説明

イオン除去装置および浄水装置

【課題】コンパクトなイオン除去装置および浄水装置を提供する。
【解決手段】イオン除去管30は、ケーシング31と、第1スクリュー型電極33aと、第2スクリュー型電極33bと、モータ34と、電源35とを備える。ケーシングは、液体が流入する入口と、液体が流出する出口とを有する管状の部材である。第1スクリュー型電極は、ケーシングと電気的に分離された状態で、ケーシング内に収容される。第1スクリュー型電極は、ケーシングの入口から出口に液体を搬送する。第2スクリュー型電極は、ケーシングおよび第1スクリュー型電極と電気的に分離された状態で、ケーシング内に収容される。第2スクリュー型電極は、ケーシングの入口から出口に液体を搬送する。駆動部は、第1スクリュー型電極および第2スクリュー型電極を駆動する。電源は、第1スクリュー型電極と第2スクリュー型電極との間に電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン除去装置および浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2011−56407号公報)に開示されているように、イオン交換膜を有するイオン除去装置が用いられている。このタイプのイオン除去装置では、イオン交換膜の両側に配置された一対の電極間に電圧を印加する。これにより、水道水などの被処理液体に含まれるイオンが、イオン交換膜を選択的に通過していずれかの電極側に移動するので、被処理液体からイオンを除去することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、河川の水や地下水が放射性降下物によって汚染されて、水道水が法定基準値を超える濃度の放射性物質を含有している場合を考える。この場合、ヨウ素131およびセシウム137などの放射性物質の一部は、イオンとして水道水中に溶解している。仮に、放射性物質を含む水道水を摂取すると、内部被爆による健康障害を引き起こす危険性がある。イオン交換膜を有する従来の大型のイオン除去装置は、小型のイオン除去装置に比べて、水道水からイオン性の放射性物質を除去する効果が高い。しかし、大型のイオン除去装置は、イオン除去効果を向上させるために複数台連結して用いる場合に、設置場所の確保が難しい。そこで、従来の大型のイオン除去装置と比べてコンパクトなイオン除去装置の開発が求められてきた。
【0004】
本発明の目的は、コンパクトなイオン除去装置および浄水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るイオン除去装置は、ケーシングと、第1電極板と、第2電極板と、駆動部と、電源とを備える。ケーシングは、液体が流入する入口と、液体が流出する出口とを有する管状の部材である。第1電極板は、ケーシングと電気的に分離された状態で、ケーシング内に収容される。第1電極板は、ケーシングの入口から出口に液体を搬送する。第2電極板は、ケーシングおよび第1電極板と電気的に分離された状態で、ケーシング内に収容される。第2電極板は、ケーシングの入口から出口に液体を搬送する。駆動部は、第1電極板および第2電極板を駆動する。電源は、第1電極板と第2電極板との間に電圧を印加する。
【0006】
本発明に係るイオン除去装置では、管状のケーシング内に収容される第1電極板および第2電極板が駆動することによって、ケーシング内部を満たす液体が、ケーシングの一端から他端に向かって搬送される。第1電極板および第2電極板は、例えば、金属製の細長い薄板が螺旋状に成形された部材であり、ケーシングの長手方向に沿った軸を中心に回転する。ケーシング内の液体は、駆動する第1電極板および第2電極板から力を受けて、ケーシング内を搬送される。また、本発明に係るイオン除去装置では、第1電極板と第2電極板との間に電圧を印加することによって、ケーシング内を搬送される液体に含まれるイオンが、第1電極板および第2電極板に引き寄せられて付着する。
【0007】
従って、本発明に係るイオン除去装置は、液体を搬送すると同時に液体中に含まれるイオンを除去することができる。また、本発明に係るイオン除去装置は、管状のケーシング内に電極対が収容される、コンパクトな形状を有する。
【0008】
また、本発明に係るイオン除去装置は、ケーシング内に収容され、かつ、ケーシングの長手方向に沿った回転軸をさらに備えることが好ましい。この態様では、第1電極板および第2電極板は、回転軸と電気的に分離された状態で、回転軸にスクリュー状に巻き付けられて固定されている。また、この態様では、駆動部は、回転軸を回転させて第1電極板および第2電極板を駆動する。
【0009】
