説明

イクオリン−含有組成物及びその使用方法

イクオリン含有組成物、及びカルシウム不均衡に関連する症状又は疾患を抑制及び/又は緩和することにおけるその使用方法が本発明によって提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的に、カルシウムホメオスタシスの維持に有用な組成物に関する。特に、本発明は、カルシウム不均衡に関連する疾患又は症状を抑制及び/又は緩和するのに有用なイクオリン-含有医薬組成物及び栄養補助組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
カルシウムは、ヒトの体内では5番目に豊富な元素であり、骨に主に存在する。体内のカルシウムの99%より多くが骨格に貯蔵され、常にその供給を交換しており、体液及び柔組織、例えば血液中に溶解している1%を維持している。この交換の制御は、血漿中のイオン化カルシウム濃度を感知し、この重要なバランスを維持するようにカルシウム交換を方向づける内分泌系によって主に指示されている。間質液及び柔組織中の1%のカルシウムの小分画のみがイオン化され、及び溶解され、残りは、タンパク質、特にカルシウム-結合タンパク質(CaBP)に結合している。これらのCaBPは、カルシウムホメオシタシスの維持に機能することが知られている。必須の生理的プロセスを実行するために身体は特定のカルシウム濃度を要求するので、それ故、カルシウムホメオシタシスの維持は身体の健康によって重要である。血漿及び体液中の適正なイオン性カルシウム濃度は、医学界によって、神経興奮、筋収縮、膜透過性、細胞分割、ホルモン分泌及び骨石灰化に限定されない身体機能において重要であると理解されている。カルシウムホメオシタシスの破壊、すなわちカルシウム不均衡は、例えば癌、心疾患及び神経変性疾患に限定されない多くの疾患、症候及び症状に関連する。
【0003】
従来は、細胞内壁と間質液との間のカルシウムの流れを遮断するカルシウシムイオンチャネルアンタゴニストは、高血圧、狭心症、喘息、片頭痛及び神経損傷を含むカルシウム-関連疾患の抑制に有用である医薬剤として広く処方されている。例えば、ニミドピンは、神経損傷を起こすカルシウム不均衡を緩和することによって、痴呆における臨床的症候及び認識機能を改善することがわかった。しかしながら、これらのカルシウムチャネルアンタゴニストの多くは、倦怠感、体液鬱滞、胸やけ、異常な心拍数、目眩、胃のむかつき、及びまれに気絶、発熱及び過剰な出血に限定されない望ましくない副作用を有する。
【0004】
従って、カルシウム不均衡を緩和又は抑制する新規かつ代替的な治療薬が求められている。特に、従来の薬剤に比べて副作用が少ない医薬組成物又は栄養補助組成物が望まれており、もし発見されれば、医学界及び栄養健康界における長い間の切実な必要性を満たすことになる。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、カルシウム不均衡に関連する症状又は疾患の緩和及び/又は抑制に有益である医薬組成物及び栄養補助組成物を提供する。かかる組成物は、対象に様々な経路によって投与するための許容される担体と組み合わせたイクオリンを含む。従って、本発明は、許容される担体と組合せたイクオリンの有効量を含む医薬組成物に関する。他の実施態様では、本発明は、許容される担体と組合せたイクオリンの有効量を含む栄養補助組成物に関する。ある実施態様では、栄養補助組成物は、イクオリンに加えて、栄養補助効果を与えると理解されている少なくとも1つの他の成分を含む。
【0006】
別の実施態様では、本発明は、イクオリンの治療上-有効量をそのような治療を必要としている患者に投与することによって、カルシウム不均衡に関連する症状又は疾患を治療する方法を更に提供する。
【0007】
更に別の実施態様では、本発明は、カルシウム不均衡に関連する症状又は疾患の緩和又は抑制において有用な組成物の製造のための、イクオリンの使用を含む。
【0008】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、明細書及び特許請求の範囲を検討すれば明らかであろう。
【0009】
発明の詳細な説明
I. 一般論
本発明を記載する前に、本発明が記載された特定の方法及び材料は変化することがあるため、これらに限定されない、ことを理解されたい。本明細書で用いる用語が特定の実施態様のみを記載する目的のためのものであって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲を限定するものではない、ことも理解されたい。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明確に指示しない限り、複数形を含む。同様に、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つの」は、本明細書で交換的に用いられる。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、交換的に用いられることも留意されたい。
