説明

イソシアネートを使用せずに製造したポリウレタン樹脂またはポリウレタン−エポキシハイブリッド樹脂をベースとするナノ複合材料

プレートレットの厚さがÅ規模(約1nm)、アスペクト比(長さ/厚さ)が10(nm)より大である、天然または改質ナノクレイ[イオン性フィロケイ酸塩]、好ましくは天然または改質モンモリロナイトと、少なくとも1つのシクロカーボネート基を有するモノマー(1以上)もしくはオリゴマー(1以上)との混合物、またはこれとエポキシ樹脂の混合物を、硬化剤、すなわち第一級および/または第二級アミノ基を有するモノマーもしくはオリゴマーまたはその混合物で架橋させると、速硬性の非イソシアネート系ポリウレタン−およびポリウレタン−エポキシ網状ナノ複合材料ポリマー組成物が得られる。ナノクレイを使用すると、ゲル化時間が短縮され、硬化したポリウレタンおよびポリウレタン/エポキシハイブリッドの接着性が増大し、かつ吸水性が低下する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリウレタン組成物およびポリウレタン/エポキシ組成物ならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
背景技術
生態系に有害な、または有害な疑いのある方法および材料は次第に受け入れられなくなり、生態系にとってより安全な代替策が要求されている。一般にポリウレタンは、2以上のヒドロキシル基を含む有機物質と、2以上のイソシアネート基を含む他の有機物質(モノマー、ダイマー、トリマーおよびオリゴマー)との反応により製造される。そのようなイソシアネートは毒性が高く、かついっそう毒性の高い出発物質ホスゲンから製造される。第2に、ポリウレタンの製造はイソシアネート基と水分の間で望ましくない副反応を生じやすく、これによりポリウレタン素材中に二酸化炭素が発生し、最終材料内に二酸化炭素の気泡が捕捉されてポリウレタンを多孔質にする。一般のポリウレタンは水の存在下で不安定であり、酸やアルカリの水溶液に対する耐薬品性に乏しく、このためそれらの利用が制限される。
【0003】
比較的最近の一連の特許に、一方はシクロカーボネート基またはエポキシ基とシクロカーボネート基の両方をもつオリゴマー、他方はアミンの反応に基づく、ポリウレタン組成物またはポリウレタン−エポキシハイブリッド組成物が開示されている。より具体的には、US−5,340,889に、シクロカーボネート誘導体とアミンの反応から線状非イソシアネートポリウレタンを製造する方法が開示されている。
【0004】
SU−1,754,748は、エポキシ系のフローリング用複合材料に関するものであり、これはオリゴマー状シクロカーボネート改質剤をその改質剤用の単官能性硬化剤(アミノフェノール)と共に含有し、その結果、固定化された非イソシアネート性のオリゴ−ウレタン部分を含むエポキシ系材料が得られる。
【0005】
US−5,175,231およびUS−6495637には、エポキシ樹脂の硬化剤として用いる非イソシアネートポリウレタン結合を含む網状構造体を製造するための多工程法が開示されている。
【0006】
US−4,785,615には、架橋剤により架橋しうるウレタン基を含むポリマー組成物が開示され、これはイソシアネートを用いずにポリアミノ化合物とポリカーボネートを反応させることにより製造され、適宜、この生成物をさらにポリカルボン酸と反応させて、接着剤および塗料、特に陰極電気泳動により沈着しうる水性焼付け塗料配合物および水性硬化性塗料として使用するための一連の生成物を製造する。
【0007】
US−6,120,905には、ハイブリッド非イソシアネート網状ポリウレタンが開示され、これは、平均官能価約2.0〜約5.44をもつ少なくとも1種類のシクロカーボネートオリゴマーであってこれらのシクロカーボネートオリゴマーのうち少なくとも1種類が約4〜約12%w/wの末端エポキシ基をもつものと、1種類のアミンオリゴマーとの架橋により製造される。この特許はまた、強化用繊維(ガラス繊維、カーボン繊維、玄武岩繊維およびその混合物)または強化用粒子、たとえば金属酸化物もしくは金属アルミン酸塩を含有する複合材料中に使用するための、ハイブリッド非イソシアネートポリウレタン網状構造体を製造する方法に関する。
【0008】
EP−1,020,457およびUS−6,407,198は、多官能性ポリシクロカーボネートオリゴマーの合成に関する。これらのポリシクロカーボネートは、末端エポキシ基を含むオリゴシクロカーボネートと第一級芳香族ジアミンの反応により製造され、接着剤、シーラント、複合材料、コーティング剤または合成皮革用のハイブリッド材料の製造に用いられた。接着剤組成物の調製に際して顔料および充填剤(たとえば硫酸バリウム、二酸化チタン、シリカ、アルミナセメントおよび酸化鉄(II)顔料)も添加できると述べられている。
【0009】
EP−1,070,733は、ポリアミノ官能性ヒドロキシウレタンオリゴマーの合成およびそれから製造されるハイブリッドに関する。それには、エポキシ基とシクロカーボネート基の両方を含む組成物を第一級アミン基を含む硬化剤で硬化させることにより複合材料ポリウレタン/エポキシ樹脂を製造することは、エポキシ基とシクロカーボネート基が第一級アミンとの反応に対して競合するので、不可能であると述べられている。したがってそれは、シクロカーボネート環を含むオリゴマーを含有する硬化性組成物とエポキシ環を含むものを共に提唱している。
【0010】
Micheev V.V. et al.(Lakokrasochnye Materialy I Ikh Primenenie, 1985, 6, 27-30)は、オリゴマー状シクロカーボネート樹脂とエポキシ樹脂をポリアミンで同時硬化させると、モノリシック非イソシアネート系ポリウレタンより優れた特性をもつ生成物が得られると報告しているが、それには彼らの研究の比較例が含まれていない。
【0011】
1990年、トヨタ中央研究開発所(日本)の研究者ら[a] Fukushima, Y. et all., J. Inclusion Phenom., 1987, 5, 473, b] Fukushima, Y. et all., Clay Miner., 1988, 23, 27, c] Usuki, A. et all., J. Mater. Res., 1993, 8, 1174, d] Yano K. et all., J. Polym. Sci. Part A: Polymer Chem., 1993, 31, 2493, e] Kojima, Y. et all., J. Polym. Sci. Part A: Polymer Chem., 1993, 31, 983]は、ナイロン−クレイナノ複合材料の機械的特性が向上することを示した。