この態様のイオン除去装置では、スクリュー状に成形された第1電極板および第2電極板が、ケーシング内の回転軸に固定されている。駆動部は、回転軸を回転させることによって、スクリュー状の電極対を回転駆動させる。回転する電極対は、スクリューコンベアとして機能して、ケーシング内の液体を搬送する。
【0010】
また、本発明に係るイオン除去装置では、第1電極板および第2電極板は、二重螺旋構造を形成することが好ましい。
【0011】
この態様のイオン除去装置では、スクリュー状に成形された2枚の電極板が、二重螺旋を描くように相互に絡み合いながら回転軸に固定されている。
【0012】
また、本発明に係るイオン除去装置では、回転軸は、樹脂で成形され、かつ、第1電極板および第2電極板は、耐腐食性金属で成形されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るイオン除去装置では、ケーシングは、耐腐食性金属で成形され、かつ、内周面が樹脂で被覆されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るイオン除去装置では、第1電極板および第2電極板は、液体に含まれるイオン性の放射性物質を吸着することが好ましい。
【0015】
この態様のイオン除去装置では、電気分解反応によって、液体中に溶解しているイオン性の放射性物質が、第1電極板および第2電極板に吸着される。従って、この態様のイオン除去装置は、液体に含まれるイオン性の放射性物質を除去することができる。
【0016】
本発明に係る浄水装置は、本発明に係るイオン除去装置と、水処理装置とを備える。水処理装置は、活性炭、中空糸膜およびイオン交換膜のいずれかを有する。
【0017】
本発明に係る浄水装置では、水道水などの原水からイオンを除去する本発明に係るイオン除去装置と、原水から不純物を除去するための他の機構を有する装置とが組み合わされている。従って、本発明に係る浄水装置は、原水に含まれる不純物を効果的に除去することができる。例えば、イオン交換膜を有する水処理装置は、電気分解反応によって、液体に含まれるイオン性の放射性物質を効果的に除去することができる。
【0018】
また、本発明に係る浄水装置では、水処理装置は、イオン交換膜を用いて、液体からイオンを除去するイオン交換膜ユニットであることが好ましい。このイオン交換膜ユニットは、除去したイオンを貯留するタンクを有することが好ましい。
【0019】
この態様の浄水装置では、液体から除去したイオン性の放射性物質を、タンクに蓄積した後に、安全に処分することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るイオン除去装置は、液体を搬送すると同時に液体中に含まれるイオンを除去することができ、コンパクトにすることができる。
【0021】
本発明に係る浄水装置は、コンパクトでありつつ、原水に含まれる不純物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る浄水装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るイオン除去管の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係るイオン除去管の内部の外観図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスクリュー型電極の外観図である。
【図5】本発明の実施形態に係るイオン交換膜ユニットの構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係るイオン交換膜ユニットのサブユニットの構成図である。
【図7】本発明の変形例Dに係る浄水装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)浄水装置の全体構成
本発明の実施形態に係る浄水装置10の構成図を図1に示す。浄水装置10は、水道水などの原水を取り入れ、取り入れた原水から不純物を除去して浄水を生成し、生成した浄水を供給する装置である。浄水装置10は、例えば、オフィスおよび家庭内に設置されるウォーターサーバー、および、スーパーマーケットに設置される業務用の浄水自動販売機として使用される。
【0024】
