イオン解離性物質透過膜

【課題】 低温で透過機能を有し、かつ酸素や水素等のガスを選択的に透過する膜を開発すること。
【解決手段】 イオン交換樹脂および電子伝導体を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物であって、その一方の表面にはイオン解離性物質の低温解離触媒が存在し、他方の表面にはイオン解離性物質の低温再結合触媒が存在してなるイオン解離性物質透過膜であり、
膜状物の一方の表面にイオン解離性物質の低温解離触媒が存在させ、他方の表面にはイオン解離性物質の低温再結合触媒を存在させる方法は、電子伝導体として、電子伝導性に併せて、イオン解離性物質の低温解離触媒作用と低温再結合触媒作用も有するものを使用し、これを上記膜状物の両表面に露出させる方法や、前記膜状物を中心層とし、その一方の表面に、イオン解離性物質の低温解離触媒層を積層し、他方の表面に、イオン解離性物質の低温再結合触媒層を積層する方法により実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン解離性の物質を透過することができる、イオン解離性物質透過膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数成分を含有する混合ガスから特定のガス成分のみを得る方法として、有機物あるいは無機物からなるガス分離膜を用い、特定のガス成分のみを分離する方法が知られている。
【0003】
例えば酸素ガス分離膜としては、オルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合膜、ゼオライトによるモレキュラーシーブなどが知られている。また、水素ガス分離膜としては、ポリイミド膜、パラジウム金属膜などが知られている。
【0004】
また、数百℃の高温下にて、酸素イオンを選択的に透過させるセラミックス材料が知られており、これを使用することにより、酸素を含有する混合ガスから酸素のみを分離することができる。このような用途に使用できるのは、酸素イオン伝導性を有するセラミックス材料である。例を挙げれば酸化ジルコニウムやペロブスカイト型複合酸化物などがある(特許文献1〜3参照)。これらのセラミックス材料を用いると、以下のようにして混合ガス中の酸素を電気化学的に透過させることができる。
【0005】
すなわち、セラミックス材料の一方の面の表面において、高温下でセラミックス表面の触媒作用を発揮させることにより酸素を解離させ、酸素イオンと電子とし、該酸素イオンをセラミックス材料中を通して伝導させる。これらのセラミックス材料は電子伝導性も有するため、電子もセラミックス材料を移動する。あるいは、セラミックス材料の両面にそれぞれ電極を設置し、それを短絡させることにより、電子をもう一方の面に移動させても良い。そして、セラミックス材料のもう一方の面で酸素イオンと電子が再結合し、酸素ガスを生成する。すなわち、酸素の選択的透過を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−24233号公報
【特許文献2】米国特許第3400054号明細書
【特許文献3】特開2005−81245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスを選択的に透過するガス分離膜については、上述のように多くの研究がなされてきた。しかし、有機物あるいは無機物からなるほとんどのガス分離膜は、ガスの種類に対する選択性が小さく、目的とする種類以外のガスも透過するという課題を有している。
また、無機物からなる膜のうち、パラジウム金属膜が工業的に用いられている。これは水素ガスの選択的透過という点で優れているが、動作させるためには数百℃の温度が必要である。また別の無機物からなる、酸素イオンを選択的に透過するセラミックス材料からなるガス分離膜は、酸素だけを選択的に透過するものの、セラミックス材料のイオン伝導性は高温でなければ得られないことから数百℃の高温下でなければ上述の透過機能が得られないこと、また、加工性に難があり、気密性を得るのが困難であること、といった課題を有している。
【0008】
そのため、低温で透過機能を有し、かつ酸素や水素等のガスを選択的に透過する膜の開発が望まれていた。
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を続けてきた。その結果、酸素や水素等のイオン解離性物質においては、イオン交換樹脂および電子伝導体を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物の両表面に、イオン解離性物質の低温解離触媒とイオン解離性物質の低温再結合触媒とをそれぞれ存在させたイオン解離性物質透過膜を用いることにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、イオン交換樹脂および電子伝導体を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物であって、その一方の表面にはイオン解離性物質の低温解離触媒が存在し、他方の表面にはイオン解離性物質の低温再結合触媒が存在してなるイオン解離性物質透過膜である。
【0011】