【0012】
研究者らは、ナノサイズ粒子として4種類のナノクレイ(nanoclay)に注目した:a)ハイドロタルサイト、b)オクタケイ酸塩、c)雲母フッ化物、およびd)モンモリロナイト。最初の2種類は、物理的および価格両方の観点から制限がある。最後の2種類は、商業的ナノ複合材料に用いられている。雲母フッ化物は合成ケイ酸塩であり、モンモリロナイト(MMT)は天然物である。モンモリロナイトの理論式は下記のとおりである:
(Al2−yMg)(Si)O10(OH)nH
イオン性フィロケイ酸塩はシート構造をもつ。それらは厚さ0.7〜1nm、長さおよび幅数百ナノメートル(約100〜1000nm)のオングストローム規模のプレートレット(platelet)を形成する。その結果、個々のシートは200〜1000またはより高いアスペクト比(長さ/厚さ、L/T)をもち、精製後には大部分のプレートレットが200〜400の範囲のアスペクト比をもつ。言い換えると、これらのシートは通常は約200×1nm(L×T)の大きさである。これらのプレートレットは積層して一次粒子を形成し、これらの一次粒子が互いに積層して凝集体(通常は約10〜30μmの大サイズ)を形成する。このケイ酸塩の層は、層間に”中間層”または”ギャラリー(gallery)”と呼ばれるギャップをもつ積層体を形成する。これらの層内で同形置換を行うと(Al3+をMg2+に交換)、負の電荷が発生し、これを中間層内にあるアルカリカチオンまたはアルカリ土類カチオンが補う。そのようなクレイは、それらのサイズが小さいため水素結合などの表面相互作用が大きくなるので、必ずしもポリマーと適合性ではない。したがって、これらのクレイがある種の樹脂内に分散する能力には限界があり、またケイ酸塩クレイは天然状態では親水性であるため当初はクレイと適合性なのは親水性ポリマー(たとえばPVA)のみであった。しかし、中間層内にある無機カチオンを他のカチオンで置換できることが見いだされた。大型のカチオン界面活性剤、たとえばアルキルアンモニウムイオンとカチオン交換すると、層の間隔が大きくなり、充填剤の表面エネルギーが低下する。したがって、これらの改質クレイ(有機クレイ)はポリマーとより適合性であり、ポリマー−層状ケイ酸塩ナノ複合材料を形成する。各社(たとえばSouthern Clays(1212 Church Street, Gonzales, Texas USA 8629)、Sued Chemie, Nanocorなど)が全系列の改質および天然両方のナノクレイであるモンモリロナイトを供給している。モンモリロナイトを別として、ヘクトライトおよびサポナイトは最も一般的に用いられている層状ケイ酸塩である。
【0013】
ナノ複合材料は、樹脂分子とナノサイズ粒子の分散物、多くの場合ほぼ分子ブレンドである。ナノ複合材料は、当技術分野で知られている下記の3方法のいずれかで形成できる:a)溶融ブレンディング、b)溶液型合成、およびc)現場重合。
【0014】
構造的に異なる3つのタイプのナノ複合材料がある:1)挿入型(個々のモノマーおよびポリマーがケイ酸塩層間に挟まれている)、2)剥離型(ケイ酸塩の”いかだ”を含むポリマーの”海”)、および3)末端拘束型(ケイ酸塩の全層または単一層がポリマー鎖の末端に結合している)。
【0015】
ガラス転移温度はポリマー特性が急激に変化する温度であるので、根本的に重要なポリマー特性である。場合により、ポリウレタンポリマーは高いガラス転移温度をもつことが望ましい。
【0016】
ゲル化時間も重要な製造パラメーターであり、ゲル化時間が迅速であればポリマーをより速やかに製造または形成できる。ゲル化時間と硬化時間は明らかに関連があり、両方とも本明細書中で言及されるであろう。さらに、硬化時間が迅速であれば接着剤は速やかに硬化して目的とする接着を形成することができる。
【0017】
発明の開示
本発明は、非イソシアネート系ポリウレタン−およびポリウレタン−エポキシ網状ナノ複合材料ポリマー組成物を調製するための、下記の成分を含む組成物を提供する:
(a)少なくとも1つのシクロカーボネート基を有する重合性有機物質またはその混合物;
(b)プレートレット厚さが25Å(約2.5nm)未満、より好ましくは10Å(約1nm)未満、最も好ましくは4〜8Å(約0.5〜0.8nm)、アスペクト比(長さ/厚さ)が10より大、より好ましくは50より大、最も好ましくは100より大である、天然、または合成、改質もしくは非改質ナノクレイ[イオン性フィロケイ酸塩]、あるいはその混合物、または該ナノクレイもしくはナノクレイ混合物から形成されたナノ複合材料、好ましくは天然または改質モンモリロナイトであるナノクレイ;ならびに
(c)成分(a)の少なくとも1種類の硬化剤、好ましくは第一級および/または第二級アミンあるいはその混合物。
【0018】
本発明組成物は、所望により追加成分(d)として、1以上のエポキシ基を含む化合物をも含有する。
【0019】
成分(a)は、モノマーまたはダイマーまたはオリゴマー、すなわちそれ自体でまたは他の分子と重合してモノマー単位を含む鎖または網状構造を形成しうるいかなる化合物であってもよい。
【0020】
本明細書中で用いる用語”ナノクレイ”は、プレートレット構造をもつ天然、または合成、改質もしくは非改質イオン性フィロケイ酸塩を意味する;それらのプレートレットは前記の組成物中に取り込まれた際に互いに分離することができ、25Å(約2.5nm)未満、より好ましくは10Å(約1nm)未満、最も好ましくは4〜8Å(約0.5〜0.8nm)の厚さ、および10:1より大きなアスペクト比(長さ/厚さ)をもつ。ナノ複合材料は、樹脂分子と前記ナノクレイのブレンドである。改質ナノクレイは、ギャラリー内カチオンのカチオン交換反応を受けた天然ナノクレイである。
【0021】
ナノクレイおよびナノ複合材料の取込みは、後記の考察から明らかなように、プレートレットが分離しなくてもゲル化速度および硬化時間に有益な効果をもち、したがって本発明はプレートレットが分離して組成物中に分散したものに限定されない。しかし、プレートレットが分離して分散することが好ましい。これにより、物理的特性、たとえば吸水性および強度、ならびにゲル化時間の改善などにおいて、有益な改善が得られるからである。ナノクレイを分散させるための好ましい方法は、音波処理または高速剪断混合である。本発明は、前記のタイプ1〜3のナノ複合材料すべてを使用できる。
【0022】
成分(a)は、好ましくは下記の一般式の化合物である:
【0023】
【化1】

