説明

イソソルビドの苦味が軽減された経口製剤及びその製造方法

【課題】強い苦味を有するイソソルビドであっても少量の甘味剤で苦味を有効に低減できる経口製剤、その製造方法並びに苦味軽減方法を提供する。
【解決手段】経口製剤は、イソソルビドに対して、第1の甘味剤(アスパルテーム)と、第2の甘味剤(アセスルファム又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビアなど)と、酸味剤(乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸など)とを含み、第1の甘味剤1重量部に対する第2の甘味剤の割合は2〜20重量部である。酸味剤の割合は、甘味剤の総量1重量部に対して0.1〜10重量部である。経口製剤は、鹹味を有する甘味増強剤(塩化ナトリウムなど)、旨み成分及び/又は香料を含んでいてもよい。経口製剤の形態は、液剤、ゼリー剤、グミ剤などであってもよく、そのpHは2〜5.5の範囲であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分であるイソソルビドの苦味が軽減された経口製剤、苦味軽減剤、その製造方法、並びに苦味軽減方法(又は矯味方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性成分や薬理活性成分には、経口服用において苦味を呈する化合物が多い。このような活性成分の苦味を軽減又は矯味するため、アスパルテームなどの甘味剤を含む種々の組成物が提案されている。特開2000−290199号公報(特許文献1)には、不快な味を有する医薬有効成分(アセトアミノフェンなど)、甘味度150以上の2種以上の高甘味剤(ステビア、アスパルテーム、サッカリン又はその塩など)及び酸味剤(クエン酸、リンゴ酸など)を含有する経口用医薬組成物が開示されている。この文献には、医薬有効成分1重量部に対して、高甘味剤を0.005〜4重量部、酸味剤を0.005〜2重量部の割合で含むこと、医薬組成物が錠剤などの固形製剤、ドライシロップ剤であることも記載されている。特開2001−294524号公報(特許文献2)には、アスパルテームと酸味剤とを含む顆粒及びアセトアミノフェンを含む顆粒を含む内服固形製剤が開示され、アセトアミノフェン1重量部に対してアスパルテームを0.001〜5重量部、酸味剤を0.005〜2重量部の割合で含むことも記載されている。特開2004−161700号公報(特許文献3)には、システイン類と、酸味剤及び甘味剤とを含み、システイン類の苦味及び臭気が軽減された組成物が開示され、酸味剤として、アスコルビン酸などが記載され、甘味剤として、アスパルテーム、サッカリン、ステビアなどが記載されている。この文献には、システイン1重量部に対してアスパルテーム0.03重量部又は1重量部を含む例が記載されている。
【0003】
これらの製剤では、活性成分の苦味を軽減でき、服用性を向上できる。しかし、これらの製剤では比較的多くの甘味剤(特にアスパルテーム)を必要とするとともに、少量の甘味剤及び酸味剤で活性成分の苦味を有効に軽減することができない。しかも、苦味が極端に強い成分、例えば、イソソルビドなどの苦味を低減することは困難である。さらに、時間の経過とともに製剤が着色し、安定性が損なわれる。
【0004】
特開2003−171314号公報(特許文献4)には、有機酸及び有機酸のアルカリ金属塩の少なくともいずれかを0.5〜35mg/mlと、苦味を有する生理活性成分と、甘味剤と、フルーツ系香料とを含有し、pHが3.5〜6である内服液剤組成物が開示され、甘味剤がアスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウムなどを含み、酸味剤がクエン酸、リンゴ酸などを含むことが記載されている。この文献の実施例には、生理活性成分に対して甘味剤と酸味剤とを多量に含む液剤が記載され、生理活性成分の総量1重量部に対してアスパルテーム0.08〜0.13重量部、生理活性成分の総量1重量部に対してサッカリン0.11重量部を含む経口液剤も記載されている。
【0005】
特表2002−512953号公報(特許文献5)には、ピグアナイド系薬物、有機酸及び甘味剤を含有する内服製剤が開示され、甘味剤として、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビアが記載されている。また、前記内服製剤が、液剤、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤などであることも記載されている。この文献には、薬物1重量部に対して有機酸0.01〜50重量部及び甘味剤0.001〜10重量部を用いることも記載されている。
【0006】
特開2004−67516号公報(特許文献6)には、アセトアミノフェン、デキストロメトルファン及びクロルフェニラミンから選択された少なくとも一種の化合物と、グリシン及びアルギニンと、甘味剤と、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸などの酸とを含有する経口用液剤が開示され、甘味剤として、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム、サッカリン又はその塩などが記載されている。この文献の実施例では、少量の塩化ナトリウムを用いた例が記載されている。
【0007】
これらの液剤では、活性成分の苦味を低減できるものの、少量の甘味剤及び酸味剤で活性成分の苦味を有効に軽減することができない。特に、苦味が強烈な成分(例えば、イソソルビドなど)の苦味を有効に低減することは困難である。さらに前記製剤は経時的に着色し、安定性が低い。
【0008】
特開2004−292360号公報(特許文献7)には、イソソルビド、アセスルファム塩、及び有機酸を含む水性の医薬組成物が開示され、さらにサッカリン及び/又は香料を含んでいてもよいことも記載されている。この文献には、イソソルビド1重量部に対してアセスルファム塩0.0001〜0.001重量部及び有機酸0.01〜0.03重量部を含むことが記載され、実施例ではイソソルビド1重量部に対してサッカリンナトリウム0.0006重量部(アセスルファム塩1重量部に対して1.1重量部)を含む例が記載されている。