また、本発明は、上記イオン解離性物資透過膜に対して、イオン解離性物質の低温解離触が存在する側に、イオン解離性物質を含有する狭雑流体を供給し、イオン解離性物質の低温再結合触媒が存在する側に、イオン解離性物質の受容流体を供給し、イオン解離性物質を含有する狭雑流体中のイオン解離性物質をイオン解離性物質の受容流体中に透過させることを特徴とするイオン解離性物質の純化方法も提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記イオン解離性物質透過膜を配し、そのイオン解離性物質の低温解離触媒が存在する側に、イオン解離性物質を含有する狭雑流体の供給室が設けられ、イオン解離性物質の低温再結合触媒が存在する側に、イオン解離性物質の受容流体の供給室が設けられてなるイオン解離性物質の純化装置も提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のイオン解離性物質透過膜は、その両表面に、低温解離触媒と低温再結合触媒とがそれぞれ存在しているため、一方の表面で、イオン解離性物質の解離反応を低い温度で起こすことができ、他方の表面で、この解離反応で生じたイオンと電子とを再結合させ、イオン解離性物質に再構成することができる。そのため、従来のセラミックス材料を用いた酸素ガス透過膜よりも遥かに低い温度で動作させることができる。熱源のためのエネルギーを必要としないため、低コストで動作させることができる。
【0014】
また、本発明のイオン解離性物質透過膜は、イオン解離性物質を選択的に透過することができる。この選択性は、上記膜表面に存在する低温解離触媒と低温再結合触媒とが、上記解離反応の選択性および再結合反応の選択性にそれぞれ優れることと、膜内にイオン伝導性を有するイオン交換樹脂が含有されており、イオンの選択透過性が備えることとが作用し合い与えられるものである。
【0015】
これらから、本発明のイオン解離性物質透過膜を用いることにより、ガスなどの流体中に存在する複数の物質の中から、特定のイオン解離性物質のみを透過させることにより、イオン解離性物質を純化することができる。そして、このイオン解離性物質透過膜は、膜内に含まれるイオン交換樹脂が、セラミックス等の剛質物質に比較して軟質であるため、変形しても空隙を生じにくく、変形に対する耐性が高い。そのため適用できる分野、用途が広くなる。例えば水素製造における精製設備、将来に普及が見込まれる水素燃料電池自動車用の水素ステーションにおける水素の精製、高純度酸素の精製設備、不活性ガスから微量の酸素を除去する精製設備等への使用ができ、産業における利用可能性はきわめて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明のイオン解離性物質透過膜の代表的態様を示す断面図である。
【図2】図2は本発明のイオン解離性物質透過膜の別の態様を示す断面図である。
【図3】図3は本発明のイオン解離性物質の純化装置の代表的態様を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例3で、イオン解離性物質透過膜の低温解離触媒層側に、0〜50%水素を含む窒素の混合ガス、または10%ヘリウムと90%窒素との混合ガスを流通させ、再結合触媒層側にアルゴンを流通させた際における、低温解離触媒層側供給混合ガス中の水素濃度の変化と、そのときの再結合触媒層側への水素の透過速度の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のイオン解離性物質透過膜は、その一方の表面にイオン解離性を有する物質の低温(具体的には、0〜200℃、より好適には20〜100℃)解離触媒が存在しているため、その表面に接触した水素などのイオン解離性物質が、高温を必要としなくても電子とイオンに解離する。そして、イオン解離性物質透過膜の膜内には、イオン交換樹脂と電子伝導体を含んでいるため、上記表面でイオン解離性物質が解離して生成したイオンと電子は、該膜内を透過し、他方の表面側に移行する。そうして、係る他方の表面では、イオン解離性物質の低温(具体的には、0〜200℃、より好適には20〜100℃)再結合触媒が存在しているため、この他方の表面側に移行したイオンと電子とは再結合して、イオン解離性物質を再構成する。このようにして、本発明のイオン解離性物質透過膜によれば、イオン解離性物質を選択的に透過することができる。
【0018】
ここで、イオン解離性物質透過膜において、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物の一方の表面にイオン解離性物質の低温解離触媒を存在させ、他方の表面にはイオン解離性物質の低温再結合触媒を存在させる方法は、図1の断面図に示すように、一つには、イオン交換樹脂2および電子伝導体3を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物1において、電子伝導体3として、電子伝導性に併せて、イオン解離性物質の低温解離触媒作用と低温再結合触媒作用も有するものを使用し、これを上記膜状物の両表面に露出させる態様が挙げられる(以下、この態様を「第一の態様」と略する)。また、別の態様としては、図2の断面図に示すように、イオン交換樹脂2および電子伝導体3を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物1を中心層とし、その一方の表面に、イオン解離性物質の低温解離触媒層4を積層し、他方の表面に、イオン解離性物質の低温再結合触媒層5を積層する態様が挙げられる(以下、この態様を「第二の態様」と略する)。
【0019】
