説明

イソシアネート基含有反応生成物、それを含む揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物および揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材

【課題】建物の下地などアルカリ性物質を発生する組成物の上に適用される合成樹脂層、特に塩化ビニル系樹脂層に含まれている酸エステル系可塑剤の加水分解により生成するアルコール類、特にフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)可塑剤の加水分解により生成する2−エチルヘキサノールを抑制することができるイソシアネート基含有反応生成物、それを含む揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物および揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材の提供。
【解決手段】(i)イソシアネート基(−N=C=O基)含有化合物と、(ii)複数の水酸基を含有する化合物、との反応生成物からなり、該反応生成物はイソシアネート基を含有していることを特徴とするイソシアネート基含有反応生成物、それを含む揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物および揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステルおよびリン酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物などの合成樹脂組成物が、セメントなどのアルカリ成分含有層などのアルカリ成分と接触する部分で使用されている場合に発生する臭気および/またはシックハウス症候群などの原因物質である2−エチルヘキサノールなどのアルコールが生成するのを抑制することのできるイソシアネート基含有反応生成物、それを含む揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物および揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製床材とくに塩化ビニル系樹脂製床材には、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤および/またはリン酸エステル系可塑剤が大量に用いられているが、このフタル酸エステル系可塑剤などが下地湿気あるいはそれによるコンクリート中からのアルカリ性物質などの影響により臭気発生の原因になっていることはよく知られている。
また、例えば、2002年4月に発行された日本衛生学雑誌第57巻第1号第290ページ(非特許文献1)に開示されているように、建材中のフタル酸エステル系可塑剤に起因する2−エチルヘキサノールがシックハウス症侯群の原因となっていることが報告されている。
前記フタル酸エステル系可塑剤例えばフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)と下地に含まれているアルカリとの反応により2−エチルヘキサノールが発生する反応は、下記に示すとおりである。
【化1】

【0003】
その対応策の1つとしてフタル酸エステル系可塑剤の使用を回避することが考えられ、その1つとして塩素化パラフィンの使用が提案されているが、どうしても充分な可塑化効果が得られないという問題点がある。
【0004】
本出願人は、特許文献1において、2−エチルヘキサノールの発生を抑制できる合成樹脂組成物および合成樹脂系床材を提案した。
この発明は、
(A)イソシアネート基と反応性を有する基をもつ不飽和脂肪酸モノグリセリド、イソシアネート基と反応性を有する基をもつ不飽和脂肪酸ジグリセリドおよびイソシアネート基と反応性を有する基をもつ不飽和脂肪酸トリグリセリドよりなる群から選ばれた不飽和脂肪酸グリセリドに、ジイソシアネートおよびトリイソシアネートよりなる群から選ばれたイソシアネート化合物を反応させて得られた、未反応のイソシアネート基含有不飽和脂肪酸グリセリドのイソシアネート変性体と
(B)(イ)フタル酸エステル系可塑剤
(ロ)トリメリット酸エステル系可塑剤
(ハ)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
(ニ)リン酸エステル系可塑剤
よりなる群から選ばれた少なくとも1種の可塑剤
とを含有することを特徴とする合成樹脂組成物よりなる合成樹脂製床材に関するものであるが、前記(A)成分である未反応のイソシアネート基含有不飽和脂肪酸グリセリドのイソシアネート変性体が、下記の反応式のように2−エチルヘキサノールなどのアルコール成分と反応してアルコール成分をとり込むことにより、臭気の発生を抑制するものである。
【化2】

本発明は、この技術をさらに発展させたものである。
【0005】
【非特許文献1】日本衛生学雑誌第57巻第1号第290ページ
【特許文献1】特願2005−314332号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、建物の下地などアルカリ性物質を発生する組成物の上に適用される合成樹脂層とくに塩化ビニル系樹脂層(例えば床材や壁材)に含まれているフタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤などの酸エステル系可塑剤の加水分解により生成するアルコール類、とくにフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)可塑剤の加水分解により生成する2−エチルヘキサノールを抑制することができるイソシアネート基含有反応生成物、それを含む揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物および揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、