【0009】
しかし、この水性組成物でも未だ苦味を有効に低減することが困難である。特に、液剤では、服用した後、しばらくして強い苦味が感じられるため、苦味を有効にマスキングできない。そのため、上記組成物では、風味やまろやかさを付与することも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−290199号公報(特許請求の範囲、段落番号[0011])
【特許文献2】特開2001−294524号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−161700号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2003−171314号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】特表2002−512953号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2004−67516号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献7】特開2004−292360号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、イソソルビドの苦味を有効に低減できる経口製剤及び苦味軽減剤、その製造方法並びに苦味軽減方法(マスキング又は矯味方法)を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、少量の甘味剤であっても苦味を有効に低減できる経口製剤、その製造方法並びに苦味軽減方法(マスキング又は矯味方法)を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、長期間に亘り着色などが生じることがなく、安定性の高い経口製剤、その製造方法並びに苦味軽減方法(マスキング又は矯味方法)を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、液剤であっても風味やまろやかさが付与され、服用感に優れた経口製剤、その製造方法並びに苦味軽減方法(マスキング又は矯味方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、イソソルビドと甘味剤と酸味剤とを組み合わせた組成物において、甘味剤を、特定の割合で組み合わせたアスパルテーム(第1の甘味剤)と第2の甘味剤とで構成すると、イソソルビドの苦味を有効に低減できること、甘味増強剤や旨み成分を併用すると、甘味剤の使用量が少量であっても苦味を有効にマスキングでき、風味やまろやかさを付与できること、特定の成分を添加すると安定性が大きく向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の経口製剤は、イソソルビドと、アスパルテーム(以下、単に第1の甘味剤という場合がある)と、サッカリン又はその塩、アセスルファム又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、及びステビアから選択された少なくとも一種の第2の甘味剤(又は甘味補助剤)と、酸味剤(例えば、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸、グルコン酸及びこれらの塩などから選択された少なくとも一種)とを含む。この経口製剤は、第1の甘味剤1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部(例えば、5〜15重量部)の割合で含む。各成分の割合は、例えば、イソソルビド100重量部に対して、第1の甘味剤(アスパルテーム)0.01〜0.5重量部(例えば、0.05〜0.15重量部)、第2の甘味剤(サッカリン又はサッカリンナトリウムなど)0.1〜2重量部、酸味剤0.1〜5重量部程度であってもよく、第1の甘味剤1重量部に対する第2の甘味剤の割合は3〜15重量部(例えば、5〜10重量部)程度であってもよい。また、第1の甘味剤及び第2の甘味剤の総量1重量部に対する酸味剤の割合は、0.1〜10重量部(例えば、0.5〜5重量部)程度であってもよい。
【0017】
経口製剤は、甘味を増強するため、鹹味を有する甘味増強剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、有機酸塩、リン酸塩など)を含んでいてもよい。この甘味増強剤の使用量は、例えば、第1の甘味剤及び第2の甘味剤の総量1重量部に対して0.01〜1重量部(例えば、0.1〜0.5重量部)程度であってもよい。さらには、経口製剤は、旨み成分及び/又は香料を含んでいてもよい。香料は、果実系香料(ストロベリーエッセンスなど)、樹皮系香料(ニッキエッセンスなど)、果皮系又は柑橘系香料(ホワイトグレープエッセンスなど)、種子系香料(カカオ末など)などであってもよい。
【0018】
経口製剤の形態は特に制限されず、液剤、ゼリー剤、グミ剤などであってもよい。
【0019】
より具体的には、経口製剤としては、イソソルビドと、アスパルテームと、サッカリン又はサッカリンナトリウムと、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、アスコルビン酸及びこれらの塩から選択された少なくとも一種の酸味剤と、塩化ナトリウムと、アミノ酸系旨み成分と、香料(果実系、果皮系、柑橘系、樹皮系、種子系香料など)とを含む経口液剤又はゼリー剤が例示できる。
【0020】
本発明は、イソソルビドの苦味を軽減するための苦味軽減剤(苦味軽減組成物)も開示する。この苦味軽減剤は、アスパルテームと、前記第2の甘味剤と、酸味剤とで構成され、アスパルテーム1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で含んでいる。
【0021】
