説明

イオン送出装置及びイオンによる菌又は臭い成分の除去方法

【課題】 イオン発生装置から発生したイオンを高濃度のまま人や動物の体表面に送出することによって、人や動物に付着あるいは周囲に浮遊した菌や臭い成分を効果的に除去するイオン送出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係るイオン送出装置は、放電によりイオンを発生させるイオン発生装置と、イオン発生装置が取り付けられる装着手段と、装着手段を人又は動物に装着した状態において、発生したイオンを人又は動物の体表面に沿って送出するイオン送出手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正イオン又は負イオンが発生するイオン発生装置を応用する装置及びイオンを用いた方法であり、イオンを、人や動物の身体に照射することによって、人や動物の体表面に付着、あるいは体表面の周囲に浮遊した菌や臭い成分を除去することが可能なイオン送出装置及びイオンによる菌又は臭い成分の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人や動物に付着したあるいは周囲に浮遊している菌や臭い成分を除去し、健康で快適な生活を送りたいという要望が強くなっている。特に、犬や猫などのペットを飼う場合、ペットから発せられる臭いやペットの病気を予防するために、皮膚や毛に付着、あるいは周囲に浮遊した菌や臭い成分を殺菌・除去する必要がある。
【0003】
従来より、室内の空気の浄化、殺菌あるいは消臭などを行うために、イオン発生装置が使用されている。これらの多くは、イオン発生電極を備え、コロナ放電させることで高濃度の正イオンと負イオンを発生させ、これらのイオンによって空気の浄化、殺菌あるいは消臭を行うものである。例えば、特許文献1には、正イオンと負イオンを発生させるイオン発生装置を備えた、空気清浄機が記載されている。
【0004】
また、携帯型のイオン発生装置も知られており、例えば、特許文献2には、顔面近傍の装身具に取りつけられるイオン発生装置が記載されている。図を用いて説明すると、図18に示すように、イオン発生装置100は、例えば、帽子101に取り付けられて使用される。そして、イオン発生装置100は、携帯中、常に使用者の前方に向かってイオン102を放出し、使用者の顔面近傍にイオン102を供給する。このように構成することによって、人間が吸い込む空気を浄化し殺菌することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3773767号
【特許文献2】特開2005−261713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された空気清浄機においては、発生したイオンは、ファンによる送風で放出された時点では高濃度であったとしても、室内に拡散することで希釈化され、人や動物の体表面に到達する前に大部分が空気中で消滅することが考えられる。その結果、人や動物の体表面に付着した菌や臭い成分に対して効果的に作用することはできない。
【0007】
また、特許文献2に記載されたイオン発生装置においては、発生したイオンは、使用者が吸い込む空気だけを浄化、殺菌するものであり、人や動物に付着した菌や臭い成分は依然として体表面に付着したままである。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、イオン発生装置から発生したイオンを高濃度のまま人や動物の体表面に送出することによって、人や動物に付着あるいは周囲に浮遊した菌や臭い成分を効果的に除去するイオン送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るイオン送出装置は、放電によりイオンを発生させるイオン発生装置と、イオン発生装置が取り付けられる装着手段と、装着手段を人又は動物に装着した状態において、発生したイオンを人又は動物の体表面に沿って送出するイオン送出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記イオン送出手段は、発生したイオンを空気とともに送風する送風装置であることが好ましい。
【0011】
上記装着手段は、人又は動物の少なくとも一部を覆う被覆体を備え、イオン送出手段は、発生したイオンを被覆体と人又は動物の体表面との間に送出することが好ましい。
【0012】
上記被覆体は、装着手段に対して着脱可能に構成されることが好ましい。
【0013】
上記被覆体は、複数の通気層が積層されて構成されることが好ましい。
【0014】
上記装着手段は、動物の首に装着するように構成された首輪であることが好ましい。