【0011】
特に断らない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が帰属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と同一又は均等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用できるが、好ましい方法及び材料についてこれから述べる。本明細書に記載の全ての刊行物は、本発明に関連して用いられ得る刊行物中で報告される化学物質及び方法を記載及び開示する目的のため、文献として本明細書に組み込まれる。本発明が先行の発明によって開示の日時を早める権利を付与されていない、ことを承認するものは本明細書には存在しない。
【0012】
II. 発明
イクオリンは、発光クラゲ及び他の海洋生物から最初に単離された発光タンパク質である。イクオリン複合体は、22,000-ダルトンのアポイクオリンタンパク質、分子酸素及び発光団コエレンテラジンを含む。3つのCa2+イオンがこの複合体に結合するときに、コエレンテラジンはコエレンテラミドに酸化されて、この際、二酸化炭素及び青色光を放出する。イクオリンが細胞によって運び出されず又は分泌されず、また、細胞内で区分又は隔離されない。従って、イクオリン測定は、比較的長期間に渡って起こるCa2+変化を検出するために用いられてきた。いくつかの実験系では、イクオリンの発光は、細胞装填後、数時間から数日で検出可能であった。イクオリンはまた細胞機能又は胚発達を妨害しない、ことが更に知られている。
【0013】
そのCa2+-依存性発光のため、イクオリン複合体は、細胞内Ca2+インジケーターとして広範に使用されている。オワンクラゲ(Aequorea victoria)イクオリンは、特に、以下:(1)単一副腎クロム親和性細胞の、ニコチンコリン作用性アゴニストに対する分泌反応を分析し;(2) 心筋損傷におけるCa2+放出の役割を明確にし;(3) 受精中のCa2+の大量放出を証明し;(4) ヒヨコの筋芽細胞の発達における筋小胞体Ca2+ポンプ発現の調節を試験し;(5) 3ピコリットルのような僅かな注射体積でマイクロピペットをキャリブレーションする、ために用いられてきた。
【0014】
オワンクラゲ由来のイクオリンの一般的精製は、実験室的な抽出方法を必要とし、実質的に異質であるか又は試験下の生物に毒性である調製物を与えることがある。2トンのクラゲは典型的に、約125mgの精製発光タンパク質を与える。対照的に、組換えイクオリンは、好ましくは、遺伝子的に設計された大腸菌由来のアポイクオリンを精製し、次いで、純粋なコエレンテラジンによるin vitroでのイクオリン複合体の再構成によって製造される。この調製法は、本発明での使用に好適である、純粋で、非毒性の、完全に電荷されたイクオリン複合体を与える。本発明で有用なイクオリンの具体的な商業的調製物は、AQUALITEの名称でMolecular Probes, Inc.より入手可能である。このように、本発明で有用なイクオリンを記載し、当業者に公知の精製スキーム及び/又は合成によって商業的に入手可能である。
【0015】
イクオリンの機能は、いくつかの特徴によって識別される:イクオリンは非毒性であり、かつ内部の細胞内化学量論を妨害しない (Miller他, Methods Cell Biol. 40:305-338 (1994)); 外来細胞に導入される場合にタンパク質は非毒性である (Blinks, J. Environ Health Persp 83: 75-81 (1990))。イクオリンの各分子は3つのカルシウムイオンを包含することが知られている(Inouye他, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82: 3154-3158 (1985))。
【0016】
本発明は、対象におけるカルシウムバランスを修正又は維持するために、イクオリン-含有組成物の対象への投与に関する。血漿及び体液中のイオン性カルシウム濃度の維持は、神経興奮、筋収縮、膜透過性、細胞分割、ホルモン分泌及び骨石灰化に限定されない幅広い身体の機能に重要であることが理解されている。カルシウムホメオシタシスの破壊、すなわちカルシウム不均衡は、多くの疾患、症候及び症状を起こし及び/又は関連すると理解されている。CaBPの研究は、適正なカルシウムレベルの維持において働く保護的機能としての認識に導いた。
【0017】
ある実施態様では、本発明の方法は、カルシウム不均衡を治療し、カルシウム不均衡の進行を遅らせ、カルシウム不均衡の開始を抑制し、及びカルシウム不均衡の再発を抑制及び/又は治療するための単一の活性成分として、イクオリンを投与することを含む。他の実施態様では、本発明は、公知の治療効果を有する1以上の追加の薬剤と組み合わせてイクオリンを投与することを含む方法を提供する。
