説明

イソソルビドをベースとするポリカーボネート、その製造方法、およびそれから製造された物品

イソソルビド単位と、イソソルビド単位とは異なる脂肪族単位とを含むポリカーボネートポリマーであって、前記イソソルビド単位および前記脂肪族単位が、それぞれ、カーボネート単位であるかまたはカーボネート単位とエステル単位との組合せであり、前記脂肪族単位が、900〜4000の分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導されるものである、ポリカーボネートポリマーを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年12月30日に出願した米国特許仮出願第61/291,197号の利益を主張し、その内容全体を参照により本願明細書に組み込む。
本開示は、脂肪族ジオールを含むポリカーボネート、とりわけイソソルビドをベースとするポリカーボネート、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的資源に由来する脂肪族ジオールをべースとするポリマーは、プラスチック産業および製造業において、安価で再生可能であり且つ生物分解性であるため環境への最終的な影響も小さい資源からの材料および製品の製造に重要である。なかでも、イソソルビドをベースとするポリマー、より特に、2,6-ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン-4,8-ジオール、1,4; 3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール、および2,3,3a,5,6,6a-ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3,6-ジオールおよびその異性体に興味がもたれる。これらの材料は、化学工業、とりわけポリカーボネートなどのポリマー材料の製造において多大な興味が持たれている。なぜなら、このような脂肪族ジオールは、ポリカーボネートの製造に有用な他のモノマー、例えばビスフェノールモノマーなどのポリカーボネートの製造において有用な他モノマーの製造に用いられる石油原料ではなく、再生可能な資源、主として糖類から製造することができるからである。
【0003】
しかし、実際に応用するためには、イソソルビドを組み込んだポリカーボネートが、有用な性能バランスを備えることが必要とされる。このような生物由来の材料をポリカーボネートに組み込むことに伴う問題は、ポリカーボネートの所望の機械的特性および光学的特性を、例えば押出および成型工程における高温での加工中または加工後においても維持させることである。その他の点で所望の特性を有するイソソルビドを組み込んだポリカーボネートが、不十分な耐衝撃特性および耐熱特性を有する場合があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第20090105393号
【特許文献2】米国特許出願公開第20090105444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当分野では、十分に高い耐熱性および耐衝撃性を有する一方、所望の光学特性および加工温度を保持する、イソソルビドをベースとするポリカーボネートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、イソソルビド単位と、イソソルビド単位とは異なる脂肪族単位とを含むポリカーボネートポリマーであって、前記イソソルビド単位および前記脂肪族単位が、それぞれ、カーボネート単位であるかまたはカーボネート単位とエステル単位との組合せであり、前記脂肪族単位が、900〜4000の質量平均分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導されるものである、ポリカーボネートポリマーを記述する。このポリカーボネートは、C14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される非イソソルビド脂肪族単位をさらに含むことができる。
別の実施態様は、熱可塑性組成物であり、このポリカーボネートポリマーと、追加のポリマー、添加剤、または追加のポリマーと添加剤との組合せとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書では、イソソルビドをベースとするポリカーボネートであって、ポリエステルポリカーボネートを包含するものを記述する。このポリカーボネートおよびポリエステルポリカーボネートは、イソソルビドから誘導される単位と、900〜4000の分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導される脂肪族単位とを含む。脂肪族オリゴマーから誘導される脂肪族単位を組み入れることによって、耐衝撃性が顕著に改良される。耐熱性は、ガラス転移温度、熱変形温度、およびビカーデータによって評価する。これらの物理的特性およびその測定方法については、後述する。
【0008】
本明細書において、用語「ポリカーボネート」は、下記式(I)の繰り返し構造カーボネート単位を有するコポリカーボネートを包含する。
【化1】

式中、R基は、イソソルビドから誘導される基と、900〜4000の分子量を有するジオール由来の脂肪族オリゴマーから誘導される基とを含む。この脂肪族オリゴマーには、C30〜45脂肪酸の脂肪族二量体、C30〜45脂肪酸の脂肪族三量体、およびC30〜45脂肪酸の脂肪族二量体および三量体の混合が含まれる。脂肪族オリゴマーは、ニ量体、三量体、および二量体と三量体との組合せから誘導される成分に加えて、直鎖または環式の脂肪族基で修飾されていてもよい。R基には、場合により、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される単位、およびC14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される非イソソルビド脂肪族単位が含まれていてもよい。
【0009】
イソソルビドをベースとするカーボネート単位は、下記式(2)で示される。
【化2】

式(2)のイソソルビドをベースとするカーボネート単位は、イソソルビドの異性体の混合物から誘導されるものであっても、個々のイソソルビド異性体から誘導されるものであってもよい。下記式(2a)のイソソルビドをベースとするカーボネート単位の立体化学は、特に制限されない。具体的には、イソソルビドは下記一般式(2a):
【化3】

を有し、単一のジオール異性体であっても、ジオール異性体の混合であってもよい。一般式(2a)のイソソルビドの立体化学も、特に制限されない。これらのジオールは、相当するヘキシトールの脱水によって製造される。ヘキシトールは、相当する糖類(アルドヘキソース)から商業的に製造されている。式(2a)の脂肪族ジオールには、式(2b)の1,4; 3,6-ジアンヒドロ-Dグルシトール;式(2c)の1,4; 3,6-ジアンヒドロ-Dマンニトール;および式(2d)の1,4; 3,6-ジアンヒドロ-Lイジトール;および前述のジオールの2種以上の組合せが含まれる。イソソルビドは、Cargill社、Roquette社、およびShanxi社を含むさまざまな化学物質供給業者から商業的に入手可能である。
【化4】

