説明

イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が含まれたコアセルベート

【課題】本発明は、イガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を含むコアセルベートに関し、具体的にイガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートおよびその新規な用途に関する。
【解決手段】本発明におけるイガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートは、細胞や金属など多様な基質に対して接着力が非常に優れており、特に水分が存在する場合または水中でも接着力が維持され、接着剤として効果的に使用され得、ひいては、生体活性物質を封入(encapsulation)することができる活性があるため、生体活性物質伝達用組成物の有効性分として効果的に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を含むコアセルベートに関し、具体的には、イガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートおよびその新規な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋生命体であるイガイ(mussel)は、接着蛋白質(adhesive proteins)を生産、分泌することによってイガイ自分を海の中の岩のような濡れた固体表面に固く付着することができ、波の衝撃や海水の浮力効果に影響を受けない(J.H.Waiteなど、1983、Biological Review 58、209〜231;H.J.Chaなど、2008、Biotechnology Journal 3、631〜638)。
【0003】
イガイ接着蛋白質は、現在知られた化学合成接着剤と比較した時、強力な自然接着剤として知られており、大部分エポキシ樹脂よりも約二倍程度の高い引張強度を現わしながらも曲がり得る柔軟性を有している。また、イガイ接着蛋白質は、プラスチック、ガラス、金属、テフロン(登録商標)および生体物質などの多様な表面に接着することができる能力を有しており、濡れた表面に数分内に付着することができる。このような特性はまだ化学接着剤の分野では未完の課題として残っている。また、接着蛋白質は人間細胞を攻撃したり免疫反応を起こさないと知られ、手術時に生体組織の接着や折れた歯の接着などの医療分野に応用の可能性が大きい(J.Doveなど、1986、Journal of American Dental Association 112、879)。
特に前記イガイ接着蛋白質は、細胞の表面接着技術分野にも利用され得るが、細胞の表面接着技術は、細胞培養および組織工学分野に必要な非常に重要な技術の一つであり、つまり、細胞および組織培養のために細胞を細胞培養表面に効率的に接着させる技術であるため、細胞の増殖および分化を促進させるのに非常に重要である(M.Tirrellなど、2002、Surf.Sci.,500、61〜83)。
【0004】
しかし、イガイから自然抽出した接着物質が、既存の他のコーティング方法と比較して高い細胞接着能力と細胞の増殖および分化をさらに促進させる結果を基に商業的に使用されているが、自然抽出物1グラムを得るために一万個のイガイを必要とする問題がある(C.V.Benedictなど、1989、Adhesives from renewable resources、No.385、452〜483)。
したがって、イガイ接着蛋白質を既存の方法よりも効果的に利用することができる方法、特に細胞接着活性がより優れて細胞の表面接着技術に効果的に適用することができる方法が必要な実情である。
【0005】
一方、コアセルベートは、陰イオン性高分子電解質と陽イオン性高分子電解質が特定の条件で混合された時に形成されるコロイド物質の一種であって、コアセルベートが形成された時、溶液の吸光度は増加するようになり、溶液上で丸い球形態で外部溶液と分離して存在する。コアセルベートの形成時、参加電解質は溶液で分離されて凝縮し、依然として液状を示すようになり、この時、表面張力が減少し粘性が増加するなど、物性も変化する。コアセルベートは、蛋白質とその反対性質を有する高分子電解質との混合を通じても形成され得る(C.G.deKruifなど、2004、Current Opinion in Colloid and Interface Science 9、340〜349)。コアセルベートの低い表面張力に起因して薬品、酵素、細胞、食品添加物などの機能性物質を微細カプセル内に固定化するのに利用される技術も報告されている(Schmitt C.など、1998、Critical Review in Food Science and Nutrition 8、689〜753)。
【0006】
しかし、イガイ接着蛋白質からコアセルベートを形成した研究は全くなく、またイガイ接着蛋白質を生体活性物質伝達用として使用するための研究も全くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/107183号
【特許文献2】国際公開第2005/092920号
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/65060号明細書
【特許文献4】米国特許第5015677号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.H.Waiteなど、1983、Biological Review 58、209〜231;
【非特許文献2】J.Doveなど、1986、Journal of American Dental Association 112、879
【非特許文献3】C.V.Benedictなど、1989、Adhesives from renewable resources、No.385、452〜483
【非特許文献4】C.G.deKruifなど、2004、Current Opinion in Colloid and Interface Science 9、340〜349
【非特許文献5】Schmitt C.など、1998、Critical Review in Food Science and Nutrition 8、689〜753
【非特許文献6】Remington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PA
【非特許文献7】D.S.Hwang et.al.,Biomaterials 28、3560〜3568、2007
【非特許文献8】D.S.Hwang et.al.,applied and environmental microbiology、3352〜3359、2004
【非特許文献9】V.Ducel et.al.,Colloids and Surfaces a−Physicochemical and Engineering Aspects、232、239〜247、2004
【非特許文献10】Fulkerson、J.P.など(1990)Journal of Orthopaedic Research 8(6)、pp.793〜798
【非特許文献11】H.J.Chaなど、2008、Biotechnology Journal 3、631〜638
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは陽イオン性であるイガイ接着蛋白質と陰イオン性高分子を混合して形成されたコアセルベートがイガイ接着蛋白質よりも優れた接着活性があり、生体活性物質を伝達するのに有用に使用され得ることを確認することによって本発明を完成した。
したがって、本発明は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が含まれたコアセルベートを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記コアセルベートを含む接着剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記コアセルベートを含む生体活性物質伝達用組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、(a)前記コアセルベートおよび生体活性物質を含み、(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質が封入されたことを特徴とする生体活性物質伝達体を提供することを目的とする。
また、本発明は、(a)イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子および生体活性物質を混合する段階、および(b)前記イガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子により形成されたコアセルベートが生体活性物質の周囲に被膜を形成する段階を含む生体活性物質伝達体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合する段階を含むコアセルベートの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、本発明のコアセルベートを接着に使用するための用途を提供することを目的とする。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートを基質に接着させる段階を含む、本発明のコアセルベートを接着に使用する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用するための用途を提供することを目的とする。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートの内部に生体活性物質を封入する段階を含む、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用するための用途を提供することを目的とする。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質を封入する段階を含む、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が含まれたコアセルベートを提供する。
また、本発明は、前記コアセルベートを含む接着剤を提供する。
また、本発明は、前記コアセルベートを含む生体活性物質伝達用組成物を提供する。
