説明

イカスミ色素水性分散体およびその製造方法

【課題】本発明は、食品または飲料の着色に利用できる高色濃度かつ低粘度のイカスミ色素水性分散体を提供することを目的とする。
【解決手段】水を含む溶剤、および、イカスミ色素を含んでなる水性分散体であって、
水希釈液として測定された色濃度(550nm)が、400以上2000以下であり、B型粘度計を用い回転数30rpmで測定される粘度が50.0mPa・s以上2000mPa・s以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イカスミ色素水性分散体に関する。当該分散体は、主として食品または飲料に用いられる。
【背景技術】
【0002】
食品には、その見た目を鮮やかにする等の目的で屡々食用色素が用いられる。
【0003】
黒色を呈する主要な食用天然色素としては、植物炭末色素とイカスミ色素がある。植物炭末色素は本質的にはカーボンブラックであり、黒色感は出るが、植物炭末は粉砕が難しく難分散性であり、なおかつベンツピレンによる人体への危険性が懸念される。
【0004】
イカスミ色素は黒色感では植物炭末色素に劣るものの、水を始めとした水溶性溶媒への濡れ性は高く使用し易い。しかし、そのままで溶媒に溶解するわけではない。
【0005】
しかしながら、高い色濃度を有しつつ、製剤の使用に足る低粘度のイカスミ色素製剤はこれまでに無かった。
【0006】
特許文献1には、(a)イカスミ色素、(b)食品添加物である非水溶性溶媒、(c)食品添加物から選ばれた分散剤からなることを特徴とするインキ組成物が開示されている。しかし、水溶剤とするものではなく、単純に非水溶性溶媒を水溶剤に置き換えただけでは、高い色濃度と低粘度を同時に実現できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−177132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、食品または飲料の着色に利用できる高色濃度かつ低粘度のイカスミ色素水性分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水を含む溶剤、および、イカスミ色素を含んでなる水性分散体であって、
水希釈液として測定された色濃度(550nm)が、400以上2000以下であり、B型粘度計を用い回転数30rpmで測定される粘度が50.0mPa・s以上2000mPa・s以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体に関する。
【0010】
また、本発明は、糖アルコールを含むことを特徴とする上記イカスミ色素水性分散体に関する。
【0011】
また、本発明は、糖アルコールの70重量%以上100重量%以下が単糖類であることを特徴とする上記イカスミ色素水性分散体に関する。
【0012】
また、本発明は、水を含む溶剤、および、イカスミ色素を含んでなる水性分散体であって、
水希釈液として測定された対固形分色濃度(550nm)が、400以上2000以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体の製造方法であって、
メディア分散工程を含み、メディア1粒の体積が0.5mm3以上2.0mm3以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、メディア分散工程ではイカスミ色素および溶剤のみから成ることを特徴とする上記イカスミ色素水性分散体の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、メディア分散工程の後に糖アルコールを添加することを特徴とする上記イカスミ色素水性分散体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、食品または飲料の着色に利用できる高色濃度かつ低粘度のイカスミ色素水性分散体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、高色濃度かつ低粘度のイカスミ色素水性分散体に関する。
【0017】
イカスミ色素とは、平成8年5月23日衛化第56号厚生省生活衛生局長通知「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」別添3の「一般に食品として飲食に供させている物であって添加物として使用される品目リスト」に収載されている着色料である。
【0018】
具体的には、コウイカ科モンゴウイカ等の墨袋の内容物を水洗いしたものより弱酸性含水エタノール及び含水エタノールで洗浄し乾燥したものである。主色素ユーメラニンである。と規定されている。本発明で用いるイカスミ色素の由来となるイカは詳細な種類を問わないが、イカスミ色素の収率の観点からコウイカ科モンゴウイカ由来であることが好ましい。
【0019】
このようなイカスミ色素の例として、保土谷化学株式会社製ブラックCF、日本葉緑素株式会社製イカスミパウダー、同社製アイカブラックS、セピアIC等が挙げられる。
【0020】
イカスミ色素には独特の臭気がある為、特開平1−152162号公報記載の方法等で脱臭されたものが好ましい。このようなイカスミ色素として、日本葉緑素株式会社製アイカブラックSが挙げられる。
【0021】
本発明の分散体において、イカスミ色素は、分散体全体に対して、固形分換算で20.0〜60.0重量%使用されることが好ましい。20.0重量%未満では目標とする色濃度に達する事が著しく困難であり、60.0重量%越えると高粘度となる、或は経時で増粘する可能性が高い。より好ましくは、25.0〜50.0重量%である。
【0022】
本発明において、イカスミ色素はイカ体内の色素胞より取り出された後、一度も固形分80重量%を超えないことが好ましい。例えば特開平4−46989記載の方法において、乾燥前の状態の色素を原料とすることが最も好ましい。