また、上記イオン解離性物質透過膜に適用するイオン解離性物質とは、電子またはイオンを放出あるいは吸収することにより、あるいは自身が分解することによりイオン化する物質のことであり、より詳細には、上記低温解離触媒により、低温条件下でイオンと電子に解離し、低温再結合触媒により、低温条件下でこれらが再結合して元に戻すことができる物質である。具体例を示せば、カチオンになり得るイオン解離性物質として、水素、アンモニアが、それぞれ水素イオン、アンモニウムイオンを生成することが挙げられる。また、アニオンになり得るイオン解離性物質として、酸素、二酸化炭素、塩素、臭素、ヨウ素が、酸素イオン、炭酸イオンまたは重炭酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンを各生成することが挙げられる。
【0020】
本発明のイオン解離性物質透過膜において、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物が含有するイオン交換樹脂としては、カチオン交換性を有するカチオン交換樹脂、アニオン交換性を有するアニオン交換樹脂、のいずれのものでも使用可能である。カチオン交換樹脂には、カチオン交換基を有し、カチオン伝導性を示す材料であれば、従来公知の材料を何ら制限無く使用できる。
【0021】
カチオン交換基としては、例えばスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基が挙げられ、この中で特にスルホン酸基が好ましい。カチオン交換樹脂に含有されるカチオン交換基の量は、そのイオン伝導性が向上することから、多いほうが望ましい。カチオン交換基が多い場合には、機械的強度が低下する場合もあるため、用途により適切な量を決めるのがよい。一般に、カチオン交換基量は0.1〜5mmol/gの範囲で導入される。
【0022】
本発明に用いるカチオン交換基を有するカチオン交換樹脂は、架橋型あるいは非架橋型の高分子のいずれであっても良い。架橋型の高分子は一般的に、カチオン交換基を有するあるいは導入可能な単量体と、架橋性単量体を共重合させることにより得られる。この場合、架橋性単量体は、カチオン交換基を有するあるいは導入可能な単量体100質量部に対して0.1〜50質量部、より好適には1〜20質量部共重合させるのが良好である。
【0023】
カチオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体またはカチオン交換基を有する単量体としては、従来公知であるカチオン交換樹脂の製造において用いられている単量体が特に限定されずに使用される。具体的には、カチオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン等が挙げられる。これらのカチオン交換基が導入可能な官能基と硫酸、クロロスルホン酸等のスルホン化剤等を反応させることにより、カチオン交換基を導入することができる。このカチオン交換基の導入は単量体に対して行なっても良いし、重合して高分子としてから行なっても良い。
【0024】
また、カチオン交換基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体、ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩およびエステル類等が用いられる。
【0025】
また、架橋性単量体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物が用いられる。
【0026】
非架橋の高分子としては、テトラフルオロエチレンを主鎖とし、スルホン酸基を有する側鎖をもつ高分子や、ポリスチレンスルホン酸−ポリエチレンブチレンのブロック共重合体、ポリスチレンスルホン酸−ポリエチレンブチレン−ポリスチレンスルホン酸のブロック共重合体などが公知であり、例として挙げられる。
【0027】
本発明に用いるアニオン交換樹脂には、アニオン交換基を有し、アニオン伝導性を示す材料であれば、従来公知の材料を何ら制限無く使用できる。アニオン交換基としては、例えば1級アミノ基の塩酸塩、2級アミノ基の塩酸塩、3級アミノ基の塩酸塩、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基を挙げることができる。この中でも化学的安定性が優れ、長期間使用できることから4級アンモニウム基が好ましい。
アニオン交換樹脂に含有されるアニオン交換基の量は、そのイオン伝導性が向上することから、多いほうが望ましい。アニオン交換基が多い場合には、機械的強度が低下する場合もあるため、用途により適切な量を決めるのがよい。一般に、アニオン交換基量は0.1〜5mmol/gの範囲で導入される。
【0028】
本発明に用いるアニオン交換基を有するアニオン交換樹脂は、架橋型あるいは非架橋型の高分子のいずれであっても良い。架橋型の高分子は一般的に、アニオン交換基を有するあるいは導入可能な単量体と、架橋性単量体を共重合させることにより得られる。この場合、架橋性単量体は、アニオン交換基を有するあるいは導入可能な単量体100質量部に対して0.1〜50質量部、より好適には1〜20質量部共重合させるのが良好である。
【0029】
アニオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体またはアニオン交換基を有する単量体としては、従来公知であるアニオン交換樹脂の製造において用いられている単量体が特に限定されずに使用される。具体的には、アニオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体としては、クロロメチルスチレン、クロロエチルスチレン、クロロプロピルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ブロモエチルスチレン、ブロモプロピルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロゲノアルキル基を有する単量体が挙げられる。これらの、アニオン交換基が導入可能な官能基と、トリアルキルアミン、トリアルキルホスホン等を反応させることにより、4級アンモニウム基、4級ホスホニル基等のアニオン交換基を得ることができる。このアニオン交換基の導入は単量体に対して行なっても良いし、重合して高分子を得た後に行なっても良い。
【0030】
また、アニオン交換基を有する単量体としては、ビニルピリジン、N−メチルビニルピリジン、N−エチルビニルピリジンなどが挙げられる。
また、架橋性単量体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物が用いられる。
【0031】
本発明のアニオン交換樹脂に用いる非架橋型の高分子としては、アニオン交換基を有する非架橋型の高分子を従来公知のものを用いることができる。具体的な例を挙げれば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、またはアニオン交換基を有するポリマーと疎水性基からなるポリマーとの、二元系あるいは三元系ブロック共重合体がある。
【0032】
単量体を用いて重合する方法は公知の方法を用いることができる。単量体をそのまま、あるいは溶媒と混合し、重合開始剤を加えて重合することができる。重合開始剤としては過酸化ベンゾイルエステル化合物や、過酸化ブチルエステル化合物などの有機過酸化物、アゾイソブチロニトリルなどのラジカル発生剤として用いられる化合物を用いることができる。重合温度は重合開始剤の分解温度以上にて任意に設定することができるが、通常は50℃〜200℃の範囲で用いられる。
【0033】
これらのアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂は、その耐久性の観点から使用時に接触する流体に溶解しないことが望ましい。例えば、流体に水が含有されるのであれば、疎水性部位または架橋部位を含有させることにより水に難溶とすることが好ましい。
【0034】
本発明のイオン解離性物質透過膜において、中心層に含有される電子伝導体としては、電子を伝導することができる材料からなるものであれば何ら制限無く用いることができる。反応が円滑に進行させるためには、電気抵抗が低い値を有するものが望ましい。一般的に電気抵抗率が1×10−2Ωcm以下で用いられ、好適には2×10−3Ωcm以下で用いられる。また、腐食、溶解による劣化が少ない点から炭素からなる材料が好適に用いられる。
【0035】
好適に使用される電子伝導体の具体的な材料の例を挙げれば、鉄、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、銅等の遷移金属類、カーボン、あるいはカーボン粉末を充填した高分子などがある。このうち、本発明のイオン解離性物質透過膜が、前記第一の態様(電子伝導体が、電子伝導性に併せて、イオン解離性物質の低温解離触媒作用と低温再結合触媒作用も有するものであり、これがイオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物の両表面に露出される態様)である場合、該電子伝導体としては、後述する低温解離触媒作用および低温再結合触媒作用を兼有するものが使用され、具体的には遷移金属類が使用される。他方、本発明のイオン解離性物質透過膜が、前記第二の態様(イオン交換樹脂および電子伝導体を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物からなる中心層の一方の表面に、イオン解離性物質の低温解離触媒層が積層されてなり、他方の表面にイオン解離性物質の低温再結合触媒層が積層された態様)である場合、該電子伝導体としては、安価かつ入手しやすいという理由から、カーボンが特に好適である。またこれらの電子伝導体は複数の種類を併せて使用しても良い。
【0036】
これら電子伝導体の形状は、粉末、多孔体、繊維または繊維を積層したものなどを何ら制限されること無く用いることができる。
【0037】
本発明のイオン解離性物質透過膜において、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物は、前記イオン交換樹脂と電子伝導体とを混合し膜化することにより構成することができる。その混合方法は、特に制限されること無く種々の方法を用いることができるが、混合された後にもイオン伝導性と電子伝導性の両方を備えていることが必要である。また、イオン解離性物質透過膜として用いた際に、一方の側の流体が、他方の側に流出することの無いよう、十分に緻密な膜状物であるのが好ましい。
【0038】
その例をいくつか示せば、以下の通りである。
(1)電子伝導性を有する膜状の多孔質材料を、溶媒に溶解したイオン交換樹脂の溶液に浸した後に乾燥させて溶媒を除去することにより、電子伝導性多孔質材料の多孔内にイオン交換樹脂を被覆した膜状物
(2)電子伝導性を有する粉体あるいは繊維とイオン交換樹脂の粉体を混合し、その後に、圧力を加えて成型した膜状物
(3)電子伝導性を有する粉体あるいは繊維を、溶媒に溶解したイオン交換樹脂の溶液と混合し、その後に平板上に流延し、溶媒を乾燥除去することにより得られる膜状物
