられる。カリウム摂取過剰だけでは、高カリウム血症の一般的な要因とはならない。高カリウム血症はむしろ、カリウムの細胞内移動や腎臓のカリウム排泄機能に支障がある患者が、カリウム摂取を制限しない場合に生じる。例えば、食事制限を遵守していない透析患者に起こる急死は、高カリウム血症によるものと考えられる。
【0097】
本発明において、カリウム結合ポリマーおよびコア−シェル組成は、他の製薬有効成分と共に投与することができる。共投与の際は、2つの薬剤を同じ投与形態で同時に投与することも、別々の投与形態で同時に投与することも、また別々の投与にすることもできる。例えば高カリウム血症の治療について、カリウム結合ポリマーとコア−シェル組成を、高カリウム血症を引き起こす薬剤(例えばカリウム保持性利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムなど)と一緒に投与することができる。一緒に投与される薬剤は、同じ投与形態の中に一緒に製剤することができ、同時に投与することができる。また、これら両方の薬剤を別々の形態にして、同時に投与することができる。別の方法として、薬剤は別々に投与される。別の投与プロトコルでは、薬剤の投与は数分間、数時間、数日間の間をおいて投与することができる。
【0098】
ここで使用される「治療」という語には、治療効果や予防的効果の達成が含まれる。治療効果とは、対象疾患の根本的治癒、状態改善、予防を意味する。例えば、高カリウム血症の患者における治療効果とは、高カリウム血症の根本的治癒または状態改善が含まれる。また治療効果は、元となっている疾患そのものはまだ残っていても、それに関連する生理学的症状を根本的に治癒、状態改善、または予防し、これにより患者の回復が見られるようにすることである。例えば、カリウム結合ポリマーを高カリウム血症の患者に投与すると、患者の血清カリウムイオン濃度が下がるだけでなく、腎不全など、高カリウム血症に併発する他の疾患についても改善が見られる。予防的効果では、高カリウム血症の診断がついていなくとも、高カリウム血症を起こす高リスク患者や、高カリウム血症の生理学的症状が1つまたは複数出ている患者に、カリウム結合ポリマーを投与することができる。
【0099】
本発明の薬学的組成物はカリウム結合ポリマーが効果的な分量、すなわち治療や予防のメリットを達成できる分量で存在する組成である。個々の用途に効果的な実際量は、患者(年齢や体重)、病状、投与経路によって異なってくる。有効量の決定は、特にここに記載される情報を踏まえれば、ゆうにこの分野の技能の範囲内である。
【0100】
人間に対する有効量は、動物モデルから決定することができる。例えば、人間の用量は、動物に効果が見出された胃腸管内濃度を達成するように、処方することができる。
【0101】
動物におけるカリウム結合ポリマーの用量は、治療する疾患や投与経路、患者の身体的特徴などによって異なる。治療および予防目的のカリウム結合ポリマーの用量は、約0.5g/日〜約30g/日の範囲となる。ポリマーは、食事と共に投与されるのが好ましい。この組成は1日1回、2回、3回のいずれかで投与できる。最も望ましい容量は、1日当たり約15g以下である。好ましい用量範囲は約5g/日〜約20g/日、より好ましくは約5g/日〜約15g/日、さらに好ましくは約10g/日〜約20g/日、最も好ましくは約10g/日〜約15g/日である。
【0102】
いくつかの実施形態において、コア−シェル組成物に結合したカリウムの量は、シェルなしでコア部分(カリウム結合ポリマー)だけが用いられた場合よりも多量である。よって、いくつかの実施例におけるコア部分の用量は、シェルなしで使用されている場合のコアの量に比べ、シェルありで使用されている場合のほうが少なくなっている。よって、コア−シェル製薬組成物のいくつかの実施例において、コア−シェル製薬組成物におけるコア部分の量は、シェル部分なしで動物に投与された場合の量よりも少ない。
【0103】
ここに記載されている組成物は、食品製品や食品添加物として使用できる。これらは、カリウムレベルを下げるため、食品の消費前や、パッケージングの際に添加することができる。この組成は、K+濃度を下げるために、動物の飼料に使用することもできる。これは例えば、水分の排泄を減少させるために、豚や鶏の飼料に入れて好ましい結果が得られる。
【0104】
(調剤と投与経路)
ここに記載されているポリマー組成とコア−シェル組成、または薬学的に受容できるこれらの塩は、さまざまな投与経路や方法を使って患者に投与することができる。最も好ましい投与経路は、経口投与、小腸投与、直腸投与である。
【0105】
必要に応じて、ポリマーおよびコア−シェル組成は他の治療薬と組み合わせて投与することができる。本発明の組成と共に投与できる治療薬の選択は、ある程度、治療する疾患によって異なる。
【0106】
ポリマー(または薬学的に受容できる塩)は、それ自体で、または製薬組成の形で投与することができる。この製薬組成においては、活性組成は、薬学的に受容できる担体や賦形剤、希釈剤を1つまたは複数使った混合物中に用いられる。本発明に従った使用の製薬組成は、従来的手法により調剤することができる。すなわち、1つまたは複数の、生理学的に受容できる担体(賦形剤と助剤から成る)を使用し、活性物質のプロセスを促進し、製薬分野で使用可能な調剤にする。適切な調剤は、選択する投与経路によって異なる。
【0107】
経口投与では、この分野でよく知られている薬学的に受容できる担体活性物質と活性物質とをあらかじめ混合して調剤することができる。治療する患者に経口投与するための、本発明の組成の調剤に使用できる担体としては、錠剤、粒剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、カシェ剤、その他類似の形態がある。ある実施例において、経口調剤には腸溶性樹脂コーティングはない。経口用途の製薬調剤は、固体賦形剤と、得られた混合物をすり潰し(オプション)、細粒の混合物を処理し、場合によっては適切な助剤を加えて、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤としては、特に糖などの増量剤(ラクトース、蔗糖、マンニトール、ソルビトールなど)と、セルロース調剤(例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)など)がある。望ましい場合は、架橋ポリビニルピロリドンや寒天、アルギン酸またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)の分解剤を追加することもできる。
【0108】
糖衣錠コアは、適切なコーティングで提供される。このためには、濃縮糖液を使用することができる。この濃縮糖液にはオプションとして、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、carbopolゲル、ポリエチレングリコールや二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒や溶媒混合物などを含めることができる。識別のためや、活性物質用量が異なる組合せを区別するため、染料や顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに追加することもできる。
【0109】
経口投与については、組成物は徐放製剤にすることができる。徐放製剤に関しては、数多くの技法がこの分野で知られている。
【0110】
経口投与に用いられる薬学的処方物には、ゼラチン製のプッシュフィット型カプセルや、ゼラチンと可塑剤(グリセロールやソルビトール)製の密封型ソフトカプセルが含まれる。プッシュフィット型カプセルには、増量剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、潤滑剤(タルクやステアリン酸マグネシウム)、安定剤(オプション)と活性成分との混合物を中に入れることができる。ソフトカプセルについては、活性組成を適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、液体ポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させる。さらに、安定剤を追加することもできる。経口投与用の製剤はすべて、投与に適した用量でなければならない。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーは、チュアブル錠剤の形態における薬学的組成物として提示される。有効成分に加え、次のようなタイプの賦形剤が一般的に使用されている:必要な口内感覚を得るための甘味料、および、甘味料が錠剤の硬さのために充分でない場合は結合剤を追加;抜き型の壁の摩擦を抑え、錠剤を外れやすくするための潤滑剤;場合によっては咀嚼を容易にするために少量の錠剤分解物質。一般に、現在使用されているチュアブル錠剤の賦形剤濃度は、有効成分の3〜5倍であり、甘味料が非有効成分の量のうち大半を占めている。
【0112】
本発明は、本発明のポリマーと、チュアブル錠剤の製剤に適した製薬賦形剤を含む、チュアブル錠剤を提示する。本発明のチュアブル錠剤に使用されているポリマーが、口腔内および食道内を移動する際の膨潤率は、5未満、好ましくは4未満、より好ましくは3未満、さらに好ましくは2.5未満、最も好ましくは2未満である。このポリマーと適切な賦形剤から成る錠剤は、口内触感、味、歯の粘着性などの感覚的特性が許容できる程度であり、同時に、噛んで唾液と接触しても食道を塞ぐ危険性がない。
【0113】
本発明のある面において、賦形剤の一般的なはたらきである機械的・熱的特性はポリマーがすでにもっているため、製剤に必要な賦形剤の量を減らすことができる。いくつかの実施例において、有効成分(例えばポリマー)は、チュアブル錠剤の重量の約30%以上、より好ましくは約40%以上、もっと好ましくは約50%以上、最も好ましくは約60%以上を占め、残りが適切な賦形剤から成っている。いくつかの実施例において、ポリマーは、約0.6g〜約2.0gの錠剤、好ましくは約0.8g〜約1.6gの錠剤を構成する。いくつかの実施例において、ポリマーは、錠剤の約0.8g以上、好ましくは約1.2g以上、最も好ましくは約1.6g以上を占める。ポリマーは、適切な強度/脆さと粒子サイズを有するよう製造され、適切な硬さ、良好な口内触感、圧縮性など、従来の賦形剤の使用目的と同じ性質を提供する。本発明のチュアブル錠剤に使用されているポリマーの粒子サイズは、未膨潤状態で、平均直径が約80ミクロン未満、70ミクロン未満、60ミクロン未満、50ミクロン未満、40ミクロン未満、30ミクロン未満、20ミクロン未満である。好ましい実施例において、未膨潤状態の粒子サイズは約80ミクロン未満、好ましくは約60ミクロン未満、最も好ましくは約40ミクロン未満である。
【0114】
本発明のチュアブル錠剤に有用な製薬賦形剤としては、結合剤(マイクロクリスタリンセルロース、コロイド状シリカとその組合せ(Prosolv90)、カーボポル、プロビドン、キサンガムなど)、味付け剤(蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトールなど)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、植物性脂肪酸など)、およびオプションとして錠剤分解物質(クロスカルメロースナトリウム、ゲランガム、セルロースの低置換ヒドロキシプロピルエーテル、スターチグリコレートナトリウムなど)がある。その他の添加剤としては、成形剤、色素、タルクなどがある。添加剤およびその他の適切な成分については、この分野でよく知られており、例えばGennaro AR(編),Remington’s Pharmaceutical Sciences,第20版を参照されたい。
【0115】
いくつかの実施例において、本発明は、ここに記載されているポリマーと適切な賦形剤から成るチュアブル錠剤として製剤する製薬組成を提示する。いくつかの実施例において、本発明は、ここに記載されているポリマーと増量剤、潤滑剤から成るチュアブル錠剤として製剤する製薬組成を提示する。いくつかの実施例において、本発明は、ここに記載されているポリマーと増量剤、潤滑剤から成るチュアブル錠剤として製剤する製薬組成を提示し、ここで増量剤は蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトールの中から選び、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸マグネシウム塩である。
【0116】
錠剤は噛みやすく口内で分解するものであれば、どんな大きさ・形状でもよいが、好ましくは円柱形で直径約10〜40mm、高さ約2〜10mm、最も好ましくは直径約22mm、高さ約6mmである。
【0117】
別の実施例において、ポリマーは高Tg/高融点の低分子量賦形剤(例えばマンニトール、ソルボース、蔗糖など)とあらかじめ配合しておき、ポリマーと賦形剤が完全に混合したソリッドな溶液を生成させる。押出し、スプレー乾燥、冷蔵乾燥、凍結乾燥、湿潤顆粒形成などの混合方法が有用である。混合度の目安は、示差走査熱量計や、動的機械分析などの物理的測定によって得られる。
【0118】
ポリマーをはじめとする製薬成分が含まれるチュアブル錠剤の製造方法は、この分野で知られている。例えば、欧州特許出願第EP373852号A2および米国特許第6,475,510号や、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。これら全体は、参照によってここに組み込まれる。
【0119】
いくつかの実施例において、本発明のポリマーは、液体製剤の形態における製薬組成として提示される。いくつかの実施例において、製薬組成は、イオン結合ポリマーが適切な液体賦形剤中に分散した状態で含まれている。適切な液体賦形剤については、この分野でよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【実施例】
【0120】
(実施例1:高結合容量のポリマーの調製)
(材質:)
化学薬品はすべて、一般販売経路から購入し、そのまま使用した。反応はすべて窒素環境下で行った。化学構造および略称を下記の表6および表7に示す。
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
イニシエーター:VA−044:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド;K2S2O8、過硫酸カリウム
(FAAからのゲル調製の一般的手順:)
15ml試験管に、FAA、X−V−1、水を入れ、磁石スターラーを中に入れた。45°Cで20分間、混合液を攪拌し、VA−044(100mg/ml水溶液)を加えた。溶液がゲル化し、これを45°Cで4時間おいてから、室温まで冷ました。
【0123】
ゲルを50mlポリエチレン試験管に移し、水を加えて合計体積を30mlとした。ゲルをスパチュラでつぶし、Ultra−Turraxでさらに粉砕した。試験管にキャップをして、3000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄みを捨てた。ゲルに1.0M
HClを加えて合計体積を45mlにし、試験管にキャップをして、30分間転倒攪拌した。試験管を3000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄みを捨てた。この転倒攪拌・遠心分離手順を、1.0M HClでもう1回、ナノピュア水で3回繰り返した。このゲルを3日間凍結乾燥した。反応溶液の組成とゲル収量を、表8に示す。
【0124】
【表8】
(NaVSAからのゲル調製の一般的手順:)
市販のNaVSAを酸型に転換し、Breslowら(J.Am.Chem.Soc.,1954,76,6399−6401)に記載されている方法に従い、減圧蒸留によって精製した。純粋な酸は水に溶かし、0°Cで慎重にNaOH溶液を加えて中和した。無色の塩溶液を減圧蒸留で濃縮し、濃度56重量%とした。
15ml試験管にNaVSA溶液と架橋剤を入れ、磁石スターラーを入れ、この混合物を45°Cで20分間攪拌した。VA−044(50mg/mL水溶液)またはK2S2O8(50mg/mL水溶液)を加えた。溶液を45°C(VA−044使用の場合)または50°C(K2S2O8使用の場合)で16時間攪拌してから、室温まで冷ました。このゲルを、FAAゲルと同じ手順に従って精製した。反応溶液の組成とゲル収量を、表9に示す。
【0125】
【表9】
(NaVSAとFAAの共重合からのゲル調製の一般的手順:)
15ml試験管に、FAA溶液とNaVSA溶液を入れ、磁石スターラーを中に入れた。この混合液を室温で10分間攪拌し、FAAをすべて溶かした。X−V−1を追加して、混合液を室温で10分間攪拌し、次に45°Cで20分間攪拌した。VA−044(100mg/ml水溶液)を追加し、この溶液を45°Cで3時間攪拌してから、室温まで冷ました。このゲルを、FAAゲルと同じ手順に従って精製した。反応溶液の組成とゲル収量を、表10に示す。
【0126】
【表10】
(AAとFAAの共重合からのゲル調製の一般的手順:)
磁石スターラーの入った15ml試験管に、FAA、X−V−1、水を入れ、固形物がすべて溶けるまで攪拌した。AAを加え、次にVA−044(100mg/ml水溶液)を加えた。この混合液を45°Cで3時間攪拌してから、室温まで冷ました。このゲルを、FAAゲルと同じ手順に従って精製した。反応溶液の組成とゲル収量を、表11に示す。
【0127】
【表11】
(ポリ(スルファミン酸ビニル)ゲルの調製の一般的手順:)
Badessoら(Hydrophilic Polymers:Performance with Environmental acceptance,P489−504)にある手順に従って、塩酸ポリビニルアミン(PVAm.HCl)を調製した。PVAm.HClとエピクロロヒドリンとの架橋反応によって、PVAmゲルを調製した。手順は次の通り:100ml丸底フラスコに33重量% PVAm.HCl水溶液(15g、62.9mmol)を入れ、50重量% NaOH溶液(2.63g)を追加して50mol%のPVAm.HClを中和した。エピクロロヒドリン(1.0g)を追加し、この混合液を磁石スターラーで攪拌し、ゲル生成によってスターラーが止まるまで攪拌を続けた。ゲルをさらに650Cで12時間寝かせてから、50mlポリエチレン試験管に移し、水を加えて合計体積を30mlとした。ゲルをスパチュラでつぶし、Ultra−Turraxでさらに粉砕した。このゲルを1M HClで洗い、さらにFAAゲルの項で記述した手順を用いてナノピュア水で洗った。最後にPVAmゲルを3日間凍結乾燥した。
【0128】
(ポリ(スルファミン酸ビニル)ゲルの調製の一般的手順:)
20mlバイアルに、PVAmゲル0.5gと溶媒10mlを入れた。混合液を600Cで1時間加熱し、次に0.5gの三酸化イオウトリメチルアミン(SO3.N(CH3)3)を追加した。無機アルカリ(Na2CO3または2M NaOH溶液)を反応混合物に加えてpHを9以上に維持した。この混合物を一定時間、60℃に加熱した。この混合物を遠心分離にかけ、上澄みを捨てた。このゲルを、pHが7になるまでナノピュア水で洗い、凍結乾燥した。反応条件と、アミン基からスルファミン酸基への転換について、表12に示す。
【0129】
【表12】
(実施例2:結合容量スクリーニングプロトコル)
実験はすべて二重に実施された。各ポリマーを約30mg、16×100mmのガラス試験管に2本ずつ等分した。Dowex50WとAmberlite CG−50を内部比較標準として各実験に含めた。該当試験の結合緩衝溶液(下記Buffer1、Buffer2、Buffer3のいずれか)を加えて、最終濃度を2.5mg/mlとした。試験管をテフロン(登録商標)膜で密封し、最低1時間、室温で保温しながら絶えず転倒混和を続けて、陽イオンがポリマーとの結合平衡に達するようにした。次に試験管を500gで30分間遠心分離にかけ、樹脂を分離した。上澄み液のサンプルをとり、イオンクロマトグラフィー(IC)により、カリウムの平衡濃度(K+eq)とナトリウムの平衡濃度(Na+eq)を測定した。K+eqとNa+eqを、ポリマーのないBuffer1、Buffer2、Buffer3中のカリウム濃度(K+startおよびNa+start)と比較することにより、陽イオンの量(陽イオンmmol/ポリマー1g)が算出された。ナトリウムとカリウムのポリマー結合比も、同様にして算出された。
【0130】
ナトリウムとカリウムそれぞれについての樹脂結合が、次の条件の一部または全部においてテストされた:
1.75mM NaOH、75mM KOH(pH調整なし)
2.50mMクエン酸、75mM KOH、75mM NaOH、pH6.35(HClで調整)
3.50mMクエン酸、75mM KOH、75mM NaOH、pH3(HClで調整)
【0131】
【表13−1】
【0132】
【表13−2】
【0133】
【表13−3】
【0134】
【表13−4】
【0135】
【表13−5】
これらの例により、本発明のポリマーは、生理学的pHにおいて高いカリウム結合容量を示している。特に、2−フルオロアクリル酸から調整されたポリマーは、スルホン化ポリスチレン樹脂Dowexの最大2倍もカリウムを結合することができる。
【0136】
(α−フルオロアクリレートコポリマーとアクリル酸の滴定曲線(表11より))
このプロトコルはHelfferich,F.「Ion Exchange」(1962)McGraw−Hill,NewYork)に拠った。
1.約50mgのポリマー(酸型)を、15×100mmのガラス試験管に測り入れた。2.必要なmEqを生成するのに要した1M NaOHの体積を計算し、充分な量の水を試験管に加えて、溶液体積と樹脂重量の比が一定になるようにした。
3.1M NaOHストック溶液から、必要なmEqのNaOHをポリマーに加えた。
4.試験管を密封し、4日間回転混和して平衡に達させた。
5.混合を続けながら平衡pHを測定した。
【0137】
この結果を図16に示す。この例により、ポリα−フルオロアクリレートは、Amberlite CG50などのメタクリレート含有イオン交換樹脂よりもpKa値(半中和点でpH値に等しい)が低いことが示されている。FAAゲル材質(表11の100982A1)のpKa値は、図16より、約5.6と見積られ、Amberlite CG50では約8と見積られる。アクリル酸を組み込むと、FAA−アクリル酸コポリマー中のアクリル酸の重量%に比例して、pKaが増加する傾向にある。これは、COOHに対してαの位置にあるフッ素などの電子吸引基によって、pKaが減少し、生理学的pH範囲の5〜7における全体の結合容量が増加することを示している。
【0138】
(実施例3:人間の胃腸管内における陽イオン結合予測の手順)
この手順は、カリウム結合剤使用の条件をモデル化するためにデザインされたもので、他の競合陽イオンが存在する中でカリウム(標的溶質)に対するポリマーの結合特性を測定するものである。食物模擬液を用意し、ペプシンおよび膵臓ジュースの存在下で人工的に消化した。消化プロセスを空腸レベルまで模するよう、酵素の追加の順序とpH条件を調製した。試験するポリマーにあらかじめリチウムを付けておき、これを消化模擬液に加え、一定時間、平衡に達させた。この混合液を遠心分離にかけ、上澄み中のNa+、K+、NH4+、Ca2+、Mg2+をイオンクロマトグラフィーで調べた。放出されたリチウムは、陽イオン交換の合計として算出された。他の陽イオンの濃度低下は、西洋型食事における結合バリエーションを計算するのに用いられた。