また、本発明は、(a)前記コアセルベートおよび生体活性物質を含み、(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質が封入されたことを特徴とする生体活性物質伝達体を提供する。
また、本発明は、(a)イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子および生体活性物質を混合する段階、および(b)前記イガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子により形成されたコアセルベートが生体活性物質の周囲に被膜を形成する段階を含む生体活性物質伝達体の製造方法を提供する。
また、本発明は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合する段階を含むコアセルベートの製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、本発明のコアセルベートを接着に使用するための用途を提供する。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートを基質に接着させる段階を含む、本発明のコアセルベートを接着に使用する方法を提供する。
また、本発明は、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用するための用途を提供する。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートの内部に生体活性物質を封入する段階を含む、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用する方法を提供する。
また、本発明は、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用するための用途を提供する。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質を封入する段階を含む、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明におけるイガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートは、細胞や金属など多様な基質に対して接着力が非常に優れており、特に水分が存在する場合または水中でも接着力が維持され、接着剤として効果的に使用され得、ひいては、生体活性物質を封入(encapsulation)することができる活性があるため、生体活性物質伝達用組成物の有効性分として効果的に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】イガイ接着蛋白質であるfp−151と陰イオン性高分子であるヒアルロン酸(17kDa)を多様なpHと比率で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図2】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(17kDa)をpH2.5の酢酸溶液で60:40で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図3】イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(17kDa)を多様なpHと比率で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図4】イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(17kDa)をpH2.5の酢酸溶液で60:40で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図5】イガイ接着蛋白質fp−151−RGDとヒアルロン酸(17kDa)を多様なpHと比率で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図6】イガイ接着蛋白質fp−151−RGDとヒアルロン酸(17kDa)をpH2.5の酢酸溶液で60:40で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図7】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)を多様なpHと比率で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図8】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)をpH2.5の酢酸溶液で60:40で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図9】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)を多様なpHと比率で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図10】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)をpH2.5の酢酸溶液で60:40で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図11】イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(35kDa)をpH3.8の酢酸溶液で80:20で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図12】イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(59kDa)をpH3.8の酢酸溶液で80:20で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図13】イガイ接着蛋白質fp−151とヘパリンを多様なpHと比率で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図14】イガイ接着蛋白質fp−131とヘパリンを多様なpHの酢酸溶液で80:20で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図15】イガイ接着蛋白質fp−131とフェレドキシンをpH4.5の酢酸溶液で70:30で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図16】イガイ接着蛋白質fp−5とヒアルロン酸(35kDa)をpH4.6の酢酸溶液で80:20で混合した時、コアセルベート形成を確認した結果である。
【図17】イガイ接着蛋白質fp−5とヒアルロン酸(35kDa)をpH4.6で混合した時、吸光度の変化を測定した結果である。
【図18】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)を利用したコアセルベートとイガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(35kDa)を利用したコアセルベートを利用して唐辛子種油を微細カプセル内に固定させた結果である。
【図19】図18で形成された微細カプセルが8日間維持されるか否かを確認した結果である。
【図20】イガイ接着蛋白質fp−151とヘパリンを利用したコアセルベートを利用して唐辛子種油を微細カプセル内に固定させた結果である。
【図21】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(17kDa)を利用してコアセルベートを形成し、これを利用して表面をコーティングした後、細胞接着を行った結果である。
【図22】イガイ接着蛋白質fp−151−RGDとヒアルロン酸(17kDa)を利用してコアセルベートを形成し、これを利用して表面をコーティングした後、細胞接着を行った結果である。
【図23】イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(17kDa)を利用してコアセルベートを形成し、これを利用して表面をコーティングした後、細胞接着を行った結果である。
【図24】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)を利用してコアセルベートを形成し、これを利用して表面をコーティングした後、細胞接着を行った結果である。
【図25】イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)を利用してコアセルベートを形成し、これを利用して表面をコーティングした後、細胞接着を行った結果である。
【図26】イガイ接着蛋白質mfp−151とヒアルロン酸(35kDa)、イガイ接着蛋白質mfp−131とヒアルロン酸(35kDa)を利用したコアセルベートの乾燥状態での接着力を単一のイガイ接着蛋白質の接着力と比較実験した結果である。
【図27】チロシナーゼとグルタルアルデヒドを添加した時、イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa or 59kDa)で形成されたコアセルベートの湿潤状態での接着力を単一のイガイ接着蛋白質の接着力と比較実験した結果である。
【図28】チロシナーゼとグルタルアルデヒドを添加した時、イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(59kDa)を利用したコアセルベートの湿潤状態での接着力を単一のイガイ接着蛋白質の接着力と比較実験した結果である。
【図29】チロシナーゼとグルタルアルデヒドを添加した時、イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)を利用したコアセルベートの水中状態での接着力を牛血清アルブミンの接着力と比較実験した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0017】
本発明におけるイガイ接着蛋白質は、イガイで由来した接着蛋白質であり、これに限定されないが、好ましくは、国際公開第2006/107183号または国際公開第2005/092920号に記載された全てのイガイ接着蛋白質を含む。
【0018】
