説明

イソキサゾリン化合物を製造する方法

【課題】イソキサゾリン化合物を製造する新規な方法およびその製造中間体を提供する。
【解決手段】式(8)


〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるイソキサゾリン化合物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソキサゾリン化合物を製造する方法およびその製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
下式(8)で示されるイソキサゾリン化合物が、例えば、農薬の有効成分として有用であることが知られている。また、例えば、特許文献1には、下式(8)で示されるイソキサゾリン化合物を合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/032437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、下式(8)で示されるイソキサゾリン化合物を製造する上で必ずしも満足できるものではない。
そこで、本発明の目的は、下式(8)で示されるイソキサゾリン化合物を製造しうる新たな方法およびその製造中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、下式(1)で示されるヒドラジン化合物と、下式(2)で示される酸無水物化合物または式(3)で示される酸塩化物とを反応させて下式(4)で示されるヒドラジド化合物を製造し、
得られた下式(4)で示されるヒドラジド化合物と下式(5)で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物とを、塩基存在下に反応させて下式(6)で示されるアルドール化合物を製造し、
得られた下式(6)で示されるアルドール化合物と下式(2)で示される酸無水物化合物とを反応させたのちに、塩基と反応させて下式(7)で示されるエノン化合物を製造し、
得られた下式(7)で示されるエノン化合物とヒドロキシルアミンとを反応させて下式(8)で示されるイソキサゾリン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1] 式(4)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジド化合物。
[2] 式(6)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物。
[3] (3−アセチル−6−クロロフェニル)ヒドラジン。
[4] 式(1)