【0023】
本発明のイカスミ色素水性分散体は、保存安定性の観点から糖アルコールを含むことが好ましい。メディア分散行程の後に粘度の調整などで添加する場合、糖アルコールの70重量%以上95重量%以下が単糖類であると好ましい。糖アルコールは還元糖(重合度を問わない)のアルデヒド基あるいはケトンを還元した構造を有し、植物より抽出または還元糖を還元して得られる。
【0024】
糖アルコールは系中のイカスミ色素同士が再凝集して分散体が増粘することを防ぐ役割を有する。
【0025】
糖アルコールを添加する場合、糖アルコールの70重量%以上100重量%以下が単糖類であることが好ましく、95重量%以下であることが更に好ましい。糖アルコール中の単糖類の比率が70重量%未満では、その平均重合度の高さから経時増粘を引き起こすことがある。また、95重量%以下とすることで、単糖類以外の糖アルコール成分が、単糖類同士が凝集する事を妨げる働きを有する事が出来る。
【0026】
単糖類の例としては、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールが挙げられ、これらを単独または組み合わせて用いる事ができる。単糖類の内、50重量%以上がソルビトールであることが最も好ましい。
【0027】
本発明の分散体において、糖アルコールは、分散体全体に対して、10.0〜30.0重量%使用されることが好ましい。10.0重量%未満では増粘抑制効果が出ない可能性が有り、30.0重量%を超えると分散体としての固形分が高過ぎて高粘度化する虞がある。
【0028】
本発明のイカスミ色素水性分散体に用いられる溶剤は、水だけでもよいが、水の他に水と任意の比率で混合する水溶性溶剤を用いても良い。水溶性溶剤を用いる場合、水溶性溶剤は溶液全体の30重量%以下であることが好ましい。水溶性溶剤としてはエタノール、プロピレングリコール、グリセリンなどを単独または組み合わせて用いる事が出来る。
【0029】
本発明においては、食用色素の分散性を高める目的で、食用界面活性剤を混合、分散させておく事が出来る。本発明のイカスミ色素水性分散体を調製する手段としてメディア分散工程を含む場合、食用界面活性剤はメディア分散工程の前に添加してはならない。理由は糖アルコール添加時と同様である。
【0030】
食用界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル(PGエステル)、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、キラヤサポニンなどが、単独、或は混合して用いられる。
【0031】
本発明においては、必要に応じて、呈味剤、香料、その他の食品添加物を添加し、混合しておく事が出来る。
【0032】
呈味剤の例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、炭酸ガス等の各種有機酸、アスコルビン酸、ナリンジン、テオブロミン、トリゴネン、イソフムロン、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、トリコロミン酸ナトリウム、テアニン、イボテン酸、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、各種有機酸塩類、乳清ミネラル類、例えば、タンニン、クロロゲン酸、カプサイシン、サンショオール、ピペリン、ジンゲロール、ショーガオール、などが挙げられ、これらは単独で用いても複数を混合で用いても構わない。
【0033】
香料の例としては、ペパーミント油、スペアミント油、和種ハッカ油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、セージ油、ローズマリー油、シナモン油、ピメント油、ペパー油、ナツメグ油、フェンネル油、ディル油、クミン油、カモミール油、バジル油、クローブ油、タイム油、カシア油、コリアンダー油、アニス油、ウィンターグリーン油、ラベンダー油、ジャスミン油、ローズ油、アブソリュート類、l−メントール、l−カルボン、サリチル酸メチル、シネオール、メンチルアセテート、リモネン、シトラール、アネトール、シンナムアルデヒド、チモール、オイゲノール、ワニリン、脂肪族エステル、ストロベリーコンパウンド、テュッティーフルーツコンパウンド、ヨーグルトコンパウンド、アップルコンパウンド、パイナップルコンパウンド、などが挙げられ、これらは単独で用いても複数を混合で用いても構わない。
【0034】
前記の呈味剤、香料、その他の食品添加物を添加する場合には、これらの総重量がイカスミ色素水性分散体の0.01重量%〜5.00重量%となるように添加するのが望ましい。
【0035】
本発明の分散体は、色濃度(550nm)が、400以上2000以下であるように調整されたときに、B型粘度計を用い回転数30rpmで測定される粘度が50.0mPa・s以上2000mPa・s以下である性質を有している。
【0036】
このような性質を与えるために、本発明の水性分散体を調製する手段としてメディア分散工程を含むことが好ましい。メディア分散工程とは、メディアを充填させたミル中に材料を仕込み、ミルを振動させる等してメディアにエネルギーを与えることで得られるメディアの衝突エネルギーを利用した解砕方法である。メディアには、種々の径の綱球、ガラスボール、セラミックボール、ジルコニアボール等があるが、硬度、比重の点からジルコニアボールが好ましい。メディア1粒当りの体積は0.5mm3以上2.0mm3以下であることが好ましい。0.5mm3未満では分散液において、分散度合いに偏りが生じて増粘する可能性があり、2.0mm3を超えるとメディアの衝突頻度が低下し過ぎてイカスミ色素の粒子径分布が広がり過ぎ、低粒子径の粒子が増粘を引き起こすことがある。