好ましくは、前記イガイ接着蛋白質は、(a)配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)配列番号6のアミノ酸配列が1〜10回連続して連結されたポリペプチド、および(d)前記(a)のポリペプチド、(b)のポリペプチドおよび前記(c)のポリペプチドからなる群より選択された二種以上が融合されたポリペプチドであってもよい。前記(c)でポリペプチドは、これに限定されないが、好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、前記(d)で融合されたポリペプチドは、これに限定されないが、好ましくは、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0019】
本発明におけるイガイ接着蛋白質の変異体(mutants)は、好ましくは、イガイ接着蛋白質の接着力を維持する前題下に前記イガイ接着蛋白質のカルボキシル末端やアミノ末端に追加的な配列を含んだり、一部のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものであってもよい。より好ましくは、前記イガイ接着蛋白質のカルボキシル末端またはアミノ末端にRGDを含む3〜25個のアミノ酸からなるポリペプチドが連結されたものであったり、イガイ接着蛋白質をなすチロシン残基総数の1〜100%、好ましくは5〜100%が3,4−ジヒドロキシフェニル−L−アラニン(DOPA)で置換されたものであってもよい。
【0020】
前記RGDを含む3〜25個のアミノ酸は、これに限定されないが、好ましくは、RGD(Arg Gly Asp、配列番号8)、RGDS(Arg Gly Asp Ser、配列番号9)、RGDC(Arg Gly Asp Cys、配列番号10)、RGDV(Arg Gly Asp Val、配列番号11)、RGDSPASSKP(Arg Gly Asp Ser Pro Ala Ser Ser Lys Pro、配列番号12)、GRGDS(Gly Arg Gly Asp Ser、配列番号13)、GRGDTP(Gly Arg Gly Asp Thr Pro、配列番号14)、GRGDSP(Gly Arg Gly Asp Ser Pro、配列番号15)、GRGDSPC(Gly Arg Gly Asp Ser Pro Cys、配列番号16)およびYRGDS(Tyr Arg Gly Asp Ser、配列番号17)からなる群より選択された一種以上であってもよい。
【0021】
前記イガイ接着蛋白質のカルボキシル末端またはアミノ末端にRGDを含む3〜25個のアミノ酸からなるポリペプチドが連結されたイガイ接着蛋白質の変異体は、これに限定されないが、好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0022】
本発明における前記イガイ接着蛋白質は、これに限定されないが、好ましくは、外部遺伝子を発現できる用途で製作された通常のベクターに発現可能なように挿入し、遺伝工学的な方法で大量生産することができる。前記ベクターは蛋白質を生産するための宿主細胞の種類および特性に応じて適切に選択したり、新規に製作することができる。前記ベクターを宿主細胞に形質転換する方法および形質転換体から再組み合わせ蛋白質を生産する方法は、通常の方法で容易に実施することができる。前述したベクターの選択、製作、形質転換および再組み合わせ蛋白質の発現などの方法は、本願発明が属する技術分野の当業者であれば容易に実施することができ、通常の方法で一部の変形も本願発明に含まれる。
【0023】
本発明における陰イオン性高分子は、前記陽イオン性であるイガイ接着蛋白質と結合してコアセルベートを形成することができる高分子物質であれば制限なく使用され得るが、好ましくは、前記陽イオン性であるイガイ接着蛋白質のpI(Isoelectric point)よりも低い高分子、より好ましくは、pI数値が2〜6である高分子、さらに好ましくは、pI数値が2〜4である高分子であってもよい。
【0024】
本発明における陰イオン性高分子は、例えば、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、フェレドキシン(ferredoxin)、ポリスチレンスルホン酸(poly styrene sulfonic acid)、アラビアガム(gum arabic)、ゼラチン(gelatin)、アルブミン(albumin)、カルボポル(carbopol)、高または低メトキシルペクチン(high or low methoxyl pectin)、カルボキシメチルグアーガムナトリウム(sodium carboxymethyl guar gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、乳清蛋白質(whey protein)、レグミン(faba bean legumin)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、アルギン酸(alginate)、カラギーナン(carrageenan)、ヘキサメタリン酸ナトリウム (sodium hexametaphosphate)、カゼインナトリウム(sodium casinate)、ヘモグロビン(hemoglobin)、ヘパリン(heparin)および細胞外多糖体B40(exopolysaccharide B40)からなる群より選択された一つ以上であってもよく、前記陰イオン性高分子の平均分子量は、これに限定されないが、好ましくは、1kDa〜300kDaからなる群より選択された分子量を有してもよく、より好ましくは、10kDa〜100kD、さらに好ましくは、17kDa〜59kDa、最も好ましくは、17kDa、35kDaまたは59kDの分子量を有してもよい。前記分子量を超えたり未満である場合、コアセルベートが形成されないことがあるためである。
【0025】
本発明における生体活性物質は、生体に投与されたり皮膚表面に塗布する場合、一定の薬理活性を示す物質であって、これに限定されないが、好ましくは、薬品、酵素、細胞および食品添加物からなる群より選択された一種以上であってもよく、より好ましくは、抗ガン剤、抗生剤、抗炎症剤、ホルモン、ホルモン拮抗剤、インタロイキン、インターフェロン、成長因子、腫よう怪死因子、エンドトキシン、リンホトキシン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性剤、プロテアーゼ阻害剤、アルキルホスホコリン、放射線同位元素標識物質、界面活性剤、心血管系薬品、胃腸管系薬品および神経系薬品からなる群より選択された一つ以上であってもよい。前記抗炎症剤としては、これに限定されないが、好ましくは、デキサメタゾン(dexamethasone)であってもよい。
【0026】
本発明におけるコアセルベートは、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子を混合することによって生成されたコロイドの一種をいう。
本発明のコアセルベートは、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が含まれたことを特徴とする。前記コアセルベートは、陽イオン性であるイガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が混合して形成されてもよい。
本発明のコアセルベートは、これに限定されないが、好ましくは、水溶性溶媒、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、酢酸水溶液で製造されてもよく、さらに好ましくは、酢酸水溶液、より一層好ましくは、0.1%〜10%の酢酸水溶液、さらにより一層好ましくは、0.5〜8%の酢酸水溶液で製造されてもよい。
【0027】
前記溶媒で本発明のコアセルベートを製造する場合、適正pHはこれに限定されるが、好ましくは、pH2.0〜pH10.0であってもよく、より好ましくは、pH2.0〜pH6.0であってもよく、さらに好ましくは、pH2.5〜pH5.5であってもよい。前記pHを超えたり未満である場合、コアセルベートが形成されなかったり高分子の変形が発生することがあるためである。
【0028】
前記溶媒にイガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子の添加量は、これに限定されないが、好ましくは、それぞれ溶媒全体体積対比0.001〜100%(w/v)であってもよく、より好ましくは、0.01〜30%(w/v)であってもよい。
本発明のコアセルベートは、これに限定されるが、好ましくは、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子を1:0.01〜1:10の重量比で混合して製造されてもよく、より好ましくは、1:0.25〜1:2.5の重量比で、さらに好ましくは、1:0.25〜1:2.33の重量比で混合して製造されてもよい。前記混合比を超えたり未満である場合、コアセルベートが効果的に形成されないことがあるためである。
【0029】
前記のようにイガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートは、従来イガイ接着蛋白質や細胞接着活性があると知られたポリ−エル−ライシン(poly−L−lysine)よりも細胞接着活性が非常に優れている。
本発明の一実施例では、前記コアセルベートで細胞培養プレートにコーティングし、ショウジョウバエ(drosophila)S2細胞を前記コーティングされた細胞培養プレートに培養した後、PBS(phosphate buffered saline)で洗い落とし、MTT(3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromide)分析を実施してプレートに接着された細胞数を測定することによって細胞接着活性を測定した。その結果、イガイ接着蛋白質および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートは、従来イガイ接着蛋白質や細胞接着活性があると知られたポリ−エル−ライシン(poly−L−lysine)よりも細胞接着活性が非常に優れていることを確認した(《実施例3》参照)。
【0030】
また、本発明のコアセルベートは、前記細胞接着活性などの微細接着システムのみならず、大容量の接着システム、例えば、アルミニウムなどの金属物質の接着にも効果的な接着力を維持する。
本発明の一実施例では、本発明のコアセルベートを利用した時、単一のイガイ接着蛋白質よりも2倍程度大きい接着力を維持し、特に架橋剤であるチロシナーゼ(tyrosinase)またはグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を添加した場合、水分が存在する場合または水中でも優れた接着力を維持することができる(《実施例4》参照)。
