説明

イソシアヌレート化合物

【課題】エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤として、またシリコーンとの共縮合による変性用の中間体や、無機充填剤と樹脂とのカップリング剤としての使用が期待されるイソシアヌレート化合物を提供する。
【解決手段】イソシアヌレート化合物の例を下記に示す。この化合物は、適量の反応溶媒中で、ジアリルイソシアヌレート化合物、SiH基を有するシラン化合物及びヒドロシリル化触媒を適宜の反応温度および反応時間で反応させることにより、合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なイソシアヌレート化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明に類似するものとして、例えば特許文献1には、化1の化学式で示されるイソシアヌレート化合物が開示されている。また、特許文献2には化2の化学式で示されるイソシアヌレート化合物が開示されている
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−075063号公報
【特許文献2】特開2006−335718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂の改質剤としての用途が期待される、新規なイソシアヌレート化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、化3の化学式(I)で示される新規なイソシアヌレート化合物を合成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
【化3】

【発明の効果】
【0009】
エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤として、またシリコーンとの共縮合による変性用の中間体や、無機充填剤と樹脂とのカップリング剤としての使用が期待され、エポキシ樹脂やシリコン樹脂の耐湿性、接着性、電気的特性、機械的特性等の改善が見込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のイソシアヌレート化合物は、前記の化学式(I)で示されるものであり、例えば、
1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(オクタメチルテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(オクタメチルテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(オクタメチルテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(オクタメチルテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ビス[3−(1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0011】
本発明のイソシアヌレート化合物は、適量の反応溶媒中で、ジアリルイソシアヌレート化合物、SiH基を有するシラン化合物及びヒドロシリル化触媒を適宜の反応温度および反応時間で反応させることにより、合成することができる。
【0012】
前記の反応溶媒としては、SiH基を有するシラン化合物との反応を抑える為、活性プロトンを持たない有機溶剤の使用が好ましい。具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、クメンの如き芳香族系炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロフランの如きエーテル類等を例示することができる。
【0013】
前記の反応温度は、特に制限なく室温でも構わないが、反応時間を短縮する為に反応温度を高めてもよい。
【0014】
前記のSiH基を有するシラン化合物としては、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、オクタメチルテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等を例示することができる。
【0015】
前記のヒドロシリル化触媒としては、例えば、塩化白金酸又はこのアルコール溶液、白金−オレフィン錯体や白金−ビニルシロキサン錯体などの白金錯体、白金黒や白金を担体に担持させたもの等の白金触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムのようなロジウム触媒、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルのようなニッケル触媒、ジコバルトオクタカルボニルのようなコバルト触媒などが挙げられる。
【0016】
以上の条件下で生成した本発明のイソシアヌレート化合物は、通常の後処理によって単離することができる。例えば、反応終了後の反応液を濃縮した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して、所望のイソシアヌレート化合物を得ることができる。
【0017】
本発明のイソシアヌレート化合物は、電子部品の封止材料、注型材料、回路基板の成型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジストインク等に用いられる樹脂の原料としての利用が期待される。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例に示した合成試験によって具体的に説明する。なお、合成試験において使用した主な原料は次のとおりである。
【0019】
[原料]
・1,3−ジアリル−1−(カルボキシメチル)イソシアヌレート:四国化成工業社製
・1,3−ジアリル−1−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート:四国化成工業社製
・1,3−ジアリル−1−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート:四国化成工業社製
・1,3−ジアリル−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート:四国化成工業社製
・白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体:0.1Mポリジメチルシロキサン溶液、ALDRICH社製(以下、単にポリジメチルシロキサン溶液と云う)
・トリエチルシラン:信越化学工業社製
【0020】
〔実施例1〕
<1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレートの合成>
100mLのフラスコにて、1,3−ジアリル−1−(カルボキシメチル)イソシアヌレート4.6gをトルエン10gに溶解し、この溶液にポリジメチルシロキサン溶液0.3ml、トリエチルシラン6.0gを加え70℃で1時間加熱攪拌した。
反応終了後、減圧下に乾固し、1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレートの粗体(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を含む)9.2gを得た。
このものを、シリカゲル130gでカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、トルエン次いでクロロホルム)に付し、無色の粘稠な液状物7.1g(収率82.5%)を得た。
【0021】
得られた液状物のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR (CDCl3) δ:4.69(s,2H), 3.86(t,4H), 1.6-1.7(m,4H),
0.9-1.0(m,18H), 0.4-0.6(m,16H)
また、同液状物のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化4の化学式で示される1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(カルボキシメチル)イソシアヌレートであるものと同定した。
【0022】
【化4】