【0018】
本明細書で用いる用語「治療する」は、予防及び疾患の沈静的治療を含む。本明細書で用いる用語「減じる」、「緩和する」、「抑制する」及び「阻害する」は、小さくする又は減少させるという一般的に理解される意味を有する。本明細書で用いる用語「進行」は、範囲または重度での増加、進行、成長又は悪化を意味する。本明細書で用いる用語「再発」は、沈静後の疾患の戻りを意味する。
【0019】
本明細書で用いる用語「投与する」は、患者、組織、臓器又は細胞にイクオリンを接触させることを意味する。本明細書で用いる投与は、in vitroで、すなわち試験管内で、又はin vivoで、すなわち生きている生物、例えばヒトの細胞又は組織内で実行することができる。好ましい実施態様では、本発明は、本発明で有用な分子を患者又は対象に投与することを含む。本明細書で等しく用いられる「患者」又は「対象」は、(1) イクオリンの投与によって治癒可能な又は治療可能なカルシウム不均衡-関連疾患を有するか;又は(2) イクオリンを投与することによって抑制可能なカルシウム不均衡-関連疾患に罹患しやすい、哺乳動物、好ましくはヒトを意味する。
【0020】
本明細書に記載の「医薬組成物」は、好適な希釈剤、保存料、溶解剤、懸濁剤及びアジュバント、包括的には「薬学的に許容される担体」、と組み合わせた治療上有効量のイクオリンを意味する。本明細書に記載の用語「有効量」及び「治療上有効量」は、毒性、炎症又はアレルギー反応等の過度な逆の作用を起こすことなく、所望の治療的反応を与えるために十分な活性剤の量を意味する。具体的な「有効量」は、治療されるべき具体的条件、患者の体調、治療されるべき動物の種類、治療期間、(もしあれば)同時治療法の性質、及び採用される特定の製剤及び化合物又はその誘導体の構造などの因子によって明らかに変化することになる。本ケースでは、1以上の以下の事項をもたらす場合に、ある量は、治療上有効であると考えられる:(a) カルシウム不均衡-関連疾患の抑制; 及び (b) カルシウム不均衡-関連疾患の逆転又は安定。最適有効量は、規定の実験を用いて当業者によって容易に決定できる。
【0021】
医薬組成物は、液剤、又は凍結乾燥されたもしくは乾燥された製剤であり、様々な緩衝内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩) の希釈物、pH及びイオン強度、表面への吸収を抑制するための添加剤例えばアルブミン又はゲラチン、界面活性剤 (例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、溶解剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、抗-酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重硫酸ナトリウム)、保存料(例えば、Thimerosal、ベンジルアルコール、パラベン)、バルク剤又は張性調整剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコール等のポリマーのタンパク質への共有結合、金属イオンによる複合化、あるいはポリマー性化合物例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ハイドロゲル等の粒子状調製物の中への又はその上への取り込み、又はリポソーム、ミクロエマルジョン、ミセル、ミラメラ小胞もしくは多層状小胞、赤血球ゴースト又はスフェロプラスト上への取り込み、を含む。かかる組成物は、物理的状態、溶解性、安定性、in vivoでの放出率、in vivoでのクリアランス率に影響を与えることになる。制御された又は徐放性組成物は、親油性デポ(例えば脂肪酸、ワックス、油)での製剤を含む。
【0022】
本発明には、ポリマー(例えばポロキサマー又はポロキサミン)で被覆した粒子状組成物を投与する方法も含まれる。組成物の他の実施態様は、非経口、肺、鼻腔及び経口を含む様々な投与経路用の、粒子状形態保護コーティング、プロテアーゼインヒビター又は透過性エンハンサーを組み込む。ある実施態様では、医薬組成物は、非経口的に、癌化細胞の近くに(paracancerally)、経粘膜的に、経皮的に、筋肉内に、静脈内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、心室内に、頭蓋内に又は腫瘍内に投与される。
【0023】