〔式中、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジン化合物(以下、ヒドラジン化合物(1)と記す。)と、
式(2)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸無水物化合物(以下、酸無水物化合物(2)と記す。)
または
式(3)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸塩化物(以下、酸塩化物(3)と記す。)
とを反応させることを特徴とする、
式(4)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジド化合物(以下、ヒドラジド化合物(4)と記す。)を製造する方法。
[5] ヒドラジド化合物(4)と、
式(5)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物(以下、トリフルオロアセトフェノン化合物(5)と記す。)とを反応させることを特徴とする、
式(6)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物(以下、アルドール化合物(6)と記す。)を製造する方法。
[6] アルドール化合物(6)と、酸無水物化合物(2)とを反応させたのちに、塩基と反応させることを特徴とする、
式(7)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるエノン化合物(以下、エノン化合物(7)と記す。)を製造する方法。
[7] ヒドラジン化合物(1)と、酸無水物化合物(2)または酸塩化物(3)とを反応させて、ヒドラジド化合物(4)を製造し、
得られたヒドラジド化合物(4)と、トリフルオロアセトフェノン化合物(5)とを、塩基存在下に反応させて、アルドール化合物(6)を製造し、
得られたアルドール化合物(6)と、酸無水物化合物(2)とを反応させたのちに、塩基と反応させて、エノン化合物(7)を製造し、
得られたエノン化合物(6)とヒドロキシルアミンとを反応させて、
式(8)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるイソキサゾリン化合物(以下、イソキサゾリン化合物(8)と記す。)を製造する方法。
[8] 式(7)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるエノン化合物。
[9] エノン化合物(7)と、ヒドロキシルアミンとを反応させることを特徴とする、イソキサゾリン化合物(8)を製造する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、イソキサゾリン化合物(8)を製造するための新たな方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明について詳細に説明する。
1で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が挙げられる。
1で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
1で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
2で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
2で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基」としては、例えばメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
3で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0008】
ヒドラジン化合物(1)からヒドラジド化合物(4)を製造するには、ヒドラジン化合物(1)と、酸無水物化合物(2)または酸塩化物(3)とを反応させることによりヒドラジド化合物(4)を製造する。
【0009】
該反応に用いられる酸無水物化合物(2)または酸塩化物(3)の量は、ヒドラジン化合物(1)1モルに対して、通常1〜10モルである。
【0010】
該反応は溶媒の存在下で行うこともできる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応を溶媒の存在下で行う場合に用いられる溶媒の量は、ヒドラジン化合物(1)1モルに対して100L以下である。
【0011】
該反応は塩基の存在下で行うこともできる。反応に用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)等が挙げられる。
該反応を塩基存在下に行う場合に用いられる塩基の量は、ヒドラジン化合物(1)1モルに対して、通常、10モル以下である。
【0012】
該反応の反応温度は、通常、−20〜100℃または反応に用いられる溶媒の沸点以下の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0013】
かくして、ヒドラジド化合物(4)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0014】
ヒドラジド化合物(4)とトリフルオロアセトフェノン化合物(5)からアルドール化合物(6)を製造するには、ヒドラジド化合物(4)とトリフルオロアセトフェノン化合物(5)とを反応させることにより、アルドール化合物(6)を製造する。
【0015】
該反応に用いられるトリフルオロアセトフェノン化合物(5)の量は、ヒドラジド化合物(4)1モルに対して、通常0.1〜10モルである。
【0016】
該反応は通常塩基の存在下で行われる。
該反応に用いられる塩基としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の有機塩基類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる塩基の量は、ヒドラジド化合物(4)1モルに対して、通常0.1モル〜10モルである。
【0017】
該反応は通常溶媒の存在下で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる溶媒の量は、ヒドラジド化合物(4)1モルに対して100L以下である。
該反応の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる溶媒の沸点以下の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0018】
かくして、アルドール化合物(6)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0019】
アルドール化合物(6)からエノン化合物(7)を製造するには、アルドール化合物(6)と酸無水物化合物(2)とを反応させたのちに、塩基と反応させることにより、エノン化合物(7)を製造する。
【0020】
該反応では、通常、アルドール化合物(6)と酸無水物化合物(2)とを反応させる工程1と、工程1ののち、塩基と反応させる工程2とに分けられる。
【0021】
まず、工程1について説明する。
工程1に用いられる酸無水物化合物(2)の量は、アルドール化合物(6)1モルに対して、通常1〜10モルである。
該工程は通常塩基の存在下で行われる。
該工程に用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の有機塩基類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該工程に用いられる塩基の量は、アルドール化合物(6)1モルに対して、通常0.1〜10モルである。
【0022】
該工程は通常溶媒の存在下で行われる。該工程に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランの等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該工程に用いられる溶媒の量は、アルドール化合物(6)1モルに対して100L以下である。
該工程の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる溶媒の沸点以下の範囲である。
該工程の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0023】
次に、工程2について説明する。
工程2は通常溶媒の存在下で行われる。工程2に用いられる溶媒としては、例えば、メタノールが挙げられる。
【0024】
該工程に用いられる塩基としては、例えばアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
該工程に用いられる塩基の量は、アルドール化合物(6)1モルに対して、通常0.01〜10モルである。
【0025】
該工程は通常溶媒の存在下で行われる。該工程に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール等のアルコール類が挙げられる。
該工程に用いられる溶媒の量は、アルドール化合物(6)1モルに対して100L以下である。
該工程の反応温度は、通常、−20〜100℃または反応に用いられる溶媒の沸点以下の範囲である。
該工程の反応時間は、通常、1分〜100時間の範囲である。
【0026】
かくして、エノン化合物(7)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0027】
エノン化合物(7)からイソキサゾリン化合物(8)を製造するには、エノン化合物(7)とヒドロキシルアミンとを反応させることにより、イソキサゾリン化合物(8)を製造する。
【0028】
該反応は通常塩基の存在下で行われる。
該反応に用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる塩基の量は、エノン化合物(7)1モルに対して、通常0.01〜10モルである。
【0029】
該反応は通常溶媒の存在下で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン等の炭化水素類、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル類、水が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる溶媒の量は、エノン化合物(7)1モルに対して100L以下である。
【0030】
該反応に用いられるヒドロキシルアミンとしては、水溶液、または、ヒドロシキルアミン塩酸塩等の塩の形態のヒドロキシルアミンを用いることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられるヒドロキシルアミンの量は、エノン化合物(7)1モルに対して、通常1〜10モルである。
【0031】
該反応は相関移動触媒の存在下で行うこともできる。反応に用いられる相関移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロライドが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる相関移動触媒の量は、エノン化合物(7)1モルに対して、通常0.001〜1モルである。
該反応の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる溶媒の沸点の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0032】
かくして、イソキサゾリン化合物(8)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0033】
ヒドラジン化合物(1)の一部は市販されており、それ以外の化合物は、XがNHである場合は、例えば、第四版実験化学講座(丸善)20巻p.338に記載の方法により製造し得る。
トリフルオロアセトフェノン化合物(5)の一部は市販されており、それ以外の化合物は、例えば、Canadian Journal of Chemistry 58, 2491 (1980)、または、Angewandte Chemie International Edition 37, 820 (1998)に記載の方法により製造し得る。
【0034】
以下にヒドラジド化合物(4)の具体例を示す。本発明はこれらのみに限定されるものではない。
式(4)

で示されるヒドラジド化合物。
式中のR1およびR3は下記の表1に記載の組み合わせを表す。
【0035】
【表1】

【0036】
以下にアルドール化合物(6)の具体例を示す。
式(6)

で示されるアルドール化合物。
式中のR1、(R2m、およびR3は下記の表2に記載の組み合わせを表す。
【0037】
【表2】

【0038】
以下にエノン化合物(7)の具体例を示す。
式(7)