【0023】
〔実施例2〕
<1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートの合成>
100mLのフラスコにて、1,3−ジアリル−1−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート4.8gをトルエン10gに溶解し、この溶液にポリジメチルシロキサン溶液0.3ml、トリエチルシラン6.0gを加え70℃で1時間加熱攪拌した。
反応終了後、減圧下に乾固し、1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートの粗体(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を含む)9.9gを得た。
このものを、シリカゲル130gでカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、トルエン次いでクロロホルム)に付し、無色の粘稠な液状物8.0g(収率80.0%)を得た。
【0024】
得られた液状物のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR (CDCl3) δ:4.21(t,2H), 3.84(t,4H), 2.74(t,2H),
1.5-1.7(m,4H), 0.9-1.0(m,18H), 0.4-0.6(m,16H)
また、同液状物のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化5の化学式で示される1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートであるものと同定した。
【0025】
【化5】

【0026】
〔実施例3〕
<1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレートの合成>
100mLのフラスコにて、1,3−ジアリル−1−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレート4.3gをトルエン10gに溶解し、この溶液にポリジメチルシロキサン溶液0.3ml、トリエチルシラン5.0gを加え70℃で1時間加熱攪拌した。
反応終了後、減圧下に乾固し、1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレートの粗体(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を含む)8.4gを得た。
このものを、シリカゲル40gでカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、へキサン次いでトルエン)に付し、無色の針状結晶5.2g(収率66.2%)を得た。
【0027】
得られた結晶の融点およびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 99〜103℃
1H-NMR (CDCl3) δ:4.64(s,2H), 3.85(t,4H), 3.78(s,3H),
1.6-1.7(m,4H), 0.9-1.0(m,18H), 0.4-0.6(m,16H)
また、同結晶のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化6の化学式で示される1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌレートであるものと同定した。
【0028】
【化6】

【0029】
〔実施例4〕
<1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレートの合成>
100mLのフラスコにて、1,3−ジアリル−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレート4.5gをトルエン10gに溶解し、この溶液にポリジメチルシロキサン溶液0.3ml、トリエチルシラン5.0gを加え70℃で1時間加熱攪拌した。
反応終了後、減圧下に乾固し、1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレートの粗体(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を含む)9.0gを得た。
このものを、シリカゲル40gでカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、へキサン次いでトルエン)に付し、無色の針状結晶6.8g(収率80.0%)を得た。
【0030】
得られた結晶の融点およびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 43〜47℃
1H-NMR (CDCl3) δ:4.22(t,2H), 3.84(t,4H), 2.77(t,2H),
1.5-1.7(m,4H), 0.9-1.0(m,18H), 0.4-0.6(m,16H)
また、同結晶のIRスペクトルデータは、図4に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化7の化学式で示される1,3−ビス[3−(トリエチルシリル)プロパン−1−イル]−5−(2−シアノエチル)イソシアヌレートであるものと同定した。
【0031】
【化7】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1で得られた液状物のIRスペクトルチャートである。
【図2】実施例2で得られた液状物のIRスペクトルチャートである。
【図3】実施例3で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
【図4】実施例4で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤として、またシリコーンとの共縮合による変性用の中間体や、無機充填剤と樹脂とのカップリング剤としての使用が期待されるイソシアヌレート化合物を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1の化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−153107(P2011−153107A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16796(P2010−16796)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】