【0139】
(樹脂の調製)
樹脂(試験樹脂、または比較に使用されるDowex 50WX4−200)は、1M
HCl中で徹底的に洗い、H型に転換した。次に1M LiOH中で徹底的に洗った。余分のLiOHを、ddH2O中で洗って除去した。樹脂を凍結乾燥し、デシケーター中に保存した。
【0140】
図1は模擬液中の陽イオン初期濃度を示す。図2は模擬液中の、樹脂による陽イオン結合を示す。
【0141】
(盲腸内容物および便の抽出液における結合容量の測定)
氷冷したddH2Oを2倍量(w/v)、人間の便と、正常なウサギの盲腸内容物にそれぞれ加えた。これらを4oCで最低1時間、転倒混和しながら保温し、水溶性陽イオンを抽出した。便および盲腸内容物の抽出液と、解凍した食事模擬液を、それぞれ2000gで10分間遠心分離にかけ、不純物を除去した。Li型にしたDowex50Wを約50mg、16×100mmのガラス試験管に測りとった。樹脂を入れない比較標準試験管も含めた。不純物を除いた抽出液または模擬液を、樹脂の最終濃度2.5mg/mlに入れた。5〜10mlの抽出液または模擬液を比較標準試験管に加えた。試験管を密封し、4oCで90分間回転混和した。試験管を500gで30分間遠心分離にかけ、樹脂を沈殿させた。上澄液のサンプルを採取した。イオンクロマトグラフィーにかける準備として、サンプルを13,000gで10分間遠心分離にかけ、上澄をとり、遠心分離によって3000Daカットオフの透析膜に素早く通した。抽出液をさらにddH2Oで1:5(v/v)に薄めてから、ICカラムに入れた。Li+、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++それぞれの初期濃度(樹脂なし)および平衡濃度(樹脂あり)を測定し、Li+の放出量(陽イオン(mmol)/樹脂(g))と、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++の結合量が算出された。
【0142】
(人間の便抽出液における樹脂の陽イオン結合測定の手順)
樹脂と便の調整を次の通り行った。樹脂は、1M HClで徹底的に洗い、H型に転換した。余分のHClを、ddH2O中で洗って除去した。樹脂を凍結乾燥し、デシケーター中に保存した。便サンプルは、被験者2名から採取し、すぐに−80oCで冷凍保存し、体外でのアンモニウム生成を最小限に抑えた。
【0143】
実験はすべて三重に実施された。図3および図4の誤差バーは、標準偏差値を示す。2倍量(w/v)の氷冷ddH2O中に便サンプルを再懸濁し、一晩4oCで保温して水溶性陽イオンを抽出した。この抽出液を2000gで10分間遠心分離にかけ、不純物を除去した。H型樹脂を、容量15mlの使い捨てカラムに測って入れた。これを150mMLiOHで徹底的に洗い、Li型に転換した。ddH2O中で洗い、余分のLiOHを除去した。不純物を除いた便抽出液をカラムに入れ、樹脂の最終濃度が2.5mg/ml(抽出液)とした。樹脂がない状態で樹脂濃度を算出するため、サンプルが1つ維持された。カラムを密封し、4oCで3時間回転混和した。これを遠心分離により、50mlポリプロピレン試験管に入れて溶出させた。溶出した抽出液および、保持されている不純物除去した便抽出液のpHを測定した(変化は見られなかった:サンプル1はpH6.75、サンプル2はpH7.1)。イオンクロマトグラフィーにかける準備として、サンプルを13,000gで10分間遠心分離にかけ、上澄みをとり、遠心分離によって3000Daカットオフの透析膜に素早く通した。抽出液をさらにddH2Oで1:5(v/v)に薄めてから、ICカラムに入れた。Li+、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++それぞれの初期濃度(樹脂なし)および平衡濃度(樹脂あり)を測定し、Li+の放出量(陽イオン(mmol)/樹脂(g))と、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++の結合量が算出された。図4において、「占有された合計」とは、Li+(一価)の結合サイトが他の陽イオン(Ca++およびMg++の二価の性質を考慮)に占有されている合計量を意味する。
【0144】
図4に示されているデータにより、FAAベース材質における人間の便抽出物のカリウム体外結合は、Dowex50WX4−200(カリウム結合剤Kayexalateの組成と本質的に同一)の約2倍であることがわかる。Dowex樹脂によるカリウムの体外(エキソビボ)結合は、人間の臨床研究においてスルホン酸ポリスチレン樹脂について報告されているものと本質的に同じである。これは、インビボでの結合パフォーマンスを予測する良い指標としてこの手法が使用できることを意味する。また、他の陽イオン(特にマグネシウムとカルシウム)は、ポリマーの結合サイトに対してカリウムと競合することも示唆されている。図3は被験者1および被験者2の便中に含まれる元の陽イオン濃度を示したものである。図4は人間の便抽出液における、陽イオン交換樹脂への陽イオン結合を示したものである。
【0145】
(実施例4:マグネシウムとカルシウムに対しカリウム結合選択性の高い準透過性膜の選択方法)
このプロトコルでは、イオン透過性に関してポリマー材質を最適化する方法を記述する。これは、カリウム選択性コア−シェルイオン交換粒子を精製するシェル部分として使用することができる。
【0146】
(ポリマー合成と膜の調製:)
ライブラリ形式の小型反応器を使ってグローブボックス内で、さまざまな組成のポリマー膜材質が、DBA(N,N’−ジブチルアクリルアミド)とDEAEMA(N,N’−ジエチルアミノエチルメタクリレート)のラジカル重合によって調製された。イニシエーターとしてAIBN、溶媒としてエタノールが用いられた。水中の沈殿として分離したポリマーを凍結乾燥し、GPCとH−NMRで測定した。下記のように、ポリマーの組成(DBAmol%)は30%〜70%であり、分子量は200K〜300Kとなっている:
【0147】
【表14】
ポリマー膜の調製は、DBA−co−DEAEMAの2重量%トルエン溶液を、再生成したセルロース透析膜の上にキャストすることによって行った(14KのMWCOのRC膜)。トルエンを蒸発させると、ポリマー膜が透析膜の上に形成された。このようにしてポリマー膜とRC膜の複合膜が調製された。
【0148】
(陽イオンに関する透過性)
複合膜を、直径13mmのガラス製試験管にクランプで止め、2Lの陽イオン供給体溶液中に沈めた。試験管には受容体溶液(供給溶液と同じ透過圧のラクトース溶液(240mM))10mlを入れた。一定時間間隔で受容体溶液のサンプルを採取し、イオンクロマトグラフィーで分析を行った。図5を参照。
【0149】
供給溶液は、NaCl、KCl、CaCl2・2H2O、MgSO4・7H2Oの水溶液を混合して調製した。この溶液は14mMのMES(2−[N−モルホリン]エタンスルホン酸]溶液を使用してpH6の緩衝溶液とした。ICによって測定された各種陽イオンの濃度は、次の通りである:[Na+]40.46mM、[K+]31.44mM、[Mg2+]33.25mM、[Ca2+]22.324mM。
【0150】
各種陽イオンの透過係数(P)の決定:測定セットアップで述べたように、受容溶液は一定時間間隔でサンプルを採取し、ICで分析を行った。Fickの拡散第一法則により、G.Van den Mooter,C.SamynおよびR.Kinget、International Journal of Pharmaceutics,111,127−136(1994)の式1に示されている計算式に従って、Pはデータの線形化からすぐに得られる。各陽イオンの透過係数は、この直線の傾きから算出される。
【0151】
【数1】
ここでCoは供給部分における溶質の最初の濃度、Caは時間t時点での受容部分における濃度、Vaは受容部分の体積、Sは膜の表面積である。
【0152】
選択透過性:上記のように、各陽イオンについて透過係数が算出された。Na+の透過係数を1とすると、陽イオンM1およびM2の選択透過性は次のように算出できる:PM1M2=P(M2)/P(M1)
(さまざまな膜によるさまざまな陽イオンの透過係数:)
表14には、さまざまな膜でのさまざまな陽イオンの透過係数を示す。ポリマーがより親水性になると(ポリマーD3ではDBA%48.5、ポリマーD4ではDBA%56.1%)、Na+、K+、Mg2+、Ca2+などの全ての陽イオンが透過しやすくなり、透過係数は対照用の透析膜(RC膜)と同等になり、陽イオンの自己拡散率を反映する。しかしながら、ポリマー膜のDBA内容が増加すると(表15のD5とD6を参照)、各陽イオンの透過係数は対照用膜と比べて減少した。これは、ポリマー膜の疎水性により、疎水バリヤーができ、陽イオンが透過しにくくなったことを示す。
【0153】
【表15】
さまざまな陽イオンの透過性に関するもうひとつの特性が、選択透過性である。PNa+の値を1とすると、他の陽イオンの選択透過性が算出できる。その結果を表16に示す。選択透過性PMg/PNaおよびPCa/PNaは、ポリマー膜中のDBA量が増加するにつれて減少する。これは、ポリマー膜が疎水性であるほど、さまざまな陽イオンについての選択性が高まっている可能性を意味する。さまざまな陽イオンについて選択性を高めるためには、電荷密度と膜の疎水性という2つの要素を考慮する必要がある。
【0154】
【表16】
(実施例5:ポリ−2−フルオロアクリル酸ビーズの合成)
ビーズの調製は、直接懸濁プロセスによって行われる。2−フルオロアクリルメチルエステル/ジビニルベンゼン/過酸化ベンゾイルを重量比90/9/1で混合し、ポリビニルアルコールを懸濁剤に用いて高剪断ホモジナイザーで水中に分散させる。懸濁液を攪拌しながら、80°Cに加熱して10時間おく。残ったモノマーは蒸気ストリッピングにより除去する。ビーズを濾過し、3MのNaOH水溶液で処理してポリマーを加水分解し、洗ってから、HClで処理し、さらに水洗いし、最後に乾燥させて、目的のポリα−フルオロアクリル酸粒子を得る。ビーズの平均直径は、Master Sizer(Malvern、イギリス)による測定で、250ミクロンである。
【0155】
(実施例6:ポリ−2−フルオロアクリル酸/コア−(DBA−DEAEMA)/シェル粒子の調製)
コア−シェル粒子は、実施例5で調製したポリ−2−フルオロアクリル酸ビーズ上に、ポリマーD2をWursterコーターでコーティングして調製される。実施例4で調製したシェルポリマーを、まずトルエンに20重量%となるように溶解して、この溶液を水中に1:4の重量比で分散させる。このとき界面活性剤としてCTAB(ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム)を有機相に対し2重量%加え、Ultra−Turrax高剪断ホモジナイザーを使用する。次に、減圧下で蒸発させ、トルエンを飛ばす。分散粒子の平均直径は、動的光散乱測定により、0.3マイクロメートルである。Wurster液体ベッドコーター2”〜4”/6”ポータブル装置を使用し、ポリ−2−フルオロアクリル酸ビーズにシェルポリマー分散液をスプレーコーティングする。液化ベッド装置を操作して、平均厚さ5ミクロンのコーティングがコア粒子表面に沈着するようにする。
【0156】
実施例3において便抽出液で測定したカリウム結合容量は、コーティングなしのポリ−α−フルオロアクリル酸ビーズでの測定値の2倍になることが予測される。
【0157】
(実施例7:Na+およびK+選択結合性を有するスルホン酸ポリスチレン/コア−ポリエチレンイミンシェル粒子の調製)
(DowexビーズへのPEIコーティングの手順)
PEI(ポリ(エチレンイミン)、Mw10,000)とDowexビーズ(H型、X4−200)は一般販売経路から購入した。PEIをナノピュア水に直接溶解し、さまざまな濃度のPEI水溶液を調製した。
【0158】
ライブラリ形式のガラス試験管で、計量した乾燥Dowexビーズを、PEI水溶液に混合した。指定された反応時間経過後、試験管を密封し、1000rpmで15分間遠心分離にかけ、上澄液を捨てた。各試験管内のビーズにナノピュア水を加えて合計体積を10mlにし、全ての試験管を密封し、30分間転倒攪拌する。この転倒攪拌・遠心分離手順を3回繰り返した。ビーズは冷凍乾燥して計量し、重量が一定になるまで行った。
【0159】
反応溶液組成とゲル重量増加の値を、表17に示す。
【0160】
【表17】
(結合研究方法)
NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2の混合物をMES緩衝溶液(pH6.0)(MESは2−[N−モルホリン]エタンスルホン酸)に溶かした。各陽イオンの濃度はICによって測定された。Na+の濃度は26.4mM、K+の濃度は9.75mM、Mg2+の濃度は4.75mM、Ca2+の濃度は4.16mMであった。
【0161】
計量した乾燥PEIコーティング済みビーズを、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2のMES緩衝溶液5mlが入っている試験管に入れた。この試験管を密封し、転倒攪拌した。図6に示されている特定時間が経過後、試験管を遠心分離にかけた。上澄み液から溶液100マイクロリットルを取り、IC分析にかけた。さまざまな陽イオンに対するPEIコーティング済みビーズの結合量は、溶液中の濃度変化から算出された。
【0162】
計算式は次の通り:
ビーズのイオン結合(mmol/g)=[V×(C0−Ct)/{[ビーズ重量]×1000}
C0:金属イオンの初期濃度(mM)
Ct:特定時間(t時間)経過時点でビーズ結合後の金属イオン濃度(mM)
V:溶液体積(5ml)
ビーズ重量(g)
さまざまな陽イオンに対し、異なるPEIをコーティングしたビーズの結合データを、図6に示す。PEIをコーティングしたDowexビーズは、コーティングのないビーズ(裸ビーズ)に比べ、高いNa+およびK+結合性を示している。またコーティングしたビーズは、裸ビーズに比べ、より高い結合選択性を示している。PEIコーティングが厚くなるほど(例:2.5重量%PEI溶液で6時間コーティングされたDowex(2.5wt−6h)など)、さまざまな陽イオンに対する選択性が高くなっている。結合動力学研究によれば、薄いコーティングのビーズや裸のビーズの方が、陽イオン結合が平衡に早く達している。
【0163】
(実施例8:Eudragitシェルのスルホン酸ポリスチレンビーズ)
シェル材質:陽イオンのアンモニオメタクリル酸単位8.85〜11.96%を含む、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマーであるEudragitRL100(Rohm)を、エタノール中に10重量%とし、トリアセチン10重量%を含む。コア:Lewatit(架橋スルホン酸ポリスチレン・ナトリウム型)、サイズ-300μm
。
【0164】
【化3】
シェルは、FluidAir Wursterコーターを使用して適用された。
結合は次の条件で測定された:
供給溶液:50mMKClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間
図7は、Mg2+およびK+の結合に対するシェルの影響を示したものである。コアに対するシェルの比率が高くなると、Mg2+結合が減少し、K+結合が増加した。20重量%シェルコーティングではK+結合容量が1.65meq/gで、これはコーティングのないDowexの約3倍である。
【0165】
(実施例9:ベンジル化ポリエチレンイミンシェルのスルホン酸ポリスチレンビーズ
ベンジル化ポリエチレンイミン(PEI)の合成)
250mlの丸底フラスコに、PEIを15.6g(−NH2基が363mmol)とエタノール125mlを入れ、磁石スターラーでPEIが完全に溶けるまで攪拌した。次にNaHCO3を30g(FW84、256mmol)と、塩化ベンジル40ml(363mmol)を加えた。この混合液を一晩、窒素雰囲気下、550Cで反応させた。ジクロロメタンを反応スラリー混合物に加え、濾過して無機塩を除去した。濾過物の溶媒は減圧下で除去された。ジクロロメタンを再度加えて反応生成物を再び溶かした。無機塩は濾過によってさらに除去された。濾過物の溶媒は再度、減圧下で除去された。最後に、この生成物をヘキサン中ですり潰し、濾過し、ヘキサンで洗い、減圧下で乾燥した。ベンジル化の割合は、1HNMRにより84%と測定された。塩化ベンジルとPEIの比率を調整することにより、ベンジル化の度合をさまざまに変えた類似材質(Ben(20)はベンジル化20%、Ben(40)はベンジル化40%)を調製した。
【0166】
ベンジル化ポリエチレンイミン(Ben−PEI)を、Dowexビーズ状にコーティングした。
【0167】
【化4】
シェルは、溶媒コアセルベーションを使用してコーティングされた。シェルBen(84)−PEIをpH3でメタノールと水の混合物(3:1)に溶かした。シェルとコアを5分間混合し、ロータリーエバポレーターでメタノールを除去し(40分間)、分離、洗浄、乾燥を行った。
【0168】
結合は次の条件で測定された:
供給溶液:50mMKClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間および24時間
結合測定の結果を図8に示す。Ben(84)−PEIでは、裸のビーズに比べてMg2+結合性が低く、6時間後および24時間後にカリウムの結合選択性を示した。
【0169】
図9は、胃中の酸性環境に対応し、Ben(84)−PEIコーティングされたDowex(K)ビーズの酸性状態における安定性を示したものである。ビーズはpH2のHCl溶液に6時間曝露させ、分離、乾燥した。処理後のビーズについて、結合選択性の試験を行った。結合条件は次の通り:
供給溶液:50mM KClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間および24時間
コーティングは安定であり、結合選択性は6時間および24時間時点で維持されていた。
【0170】
(実施例10:ベンジル化ポリエチレンイミンシェルのFAAビーズ)
シェルは、溶媒コアセルベーションプロセスにより、FAAコア上に適用された。シェルBen(84)−PEIをpH4.5でメタノールと水の混合物(3:1)に溶かした。シェルとコアを5分間混合し、ロータリーエバポレーターでメタノールを除去し(40分間)、分離、洗浄、乾燥を行った。
【0171】
結合は次の条件で測定された:
供給溶液:50mM KClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間
カリウム結合は、実際のマグネシウム取り込み量と、全体のポリマーの結合容量(5.74meq/g)から算出された。この結果を図10に示す。シェル/コア比率が増加することによりマグネシウム結合が減少し、これはカリウム結合が増加していることを示す。
【0172】
(実施例11:pH変化を用いた沈殿コントロールによるコーティング)
ベンジル化PEI、Ben(約20%)、Ben(約40%)のシェルを、Dowex(K)コア上に用いた。結合は50mM KClおよび50mM MgCl2中で測定された。
【0173】
図11に、この結合実験の結果を示す。40%ベンジル化PEIの沈殿コントロール手法でより良いコーティングが得られ、このコーティング手法と材質の組合せにより、より高い結合選択性が得られる。
【0174】
(実施例12:シェルポリマーの膜スクリーニング)
シェルポリマーは図15に示すように、溶媒キャスティングを経て平らな膜をコーティングし、コーティングされた膜を分散セル内のバリヤーとして使用することにより、スクリーニングされた。供給溶液は、50mMのK+およびMg2+を含む、50mMの2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5)とした。透過係数は、前述の実施例4に従って算出された。架橋B−PEIがこの手法を使用してテストされた。B−PEI(35mol%)は、1,4−ブタンジオールジアクリレートで架橋されたものである。この架橋剤は、乾燥B−PEIの上で4時間反応させた。スクリーニングは、50mM KClおよび50mM MgCl2を含んだ50mM MES緩衝液中で行われた。架橋剤(ジアクリレート)はB−PEI(35mol%)膜と反応した。図13に示すように、架橋剤を追加すると透過係数が減少し、また選択性も向上した。
【0175】
Eudragit RL 100およびRS 100の混合物についても、図12の手法を用いて評価を行った。この結果を図14に示す。RS100をRL100に追加すると、透過性が低下し、選択透過性は同じ範囲にとどまる。RS100が50重量%を超える膜では、選択性が失われた([K+]は同じ程度だが、[Mg2+]は他の複合膜に比べずっと高かった)。
【0176】
(例13:K+結合に対する胆汁酸の影響)
Dowex(Li)(約100μm)をまず、PEI水溶液でコーティングした。上澄液を除去し、このコーティングをさらに1,2−Bis−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)で架橋した。結合は50mM KClおよび50mM MgCl2を含むMES緩衝液(pHが約6.5)中で測定された。使用した胆汁酸抽出物は、2mg/mlであった(豚の胆汁抽出物で、60%が胆汁酸、40%は不明(例えば遊離脂肪酸、リン脂質など)。時間は6時間および24時間、ビーズ濃度は4mg/ml。結果を図15Aおよび図15Bに示す。胆汁酸や脂肪酸、脂質の存在下においては、シェルの性能強化が観察された。
【0177】
(実施例13:メチル2−フルオロアクリレートビーズの合成)
特記されているもの以外、化学薬品はすべて、一般販売経路から購入し、そのまま使用した。反応は窒素環境下で行った。使用されたモノマーは、メチル2−フルオロアクリレート(MeFA);架橋剤はジビニルベンゼン(DVB);イニシエーター:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および過酸化ラウロイル(LPO);懸濁液安定剤:ポリビニルアルコール(PVA)−MW85,000〜146,000、87〜89%が加水分解;塩:塩化ナトリウム(NaCl)。MeFAとDVBは減圧蒸留された。
【0178】
(MeFAビーズ合成の一般的手順:)
三つ口のモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVA(および一部の場合においてはNaCl)の水溶液を入れた。20分間、溶液を攪拌し、窒素でパージした。MeFA、DVB、イニシエーターを含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70〜80°Cのオイルバスに2〜6時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、白い固形物を水で洗った。この固形物を顕微鏡やMalvern Master Sizerで調べた。固形物は凍結乾燥によって分離するか、あるいは直接次のステップ(加水分解反応)に使用した。
【0179】
(MeFAビーズ加水分解によるFAAビーズ合成の一般的手順:)
MeFAビーズを10重量%NaOH(またはKOH)水溶液に、濃度10重量%で懸濁させた。この混合液を90°Cオイルバスで20時間加熱してから、室温まで冷ました。固形物を水および4MHClで洗ってから、凍結乾燥した。
【0180】
AIBNをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含まない、MeFAビーズの合成:)