本実施形態において、浄水装置10は、原水タンク20と、イオン除去管30と、第1イオン交換膜ユニット40と、送水管50と、第2イオン交換膜ユニット60と、給水装置70とを有する。原水タンク20は、水道管20aから取り入れた水道水である原水を貯留する。イオン除去管30は、原水タンク20と第1イオン交換膜ユニット40とを接続する管であり、管内を流れる原水に含まれるイオン性の不純物を除去する。イオン除去管30の詳細な構成は、後述する。第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60は、イオン除去管30を通過した原水に残留しているイオン性の不純物を除去する。第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60の詳細な構成は、後述する。送水管50は、第1イオン交換膜ユニット40と第2イオン交換膜ユニット60とを接続する管である。給水装置70は、第2イオン交換膜ユニット60に接続され、生成された浄水を利用者に供給する装置である。給水装置70は、浄水保存用の容器70aを載置する載置台71と、載置台に載置された容器70aに浄水を注水する注水装置72とを有する。
【0025】
(2)イオン除去管の構成
イオン除去管30の構成図を図2に示す。イオン除去管30は、ケーシング31と、回転軸32と、第1スクリュー型電極33aと、第2スクリュー型電極33bと、モータ34と、電源35とから構成される。
【0026】
(2−1)ケーシング
ケーシング31は、円形の断面を有し、かつ、金属で成形された管状の部材である。ケーシング31は、チタンなどの耐腐食性の金属で成形されることが好ましい。イオン除去管30の内部の外観図を図3に示す。図3において、ケーシング31は、その長手方向に沿って切断した断面図で表されている。ケーシング31は、その長手方向が水平方向になるように配置されている。ケーシング31は、原水タンク20に接続される側の端部である取水口31aと、第1イオン交換膜ユニット40に接続される側の端部である送水口31bとを有する。
【0027】
本実施形態において、イオン除去管30によって処理される原水は、原水タンク20から取水口31aを介してケーシング31の内部に取り入れられ、かつ、ケーシング31の内部から送水口31bを介して第1イオン交換膜ユニット40に送られる。イオン除去管30は、ケーシング31の内部において、原水からイオン性の不純物を除去する処理を行う。
【0028】
(2−2)回転軸
回転軸32は、樹脂で成形された円柱状の部材である。回転軸32は、その長手方向が水平方向になるように、ケーシング31の内部に配置される。回転軸32は、モータ34によって、その長手方向に延びる中心軸32aを中心にして回転する。
【0029】
(2−3)第1スクリュー型電極
第1スクリュー型電極33aは、金属で成形された螺旋状の部材である。第1スクリュー型電極33aは、チタンおよびステンレスなどの耐腐食性の導電体で成形される。第1スクリュー型電極33aは、図3に示されるように、その螺旋形状の内周側の端部が、回転軸32の外周面に固定されている。第1スクリュー型電極33aは、ケーシング31の内周面と電気的に接続しないように配置される。第1スクリュー型電極33aは、電源35の正極と電気的に接続されている。
【0030】
第1スクリュー型電極33aの外観図を図4に示す。第1スクリュー型電極33aは、略C字形状の金属製の薄板を変形させたスクリュー母材を、溶接により多数連結して成形される。
【0031】
(2−4)第2スクリュー型電極
第2スクリュー型電極33bは、金属で成形された螺旋状の部材である。第2スクリュー型電極33bは、チタンおよびステンレスなどの耐腐食性の導電体で成形される。第1スクリュー型電極33aは、図3に示されるように、その螺旋形状の内周側の端部が、回転軸32の外周面に固定されている。第2スクリュー型電極33bは、ケーシング31の内周面および第1スクリュー型電極33aと電気的に接続しないように配置される。第2スクリュー型電極33bは、電源35の負極と電気的に接続されている。
【0032】
第2スクリュー型電極33bは、図4に示される第1スクリュー型電極33aと同じ寸法および同じ形状を有する。図3に示されるように、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bは、共に二重螺旋を形成するように、回転軸32の外周面に固定されている。
【0033】
本実施形態において、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bは、回転軸32の回転によって、中心軸32aを中心に回転する。また、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bは、ケーシング31の内部の原水に浸されている。従って、回転する第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bは、スクリューコンベアとして機能して、ケーシング31の内部の原水を取水口31aから送水口31bに向かって搬送する。