【0037】
本発明のイカスミ色素水性分散体の色濃度は、吸光度測定値により算出する。具体的には、可視部(550nm)での吸光度(液層長1cm)を測定し、10w/v%溶液の吸光度に換算した数値で表す。
ただし、吸光度の測定には、検液の吸光度が、0.3〜0.7の範囲に入るように調整したものを用いる。
【0038】
液層の長さ1cmでの吸光度Aを測定し、次式により色濃度を求める。色濃度の測定は、調製後の退色による影響を避けるため、検液の調製後、速やかに行うものとする。
【0039】
本発明のイカスミ色素水性分散体において、糖アルコールを含み、かつ本発明のイカスミ色素水性分散体を調製する手段としてメディア分散工程を含む場合、糖アルコールはメディア分散工程の前に添加してはならず、メディア分散工程終了後に添加することが好ましい。メディア分散工程前に添加すると糖アルコールが増粘の原因となってしまう。
【実施例】
【0040】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制約されるものではない。なお、以下の文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0041】
<イカスミ色素脱臭品の調製>
イカの体内の色素胞より取り出したイカスミ液1kgにエタノール1Lを加えて攪拌し1時間静置した。その後これを濾過し砂状の黒色色素沈殿物を得た。この時の固形分は、75.3重量%であった。
【0042】
この沈殿物に、5重量%クエン酸及び80重量%エタノール、15重量%水からなる液を500mL加えて攪拌し、濾過し、沈殿物を得た。この洗浄工程を合計3回実施した。次にこの沈澱物に水500mLを加えて攪拌し濾過して沈殿物を得た。この時の固形分は53.7重量%であった(イカスミ色素脱臭品A)。
【0043】
この沈殿物(A)を70℃で7時間熱風乾燥し、ボールミルで50rpm/分で6時間粉砕して黒色色素粉末を得た。この粉末の固形分は93.0重量%であった(イカスミ色素脱臭品B)。
【0044】
<イカスミ色素水性分散体の製造>
詳細条件は表1に示す。
【0045】
[実施例1]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、60分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体をB型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、400mPa・sであった。色濃度は451であった。
【0046】
[実施例2]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、60分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に還元水飴を11.1部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、360mPa・sであった。色濃度は398であった。
【0047】
[実施例3]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、60分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に70%ソルビトール水溶液を11.1部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、360mPa・sであった。色濃度は402付近であった。
【0048】
[実施例4]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速10m/s、40分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体にB型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、1000mPa・sであった。色濃度は476であった。
【0049】
[実施例5]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速10m/s、40分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に還元水飴を11.1部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、870mPa・sであった。色濃度は425であった。
【0050】
[実施例6]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速10m/s、40分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に70%ソルビトール水溶液を11.1部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、870mPa・sであった。色濃度は434であった。
【0051】
[実施例7]
イカスミ色素B38.0部に対し精製水52.0部、60%ソルビトール水溶液10.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、60分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に還元水飴を25.0部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、680mPa・sであった。色濃度は560であった。
【0052】
[実施例8]