(i)イソシアネート基(−N=C=O基)含有化合物と
(ii)複数の水酸基を含有する化合物
との反応生成物からなり、該反応生成物は(未反応の)イソシアネート基を含有していることを特徴とするイソシアネート基含有反応生成物に関する。
本発明の第2は、前記複数の水酸基を含有する化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリマーポリオールおよびヒマシ油よりなる群から選ばれたものである請求項1記載のイソシアネート基含有反応生成物に関する。
本発明の第3は、溶剤を添加してなる請求項1または2記載のイソシアネート基含有反応生成物に関する。
本発明の第4は、
(I)接着剤組成物、下地補修用組成物およびコーティング用組成物よりなる群から選ば
れた建築組成物に、
(II)請求項1または2記載のイソシアネート基含有反応生成物
を配合してなる揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物に関する。
本発明の第5は、
(1)(イ)フタル酸エステル系可塑剤
(ロ)トリメリット酸エステル系可塑剤
(ハ)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
(ニ)リン酸エステル系可塑剤
よりなる群から選ばれた少なくとも1種の可塑剤を含有する合成樹脂組成物より
なる床材に、
(2)請求項1または2記載のイソシアネート基含有反応生成物
を配合してなる揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材に関する。
なお、請求項4の発明における(I)に対する(II)の添加量は、0.5〜20重量%好ましくは1〜10重量%であり、請求項5の発明における(1)に対する(2)の添加量は、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%である。
【0008】
本発明に用いる(i)のイソシアネート基(−N=C=O基)含有化合物としては、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、その分子中の1部にイソシアネート基を有する高分子化合物などを挙げることができる。また1つの化合物当りのイソシアネート基の数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。以下に具体例を示と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの炭素数6〜20の脂肪族ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート(TDI)、水素添加したTDI(メチルシクロヘキサンのジイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、m−キシリレンジイソシアネート(MXDI)、メチレンビス(1,4−フェニレン)ジイソシアネート(MDI)、ジメリールジイソシアネート(DDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、フェニルイソシアネート、クロルフェニルイソシアネート、ジクロルフェニルイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネートチオホスフェート)、N,N′(4,4′−ジメチル−3,3′−ジフェニルジイソシアネート)ウレジオン、4,4′,4″−トリメチル−3,3′,3″−トリイソシアネート−2,4,6−トリフェニルシアヌレート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどの化合物およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート(P.A.P.I:昭和44年6月30日、日刊興行新聞社発行、岩田敬治著、「ポリウレタン樹脂」45〜51頁参照)、イソシアネート再生体(上記刊行物51〜52頁参照)あるいは前述のようなイソシアネート化合物とポリオール、ポリカルボン酸、ポリアミンなどのイソシアネート基と反応性の基をもつ化合物との反応生成物であって、末端に未反応のイソシアネート基をもつものなどを挙げることができる。
【0009】
前記(ii)の複数の水酸基(COOH基の形でもよい)を含有する化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリマーポリオール、ヒマシ油などを挙げることができる。
【0010】
ポリエステルポリオールとしては、末端が水酸基のヒドロキシルポリエステル、末端がカルボキシル基のカルボキシルポリエステルなどを挙げることができる。
このものは、通常ポリウレタン製造用原料として周知のものであり、例えば昭和44年6月30日 日刊工業新聞社発行 岩田敬治著 プラスチック材料講座2「ポリウレタン樹脂」第56〜61頁記載のものを挙げることができる。