【0024】
式中、R、Rは、それぞれ独立して水素、または直鎖、分枝鎖、環式(芳香族/ヘテロ芳香族/脂環式)、飽和または不飽和(たとえばビニル、(メタ)アクリラート部分など)基であり、ヘテロ原子(たとえばケイ素)またはより好ましくは酸素含有基(たとえば末端または連結した追加の1,3−ジオキソラン−2−オン環、エポキシ環、またはエステル、エーテル、カルボキシル基、もしくはヒドロキシ)および/または窒素(たとえば末端または連結したアミノ、イミノ、第三級配位窒素)をも含むことができる。
【0025】
重合性のシクロカーボネートを含む有機物質は、エポキシ基を含む有機物質をシクロカーボネーション反応により二酸化炭素および触媒、たとえば臭化テトラエチルアンモニウムと反応させることにより製造できる。好ましいシクロカーボネートは図6に示したものであり、これらは異なる%のシクロカーボネート基を含むこともできる。ただしシクロカーボネート化合物(a)は、シクロカーボネーションを受けたエポキシ含有化合物から誘導される可能性のあるいかなる分子であってもよい:たとえば後記において考察するエポキシ樹脂成分(d)。実際に、成分(d)は成分(a)を形成するためのエポキシ樹脂の部分シクロカーボネーションから残留する残留エポキシ樹脂であってもよい。
【0026】
シクロカーボネート官能基とエポキシ官能基の両方を備えた樹脂は本発明に有用である;それらは当技術分野で既知であり、たとえばUS−5175231およびEP−1070733に記載されている。そのような混合官能性樹脂は、ポリエポキシ樹脂の不完全シクロカーボネーション、すなわちすべてではなく一部のエポキシド環を二酸化炭素と反応させてシクロカーボネート環を形成することにより形成できる。
【0027】
シクロカーボネート樹脂は当技術分野で広く知られている;たとえば下記を参照:
【0028】
【化2】

【0029】
それらに記載されたシクロカーボネートをいずれも本発明に使用できる。
【0030】
硬化剤(hardner)(反応体(c))は、シクロカーボネート樹脂成分(a)および存在する場合にはエポキシ成分(d)を硬化させるための当技術分野で既知のいかなる化学物質であってもよい。そのような物質は時には硬化剤(curative、curing agent)または活性剤と呼ばれ、シクロカーボネートおよび存在する場合にはエポキシ樹脂の縮合、連鎖延長および/または架橋により形成された熱硬化性ポリマー網状構造に取り込まれる。触媒作用により硬化を促進するために、触媒および/または促進剤も添加することができる。好ましくは、硬化剤は2以上の第一級または第二級アミン基を含むが、第一級アミンが好ましい。たとえば、それらは脂肪族、芳香族、脂環式ジ−またはポリ−アミンであってよい。硬化剤は、ポリアミノ官能性ヒドロキシウレタンオリゴマー、すなわちシクロカーボネートまたはエポキシ基を含む分子とポリアミンの反応から得られるアミノ末端基付き付加物であってもよい。好ましくは、硬化剤中のアミン基は芳香環に直接には結合していない。
【0031】
硬化剤は、アミン末端基付きアミン−エポキシ付加物、すなわちエポキシ環を含む1以上の分子と2以上のアミン基を含む1以上の化合物との付加物であって、したがって化学量論的に過剰のアミン基があるためそれらのアミン基を成分(a)および/または(d)の硬化に利用できるものであってもよい。カルボン酸無水物、カルボン酸、フェノールノボラック樹脂、チオール(メルカプタン)、水、金属塩なども、アミン−エポキシ付加物の製造における追加の反応体として、またはアミンとエポキシが反応した時点でこの付加物をさらに修飾するために、使用できる。
【0032】
成分(a)または(c)を形成するアミンエポキシ付加物は当技術分野で周知である:たとえば下記を参照:
【0033】
【化3】