【0039】
上記(1)の方法において、電子伝導性を有する膜状の多孔質材料とは、具体的には鉄、銅、ニッケルなどの遷移金属類を上記形状にしたものが挙げられる。その平均孔径は0.1〜1000μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。また、その空隙率は、10〜95%が好ましく、50〜90%がより好ましい。また、溶媒に溶解したイオン交換樹脂の溶液において、溶媒は、水、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、プロパノール、メタノール等が単独でまたは混合溶液として使用される。イオン交換樹脂の濃度は1〜40質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
【0040】
他方、(2)の方法において、電子伝導性を有する粉体の平均粒子径は、0.001〜5μmが好ましく、0.005〜0.1μmがより好ましい。電子伝導性を有する繊維の平均繊維径は0.001〜10μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、繊維長は1〜1000μmが好ましく、10〜500μmがより好ましい。また、イオン交換樹脂の粉体の平均粒子径は、1〜1000μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0041】
さらに、(3)の方法において、電子伝導性を有する粉体あるいは繊維、並びに溶媒に溶解したイオン交換樹脂の溶液は、上記(1)および(2)の方法で説明したのと同じものが、同様に好適なものとして使用できる。
【0042】
このようにして得られる膜状物の厚みは、大きい場合にはそのイオン伝導度が小さくなるため物質の透過速度が遅くなり、小さい場合には機械的強度が小さくなり破損しやすくなることから、用いる材料のイオン伝導性と電子伝導性、強度を勘案して適宜に決定する。一般的な厚みの範囲を示せば1μm〜10mm、好適な範囲としては5μm〜2mmで用いられる。
【0043】
本発明のイオン解離性物質透過膜を前記第一の態様として用いる場合、この膜は、上記(1)の方法により得たものを適用するのが好ましい。イオン交換樹脂および電子伝導体を含む膜状物において、その両表面に電子伝導体を十分に露出させるために、各表面を研磨紙を用いて研磨するのが好ましい。
【0044】
他方、イオン解離性物質透過膜が前記第二の態様である場合には、イオン交換樹脂および電子伝導体を含む膜状物の両表面に、イオン解離性物質の低温解離触媒層と低温再結合触媒層をそれぞれ積層する。イオン解離性物質の解離反応の例を示せば、以下の通りである。
【0045】
例えば、水素、酸素の場合には、以下の通りである。
→ 2H + 2e
→ 2O2− + 4e

再結合反応の例を示せば、以下の通りである。
【0046】
例えば、水素、酸素の場合には、以下の通りである。
2H + 2e → H
2O2− + 4e→ O
【0047】
低温解離触媒層と低温再結合触媒層は、それぞれの解離反応の触媒、再結合反応の触媒からなる。一般に解離反応と再結合反応は逆反応の関係にあるため、同じ触媒を用いることができる。
【0048】
これらの反応に使用できる触媒は、反応の種類により異なるが、種々の公知である触媒を用いることができる。一般に金属からなることが多い。なお、低温解離触媒および低温再結合触媒が金属の場合、前記イオン解離性物質透過膜が第一の態様である場合には、これらの触媒作用を兼有する電子伝導体として使用できるものになる。
【0049】
低温解離触媒および低温再結合触媒として使用できる金属を例示すれば、白金、パラジウム、金、銀などの貴金属類、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの遷移金属類が好適に使用できることが知られている。活性が高いことから好適に用いられる金属の例を挙げれば、白金、パラジウム、等の貴金属類である。さらに好適には白金等の貴金属触媒が用いられる。例えば、水素、酸素、水の解離反応、再結合反応には、白金、ニッケルなどが好適に用いられる。
【0050】
低温解離触媒層および低温再結合触媒層を形成するための触媒の形態は、その表面積を大きくし、一度に反応させられる量を増やすことができることから、数十μmあるいはそれ以下の微粒子が用いられる。好適には10μm以下の平均粒子径の微粒子が用いられ、更に好適には0.1μm以下、より好適には0.001〜0.05μmの平均粒子径の微粒子が用いられる。
【0051】
触媒は、金属をそのまま用いてもよいし、その取り扱いの容易さや、貴金属を用いる場合のコスト低減の理由などから炭素などの電子伝導体の表面に微粒子として付着させた状態で用いてもよい。
【0052】
低温解離触媒層および低温再結合触媒層の厚みは、通常、0.1〜100μmであり、より好ましくは、1〜30μmである。これら低温解離触媒層および低温再結合触媒層は、一定時間に反応できるイオン解離性物質の量が多いほど、本発明のイオン解離性物質透過膜の透過速度が大きくなるため好ましい。 低温解離触媒層および低温再結合触媒層の表面積が大きくすると一定時間に反応できるイオン解離性物質の量を多くすることができる。そして、低温解離触媒層および低温再結合触媒層の表面積が大きくなるのは、多孔質構造を有している場合である。そのため、低温解離触媒層および低温再結合触媒層には多孔質構造をとらせるのが一般的である。