で示されるエノン化合物。
式中のR1、(R2m、およびR3は下記の表3に記載の組み合わせを表す。
【0039】
【表3】


なお、上記表の(R2mにおいて、例えば「3−Cl,5−Cl」との記載は、(R2mが3位および5位の置換基であり、mが2であり、R2が各々塩素原子であることを意味する。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0041】
実施例1

3−アセチル−6−クロロアニリン(5.0g)および濃塩酸(25ml)の混合物を氷冷下で攪拌し、ここに亜硝酸ナトリウム(2.1g)および水(3ml)の混合溶液を10分間かけて加えた。室温で30分間攪拌後、塩化スズ(II)(11.2g)および濃塩酸(10ml)の混合物を加えた。室温で3時間攪拌後、生じた固体をろ過により集めた。この固体をヘキサンで洗浄し、10gの固体を得た。得られた固体(0.5g)およびメチルtert−ブチルエーテル(5ml)の混合物を攪拌し、アンモニア水(8ml)を加えた。油層を分離し、水層をメチルtert−ブチルエーテル(5ml)で4回抽出した。油層あわせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、(3−アセチル−6−クロロフェニル)ヒドラジン(0.13g,収率48%)を結晶として得た。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 2.60 (3H, s), 3.67 (2H, br s), 5.82 (1H, br s), 7.31−7.32 (2H, m), 7.72 (1H, d).
【0042】
実施例2

(3−アセチル−6−クロロフェニル)ヒドラジン(0.13g)およびクロロホルム(2ml)の混合溶液に、無水酢酸(0.1ml)を加えた。室温で3日間放置した後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:10)に付し、N’−(5−アセチル−2−クロロフェニル)アセトヒドラジド(表1−番号1の化合物、123mg,収率77%)を結晶として得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体の混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 2.13 (3H, s), 2.56 (3H, s), 6.47 (1H, br d), 7.38−7.41 (3H, m), 7.48 (1H, br d).
【0043】
実施例3

N’−(5−アセチル−2−クロロフェニル)アセトヒドラジド(103mg)、α,α,α−トリフルオロ−3,5−ジクロロアセトフェノン(127mg)およびテトラヒドロフラン(2ml)の混合溶液に、ジアザビシクロウンデセン(22mg)を加えた。室温で16時間放置後、反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタノイル]フェニル}アセトヒドラジド(表2−番号1の化合物、97mg,収率45%)を得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体の混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 2.13 (3H, s), 3.63 (1H, d), 3.80 (1H, d), 5.65 (1H, s), 6.54 (1H, br s), 7.23−7.52 (6H, m).
【0044】
実施例4

N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタノイル]フェニル}アセトヒドラジド(13mg)およびクロロホルム(0.5ml)の混合溶液に、室温でN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(19mg)を加え、ついで無水酢酸(10mg)を加えた。室温で15分間放置後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。得られた油層を濃縮した後、メタノール(1ml)で希釈し、ナトリウムメトキシド(28%のメタノール溶液)(10mg)を加えた。1分後に、水を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。油層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)に付し、N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]フェニル}アセトヒドラジド(表3−番号1の化合物、4mg,収率32%)を得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体、または二重結合のジアステレオマーに起因する混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 2.12 (3H, s), 3.47 (1H, s), 6.51 (1H, s), 7.15−7.40 (H, m).
【0045】
実施例5

N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]フェニル}アセトヒドラジド(2mg)、ジアザビシクロウンデセン(30mg)およびトルエン(1ml)の混合溶液を攪拌し、ここに室温でヒドロキシルアミン塩酸塩(10mg)の水溶液(0.2ml)を加えた。室温で16時間放置後、水を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。油層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)に付し、N’−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]フェニル}−アセトヒドラジド(0.7mg,収率31%)を得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体の混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 2.14 (3H, s), 3.64 (1H), 4.03 (1H, d), 7.26−7.52 (6H, m).
【0046】
実施例6

(3−アセチル−6−クロロフェニル)ヒドラジン(0.43g)およびクロロホルム(30ml)、ピリジン(1.7g)の混合溶液を攪拌し、氷冷下でシクロプロパンカルボン酸塩化物(0.58g)を加えた。30分後、水を加え、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)に付し、N’−(5−アセチル−2−クロロフェニル)シクロプロパンカルボヒドラジド(表1−番号16の化合物、123mg,収率56%)を結晶として得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体の混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 0.87 (2H, m), 1.06 (2H, m), 1.54 (1H, m), 2.56 (3H, s), 6.55 (1H, br s), 7.34−7.40 (2H, m), 7.52 (1H, s), 7.59 (1H, br, s).
【0047】
実施例7