【0015】
上記送風装置は、イオン発生装置と対向して配置され、送風装置によって送風された空気は、人又は動物の体表面に沿って送出されることが好ましい。
【0016】
本願に係るイオンによる菌又は臭い成分の除去方法は、放電によりイオンを発生させ、発生したイオンを人又は動物の体表面に沿って送出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、イオン発生装置から発生したイオンを高濃度のまま人や動物の体表面に送出することによって、人や動物に付着あるいは周囲に浮遊した菌や臭い成分を効果的に除去するイオン送出装置及び、イオンによる菌又は臭い成分の除去方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1に係る、イオン発生装置付き首輪である。
【図2】図1のイオン発生装置付き首輪を他方の側面側から見た外観斜視図である。
【図3】図1のイオン発生装置付き首輪のA−A線断面による内部構造を示す模式図である。
【図4】図3の内部構造の一部を拡大した模式図である。
【図5】イオン発生装置のイオン発生素子を送風装置側から見た模式図(A)と、その側面を示した模式図(B)である。
【図6】イオン発生装置が備える高電圧印加回路とイオン発生素子の回路の一例を示す図である。
【図7】図4のB−B線断面における模式図である。
【図8】実施の形態2に係る、被覆体8を取り付け可能なイオン発生装置付き首輪の使用状態を示す模式図である。
【図9】図8のイオン発生装置付き首輪の斜視図(A)と、対応する被覆体の展開図(B)である。
【図10】図9の除去装置を被覆体と共に使用した時のイオンの拡散状況を説明するための模式図である。
【図11】実施の形態3に係る、複数の通気層が積層された被覆体を取り付けたイオン発生装置付き首輪を使用したときの、イオンの拡散状況を説明するための模式図である。
【図12】実施形態4に係る、最外層布と最内層布との間に不織布が挿入された被覆体を取り付けたイオン発生装置付き首輪を使用した時のイオンの拡散状況を説明するための模式図である。
【図13】実施の形態5に係る、イオン発生装置が取り付けられた犬用の衣服の模式図である。
【図14】図13のイオン発生装置の模式図である。
【図15】図14のイオン発生装置のC−C線断面による内部構造の一部を示す模式図である。
【図16】実施の形態6に係る、イオン発生装置が取り付けられた宇宙服の模式図である。
【図17】宇宙服に着脱可能に取り付けられるイオン発生装置の模式図である。
【図18】背景技術に関する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るイオン送出装置を実施するための形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る、犬用に構成したイオン発生装置付き首輪1の外観斜視図である。図2は、図1に係るイオン発生装置付き首輪1を他方の側面側から見た外観斜視図である。イオン発生装置付き首輪1は、首輪としての外形を構成するケーシング2と、ケーシング2に内蔵された2つのイオン発生装置3、3と、各イオン発生装置3、3にそれぞれ外気を導入する2つの送風装置4、4と、ヒンジ5と、バックル6と、リードフック7を備えている。
【0020】
ケーシング2は、第1ケーシング21と、第2ケーシング22の2つの部材で分割構成され、第1ケーシング21と第2ケーシング22との両方で、装着手段としての首輪の円弧を形成するように構成されている。
【0021】
イオン発生装置3、3は、それぞれ第1ケーシング21と第2ケーシング22とに内蔵されている。なお、イオン発生装置3の詳細は後述する。
【0022】
送風装置4、4は、それぞれ第1ケーシング21と第2ケーシング22とに設けられた凸部41、41に配設されている。凸部41、41の外側面には、それぞれ網42、42でカバーされた吸気孔43、43が設けられ、凸部41、41の内部には、それぞれ小型のプロペラ式送風機44、44が配設されている(図3参照)。
【0023】
網42、42は、第1ケーシング21と第2ケーシング22の内部へ体毛などの異物が吸い込まれることを防止するとともに、舌の先などがイオン発生装置3の高圧部分などに触れないように構成されている。
【0024】
ヒンジ5は、第1ケーシング21と第2ケーシング22とを開閉可能に接続している。
【0025】
バックル6は、ヒンジ5にて開閉可能に接続された第1ケーシング21と第2ケーシング22とを閉じた状態で固定して一体化するものであり、バックル6の基部は、第2ケーシング22に回動可能に軸支され、バックル6の先部は第1ケーシング21に設けられた爪211引っ掛けて固定し得るように構成されている。