本発明は、イソソルビドと、前記第1の甘味剤と、前記第2の甘味剤と、酸味剤とを用いて経口製剤を製造する方法であって、第1の甘味剤1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で用いる経口製剤の製造方法も包含する。さらに、本発明は、イソソルビドに、前記第1の甘味剤と、前記第2の甘味剤と、酸味剤とを添加してイソソルビドの苦味を軽減する方法(結果として経口製剤の苦味を軽減する方法)であって、第1の甘味剤1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で添加し、苦味を軽減する方法も包含する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、イソソルビドと甘味剤と酸味剤とを含む組成物において、特定の甘味剤を特定の割合で組み合わせるため、苦味の強いイソソルビドであっても苦味を有効に低減(マスキング又は矯味)できる。また、少量の甘味剤であっても苦味を有効に低減できる。さらに、長期間に亘り着色などが生じることがなく、経口製剤(経口投与又は服用用組成物)の安定性を高めることができる。さらに、甘味増強剤などを添加すると、液剤であっても風味やまろやかさが付与され、服用感を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の経口製剤は、活性成分としてのイソソルビドと甘味剤と酸味剤とを組み合わせて苦味を矯味する。特に、複数の甘味剤を特定の割合で用いることにより、苦味を有効に矯味できる。さらに、経口製剤は、必要により安定化剤(pH調整剤、緩衝剤など)、甘味増強剤、旨み成分、香料、糖類などを含む。
【0024】
[イソソルビド]
イソソルビド(化学名:1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール)は、脳腫瘍時の脳圧効果、頭部外傷に起因する脳圧亢進時の脳圧降下、腎・尿管結石時の利尿、緑内障の眼圧降下、メニエール病などの治療に有効な薬剤であり、第14改正日本薬局方解説書(2001、廣川書店)にも記載されている化合物である。イソソルビドは強い苦味を呈する。そのため、イソソルビドの苦味を有効にマスキングすることが重要である。
【0025】
イソソルビドの含有量は、製剤の種類などに応じて選択でき、例えば、製剤全体の10〜99.5重量%(例えば、10〜99重量%)、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは25〜85重量%(例えば、50〜80重量%)、さらに好ましくは60〜75重量%程度の範囲から選択できる。また、イソソルビドの含有量は、製剤全体の70〜99.5重量%(例えば、85〜99重量%)程度であってもよい。
【0026】
なお、イソソルビドは、必要であれば他の活性成分(薬理活性又は生理活性成分)と併用してもよく、活性成分は苦味を有していてもよい。活性成分としては、例えば、鎮痛剤、解熱鎮痛剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮静剤、鎮けい剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、糖尿病治療剤、肝疾患治療剤、潰傷治療剤、健胃消化剤、血圧降下剤、ホルモン剤、抗生物質、サルファ剤、精神神経用剤、眼圧降下剤、ビタミン剤、アミノ酸類、ミネラル類などであってもよい。これらの成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
苦味を有する活性成分としては、例えば、アミノピリン、アンチピリン、フエナセチン、テオフィリン、無水カフェイン、アセトアミノフェン、サリチル酸コリン、臭化水素酸デキストロメトルファン、塩酸トリメトキノール、アロバルビタール、シクロバルビタール、バルビタール、フェノバルビタール、N−メチルスコポラミン・メチル硫酸塩、フロプロピオン、ジクロフエナクナトリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸シクロペプタジン、トルブタマイド、グルブゾール、アセトヘキサアミド、クロルブロパミド、塩酸ヒドラジノフタラジン、レセルピン、ポリサイアザイド、デキサメサゾン、ベタメサゾン、アミノベンジルペニシリン、セフアレキシン、塩酸テトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、クロラムフェニコール、スルフィソメゾール、スルフィソオキサザール、ヒドロキシジンバモエート、プリミドン、イソソルビド、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、アスコルビン酸、パントテン酸、チアミン、フルスルチアミン及びこれらの塩、塩酸リジンなどが挙げられる。苦味活性成分としての生薬成分には、例えば、イカリソウ、オウセイ、ガラナ、クコシ、ジオウ、トウキ、トチュウ、ニンジン、オウゴン、オオバク、オウレン、ガジュツ、カロウコン、キキョウ、キハダ、ケンゴシ、ゲンチアナ、コウブシ、コウボク、ゴシツ、サイコ、サフラン、サンズコン、セキショウコン、センブリ、センボウ、ソウジュツ、ダイオウ、チンピ、トウヒ、ニガキ、ビャクシャク、ヨモギ、ニガヨモギ、ホップ、ホカミ、マオウ、リュウタン、リンドウ、レンギョウなどの生薬原料からの抽出物が例示できる。
【0028】
[アスパルテーム]
本発明では、第1の甘味剤としてアスパルテームを用いる。第1の甘味剤の使用量は、イソソルビド100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部(例えば、0.03〜0.2重量部)、さらに好ましくは0.05〜0.15重量部(例えば、0.07〜0.12重量部)程度であってもよい。
【0029】
[第2の甘味剤]
第2の甘味剤としては、サッカリン又はその塩(サッカリンナトリウムなど)、アセスルファム又はその塩(アセスルファムカリウムなど)、グリチルリチン、グリチルリチン酸又はその塩(グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウムなど)、及びステビア、ソーマチン、スクラロースが例示できる。第2の甘味剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第2の甘味剤は、サッカリン又はサッカリンナトリウムである。