【0034】
(2−5)モータ
モータ34は、ケーシング31の外部に配置される。モータ34は、ギアあるいはベルトを介して、回転軸32と機械的に接続される。モータ34は、中心軸32aを中心に回転軸32を回転させる。モータ34による回転軸32の駆動によって、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bが回転して、ケーシング31の内部の原水が搬送される。
【0035】
(2−6)電源
電源35は、ケーシング31の外部に配置される。電源35は、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bとの間に、直流電圧を印加する装置である。電源35の正極は、第1スクリュー型電極33aに接続され、かつ、電源35の負極は、第2スクリュー型電極33bに接続される。
【0036】
本実施形態において、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bは、ケーシング31の内部の原水に浸される。電源35によって、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bからなる電極対に電圧が印加されることによって、ケーシング31の内部において、原水に含まれる化学物質と電極との間で電子の受け渡しが行われる電気分解反応が進行する。具体的には、電源35の正極に接続されるアノードである第1スクリュー型電極33aでは、原水に含まれる陰イオンから電子が奪われる酸化反応が進行する。反対に、電源35の負極に接続されるカソードである第2スクリュー型電極33bでは、原水に含まれる陽イオンに電子が与えられる還元反応が進行する。
【0037】
(3)イオン交換膜ユニットの構成
第1イオン交換膜ユニット40の構成図を図5に示す。第1イオン交換膜ユニット40は、ケーシング41と、ケーシング41の内部に配置される複数のサブユニット42a,42b,・・・,42fと、サブユニット42a,42b,・・・,42fに接続される電源43と、ケーシング41の外部に設置されるポンプ44と、ケーシング41の外部に設置される活性炭タンク45とを有する。なお、第2イオン交換膜ユニット60は、第1イオン交換膜ユニット40と同じ構造を有する。
【0038】
ケーシング41は、図5に示されるように、ケーシング41の側面上部に位置する流入口41aと、ケーシング41の側面下部に位置する流出口41bと、ケーシング41の上面に位置する排気口41cとを有する。流出口41bは、流入口41aに対して反対側のケーシング41の側面に位置する。イオン除去管30を通過した原水は、流入口41aからケーシング41の内部に流入し、サブユニット42a,42b,・・・,42fによってイオン性の不純物が除去され、流出口41bから送水管50に供給される。原水から除去されたガス状の不純物は、排気口41cからケーシング41の外部に排出される。
【0039】
サブユニット42aの構成図を図6に示す。サブユニット42aは、板状のユニットであり、板厚方向が水平になるように配置される。図6は、サブユニット42aを板厚方向に切断した縦断面図である。サブユニット42aは、第1電極板46a1と、第2電極板46a2と、一対の絶縁板47aと、陽イオン交換膜48a1と、陰イオン交換膜48a2とを有する。第1電極板46a1および第2電極板46a2は、互いに対向して配置され、上端および下端がそれぞれ絶縁板47aに密着して固定されている。第1電極板46a1および第2電極板46a2は、チタン、ステンレスおよびカーボンシートなどの耐腐食性の導電体で成形される。絶縁板47aは、板厚方向に形成される孔47a1を板面中央部に有するプラスチック製の部材である。第1電極板46a1は、電源43の正極に接続され、第2電極板46a2は、電源43の負極に接続される。陽イオン交換膜48a1は、第2電極板46a2の板面に密着して固定され、陰イオン交換膜48a2は、第1電極板46a1の板面に密着して固定される。陽イオン交換膜48a1および陰イオン交換膜48a2は、図6に示されるように、所定の間隔を置いて、互いに対向して配置される。絶縁板47aの孔47a1は、陽イオン交換膜48a1と陰イオン交換膜48a2との間の空間と連通する。イオン除去管30の第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bと同様に、第1電極板46a1では酸化反応が進行し、第2電極板46a2では還元反応が進行する。なお、他のサブユニット42b,42c,・・・,42fは、サブユニット42aと同じ構造を有する。