【0026】
リードフック7は、第2ケーシング22を貫通して配設された金属製の輪で構成されており、例えば散歩用のひも(リード)を接続するときに使用する。
【0027】
次に、イオン発生装置付き首輪1の内部構造について説明する。図3は、図1のイオン発生装置付き首輪1のA−A線断面による内部構造を示す模式図である。図4は、図3の内部構造の一部を拡大した模式図である。図5は、イオン発生装置3のイオン発生素子32を送風装置4側から見た模式図(A)と、その側面を示した模式図(B)である。
【0028】
第1ケーシング21の内部には、一方のイオン発生素子32と電池33が配置され、第2ケーシング22の内部には、他方のイオン発生素子32と高電圧印加回路34が配置されている。
【0029】
第1ケーシング21に内蔵されているイオン発生素子32と第2ケーシング22に内蔵されているイオン発生素子32は、形状はケーシングの内部空間に応じて若干異なるが、それらの構成と機能は同じである。第1ケーシング21に内蔵されたイオン発生素子32と、第2ケーシング22に内蔵されたイオン発生素子32は、電池33と高電圧印加回路34を共用する構成となっている。
【0030】
イオン発生素子32は、正イオンを発生する針状電極321と、負イオンを発生する針状電極322とを備えている。
【0031】

イオン発生素子32は、図5に示したように、基板323に2つのU字状の切欠き324、325を設けて、一方の切欠き324の中心軸上には一方の針状電極321が配設され、針状電極321の基部は、一方の切欠き324の内側部分に設けたランド326に通電可能に固定され、他方の切欠き325の中心軸上には他方の針状電極322が配設され、針状電極322の基部は、他方の切欠き325の内側部分に設けたランド327に通電可能に固定されている。
【0032】
一方のU字状の切欠き324の周縁部には針状電極321に対応する対向電極328が複数個所配置され、他方のU字状の切欠き325の周縁部には針状電極322に対応する対向電極329が複数個所配置されている。
【0033】
また、イオン発生素子32、32がそれぞれ第1ケーシング21と第2ケーシング22の内部に設置された状態では、それぞれの針状電極321、322は、図1、2に示されたイオン送出孔311、312のほぼ中心に向かうように配設されている。
【0034】
なお、図3においては、図1、2において説明した構成要素に関しては同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、第2ケーシング22に内蔵されたイオン発生素子32は、第1ケーシング21に内蔵されたイオン発生素子32と同様の構成であるので、その説明は省略した。
【0035】
図6に、イオン発生装置3が備える高電圧印加回路34とイオン発生素子32の回路の一例を示す。高電圧印加回路34は、電池33から給電され2つの電圧変換部341、342を経由してイオン発生素子32に高電圧を印加するように構成されている。
【0036】
イオン発生素子32の針状電極321には、順方向ダイオード3211を介した高電圧が対向電極328との間に印加されることによって正イオンが発生する。
【0037】
イオン発生素子32の針状電極322には、逆方向ダイオード3221を介した高電圧が対向電極329との間に印加されることによって、負イオンが発生する。
【0038】
次に、イオン発生素子32と送風装置4との位置関係を説明する。図7は、図4のB−B線断面における模式図である。
【0039】
イオン発生素子32は、送風装置4の風下側に、基板323がプロペラ式送風機44と対向するように第1ケーシング21内に固定されている。また、前述したように、針状電極321は、その先端をイオン送出孔311の中央に向けて基板323に固定されており、基板に対して略水平になるように構成されている。
【0040】
このような構成とすることで、図7において矢印で示したように、送風装置4によって、吸気孔43から吸引された空気は、第1ケーシング21との間に設けられた通気孔45を通って、基板323に当たり、方向を略90°変えられた後、イオン発生素子32の針状電極321の近傍を通過して、針状電極321の近傍で発生させた正イオンと共に、針状電極321の針先方向に送出されて、針状電極321の針先方向に設けられているイオン送出孔311から送出される。
【0041】
なお、図7では示されていないが、他方の針状電極322の近傍を通過した空気は、針状電極322の近傍で発生させた負イオンと共に、針状電極322の針先方向に送出されて、イオン送出孔312(図1参照)から送出される。