【0030】
第2の甘味剤の使用量は、第1の甘味剤の種類や使用量に応じて選択でき、例えば、イソソルビド100重量部に対して、0.01〜2重量部(例えば、0.5〜2重量部)、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.2〜1.5重量部、さらに好ましくは0.3〜1.2重量部(例えば、0.4〜1重量部)程度であり、通常、0.05〜1重量部(例えば、0.5〜1重量部)程度である。
【0031】
本発明の特色は、第1の甘味剤と第2の甘味剤とを特定の割合で用いる点にある。すなわち、第1の甘味剤1重量部に対する第2の甘味剤の使用量は、2〜20重量部(例えば、3〜15重量部)、好ましくは5〜15重量部(例えば、4〜12重量部)、さらに好ましくは5〜10重量部(例えば、6〜9重量部)程度である。このような割合で甘味剤を組み合わせると、甘味剤(特に第1の甘味剤)の使用量が少なくてもイソソルビドの苦味を有効に軽減できる。
【0032】
なお、イソソルビドの苦味を矯味するためには、甘味度の高い甘味剤を用いるのが有利であると思われる。例えば、ショ糖の甘味度を100としたとき、アスパルテームは200、ステビアは200〜350、サッカリンナトリウムは500、アセスルファムカリウムは200〜250、グリチルリチン酸ナトリウムは100〜300、ソーマチンは2000〜3000、スクラロースは600の甘味度を示す。そのため、サッカリンナトリウムを用いると、苦味(特に強烈な苦味)を矯味できると考えられる。しかし、甘味剤の種類によって甘味の質が異なる。そのため、これらの甘味剤を単独で用いてもイソソルビドの苦味(特に強烈な苦味)を有効に矯味できない。
【0033】
第2の甘味剤は、口に入れてしばらくしてから甘味が発現する甘味剤である場合が多い。また、第2の甘味剤は、第1の甘味剤の甘味を相乗的に向上させる場合が多い。そのため、第2の甘味剤は、第1の甘味剤の甘味度を相乗的に高めるとともに、甘味の質も向上できる甘味補助剤として有効に使用できる。
【0034】
[酸味剤]
さらに、本発明の経口製剤及び苦味軽減剤は、イソソルビドの苦味を有効に軽減するため、酸味剤を含む。酸味剤の種類は、酸味を呈する限り特に制限されず、種々の有機酸成分が使用できる。酸味剤としては、例えば、飽和カルボン酸(酢酸などの飽和モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸などの飽和ジカルボン酸)、不飽和カルボン酸(マレイン酸、フマル酸などの不飽和多価カルボン酸)、ヒドロキシカルボン酸(乳酸などのヒドロキシモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシポリカルボン酸)、アスコルビン酸、グルコン酸などが例示できる。これらの酸味剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの酸味剤のうち、ヒドロキシカルボン酸(乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸など)、フマル酸、アスコルビン酸が使用され、特に、少なくともヒドロキシカルボン酸を用いる場合が多い。
【0035】
酸味剤は塩(ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩)として使用してもよい。酸味剤が光学活性体であるとき、光学活性体はd,l,dl体であってもよく、ラセミ体であってもよい。なお、複数の酸味剤を用いると、苦味の矯味に有効な場合がある。
【0036】
また、酸味剤は、例えば、pH調整等の緩衝剤としての作用を有していてもよく、安定化剤としての作用を有していてもよい。
【0037】
酸味剤の使用量は、例えば、甘味剤の種類や量的割合などに応じて選択でき、例えば、イソソルビド100重量部に対して、0.1〜5重量部(例えば、0.2〜3重量部)、好ましくは0.3〜2.5重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部(例えば、0.8〜1.7重量部)程度であってもよい。
【0038】
さらに、甘味剤(第1の甘味剤及び第2の甘味剤)に対する酸味剤の使用量は、甘味剤1重量部に対して、0.1〜10重量部(例えば、0.3〜7重量部)、好ましくは0.5〜5重量部(例えば、0.75〜3重量部)、さらに好ましくは0.8〜2.5重量部程度であってもよい。
【0039】
なお、第1の甘味剤1重量部に対する酸味剤の割合は、例えば、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部(例えば、7〜20重量部)程度であってもよく、第2の甘味剤1重量部に対する酸味剤の割合は、例えば、0.1〜20重量部(例えば、0.3〜15重量部)、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.7〜5重量部(例えば、1〜3重量部)程度であってもよい。
【0040】
[甘味増強剤]
経口製剤及び苦味軽減剤はさらに鹹味(塩味)を有する甘味増強剤(又は鹹味剤)を含むのが好ましい。このような甘味増強剤としては、塩化ナトリウム、食塩、塩化カリウム、有機酸塩(ナトリウム又はカリウム塩、例えば、リンゴ酸ナトリウムなどのヒドロキシカルボン酸ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウムなど)、リン酸塩(リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなど)などが例示できる。甘味増強剤(又は鹹味剤)は中性塩、例えば、ナトリウムイオン及び/又は塩素イオンとして解離する塩である場合が多い。これらの甘味増強剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい甘味増強剤は、塩化ナトリウム又は食塩である。