【0034】
これらをそれぞれ全体として本明細書に援用する。
【0035】
本発明組成物は、1以上のエポキシ基を含む化合物の形の追加成分(d)を含有することもできる。別個のエポキシ成分(d)を供給する代わりに、エポキシ基が成分(a)(シクロカーボネート基を含む有機物質)に含まれてもよい。エポキシ基のための硬化剤も組成物中になくてはならず、このエポキシ硬化剤は好ましくはシクロカーボネート成分(a)の硬化剤、すなわち成分(c)と同一であるか、あるいは他の既知のいずれかのエポキシ系用硬化剤であってもよい。
【0036】
エポキシ樹脂は、平均して分子当たり1以上(好ましくは約2以上)のエポキシ基をもついかなる熱硬化性樹脂であってもよい。エポキシ樹脂は当技術分野で周知であり、たとえばEncyclopedia of Polymer Science and Engineering, 第2版, Volume 6, pp. 322-382 (1986)中の”エポキシ樹脂”と題する章に記載されている。適切なエポキシ樹脂には下記のものが含まれる:多価フェノール、たとえばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコールもしくはレソルシノール、または多価脂肪族アルコール、たとえばグリセリン、ソルビトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパンおよびポリアルキレングリコールと、ハロエポキシド、たとえばエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル;ヒドロキシカルボン酸、たとえばp−ヒドロキシ安息香酸またはβ−ヒドロキシナフトエ酸とエピクロルヒドリンなどとの反応により得られるグリシジルエーテルエステル;ポリカルボン酸、たとえばフタル酸、テトラヒドロフタル酸またはテレフタル酸とエピクロルヒドリンなどとの反応により得られるポリグリシジルエステル;エポキシド化フェノールノボラック樹脂(時にはフェノールノボラック化合物のポリグリシジルエーテルとも呼ばれる);エポキシド化ポリオレフィン;グリシジル化アミノアルコール化合物およびアミノフェノール化合物、ヒダントインジエポキシドならびにウレタン改質エポキシ樹脂。
【0037】
化合物(d)は、エポキシ末端基付きアミン−エポキシ付加物、すなわち少なくとも2つのエポキシ環を含む1以上の分子と少なくとも1つのアミン基を含む1以上の化合物との付加物であり、したがって化学量論的に過剰のエポキシ環があるためそれらを成分(d)の形成に利用できるものであってもよい。カルボン酸無水物、カルボン酸、フェノールノボラック樹脂、チオール(メルカプタン)、水、金属塩なども、アミン−エポキシ付加物の製造における追加の反応体として、またはアミンとエポキシが反応した時点でこの付加物をさらに修飾するために使用できる。
【0038】
適切な市販のエポキシ樹脂の具体例は、下記の商標で販売されているものである:
【0039】
【化4】