【0042】
上述したイオン発生機付き首輪1を犬の首に装着するときは、図1に示したケーシング2に設けられたイオン送出孔311、312が、犬の胴体側へ面するように装着する。このように装着することにより、イオン送出孔311、312から送出されるイオンは、犬の身体の体表面に沿って送出されることになるので、拡散されていない高濃度のイオンの作用によって、体表面の菌または臭い成分の何れか一方、もしくは菌および臭い成分の両方を効果的に除去することができるのである。
【0043】
イオン発生装置3は、イオン発生装置付き首輪1に内蔵されている構成上、犬の体表面に非常に近接した位置からイオンを送出することができるため、通常の空気清浄機等が空間に実現するイオン濃度の100倍〜1000倍という高濃度のイオンを供給することが可能である。計測した例では数百万個/cmという濃度を確認している。
【0044】
本実施の形態では正イオンをH(HO) (mは任意の自然数)、負イオンをO(HO)(nは任意の自然数)となるように、イオン発生素子32に印加される電圧を、1kV〜2kV程度に調整している。
【0045】
なお、イオン発生素子32は正イオンと負イオンの両方を発生させるものに限定されず、正イオンのみ、または負イオンのみを発生させるものであっても良い。その場合には限定された殺菌効果や消臭効果と、リラックス効果がある。
【0046】
また、本願のイオンには、単原子イオンや多原子イオン、クラスターイオン等の各種イオンが広く含まれ、静電霧化現象を利用して得られる帯電した微粒子水滴も含まれる。
【0047】
また、実施の形態1のイオン発生機付き首輪1は、送風装置を備えているので、イオン発生素子にて発生したイオンを、首輪から離れた位置の体表面まで送出することができる。
(実施の形態2)
上述した実施の形態1のイオン発生装置付き首輪1に、高濃度のイオンの拡散領域を制限するための被覆体を取り付けてもよい。以下においては、イオン発生装置付き首輪1に被覆体を取り付けた形態を実施の形態2として説明する。
【0048】
図8は、本発明に実施の形態2に係る、被覆体を取り付け可能なイオン発生装置付き首輪1Bの使用状態を示す模式図であり、図9は、図8のイオン発生装置付き首輪の斜視図(A)と、対応する被覆体の展開図(B)である。
【0049】
イオン発生装置付き首輪1Bは、被覆体としての衣服8を取り付け可能としたこと以外は、実施の形態1におけるイオン発生装置付き首輪1と同様の構成であるので、対応する構成には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0050】
図9(A)に示したように、イオン発生装置付き首輪1Bの外周の表面には、送風装置4が配設されている領域を除いて、接続手段としての面ファスナー12、12が例えば貼着されて配設されている。
【0051】
図9(B)に示したように、衣服8は市販されている従来のペット用の衣服と異なり、犬の首に当たる首部分81が長くなっており、首部分81の内側には、イオン発生装置付き首輪1Bの面ファスナー12に対応する面ファスナー811が貼着され、対応する面ファスナー12と面ファスナー811とが係合することによって接続されるように構成されている。本明細書において、「係合する」とは、対応する面ファスナーどうしが、互いの表面に形成されたフックとループ等の構造を関係付けした状態で引っ掛け合うことによって接続されて互いに固定されることを意味している。
【0052】
衣服8には、さらに、基本となる布地部分82の腹に対応する部分83に面ファスナー831、832が貼着され、尻に対応する部分84に面ファスナー841、842が貼着されている。
【0053】
図8に示したように、衣服8を犬Dの胴体部分に装着した状態では、図9(B)に示した面ファスナー831と面ファスナー832とが犬の腹を覆って係合し、面ファスナー841と面ファスナー842とが犬の尻を覆って係合することによって、衣服8と犬Dの体表面との間に隙間が形成されるように構成されている。
【0054】
そして、犬Dの胴体を覆った衣服8の首部分81の面ファスナー811と、イオン発生装置付き首輪1Bの面ファスナー12とを係合させて、イオン発生装置付き首輪1Bと衣服8とを接続した状態では、イオン発生装置付き首輪1Bに形成されたイオン送出孔311、312は、衣服8と犬Dの体表面との間の隙間に向かって開口した状態となる。
【0055】
図10は、図9の除去装置を被覆体と共に使用した時のイオンの拡散状況を説明するための模式図である。送風装置4のプロペラ式送風機44によって外部から吸引された空気は、第1ケーシング21との間に設けられた通気孔45を通って、イオン発生素子32の基板323に当たって方向が変わり、針状電極321の近傍を通過して、発生させたイオン35と共に、針状電極321の針先方向に送出されて、イオン送出孔311から、衣服8の布地部分82と、犬の体表面D1との間の空間に送出されるように構成されている。