【0040】
電源43は、ケーシング41の外部に配置され、各サブユニット42a,42b,・・・,42fが有する一対の電極板の間に、直流電圧を印加する装置である。電源43は、原水の電気分解によって水素ガスが発生しない程度の電圧を印加し、好ましくは、3〜5ボルトの電圧を印加する。
【0041】
ポンプ44は、ケーシング41の排気口41cから排気されたガス状の不純物を吸引して、活性炭タンク45に送る装置である。
【0042】
活性炭タンク45は、交換可能な活性炭フィルターを内蔵する装置である。活性炭タンク45は、ポンプ44によって送られたガス状の不純物を、活性炭フィルターに吸着させて蓄積する。
【0043】
(4)浄水装置の動作
本実施形態に係る浄水装置10が、水道水である原水から不純物を除去して浄水を生成する過程について説明する。
【0044】
水道管20aから浄水装置10に供給された原水は、一旦、原水タンク20に貯留される。原水タンク20では、底部に沈殿する比較的質量が大きい不純物が除去される。原水タンク20に貯留された原水は、イオン除去管30の内部を通過して、第1イオン交換膜ユニット40に送られる。イオン除去管30の内部において、原水は、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bによって、原水タンク20から第1イオン交換膜ユニット40に向かって搬送されると同時に、原水に含まれるイオン性の不純物が電気分解反応によって除去される。具体的には、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bの回転によって、ケーシング31の内部の原水に対して、取水口31aから送水口31bに向かう力が作用して、原水が搬送される。また、第1スクリュー型電極33aと第2スクリュー型電極33bとの間に直流電圧が印加されることによって、原水に含まれる陰イオン性の不純物が、第1スクリュー型電極33aに引き寄せられて付着し、かつ、原水に含まれる陽イオン性の不純物が、第2スクリュー型電極33bに引き寄せられて付着する。すなわち、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bに、原水に含まれるイオン性の不純物が付着することによって、原水からイオン性の不純物の一部が除去される。
【0045】
イオン除去管30の内部を搬送されると同時にイオン性の不純物の一部が除去された原水は、第1イオン交換膜ユニット40に送られる。第1イオン交換膜ユニット40では、サブユニット42a,42b,・・・,42fによって、原水に残留しているイオン性の不純物が徐去される。例として、サブユニット42aにおいて、原水は、図6に記載の矢印WFが示すように、上側の絶縁板47aの孔47a1から、サブユニット42aの内部に流入する。そして、原水は、陽イオン交換膜48a1と陰イオン交換膜48a2との間を流下する。この過程で、原水に含まれる陰イオン性の不純物が、陰イオン交換膜48a2を透過して第1電極板46a1に付着し、かつ、原水に含まれる陽イオン性の不純物が、陽イオン交換膜48a1を透過して第2電極板46a2に付着する。イオン性の不純物が除去された原水は、下側の絶縁板47aの孔47a1から、サブユニット42aの外部に流出する。他のサブユニット42b,・・・においても、同様に、原水に含まれるイオン性の不純物が除去される。第1イオン交換膜ユニット40においてイオン性の不純物の一部が除去された原水は、送水管50の内部を通過して、第2イオン交換膜ユニット60に送られる。第2イオン交換膜ユニット60においても、第1イオン交換膜ユニット40と同様に、原水に残留しているイオン性の不純物が、原水から徐去される。
【0046】
第2イオン交換膜ユニット60においてイオン性の不純物が除去された原水は、浄水として、給水装置70によって浄水装置10の利用者に供給される。浄水装置10の利用者は、給水装置70の載置台71に、浄水保存用の容器70aを載せる。注水装置72は、載置台71上の容器70a内に浄水を注入する。注水装置72は、電子制御されるバルブなどである。
【0047】
(5)浄水装置の特徴
(5−1)
本実施形態に係る浄水装置10では、水道水である原水は、第1イオン交換膜ユニット40において不純物が除去される処理が行われる前に、イオン除去管30において不純物が除去される処理が行われる。従って、イオン交換膜ユニットのみを備える浄水装置と比べて、本実施形態に係る浄水装置10は、原水から不純物を効果的に除去することができる。
【0048】
(5−2)