【0040】
少数の例を挙げたにすぎない。
【0041】
硬化剤(成分(c))の量は、少なくともシクロカーボネート成分(a)およびエポキシ成分(d)と反応するのに必要な化学量論的量でなければならない。
【0042】
本発明の組成物は、下記のうち1以上を含有することもできる:
・強化用繊維、たとえばガラス繊維、カーボン繊維もしくは玄武岩繊維、およびその混合物;
・補剛剤(toughening agent)、たとえばカルボキシ−またはアミノ−末端基付きブタジエン−ニトリルゴム、ABSおよびMBSコア−シェル粒子またはコポリマー、シリコーンゴム、シリコーンコア−シェル粒子;
・より大きな粒子を含む追加の充填剤、および/または強化剤、および/または顔料、たとえば金属酸化物、金属水和物、金属水酸化物、金属アルミン酸塩、金属炭酸塩/硫酸塩、デンプン、タルク、カオリン、モレキュラーシーブ、ヒュームドシリカ、有機顔料など;
・希釈剤;
・溶剤;
・増粘剤および流れ調整剤、たとえばチキソトロープ剤;ならびに
・接着剤、シーラント、塗料/コーティング剤、コーティング樹脂、ケーブル、付形性成形材料、および最終成形品または複合材料中に慣用される、他の添加剤。
【0043】
本発明の組成物中に所望により存在することができる充填剤(チキソトロープ剤または流れ調整剤として機能しうる物質を含む)には、熱硬化性樹脂の分野で既知の一般的な無機または有機充填剤がいずれも含まれ、これにはたとえば下記のものが含まれる:ガラス繊維以外の繊維(たとえばケイ灰石繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、アラミド繊維)、シリカ(ヒュームドシリカまたは熱分解法シリカを含む;これらはチキソトロープ剤または流れ調整剤としても機能しうる)、炭酸カルシウム(被覆および/または沈降炭酸カルシウムを含む;これらは、特に微粒状である場合、チキソトロープ剤または流れ調整剤としても機能しうる)、アルミナ、クレイ、砂、金属(たとえばアルミニウム粉末)、ガラスマイクロスフェア以外のマイクロスフェア(熱可塑性樹脂、セラミックおよびカーボンマイクロスフェアを含む;これらは中実もしくは中空、膨張したものまたは膨張性であってもよい)、ならびにエポキシ樹脂の分野で既知の他のいずれかの有機または無機充填剤。チキソトロープ剤(1以上)の量は、望ましくは室温では流れ傾向を示さないドウを供給するように調整される。
【0044】
他の任意成分には、下記のものが含まれる:希釈剤(反応性または非反応性)、たとえばグリシジルエーテル、グリシジルエステル、アクリル類、溶剤、および可塑剤、補剛剤および柔軟剤(たとえば脂肪族ジエポキシド、ポリアミノアミド、液体ポリスルフィドポリマー、ゴム:液体ニトリルゴム、たとえばブタジエン−アクリロニトリルコポリマーが含まれ、これらはカルボキシル基、アミン基などで官能化されていてもよい)、接着促進剤(湿潤剤または結合剤としても知られる;たとえばシラン類、チタン酸塩、ジルコン酸塩)、着色剤(たとえば色素および顔料、たとえばカーボンブラック)、安定剤(たとえば酸化防止剤、UV安定剤)など。
【0045】
本発明は、環境に有害なイソシアネートを避け、有益な物理化学的および機械的特性をもつ硬化生成物を提供する;特に、現在ポリウレタン系材料の使用を制限している気泡の吸蔵が避けられる。
【0046】
ナノクレイを含有するポリウレタンおよびポリウレタン−エポキシハイブリッド材料は、ナノクレイを含有しないそれらの対応品より卓越した物理的および機械的特性、特に接着性の改善および吸水性の低下を示す。
【0047】
さらに、改質ナノクレイを非イソシアネート系ポリウレタンに、およびエポキシ含有物質とのハイブリッド反応混合物に導入し、ナノサイズで分散させると、成分(a)および(d)のシクロカーボネート基およびエポキシ基と硬化剤(c)のアミン基との架橋反応に際して有意の触媒効果が得られ、その結果、硬化プロセスが有意に促進され、ゲル化時間が実質的に短縮することが見いだされた。より具体的には、本明細書に述べるタイプの種々の配合物のゲル化時間に基づく研究で、ポリエポキシ反応の促進剤としての有機クレイおよび/または有機クレイとシクロカーボネート樹脂の混合物の効力が明らかになった。たとえば、市販のエポキシド樹脂MY−0510およびトリエチレンペンタミン(TEPA)を含有する一般的な系のゲル化時間は、このエポキシドに高反応性シクロカーボネート樹脂および適切に剥離した有機クレイをも含有させ、得られた混合物をTEPAで架橋させた場合、有意に短縮することが記録された。本発明は、ゲル化時間も短縮させ、かつ場合によりガラス転移温度も上昇させる。
【0048】
さらに、本発明によるナノクレイを取り込ませると、シクロカーボネート基をもつ化合物とエポキシ樹脂を混合し、次いでこの混合物をアミン(1以上)で架橋させることにより、物理化学的および機械的特性が向上した非イソシアネート系ハイブリッドポリウレタン−エポキシ線状または網状材料を製造することができる。EP−A−1,070,733には、エポキシ基とシクロカーボネート基の両方を含む非イソシアネートポリウレタン−エポキシハイブリッド材料を製造することはできないと述べられているが、本発明者らはこの組成物中にナノクレイを用いるとこの問題がないことを見いだした。
【0049】
本発明の他の態様によれば、本発明に関連するポリマー組成物は溶剤も含有することができる。
【0050】
本発明の組成物は、難燃剤の導入によって難燃性にすることができる。
【0051】
本明細書中に記載するこの新たに開発された非イソシアネート系ポリウレタン−およびハイブリッドポリウレタン−エポキシナノ複合材料は、接着剤、シーラント、塗料/コーティング剤、コーティング樹脂、強化剤またはチキソトロープ剤、ケーブルなどの用途、付形性成形材料、および最終成形品または複合材料に特に有用である。
【0052】
層状ケイ酸塩を一般的なポリマー組成物に導入することの主な利点は、前記の触媒効果ならびに硬化速度の上昇およびゲル化時間の短縮のほか、下記のようにまとめることができる:a)それらは価格が低い、b)要求される層状ケイ酸塩の添加濃度は一般に低い(一般に最高10%)、c)無毒性の原料を使用するため取扱いが安全である、d)それらは環境に害を及ぼさない、e)それらは軽量である、f)それらは高い弾性率および強度を備えた材料を提供する、g)それらは水分、溶剤およびガスの透過性を低下させる、h)ケイ酸塩は透明であるのでポリマーの外観に影響を及ぼさない、i)それらは柔軟性を付与する、m)それらは高い難燃性を付与する。
【0053】
実施例
原料
実施例に用いた原料およびそれらの供給業者を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
試験方法
ゲル化時間の測定を36℃で、ディジタル温度制御器(acc.:±0.1℃)を備えたMicheler装置により実施した。
【0056】
ガラス転移温度(T 高温セルを備えた示差走査熱量計(DSC)DSC−2920(TA Instruments)を用いてガラス転移温度(T)を測定した(窒素雰囲気、加熱速度:10℃/分)。若干のガラス転移温度は動的機械分析(DMA)により測定された。
【0057】
動的機械分析(DMA) 捩り直交フィッティング(tortional rectangular fitting)を備えたRheometrics Dynamic Analyser RDA−700(検体:長さ55mm、幅10mm、厚さ2mm)を動的機械分析に用いた(歪み:±1%、周波数1Hz)。
【0058】
重ね剪断測定(25℃)をInstron 4467(クロスヘッド速度10mm/分、支持体:アセトンのみで洗浄したアルミニウム)によりISO 4587に従って実施した。
【0059】
恒温吸水率測定を20℃(acc.:±2℃)および相対湿度73%(acc.:±2%)で実施した。試料を室温(25℃)で1日間、デシケーター内において硬化させ、次いで60℃で2日間、後硬化および乾燥させた。
【0060】
例1:シクロカーボネート樹脂とエポキシ樹脂の混合物の調製
80gのMY−0510および20gのMY−0500CCを、機械的撹拌機、加熱マントルおよびディジタル温度制御器(acc.:±1℃)を備えた丸底フラスコに入れた。混合物を60℃に3時間、高剪断下で(3000〜3500rpm)加熱した。次いで溶液をフラスコから取り出し、ガラス容器に保存した。この溶液を名称:MY−20CC−80EPと表示した。
【0061】
例2〜7:各種ポリマー中のナノクレイ分散物の調製
各種の樹脂または重合性モノマー中へのCloisite 25A(Southern Clays)およびNanofil32(Sued Chemie)の無溶剤分散を、下記の一般法により実施した:
表2に示す樹脂または樹脂混合物100重量部を、前記のいずれかのナノクレイ(10重量部)と混合し、機械的撹拌機、加熱マントルおよびディジタル温度制御器(acc.:±1℃)を備えた丸底フラスコに入れた。混合物を50〜60℃に6時間、高剪断下で(3〜3500rpm)加熱した。次いで分散物をフラスコから取り出し、プラスチック容器に入れた。表2に各分散物の調製(樹脂、ナノクレイ、温度)およびそれらに与えた製品名をまとめる。
【0062】
【表2】