【0056】
なお、イオン35は本来微細なものであるが、図中においては模式的に「○」で図示した。
【0057】
図8、9、10を参照して説明したように、衣類8を取り付けたイオン発生装置付き首輪1Bにおいては、発生したイオン35は、イオン送出孔311、312から衣服8と犬Dの体表面との隙間に送出されるので、イオンの拡散領域を衣服8と犬Dの体表面との隙間に制限することができ、イオンが体表面から大気中へ拡散することを効果的に防止することができる。また、イオンは、送風装置4によって衣服8の内側に沿って送出されるのでイオン発生装置から遠い腹部や足元へもイオンを到達させることができる。また、犬の毛の方向に沿ってイオンを送風することが望ましい。そのように配置すればイオン発生装置から遠い腹部や足元へもイオンを到達させることができる。
【0058】
したがって、発生したイオン35は、高濃度のまま犬Dの体表面に送出されるので、前述のように、拡散されない高濃度のイオンの作用により、各部の体表面D1に付着した細菌を殺菌するとともに臭い成分の分解を効果的に行うことが可能となる。
【0059】
また、イオン35は、衣服8と犬の体表面D1の摩擦で起こる静電気を中和する効果も有する。さらに、正負イオンもしくは負イオンを大量に供給する場合には、それぞれのイオンが空気中の水分を吸着してクラスタ状態となるために、体表面D1に分子レベルの水分を供給することが可能になり、体表面D1に潤いを提供する効果も期待できる。
【0060】
なお、衣服8が不必要なときには、衣服8の首部分81の面ファスナー811を、イオン発生装置付き首輪1Bの面ファスナー12から引き剥がすことによって、衣服8をイオン発生機付き首輪1Bから容易に取り外すことができる。
【0061】
このように、衣服8は、対応する面ファスナー12と面ファスナー811とによって、イオン発生機付き首輪1Bに対して着脱可能に取り付けられるのである。
(実施の形態3)
上述した実施の形態2における被覆体は、複数の通気層が積層された材料を用いて構成してもよい。以下においては、イオン発生装置付き首輪に複数の通気層が積層された被覆体を取り付けた形態を実施の形体3として説明する。図11は、実施の形体3のイオン送出装置を使用したときの、イオンの拡散状況を説明するための模式図である。
【0062】
イオン発生装置付き首輪1Bは、被覆体としての衣服8Bを取り付け可能としたこと以外は、実施の形態1におけるイオン発生装置付き首輪1と同様の構成であるので、対応する構成には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0063】
衣服8Bを構成する布地部分82Bは、図11に示したように、最外層布821Bの内側に、互いに目の粗さの異なるメッシュ生地822B、823B、824Bが例えば3枚、積層された材料が用いられている。
【0064】
このように、メッシュ生地が例えば3枚、積層された材料を用いることによって、最外層布821Bとメッシュ生地822Bとの間に形成された第1の通気層825B、メッシュ生地822Bとメッシュ生地823Bとの間に形成された第2の通気層826B、メッシュ生地823Bとメッシュ生地824Bとの間に形成された第3の通気層827B、さらに、メッシュ生地824Bと犬の体表面D1との間に形成された第4の通気層828Bと、4つの通気層が形成される。
【0065】
犬の体表面D1と最外層布821Bとの間に、隙間を持った複数の通気層を積層させた状態で形成し、イオン送出孔311から送出される高濃度のイオン35を、各通気層825B、826B、827B、および828Bに送出することによって、第4の通気層828Bに送出されたイオンは、イオン送出孔311から近い距離の体表面D1で消費されても、第3の通気層827Bに送出されたイオンは、さらに遠い距離の体表面D1まで高濃度の状態で到達して消費され、第2の通気層826Bもしくは第1の通気層825Bに送出されたイオンは、さらに遠い距離の体表面D1まで高濃度の状態で到達して消費される。
【0066】
目の粗さの異なるメッシュ生地を数枚重ねた材料で衣服8Bを構成することで、各メッシュ生地が各通気層間の仕切りとなり、各通気層に送出されたイオン35から体表面D1までの距離が、メッシュ生地の枚数によって数段階に分けられる。そのため、各通気層に送出されたイオン35が、メッシュ生地を通り抜けて体表面D1に到達するまでの距離と時間を、数段階に異ならせることができる。その結果、イオン発生装置3のイオン送出孔311から離れた部分の体表面D1にもイオンが高濃度の状態で到達しやすくなり、衣服8Bに覆われた体表面D1の広い領域にわたってイオン濃度の分布が高濃度の状態で均一になりやすい。