N’−(5−アセチル−2−クロロフェニル)シクロプロパンカルボヒドラジド(231mg)、α,α,α−トリフルオロ−3,5−ジクロロアセトフェノン(333mg)およびテトラヒドロフラン(10ml)の混合溶液に、ジアザビシクロウンデセン(14mg)を加えた。室温で16時間放置後、反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタノイル]フェニル}シクロプロパンカルボヒドラジド(表2−番号16の化合物、236mg,収率52%)を得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体の混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 0.89 (2H, m), 1.03 (2H, m), 1.52 (1H, m), 3.63 (1H, d), 3.79 (1H, d), 5.69 (1H, s), 6.55 (1H, s), 7.35−7.51 (5H, m), 7.62 (1H, s).
【0048】
実施例8

N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタノイル]フェニル}シクロプロパンカルボヒドラジド(16mg)およびクロロホルム(2ml)の混合溶液に、室温でN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(100mg)を加え、ついで無水酢酸(60mg)を加えた。室温で16時間放置後、水を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。得られた油層を濃縮した後、メタノール(1ml)で希釈し、ナトリウムメトキシド(28%のメタノール溶液)(200mg)を加えた。3分後に、水を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。油層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)に付し、N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]フェニル}シクロプロパンカルボヒドラジド(表3−番号16の化合物、3.5mg,収率23%)を得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体、または二重結合のジアステレオマーに起因する混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 0.92 (2H, m), 1.06 (2H, m), 1.24 (1H, m), 3.23 (1H, s), 6.53 (1H, s), 7.15−7.48 (7H, m).
【0049】
実施例9

水酸化ナトリウム(44mg)および水(0.5ml)の混合溶液を室温で攪拌し、ここにヒドロキシルアミン塩酸塩(38mg)、N’−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]フェニル}シクロプロパンカルボヒドラジド(3.2mg)およびメチルtert−ブチルエーテル(0.5ml)の混合溶液、並びにテトラブチルアンモニウムブロミド(3mg)を順次加えた。室温で3日間放置後、水を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。油層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)に付し、N’−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]フェニル}−シクロプロパンカルボヒドラジド(1.5mg,収率45%)を得た。
1H−NMRスペクトルは、回転異性体の混合物として観測されたが、ここでは主異性体のピークを記す。
1H−NMR (400MHz, CDCl3) δ 0.92 (2H, m), 1.07 (2H, m), 1.53 (1H, m), 3.65 (1H, d), 4.04 (1H, d), 6.53 (1H, br s), 6.94−7.49 (7H, m).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(4)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジド化合物。
【請求項2】
式(6)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物。
【請求項3】
(3−アセチル−6−クロロフェニル)ヒドラジン。
【請求項4】
式(1)

〔式中、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジン化合物と、
式(2)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸無水物化合物
または
式(3)

〔式中、R1は前記と同じ意味を表す。〕
で示される酸塩化物とを反応させることを特徴とする、
式(4)

〔式中、R1、R3およびXは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるヒドラジド化合物を製造する方法。
【請求項5】
式(4)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジド化合物と、
式(5)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物とを反応させることを特徴とする、
式(6)

〔式中、R1、R2、R3、Xおよびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるアルドール化合物を製造する方法。
【請求項6】
式(6)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物と、
式(2)

〔式中、R1は前記と同じ意味を表す。〕
で示される酸無水物化合物とを反応させたのちに、塩基と反応させることを特徴とする、
式(7)

〔式中、R1、R2、R3、Xおよびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるエノン化合物を製造する方法。
【請求項7】
式(1)

〔式中、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、XはNHまたはNCH3を表す。〕
で示されるヒドラジン化合物と、
式(2)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸無水物化合物
または
式(3)

〔式中、R1は前記と同じ意味を表す。〕
で示される酸塩化物とを反応させて、式(4)

〔式中、R1、R3およびXは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるヒドラジド化合物を製造し、
得られた前記式(4)で示されるヒドラジド化合物と、式(5)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物とを反応させて、式(6)

〔式中、R1、R2、R3、Xおよびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるアルドール化合物を製造し、
得られた前記式(6)で示されるアルドール化合物と、前記式(2)で示される酸無水物化合物とを反応させたのちに、塩基と反応させて、式(7)

〔式中、R1、R2、R3、Xおよびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるエノン化合物を製造し、
得られた前記式(7)で示されるエノン化合物と、ヒドロキシルアミンとを反応させて、式(8)

〔式中、R1、R2、R3、Xおよびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるイソキサゾリン化合物を製造する方法。

【公開番号】特開2013−10739(P2013−10739A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17678(P2012−17678)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】