【0063】
*例1を参照
例8〜15:各種ポリマー中のナノクレイ混合物の調製
MY−0510エポキシ樹脂またはMY−20CC−80EP中のCloisite 25A、Cloisite Na(Southern Clays)、Nanofil32(Sued Chemie)、およびモンモリロナイトK10の無溶剤分散物を、下記の一般法により調製した:
表3に詳述するように、100重量部のMY−0510樹脂または樹脂混合物MY−20CC−80EPと、ナノクレイ(10重量部)を、周囲温度で5〜10分間混合した。
【0064】
【表3】

【0065】
非イソシアネート系ポリウレタンおよびポリウレタン/エポキシハイブリッドナノ複合材料配合物の実施例
例16〜18:参考配合物の調製
非イソシアネート系ポリウレタンの一連の代表的な参考配合物(以下、参考ポリウレタンを表わす”RPU”と呼ぶ)(例16)、およびポリウレタン−エポキシハイブリッド(以下、参考ポリウレタンハイブリッド1および2を表わす”RPUH1”および”RPUH2”と呼ぶ)(例17および18)を調製した;これらの配合物はナノクレイを含有しなかった。表4に組成および参考配合物に与えた製品名をまとめる。
【0066】
【表4】

【0067】
方法:
参考配合物RPU、RPUHおよびRPUH2を下記に従って調製した:
第1工程:全成分の添加
第2工程:十分な撹拌
上記の参考組成物を下記に従って硬化させ、種々のハイブリッド材料を得た:
RPU
室温/1日(RPU−1)
室温/4日(RPU−4)(比較FT−IR試験のためだけの試料)
室温/8日(RPU−8)
室温/1日、次いで60℃/4時間(RPU−1−60−4)
RPUH1
室温/1日(RPUH1−1)
室温/4日(RPUH1−4)
室温/1日、次いで60℃/4時間(RPUH1−1−60−4)
室温/1日、次いで160℃/4時間(RPUH1−1−160−4)
RPUH2
室温/1日、次いで120℃/4時間(RPUH2−1−120−4)
硬化した参考配合物RPU、RPUH1およびRPUH2のゲル化時間(Micheler試験)および60日間にわたる恒温吸水率測定値を表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
吸水率は、ポリマーの透湿性(透水性)を判定するための信頼性のある尺度である。吸水率が高いほど水分子へのポリマーマトリックスの親和性がより高く、したがってこのポリマーの透湿性がより高い。
【0070】
下記の表6に、参考組成物の若干の特性をまとめる。
【0071】
【表6】

【0072】
a:DSCにより測定,b:DMAにより測定
例19〜21:
本発明によるナノ粒子含有−非イソシアネート系ポリウレタン−(”NPU”、例19)およびナノ粒子含有ハイブリッドポリウレタン−エポキシナノ複合材料ポリマー組成物(NPUH1およびNPUH2、それぞれ例20および21)を、表7の配合に従って調製した。
【0073】
【表7】

【0074】
方法:
配合物NPU、NPUH1およびNPUH2を下記に従って調製した:
第1工程:全成分の添加
第2工程:十分な撹拌
上記の組成物を下記に従って硬化させ、種々のナノ複合材料を得た:
NPU
室温/1日(NPU−1)
室温/4日(NPU−4)
室温/1日、次いで60℃/4時間(NPU−1−60−4)
NPUH1
室温/1日(NPUH1−1)
室温/4日(NPUH1−4)
室温/1日、次いで60℃/4時間(NPUH1−1−60−4)
室温/1日、次いで160℃/4時間(NPUH1−1−160−4)
NPUH2
室温/1日、次いで120℃/4時間(NPUH2−1−120−4)
硬化した配合物NPU、NPUH1およびNPUH2のゲル化時間(Micheler試験)および60日間にわたる恒温吸水率測定値を表8に示す。
【0075】
【表8】

【0076】
表5と8の比較により、NPU、NPUH1およびNPUH2中にナノクレイが存在することにより、ナノ粒子を含有しない対応する参考試料RPU、RPUH1およびRPUH2と比較してゲル化時間が短縮され、吸水率が低下することが分かる。
【0077】
下記の表9に、本発明のナノ粒子組成物の若干の特性をまとめる。
【0078】
【表9】