【0067】
したがって、イオン発生装置付き首輪1Bから遠い腹部や足元などにも、イオン35が十分に高濃度の状態で到達しやすくなるので、イオン発生装置付き首輪1Bから離れた部分の犬の体表面D1に付着した細菌を殺菌して除去するとともに臭い成分の分解・除去を効果的に行うことが可能となる。
(実施の形態4)
上述した実施の形態3における衣服8Bは、最外層布と最内層布との間に不織布が挿入された材料を用いて構成してもよい。以下においては、イオン発生装置付き首輪に、最外層布と最内層布との間に不織布が挿入された被覆体を取り付けた形態を実施の形体4として説明する。図12は、実施の形体4のイオン送出装置を使用したときの、イオンの拡散状況を説明するための模式図である。
【0068】
イオン発生装置付き首輪1Bは、被覆体としての衣服8Cを取り付け可能としたこと以外は、実施の形態1におけるイオン発生装置付き首輪1と同様の構成であるので、対応する構成には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0069】
実施の形態4に用いる衣服8Cを構成する布地部分82Cは、図12に示したように、最外層布821Cと最内層布822Cとの間に、模式的に波形で示したように不織布823Cが挿入された材料が用いられている。最内層布822Cは通気性のあるメッシュ生地とする。
【0070】
不織布823Cは、多数の繊維が接着された状態で隙間が形成され、隙間の形状を保持できる程度の強度を有しており、隙間を保持する部材として機能するので、最外層布821Cと最内層布822Cとの間に不織布823Cによって形成される隙間824Cは、多少の外圧では容易には潰れない。
【0071】
したがって、イオン送出孔311から送出される高濃度のイオン35は、不織布823Cによって確保される隙間824Cを通って、遠い距離の体表面D1まで高濃度の状態で到達することができる。
【0072】
その結果、イオン発生装置3のイオン送出孔311から離れた体表面D1の部分にもイオンが高濃度の状態で到達しやすくなり、衣服8Cに覆われた体表面D1の広い領域にわたってイオン濃度の分布が高濃度の状態で均一になりやすい。
【0073】
したがって、イオン発生装置付き首輪1Bから遠い腹部や足元などにも、イオン35が十分に高濃度の状態で到達しやすくなるので、犬の体表面D1に付着した細菌を殺菌するとともに臭い成分の分解・除去を効果的に行うことが可能となる。
【0074】
実施の形態3もしくは実施の形態4で用いることのできるメッシュ生地には様々な素材を使用したものがあり、防湿、吸汗、速乾、静電気防止、体温調整などができる機能等を備えた種々の機能性生地があるため、このような機能性生地と本発明の実施の形態によるイオン発生装置付き首輪を組み合わせることによって犬の快適性も向上させることができる。なお、実施の形態3で用いる布地部分には、メッシュ生地を3層に限らず、何層積層させてもよく、実施の形態4で用いる布地部分には、1層以上の不織布と1層以上のメッシュ生地を積層させてもよい。
【0075】
また、衣服は必ずしも布で形成される必要はなく、樹脂製のシートや防水加工をした紙などの材料であっても良い。
【0076】
また、上述した実施の形態2、3、4における衣服8、8B、8Cは、イオン発生装置付き首輪1Bに対して着脱可能に取り付けられているが、被覆体をイオン発生装置付き首輪1Bに対して取り外しできない状態で取り付けてもよい。ここで、取り外しできない状態とするために、イオン発生装置付き首輪と被覆体を接着等の方法によって取り付けることができる。この場合には、犬が勝手に被覆体を取り外すことを防ぐことができるので、常に被覆体と体表面との間にイオンが供給されて、高濃度のイオンによる効果が安定して得られる。
(実施の形態5)
実施の形態1から4においては、送風装置4によって発生したイオンを人又は動物の体表面に沿って送出させていたが、送風装置を構成要素に含まない実施の形態も可能である。以下においては、送風装置を構成要素に含まない実施の形態を実施の形体5として説明する。図13は、実施の形態5に係る、イオン発生装置が取り付けられた犬用の衣服の模式図である。図14は、図13のイオン発生装置の模式図である。図14において、イオン発生装置は、衣服に取り付けられていない状態を示している。図15は、図14のイオン発生装置のC−C線断面による内部構造の一部を示す模式図である。
【0077】