したがって、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子を混合して製造されたコアセルベートは接着用として有用に使用され得る。
【0031】
本発明の接着剤は、前記コアセルベートを含有することを特徴とする。
【0032】
前記接着剤は、通常のバイオ接着剤に含有されたりまたは薬理学的に許容可能な賦形剤を0.0001〜99重量%でさらに含んでもよい。賦形剤の例としては、界面活性剤、酸化剤、架橋剤および充填剤(filler)があるが、これに限定されない(参照:米国特許出願公開第2003/65060号明細書および米国特許第5015677号明細書)。
【0033】
前記界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性界面活性剤であってもよく、その例としては、ソジウムドデシルスルフェート(sodium dodecylsulfate)およびソジウムドデシルベンゼンスルホネート(sodium dodecylbenzensulfonate)がある。前記酸化剤は、カテコールオキシダーゼ(catechol oxidase)、ホルムアルデヒド、ビス(スルホスクシニミジル)スベリン酸塩(bis(sulfosuccinimidyl)suberate)、3,3’−ジチオビス(スルホスクシニミジルプロピオネート)(3,3’−Dithiobis(sulfosuccinimidyl propionate)、O、Fe3+、HおよびIO4−からなる群より選択されてもよく(参照:Macromolecules1998、31、4739〜4745)、前記充填剤は、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイタンスルフェート(condroitan sulfate)、エラスチン、ラミニン、カセイン、ヒドロキシアパタイト、アルブミン、フィブロネクチンおよびヒブリンからなる群より選択されてもよい。
【0034】
特に前記架橋剤は、チロシナーゼまたはグルタルアルデヒドであってもよく、前記架橋剤の添加量は、イガイ接着蛋白質またはその変異体の質量対比チロシナーゼの場合、0.0001〜1重量%、より好ましくは、0.001〜1重量%、さらに好ましくは、0.01〜1重量%であってもよく、グルタルアルデヒドの場合、全体接着溶液体積対比0.001〜5体積%、より好ましくは、0.01〜5体積%、さらに好ましくは、0.1〜5体積%であってもよい。
本発明の接着剤を水分が存在する場合や水中で適用する場合、前記架橋剤は、これに限定されないが、グルタルアルデヒドを使用することがより好ましい。
【0035】
本発明の接着剤は、細胞接着活性などの微細接着システムのみならず、大容量の接着システム、例えば、アルミニウムなどの金属物質の接着にも効果的な接着力を維持する(《実施例3》および《実施例4》参照)。
また、本発明の接着剤は、水分が存在する場合にも接着力を維持することができ、これに限定されないが、好ましくは、水中接着用として使用され得る。前記のように接着剤を水中接着用として使用する場合、これに限定されないが、好ましくは、前記接着剤の有効成分であるコアセルベートはコアセルベートであってもよい。例えば、本発明の接着剤は、水中構造物の維持補修のための親環境接着剤、より好ましくは、プール、浴槽、船などの亀裂の縫合に使用され得、医療用接着剤、より好ましくは、軟質(連結)組織接着剤(例えば、裂傷および/または切開部を閉じる時に縫合術およびステープルを代替する皮膚接着剤)および硬質(硬化された)組織接着剤(例えば、脳または歯科用接着剤)として容易に使用され得る(《実施例4》参照)。
【0036】
本発明の接着剤は、プラスチック、ガラス、金属、および高分子合成樹脂からなる群より選択された基質に適用するために使用されてもよく、つまり、前記基質を接着させたり固定するための用途で使用されてもよい。使用方法は通常の接着剤使用方法に準じ、代表的な方法は塗布法である。
【0037】
特に本発明の接着剤は、生体物質に適用されてもよいが、前記生体物質は生物に分類される全ての動植物および前記動植物から由来した一部を意味し、一例としては、細胞、組織、器官、RNA、DNA、蛋白質、ペプチド、ポリヌクレオチド、ホルモン、脂質および化合物があるが、これに限定されるのではない。生体物質に使用される場合、本発明の接着剤は、具体的な使用法、使用量および剤型などは、現在市販されるCell−Tak製品(BD Biosciences、Two oak Park、Bedford、MA、米国)に準じて使用され得る。一例として、本発明の接着剤は、溶剤型、水溶性、無溶剤型であってもよく、基質に対して0.01〜100ug/cmで使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0038】
本発明の接着剤の適用例は、これに限定されないが、(1)水(水または塩分がある水)中にある基質間の接着;(2)骨、靭帯、筋、半月(meniscus)および筋肉治療および人工材料移植のような整形外科的治療;(3)穿孔、裂創、切開などの治療、角膜移植、人工角膜挿入のような眼科的接合;(4)補正装置、架工義歯、歯冠装着、揺れる歯の固定、折れた歯の治療および充填剤の固定のような歯科的接合;(5)血管接合、細胞組織接合、人工材料移植、傷の縫合のような外科的治療;(6)植物の移植片接合、傷の治癒のような植物での接合;および(7)薬品、ホルモン、生物学的因子、医薬品、生理的または代謝的観察装置、抗生剤および細胞の移植のような用途がある(参照:米国特許第5015677号明細書)。
【0039】
また、本発明は、接着剤に界面活性剤、酸化剤、架橋剤、および充填剤(filler)からなる群より選択された物質を処理したり、または前記接着剤の有効成分であるコアセルベートの濃度を調節することによって前記接着剤の接着力を調節することができる(参照:米国特許第5015677号明細書)。前記酸化剤、界面活性剤、架橋剤および充填剤は前記と同意義である。
【0040】
前記のようにイガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子を混合して形成されたコアセルベートは、生体活性物質を効果的に伝達することができる。
本発明の一実施例でイガイ接着蛋白質または彼の変異体とヒアルロン酸、またはヘパリンを混合して形成されたコアセルベート、より好ましくは、配列番号1または3のポリペプチドからなるイガイ接着蛋白質または配列番号2の変異体にヒアルロン酸やヘパリンを混合してコアセルベートを形成し、これを生体活性物質の例として唐辛子種油を追加混合した結果、前記コアセルベートが唐辛子種油の周囲に被膜を形成することが分かる(《実施例2》参照)。
【0041】
したがって、本発明の生体活性物質伝達用組成物は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が混合されて形成されたコアセルベートを含むことを特徴とする。
【0042】
前記本発明の生体活性物質伝達用組成物は、これに限定されないが、好ましくは、薬学的組成物の形態であってもよい。
本発明の生体活性物質伝達用組成物は、組成物総重量に対してコアセルベート、これに限定されないが、好ましくは、コアセルベートを0.0001〜50重量%含む。本発明の組成物は、前記有効成分に追加で同一または類似する機能を示す有効成分を一種以上含有してもよい。
【0043】
本発明の生体活性物質伝達用組成物は、投与のために前記のコアセルベート以外に追加で薬剤学的に許容可能な担体を一種以上含んで製造してもよい。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌数、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストローズ溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポゾームおよびこれら成分の中の1成分以上を混合して使用してもよく、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤型、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化してもよく、標的器官に特異的に作用することができるように標的器官特異的抗体またはその他リガンドを前記担体と結合させて使用してもよい。ひいては、当該技術分野の適正な方法でまたはレミングトンの文献(Remington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PA)に開示されている方法を利用して各疾患に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0044】
前記コアセルベートを含む生体活性物質伝達用組成物は、静脈内(intravein)、腹膜内(intraperitoneal)、筋肉内(intramuscular)、皮下内(subcutaneous)、皮内(intradermal)、鼻内(nasal)、粘膜内(mucosal)、吸入(inhalation)および経口(oral)などの経路で注入することによって生体内に伝達され得る。投与量は対象の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などに応じてその範囲が多様である。一日投与量は、約0.1〜100mg/kgであり、好ましくは、0.5〜10mg/kgであり、一日一回〜数回に分けて投与することがより好ましい。
【0045】
一方、本発明の生体活性物質伝達体は、(a)前記コアセルベートおよび生体活性物質を含み、(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質が封入なされたことを特徴とする。
【0046】
前記コアセルベートは、これに限定されないが、好ましくは、コアセルベートであってもよい。
【0047】
前記生体活性物質伝達体は、これに限定されないが、好ましくは、マイクロカプセルであってもよい。
【0048】
前記コアセルベートは、前述した通り、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合して形成されてもよい。
【0049】
前記コアセルベートは、生体活性物質、例えば唐辛子種油の周囲に被膜を形成し、コアセルベート内部に前記生体活性物質を効果的に封入することができ、生体活性物質伝達体であるマイクロカプセルを形成することができる。ひいては、前記のように形成されたマイクロカプセルが長時間が経過してもその形態を維持する特性がある(《実施例2》参照)。