【0079】
a:DSCにより測定,b:DMAにより測定
ナノ粒子を含有する硬化樹脂に関する表9の結果を、ナノ粒子を含有しない硬化した参考樹脂(RPU)と比較することにより、ナノ粒子を含有する樹脂の方が一般に良好な物理的特性をもつことが分かる。ナノクレイの存在により、ナノクレイを含有しない参考RPU配合物と比較してゲル化時間が13%短縮され、かつナノクレイの使用により
・ガラス転移温度(T)が上昇し、
・接着性と正比例する重ね剪断強さが改善され、かつ
・変形が少なくなる。
【0080】
シクロカーボネート樹脂およびシクロカーボネート−エポキシ樹脂に対するナノクレイの触媒活性を示す実施例
例22:参考エポキシ配合物(RPE)の調製
5gのMY−0510を、1.33gのTEPAと周囲温度で2分間、手動混合した。この配合物のゲル化時間は106分であった。
【0081】
例23〜34:
本発明による非イソシアネート系ポリウレタン−およびハイブリッドポリウレタン−エポキシナノ複合材料ポリマー組成物を、表10に示す配合に従って調製した。それらの成分を2分間、手動混合した後、すべての配合物のゲル化時間を測定した。比較のために、例20(NPUH1、表7)および22(RPE)のデータも例31およびRPEとして表10に含めた。
【0082】
【表10】

【0083】
表10から分かるように、一般的なシクロカーボネート系ポリウレタン組成物およびシクロカーボネート/エポキシ系組成物に共にナノクレイを導入すると(例23〜27および29〜31)、ナノクレイを含有しない組成物(例RPE、28および32〜34)と比較して実質的にゲル化時間が短縮された(RPEと比較すると83%にも及ぶ)。
【0084】
表10に示したデータから、ナノクレイの導入により硬化を12〜20%促進しうることが明らかである(RPEと例23〜27を比較)。これは、ナノクレイが触媒作用をもつことを示す。
【0085】
T. Lan, P.D. Kaviratna, T.J. Pinnavaia, Chem. Mater. 7, 2144-2150, 1995およびZ.Wang, T.J. Pinnavaia, Chem. Mater. 10, 1820-1826, 1998には、酸性第一級オニウムイオンが母体の層状ケイ酸塩の無機カチオンをイオン交換すると、アミン系硬化剤の存在下でギャラリー内エポキシド重合プロセスを触媒すると報告されている。しかし、表10の結果(例24および25を参照)から、天然の非改質ナノクレイですらエポキシ樹脂とアミンの反応を触媒しうることが分かる。これら2種類の配合物が参考配合物RPEより短かいゲル化時間(12%)を示したからである。市販の各種ナノクレイの触媒活性の相異を除外することはできない。例26の配合物は、例23〜25の配合物と比較して短縮されたゲル化時間を示した;これらの場合、有機クレイを硬化性混合物と単に手動混合した。さらに、例23の配合物は例32〜34の組成物より短かいゲル化時間を示した。
【0086】
エポキシドにシクロカーボネート樹脂を配合すると、RPEと比較してゲル化時間が有意に短縮される。より具体的には、シクロカーボネート樹脂、エポキシ樹脂およびアミン(両樹脂と反応するように計算)の混合物を用いると、ゲル化時間が著しく短縮された(表10においてRPEの結果を例28の結果と対比)。
【0087】
例29〜31に示すようにアミン系硬化剤で硬化させたシクロカーボネートおよびエポキシ樹脂およびナノクレイの混合物のゲル化時間が短かいことについていずれか特定の理論に拘束されるわけではないが、これは下記により生じたと考えられる:シクロカーボネート樹脂およびエポキシ樹脂の混合物をアミン系硬化剤で硬化させると、2つの主架橋反応が起きる可能性がある:a)1,3−ジオキソラン−2−オン環のカルボニルとアミンが反応してポリウレタン基になる(ポリウレタン反応)およびb)エポキシドとアミンが反応してポリエポキシになる(ポリエポキシ反応)。したがって、シクロカーボネート樹脂およびエポキシ樹脂がアミン系硬化剤と共に存在すると、コポリマーまたは相互貫通網状構造(interpenetrated network、IPN)が形成される。ポリウレタン反応は誘導時間が短かいため、エポキシ反応より速やかに進行すると考えられる;両反応とも発熱性であり、反応素材および初期硬化温度に応じて一般にポリウレタン反応はポリエポキシ反応が始動する温度に達するまで進行し、その時点で温度はより速やかに上昇し、これによりさらに硬化速度が増大するであろう。天然または改質ナノクレイは、シクロカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン)環のカルボニルと硬化剤(たとえば脂肪族アミン)の反応だけでなく、エポキシドと硬化剤(アミン)の反応も触媒して、ゲル化時間を短縮させると思われる;これは特に例31に例示され、この場合、ゲル化時間(18分)はRPE(106分)より83%短かかった。
【0088】
一般に、触媒作用が有効になるためにナノ充填剤をナノサイズで分散させる必要はないが、本発明の改善された物理的特性を十分に発揮するためには一般にある程度の分散が好ましい。
【0089】
例35
図1は下記のFT−IRスペクトルである:
1. L−803、
2. RPU−1(L−803+DETA、表4の例16を参照、1日硬化後)および
3. NPU−1(L−803+Cloisite 25A+DETA、表7の例19を参照、1日硬化後)
図2は下記のFT−IRスペクトルである:
1. RPU−4(L−803+DETA、表4の例16を参照、4日硬化後)および
2. NPU−4(L−803+Cloisite 25A+DETA、表7の例19を参照、4日硬化後)。
【0090】
図1および2は、組成物がナノクレイを含有する場合に反応時間が実質的に短縮されることの明らかな証拠である。シクロカーボネート基(1,3−ジオキソラン−2−オン環)のカルボニルに起因する1795cm−1における吸収(L−803樹脂のFT−IRスペクトルを参照)は、参照ポリウレタンRPU−1のものと比較してNPU−1のFT−IRスペクトルにおいてはほぼ3倍低い。さらに周囲温度で4日間の硬化後には、NPU−4は1795cm−1における吸収を示さず(シクロカーボネート基とアミン系架橋剤が完全に反応したことの指標)、これに対しRPU−4はなおある程度の未反応シクロカーボネート基を示す。参照ポリウレタンRPUは周囲温度で7〜8日後に完全に架橋する(1795cm−1における吸収がない)。
【0091】
例36
恒温吸水率はポリマーの透湿性について述べるための尺度である;RPUとNPU;RPUH1とNPUH1;およびRPUH2とNPUH2の恒温吸水率を経時測定し、結果を図3〜5に示す。意外なことにすべての場合、ナノクレイを含有する配合物は実質的に約14〜85% w/w低い吸水率をもち、これは有機クレイに直接起因する;ポリマー網状構造内に有機クレイが導入されると、マトリックス内への水分子の浸透を阻害する内部バリヤーが形成され、マトリックス内に存在する極性原子/基(酸素、ヒドロキシル、ウレタン−NHなど)が水素結合の形成により水分子を吸引する能力は低下すると考えられる。1440時間(60日間)の恒温吸湿の後、NPUH2はわずか0.75%という最低の透水性を示し、RPUは最高を示した(25.90%)。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】L−803、RPU−1およびNPU−1のFT−IRスペクトルである。
【図2】RPU−4およびNPU−4のFT−IRスペクトルである(組成物RPU−4およびNPU−4は本質的にはそれぞれRPU−1およびNPU−1(それらのFT−IRを図1に示す)と同じであるが、異なる硬化時間に対応する(周囲温度で4日間))。
【図3】2種類の組成物(RPUおよびNPU)の恒温吸水率を示すグラフである。
【図4】2種類の組成物を1時間硬化させた後(RPUH1およびNPUH1)の恒温吸水率を示すグラフである。
【図5】図4の2種類の組成物の、ただし2時間硬化させた後(RPUH−2およびNPUH2)の恒温吸水率を示すグラフである。
【図6】エポキシ樹脂MY−0510(モノマーとして示す)ならびにシクロカーボネート樹脂MY−0500CC(モノマーとして示す)およびL−803の化学構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンポリマー組成物を調製するための、下記のものを含む組成物:
(a)少なくとも1つのシクロカーボネート基を有する重合性有機物質またはその混合物;
(b)プレートレット厚さが25Å(約2.5nm)未満、より好ましくは10Å(約1nm)未満、最も好ましくは4〜8Å(約0.5〜0.8nm)、アスペクト比(長さ/厚さ)が10より大、より好ましくは50より大、最も好ましくは100より大である、天然、または合成、改質もしくは非改質ナノクレイ[イオン性フィロケイ酸塩]、あるいはその混合物、または該ナノクレイから形成されたナノ複合材料、好ましくは天然または改質モンモリロナイトであるナノクレイ;ならびに
(c)成分(a)の少なくとも1種類の硬化剤、好ましくは第一級および/または第二級アミンあるいはその混合物。
【請求項2】
さらに、少なくとも1つのエポキシ基を有する少なくとも1種類の重合性有機物質(成分(d))およびその硬化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(a)が一般式Iの化合物:
【化1】