【0053】
低温解離触媒層および低温再結合触媒層に多孔質構造をとらせる方法には、公知の方法を制限無く用いることができる。その一例を示せば以下の通りである。低温解離触媒層あるいは低温再結合触媒層に用いる微粒子状触媒を、溶媒中に分散させる。それを何らかの支持体上に塗布した後に、溶媒を揮発させる。微粒子状触媒は適度な空隙を有したまま支持体上に積層されて残る。このようにして、多孔質構造を有する両触媒層を得ることができる。
【0054】
また、上記のようにして作製した多孔質構造を有する低温解離触媒層あるいは低温再結合触媒層の空隙部分に、イオン伝導性物質を存在させると、触媒反応で生じたイオンが本発明の膜状物へと円滑に移動することができるため好適である。一般的には、以下のようにして作製することができる。すなわち、イオン伝導性物質を溶媒に溶解させ、その中に多孔質構造を有する解離触媒層あるいは再結合触媒層を含浸させる。その後に解離触媒層あるいは再結合触媒層を引き上げ、溶媒を乾燥させる。
【0055】
ここで用いるイオン伝導性物質には、伝導させるイオンの種類により様々な物質を使用することができる。例えば、伝導させるイオンを対イオンとして有する金属塩や、伝導させるイオンを対イオンとして有するイオン交換樹脂を例としてあげることができる。さらに具体的な例を示せば、塩素イオンを伝導させるためには、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩素イオンを対イオンとして有する金属塩が挙げられる。また、塩素イオンを対イオンとして含有させたアニオン交換樹脂も好適に用いることができる例として挙げることができる。
【0056】
それぞれの層で、イオン伝導性物質の含有量は、触媒成分100質量部に対して、0.01〜100質量部、より好ましくは、0.1〜70質量部である。
【0057】
イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物からなる中心層の一方の面に低温解離触媒層を、もう一方の面に低温再結合触媒層を積層させて、イオン解離性物質透過膜を構成させる方法は特に制限無く種々の方法を用いることができるが、その好適に用いられる例を示せば以下のとおりである。
【0058】
(1)あらかじめ、低温解離触媒層、低温再結合触媒層、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物を作成しておき、膜状物の一方の面に低温解離触媒層、もう一方の面に低温再結合触媒層を置き、熱プレス機等を用い、これらの3つの物体に圧力を加え、密着させる方法。
【0059】
(2)イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物の一方の面に、低温解離反応触媒層のための触媒層スラリーを塗布する。触媒層スラリーは、触媒を担持させたカーボンなどの担体粉末を、イオン交換樹脂などのイオン伝導性物質を溶解または分散させた溶媒に添加し、分散させて得る。その後に触媒層スラリーの溶媒を乾燥・除去することにより、膜状物の一方の面に低温触媒反応層を形成させる。さらにもう一方の面に低温再結合反応触媒層のための触媒層スラリーを塗布する。その後に溶媒を乾燥・除去し、膜状物のもう一方の面に低温再結合反応触媒層を形成させる方法。
【0060】
このようにして作製した、本発明のイオン解離性物質透過膜は以下のようにして用いられる。すなわち、イオン解離性物資透過膜に対して、イオン解離性物質の解離触媒が存在する側に、イオン解離性物質を含有する流体を供給し、イオン解離性物質の再結合触媒が存在する側に、イオン解離性物質の受容流体を供給し、イオン解離性物質を含有する流体中のイオン解離性物質をイオン解離性物質の受容流体中に透過させる。なお、イオン解離性物質の解離触媒と再結合触媒とが同一物質である場合には、イオン解離性物質を含有する流体の供給側とイオン解離性物質の受容流体を供給側は、それぞれイオン解離性物資透過膜のどちらの側に設けても良いものになる。
【0061】
本発明において、イオン解離性物質を含有する流体は気体が一般的であるが、液体であっても良い。またイオン解離性物質を含有する流体は複数のほかの成分を含有していてもよい。受容流体もまた、不活性気体が一般的であるが、不活性液体であっても良い。利用する用途にもよるが、受容流体に単一の物質を用いると、透過してきた物質のみを得る目的のためには好都合である。
【0062】
本発明のイオン解離性物質透過膜は、イオンに解離することができるイオン解離性物質を高選択的に透過する機能を有する。また、イオン解離触媒を適切に選択することにより特定の物質を高選択的にイオンに解離することができ、さらには、イオン再結合触媒を適切に選択することにより、これを高選択的に元のイオン解離性物質に戻すことができる。そのため、本発明のイオン解離性物質透過膜を用いると、複数の成分が混在する狭雑流体中から特定の成分を、高い選択性で取り出すことができる。
【0063】
例えば、イオン解離性物質を含有する狭雑流体として、水素、ヘリウム、およびアルゴンからなる混合気体を、本発明のイオン解離性物質透過膜の解離触媒が存在する面に流通させ、他方の再結合触媒が存在する面には受容流体として窒素を流通させる。イオン解離性物質透過膜に含有される、イオン交換樹脂、電子伝導体、低温解離触媒、および低温再結合触媒を適切に選ぶことにより、一方の表面にて、イオン解離性物質である水素のみが低温解離触媒により水素イオンと電子に解離し、それぞれが膜内を伝導し、他方の表面にて低温再結合触媒により再結合して水素を生成し、窒素と水素の2成分のみが実質混合した気体を得ることができる。このように本発明のイオン解離性物質透過膜は、イオン解離性物質を含有する狭雑流体から該イオン解離性物質を選択的に取り出すという、イオン解離性物質の純化方法に利用することができる。