三つ口の250mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAの1重量%水溶液75gを入れた。20分間、溶液を605rpmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(13.5g)、DVB(1.5g)、AIBN(0.075g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに6時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、白い固形物を水で洗った。顕微鏡で、不規則な大きい粒子(1mm未満)が観察された。
【0181】
(AIBNをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含む、MeFAビーズの合成:)
三つ口の250mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAを2重量%、NaClを3.75重量%含む水溶液75gを入れた。20分間、溶液を502rpmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(13.5g)、DVB(1.5g)、AIBN(0.075g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに6時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、白い固形物を水で洗った。顕微鏡で、球形のビーズ(約90μm)と、大きなゲル粒子が多少、観察された。
【0182】
(LPOをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含まない、MeFAビーズの合成:)
三つ口の250mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAの2重量%水溶液75gを入れた。20分間、溶液を503rpmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(13.5g)、DVB(1.5g)、LPO(0.15g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに2時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、固形物を水で洗い、凍結乾燥した。白い粉末(11.85g)が得られた。顕微鏡で、不規則な大きい粒子(0.5〜1mm)となった凝集ビーズが観察された。
【0183】
(LPOをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含む、MeFAビーズの合成:)
三つ口の1000mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAを1重量%、NaClを3.75重量%含む水溶液300gを入れた。20分間、溶液を307pmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(54g)、DVB(6g)、LPO(0.6g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに4時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、固形物を水で洗い、凍結乾燥した。白い粉末(56g)が得られた。顕微鏡で、球形のビーズ(約100μm)が観察された。
【0184】
(実施例14:フルオロアクリレート(FAA)ポリマー−NH4型とKayexalate(スルホン酸ポリスチレン)とのインビボ効力比較)
オスのラット40匹を3日間、Harlan Teklad食餌TD.04498に慣らし、無作為に10匹ずつ4つのグループに分けた。4つのグループにさらに4日間、表18のように、試験物または比較標準物を加えたHarlan Teklad食餌TD.04498を与えた。
【0185】
【表18】
2.15%Kayexalate:NH4+型は、2%Kayexalate:H+型に対応し、2.3% FAAポリマー:NH4+型は、2%FAAポリマー:H+型に対応する。H+型ポリマーに対応する結合容量値を、下記に示した。このインビボ研究に使用したFAAポリマーは、表11と同じ手順を用いて合成され(ポリマー番号100982A1)、この材質はさらに、アンモニウムイオンでイオン置換された。
【0186】
各ラットから便を回収し、それぞれ24時間貯蔵した。便は凍結乾燥し、ラット1匹1日当たりの乾燥重量を記録した。便の陽イオンを1M HClで一晩かけて抽出し、イオンクロマトグラフィーを使用して測定した。各ラットから1日に便に排泄された各陽イオン(ナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)の合計モル数が算出された。
【0187】
2日間の処置後、便中の陽イオンに対するポリマーの影響が平衡に達したことが測定された。3日目および4日目のデータを蓄積した。これを図17に示す。処置3日目および4日目のデータの統計分析から、FAAポリマー:NH4+型は、Kayexalateよりもかなり多くのナトリウム、アンモニウム、カリウム、カルシウムを結合することが示された。
【0188】
H+型ポリマー1g当たりに結合した各陽イオンの量(mEq)が、ポリマーの摂取量に基づいて算出され、比較標準群動物における陽イオンの量と、2%の試験物を含んだ食餌を摂取した動物の便中にある陽イオンの量との差を算出した。KayexalateおよびFAAポリマー:NH4+型について算出されたインビボ結合容量を表19に示す。
【0189】
【表19】
本発明の好ましい実施例をここまで記載・説明してきたが、これらはあくまで例として提示されていることは、この分野の技能をもつ者にとっては明らかとなる。この分野の技能をもつ者には、本発明から乖離することなく、さまざまな応用、変更、代替ができる。ここに記載されている実施例に対するさまざまな変更は、本発明の実践に用いられている可能性があることを理解すべきである。次記の請求項は、発明の範囲を定義するものであり、請求項および同等記載の範囲内にある方法や構造もここに包含される。
【0190】
この特許明細書中に言及されている公開情報および特許出願はすべて、個々の公開情報や特許、特許出願が具体的かつ個別に記述されるのと同様に、参照によってここに組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
この出願は、米国特許出願第10/965,274号(2004年10月13日出願)の一部継続であり、同出願はさらに米国特許出願第10/814,527号(2004年3月30日出願)、米国特許出願第10/814,749号(2004年3月30日出願)、米国特許出願第10/813,872号(2004年3月30日出願)の一部継続であり、これらは参考としてこれらの全体が援用されている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
カリウム(K+)は細胞内に最も豊富に存在する陽イオンであり、人体に約35〜40mEq/kg存在している。非特許文献1;非特許文献2を参照のこと。このうち1.5%〜2.5%だけが細胞外にある。カリウムは主に野菜、果物、肉、乳製品を介して食物から摂取され、ジャガイモ、豆類、バナナ、牛肉、ターキーのような特定の食物は、この元素が特に豊富である。非特許文献3;非特許文献4を参照のこと。米国において、摂取量は約80mEq/日である。この摂取量の約80%が胃腸管から吸収され、尿として排泄され、汗および便において排泄されて平衡をとっている。従って、カリウムのホメオスタシスは主に、腎臓排泄の調節によって維持されている。K+の腎臓排泄に支障があると、血清中のK+レベルが上昇する。高カリウム血症とは、血清中のカリウム濃度が約5.0mEq/Lを超える状態である。
【0003】
約5.0〜6mEq/Lの血清中カリウム濃度として規定される、軽度の高カリウム血症は、通常は命にかかわることはないが、中程度から重症の高カリウム血症(血清中カリウム濃度が約6.1mEq/Lより大きい)は、重篤な状態を引き起こし得る。不整脈やECG波形の異常は、高カリウム血症の診断上の特徴である。非特許文献5を参照のこと。血清中カリウムレベルが約9mEq/Lを超えて上昇すると、房室解離、心室性頻脈、または心室細動が生じ得る。
【0004】
高カリウム血症は、健康な人の一般集団においては稀である。しかしながら特定の群は、明らかにより高い頻度の高カリウム血症を示す。入院患者においては、高カリウム血症の発生率は、高カリウム血症の定義によって、1%〜10%である。人生の端にある患者(新生児または高齢者のいずれか)は、危険性が高い。腎臓機能の低下、尿生殖器疾患、癌、重篤な糖尿病、多剤療法も、患者を高カリウム血症に罹り易くさせ得る。
【0005】
高カリウム血症の現在の治療上の選択肢の多くは、病院内での使用に限られている。例えば、Kayexalateなどの交換樹脂は、用量が多いので患者コンプライアンスが非常に低くなり、胃腸(GI)への重篤な副作用、およびナトリウム量の大幅な増大(潜在的に、高ナトリウム血症、関連する流体うっ滞および高血圧を引き起こす)をもたらすため、外来患者や長期にわたる処置には適切でない。利尿薬は、腎臓経由で患者からナトリウムとカリウムを除去し得、背後に潜む腎臓疾患および頻度の高い関連の利尿薬耐性に起因して、しばしば効力が限定される。利尿薬はまた、血圧が低下している患者や体積減少が望ましくない患者については禁忌である(例えば、低血圧にさらに罹患した鬱血性心不全(CHF)患者は、ACE阻害薬およびカリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)のような薬物の併用を受けていることがしばしばあり、これは高カリウム血症を引き起こし得る)。
【0006】
全般的に、高カリウム血症の処置のためにより高結合容量の物質を得ることが望ましく、この物質は、好ましくは、生理的pH範囲においてカリウムの結合量がより多く、そしてまた非分解性であり、非吸収性であり、そして毒性作用が低いものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Agarwal,Rら(1994)Gastroenterology 107:548−571
【非特許文献2】Mandal,AK(1997)Med Clin North Am 81:611−639
【非特許文献3】Hunt,CDおよびMeacham,SL(2001)J Am Diet Assoc 101:1058−1060
【非特許文献4】Hazell,T(1985)World Rev Nutr Diet 46:1−123
【非特許文献5】Schwartz,MW(1987)Am J Nurs 87:1292−1299
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、胃腸管からカリウムイオンを除去するための組成物および方法を提示する。ある実施例において、カリウム結合ポリマーの有効量が動物被験体(例えば、ヒト)に投与され、このポリマーは、ポリマー1g当たりカリウムを平均1.5mmol以上を結合しそして除去し得る。別の実施例において、このポリマーは、約5.5より高いpHにおいて、ポリマー1gあたり約5mmolより大きいインビトロでの結合容量を有する。別の実施例において、このカリウム結合ポリマーはさらに、ポリマーに物理的または化学的に接着しているシェルを有している。
【0009】
カリウム結合ポリマーは、好ましくは、ポリフルオロアクリル酸ポリマー、ポリジフルオロマレイン酸ポリマー、ポリスルホン酸、あるいはこれらの組合せである。他の実施形態において、このポリマーは、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)2−プロパノール、ビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル、あるいはこれらの組合せによって架橋された、2−フルオロアクリル酸を含む。好ましくはこのシェルは、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、メタアリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサン、親電子物質(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルハライドまたはエポキシド)を有する脂肪族アミン付加物または芳香族アミン付加物のコポリマーから構成され、そしてここでアミンは必要に応じて第四級型である。必要に応じて、このシェルは、エポキシドやハライド、エステル、イソシアネート、および無水物(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルジイソシアネート、アルキルジハライド、またはジエステル)によって架橋することができる。
【0010】
好ましい実施例において、カリウム結合ポリマーは、ジビニルベンゼンによって架橋したα−フルオロアクリレートポリマーである。好ましいコア−シェル組成物は、ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーのコア、およびEudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、ベンジル化ポリエチレンイミン、またはN−ドデシルポリエチレンイミンのシェルを含む。好ましくは、コア−シェル組成物は、Wurster液体ベッドコーティングプロセスまたは制御されたコーティング沈殿プロセスによって合成される。適切な制御されたコーティング沈殿プロセスとしては、溶媒コアセルベーションプロセスや、pH誘発性沈殿プロセス、温度誘発性沈殿プロセスが挙げられる。
【0011】
本明細書中に説明されている組成は、高カリウム血症の処置における治療使用および/または予防使用に適している。ある実施形態においてカリウム結合組成物は、カリウム節約作用利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムのような、カリウム保持を引き起こす薬剤と組み合わせて使用される。
【0012】
動物被験体からカリウムを除去するための好ましい方法は、カリウム結合ポリマーである、ジビニルベンゼンによって架橋されたα−フルオロアクリレートポリマーを投与する工程を包含する。別の方法において、カリウムは、患者体内からカリウムを除去するためのコア−シェル組成物を用いて除去され、このコア−シェル組成物は、ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーのコアと、Eudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、ベンジル化ポリエチレンイミンまたはN−ドデシルポリエチレンイミンのシェルとを含む。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、該ポリマーが該動物被験体の胃腸管において、該ポリマー1g当たりカリウムを平均約1.5mmol結合し除去し得る、方法。
(項目2)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、該ポリマーが、約5.5より大きいpHにおいて、該ポリマー1g当たりカリウム平均約5mmolより大きいインビトロカリウム結合容量を有する、方法。
(項目3)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に効果的な量のカリウム結合ポリマーを投与する工程を包含し、該ポリマーが、該ポリマー1g当たり少なくとも約1.5mmolであるインビボカリウム結合容量を有する、方法。
(項目4)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、動物被験体に効果的な量のコア−シェル組成物を投与する工程を包含し、該コア−シェル組成物はカリウム結合ポリマーとシェルとから成り、該シェルが物理的および/または化学的に該カリウム結合ポリマーに付着している、方法。
(項目5)
前記カリウム結合ポリマーが、Ca2+型、H+型、NH4+型、Na+型、あるいはこれらの組合せであるような、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記カリウム結合ポリマーが、非金属のプラス電荷をもつ対イオンを含むような、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目7)
非金属のプラス電荷の対イオンが、アルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、コリン、タウリン、カルニチン、グアニジン、クレアチン、アデニン、アミノ酸あるいはこれらの誘導体のから選択されるイオンのうちの少なくとも1つである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋されたカルボン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたスルホン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたスルファミン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたホスホン酸ポリマー、およびこれらの無水物から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記カリウム結合ポリマーがスルホン酸ポリスチレンである、項目4に記載の方法。
(項目10)
前記カリウム結合ポリマーが、該ポリマーの酸性基に付いたpKa低下基を含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記pKa低下基が電子吸引基である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記電子吸引基がハライド基またはOR基であり、ここでRがHまたはアルキルである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ハライド原子がフッ素、塩素、または臭素である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記カリウム結合ポリマーが、ポリフルオロアクリル酸ポリマー、ポリジフルオロマレイン酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む、項目8に記載の方法。
(項目15)
前記カリウム結合ポリマーが、2−フルオロアクリル酸を、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)2−プロパノール、ビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、またはこれらの組合せによって架橋したものである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記カリウム結合ポリマーが、架橋された2−フルオロアクリル酸ポリマーまたは架橋された2−フルオロアクリル酸コポリマーを含み、該ポリマーまたは該コポリマーが、2−フルオロアクリル酸のアルキルエステルとジビニルベンゼンとの重合化、そしてその後のエステル加水分解によって得られる、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋された2−フルオロアクリレートポリマー、必要に応じて架橋されたビニルスルホン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたビニルホスホン酸ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーである、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋されたカルボン酸、ホスホン酸、もしくはスルホン酸、またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つのポリマーを含み、そして前記シェルが、多価陽イオンに対して透過性が低い、プラスに荷電したポリマーを含む、項目4に記載の方法。
(項目19)
前記カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋された2−フルオロアクリル酸とアクリル酸とのコポリマーを含み、そして前記シェルが、多価陽イオンに対して透過性が低い、プラスに荷電したポリマーを含む、項目4に記載の方法。
(項目20)
前記シェルがコポリマーを含む項目18の方法であって、該コポリマーが、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、メタアリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサンであるか、または、エピクロロヒドリン、アルキルハライド、およびエポキシドから選択される少なくとも1つの親電子物質を有する脂肪族アミン付加物もしくは芳香族アミン付加物である、該コポリマーの少なくとも1つの繰り返し単位であり、ここでアミンは必要に応じて第四級型である、方法。
(項目21)
前記シェルが腸溶性コーティングを含み、該コーティングが結腸内で分解し得る、項目4に記載の方法。
(項目22)
前記シェルがさらに非腸溶性コーティングを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記シェルが、前記カリウム結合ポリマーに対する多価陽イオンの結合を阻害する、項目4に記載の方法。
(項目24)
前記シェルが、流動化ベッドコーティングプロセスによって前記カリウム結合ポリマーにコーティングされている、項目4に記載の方法。
(項目25)
前記シェルがプラスに荷電している、項目4の方法。
(項目26)
前記シェルが、前記カリウム結合ポリマーの口内の味覚のよさを向上させる、項目4に記載の方法。
(項目27)
前記シェルがポリエチレンイミンポリマーを含む、項目4に記載の方法。
(項目28)
前記シェルが、前記カリウム結合ポリマーに対する競合イオンの結合を阻害する、項目4に記載の方法。
(項目29)
前記カリウム結合ポリマーが、競合イオンよりも優先的にカリウムイオンと結合し、該競合イオンはナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、あるいはこれらの組合せである、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記動物被験体が高カリウム血症に罹患している、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記カリウム結合ポリマーが、カリウム保持を促進する薬剤と一緒に投与される、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記組成が、ACE阻害剤、ARB、カリウム節約作用利尿薬、あるいはこれらの組合せと一緒に投与されるような、項目1、2、3、4のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記カリウム結合ポリマーが、少なくとも1種類の薬学的に受容可能な賦形剤を含んで薬学的処方物を形成する、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目34)