本実施形態に係る浄水装置10では、イオン除去管30は、水道水である原水に含まれるイオン性の不純物を除去することができる。そのため、イオン除去管30は、水道水中にイオンとして溶解しているヨウ素131などの放射性物質を除去することができる。従って、本実施形態に係る浄水装置10は、放射性降下物などの放射性物質で汚染されている水道水から、放射性物質を効率的に除去することができる。
【0049】
(5−3)
本実施形態に係る浄水装置10では、イオン除去管30は、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bからなる電極対が、ケーシング31内に配置される構成を有している。この電極対は、ケーシング31の内部の原水を原水タンク20から第1イオン交換膜ユニット40に搬送すると同時に、ケーシング31の内部の原水からイオン性の不純物を電気分解によって除去する。従って、本実施形態に係る浄水装置10は、原水タンク20に貯留された原水を第1イオン交換膜ユニット40に効率的に搬送することができ、同時に、原水中に含まれるイオン性の不純物を除去することができる。
【0050】
(5−4)
本実施形態に係る浄水装置10では、イオン除去管30は、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bからなる電極対がケーシング31の内部に収納される、コンパクトな形状を有している。
【0051】
従来、イオン交換膜ユニットを備える浄水装置の浄水効果を向上させるために、新たなイオン交換膜ユニットを浄水装置に追加する方法が採られていた。しかし、本実施形態では、新たなイオン交換膜ユニットを追加する代わりに、イオン除去管30を追加することによって、浄水装置の浄水効果を向上させることができる。この場合、従来の浄水装置のユニット間を接続する配管を、イオン除去管30に置換することによって、イオン除去管30を追加することができる。従って、本実施形態に係る浄水装置10は、イオン除去管30を用いることによって、浄水装置10が占める空間の体積の増加を抑えることができ、同時に、原水中に含まれるイオン性の不純物を除去する効果を向上させることができる。
【0052】
(5−5)
本実施形態に係る浄水装置10では、第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60は、原水に含まれるイオン性の不純物が気体として析出された場合に、ガス状の不純物を活性炭タンク45に蓄積することができる。例えば、放射性物質の一種であるヨウ素131の一価の陰イオンが原水に含まれている場合を考える。この場合、第1イオン交換膜ユニット40では、ヨウ素131の一価の陰イオンが、陰イオン交換膜48a2を透過して、電源43の正極に接続される第1電極板46a1に接触して、中性のヨウ素ガスに変換される。第2イオン交換膜ユニット60でも、ヨウ素131の一価の陰イオンが、中性のヨウ素ガスに変換される。第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60は、上述の電気分解反応によって発生した放射性のヨウ素ガスを、ヨウ素131の半減期(8.02日)の経過後に排気して、活性炭タンク45の活性炭フィルターに吸着させる。従って、浄水装置10の管理者は、活性炭タンク45の活性炭フィルターを焼却処分することで、第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60によって除去された放射性のヨウ素ガスを安全に処理することができる。
【0053】
(5−6)
本実施形態に係る浄水装置10では、第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60は、原水に含まれている放射性物質の一種であるヨウ素131をイオン交換膜に吸着させる高い効果を有する。従って、本実施形態に係る浄水装置10は、原水に含まれているヨウ素131を効率的に除去することができる。
【0054】
(6)変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変更可能である。次に、本実施形態に係る浄水装置に対する適用可能な変形例について説明する。
【0055】
(6−1)変形例A
本発明の実施形態では、イオン除去管30は、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bからなる二重螺旋形状の電極対を有するが、ケーシング31の内部の原水を搬送する効果を有する、他の形状の電極対を有してもよい。
【0056】