【0010】
特定の実施態様では、式(2b)のジオールが望ましい。式(2b)のジオールは、剛性を有し、式(2c)および(2d)の他のジオールより高いTgのコポリマーの製造に用いることができる、化学的および熱的に安定な脂肪族ジオールであるからである。
【0011】
イソソルビド単位は、ポリカーボネートを製造するために用いるジオールおよび二酸の合計質量に基づいて、50〜92質量%(wt%)、特に60〜90質量%、より特に70〜90質量%の量で存在していてよい。
【0012】
本ポリカーボネートは、式(2)のカーボネート単位に加えて、900〜4000、特に900〜3000、より特に900〜2500の質量平均分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導される脂肪族単位をさらに含む。この脂肪族オリゴマーは、脂肪酸から誘導される繰り返し単位を含んでいてよい。脂肪族オリゴマーは、エステル結合をもたらす酸で末端化されていてもよく、カーボネート結合をもたらすヒドロキシルで末端化されていてもよい。
【0013】
脂肪族オリゴマーは、直鎖状もしくは分岐状の、下記基本式(3)を有する二官能性アルキレンまたはアルケニレン化合物であってよい。
X-L-X (3)
式中、Xは、カルボン酸基(-C(O)OH)またはメチロール基((CH2-OH))を表す。Lは、炭素原子60個以上を有する基を表す。Lには、環状炭素構造、特に単環性基、多環性基、または縮合多環性基も含まれ得る。
【0014】
脂肪族オリゴマーは、2個以上の不飽和脂肪酸の付加反応によって合成することができる。本明細書において「不飽和」は、モノ不飽和、ジ不飽和、トリ不飽和、ポリ不飽和または前述の少なくとも1種を含む組合せを意味し得る。脂肪族二酸の不飽和部位については、シス異性体、トランス異性体、またはシスおよびトランスの組合せが反応物質である不飽和脂肪酸内に存在し得る(例えば、単一の脂肪族二酸が、シスおよびトランスに異性化された二重結合の少なくとも1種を有し得るなど)。あるいは、不飽和脂肪酸の異なる異性体が、混合されてもよい(例えば、トランス脂肪酸と、シス脂肪酸を用いるなど)。
【0015】
2個の不飽和脂肪酸の反応は、異なる不飽和脂肪酸の不飽和部位間の炭素-炭素結合形成反応によって達成され得、かつ、1個または複数個の単結合の形成(少なくともジ不溶和脂肪族モノマーを用いる場合)、架橋炭素環を形成するシクロ二量化、あるいは不飽和脂肪酸間の他の炭素-炭素結合がもたらされ得る。このような反応によって、生成物および異性体の混合物が製造され得ること、およびこのような全ての生成物および異性体の混合物が本発明において企図されていることが理解されよう。不飽和二酸間の反応は、ラジカル開始法、金属触媒法、光開始法、酸触媒法、または任意の好適な方法によって達成することができる。1つの実施態様では、不飽和脂肪酸の脂肪族オリゴマー形成反応は、モンモリロナイトなどの触媒特性を有するクレーを含む無機触媒物質を用いることによって達成される。脂肪族オリゴマーを、2種の短鎖不飽和脂肪酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸など)と、1種以上の酸基を有さない不飽和化合物との縮合から誘導することもできる。オリゴマーが、植物に基づく生物資源(例えば、植物油など)由来であることが望ましいが、他の市販の供給原料(例えば、石油誘導体、石炭抽出物、動物資源、木材などの他の植物資源など)から調製することもできる。したがって、植物資源または農作物資源に限定されるものと解されるべきではない。天然資源由来の脂肪族オリゴマーは、Uniqema社、Cognis社、およびOleon社を含む化学物質供給業者から市販されている。
【0016】
脂肪族オリゴマーは、エステル化反応などの縮合反応によって、少なくとも1種の脂肪酸が官能化されている2種の脂肪酸をカップリングさせることによって合成することもできる。脂肪酸間の例示的な結合には、エステル結合およびエーテル結合が含まれる。
【0017】
脂肪族オリゴマーから誘導される脂肪族単位は、ポリウレタンを製造するために用いるジオールおよび二酸の合計質量に基づいて、5〜35質量%、特に6〜25質量%、より特に7〜20質量%の量で存在していてよい。
【0018】
本ポリカーボネートは、C14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される非イソソルビド脂肪族単位をさらに含んでいてよい。これらの単位は、参照により本明細書に組み込む米国特許第20090105393号公報に記載されている。この公報には、C14〜44脂肪族二酸またはC14〜44脂肪族ジオールが、それぞれ、直鎖状または分岐状の、下記基本式(4) の二官能性のアルキレンまたはアルケニレン化合物であることが記載されている。
Y-(V)-Y (4)
式中、各Yは、カルボン酸官能基(-C(O)OH)またはメチロール官能基(-CH2-OH)を表す(これらの基はそれぞれ1個の炭素原子を含む)。1つの実施態様では、各Yは同じであり、Vは、11個より多い炭素原子を有する連結基である。より特に、Vは、分岐状C12〜42アルキレン基または分岐状C12〜42アルケニレン基である。Vには、環状炭素構造、特に単環性、多環性、または、縮合多環性の、C3〜12シクロアルキル基、C3〜12シクロアルケニル基、C3〜12シクロアルキリデン基、またはC3〜12シクロアルキレニレン基も含まれ得る。特定の実施態様では、Vは、2個のアルキル分岐を含むC12〜42アルキレン基である。特定の実施態様では、式(4)の化合物は、炭素原子を35〜44個有する分岐状の脂肪酸または脂肪アルコールの二量体である。別の実施態様では、式(4)の化合物は、炭素原子を13〜18個有する分岐状または直鎖状の脂肪酸または脂肪アルコールの二量体である。炭素原子を36〜44個有する二量体脂肪酸またはアルコールは、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖の環化を防止するために分岐状でなければならない。
【0019】
14〜44脂肪族二酸は、分岐鎖ジカルボン酸であってよく、環状基を有していてよい。具体的には、1つの実施態様では、脂肪族二酸は、下記式(5)を含むC14〜44脂肪族二酸またはその誘導体である。
【化5】

式中、mおよびm’は、独立に0〜38であり、nおよびn’は、独立に0〜38であり、m+m’+n+n’の合計は8〜38の整数である。特定の実施態様では、C36脂肪族二酸が式(5)の構造を有していて、mおよびm’が独立に0〜30であり、nおよびn’が独立に0〜30であり、m+m’+n+n’の合計が30である。別の特定の実施態様では、C36脂肪族二酸が式(5)の構造を有していて、mおよびm’がそれぞれ独立に5〜10であり、nおよびn’がそれぞれ独立に5〜10であり、m+m’+n+n’の合計が30である。例示的な実施態様では、mおよびm’が独立に7または8であり、nおよびn’が独立に7または8であり、m+m’+n+n’の合計が30である。特定の実施態様では、C44脂肪族二酸が式(5)の構造を有していて、mおよびm’が独立に0〜30であり、nおよびn’が独立に0〜30であり、m+m’+n+n’の合計が38である。例示的な実施態様では、mおよびm’が独立に12または13であり、nおよびn’が独立に6または7であり、m+m’+n+n’の合計が38である。このような二酸は、一般に脂肪酸二量体とも呼ばれ、容易に入手可能な生物由来の供給原料の縮合に由来し得る。
【0020】
14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される非イソソルビド脂肪族単位は、ポリウレタンを製造するために用いるジオールおよび二酸の合計質量に基づいて、5〜35質量%、特に6〜25質量%、より特に7〜20質量%の量で存在していてよい。
【0021】
本ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物(例えば、ビスフェノールなど)から誘導されるさらなるカーボネート単位(芳香族単位)を含むことができる。この芳香族ジヒドロキシ化合物は、式(6):
HO-A1-Y1-A2-OH (6)
(式中、A1およびA2の各々は、単環式二価アリーレン基であり、Y1は、単結合であるかまたはA1をA2から隔てる1個または2個の原子を有する架橋基である)
を有していてよい。1つの例示的な実施態様では、1個の原子がA1をA2から隔てる。別の実施態様では、A1およびA2のそれぞれがフェニレン基であり、Y1は、そのフェニレン上の各ヒドロキシル基のパラ位にある。この種の基の具体的な非限定的例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。この架橋基Y1は、炭化水素基であっても、メチレン、シクロヘキシリデン、もしくはイソプロピリデンなどの飽和炭化水素基であってもよい。
【0022】
式(6)の範囲には、一般式(7):
【化6】