イオン発生装置3は、犬用の衣服8Dの内側であって、犬の腹部よりやや下方の位置に取り付けられている。イオン発生装置3は、実際には左右方向の対称な位置に2箇所取り付けられているが、図13では、その一方のみを図示している。イオン発生装置3のイオン送出孔311、312は、犬が衣服8Eを装着した状態で上方に向くように配置されている。また、イオン発生装置3は、図14を参照すると、D面にて衣服8Dと接着等の手段で取り付けられる。以上のように、イオン発生装置3は、衣服8Dによって犬に装着される。
【0078】
図15に示したように、イオン発生装置3は、基盤323に針状電極321がその先端をイオン送出孔311の中央に向けて構成されている。また、イオン発生装置には、図示しない電池と高電圧印加回路が接続されている。
【0079】
衣服8Dの背中部と腹部には、複数の空気穴85、86が設けられ、空気穴85、86を介して外の空気が衣服8D内に取り込まれ、また、衣服8Dの内部から外に排出されるように構成されている。
【0080】
犬が衣類8Dを装着した状態では、犬の体温によって衣服8Dの内側の空気が温められ衣服8Dの外側の空気との間に温度差を生じる。温められた空気は、図13に矢印で示したように衣服8Dの内側に沿って上昇し、背中側に達し、空気穴85から排出される。代わりに空気穴86から空気が流入するので、衣服8Dの内側では、犬の体表面に沿って上昇気流が生じることになる。イオン発生装置3で発生したイオンは、この上昇気流により犬の体表面に沿って送出される。
【0081】
このような構成とすることで、送風装置を用いることなく発生したイオンを高濃度のまま動物の体表面に送出することができるので、装置の小型化・軽量化が可能となり、また、消費電力を小さくすることができるので、電池の小型化が出来るとともに電池の交換または、充電の頻度を少なくすることができる。また、送風装置の騒音や振動が問題となる用途にも用いることができる。
【0082】
なお、実施の形態5においては、所謂煙突効果を利用することで、送風装置を用いることなくイオンを送出することを説明したが、その他にも静電気的な引力や反発力を利用してイオンを送出してもよい。
(実施の形態6)
実施の形態1から5においては、本発明に係るイオン送出装置を装着する対象を動物、特に、犬を例にとって説明したが、犬以外の動物又は人に装着することも可能である。以下においては、人を対象としたイオン送出装置として、宇宙服にイオン発生装置を取り付けた形態を実施の形態6として説明する。図16は、実施の形態6に係る、イオン発生装置が取り付けられた宇宙服の模式図である。
【0083】
イオン発生装置3は、宇宙服8Eの内側であって、略腰の高さの左右2箇所に取り付けられている。図示しないイオン発生装置3のイオン送出孔311、312は、イオン発生装置3の上面に設けられており、イオンは、図示しない送風装置によって上方に放出される。以上のように、イオン発生装置3は、衣服8Eによって人に装着される。
【0084】
宇宙服8Eは、胴部81E、頭部82E、腕部83E、脚部84Eを有しており、それぞれの構成部は気密に接続されて使用される。
【0085】
送風装置によって上方に送出されたイオンは、図16に矢印で示した様に着用者の前側を胴部81Eの内側にそって上昇し、その一部が腕部83E内に至る。残りのイオンは、さらに上昇し、頭部82E内をイオンで満たした後、胴部81Eの背面に沿って下降する。また、宇宙服8Eは、前述のごとく気密に構成されているので、胴部81Eから分岐した、腕部83Eや脚部84E内部にもイオンを行き渡らせることができる。
【0086】
したがって、イオン発生装置3から遠い頭部82Eや腕部83E、脚部84Eなどにも、イオンが十分に高濃度の状態で到達しやすくなるので、人の体表面に付着した菌を殺菌するとともに臭い成分の分解・除去を効果的に行うことが可能となる。
【0087】
なお、イオン発生装置3は、宇宙服8Eに、着脱可能に取り付けられても良い。図17に宇宙服に着脱可能に取り付けられるイオン発生装置3の模式図を示す。
【0088】
イオン発生装置3は、宇宙服の内側に付加するための付加手段24を備えている。また、宇宙服8Eの内側には、内ポケット85Eが設けられている。イオン発生装置3は、付加手段24を用いて内ポケット85Eに着脱可能に取り付けられる。イオン発生装置3が宇宙服8Eに取り付けられた状態において、イオン送出孔311、312は、人の体表面に沿った方向を向いている。
【0089】
このような構成とすることで、イオン発生装置を後付けするができ、既存の宇宙服8Eに対して、イオンによる殺菌・消臭効果を付与することができる。また、イオン発生装置3を取り外し可能としたことで、電池やイオン発生素子の交換を簡単に行うことができる。
【0090】