【0041】
甘味増強剤(又は鹹味剤)の使用量は、甘味剤の種類やその量的割合に応じて選択でき、例えば、甘味剤(第1の甘味剤及び第2の甘味剤)の総量1重量部に対して0.01〜1重量部(例えば、0.05〜0.8重量部)、好ましくは0.1〜0.6重量部(例えば、0.1〜0.5重量部)、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部(例えば、0.25〜0.5重量部)程度であってもよい。
【0042】
[旨み成分]
経口製剤及び苦味軽減剤はさらに旨み成分を含んでいてもよい。旨み成分としては、例えば、アミノ酸系旨み成分(アミノ酸又はその塩、例えば、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン−グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、グリシン、アラニンなど)、ペプチド系旨み成分(L−グルタミル−L−グルタミン酸、L−グルタミル−L−セリンなどのジペプチド;トリ−L−グルタミン酸、L−グルタミル−L−グリシル−L−セリンなどのトリペプチドなど)などが例示できる。これらの旨み成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。旨み成分としては、アミノ酸系旨み成分、例えばグルタミン酸ナトリウム、グリシンなどを用いる場合が多い。
【0043】
旨み成分の使用量は、経口製剤全体に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.8重量%、さらに好ましくは0.07〜0.5重量%(例えば、0.1〜0.3重量%)程度であってもよい。また、旨み成分の量的割合は、活性成分、第1及び第2の甘味剤、酸味剤及び必要により後述の糖類の総量100重量部に対して、0.02〜2重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、さらに好ましくは0.07〜1重量部(例えば、0.1〜0.5重量部)程度であってもよい。
【0044】
[香料]
経口製剤及び苦味軽減剤は香料を含んでいてもよい。香料としては、天然香料、例えば、果実系香料(例えば、ストロベリー、ブルーベリー、リンゴ、うめ、ライム、バニラ、ペッパーなどのエッセンス又はオイル)、果皮系香料(例えば、オレンジ、ホワイトグレープ、グレープフルーツ、レモンなどのエッセンス又はオイル)、樹皮系香料(例えば、ニッキなどのエッセンス又はオイル)、根系香料(例えば、ジンジャーなどのエッセンス又はオイル)、種子系香料(例えば、バニラビーンズ、カカオ末など)、枝葉系香料(ミント、ペパーミント、スペアミント、ローズマリーなどのエッセンス又はオイル)、花系香料(ジャスミン、ラベンダー、ローズ、ローズマリー、ヒヤシンスなどのエッセンス又はオイル)、黒糖フレーバー、ドリンクエッセンスなど;合成香料、例えば、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シスジャスミン、シス−3−ヘキセノール、メントールなどが例示できる。これらの香料も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、香料の形態は、オイル、エッセンスなどの形態に限らず、粉末状(例えば、シナモンパウダー、ペパーミントパウダー、ジンジャーパウダー、カカオ末など)であってもよい。上記香料のうち、果実系香料、樹皮系香料、果皮系香料、種子系香料が好ましく、香料の形態としてはエッセンス又は粉末状が好ましい。好ましい香料としては、例えば、ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス、カカオ末などが挙げられる。
【0045】
香料の使用量は、経口製剤全体に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.8重量%、さらに好ましくは0.07〜0.6重量%(例えば、0.1〜0.5重量%)程度であってもよい。また、香料の量的割合は、活性成分、第1及び第2の甘味剤、酸味剤及び必要により後述の糖類の総量100重量部に対して、0.02〜2重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、さらに好ましくは0.07〜1重量部(例えば、0.1〜0.5重量部)程度であってもよい。
【0046】
[糖類]
本発明の経口製剤及び苦味軽減剤は糖類を含んでいてもよい。なお、糖類としては、ショ糖の甘味度を100としたとき、甘味度200以下の糖類を使用する場合が多い。
【0047】
糖類としては、例えば、糖(ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、黒砂糖、ハチミツ、トレハロース、マルトース(麦芽糖)、キシロース、マンノース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、ラムノース、ソルビット、異性化糖(高フルクトースシロップ)、パラチノースなど)、糖アルコール(例えば、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトールなど)、オリゴ糖(デンプン糖(デンプン糖化物)、マルトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)などが例示できる。これらの糖類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの糖類のうち、糖としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、黒砂糖、ハチミツ、トレハロース、マルトース(麦芽糖)、キシロース、ラフィノース、パラチノースなどが繁用され、糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどが繁用され、オリゴ糖としてはカップリングシュガーなどが繁用される。
【0048】