[式中、RaおよびRbは、それぞれ、ハロゲン原子または一価炭化水素基を表し、同じであっても異なっていてもよく;pおよびqは、それぞれ独立に、0から4の整数であり、Xaは、単結合を表すか、あるいは式(8a)または(8b):
【化7】

(式中、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、C1〜12アルキル、C1〜12シクロアルキル、C7〜12アリールアルキル、C1〜12ヘテロアルキル、または環状C7〜12ヘテロアリールアルキルであり、Reは、二価のC1〜12炭化水素基である)
の基の1つを表す]
のビスフェノール化合物が含まれる。特に、RcおよびRdは、それぞれ、同じ水素もしくはC1〜4アルキル基であり、とりわけ同じC1〜3アルキル基であり、よりさらにとりわけメチルである。
【0023】
1つの実施態様では、RcおよびRdは、一緒になって、C3〜20環式アルキレン基、または、炭素原子とヘテロ原子を含み、2価以上の価数を有する、ヘテロ原子含有C3〜20環式アルキレン基を表す。これらの基は、飽和または不飽和の単環であっても、飽和、不飽和、または芳香族の縮合多環系であってもよい。特定のヘテロ原子含有環式アルキレン基は、2価以上の価数を有するヘテロ原子少なくとも1個と、炭素原子少なくとも2個とを有する。ヘテロ原子含有環式アルキレン基における例示的なヘテロ原子には、−O−、−S−、または−N(Z)−〔式中、Zは、水素、ヒドロキシ、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、またはC1〜12アシルから選択される置換基である〕が含まれる。
【0024】
特定の例示的な実施態様では、Xは、下記式(9)の置換C3〜18環式アルキリデンである。
【化8】

式中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、酸素、またはC1〜12有機基であり、Iは、直接結合、炭素、または二価の酸素、硫黄、または−N(Z)−(式中、Zは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、C1〜12アシルであり、hは0〜2であり、jは1または2であり、iは0または1の整数であり、kは0〜3の整数である)である。但し、R、R、R、およびRの少なくとも2つが一緒になって、縮合した環式脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ芳香族環であることを条件とする。縮合環が芳香族である場合には、式(9)で示す環が不飽和炭素−炭素二重結合を、環が縮合した位置に有することとなることが理解されるであろう。kが1であり、iが0である場合、式(9)で示す環は4個の炭素原子を有し、kが2である場合には環は5個の炭素原子を有し、kが3である場合には6個の炭素原子を有する。1つの実施態様では、2つの隣接した基が(例えば、RおよびRが一緒になって)芳香族基を形成し、あるいは別の実施態様では、RおよびRが一緒になって1つの芳香族基を形成し、RおよびRが一緒になって第二の芳香族基を形成する。
【0025】
kが3でありiが0である場合、置換または非置換シクロヘキサン単位を含むビスフェノール、例えば、式(10)のビスフェノールを用いる。
【化9】

式中、置換基Ra’およびRb’は、脂肪族であっても芳香族であってもよく、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和、または不飽和であってもよく、Rは、C1〜12アルキルまたはハロゲンであり、rおよびsは、独立に0〜4の整数であり、tは0〜10の整数である。rが0であり、sが0であり、tが0である場合には、各価数が水素で満たされることを理解されよう。1つの実施態様では、Ra’およびRb’は、それぞれ独立に、C1〜12アルキルである。特定の実施態様では、rおよび/またはsが1以上である場合、各Ra’およびRb’の少なくとも1つは、シクロヘキシリデン架橋基のメタ位に位置している。置換基Ra’、Rb’、およびRは、適切な炭素原子数を含む場合には、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和、または不飽和であってよい。特定の実施態様では、Ra’、Rb’、およびRは、それぞれC1〜4アルキル、とりわけメチルである。なお別の実施態様では、Ra’、Rb’、およびRは、C1〜3アルキル、とりわけメチルであり、rおよびsが0または1であり、tが0〜5、特に0〜3である。tが3であり、rおよびsが0であり、Rがメチルである式(10)の有用なシクロヘキサン含有ビスフェノールには、例えば、2モルのフェノールと1モルの水素化イソホロン(例えば、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン)との反応生成物に由来するものが含まれ、高いガラス転移温度および高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーの製造に有用である。
【0026】
適切なビスフェノール化合物の非限定的例のいくつかの実例には以下のものが含まれる: 4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、(α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7−ジヒドロキシカルバゾールなど、ならびに、前述したジヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも1種を含む組合せ。
【0027】
式(6)により表されるビスフェノール化合物の種類の具体例には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」または「BPA」と称する)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド(「PPPBP」)、および9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが含まれる。前述のジヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも1種を含む組合せも使用し得る。
【0028】
イソソルビドをベースとするポリカーボネートには、他の種類のジオールが存在していてもよい。例えば、本ポリカーボネートは、式(11)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される単位をさらに含んでいてよい。
【化10】