イカスミ色素B38.0部に対し精製水52.0部、60%ソルビトール水溶液10.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、60分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に70%ソルビトール水溶液を25.0部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、680mPa・sであった。色濃度は561であった。
【0053】
[実施例9]
イカスミ色素B38.0部に対し精製水52.0部、70%ソルビトール水溶液10.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、60分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体に70%ソルビトール水溶液を25.0部添加し、ホモミキサーで5分間混合した。B型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、680mPa・sであった。色濃度は558であった。
【0054】
[比較例1]
イカスミ色素A55.9部に対し精製水7.1部、エタノール37.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速3m/s、30分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体をB型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、400mPa・sであった。色濃度は372であった。
【0055】
[比較例2]
イカスミ色素B38.0部に対し精製水52.0部、60%ソルビトール水溶液10.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速10m/s、40分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体にB型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、2000mPa・sであった。色濃度は638であった。
【0056】
[比較例3]
イカスミ色素B38.0部に対し精製水52.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速10m/s、40分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体にB型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、2400mPa・sであった。色濃度は643であった。
【0057】
[比較例4]
イカスミ色素B38.0部に対し精製水52.0部、エタノール10.0部を添加し、ホモミキサーで5分間混合した。これを株式会社シンマルエンタープライゼス社製のダイノーミルMULTI LAB型で分散した。分散条件はアジテーターディスク周速10m/s、40分間、メディアはジルコニアビーズ(1.2mmΦ)。得られたイカスミ色素水性分散体にB型粘度計を用い回転数30rpmで粘度を測定したところ、1880mPa・sであった。色濃度は643であった。この分散体は他のサンプルと比較して著しく流動性に乏しかった。
【0058】
【表1】

【0059】
表1の測定結果から、実施例1〜9は比較例1〜4と比較して、食用の液状黒色色素として有用である事がわかる。
【0060】
既に述べられたもの以外に、本発明の新規かつ有利な特徴から外れることなく、上記の実施形態に様々な修正や変更を加えてもよいことに注意すべきである。従って、そのような全ての修正や変更は、添付の請求の範囲に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む溶剤、および、イカスミ色素を含んでなる水性分散体であって、
水希釈液として測定された色濃度(550nm)が、400以上2000以下であり、B型粘度計を用い回転数30rpmで測定される粘度が50.0mPa・s以上2000mPa・s以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体。
【請求項2】
糖アルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載のイカスミ色素水性分散体。
【請求項3】
糖アルコールの70重量%以上100重量%以下が単糖類であることを特徴とする請求項2に記載のイカスミ色素水性分散体。
【請求項4】
水を含む溶剤、および、イカスミ色素を含んでなる水性分散体であって、
水希釈液として測定された対固形分色濃度(550nm)が、400以上2000以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体の製造方法であって、
メディア分散工程を含み、メディア1粒の体積が0.5mm3以上2.0mm3以下であることを特徴とする食品および/または飲料着色用イカスミ色素水性分散体の製造方法。
【請求項5】
メディア分散工程ではイカスミ色素および溶剤のみから成ることを特徴とする請求項4に記載のイカスミ色素水性分散体の製造方法。
【請求項6】
メディア分散工程の後に糖アルコールを添加することを特徴とする請求項4または5に記載のイカスミ色素水性分散体の製造方法。

【公開番号】特開2012−207140(P2012−207140A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74185(P2011−74185)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】