【0064】
このような純化方法は、以下に例を示すような純化装置を用いて実施することになる。
【0065】
すなわち、図3の概略図に示すように、本発明のイオン解離性物質透過膜11を中央に配し、イオン解離性物質の低温解離触媒が存在する側12に、イオン解離性物質を含有する狭雑流体16の供給室14が設けられ、イオン解離性物質の低温再結合触媒が存在する側13に、イオン解離性物質の受容流体17の供給室15が設けられてなるイオン解離性物質の純化装置である。
【0066】
狭雑流体の流量、温度、受容流体の流量、温度は、その目的とするところにより任意に決めることができる。狭雑流体の流量は、イオン解離性物質透過膜の低温解離触媒層の膜面1cm当り1〜500ml/分、より好ましくは10〜200ml/分が適当である。また、受容流体の流量も上記と同様である。狭雑流体が気体の場合、湿度が、供給温度にて50〜100RHであるのが好ましい。
【0067】
運転は、使用した低温解離触媒および低温再結合触媒における反応進行温度(具体的には、0〜200℃、より好適には20〜100℃)であるが、イオン交換樹脂の耐熱性(一般には0〜100℃、より好適には10〜80℃)も考慮して、より好適な範囲を設定すれば良い。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1(第一の態様)
電子伝導体として市販の板状ニッケルフォーム(ニッケルを円板状で、平均孔径450μm、厚み1.4mmの多孔体に成型したもの。直径2cm)を用い、イオン交換樹脂としてスルホニル基を有するフッ素樹脂であるNafion(商品名)を用いた。ニッケルフォームを20質量%Nafion溶液(溶媒:1−プロパノール)に含浸し、引き揚げたのちに真空デシケータ中で脱溶媒し、70℃にて1時間乾燥させた。この含浸操作を3回繰り返し、3回目の乾燥は70℃にて4時間行なった。この両面をSiC製のエメリー紙で両面を研磨し、Nafionとニッケルが表面に現れるようにし、表面のイオン伝導性と電子伝導性を確保した厚さ1.4mmの膜状物を作製した。表面に露出したニッケルは電子伝導体であると同時に、低温解離触媒および低温再結合触媒として機能する。
【0070】
この膜状物を用い、一方の面に10体積%水素、90体積%窒素の混合ガス(温度50℃、湿度82%RH、流量 低温再結合触媒層の膜面1cmあたり90ml/(分・cm))を接触させ、また、もう一方の面にアルゴン(温度50℃、湿度 82%RH、流量 低温再結合触媒層の膜面1cmあたり90ml/(分・cm) )を接触させ、アルゴン中に透過してきたガスの濃度をガスクロマトグラフにて測定した。測定結果より水素と窒素の透過速度を求めた。結果を以下に示す。本発明の膜状物は、水素を選択的に透過することが示された
水素 20μl/(分・cm
窒素 5μl/(分・cm
【0071】
実施例2(第二の態様)
電子伝導体としてカーボンペーパーを、イオン交換樹脂として、スルホニル基を有するフッ素樹脂(商品名Nafion)を用いた。直径2cmのカーボンペーパー(特殊東海製紙株式会社製)を20質量%Nafion溶液(溶媒:1−プロパノール)に浸した後に引き揚げ、室温で乾燥させた後、70℃にて4時間乾燥した。さらに10MPa、145℃にて3分間熱プレス機にてプレスした後に120℃以下に急冷し、膜状物を得た。このときの厚みは0.22mmであった。
【0072】
得られた膜状物の両面に白金黒をスパチュラにて圧着した。さらに熱プレス機にて10MPa、132℃にて3分間プレスした後、120℃以下に急冷した。このときの膜厚は0.22mmであった。また触媒層として用いた白金黒の量は両面合わせて20mgであった。得られたイオン解離性物質透過膜の一方の面を低温解離触媒層とし、もう一方の面を低温再結合触媒層とした。
【0073】
低温解離触媒層の側に10体積%水素と90体積%窒素の混合ガス、または10体積%ヘリウムと90体積%窒素の混合ガス(温度50℃、湿度90%RH、流量 低温再結合触媒層の膜面1cmあたり48ml/(分・cm))を流通させ、再結合触媒層の側にアルゴン(温度50℃、湿度90%RH、流量 低温再結合触媒層の膜面1cm2あたり179ml/(分・cm))を流通させた。再結合触媒層に接触した後のアルゴンガス中の水素濃度をガスクロマトグラフにて測定し、水素とヘリウムの透過速度を求めた。結果を以下に示す。本発明の膜状物は、水素を選択的に透過することが示された。
【0074】
水素の透過速度 171μl/(分・cm
ヘリウムの透過速度 0.1μl/(分・cm
【0075】
実施例3
電子伝導体としてカーボンペーパーを、イオン交換樹脂として、スルホニル基を有するフッ素樹脂(商品名Nafion)を用いた。直径2cmのカーボンペーパー(特種東海製紙株式会社)を20質量%Nafion溶液(溶媒:1−プロパノール)に浸した後に引き上げ、室温で乾燥させた後、70℃にて4時間乾燥した。さらに10MPa、145℃にて3分間熱プレス機にてプレスした後に120℃以下に急冷し、膜状物を得た。このときの厚みは0.22mmであった。