前記薬学的処方物が経口処方物または直腸用処方物である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記経口処方物が液体処方物またはチュアブル錠剤処方物である、項目34に記載の方法。
(項目36)
カリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的処方物であって、ここで該カリウム結合ポリマーが、pKa低下基を有する、架橋されたカルボン酸ポリマーまたはその無水物である、薬学的処方物。
(項目37)
前記カリウム結合ポリマーが、架橋されたポリフルオロアクリル酸ポリマー、架橋されたポリジフルオロマレイン酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む、項目36に記載の薬学的処方物。
(項目38)
前記カリウム結合ポリマーが、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、またはこれらの組合せによって架橋された2−フルオロアクリル酸を含む、項目37に記載の薬学的処方物。
(項目39)
カリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的処方物であって、ここで該カリウム結合ポリマーが、必要に応じて架橋されたα−フルオロアクリレートポリマー、必要に応じて架橋されたビニルスルホン酸ポリマー、必要に応じて架橋されたビニルホスホン酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む、薬学的処方物。
(項目40)
疾患を処置する方法であって、該方法は、疾患を処置する必要のある動物被験体に、項目36に記載の薬学的処方物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目41)
イオンに対する項目4に記載の前記シェルの透過性を測定する方法であって、以下:
(a)供給体溶液を収容する試験管に混成膜を取り付ける工程であって、該混成膜は前記シェルとセルロース膜とを含み、そして該供給溶液には前記イオンが含まれている、工程;
(b)該試験管を受容体溶液に浸し、該受容溶液には該イオンが含まれている、工程;
(c)該イオンに関して該受容溶液のサンプリングを採取し、そして分析する工程;
(d)該受容溶液中の該イオンの濃度変化を測定する工程;
を包含し、該濃度変化が、該イオンに対する該ポリマー膜の該透過性を示す、方法。
(項目42)
前記カリウム結合ポリマーの1%未満が胃腸管から吸収され得る、項目1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目43)
カリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的処方物であって、ここで該カリウム結合ポリマーが、ジビニルベンゼンで架橋されたα−フルオロアクリレートポリマーを含む、薬学的組成物。
(項目44)
疾患を処置する方法であって、該方法は、疾患を処置する必要のある動物被験体に対して、項目43に記載の薬学的組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目45)
コアとシェルを含むコア−シェル組成物であって、該コアが、ジビニルベンゼンで架橋された、スルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーから選択されるカリウム結合ポリマーを含み、そして該シェルが、Eudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、ベンジル化ポリエチレンイミン、またはN−ドデシルポリエチレンイミンを含む、コアー−シェル組成物。
(項目46)
前記シェルがEudragit RL 100とEudragit RS 100を約50:50で混合したものを含む、項目45に記載の組成。
(項目47)
前記シェルは、ベンジル化ポリエチレンイミンを含み、ベンジル化の度合が窒素モル含量の約20%〜約99%である、項目45に記載の組成物。
(項目48)
前記シェルがN−ドデシルポリエチレンイミンを含み、ドデシルアルキル化の度合が窒素モル含量の約20%〜約99%である、項目45に記載の組成物。
(項目49)
前記コア−シェル組成物がWurster液体ベッドコーティングプロセスまたは制御されたコーティング沈殿プロセスによって合成される、項目45に記載の組成物。
(項目50)
前記制御されたコーティング沈殿プロセスが、溶媒コアセルベーションプロセス、pH誘発性沈殿プロセス、または温度誘発性沈殿プロセスである、項目49に記載の組成物。
(項目51)
疾患を処置する方法であって、ここで該方法は、疾患を処置する必要のある動物被験体に、項目45に記載のコア−シェル組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目52)
動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、カリウムを除去する必要のある該動物被験体に有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含し、該薬学的組成物はカリウム結合ポリマーと薬学的に受容可能な賦形剤とを含み、ここで該カリウム結合ポリマーはジビニルベンゼンで架橋されたα−フルオロアクリレートポリマーを含む、方法。
(項目53)
カリウムを除去する必要のある動物被験体からカリウムを除去する方法であって、該方法は、該動物被験体に有効量のコア−シェル組成物を投与する工程を包含し、該組成物がコアとシェルとを含み、該コアが、ジビニルベンゼンで架橋された、スルホン酸ポリスチレンまたはα−フルオロアクリレートポリマーから選択されるカリウム結合ポリマーを含み、該シェルが、Eudragit RL 100、Eudragit RS 100、これらの組合せ、またはベンジル化ポリエチレンイミンを含む、方法。
(項目54)
前記動物被験体が高カリウム血症に罹患している、項目52、53のいずれかに記載の方法。
(項目55)
前記組成物が、カリウム保持を促進する薬剤と一緒に投与される、項目52または53のいずれかに記載の方法。
(項目56)
前記組成物が、ACE阻害剤、ARB、カリウム節約作用利尿薬、あるいはこれらの組合せと一緒に投与される、項目52または53のいずれかに記載の方法。
(項目57)
α−フルオロアクリレートポリマーの合成方法であって、該方法は、水に難溶性のフリーラジカルイニシエーターと水溶性塩との存在下での、α−フルオロアクリレートモノマーの懸濁重合化を包含する、方法。
(項目58)
前記の水に難溶性のフリーラジカルイニシエーターは過酸化ラウリルであり、前記の水溶性塩は塩化ナトリウムである、項目57に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は食物模倣物中の陽イオン初期濃度を示したものである。
【図2】図2は食物模倣物中の、樹脂による陽イオン結合を示したものである。
【図3】図3は被験体2個体の便中に含まれる元の陽イオン濃度を示したものである。
【図4】図4は人間の便抽出物における、陽イオン交換樹脂への陽イオン結合を示したものである。
【図5】図5は、イオン透過性を測定するための膜の調製を示したものである。
【図6】図6は、さまざまな陽イオンに対し、異なるポリエチレンイミンをコーティングしたビーズの結合データを示したものである。
【図7】図7は、マグネシウムおよびカリウムの結合に対するEudragit RL 100シェルの影響を示したものである。
【図8】図8は、ベンジル化したポリエチレンイミンをコーティングしたDowex(K)ビーズへの、マグネシウムの結合を示したものである。
【図9】図9は、胃中の酸性状態の代わりの酸性状態の下での、Ben(84)−PEIコーティングされたDowex(K)ビーズの安定性を示したものである。
【図10】図10は、ベンジル化したポリエチレンイミンをコーティングしたDowexビーズによって結合した、カリウムおよびマグネシウムを示したものである。
【図11】図11は、ベンジル化したポリエチレンイミンのシェルを有するフルオロアクリル酸ビーズによって結合したマグネシウムを示したものである。
【図12】図12は、膜の透過性を決めるためのセットアップを示したものである。
【図13】図13は、ベンジル化ポリエチレンイミン膜の透過性を示したものである。
【図14】図14は、Eudragit RL100およびEudragit RS 100の混合物から成る膜の透過性および透過選択性を示したものである。
【図15】図15は、ポリエチレンイミンをコーティングしたDowex(Li)によるカリウム結合に対する、胆汁酸の作用を示したものである。
【図16】図16は、α−フルオロアクリレート−アクリル酸コポリマーにおけるpHの作用を示したものである。
【図17】図17は、ラットにおいて、フルオロアクリレートポリマーおよびKayexalateの投与後の陽イオン排泄レベルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、動物被験体の処置のための方法、ポリマー薬学的組成物、およびキットを提供する。ここで「動物被験体」および「動物」とは、本明細書中で使用される場合、ヒトならびにヒト以外の哺乳動物を含む。本発明は特に、カリウムイオン除去のためのポリマー組成物を提供する。好ましくは、この組成物は、動物被験体の胃腸管からカリウムイオンを除去するために使用される。
【0015】
本発明の一局面は、カリウム結合ポリマー組成物を用いてカリウムイオンを除去する方法である。ある実施形態において、カリウム結合ポリマー組成物は、カリウム結合に対する高結合容量および/または高選択性を有し、そしてがあり、胃腸管内において結合したカリウムを有意に放出しない。ポリマー組成物はカリウムイオンに対する選択的な結合を示すことが好ましい。
【0016】
本発明のポリマー組成は、カリウムイオンに対して、高結合容量および/または高選択性を示すことが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「高容量」とは、インビボでポリマー1グラム当たり平均約1.5mmol以上のカリウムを結合すること含む。代表的に、このインビボでの結合容量はヒトにおいて測定される。インビボでのカリウム結合容量をヒトにおいて測定する技術は、当該分野で周知である。例えば、カリウム結合ポリマーを患者に投与した後、便中のカリウム量を使用して測定して、インビボでのカリウム結合容量を算出し得る。平均のインビボ結合は、好ましくは健康なヒト被験者のセットにおいて計算される。このセットは、約5人のヒト被験体、好ましくは約10人のヒト被験体、さらにより好ましくは約25人のヒト被験体、そして最も好ましくは約50人のヒト被験体である。
【0017】
いくつかの実施形態において、人間におけるインビボでの平均のカリウム結合容量は、ポリマー1g当たり約1.5mmol以上である。好ましくは、人間におけるインビボでのカリウム結合容量はポリマー1g当たり約2mmol以上、より好ましくは1g当たり約3mmol以上、さらに好ましくは1g当たり約4mmol以上、そして最も好ましくは1g当たり約6mmol以上である。好ましい実施形態において、人間における平均のインビボでの平均のカリウム結合容量は、1g当たり約2mmol〜約6mmolである。
【0018】
カリウム結合ポリマーの結合容量は、インビトロでも測定することができる。インビトロでのカリウム結合容量は、胃腸管(特に、結腸)の生理学的条件を模した条件で測定することが好ましい。いくつかの実施形態において、インビトロでのカリウム結合容量は、pHが約5.5以上の溶液中で測定される。さまざまな実施形態において、pHが約5.5以上でのインビトロでのカリウム結合容量は、ポリマー1g当たり約6mmol以上である。pHが約5.5以上におけるインビトロでのカリウム結合容量の好ましい範囲は、ポリマー1g当たり約6mmol〜約12mmolである。好ましくは、pHが約5.5以上におけるインビトロでのカリウム結合容量はポリマー1g当たり約6mmol以上、より好ましくは1g当たり約8mmol以上、さらに好ましくは1g当たり約10mmol以上、そして最も好ましくは1g当たり約12mmol以上である。
【0019】
ポリマー組成物の結合容量が高くなるほど、より少ない投与用量が可能である。代表的に、所望の治療的利益および/または予防的利益を得るのに用いられるポリマー組成の投与用量は、約0.5g/日〜約25g/日である。最も望ましい用量は、1日当たり約15g以下である。好ましい用量範囲は約5g/日〜約20g/日、より好ましくは約5g/日〜約15g/日、さらに好ましくは約10g/日〜約20g/日、最も好ましくは約10g/日〜約15g/日である。好ましくは、この用量は食事と共に1日3回服用する。最も好ましくは1日1回の服用である。
【0020】
本明細書中に記載の組成物が、結合したカリウムをかなりの量を保持することもまた望ましい。好ましくは、カリウムはポリマーによって大腸中で結合され、そして便中にポリマーが排泄される以前にはカリウムは放出されない。本明細書中で使用される場合、用語「かなりの量」とは、結合されるカリウムの全量が保持されることを意味するようには意図されない。治療的利益および/または予防的利益が得られるように、結合したカリウムの少なくともいくらかが保持されることが好ましい。結合されるカリウムの保持され得る好ましい量は、約5%〜約100%に及ぶ。好ましくは、ポリマー組成物は、結合されるカリウムのうち約25%を保持し、より好ましくは約50%、さらに好ましくは75%、そして最も好ましくは、結合されるカリウムの約100%の保持である。保持期間は、この組成物が治療的そして/または予防的に使用されている時間の間であることが好ましい。この組成物が胃腸管からカリウムを結合しそして除去するために用いられる実施形態において、この保持期間は、この組成の胃腸管内における保持時間であり、そしてより具体的には、結腸内の平均保持時間である。
【0021】
好ましくは、このカリウム結合ポリマーは胃腸管からは吸収されない。用語「吸収されない」およびこの文法上の等価物は、投与されたポリマーの全量が吸収されないことを意味するようには意図されない。ポリマーの特定の量は、吸収される可能性があると予想される。ポリマーの約90%以上が吸収されないことが好ましく、より好ましくは約95%以上が吸収されず、さらに好ましくは約97%以上が吸収されず、そして最も好ましくは約98%以上のポリマーが吸収されない。
【0022】
(カリウム結合ポリマー)
いくつかの実施形態において、カリウム結合ポリマーは、プロトン化形態またはイオン化形態において、酸性基(例えば、スルホン基(−SO3−)、硫酸基(−OSO3−)、カルボキシル基(−CO2−)、ホスホン基(−PO3−−)、リン酸基(−OPO3−−)、スルファミン酸基(−NHSO3−)がある。好ましくは、この酸基のイオン化割合は大腸内の生理学的pHにおいて約75%であり、カリウム結合容量は約5mmol/g以上である。好ましくは、この酸基のイオン化は約80%以上、より好ましくは約90%、最も好ましくは約100%である。特定の実施例において、酸を含むポリマーには、複数の酸基が含まれている。特定の実施例において、酸を含むポリマーは無水物の形態で投与され、生理学的液体に接触するとイオン化形態となる。
【0023】
他のいくつかの実施形態において、pKa低下基(好ましくは電子吸引性の置換基)がこの酸性基に隣接して配置されており、好ましくはこの酸性基に対してα位またはβ位にある。好ましい電子吸引性置換基は、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基またはハロゲン原子であり、最も好ましくはFである。好ましい酸性基としてはスルホン基(−SO3−)、硫酸基(−OSO3−)、カルボキシル基(−CO2−)、ホスホン基(−PO3−−)、リン酸基(−OPO3−−)、またはスルファミン酸基(−NHSO3−)がある。他に好ましいポリマーとしては、α−フルオロアクリル酸、ジフルオロマレイン酸、またはこれらの無水物のポリマーから得られる。
【0024】
カリウム結合ポリマーに適したモノマーの他の例を、表1に示す。
【0025】
【表1】
他に適している陽イオン交換構成部分としては、以下が挙げられる:
【0026】
【化1】
ここでnは1以上の数であり、そしてZはSO3HあるいはPO3Hを示す。好ましくは、nは約50以上、より好ましくは約100以上、さらに好ましくは約200以上、最も好ましくは約500以上である。
【0027】
適したホスホン酸モノマーとしては、ホスホン酸ビニル、ビニル−1,1−ビスホスホネート、ならびにホスホノカルボン酸エステル、オリゴ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸のエチレン誘導体が挙げられる。これらモノマーの合成方法は、当該分野で周知である。
【0028】
スルファミン(Z=SO3Hの場合)ポリマーまたはホスホラミド(Z=PO3Hの場合)ポリマーは、アミンポリマーやモノマーの前駆物質を、三酸化イオウ/アミン付加物などのスルホン化剤、またはP2O5などのホスホン化剤を用いてそれぞれ処理することにより、得ることができる。代表的に、ホスホン基の酸性プロトンは、pHが約6〜約7において、ナトリウムやカリウムなどの陽イオンと交換可能である。
【0029】
スルホン酸ビニルやホスホン酸ビニル、スルファミン酸ビニルのようなモノマーから誘導されるフリーラジカルポリマーも、使用することができる。
【0030】
本明細書中での使用が好ましいモノマーはα−フルオロアクリレートとジフルオロマレイン酸であり、特にα−フルオロアクリレートが最も好ましい。このモノマーは、さまざまな経路で調製することができる。例えばGassenら、J.Fluorine Chemistry,55,(1991)149−162、KF Pittman,C.U.、M.Uedaら、(1980)Macromolecules 13(5):1031−1036を参照。フルオロ芳香族化合物の酸化によるジフルオロマレイン酸(Bogachevら、Zhurnal Organisheskoi Khimii,1986,22(12),2578−83)、またはジフルオロマレイン酸のフッ素化フラン誘導体(米国特許第5,112,993号を参照)が、好ましい。α−フルオロアクリレートの好ましい合成形態は、欧州特許第415214号に示されている。
【0031】
他の方法としては、ホスホン酸、カルボン酸、リン酸、スルフィン酸、硫酸、スルホン酸の官能基をもつ化合物から行う段階成長重合を含む。Briquest(発売元:Rhodia)のような高密度ポリホスホネートは特に有用である。
【0032】
本発明のポリマーには、サッカライドポリマーなどの天然ポリマーから合成したイオン交換樹脂、および必要に応じて主鎖またはペンダント残基にイオン交換部位を形成するように官能化した半合成ポリマーが挙げられる。対象となるポリサッカライドの例には、植物起源由来の物質および動物起源由来の物質が挙げられ、例えばセルロース誘導体物質、ヘミセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スルホエチルセルロース、デンプン、キシラン、アミロペクチン、コンドロイチン、ヒアルロン酸塩、ヘパリン、グアールガム、キサンタン、マンナン、ガラクトマンナン、キチン、キトサンが挙げられる。最も好ましいポリマーは、例えばカルボキシメチルセルロースやキトサン、スルホエチルセルロースのような、胃腸管内の生理学的条件下で分解せず、吸収もされないものである。
【0033】
カリウム結合ポリマーは、透析バッグや紙バッグ、細孔マトリクス、ポリマーゲル、中空ファイバー、小胞、カプセル、錠剤、フィルムなどで覆うことができる。
【0034】
ポリマーは、均一系と不均一系のいずれかを用いた重合プロセスで生成される。均一系の場合、架橋ゲルは、水溶性ポリマー主鎖を架橋剤と反応させてバルクゲルを形成し、押し出し成形して微粉状にするか、または粉砕して細かな粒子とするかのいずれかによって得られる。前者の場合、水溶性ポリマー前駆物質を乳化あるいは分散液とし、次に架橋を行って、粒子が得られる。別の方法では、乳化プロセスまたは懸濁プロセス、微懸濁プロセス、分散プロセスにおいてモノマーの重合化を行い、粒子を調製する。この連続相は、水性ビヒクルまたは有機溶媒のいずれかである。懸濁プロセスを使用する場合、「テンプレート重合」や「多段階シード懸濁」のような方法を含む、適切なさまざまなタイプの改変が可能である。これらはいずれも、ほとんどが単分散の粒子を生じる。1実施形態においては、「ジェット(jetting)」プロセス(米国特許第4,427,794号)を使用してビーズが形成され、これによって、モノマーとイニシエーターとの混合物を含む液体のチューブを、振動させたノズルから連続相へと押し出す。このノズルは回転タレットに設置されて、液体に遠心力をかけ得る。
【0035】
α−フルオロアクリレートビーズを生成するための好ましいプロセスは、直接懸濁重合である。代表的に、ポリビニルアルコールなどの懸濁安定剤を使用して、プロセス中の粒子の合体を防止する。水溶液相にNaClを加えると、合体および粒子凝集を低下させることが観察されている。この目的で加える塩としては他には、水溶液相に溶ける塩が挙げられる。この実施形態において、追加する水溶性塩は約0.1重量〜約10重量%の間であり、好ましくは約2重量%〜約5重量%の間を含み、そしてより好ましくは約3重量%〜約4重量%の間を含む。
【0036】
α−フルオロアクリレートエステル(例えばMeFAなど)の懸濁重合の場合には、粒子安定性、ビーズ収量、球形の維持といった懸濁液の品質に対し、フリーラジカルイニシエーターの性質が重要な役割を果たすことが観察されている。過酸化ラウリルなどの水に難溶性のフリーラジカル開始剤を使用すると、ゲルがほとんどなくなり、そして高収率でビーズを生成した。水に対する溶解度が0.1g/L未満、好ましくは0.01g/L未満のフリーラジカル開始剤が、最適の結果を得ることがわかった。好ましい実施形態において、ポリMeFAビーズは、水に溶けにくいフリーラジカル開始剤と、NaClなど水相に存在する塩との組合せによって生成される。
【0037】
カリウム結合ポリマーがシェルなしで使用されているいくつかの実施形態において、カリウム結合ポリマーは、Kayexalateでも、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムでも、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩の形態でもない。
【0038】
いくつかの実施形態において、クラウンエーテルおよびクラウンエーテル様分子がカリウム結合ポリマーとして使用されている。クラウンエーテルは、その穴サイズと金属イオンのサイズに基づき、他のものよりも特定のアルカリ金属に対して選択性を示す。表2、表3、表4およびPedersen,C.J.1987、Charles J.Pederson「Nobel Lecture.The discovery of crown ethers」Nobel Lectures,Chemistry 1981−1990.T.Frangsmyr編、World Scientific Publishing Co.,Singapore.を参照。
【0039】