前記のように形成された生体活性物質伝達体の大きさは、これに限定されないが、好ましくは、直径基準に1〜50umであってもよい。
本発明の生体活性物質伝達体は、前記コアセルベートの内部に生体活性物質が疎水性であるか親水性であるかに関係なく封入が可能であるため、疎水性または親水性の生体活性物質を効果的に封入することによって生体活性物質を効果的に伝達することができる。前記生体活性物質は、これに限定されないが、好ましくは、前記コアセルベートの内部に分散形態やコア形態で封入されてもよい。前記封入は、生体活性物質の周辺に被膜を形成することによって生体活性物質を封入(encapsulation)することをいう。
本発明の生体活性物質伝達体は、薬学的組成物の有効性分として利用されてもよく、これについては前記と同意義である。
【0050】
一方、本発明の生体活性物質伝達体の製造方法は、(a)イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子および生体活性物質を混合する段階、および(b)前記イガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子により形成されたコアセルベートが生体活性物質の周囲に被膜を形成する段階を含むことを特徴とする。
【0051】
前記(a)段階で混合は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子および生体活性物質を同時に混合する場合を意味したり、より好ましくは、イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子のうちのいずれか一つが溶けている溶液に生体活性物質を混合し、その後、前記コアセルベート形成を誘導するためにイガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子のうちの残りの一つを追加混合する場合を意味する。
具体的に前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子の混合比は、前記と同意義である。また、イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子は、これに限定されないが、好ましくは、前述した適正pHに設定された溶媒に0.0001〜50重量%で混合することができる。また、前記(a)段階で混合時、生体活性物質は、これに限定されないが、好ましくは、前述した適正pHに設定された溶媒に体積対比0.01〜20%(v/v)、より好ましくは、0.1〜2%(v/v)で混合することが好ましい。
【0052】
前記生体活性物質伝達体を製造するための溶媒の種類、適正pH、適正温度は前述したコアセルベートが効果的に形成され得る条件と同一である。
具体的に適正溶媒は、これに限定されないが、好ましくは、水溶性溶媒、より好ましくは、リン酸塩水溶液または酢酸水溶液で製造されてもよく、さらに好ましくは、酢酸水溶液、より一層好ましくは、0.1%〜10%の酢酸水溶液、さらにより一層好ましくは、0.5〜8%の酢酸であってもよい。
適正pHは、これに限定されるが、好ましくは、pH2.0〜pH10.0であってもよく、より好ましくは、pH2.0〜pH6.0であってもよく、さらに好ましくはpH2.5〜pH5.5であってもよい。前記pHを超えたり未満である場合、前記コアセルベートが形成されなかったり高分子の変形が発生するため、生体活性物質伝達体が効果的に形成されないことがあるためである。
また、適正温度は、4〜100℃であってもよく、好ましくは、10〜60℃であってもよく、前記温度を超えたり未満である場合、前記コアセルベートが形成されなかったり高分子の変形が発生することがあるためである。
【0053】
一方、本発明のコアセルベートの製造方法は、イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合する段階を含むことを特徴とする。
【0054】
本発明のコアセルベートは、これに限定されないが、好ましくは、水溶性溶媒、より好ましくは、リン酸塩水溶液または酢酸水溶液で製造されてもよく、さらに好ましくは、酢酸水溶液、より一層好ましくは、0.1%〜10%の酢酸水溶液、さらにより一層好ましくは、0.5〜8%の酢酸水溶液で製造されてもよい。
前記溶媒で本発明のコアセルベートを製造する場合、適正pHは、pH2.0〜pH10.0であってもよく、より好ましくは、pH2.0〜pH6.0であってもよく、さらに好ましくは、pH2.5〜pH5.5であってもよい。前記pHを超えたり未満である場合、コアセルベートが形成されなかったり高分子の変形が発生することがあるためである。また、適正温度は、4〜100℃であってもよく、好ましくは、10〜60℃であってもよく、前記温度を超えたり未満である場合、コアセルベートが形成されなかったり高分子の変形が発生することがあるためである。
前記溶媒にイガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子の添加量は、これに限定されないが、好ましくは、溶媒全体体積対比0.001〜100%(w/v)であってもよく、より好ましくは、0.01〜30%(w/v)であってもよい。
本発明のコアセルベートは、これに限定されるが、好ましくは、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子を1:0.01〜1:10の重量比で混合して製造されてもよく、より好ましくは、1:0.25〜1:2.5の重量比で、さらに好ましくは、1:0.25〜1:2.33の重量比で混合して製造されてもよい。前記混合比を超えたり未満である場合、コアセルベートが効果的に形成されないことがあるためである。
【0055】
一方、本発明は、本発明のコアセルベートを接着に使用するための用途を提供し、これについては前記と同意義である。特に本発明のコアセルベートは、接着剤の製造に使用するための用途でも使用されてもよい。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートを基質に接着させる段階を含む、本発明のコアセルベートを接着に使用する方法を提供し、これについては前記と同意義である。
また、本発明は、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用するための用途を提供し、これについては前記と同意義である。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートの内部に生体活性物質を封入する段階を含む、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用する方法を提供し、これについては前記と同意義である。
また、本発明は、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用するための用途を提供し、これについては前記と同意義である。
また、本発明は、(a)本発明のコアセルベートを準備する段階、および(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質を封入する段階を含む、本発明のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用する方法を提供し、これについては前記と同意義である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。
但し、下記の実施例は、本発明を例示するに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例に限定されるのではない。
【0057】
《参照例1》
[イガイ接着蛋白質の製造]
<1−1>イガイ接着蛋白質fp−151の製造
前記イガイ接着蛋白質fp−151は、自然に存在するイガイ接着蛋白質fp−1の中で80回程度反復される10個のアミノ酸から構成されたデカペプチド(decapeptide)が大腸菌で発現され得るように6個のデカペプチドからなるfp−1変異体を合成し、2個のfp−1変異体間にMgfp−5の遺伝子(Genbank No.AAS00463またはAY521220)を入れた後、大腸菌で生産したものである(D.S.Hwang et.al.,Biomaterials 28、3560〜3568、2007)。
具体的にfp−1(Genbank No.Q27409またはS23760)のアミノ酸配列において、配列番号4で表されるAKPSYPPTYKからなるペプチドが6回反復連結されたfp−1変異体(以下、6xAKPSYPPTYKという)を製造し、Mgfp−5のN−末端に前記6xAKPSYPPTYKを組み合わせ、また、Mgfp−5のC−末端に6xAKPSYPPTYKを組み合わせて配列番号1のfp−151を製造した。
【0058】
<1−2>イガイ接着蛋白質fp−151−RGDの製造
前記<実施例1−1>のfp−151のC−末端にフィブロネクチン(fibronectin)RGDグループで選択されたGRGDSP配列を追加して配列番号2のfp−151−RGDを製造した。
【0059】
<1−3>イガイ接着蛋白質fp−131の製造
イガイ接着蛋白質fp−131は、前記<実施例1−1>のfp−151と同一の方式で2個のfp−1変異体間に自然に存在するイガイ接着蛋白質Mgfp−3Aの遺伝子(Genbank No.BAB16314またはAB049579)を入れた後、大腸菌で生産したものである。
具体的にfp−1(Genbank No.Q27409またはS23760)のアミノ酸配列において、配列番号6で記載されるAKPSYPPTYKからなるペプチドが6回反復連結された配列番号7で表されるfp−1変異体(以下、6xAKPSYPPTYKという)を製造し、Mgfp−3のN−末端に前記6xAKPSYPPTYKを組み合わせ、また、Mgfp−3のC−末端に6xAKPSYPPTYKを組み合わせて配列番号3のfp−131を製造した。
【0060】
<1−4>イガイ接着蛋白質fp−5の製造
イガイ接着蛋白質fp−5は、自然に存在するイガイ接着蛋白質Mgfp−5の遺伝子(Genbank No.AAS00463またはAY521220)を大腸菌で生産したものである(D.S.Hwang et.al.,applied and environmental microbiology、3352〜3359、2004)。
【0061】
《実施例1》
〔イガイ接着蛋白質を利用したコアセルベート(coacervate)の形成〕