式中、各Rは独立に、C1〜12アルキルまたはハロゲンであり、uは0から4である。uが0である場合、Rは水素であることが理解されよう。典型的には、ハロゲンは、塩素であっても臭素であってもよい。1つの実施態様では、-OH基が互いにメタ位に置換していて、Rおよびuが上述したとおりである式(11)の化合物は、本明細書においてレゾルシノールとも称される。式(11)で表され得る化合物の例には、(uが0である)レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物(例えば、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなど;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン(例えば、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、および2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなど);または前述の化合物の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0029】
芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されるカーボネート単位(芳香族単位)は、ポリカーボネートを製造するために用いるジオールおよび二酸の合計質量に基づいて、0〜50質量%、特に0〜40質量%、より特に0〜30質量%の量で存在していてよい。
【0030】
分岐状の基を有するさまざまな種類のポリカーボネートも有用であることが企図されているが、そのような分岐が、ポリカーボネートの所望の特定に多大な悪影響を及ぼさないことを条件とする。分岐したポリカーボネートブロックは、重合の際に分岐剤を添加することによって調製することができる。これらの分岐剤には、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、およびこれらの官能基の混合から選択される少なくとも3つの官能基を含む多官能性有機化合物が含まれる。具体例には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC〔1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン〕、トリス−フェノールPA〔4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール〕、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシル酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が含まれる。分岐剤は約0.05〜2.0質量%の量で添加され得る。線状カーボネートおよび分岐カーボネートを含む混合物を使用することもできる。
【0031】
上述したとおり、ポリカーボネートは、カーボネート単位とエステル単位とを含むコポリマー、ならびにホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの少なくとも1種を含む組合せをも包含する。この種のポリカーボネートコポリマーの特定の種類は、ポリエステル化ボネートであり、ポリエステルポリカーボネートとしても知られている。このようなコポリマーは、式(1)のカーボネート鎖繰返し単位以外に、エステル含有オリゴマージヒドロキシ化合物(本明細書において「ヒドロキシ末端オリゴマーアリーレートエステル」とも称する)から誘導される、式(9)の繰返し単位を含むカーボネート単位をさらに含む。
【化11】