更に、本明細書で用いる「薬学的に許容される担体」は、当業者に周知であり、特に限定されないが、0.01〜0.1M、好ましくは0.05M リン酸緩衝液又は0.9% 生理食塩水を含む。加えて、かかる薬学的に許容される担体は、水溶性でも又は非-水溶性、懸濁液及びエマルジョンでもよい。非-水溶性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油例えばオリーブ油、及び注射用有機エステル例えばオレイン酸エチルである。水溶性担体は、例えば生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液を含む。
【0024】
非経口ビヒクルは、塩化ナトリム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル及び不揮発性油を含む。静脈注射用ビヒクルは、流動体及び栄養補充薬、電解質補充薬例えばリンゲルデキストロース等に基づく補充薬を含む。保存料、及び他の添加剤例えば抗菌剤、抗酸化剤、照合剤、不活性ガス等が存在してもよい。
【0025】
本発明に従う投与可能な制御された又は徐放性組成物は、親油性デポ(例えば脂肪酸、ワックス、油)での製剤を含む。また、本発明には、ポリマー(例えばポロキサマー又はポリキサミン)で被覆した粒子状組成物、及び組織-特異的受容体、リガンドもしくは抗原に対する抗体に結合された化合物、又は組織-特異的受容体のリガンドに結合された化合物も含まれる。
【0026】
本発明に従って投与される組成物の他の実施態様は、様々な投与形態例えば非経口、肺、鼻腔、眼科及び経口のための、粒子状形態、保護コーティング、プロテアーゼインヒビター又は透過性エンハンサーを含む。
【0027】
水溶性ポリマー例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン又はポリプロリンの共有結合によって修飾される化合物は、対応する非修飾化合物よりも、静脈注射後の血液中で実質的に長い半減期を示すことが知られている。かかる修飾は、水溶液中での化合物の水溶性を増加させ、凝集を除き、化合物の物理化学的安定性を向上させ、及び化合物の免疫原性及び反応性を非常に減少させる。結果として、所望のin vivoでの生物活性は、非修飾化合物よりも少ない頻度又は低用量でのかかるポリマー-化合物の投与によって達成できる。
【0028】
本発明に従う更に別の方法では、医薬組成物は制御された放出装置で送達できる。例えば、薬剤は静脈注射、移植可能な浸透性ポンプ、経皮的パッチ、リポソーム又は他の投与形式を用いて投与できる。1つの実施態様では、ポンプが使用できる。別の実施態様では、ポリマー性材料が使用でき、更に別の実施態様では、制御された放出装置は、治療標的すなわち前立腺、の近くに設置でき、その結果、少量の全身的用量のみを必要とする。
【0029】
医薬調製物は、イクオリンのみを含み又は更に薬学的に許容される担体を含むことができ、固体又は液体の形態、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、ペレット、液剤、懸濁剤、エリキシル、シロップ、飲料、エマルジョン、ゲル、クリーム、眼科製剤又は座薬例えば直腸及び尿道口の座薬、でよい。薬学的に許容される担体は、ガム、デンプン、糖類、セルロース性材料及びこれらの組合せを含む。イクオリンを含む医薬調製物は、患者に、例えばペレットの皮下移植によって投与できる。更なる実施態様では、ペレットは、ある期間中のイクオリンの制御された放出を提供する。当該調製物は、液体又は固体調製物の液体調製物経口投与の静脈内、動脈内又は筋肉内注射によって、又は局所適用によっても投与できる。投与は、直腸座薬又は尿道口座薬の使用を伴ってもよい。
【0030】
本発明によって投与可能な医薬調製物は、公知の溶解、混合、顆粒化又は錠剤-形成プロセスによって調製できる。経口投与に関しては、イクオリン又はその生理的に許容される誘導体例えば塩、エステル、N-オキシド等は、本目的に慣用されている添加剤例えばビヒクル、安定剤又は不活性希釈剤と混合され、そして、慣用的方法によって、投与の好適な形態、例えば錠剤、被覆錠剤、硬又は軟ゲラチンカプセル、水溶性、アルコール性又は油性液剤に変換される。
【0031】
好適な不活性ビヒクルの例は、結合剤例えばアカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチンと組合せた、崩壊剤例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸と組合せた、又は滑剤例えばステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムと組合せた、慣用的な錠剤基材、例えばラクトース、スクロース又はトウモロコシデンプンである。好適な油状ビヒクル又は溶剤の例は、植物油又は動物油例えばヒマワリ油又は魚の肝油である。調製物は乾燥でも湿性顆粒でも効果がある。非経口投与(皮下、静脈内、動脈内又は筋肉内注射)に関しては、必要であれば、慣用的かつ本目的に好適な物質、例えば溶解剤又は他の補助剤を用いて、抗-アンドロゲン化合物又はその生理的に許容される誘導体例えば塩、エステル、N-オキシド等は、水溶液、懸濁液又はイクスパルションに変換される。