コアセルベート(coacervate)は、特定のpH条件で特定の比率で陰イオン性電解質高分子と陽イオン性電解質高分子を混合することによって生成されたコロイドの一種である。前記コアセルベートが形成されると溶液の吸光度が増加するため、コアセルベートの形成有無を確認するために主に吸光度を測定するようになる(V.Ducel et.al.,Colloids and Surfaces a−Physicochemical and Engineering Aspects、232、239〜247、2004)。下記の実施例は前記参照例で製造されたイガイ接着蛋白質と陰電荷電解質高分子を混合した場合、コアセルベートが形成されるか否かを確認したものである。
【0062】
<1−1>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(17kDa)を利用したコアセルベートの形成
前記<参照例1−1>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−151と陰電荷電解質高分子であるヒアルロン酸(hyaluronicacid)を混合した場合、コアセルベートが形成されるかを確認した。
具体的に17kDaの分子量を有するヒアルロン酸(Lifcore Biomedical;Minesota、米国)を0.05%(w/v)濃度に5%酢酸(水酸化ナトリウムでpH調節)に溶かし、前記と同一の溶液に溶かしたイガイ接着蛋白質fp−151を溶質(イガイ接着蛋白質およびヒアルロン酸)部分で占める比率を10%(w/w)ずつ上昇させながら混合した。前記混合後、UV−spectrphotometer(Optizen 3220UVbio、Mecasys、大田、韓国)を利用して600nm波長で吸光度を測定し、その結果を図1に記載した。
前記図1に記載された通り、pH2.5でfp−151とヒアルロン酸(17kDa)の重量比が58:42、pH3.0で63:37、pH3.5で68:32である時、コアセルベートが最もよく形成されることが分かった。
また、前記吸光度の増加がコアセルベートの形成によるものかを顕微鏡写真を通じて確認し、その結果を図2に記載した。
前記図2に記載された通り、10μm程度の大きさの円形体が形成されたことを確認することができ、これはイガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートであることを分かった。
【0063】
<1−2>イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(17kDa)を利用したコアセルベートの形成
前記<参照例1−3>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−131を使用したことを除いては前記<実施例1−1>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図3および図4に記載した。
前記図3および図4に記載された通り、fp−131とヒアルロン酸(17kDa)の重量比がpH2.5で41:59、pH3.0で56:44、pH3.5で59:41でコアセルベートが最もよく形成されることを確認することができた。
【0064】
<1−3>イガイ接着蛋白質fp−151−RGDとヒアルロン酸(17kDa)を利用したコアセルベートの形成
前記<参照例1−2>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−151−RGDを使用したことを除いては前記<実施例1−1>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図5および図6に記載した。
前記図5および図6に記載された通り、fp−151−RGDとヒアルロン酸の(17kDa)重量比がpH2.5で60:40、pH3.0で70:30、pH3.5で73:27でコアセルベートが最もよく形成されることを確認することができた。特にfp−151よりもfp−151−RGDを利用した場合、吸光度がより多く増加するため、コアセルベートがより一層よく形成されることが分かった。
【0065】
<1−4>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)を利用したコアセルベートの形成
ヒアルロン酸(35kDa)を使用したことを除いては前記<実施例1−1>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図7および図8に記載した。
前記図7および図8に記載された通り、fp−151とヒアルロン酸(35kDa)の重量比がpH2.5で59:41、pH3.0で70:30、pH3.5で77:27でコアセルベートが最もよく形成されることを確認することができた。特に17kDaヒアルロン酸よりも35kDaヒアルロン酸を利用した場合、吸光度がより多く増加するため、コアセルベートがより一層よく形成されることが分かった。
【0066】
<1−5>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)を利用したコアセルベートの形成
ヒアルロン酸(59kDa)を使用したことを除いては前記<実施例1−1>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図9および図10に記載した。
前記図9および図10に記載された通り、fp−151とヒアルロン酸(59kDa)の重量比がpH2.5で62:38、pH3.0で71:29、pH3.5で75:25でコアセルベートが最もよく形成されることを確認することができた。特に17kDaヒアルロン酸よりも59kDaヒアルロン酸を利用した場合、吸光度がより多く増加するため、コアセルベートがより一層よく形成されることが分かった。
【0067】
<1−6>イガイ接着蛋白質fp−131とフェレドキシンを利用したコアセルベートの形成
イガイ接着蛋白質として前記<参照例1−3>で製造されたfp−131を使用したことを除いては前記fp−131とフェレドキシンの重量比がpH4.5で70:30である時、<実施例1−1>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図17に記載した。
前記図15に記載された通り、イガイ接着蛋白質fp−131とフェレドキシン(ferredoxin)を利用した場合、コアセルベートが形成されることが分かった。
【0068】
<1−7>イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(35kDa)を利用したコアセルベートの形成
前記<参照例1−3>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−131を使用したことを除いては前記fp−131とヒアルロン酸(35kDa)の重量比がpH3.8で80:20である時、<実施例1−5>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図11に記載した。
【0069】
<1−8>イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(59kDa)を利用したコアセルベートの形成
前記<参照例1−3>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−131を使用したことを除いては前記fp−131とヒアルロン酸(59kDa)の重量比がpH3.8で80:20である時、<実施例1−6>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図12に記載した。
【0070】
<1−9>イガイ接着蛋白質fp−151とヘパリン(heparin)を利用したコアセルベートの形成
ヘパリン(heparin、sigma)とfp−151の吸光度測定実験がpH4.0、pH5.0、pH5.5でそれぞれ行われた。ヘパリンを0.02%(w/v)の濃度に前記pHを有する100mM sodium acetate bufferに溶かし、同一の溶液に溶かしたfp−151を10%ずつ比率変化で10〜90%まで混合して吸光度を特定し、その結果を図13および図14に記載した。
前記図13および図14に記載された通り、fp−151とヘパリンの重量比がpH5.0で90:10である場合、吸光度が最も高く、図14でコアセルベートが形成されることを確認した。
【0071】
<1−10>イガイ接着蛋白質fp−5とヒアルロン酸(35kDa)を利用したコアセルベートの形成
前記<参照例1−4>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−5を使用したことを除いては前記<実施例1−4>と同様な方法によりコアセルベートが形成されるか否かを確認し、その結果を図16および図17に記載した。
前記図16および図17に記載された通り、fp−5とヒアルロン酸(35kDa)の重量比がpH4.6で80:20で混合した時、吸光度が最も多く増加することが分かった。
【0072】
《実施例2》
〔コアセルベートの微細カプセル形成活性〕
<2−1>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートの微細カプセル形成活性
水酸化ナトリウムでpH3.8に合わせた100mMのアセテートバッファーにfp−151を10g/Lで溶かした後、最終体積の1%量の唐辛子種油を加えてこれを乳化するために10分間撹拌した。前記撹拌後、ヒアルロン酸をfp−151と質量比が8:2(fp−151:ヒアルロン酸)になるように唐辛子種油の乳化液にヒアルロン酸(35kDa)を追加的に添加した。
前記添加後、微細カプセルが形成されるか否かを唐辛子種油が浮かぶ蛍光を利用して蛍光顕微鏡(Olympus)を通じて確認し、その結果を図18に記載した。また、8日が経過するまで微細カプセルが維持されるか否かを確認し、その結果を図19に記載した。
前記図18および図19に記載された通り、イガイ接着蛋白質とヒアルロン酸により形成されたコアセルベートは微細カプセルを形成することができる活性があり、特に前記のように形成された微細カプセルが8日が経過してもそのまま維持されることが分かる。
【0073】
<2−2>イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートの微細カプセル形成活性
イガイ接着蛋白質としてfp−131を利用したことを除いて前記<実施例2−1>と同様な方法によりイガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートの微細カプセル形成活性があるか否かを確認し、その結果を図18および図19に記載した。