式中、Dは、ジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基であり、例えば、C2〜120アルキレン基、C6〜120脂環式基、C6〜120芳香族基、またはC2〜200ポリオキシアルキレン基(このアルキレン基は2から約6個の炭素原子、特に、2、3、または4個の炭素原子を含む)であり得る。また、Tは、ジカルボン酸から誘導される2価の基であり、例えば、C2〜120アルキレン基、C6〜120脂環式基、C6〜120アルキル芳香族基、またはC6〜120芳香族基であり得る。
【0032】
一般に、ポリエステルポリカーボネートは、式(9)の構造を有することができ、一部の実施形態では、Dは、直鎖、分岐鎖、または(多環式を含む)環式の構造を有するC2〜120アルキレン基である。他の実施形態では、Dは、上記式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。特定の実施態様では、本明細書で開示するように、Dは、式(2a)の脂肪族ジオールから誘導される基である。この脂肪族鎖が長い場合、例えば、約18炭素原子より長い場合、結晶化を避けるために分岐状である必要がある。したがって、特定の実施態様では、Dは、分岐鎖構造を有するC14〜120アルキレン基であり、脂肪族アルキレン鎖がポリマー中で結晶化しない。
【0033】
ポリエステル単位を製造するために使用され得る芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸;およびこれらの酸の少なくとも1種を含む混合物が含まれる。1,4−、1,5−、または2,6−ナフタレンジカルボン酸におけるように、縮合環を含む酸も含まれ得る。具体的なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの混合物である。具体的なジカルボン酸には、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物が含まれ、そのイソフタル酸のテレフタル酸に対する質量比は約91:9から約2:98である。別の具体的な実施形態では、DはC2〜6アルキレン基であり、Tはp−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、2価の脂環式基、またはこれらの混合である。この部類のポリエステルには、ポリ(アルキレンテレフタレート)が含まれる。
【0034】
エステル単位が他の連結性化学種〔例えば、カーボネート前駆体(例えばホスゲンまたはジアリールカーボネートなど)〕の非存在下で形成される場合には、個々のエステルがオリゴマー化してポリエステル単位(ポリエステルブロックとも称される)を形成する。次いで、このポリエステル単位が、カーボネート前駆体およびジヒドロキシ化合物の存在下で共重合してポリエステルポリカーボネートを形成することができる。このようなポリエステルポリカーボネートのポリエステル単位中の繰り返しエステル単位の数は、典型的には、4以上であり、特に5以上であり、より特に8以上である。1つの実施態様では、式(9)のエステル単位の数は、100以下であり、特に90以下であり、より特に70以下である。式(9)のエステル単位の存在数の下限値および上限値は、独立に組合せ可能であることが理解されよう。特定の実施形態では、ポリエステルポリカーボネート中の式(9)のエステル単位の数は、4〜50、特に5〜30,より特に8〜25、さらにより特に10〜20である。対照的に、エステル単位がカーボネート前駆体などの他の連結性化学種の存在下で形成される場合には、個別のエステル単位、または繰り返しエステル単位2個または3個の小さいブロックが、1種以上の他の連結性化学種(例えば、カーボネート単位)で隔てられた、よりランダムなポリエステルポリカーボネートが形成され得る。概して、本ポリエステルポリカーボネートにおいて、ポリエステルポリカーボネートコポリマー中のエステル単位のカーボネート単位に対するモル比は、広くさまざまであってよく、最終組成物に所望される特定に依存して、例えば1:99〜99:1、特に10:90〜90:10、より特に25:75〜75:25であってよい。
【0035】
ポリエステル−ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル酸およびテレフタル酸(またはこれらの誘導体)とレゾルシノールとの組合せの反応から誘導することができる。別の実施態様では、ポリエステル−ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル酸およびテレフタル酸とビスフェノールAとの組合せの反応から誘導する。特定の実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートのカーボネート単位は、式(2a)の脂肪族ジオールから誘導することができる。代わりに、あるいは加えて、例示的な実施態様では、カーボネート単位は、レゾルシノールおよび/またはビスフェノールAから誘導することができる。別の例示的な実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートのカーボネート単位は、レゾルシノールおよび/またはビスフェノールAから誘導することができ、得られるレゾルシノールカーボネート単位のビスフェノールAカーボネート単位に対するモル比が1:99〜99:1となる。
【0036】
イソソルビドをベースとするポリカーボネート中の生物由来物質の算出含量(算出バイオ含量)は、イソソルビドをベースとするポリカーボネートの総質量に基づいて、20質量%(wt%)以上、特に40質量%以上、より特に60質量%以上、なおより特に65質量%以上である。
【0037】
質量パーセント単位で表すこのバイオ含量は、イソソルビド単位と、ポリカーボネート中の再生可能な物質から誘導された他の全ての単位とを合わせた質量を、ポリカーボネートの総質量で割ったものである。バイオ含量は、放射性炭素および同位体比のマススペクトル分光法を用いて、再生可能な資源由来の物質中の炭素の割合を測定することもできる(例えば、ASTM D6866−06aを参照)。
【0038】
ポリカーボネートの分子量は、本明細書で開示するイソソルビドをベースとするポリカーボネートを含めて、明確に規定された狭い分子量分布のポリスチレン(PS)標準に基づく較正法を用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。一般に、ポリカーボネートは、PS標準に対して約5,000g/モルより大きな質量平均分子量(Mw)を有し得る。1つの実施態様では、イソソルビドをベースとするポリカーボネートは、PS標準に対して39,000g/モル以上のMwを有し得る。特定の実施態様では、イソソルビドをベースとするポリカーボネート(イソソルビドをベースとするポリエステルポリカーボネートを含む)は、PS標準に対して39,000g/モル〜100,000g/モル、特に40,000g/モル〜90,000g/モル、より特に40,000g/モル〜80,000g/モル、なおより特に40,000g/モル〜70,000g/モルのMwを有し得る。
【0039】
1つの実施態様では、イソソルビドをベースとするポリカーボネートは、PS標準に基づく数平均分子量(Mn)として、15,000g/モル〜65,000g/モル、特に16,000g/モル〜60,000g/モル、より特に17,000g/モル〜55,000g/モル、なおより特に18,000g/モル〜50,000g/モルを有し得る。
【0040】
本明細書において記述する分子量(MwおよびMn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラム、および規定されたPS標準またはPC標準のいずれかを用いて測定したものである。GPC試料は、塩化メチレンまたはクロロホルムなどの溶媒中約1mg/mlの濃度で調製し、約0.2〜1.0ml/分の流速で溶出させた。
【0041】
イソソルビドをベースとするポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、90〜170℃であり得る。この範囲内において、イソソルビドをベースとするポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、135〜170℃であってよく、より特に、142〜170℃であってよい。
【0042】
イソソルビドをベースとするポリカーボネートの熱変形温度(HDT)は、30〜180℃であり得る。この範囲内において、HDTは、50〜150℃、特に75〜125℃であってよい。
【0043】
ポリカーボネートは、ASTM D1238−04に準拠して250℃、5kgの荷重で測定して、0.5〜80cm/10分、特に2〜40cm/10分のメルトボリュームレート(MVR: melt volume rate)を有し得る。
【0044】
ポリカーボネートは、23℃で13キロジュール/1平方メートル(kJ/m)以上のノッチ付きアイゾット衝撃強度を有し得る。この範囲内において、ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、20kJ/m以上、特に30kJ/m以上であり得る。ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、ISO 180/1Aに準拠して測定する。ポリカーボネートのノッチ付きアイゾット衝撃強度は、は、200kJ/m以下であってよい。
【0045】
本明細書で開示するイソソルビドをベースとするポリカーボネート以外のポリカーボネートは、典型的には、界面相移動法または溶融重合法を用いて製造される。界面重合の反応条件はさまざまであるが、例示的な方法は、一般に、二価フェノール反応物質を苛性ソーダまたは炭酸カリ水溶液に溶解または分散させる工程、得られた混合物を水不溶性溶媒媒体(例えば塩化メチレンなど)に添加する工程、および、反応物質を触媒(例えばトリエチルアミンまたは相間移動触媒)の存在下、pH条件を(例えば約8〜約10に)制御した条件下で、カーボネート前駆体(例えばホスゲンなど)に接触させる工程を含む。
【0046】