【0011】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシブチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどのジオール、ポリ(オキシプロピレン)トリオール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)トリオール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)トリオールなどのトリオール、その他、ソルビトール、ペンタエリスリトール、シュクローズ、スターチ、リン酸などの無機酸を開始剤としたポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)ポリオールなどを挙げることができる(詳しくは、前記「ポリウレタン樹脂」第61〜69頁参照)。
また、ポリマーポリオールは、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリルから選ばれた少なくとも1種のモノマーを重合または共重合して得られたポリマーの両端に水酸基を持たせたものである。
【0012】
本発明における(i)のイソシアネート基含有化合物と(ii)の複数の水酸基を含有する化合物との使用割合は、NCO基の数/OHの数の比が1.1〜2.0であることが好ましく、とくに1.1〜1.5であることが望ましい。
なお、本発明においては、前記(i)と(ii)の反応が終了した後、このままでは粘度が高すぎるので、前記反応に用いたイソシアネート基含有化合物を加え、遊離のNCO含有率が15〜17%になるように調製することが好ましい。
【0013】
本発明の請求項1または2にかかるイソシアネート基含有反応生成物は、合成樹脂系床材組成物、合成樹脂系接着剤組成物、合成樹脂系下地用組成物、合成樹脂系コーティング用組成物中にブレンドしてもよいし、これらの組成物と隣接する状態で適用してもよい。
【0014】
合成樹脂系組成物に可塑剤として用いられているフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステルとしては、下記のものを挙げることができる。
フタル酸エステルとしては、フタル酸ジイソヘプチルエステル(DHP)、フタル酸ジn−デシルエステル(DnDP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジイソオクチルエステル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル(DOA)、アジピン酸ジ(イソノニル)エステル(DINA)などを挙げることができる。
トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)エステル、トリメリット酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、トリメリット酸トリイソノニルエステル、トリメリット酸トリイソデシルエステルなどを挙げることができる。
脂肪族二塩基酸エステルとしては、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼラエート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(2−エチルヘキシル)イソセバケートなどを挙げることができる。
リン酸エステルとしては、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリイソオクチルホスフェートなどの脂肪族エステルを挙げることができる。
【0015】
本発明において建築組成物の中心成分である合成樹脂としては、前記(ii)の成分が配合されたものであれば、いずれの合成樹脂であってもよい。もっとも代表的な樹脂としては、塩化ビニル系樹脂であり、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体などが代表的なものである。
【0016】
請求項3の溶剤としてはメタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、ベンゼンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、塩化メチレンなどの溶剤が例示できる。
【0017】
本発明における合成樹脂系床材組成物とは、塩化ビニル樹脂で代表される合成樹脂系のシート状床材やタイルなどを形成するための組成物であり、合成樹脂系接着剤組成物とは、合成樹脂シート、床材、壁紙などを貼り付けるために用いるものであり、例えば、SBR等からなるゴム系ラテックス型接着剤、酢酸ビニル樹脂系溶剤型接着剤、エポキシ樹脂系反応硬化型接着剤、ウレタン樹脂系溶剤型接着剤、ゴム系溶剤型接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン型接着剤、などがある。合成樹脂系下地補修用組成物は、合成樹脂系の下地補修材を形成するためのものであり、合成樹脂系コーティング用組成物は、コーティング材を形成するためのものである。このコーティング材は前記の合成樹脂組成物からなる床材の表面にコーティングして使用されるもので、このコーティング材に請求項1から3の反応生成物を含有させておくことにより、床材からの揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑制できる。この種のコーティング材としてはアクリル樹脂系のコーティング材、ウレタン樹脂系のコーティング材、アクリル−ウレタン共重合樹脂系コーティング材が例示できる。