【0032】
例は、界面活性剤及び他の薬学的に許容されるアジュバントを添加又は添加しない、殺菌性液体例えば水及び油である。油の例は、石油、動物、植物又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油又は鉱油である。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖類溶液、及びグリコール例えばプロピレングリコール又はポリエチレングリコールが好ましい液状担体であり、特に注射用液剤が好ましい。
【0033】
活性成分を含む医薬組成物の調製は当業者によく理解されている。かかる組成物は、鼻咽頭に送達されるアエロゾルとして又は注射可能物質として、溶液又は懸濁液のいずれかとして調製できる;しかしながら、注射前の液体溶液又は液体懸濁液に好適な固体も調製できる。調製物は乳化してもよい。活性治療成分は、一般には、薬学的に許容されかつ活性成分と適合可能な賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等又はそれらの組合せである。加えて、組成物は、活性成分の効果を増加させる少量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤を含んでもよい。
【0034】
活性成分は、中和された薬学的に許容される塩の形態に調合できる。薬学的に許容される塩は、無機酸例えば塩酸又はリン酸、又は有機酸例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等により形成される酸付加塩を含む。遊離のカルボキシル基から形成される塩も、無機塩基例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄、及び有機塩基例えばイソプロピルアミン、トリメチルアニリン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から得られる。
【0035】
例えばクリーム、ゲル、液滴等を用いる体表面への局所投与に関しては、イクオリン又はその生理的に許容される誘導体が調製され、薬学的担体を含むか又は含まないで、生理的に許容される希釈剤中の溶液、懸濁液又はエマルジョンとして適用される。
【0036】
本発明の別の方法では、活性化合物は、小胞、特にリポソーム中で送達できる(Langer, Science 249: 1527-1533 (1990); Treat他, in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler(著), Liss, N. Y., pp. 353-365 (1989)参照)。
【0037】
医薬での使用に関しては、イクオリン塩は薬学的に許容される塩でよい。しかしながら、他の塩も、本発明に従う化合物又はその薬学的に許容される塩の調製において有用である。好適な化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、イクオリン溶液と、薬学的に許容される酸、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸又はリン酸、の溶液とを混合することによって形成できる、酸付加塩を含む。
【0038】
加えて、本明細書に記載のイクオリン-含有組成物は、イクオリンが、様々な有害なカルシウム不均衡-関連疾患の発症を抑制し、減らし又は安定化する、栄養補助組成物の形態で提供できる。明細書の目的のための用語「栄養補助」又は「栄養補助組成物」は、疾患の抑制及び/又は治療を含む医療保健上の利益を与える、食品又は食品の一部を意味する。本発明に従う栄養補助組成物は、活性成分として、本発明に従うイクオリンのみを含んでよく、あるいは、物質の総摂取量を増加させることによって食事を補う栄養補助食品、例えばビタミン、補酵素、ミネラル、ハーブ、アミノ酸等との混合物の形態でイクオリンを更に含んでもよい。
【0039】
従って、本発明は、イクオリン含有栄養補助組成物を患者に投与するステップを含む、栄養補助的利益を提供する方法を提供する。かかる組成物は、一般的に、「栄養補助的に許容される担体」を含み、これは、本明細書に記載されているが、経口経路に好適な上記の薬学的に許容される担体を含む経口送達に好適な任意の担体である。ある実施態様では、本発明に従う栄養補助組成物は、機能に基いて定義される、追加免疫剤、抗-炎症剤、抗-酸化剤、抗-ウイルス剤又はこれらの組み合わせを含む栄養補助食品を含む。
【0040】