しかし、米国特許出願公開第20090105393号、同第20090105444号、特開2009−191226号、および特開2009−144013号に記載されているとおり、イソソルビドをベースとするポリカーボネートまたはポリエステルポリカーボネートは、溶融重合法によって製造することができる。一般に、この溶融重合法では、ポリカーボネートは、溶融状態で、ジヒドロキシ反応物質(すなわち、イソソルビド、脂肪族ジオールおよび/または脂肪族二酸、および任意のさらなるジヒドロキシ化合物)と、ジアリールカーボネートエステル〔例えば、ジフェニルカーボネート、または、より詳細な1つの実施形態では、より特に活性化カーボネート、例えば、ビス(メチルサリチル)カーボネーなど〕との、エステル交換触媒の存在下での共反応によって製造される。揮発性の一価フェノールを、溶融した反応物から蒸留によって除去し、ポリマーを溶融残渣として単離する。重合法は、参照によりその全ての内容を本願明細書に組み込む米国特許出願公開第20090105393号および同第20090105444号に、より詳細に記載されている。
【0047】
上述したイソソルビドをベースとするポリカーボネートに加えて、イソソルビドをベースとするポリカーボネートと、式(1)のイソソルビドをベースとするカーボネート単位を含まない他の熱可塑性ポリマーとの組合せを含む熱可塑性組成物を調製することができる。この調製には、例えば、他のポリカーボネート〔ホモポリカーボネート、およびカーボネート単位内に異なるR部分を含む他のポリカーボネートコポリマー(すなわちコポリカーボネート)、ポリシロキサンポリカーボネート、ポリエステルカーボネート(ポリエステルポリカーボネートとも称される)を含む〕、ポリエステル、耐衝撃性改良剤、または前述の追加的なポリマーの少なくとも1種を含む組合せを用いることができる。これらの組合せは、1〜99質量%、特に10〜90質量%、より特に20〜80質量%のイソソルビドをベースとするポリカーボネートを含み、残りの割合は、他の熱可塑性ポリマー、および/または後述する添加剤である。1つの実施態様では、熱可塑性組成物は、イソソルビドをベースとするポリカーボネート、さらなるポリマー、および/または添加剤を含む。別の特定の実施態様では、イソソルビドをベースとするポリカーボネートを含む熱可塑性組成物は、イソソルビドをベースとするポリカーボネート、任意の追加のポリマー、および添加剤の合計質量(全ての充填剤を除く、充填剤添加前の質量)に基づいて、50質量%以上、特に55質量%以上、より特に60質量%以上、なおより特に65質量%以上の合計バイオ含量を有する。
【0048】
例えば、熱可塑性組成物は、追加のポリマーとして、耐衝撃性改良剤をさらに含んでいてよい。好適な耐衝撃性改良剤は、典型的には、オレフィン、モノビニル芳香族モノマー、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにそのエステル誘導体、および共役ジエンから誘導される、高分子量エラストマー性物質である。共役ジエンから形成されるポリマーは、完全に、あるいは部分的に水素化されていてよい。エラストマー性物質は、ホモポリマーまたはコポリマー(ランダム、ブロック、グラフト、およびコア−シェルコポリマーを含む)の形態であってよい。耐衝撃性改良剤の組合せを用いることもできる。
【0049】
一部の実施態様では、熱可塑性組成物は、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されるホモポリカーボネートと、イソソルビド単位および900〜4000の質量平均分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導される脂肪族単位を含むコポリマーとを含む。イソソルビド単位と、900〜4000の質量平均分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導される脂肪族単位とを含む前記コポリマーは、C14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される非イソソルビド脂肪族単位、芳香族単位をさらに含むことができる。前記ホモポリカーボネートは、ホモポリカーボネートとコポリマーとの合計質量に基づいて、10〜80質量%、特に20〜70質量%、より特に25〜65質量%の量で存在していてよい。前記コポリマーは、ホモポリカーボネートとコポリマーとの合計質量に基づいて、20〜90質量%、特に30〜80質量%、より特に35〜75質量%の量で存在していてよい。
【0050】
イソソルビドをベースとするポリカーボネートに加えて、熱可塑性組成物は、この種の樹脂組成物に通常組み込まれるさまざまな添加剤を、熱可塑性組成物の所望の特性に多大な悪影響を及ぼさないようにその添加剤が選択されることを条件として、含むことができる。添加剤の組合せを用いることもできる。このような添加剤は、組成物を形成する成分の混合工程中の任意の適切な時期に混合することができる。例示的な添加剤は、米国特許出願公開第20090105393号および同第20090105444号に記載されている。
【0051】
イソソルビドをベースとするポリカーボネートを含む熱可塑性組成物は、さまざまな方法によって製造することができる。例えば、粉末のイソソルビドをベースとするポリカーボネート、(存在する場合には)他のポリマー、および/または他の任意成分を、HENSCHEL高速ミキサー(登録商標)内で、場合により充填剤と共に最初にブレンドする。他の低剪断法(これだけに限定されないが手による混合を含む)によってこのブレンドを達成することもできる。次いで、このブレンドを、ホッパーを介して、二軸押出機のスロートに供給する。あるいは、少なくとも1つの成分を、押出機のスロートに直接供給し、かつ/あるいはサイドスタッファーを通して下流に供給することによって組成物に組み込むことができる。添加剤を、所望のポリマー樹脂を用いてマスターバッチに配合し、押出機に供給することもできる。押出機は、一般に、組成物の流動を引き起こすために必要とされる温度より高い温度で操作する。押出物は、水中で速やかにクエンチし、ペレット化する。押出物をその場で切断することによって調製したペレットは、4分の1インチ以下の所望の長さであってよい。このようなペレットを、その後の成形加工に用いる。
【0052】
本ホモおよびコポリカーボネートは、さまざまな物品、これらだけに限定されないが、フィルム、シート、光導波路、ディスプレイデバイス、および発光ダイオードプリズムの製造において使用することができる。さらに、本ポリカーボネートは、車体外板、屋外車両の部品、自動車を含む装置、標識などの保護グラフィック、屋外囲い(例えば、電話ボックスおよび電気通信ボックス)、建築塗装物(例えば、屋根部分、壁パネル、およびグレージング)の製造においてさらに使用することができる。開示したポリカーボネートで作製した多層物品には、とりわけ、自然のUV光であるか人工的UV光であるかに関わらず、その使用期間中、UV光に曝されることとなる物品、特に、屋外物品、すなわち屋外で使用することが意図された物品が含まれる。好適な物品を、以下に例示する:自動車、トラック、軍用運搬手段、およびオートバイの内装および外装部品(パネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、ルーフ、バンパー、フェイシア、グリル、ミラーハウジング、ピラーアップリケ、クラッド、ボディサイドモールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、ウィンドウフレーム、ヘッドライトベゼル、ヘッドライト、テールライト、テールライトハウシング、テールライトベゼル、ナンバープレートエンクロージャ、ルーフラックおよびラニングボードが含まれる);屋外車両および装置のエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;電気通信デバイスのエンクロージャ:屋外家具;航空機部品;ボートおよびマリン設備(トリム、エンクロージャ、およびハウジングが含まれる);船外機ハウジング;測深機のハウジング、パーソナルウォータークラフト;ジェットスキー;プール;スパ;ホットタブ;ステップ;ステップの覆い;建築用品、例えば、グレージング(glazing)、屋根、窓、床、装飾窓の備品もしくは演出;写真、絵画、ポスターおよびディスプレイ品目などの演出ガラスカバー;壁パネル、およびドア;保護グラフィックス;屋外および屋内の標識;現金自動預け払い機(ATM)のエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;芝および庭用トラクター、芝刈り機、および道具(芝および庭用の道具が含まれる)のエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;窓およびドアのトリム;スポーツ用品および玩具;スノーモビルのエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;レクリエーション用車両のパネルおよび部品;運動場の備品;プラスチック-木材の組合せで製造される物品;ゴルフコースマーカー;ユーティリティーピットカバー;コンピータのハウジング;デスクトップコンピュータのハウジング;ポータブルコンピュータのハウジング;ラップトップコンピュータのハウジング;パームヘルド(palm held)コンピュータのハウジング;モニタのハウジング;プリンタのハウジング;キーボード;FAXマシンのハウジング;コピー機のハウジング;電話機のハウジング;携帯電話のハウジング;ラジオ発信機のハウジング;ラジオ受信機のハウジング;じか付け照明器具;照明装置;ネットワークインターフェイスデバイスのハウジング;トランスフォーマーのハウジング;空調機のハウジング;公共輸送手段の被覆材または座席;列車、地下鉄、またはバスの被覆材または座席;計測器のハウジング;アンテナのハウジング;パラボラアンテナの被覆材;コ―ティイングヘルメットおよび個人用保護備品;合成もしくは天然のコーティングテキスタイル;コーティング写真フィルムおよび写真プリント;コーティング印刷物品;コーティングした染色物品;コーティングした蛍光物品;コーティング発泡物品などの用途。
【実施例】
【0053】
イソソルビドをベースとするポリカーボネートを、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0054】
モルパーセント(モル%)単位のポリカーボネートの組成は、ポリカーボネートの製造に用いる全てのジヒドロキシ官能性モノマーの組成を記述する。この組成は、試料のほとんどについて、結果として得られるポリマーのH NMRで決定される組成に近似的に相当する。質量%(wt%)単位のポリカーボネート組成は、概算であり且つ四捨五入の値であり、モル単位のモノマー組成から算出した。wt%単位のバイオ含量は、イソソルビド、Priplast(登録商標)、およびPripol(登録商標)由来の原子の質量を、ポリマー鎖の総質量で割ることによって算出した。末端基は、バイオ含量、モル%単位の組成、および質量%の組成の算出の際に考慮しなかった。計算例を下記表に示す。質量%単位のバイオ含量は、計算テーブルの最後の欄の合計で示される。
【0055】
【表1】