また他の実施形態において、クラウンエーテルをシェル物質として使用することにより、ナトリウムやマグネシウム、カルシウム、その他の阻害分子のコアへの通過を減らし、その結果として、コアポリマーのインビボ結合容量が増加する。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
。
【0043】
カリウム結合ポリマーは代表的に、陽対イオンを有している。この陽イオンは金属イオン、非金属イオン、あるいはその組合せがあり得る。金属イオンの例としてはCa2+型、H+型、NH4+型、Na+型、あるいはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。非金属イオンの例としてはアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、コリン、タウリン、カルニチン、グアニジン、クレアチン、アデニン、アミノ酸あるいはこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
好ましい実施形態において、本明細書中に記述されているカリウム結合ポリマーは副作用(例えば、有害なイオン放出による高ナトリウム血症およびアシドーシス)を起こす傾向を低下させた。ここで「有害なイオン」という語は、使用期間中に体内において、本明細書中に記載される組成物によって放出されるのが好ましくないイオンをいうために、本明細書中で用いられる。組成物に対する有害イオンは代表的に、組成物の処理される条件、組成物の化学的性質および/または結合特性に依存する。例えば、有害イオンはアシドーシスを起こし得るH+である場合もあれば、高ナトリウム血症を起こし得るNa+である場合もある。好ましくは、結合されるカリウム 対 誘導される有害な陽イオンの比率は、1:約2.5〜約4である。
【0045】
(コア−シェルの組成物)
本発明の一面において、コア−シェル組成物がカリウム除去のために使用される。コア−シェル組成では代表的に、コアはカリウム結合ポリマーから成り、好ましくは高い結合容量でカリウムを結合することができるポリマーである。本明細書中に記述されているさまざまなカリウム結合ポリマーは、コア−シェル組成のコア部分として使用することができる。いくつかの実施形態において、シェルによって、マグネシウムやカルシウムなどの競合溶質がシェルを通ってコア部分に侵入することが調節される。1実施形態において、二価陽イオンに対する膜の透過性は、水和した大きな陽イオン(例えば、アルカリ土類金属イオン)に対し有孔性を下げることにより、および前記多価陽イオンとの電気的反発を起こす陽電荷を組み入れることにより、減少される。コア−シェル組成のシェルは本質的に、胃腸管内での停滞中および通過中にも、分解することはないのが好ましい。
【0046】
本明細書中で用いられている「競合溶質」という語は、コア部分と結合するためのカリウムと競合する溶質であるが、コア部分と接触および/または結合することが望ましくない溶質のことを意味する。コア−シェル組成の競合溶質は通常、コアの結合特性、および/またはシェル部分の透過性特性によって左右される。競合溶質は、コア部分の選択的結合特性や、競合溶質の外部環境からシェル部分への透過性を低下させることにより、コア−シェル粒子との接触および/または結合を防ぐことができる。競合溶質は代表的に、カリウムイオンに比べ、外部環境からのシェルへのより低い透過性を有する。適切な競合溶質の例としては、Mg++、Ca++、プロトン化アミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態において、シェルは一価陽イオンと二価陽イオンの両方に透過性がある。シェルが一価陽イオンと二価陽イオンの両方に透過性である実施形態において、コアは、コアの結合特性によって、一価陽イオン(好ましくはカリウム)と優先的に結合する。他の実施形態において、シェルはカリウムイオンに対して優先的な透過性を有している。
【0048】
本明細書中に記載されるコア−シェル組成物およびカリウム結合ポリマー組成物は、比較的高いカリウム濃度を有する胃腸管(GI)部分(例えば、結腸)でカリウムを結合するのが特に望ましい。次いで、この結合したカリウムは、組成物に結合したまま、体外に排泄されるのが好ましい。
【0049】
1実施形態において、シェル物質は外部の胃腸管環境からコア部分を保護する。いくつかの実施形態において、シェル物質は、コアポリマーの酸性基を保護し、コアポリマーが胃腸管環境に曝露するのを防ぐ。ある実施形態において、シェル部分は腸溶性コーティングによって保護されている。適切な腸溶性コーティングの例は、この分野で公開されている。例えば、A.R.Gennaro(編者)による、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年を参照。
【0050】
別の実施形態において、シェル物質は多価陽イオンに対する透過性をより低くさせるように操作される。アルカリ土類陽イオンに対するシェルの透過性は、膜の孔の平均サイズや電荷密度、膜の疎水性を変えることによって変更され得る。下の表5に示すように、Mg++およびCa++などの水和イオンは、K+およびNa+などの一価陽イオンに比べ、サイズが大きい(Nightingale E.R.、J.Phys.Chem.,63,(1959),1381−89)。
【0051】
【表5】
二価陽イオンに対する透過性を低下させる方法は、電気透析の陽イオン交換膜に関する以前の研究から公知である(例えば、Sataら、J.Membrane Science,206(2002),31−60)。これらの方法は通常、孔サイズによる除外、静電気的作用、およびこれらの組合せに基づいたものである。
【0052】
従って、いくつかの実施形態においては、シェル部分の特性を調整して、透過性の差異を構築する。例えば、シェル物質のメッシュサイズが溶質の寸法と同じサイズ範囲にある場合、より嵩高い二価陽イオンが無作為にシェル部分を通り抜ける速度は大幅に遅くなる。例えば、実験研究(Krajewska,B.、Reactive and Functional polymers 47,2001,37−47)では、セルロースエステルまたは架橋キトサンゲル膜におけるイオン溶質および非イオン溶質両方についての透過係数は、メッシュサイズが溶質寸法に近くなると、より嵩高い溶質の方が遅くなることが示されることを報告する。膨潤した樹脂におけるポリマー体積の割合が、組成物内のメッシュサイズについての良好な指標となる。例えば、理論研究により、メッシュサイズは通常φ−3/4のスケールであり、φは溶液中で膨潤したときのシェル部分のポリマー体積割合である。膜の膨潤率は、疎水性や架橋密度、電荷密度、溶媒のイオン強度に依存する。
【0053】
例えば、、ピロールのインサイチュ重合により陽イオン交換物質上を覆ったポリピロールは、非常に密な多孔性膜を形成することによって選択透過性を導くことが示され、この多孔性膜は、一価陽イオンに比べ、大きな二価陽イオンの拡散を阻害する。
【0054】
代替的に、陽イオン多価電解質の薄層を物理的に吸着させて強い電場を形成し、この電場は、Mg++やCa++などの高度に荷電した陽イオンを反発する。適切な陽イオン多価電解質としては、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサン、親電子物質(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルハライド、エポキシド)を有する脂肪族アミンまたは芳香族アミンの付加物から選択される反復単位を有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ここでアミンは、必要に応じて、四級化型である。脂肪族アミンや芳香族アミンのアルキルジハライド付加物は、イオネン(ionene)とも呼ばれる。ポリマーの選択透過性はまたpHによっても制御することができ、ここで、ポリマー電荷密度および膨潤率がプロトン化(脱プロトン化)の割合によって変化する。
【0055】
ポリマーに最初に取り込まれている対イオンが置換され、そして最終的にはカリウムで置換されなければならない場合、pH制御による結合選択性は重要な手段である。ポリマーが最初に、カルボキシル基やスルホン基に対して高い結合定数を有する二価陽イオンであるCa++を有して調整される場合、胃中で遭遇する酸性環境を利用してポリマーの結合部位をプロトン化し、最初に取り込まれていた対イオン(すなわち、Ca++)を置換し得る。この場合、局所的なpHによってイオン交換特性を変化させるポリマーを設計することが有利であり、より好ましくは、胃のpHにおいて結合容量が低く、約5.5より高いpHにおいて結合容量が高いポリマーが好ましい。好ましい1実施形態において、本発明のポリマーは約3未満のpHにおいて利用可能な容量のある割合、全容量(すなわち、pHが約12のときの測定値)のうちの約0〜10%を有し、そして約4より高いpHにおいて約50%より大きい。
【0056】
いくつかの実施例において、陽イオン多価電解質のシェルを物理的に吸着させて強い電場を形成し、この電場は、Mg++やCa++などの高度に荷電した陽イオンを反発する。適切な陽イオン多価電解質としては、ビニルアミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、アリルアミン、ビニルピリジン、アルキルアミノアルキルアクリレート(メタクリレート)、アルキルアミノアルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、アミノメチルスチレン、キトサン、親電子物質(例えば、エピクロロヒドリン、アルキルハライド、エポキシド)を有する脂肪族アミンまたは芳香族アミンの付加物から選択される反復単位を有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ここでアミンは必要に応じて四級化型である。アルキルジハライドを有する脂肪族アミンおよび芳香族アミンの付加物はまた、イオネンとも呼ばれる。ポリマーの選択透過性はまたpHによっても制御することができ、ここで、ポリマー電荷密度および膨潤率がプロトン化(脱プロトン化)の割合によって変化する。このポリマーは、物理的結合、化学的結合、あるいはその組合せを介してコア上で保持される。前者の物理的結合の場合、マイナスに荷電したコアとプラスに荷電したシェルとの間の静電的相互作用により、胃腸管内を移動する間のコア−シェル会合が維持される。後者の化学的結合の場合、コア−シェル界面において化学反応を行い、シェル物質の「剥離」を防ぐ。
【0057】
好ましくは、シェルは、大腸内にこの組成物の滞在する時間中、特定値を超える選択透過性の要因(すなわちK+の結合速度 対 他の競合イオンの結合速度)を有する。1つの作用機序に限定するわけではないが、選択性のメカニズムは、動力学的効果によって決まる(すなわち、コア内における結合事象について純粋な熱力学的メカニズムではない)と考えられる。すなわち、本発明のコア−シェル粒子が結腸中にある時間のあいだに平衡に導かれる場合、コア−シェルは最終的に、コア単独と同様なプロフィールで陽イオンを結合すると予測される。ゆえに、ある実施形態においてシェル物質は標的イオン(例えば、K+)に対して充分高いな透過率を維持し、これによりこの標的イオンが結腸内での平均滞在時間中に完全に平衡に達するが、競合する陽イオン(例えば、Mg2+、Ca2+)の透過率はより低い。この特徴は、選択透過性の時間的持続と定義される。この実施形態では、時間的持続は、結腸の電解質プロフィールを反映する条件において、平衡時における結合容量が、約20%〜約80%に達するのに必要とされる時間(すなわち、t20〜t80)である。代表的に、K+(および一価陽イオン全般)について、t80は好ましくは約5時間未満、より好ましくは約2時間未満である。Mg(および多価陽イオン全般)については、t20は好ましくは約24時間より大きく、より好ましくは約40時間である。
【0058】
他の実施形態において、プラスに荷電したシェルと、胃腸管中に存在する一部の疎水性陰イオンとの相互作用により、胃腸管において、より高いレベルの持続性が達成できる(Mg2+およびCa2+のt80値の増加として測定)。このような疎水性陰イオンとしては、胆汁酸、脂肪酸、陰イオン性タンパク質消化物が挙げられる。あるいは、陰イオン界面活性剤でも同じ利点が得られる。この実施形態において、コア−シェル物質は、そのまま投与されるか、脂肪酸塩もしくは胆汁酸塩と一緒に処方されるか、または硫酸アルキルやスルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルアリールのような合成陰イオン界面活性剤(しかし、これらに限定されない)と一緒に調剤される。
【0059】
プラス電荷と疎水性を組み合わせたシステムでは、好ましいシェルポリマーとしては、本明細書中で開示されるようなアミン官能化ポリマーが挙げられ、これは必要に応じて疎水性物質によりアルキル化される。
【0060】
アルキル化には、ポリマーの窒素原子とアルキル化剤(通常、アルキル基やアルキルアリール基を有するアミン反応性の親電子物質)との間の反応が含まれる。さらに、アルキル化剤と反応する窒素原子は、複数のアルキル化による第四級アンモニウムイオン形成を起こしにくく、アルキル化終了時点で、第四級アンモニウムイオンを形成する窒素原子は10mol%未満である。
【0061】
好ましいアルキル化剤としては、ハライド、エポキシド、エステル、無水物、イソシアネート、αβ−不飽和カルボニルなどの官能基を有する化合物のような親電子物質である。これらは化学式RXを有する。ここでRはC1〜C20のアルキル基(好ましくはC4〜C20)、C1〜C20のヒドロキシアルキル基(好ましくはC4〜C20のヒドロキシアルキル基)、C6〜C20のアラルキル基、C1〜C20のアルキルアンモニウム基(好ましくはC4〜C20のアルキルアンモニウム基)、またはC1〜C20のアルキルアミド基(好ましくはC4〜C20のアルキルアミド基)であり、そしてXは1つ以上の親電子基を含んでいる。ここで「親電子基」とは、アルキル化反応中にポリマーの窒素原子によって置換または反応する基を意味する。好ましい親電子基Xの例としては、ハライド、エポキシ基、トシレート基、およびメシレート基が挙げられる。例えばエポキシ基の場合、アルキル化反応によって、3員のエポキシ環の開裂を生じる。
【0062】
アルキル化剤の好ましい例としては、C3〜C20のアルキルハライド(例えば、n−ブチルハライド、n−ヘキシルハライド、n−オクチルハライド、n−デシルハライド、n−ドデシルハライド、n−テトラデシルハライド、n−オクタデシルハライド、およびこれらの組合せ);C1〜C20のヒドロキシアルキルハライド(例えば、11−ハロ−1−ウンデカノール);C1〜C20のアラルキルハライド(例えば、ベンジルハライド);C1〜C20のアルキルハライドアンモニウム塩(例えば、(4−ハロブチル)トリメチルアンモニウム塩、(6−ハロヘキシル)トリメチルアンモニウム塩、(8−ハロオクチル)トリメチルアンモニウム塩、(10−ハロデシル)トリメチルアンモニウム塩、(12−ハロドデシル)−トリメチルアンモニウム塩、およびこれらの組合せ);C1〜C20のアルキルエポキシアンモニウム塩(例えば、(グリシジルプロピル)−トリメチルアンモニウム塩);およびC1〜C20のエポキシアルキルアミド(例えば、N−(2,3−エポキシプロパン)ブチルアミド、N−(2,3−エポキシプロパン)ヘキサンアミド、およびこれらの組合せ)が挙げられる。ベンジルハライドおよびドデシルハライドがより好ましい。
【0063】
ポリアミンシェル前駆物質のアルキル化手順は、シェルをコアビーズに適用する前に、別の反応として実行することができる。あるいは、一旦、ポリアミンシェル前駆体をコアビーズ上に堆積させて、アルキル化を行うこともできる。後者の場合、アルキル化は少なくとも2つの親電子基Xを有するアルキル化剤によって行うことが望ましい。これにより、アルキル化でシェル層内の架橋を起こすこともまたできる。好ましい多官能性アルキル剤としては、ジハロアルカン、ジハロポリエチレングリコール、エピクロロヒドリンが挙げられる。その他の架橋剤としては、塩化アシル、イソシアネート、チオシアネート、クロロスルホニル、活性化エステル(N−ヒドロキシスクシンイミド)、カルボジイミド中間生成物なども適している。
【0064】
代表的に、アルキル化レベルはポリアミン前駆物質の性質およびアルキル化に使用するアルキル基のサイズに応じて調整される。アルキル化のレベルには、次のようないくつかの要素が影響する:
a.胃腸管内の条件下におけるシェルポリマーの不溶性。特に、胃中で優勢である低pHは、イオン化pHが5以上のアルキル化ポリアミンポリマーは溶解しやすい。この目的ため、アルキル化の度合がより高く、そしてより鎖の長いアルキルが好ましい。別の方法として、酸性pHに対してシェル物質を保護する腸溶性コーティングを使用することもできる。この腸溶性コーティングは、コア−シェルビーズが腸下部に進む場合に解除される。
【0065】
b.選択透過性プロフィール:アルキル化率が低い場合、競合イオン(例えば、Mg2+やCa2+)に対する選択透過性の持続時間が、結腸中の代表的な滞在時間よりも短くなり得る。逆に、アルキル化率(または疎水性物質の重量分画)が高い場合は、この物質は、多くの無機陽イオンに対して不透過性となり、これによってK+の平衡速度が長くなる。
好ましくは、アルキル化の度合は上記2つの変数をモニターしながらの反復アプローチにより選択される。
【0066】
透過係数を算出するための方法は、公知である。例えば、W.Jost、Diffusion in Solids,Liquids and Gases,Acad.Press,New−York,1960を参照のこと。例えば、シェルポリマーにおけるイオン透過係数は、固体の多孔性物質の上にある膜としてポリマーを成型(cast)し、次に目的のイオンを含んでいる生理的溶液(供給体)に接触させ、受容体溶液中に膜を横切った、そのイオンの安定状態での透過率を測定することができる。次に膜の特性を最適化することにより、選択性と透過率の最良の組合せを達成することができる。膜の構造的特性は、例えば、ポリマーの体積割合(膨潤した膜中の割合)、ポリマーの化学的性質とその特性(疎水性、架橋密度、電荷密度)、ポリマーの混合組成(複数のポリマーが使用されている場合)、加湿剤や可塑剤などの添加剤の配合、および/または製造プロセスを変更することにより、改変することができる。
【0067】
本発明の選択透過性膜は、その選択透過性特性を、ポリマーの組成と物理的特性との相関関係として選択透過性プロフィールを調べることにより、最適化される。選択透過性は、実際の使用環境(例えば、結腸)に近い条件で測定されるのが望ましい。典型的な実験では、供給体溶液は結腸内液体のイオン組成、重量オスモル濃度およびpHを模した合成液、または、回腸造瘻か結腸造瘻により採取した動物の流体である。別の実施形態において、膜は、胃腸管(すなわち、胃、十二指腸、空腸、および回腸)の各部位に見出される条件をモデル化した流体と順次接触される。また別の実施形態において、シェルをプロトン型としてマイクロカプセル化法によって陽イオン交換樹脂ビーズ状に沈着させ、そして水酸化ナトリウム水溶液に接触させる。pHまたは導電率をモニターすることにより、NaOHの膜透過率が算出される。別の実施例において、樹脂は、リチウム陽イオンをあらかじめ取り込まれ、そしてリチウムの放出と、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムの吸着を、イオンクロマトグラフィーでモニターする。好ましい実施例において、前記の条件で測定されたカリウムと二価陽イオン(Mg++、Ca++など)の透過率は、約1:0.5〜約1:0.0001の間、好ましくは約1:0.2〜約1:0.01の間である。
【0068】
別の実施形態において、コア−シェル組成のシェルは、上部胃腸管内を通過する間に、受動的吸着による選択透過性を示す。胃腸管内に存在する多くの成分(食事成分、消化代謝物、分泌物などを含む)は、ある程度不可逆的な様式でシェル上およびシェル内に吸着しやすく、そしてシェルの透過性のパターンを大きく変えることができる。これら水溶性物質の大多数はマイナスに荷電しており、そしてさまざまなレベルの疎水性を示す。これらの中には、脂肪酸や胆汁酸、リン脂質、胆汁塩など、親水性と疎水性の両方の性質を有するものがあり、界面活性剤として挙動し得る。界面活性剤は、疎水性相互作用やイオン性相互作用、あるいはこれらの組合せを通じて、表面に非特異的に吸着することができる。この実施形態においては、この現象を利用して、カリウムイオン結合の過程におけるポリマー組成の透過性を変える。ある実施形態において、脂肪酸を使用してシェルの透過性を改変しており、また別の実施形態においては胆汁酸を使用することができる。脂肪酸と胆汁酸とはいずれも凝集体(ミセルまたは小胞)を形成し、そしてプラスに荷電したポリマーと混合する場合に不溶性錯体を形成し得る(例えばKanekoら、Macromolecular Rapid Communications(2003),24(13),789−792を参照)。脂肪酸と胆汁酸の両方とも、合成陰イオン界面活性剤に似た性質を有している。陰イオン界面活性剤とプラス電荷のポリマーとの間に不溶性錯体が形成されることを、数多くの研究が報告されている(例えばChen,L.ら,Macromolecules(1998),31(3),787−794)。この実施形態において、シェル物質は疎水基と陽イオン基との両方を有するコポリマーから選択され、胃腸管内に代表的に見られるマイナス電荷の疎水性物質(例えば、胆汁酸、脂肪酸、ビリルビン、その他の関連化合物)とシェルが錯体を形成する。また、適切な組成物はまた、例えば米国特許第5,607,669号、同第6,294,163号、同第5,374,422号、Figulyら、Macromolecules,1997,30,6174−6184に報告されているような、胆汁酸捕捉剤として記載されるポリマー物質を含む。この錯体の形成により、シェル膜の崩壊を導き、次いで、好ましくはカリウムの透過性は変わらないまま、嵩高い二価陽イオンの拡散率が低下する。
【0069】
また別の実施例において、コア−シェル組成のシェルの透過度は、胃腸管内の酵素作用によって変化する。通常の大腸ミクロフローラによって分泌される酵素は数多くある。例えば、Bacteroides、Prevotella、Porphyromonas、Fusobacteriumはコラゲナーゼやノイラミニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ[DNase]、ヘパリナーゼ、プロテイナーゼといったさまざまな酵素を分泌している。この実施例において、シェルは疎水性主鎖と親水性ペンダント基から成り、このペンダント基は腸内の酵素反応によって分解され離れる。酵素反応が進むと、ポリマー膜が次第に疎水性になり、結果として非常に膨潤した高透過性の材質が、完全に押しつぶされ、Mg++やCa++などのかさばる水和陽イオンに対して透過性に乏しい低水和性の膜となる。胃腸管で分泌される酵素の中性基質の中から、親水性のものを選ぶことができる。このような物質には、アミノ酸、ペプチド、炭水化物、エステル、リン酸エステル、オキシリン酸ものエステル、O−およびS−ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、チオリン酸塩、アゾ基、その他のものが挙げられる。シェルポリマーを化学的に変化させることができる腸内酵素の例としては、リパーゼ、ホスホリパーゼ、カルボキシルエステラーゼ、グリコシダーゼ、アゾリダクターゼ、ホスファターゼ、アミダーゼ、プロテアーゼなどがあり、これらに限定されない。シェルは、近位結腸に入るまではカリウムイオンを通し、次に近位結腸にある酵素がシェルと化学反応して二価陽イオンに対する透過性を低減させることができる。