追加免疫剤及び/又は抗-ウイルス剤は、創傷-治癒及び改善された免疫機能を促進するために有用であり;そして、ヤグルマソウ又はエキナシア属のハーブからの抽出物、サンブーカ属のハーブ由来の抽出物、及びヒドラスチス抽出物を含む。レンゲ属のハーブも、そのままで又は加工された形態で有効な追加免疫剤である。レンゲは、骨髄中の胚細胞及びリンパ組織活性免疫細胞への進行を刺激する。亜鉛及びその活性塩、例えばグルコン酸亜鉛及び酢酸亜鉛は、一般的な風邪の治療における追加免疫としても働く。
【0041】
抗酸化剤は、血中の抗酸化酵素のレベルを増加させるために働く天然の、イオウ-含有アミノ酸アリシンを含む。ハーブ又はハーブ抽出物例えばニンニクは、アリシンを含み、有効な抗酸化剤でもある。カテキン及びハーブ抽出物例えばカテキン含有緑茶も有効な抗酸化剤である。レンゲ属の抽出物も抗酸化活性を示す。生体フラボノイド例えばケルセチン、ヘスペルジン、ルチン及びそれらの組み合わせも有効な抗酸化剤である。生体フラボノイドの主要な有益な役割は、体内で酸化からビタミンCを保護する点であろう。これは、より多くのビタミンC、アスコルビン酸を身体による使用のために提供させる。
【0042】
生体フラボノイド例えばケルセチンも有効な抗体-炎症剤であり、本発明の組成物においてそのようなものとして使用できる。植物又はハーブ由来の抗-炎症性ハーブ栄養補助食品及び抗-炎症性化合物も、本発明の組成物において抗-炎症剤として使用できる。これらは、ブロモライン、すなわち、パイナップル;茶葉及び刺すような痛みを与えるネトル抽出物;ターメリック、ターメリック抽出物、又はクルクミンすなわちターメリックから単離された黄色分画で発見されたタンパク質分解酵素、を含む。
【0043】
本発明で使用できる別の栄養補助食品は、ジンジャー属のハーブ由来のジンジャーである。これは、化合物、例えばジンゲロール及び関連化合物であるショガオールに起因する強心活性を有し、並びに目眩及び前庭疾患の治療に有益である、ことが見出された。ジンジャーは嘔吐及び他の胃疾患の治療にも有効である。
【0044】
柔組織構造の再構築特に軟骨の再構築を補助する栄養補助食品は、関節炎の痛み及び他の関節疾患の治療用組成物として有用である。グルコサミン、硫酸グルコサミン、コンドロイチン及び硫酸コンドロイチンは、この目的に特に有用である。コンドロイチンは、様々な起源例えばElk Velvet Antlerから得られる。海洋脂質複合体、オメガ3脂肪酸複合体及び魚油も関節炎に関連する疼痛の治療に有用であることが知られている。
【0045】
偏頭痛の治療に有用な栄養補助食品は、ナツシロギク及びイチョウ(Gingko biloba)を含む。ナツシロギクの主な活性成分は、セスキテルペンラクトンパルテノライドであり、これは血管攣縮活性によって疼痛を引き起こすプロスタグランジンの分泌を阻害する。ナツシロギクは、抗-炎症性も示す。魚油も、その血小板安定化及び抗血管攣縮作用に因り、偏頭痛の治療に有効である。イチョウハーブも、動脈を安定化し、血液循環を改善することによって偏頭痛の治療を助ける。
【0046】
上記のサプリメントのいくつかについてはその薬理効果について記載してきたが、本発明では他のサプリメントも使用でき、その効果は同様に科学文献に記載されている。
【実施例】
【0047】
実施例 1 イクオリンを海馬ニューロンから採取した。
一連の予備試験において、イクオリンを3種の大人ラットの海馬に直接、左右両方に注射した。ラットを麻酔した後の少なくとも24時間、ラットをケージに戻し、脳を取り除き、切断し、モノクローナル抗-イクオリン抗体を用いてイクオリンを染色した。次いで、Alexa Fluor 594との第二抗体複合体を用いて、第一抗体を視覚化した。図1は、一般的な蛍光顕微鏡を用いてイクオリン-標識海馬ニューロンの例を示す。左パネルは、CA1領域中のカニューレ先端の位置を示す海馬の顕微鏡写真である。白の四角形は、右パネルに示す2つのイクオリン標識CA3ピラミッド型ニューロンの位置を示す。海馬へのニューロンの直接導入(左パネル)が、CA1及びCA3のピラミッド形ニューロンの標識をもたらす、ことをデータは示している。3% DMSOの存在下、カルシウムを含まないaCSFにイクオリン(6% w/v)を溶解した。シリンジポンプを用いて海馬に当該溶液を直接、ゆっくり(速度 約1μL/分)注射した(体積 約1μL/側)。注射終了後に、送達カニューレを除去前の1分間、所定の位置に維持した。2種のイクオリン-含有CA3ピラミッド形ニューロンの例を右パネルに示す(4OX対物レンズ)。データは、脳へのイクオリンの直接送達を示し、また、イクオリンが海馬によって広がり、次いでCA1、CA3のニューロン及び歯状回により取られる、ことを示す。
【0048】
実施例 2 虚血後の細胞死に対するイクオリンの影響。