[式中、R、Rは、それぞれ独立して水素、または直鎖、分枝鎖、環式(芳香族/ヘテロ芳香族/脂環式)、飽和または不飽和(たとえばビニル、(メタ)アクリラート部分など)基であり、ヘテロ原子(たとえばケイ素)またはより好ましくは酸素含有基(たとえば末端または連結した追加の1,3−ジオキソラン−2−オン環、エポキシ環、またはエステル、エーテル、カルボキシル基、もしくはヒドロキシ)および/または窒素(たとえば末端または連結したアミノ、イミノ、第三級配位窒素)をも含むことができる]
である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(b)が、組成物の全重量を基準として0.1〜95%、好ましくは1〜40%、より好ましくは2〜30%、たとえば4〜20% w/wの量で存在する、請求項1、2または4に記載の組成物。
【請求項5】
ナノクレイが、10より大、より好ましくは50より大、最も好ましくは100より大のアスペクト比(長さ/厚さ)を有するか、または該ナノクレイを含むナノ複合材料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ナノクレイのプレートレットの厚さが10Å(約1nm)未満、最も好ましくは5〜8Å(約0.5〜0.8nm)であるか、または該ナノクレイを含むナノ複合材料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ナノクレイが、イオン性の天然、合成もしくは改質のフィロケイ酸塩、好ましくは天然もしくは改質のベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイトもしくは合成雲母フッ化物、または該ナノクレイを含むナノ複合材料である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ナノクレイが、天然もしくは改質のモンモリロナイト、または該ナノクレイを含むナノ複合材料である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに、強化用繊維、たとえばガラス、カーボン、玄武岩、繊維および/または他の補剛剤、ならびにその混合物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、充填剤および/または顔料、たとえば金属酸化物、金属水和物、金属水酸化物、金属アルミン酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属ケイ酸塩、各種デンプン、タルク、カオリン、モレキュラーシーブ、ヒュームドシリカ、有機顔料、ホウ酸/スズ酸/モリブデン酸−亜鉛またはホウ酸/スズ酸/モリブデン酸−カルシウム、モリブデン酸アンモニウム、水酸化カルシウム、三水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、メタケイ酸ナトリウム5水和物、四ホウ酸カリウム4水和物、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化チタンを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
さらに、乾燥剤(たとえばトリレンジイソシアネート)、安定剤および/または表面張力調節剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
さらに、溶剤または溶剤混合物を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、希釈剤または希釈剤混合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
接着剤、シーラント、塗料/コーティング剤、コーティング樹脂、強化剤またはチキソトロープ剤、ケーブルの製造における、付形性(shapable)成形材料、および最終成形品または複合材料における、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を硬化させることを含む、ポリウレタン系ポリマーの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−501886(P2007−501886A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523018(P2006−523018)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051796
【国際公開番号】WO2005/016993
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】