さらに、糖類は非還元型(トレハロース型)であっても、還元型(マルトース型)であってもよい。還元糖の種類は、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば特に限定されず、例えば、遊離の単糖類;還元麦芽糖又はマルトース、イソマルトース、ラクトース、パラチノースなどの少糖類又はオリゴ糖類が例示できる。これらの還元糖も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。還元糖としては、還元麦芽糖(水あめ、粉糖など)又はマルトースを用いる場合が多い。
【0049】
糖類(非還元型及び還元型を含む)の使用量は、イソソルビド100重量部に対して、0〜50重量部(例えば、1〜45重量部)程度の範囲から選択でき、通常、3〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは10〜25重量部程度であってもよい。還元糖の使用量も上記糖類と同様の範囲から選択でき、通常、イソソルビド100重量部に対して、3〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、さらに好ましくは10〜20重量部程度であってもよい。さらに、糖類(非還元型及び還元型を含む)の割合は、第1の甘味剤(アスパルテームなど)1重量部に対して5〜500重量部(例えば、10〜450重量部)、好ましくは20〜400重量部(例えば、30〜300重量部)、さらに好ましくは50〜250重量部(例えば、100〜200重量部)程度であってもよい。還元糖の割合は、第1の甘味剤(アスパルテームなど)1重量部に対して5〜500重量部(例えば、10〜450重量部)、好ましくは20〜400重量部(例えば、30〜300重量部)、さらに好ましくは50〜250重量部(例えば、100〜200重量部)程度であってもよい。
【0050】
本発明の経口製剤(又は組成物、苦味軽減剤)は、製剤の剤形に応じて、生理学的に許容可能でありかつ活性成分の矯味を損わない種々の担体又は添加剤を含んでいてもよい。このような担体や添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、光沢化剤、着色剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、防湿剤、コーティング剤、糖衣剤、粘稠化剤、清涼化剤、矯臭剤(例えば、芳香剤など)、湿潤剤、溶剤又は液体、可溶化剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、吸着剤、消泡剤、安定剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、軟化剤、可塑剤、発泡剤、pH調整剤、緩衝剤などが例示できる。
【0051】
本発明の経口製剤は、服用又は投与形態、使用形態などに応じて種々の形態で使用でき、固形製剤であってもよいが、通常、液剤、ゼリー剤、グミ剤などであり、特に液剤、ゼリー剤が好ましい。
【0052】
本発明の経口製剤は、第1の甘味剤に対して第2の甘味剤を特定の割合で用い、剤形に応じた慣用の方法により調製できる。例えば、液剤(液状製剤)は、液状である限り、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの形態であってもよく、ドリンク剤、エキス剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤などの内服液剤であってもよく、健康飲料などの各種飲料であってもよい。液剤は、前記成分と、慣用の成分、例えば、担体(油性溶媒、精製水などの水性溶媒、エタノールなどのアルコール性溶媒など)、界面活性剤(乳化剤又は分散剤)、可溶化剤、溶解補助剤、懸濁剤、増粘剤などの粘度調整剤、着色剤、食物繊維、防腐剤又は保存剤(例えば、安息香酸ナトリウムやメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸アルキルエステル)、酸化防止剤(抗酸化剤)、清涼化剤、殺菌剤、抗菌剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、矯臭剤、消泡剤などを用いて慣用の方法で調製できる。液剤は、通常、各成分を精製水とともに混合し、必要によりpH調整し、滅菌処理される場合が多い。
【0053】
液状(ゼリー状又はグミ状)経口製剤は、好ましくはpH調整剤によりpH調整されている。pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)、有機酸(酢酸、クエン酸など)、無機塩基(水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、有機塩基(アミン類など)などが使用できる。液剤のpHは、例えば、2〜5.5(例えば、2.2〜5.3)、好ましくは2〜4.5(例えば、2.5〜4.3)程度であってもよい。
【0054】
ゼリー剤は、通常、ゲル化剤又は増粘剤を含んでいる。ゲル化剤又は増粘剤としては、例えば、ガム類又は多糖類(例えば、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、カラゲニン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メタアクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなど)などが例示できる。これらのゲル化剤又は増粘剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ゲル化剤又は増粘剤の使用量は、例えば、経口製剤全体に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜7重量%、より好ましくは0.3〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよい。なお、ゲル化剤又は増粘剤は必要により架橋剤(多価金属塩などの多価金属を含む化合物)と併用してもよい。ゲル化剤としては、通常、ガム類又は多糖類(例えば、ペクチンなど)を用いる場合が多い。ゼリー剤は、液剤と同様に、滅菌処理してもよい。