虚血に対するカルシウム結合タンパク質イクオリンの利点を試験するために実験を行った、6% DMSO (ジメチルスルホキシド)を含むカルシウム無しの脳脊髄液にイクオリ(4%)を溶解した。2〜3時間後、ラットをイソフルランで麻酔し、首を切って殺した。温度-調節Vibratomeを用いて、400ミクロン厚の脳スライスを調製した。スライスを以下の組成物(nM):124 NaCl、2.8 KCl、2 MgSO4、2 NaH2PO4、2 CaCl2、26 NaHCO3、0.4 アスコルビン酸ナトリウム、10 D-グルコース、pH 7.4、約30℃)の酸化された(95% O2/5% CO2)人工脳脊髄液に直接置いた。1時間の再生後、スライスを5分間の虚血エピソードに供した。グルコースをフルクトースで置換し、酸素を窒素で置換することによって虚血を誘導した。5分間の虚血チャレンジ後に、スライスを、0.04%トリパンブルーを含む通常の酸化aCSFに再生し、30分間トリパンブルーaCSFでインキュベートした。トリパンブルー排除法(健常細胞はトリパンブルーを排除するが、死細胞又は死にそうな細胞はトリパンブルーを取り込み、ブルーになる)は、細胞培養又は脳スライスにおける細胞死を評価するために通常用いられる。トリパンブルーでのインキュベーション後に、切断を除き、終夜固定液に置いた後、30%スクロースで3時間インキュベーションした。低温保持装置を用いて、400μm厚スライスを約40μmの厚さに切断し、ゼラチン-被覆スライド上に固定し、カバーガラスをかぶせた。図2を参照すると、イクオリン(下パネル)注射ニューロンに対して対照(上パネル)では、トリパンブルー染色(死滅)ニューロンがより多く存在することが明らかである。図3は、虚血後の(死)神経細胞を含むトリパンブルーの平均数の棒グラフを示す。本実験は、海馬への直接のイクオリン注射が、虚血性発作に対する神経保護を与えることを証明する。
【0049】
本明細書に記載の実施例及び実施態様は、例証的な目的のためのみであり、それに照らして様々な修正又は変更が当業者に示唆されることになり、本願の精神及び範囲、及び添付の請求の範囲内に含まれる。本明細書に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的のためにその全体が文献として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、海馬ニューロンによるイクオリンの取り込みを示す蛍光顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、虚血前に投与される場合にイクオリンが神経保護的であることを示すビデオ顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、虚血後の(死滅)ニューロンを含むトリパンブリーの平均数の棒グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) イクオリンの有効量及び(b) 許容される担体を含む、カルシウム不均衡に関連する症状又は疾患を抑制又は緩和するための組成物。
【請求項2】
追加免疫剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗ウイルス剤又はこれらの組合せを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、飲料、経口又は眼科製剤及び注射剤からなる群より選ばれる単位投薬である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
栄養補助食品である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
イクオリンの有効量をそのような治療を必要としている対象に投与することを含む、カルシウム不平衡に関連する症状又は疾患を抑制又は緩和する方法。
【請求項6】
前記症状又は疾患が、神経興奮、筋収縮、膜透過性、細胞分割、ホルモン分泌又は骨石灰化に関連する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記症状又は疾患が、虚血後の細胞死である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記のイクオリンの有効量が栄養補助的である、請求項5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−503581(P2008−503581A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518179(P2007−518179)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/021770
【国際公開番号】WO2006/010004
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(506422227)クインシー バイオサイエンス,リミティド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】