例えば、イオン除去管30の回転軸32は、複数の羽根型電極が取り付けられてもよい。これらの羽根型電極のそれぞれは、扇風機などの送風装置が有する回転翼と同じ形状および構造を有する。羽根型電極の回転によって、ケーシング31の内部の原水に対して、取水口31aから送水口31bに向かう力が作用して、原水が搬送される。複数の羽根型電極は、例えば、電源35の正極に接続される羽根型電極と、電源35の負極に接続される羽根型電極とが、交互に配置されるように、回転軸32に固定されている。
【0057】
(6−2)変形例B
本発明の実施形態では、イオン除去管30は、ケーシング31の内周面が、樹脂などの絶縁材料によってコーティングされてもよい。これにより、第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bが、ケーシング31と電気的に接続されることを確実に防ぐことができる。
【0058】
(6−3)変形例C
本発明の実施形態では、浄水装置10は、第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60を有するが、原水から不純物を除去する効果を有する、他の種類のユニットを有してもよい。
【0059】
例えば、浄水装置10は、カーボンフィルターユニットおよび逆浸透膜ユニットを有してもよい。カーボンフィルターユニットおよび逆浸透膜ユニットは、それぞれ、原水に含まれる不純物を除去することができる。カーボンフィルターユニットでは、原水に含まれる不純物が、カーボンフィルターに含まれる活性炭に吸着される。逆浸透膜ユニットでは、加圧ポンプにより圧送された原水が、中空糸膜からなる逆浸透膜を透過して濾過された原水と、逆浸透膜を透過せずに濃縮された原水とに分離される。
【0060】
カーボンフィルターユニットは、カーボンフィルターの網目の孔径が、ヨウ素131およびセシウム137などの一部の放射性物質の原子半径より小さい。そのため、カーボンフィルターによる濾過処理によって、水道水に含まれている一部の放射性物質を除去することができる。また、逆浸透膜ユニットは、逆浸透膜の孔径が放射性物質の原子半径よりも小さいので、水道水を逆浸透膜に透過させることによって、水道水に含まれている放射性物質を除去することができる。
【0061】
(6−4)変形例D
本発明の実施形態では、浄水装置10は、第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60の2基のイオン交換膜ユニットが、直列に連結された構成を有しているが、浄水装置10は、ユニットの台数およびユニット間の接続形態に制限はない。また、変形例Cで説明したように、浄水装置10は、ユニットの種類にも制限はない。
【0062】
例として、本発明の実施形態とは異なるユニット構成の例を、図7に示す。図7に示される浄水装置110では、1基のカーボンフィルターユニット140と、並列に接続された2基のイオン交換膜ユニット160a,160bとが直列に接続された構成を有する。本変形例において、イオン除去管30は、原水タンク20とカーボンフィルターユニット140とを連結する。
【0063】
(6−5)変形例E
本発明の実施形態では、イオン除去管30は、原水タンク20と第1イオン交換膜ユニット40とを接続する管であるが、イオン除去管30は、送水管50の代わりに、第1イオン交換膜ユニット40と第2イオン交換膜ユニット60とを接続する管として用いられてもよい。また、変形例CおよびDで説明した、本発明の実施形態とは異なるユニット構成を有する浄水装置において、任意のユニット間を接続するために、本発明の実施形態に係るイオン除去管30が用いられてもよい。
【0064】
(6−6)変形例F
本発明の実施形態に係る浄水装置10は、原水および浄水の水質を計測するための装置が取り付けられてもよい。そのような装置の例として、TDSメータが挙げられる。TDS(total dissolved solid)メータは、水の導電率の測定値に基づいて、水中に溶解している不純物の濃度を計測する装置である。
【0065】
本発明の実施形態に係る浄水装置10は、原水から不純物を除去する装置として、イオン除去管30、第1イオン交換膜ユニット40および第2イオン交換膜ユニット60の3基の浄水ユニットを有する。浄水装置10は、例えば、各浄水ユニットを通過した直後の原水が流れる配管、および、水道管20aの4箇所に、TDSメータが取り付けられてもよい。これにより、各浄水ユニットを通過する直前の原水、および、各浄水ユニットを通過した直後の原水、に含まれる不純物の濃度を計測することができる。従って、本変形例では、各浄水ユニットによる不純物の除去効率を監視することによって、各浄水ユニットの異常を早期に検知することができる。
【0066】
(6−7)変形例G