前記図18および図19に記載された通り、イガイ接着蛋白質とヒアルロン酸により形成されたコアセルベートは微細カプセルを形成することができる活性があり、特に前記のように形成された微細カプセルが8日が経過してもそのまま維持されることが分かる。
【0074】
<2−3>イガイ接着蛋白質fp−151とヘパリンにより形成されたコアセルベートの微細カプセル形成活性
ヒアルロン酸の代わりにヘパリンを利用したことと、fp−151とヘパリンの質量比が9:1になるようにしたことを除いて前記<実施例2−1>と同様な方法によりイガイ接着蛋白質fp−151とヘパリンにより形成されたコアセルベートの微細カプセル形成活性があるか否かを確認し、その結果を図20に記載した。
【0075】
《実施例3》
〔コアセルベートの細胞接着活性〕
<3−1>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性
前記<実施例1−1>で形成されたコアセルベートを利用して、表面が処理されていない24ウェル培養プレートをコーティングし、これを通じて細胞接着活性を確認した。この時、陽性対照群として細胞接着活性があると知られたfp−151およびpoly−L−lysineを使用した。前記陽性対照群に対しては従来公知となった重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)による沈澱法を利用した(Fulkerson、J.P.など(1990)Journal of Orthopaedic Research 8(6)、pp.793〜798、(1990))
具体的に本実験で使用されたショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞(Invitrogen)を10%IMS(insect medium supplement、Sigma)、1%のantibiotic−antimycotic(Invitrogen)および3μl/mlのhygromycin(hyclone)が含まれた昆虫細胞培養液(M3 medium、Sigma)を使用して27℃インキュベータで培養した。前記細胞を前記培養液に1×105個/ml濃度に希釈し、前記コアセルベートでコーティングされた細胞培養皿にウェル当り5×104個で前記細胞を入れ、1時間インキュベータで培養した。前記培養後、生きている細胞を定量化するために3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromide(MTT)分析を実施した。まず、前記培養後に付いていない細胞を除去するためにPBS(phosphate buffered saline)で洗浄した後、300μlのMTT溶液をウェルに注入した。生きている細胞は、ミトコンドリアでMTTをMTTホルマザン(formazan)に還元させるため、MTT試薬を入れて2時間追加培養した後、MTTホルマザンに還元されたものをdimethylsulfoxide(DMSO)で溶出した後、分光器(spectrophotometer)を通じて570nmで吸光度を測定し、その結果を図21に記載した。
前記図21に記載された通り、fp−151およびpoly−L−lysineなどの陽性対照群に比べて、イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性がより優れていることが分かった。
【0076】
<3−2>イガイ接着蛋白質fp−151−RGDとヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性
前記<実施例1−3>で形成されたコアセルベートを利用したことを除いては前記<実施例3−1>と同様な方法により細胞接着活性を測定し、その結果を図22に記載した。
前記図22に記載された通り、イガイ接着蛋白質fp−151−RGDとヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性がより優れていることが分かった。
【0077】
<3−3>イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性
前記<実施例1−2>で形成されたコアセルベートを利用したことを除いては前記<実施例3−1>と同様な方法により細胞接着活性を測定し、その結果を図23に記載した。
前記図23に記載された通り、イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(17kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性が非常に優れていることが分かった。
【0078】
<3−4>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性
前記<実施例1−4>で形成されたコアセルベートを利用したことを除いては前記<実施例3−1>と同様な方法により細胞接着活性を測定し、その結果を図24に記載した。
前記図24に記載された通り、イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性が非常に優れていることが分かった。
【0079】
<3−5>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性
前記<実施例1−5>で形成されたコアセルベートを利用したことを除いては前記<実施例3−1>と同様な方法により細胞接着活性を測定し、その結果を図25に記載した。
前記図25に記載された通り、イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートの細胞接着活性がより優れていることが分かった。
【0080】
《実施例4》
〔コアセルベートの接着力測定〕
<4−1>イガイ接着蛋白質fp−151またはfp−131とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートの接着力測定(乾燥条件)
イガイ接着蛋白質fp−151とfp−131のチロシン残基をドーパに変えるためにチロシナーゼ酵素反応を行った。具体的に5μg/mlのきのこ由来チロシナーゼ酵素と2g/Lの蛋白質を25mMのアスコルビン酸(ascorbic acid)を含むPBSに溶かし、37℃で半日反応させて蒸溜水に二回透析し凍結乾燥することによって修正されたイガイ接着蛋白質mfp−151とmfp−131を得た。
水酸化ナトリウムでpH3.8に合わせた100mMアセテートバッファーにmfp−151とヒアルロン酸(35kDa)をそれぞれ10g/Lで溶かした溶液を質量比8:2で混合してコアセルベートを製造した。そして、これを遠心分離して凝縮された液状コロイド状態のコアセルベートをアルミニウム試片に12mm×10mmの広さに塗抹して接着させた。比較実験のために同一の濃度のBSA(bovine serum albumin)と凍結乾燥状態の単一のイガイ接着蛋白質mfp−151またはmfp−131を同一のバッファーに溶かして同様な方法により付け、これを24時間常温で乾燥して接着されたアルミニウム試片の両側に力を加えて脱着時にに加えられる力を引張強度測定機器(Instron)で定量して接着剤の引張強度を測定し、その結果を図26に記載した。
前記図26に記載された通り、イガイ接着蛋白質とヒアルロン酸を利用したコアセルベートの接着力が単一のイガイ接着蛋白質に比べてより優れていることが分かる。
【0081】
<4−2>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDaまたは59kDa)により形成されたコアセルベートの接着力測定(水分条件)
前記<実施例4−1>でイガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(35kDa)により形成されたコアセルベートに架橋剤であるチロシナーゼ(tyrosinase)をfp−151と質量対比1:200で混合したり、あるいは前記<実施例1−5>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートにグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を全体体積対比0.5%で混合してアルミニウム試片に10mm×10mmの広さに塗抹し、これを接着させた。比較実験のためにfp−151を同一のバッファーに溶かし、同一量のチロシナーゼ(tyrosinase)やグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を入れて同様な方法により付けた。
前記サンプル上に蒸溜水に浸漬したガーゼを巻き、乾燥されないようにラップで巻いた。これを3時間37℃で置いた後、接着剤の引張強度を測定し、その結果を図27に記載した。
前記図27に記載された通り、2種類の架橋剤(tyrosinase、glutaraldehyde)を添加したイガイ接着蛋白質とヒアルロン酸により形成されたコアセルベートの接着力が単一のイガイ接着蛋白質に比べてより優れていることが分かる。
【0082】
<4−3>イガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートの接着力測定(水分条件)
前記<実施例4−2>と同様な方法により、前記<実施例1−11>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−131とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートにチロシナーゼ(tyrosinase)をfp−131と質量対比1:1000で混合したりグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を全体体積対比0.5%で混合してアルミニウム試片に10mm×10mmの広さに塗抹し、これを接着させた。
比較実験のためにfp−131を同一のバッファーに溶かして同一量のチロシナーゼ(tyrosinase)とグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を入れて同様な方法により付け、これを温度30℃、湿度90%で3時間置いた後、接着剤の引張強度を測定し、その結果を図28に記載した。
前記図28に記載された通り、2種類の架橋剤(tyrosinase、glutaraldehyde)を添加したイガイ接着蛋白質とヒアルロン酸により形成されたコアセルベートの接着力が単一のイガイ接着蛋白質に比べてより優れていることが分かる。
【0083】