【0018】
本発明の下地補修材とは、塩化ビニル系樹脂組成物が適用される下地の仕上げのために用いられる表面塗工材や下地補修のための下地に適用される下地補修材を意味する。いいかえれば、前記下地補修材とは新築の際の下地の表面に塗布する表面塗工材や下地に亀裂が入ったときなどに用いる下地補修材を指すものであり、下地の平滑性、水平性、補強、粉止め、クラック等の補修、床材用や壁材用の接着材使用時の接着性向上のために用いられるものである。
【0019】
これらの下地補修材としては、セメント系のもの(石膏系、セラミック系のものを含む)、樹脂系のもの、アスファルト系のものあるいはこれらの併用系のものなどを挙げることができる。
具体例としては、下記の1〜8を挙げることができる。
1.ポリマーセメントモルタル(例、株式会社タジマ商品名:フラッター)
モルタルにラテックスや樹脂エマルジョンを加えて混練したもの。本件の試料であるフラッターはポリマーセメントモルタルに分類される。基本的な配合表を以下に示す。
【表1】

2.セルフレベリング材(SL材)
セルフレベリング材自体の流動性によって表面が自然に水平になる性質を持つもの。セメント系、石膏系、セラミック系のものである。
3.樹脂モルタル
セメントの代りにエポキシ樹脂等の樹脂と砂を1:5〜6の割合で混練したもの。硬化が早く強度が大きい。
4.ポリマーセメントスラリー(例、株式会社タジマ商品名:フラッターQ、フラッターLC)
セメントに微細骨材、水、ラテックスや樹脂エマルジョンを加えて混連し流動性を高めたもの。おもに薄塗り補修に使用される。
5.エポキシ系グラウト剤
コンクリートに発生したクラックや間隙の補修に使用するグリース状のエポキシ樹脂。
6.弾性シーリング材
クラックの成長抑制用の充填材。ウレタンやシリコン等が使用される。
7.荷重床プライマー〔例、株式会社タジマの製品、荷重床プライマー・A液(主剤:エポキシ樹脂)と荷重床プライマー・B液(硬化剤:アミン化合物)の組合せ、同荷重床ハードナー・A液(主剤)と荷重床ハードナー・B液(硬化剤)の組合せ、荷重床パテ・A液(主剤)と荷重床パテ・B液(硬化剤)の組合せ〕
床材施工の際、下地の表面強化を要する場合に使用するエポキシ系の補強剤。有機溶剤を多く含むため、コンクリートに浸透しやすい。
8.樹脂系エマルジョン(例、株式会社タジマ商品名:フラッタープライマー:酢酸ビニル/マレイン酸共重合樹脂エマルジョン)
下地表面が粉っぽい場合に、ラテックスやエマルジョン樹脂を水で薄めたプライマーを塗布することにより、粉止め処理を行うことができる。浸透性があまりなく高歩行箇所では剥離することがあるので、軽歩行箇所に使用が限られる。
本発明の組成物をコンクリート系下地に充てん、塗布または含浸させ、該組成物を硬化または乾燥させたのち、PVC系の床材や壁材などの仕上材を接着剤を用いるか置敷にて施工する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の合成樹脂組成物、たとえば合成樹脂系床材や下地補修用組成物は、その中に含まれているフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステルなどがコンクリート中のアルカリ成分と反応して2−エチルヘキサノールなどのアルコールを生成しても、本発明の請求項1にかかるイソシアネート基含有反応生成物と反応し、実質的に2−エチルヘキサノールなどのアルコールが大気中に漏れ出ることはほとんどないため、顕著な臭気抑制効果をあげることができる。
したがって、本発明の組成物はDOPなどを含有している可能性が高い合成樹脂製とくに塩化ビニル系樹脂製の床材や壁材などの組成物中に、あるいはそれらと接触する下地の表面層として適用することにより、所期の効果を発揮することができる。すなわち、請求項1〜3の反応生成物は、直接コンクリート下地に塗布して使用でき、請求項4の組成物についても通常の使用方法で使用できる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
下記式
【化3】

で示されるヒマシ油55重量%とメチレンビス(1,4−フェニレン)ジイソシアネート(MDI)45重量%とを反応させ、末端に未反応のイソシアネート基をもつポリイソシアネートを得た。
【0023】
実施例2
ポリプロピレングリコール 55重量%
2,4−トリレンジイソシアネート(TDI) 45重量%
とを反応させ、末端に未反応のイソシアネート基をもつポリイソシアネートを得た。
【0024】
実施例3
ポリブタジエンの両末端に水酸基を有するポリマー 70重量%
2,4−トリレンジイソシアネート(TDI) 30重量%
とを反応させ、末端に未反応のイソシアネート基をもつポリイソシアネートを得た。
【0025】
実施例4
ブタジエン/アクリル酸共重合体 80重量%
ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI) 20重量%
とを反応させ、末端に未反応のイソシアネート基をもつポリイソシアネートを得た。
【0026】
実施例5
下記組成をもつ「可塑剤としてフタル酸エステルを用いた床材シート」を作った。
PVC 30重量%
DOP 12重量%
炭酸カルシウム 56.5重量%
Ca/Zn系安定剤 0.5重量%
ステアリン酸 0.5重量%
実施例1の反応生成物 0.5重量%