【0055】
グミ剤は、通常、ゲル化剤又は増粘剤を含んでおり、必要であれば、緩衝剤を含んでもよい。ゲル化剤又は増粘剤としては、ガム類又は多糖類(例えば、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、カラゲニン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなど)などが例示できる。これらのゲル化剤又は増粘剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ゲル化剤又は増粘剤の使用量は、前記ゼリー剤と同様の範囲から選択できる。また、緩衝剤としては、一般に緩衝作用を有する(pH変化に対して抵抗性を有する)ものであればよく、例えば、有機酸系緩衝剤(酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウムなど)、リン酸塩系緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸塩)、ホウ酸系緩衝剤(ホウ酸、ホウ砂など)などが例示できる。緩衝剤の使用量は、例えば、経口製剤全体に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%程度であってもよい。これらのゲル化剤又は増粘剤及び緩衝剤は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。グミ剤は、液剤と同様に、滅菌処理してもよい。
【0056】
本発明では、イソソルビドと甘味剤と酸味剤とを組み合わせた組成物(又は製剤)において、第1の甘味剤と第2の甘味剤とを特定の割合で含む甘味剤を用いるため、イソソルビドの苦味を有効に軽減でき、服用感に優れる。そのため、本発明は、イソソルビドの苦味を軽減する方法も包含する。なお、服用量又は投与量は、疾患の種類や程度、年齢、性別などに応じて選択できる。
【0057】
本発明の経口製剤は、製剤の形態に応じて慣用の方法で容器内に収容でき、液剤及びゼリー剤では、小分け可能な包装形態(例えば、防腐剤抜き処方の使い捨て容器への充填、スティック容器内への充填など)で使用でき、携帯性を向上できる。
【0058】
本発明の経口製剤の好適な態様としては、イソソルビドと、第1の甘味剤としてのアスパルテームと、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムから選択された少なくとも一種の第2の甘味剤と、リンゴ酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、乳酸及びフマル酸ナトリウムから選択された少なくとも一種の酸味剤との組み合わせが挙げられ、必要により還元麦芽糖(水あめ)、キシリトール、ソルビトール及びエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類、塩化ナトリウム及びリン酸水素カリウムから選択された少なくとも一種の甘味増強剤、旨み成分としてのグルタミン酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンから選択された少なくとも一種の保存剤、ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス及びカカオ末から選択された少なくとも一種の香料をさらに組み合わせてもよい。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
比較例、並びに実施例1〜18及び21〜26(液剤)
イソソルビド、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、酸味剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、dl−リンゴ酸、酒石酸、乳酸、フマル酸ナトリウム)、糖類(還元麦芽糖あめ、キシリトール、D−ソルビトール、エリスリトール)、甘味増強剤(塩化ナトリウム、リン酸水素カリウム)、旨み成分(グルタミン酸ナトリウム)、保存料(メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)、香料(ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス、カカオ末)を表1(比較例、実施例1〜実施例8)、表2(実施例9〜16)、表3(実施例17〜18及び21〜23)及び表4(実施例24〜26)に示す重量割合(g)で用い、精製水で100ml(イソソルビド濃度70w/v%)とし、イソソルビド溶液(経口液剤)を調製した。なお、香料はイソソルビド溶液(濃度70w/v%)に微量(0.1重量%)添加した。また、必要により塩酸でpHを調整した。
【0061】
実施例19〜20(ゼリー剤)
実施例1〜18及び21〜26で用いた成分に加えてペクチンを表3に示す割合で用い、ゼリー剤を調製した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
試験例
1.矯味試験
〈方法〉
パネラー3名(A〜C)により実施例9〜15の苦味抑制効果を以下のようにして調べた。結果は表5に示す。
【0067】
[矯味の評価]
小匙一杯のブランク液(イソソルビド70w/v%の精製水溶液)を対照として先に含み、次いでアトランダムに小匙一杯の検体を口内に含んで検体の矯味の程度を比較評価した。評価基準は次のとおりである。
【0068】
1:全く苦味なく、好ましい味
2:ほとんど苦くないが、好ましい味でない
3:ブランク液より良好だが、やや苦味あり
4:ブランク液より良好だが、苦味あり
5:ブランク液と同等か強い苦味
【0069】
〈結果〉
表5に示すとおり、実施例9〜15は、ブランク液との比較において、ほぼすべて評価基準2以上の結果が得られた。すなわち、実施例9〜15は、ブランク液に見られる苦味を有効に抑制していることを示している。また、酸味剤単味(実施例9〜12)と比較して複数の酸味剤を配合した方がより良好な結果が得られた。なお、実施例1〜8及び16〜26の製剤についても上記と同様に評価し、いずれも良好な結果が得られた。