また、本実施の形態では宇宙服で説明を行ったが、ライダーズスーツなど他の服にも応用可能である。
(その他の実施の形体)
以上の実施の形態1から5においては、本発明に係るイオン送出装置を装着する動物として、犬を例にとって説明したが、犬に限らず、猫やハムスターなどの小動物から、サイズと形状をそれぞれ合わせることによって、中型、大型の動物にも装着することが可能である。
【0091】
また、イオン送出装置を装着する身体の部位は、首に限らず、腹部や、足に装着することも可能である。イオン発生装置を、足に装着する場合には、靴下状のものや、靴状のものにイオン発生装置を設けるとよい。
【0092】
また、犬の散歩時には、首輪に代えてハーネスにリードを接続する場合があるが、その場合には、前記ハーネスにイオン発生装置を設けてもよい。また、イオンによる菌や臭い成分の除去作用のためには、イオン発生装置の電源を常時オンとしていることが効果的であるが、犬どうしが互いの臭いを確認し合う場合のように、臭いの除去を中止することが望まれる場合には、一時的にイオン発生を中止するために、電源のオンオフスイッチを設けてもよい。
【0093】
また、給電手段としては、各種充電可能な電池等も利用できるが、首輪のケーシングの表面や衣服の表面に配設した太陽電池を利用することも可能である。また、動物の運動による振動エネルギーや体温と外気温との温度差を電力に変換して利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るイオン送出装置は、小型のペットから大型の家畜などの多種類の動物や人を対象として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1、1B イオン発生装置付き首輪
2 ケーシング
3 イオン発生装置
311、312 イオン送出孔
32 イオン発生素子
321、322 針状電極
323 基板
324、325 切欠き
326、327 ランド
328、329 対向電極
33 電池
34 高電圧印加回路
35 イオン
4 送風装置
41 凸部
42 網
43 吸気孔
44 プロペラ式送風機
5 ヒンジ
6 バックル
7 リードフック
8、8B、8C、8D 衣服
8E 宇宙服
12、811、831、832、841、842 面ファスナー
D 犬(動物)
D1 体表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気中放電によりイオンを発生させるイオン発生装置と、
前記イオン発生装置が取り付けられる装着手段と、
前記装着手段を前記人又は動物に装着した状態において、前記発生したイオンを前記人又は動物の体表面に沿って送出するイオン送出手段と、を備えることを特徴とするイオン送出装置。
【請求項2】
前記イオン送出手段は、前記発生したイオンを空気とともに送風する送風装置である、ことを特徴とする請求項1に記載のイオン送出装置。
【請求項3】
前記装着手段は、前記人又は動物の少なくとも一部を覆う被覆体を備え、
前記イオン送出手段は、前記発生したイオンを前記被覆体と前記人又は動物の体表面との間に送出する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン送出装置。
【請求項4】
前記被覆体は、前記装着手段に対して着脱可能に構成される、ことを特徴とする請求項3に記載のイオン送出装置。
【請求項5】
前記被覆体は、複数の通気層が積層されてなる材料を用いて構成される、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のイオン送出装置。
【請求項6】
前記装着手段は、前記動物の首に装着するように構成された首輪であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のイオン送出装置。
【請求項7】
前記送風装置は、前記イオン発生装置と対向して配置され、
前記送風装置によって送風された空気は、前記人又は動物の体表面に沿って送出される、ことを特徴とする請求項2に記載のイオン送出装置。
【請求項8】
気中放電によりイオンを発生させ、
該発生したイオンを人又は動物の体表面に沿って送出することを特徴とするイオンによる菌又は臭い成分の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−105619(P2013−105619A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248453(P2011−248453)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】