【0056】
イソソルビドをISと略記する。ビスフェノールAをBPAと略記する。Pripol(登録商標)1009は、炭素原子36個からなる分岐脂肪酸二量体である。Priplast(登録商標)3162は、1モル当たり約1000グラム(g/モル)の平均モル質量を有する二量化脂肪酸のオリゴマーである。Priplast(登録商標)1838は、平均モル質量約2000 g/モルの二量化脂肪酸のオリゴマーである。Priplast(登録商標)3196は、平均モル質量約3000 g/モルの二量化脂肪酸のオリゴマーである。
【0057】
ポリカーボネートは、溶融状態で、101〜103%のカーボネート前駆体〔ビス(メチルサリチル)カーボネート(BMSC)〕を、ジヒドロキシモノマーおよび酸官能性モノマーの合計100モル%に添加することによって調製した。200リットルのステンレス鋼撹拌タンク反応器に、BMSC、イソソルビド、ポリシロキサン、脂肪族単位、および任意選択でBPAを装填した。触媒はこの反応器に全く添加しなかった。次いで、この反応器を減圧にし、窒素で3回パージして残留酸素を除去した後、800 mbarの一定圧力に保った。次いで、モノマーを溶融し、溶解させるために、温度を130℃に上昇させた。次いで、温度を100℃に低下させた。次いで、このモノマー混合物を、ポンプでPFR(プラグフロー反応器)に移した。PFRの開始時に、HPLCポンプを用いて、モノマー混合物に水酸化ナトリウム水溶液を連続的に添加する。このPFRは、180℃〜200℃および4〜5バールの圧力で操作する。PFRから出たオリゴマーを、フラッシュ脱揮システム(flash devolatilisation system)に移した。
【0058】
フラッシュ液化システムは、予熱器とフラッシュ槽とからなる。この予熱器を、約240℃および200 mbarで作動させ、フラッシュ槽を、約190℃および180 mbarで作動させる。フラッシュ槽の下部には、材料を押出機に移送するための溶解ポンプがある。押出機は、Warner & Pfeiderer ZSK25WLEの25 mm、13バレル、L/D = 59の二軸押出機である。反応混合物を、250 rpmのスクリュー速度で反応的に押出した。押出バレルは270℃に設定し、ダイは280℃に設定した。押出機は、5つの前方真空ベントと1つの後方ベントを備えていた。押出機は、ハイバック(hi-vac)と呼ばれる1つの真空システムを有しており、全てのベントはこのシステムに連結しており、約1 mbarの真空度を有する。メチルサリチレート副生成物は、これらのベントを通して脱揮によって除去した。押出機の最後にダイを通して集めたものは、ポリマーの溶融ストランドであり、水浴に通して固化させ、ペレット化した。
【0059】
ポリカーボネートを、以下に記述する条件を用いて二軸押出機で押出した。押出中に、H3PO4の45質量%水溶液0.02質量%を添加して、ポリマーを安定化させ、分解を最小化させた。0.3質量%のPETSを、離型剤として添加した。質量は、組成物の総質量に基づく。他の添加剤および/または着色剤は全く使用しなかった。材料を、以下の設定で、二軸押出機で押出した。
温度ゾーン1 50℃
温度ゾーン2 200℃
温度ゾーン3 250℃
温度ゾーン4 270℃
温度ゾーン5 280℃
温度ゾーン6 280℃
温度ゾーン7 280℃
温度ゾーン8 280℃
速度 300rpm
真空度 最大
【0060】
成形は、以下の設定で行った。
温度ゾーン1 240℃
温度ゾーン2 250℃
温度ゾーン3 260℃
温度ゾーン4 250℃
金型温度: 60〜70℃
注入速度: 35〜50mm/秒
後圧力: 50〜70バール
【0061】
乾燥時間: 85℃にて6時間
【0062】
成形は、以下の設定で行った。
温度ゾーン1 240℃
温度ゾーン2 250℃
温度ゾーン3 260℃
温度ゾーン4 250℃
金型温度: 60〜70℃
注入速度: 35〜50mm/秒
後圧力: 50〜70バール
乾燥時間: 85℃にて6時間
【0063】
ビカー軟化温度を、120℃/時間の加熱速度および50ニュートンの応力を用い、ISO306に準拠して決定した。10×10×4mmの試験片を、成形した80×10×4mmのISO衝撃試験片から切り出した。各試験を繰り返し、2つの結果の平均値を記録した。
【0064】
熱変形温度を、平らな表面への1.8メガパスカル(Mpa)の応力を用い、ISO75:2004に準拠して決定した(方法A)。測定は、成形したISOバー(80×10×4mm)であって、23℃および50%の相対湿度にて48時間予備調整したものについて行った。HDT装置の過熱媒体は鉱物オイルであった。測定は2回行い、平均値を記録した。
【0065】
ガラス転移温度(Tg)を、加熱速度10℃/分の示差走査熱量測定(DSC)を用い、第2回目の加熱曲線をTgの測定に用いて決定した。
【0066】
ノッチ付きアイゾット衝撃性を、ISO180:2000の方法A試験プロトコルに準拠して決定した。ノッチ付きの80×10×3mmの成形した衝撃試験片について試験を5回繰り返した。試験片は、23℃および50%の相対湿度にて48時間予備調整した。衝撃速度は、揺動振り子のエネルギー5.5Jで3.5m/秒であった。取り付け基準面の高さは、40mmであった。試験は23℃で行った。結果を、5回の測定値の平均値として、1平方メートル当たりのキロジュール単位で記録した。
【0067】
引張弾性率、降伏応力、破断応力、および破断ひずみを、ISO527に準拠して測定した。引っ張り速度は、弾性率の測定において1ミリメートル/分であり、他の特性の測定において501ミリメートル/分であった。試料は、試験の前に、23℃および50%の相対湿度にて2日間調整した。
【0068】
外観は、目視で評価した。試料は、試料の後ろに置いた紙の文字が読める場合に透明であるとみなした。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例1〜8を、25グラムスケールで調製した。実施例1〜5は、非イソソルビド脂肪族部分の鎖の長さが、透明性およびガラス転移温度に及ぼす効果を実証している。オリゴマーの鎖の長さが2000のMn(実施例4)に増大するに従って、ガラス転移温度が高まり、混和性が制限される。オリゴマーの鎖の長さがさらに3000のMnに増大すると(実施例5)、ガラス転移温度の上昇が頭打ちになるが、透明性が低下する。実施例6〜8は、脂肪族オリゴマーと、C14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せとの組合せを用いることによる効果を実証している。C14〜44脂肪族成分の量を変動させることによって、ガラス転移温度を標的とする温度に調整することができ、かつ、透明性を維持することができる。
【0071】
【表3】