【0070】
いくつかの実施例において、シェル厚さは0.002〜50ミクロンであり、好ましくは約0.005〜20ミクロンである。好ましくは、シェル厚さは約0.5ミクロン以上、より好ましくは約2ミクロン以上、さらに好ましくは約5ミクロン以上である。好ましくは、シェル厚さは約30ミクロン未満、より好ましくは約20ミクロン未満、さらに好ましくは約10ミクロン未満、最も好ましくは約5ミクロン未満である。
【0071】
コア−シェル粒子のサイズは通常、約200nm〜約2mmであり、好ましくは約100ミクロンである。好ましくは、コア−シェル粒子のサイズは約1ミクロン以上、より好ましくは約10ミクロン以上、さらに好ましくは約20ミクロン以上、最も好ましくは約40ミクロン以上である。好ましくは、コア−シェル粒子のサイズは約250ミクロン未満、より好ましくは約150ミクロン未満、さらに好ましくは約100ミクロン未満、最も好ましくは約50ミクロン未満である。
【0072】
(コア−シェル粒子の合成)
好ましい実施例において、シェルはコア材質表面に均一にコーティングされ、好ましくはピンホールや泡がなく、コア材質よりも軽量である(例えば、約20重量%以下)。シェルはコアに固定することができ、好ましくは、膨潤や錠剤製剤中の圧力などの機械的外力に耐えられる抵抗力がある。
【0073】
シェルは、化学的プロセスあるいは非化学的プロセスによって形成される。非化学的プロセスとしては、スプレーコーティング、液体ベッドコーティング、有機溶媒または超臨界CO2中での溶媒コアセルベーション、溶媒蒸発、スプレー乾燥、回転ディスクコーティング、押出し(環状ジェット)、一層ごとの形成などがある。化学的プロセスの例としては、界面重合、grafting from法、grafting unto法、コア−シェル重合などがある。
【0074】
液体ベッドコーティングでは、通常、循環する液化ベッド(Wurster型)の中にコアビーズをおき、コーティング溶液または懸濁液をスプレーする。コーティングポリマーは、アルコール、酢酸エチル、ケトンなどの適切な溶媒に溶かして、あるいはラテックスとして使用することができる。通常、緊密かつ均一層の膜を形成できるように、かつ粒子が水溶液に触れて膨潤した際にひび割れができないようにするために、条件を最適化する。膜ポリマーは、体積膨張に従って伸び、寸法変化に対応できるのが望ましい。ポリマー膜は断裂時の伸びが10%以上、好ましくは30%以上である。このアプローチの例が、Ichekawa H.ら、International Journal of Pharmaceuticals,216(2001),67−76に報告されている。
【0075】
溶媒コアセルベーションはこの分野において広く知られている。例えば、Leach,K.ら、J.Microencapsulation,1999,16(2),153−167を参照のこと。このプロセスでは、通常、コアポリマーとシェルポリマーの2種類のポリマーを溶媒に溶かし、さらに水相中の液滴として乳化する。液滴の内部は通常、均一な2成分ポリマー溶液である。次に、注意しながら蒸留を行うことにより、溶媒をゆっくりと飛ばす。各液滴内のポリマー溶液は、ポリマーの体積割合が高くなるにつれて、相分離を起こす。一方のポリマーが水と液滴の界面に移動し、ある程度の形をなしたコア−シェル粒子(または二重ミクロスフェア)を形成する。
【0076】
溶媒コアセルベーションは、コア上にシェルポリマーの薄膜を制御しながら沈殿させるのに公的な方法の1つである。ある実施例において、このコアセルベーション技法には、シェル材質を溶解させた連続的な液層中にコアビーズを分散させる手順が含まれる。コアセルベーションプロセスでは、この連続相の溶解力が次第に変化していき、シェル材質の部分に近づくとだんだん不溶性になる。沈殿の始まり部分では、シェル材質の一部がビーズ表面に薄い堆積または薄膜となっている。溶解度の変化は、さまざまな物理化学的手段によって生じさせることができる。例えばpHの変化、イオン強度の変化(透過性など)、溶媒組成の変化(溶媒の追加や蒸留によって)、温度の変化(LCST(下限臨界溶液温度)でのシェルポリマーが使用されている場合など)、圧力の変化(特に臨界超過液体が使用されている場合)などが挙げられ、これらに限らない。より好ましいのは、pHあるいは溶媒組成により変化を生じさせる場合の、溶媒コアセルベーションプロセスである。通常、pHによって変化を生じさせ、かつポリマーにアミンタイプの材質を選択した場合、シェルポリマーは低pHで最初に溶解する。次の段階として、pHを次第に上げて不溶限界にし、シェルを沈殿させる。pHの変化は通常、激しく攪拌しながら塩基を追加していくことによって行う。他の方法としては、前駆物質の温度加水分解による塩基の生成が挙げられる(例えば尿素を温度処理してアンモニアを発生させるなど)。最も好ましいコアセルベーションプロセスは、シェル材質と、シェル材質の溶媒/非溶媒混合物から成る三元システムを用いた場合である。コアビーズが均一溶液内に分散した状態で、溶媒を蒸留によって次第に除去していく。シェルコーティングの厚さは、連続相のシェルポリマー濃度をライン内またはライン外で調整することができる。一部のシェル材質がコア表面にコロイド状または離散した粒子として沈殿するという状況はよく起こるが、これは、コア−シェル粒子を簡単な濾過およびふるい操作によって簡単に分離することができる。シェル厚さは通常、最初のコア対シェルの重量比と、前述のシェルポリマーのコアセルベーションの度合によってコントロールされる。コア−シェルビーズは外膜の完全性(競合結合によって測定される)を向上させるため、焼き鈍しを行う。
【0077】
超臨界CO2コーティングはこの分野において広く知られている。例えば、Benoit J.P.ら、J.Microencapsulation,2003,20(1)87−128を参照のこと。このアプローチは、いわば溶媒コアセルベーションの変形である。まず、シェルコーティング材料を超臨界CO2に溶かし、超臨界条件においてその液中に活性物質を分散させる。この反応器を冷まして液体CO2条件にすると、シェル材質は溶けていられなくなり、コアビーズ上に沈殿する。このプロセスは、蝋やパラフィンなどの小分子のシェル材料を用いて例示されている。コア−シェル材質は粉末として回収される。
【0078】
回転ディスクコーティング法では、コア粒子をコーティング内に懸濁させ、回転ディスクを使用することによって小さな液滴として余分なコーティング液を除去し、残るコーティングがコア粒子周りにとどまる。米国特許第4,675,140号を参照。
【0079】
一層ごとのプロセスでは、電荷をもったコア材質が、反対の電荷をもったポリ電解質と接触し、ポリマー複合体を形成する。コア表面に複数の層が沈殿するまでこの手順を繰り返す。さらにオプションとして、架橋層も可能である。
【0080】
界面重合は、反応モノマー1種を含むコア材質を、反応相手となるモノマーを含む連続相の中に分散させる手順で始まる。重合反応がコアの界面で起こり、シェルポリマーを生成する。コアは、親水性でも疎水性でもよい。通常、この目的に使用されるモノマーには、ジアシルクロライド/ジアミン、ジイソシアネート/ジアミン、ジイソシアネート/ジオール、ジアシルクロライド/ジオール、ビスクロロフォーメートとジアミンまたはジオールなどがある。膜の多孔性や丈夫さをコントロールするために、三官能性のモノマーも使用することができる。
【0081】
また別の実施例として、イオン交換材質を、反対の電荷(コア材質は通常マイナスに荷電し、シェルはプラスに荷電)のポリマー分散液に接触させてシェルを形成し、このビーズ粒子を濾過し、シェルポリマーの遷移温度(軟化点)より高い温度で、液化ベッド内で焼き鈍しを行う。この実施例においてポリマー分散液はラテックスまたはポリマーコロイド分散液で、粒子サイズはミクロン単位またはそれ以下の範囲にある。
【0082】
さらに、ある実施例において、シェル材質は、コア材質またはその誘導体(メチルエステルや塩化アシルなど)を含む酸と、反応性モノマーまたはポリマーとの処理により成る。好ましくは、この酸反応性材質はポリマーであり、より好ましくはポリアミンである。例えば、カルボキシル化されたコアポリマーを、有機溶媒中において高温でポリエチレンイミンと反応させ、COOH基とNHおよびNH2基の間をアミン結合させる。アミン結合生成を促進するには、酸基を活性化するのも役立つ。例えば、COOH基やSO3H基を塩化チオニルまたはクロロスルホン酸で処理して、これらの官能基を酸塩化物の形態に変える。詳しくはSataら、Die Angewandte Makromolekulare Chemie 171,(1989)101−117(Nr2794)を参照。
【0083】
grafting from法ではコア表面にある重合開始が可能な活性箇所が関与し、ポリマー鎖は単層の表面から成長していく。リビング重合法(ニトロキシド媒介リビング重合、ATRP、RAFT、ROMPなど)が最も適しているが、非リビングの重合法も適用されている。
【0084】
grafting onto法では、小分子(通常は、エポキシやイソシアネート、無水物などの親電子物質)をポリマーコア材質に接触させ、このコアには反応性部分がある(通常、アミンやアルコールなどの求核基)。このようにして形成されるシェルの厚みは、シェルの小分子前駆物質の拡散率と、コアとの反応率によって制御される。拡散が遅く反応性が高い場合は、コア表面から近い範囲内に反応がとどまるため、薄いシェルになる。逆に、拡散が速く反応が遅い場合は、明確なシェルを形成せずコア全体に透過する傾向になり、シェルとコアの境界がはっきりしない、グラデーションとして形成される。
【0085】
コア−シェルの重合化は、乳化重合、懸濁/ミニ懸濁重合、分散重合などで行うことができる。これらのプロセスはすべて、フリーラジカル重合を利用したものである。乳化重合では、界面活性剤を含んだ水性媒体中で行い、水に対する溶解度が低いモノマーを用いて、水溶性のフリーラジカルイニシエーターを使用する。ポリマー粒子は、ミセル核形成または均質核形成、またはこれら両方として生成される。コア−シェル粒子は、理論的には、まずコアモノマーを加え、次にシェルモノマーを加えれば形成されるはずである。ただしこれは、モノマーを加えると瞬時に消費される場合(「飢餓状態」)に限られる。カリウム結合コアビーズは、好ましくは水に難溶性のモノマー(アルキルエステルやフルオロアクリル酸など)から生成される。
【0086】
懸濁/ミニ乳化重合においては、フリーラジカルイニシエーターはモノマーに溶ける。モノマーとイニシエーターをあらかじめ溶かしておき、界面活性剤または両親媒性ポリマーのいずれかで安定化させた液滴に乳化する。この方法では、一方の形成済みポリマー(例えばシェルポリマー)を溶かしておくこともできる。反応が進むと、シェルポリマーとコアポリマーの層が分離し、目的のコア−シェル粒子が形成される。
【0087】
分散重合では、モノマーとイニシエーター両方が連続層(通常、有機溶媒)に溶ける。ブロックコポリマーが立体配置スタビライザーとして用いられる。ポリマー粒子は、均質核形成として生成され、成長する。粒子サイズは1〜10ミクロンの範囲で、単分散する。
【0088】
好ましい分散プロセスにおいては、重合にはStover H.ら、Macromolecules,1999,32,2838−2844に報告されている精製方法を用いる。この方法を次に説明する。シェルモノマーにはジビニルモノマー(1,4−ジビニルベンゼンなど)がかなりの割合含まれており、コア粒子の表面には重合化が可能な二重結合がある。シェル重合化の反応メカニズムは、連続層にある短いオリゴラジカルの形成によるものであり、これが粒子表面にある二重結合に捕捉される。オリゴマー自体には反応していない不飽和結合があり、これが反応性二重結合内の表面を埋める。結果として、シェルとコア材質との間にはっきりした境界をもつ架橋シェルが形成される。
【0089】
ある実施例において、本発明のコア−シェル組成は、適切なモノマーを使用した、通常の逆懸濁プロセスによる陽イオン交換コアの形成によって合成される。酸基と後反応させることにより、反応性二重結合でこの粒子の表面を修飾する。次にアセトニトリルなどの通常の分散重合溶媒(陽イオン交換コアポリマーについては非溶媒)中に分散させ、官能基モノマーと共にDVBまたはEGDMAの重合化混合物を追加する。
【0090】
好ましい実施例において、シェルはEudragit(例えばEudragit RL
100またはRS 100またはこれらの組合せ)、またはポリエチレンイミン(PEI)と共に形成される。これらのシェルは、溶媒コアセルベーション技法によって適用することができる。PEIは、オプションとしてベンジル化することができ、また架橋することもできる。適切な架橋剤の例としては次のものが挙げられ、これらの他にもあり得る:
【0091】
【化2】
(治療方法)
ここに述べる方法および組成は、疾患や特定の薬剤使用により生じた高カリウム血症の治療に適している。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、ここに記載されている組成および方法は、特にカリウム摂取量を制限していない場合に、カリウム排泄の減少によって生じた高カリウム血症の治療に用いられる。腎臓からのカリウム排泄減少の主な原因は腎不全(特に腎糸球体濾過率が低下している場合)であり、しばしばカリウム排泄を阻害する薬剤(例えばカリウム保持性利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムなど)の摂取も伴っている。アルドステロンに対する遠位尿細管の反応に支障がある場合、例えば糖尿病に併発するIV型の遠位尿細管性アシドーシスや、鎌状赤血球貧血、慢性の慢性の尿路部分閉塞なども、カリウム排泄減少の原因となる。カリウムは、広汎性副腎皮質不全やアジソン病、低アルドステロン症においても、排泄が阻害される。高カリウム血症は、糖尿病により低レニン性低アルドステロン症や腎不全を発症している場合によく起こる(Mandal,A.K.1997.Hypokalemia and hyperkalemia.Med Clin North Am.81:611−39)。
【0093】
特定の好ましい実施形態では、ここに記載されているカリウム結合ポリマーは長期間にわたって投与される。通常、このような長期間の投与により、患者は高カリウム血症を引き起こす薬剤(カリウム保持性利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムなど)を使用し続けることができる。また、ここに記載されているポリマー組成の使用により、高カリウム血症を引き起こす薬剤を使用できなかった患者群も、このような薬剤を使用できるようになる。
【0094】
特定の長期的使用状況において、好ましいカリウム結合ポリマー使用では、1日に最高で約5mmolのカリウム、または1日に約5〜約10mmolのカリウムを除去することができる。急性状態では、使用するカリウム結合ポリマーは1日に約15〜約60mmolのカリウムを除去することができるのが望ましい。
【0095】
他の特定の実施形態において、ここに記載されている組成および方法は、細胞内から細胞外へのカリウム移動によって生じた高カリウム血症の治療に用いられる。感染症や外傷によって起こる細胞破壊、特に横紋筋融解や筋細胞(主なカリウム貯蔵源)の溶解、腫瘍の溶解などにより、急性の高カリウム血症が生じることがある。さらによく見られるのは、軽度〜中程度のカリウムの細胞内移動不全で、これは糖尿病性ケトアシドーシス、急性アシドーシス、代謝性アルカリ血症の治療に用いられる塩化アルギニンまたは塩化リジンの注入、50%デキストロースやマンニトールなどの高張液の注入の場合に生じる。β−受容体阻害薬も、エピネフリンの影響を阻害するため、高カリウム血症を起こすことがある。
【0096】
他の特定の実施形態において、ここに記載されている組成および方法は、過剰なカリウム摂取によって生じた高カリウム血症の治療に用いられる。カリウム摂取過剰だけでは、高カリウム血症の一般的な要因とはならない。高カリウム血症はむしろ、カリウムの細胞内移動や腎臓のカリウム排泄機能に支障がある患者が、カリウム摂取を制限しない場合に生じる。例えば、食事制限を遵守していない透析患者に起こる急死は、高カリウム血症によるものと考えられる。
【0097】
本発明において、カリウム結合ポリマーおよびコア−シェル組成は、他の製薬有効成分と共に投与することができる。共投与の際は、2つの薬剤を同じ投与形態で同時に投与することも、別々の投与形態で同時に投与することも、また別々の投与にすることもできる。例えば高カリウム血症の治療について、カリウム結合ポリマーとコア−シェル組成を、高カリウム血症を引き起こす薬剤(例えばカリウム保持性利尿薬やアンジオテンシン転換酵素阻害薬、非ステロイド系抗炎症薬、ヘパリン、トリメトプリムなど)と一緒に投与することができる。一緒に投与される薬剤は、同じ投与形態の中に一緒に製剤することができ、同時に投与することができる。また、これら両方の薬剤を別々の形態にして、同時に投与することができる。別の方法として、薬剤は別々に投与される。別の投与プロトコルでは、薬剤の投与は数分間、数時間、数日間の間をおいて投与することができる。
【0098】
ここで使用される「治療」という語には、治療効果や予防的効果の達成が含まれる。治療効果とは、対象疾患の根本的治癒、状態改善、予防を意味する。例えば、高カリウム血症の患者における治療効果とは、高カリウム血症の根本的治癒または状態改善が含まれる。また治療効果は、元となっている疾患そのものはまだ残っていても、それに関連する生理学的症状を根本的に治癒、状態改善、または予防し、これにより患者の回復が見られるようにすることである。例えば、カリウム結合ポリマーを高カリウム血症の患者に投与すると、患者の血清カリウムイオン濃度が下がるだけでなく、腎不全など、高カリウム血症に併発する他の疾患についても改善が見られる。予防的効果では、高カリウム血症の診断がついていなくとも、高カリウム血症を起こす高リスク患者や、高カリウム血症の生理学的症状が1つまたは複数出ている患者に、カリウム結合ポリマーを投与することができる。
【0099】
本発明の薬学的組成物はカリウム結合ポリマーが効果的な分量、すなわち治療や予防のメリットを達成できる分量で存在する組成である。個々の用途に効果的な実際量は、患者(年齢や体重)、病状、投与経路によって異なってくる。有効量の決定は、特にここに記載される情報を踏まえれば、ゆうにこの分野の技能の範囲内である。
【0100】
人間に対する有効量は、動物モデルから決定することができる。例えば、人間の用量は、動物に効果が見出された胃腸管内濃度を達成するように、処方することができる。
【0101】
動物におけるカリウム結合ポリマーの用量は、治療する疾患や投与経路、患者の身体的特徴などによって異なる。治療および予防目的のカリウム結合ポリマーの用量は、約0.5g/日〜約30g/日の範囲となる。ポリマーは、食事と共に投与されるのが好ましい。この組成は1日1回、2回、3回のいずれかで投与できる。最も望ましい容量は、1日当たり約15g以下である。好ましい用量範囲は約5g/日〜約20g/日、より好ましくは約5g/日〜約15g/日、さらに好ましくは約10g/日〜約20g/日、最も好ましくは約10g/日〜約15g/日である。
【0102】
いくつかの実施形態において、コア−シェル組成物に結合したカリウムの量は、シェルなしでコア部分(カリウム結合ポリマー)だけが用いられた場合よりも多量である。よって、いくつかの実施例におけるコア部分の用量は、シェルなしで使用されている場合のコアの量に比べ、シェルありで使用されている場合のほうが少なくなっている。よって、コア−シェル製薬組成物のいくつかの実施例において、コア−シェル製薬組成物におけるコア部分の量は、シェル部分なしで動物に投与された場合の量よりも少ない。
【0103】
ここに記載されている組成物は、食品製品や食品添加物として使用できる。これらは、カリウムレベルを下げるため、食品の消費前や、パッケージングの際に添加することができる。この組成は、K+濃度を下げるために、動物の飼料に使用することもできる。これは例えば、水分の排泄を減少させるために、豚や鶏の飼料に入れて好ましい結果が得られる。
【0104】
(調剤と投与経路)
ここに記載されているポリマー組成とコア−シェル組成、または薬学的に受容できるこれらの塩は、さまざまな投与経路や方法を使って患者に投与することができる。最も好ましい投与経路は、経口投与、小腸投与、直腸投与である。
【0105】
必要に応じて、ポリマーおよびコア−シェル組成は他の治療薬と組み合わせて投与することができる。本発明の組成と共に投与できる治療薬の選択は、ある程度、治療する疾患によって異なる。
【0106】
ポリマー(または薬学的に受容できる塩)は、それ自体で、または製薬組成の形で投与することができる。この製薬組成においては、活性組成は、薬学的に受容できる担体や賦形剤、希釈剤を1つまたは複数使った混合物中に用いられる。本発明に従った使用の製薬組成は、従来的手法により調剤することができる。すなわち、1つまたは複数の、生理学的に受容できる担体(賦形剤と助剤から成る)を使用し、活性物質のプロセスを促進し、製薬分野で使用可能な調剤にする。適切な調剤は、選択する投与経路によって異なる。
【0107】
経口投与では、この分野でよく知られている薬学的に受容できる担体活性物質と活性物質とをあらかじめ混合して調剤することができる。治療する患者に経口投与するための、本発明の組成の調剤に使用できる担体としては、錠剤、粒剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、カシェ剤、その他類似の形態がある。ある実施例において、経口調剤には腸溶性樹脂コーティングはない。経口用途の製薬調剤は、固体賦形剤と、得られた混合物をすり潰し(オプション)、細粒の混合物を処理し、場合によっては適切な助剤を加えて、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤としては、特に糖などの増量剤(ラクトース、蔗糖、マンニトール、ソルビトールなど)と、セルロース調剤(例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)など)がある。望ましい場合は、架橋ポリビニルピロリドンや寒天、アルギン酸またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)の分解剤を追加することもできる。
【0108】
糖衣錠コアは、適切なコーティングで提供される。このためには、濃縮糖液を使用することができる。この濃縮糖液にはオプションとして、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、carbopolゲル、ポリエチレングリコールや二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒や溶媒混合物などを含めることができる。識別のためや、活性物質用量が異なる組合せを区別するため、染料や顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに追加することもできる。
【0109】
経口投与については、組成物は徐放製剤にすることができる。徐放製剤に関しては、数多くの技法がこの分野で知られている。
【0110】