<4−4>イガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートの接着力測定(水中条件)
前記<実施例4−2>と同様な方法により、前記<実施例1−11>で製造されたイガイ接着蛋白質fp−151とヒアルロン酸(59kDa)により形成されたコアセルベートにチロシナーゼ(tyrosinase)をfp−151と質量対比1:1000で混合し、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を全体体積対比0.5%で混合してアルミニウム試片に10mm×10mmの広さに塗抹し、これを接着させた。
比較実験のために牛血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)を同一のバッファーに溶かして同一量のチロシナーゼ(tyrosinase)とグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を入れて同様な方法により付け、これを24時間PBSに浸漬した後、接着剤の引張強度を測定し、その結果を図29に記載した。
前記図29に記載された通り、2種類の架橋剤(tyrosinase、glutaraldehyde)を添加したイガイ接着蛋白質とヒアルロン酸により形成されたコアセルベートの接着力がBSAに比べてより優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子が含まれたコアセルベート。
【請求項2】
前記イガイ接着蛋白質は、
(a)配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号6のアミノ酸配列が1〜10回連続して連結されたポリペプチド、および
(d)前記(a)のポリペプチド、(b)のポリペプチドおよび前記(c)のポリペプチドからなる群より選択された二種以上が融合されたポリペプチド
からなる群より選択された一種以上である、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項3】
前記(c)のポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列からなるものである、請求項2に記載のコアセルベート。
【請求項4】
前記(d)の融合されたポリペプチドは、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列からなるものである、請求項2に記載のコアセルベート。
【請求項5】
前記イガイ接着蛋白質の変異体は、前記イガイ接着蛋白質のカルボキシル末端またはアミノ末端にRGDを含む3〜25個のアミノ酸からなるポリペプチドが連結されたものである、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項6】
RGDを含むポリペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるものである、請求項5に記載のコアセルベート。
【請求項7】
前記イガイ接着蛋白質の変異体は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項5に記載のコアセルベート。
【請求項8】
前記イガイ接着蛋白質の変異体は、イガイ接着蛋白質をなすチロシン残基総数の1〜100%が3,4−ジヒドロキシフェニル−L−アラニン(DOPA)で置換されたものである、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項9】
前記陰イオン性高分子は、ヒアルロン酸、フェレドキシン、ポリスチレンスルホン酸、アラビアガム、ゼラチン、アルブミン、カルボポル、高または低メトキシルペクチン、カルボキシメチルグアーガムナトリウム、キサンタンガム、乳清蛋白質、レグミン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、カラギーナン、ヘキサメタリン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、ヘモグロビン、ヘパリンおよび細胞外多糖体B40からなる群より選択された一つ以上である、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項10】
前記陰イオン性高分子の平均分子量は、1kDa〜300kDaである、請求項9に記載のコアセルベート。
【請求項11】
前記コアセルベートは、前記イガイ接着蛋白質と陰イオン性高分子が1:0.01〜1:10の重量比で混合して形成されたものである、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項12】
前記コアセルベートは、前記イガイ接着蛋白質と陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で混合して形成されたものである、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを含む、接着剤。
【請求項14】
前記接着剤は、プラスチック、ガラス、金属、および高分子合成樹脂からなる群より選択された基質に接着されるものである、請求項13に記載の接着剤。
【請求項15】
前記接着剤は、生体物質に適用されるものである、請求項13に記載の接着剤。
【請求項16】
前記接着剤は、水中接着用である、請求項13に記載の接着剤。
【請求項17】
前記接着剤は、界面活性剤、酸化剤、架橋剤、および充填剤からなる群より選択された一種以上の物質をさらに含むものである、請求項13に記載の接着剤。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを含む、生体活性物質伝達用組成物。
【請求項19】
前記コアセルベートは、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合して形成されたものである、請求項18に記載の生体活性物質伝達用組成物。
【請求項20】
前記生体活性物質は、抗ガン剤、抗生剤、抗炎症剤、ホルモン、ホルモン拮抗剤、インタロイキン、インターフェロン、ヘパリン、酵素、成長因子、腫よう怪死因子、エンドトキシン、リンホトキシン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性剤、プロテアーゼ阻害剤、アルキルホスホコリン、放射線同位元素標識物質、界面活性剤、心血管系薬品、胃腸管系薬品および神経系薬品からなる群より選択された一つ以上である、請求項18に記載の生体活性物質伝達用組成物。
【請求項21】
(a)請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートおよび生体活性物質を含み、
(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質が封入されたことを特徴とする、生体活性物質伝達体。
【請求項22】
前記生体活性物質伝達体は、マイクロカプセルである、請求項21に記載の生体活性物質伝達体。
【請求項23】
(a)イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子および生体活性物質を混合する段階、および
(b)前記イガイ接着蛋白質またはその変異体および陰イオン性高分子により形成されたコアセルベートが生体活性物質の周囲に被膜を形成する段階を含む、生体活性物質伝達体の製造方法。
【請求項24】
前記(a)段階において、前記イガイ接着蛋白質またはその変異体と陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合するものである、請求項23に記載の生体活性物質伝達体の製造方法。
【請求項25】
前記生体活性物質伝達体は、マイクロカプセルである、請求項23に記載の生体活性物質伝達体の製造方法。
【請求項26】
イガイ接着蛋白質またはその変異体に陰イオン性高分子をpH2.0〜pH10.0で1:0.01〜1:10の重量比で混合する段階を含む、コアセルベートの製造方法。
【請求項27】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを接着に使用するための用途。
【請求項28】
(a)請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを準備する段階、および
(b)前記コアセルベートを基質に接着させる段階を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを接着に使用する方法。
【請求項29】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用するための用途。
【請求項30】
(a)請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを準備する段階、および
(b)前記コアセルベートの内部に生体活性物質を封入する段階を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを生体活性物質伝達に使用する方法。
【請求項31】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用するための用途。
【請求項32】
(a)請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを準備する段階、および
(b)前記コアセルベートの内部に前記生体活性物質を封入する段階を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコアセルベートを生体活性物質伝達体の製造に使用する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2012−526155(P2012−526155A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510761(P2012−510761)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005178
【国際公開番号】WO2011/025158
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(506376458)ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション (28)
【Fターム(参考)】