上記組成のシートをコンクリート下地上に形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0027】
実施例6
下記組成をもつ「可塑剤としてトリメリット酸エステルを用いた床材下層シート」を作った。
PVC 30重量%
TOTM* 12重量%
炭酸カルシウム 56.5重量%
Ca/Zn系安定剤 0.5重量%
ステアリン酸 0.5重量%
実施例2の反応生成物 0.5重量%
*:2−エチルヘキサノールを原料としたトリメリット酸エステル
上記組成のシートをコンクリート下地上に形成し、その上に塩化ビニル樹脂系床材を形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0028】
実施例7
下記組成をもつ「可塑剤としてアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルを用いた捨張りシート」を作った。
PVC 30重量%
DOA 12重量%
炭酸カルシウム 56.5重量%
Ca/Zn系安定剤 0.5重量%
ステアリン酸 0.5重量%
実施例3の反応生成物 0.5重量%
この捨張りシートをコンクリート下地上に適用し、その上に塩化ビニル系樹脂床材を形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0029】
実施例8
下記組成をもつ「表面塗工剤」を得た。
メチルシクロヘキサン 90重量%
実施例1の反応生成物 10重量%
この表面塗工剤をコンクリート下地上に適用し、その上に塩化ビニル樹脂系床材を形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0030】
実施例9
下記組成をもつ「表面塗工剤」を得た。
塩化メチレン 90重量%
実施例3の反応生成物 10重量%
この表面塗工剤をコンクリート下地上に適用し、その上に塩化ビニル樹脂系床材を形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0031】
実施例10
下地補修剤として、下記組成のポリマーセメントモルタルを作った。
セメント 40重量%
合成樹脂エマルジョン 10重量%
充填剤 27重量%
減水剤、消泡剤 5重量%
水 15重量%
実施例1の反応生成物 3重量%
このポリマーセメントモルタルをコンクリート下地上に適用し、その上に塩化ビニル樹脂系床材を形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0032】
実施例11
下地補修剤として、下記組成の樹脂モルタルを作った。
エポキシ樹脂 15重量%
骨剤 82重量%
実施例2の反応生成物 3重量%
この樹脂モルタルをコンクリート下地上に適用し、その上に塩化ビニル樹脂系床材を形成した。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。
【0033】
実施例12
下記組成の紫外線硬化型床用塗料を作った。
UV塗料用ウレタンアクリレート樹脂(無黄変タイプ) 80重量%
トリメチルプロパントリアクリレート 架橋剤 5重量%
ヘキサンジオールジアクリレート 架橋剤 5重量%
シリコーンオイル 1重量%
ベンゾフェノン 増感剤 3重量%
イルガキュアー651(チバガイギー) 開始剤 3重量%
実施例2の反応生成物 3重量%
この塗料を塩化ビニル樹脂系床材表面にコーティングした。その結果、満足すべき悪臭抑制効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)イソシアネート基(−N=C=O基)含有化合物と
(ii)複数の水酸基を含有する化合物
との反応生成物からなり、該反応生成物はイソシアネート基を含有していることを特徴とするイソシアネート基含有反応生成物。
【請求項2】
前記複数の水酸基を含有する化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリマーポリオールおよびヒマシ油よりなる群から選ばれたものである請求項1記載のイソシアネート基含有反応生成物。
【請求項3】
溶剤を添加してなる請求項1または2記載のイソシアネート基含有反応生成物。
【請求項4】
(I)接着剤組成物、下地補修用組成物およびコーティング用組成物よりなる群から選ば
れた建築組成物に、
(II)請求項1または2記載のイソシアネート基含有反応生成物
を配合してなる揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用建築組成物。
【請求項5】
(1)(イ)フタル酸エステル系可塑剤
(ロ)トリメリット酸エステル系可塑剤
(ハ)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
(ニ)リン酸エステル系可塑剤
よりなる群から選ばれた少なくとも1種の可塑剤を含有する合成樹脂組成物よりな
る床材に、
(2)請求項1または2記載のイソシアネート基含有反応生成物
を配合してなる揮発性有機化合物(VOC)発生抑制用床材。

【公開番号】特開2008−179700(P2008−179700A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14209(P2007−14209)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000133076)株式会社タジマ (34)
【Fターム(参考)】