【0072】
実施例9〜11は、C36ジオールを用いて製造した比較例である。これらの比較例はいずれも、記述した表における実施例より低いガラス転移温度を示している。これらはまた、表3の試料と比較してより低い熱変形温度を有している。
【0073】
【表4】

【0074】
実施例16は、コポリマーが、1000より高い分子量を有する脂肪族ブロックと、36個の炭素を有する脂肪族ブロックとを含む場合には、優れた結果が得られることを示している。実施例17は、実施例16と比較して、コポリマーが、約1000より高い分子量を有する脂肪族ブロックを含むが、36個の炭素を有する脂肪族ブロックを含まない場合には、さらに高い衝撃強さが得られることを示している。これらの結果は、所望の特性を有する材料を得るためには、オリゴマーの分子量が重要な因子であることを示している。
【0075】
単数の名詞は、特に明記しない限り、単数と複数の両方のものを包含する。例えば、「着色剤」には、複数の「着色剤」が含まれる。特に明記しない限り、本明細書における技術的および科学的用語は、発明が属する分野における当業者が通常理解するとおりの内容を意味する。同じ成分または特定についての全ての範囲の終点は、その両端の値を含み、かつ、独立に組み合わせることができる(例えば、「約25質量%以下、または、より特に、約5質量%〜20質量%」の範囲は、両端の終点の値、および「約5質量%〜20質量%」の範囲内の全ての中間の値を含む)。「場合により」または「任意の」は、その後に記載する事象または条件が起こる場合も起こらない場合もあることを記述し、この記述は、その事象が起こる場合と起こらない場合とを包含する。本明細書において、「組合せ」は、ブレンド、混合物、アロイ、反応生成物などを包含する。全ての参考文献を本明細書に参照により組み込む。
【0076】
化合物は、標準的な命名法を用いて記述する。例えば、指定された基のいずれによっても置換されていない位置はいずれも、明示したとおりの結合または水素原子によって原子価が満たされていると解される。文字または記号の間にあるものではないダッシュ(「−」)は、置換基が結合している位置を示すために用いる。例えば、-CHOは、カルボニル基に炭素によって結合している。本明細書において用語「ヒドロカルビル」は、炭素および水素を含み、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、ハロゲン、または硫黄を含んでいてよい置換基を広く指し;「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素基を指し;「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素基を指し;「アルキリデン」は、直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素基であって、両方の価が1個の共通の炭素原子上にある基を指し;「アルケニル」は、直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素基であって、少なくとも2個の炭素が炭素−炭素二重結合で結合している基を指し;「シクロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族単環性または多環性の一価炭化水素基を指し;「シクロアルケニル」は、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族単環性または多環性の一価炭化水素基であって、少なくとも1の不飽和度を有する基を指し;「アリール」は、芳香族環内にのみ炭素を有する一価の芳香族基を指し;「アリーレン」は、芳香族環内にのみ炭素を有する二価の芳香族基を指し;「アルキルアリール」は、上述により定義したアルキル基で置換されたアリール基を指し、例示的なアルキルアリール基は4−メチルフェニルであり;「アリールアルキル」は、上述により定義したアリール基で置換されたアルキル基を指し、例示的なアリールアルキル基はベンジルであり;「アシル」は、指定した数の炭素原子がカルボニル炭素架橋(-C(=O)-)を介して結合している上述により定義したアルキル基を指し;「アルコキシ」は、指定した数の炭素原子が酸素架橋(-O-)を介して結合している上述により定義したアルキル基を指し;かつ、「アリールオキシ」は、指定した数の炭素原子が酸素架橋(-O-)を介して結合している上述により定義したアリール基を指す。使用される場合には、構造式中の波状の結合は、当分野において一般に、立体化学が特定されていない単結合を示すために含められる。
【0077】
典型的な実施態様を、説明を目的として提示してきたが、前述の記述は、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。したがって、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな修飾、適用、および変形に想到することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルビド単位と、イソソルビド単位とは異なる脂肪族単位とを含むポリカーボネートポリマーであって、前記イソソルビド単位および前記脂肪族単位が、それぞれ、カーボネート単位であるかまたはカーボネート単位とエステル単位との組合せであり、前記脂肪族単位が、900〜4000の質量平均分子量を有する脂肪族オリゴマーから誘導される単位である、ポリカーボネートポリマー。
【請求項2】
前記イソソルビド単位が、前記ポリカーボネートを製造するために使用したジオールおよび二酸の合計質量に基づいて、50〜92質量%の量で存在する、請求項1に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項3】
前記脂肪族オリゴマーが、900〜3000の質量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項4】
前記脂肪族オリゴマーが、900〜2500の質量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項5】
脂肪族オリゴマーから誘導される前記脂肪族単位が、前記ポリカーボネートを製造するために使用したジオールおよび二酸の合計質量に基づいて、5〜35質量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項6】
前記脂肪族単位が、式:X−L−X〔式中、Xは、カルボン酸基(-C(O)OH)またはメチロール基(-CH2-OH)を表し、Lは、60個以上の炭素原子を有する基を表す〕を有する脂肪族オリゴマーから誘導されるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項7】
芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されるカーボネート単位をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項8】
前記ポリカーボネートが、前記ポリカーボネートの総質量に基づいて20質量%以上のバイオ含量を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項9】
前記ポリカーボネートが、90℃〜170℃のガラス転移温度を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項10】
前記ポリカーボネートが、30℃〜180℃の熱変形温度を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項11】
前記ポリカーボネートが、23℃で、1平方メートル当たり13キロジュール以上のノッチ付きアイゾット衝撃強さ(kJ/m)を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項12】
14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される非イソソルビド脂肪族単位をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項13】
14〜44脂肪族二酸、C14〜44脂肪族ジオール、またはこれらの組合せから誘導される前記非イソソルビド脂肪族単位が、5〜35質量%の量で存在する、請求項12に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項14】
前記ポリカーボネートが透明である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマー。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリマーを含む物品。

【公表番号】特表2013−515841(P2013−515841A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547170(P2012−547170)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/062006
【国際公開番号】WO2011/082103
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】