経口投与に用いられる薬学的処方物には、ゼラチン製のプッシュフィット型カプセルや、ゼラチンと可塑剤(グリセロールやソルビトール)製の密封型ソフトカプセルが含まれる。プッシュフィット型カプセルには、増量剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、潤滑剤(タルクやステアリン酸マグネシウム)、安定剤(オプション)と活性成分との混合物を中に入れることができる。ソフトカプセルについては、活性組成を適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、液体ポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させる。さらに、安定剤を追加することもできる。経口投与用の製剤はすべて、投与に適した用量でなければならない。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーは、チュアブル錠剤の形態における薬学的組成物として提示される。有効成分に加え、次のようなタイプの賦形剤が一般的に使用されている:必要な口内感覚を得るための甘味料、および、甘味料が錠剤の硬さのために充分でない場合は結合剤を追加;抜き型の壁の摩擦を抑え、錠剤を外れやすくするための潤滑剤;場合によっては咀嚼を容易にするために少量の錠剤分解物質。一般に、現在使用されているチュアブル錠剤の賦形剤濃度は、有効成分の3〜5倍であり、甘味料が非有効成分の量のうち大半を占めている。
【0112】
本発明は、本発明のポリマーと、チュアブル錠剤の製剤に適した製薬賦形剤を含む、チュアブル錠剤を提示する。本発明のチュアブル錠剤に使用されているポリマーが、口腔内および食道内を移動する際の膨潤率は、5未満、好ましくは4未満、より好ましくは3未満、さらに好ましくは2.5未満、最も好ましくは2未満である。このポリマーと適切な賦形剤から成る錠剤は、口内触感、味、歯の粘着性などの感覚的特性が許容できる程度であり、同時に、噛んで唾液と接触しても食道を塞ぐ危険性がない。
【0113】
本発明のある面において、賦形剤の一般的なはたらきである機械的・熱的特性はポリマーがすでにもっているため、製剤に必要な賦形剤の量を減らすことができる。いくつかの実施例において、有効成分(例えばポリマー)は、チュアブル錠剤の重量の約30%以上、より好ましくは約40%以上、もっと好ましくは約50%以上、最も好ましくは約60%以上を占め、残りが適切な賦形剤から成っている。いくつかの実施例において、ポリマーは、約0.6g〜約2.0gの錠剤、好ましくは約0.8g〜約1.6gの錠剤を構成する。いくつかの実施例において、ポリマーは、錠剤の約0.8g以上、好ましくは約1.2g以上、最も好ましくは約1.6g以上を占める。ポリマーは、適切な強度/脆さと粒子サイズを有するよう製造され、適切な硬さ、良好な口内触感、圧縮性など、従来の賦形剤の使用目的と同じ性質を提供する。本発明のチュアブル錠剤に使用されているポリマーの粒子サイズは、未膨潤状態で、平均直径が約80ミクロン未満、70ミクロン未満、60ミクロン未満、50ミクロン未満、40ミクロン未満、30ミクロン未満、20ミクロン未満である。好ましい実施例において、未膨潤状態の粒子サイズは約80ミクロン未満、好ましくは約60ミクロン未満、最も好ましくは約40ミクロン未満である。
【0114】
本発明のチュアブル錠剤に有用な製薬賦形剤としては、結合剤(マイクロクリスタリンセルロース、コロイド状シリカとその組合せ(Prosolv90)、カーボポル、プロビドン、キサンガムなど)、味付け剤(蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトールなど)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、植物性脂肪酸など)、およびオプションとして錠剤分解物質(クロスカルメロースナトリウム、ゲランガム、セルロースの低置換ヒドロキシプロピルエーテル、スターチグリコレートナトリウムなど)がある。その他の添加剤としては、成形剤、色素、タルクなどがある。添加剤およびその他の適切な成分については、この分野でよく知られており、例えばGennaro AR(編),Remington’s Pharmaceutical Sciences,第20版を参照されたい。
【0115】
いくつかの実施例において、本発明は、ここに記載されているポリマーと適切な賦形剤から成るチュアブル錠剤として製剤する製薬組成を提示する。いくつかの実施例において、本発明は、ここに記載されているポリマーと増量剤、潤滑剤から成るチュアブル錠剤として製剤する製薬組成を提示する。いくつかの実施例において、本発明は、ここに記載されているポリマーと増量剤、潤滑剤から成るチュアブル錠剤として製剤する製薬組成を提示し、ここで増量剤は蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトールの中から選び、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸マグネシウム塩である。
【0116】
錠剤は噛みやすく口内で分解するものであれば、どんな大きさ・形状でもよいが、好ましくは円柱形で直径約10〜40mm、高さ約2〜10mm、最も好ましくは直径約22mm、高さ約6mmである。
【0117】
別の実施例において、ポリマーは高Tg/高融点の低分子量賦形剤(例えばマンニトール、ソルボース、蔗糖など)とあらかじめ配合しておき、ポリマーと賦形剤が完全に混合したソリッドな溶液を生成させる。押出し、スプレー乾燥、冷蔵乾燥、凍結乾燥、湿潤顆粒形成などの混合方法が有用である。混合度の目安は、示差走査熱量計や、動的機械分析などの物理的測定によって得られる。
【0118】
ポリマーをはじめとする製薬成分が含まれるチュアブル錠剤の製造方法は、この分野で知られている。例えば、欧州特許出願第EP373852号A2および米国特許第6,475,510号や、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。これら全体は、参照によってここに組み込まれる。
【0119】
いくつかの実施例において、本発明のポリマーは、液体製剤の形態における製薬組成として提示される。いくつかの実施例において、製薬組成は、イオン結合ポリマーが適切な液体賦形剤中に分散した状態で含まれている。適切な液体賦形剤については、この分野でよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【実施例】
【0120】
(実施例1:高結合容量のポリマーの調製)
(材質:)
化学薬品はすべて、一般販売経路から購入し、そのまま使用した。反応はすべて窒素環境下で行った。化学構造および略称を下記の表6および表7に示す。
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
イニシエーター:VA−044:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド;K2S2O8、過硫酸カリウム
(FAAからのゲル調製の一般的手順:)
15ml試験管に、FAA、X−V−1、水を入れ、磁石スターラーを中に入れた。45°Cで20分間、混合液を攪拌し、VA−044(100mg/ml水溶液)を加えた。溶液がゲル化し、これを45°Cで4時間おいてから、室温まで冷ました。
【0123】
ゲルを50mlポリエチレン試験管に移し、水を加えて合計体積を30mlとした。ゲルをスパチュラでつぶし、Ultra−Turraxでさらに粉砕した。試験管にキャップをして、3000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄みを捨てた。ゲルに1.0M
HClを加えて合計体積を45mlにし、試験管にキャップをして、30分間転倒攪拌した。試験管を3000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄みを捨てた。この転倒攪拌・遠心分離手順を、1.0M HClでもう1回、ナノピュア水で3回繰り返した。このゲルを3日間凍結乾燥した。反応溶液の組成とゲル収量を、表8に示す。
【0124】
【表8】
(NaVSAからのゲル調製の一般的手順:)
市販のNaVSAを酸型に転換し、Breslowら(J.Am.Chem.Soc.,1954,76,6399−6401)に記載されている方法に従い、減圧蒸留によって精製した。純粋な酸は水に溶かし、0°Cで慎重にNaOH溶液を加えて中和した。無色の塩溶液を減圧蒸留で濃縮し、濃度56重量%とした。
15ml試験管にNaVSA溶液と架橋剤を入れ、磁石スターラーを入れ、この混合物を45°Cで20分間攪拌した。VA−044(50mg/mL水溶液)またはK2S2O8(50mg/mL水溶液)を加えた。溶液を45°C(VA−044使用の場合)または50°C(K2S2O8使用の場合)で16時間攪拌してから、室温まで冷ました。このゲルを、FAAゲルと同じ手順に従って精製した。反応溶液の組成とゲル収量を、表9に示す。
【0125】
【表9】
(NaVSAとFAAの共重合からのゲル調製の一般的手順:)
15ml試験管に、FAA溶液とNaVSA溶液を入れ、磁石スターラーを中に入れた。この混合液を室温で10分間攪拌し、FAAをすべて溶かした。X−V−1を追加して、混合液を室温で10分間攪拌し、次に45°Cで20分間攪拌した。VA−044(100mg/ml水溶液)を追加し、この溶液を45°Cで3時間攪拌してから、室温まで冷ました。このゲルを、FAAゲルと同じ手順に従って精製した。反応溶液の組成とゲル収量を、表10に示す。
【0126】
【表10】
(AAとFAAの共重合からのゲル調製の一般的手順:)
磁石スターラーの入った15ml試験管に、FAA、X−V−1、水を入れ、固形物がすべて溶けるまで攪拌した。AAを加え、次にVA−044(100mg/ml水溶液)を加えた。この混合液を45°Cで3時間攪拌してから、室温まで冷ました。このゲルを、FAAゲルと同じ手順に従って精製した。反応溶液の組成とゲル収量を、表11に示す。
【0127】
【表11】
(ポリ(スルファミン酸ビニル)ゲルの調製の一般的手順:)
Badessoら(Hydrophilic Polymers:Performance with Environmental acceptance,P489−504)にある手順に従って、塩酸ポリビニルアミン(PVAm.HCl)を調製した。PVAm.HClとエピクロロヒドリンとの架橋反応によって、PVAmゲルを調製した。手順は次の通り:100ml丸底フラスコに33重量% PVAm.HCl水溶液(15g、62.9mmol)を入れ、50重量% NaOH溶液(2.63g)を追加して50mol%のPVAm.HClを中和した。エピクロロヒドリン(1.0g)を追加し、この混合液を磁石スターラーで攪拌し、ゲル生成によってスターラーが止まるまで攪拌を続けた。ゲルをさらに650Cで12時間寝かせてから、50mlポリエチレン試験管に移し、水を加えて合計体積を30mlとした。ゲルをスパチュラでつぶし、Ultra−Turraxでさらに粉砕した。このゲルを1M HClで洗い、さらにFAAゲルの項で記述した手順を用いてナノピュア水で洗った。最後にPVAmゲルを3日間凍結乾燥した。
【0128】
(ポリ(スルファミン酸ビニル)ゲルの調製の一般的手順:)
20mlバイアルに、PVAmゲル0.5gと溶媒10mlを入れた。混合液を600Cで1時間加熱し、次に0.5gの三酸化イオウトリメチルアミン(SO3.N(CH3)3)を追加した。無機アルカリ(Na2CO3または2M NaOH溶液)を反応混合物に加えてpHを9以上に維持した。この混合物を一定時間、60℃に加熱した。この混合物を遠心分離にかけ、上澄みを捨てた。このゲルを、pHが7になるまでナノピュア水で洗い、凍結乾燥した。反応条件と、アミン基からスルファミン酸基への転換について、表12に示す。
【0129】
【表12】
(実施例2:結合容量スクリーニングプロトコル)
実験はすべて二重に実施された。各ポリマーを約30mg、16×100mmのガラス試験管に2本ずつ等分した。Dowex50WとAmberlite CG−50を内部比較標準として各実験に含めた。該当試験の結合緩衝溶液(下記Buffer1、Buffer2、Buffer3のいずれか)を加えて、最終濃度を2.5mg/mlとした。試験管をテフロン(登録商標)膜で密封し、最低1時間、室温で保温しながら絶えず転倒混和を続けて、陽イオンがポリマーとの結合平衡に達するようにした。次に試験管を500gで30分間遠心分離にかけ、樹脂を分離した。上澄み液のサンプルをとり、イオンクロマトグラフィー(IC)により、カリウムの平衡濃度(K+eq)とナトリウムの平衡濃度(Na+eq)を測定した。K+eqとNa+eqを、ポリマーのないBuffer1、Buffer2、Buffer3中のカリウム濃度(K+startおよびNa+start)と比較することにより、陽イオンの量(陽イオンmmol/ポリマー1g)が算出された。ナトリウムとカリウムのポリマー結合比も、同様にして算出された。
【0130】
ナトリウムとカリウムそれぞれについての樹脂結合が、次の条件の一部または全部においてテストされた:
1.75mM NaOH、75mM KOH(pH調整なし)
2.50mMクエン酸、75mM KOH、75mM NaOH、pH6.35(HClで調整)
3.50mMクエン酸、75mM KOH、75mM NaOH、pH3(HClで調整)
【0131】
【表13−1】
【0132】
【表13−2】
【0133】
【表13−3】
【0134】
【表13−4】
【0135】
【表13−5】
これらの例により、本発明のポリマーは、生理学的pHにおいて高いカリウム結合容量を示している。特に、2−フルオロアクリル酸から調整されたポリマーは、スルホン化ポリスチレン樹脂Dowexの最大2倍もカリウムを結合することができる。
【0136】
(α−フルオロアクリレートコポリマーとアクリル酸の滴定曲線(表11より))
このプロトコルはHelfferich,F.「Ion Exchange」(1962)McGraw−Hill,NewYork)に拠った。
1.約50mgのポリマー(酸型)を、15×100mmのガラス試験管に測り入れた。2.必要なmEqを生成するのに要した1M NaOHの体積を計算し、充分な量の水を試験管に加えて、溶液体積と樹脂重量の比が一定になるようにした。
3.1M NaOHストック溶液から、必要なmEqのNaOHをポリマーに加えた。
4.試験管を密封し、4日間回転混和して平衡に達させた。
5.混合を続けながら平衡pHを測定した。
【0137】
この結果を図16に示す。この例により、ポリα−フルオロアクリレートは、Amberlite CG50などのメタクリレート含有イオン交換樹脂よりもpKa値(半中和点でpH値に等しい)が低いことが示されている。FAAゲル材質(表11の100982A1)のpKa値は、図16より、約5.6と見積られ、Amberlite CG50では約8と見積られる。アクリル酸を組み込むと、FAA−アクリル酸コポリマー中のアクリル酸の重量%に比例して、pKaが増加する傾向にある。これは、COOHに対してαの位置にあるフッ素などの電子吸引基によって、pKaが減少し、生理学的pH範囲の5〜7における全体の結合容量が増加することを示している。
【0138】
(実施例3:人間の胃腸管内における陽イオン結合予測の手順)
この手順は、カリウム結合剤使用の条件をモデル化するためにデザインされたもので、他の競合陽イオンが存在する中でカリウム(標的溶質)に対するポリマーの結合特性を測定するものである。食物模擬液を用意し、ペプシンおよび膵臓ジュースの存在下で人工的に消化した。消化プロセスを空腸レベルまで模するよう、酵素の追加の順序とpH条件を調製した。試験するポリマーにあらかじめリチウムを付けておき、これを消化模擬液に加え、一定時間、平衡に達させた。この混合液を遠心分離にかけ、上澄み中のNa+、K+、NH4+、Ca2+、Mg2+をイオンクロマトグラフィーで調べた。放出されたリチウムは、陽イオン交換の合計として算出された。他の陽イオンの濃度低下は、西洋型食事における結合バリエーションを計算するのに用いられた。
【0139】
(樹脂の調製)
樹脂(試験樹脂、または比較に使用されるDowex 50WX4−200)は、1M
HCl中で徹底的に洗い、H型に転換した。次に1M LiOH中で徹底的に洗った。余分のLiOHを、ddH2O中で洗って除去した。樹脂を凍結乾燥し、デシケーター中に保存した。
【0140】
図1は模擬液中の陽イオン初期濃度を示す。図2は模擬液中の、樹脂による陽イオン結合を示す。
【0141】
(盲腸内容物および便の抽出液における結合容量の測定)
氷冷したddH2Oを2倍量(w/v)、人間の便と、正常なウサギの盲腸内容物にそれぞれ加えた。これらを4oCで最低1時間、転倒混和しながら保温し、水溶性陽イオンを抽出した。便および盲腸内容物の抽出液と、解凍した食事模擬液を、それぞれ2000gで10分間遠心分離にかけ、不純物を除去した。Li型にしたDowex50Wを約50mg、16×100mmのガラス試験管に測りとった。樹脂を入れない比較標準試験管も含めた。不純物を除いた抽出液または模擬液を、樹脂の最終濃度2.5mg/mlに入れた。5〜10mlの抽出液または模擬液を比較標準試験管に加えた。試験管を密封し、4oCで90分間回転混和した。試験管を500gで30分間遠心分離にかけ、樹脂を沈殿させた。上澄液のサンプルを採取した。イオンクロマトグラフィーにかける準備として、サンプルを13,000gで10分間遠心分離にかけ、上澄をとり、遠心分離によって3000Daカットオフの透析膜に素早く通した。抽出液をさらにddH2Oで1:5(v/v)に薄めてから、ICカラムに入れた。Li+、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++それぞれの初期濃度(樹脂なし)および平衡濃度(樹脂あり)を測定し、Li+の放出量(陽イオン(mmol)/樹脂(g))と、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++の結合量が算出された。
【0142】
(人間の便抽出液における樹脂の陽イオン結合測定の手順)
樹脂と便の調整を次の通り行った。樹脂は、1M HClで徹底的に洗い、H型に転換した。余分のHClを、ddH2O中で洗って除去した。樹脂を凍結乾燥し、デシケーター中に保存した。便サンプルは、被験者2名から採取し、すぐに−80oCで冷凍保存し、体外でのアンモニウム生成を最小限に抑えた。
【0143】
実験はすべて三重に実施された。図3および図4の誤差バーは、標準偏差値を示す。2倍量(w/v)の氷冷ddH2O中に便サンプルを再懸濁し、一晩4oCで保温して水溶性陽イオンを抽出した。この抽出液を2000gで10分間遠心分離にかけ、不純物を除去した。H型樹脂を、容量15mlの使い捨てカラムに測って入れた。これを150mMLiOHで徹底的に洗い、Li型に転換した。ddH2O中で洗い、余分のLiOHを除去した。不純物を除いた便抽出液をカラムに入れ、樹脂の最終濃度が2.5mg/ml(抽出液)とした。樹脂がない状態で樹脂濃度を算出するため、サンプルが1つ維持された。カラムを密封し、4oCで3時間回転混和した。これを遠心分離により、50mlポリプロピレン試験管に入れて溶出させた。溶出した抽出液および、保持されている不純物除去した便抽出液のpHを測定した(変化は見られなかった:サンプル1はpH6.75、サンプル2はpH7.1)。イオンクロマトグラフィーにかける準備として、サンプルを13,000gで10分間遠心分離にかけ、上澄みをとり、遠心分離によって3000Daカットオフの透析膜に素早く通した。抽出液をさらにddH2Oで1:5(v/v)に薄めてから、ICカラムに入れた。Li+、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++それぞれの初期濃度(樹脂なし)および平衡濃度(樹脂あり)を測定し、Li+の放出量(陽イオン(mmol)/樹脂(g))と、Na+,、K+、NH4+、Ca++、Mg++の結合量が算出された。図4において、「占有された合計」とは、Li+(一価)の結合サイトが他の陽イオン(Ca++およびMg++の二価の性質を考慮)に占有されている合計量を意味する。
【0144】
図4に示されているデータにより、FAAベース材質における人間の便抽出物のカリウム体外結合は、Dowex50WX4−200(カリウム結合剤Kayexalateの組成と本質的に同一)の約2倍であることがわかる。Dowex樹脂によるカリウムの体外(エキソビボ)結合は、人間の臨床研究においてスルホン酸ポリスチレン樹脂について報告されているものと本質的に同じである。これは、インビボでの結合パフォーマンスを予測する良い指標としてこの手法が使用できることを意味する。また、他の陽イオン(特にマグネシウムとカルシウム)は、ポリマーの結合サイトに対してカリウムと競合することも示唆されている。図3は被験者1および被験者2の便中に含まれる元の陽イオン濃度を示したものである。図4は人間の便抽出液における、陽イオン交換樹脂への陽イオン結合を示したものである。
【0145】
(実施例4:マグネシウムとカルシウムに対しカリウム結合選択性の高い準透過性膜の選択方法)
このプロトコルでは、イオン透過性に関してポリマー材質を最適化する方法を記述する。これは、カリウム選択性コア−シェルイオン交換粒子を精製するシェル部分として使用することができる。
【0146】
(ポリマー合成と膜の調製:)
ライブラリ形式の小型反応器を使ってグローブボックス内で、さまざまな組成のポリマー膜材質が、DBA(N,N’−ジブチルアクリルアミド)とDEAEMA(N,N’−ジエチルアミノエチルメタクリレート)のラジカル重合によって調製された。イニシエーターとしてAIBN、溶媒としてエタノールが用いられた。水中の沈殿として分離したポリマーを凍結乾燥し、GPCとH−NMRで測定した。下記のように、ポリマーの組成(DBAmol%)は30%〜70%であり、分子量は200K〜300Kとなっている:
【0147】
【表14】
ポリマー膜の調製は、DBA−co−DEAEMAの2重量%トルエン溶液を、再生成したセルロース透析膜の上にキャストすることによって行った(14KのMWCOのRC膜)。トルエンを蒸発させると、ポリマー膜が透析膜の上に形成された。このようにしてポリマー膜とRC膜の複合膜が調製された。
【0148】
(陽イオンに関する透過性)
複合膜を、直径13mmのガラス製試験管にクランプで止め、2Lの陽イオン供給体溶液中に沈めた。試験管には受容体溶液(供給溶液と同じ透過圧のラクトース溶液(240mM))10mlを入れた。一定時間間隔で受容体溶液のサンプルを採取し、イオンクロマトグラフィーで分析を行った。図5を参照。
【0149】
供給溶液は、NaCl、KCl、CaCl2・2H2O、MgSO4・7H2Oの水溶液を混合して調製した。この溶液は14mMのMES(2−[N−モルホリン]エタンスルホン酸]溶液を使用してpH6の緩衝溶液とした。ICによって測定された各種陽イオンの濃度は、次の通りである:[Na+]40.46mM、[K+]31.44mM、[Mg2+]33.25mM、[Ca2+]22.324mM。
【0150】
各種陽イオンの透過係数(P)の決定:測定セットアップで述べたように、受容溶液は一定時間間隔でサンプルを採取し、ICで分析を行った。Fickの拡散第一法則により、G.Van den Mooter,C.SamynおよびR.Kinget、International Journal of Pharmaceutics,111,127−136(1994)の式1に示されている計算式に従って、Pはデータの線形化からすぐに得られる。各陽イオンの透過係数は、この直線の傾きから算出される。