【0070】
【表5】

【0071】
2.外観評価試験
〈方法〉
ガラス瓶に充填した検体を、蛍光灯の照射下、60℃で3週間保存し、検体の着色度としてAPHAカラーを測定した。測定したAPHAカラー値から保存前の検体の着色度の値を減算し、着色度の変化データを評価した。結果は表6に示す。
【0072】
[APHAカラー測定方法]
JOCS3.2.1.2−1996 基準油脂分析試験法に基づき、波長455nmにおけるAPHA標準色原液を作成、検量線を求め、以下の式により算出した。
APHA=UABS×140/0.0383
【0073】
〈結果〉
表6に示すとおり、3週間後でのイソソルビド市販品のAPHAカラー減算値が436.8(pH2.40〜2.46)であるのに対して、実施例13及び15のAPHAカラー減算値は253.8(pH4.11〜4.14)及び261.5(pH3.04〜3.11)であることから、実施例13及び15は、幅広いpH域で長時間にわたり溶液の着色を防止できる安定な製剤であることを示している。
【0074】
【表6】

【0075】
以上、試験1及び試験2の結果から明らかなように、アスパルテームとサッカリンナトリウムが所定の割合で配合することでイソソルビドの苦味を有効に抑制できる。また、長時間にわたり着色を有効に防止でき、安定性を向上することが可能である。さらに、甘味増強剤(塩化ナトリウムなど)や旨味成分の添加により、甘味を有効に増強したり風味を向上でき、苦味をまろやかに矯味可能である。
【0076】
なお、イソソルビド溶液(濃度70w/v%)に、前記香料に代えて、ジンジャーエッセンス、ドリンクエッセンス、うめエッセンス、オレンジエッセンス、ブルーベリーエッセンス、ミントオイル、ペパーミントオイルを、それぞれ、微量(0.1重量%)添加する以外、実施例と同様にして液剤を調製したところ、いずれも苦味がなく風味が良好な液剤が得られた。なお、ミントオイルを用いた液剤では、口中がすっきりする清涼感が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、イソソルビドの苦味を軽減できるため、経口摂取、経口投与又は服用する用途に有用であり、例えば、食品、医薬品、医薬部外品、サプリメント、健康食品(栄養補助食品)などとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルビドと、第1の甘味剤としてのアスパルテームと、アセスルファム又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、及びステビアから選択された少なくとも一種の第2の甘味剤と、酸味剤とを含む経口製剤であって、アスパルテーム1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で含む経口製剤。
【請求項2】
酸味剤が、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸、グルコン酸及びこれらの塩から選択された少なくとも一種である請求項1記載の経口製剤。
【請求項3】
イソソルビド100重量部に対して、アスパルテーム0.01〜0.5重量部、第2の甘味剤0.1〜2重量部、酸味剤0.1〜5重量部の割合で含み、アスパルテーム1重量部に対する第2の甘味剤の割合が3〜15重量部であり、アスパルテーム及び第2の甘味剤の総量1重量部に対する酸味剤の割合が0.1〜10重量部である請求項1記載の経口製剤。
【請求項4】
さらに鹹味を有する甘味増強剤を含む請求項1記載の経口製剤。
【請求項5】
甘味増強剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、有機酸塩及びリン酸塩から選択された少なくとも一種である請求項4記載の経口製剤。
【請求項6】
第1の甘味剤としてのアスパルテーム及び第2の甘味剤の総量1重量部に対して甘味増強剤を0.01〜1重量部の割合で含む請求項4記載の経口製剤。
【請求項7】
さらに旨み成分及び香料から選択された少なくとも一種を含む請求項1又は4記載の経口製剤。
【請求項8】
香料が、ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス及びカカオ末から選択された少なくとも一種である請求項7記載の経口製剤。
【請求項9】
液剤、ゼリー剤又はグミ剤である請求項1記載の経口製剤。
【請求項10】
pHが2〜5.5の範囲である請求項9記載の経口製剤。
【請求項11】
イソソルビドの苦味を軽減するための苦味軽減剤であって、第1の甘味剤としてのアスパルテームと、請求項1記載の第2の甘味剤と、酸味剤とで構成され、アスパルテーム1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で含む苦味軽減剤。
【請求項12】
イソソルビドと、アスパルテームと、請求項1記載の第2の甘味剤と、酸味剤とを用いて経口製剤を製造する方法であって、アスパルテーム1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で用い、経口製剤を製造する方法。
【請求項13】
イソソルビドに、アスパルテームと、請求項1記載の第2の甘味剤と、酸味剤とを添加してイソソルビドの苦味を軽減する方法であって、アスパルテーム1重量部に対して第2の甘味剤を2〜20重量部の割合で添加し、苦味を軽減する方法。

【公開番号】特開2012−107060(P2012−107060A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41018(P2012−41018)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【分割の表示】特願2005−358936(P2005−358936)の分割
【原出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】