次に、触媒を調製した。5質量%Nafion溶液と1−プロパノールに白金担持カーボン(白金担持量45.6質量%、田中貴金属株式会社)を分散させることで触媒とNafionのペースト状混合物を得た(質量の約80質量%は白金担持カーボンである)。上記膜状物の片面に、スパチュラにてペースト状混合物を塗布し乾燥した。さらに、膜状物のもう一方の面にペースト状混合物をスパチュラにて塗布し乾燥した。その後、熱プレス機にて10MPa、132℃にて3分間プレスし、120℃以下に急冷した。このときの膜厚は0.20mmであった。また触媒量は両面合わせて9.8mgであった。得られたイオン解離性物質透過膜の一方の面を低温解離触媒層とし、もう一方の面を低温再結合触媒層とした。
【0076】
低温解離触媒層の側に0〜50体積%水素を含む窒素の混合ガス、または10体積%ヘリウムと90体積%窒素との混合ガス(温度50℃、湿度90%RH、流量 低温解離触媒層の膜面1cmあたり 48ml/分)を流通させ、再結合触媒層の側にアルゴン(温度50℃、湿度90%RH、流量 低温再結合触媒層の膜面1cmあたり179ml/分)を流通させた。低温再結合触媒層に接触した後のアルゴンガス中の水素濃度をガスクロマトグラフにて測定したところ、低温解離触媒層にヘリウムと窒素との混合ガスを供給した場合においてヘリウムの透過は観測されなかった。また、低温解離触媒層に、水素を含む窒素の混合ガスを供給した場合では、水素の透過が観測され、その透過速度を求めたところ、表1に示したように水素含有量の増大に対応して、その透過速度も速くなった。図4に、低温解離触媒層側供給混合ガス中の水素濃度の変化と、そのときの再結合触媒層側への水素の透過速度の変化の関係を示した。
【0077】
【表1】

【符号の説明】
【0078】
1 イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物
2 イオン交換樹脂
3 電子伝導体
4 低温解離触媒層
5 低温再結合触媒層
11 イオン解離性物質透過膜
12 イオン解離性物質の低温解離触媒が存在する側
13 イオン解離性物質の低温再結合触媒が存在する側
14 イオン解離性物質を含有する狭雑流体の供給室
15 イオン解離性物質の受容流体の供給室
16 イオン解離性物質を含有する狭雑流体
17 イオン解離性物質の受容流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂および電子伝導体を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物であって、その一方の表面にはイオン解離性物質の低温解離触媒が存在し、他方の表面にはイオン解離性物質の低温再結合触媒が存在してなるイオン解離性物質透過膜。
【請求項2】
電子伝導体が、電子伝導性に併せて、イオン解離性物質の低温解離触媒作用と低温再結合触媒作用も有するものであり、これがイオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物の両表面に露出した態様である、請求項1記載のイオン解離性物質透過膜。
【請求項3】
電子伝導体が貴金属である、請求項2記載のイオン解離性物質透過膜。
【請求項4】
イオン交換樹脂および電子伝導体を含み、イオン伝導性と電子伝導性とを備えた膜状物からなる中心層の一方の表面に、イオン解離性物質の低温解離触媒層が積層されてなり、他方の表面にイオン解離性物質の低温再結合触媒層が積層された態様である、請求項1記載のイオン解離性物質透過膜。
【請求項5】
電子伝導体がカーボンである、請求項4記載のイオン解離性物質透過膜。
【請求項6】
イオン解離性物質の低温解離触媒層と低温再結合触媒層とが、貴金属含有層である、請求項4または請求項5に記載のイオン解離性物質透過膜。
【請求項7】
イオン解離性物質が水素であり、イオン交換樹脂がカチオン交換樹脂である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のイオン解離性物質透過膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオン解離性物資透過膜に対して、イオン解離性物質の低温解離触媒が存在する側に、イオン解離性物質を含有する狭雑流体を供給し、イオン解離性物質の低温再結合触媒が存在する側に、イオン解離性物質の受容流体を供給し、イオン解離性物質を含有する狭雑流体中のイオン解離性物質をイオン解離性物質の受容流体中に透過させることを特徴とするイオン解離性物質の純化方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオン解離性物質透過膜を配し、そのイオン解離性物質の低温解離触媒が存在する側に、イオン解離性物質を含有する狭雑流体の供給室が設けられ、イオン解離性物質の低温再結合触媒が存在する側に、イオン解離性物質の受容流体の供給室が設けられてなるイオン解離性物質の純化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232255(P2012−232255A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102070(P2011−102070)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年11月6日 2010年日本化学会西日本大会実行委員会発行の「2010年日本化学会西日本大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】