【0151】
【数1】
ここでCoは供給部分における溶質の最初の濃度、Caは時間t時点での受容部分における濃度、Vaは受容部分の体積、Sは膜の表面積である。
【0152】
選択透過性:上記のように、各陽イオンについて透過係数が算出された。Na+の透過係数を1とすると、陽イオンM1およびM2の選択透過性は次のように算出できる:PM1M2=P(M2)/P(M1)
(さまざまな膜によるさまざまな陽イオンの透過係数:)
表14には、さまざまな膜でのさまざまな陽イオンの透過係数を示す。ポリマーがより親水性になると(ポリマーD3ではDBA%48.5、ポリマーD4ではDBA%56.1%)、Na+、K+、Mg2+、Ca2+などの全ての陽イオンが透過しやすくなり、透過係数は対照用の透析膜(RC膜)と同等になり、陽イオンの自己拡散率を反映する。しかしながら、ポリマー膜のDBA内容が増加すると(表15のD5とD6を参照)、各陽イオンの透過係数は対照用膜と比べて減少した。これは、ポリマー膜の疎水性により、疎水バリヤーができ、陽イオンが透過しにくくなったことを示す。
【0153】
【表15】
さまざまな陽イオンの透過性に関するもうひとつの特性が、選択透過性である。PNa+の値を1とすると、他の陽イオンの選択透過性が算出できる。その結果を表16に示す。選択透過性PMg/PNaおよびPCa/PNaは、ポリマー膜中のDBA量が増加するにつれて減少する。これは、ポリマー膜が疎水性であるほど、さまざまな陽イオンについての選択性が高まっている可能性を意味する。さまざまな陽イオンについて選択性を高めるためには、電荷密度と膜の疎水性という2つの要素を考慮する必要がある。
【0154】
【表16】
(実施例5:ポリ−2−フルオロアクリル酸ビーズの合成)
ビーズの調製は、直接懸濁プロセスによって行われる。2−フルオロアクリルメチルエステル/ジビニルベンゼン/過酸化ベンゾイルを重量比90/9/1で混合し、ポリビニルアルコールを懸濁剤に用いて高剪断ホモジナイザーで水中に分散させる。懸濁液を攪拌しながら、80°Cに加熱して10時間おく。残ったモノマーは蒸気ストリッピングにより除去する。ビーズを濾過し、3MのNaOH水溶液で処理してポリマーを加水分解し、洗ってから、HClで処理し、さらに水洗いし、最後に乾燥させて、目的のポリα−フルオロアクリル酸粒子を得る。ビーズの平均直径は、Master Sizer(Malvern、イギリス)による測定で、250ミクロンである。
【0155】
(実施例6:ポリ−2−フルオロアクリル酸/コア−(DBA−DEAEMA)/シェル粒子の調製)
コア−シェル粒子は、実施例5で調製したポリ−2−フルオロアクリル酸ビーズ上に、ポリマーD2をWursterコーターでコーティングして調製される。実施例4で調製したシェルポリマーを、まずトルエンに20重量%となるように溶解して、この溶液を水中に1:4の重量比で分散させる。このとき界面活性剤としてCTAB(ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム)を有機相に対し2重量%加え、Ultra−Turrax高剪断ホモジナイザーを使用する。次に、減圧下で蒸発させ、トルエンを飛ばす。分散粒子の平均直径は、動的光散乱測定により、0.3マイクロメートルである。Wurster液体ベッドコーター2”〜4”/6”ポータブル装置を使用し、ポリ−2−フルオロアクリル酸ビーズにシェルポリマー分散液をスプレーコーティングする。液化ベッド装置を操作して、平均厚さ5ミクロンのコーティングがコア粒子表面に沈着するようにする。
【0156】
実施例3において便抽出液で測定したカリウム結合容量は、コーティングなしのポリ−α−フルオロアクリル酸ビーズでの測定値の2倍になることが予測される。
【0157】
(実施例7:Na+およびK+選択結合性を有するスルホン酸ポリスチレン/コア−ポリエチレンイミンシェル粒子の調製)
(DowexビーズへのPEIコーティングの手順)
PEI(ポリ(エチレンイミン)、Mw10,000)とDowexビーズ(H型、X4−200)は一般販売経路から購入した。PEIをナノピュア水に直接溶解し、さまざまな濃度のPEI水溶液を調製した。
【0158】
ライブラリ形式のガラス試験管で、計量した乾燥Dowexビーズを、PEI水溶液に混合した。指定された反応時間経過後、試験管を密封し、1000rpmで15分間遠心分離にかけ、上澄液を捨てた。各試験管内のビーズにナノピュア水を加えて合計体積を10mlにし、全ての試験管を密封し、30分間転倒攪拌する。この転倒攪拌・遠心分離手順を3回繰り返した。ビーズは冷凍乾燥して計量し、重量が一定になるまで行った。
【0159】
反応溶液組成とゲル重量増加の値を、表17に示す。
【0160】
【表17】
(結合研究方法)
NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2の混合物をMES緩衝溶液(pH6.0)(MESは2−[N−モルホリン]エタンスルホン酸)に溶かした。各陽イオンの濃度はICによって測定された。Na+の濃度は26.4mM、K+の濃度は9.75mM、Mg2+の濃度は4.75mM、Ca2+の濃度は4.16mMであった。
【0161】
計量した乾燥PEIコーティング済みビーズを、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2のMES緩衝溶液5mlが入っている試験管に入れた。この試験管を密封し、転倒攪拌した。図6に示されている特定時間が経過後、試験管を遠心分離にかけた。上澄み液から溶液100マイクロリットルを取り、IC分析にかけた。さまざまな陽イオンに対するPEIコーティング済みビーズの結合量は、溶液中の濃度変化から算出された。
【0162】
計算式は次の通り:
ビーズのイオン結合(mmol/g)=[V×(C0−Ct)/{[ビーズ重量]×1000}
C0:金属イオンの初期濃度(mM)
Ct:特定時間(t時間)経過時点でビーズ結合後の金属イオン濃度(mM)
V:溶液体積(5ml)
ビーズ重量(g)
さまざまな陽イオンに対し、異なるPEIをコーティングしたビーズの結合データを、図6に示す。PEIをコーティングしたDowexビーズは、コーティングのないビーズ(裸ビーズ)に比べ、高いNa+およびK+結合性を示している。またコーティングしたビーズは、裸ビーズに比べ、より高い結合選択性を示している。PEIコーティングが厚くなるほど(例:2.5重量%PEI溶液で6時間コーティングされたDowex(2.5wt−6h)など)、さまざまな陽イオンに対する選択性が高くなっている。結合動力学研究によれば、薄いコーティングのビーズや裸のビーズの方が、陽イオン結合が平衡に早く達している。
【0163】
(実施例8:Eudragitシェルのスルホン酸ポリスチレンビーズ)
シェル材質:陽イオンのアンモニオメタクリル酸単位8.85〜11.96%を含む、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマーであるEudragitRL100(Rohm)を、エタノール中に10重量%とし、トリアセチン10重量%を含む。コア:Lewatit(架橋スルホン酸ポリスチレン・ナトリウム型)、サイズ-300μm
。
【0164】
【化3】
シェルは、FluidAir Wursterコーターを使用して適用された。
結合は次の条件で測定された:
供給溶液:50mMKClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間
図7は、Mg2+およびK+の結合に対するシェルの影響を示したものである。コアに対するシェルの比率が高くなると、Mg2+結合が減少し、K+結合が増加した。20重量%シェルコーティングではK+結合容量が1.65meq/gで、これはコーティングのないDowexの約3倍である。
【0165】
(実施例9:ベンジル化ポリエチレンイミンシェルのスルホン酸ポリスチレンビーズ
ベンジル化ポリエチレンイミン(PEI)の合成)
250mlの丸底フラスコに、PEIを15.6g(−NH2基が363mmol)とエタノール125mlを入れ、磁石スターラーでPEIが完全に溶けるまで攪拌した。次にNaHCO3を30g(FW84、256mmol)と、塩化ベンジル40ml(363mmol)を加えた。この混合液を一晩、窒素雰囲気下、550Cで反応させた。ジクロロメタンを反応スラリー混合物に加え、濾過して無機塩を除去した。濾過物の溶媒は減圧下で除去された。ジクロロメタンを再度加えて反応生成物を再び溶かした。無機塩は濾過によってさらに除去された。濾過物の溶媒は再度、減圧下で除去された。最後に、この生成物をヘキサン中ですり潰し、濾過し、ヘキサンで洗い、減圧下で乾燥した。ベンジル化の割合は、1HNMRにより84%と測定された。塩化ベンジルとPEIの比率を調整することにより、ベンジル化の度合をさまざまに変えた類似材質(Ben(20)はベンジル化20%、Ben(40)はベンジル化40%)を調製した。
【0166】
ベンジル化ポリエチレンイミン(Ben−PEI)を、Dowexビーズ状にコーティングした。
【0167】
【化4】
シェルは、溶媒コアセルベーションを使用してコーティングされた。シェルBen(84)−PEIをpH3でメタノールと水の混合物(3:1)に溶かした。シェルとコアを5分間混合し、ロータリーエバポレーターでメタノールを除去し(40分間)、分離、洗浄、乾燥を行った。
【0168】
結合は次の条件で測定された:
供給溶液:50mMKClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間および24時間
結合測定の結果を図8に示す。Ben(84)−PEIでは、裸のビーズに比べてMg2+結合性が低く、6時間後および24時間後にカリウムの結合選択性を示した。
【0169】
図9は、胃中の酸性環境に対応し、Ben(84)−PEIコーティングされたDowex(K)ビーズの酸性状態における安定性を示したものである。ビーズはpH2のHCl溶液に6時間曝露させ、分離、乾燥した。処理後のビーズについて、結合選択性の試験を行った。結合条件は次の通り:
供給溶液:50mM KClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間および24時間
コーティングは安定であり、結合選択性は6時間および24時間時点で維持されていた。
【0170】
(実施例10:ベンジル化ポリエチレンイミンシェルのFAAビーズ)
シェルは、溶媒コアセルベーションプロセスにより、FAAコア上に適用された。シェルBen(84)−PEIをpH4.5でメタノールと水の混合物(3:1)に溶かした。シェルとコアを5分間混合し、ロータリーエバポレーターでメタノールを除去し(40分間)、分離、洗浄、乾燥を行った。
【0171】
結合は次の条件で測定された:
供給溶液:50mM KClおよび50mM MgCl2
ビーズ濃度:4mg/ml
継続時間:6時間
カリウム結合は、実際のマグネシウム取り込み量と、全体のポリマーの結合容量(5.74meq/g)から算出された。この結果を図10に示す。シェル/コア比率が増加することによりマグネシウム結合が減少し、これはカリウム結合が増加していることを示す。
【0172】
(実施例11:pH変化を用いた沈殿コントロールによるコーティング)
ベンジル化PEI、Ben(約20%)、Ben(約40%)のシェルを、Dowex(K)コア上に用いた。結合は50mM KClおよび50mM MgCl2中で測定された。
【0173】
図11に、この結合実験の結果を示す。40%ベンジル化PEIの沈殿コントロール手法でより良いコーティングが得られ、このコーティング手法と材質の組合せにより、より高い結合選択性が得られる。
【0174】
(実施例12:シェルポリマーの膜スクリーニング)
シェルポリマーは図15に示すように、溶媒キャスティングを経て平らな膜をコーティングし、コーティングされた膜を分散セル内のバリヤーとして使用することにより、スクリーニングされた。供給溶液は、50mMのK+およびMg2+を含む、50mMの2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5)とした。透過係数は、前述の実施例4に従って算出された。架橋B−PEIがこの手法を使用してテストされた。B−PEI(35mol%)は、1,4−ブタンジオールジアクリレートで架橋されたものである。この架橋剤は、乾燥B−PEIの上で4時間反応させた。スクリーニングは、50mM KClおよび50mM MgCl2を含んだ50mM MES緩衝液中で行われた。架橋剤(ジアクリレート)はB−PEI(35mol%)膜と反応した。図13に示すように、架橋剤を追加すると透過係数が減少し、また選択性も向上した。
【0175】
Eudragit RL 100およびRS 100の混合物についても、図12の手法を用いて評価を行った。この結果を図14に示す。RS100をRL100に追加すると、透過性が低下し、選択透過性は同じ範囲にとどまる。RS100が50重量%を超える膜では、選択性が失われた([K+]は同じ程度だが、[Mg2+]は他の複合膜に比べずっと高かった)。
【0176】
(例13:K+結合に対する胆汁酸の影響)
Dowex(Li)(約100μm)をまず、PEI水溶液でコーティングした。上澄液を除去し、このコーティングをさらに1,2−Bis−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)で架橋した。結合は50mM KClおよび50mM MgCl2を含むMES緩衝液(pHが約6.5)中で測定された。使用した胆汁酸抽出物は、2mg/mlであった(豚の胆汁抽出物で、60%が胆汁酸、40%は不明(例えば遊離脂肪酸、リン脂質など)。時間は6時間および24時間、ビーズ濃度は4mg/ml。結果を図15Aおよび図15Bに示す。胆汁酸や脂肪酸、脂質の存在下においては、シェルの性能強化が観察された。
【0177】
(実施例13:メチル2−フルオロアクリレートビーズの合成)
特記されているもの以外、化学薬品はすべて、一般販売経路から購入し、そのまま使用した。反応は窒素環境下で行った。使用されたモノマーは、メチル2−フルオロアクリレート(MeFA);架橋剤はジビニルベンゼン(DVB);イニシエーター:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および過酸化ラウロイル(LPO);懸濁液安定剤:ポリビニルアルコール(PVA)−MW85,000〜146,000、87〜89%が加水分解;塩:塩化ナトリウム(NaCl)。MeFAとDVBは減圧蒸留された。
【0178】
(MeFAビーズ合成の一般的手順:)
三つ口のモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVA(および一部の場合においてはNaCl)の水溶液を入れた。20分間、溶液を攪拌し、窒素でパージした。MeFA、DVB、イニシエーターを含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70〜80°Cのオイルバスに2〜6時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、白い固形物を水で洗った。この固形物を顕微鏡やMalvern Master Sizerで調べた。固形物は凍結乾燥によって分離するか、あるいは直接次のステップ(加水分解反応)に使用した。
【0179】
(MeFAビーズ加水分解によるFAAビーズ合成の一般的手順:)
MeFAビーズを10重量%NaOH(またはKOH)水溶液に、濃度10重量%で懸濁させた。この混合液を90°Cオイルバスで20時間加熱してから、室温まで冷ました。固形物を水および4MHClで洗ってから、凍結乾燥した。
【0180】
AIBNをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含まない、MeFAビーズの合成:)
三つ口の250mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAの1重量%水溶液75gを入れた。20分間、溶液を605rpmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(13.5g)、DVB(1.5g)、AIBN(0.075g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに6時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、白い固形物を水で洗った。顕微鏡で、不規則な大きい粒子(1mm未満)が観察された。
【0181】
(AIBNをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含む、MeFAビーズの合成:)
三つ口の250mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAを2重量%、NaClを3.75重量%含む水溶液75gを入れた。20分間、溶液を502rpmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(13.5g)、DVB(1.5g)、AIBN(0.075g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに6時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、白い固形物を水で洗った。顕微鏡で、球形のビーズ(約90μm)と、大きなゲル粒子が多少、観察された。
【0182】
(LPOをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含まない、MeFAビーズの合成:)
三つ口の250mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAの2重量%水溶液75gを入れた。20分間、溶液を503rpmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(13.5g)、DVB(1.5g)、LPO(0.15g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに2時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、固形物を水で洗い、凍結乾燥した。白い粉末(11.85g)が得られた。顕微鏡で、不規則な大きい粒子(0.5〜1mm)となった凝集ビーズが観察された。
【0183】
(LPOをイニシエーターとして用い、水相にNaClを含む、MeFAビーズの合成:)
三つ口の1000mLモートン型フラスコにメカニカルスターラーと水冷式冷却器、ゴム隔膜を取り付け、ここにPVAを1重量%、NaClを3.75重量%含む水溶液300gを入れた。20分間、溶液を307pmで攪拌し、窒素でパージした。MeFA(54g)、DVB(6g)、LPO(0.6g)を含んだ有機溶媒溶液を加えた。この混合液を室温で20分間攪拌してから、70°Cのオイルバスに4時間入れた。反応混合物を室温に冷まし、固形物を水で洗い、凍結乾燥した。白い粉末(56g)が得られた。顕微鏡で、球形のビーズ(約100μm)が観察された。
【0184】
(実施例14:フルオロアクリレート(FAA)ポリマー−NH4型とKayexalate(スルホン酸ポリスチレン)とのインビボ効力比較)
オスのラット40匹を3日間、Harlan Teklad食餌TD.04498に慣らし、無作為に10匹ずつ4つのグループに分けた。4つのグループにさらに4日間、表18のように、試験物または比較標準物を加えたHarlan Teklad食餌TD.04498を与えた。
【0185】
【表18】
2.15%Kayexalate:NH4+型は、2%Kayexalate:H+型に対応し、2.3% FAAポリマー:NH4+型は、2%FAAポリマー:H+型に対応する。H+型ポリマーに対応する結合容量値を、下記に示した。このインビボ研究に使用したFAAポリマーは、表11と同じ手順を用いて合成され(ポリマー番号100982A1)、この材質はさらに、アンモニウムイオンでイオン置換された。
【0186】
各ラットから便を回収し、それぞれ24時間貯蔵した。便は凍結乾燥し、ラット1匹1日当たりの乾燥重量を記録した。便の陽イオンを1M HClで一晩かけて抽出し、イオンクロマトグラフィーを使用して測定した。各ラットから1日に便に排泄された各陽イオン(ナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)の合計モル数が算出された。
【0187】
2日間の処置後、便中の陽イオンに対するポリマーの影響が平衡に達したことが測定された。3日目および4日目のデータを蓄積した。これを図17に示す。処置3日目および4日目のデータの統計分析から、FAAポリマー:NH4+型は、Kayexalateよりもかなり多くのナトリウム、アンモニウム、カリウム、カルシウムを結合することが示された。
【0188】
H+型ポリマー1g当たりに結合した各陽イオンの量(mEq)が、ポリマーの摂取量に基づいて算出され、比較標準群動物における陽イオンの量と、2%の試験物を含んだ食餌を摂取した動物の便中にある陽イオンの量との差を算出した。KayexalateおよびFAAポリマー:NH4+型について算出されたインビボ結合容量を表19に示す。
【0189】
【表19】
本発明の好ましい実施例をここまで記載・説明してきたが、これらはあくまで例として提示されていることは、この分野の技能をもつ者にとっては明らかとなる。この分野の技能をもつ者には、本発明から乖離することなく、さまざまな応用、変更、代替ができる。ここに記載されている実施例に対するさまざまな変更は、本発明の実践に用いられている可能性があることを理解すべきである。次記の請求項は、発明の範囲を定義するものであり、請求項および同等記載の範囲内にある方法や構造もここに包含される。
【0190】
この特許明細書中に言及されている公開情報および特許出願はすべて、個々の公開情報や特許、特許出願が具体的かつ個別に記述されるのと同様に、参照によってここに組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−56909(P2013−56909A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−240298(P2012−240298)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2011−244902(P2011−244902)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(508246489)レリプサ, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240298(P2012−240298)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2011−244902(P2011−244902)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(508246489)レリプサ, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】
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