本発明の実施形態では、イオン除去管30は、回転軸32に固定される第1スクリュー型電極33aおよび第2スクリュー型電極33bを有するが、回転軸32に固定されないスクリュー型電極対を有してもよい。本変形例において、このスクリュー型電極対は、モータと機械的に接続されて、回転する。また、このスクリュー型電極対は、無軸スクリューコンベアとして、ケーシング31の内部の原水を原水タンク20から第1イオン交換膜ユニット40に搬送することができる。
【0067】
(6−8)変形例H
本発明の実施形態では、サブユニット42aにおいて、陽イオン交換膜48a1は、第2電極板46a2の板面に密着して固定され、陰イオン交換膜48a2は、第1電極板46a1の板面に密着して固定されるが、陽イオン交換膜48a1は、第2電極板46a2と対向するように第2電極板46a2の板面から離れた位置に配置され、陰イオン交換膜48a2は、第1電極板46a1と対向するように第1電極板46a1の板面から離れた位置に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 浄水装置
30 イオン除去装置(イオン除去管)
31 ケーシング
32 回転軸
33a 第1電極板(第1スクリュー型電極)
33b 第2電極板(第2スクリュー型電極)
34 駆動部(モータ)
35 電源
40 水処理装置(第1イオン交換膜ユニット)
45 タンク(活性炭タンク)
60 水処理装置(第2イオン交換膜ユニット)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2011−56407号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する入口と、前記液体が流出する出口とを有する管状のケーシングと、
前記ケーシングと電気的に分離された状態で前記ケーシング内に収容され、かつ、前記液体を前記入口から前記出口に搬送する第1電極板と、
前記ケーシングおよび前記第1電極板と電気的に分離された状態で前記ケーシング内に収容され、かつ、前記液体を前記入口から前記出口に搬送する第2電極板と、
前記第1電極板および前記第2電極板を駆動する駆動部と、
前記第1電極板と前記第2電極板との間に電圧を印加する電源と、
を備える、
イオン除去装置。
【請求項2】
前記ケーシング内に収容され、かつ、前記ケーシングの長手方向に沿った回転軸をさらに備え、
前記第1電極板および前記第2電極板は、前記回転軸と電気的に分離された状態で、前記回転軸にスクリュー状に巻き付けられて固定され、
前記駆動部は、前記回転軸を回転させて前記第1電極板および前記第2電極板を駆動する、
請求項1に記載のイオン除去装置。
【請求項3】
前記第1電極板および前記第2電極板は、二重螺旋構造を形成する、
請求項2に記載のイオン除去装置。
【請求項4】
前記回転軸は、樹脂で成形され、
前記第1電極板および前記第2電極板は、耐腐食性金属で成形される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のイオン除去装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、耐腐食性金属で成形され、かつ、内周面が樹脂で被覆されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のイオン除去装置。
【請求項6】
前記第1電極板および前記第2電極板は、前記液体に含まれるイオン性の放射性物質を吸着する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のイオン除去装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のイオン除去装置と、
活性炭、中空糸膜およびイオン交換膜のいずれかを有する水処理装置と、
を備える、
浄水装置。
【請求項8】
前記水処理装置は、前記イオン交換膜を用いて、液体からイオンを除去するイオン交換膜ユニットであり、
前記イオン交換膜ユニットは、除去したイオンを貯留するタンクを有する、
請求項7に記載の浄水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228674(P2012−228674A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99692(P2011−99692)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【出願人】(511106167)イチカワ無線株式会社 (1)
【Fターム(参考)】